JP2004139967A - 燃料電池用セパレータの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】シール材を除去することで部品点数を減らすことができ、かつシール材を塗布する手間を省くことができる燃料電池用セパレータの製造方法を提供する。
【解決手段】燃料電池用セパレータの製造方法は、電解質膜に沿わせたアノード側電極及びカソード側電極を拡散層を介して両側から挟み込む燃料電池用セパレータの製造方法であり、熱可塑性樹脂及び導電性材料を混合して混合材を得る工程と、この混合材で拡散層との接触面にガス流路溝を備えたセパレータ素材を形成する工程と、このセパレータ素材の接触面に電子線を照射する工程と、からなる。
【選択図】    図8

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解質膜にアノード側電極及びカソード側電極を添わせ、これらを拡散層を介して両側から挟持する燃料電池用セパレータの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、水の電気分解の逆の原理を利用し、水素と酸素とを反応させて水を得る過程で電気を得ることができる電池である。一般に、水素に燃料ガスを置き換え、酸素に空気や酸化剤ガスを置き換えるので、燃料ガス、空気、酸化剤ガスの用語を使用することが多い。以下、一般的な燃料電池を次図に示して説明する。
【0003】
図9は従来の燃料電池を示す分解斜視図である。
燃料電池100は、電解質膜101にアノード側電極102及びカソード側電極103を添わせ、これらの電極102,103を拡散層104,105を介して第1セパレータ106及び第2セパレータ107で挟むことでセルモジュールを構成する。このセルモジュールを多数個積層することで燃料電池を得る。
【0004】
ここで、カソード側電極103には酸化剤ガスを効果的に接触させる必要がある。このため、第2セパレータ107の面107aに溝108・・・を多数本条設し、第2セパレータ107の面207aに拡散層105を重ねて溝108・・・を塞ぐことにより、酸化剤ガスの流路となる第2流路(図示しない)を形成する。
【0005】
一方、アノード側電極102には燃料ガスを効果的に接触させる必要がある。このため、第1セパレータ106の面106aに溝(図示しない)を多数本条設し、第1セパレータ106の面106aに拡散層104を重ねて溝を塞ぐことにより、燃料ガスの流路となる第1流路(図示しない)を形成する。
【0006】
また、第1セパレータ106は、面106aの裏面106bに冷却水通路用溝109・・・を多数本条設し、第2セパレータ107は、面107aの裏面107bに冷却水通路用溝(図示しない)を多数本条設ける。
第1、第2セパレータ106,107を重ね合わせることで、それぞれの冷却水通路用溝109・・・を合わせて冷却水通路(図示しない)を形成する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この第1、第2のセパレータ106,107を製造する方法として、例えば特開2001−126744公報「燃料電池用セパレータおよびその製造方法」が知られている。
この製造方法によれば、熱可塑性樹脂に導電性粒子を含めた状態で加熱混錬し、この混合物を押出し成形し、圧延ロールで長尺シートに成形し、この長尺シートを所定寸法に切断してブランク材とした後、このブランク材の両面、或いは片面にガス通路や冷却水通路用の溝を成形することにより第1、第2セパレータ106,107を得ることができる。
【0008】
この第1、第2セパレータ106,107にそれぞれ拡散層104,105を重ね合わせて第1、第2流路を形成するためには、第1、第2セパレータ106,107のそれぞれの面106a,107aに拡散層104,105を密着状態に重ね合わせる必要がある。
【0009】
しかしながら、第1、第2セパレータを熱可塑性樹脂で成形したので、燃料電池を使用する際に発生する反応熱で、第1、第2セパレータのそれぞれの面106a,107aが軟化する。
このため、第1、第2セパレータのそれぞれの面106a,107aと拡散層104,105とを密着状態に保つことが難しい。
【0010】
この不具合を解消するために、第1、第2セパレータ106,107のそれぞれの面106a,107aと拡散層104,105との間にシール材を塗布して、第1、第2セパレータ106,107のそれぞれの面106a,107aと拡散層104,105との密着状態に保つようにしている。
同様に、第1セパレータ106と第2セパレータ107との重ね合わせ面間にシール材を塗布して、第1セパレータ106と第2セパレータ107とを密着状態に保つようにしている。
【0011】
このため、第1セパレータの面106aと拡散層104との間や、第2セパレータの面107aと拡散層105との間に塗布するシール材が必要になり、部品点数が増える。
加えて、第1セパレータ106の面106aと拡散層104との間や、第2セパレータ107の面107aと拡散層105との間にシール材を塗布する手間がかかり、そのことが生産性を上げる妨げになっていた。
【0012】
そこで、本発明の目的は、シール材を除去することで部品点数を減らすことができ、かつシール材を塗布する手間を省くことができる燃料電池用セパレータの製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、電解質膜に沿わせたアノード側電極及びカソード側電極を拡散層を介して両側から挟み込む燃料電池用セパレータの製造方法において、熱可塑性樹脂及び導電性材料を混合して混合材を得る工程と、この混合材で前記拡散層との接触面にガス流路溝を備えたセパレータ素材を形成する工程と、このセパレータ素材の接触面に電子線を照射する工程と、から燃料電池用セパレータの製造方法を構成する。
【0014】
セパレータ素材を熱可塑性樹脂で成形し、ガス流路溝を備えた接触面に電子線を照射した。これにより、ガス流路溝を備えた接触面を、ある程度硬化させることができる。よって、燃料電池の反応熱が発生した場合でも、セパレータの接触面の弾力性を確保することができる。このため、セパレータの接触面を拡散層に密に接触させた状態を保つことができる。
したがって、セパレータの接触面と拡散層との間にシール材を塗布する必要がない。
【0015】
さらに、セパレータ素材の接触面に電子線を照射するだけの簡単な工程で、燃料電池用セパレータの接触面をシール性に優れた部位に変えることができる。これにより、シール性に優れた燃料電池用セパレータを効率よく生産することができる。
【0016】
請求項2において、熱可塑性樹脂は、エチレン・酢ビ共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、変性ポリフェニレンオキサイドから選択した樹脂であり、導電性材料は、黒鉛、ケッチェンブラック、アセチレンブラックの少なくとも一種から選択した炭素粒子であることを特徴とする。
【0017】
エチレン・酢ビ共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、変性ポリフェニレンオキサイドは熱可塑性樹脂のなかで特に柔軟性に優れた樹脂であり、これらの樹脂でセパレータを成型することにより、セパレータの接触面を拡散層により一層密に接触させることができる。よって、セパレータの接触面と拡散層との間の隙間をより一層好適にシールすることができる。
【0018】
一方、黒鉛、ケッチェンブラック、アセチレンブラックは導電性に優れているため、比較的少量で導電性を確保することができる。このため、熱可塑性樹脂に含む割合を比較的少量にして、熱可塑性樹脂の物性への影響を抑えることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法で製造した燃料電池用セパレータの燃料電池を示す分解斜視図である。
燃料電池10は、一例として電解質膜12に固体高分子電解質を使用し、この電解質膜12にアノード側電極13及びカソード側電極14を添わせ、アノード側電極13側にアノード側電極拡散層15を介してセパレータ18を合わせるとともに、カソード側電極14側にカソード側電極拡散層16を介してセパレータ(燃料電池用セパレータ)18を合わせることによりセルモジュール11を構成し、このセルモジュール11を多数個積層した固体高分子型燃料電池である。
【0020】
セパレータ18は、第1セパレータ20と、第2セパレータ30とからなり、第1セパレータ20の冷却水通路形成面20aと第2セパレータ30の接合面30aを、一例として振動溶着で接合したものである。
【0021】
このように、第1、第2セパレータ20,30を振動溶着することにより、第1セパレータ20の冷却水通路用溝21・・・を第2セパレータ30で覆い、冷却水通路22・・・(図4に示す)を形成する。
この冷却水通路22・・・には、第1、第2セパレータ20,30の上端中央の冷却水供給孔部23a,33aが連通するとともに、第1、第2セパレータ20,30の下端中央の冷却水排出孔部23b,33bが連通する。
【0022】
第1セパレータ20は、燃料ガス通路形成面(接触面)20b側に燃料ガス通路用溝24・・・(図2に示す)を備え、燃料ガス通路形成面20bにアノード側電極拡散層15を重ね合わせることで、燃料ガス通路用溝24・・・をアノード側電極拡散層15で塞いで燃料ガス通路25・・・(図4に示す)を形成する。
この燃料ガス通路25・・・に、第1、第2セパレータ20,30の上端左側の燃料ガス供給孔部26a,36aを連通するとともに、第1、第2セパレータ20,30の下端右側の燃料ガス排出孔部26b,36bを連通する。
【0023】
第2セパレータ30は、酸化剤ガス通路形成面(接触面)30b側に酸化剤ガス通路用溝37・・・を備え、酸化剤ガス通路形成面30bにカソード側電極拡散層16を重ね合わせることで、酸化剤ガス通路用溝37・・・をカソード側電極拡散層16で塞いで酸化剤ガス通路38・・・(図4に示す)を形成する。
この酸化剤ガス通路38・・・に、第1、第2セパレータ20,30の上端右側の酸化剤ガス供給孔部29a,39aを連通するとともに、第1、第2セパレータ20,30の下端左側の酸化剤ガス排出孔部29b,39bを連通する。
【0024】
図2は図1のA−A線断面図である。
第1セパレータ20は、熱可塑性樹脂に導電性材料を混合した樹脂で略矩形状(図1参照)に形成した部材で、冷却水通路形成面20aに冷却水通路用溝21・・・を多数本条備え、燃料ガス通路形成面20bに燃料ガス通路用溝24・・・を多数本条備える。
【0025】
熱可塑性樹脂としては、一例としてエチレン・酢ビ(酢酸ビニル)共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、変性ポリフェニレンオキサイトが該当するが、これに限定するものではない。
【0026】
導電性材料(炭素材料)としては、ケッチェンブラック、黒鉛、アセチレンブラックのうち少なくとも一種から選択した炭素粒子が該当するが、これに限定するものではない。
なお、ケッチェンブラックは、導電性に優れたカーボンブラックで、一例としてケッチェン・ブラック・インターナショナル株式会社製(販売元;三菱化学株式会社)のものが該当するが、これに限るものではない。
【0027】
エチレン・酢ビ(酢酸ビニル)共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、変性ポリフェニレンオキサイトは、熱可塑性樹脂のなかで柔軟性のある樹脂であり、この樹脂を使用することで、第1セパレータ20を柔軟性に優れた部材とすることができる。
【0028】
加えて、燃料ガス通路形成面20bは、電子線を照射することで、ある程度硬化させるとともに、3次元架橋構造とした面である。
このように、第1セパレータ20を柔軟性に優れた部材とするとともに、燃料ガス通路形成面20bを電子線を照射することで、燃料ガス通路形成面20bを弾力性に優れた面にすることができる。
【0029】
またケッチェンブラック、黒鉛、アセチレンブラックは導電性に優れた材料であり、導電性材料(炭素材料)としてケッチェンブラック、黒鉛、アセチレンブラックのうち少なくとも一種から選択した炭素粒子を使用することにより、比較的少量で第1セパレータ20の導電性を確保することができる。
このため、熱可塑性樹脂に含む割合を比較的少量に抑えることができるので、熱可塑性樹脂の成形性を維持して、第1セパレータ20を容易に成形することができる。
【0030】
図3は図1のB−B線断面図である。
第2セパレータ30は、第1セパレータ20と同様に、熱可塑性樹脂に導電性材料を混合した樹脂で略矩形状(図1参照)に形成した部材で、接合面30aを平坦に形成し、酸化剤ガス通路形成面30bに酸化剤ガス通路用溝37・・・を多数本条備える。
【0031】
熱可塑性樹脂としては、一例としてエチレン・酢ビ(酢酸ビニル)共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、変性ポリフェニレンオキサイトが該当するが、これに限定するものではない。
導電性材料(炭素材料)としては、ケッチェンブラック、黒鉛、アセチレンブラックのうち少なくとも一種から選択した炭素粒子が該当するが、これに限定するものではない。
【0032】
エチレン・酢ビ(酢酸ビニル)共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、変性ポリフェニレンオキサイトは、熱可塑性樹脂のなかで柔軟性のある樹脂あり、この樹脂を使用することで、第2セパレータ30を柔軟性に優れた部材とすることができる。
【0033】
加えて、酸化剤ガス通路形成面30bは、電子線を照射することで、ある程度硬化させるとともに、3次元架橋構造とした面である。
このように、第2セパレータ30を柔軟性に優れた部材とするとともに、酸化剤ガス通路形成面30bを電子線を照射することで、酸化剤ガス通路形成面30bを弾力性に優れた面にすることができる。
【0034】
またケッチェンブラック、黒鉛、アセチレンブラックは導電性に優れた材料であり、導電性材料(炭素材料)としてケッチェンブラック、黒鉛、アセチレンブラックのうち少なくとも一種から選択した炭素粒子を使用することにより、比較的少量で第2セパレータ30の導電性を確保することができる。
このため、熱可塑性樹脂に含む割合を比較的少量に抑えることができるので、熱可塑性樹脂の成形性を維持して、第2セパレータ30を容易に成形することができる。
【0035】
図4は本発明に係る燃料電池用セパレータを示す断面図である。
セパレータ18は、第1、第2セパレータ20,30を重ね合わせた後に第1、第2セパレータ20,30に加圧力をかけ、第1、第2セパレータ20,30の一方を振動させて摩擦熱を発生させることにより、第1セパレータ20の冷却水通路形成面20aと、第2セパレータ30の接合面30aとを振動溶着し、第1セパレータ20の冷却水通路用溝21を第2セパレータ30で塞いで冷却水通路22を形成したものである。
なお、第1、第2セパレータ20,30の接合は振動溶着に限らないで、その他の方法で接合することも可能である。
【0036】
燃料ガス通路形成面20bにアノード側電極拡散層15を合わせることで、燃料ガス通路用溝24・・・及びアノード側電極拡散層15で燃料ガス通路25・・・を形成する。
第1セパレータ20を柔軟性に優れた樹脂で成形し、さらに燃料ガス通路形成面20bに電子線を照射することで、燃料ガス通路形成面20bを、ある程度硬化させるとともに、架橋反応を進めることにより3次元架橋構造とした。
【0037】
このように、燃料ガス通路形成面20bを3次元架橋構造とすることで、高分子鎖が末端以外の任意の位置で互いに連結して、燃料ガス通路形成面20bの耐熱性や剛性を高めることができる。
これにより、燃料電池の反応熱が発生した場合に、燃料ガス通路形成面20bの弾性力を確保することができるので、燃料ガス通路形成面20bをアノード側電極拡散層15に密に接触させた状態を保つことができる。
【0038】
よって、燃料ガス通路形成面20bとアノード側電極拡散層15との間にシール材を塗布する必要がない。したがって、部品点数を減らすことができるとともにシール材を塗布する手間を省くことができ、さらに燃料ガス通路形成面20b及びアノード側電極拡散層15間の接触抵抗を抑えて燃料電池の出力を高めることができる。
【0039】
また、酸化剤ガス通路形成面30bにカソード側電極拡散層16を合わせることで、酸化剤ガス通路用溝37・・・及びカソード側電極拡散層16で酸化剤ガス通路38・・・を形成する。
第2セパレータ30を柔軟性に優れた樹脂で成形し、酸化剤ガス通路形成面30bに電子線を照射することで、酸化剤ガス通路形成面30bをある程度硬化させるとともに3次元架橋構造とした。これにより、燃料電池の反応熱が発生した場合に、酸化剤ガス通路形成面30bの弾性力を確保することができるので、酸化剤ガス通路形成面30bをカソード側電極拡散層16に密に接触させた状態を保つことができる。
【0040】
よって、酸化剤ガス通路形成面30bとカソード側電極拡散層16との間にシール材を塗布する必要がない。したがって、部品点数を減らすことができるとともにシール材を塗布する手間を省くことができ、さらに酸化剤ガス通路形成面30b及びカソード側電極拡散層16間の接触抵抗を抑えて燃料電池の出力を高めることができる。
【0041】
次に、本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法で第1セパレータ20を成形する例を図5〜図8に基づいて説明する。
図5は本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法の概略を示すフローチャートであり、図中ST××はステップ番号を示す。
ST10;熱可塑性樹脂と導電性材料とを混錬することにより混合材を得る。
ST11;混錬した混合材を押出し成形することにより帯状のシートを成形する。
【0042】
ST12;この帯状のシートの一方の面、すなわち冷却水通路形成面に相当する面に冷却水通路用溝をプレス成形するとともに、帯状のシートの他方の面、すなわち燃料ガス通路形成面に相当する面に燃料ガス通路用溝をプレス成形することにより、セパレータ素材を得る。
【0043】
ST13;燃料ガス通路用溝をプレス成形した面に電子線を照射する。
ST14;セパレータ素材を所定寸法に切断することにより第1セパレータを得る。
以下、本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法のST10〜ST14の工程を図6〜図8で詳しく説明する。
【0044】
図6(a),(b)は本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法の第1説明図であり、(a)はST10を示し、(b)はST11の前半を示す。
(a)において、先ず、エチレン・酢ビ共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、変性ポリフェニレンオキサイドから選択した熱可塑性樹脂46を準備する。
【0045】
次に、黒鉛、ケッチェンブラック、アセチレンブラックの炭素粒子から少なくとも一種を選択した導電性材料45を準備する。
準備した熱可塑性樹脂46及び導電性材料45を混錬装置47の容器48に矢印の如く投入する。投入した熱可塑性樹脂46及び導電性材料45を、混錬羽根(又はスクリュー)49を矢印の如く回転することにより容器48内で混錬する。
【0046】
(b)において、混錬した混合材50を第1押出し成形装置51のホッパー52に投入し、投入した混合材50を第1押出し成形装置51で押出し成形する。押出し成形した成形材53を水槽54に通すことで、水槽54内の水55で成形材53を冷却する。
冷却した成形材53をカッター装置56のカッター57で所定の長さに切断して、切断したペレット58・・・をストック籠59にストックする。
【0047】
図7は本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法の第2説明図であり、ST11の後半〜ST12を示す。
前工程で得たペレット58・・・を第2押出し成形装置60のホッパー61に矢印の如く投入し、投入したペレット58・・・を第2押出し成形装置60で押出し成形する。押出し成形した成形材62を圧延ロール63で圧延して帯状のシート64を成形する。
【0048】
圧延ロール63の下流側にはプレス装置65を備え、このプレス装置65は、帯状のシート64の上下にそれぞれ上下のプレス型66,67を備える。
上プレス型66は、帯状のシート64の他方の面64bに対向するプレス面66aに凹凸部(図示しない)を備える。この凹凸部は、帯状のシート64の他方の面64bに燃料ガス通路用溝24・・・(図4に示す)をプレス成形するものである。
【0049】
一方、下プレス型67は、帯状のシート64の一方の面64aに対向するプレス面67aに凹凸部(図示しない)を備える。この凹凸部は、帯状のシート64の一方の面64aに冷却水通路用溝21・・・(図4に示す)をプレス成形するものである。
【0050】
上下のプレス型66,67をプレス開始位置P1に配置し、上下のプレス型66,67で帯状のシート64の両面64a,64bを押圧し、この状態を維持しながら上下のプレス型66,67を帯状のシート64の押出速度に合わせて矢印▲1▼,▲2▼の如く連動する。
【0051】
これにより、帯状のシート64の一方の面64a、すなわち冷却水通路形成面20a(図4に示す)に相当する面に冷却水通路用溝21・・・をプレス成形するとともに、帯状のシート64の他方の面64b、すなわち燃料ガス通路形成面20b(図4に示す)に相当する面に燃料ガス通路用溝24・・・をプレス成形して、帯状のシート64をセパレータ素材68に成形することができる。
【0052】
上下のプレス型66,67がプレス解除位置P2に到達すると、上下のプレス型66,67を矢印▲3▼,▲4▼の如く帯状のシート64から離す方向に移動し、上下のプレス型66,67が解除側の所定位置に到達した後、上下のプレス型66,67を矢印▲5▼,▲6▼の如く上流側に向けて移動する。
【0053】
上下のプレス型66,67がプレス開始側の所定位置に到達した後、上下のプレス型66,67を矢印▲7▼,▲8▼の如くプレス開始位置P1まで移動する。
以下上述した工程を順次繰り返すことにより、帯状のシート64の両面64a,64bに冷却水通路用溝21・・・及び燃料ガス通路用溝24・・・をそれぞれプレス成形することができる。
【0054】
図7においては、理解を容易にするために上下のプレス型66,67をそれぞれ1個づつ備えた例について説明したが、現実には上下のプレス型66,67をそれぞれ複数個備える。
上下のプレス型66,67をそれぞれ複数個備えることで、帯状のシート64の両面64a,64bに冷却水通路用溝21・・・及び燃料ガス通路用溝24・・・(図4に示す)をそれぞれ連続的にプレス成形することができる。
【0055】
なお、上下のプレス型66,67には、図1に示す燃料ガス供給孔部26a及び燃料ガス排出孔部26bを成形する部位を備える。また、上下のプレス型66,67には、図1に示す酸化剤ガス供給孔部29a及び酸化剤ガス排出孔部29bを成形する部位を備える。
さらに、上下のプレス型66,67には、図1に示す冷却水供給孔部23a及び冷却水排出孔部23bを成形する部位を備える。
【0056】
よって、上下のプレス型66,67で帯状のシート64の両面64a,64bに冷却水通路用溝21・・・及び燃料ガス通路用溝24・・・をそれぞれ連続的にプレス成形するとともに、図1に示す冷却水供給孔部23a及びガス供給孔部26a,29aや冷却水排出孔部23b及びガス排出孔部26b,29bを同時に成形することができる。
【0057】
図8は本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法の第3説明図であり、ST13〜ST14を示す。
プレス装置65(図7に示す)の下流側には、前工程で得たセパレータ素材68の上方、すなわち燃料ガス通路用溝24・・・(図4に示す)をプレス形成した他方の面68bの上方に電子線照射装置70を備える。
【0058】
この電子線照射装置70の電子銃71から電子線72・・・を放射する。この電子線72で、燃料ガス通路用溝24・・・をプレス形成した他方の面68bの上方を照射する。
これにより、燃料ガス通路用溝24・・・をプレス形成した他方の面68bを、ある程度硬化させるとともに、3次元架橋構造とすることができる。
【0059】
電子線照射装置70の下流側には、前工程で得たセパレータ素材68の上方にカッター装置73を備える。
このカッター装置73のカッター74を矢印▲9▼の如く下降することにより、セパレータ素材68を所定寸法に切断して第1セパレータ20・・・を得る。これにより、第1セパレータ20の製造工程を完了する。
【0060】
このように、本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法によれば電子線72を照射するだけの簡単な方法で、燃料ガス通路形成面20b(図4に示す)をある程度硬化させるとともに、3次元架橋構造とすることができる。
よって、燃料ガス通路形成面20bの弾力性を好適に保つことができ、シール性を良好に保つことができる。このため、シール性に優れた第1セパレータ20を効率よく生産することができる。
【0061】
また、エチレン・酢ビ共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、変性ポリフェニレンオキサイドは熱可塑性樹脂のなかで特に柔軟性に優れた樹脂であり、これらの樹脂45で第1セパレータ20を成形することにより、第1セパレータ20の燃料ガス通路形成面20b(図4に示す)の柔軟性を好適に確保することができる。
【0062】
図5〜図8では第1セパレータ20を成形する例について説明したが、第1セパレータ20の製造方法と同様の方法で第2セパレータ30を製造することが可能である。
但し、第2セパレータ30は、第1セパレータ20のように冷却水通路用溝21・・・を備えておらず、平坦な接合面30aを備えている。このため、図7に示す下プレス型67は、帯状のシート64の一方の面に対向する面に、帯状のシート64の一方の面に冷却水通路用溝21・・・をプレス成形する凹凸部を備える必要はない。
【0063】
なお、前記実施形態では、電解質膜12として固体高分子電解質を使用した固体高分子型燃料電池10について説明したが、これに限らないで、その他の燃料電池に適用することも可能である。
【0064】
また、前記実施形態では、第1、第2セパレータ20,40を押出し成形やプレス成形で連続的に成形した例について説明したが、これに限らないで、加熱プレス方法、射出成形方法やトランスファー成形方法などのその他の製造方法で成形することも可能である。
トランスファー成形方法とは、成形材料をキャビティとは別のポット部に1ショット分入れ、プランジャーによって溶融状態の材料をキャビティに移送して成形する方法である。
【0065】
さらに、前記実施形態では、第1、第2セパレータ20,30を振動溶着で接合した例について説明したが、これに限らないで、第1セパレータ20の冷却水通路形成面20aに電子線を照射するとともに、第2セパレータ30の接合面30aに電子線を照射して、冷却水通路形成面20a及び接合面30aの弾力性を高めることにより、第1、第2セパレータ20,30を重ね合わせて冷却水通路形成面20aと接合面30aとを好適にシールすることも可能である。
【0066】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、セパレータ素材を熱可塑性樹脂で成形し、ガス流路溝を備えた接触面に電子線を照射した。これにより、ガス流路溝を備えた接触面を、ある程度硬化させることができる。よって、燃料電池の反応熱が発生した場合でも、セパレータの接触面の弾力性を確保することができる。
このため、セパレータの接触面を拡散層に密に接触させた状態を保つことができる。
【0067】
したがって、セパレータの接触面と拡散層との間にシール材を塗布する必要がないので部品点数を減らすことができるのでコスト下げることができる。
加えて、セパレータの接触面と拡散層との間にシール材を塗布する手間を省くことができるので生産性を高めることができる。
また、セパレータの接触面と拡散層との間にシール材を塗布する必要がないので、セパレータの接触面及び拡散層間接触抵抗を抑えて燃料電池の出力を高めることができる。
【0068】
さらに、セパレータ素材の接触面に電子線を照射するだけの簡単な工程で、燃料電池用セパレータの接触面をシール性に優れた部位に変えることができる。これにより、シール性に優れた燃料電池用セパレータを効率よく生産して比較的低コストで製造することができる。
【0069】
請求項2は、エチレン・酢ビ共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、変性ポリフェニレンオキサイドは熱可塑性樹脂のなかで特に柔軟性に優れた樹脂であり、これらの樹脂でセパレータを成型することにより、セパレータの接触面を拡散層により一層密に接触させることができる。
これにより、セパレータの接触面と拡散層との間の隙間をより一層好適にシールすることができる。
このように、シール性に優れたセパレートとすることで、セパレータの生産性を高めることができる。
【0070】
一方、黒鉛、ケッチェンブラック、アセチレンブラックは導電性に優れているため、比較的少量で導電性を確保することができる。これにより、熱可塑性樹脂に含む割合を比較的少量にして、熱可塑性樹脂の物性への影響を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法で製造した燃料電池用セパレータの燃料電池を示す分解斜視図
【図2】図1のA−A線断面図
【図3】図1のB−B線断面図
【図4】本発明に係る燃料電池用セパレータを示す断面図
【図5】本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法を示すフローチャート
【図6】本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法の第1説明図
【図7】本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法の第2説明図
【図8】本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法の第3説明図
【図9】従来の燃料電池を示す分解斜視図
【符号の説明】
10…燃料電池、12…電解質膜、13…アノード側電極、14…カソード側電極、15…アノード側電極拡散層(拡散層)、16…カソード側電極拡散層(拡散層)、18…セパレータ(燃料電池用セパレータ)、20…第1セパレータ、20b…燃料ガス通路形成面(接触面)、24…燃料ガス通路用溝、30…第2セパレータ、30b…酸化剤ガス通路形成面(接触面)、37…酸化剤ガス通路用溝、45…導電性材料、46…熱可塑性樹脂、50…混合材、68…セパレータ素材、72…電子線。

Claims (2)

  1. 電解質膜に沿わせたアノード側電極及びカソード側電極を拡散層を介して両側から挟み込む燃料電池用セパレータの製造方法において、
    熱可塑性樹脂及び導電性材料を混合して混合材を得る工程と、
    この混合材で前記拡散層との接触面にガス流路溝を備えたセパレータ素材を形成する工程と、
    このセパレータ素材の接触面に電子線を照射する工程と、からなる燃料電池用セパレータの製造方法。
  2. 前記熱可塑性樹脂は、エチレン・酢ビ共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、変性ポリフェニレンオキサイドから選択した樹脂であり、
    前記導電性材料は、黒鉛、ケッチェンブラック、アセチレンブラックの少なくとも一種から選択した炭素粒子であることを特徴とする請求項1記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
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