JP2004136503A - 導電性ポリエステルシートおよびそれからなる電子部品用包装容器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリエステル組成物からなる基材シートの少なくとも片面に、カーボンブラックを含有する導電性組成物からなるコート層を設けた導電性ポリエステルシートであって、前記ポリエステル基材シートが共重合されたジエチレングリコール成分を前記ポリエステルを構成する全グリコール成分に対して1.0〜3.0モル%含有し、導電性組成物コート層側の表面抵抗値が1×107Ω未満であることを特徴とする導電性ポリエステルシート。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、LSI、コンデンサー等の電子部品を収納運搬及び実装工程を補助するために使用されるキャリヤテープやトレー等の製造に使用される導電性ポリエステルシートおよびそれからなるキャリヤテープ等の電子部品用包装容器に関するものであり、特に衝撃強度に優れ、安定した導電性を保持する導電性ポリエステルシートおよびそれからなる電子部品用包装容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルは機械的強度、耐熱性、透明性およびガスバリヤー性に優れているので、特にジュース、清涼飲料、炭酸飲料などの飲料充填用容器や、包装用フイルム、オーディオ・ビデオ用フイルム等の素材として最適であり、大量に使用されている。
【0003】
ポリエステルシートやフイルムは、表面抵抗値が約1015Ωで帯電しやすく、電子材料、磁気記録媒体などの素材として用いる際、異物吸着などの問題を引き起こす。
【0004】
また、近年、電子部品の表面実装化が大きく進んできており、それに伴って表面実装技術も大幅に進歩し、より高性能でより小型なチップ型電子部品が開発され、それらの需要が急増しており、これらを搬送、保管する包装形態の1つとしてエンボスキャリヤテープが用いられている。チップ型電子部品はエンボスキャリヤテープの各ポケットに収納され、蓋体であるカバーテープでシールされた後、リールに巻き取られた状態で保管、搬送され、表面実装機のカセットフィーダーへ装着される。次に収納されているチップ型電子部品の回路基板への組付けはエンボスキャリヤテープを順々に送り出しながらカバーテープを剥離してチップ型電子部品を自動的にピックアップして回路基板の所定の場所へ自動的に配置するという方法で行われている。この工程ではチップ型電子部品とエンボスキャリヤテープのポケット内部面との摩擦による静電気やカバーテープを剥がす工程において発生する静電気によってエンボスキャリヤテープが帯電する為にチップ型電子部品がポケットより取り出すことが出来なかったり、静電気破壊が発生するという問題があり、それらを解決する為にエンボスキャリヤテープに導電性を付与して静電気の蓄積を防止することが必要とされ、カーボンブラック等の導電性フィラーを樹脂に練り込んだタイプのシートや導電性フィラーを含むコート組成物をシート表面に塗布したシート等を真空、圧空及びプレス成形によって成形した導電性エンボスキャリヤテープが用いられている。
【0005】
キャリアテープ用材料としては紙や熱可塑性プラスチックがあるが、紙は機械強度の問題から近年使用されなくなり、熱可塑性プラスチックがその素材として用いられるようになってきた。熱可塑性プラスチックとしては、従来、ポリ塩化ビニル系樹脂やポリスチレン系樹脂が挙げられるが、ポリ塩化ビニル系樹脂は成形性も良好で力学的物性も特に問題はないが、燃焼時のダイオキシン発生などの環境問題があり、またポリスチレン系樹脂は成形性良好で価格も安いが、衝撃強度などの力学的物性に問題がある。
【0006】
上記の理由から、環境問題にも、力学的物性にもバランスのとれたポリエステル系樹脂が最近注目されるようになり、使用量が増加している。
【0007】
ポリエステル系樹脂の導電性付与方法としては、カーボンブラックをポリエステル系樹脂に練り込んでシート化する練り込み方式か、あるいはカーボンブラックを含有するコート剤をポリエステル系樹脂からなる基材シートの両面にコーティングするコート方式が一般的である。
【0008】
練り込み方式では、ポリエステル系樹脂はカーボンブラックの分散がかなり困難であることや、カーボンブラックを練り込むことによって脆くなるため、耐折強度、衝撃強度などの機械的強度が低下する他、シート表面の外観もあまり良好なものは得られない。
【0009】
一方、コート方式では、コート方法やコート条件によっては、コート剤中の有機溶媒によりポリエステルシート表面にクレイジングが発生し、このために衝撃強度などの機械的特性が低下し問題となり、解決が望まれている。
【0010】
前記の問題を解決するために、過去には帯電防止性を有する飽和ポリエステル樹脂組成物からなる基材シートの片面にカーボンブラックを含む導電性塗料のコーティング層を設けた導電性ポリエステル系樹脂シートが開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このようなシートでも、導電性コート層と基材シートの接着性が悪く、キャリアーテープ成形時に剥離が起こるという欠点があり、解決が望まれている。
【0011】
【特許文献1】
特開2000−15764号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の導電性ポリエステルシートの有する問題点を解決し、内容物である電子部品の保護のために十分な導電性性能と十分な機械的強度を有し、しかも低コストの導電性ポリエステルシート、それからなるキャリアテープ等の電子部品用包装容器を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の導電性ポリエステルシートは、ポリエステル組成物からなる基材シートの少なくとも片面に、カーボンブラックを含有する導電性組成物からなるコート層を設けた導電性ポリエステルシートであって、前記ポリエステル基材シートが共重合されたジエチレングリコール成分を前記ポリエステルを構成する全グリコール成分を全グリコール成分に対して1.0〜3.0モル%含有し、導電性組成物コート層側の表面抵抗値が1×107Ω未満であることを特徴とする導電性ポリエステルシートである。
ここで、下記に記載するように表面抵抗値は、にJIS K6911の方法にしたがって、20±2℃、65±5%RHの雰囲気下で測定する。
【0014】
この場合において、前記ポリエステルが、主として芳香族ジカルボン酸成分とグリコール成分とからなることができる。
この場合において、前記ポリエステルが、エチレンテレフタレートを主繰返し単位とするポリエステルであることができる。
【0015】
この場合において、前記基材シートの少なくとも片面に導電性コート層を少なくとも一層以上形成してなることができる。
この場合において、前記基材シートの少なくとも片面にアンカーコート層を形成させ、その上に導電性コート層を少なくとも一層以上形成してなる導電性ポリエステルシートである。
この場合において、前記導電性コート層上に、トップコート層を形成してなることができる。
【0016】
この場合において、請求項1〜6のいずれかに記載の導電性ポリエステルシートを用いてなる電子部品用包装容器であり、前記電子部品用包装容器が、エンボスキャリヤーテープであることを特徴とする電子部品用包装容器である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の導電性ポリエステルシートおよびそれからなる電子部品用包装容器の実施の形態を具体的に説明する。
本発明に係るポリエステルは、好ましくは、主として芳香族ジカルボン酸成分とグリコ−ル成分とから得られる結晶性ポリエステルであり、さらに好ましくは、芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の85モル%以上含むポリエステルであり、特に好ましくは、芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の95モル%以上含むポリエステルである。
【0018】
本発明に係るポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニ−ル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体等が挙げられる。
【0019】
また本発明に係るポリエステルを構成するグリコ−ル成分としては、エチレングリコ−ル、1,3−トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール等が挙げられる。
【0020】
前記ポリエステル中に共重合して使用される酸成分としては、テレフタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニ−ル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸及びその機能的誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸及びその機能的誘導体などが挙げられる。
【0021】
前記ポリエステル中に共重合して使用されるグリコ−ル成分としては、エチレングリコ−ル、1,3−トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコール、ポリエチレングリコ−ル、ポリブチレングリコ−ル等のポリアルキレングリコ−ルなどが挙げられる。
【0022】
更にポリエステルが実質的に線状である範囲内で多官能化合物、例えばトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロ−ルプロパン等を共重合してもよく、また単官能化合物、例えば安息香酸、ナフトエ酸等を共重合させてもよい。
【0023】
本発明に係るポリエステルの最も好ましい一例は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートから構成されるポリエステルであり、さらに好ましくはエチレンテレフタレート単位を85モル%以上含む線状ポリエステルであり、特に好ましいのはエチレンテレフタレート単位を95モル%以上含む線状ポリエステル、即ち、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称)である。
【0024】
また本発明に係るポリエステルの好ましい他の一例は、主たる繰り返し単位がエチレン−2、6−ナフタレートから構成されるポリエステルであり、さらに好ましくはエチレン−2、6−ナフタレート単位を85モル%以上含む線状ポリエステルであり、特に好ましいのは、エチレン−2、6−ナフタレート単位を95モル%以上含む線状ポリエステル、即ち、ポリエチレンナフタレートホモポリマーまたはコポリマーである。
【0025】
また本発明に係るポリエステルの好ましいその他の例としては、プロピレンテレフタレート単位を85モル%以上含む線状ポリエステル、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート単位を85モル%以上含む線状ポリエステル、またはブチレンテレフタレート単位を85モル%以上含む線状ポリエステルである。
前記のポリエステルは、本発明の目的とする特性を損なわない範囲で、お互いに少なくとも一種を混合使用することができる。
上記のポリエステルは、従来公知の製造方法によって製造することが出来る。即ち、PETの場合には、テレフタール酸とエチレングリコール及び必要により他の共重合成分を直接反応させて水を留去しエステル化した後、重縮合触媒としてGe、Sb、Ti、またはAlの化合物のうち少なくとも一つの化合物および安定剤としてリン酸系化合物、亜リン酸系化合物、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物のうち少なくとも一つの化合物を用いて、減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、または、エステル交換触媒としてマグネシウム化合物、カルシウム化合物、コバルト化合物、マンガン化合物、亜鉛化合物などの化合物のうち少なくとも一つの化合物を用いてテレフタル酸ジメチルとエチレングリコール及び必要により他の共重合成分を反応させてメチルアルコールを留去しエステル交換させた後、前記の重縮合触媒や安定剤を用いて減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。
また必要に応じて、極限粘度を増大させために固相重合を行うことができる。固相重合前の結晶化促進のため、溶融重縮合ポリエステルを吸湿させたあと加熱結晶化させたり、また水蒸気を直接ポリエステルチップに吹きつけて加熱結晶化させたりしてもよい。
前記溶融重縮合反応は、回分式反応装置で行っても良いし、また連続式反応装置で行っても良い。これらいずれの方式においても、溶融重縮合反応は1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。固相重合反応は、溶融重縮合反応と同様、回分式装置や連続式装置で行うことが出来る。溶融重縮合と固相重合は連続で行っても良いし、分割して行ってもよい。
重縮合触媒として用いられるGe化合物としては、無定形二酸化ゲルマニウム、結晶性二酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド、亜リン酸ゲルマニウム等が挙げられる。Ge化合物を使用する場合、その使用量は熱可塑性ポリエステル中のGe残存量として5〜150ppm、好ましくは10〜100ppm、更に好ましくは15〜70ppmである。
重縮合触媒として用いられるSb化合物としては、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、酒石酸アンチモン、酒石酸アンチモンカリ、オキシ塩化アンチモン、アンチモングリコレート、五酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン等が挙げられる。Sb化合物は、生成ポリマー中のSb残存量として50〜250ppmの範囲になるように添加する。
重縮合触媒として用いられるTi化合物としては、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート等のテトラアルキルチタネートおよびそれらの部分加水分解物、蓚酸チタニル、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルナトリウム、蓚酸チタニルカリウム、蓚酸チタニルカルシウム、蓚酸チタニルストロンチウム等の蓚酸チタニル化合物、トリメリット酸チタン、硫酸チタン、塩化チタン等が挙げられる。Ti化合物は、生成ポリマー中のTi残存量として0.1〜10ppmの範囲になるように添加する。
【0026】
重縮合触媒として用いられるAl化合物としては、具体的には、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスホン酸アルミニウムなどの無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムn−プロポキサイド、アルミニウムiso−プロポキサイド、アルミニウムn−ブトキサイド、アルミニウムt−ブトキサイドなどアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジiso−プロポキサイドなどのアルミニウムキレート化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物およびこれらの部分加水分解物、酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらのうちカルボン酸塩、無機酸塩およびキレート化合物が好ましく、これらの中でもさらに塩基性酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムおよびアルミニウムアセチルアセトネートがとくに好ましい。Al化合物は、生成ポリマー中のAl残存量として5〜200ppmの範囲になるように添加する。
【0027】
本発明に係るポリエステルの極限粘度は0.63〜2.00デシリットル/グラム、好ましくは0.65〜1.50デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.70〜1.00デシリットル/グラムの範囲であることが望ましい。極限粘度が0.63デシリットル/グラム未満では、導電性ポリエステルシートの基材シートの極限粘度が0.60デシリットル/グラムを保持することが非常に難しく、後記する様に得られた基材シートの引張衝撃強度特性が極端に低下し問題となる場合がある。また、2.00デシリットル/グラムを越えるポリエステルを得るには長時間の固相重合反応によるしかなく、コストアップにつながり、経済性で問題となる場合がある。
【0028】
本発明に係るポリエステルに共重合されたジエチレングリコール成分の前記ポリエステルを構成する全グリコール成分に対する割合(以下、「DEG含有量」ということがある)は、1.0〜3.0モル%、好ましくは1.1〜2.8モル%、さらに好ましくは1.1〜2.6モル%、もっとも好ましくは1.1〜2.0モル%の範囲であることが望ましい。DEG含有量が1.0モル%未満の場合は、得られる基材シートと後記する導電性コート層またはアンカーコート層との接着性が弱くなり、キャリヤーテープ製造時に剥がれたりすることがあり問題であり、またポリエステルの生産面では非常に生産性が悪い条件で生産をすることが必要となり、現実的でない。また、DEG含有量が3.0モル%を超える場合は、アンカーコート層や導電層をコートする際に基材シート表面に溶剤によるクレージングが発生し易くなり、このため導電性ポリエステルシートの引張衝撃強度特性が低下したり、またキャリアーテープなどの成形時に割れが発生したりして問題となることがある。
【0029】
本発明に係るポリエステルのDEG含有量を調節する製造方法について説明する。主たるグリコールとしてエチレングリコールを用いてポリエステルを製造する場合は、エステル化時にDEG生成抑制剤を適量用いる方法や共重合成分として所定量のジエチレングリコールを反応系に添加して共重合させる方法などの方法を採用することができる。
【0030】
本発明に係るポリエステルのDEG含量を制御するために、エステル化工程に塩基性化合物、たとえば、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン等の第3級アミン、水酸化テトラエチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩等を加えることが出来る。
【0031】
本発明に係るポリエステル組成物は、前記の結晶性ポリエステルから選ばれる少なくとも一種のポリエステルと非晶性ポリエステルとの混合物であることが好ましい。非晶性ポリエステルの添加量は本発明の目的とする導電性ポリエステルシートの特性を損なわない範囲であることが必要である。
【0032】
非晶性熱可塑性ポリエステルとしても、芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の85モル%以上含むポリエステルが好ましく、特に好ましくは、芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の95モル%以上含むポリエステルである。
【0033】
非晶性熱可塑性ポリエステル樹脂に用いられるジカルボン酸成分およびグリコール成分としては、前述したものが同様に用いられるが、芳香族時カルボン酸としてはテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸が好ましい。
【0034】
グリコールとしては炭素数2〜10の脂肪族または脂環族グリコールが共重合されているものが好ましく、さらにはエチレングリコール50〜95モル%に対して、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールの少なくともいずれかが5〜50モル%共重合されたものであることが好ましい。この中でもエチレングリコールとネオペンチルグリコール、エチレングリコールとシクロヘキサンジメタノールの組み合せが好ましい。なお、エチレングリコールの含有量は、55モル%以上、さらには60モル%以上が好ましく、85モル%以下、さらには80モル%以下であることが好ましい。
【0035】
本発明の非晶性ポリエステル樹脂は、上記のテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール以外の他の多価アルコール成分が共重合されていても良いことは言うまでもない。
【0036】
非晶質熱可塑性ポリエステルの含有量は基材シートのポリエステル中1重量%以上であることが好ましく、さらには3重量%以上であることが好ましく、特には5重量%以下であることが好ましい。また、50重量%未満、好ましくは40重量%未満、さらに好ましくは30重量%未満である。
【0037】
非晶質熱可塑性ポリエステルの極限粘度は0.4デシリットル/グラム以上であることが好ましく、さらには0.5デシリットル/グラム以上、また、2.0デシリットル/グラム以下、さらには1.5デシリットル/グラム以下であることが好ましい。
【0038】
また本発明に係るポリエステル組成物には、さらにポリエステル・ポリエーテルエラストマーやポリエステル・ポリエステルエラストマーなどの熱可塑性ポリエステルエラストマーを本発明の目的とする特性を損なわない範囲で添加することができる。
【0039】
また本発明に係るポリエステル組成物には、公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、酸素吸収剤、酸素捕獲剤、外部より添加する滑剤や反応中に内部析出させた滑剤、離型剤、核剤、安定剤、帯電防止剤、顔料などの各種の添加剤を本発明の目的とする特性を損なわない範囲で適宜添加することができる。
【0040】
基材シートの製造方法については特に限定しないが、単軸押出機や二軸押出機によるTダイ押出法により前記ポリエステル組成物を溶融し、ダイスから押出して所定の幅、厚さの未延伸シートとして得ることが出来る。
【0041】
本発明に係るポリエステル基材シートの極限粘度は、0.60デシリットル/グラム以上が好ましく、より好ましくは0.65デシリットル/グラム以上、さらに好ましくは0.70デシリットル/グラム以上、最も好ましくは0.75デシリットル/グラム以上である。得られた基材シートの極限粘度が0.60デシリットル/グラム未満の場合は、引張衝撃強度が30KJ/m2に達しない場合がある。
【0042】
また得られたポリエステル基材シートのDEG含有量は、1.0〜3.0モル%、好ましくは1.1〜2.8モル%、さらに好ましくは1.1〜2.6モル%、もっとも好ましくは1.1〜2.0モル%の範囲であることが望ましい。前記したとうり、DEG含有量が1.0モル%未満の場合は、得られる基材シートと後記する導電性コート層またはアンカーコート層との接着性が弱くなり、キャリヤーテープ製造時に剥がれたりすることがある。また、DEG含有量が3.0モル%を超える場合は、アンカーコート層や導電層をコートする際に基材シート表面に溶剤によるクレージングが発生し易くなり、このため導電性ポリエステルシートの引張衝撃強度特性が低下したり、またキャリアーテープなどの成形時に割れが発生したりして問題となる場合がある。
【0043】
また本名発明に係るポリエステル基材シートは、前記ポリエステル組成物からなる単層シートであっても二種以上のポリエステルを積層した多層シートであってもよい。多層シートの場合は、いずれの構成する層においてもその極限粘度0.60デシリットル/グラム以上であることが望ましい。
【0044】
本発明に係るポリエステル基材シートの引張衝撃強度は、30KJ/m2以上、好ましくは33KJ/m2以上、さらに好ましくは35KJ/m2以上、もっとも好ましくは40KJ/m2以上である。
【0045】
基材シートの厚さは、使用目的によっても異なるが一般に0.1〜1.5mmの範囲である。
ポリエステルの基材シートの引張衝撃強度を30KJ/m2にする方法としては、ポリエステル基材シートの極限粘度を0.60デシリットル/グラム以上にすること、非晶質熱可塑性ポリエステル等をブレンドすること等を適宜用いる。
【0046】
ポリエステル基材シートの引張衝撃強度が30KJ/m2未満の場合は、導電層を塗布した後の耐衝撃性が低くなり、キャリアテープなどの加工時に割れが発生する場合がある。
【0047】
通常、ポリエステルの基材シートに導電層を塗布する際は有機溶媒を用いるが、この有機溶媒により基材の表面にクラックが入ったりして、耐衝撃性が低下するが、この低下を見越して、基材としては高い耐衝撃性を確保する必要がある。
【0048】
本発明に係るポリエステル組成物よりなる基材シートの少なくとも片面には、カーボンブラックを含む導電性組成物からなるコート剤がコーティングされる。前記ポリエステル基材シートと導電性組成物層との間に充分な密着強度が得られない場合は、基材シート塗布面にコロナ処理を行ったり、別のアンカーコート剤でプライマー処理等を行っても差し支えない。また、導電性ポリエステルシートの保護、電子部品用包装容器を製造する際などでの導電性シートの滑り性の向上、あるいはブロッキング防止などのために前記導電性組成物からなる層の上にトップコート層を設けることが好ましい。
【0049】
本発明において用いられる導電性コート剤は、樹脂、カーボンブラックを主成分とする導電性物質、分散剤、有機溶剤などを主成分として含有する。
【0050】
樹脂としては、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エポキシ系樹脂等が用いられ用いられ、公知の硬化剤あるいは促進剤を併用することもできる。
【0051】
導電性カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、フラーレンなどが挙げられる。特に好ましいカーボンブラックとしては、ライオン社製ケッチェンブラックEC、キャボット社製バルカンXC−72、電気化学工業社デンカブラックなどが挙げられ、その他、ナフサなどの炭化水素を水素及び酸素の存在下で部分酸化して、水素及び一酸化炭素を含む合成ガスを製造する際に副生するカーボンブラック、あるいはこれを酸化または還元処理したカーボンブラックなどが好ましい。
導電性カーボンブラックの平均粒子径が0.08mm未満のものが好ましく使用される。
【0052】
またアルカリ金属化合物を添加することで、さらに電気特性を向上させることができる。特に好ましいアルカリ金属化合物としては、リチウム化合物であり、例えばLiCl、LiBr、Lil、LiSCN、LiBF4 、LiAsF6 、LiClO4 、LiCF3SO3 、LiC6 F12SO3 、LiHgl2 、LiAlH4 、LiBH4 、Li2 CO3などの無機化合物のほか、カルボキシル基、フェノール基、スルホン酸基、リン酸基、亜リン酸基などの酸基を有する有機化合物のリチウム塩を用いることができ、これらの例としてラウリル酸リチウム、ステアリン酸リチウム、ロジン酸リチウムなどが挙げられる。これらのリチウム化合物のうち、好ましくはLiClである。リチウム化合物の配合量は、リチウム原子換算で10〜50,000ppm、好ましくは50〜10,000ppm、さらに好ましくは100〜1,000ppmである。
【0053】
副次的に用いられる導電性物質としては、白艶華、酸化錫で被覆した酸化チタン粒子、ニッケル、銅、ステンレス、アルミ、酸化スズ、亜鉛、銀、金属コートガラス粉または金属コートガラスビーズ、酸化亜鉛ウィスカー、金属コート酸化亜鉛ウィスカーなどの導電性化合物などが用いられる。
【0054】
本発明に用いられるカーボンブラック用の分散剤としては、カルボン酸アマイド系が用いられるが、その中でも下記一般式(1)で示されるテトラアミド化合物を含有するカルボン酸アマイド系が好ましく、テトラアミド化合物を少なくとも10重量%以上含有するカルボン酸アマイド系がより好ましい。
R4−CONH−R2−HNOC−R1−CONH−R3−HNOC−R5 (1)
(上記一般式(1)において、R1 は二価の有機基、R2 およびR3 はそれぞれ同じかまたは異なる二価の有機基、R4 およびR5 はそれぞれ同じかまたは異なる一価の有機基で表されるテトラアミド化合物である。)
【0055】
上記一般式(1)で表されるテトラアミド化合物としては、例えばエチレンジアミン−ステアリン酸−セバシン酸重縮合物、エチレンジアミン−ステアリン酸−アジピン酸重縮合物及びメタキシレンジアミン−ステアリン酸−セバシン酸重縮合物等が挙げられる。本発明に用いられるカルボン酸アマイド中には、下記一般式(2)で示される化合物を含んでいてもよい。
R7−CONH−R6−HNOC−R8 (2)
(上記一般式(2)において、R6 は二価の有機基、R7 およびR8 はそれぞれ同じかまたは異なる一価の有機基で表されるジアミド化合物である。)
【0056】
上記一般式(2)で表されるジアミド化合物としては、例えばエチレン−ビス−ステアリン酸アミド、エチレン−ビス−パルミチン酸アミド及びエチレン−ビス−オレイン酸アミド等が挙げられる。
【0057】
また有機溶剤としては、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
【0058】
各主成分の含有量は樹脂分が1〜50重量%、カーボンブラックが1〜15重量%、及び溶剤が35〜90重量%の範囲であることが好ましい。
【0059】
導電性コート剤は、後記する方法によって基材シート、または基材シート上のアンカーコート層の上にコートされるが、表面抵抗値が1×106Ω以下のような高導電性を要求される場合には、導電性コート層の上にさらに少なくとも一層の導電性組成物をコートすることが好ましい。この場合、一層目と二層目の導電性コート剤の組成は、同じであってもまた異なっていてもよい。
導電性組成物からなるコート層の厚みは、0.5〜30μmである。
【0060】
また、本名発明において用いられるアンカーコート剤は、前述のように、基材シートへの導電性コート剤の密着性向上と導電性コート剤中の有機溶剤から保護するために、基材シートの表面に最初に施しておくことが好ましい。
アンカーコート剤としては、樹脂、硬化剤、カーボンブラックを主成分とする導電性物質、分散剤、有機溶剤などを主成分として含有する。
【0061】
樹脂としては、基材シートとの接着力が大きく、キャリヤテープの熱成形時に基材シートと共に延伸されるため、延伸性のある樹脂から選択するのが好ましいく、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等が用いられる。この中でも、ポリエーテル系樹脂、ポリエーテルウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂と硬化剤からなるコート剤が用いられる。必要によりそれぞれ単独、または併用して使用することができる。
【0062】
導電性カーボンブラックとしては、前記と同じものを用いることができる。
また分散剤としては、前記と同じものを用いることができる。
また有機溶剤としては、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
各主成分の含有量は樹脂分が1〜50重量%、カーボンブラックが1〜15重量%、及び溶剤が35〜90重量%の範囲であることが好ましい。
【0063】
本発明の導電性ポリエステルシートにおいては、アンカーコート剤としては、樹脂、硬化剤を主剤とし、カーボンブラックを含有するコート剤が最適である。
【0064】
本発明の硬化剤としては、アルキルエーテル化アミノホルムアルデヒド樹脂、エポキシ化合物およびイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0065】
アルキルエーテル化アミノホルムアルデヒド樹脂とは、たとえばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどの炭素原子数1〜4のアルコールによってアルキルエーテル化されたホルムアルデヒドあるいはパラホルムアルデヒドなどと尿素、N,N−エチレン尿素、ジシアンジアミド、アミノトリアジン等との縮合生成物であり、メトキシ化メチロール−N,N−エチレン尿素、メトキシ化メチロールジシアンジアミド、メトキシ化メチロールベンゾグアナミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミン、メトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミン、メトキシ化/ブトキシ化混合型メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミンなどが挙げられるが、加工性の面から好ましいのは、メトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミン、またはメトキシ化/ブトキシ化混合型メチロールメラミンであり、それぞれ単独、または併用して使用することができる。
【0066】
エポキシ化合物としてはビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1、4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1、6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルおよびポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1、4−ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0067】
さらにイソシアネート化合物としては芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネートがあり、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよい。たとえば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートあるいはこれらのイソシアネート化合物の3量体、およびこれらのイソシアネート化合物の過剰量と、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの低分子活性水素化合物または各種ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などとを反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物が挙げられる。
【0068】
イソシアネート化合物としてはブロック化イソシアネートであってもよい。イソシアネートブロック化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなそのオキシム類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレンクロルヒドリン、1、3−ジクロロ−2−プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類、t−ブタノール、t−ペンタノール、などの第3級アルコール類、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピロラクタムなどのラクタム類が挙げられ、その他にも芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール化合物類重亜硫酸ソーダなども挙げられる。ブロック化イソシアネートは上記イソシアネート化合物とイソシアネートブロック化剤とを従来公知の適宜の方法より付加反応させて得られる。
【0069】
これらの硬化剤には、その種類に応じて選択された公知の硬化剤あるいは促進剤を併用することもできる。
【0070】
アンカーコート層の厚みは、通常、0.01〜10μmとする。
また本発明においては、導電性組成物コート層の上にさらにトップコート層を形成しておくことが好ましい。
またトップコート層は、樹脂、無機粒子や不活性粒子、ワックスおよび有機溶剤からなるトップコート剤をなど導電性コート層の上に塗布する。
【0071】
樹脂としては、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エポキシ系樹脂等が用いられ、必要により公知の硬化剤あるいは促進剤を併用することもできる。
【0072】
無機粒子としては、酸化ケイ素、タルク、マイカ、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等、また不活性粒子粒子としては、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のビニル系モノマーの単独または共重合体等の架橋高分子粒子等などが挙げられる。
【0073】
ワックスとしては、天然ワックスや炭化水素系ワックスが用いられる。天然ワックスとしては、ラノリン等の動物性ワックス、ひまし油水添ワックス等の植物性ワッスクス、モンタンロウ等の鉱物性ワックスが挙げられる。
また炭化水素系ワックスとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどが挙げられる。
【0074】
有機溶剤としては、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
【0075】
各主成分の含有量は樹脂分が1〜50重量%、粒子分やワックス分が0.1〜10重量%及び溶剤が35〜90重量%の範囲であることが好ましい。
【0076】
本発明の導電性ポリエステルシートにおいては、トップコート剤としてはアクリル系樹脂を主剤とするコート剤が最も好ましく、必要により公知の硬化剤あるいは促進剤を併用することもできる。
アクリル系樹脂の具体例としては、たとえば、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジグリシジルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸などから選ばれた少なくとも一種からなるアクリル系樹脂、あるいは、これらの単量体と、スチレン、ビニルトルエン、1−メチルスチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビリニデン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、酢酸アリル、アジピン酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、マレイン酸ジエチル、、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エチレン、プロピレン、イソプレン、二重結合含有ポリエステル樹脂等から選ばれる少なくとも1種以上のエチレン性不飽和単量体との共重合体などが挙げられる。
これらの樹脂は、アミノ基、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の官能基を含有、変性しても良い。
【0077】
これらの(メタ)アクリル酸エステル単位を含有するアクリルは、水酸基は水酸基含有不飽和単量体を共重合して(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に導入できる。水酸基含有不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アリルアルコール、ホモアリルアルコール、ケイヒアルコール、クロトニルアルコール等の水酸基含有不飽和単量体、たとえば、エチレングリコール、エチレンオキサイド、プロピレングリコール、プロピレンオキサイド、ブチレングリコール、ブチレンオキサイド、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルデカノエート、プラクセルFM−1(ダイセル化学工業株式会社製)等の2価アルコールまたはエポキシ化合物と、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸との反応で得られる水酸基含有不飽和単量体等を挙げることができる。これらの水酸基含有不飽和単量体から選ばれる少なくとも1種以上を重合して水酸基含有有機樹脂を製造することができる。
【0078】
また、前記の各種コート剤には、前記の主成分以外に、導電性シートの成形性、ブロッキング性、導電性に影響を及ぼさない範囲で、1種以上の添加剤を適宜混合してもよい。使用する添加剤としては、特に制限はなく、たとえば、一般に使用される各種レベリング剤、染料、顔料、顔料分散剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、粘性改質剤、耐光安定剤、金属不活性化剤、過酸化物分解剤、充填剤、補強剤、可塑剤、潤滑剤、防食剤、防錆剤、乳化剤、鋳型脱色剤、蛍光性増白剤、有機防炎剤、無機防炎剤、滴下防止剤、溶融流改質剤、静電防止剤などを挙げることができる。
トップコート層の厚みは、0.01〜10μmであることが好ましい。
【0079】
これらのアンカーコート剤、導電性コート剤およびトップコート剤の基材シートへの塗布方法としては、従来公知の浸漬法、スプレ−法、グラビヤコート法、ロールコート法等で実施すればよいが、良好な導電性及び均一なコート層膜厚を得るためには、グラビヤコート法を用いることが望ましい。
【0080】
前記のようにして得られた導電性ポリエステルシートの導電性組成物コート層側の表面抵抗値は、1×107Ω未満、好ましくは1×106Ω未満、さらに好ましくは1×105Ω未満である。また表面抵抗値の下限値は1×102Ωであり、これ未満の場合は電気を通してしまい問題であることがある。
【0081】
また導電性ポリエステルシートからなるキャリアテープは、比較的高価な電子部品を入れることが多いためにその部品の状態を監視するために画像処理をすることが多い。画像処理を行う場合にキャリアテープ表面に光沢があると光の反射により画像処理にエラーが出やすい。したがって、導電性コート層側の表面光沢度は40%以下、好ましくは30%以下であることが望ましい。表面光沢度を40%以下にする方法としては、マット加工する方法や粒子状物含有導電性コート剤を最表面層にコートする方法などが挙げられる。
【0082】
本発明の導電性ポリエステルシートは、LSI、コンデンサー等の電子部品を収納運搬及び実装工程を補助するために使用されるキャリヤテープやトレー等の電子部品用包装容器に用いられる。
【0083】
本発明の導電性ポリエステルシートを用いた電子部品包装用キャリアテープの作製方法としては特に限定しないが、従来よりキャリアテープの成形方法として用いられている真空成形法、圧空成形法、プレス成形法等により作製される。また、該キャリアテープを用いて電子部品を包装した包装体の作製方法も特に限定しないが、テーピングマシンによりキャリアテープの成形ポケット部分に電子部品を挿入し、カバーテープでシールすることにより作製される。
【0084】
【実施例】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定させるものではない。なお、本明細書中における主な特性値の測定法を以下に説明する。
【0085】
(1)ポリエステルの極限粘度(IV)
1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノ−ル(2:3重量比)混合溶媒中30℃での溶液粘度から求めた。
【0086】
(2)ポリエステルのジエチレングリコ−ル含有量(以下[DEG含有量]という)
メタノ−ルにより分解し、ガスクロマトグラフィ−によりDEG量を定量し、全グリコ−ル成分に対する割合(モル%)で表した。
【0087】
(3)シートの引張衝撃強度
ASTM−D−1822の方法によって測定する。
【0088】
(4)表面抵抗値
JIS K6911の方法にしたがって、20±2℃、65±5%RHの雰囲気下で測定する。
測定器は、三菱化学(株)のハイレスタMCP−HT450。
【0089】
(5)ポリエステル基材シートの製膜
脱湿空気を用いた乾燥機で乾燥したPETをベント式単軸シート製膜機で樹脂温度290℃で溶融押出し、厚さ0.3mm、幅640mmの単層PETシートを得た。
非晶性熱可塑性ポリエステルを混合使用する場合は、同様にして乾燥したあと、前記のPETに所定量混合し、ほぼ同様にして製膜した。
【0090】
(6)コート法
先ず、グラビア印刷機(中島精器エンジニアリング製 GX−II型)を用いて、下記アンカーコート剤を基材シートに印刷し、約80℃で加熱処理してアンカーコート層を形成する。
次いで、印刷版としてグラビアダイレクトべた版(線画部;1インチ当たり175線、セルの深さ35μm)を使用し、グラビア印刷機(中島精器エンジニアリング製 GX−II型)を用いて、下記の導電性コート剤を版上で回転させ、コート剤バット中の溶剤を飛散させながらコート剤粘度を上げ印刷時にスクリーン目が出る状態を探し、印刷速度70m/分で上記基材シート上にべた印刷した。このときの導電性コート剤の粘度はザーンカップ法(3号)で27秒であった。次いで、導電性コート剤の印刷層を80℃で熱硬化し、第1層目の導電性コート剤層を形成した。この第1層上に位相をずらして、同様にして第2層目をそれぞれ行った。このとき、第2層目印刷時の導電性コート剤の粘度は23秒であった。
【0091】
次いで、第2層目の積層を終えた導電性コート層上に、下記のトップコート剤を上記の導電性コート剤の場合と同様のグラビア印刷法により印刷し、トップコート層を形成させて、本発明の導電性ポリエステルシートを得た。
アンカーコート剤:大阪インキ製造製のOYT−UDA黒
導電性コート剤: 大阪インキ製造製の導電性コート剤、OYT−EC
トップコート剤:大阪インキ製造製のトップコート剤OYT−MTメジウムB
【0092】
(実施例1)
極限粘度1.00デシリットル/グラム、DEG含有量1.2モル%のPETを用いた基材シートを前記(6)記載の方法で処理し、導電性シートを得た。表1に記載したように、基材シートの極限粘度は0.85デシリットル/グラム、DEG含有量は1.2モル%、引張衝撃強度は35KJ/m2と高く、コート処理後の導電性シートの表面抵抗値は1×104Ωと問題なかった。
本実施例の導電性ポリエステルシートを用いて、キャリアテープ用成形機で圧空成形によりキャリアテープを作製したが、特に問題はなく良好なキャリアテープが得られた。さらに得られたキャリアテープを用いて、テーピングマシンにより、成形ポケット部に電子部品としてICを挿入してカバーテープでシールしたところ、特に問題はなく電子部品用容器を作製できた。
【0093】
(実施例2)
極限粘度1.00デシリットル/グラム、DEG含有量1.8モル%のPETを用いた基材シートを前記(6)記載の方法で処理し、導電性シートを得た。表1に記載したように、基材シートの極限粘度は0.84デシリットル/グラム、DEG含有量は1.8モル%、引張衝撃強度は38KJ/m2と高く、コート処理後の導電性シートの表面抵抗値は1×104Ωと問題なかった。
本実施例の導電性ポリエステルシートを用いて、キャリアテープ用成形機で圧空成形によりキャリアテープを作製したが、特に問題はなく良好なキャリアテープが得られた。
【0094】
(実施例3)
極限粘度1.00デシリットル/グラム、DEG含有量1.5モル%のPET100重量部と極限粘度0.72デシリットル/グラムのテレフタル酸とエチレングリコ−ルおよびネオペンチルグリコール(NPGと称する)からの共重合ポリエステル(共重合したNPG含有量=30モル%)8重量部を用いて、実施例1と同様にし製膜し基材シートを得た。
実施例1と同様にしてコート処理し、導電性シートを得た。表1に記載したように、基材シートの極限粘度は0.84デシリットル/グラム、DEG含有量は1.5モル%、引張衝撃強度は45KJ/m2と高く、コート処理後の導電性シートの表面抵抗値は1×104Ωと問題なかった。
本実施例の導電性ポリエステルシートを用いて、キャリアテープ用成形機で圧空成形によりキャリアテープを作製したが、特に問題はなく良好なキャリアテープが得られた。
【0095】
(比較例1)
極限粘度0.60デシリットル/グラム、DEG含有量5.5モル%のPETを用いた基材シートを前記(6)記載の方法で処理し、導電性シートを得た。表1に記載したように、コート処理後の導電性シートの表面抵抗値は1×104Ωと問題なかったが、基材シートの極限粘度は0.57デシリットル/グラム、DEG含有量は5.5モル%、引張衝撃強度は15KJ/m2と低かった。
本導電性ポリエステルシートを用いて、実施例1と同様の方法でキャリアーテープを作成したが、割れが生じて製品としての歩留まりが非常に悪く問題であった。
【0096】
(比較例2)
極限粘度0.60デシリットル/グラム、DEG含有量7.0モル%のPETを用いた基材シートを前記(6)記載の方法で処理し、導電性シートを得た。表1に記載したように、コート処理後の導電性シートの表面抵抗値は1×104Ωと問題なかったが、基材シートの極限粘度は0.57デシリットル/グラム、DEG含有量は7.0モル%、引張衝撃強度は13KJ/m2と低かった。
本導電性ポリエステルシートを用いて、実施例1と同様の方法でキャリアーテープを作成したが、割れが生じて製品としての歩留まりが非常に悪く問題であった。
【0097】
【表1】
【0098】
【発明の効果】
本発明による導電性ポリエステルシートは、カーボンブラックを練り込むことによって生ずる耐折強度、衝撃強度などの機械的強度の低下がなく、内容物である電子部品の保護のために十分な導電性性能と十分な機械的強度を有し、しかも低コストの導電性ポリエステルシートとして最適である。
Claims (8)
- ポリエステル組成物からなる基材シートの少なくとも片面に、カーボンブラックを含有する導電性組成物からなるコート層を設けた導電性ポリエステルシートであって、前記ポリエステル基材シートが共重合されたジエチレングリコール成分を前記ポリエステルを構成する全グリコール成分に対して1.0〜3.0モル%含有し、導電性組成物コート層側の表面抵抗値が1×107Ω未満であることを特徴とする導電性ポリエステルシート。
- 前記ポリエステルが、主として芳香族ジカルボン酸成分とグリコール成分とからなることを特徴とする請求項1に記載の導電性ポリエステルシート。
- 前記ポリエステルが、エチレンテレフタレートを主繰返し単位とするポリエステルであることを特徴とする請求項2に記載の導電性ポリエステルシート。
- 前記基材シートの少なくとも片面に導電性コート層を少なくとも一層以上形成してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ポリエステルシート。
- 前記基材シートの少なくとも片面にアンカーコート層を形成させ、その上に導電性コート層を少なくとも一層以上形成してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の導電性ポリエステルシート。
- 前記導電性コート層上に、トップコート層を形成してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の導電性ポリエステルシート。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の導電性ポリエステルシートを用いてなることを特徴とする電子部品用包装容器。
- 前記電子部品用包装容器が、エンボスキャリヤーテープであることを特徴とする請求項7に記載の電子部品用包装容器。
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