JP2004132558A - ポリ塩化ビフェニルの無害化処理方法及び無害化処理装置、並びに排ガスの2次処理方法及び2次処理装置 - Google Patents
ポリ塩化ビフェニルの無害化処理方法及び無害化処理装置、並びに排ガスの2次処理方法及び2次処理装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】コストダウンを図ることができるPCBの無害化処理方法及び無害化処理装置、並びに排ガスの2次処理方法及び2次処理装置を提供する。
【解決手段】溶剤6にポリ塩化ビフェニル(PCB)1を溶解させたポリ塩化ビフェニル溶液7と水8とを混合してエマルジョン9を生成させ、水素・酸素ガス発生装置(水素・酸素ガス発生手段)5においてガス発生用の水の電気分解により発生する水素ガス18と酸素ガス19とが分離した状態で供給される、水素ガス18を酸素ガス19で燃焼させる水素ガスバーナー20が収容された燃焼室4内にエマルジョン9を噴霧することによって、ポリ塩化ビフェニル1を水素ガスバーナー20により1400℃以上で燃焼させるポリ塩化ビフェニル1の無害化処理方法。
【選択図】 図1
【解決手段】溶剤6にポリ塩化ビフェニル(PCB)1を溶解させたポリ塩化ビフェニル溶液7と水8とを混合してエマルジョン9を生成させ、水素・酸素ガス発生装置(水素・酸素ガス発生手段)5においてガス発生用の水の電気分解により発生する水素ガス18と酸素ガス19とが分離した状態で供給される、水素ガス18を酸素ガス19で燃焼させる水素ガスバーナー20が収容された燃焼室4内にエマルジョン9を噴霧することによって、ポリ塩化ビフェニル1を水素ガスバーナー20により1400℃以上で燃焼させるポリ塩化ビフェニル1の無害化処理方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、有害成分であるポリ塩化ビフェニル(polychlorobiphenyl。以下、「PCB」という。)の無害化処理方法及び無害化処理装置、並びにゴミ等の被燃焼物を燃焼させる燃焼室から発生する、有害成分を含む排ガスの2次処理方法及び2次処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
PCBは有害成分であることが判明したため、わが国では1972年以降生産中止となった。そして、現在、PCBは「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」により特定化学物質の指定を受け、その製造・輸入・使用が厳しく規制されている。
【0003】
また、ゴミ等の被燃焼物を燃焼させる燃焼室(燃焼炉)からは、PCB、ダイオキシン、塩素、窒素酸化物、硫黄酸化物等の有害成分を含む排ガスが発生することが多い。
【0004】
このような有害成分を処理する従来の技術としては、例えば、PCBに重量比で少なくとも20%の化石燃料油と5%の水を混合して混合液を形成し、この混合液を加熱し且つ噴霧状又はガス状にして酸素と共に1100℃以上の温度に維持された燃焼室に供給し、この供給に際して噴霧状又はガス状物を波動付与手段に吹き付けることで波動を生じさせ、この波動によって霧状粒子は微細化し、ガス状物は拡散させて燃焼させるPCBの燃焼処理方法等が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−37440号公報(第2頁〔請求項1〕等)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような方法においては、ガソリンや灯油等の化石燃料油を、PCBを燃焼させるための燃料とするので、コスト高であるという問題点がある。
【0007】
この発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、コストダウンを図ることができるPCBの無害化処理方法及び無害化処理装置、並びに排ガスの2次処理方法及び2次処理装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための請求項1のPCBの無害化処理方法は、溶剤にポリ塩化ビフェニルを溶解させたポリ塩化ビフェニル溶液と水とを混合してエマルジョンを生成させ、水素・酸素ガス発生手段においてガス発生用の水の電気分解により発生する水素ガスと酸素ガスとが分離した状態で供給される、水素ガスを酸素ガスで燃焼させる水素ガスバーナーが収容された燃焼室内に前記エマルジョンを噴霧することによって、前記ポリ塩化ビフェニルを前記水素ガスバーナーにより1400℃以上で燃焼させるものである。
【0009】
請求項2のPCBの無害化処理方法は、前記水に微粉炭を添加したものである。
【0010】
請求項3のPCBの無害化処理方法は、前記水にアルカリ化合物を添加したものである。
【0011】
また、請求項4のPCBの無害化処理装置は、溶剤にポリ塩化ビフェニルを溶解させたポリ塩化ビフェニル溶液と水とを混合してエマルジョンを生成させるエマルジョン生成手段と、水素ガスを酸素ガスで燃焼させる水素ガスバーナーが収容された燃焼室と、ガス発生用の水の電気分解により水素ガスと酸素ガスとを発生させ、これら水素ガスと酸素ガスとを分離した状態で前記水素ガスバーナーへ供給する水素・酸素ガス発生手段と、前記燃焼室内に前記エマルジョンを噴霧する噴霧手段と、を備えたものである。
【0012】
請求項5のPCBの無害化処理装置は、前記水に微粉炭を添加する微粉炭添加手段を備えたものである。
【0013】
請求項6のPCBの無害化処理装置は、前記水にアルカリ化合物を添加するアルカリ化合物添加手段を備えたものである。
【0014】
更に、請求項7の排ガスの2次処理方法は、水素・酸素ガス発生手段において水の電気分解により発生する水素ガスと酸素ガスとが分離した状態で供給される、水素ガスを酸素ガスで燃焼させる水素ガスバーナーが収容され且つ被燃焼物を燃焼させる燃焼室と接続された2次燃焼室内に、前記燃焼室内の燃焼により発生する排ガスを導入することによって、この排ガスに含まれる有害成分を前記水素ガスバーナーにより1400℃以上で分解処理するものである。
【0015】
また、請求項8の排ガスの2次処理装置は、被燃焼物を燃焼させる燃焼室と接続され且つこの燃焼室内の燃焼により発生する排ガスが導入される2次燃焼室と、この2次燃焼室内に収容され且つ水素・酸素ガス発生手段において水の電気分解により発生する水素ガスと酸素ガスとが分離した状態で供給される、水素ガスを酸素ガスで燃焼させる水素ガスバーナーと、を備えたものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、この実施形態に係るPCB1の無害化処理装置2は、エマルジョン生成装置(エマルジョン生成手段)3と、燃焼室4と、水素・酸素ガス発生装置(水素・酸素ガス発生手段)5と、噴霧手段とを備えたものである。
【0017】
PCB(ポリ塩化ビフェニル)1とは、ビフェニルの2個以上の水素原子を塩素原子で置換した化合物であり、軽油状、燃性油状、ピッチ状等の液状のものの他、非結晶性固体状や結晶性固体状等の固体状のものも使用できる。
【0018】
エマルジョン生成装置3は、溶剤6にPCB1を溶解させたPCB溶液7と水8とを混合してエマルジョン9を生成させるものである。溶剤6としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の有機溶媒等が挙げられる。
【0019】
PCB溶液7は、例えば、液状のPCB1をポンプ10で、溶剤6をポンプ11で、可動部のない静的混合器(例えば、商品名「OHRミキサー」、株式会社ジーエス製)12へそれぞれ圧送してこの静的混合器12内を通過させながら混合、溶解させることにより調製できる。固体状のPCBを使用する場合は、従来公知の混合手段により、溶剤6に固体状のPCBを溶解させればよい。いずれにしても、PCB溶液7は、ポンプ10,11で圧送等を行い易い粘度に調製しておくのが望ましい。なお、上記のような静的混合器12を使用すれば、可動部がなく、小型、省スペース、メンテナンスフリーであるので、設備費や維持費を低減化できる。
【0020】
エマルジョン9は、例えば、水8をポンプ13で貯留タンク14へ圧送すると共に、PCB溶液7をポンプ10,11で貯留タンク14へ圧送し、貯留タンク14内で水8とPCB溶液7との混合液15を調製した後、この混合液15をポンプ16で上記と同様の静的混合器17へ圧送して、この静的混合器17内を通過させながら混合することにより調製できる。なお、貯留タンク14には、混合液15中の水8とPCB溶液7とが2層に分離するのを防止するための撹拌手段を設けることもできる。また、水8とPCB溶液7との混合比率(重量比)としては、5:5程度が適当であるが、必要に応じて水8の割合を増加させてもよい。
【0021】
燃焼室4には、水素ガス18を酸素ガス19で燃焼させる水素ガスバーナー20が収容されている。水素ガスバーナー20は、図1及び図2に示すように、金属又は耐火物等から例えば円柱状に形成されており、その柱軸の位置にエマルジョン噴霧孔20aが軸方向に沿って貫通するように形成されている。エマルジョン噴霧孔20aの周囲には、複数の水素ガス供給孔20bが柱軸を中心とする円20c上に互いに間隔を開けて形成されている。水素ガス供給孔20bの外側にも、複数の酸素ガス供給孔20dが円20cよりも直径の大きい同心円20e上に互いに間隔を開けて形成されている。
【0022】
水素・酸素ガス発生装置5は、ガス発生用の水の電気分解により水素ガス18と酸素ガス19とを発生させ、これら水素ガス18と酸素ガス19とを分離した状態で水素ガスバーナー20へ供給するものである。このような水素・酸素ガス発生装置5としては、例えば、「HG−3800S」(型番、株式会社ジーエス製)等が挙げられる。
【0023】
水素・酸素ガス発生装置5により発生させた水素ガス18と酸素ガス19とは、分離した状態で水素ガスバーナー20へ供給される。そのため、水素ガスバーナー20からの逆火のおそれがない。水素ガス18と酸素ガス19とを分離した状態で水素ガスバーナー20へ供給するには、水素ガス18の配管を水素ガスバーナー20の例えば水素ガス供給孔20aの一端にそれぞれ接続し、酸素ガス19の配管を水素ガスバーナー20の例えば酸素ガス供給孔20dの一端にそれぞれ接続しておけばよい。この場合、水素ガス18は水素ガス供給孔20bの他端からそれぞれ噴射され、酸素ガス19は酸素ガス供給孔20dの他端からそれぞれ噴射されるので、水素ガス18は水素ガス供給孔20bの他端側の燃焼室4内で燃焼する。
【0024】
噴霧手段は、燃焼室4内にエマルジョン9を噴霧するものである。この噴霧手段は例えばコンプレッサ21を備えており、このコンプレッサ21はエマルジョン9をポンプ16で圧送する配管と共に水素ガスバーナー20のエマルジョン噴霧孔20aの一端に接続されている。エマルジョン噴霧孔20aの一端に供給されるエマルジョン9は、コンプレッサ21から供給される圧縮空気により霧状となり、エマルジョン噴霧孔20aの他端から燃焼室4内に噴霧される。燃焼室4内に噴霧されたエマルジョン9は、水素ガスバーナー20により1400℃以上の高温下で燃焼する。
【0025】
上記のように構成される無害化処理装置2には、必要に応じて、水8に微粉炭22を添加する微粉炭添加手段を設けることができる。微粉炭添加手段としては、従来公知の各種の粉末添加手段等を採用できる。なお、微粉炭22の平均粒径は特に限定されるものではないが、100μm以下であることが望ましい。微粉炭22の平均粒径が100μmを超える場合、水8に添加した後の微粉炭懸濁液において粒径の大きいものが沈殿するので好ましくない。また、微粉炭22の水8に対する添加比率も特に限定されるものではなく、適当量を添加することができる。
【0026】
更に、無害化処理装置2には、必要に応じて、水8にアルカリ化合物23を添加するアルカリ化合物添加手段を設けることもできる。アルカリ化合物23としては、例えば、Li(リチウム)、Na(ナトリウム)、K(カリウム)等のアルカリ金属の水酸化物、酸化物、塩(炭酸塩等)や、あるいはMg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Ba(バリウム)等のアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、塩(炭酸塩等)が挙げられる。このようなアルカリ化合物23としては、粉末状でかつ水8に溶解するものが好適である。アルカリ化合物添加手段としては、従来公知の各種の粉末添加手段等を採用できる。なお、アルカリ化合物23の水8に対する添加比率も特に限定されるものではなく、適当量を添加することができる。
【0027】
また、無害化処理装置2には、必要に応じて、燃焼室4と接続され且つこの燃焼室4内の燃焼により発生する排ガス24が導入される2次燃焼室25と、この2次燃焼室25内に収容された、水素ガス18を酸素ガス19で燃焼させる水素ガスバーナー26とを備えた排ガス24の2次処理装置27を設けることもできる。なお、2次燃焼室25が接続される燃焼室はこの実施形態のようなPCB1を燃焼させる燃焼室4に限定されるものではなく、ゴミ等の各種の被燃焼物を燃焼させる従来公知の燃焼室を採用できる。
【0028】
水素ガスバーナー26は、図1及び図3に示すように、既述の水素ガスバーナー20とほぼ同様に構成されており、金属又は耐火物等から例えば円柱状に形成されている。この水素ガスバーナー26の柱軸の周囲には、複数の水素ガス供給孔26bが柱軸を中心とする円26c上に互いに間隔を開けて形成されている。水素ガス供給孔26bの外側にも、複数の酸素ガス供給孔26dが円26cよりも直径の大きい同心円26e上に互いに間隔を開けて形成されている。
【0029】
既述の水素・酸素ガス発生装置5は、ガス発生用の水の電気分解により発生させた水素ガス18と酸素ガス19とを分離した状態で水素ガスバーナー26へ供給可能である。水素ガス18と酸素ガス19とを分離した状態で水素ガスバーナー26へ供給するには、水素ガス18の配管を水素ガスバーナー26の例えば水素ガス供給孔26bの一端にそれぞれ接続し、酸素ガス19の配管を水素ガスバーナー26の例えば酸素ガス供給孔26dの一端にそれぞれ接続しておけばよい。この場合、水素ガス18は水素ガス供給孔26bの他端からそれぞれ噴射され、酸素ガス19は酸素ガス供給孔26dの他端からそれぞれ噴射されるので、水素ガス18は水素ガス供給孔26bの他端側の2次燃焼室25内で燃焼する。なお、この実施形態においては、水素・酸素ガス発生装置5が水素ガスバーナー20,26の両方へ水素ガス18及び酸素ガス19を供給可能であるが、これに限定されるものではなく、水素ガスバーナー26へは他の水素・酸素ガス発生手段により水素ガス及び酸素ガスを供給可能としておいてもよい。
【0030】
2次燃焼室25は例えば接続配管28により燃焼室4と接続されており、燃焼室4内の燃焼により発生する排ガス24が2次燃焼室25内に導入されるようになっている。そのため、2次燃焼室25内に導入された排ガス24にPCB1が残留している場合でも、この残留PCBは水素ガスバーナー26により1400℃以上の高温下で燃焼する。
【0031】
なお、接続配管28等により2次燃焼室25を、ゴミ等の被燃焼物を燃焼させる他の燃焼室に接続した場合において、この燃焼室内の燃焼により発生する排ガスに含まれる有害成分としては、PCBの他、ダイオキシン、塩素、窒素酸化物、硫黄酸化物等が挙げられる。この場合、2次燃焼室25内に導入された排ガスに上記のような有害成分が残留しているときでも、この有害成分は水素ガスバーナー26により1400℃以上の高温下で分解処理される。ここで、水素ガスバーナー26への水素ガス18や酸素ガス19の供給流量等の調節により、2次燃焼室25内の燃焼温度が1400℃よりも高温、好ましくは1700℃以上となるように制御すれば、有害成分の残留率を更に低減化できる。
【0032】
次に、無害化処理装置2を使用してPCB1を無害化処理する方法について説明する。
PCB1の無害化処理に際しては、まず、PCB溶液7と水8とを混合してエマルジョン9を生成させる。PCB溶液7は、ポンプ10,11及び静的混合器12で溶剤6にPCB1を溶解させてあらかじめ調製しておく。エマルジョン9は、貯留タンク14内に調製された水8とPCB溶液7との混合液15をポンプ16で静的混合器17に圧送して、この静的混合器17内を通過させることにより生成させる。
【0033】
生成したエマルジョン9は、水素ガスバーナー20が収容された燃焼室4内に噴霧され、このエマルジョン9に含まれるPCB1が水素ガスバーナー20により1400℃以上の高温下でほぼ完全に燃焼する。燃焼後のPCB1の残留率は10−8以下であり、コプラナーPCBやダイオキシン等の猛毒物も発生しない。このように、溶剤6や水素・酸素ガス発生手段においてガス発生用の水の電気分解により発生する水素ガス18及び酸素ガス19を使用するので、PCB1を低コストで無害化処理できるという利点がある。また、溶剤6により適当な粘度に調整したPCB溶液7を使用するので、エマルジョン9を効率良く生成させることができるという利点がある。
【0034】
なお、エマルジョン9中の水8の割合が増加すれば燃焼室4内の燃焼温度が低下するので、エマルジョン9中のPCB溶液7と水8との重量比を適宜に調節すれば、PCB1の燃焼温度を制御できる。この場合、燃焼温度が1400℃よりも高温、好ましくは1700℃以上となるように制御すれば、PCB1の残留率をより低減化できる。また、燃焼室4内に噴霧されたエマルジョン9中の水8は、燃焼室4内の高熱により爆発的に気化及び膨張し、エマルジョン9中のPCB溶液粒子が燃焼室4内に均一に拡散して燃焼するのを助長する効果を有している。
【0035】
ここで、水8にあらかじめ微粉炭22を添加しておけば、エマルジョン9中のPCB溶液粒子の分散性が向上するので、PCB溶液粒子をエマルジョン9中により均一に分散させることができるという利点がある。また、エマルジョン9中の微粉炭22の割合が増加すれば燃焼室4内の燃焼温度が上昇するので、エマルジョン9中のPCB溶液7と水8と微粉炭22との重量比を適宜に調節すれば、PCB1の燃焼温度を制御できる。
【0036】
また、水8にあらかじめアルカリ化合物23を添加しておいた場合でも、エマルジョン9中のPCB溶液粒子の分散性が向上するので、PCB溶液粒子をエマルジョン9中により均一に分散させることができるという利点がある。更に、水8にあらかじめアルカリ化合物23を添加しておけば、PCB1の燃焼時におけるアルカリ化合物23中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属とPCB1中の塩素(Cl)との反応により、PCB1中の塩素を効率良く回収できるという利点がある。
【0037】
加えて、2次燃焼室25内に、燃焼室4内の燃焼により発生する排ガス24を導入することによって、この排ガス24に含まれるPCB1を水素ガスバーナー26により1400℃以上で燃焼させれば、PCB1の残留率をより低減化できる。このように、水素・酸素ガス発生手段においてガス発生用の水の電気分解により発生する水素ガス18及び酸素ガス19を使用するので、PCB1等の有害成分を低コストで分解処理できるという利点がある。
【0038】
なお、燃焼室4内や2次燃焼室25内に燃焼温度を測定できる温度センサをそれぞれ設けておけば、燃焼室4内や2次燃焼室25内の各燃焼温度をモニタできるので、各燃焼温度を1400℃以上に維持し易いという利点がある。燃焼室4内の燃焼温度を1400℃以上に維持するには、既述のエマルジョン9中の水8や微粉炭22の量の調節の他、水素ガスバーナー20への水素ガス18や酸素ガス19の供給流量等を適宜に調節してもよい。また、燃焼室4内や2次燃焼室25内に酸素ガス19とは別に空気をそれぞれ供給すれば各燃焼温度が低下するので、空気の供給量を適宜に調節することによってもPCB1の各燃焼温度を制御できる。いずれにしても、燃焼状態の変動によりPCB1の燃焼効率が低下しないように調節すればよい。
【0039】
また、燃焼室4と2次燃焼室25とを接続する接続配管28等に燃焼室4内の燃焼により発生する排ガス24中のPCB残留量を測定できるPCBセンサを設けておけば、排ガス24中のPCB残留量をモニタできるので、PCB1の残留率を10−8以下に維持し易いという利点がある。PCB1の残留率を10−8以下に維持するには、燃焼室4内の燃焼温度の調節の他、エマルジョン9中のアルカリ化合物23の量を適宜に調節してもよい。いずれにしても、燃焼状態の変動によりPCB1の残留率が増加しないように調節すればよい。2次燃焼室25を、ゴミ等の被燃焼物を燃焼させる他の燃焼室に接続した場合は、この燃焼室内の燃焼により発生する排ガス中の有害成分の残留量を測定できる有害成分センサを接続配管28等に設けることができる。
【0040】
【発明の効果】
以上のように、請求項1の発明によれば、PCB溶液と水とを混合してエマルジョンを生成させ、燃焼室内にエマルジョンを噴霧することによって、PCBを水素ガスバーナーにより1400℃以上で燃焼させるので、PCBを低コストで無害化処理できる。また、溶剤により適当な粘度に調整したPCB溶液を使用するので、エマルジョンを効率良く生成させることができる。
【0041】
請求項2の発明によれば、水に微粉炭を添加しているので、PCB溶液粒子をエマルジョン中により均一に分散させることができる。また、エマルジョン中の微粉炭の割合が増加すれば燃焼室内の燃焼温度が上昇するので、エマルジョン中のPCB溶液と水と微粉炭との重量比を適宜に調節すれば、PCBの燃焼温度を制御できる。
【0042】
請求項3の発明によれば、水にアルカリ化合物を添加しているので、PCB溶液粒子をエマルジョン中により均一に分散させることができる。また、PCBの燃焼時におけるアルカリ化合物中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属とPCB中の塩素との反応により、PCB中の塩素を効率良く回収できる。
【0043】
請求項4〜6の発明によれば、請求項1〜3のPCBの無害化処理方法に好適な装置をそれぞれ提供できる。
【0044】
請求項7の発明によれば、2次燃焼室内に、燃焼室内の燃焼により発生する排ガスを導入することによって、この排ガスに含まれる有害成分を水素ガスバーナーにより1400℃以上で分解処理するので、有害成分を低コストで分解処理できる。
【0045】
請求項8の発明によれば、請求項7の排ガスの2次処理方法に好適な装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係るPCBの無害化処理装置の模式図。
【図2】燃焼室内に収容された水素ガスバーナーの一例を示す正面図。
【図3】2次燃焼室内に収容された水素ガスバーナーの一例を示す正面図。
【符号の説明】
1 PCB
2 無害化処理装置
3 エマルジョン生成装置(エマルジョン生成手段)
4 燃焼室
5 水素・酸素ガス発生装置(水素・酸素ガス発生手段)
6 溶剤
7 PCB溶液
8 水
9 エマルジョン
18 水素ガス
19 酸素ガス
20 水素ガスバーナー
21 コンプレッサ
22 微粉炭
23 アルカリ化合物
24 排ガス
25 2次燃焼室
26 水素ガスバーナー
27 2次処理装置
【発明の属する技術分野】
この発明は、有害成分であるポリ塩化ビフェニル(polychlorobiphenyl。以下、「PCB」という。)の無害化処理方法及び無害化処理装置、並びにゴミ等の被燃焼物を燃焼させる燃焼室から発生する、有害成分を含む排ガスの2次処理方法及び2次処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
PCBは有害成分であることが判明したため、わが国では1972年以降生産中止となった。そして、現在、PCBは「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」により特定化学物質の指定を受け、その製造・輸入・使用が厳しく規制されている。
【0003】
また、ゴミ等の被燃焼物を燃焼させる燃焼室(燃焼炉)からは、PCB、ダイオキシン、塩素、窒素酸化物、硫黄酸化物等の有害成分を含む排ガスが発生することが多い。
【0004】
このような有害成分を処理する従来の技術としては、例えば、PCBに重量比で少なくとも20%の化石燃料油と5%の水を混合して混合液を形成し、この混合液を加熱し且つ噴霧状又はガス状にして酸素と共に1100℃以上の温度に維持された燃焼室に供給し、この供給に際して噴霧状又はガス状物を波動付与手段に吹き付けることで波動を生じさせ、この波動によって霧状粒子は微細化し、ガス状物は拡散させて燃焼させるPCBの燃焼処理方法等が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−37440号公報(第2頁〔請求項1〕等)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような方法においては、ガソリンや灯油等の化石燃料油を、PCBを燃焼させるための燃料とするので、コスト高であるという問題点がある。
【0007】
この発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、コストダウンを図ることができるPCBの無害化処理方法及び無害化処理装置、並びに排ガスの2次処理方法及び2次処理装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための請求項1のPCBの無害化処理方法は、溶剤にポリ塩化ビフェニルを溶解させたポリ塩化ビフェニル溶液と水とを混合してエマルジョンを生成させ、水素・酸素ガス発生手段においてガス発生用の水の電気分解により発生する水素ガスと酸素ガスとが分離した状態で供給される、水素ガスを酸素ガスで燃焼させる水素ガスバーナーが収容された燃焼室内に前記エマルジョンを噴霧することによって、前記ポリ塩化ビフェニルを前記水素ガスバーナーにより1400℃以上で燃焼させるものである。
【0009】
請求項2のPCBの無害化処理方法は、前記水に微粉炭を添加したものである。
【0010】
請求項3のPCBの無害化処理方法は、前記水にアルカリ化合物を添加したものである。
【0011】
また、請求項4のPCBの無害化処理装置は、溶剤にポリ塩化ビフェニルを溶解させたポリ塩化ビフェニル溶液と水とを混合してエマルジョンを生成させるエマルジョン生成手段と、水素ガスを酸素ガスで燃焼させる水素ガスバーナーが収容された燃焼室と、ガス発生用の水の電気分解により水素ガスと酸素ガスとを発生させ、これら水素ガスと酸素ガスとを分離した状態で前記水素ガスバーナーへ供給する水素・酸素ガス発生手段と、前記燃焼室内に前記エマルジョンを噴霧する噴霧手段と、を備えたものである。
【0012】
請求項5のPCBの無害化処理装置は、前記水に微粉炭を添加する微粉炭添加手段を備えたものである。
【0013】
請求項6のPCBの無害化処理装置は、前記水にアルカリ化合物を添加するアルカリ化合物添加手段を備えたものである。
【0014】
更に、請求項7の排ガスの2次処理方法は、水素・酸素ガス発生手段において水の電気分解により発生する水素ガスと酸素ガスとが分離した状態で供給される、水素ガスを酸素ガスで燃焼させる水素ガスバーナーが収容され且つ被燃焼物を燃焼させる燃焼室と接続された2次燃焼室内に、前記燃焼室内の燃焼により発生する排ガスを導入することによって、この排ガスに含まれる有害成分を前記水素ガスバーナーにより1400℃以上で分解処理するものである。
【0015】
また、請求項8の排ガスの2次処理装置は、被燃焼物を燃焼させる燃焼室と接続され且つこの燃焼室内の燃焼により発生する排ガスが導入される2次燃焼室と、この2次燃焼室内に収容され且つ水素・酸素ガス発生手段において水の電気分解により発生する水素ガスと酸素ガスとが分離した状態で供給される、水素ガスを酸素ガスで燃焼させる水素ガスバーナーと、を備えたものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、この実施形態に係るPCB1の無害化処理装置2は、エマルジョン生成装置(エマルジョン生成手段)3と、燃焼室4と、水素・酸素ガス発生装置(水素・酸素ガス発生手段)5と、噴霧手段とを備えたものである。
【0017】
PCB(ポリ塩化ビフェニル)1とは、ビフェニルの2個以上の水素原子を塩素原子で置換した化合物であり、軽油状、燃性油状、ピッチ状等の液状のものの他、非結晶性固体状や結晶性固体状等の固体状のものも使用できる。
【0018】
エマルジョン生成装置3は、溶剤6にPCB1を溶解させたPCB溶液7と水8とを混合してエマルジョン9を生成させるものである。溶剤6としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の有機溶媒等が挙げられる。
【0019】
PCB溶液7は、例えば、液状のPCB1をポンプ10で、溶剤6をポンプ11で、可動部のない静的混合器(例えば、商品名「OHRミキサー」、株式会社ジーエス製)12へそれぞれ圧送してこの静的混合器12内を通過させながら混合、溶解させることにより調製できる。固体状のPCBを使用する場合は、従来公知の混合手段により、溶剤6に固体状のPCBを溶解させればよい。いずれにしても、PCB溶液7は、ポンプ10,11で圧送等を行い易い粘度に調製しておくのが望ましい。なお、上記のような静的混合器12を使用すれば、可動部がなく、小型、省スペース、メンテナンスフリーであるので、設備費や維持費を低減化できる。
【0020】
エマルジョン9は、例えば、水8をポンプ13で貯留タンク14へ圧送すると共に、PCB溶液7をポンプ10,11で貯留タンク14へ圧送し、貯留タンク14内で水8とPCB溶液7との混合液15を調製した後、この混合液15をポンプ16で上記と同様の静的混合器17へ圧送して、この静的混合器17内を通過させながら混合することにより調製できる。なお、貯留タンク14には、混合液15中の水8とPCB溶液7とが2層に分離するのを防止するための撹拌手段を設けることもできる。また、水8とPCB溶液7との混合比率(重量比)としては、5:5程度が適当であるが、必要に応じて水8の割合を増加させてもよい。
【0021】
燃焼室4には、水素ガス18を酸素ガス19で燃焼させる水素ガスバーナー20が収容されている。水素ガスバーナー20は、図1及び図2に示すように、金属又は耐火物等から例えば円柱状に形成されており、その柱軸の位置にエマルジョン噴霧孔20aが軸方向に沿って貫通するように形成されている。エマルジョン噴霧孔20aの周囲には、複数の水素ガス供給孔20bが柱軸を中心とする円20c上に互いに間隔を開けて形成されている。水素ガス供給孔20bの外側にも、複数の酸素ガス供給孔20dが円20cよりも直径の大きい同心円20e上に互いに間隔を開けて形成されている。
【0022】
水素・酸素ガス発生装置5は、ガス発生用の水の電気分解により水素ガス18と酸素ガス19とを発生させ、これら水素ガス18と酸素ガス19とを分離した状態で水素ガスバーナー20へ供給するものである。このような水素・酸素ガス発生装置5としては、例えば、「HG−3800S」(型番、株式会社ジーエス製)等が挙げられる。
【0023】
水素・酸素ガス発生装置5により発生させた水素ガス18と酸素ガス19とは、分離した状態で水素ガスバーナー20へ供給される。そのため、水素ガスバーナー20からの逆火のおそれがない。水素ガス18と酸素ガス19とを分離した状態で水素ガスバーナー20へ供給するには、水素ガス18の配管を水素ガスバーナー20の例えば水素ガス供給孔20aの一端にそれぞれ接続し、酸素ガス19の配管を水素ガスバーナー20の例えば酸素ガス供給孔20dの一端にそれぞれ接続しておけばよい。この場合、水素ガス18は水素ガス供給孔20bの他端からそれぞれ噴射され、酸素ガス19は酸素ガス供給孔20dの他端からそれぞれ噴射されるので、水素ガス18は水素ガス供給孔20bの他端側の燃焼室4内で燃焼する。
【0024】
噴霧手段は、燃焼室4内にエマルジョン9を噴霧するものである。この噴霧手段は例えばコンプレッサ21を備えており、このコンプレッサ21はエマルジョン9をポンプ16で圧送する配管と共に水素ガスバーナー20のエマルジョン噴霧孔20aの一端に接続されている。エマルジョン噴霧孔20aの一端に供給されるエマルジョン9は、コンプレッサ21から供給される圧縮空気により霧状となり、エマルジョン噴霧孔20aの他端から燃焼室4内に噴霧される。燃焼室4内に噴霧されたエマルジョン9は、水素ガスバーナー20により1400℃以上の高温下で燃焼する。
【0025】
上記のように構成される無害化処理装置2には、必要に応じて、水8に微粉炭22を添加する微粉炭添加手段を設けることができる。微粉炭添加手段としては、従来公知の各種の粉末添加手段等を採用できる。なお、微粉炭22の平均粒径は特に限定されるものではないが、100μm以下であることが望ましい。微粉炭22の平均粒径が100μmを超える場合、水8に添加した後の微粉炭懸濁液において粒径の大きいものが沈殿するので好ましくない。また、微粉炭22の水8に対する添加比率も特に限定されるものではなく、適当量を添加することができる。
【0026】
更に、無害化処理装置2には、必要に応じて、水8にアルカリ化合物23を添加するアルカリ化合物添加手段を設けることもできる。アルカリ化合物23としては、例えば、Li(リチウム)、Na(ナトリウム)、K(カリウム)等のアルカリ金属の水酸化物、酸化物、塩(炭酸塩等)や、あるいはMg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Ba(バリウム)等のアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、塩(炭酸塩等)が挙げられる。このようなアルカリ化合物23としては、粉末状でかつ水8に溶解するものが好適である。アルカリ化合物添加手段としては、従来公知の各種の粉末添加手段等を採用できる。なお、アルカリ化合物23の水8に対する添加比率も特に限定されるものではなく、適当量を添加することができる。
【0027】
また、無害化処理装置2には、必要に応じて、燃焼室4と接続され且つこの燃焼室4内の燃焼により発生する排ガス24が導入される2次燃焼室25と、この2次燃焼室25内に収容された、水素ガス18を酸素ガス19で燃焼させる水素ガスバーナー26とを備えた排ガス24の2次処理装置27を設けることもできる。なお、2次燃焼室25が接続される燃焼室はこの実施形態のようなPCB1を燃焼させる燃焼室4に限定されるものではなく、ゴミ等の各種の被燃焼物を燃焼させる従来公知の燃焼室を採用できる。
【0028】
水素ガスバーナー26は、図1及び図3に示すように、既述の水素ガスバーナー20とほぼ同様に構成されており、金属又は耐火物等から例えば円柱状に形成されている。この水素ガスバーナー26の柱軸の周囲には、複数の水素ガス供給孔26bが柱軸を中心とする円26c上に互いに間隔を開けて形成されている。水素ガス供給孔26bの外側にも、複数の酸素ガス供給孔26dが円26cよりも直径の大きい同心円26e上に互いに間隔を開けて形成されている。
【0029】
既述の水素・酸素ガス発生装置5は、ガス発生用の水の電気分解により発生させた水素ガス18と酸素ガス19とを分離した状態で水素ガスバーナー26へ供給可能である。水素ガス18と酸素ガス19とを分離した状態で水素ガスバーナー26へ供給するには、水素ガス18の配管を水素ガスバーナー26の例えば水素ガス供給孔26bの一端にそれぞれ接続し、酸素ガス19の配管を水素ガスバーナー26の例えば酸素ガス供給孔26dの一端にそれぞれ接続しておけばよい。この場合、水素ガス18は水素ガス供給孔26bの他端からそれぞれ噴射され、酸素ガス19は酸素ガス供給孔26dの他端からそれぞれ噴射されるので、水素ガス18は水素ガス供給孔26bの他端側の2次燃焼室25内で燃焼する。なお、この実施形態においては、水素・酸素ガス発生装置5が水素ガスバーナー20,26の両方へ水素ガス18及び酸素ガス19を供給可能であるが、これに限定されるものではなく、水素ガスバーナー26へは他の水素・酸素ガス発生手段により水素ガス及び酸素ガスを供給可能としておいてもよい。
【0030】
2次燃焼室25は例えば接続配管28により燃焼室4と接続されており、燃焼室4内の燃焼により発生する排ガス24が2次燃焼室25内に導入されるようになっている。そのため、2次燃焼室25内に導入された排ガス24にPCB1が残留している場合でも、この残留PCBは水素ガスバーナー26により1400℃以上の高温下で燃焼する。
【0031】
なお、接続配管28等により2次燃焼室25を、ゴミ等の被燃焼物を燃焼させる他の燃焼室に接続した場合において、この燃焼室内の燃焼により発生する排ガスに含まれる有害成分としては、PCBの他、ダイオキシン、塩素、窒素酸化物、硫黄酸化物等が挙げられる。この場合、2次燃焼室25内に導入された排ガスに上記のような有害成分が残留しているときでも、この有害成分は水素ガスバーナー26により1400℃以上の高温下で分解処理される。ここで、水素ガスバーナー26への水素ガス18や酸素ガス19の供給流量等の調節により、2次燃焼室25内の燃焼温度が1400℃よりも高温、好ましくは1700℃以上となるように制御すれば、有害成分の残留率を更に低減化できる。
【0032】
次に、無害化処理装置2を使用してPCB1を無害化処理する方法について説明する。
PCB1の無害化処理に際しては、まず、PCB溶液7と水8とを混合してエマルジョン9を生成させる。PCB溶液7は、ポンプ10,11及び静的混合器12で溶剤6にPCB1を溶解させてあらかじめ調製しておく。エマルジョン9は、貯留タンク14内に調製された水8とPCB溶液7との混合液15をポンプ16で静的混合器17に圧送して、この静的混合器17内を通過させることにより生成させる。
【0033】
生成したエマルジョン9は、水素ガスバーナー20が収容された燃焼室4内に噴霧され、このエマルジョン9に含まれるPCB1が水素ガスバーナー20により1400℃以上の高温下でほぼ完全に燃焼する。燃焼後のPCB1の残留率は10−8以下であり、コプラナーPCBやダイオキシン等の猛毒物も発生しない。このように、溶剤6や水素・酸素ガス発生手段においてガス発生用の水の電気分解により発生する水素ガス18及び酸素ガス19を使用するので、PCB1を低コストで無害化処理できるという利点がある。また、溶剤6により適当な粘度に調整したPCB溶液7を使用するので、エマルジョン9を効率良く生成させることができるという利点がある。
【0034】
なお、エマルジョン9中の水8の割合が増加すれば燃焼室4内の燃焼温度が低下するので、エマルジョン9中のPCB溶液7と水8との重量比を適宜に調節すれば、PCB1の燃焼温度を制御できる。この場合、燃焼温度が1400℃よりも高温、好ましくは1700℃以上となるように制御すれば、PCB1の残留率をより低減化できる。また、燃焼室4内に噴霧されたエマルジョン9中の水8は、燃焼室4内の高熱により爆発的に気化及び膨張し、エマルジョン9中のPCB溶液粒子が燃焼室4内に均一に拡散して燃焼するのを助長する効果を有している。
【0035】
ここで、水8にあらかじめ微粉炭22を添加しておけば、エマルジョン9中のPCB溶液粒子の分散性が向上するので、PCB溶液粒子をエマルジョン9中により均一に分散させることができるという利点がある。また、エマルジョン9中の微粉炭22の割合が増加すれば燃焼室4内の燃焼温度が上昇するので、エマルジョン9中のPCB溶液7と水8と微粉炭22との重量比を適宜に調節すれば、PCB1の燃焼温度を制御できる。
【0036】
また、水8にあらかじめアルカリ化合物23を添加しておいた場合でも、エマルジョン9中のPCB溶液粒子の分散性が向上するので、PCB溶液粒子をエマルジョン9中により均一に分散させることができるという利点がある。更に、水8にあらかじめアルカリ化合物23を添加しておけば、PCB1の燃焼時におけるアルカリ化合物23中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属とPCB1中の塩素(Cl)との反応により、PCB1中の塩素を効率良く回収できるという利点がある。
【0037】
加えて、2次燃焼室25内に、燃焼室4内の燃焼により発生する排ガス24を導入することによって、この排ガス24に含まれるPCB1を水素ガスバーナー26により1400℃以上で燃焼させれば、PCB1の残留率をより低減化できる。このように、水素・酸素ガス発生手段においてガス発生用の水の電気分解により発生する水素ガス18及び酸素ガス19を使用するので、PCB1等の有害成分を低コストで分解処理できるという利点がある。
【0038】
なお、燃焼室4内や2次燃焼室25内に燃焼温度を測定できる温度センサをそれぞれ設けておけば、燃焼室4内や2次燃焼室25内の各燃焼温度をモニタできるので、各燃焼温度を1400℃以上に維持し易いという利点がある。燃焼室4内の燃焼温度を1400℃以上に維持するには、既述のエマルジョン9中の水8や微粉炭22の量の調節の他、水素ガスバーナー20への水素ガス18や酸素ガス19の供給流量等を適宜に調節してもよい。また、燃焼室4内や2次燃焼室25内に酸素ガス19とは別に空気をそれぞれ供給すれば各燃焼温度が低下するので、空気の供給量を適宜に調節することによってもPCB1の各燃焼温度を制御できる。いずれにしても、燃焼状態の変動によりPCB1の燃焼効率が低下しないように調節すればよい。
【0039】
また、燃焼室4と2次燃焼室25とを接続する接続配管28等に燃焼室4内の燃焼により発生する排ガス24中のPCB残留量を測定できるPCBセンサを設けておけば、排ガス24中のPCB残留量をモニタできるので、PCB1の残留率を10−8以下に維持し易いという利点がある。PCB1の残留率を10−8以下に維持するには、燃焼室4内の燃焼温度の調節の他、エマルジョン9中のアルカリ化合物23の量を適宜に調節してもよい。いずれにしても、燃焼状態の変動によりPCB1の残留率が増加しないように調節すればよい。2次燃焼室25を、ゴミ等の被燃焼物を燃焼させる他の燃焼室に接続した場合は、この燃焼室内の燃焼により発生する排ガス中の有害成分の残留量を測定できる有害成分センサを接続配管28等に設けることができる。
【0040】
【発明の効果】
以上のように、請求項1の発明によれば、PCB溶液と水とを混合してエマルジョンを生成させ、燃焼室内にエマルジョンを噴霧することによって、PCBを水素ガスバーナーにより1400℃以上で燃焼させるので、PCBを低コストで無害化処理できる。また、溶剤により適当な粘度に調整したPCB溶液を使用するので、エマルジョンを効率良く生成させることができる。
【0041】
請求項2の発明によれば、水に微粉炭を添加しているので、PCB溶液粒子をエマルジョン中により均一に分散させることができる。また、エマルジョン中の微粉炭の割合が増加すれば燃焼室内の燃焼温度が上昇するので、エマルジョン中のPCB溶液と水と微粉炭との重量比を適宜に調節すれば、PCBの燃焼温度を制御できる。
【0042】
請求項3の発明によれば、水にアルカリ化合物を添加しているので、PCB溶液粒子をエマルジョン中により均一に分散させることができる。また、PCBの燃焼時におけるアルカリ化合物中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属とPCB中の塩素との反応により、PCB中の塩素を効率良く回収できる。
【0043】
請求項4〜6の発明によれば、請求項1〜3のPCBの無害化処理方法に好適な装置をそれぞれ提供できる。
【0044】
請求項7の発明によれば、2次燃焼室内に、燃焼室内の燃焼により発生する排ガスを導入することによって、この排ガスに含まれる有害成分を水素ガスバーナーにより1400℃以上で分解処理するので、有害成分を低コストで分解処理できる。
【0045】
請求項8の発明によれば、請求項7の排ガスの2次処理方法に好適な装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係るPCBの無害化処理装置の模式図。
【図2】燃焼室内に収容された水素ガスバーナーの一例を示す正面図。
【図3】2次燃焼室内に収容された水素ガスバーナーの一例を示す正面図。
【符号の説明】
1 PCB
2 無害化処理装置
3 エマルジョン生成装置(エマルジョン生成手段)
4 燃焼室
5 水素・酸素ガス発生装置(水素・酸素ガス発生手段)
6 溶剤
7 PCB溶液
8 水
9 エマルジョン
18 水素ガス
19 酸素ガス
20 水素ガスバーナー
21 コンプレッサ
22 微粉炭
23 アルカリ化合物
24 排ガス
25 2次燃焼室
26 水素ガスバーナー
27 2次処理装置
Claims (8)
- 溶剤にポリ塩化ビフェニルを溶解させたポリ塩化ビフェニル溶液と水とを混合してエマルジョンを生成させ、水素・酸素ガス発生手段においてガス発生用の水の電気分解により発生する水素ガスと酸素ガスとが分離した状態で供給される、水素ガスを酸素ガスで燃焼させる水素ガスバーナーが収容された燃焼室内に前記エマルジョンを噴霧することによって、前記ポリ塩化ビフェニルを前記水素ガスバーナーにより1400℃以上で燃焼させることを特徴とするポリ塩化ビフェニルの無害化処理方法。
- 前記水に微粉炭を添加した請求項1記載のポリ塩化ビフェニルの無害化処理方法。
- 前記水にアルカリ化合物を添加した請求項1又は2記載のポリ塩化ビフェニルの無害化処理方法。
- 溶剤にポリ塩化ビフェニルを溶解させたポリ塩化ビフェニル溶液と水とを混合してエマルジョンを生成させるエマルジョン生成手段と、
水素ガスを酸素ガスで燃焼させる水素ガスバーナーが収容された燃焼室と、
ガス発生用の水の電気分解により水素ガスと酸素ガスとを発生させ、これら水素ガスと酸素ガスとを分離した状態で前記水素ガスバーナーへ供給する水素・酸素ガス発生手段と、
前記燃焼室内に前記エマルジョンを噴霧する噴霧手段と、
を備えたことを特徴とするポリ塩化ビフェニルの無害化処理装置。 - 前記水に微粉炭を添加する微粉炭添加手段を備えた請求項5記載のポリ塩化ビフェニルの無害化処理装置。
- 前記水にアルカリ化合物を添加するアルカリ化合物添加手段を備えた請求項5又は6記載のポリ塩化ビフェニルの無害化処理装置。
- 水素・酸素ガス発生手段において水の電気分解により発生する水素ガスと酸素ガスとが分離した状態で供給される、水素ガスを酸素ガスで燃焼させる水素ガスバーナーが収容され且つ被燃焼物を燃焼させる燃焼室と接続された2次燃焼室内に、前記燃焼室内の燃焼により発生する排ガスを導入することによって、この排ガスに含まれる有害成分を前記水素ガスバーナーにより1400℃以上で分解処理することを特徴とする排ガスの2次処理方法。
- 被燃焼物を燃焼させる燃焼室と接続され且つこの燃焼室内の燃焼により発生する排ガスが導入される2次燃焼室と、
この2次燃焼室内に収容され且つ水素・酸素ガス発生手段において水の電気分解により発生する水素ガスと酸素ガスとが分離した状態で供給される、水素ガスを酸素ガスで燃焼させる水素ガスバーナーと、
を備えたことを特徴とする排ガスの2次処理装置。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2008206801A (ja) * | 2007-02-27 | 2008-09-11 | Kanji Kokubu | Pcbの分解処理装置 |
WO2009032190A2 (en) * | 2007-08-28 | 2009-03-12 | Transphorm, Inc. | Compact electric appliance for providing gas for combustion |
-
2002
- 2002-10-08 JP JP2002294632A patent/JP2004132558A/ja active Pending
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