本発明において、可撓性フィルムは、プラスチックフィルムであって、回路パターン製造工程および電子部品実装での熱プロセスに耐えるだけの耐熱性を備えていることが重要であり、例えば、ポリカーボネート、ポリエーテルサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミド、液晶ポリマーなどのフィルムを採用することができる。中でもポリイミドフィルムは、耐熱性に優れるとともに耐薬品性にも優れているので好適に採用される。また、低誘電損失など電気的特性が優れている点で、液晶ポリマーが好適に採用される。また、可撓性のガラス繊維補強樹脂板を採用することも可能である。
可撓性フィルムの厚さは、電子機器の軽量化、小型化、あるいは微細なビアホール形成のためには薄い方が好ましく、一方、機械的強度を確保するためや平坦性を維持するためには厚い方が好ましい点から、4μmから125μmの範囲が好ましい。
可撓性フィルムには、第1の補強板との貼り付けに先立って、片面もしくは両面に金属層が形成されていても良い。金属層は、銅箔などの金属箔を接着剤層で貼り付けて形成することができる他、スパッタやめっき、あるいはこれらの組合せで形成することができる。また、銅などの金属箔の上に、可撓性フィルムの原料樹脂あるいはその前駆体を塗布、乾燥、キュアすることで、金属層付き可撓性フィルムを作り、これを利用することもできる。金属層としては、導電性が高いものであれば良く、例えば、金、銀、銅、アルミニウムなどを用いることができる。
本発明の態様の一つとして、補強板との貼り合わせに先立って、可撓性フィルムの補強板との貼り合わせ面とは反対側の面に厚さが40nm以上400nm以下の範囲の金属層を形成し、これを剥離可能な有機物層を介して補強板と貼り合わせ、次いで該金属層を給電層としてセミアディティブ法にて回路パターンを形成する製造方法がある。可撓性フィルム上に厚さが40nm以上400nm以下の範囲の金属層を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法などの真空薄膜形成方法や無電解めっき法などの湿式薄膜形成方法を採用することができるが、該金属層は比較的薄いため、真空薄膜形成方法によって長尺の可撓性フィルム上に連続的に形成することができる。すなわち、フィルムの可撓性を利用して、ロール状に巻かれた長尺のフィルムを巻き出し、フィルム搬送用のロール間を通過して成膜ゾーンに至り金属層が形成される。さらにフィルム搬送用のロール間を通過してロール状に巻き上げられる。シート状の基体を間欠的に送りながら、この基体上に金属層を形成する装置に比べて、無駄な時間がなく生産性に優れるとともに送り機構が簡略であるために設備が小型で低コスト化できるメリットがある。また、基体投入用のロボットも不要である。該金属層が厚い場合は、真空薄膜形成方法によって長尺の可撓性フィルムを搬送しつつ金属層を形成する際に受ける熱によって可撓性フィルムが大きく昇温して可撓性フィルムが熱収縮を生じ、耐熱性が高いポリイミドフィルムと言えども平坦性を損なうことが多いのである。真空薄膜形成方法には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの手法があり、湿式薄膜形成方法に比べて可撓性フィルムと金属層との密着性を高くすることができ好ましいが、中でもスパッタリング法は可撓性フィルムと金属層との密着性を高くすることができ特に好ましい。一方、真空薄膜形成方法は得られる金属層の内部応力が湿式薄膜形成方法に比べて大きい傾向がある。したがって、金属層の厚みが400nmを超えると金属層の内部応力が可撓性フィルムを変形させ補強板に貼り合わせる前に可撓性フィルムが歪み、セミアディティブ法で回路パターン形成後、可撓性フィルムを補強板から剥離した際に、金属膜がエッチング除去された部分の応力が開放されて、回路パターンの位置精度を劣化させる原因となる。また、金属層の高弾性率のために可撓性フィルムの湿度や温度による膨張、収縮を抑制し、可撓性フィルムの補強板への貼り合わせの際に、可撓性フィルムに応力を内在させやすく、補強板から可撓性フィルムを剥離した時、回路パターンの位置精度を劣化させる原因となる。金属層の厚みは、300nm以下であることがさらに好ましい。一方、セミアディティブ法の給電層として充分な導電性を確保するために、金属層の厚みは40nm以上であることが重要であり、80nm以上であることがさらに好ましい。すなわち、セミアディティブ法においては、基板の一端もしくは周縁部から該金属層に給電されるが、該金属層の導電性が不充分であると、抵抗による電圧降下が顕著になり、給電部から離れたところのめっき析出速度が大きく低下して、基板面内のめっき膜厚みの均一性が不良になる。めっき厚みが特に小さい部分で回路として必要な膜厚を得ようとすると、給電部に近い部分では、フォトレジスト上にめっき膜が乗り上げ、回路パターン欠陥を発生する恐れがある。
比較的薄い金属層が可撓性フィルム上に形成されていることにより剛性が増加して可撓性フィルムの平坦性が改良され補強板への貼り合わせが容易になる他、貼り合わせ時の応力による変形が抑制されて、高精度の貼り合わせにおいて好ましい。
本発明において第1の補強板として用いられる素材としては、例えば、ソーダライムガラス、ホウケイ酸系ガラス、石英ガラスなどの無機ガラス類、アルミナ、窒化シリコン、ジルコニアなどのセラミックス、ステンレススチール、インバー合金、チタンなどの金属やガラス繊維補強樹脂などが採用できる。いずれも線膨張係数や吸湿膨張係数が小さい点で好ましいが、回路パターン製造工程における耐熱性や耐薬品性に優れている点、大面積で表面平滑性が高い基板が安価に入手しやすい点、塑性変形しにくい点、あるいは運搬時等における接触の際、パーティクルを発生しにくいなどの点で無機ガラス類が好ましい。中でもアルミノホウケイ酸塩ガラスに代表されるホウケイ酸系ガラスは、高弾性率でかつ熱膨張係数が小さいため特に好ましい。
第1の補強板の形状は特に限定されず、例えば、長尺板等を使用することができる。
金属やガラス繊維補強樹脂を第1の補強板に採用する場合は、長尺連続体での製造もできるが、位置精度を確保しやすい点で、本発明の回路基板の製造方法は枚葉式で行うことが好ましい。また、電子部品実装においても、位置合わせの方が光学的位置検知と可動ステージ等により位置精度を確保しやすい点で枚葉式の方が好ましい。つまり、第1の補強板および/または第2の補強板が枚葉板であることが好ましいのである。枚葉とは、長尺連続体でなく、個別のシート状でハンドリングされる状態を言う。
第1の補強板にガラス基板を用いる場合、ガラス基板のヤング率が小さかったり、厚みが小さいと可撓性フィルムの膨張・収縮力で反りやねじれが大きくなり、平坦なステージ上に真空吸着したときにガラス基板が割れることがある。また、真空吸着・脱着で可撓性フィルムが変形することになり位置精度の確保が難しくなる傾向がある。一方、ガラス基板が厚いと、肉厚ムラにより平坦性が悪くなることがあり、露光精度が悪くなる傾向がある。また、ロボット等によるハンドリングに負荷が大きくなり素早い取り回しが難しくなって生産性が低下する要因になる他、運搬コストも増大する傾向がある。これらの点から、枚葉板(枚葉式で用いる場合)として用いるガラス基板は、ヤング率(kg/mm2)と厚さ(mm)の3乗の積が、850kg・mm以上860000kg・mm以下の範囲を満たすことが好ましく、1500kg・mm以上190000kg・mm以下が更に好ましく、2400kg・mm以上110000kg・mm以下の範囲が特に好ましい。
第1の補強板に金属基板を用いる場合、金属基板のヤング率が小さかったり、厚みが小さいと可撓性フィルムの膨張・収縮力で反りやねじれが大きくなり、平坦なステージ上に真空吸着できなくなったり、金属基板の反りやねじれ分、可撓性フィルムが変形することにより、位置精度の確保が難しくなる。また、折れがあるとその時点で不良品になる。一方、金属基板が厚いと、肉厚ムラにより平坦性が悪くなることがあり、露光精度が悪くなる。また、ロボット等によるハンドリングに負荷が大きくなり素早い取り回しが難しくなって生産性が低下する要因になる他、運搬コストも増大する。したがって、枚葉板として用いる金属基板は、ヤング率(kg/mm2)と厚さ(mm)の3乗の積が、2kg・mm以上162560kg・mm以下の範囲を満たすことが好ましく、10kg・mm以上30000kg・mm以下であることが更に好ましく、15kg・mm以上20500kg・mm以下の範囲であることが特に好ましい。
本発明に用いられる剥離可能な有機物層は接着剤または粘着剤からなり、可撓性フィルムを有機物層を介して第1の補強板に貼り付けて加工後、可撓性フィルムを剥離しうるものであれば特に限定されない。このような接着剤または粘着剤としては、例えば、アクリル系またはウレタン系の再剥離粘着剤と呼ばれる粘着剤等を挙げることができる。可撓性フィルム加工中は十分な接着力があり、剥離時は容易に剥離でき、可撓性フィルム基板に歪みを生じさせないために、弱粘着から中粘着と呼ばれる領域の粘着力のものが好ましく使用される。
シリコーン樹脂層の中でタック性があるものは本発明において、剥離可能な有機物層として使用することができる。また、タック性があるエポキシ系樹脂層を剥離可能な有機物層として使用することも可能である。
本発明において、剥離力は、剥離可能な有機物層を介して補強板と貼り合わせた1cm幅の可撓性フィルムを剥離するときの180°方向ピール強度で測定される。剥離力を測定するときの剥離速度は300mm/分とする。本発明において剥離力は0.098N/mから98N/mの範囲が好ましい。
本発明において、剥離可能な有機物層として、前述した他、低温領域で接着力、粘着力が減少するもの、紫外線照射で接着力、粘着力が減少するものや加熱処理で接着力、粘着力が減少するものも好適に用いられる。これらの中でも紫外線照射によるものは、接着力、粘着力の変化が大きく、さらに電子部品を高温高圧で接合することに先だって紫外線照射して架橋させておくことで、温度による軟化や圧力による変形を抑えることが可能であるので好ましい。紫外線照射で接着力、粘着力が減少するものの例としては、2液架橋型のアクリル系粘着剤が挙げられる。また、低温領域で接着力、粘着力が減少するものの例としては、結晶状態と非結晶状態間を可逆的に変化するアクリル系粘着剤が挙げられる。
可撓性フィルムを剥離可能な有機物層を介して第1の補強板と貼り合わせ、次いで、可撓性フィルム上に回路パターンを形成する方法は特に限定されず、例えば、以下に記載する方法などを使用することができる。
剥離可能な有機物層や回路パターンを形成するためのフォトレジストを塗布するには、例えば、ウエットコーティング法が用いられる。ウエットコーティング装置としては、スピンコーター、リバースコーター、バーコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ダイコーター、スクリーン印刷、ディップコーター、スプレイコーターなどの種々のものが採用できるが、枚葉の第1の補強板に剥離可能な有機物層を直接塗布したり、枚葉の可撓性フィルム基板上に回路基板形成用のフォトレジストを直接塗布する場合、ダイコーターの採用が好ましい。
ダイコーターは、間欠動作できる定量ポンプ、基板と塗布ヘッドとを相対的に移動させる機構および定量ポンプ、基板、塗布ヘッドを総合的に制御するシステムとを組合せることにより、塗布開始部分と塗布終了部分の膜厚ムラを数mmから数十mmに抑えて枚葉基板に塗布することができる。間欠動作できる定量ポンプの例としては、ギアポンプ、ピストンポンプなどが挙げられる。剥離可能な有機物層は、フォトレジストに比べて一般に粘度が高いため、特にダイコーターの採用が好ましいのである。
枚葉板へのウエットコーティング法としては、スピンコーターが一般的ではあるが、基板の高速回転による遠心力と基板への吸着力とのバランスで厚みをコントロールするため、塗液の使用効率が10%以下と非効率である。また、回転中心は遠心力が加わらないため、用いる塗液の種類において、例えばチクソ性がある塗液や粘度の高い塗液では均一に塗布できないことがある。また、リバースコーター、バーコーター、ブレードコーターは、安定した塗布厚みを得るためには、通常、塗液吐出開始後に数十cmから数m以上の塗布長さが必要であり、枚葉基板へのコーティングへの適用には注意を要する。ロールコーター、スクリーン印刷、ディップコーター、スプレイコーターは、コーティング厚み精度がでにくい点や塗液流動特性に対する許容幅が狭い点、また、ロールコーター、ディップコーター、スプレイコーターは、厚膜が塗布しにくい点でも適用が難しいことがある。
剥離可能な有機物層は、第1の補強板に直接塗布しても良いし、長尺フィルムなどの別の基体に塗布してから第1の補強板に転写しても良い。転写を用いる場合は、塗布膜厚が均一な部分だけを採用することができる長所があるが、工程が増えたり、転写用の別の基体が必要になる短所がある。
また、剥離可能な有機物層を可撓性フィルム側に塗布してから、第1の補強板に貼り合わせることもできる。この場合は、可撓性フィルム剥離時に、有機物層が第1の補強板側に残るように有機物層と第1の補強板表面の粘着力を大きくするための工程、あるいは、剥離後に可撓性フィルム側に残った有機物層を除去する工程が付加されることがあり生産性が低下することがある。
本発明の態様の一つは、補強板と貼り合わせて精度良く加工した回路パターン付き可撓性フィルムを第2の補強板に移し取ってから、電子部品を実装する方法である。
本発明の態様の一つに使用する第2の補強板の素材は特に限定されないが、回路パターン付き可撓性フィルムの平坦性と位置精度を維持できる剛性を備え、また、回路基板を移し取る際に可撓性があることが好ましいので、42アロイ、ステンレススチール、銅などの金属板やガラス−エポキシなどのガラス繊維強化プラスチック板が好ましく採用される。形状としては、回路基板上にICチップを接合する部分に補強板が配置されていないことが重要であり、枠状であることが好ましい。電子部品に対応して枠が複数個あり、これらの枠がつながってはしご状になったものがボンダーに適合しやすくさらに好ましい。第1の補強板上の回路基板をあらかじめ個片に切断しておき、第1の補強板よりも小さい第2の補強板に順次回路基板を移し取ることが好ましい。
第2の補強板に回路パターン付き可撓性フィルムを移し取る方法は特に限定されず、例えば、両面テープなどで第2の補強板に強粘着層を形成しておき、その粘着層を回路基板に押し当ててから、第2の補強板を端部から徐々に第1の補強板から剥がすことで、回路基板が剥離可能な有機物層と回路パターン付き可撓性フィルムの界面で剥がれ、第2の補強板に回路パターン付き可撓性フィルムを移し取ることができる。第1の補強板から回路パターン付き可撓性フィルムを剥がした後、第2の補強板に貼り合わせると、回路基板製造中の応力が解放されて、回路パターンの位置精度が低下するので、回路基板は常に第1の補強板あるいは第2の補強板のいずれか、または両方に固定されていることが好ましい。
また、第2の補強板の厚みは、回路パターン付き可撓性フィルムの寸法精度や平坦性を維持するために、厚い方が良く、一方、補強板から移し取る際は、ある程度撓むことが望ましいので、金属板の場合、0.3から2mmの範囲が好ましい。
第2の補強板としてガラス繊維補強樹脂板を使用する場合、樹脂種としては、エポキシ、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル、マレイミド(共)重合樹脂、ポリアミド、ポリイミドなどが好ましく使用される。
本発明では、第2の補強板に回路パターン付き可撓性フィルムを移し取り、電子部品を該回路パターン上に実装する。ここで、電子部品の実装方法は特に限定されず、公知の方法を使用することができる。
第2の補強板を使用する効果の一部を説明する。すなわち、ICなどの電子部品と回路パターンとの接続方法は、特に多数の接続部を一括で接合する接続方法において、位置精度確保が重要である。このような接続方法としては、回路基板の接続部に形成された錫、金、はんだなどの金属層と電子部品の接続部に形成された金やはんだなどの金属層とを加熱圧着し金属接合させる方法、回路基板の接続部の錫、金、はんだなどの金属層と電子部品の接続部に形成された金やはんだなどの金属層とを圧着しつつ回路基板と電子部品間に配置した異方導電性接着剤または非導電性接着剤を硬化させ、機械的に接合させる方法などが挙げられる。いずれの方法でも接続部分は局所的に140℃から400℃で、1秒から数分間、加熱される。また、接続部分に加えられる圧力はバンプ当たり49.0mNから490.4mNと大きい。高温での加圧で剥離可能な有機物層が変形すると、位置精度が確保できないばかりでなく、配線回路パターンを形成する金属層の変形により、電気接続信頼性が低下することがある。多数の接続部を逐次接続するワイヤーボンド法においても金属接合するために高温での加圧がなされるため、一括接続の場合と同様に、剥離可能な有機物層の変形の可能性がある。これらの変形を防止するために、可撓性フィルム上に回路パターンを形成した後、第1の補強板上に剥離可能な有機物層を残して、可撓性フィルムを第2の補強板に移し取り、次いで電子部品を接合する方法は極めて有効である。
また、ICなどの電子部品を接合した後、可撓性フィルムを補強板から剥離する際、電子部品を搭載していない部分では線剥離である一方、電子部品を搭載した部分は面剥離となって、電子部品の大きさ、形状が剥離方向に比較的長い形状や配置の電子部品であると、剥離力が特に大きくなり、回路パターンに応力がかかり、折れや可撓性フィルム破損等の変形をきたす恐れがある。本発明の態様の一つによれば、電子部品接合前に、位置精度を維持したまま可撓性フィルムを第1の補強板から剥離するので、剥離時の応力による変形の懸念がないのである。
また、可撓性フィルムを使用した回路基板へICを金属接合させる装置として、TABボンダーが普及しており、TABボンダーが利用できることは、実装メーカーにとってメリットが大きい。ICチップと回路パターンを高温高圧で接合する際、フリップチップボンダーと呼ばれる接合装置ではICチップ側から加熱する構造であるが、TABボンダーは、主たる加熱側が、回路パターン側、すなわち可撓性フィルム側である。したがって、可撓性フィルム下に熱容量が大きい補強板を配置すると、接合箇所を充分に昇温させることが難しく、良好な金属接合を得にくい。本発明の態様の一つによると、ICチップ接合位置に補強板が配置されないので、このような懸念がない。
本発明で用いる可撓性フィルムには、第1の補強板との貼り付けに先立って、貼り付け面である一方の面に回路パターンおよび位置合わせマークが形成されていてもよい。位置合わせマークは、第1の補強板が透明である場合は、第1の補強板を通して読みとっても良いし、可撓性フィルムを通して読みとっても良いが、可撓性フィルムの貼り合わせ面とは反対側に金属層が形成されている場合は、金属層のパターンによらず読み取りができることから第1の補強板側からの読み取りが好ましい。この位置合わせマークは、可撓性フィルムを第1の補強板と貼り合わせる際の位置合わせにも利用することができる。位置合わせマークの形状は特に限定されず、露光機などで一般に使用される形状が好適に採用できる。
第1の補強板に貼り付けた後に貼り付け面とは反対面に形成される回路パターンは、60μmピッチ以下の特に高精度なパターンを形成することができるが、第1の補強板との貼り付け面に形成されるパターンは、主にプリント配線板などへの入出力端子およびその周辺の配線や電源と接地電位配線の役割を持たせるものであり、第1の補強板への貼り付け面とは反対面に形成されるパターンほどの高精細を要求されない場合がある。本発明によれば、このような片面に特に高精細なパターンを形成した両面配線を提供することも容易である。両面配線であることのメリットとしては、スルーホールを介しての配線交差ができ、配線設計の自由度が増すこと、太い配線で接地電位を必要な場所の近傍まで伝搬することで高速動作するLSIのノイズ低減ができること、同様に、太い配線で電源電位を必要な場所の近傍まで伝搬することにより、高速スイッチングでも電位の低下を防ぎ、LSIの動作を安定化させること、電磁波シールドとして外部ノイズを遮断することなどがあり、LSIが高速化し、また、多機能化による多ピン化が進むと非常に重要になる。
次に、本発明の電子部品実装回路基板の製造方法の好ましい例を以下に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
厚さ0.7mmのアルミノホウケイ酸塩ガラスにスピンコーター、ブレードコーター、ロールコーター、バーコーター、ダイコーター、スクリーン印刷などで、剥離可能な有機物層である弱粘着性再剥離剤を塗布する。間欠的に送られてくる枚葉基板に均一に塗布するためには、ダイコーターの使用が好ましい。再剥離剤塗布後、加熱乾燥や真空乾燥などにより乾燥する。本態様で剥離可能な有機物層の厚みは特に限定されないが、通常、0.1μmから20μmの厚みで使用される。剥離可能な有機物層上に、ポリエステルフィルム上にシリコーン樹脂層を設けた離型フィルムからなる空気遮断用フィルムを貼り付けて1週間室温で放置する。この期間は、熟成と呼ばれ、剥離可能な有機物層の架橋が進行して、徐々に粘着力が低下する。放置期間や保管温度は、所望の粘着力が得られるように選択される。空気遮断用フィルムを貼り合わせる代わりに、窒素雰囲気中や真空中で保管することもできる。剥離可能な有機物を長尺フィルム基体に塗布、乾燥後、第1の補強板に転写することも可能である。
次に厚さ25μmのポリイミドフィルムを準備する。ガラス基板上の空気遮断用フィルムを剥がして、ポリイミドフィルムをガラス基板に貼り付ける。前述のように、ポリイミドフィルムの片面または両面に金属層があらかじめ形成されていても良い。ポリイミドフィルムの貼り付け面側に金属層を設けておいた場合は、電磁波遮蔽のためのグラウンド層などとして利用することができ、好ましい。ポリイミドフィルムはあらかじめ所定の大きさのカットシートにしておいて貼り付けても良いし、長尺ロールから巻きだしながら、貼り付けと切断をしてもよい。このような貼り付け作業には、ロール式ラミネーターや真空ラミネーターを使用することができる。
ポリイミドフィルムの貼り合わせ面とは反対側の面に金属層が設けられていない場合は、フルアディティブ法やセミアディティブ法で金属層を形成する。
フルアディティブ法は、以下のようなプロセスである。金属層を形成する面にパラジウム、ニッケルやクロムなどの触媒付与処理をし、乾燥する。ここで言う触媒とは、そのままではめっき成長の核としては働かないが、活性化処理をすることでめっき成長の核となるものである。触媒付与処理は、第1の補強板に可撓性フィルムを貼り合わせてから実施しても良いし、貼り合わせ前に、例えば、長尺の可撓性フィルム上で実施しても良い。次いで、フォトレジストをスピンコーター、ブレードコーター、ロールコーター、バーコーター、ダイコーター、スクリーン印刷などで塗布して乾燥する。フォトレジストを所定パターンのフォトマスクを介して露光、現像して、めっき膜が不要な部分にレジスト層を形成する。この後、触媒の活性化処理をしてから、硫酸銅とホルムアルデヒドの組合せからなる無電解めっき液に、ポリイミドフィルムを浸漬し、厚さ2μmから20μmの銅めっき膜を形成して、回路パターンを得る。
セミアディティブ法は、以下のようなプロセスである。金属層を形成する面に、クロム、ニッケル、銅またはこれらの合金をスパッタし、下地層を形成する。下地層の厚みは1nmから100nmの範囲であるが、好ましくは20nm以下である。下地層の上に銅スパッタ膜をさらに40nmから400nm積層することは、後に続く電解めっきのための十分な導通を確保したり、金属層の接着力向上やピンホール欠陥防止に効果がある。下地層形成に先立ち、ポリイミドフィルム表面に接着力向上のために、プラズマ処理、逆スパッタ処理、プライマー層塗布、接着剤層塗布が行われることは適宜許される。中でも、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ポリアミド樹脂系、ポリイミド樹脂系、NBR系などの接着剤層塗布は、接着力改善効果が大きく好ましい。これらの処理や塗布は、第1の補強板貼り付け前に実施されても良いし、第1の補強板貼り付け後に実施されても良い。第1の補強板貼り付け前に長尺のポリイミドフィルムに対してロールツーロールで連続処理されることは、生産性向上が図れ好ましい。また、下地層は、第1の補強板に可撓性フィルムを貼り合わせてから形成しても良いし、貼り合わせ前に、例えば長尺の可撓性フィルム上に形成しても良い。このようにして形成した下地層上にフォトレジストをスピンコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ダイコーター、スクリーン印刷などで塗布して乾燥する。フォトレジストを所定パターンのフォトマスクを介して露光、現像して、めっき膜が不要な部分にレジスト層を形成する。次いで、下地層を電極として電解めっきをおこなう。電解めっき液としては、硫酸銅めっき液、シアン化銅めっき液、ピロ燐酸銅めっき液などが用いられる。厚さ2μmから20μmの銅めっき層を形成後、フォトレジストを剥離し、続いてスライトエッチングにて下地層を除去して、回路パターンを得る。さらに必要に応じて金、ニッケル、錫などのめっきを施す。
また、これら金属配線回路形成において、ポリイミドフィルムに接続孔を設けることができる。すなわち、枚葉基板との貼り合わせ面側に設けた金属層との電気的接続を取るビアホールを設けたり、ボールグリッドアレイのボール設置用の孔を設けたりすることができる。接続孔の設け方としては、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザーなどのレーザー孔開けやケミカルエッチングを採用することができる。レーザーエッチングを採用する場合は、エッチングストッパ層として、ポリイミドフィルムの第1の補強板貼り付け面側に金属層があることが好ましい。ポリイミドフィルムのケミカルエッチング液としては、ヒドラジン、水酸化カリウム水溶液などを採用することができる。また、ケミカルエッチング用マスクとしては、パターニングされたフォトレジストや金属層が採用できる。電気的接続を取る場合は、接続孔形成後、前述の金属層パターン形成と同時にめっき法で孔内面を導体化することが好ましい。電気的接続をとるための接続孔は、直径が15μmから200μmが好ましい。ボール設置用の孔は、直径が50μmから800μmが好ましく、80μmから800μmがより好ましい。
回路パターンを形成したポリイミドフィルムをガラス基板から第2の補強板に移し取る。第2の補強板への移し取りに先立ち、レーザー、高圧水ジェットやカッターなどを用いて、個片または個片の集合体に回路パターン付きポリイミドフィルムを切り分けておくことが好ましい。第2の補強板の形状としては、補強板を構成する枠が複数あり、枠の一つに個片が一つ収納されていることが、回路パターンの位置精度を維持し、また、ICチップの接合装置対応がしやすい点で好ましい。第2の補強板の枠部分に感圧性粘着剤を備えた両面テープを貼り付けておき、回路パターンに位置合わせしつつ第2の補強板を、回路パターンが設けられたポリイミドフィルムに貼り合わせる。第2の補強板の端部を把持し、端部から徐々に第2の補強板を第1の補強板から剥がすことで、剥離可能な有機物層で第1の補強板に固定されていたポリイミドフィルムを第2の補強板に移し取る。
次いで、回路パターン上にICチップ、抵抗やコンデンサなどの電子部品を実装する。本発明で使用できる電子部品搭載装置は、光学的位置検出機能と可動ステージなどの位置合わせ機能を有し、搭載精度を確保できるものであれば、特に限定されないが、可撓性フィルムを使用した回路基板へICを接合させる装置として普及しているTABボンダーが使用できるメリットがある。本発明は、特に接続ピッチが小さく、かつピン数が大きい大規模LSIの実装精度確保に効果が大きい。LSIのパッケージ形態は特に限定されず、ベアチップ、リードフレームタイプ、ボールグリッドアレイタイプのいずれにも適用することができるが、ピン数が多くできるベアチップやボールグリッドアレイタイプへの適用が好ましい。
また、本発明で使用できる電子部品と回路基板との接続方法は特に限定されないが、多数の接続部を一括で接合する接続方法を用いるのが、位置精度確保や生産性の点で好ましい。多数の接続部を一括で接合する接続方法としては、例えば、回路基板の接続部に形成された錫、金、はんだなどの金属層と電子部品の接続部に形成された金やはんだなどの金属層とを加熱圧着し金属接合させる方法、回路基板の接続部の錫、金、はんだなどの金属層と電子部品の接続部に形成された金やはんだなどの金属層とを圧着しつつ回路基板と電子部品間に配置した異方導電性接着剤または非導電性接着剤を硬化させ、機械的に接合させる方法、あるいは、接続部分へパターン印刷されたはんだペースト上に電子部品を仮固定した後、一括リフローで接続する方法などが挙げられる。中でも、本発明は加熱圧着による接続方法に効果が大きい。
第2の補強板に回路基板を貼り付けた状態で、電子部品を実装することで、回路基板製造後、電子デバイス実装までの調温調湿操作や防湿包装は不要にできる。特に可撓性フィルムは、吸湿で不可逆な寸法変化をすることが多く、本発明は、回路基板と電子デバイス接続の精度を確保する上で効果が大きい。電子デバイス接合後、枠状体との貼り合わせ部分を残して、レーザー、高圧水ジェットやカッターなどを用いて回路基板を切り取る。
本発明の電子部品実装基板用部材および電子部品実装回路基板の製造方法の別の態様(セミアディティブ法使用)について好ましい例を以下に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
厚さ1.1mmのソーダライムガラスにダイコーターで、剥離可能な有機物層である弱粘着性再剥離剤を塗布する。再剥離剤塗布後、加熱乾燥や真空乾燥などにより乾燥し、剥離可能な有機物層を得る。補強板に貼り合わされた可撓性フィルム上の回路パターンに電子部品を接合する場合、剥離可能な有機物層の厚みは、電子部品接合時のバンプ沈み込みを抑制し、接合信頼性を確保するために、薄い方が好ましく、一方、加工プロセスに耐える密着性を得るためには厚い方が好ましいため、0.1μmから5μmの範囲であることが好ましい。剥離可能な有機物層上に、ポリエステルフィルム上にシリコーン樹脂層を設けた離型フィルムからなる空気遮断用フィルムを貼り付けて1週間、室温で放置する。
ロールツーロール型スパッタリング装置を用いて、厚さ25μmの長尺のポリイミドフィルムを真空中を搬送しつつ、クロム、ニッケル、銅またはこれらの合金をスパッタし、下地層を形成する。下地層の厚みは1nmから100nmの範囲であるが、好ましくは20nm以下である。下地層の上に給電層として銅などのスパッタ膜をさらに40nmから400nm積層する。本発明では、積層された下地層と給電層とを合わせて金属層と呼び、本発明の態様の一つでは、金属層の厚さが、40nm以上400nm以下の範囲である。下地層形成に先立ち、ポリイミドフィルム表面に接着力向上のために、プラズマ処理、逆スパッタ処理、プライマー層塗布、接着剤層塗布が行われることは適宜許される。中でも、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ポリアミド樹脂系、ポリイミド樹脂系、NBR系などの接着剤層塗布は、接着力改善効果が大きく好ましい。これらの処理や塗布は、長尺のポリイミドフィルムに対してロールツーロールで連続処理される。
金属層が形成された長尺のポリイミドフィルムを金属層が形成された面と反対側の面を貼り合わせ面として、剥離可能な有機物層を設けたガラスに貼り合わせる。ポリイミドフィルムはあらかじめ所定の大きさのカットシートにしておいて貼り付けても良いし、長尺ロールから巻きだしながら、貼り付けと切断をしてもよい。このような貼り付け作業には、ロール式ラミネーターや真空ラミネーターを使用することができる。
金属層上にフォトレジストをダイコーターで塗布して乾燥する。フォトレジストを所定パターンのフォトマスクを介して露光、現像して、めっき膜が不要な部分にレジスト層を形成する。次いで、下地層を電極として電解めっきをおこなう。電解めっき液としては、硫酸銅めっき液、シアン化銅めっき液、ピロ燐酸銅めっき液などが用いられる。厚さ2μmから20μmの銅めっき膜を形成後、フォトレジストを剥離し、続いてスライトエッチングにて下地層を除去して、回路パターンを得る。さらに必要に応じて金、ニッケル、錫などのめっきを施す。さらに必要に応じて金、ニッケル、錫などのめっきを施す。
回路パターン形成後、可撓性フィルムを補強板から剥離し、次いで、電子部品を回路パターンに接続することも可能であるが、寸法精度を特に高く保つために補強板に回路基板を貼り付けた状態で、回路パターン上にICチップ、抵抗やコンデンサなどの電子部品を実装することが好ましい。本発明で使用できる電子部品搭載装置は、光学的位置検出機能と可動ステージなどの位置合わせ機能を有し、搭載精度を確保できるものであれば、特に限定されない。本発明は、特に接続ピッチが小さく、かつピン数が大きい大規模LSIの実装精度確保に効果が大きい。LSIのパッケージ形態は特に限定されず、ベアチップ、リードフレームタイプ、ボールグリッドアレイタイプのいずれにも適用することができるが、ピン数が多くできるベアチップやボールグリッドアレイタイプへの適用が好ましい。
本発明で使用できる電子部品と回路基板との接続方法は特に限定されないが、多数の接続部を一括で接合する接続方法を用いるのが、位置精度確保や生産性の点で好ましい。多数の接続部を一括で接合する接続方法としては、例えば、回路基板の接続部に形成された錫、金、はんだなどの金属層と電子部品の接続部に形成された金やはんだなどの金属層とを加熱圧着し金属接合させる方法、回路基板の接続部の錫、金、はんだなどの金属層と電子部品の接続部に形成された金やはんだなどの金属層とを圧着しつつ回路基板と電子部品間に配置した異方導電性接着剤または非導電性接着剤を硬化させ、機械的に接合させる方法、あるいは、接続部分へパターン印刷されたはんだペースト上に電子部品を仮固定した後、一括リフローで接続する方法などが挙げられる。中でも、本発明は加熱圧着による接続方法に効果が大きい。上述の熱と圧力を利用する接続方法においては、電子部品側から主として加熱する方法、基板側から主として加熱する方法、電子部品側および基板側から同等に加熱する方法があるが、本発明では、補強板の熱容量が大きいことが多いので、電子部品側から主として加熱することが迅速な昇温ができ、タクトタイムの短縮や金属接合に充分な温度を得やすい点で好ましい。タクトタイムを短くするために、通常、電子部品と回路基板を所定の温度に昇温してから両者を接触させる。電子部品側から加熱する場合は、電子部品が加熱により膨張した状態で接合が始まるので、回路基板が保持された真空吸着台などを金属接合温度以下の所定の温度に予め保持しておいて、回路基板上の複数の接続部に順次、電子部品を加熱圧着し接合することが、電子部品と回路基板の線膨張係数差によるずれや歪みを小さくする上で好ましい。補強板の線膨張係数によるが、回路基板および補強板の保持温度としては、金属接合温度から100℃から300℃低い温度が歪み抑制と回路基板、補強板、剥離可能な有機物層の熱ダメージを避ける上で好ましい。超音波などを熱と併用して150℃以下の低温接合を図ることは本発明の高位置精度を得る上で特に好ましい。あるいは、電子部品と回路基板を圧接しつつ接続部分を昇温する方法は、上記の位置精度の課題を解決する点で好ましい。タクトタイムの増加については、マルチヘッド化などで補うことができる。また、電子部品と回路基板を圧接しつつ所定の波長で透明な補強板と可撓性フィルムを通してレーザーなどの光で接続部を直接加熱することは、電子部品と回路基板を高精度に接合することができるとともに電子部品および回路基板の熱ダメージを防止することができ好ましい。補強板に回路基板を貼り付けた状態で、電子部品を実装することで、回路基板製造後、電子デバイス実装までの調温調湿操作や防湿包装は不要にできる。特に可撓性フィルムは、吸湿で不可逆な寸法変化をすることが多く、本発明は、回路基板と電子デバイス接続の精度を確保する上で効果が大きい。電子デバイス接合後、可撓性フィルムを補強板から剥離する。
本発明の製造方法で製造された電子部品実装回路基板は、例えば、電子機器の配線板、ICパッケージ用インターポーザー、ウエハレベルバーンインソケット用配線板などに使用される。特に、ICなどの電子部品を接続する際、電極パッドと回路基板パターンとの位置合わせ精度の改善に効果が大きい。回路パターンに抵抗素子や容量素子を入れ込むことは適宜許される。また、可撓性フィルム基板の少なくとも一方の面に絶縁層と配線層を積層し、多層化することも可能である。
以下実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本発明においてガラスのヤング率は、JIS R1602によって求められる値とする。また、以下の評価を行った。
(ICチッブのシアテスト)
回路基板に接合したICチップのシア強度をシアテスターSTR200(ULTEX社製)を用いて測定した。破断強度が、19.6N以上を合格とした。
(バンプの沈み込み)
ICチップを接合した回路基板の接合部分の断面サンプルを作製し、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡で観察した。バンプ下の配線の周囲からの沈み込みが、6μm以下を合格とした。
実施例1
厚さ0.7mm、300mm角のアルミノホウケイ酸塩ガラス(第1の補強板として使用)にダイコーターで、弱粘着性再剥離剤”オリバイン”BPS5227−1(東洋インキ(株)製)と硬化剤BXX8134(東洋インキ(株)製)を100:2で混合したものを塗布し、100℃で30秒乾燥した。乾燥後の再剥離剤厚みを10μmとした。次いで再剥離剤層(剥離可能な有機物層のことである)に、ポリエステルフィルム上に離型容易なシリコーン樹脂層を設けたフィルムからなる空気遮断用フィルムを貼り付けて1週間おいた。ガラス基板のヤング率は、7140kg/mm2であり、ヤング率(kg/mm2)と厚さ(mm)の3乗の積は、2449kg・mmであった。
上記ポリエステルフィルムとシリコーン樹脂層からなる空気遮断用フィルムを剥がしつつ、再剥離剤層が形成されているガラスにロール式ラミネーターで、厚さ25μm、幅300mmの長尺のポリイミドフィルム(”カプトン”東レデュポン(株)製)を貼り付けた。ガラスにラミネートされたポリイミドフィルムは、ガラス終端に合わせてカットした。
次いで、スパッタにて厚さ5nmのクロム:ニッケル=20:80の合金層膜と厚さ200nmの銅層をこの順に積層した。該銅層膜上にポジ型フォトレジストをスピンコーターで塗布して80℃で10分間乾燥した。フォトレジストをフォトマスクを介して露光、現像して、めっき層膜が不要な部分に厚さ10μmのフォトレジスト層を形成した。テスト用フォトマスクパターンは、50μmピッチで400個の接続パッド(幅20μm、長さ200μm)を1.5mmの間隔で2列平行に設けたものを1ユニットとして、これを300角の基板上に40mmピッチで7行×7列に均等配置したものとした。合わせて、測長用に基板の中心から対角方向に約141mm離して配置した4点(辺に平行方向には互いに200mmずつ離して配置)のマーカーをフォトマスクパターンに設けた。
フォトレジストを現像後、銅層を電極として厚さ5μmの銅層を電解めっきで形成した。電解めっき液は、硫酸銅めっき液とした。フォトレジストをフォトレジスト剥離液で剥離し、続いて過酸化水素水−硫酸系水溶液によるソフトエッチングにてレジスト層の下にあった銅層膜およびクロム−ニッケル合金層膜を除去した。次に、銅めっき層膜上に、無電解めっきで厚さ0.4μmの錫層を形成した。
測長機SMIC−800(ソキア(株)製)にて、上述した測長用に設けた対角方向に本来約283mm離れた2点(x方向に200mm、y方向に200mm離れた点)の距離を測定したところ、フォトマスクパターンに対して±2μm以内にあり、位置精度は非常に良好に保持されていた。
上述の接続パッドユニットを1列含むように40mmピッチで回路パターンが形成されたポリイミドフィルムを炭酸ガスレーザーで短冊状に切断した。厚さ0.4mm、幅40mm、長さ330mmの42アロイ板に、上述の接続パッドユニットの1列分7個に対応する25×25mmの開口部を設けたものを第2の補強板として用意した。第2の補強板の枠部分に強粘着性の両面テープを貼り付けた。第2の補強板を回路パターンに位置合わせしつつ、ポリイミドフィルムに貼り合わせ、次いで、第2の補強板の長さ方向端部を把持して、第2の補強板を端部から徐々に第1の補強板から剥離した。かくして、第2の補強板に保持された回路パターンが形成されたポリイミドフィルムを得た。
次に、50μmピッチで一列400個の金めっきバンプを1.52mm間隔を置いて2列配置したモデルICチップ(外形:2×23mm)をチップ側から425℃、ポリイミドフィルム側から350℃に加熱しつつTABボンダーILB100(新川(株)製)を用いて、回路パターンの接続パッドと金属拡散接合した。1バンプあたりの圧力を107.9mN、接合時間は1秒とした。上記加熱温度はツールまたはステージ設定温度である。モデルICチップのバンプと回路基板上の接続パッドの位置合わせは良好であった。接合したICチップに横方向からの力を加えシアテストしたところ、破断強度は29.4N以上あり、良好な金属接合が得られた。接続部の断面を切り出し、電子顕微鏡で観察したところ、バンプの沈み込みは0.9μmと小さく、良好であった。
比較例1
実施例1と同様にして回路パターンが形成されたポリイミドフィルムを得た。次いで、回路パターンが形成されたポリイミドフィルムがガラス板上(第1の補強板である)に固定された状態で、TABボンダーを用いて、モデルICチップを接合した。
ガラス側からの加熱温度を350℃から450℃の間で変化させたが、ICチップのシアテストでの破断強度は2N以下しか得られず、充分な金属接合が得られなかった。
実施例2
実施例1と同様にして回路パターンが形成されたポリイミドフィルムを得た。次いで、実施例1と同様にして、回路パターンが形成されたポリイミドフィルムを42アロイからなる第2の補強板に移し取った。
フリップチップボンダーFC−70(東レエンジニアリング(株)製)を用いて、ICチップ側から375℃に加熱しつつ、回路パターンの接続パッドと接合した。ポリイミドフィルム側からの加熱は行わなかった。1バンプあたりの圧力を294.2mN、接合時間は3秒とした。
モデルICチップのバンプと回路基板上の接続パッドの位置合わせは良好であった。接合したICチップに横方向からの力を加えシアテストしたところ、破断強度は29.4N以上であり、良好な金属接合が得られた。接続部の断面を切り出し、電子顕微鏡で観察したところ、バンプの沈み込みは0.9μmと小さく、良好であった。
比較例2
実施例1と同様にして回路パターンが形成されたポリイミドフィルムを得た。次いで、回路パターンが形成されたポリイミドフィルムがガラス板上(第1の補強板である)に固定された状態で、実施例2と同じフリップチップボンダーを用いて、同条件で、モデルICチップを接合した。モデルICチップのバンプと回路基板上の接続パッドの位置合わせは良好であった。接合したICチップに横方向からの力を加えシアテストしたところ、破断強度は29.4N以上であり、良好な金属接合が得られた。しかしながら、接続部の断面を切り出し、電子顕微鏡で観察したところ、バンプの沈み込みは11μmと大きく、信頼性に問題があった。
実施例3
可撓性フィルムとして、厚さ25μm、300mm幅のポリイミドフィルム(”カプトン”東レデュポン(株)製)を準備した。ロール・ツー・ロール方式のスパッタ装置に長尺のポリイミドフィルムを装着し、厚さ6nmのクロム:ニッケル=20:80(重量比)の合金層と厚さ100nmの銅層とをこの順に積層した。フィルム送り速度は4m/分とした。
厚さ1.1mm、300mm角のソーダライムガラスにダイコーターで、紫外線硬化型粘着剤”SKダイン”SW−22(綜研化学(株)製)と硬化剤L45(綜研化学(株)製)を100:3(重量比)で混合したものを塗布し、80℃で2分乾燥した。乾燥後の粘着剤層厚みを1μmとした。次いで粘着剤層(剥離可能な有機物層のことである)に、ポリエステルフィルム上に離型容易なシリコーン樹脂層を設けたフィルムからなる空気遮断用フィルムを貼り付けて1週間おいた。ガラス基板のヤング率は、6832kg/mm2であり、ヤング率(kg/mm2)と厚さ(mm)の3乗の積は、9093kg・mmであった。
上記ポリエステルフィルムとシリコーン樹脂層からなる空気遮断用フィルムを剥がしつつ、カッター付きロール式ラミネーターで、粘着剤層を設けたガラスに銅層を形成したポリイミドフィルムを貼り付けた。ポリイミドフィルムの貼り合わせ面は、銅層を形成した面とは反対面である。ガラスにラミネートされたポリイミドフィルムは、ガラス終端に合わせてカットした。ガラス面側から紫外線を5J/cm2照射し、紫外線硬化型粘着剤層を硬化させた。
次いで、該銅層上にポジ型フォトレジストをスピンコーターで塗布して80℃で30分間乾燥した。フォトレジストをフォトマスクを介して露光、現像して、めっき層が不要な部分に厚さ10μmのフォトレジスト層を形成した。テスト用フォトマスクパターンは、実施例1と同じものを使用した。
フォトレジストを現像後、銅層を電極として厚さ5μmの銅層を電解めっきで形成した。電解めっき液は、硫酸銅めっき液とした。フォトレジストをフォトレジスト剥離液で剥離し、続いて過酸化水素水−硫酸系水溶液によるソフトエッチングにてレジスト層の下にあった銅層膜およびクロム−ニッケル合金層膜を除去した。得られた銅層の厚みの面内ばらつきは5±0.8μmで良好な均一性が得られた。次に、銅めっき膜上に、無電解めっきで厚さ0.4μmの錫層を形成した。
測長機SMIC−800(ソキア(株)製)にて、上述した測長用に設けた対角方向に本来約283mm離れた2点(x方向に200mm、y方向に200mm離れた点)の距離を測定したところ、フォトマスクパターンに対して±2μm以内にあり、位置精度は非常に良好に保持されていた。
次に、50μmピッチで一列400個の金めっきバンプを1.52mm間隔を置いて2列配置したモデルICチップをフリップチップボンダーFC−70(東レエンジニアリング)を用いて、回路パターンの接続パッドと金属拡散接合した。ICチップ側ツールを375℃に加熱し、1バンプあたりの圧力を294mN、接合時間は2秒とした。モデルICチップのバンプと回路基板上の接続パッドの位置合わせは良好であった。可撓性フィルムの一端を把持し、曲率半径600mmの円筒の面に沿わせて端部から徐々に剥離した。円筒の面にはICチップに対応した位置に凹部(深さ1mm)を設けておいた。
接合したICチップに横方向からの力を加えシアテストしたところ、破断強度は29.4N以上あり、良好な金属接合が得られた。接合部の断面を切り出し、電子顕微鏡で観察したところ、バンプの沈み込みは、1.6μmと小さく、良好であった。
実施例4
厚さ25μm、300mm幅のポリイミドフィルムに、実施例3と同じロール・ツー・ロール方式のスパッタ装置で厚さ6nmのクロム:ニッケル=20:80(重量比)の合金層と厚さ300nmの銅層とをこの順に積層した。フィルム送り速度は1.33m/分とした。
実施例3と同様にして粘着剤層を設けたソーダライムガラスに銅層を形成したポリイミドフィルムを貼り合わせた。次いで、実施例3と同様にして、セミアディティブ法で、回路パターンを形成した。得られた銅層の厚みの面内ばらつきは5±0.8μmで良好な均一性が得られた。次に、銅めっき膜上に、無電解めっきで厚さ0.4μmの錫層を形成した。
実施例3と同様にして、測長用に設けた対角方向に本来約283mm離れた2点(x方向に200mm、y方向に200mm離れた点)の距離を測定したところ、フォトマスクパターンに対して±2μm以内にあり、位置精度は非常に良好に保持されていた。
次に、実施例3と同様にして、モデルICチップをフリップチップボンダーを用いて、回路パターンの接続パッドと金属拡散接合した。モデルICチップのバンプと回路基板上の接続パッドの位置合わせは良好であった。可撓性フィルムの一端を把持し、曲率半径600mmの円筒の面に沿わせて端部から徐々に剥離した。円筒の面にはICチップに対応した位置に凹部(深さ1mm)を設けておいた。
接合したICチップに横方向からの力を加えシアテストしたところ、破断強度は29.4N以上あり、良好な金属接合が得られた。接合部の断面を切り出し、電子顕微鏡で観察したところ、バンプの沈み込みは、1.6μmと小さく、良好であった。
実施例5
厚さ25μm、300mm幅のポリイミドフィルムに、実施例3と同じロール・ツー・ロール方式のスパッタ装置で厚さ6nmのクロム:ニッケル=20:80(重量比)の合金層と厚さ80nmの銅層とをこの順に積層した。フィルム送り速度は5m/分とした。
実施例3と同様にして粘着剤層を設けたソーダライムガラスに銅層を形成したポリイミドフィルムを貼り合わせた。次いで、実施例3と同様にして、セミアディティブ法で、回路パターンを形成した。得られた銅層の厚みの面内ばらつきは5±0.8μmで良好な均一性が得られた。次に、銅めっき膜上に、無電解めっきで厚さ0.4μmの錫層を形成した。
実施例3と同様にして、測長用に設けた対角方向に本来約283mm離れた2点(x方向に200mm、y方向に200mm離れた点)の距離を測定したところ、フォトマスクパターンに対して±2μm以内にあり、位置精度は非常に良好に保持されていた。
次に、実施例3と同様にして、モデルICチップをフリップチップボンダーを用いて、回路パターンの接続パッドと金属拡散接合した。モデルICチップのバンプと回路基板上の接続パッドの位置合わせは良好であった。可撓性フィルムの一端を把持し、曲率半径600mmの円筒の面に沿わせて端部から徐々に剥離した。円筒の面にはICチップに対応した位置に凹部(深さ1mm)を設けておいた。
接合したICチップに横方向からの力を加えシアテストしたところ、破断強度は29.4N以上あり、良好な金属接合が得られた。接合部の断面を切り出し、電子顕微鏡で観察したところ、バンプの沈み込みは、1.6μmと小さく、良好であった。
比較例3
厚さ25μm、300mm幅のポリイミドフィルムに、実施例3と同じロール・ツー・ロール方式のスパッタ装置で厚さ6nmのクロム:ニッケル=20:80(重量比)の合金層と厚さ500nmの銅層とをこの順に積層した。フィルム送り速度は0.8m/分とした。ポリイミドフィルムは受熱のために幅方向端部が熱収縮して平面性が損なわれた。また、幅方向中央部においても搬送中に冷却ドラムとの密着性が低下した箇所で熱収縮が発生して平面性が損なわれ、回路基板用フィルムの収率が大きく低下した。金属層が厚くなったことにより、熱ダメージがなかった部分でも金属層を内側にしたカールが発生し、平面上に金属膜が着いた幅300mmのポリイミドフィルムを置くと、幅方向端部が10mm持ち上がり、ラミネート工程でのポリイミドフィルムの幅方向位置合わせ精度が低下した。
実施例3と同様にして、セミアディティブ法で、回路パターンを形成した。過酸化水素水−硫酸系水溶液によるソフトエッチングにてレジスト層の下にあった銅層膜およびクロム−ニッケル合金層膜を除去したが、給電層とした金属層が500nmと比較的厚いために、ソフトエッチングを完了したときに、回路パターン痩せが約1μmと大きくなり、ファインピッチ配線形成に不利であった。
比較例4
厚さ25μm、300mm幅のポリイミドフィルムに、実施例3と同じロール・ツー・ロール方式のスパッタ装置で厚さ6nmのクロム:ニッケル=20:80(重量比)の合金層と厚さ30nmの銅層とをこの順に積層した。フィルム送り速度は13.3m/分とした。実施例3と同様にして粘着剤層を設けたソーダライムガラスに銅層を形成したポリイミドフィルムを貼り合わせた。次いで、実施例3と同様にして、セミアディティブ法で、回路パターンを形成した。給電層が薄く抵抗が高いために、300mm角の基板中において給電点から離れるに従って電解めっき膜厚が減少した。給電点近傍で銅層厚みが5μmになったとき、基板中央部の銅層厚みは1.8μmと不良であった。