JP2004128297A - 半導体レーザ素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】半導体レーザ素子の組み立て工程中に端面に付着したダストを容易なやり方により除去して、ダストが端面に付着していない半導体レーザ素子を製造する方法を提供する。
【解決手段】レーザバー状の半導体レーザ素子アレイを構成する半導体レーザ素子20のの出射端面及びリア端面に、フロント端面コート膜44、及びリア端面コート膜46を成膜する。フロント端端面コート膜44上及びリア端面コート膜46上の双方に、保護膜として膜厚50nmのKCl膜48を電子線蒸着法により蒸着させる。次いで、半導体レーザ素子アレイを半導体レーザ・モジュールに組み立てた後、半導体レーザ素子のフロント側端面及びリヤ側端面を純水により洗浄して、KCl膜を溶解させ、取り除く。モジュールの組み立て中、KCl膜上にはダストが付着するが、KCl膜の溶解に伴って除去され、清浄なフロント端面コート膜及びリヤ端面コート膜を露出させることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】レーザバー状の半導体レーザ素子アレイを構成する半導体レーザ素子20のの出射端面及びリア端面に、フロント端面コート膜44、及びリア端面コート膜46を成膜する。フロント端端面コート膜44上及びリア端面コート膜46上の双方に、保護膜として膜厚50nmのKCl膜48を電子線蒸着法により蒸着させる。次いで、半導体レーザ素子アレイを半導体レーザ・モジュールに組み立てた後、半導体レーザ素子のフロント側端面及びリヤ側端面を純水により洗浄して、KCl膜を溶解させ、取り除く。モジュールの組み立て中、KCl膜上にはダストが付着するが、KCl膜の溶解に伴って除去され、清浄なフロント端面コート膜及びリヤ端面コート膜を露出させることができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体レーザ素子の製造方法に関し、更に詳細には、高出力半導体レーザ素子の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高出力半導体レーザ素子、例えば出力500mW以上の高出力半導体レーザ素子は、光増幅器のポンプ光源、加工機器の光源、レーザディスプレイ用光源等に用いられている。
このような用途で用いられる高出力半導体レーザ素子は、端面の発光領域幅が50μm〜400μm程度と広い、いわゆるブロードストライプ型半導体レーザ素子が多い。また、高出力半導体レーザ素子は発熱量が多いので、半導体レーザ素子のチップをハンダでサブマウントへ融着し、更にサブマウントをヒートシンクへ融着して、ヒートシンクをペルチェ素子等により温度調節することにより、半導体レーザ素子の動作環境を所定の温度条件に保持することが多い。
【0003】
ところで、高出力半導体レーザ素子では、閾値電流密度を下げるために、一般的には、半導体レーザ素子のチップの出射端面及びリア端面に端面コーティングを施して、誘電体膜からなる端面コート膜を成膜している。
従来の半導体レーザ素子では、端面コート膜として、例えば、Al2 O3 膜、SiN膜、α−Si膜、TiO2 膜等の誘電体膜、更にはそれら誘電体膜を積層した誘電体多層膜を用いている。
【0004】
ここで、図8(a)及び(b)を参照して、半導体レーザ素子の端面コート膜の構成を説明する。図8(a)及び(b)は、それぞれ、半導体レーザ素子の概略的全体斜視図、及び図8(a)の線II−IIでの断面図である。
半導体レーザ素子10のフロント側端面(出射端面)及びリア側端面(リア端面)には、それぞれ、端面コート膜12及び14が成膜されている。ストライプ電極16に沿った断面II−IIで見て、図8(b)に示すように、フロント側端面に設けた端面コート膜12はAl2 O3 単層膜で構成され、リア側端面に設けた端面コート膜14はAl2 O3 膜14aとα−Si膜14bとを交互に3層ずつ設けた多層膜で構成されている。
【0005】
ところで、半導体レーザ素子チップを半導体レーザ装置として組み立てる過程では、必ずしも半導体レーザ素子の前工程と同じクラスのクリーンルームで組み立て作業を行うわけではないので、無機性及び有機性のダストやパーティクルが端面コート膜上に付着することが多い。
ダストやパーティクルが半導体レーザ素子の端面の発光領域上や発光領域の近傍領域上に付着していると、半導体レーザ素子を動作させたとき、レーザ光を吸収して局所的な発熱を引き起こし、その発熱が発光層の局所的な劣化を促進する。そして、この劣化が結晶内部を伝播して、半導体レーザ素子の故障の一因となり、素子全体の信頼性を低下させる。
そこで、製品検査段階で、半導体レーザ素子を検査し、ダストの付着した製品を不良品として出荷しないので、製品歩留まりが低下する。
【0006】
特に、ブロードストライプ型半導体レーザ素子等の超高出力レーザでは、端面の発光領域幅が50〜400μm程度と広く、ダストが付着し易いので、ダストの付着による素子信頼性の低下の問題が顕著である。
【0007】
また、半導体レーザ素子をアレイ状に配列した半導体レーザ素子アレイをモジュールとして組み立てる際には、例えば金錫、錫鉛、またはインジューム錫等の合金ハンダ、または、錫あるいはインジュームなどのハンダを使用して、半導体レーザ素子チップを接合する。
このハンダ付けの際、チップ面のハンダの濡れ性がハンダ表面の酸化等によって低下することを回避するために、例えばフラックス等の有機物を含む材料を使用することが多い。
接合の後、フラックスを洗浄して取り除くものの、フラックスの残渣が、半導体レーザ素子の端面に残ると、ダストと同様に歩留まりの低下や信頼性の低下を引き起こしていた。
【0008】
特開2001−15623号公報は、組み立て後にパッケージ内部およびパッケージを密封する窓付きキャップをオゾン水によりクリーニングし、その後、パッケージを窓付きキャップにより密封する手法を開示している。
しかし、単に洗浄する方法では、チップ端面に強固に付着したダストや、フラックス等の有機物残渣が洗浄後にも残り、これがレーザ素子の信頼性の低下を招く原因となる。特に、発光領域の広いブロードストライプ型半導体レーザ素子では、僅かな残渣が出射端面に残っていても、それを起点に劣化が始まるので、深刻な問題となる。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−15623号公報(第4頁及び第5頁)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、ダストが半導体レーザ素子の端面の発光強度の高い領域上や発光領域の近傍領域上に付着すると、ダストがレーザ光を吸収するために局所的な発熱が生じ、局所的な劣化を促進する。そして、半導体レーザ素子の動作中に劣化が結晶内部を伝播して、故障の原因になる。端面の発光領域幅が50〜400μm程度と広いブロードストライプ型半導体レーザ素子等の超高出力半導体レーザ素子では、ダストが付着し易いので、この現象が著しい。
しかし、従来の技術では、ダスト付着による半導体レーザ素子の劣化を防止することが難しかった。
【0011】
以上のような事情に鑑みて、本発明の目的は、半導体レーザ素子の組み立て工程中に端面に付着したダストを容易な方法で除去して、ダストが端面に付着していない半導体レーザ素子を製造する方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る半導体レーザ素子の製造方法(以下、第1の発明方法と言う)は、半導体レーザ素子を製造する際、
半導体レーザ素子のレーザ構造を構成する、化合物半導体層からなる積層構造を形成し、次いで半導体レーザ素子の出射端面及びリヤ端面に端面コーティングを行って、出射端面及びリヤ端面のそれぞれに誘電体薄膜を成膜する工程に続いて、
水溶性物質からなる薄膜を保護膜として出射端面の誘電体薄膜上に成膜する工程と、
所定の工程を経た後、半導体レーザ素子の出射端面を水洗浄して保護膜を溶解し、除去する工程と
を有することを特徴としている。
【0013】
本発明に係る別の半導体レーザ素子の製造方法(以下、第2の発明方法と言う)は、半導体レーザ素子を製造する際、
半導体レーザ素子のレーザ構造を構成する、化合物半導体層からなる積層構造を形成し、次いで半導体レーザ素子の出射端面及びリヤ端面に端面コーティングを行って、出射端面及びリヤ端面のそれぞれに誘電体薄膜を成膜する工程に続いて、
有機溶剤に溶解し易い有機物からなる薄膜を保護膜として出射端面の誘電体薄膜上に成膜する工程と、
所定の工程を経た後、半導体レーザ素子の出射端面を有機溶剤で洗浄して保護膜を溶解し、除去する工程と
を有することを特徴としている。
【0014】
本発明に係る更に別の半導体レーザ素子の製造方法(以下、第3の発明方法と言う)は、半導体レーザ素子を製造する際、
半導体レーザ素子のレーザ構造を構成する、化合物半導体層からなる積層構造を形成し、次いで半導体レーザ素子の出射端面及びリヤ端面に端面コーティングを行って、出射端面及びリヤ端面のそれぞれに誘電体薄膜を成膜する工程に続いて、
昇華し易い物質からなる薄膜を保護膜として出射端面の誘電体薄膜上に成膜する工程と、
所定の工程を経た後、半導体レーザ素子の出射端面を加熱して保護膜を昇華させ、除去する工程と
を有することを特徴としている。
【0015】
本発明方法で、半導体レーザ素子とは、チップ状の半導体レーザ素子自体に加えて、半導体レーザ素子を帯状或いは面状のアレイとして配列した半導体レーザ素子アレイ、更には半導体レーザ素子に出力制御用の受光素子、サブマウント、及びヒートシンクを取り付け、組み立てた半導体レーザ・モジュールを含む概念である。
【0016】
本発明方法では、除去し易い保護膜、例えば水溶性薄膜、有機溶媒に対して易溶性の有機薄膜、昇華し易い薄膜等を端面コート膜上に成膜し、次いで所定の工程を経た後、保護膜を除去する。
これにより、組み立て作業等の所定の作業工程中は、パーティクル、ダストの付着に従来程気を使う必要なく、所定の作業を進めることができるので、所定の作業の能率を高めることができる。
また、所定の工程、例えば半導体レーザ素子チップをハンダで固定する作業の後、ダスト等の付着した保護膜を除去することにより、パーティクル、ダスト等の異物が付着していない清浄な端面を露出させることができる。
よって、半導体レーザ素子の組み立て作業の能率が向上し、かつ製品歩留りを高めることができる。
【0017】
第1の発明方法では、保護膜として水溶性の薄膜である限り、膜種には制約は無いが、好適には、KCl膜、NaCl膜、及びMgCl2 膜のいずれかを成膜する。
これらの膜は、水に溶解し易い水溶性の塩類であって、しかも端面コート膜に悪い影響を及ぼすようなことはない。
【0018】
また、第2及び第3の発明方法では、保護膜として樟脳(C10H16O)又はナフタレン(C10H8 )を成膜する。
これらの有機薄膜は、アセトン等の有機溶媒に溶解し易い有機物であって、しかも端面コート膜に悪い影響を及ぼすようなことはない。また、これらの膜は、加熱して昇温することにより、昇華させることによって容易に取り除くことができる。
【0019】
本発明方法は、半導体レーザ素子の積層構造を構成する化合物半導体層の組成に制約なく適用でき、また、誘電体薄膜に損傷を与えない材料であって、本発明方法で特定した材料である限り、保護膜の材料に制約は無い。
また、半導体レーザ素子の出射端面に加えて、本発明方法をリア端面にも適用してもよい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に、実施形態例を挙げ、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を具体的かつ詳細に説明する。尚、以下の実施形態例で示す成膜方法、化合物半導体層の組成及び膜厚、リッジ幅、プロセス条件等は、本発明の理解を容易にするための一つの例示であって、本発明はこの例示に限定されるものではない。
実施形態例1
本実施形態例は第1の発明方法に係る半導体レーザ素子の製造方法の実施形態の一例である。図1(a)及び(b)は、それぞれ、本実施形態例の方法により製造した半導体レーザ素子の概略的全体斜視図、及び図1(a)の線I−Iでの断面図である。図2は本実施形態例の方法により製造した半導体レーザ素子の層構成を示す断面図、図3は半導体レーザ・アレイの斜視図、及び図4は半導体レーザ・モジュールの斜視図である。
本実施形態例の方法では、先ず、図2に示すような積層構造を備えた、発振波長808nm帯の半導体レーザ素子20を作製する。
【0021】
半導体レーザ素子20の作製に際しては、図2に示すように、n型GaAs基板22上に、減圧下、例えば100Torr程度の減圧下で、有機金属化学気相成長(MOCVD)法等のエピタキシャル成長法により、膜厚0.5μmのn型GaAs第1バッファ層24、膜厚0.5μmのn型Al0.3 Ga0.7 As第2バッファ層26、膜厚1.8μmのn型Al0.47Ga0.53Asクラッド層28、活性層/ガイド層30、膜厚1.8μmのp型Al0.47Ga0.53Asクラッド層32、及び膜厚0.5μmのp型GaAsキャップ層34をエピタキシャル成長させ、ダブルヘテロ(DH)接合の積層構造を形成する。
【0022】
活性層/ガイド層30は、膜厚60nm以上65nm以下のAl0.3 Ga0.7 Asガイド層と、屈折率がガイド層より大きい膜厚10nmのAl0.1 Ga0.9 As活性層と、膜厚60nm以上65nm以下のAl0.3 Ga0.7 Asガイド層との3層積層膜として構成する。
【0023】
次いで、電流非注入領域38の形成工程に移行する。先ず、p型GaAsキャップ層34上に、ストライプ状に電流注入領域36を覆い、その両側のp型GaAsキャップ層34を露出させるような開口パターンを有するイオン注入用マスクをAl膜等により形成する。
次いで、マスク上からB+ (ボロン)等のイオンをイオン注入して、電気抵抗の高い電流非注入領域38をp型GaAsキャップ層34及びp型AlGaAsクラッド層32の上部に形成する。
イオン注入により、p型AlGaAsクラッド層32の上部及びp型GaAsキャップ層34からなる電流注入領域36は、幅が広い、例えばストライプ幅Wが100μmのリッジ状ワイドストライプとして形成される。リッジ状ワイドストライプの両側は電流非注入領域38となっている。
ストライプ幅の設定の際には、半導体レーザ素子の最大光出力や共振器長を考慮して、50〜400μmの範囲でストライプ幅を設定する。
【0024】
次いで、金属膜、例えばTi/Pt/Auの多層金属膜からなるp側電極40を、p型GaAsキャップ層34全面、つまり電流注入領域36及び電流非注入領域38の双方上に形成する。
また、n型GaAs基板22の裏面を研磨して、所定の基板厚さに調整し、次いで金属膜、例えばAuGe/Ni/Auの多層金属膜からなるn側電極42をn型GaAs基板22の裏面に形成する。
【0025】
以上の工程を経て、図2に示すレーザ構造を有するGaAsウエハを作製することができる。続いて、GaAsウエハを劈開して、図3に示すように、半導体レーザ素子20を並列に配列してなるレーザバー状の半導体レーザ素子アレイ43を作製する。
【0026】
次いで、共振器端面の反射率を制御して、高出力を低い電流値で得られるように、図1(b)に示すように、半導体レーザ素子20の出射端面及びリア端面に、それぞれ、フロント端面コート膜44、及びリア端面コート膜46を成膜する。
反射率は、光を出射する側(フロント端面)とその反対側(リア端面)にそれぞれ端面コーティングを施して、フロント反射率が15%になるフロント端面コート膜44、リア反射率が95%になるリア端面コート膜46を成膜する。
設定した反射率を得るために、フロント端面には、フロント端面コート膜44として膜厚330nmのAl2 O3 膜を電子線蒸着法で蒸着する。また、リア端面には、膜厚120nmのAl2 O3 膜46aと膜厚49nmのアモルファスシリコン(α−Si)膜46bとを交互に3回を電子線蒸着法で蒸着して6層膜からなる端面コート膜46を形成する。
【0027】
次いで、本実施形態例では、図1(a)及び(b)に示すように、フロント端端面コート膜44上及びリア端面コート膜46上の双方に、保護膜として膜厚50nmのKCl膜48を電子線蒸着法により蒸着させる。
【0028】
次いで、半導体レーザ素子アレイ43を図4に示す半導体レーザ・モジュール50に組み立てる。
先ず、サブマウント52を介して半導体レーザ素子アレイ43の発熱をヒートシンク54に迅速に逃がすために、Cu製等の熱伝導率の高い材料からなるサブマウント52をヒートシンク54にインジューム錫の合金ハンダを使用して接合する。ヒートシンク54は、SiC、CuW、ダイヤモンド等の熱伝導率の大きい材料で形成されている。
次いで、半導体レーザ素子アレイ43をサブマウント52にインジューム鉛の合金ハンダを使用して、接合する。
【0029】
半導体レーザ素子アレイ43をサブマウント52にハンダ接合する際、サブマウント52に半導体レーザ素子アレイ43のレーザ構造を結晶成長させた側、つまりn型GaAs基板22とは反対側を接合する。そして、半導体レーザ素子アレイ43を接合するサブマウント52の接合面のハンダの濡れ性がハンダ表面の酸化等によって低下することを防止するために、フラックスを含む材料を使用して、ハンダ接合を行う。
【0030】
また、半導体レーザ素子アレイ43に電流を供給するために、ヒートシンク54上にエポキシ樹脂又はガラス板からなる絶縁板56を介して−(マイナス)電極を構成するCu板58を取り付け、各半導体レーザ素子20のn側電極42とCu板からなる電極板58との間をAuワイヤまたはAu箔でボンディングする。
また、リヤ端面からのレーザ光を受光して、半導体レーザ素子20の光出力を検出するPDをアレイ状に配置してなるPDアレイ60を半導体レーザ素子アレイ43の各半導体レーザ素子20のリヤ端面に対向する位置に設置し、次いでPDアレイ60に対する必要な配線を設ける。
以上の工程を経ることにより、半導体レーザ・モジュール50を作製することができる。
【0031】
続いて、本実施形態例では、半導体レーザ・モジュール50のフロント側端面及びリヤ側端面を純水により洗浄して、両端面のKCl膜48を溶解させ、取り除く。
本実施形態例を実施した際、KCl膜48上には、ハンダフラックスや、組み立ての過程で付着した無機性ダストやパーティクル状の有機物が付着していたが、KCl膜48の溶解に伴って除去され、清浄なフロント端面コート膜44及びリヤ端面コート膜46を露出させることができた。
【0032】
本実施形態例では、KCl膜を保護膜として用いているが、KCl膜に代えて、NaCl、MgCl2 等の水溶性の塩類からなる膜を用いることができる。
本実施形態例を適用できる半導体レーザ素子は、AlGaAs系半導体レーザ素子に限らない。例えば、AlGaInP系半導体レーザのレーザアレイ、あるいは、AlGaInN系半導体レーザのレーザアレイにも本実施形態例を適用できる。
【0033】
実施形態例2
本実施形態例は第1の発明方法に係る半導体レーザ素子の製造方法の実施形態の別の例であって、図5は本実施形態例の方法により製造した半導体レーザ素子の層構造を示す断面図である。
本実施形態例で製造する半導体レーザ素子70は、発振波長640nm帯の埋め込みリッジ型のAlGaInP系半導体レーザ素子であって、図5に示すような層構造を備えている。
半導体レーザ素子70を作製する際には、先ず、n型GaAs基板72上に、MOCVD法によって、順次、n型Al(Ga)InPクラッド層74、アンドープのAlGaInP光導波層76、活性層78、アンドープのAlGaInP光導波層80、p型Al(Ga)InPクラッド層82、p型GaInPエッチング停止層84、p型AlGaInPクラッド層86、p型GaInP中間層88、およびp型GaAsキャップ層90をエピタキシャル成長させて、積層構造を形成する。
【0034】
n型GaAs基板72には、例えば{100}面から〈110〉方向に所定の角度、例えば8°〜16°程度オフした主面を有する基板を使用する。
また、活性層78には、アンドープのGaInP量子井戸層とアンドープのAlGaInP障壁層とからなるMQW構造を形成する。
次いで、GaInPエッチング停止層84を停止層にしてp型GaAsキャップ層90、p型GaInP中間層88、及びp型AlGaInPクラッド層86をエッチングして、ストライプ状リッジを形成する。
次いで、MOCVD法により、n型AlGaAs電流狭窄層92をリッジ両側のGaInPエッチング停止層84上に再成長させる。
これにより、リッジのp型AlGaInPクラッド層86の両側をn型AlGaAs電流狭窄層92で埋め込んだ電流狭窄構造を形成することができる。
【0035】
p型GaAsキャップ層90及びn型AlGaAs埋め込み層92上には例えばTi/Pt/Au電極からなるp側電極94を形成する。
また、n型GaAs基板72の裏面を研磨して所定の基板厚さに調整した後、n型GaAs基板72の裏面に例えばAuGe/Ni電極からなるn側電極96を形成する。
【0036】
レーザ構造を構成する各化合物半導体層の厚さの一例を挙げると、n型Al(Ga)InPクラッド層74の膜厚は1μm、AlGaInP光導波層76、80の膜厚は、それぞれ、50nm、GaInP量子井戸層の膜厚は5nm、AlGaInP障壁層の膜厚は5nm、p型Al(Ga)InPクラッド層82の膜厚は0.15〜0.5μm、p型GaInPエッチング停止層84の膜厚は10〜500nm、p型AlGaInPクラッド層86の厚さは0.8μm、及びp型GaAsキャップ層10の膜厚は0.3μmである。
【0037】
以上の工程を経て、図5に示すレーザ構造を有するGaAsウエハを作製することができる。
続いて、実施形態例1と同様にして、GaAsウエハを劈開し、図6に示すように、半導体レーザ素子70を並列に配列してなるレーザバー状の半導体レーザ素子アレイ98を作製する。
【0038】
次いで、共振器端面の反射率を制御して、高出力を低い電流値で得られるように、図7に示すように、半導体レーザ素子70の出射端面及びリア端面に、それぞれ、端面コーティングを施して、フロント反射率が15%になるフロント端面コート膜100及びリア反射率が95%になるリア端面コート膜102を成膜する。
設定した反射率を得るために、フロント端面には、フロント端面コート膜100として膜厚250nmのAl2 O3 膜を電子線蒸着法で蒸着する。また、リア端面には、膜厚99nmのAl2 O3 膜100aと膜厚45nmのアモルファスシリコン(α−Si)膜100bとを交互に3回を電子線蒸着法で蒸着して6層膜からなる端面コート膜102を成膜する。
【0039】
次いで、本実施形態例では、図7に示すように、フロント端端面コート膜100上及びリア端面コート膜102上の双方に、保護膜として膜厚50nmのMgCl2 膜104を電子線蒸着法により蒸着させる。
【0040】
続いて、実施形態例1と同様にして、半導体レーザ素子アレイ98を半導体レーザ・モジュールとして組み立てる。
続いて、本実施形態例では、半導体レーザ・モジュール98のフロント側端面及びリヤ側端面を純水により洗浄して、MgCl2 膜104を溶解させ、取り除く。
本実施形態例を実施した際、MgCl2 膜104上には、ハンダフラックスや、組み立ての過程で付着した無機性ダストやパーティクル状の有機物が付着していたが、MgCl2 膜104の溶解に伴って除去され、清浄なフロント端面コート膜100及びリヤ端面コート膜102を露出させることができた。
【0041】
本実施形態例では、MgCl2 膜を保護膜として用いているが、MgCl2 膜に代えて、KCl、NaCl等の水溶性の塩類からなる膜を好適に用いることができる。
【0042】
実施形態例3
本実施形態例は、第2の発明方法に係る半導体レーザ素子の製造方法の実施形態の一例である。
本実施形態例では、実施形態例1のKCl膜48及び実施形態例2のMgCl2 膜104に代えて、樟脳(C10H16O、融点178℃、沸点209℃)やナフタレン(C10H8 、融点81℃、沸点218℃)からなる膜厚100nmの有機薄膜をフロント端面コート膜及びリヤ端面コート膜上に成膜する。
次いで、所定の工程を経た後、アセトン等の有機溶剤で洗浄して、有機薄膜を除去する。有機薄膜で保護することにより、実施形態例1及び2と同様の効果を得ることができる。
【0043】
実施形態例4
本実施形態例は、第3の発明方法に係る半導体レーザ素子の製造方法の実施形態の一例である。
本実施形態例では、実施形態例3と同様に、樟脳(C10H16O、融点178℃、沸点209℃)やナフタレン(C10H8 、融点81℃、沸点218℃)からなる膜厚100nmの有機薄膜をフロント端面コート膜及びリヤ端面コート膜上に成膜する。
次いで、所定の工程を経た後、有機薄膜を加熱して蒸発又は昇華させる。これにより、実施形態例1及び2と同様の効果を得ることができる。
【0044】
実施形態例1から4では、いわゆるレーザバー状の半導体レーザ素子アレイの端面に保護膜を塗布し、次いで半導体レーザ・モジュールに組み立てる例を示したが、これに限らず、いわゆるレーザバーをペレタイズして、チップ状の半導体レーザ素子に加工し、各チップの出射端面及びリア端面に保護膜を成膜する。次いで、チップ状の半導体レーザ素子を支持体又は装置に組み立てた後に、半導体レーザ素子チップの出射端面及びリア端面の保護膜を除去するようにしても良い。
また、レーザバー状の半導体レーザ素子アレイに代えて、チップ状の半導体レーザ素子を並列に配置してレーザアレイにした形態、あるいは、複数のレーザバーを並列に配置した面状のレーザアレイにも実施形態例1から4の方法を適用できる。
【0045】
言うまでもないが、本発明方法の適用は、光増幅器用ポンプ光源、レーザ加工機、レーザ溶接機等に用いられる高出力半導体レーザ素子に限定されるものではなく、端面出射型の半導体レーザ素子全般に適用できる。また、ダスト付着の影響が顕著な出射端面のみに適用することもできる。
また、出射端面にのみ保護膜を設けることにより、面発光型半導体レーザ素子にも適用できる。
以上、本発明方法を実施形態例1から4により説明したが、本発明方法は本発明の主旨に従い種々の変形が可能であり、本発明の範囲からこれらを排除するものではない。
【0046】
【発明の効果】
第1及び第2の発明方法によれば、水溶性物質からなる薄膜又は有機溶剤に可溶性の物質からなる薄膜を保護膜として端面の誘電体薄膜上に成膜し、所定の工程を経た後、端面を水洗浄又は有機溶剤による洗浄を施して、保護膜を溶解して除去する。これにより、本来、誘電体薄膜上に付着するダスト等を保護膜上に付着させ、保護膜の除去と共に清浄な端面を露出させることができる。
更に説明すると、溶解により容易に除去できる保護膜を端面に設けることにより、組み立て作業等の所定の作業工程中は、パーティクル、ダストの付着に従来程気を使う必要なく、所定の作業に集中できるので、所定の作業の能率を高めることができる。また、所定の工程、例えば半導体レーザ素子チップをハンダで固定する工程の後、ダスト等の付着した保護膜を除去することにより、パーティクル、ダスト等の異物が付着していない清浄な端面を露出させることができる。
よって、半導体レーザ素子の組み立て作業の能率が向上し、かつ製品歩留りを高めることができる。
また、保護膜の面積が小さく、短時間で洗浄できるので、塗布及び除去処理が簡単であり、コストが嵩むこともなく、また手間が要しない。
更には、半導体レーザ素子の故障の原因となるダストが付着していない出射端面を有し、高い長期信頼性を有する高品質の半導体レーザ素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)及び(b)は、それぞれ、実施形態例1の方法により製造した半導体レーザ素子の概略的全体斜視図、及び図1(a)の線I−Iでの断面図である。
【図2】実施形態例1の方法により製造した半導体レーザ素子の層構成を示す断面図である。
【図3】半導体レーザ・アレイの斜視図である。
【図4】半導体レーザ・モジュールの斜視図である。
【図5】実施形態例2の方法により製造した半導体レーザ素子の層構成を示す断面図である。
【図6】半導体レーザ・アレイの斜視図である。
【図7】半導体レーザ素子の端面コート膜及び保護膜の構成を示す断面図である。
【図8】図8(a)及び(b)は、それぞれ、半導体レーザ素子の概略的全体斜視図、及び図8(a)の線II−IIでの断面図である。
【符号の説明】
10……半導体レーザ素子、12……フロント端面コート膜、14……リア端面コート膜、16……ストライプ電極、20……実施形態例1の方法により作製した半導体レーザ素子の層構造、22……n型GaAs基板、24……n型GaAs第1バッファ層、26……n型AlGaAs第2バッファ層、28……n型AlGaAsクラッド層、30……活性層/ガイド層、32……p型AlGaAsクラッド層、34……p型GaAsキャップ層、36……電流注入領域、38……電流非注入領域、40……p側電極、42……n側電極、43……半導体レーザ素子アレイ、44……フロント端面コート膜、46……リア端面コート膜、48……KCl膜、50……半導体レーザ・モジュール、52……サブマウント、54……ヒートシンク、56……絶縁板、58……電極板、60……PDアレイ、70……実施形態例2で製造した半導体レーザ素子の層構造、72……n型GaAs基板、74……n型Al(Ga)InPクラッド層、76……アンドープのAlGaInP光導波層、78……活性層、80……アンドープのAlGaInP光導波層、82……p型Al(Ga)InPクラッド層、84……p型GaInPエッチング停止層、86……p型AlGaInPクラッド層、88……p型GaInP中間層、90……p型GaAsキャップ層、92……n型AlGaAs電流狭窄層、94……p側電極、96……n側電極、98……半導体レーザ素子アレイ、100……フロント端面コート膜、102……リア端面コート膜、104……MgCl2 膜。
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体レーザ素子の製造方法に関し、更に詳細には、高出力半導体レーザ素子の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高出力半導体レーザ素子、例えば出力500mW以上の高出力半導体レーザ素子は、光増幅器のポンプ光源、加工機器の光源、レーザディスプレイ用光源等に用いられている。
このような用途で用いられる高出力半導体レーザ素子は、端面の発光領域幅が50μm〜400μm程度と広い、いわゆるブロードストライプ型半導体レーザ素子が多い。また、高出力半導体レーザ素子は発熱量が多いので、半導体レーザ素子のチップをハンダでサブマウントへ融着し、更にサブマウントをヒートシンクへ融着して、ヒートシンクをペルチェ素子等により温度調節することにより、半導体レーザ素子の動作環境を所定の温度条件に保持することが多い。
【0003】
ところで、高出力半導体レーザ素子では、閾値電流密度を下げるために、一般的には、半導体レーザ素子のチップの出射端面及びリア端面に端面コーティングを施して、誘電体膜からなる端面コート膜を成膜している。
従来の半導体レーザ素子では、端面コート膜として、例えば、Al2 O3 膜、SiN膜、α−Si膜、TiO2 膜等の誘電体膜、更にはそれら誘電体膜を積層した誘電体多層膜を用いている。
【0004】
ここで、図8(a)及び(b)を参照して、半導体レーザ素子の端面コート膜の構成を説明する。図8(a)及び(b)は、それぞれ、半導体レーザ素子の概略的全体斜視図、及び図8(a)の線II−IIでの断面図である。
半導体レーザ素子10のフロント側端面(出射端面)及びリア側端面(リア端面)には、それぞれ、端面コート膜12及び14が成膜されている。ストライプ電極16に沿った断面II−IIで見て、図8(b)に示すように、フロント側端面に設けた端面コート膜12はAl2 O3 単層膜で構成され、リア側端面に設けた端面コート膜14はAl2 O3 膜14aとα−Si膜14bとを交互に3層ずつ設けた多層膜で構成されている。
【0005】
ところで、半導体レーザ素子チップを半導体レーザ装置として組み立てる過程では、必ずしも半導体レーザ素子の前工程と同じクラスのクリーンルームで組み立て作業を行うわけではないので、無機性及び有機性のダストやパーティクルが端面コート膜上に付着することが多い。
ダストやパーティクルが半導体レーザ素子の端面の発光領域上や発光領域の近傍領域上に付着していると、半導体レーザ素子を動作させたとき、レーザ光を吸収して局所的な発熱を引き起こし、その発熱が発光層の局所的な劣化を促進する。そして、この劣化が結晶内部を伝播して、半導体レーザ素子の故障の一因となり、素子全体の信頼性を低下させる。
そこで、製品検査段階で、半導体レーザ素子を検査し、ダストの付着した製品を不良品として出荷しないので、製品歩留まりが低下する。
【0006】
特に、ブロードストライプ型半導体レーザ素子等の超高出力レーザでは、端面の発光領域幅が50〜400μm程度と広く、ダストが付着し易いので、ダストの付着による素子信頼性の低下の問題が顕著である。
【0007】
また、半導体レーザ素子をアレイ状に配列した半導体レーザ素子アレイをモジュールとして組み立てる際には、例えば金錫、錫鉛、またはインジューム錫等の合金ハンダ、または、錫あるいはインジュームなどのハンダを使用して、半導体レーザ素子チップを接合する。
このハンダ付けの際、チップ面のハンダの濡れ性がハンダ表面の酸化等によって低下することを回避するために、例えばフラックス等の有機物を含む材料を使用することが多い。
接合の後、フラックスを洗浄して取り除くものの、フラックスの残渣が、半導体レーザ素子の端面に残ると、ダストと同様に歩留まりの低下や信頼性の低下を引き起こしていた。
【0008】
特開2001−15623号公報は、組み立て後にパッケージ内部およびパッケージを密封する窓付きキャップをオゾン水によりクリーニングし、その後、パッケージを窓付きキャップにより密封する手法を開示している。
しかし、単に洗浄する方法では、チップ端面に強固に付着したダストや、フラックス等の有機物残渣が洗浄後にも残り、これがレーザ素子の信頼性の低下を招く原因となる。特に、発光領域の広いブロードストライプ型半導体レーザ素子では、僅かな残渣が出射端面に残っていても、それを起点に劣化が始まるので、深刻な問題となる。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−15623号公報(第4頁及び第5頁)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、ダストが半導体レーザ素子の端面の発光強度の高い領域上や発光領域の近傍領域上に付着すると、ダストがレーザ光を吸収するために局所的な発熱が生じ、局所的な劣化を促進する。そして、半導体レーザ素子の動作中に劣化が結晶内部を伝播して、故障の原因になる。端面の発光領域幅が50〜400μm程度と広いブロードストライプ型半導体レーザ素子等の超高出力半導体レーザ素子では、ダストが付着し易いので、この現象が著しい。
しかし、従来の技術では、ダスト付着による半導体レーザ素子の劣化を防止することが難しかった。
【0011】
以上のような事情に鑑みて、本発明の目的は、半導体レーザ素子の組み立て工程中に端面に付着したダストを容易な方法で除去して、ダストが端面に付着していない半導体レーザ素子を製造する方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る半導体レーザ素子の製造方法(以下、第1の発明方法と言う)は、半導体レーザ素子を製造する際、
半導体レーザ素子のレーザ構造を構成する、化合物半導体層からなる積層構造を形成し、次いで半導体レーザ素子の出射端面及びリヤ端面に端面コーティングを行って、出射端面及びリヤ端面のそれぞれに誘電体薄膜を成膜する工程に続いて、
水溶性物質からなる薄膜を保護膜として出射端面の誘電体薄膜上に成膜する工程と、
所定の工程を経た後、半導体レーザ素子の出射端面を水洗浄して保護膜を溶解し、除去する工程と
を有することを特徴としている。
【0013】
本発明に係る別の半導体レーザ素子の製造方法(以下、第2の発明方法と言う)は、半導体レーザ素子を製造する際、
半導体レーザ素子のレーザ構造を構成する、化合物半導体層からなる積層構造を形成し、次いで半導体レーザ素子の出射端面及びリヤ端面に端面コーティングを行って、出射端面及びリヤ端面のそれぞれに誘電体薄膜を成膜する工程に続いて、
有機溶剤に溶解し易い有機物からなる薄膜を保護膜として出射端面の誘電体薄膜上に成膜する工程と、
所定の工程を経た後、半導体レーザ素子の出射端面を有機溶剤で洗浄して保護膜を溶解し、除去する工程と
を有することを特徴としている。
【0014】
本発明に係る更に別の半導体レーザ素子の製造方法(以下、第3の発明方法と言う)は、半導体レーザ素子を製造する際、
半導体レーザ素子のレーザ構造を構成する、化合物半導体層からなる積層構造を形成し、次いで半導体レーザ素子の出射端面及びリヤ端面に端面コーティングを行って、出射端面及びリヤ端面のそれぞれに誘電体薄膜を成膜する工程に続いて、
昇華し易い物質からなる薄膜を保護膜として出射端面の誘電体薄膜上に成膜する工程と、
所定の工程を経た後、半導体レーザ素子の出射端面を加熱して保護膜を昇華させ、除去する工程と
を有することを特徴としている。
【0015】
本発明方法で、半導体レーザ素子とは、チップ状の半導体レーザ素子自体に加えて、半導体レーザ素子を帯状或いは面状のアレイとして配列した半導体レーザ素子アレイ、更には半導体レーザ素子に出力制御用の受光素子、サブマウント、及びヒートシンクを取り付け、組み立てた半導体レーザ・モジュールを含む概念である。
【0016】
本発明方法では、除去し易い保護膜、例えば水溶性薄膜、有機溶媒に対して易溶性の有機薄膜、昇華し易い薄膜等を端面コート膜上に成膜し、次いで所定の工程を経た後、保護膜を除去する。
これにより、組み立て作業等の所定の作業工程中は、パーティクル、ダストの付着に従来程気を使う必要なく、所定の作業を進めることができるので、所定の作業の能率を高めることができる。
また、所定の工程、例えば半導体レーザ素子チップをハンダで固定する作業の後、ダスト等の付着した保護膜を除去することにより、パーティクル、ダスト等の異物が付着していない清浄な端面を露出させることができる。
よって、半導体レーザ素子の組み立て作業の能率が向上し、かつ製品歩留りを高めることができる。
【0017】
第1の発明方法では、保護膜として水溶性の薄膜である限り、膜種には制約は無いが、好適には、KCl膜、NaCl膜、及びMgCl2 膜のいずれかを成膜する。
これらの膜は、水に溶解し易い水溶性の塩類であって、しかも端面コート膜に悪い影響を及ぼすようなことはない。
【0018】
また、第2及び第3の発明方法では、保護膜として樟脳(C10H16O)又はナフタレン(C10H8 )を成膜する。
これらの有機薄膜は、アセトン等の有機溶媒に溶解し易い有機物であって、しかも端面コート膜に悪い影響を及ぼすようなことはない。また、これらの膜は、加熱して昇温することにより、昇華させることによって容易に取り除くことができる。
【0019】
本発明方法は、半導体レーザ素子の積層構造を構成する化合物半導体層の組成に制約なく適用でき、また、誘電体薄膜に損傷を与えない材料であって、本発明方法で特定した材料である限り、保護膜の材料に制約は無い。
また、半導体レーザ素子の出射端面に加えて、本発明方法をリア端面にも適用してもよい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に、実施形態例を挙げ、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を具体的かつ詳細に説明する。尚、以下の実施形態例で示す成膜方法、化合物半導体層の組成及び膜厚、リッジ幅、プロセス条件等は、本発明の理解を容易にするための一つの例示であって、本発明はこの例示に限定されるものではない。
実施形態例1
本実施形態例は第1の発明方法に係る半導体レーザ素子の製造方法の実施形態の一例である。図1(a)及び(b)は、それぞれ、本実施形態例の方法により製造した半導体レーザ素子の概略的全体斜視図、及び図1(a)の線I−Iでの断面図である。図2は本実施形態例の方法により製造した半導体レーザ素子の層構成を示す断面図、図3は半導体レーザ・アレイの斜視図、及び図4は半導体レーザ・モジュールの斜視図である。
本実施形態例の方法では、先ず、図2に示すような積層構造を備えた、発振波長808nm帯の半導体レーザ素子20を作製する。
【0021】
半導体レーザ素子20の作製に際しては、図2に示すように、n型GaAs基板22上に、減圧下、例えば100Torr程度の減圧下で、有機金属化学気相成長(MOCVD)法等のエピタキシャル成長法により、膜厚0.5μmのn型GaAs第1バッファ層24、膜厚0.5μmのn型Al0.3 Ga0.7 As第2バッファ層26、膜厚1.8μmのn型Al0.47Ga0.53Asクラッド層28、活性層/ガイド層30、膜厚1.8μmのp型Al0.47Ga0.53Asクラッド層32、及び膜厚0.5μmのp型GaAsキャップ層34をエピタキシャル成長させ、ダブルヘテロ(DH)接合の積層構造を形成する。
【0022】
活性層/ガイド層30は、膜厚60nm以上65nm以下のAl0.3 Ga0.7 Asガイド層と、屈折率がガイド層より大きい膜厚10nmのAl0.1 Ga0.9 As活性層と、膜厚60nm以上65nm以下のAl0.3 Ga0.7 Asガイド層との3層積層膜として構成する。
【0023】
次いで、電流非注入領域38の形成工程に移行する。先ず、p型GaAsキャップ層34上に、ストライプ状に電流注入領域36を覆い、その両側のp型GaAsキャップ層34を露出させるような開口パターンを有するイオン注入用マスクをAl膜等により形成する。
次いで、マスク上からB+ (ボロン)等のイオンをイオン注入して、電気抵抗の高い電流非注入領域38をp型GaAsキャップ層34及びp型AlGaAsクラッド層32の上部に形成する。
イオン注入により、p型AlGaAsクラッド層32の上部及びp型GaAsキャップ層34からなる電流注入領域36は、幅が広い、例えばストライプ幅Wが100μmのリッジ状ワイドストライプとして形成される。リッジ状ワイドストライプの両側は電流非注入領域38となっている。
ストライプ幅の設定の際には、半導体レーザ素子の最大光出力や共振器長を考慮して、50〜400μmの範囲でストライプ幅を設定する。
【0024】
次いで、金属膜、例えばTi/Pt/Auの多層金属膜からなるp側電極40を、p型GaAsキャップ層34全面、つまり電流注入領域36及び電流非注入領域38の双方上に形成する。
また、n型GaAs基板22の裏面を研磨して、所定の基板厚さに調整し、次いで金属膜、例えばAuGe/Ni/Auの多層金属膜からなるn側電極42をn型GaAs基板22の裏面に形成する。
【0025】
以上の工程を経て、図2に示すレーザ構造を有するGaAsウエハを作製することができる。続いて、GaAsウエハを劈開して、図3に示すように、半導体レーザ素子20を並列に配列してなるレーザバー状の半導体レーザ素子アレイ43を作製する。
【0026】
次いで、共振器端面の反射率を制御して、高出力を低い電流値で得られるように、図1(b)に示すように、半導体レーザ素子20の出射端面及びリア端面に、それぞれ、フロント端面コート膜44、及びリア端面コート膜46を成膜する。
反射率は、光を出射する側(フロント端面)とその反対側(リア端面)にそれぞれ端面コーティングを施して、フロント反射率が15%になるフロント端面コート膜44、リア反射率が95%になるリア端面コート膜46を成膜する。
設定した反射率を得るために、フロント端面には、フロント端面コート膜44として膜厚330nmのAl2 O3 膜を電子線蒸着法で蒸着する。また、リア端面には、膜厚120nmのAl2 O3 膜46aと膜厚49nmのアモルファスシリコン(α−Si)膜46bとを交互に3回を電子線蒸着法で蒸着して6層膜からなる端面コート膜46を形成する。
【0027】
次いで、本実施形態例では、図1(a)及び(b)に示すように、フロント端端面コート膜44上及びリア端面コート膜46上の双方に、保護膜として膜厚50nmのKCl膜48を電子線蒸着法により蒸着させる。
【0028】
次いで、半導体レーザ素子アレイ43を図4に示す半導体レーザ・モジュール50に組み立てる。
先ず、サブマウント52を介して半導体レーザ素子アレイ43の発熱をヒートシンク54に迅速に逃がすために、Cu製等の熱伝導率の高い材料からなるサブマウント52をヒートシンク54にインジューム錫の合金ハンダを使用して接合する。ヒートシンク54は、SiC、CuW、ダイヤモンド等の熱伝導率の大きい材料で形成されている。
次いで、半導体レーザ素子アレイ43をサブマウント52にインジューム鉛の合金ハンダを使用して、接合する。
【0029】
半導体レーザ素子アレイ43をサブマウント52にハンダ接合する際、サブマウント52に半導体レーザ素子アレイ43のレーザ構造を結晶成長させた側、つまりn型GaAs基板22とは反対側を接合する。そして、半導体レーザ素子アレイ43を接合するサブマウント52の接合面のハンダの濡れ性がハンダ表面の酸化等によって低下することを防止するために、フラックスを含む材料を使用して、ハンダ接合を行う。
【0030】
また、半導体レーザ素子アレイ43に電流を供給するために、ヒートシンク54上にエポキシ樹脂又はガラス板からなる絶縁板56を介して−(マイナス)電極を構成するCu板58を取り付け、各半導体レーザ素子20のn側電極42とCu板からなる電極板58との間をAuワイヤまたはAu箔でボンディングする。
また、リヤ端面からのレーザ光を受光して、半導体レーザ素子20の光出力を検出するPDをアレイ状に配置してなるPDアレイ60を半導体レーザ素子アレイ43の各半導体レーザ素子20のリヤ端面に対向する位置に設置し、次いでPDアレイ60に対する必要な配線を設ける。
以上の工程を経ることにより、半導体レーザ・モジュール50を作製することができる。
【0031】
続いて、本実施形態例では、半導体レーザ・モジュール50のフロント側端面及びリヤ側端面を純水により洗浄して、両端面のKCl膜48を溶解させ、取り除く。
本実施形態例を実施した際、KCl膜48上には、ハンダフラックスや、組み立ての過程で付着した無機性ダストやパーティクル状の有機物が付着していたが、KCl膜48の溶解に伴って除去され、清浄なフロント端面コート膜44及びリヤ端面コート膜46を露出させることができた。
【0032】
本実施形態例では、KCl膜を保護膜として用いているが、KCl膜に代えて、NaCl、MgCl2 等の水溶性の塩類からなる膜を用いることができる。
本実施形態例を適用できる半導体レーザ素子は、AlGaAs系半導体レーザ素子に限らない。例えば、AlGaInP系半導体レーザのレーザアレイ、あるいは、AlGaInN系半導体レーザのレーザアレイにも本実施形態例を適用できる。
【0033】
実施形態例2
本実施形態例は第1の発明方法に係る半導体レーザ素子の製造方法の実施形態の別の例であって、図5は本実施形態例の方法により製造した半導体レーザ素子の層構造を示す断面図である。
本実施形態例で製造する半導体レーザ素子70は、発振波長640nm帯の埋め込みリッジ型のAlGaInP系半導体レーザ素子であって、図5に示すような層構造を備えている。
半導体レーザ素子70を作製する際には、先ず、n型GaAs基板72上に、MOCVD法によって、順次、n型Al(Ga)InPクラッド層74、アンドープのAlGaInP光導波層76、活性層78、アンドープのAlGaInP光導波層80、p型Al(Ga)InPクラッド層82、p型GaInPエッチング停止層84、p型AlGaInPクラッド層86、p型GaInP中間層88、およびp型GaAsキャップ層90をエピタキシャル成長させて、積層構造を形成する。
【0034】
n型GaAs基板72には、例えば{100}面から〈110〉方向に所定の角度、例えば8°〜16°程度オフした主面を有する基板を使用する。
また、活性層78には、アンドープのGaInP量子井戸層とアンドープのAlGaInP障壁層とからなるMQW構造を形成する。
次いで、GaInPエッチング停止層84を停止層にしてp型GaAsキャップ層90、p型GaInP中間層88、及びp型AlGaInPクラッド層86をエッチングして、ストライプ状リッジを形成する。
次いで、MOCVD法により、n型AlGaAs電流狭窄層92をリッジ両側のGaInPエッチング停止層84上に再成長させる。
これにより、リッジのp型AlGaInPクラッド層86の両側をn型AlGaAs電流狭窄層92で埋め込んだ電流狭窄構造を形成することができる。
【0035】
p型GaAsキャップ層90及びn型AlGaAs埋め込み層92上には例えばTi/Pt/Au電極からなるp側電極94を形成する。
また、n型GaAs基板72の裏面を研磨して所定の基板厚さに調整した後、n型GaAs基板72の裏面に例えばAuGe/Ni電極からなるn側電極96を形成する。
【0036】
レーザ構造を構成する各化合物半導体層の厚さの一例を挙げると、n型Al(Ga)InPクラッド層74の膜厚は1μm、AlGaInP光導波層76、80の膜厚は、それぞれ、50nm、GaInP量子井戸層の膜厚は5nm、AlGaInP障壁層の膜厚は5nm、p型Al(Ga)InPクラッド層82の膜厚は0.15〜0.5μm、p型GaInPエッチング停止層84の膜厚は10〜500nm、p型AlGaInPクラッド層86の厚さは0.8μm、及びp型GaAsキャップ層10の膜厚は0.3μmである。
【0037】
以上の工程を経て、図5に示すレーザ構造を有するGaAsウエハを作製することができる。
続いて、実施形態例1と同様にして、GaAsウエハを劈開し、図6に示すように、半導体レーザ素子70を並列に配列してなるレーザバー状の半導体レーザ素子アレイ98を作製する。
【0038】
次いで、共振器端面の反射率を制御して、高出力を低い電流値で得られるように、図7に示すように、半導体レーザ素子70の出射端面及びリア端面に、それぞれ、端面コーティングを施して、フロント反射率が15%になるフロント端面コート膜100及びリア反射率が95%になるリア端面コート膜102を成膜する。
設定した反射率を得るために、フロント端面には、フロント端面コート膜100として膜厚250nmのAl2 O3 膜を電子線蒸着法で蒸着する。また、リア端面には、膜厚99nmのAl2 O3 膜100aと膜厚45nmのアモルファスシリコン(α−Si)膜100bとを交互に3回を電子線蒸着法で蒸着して6層膜からなる端面コート膜102を成膜する。
【0039】
次いで、本実施形態例では、図7に示すように、フロント端端面コート膜100上及びリア端面コート膜102上の双方に、保護膜として膜厚50nmのMgCl2 膜104を電子線蒸着法により蒸着させる。
【0040】
続いて、実施形態例1と同様にして、半導体レーザ素子アレイ98を半導体レーザ・モジュールとして組み立てる。
続いて、本実施形態例では、半導体レーザ・モジュール98のフロント側端面及びリヤ側端面を純水により洗浄して、MgCl2 膜104を溶解させ、取り除く。
本実施形態例を実施した際、MgCl2 膜104上には、ハンダフラックスや、組み立ての過程で付着した無機性ダストやパーティクル状の有機物が付着していたが、MgCl2 膜104の溶解に伴って除去され、清浄なフロント端面コート膜100及びリヤ端面コート膜102を露出させることができた。
【0041】
本実施形態例では、MgCl2 膜を保護膜として用いているが、MgCl2 膜に代えて、KCl、NaCl等の水溶性の塩類からなる膜を好適に用いることができる。
【0042】
実施形態例3
本実施形態例は、第2の発明方法に係る半導体レーザ素子の製造方法の実施形態の一例である。
本実施形態例では、実施形態例1のKCl膜48及び実施形態例2のMgCl2 膜104に代えて、樟脳(C10H16O、融点178℃、沸点209℃)やナフタレン(C10H8 、融点81℃、沸点218℃)からなる膜厚100nmの有機薄膜をフロント端面コート膜及びリヤ端面コート膜上に成膜する。
次いで、所定の工程を経た後、アセトン等の有機溶剤で洗浄して、有機薄膜を除去する。有機薄膜で保護することにより、実施形態例1及び2と同様の効果を得ることができる。
【0043】
実施形態例4
本実施形態例は、第3の発明方法に係る半導体レーザ素子の製造方法の実施形態の一例である。
本実施形態例では、実施形態例3と同様に、樟脳(C10H16O、融点178℃、沸点209℃)やナフタレン(C10H8 、融点81℃、沸点218℃)からなる膜厚100nmの有機薄膜をフロント端面コート膜及びリヤ端面コート膜上に成膜する。
次いで、所定の工程を経た後、有機薄膜を加熱して蒸発又は昇華させる。これにより、実施形態例1及び2と同様の効果を得ることができる。
【0044】
実施形態例1から4では、いわゆるレーザバー状の半導体レーザ素子アレイの端面に保護膜を塗布し、次いで半導体レーザ・モジュールに組み立てる例を示したが、これに限らず、いわゆるレーザバーをペレタイズして、チップ状の半導体レーザ素子に加工し、各チップの出射端面及びリア端面に保護膜を成膜する。次いで、チップ状の半導体レーザ素子を支持体又は装置に組み立てた後に、半導体レーザ素子チップの出射端面及びリア端面の保護膜を除去するようにしても良い。
また、レーザバー状の半導体レーザ素子アレイに代えて、チップ状の半導体レーザ素子を並列に配置してレーザアレイにした形態、あるいは、複数のレーザバーを並列に配置した面状のレーザアレイにも実施形態例1から4の方法を適用できる。
【0045】
言うまでもないが、本発明方法の適用は、光増幅器用ポンプ光源、レーザ加工機、レーザ溶接機等に用いられる高出力半導体レーザ素子に限定されるものではなく、端面出射型の半導体レーザ素子全般に適用できる。また、ダスト付着の影響が顕著な出射端面のみに適用することもできる。
また、出射端面にのみ保護膜を設けることにより、面発光型半導体レーザ素子にも適用できる。
以上、本発明方法を実施形態例1から4により説明したが、本発明方法は本発明の主旨に従い種々の変形が可能であり、本発明の範囲からこれらを排除するものではない。
【0046】
【発明の効果】
第1及び第2の発明方法によれば、水溶性物質からなる薄膜又は有機溶剤に可溶性の物質からなる薄膜を保護膜として端面の誘電体薄膜上に成膜し、所定の工程を経た後、端面を水洗浄又は有機溶剤による洗浄を施して、保護膜を溶解して除去する。これにより、本来、誘電体薄膜上に付着するダスト等を保護膜上に付着させ、保護膜の除去と共に清浄な端面を露出させることができる。
更に説明すると、溶解により容易に除去できる保護膜を端面に設けることにより、組み立て作業等の所定の作業工程中は、パーティクル、ダストの付着に従来程気を使う必要なく、所定の作業に集中できるので、所定の作業の能率を高めることができる。また、所定の工程、例えば半導体レーザ素子チップをハンダで固定する工程の後、ダスト等の付着した保護膜を除去することにより、パーティクル、ダスト等の異物が付着していない清浄な端面を露出させることができる。
よって、半導体レーザ素子の組み立て作業の能率が向上し、かつ製品歩留りを高めることができる。
また、保護膜の面積が小さく、短時間で洗浄できるので、塗布及び除去処理が簡単であり、コストが嵩むこともなく、また手間が要しない。
更には、半導体レーザ素子の故障の原因となるダストが付着していない出射端面を有し、高い長期信頼性を有する高品質の半導体レーザ素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)及び(b)は、それぞれ、実施形態例1の方法により製造した半導体レーザ素子の概略的全体斜視図、及び図1(a)の線I−Iでの断面図である。
【図2】実施形態例1の方法により製造した半導体レーザ素子の層構成を示す断面図である。
【図3】半導体レーザ・アレイの斜視図である。
【図4】半導体レーザ・モジュールの斜視図である。
【図5】実施形態例2の方法により製造した半導体レーザ素子の層構成を示す断面図である。
【図6】半導体レーザ・アレイの斜視図である。
【図7】半導体レーザ素子の端面コート膜及び保護膜の構成を示す断面図である。
【図8】図8(a)及び(b)は、それぞれ、半導体レーザ素子の概略的全体斜視図、及び図8(a)の線II−IIでの断面図である。
【符号の説明】
10……半導体レーザ素子、12……フロント端面コート膜、14……リア端面コート膜、16……ストライプ電極、20……実施形態例1の方法により作製した半導体レーザ素子の層構造、22……n型GaAs基板、24……n型GaAs第1バッファ層、26……n型AlGaAs第2バッファ層、28……n型AlGaAsクラッド層、30……活性層/ガイド層、32……p型AlGaAsクラッド層、34……p型GaAsキャップ層、36……電流注入領域、38……電流非注入領域、40……p側電極、42……n側電極、43……半導体レーザ素子アレイ、44……フロント端面コート膜、46……リア端面コート膜、48……KCl膜、50……半導体レーザ・モジュール、52……サブマウント、54……ヒートシンク、56……絶縁板、58……電極板、60……PDアレイ、70……実施形態例2で製造した半導体レーザ素子の層構造、72……n型GaAs基板、74……n型Al(Ga)InPクラッド層、76……アンドープのAlGaInP光導波層、78……活性層、80……アンドープのAlGaInP光導波層、82……p型Al(Ga)InPクラッド層、84……p型GaInPエッチング停止層、86……p型AlGaInPクラッド層、88……p型GaInP中間層、90……p型GaAsキャップ層、92……n型AlGaAs電流狭窄層、94……p側電極、96……n側電極、98……半導体レーザ素子アレイ、100……フロント端面コート膜、102……リア端面コート膜、104……MgCl2 膜。
Claims (8)
- 半導体レーザ素子を製造する際、
半導体レーザ素子のレーザ構造を構成する、化合物半導体層からなる積層構造を形成し、次いで半導体レーザ素子の出射端面及びリヤ端面に端面コーティングを行って、出射端面及びリヤ端面のそれぞれに誘電体薄膜を成膜する工程に続いて、
水溶性物質からなる薄膜を保護膜として出射端面の誘電体薄膜上に成膜する工程と、
所定の工程を経た後、半導体レーザ素子の出射端面を水洗浄して保護膜を溶解し、除去する工程と
を有することを特徴とする半導体レーザ素子の製造方法。 - 保護膜としてKCl膜、NaCl膜、及びMgCl2 膜のいずれかを成膜することを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ素子の製造方法。
- 保護膜を誘電体薄膜上に成膜する工程では、出射端面及びリア端面の誘電体薄膜上に保護膜を成膜し、所定の工程を経た後、半導体レーザ素子の出射端面及びリア端面を水洗浄して保護膜を溶解し、除去することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体レーザ素子の製造方法。
- 半導体レーザ素子を製造する際、
半導体レーザ素子のレーザ構造を構成する、化合物半導体層からなる積層構造を形成し、次いで半導体レーザ素子の出射端面及びリヤ端面に端面コーティングを行って、出射端面及びリヤ端面のそれぞれに誘電体薄膜を成膜する工程に続いて、
有機溶剤に溶解し易い有機物からなる薄膜を保護膜として出射端面の誘電体薄膜上に成膜する工程と、
所定の工程を経た後、半導体レーザ素子の出射端面を有機溶剤で洗浄して保護膜を溶解し、除去する工程と
を有することを特徴とする半導体レーザ素子の製造方法。 - 保護膜を誘電体薄膜上に成膜する工程では、出射端面及びリア端面の誘電体薄膜上に保護膜を成膜し、所定の工程を経た後、半導体レーザ素子の出射端面及びリア端面を有機溶剤で洗浄して保護膜を溶解し、除去することを特徴とする請求項4に記載の半導体レーザ素子の製造方法。
- 半導体レーザ素子を製造する際、
半導体レーザ素子のレーザ構造を構成する、化合物半導体層からなる積層構造を形成し、次いで半導体レーザ素子の出射端面及びリヤ端面に端面コーティングを行って、出射端面及びリヤ端面のそれぞれに誘電体薄膜を成膜する工程に続いて、
昇華し易い物質からなる薄膜を保護膜として出射端面の誘電体薄膜上に成膜する工程と、
所定の工程を経た後、半導体レーザ素子の出射端面を加熱して保護膜を昇華させ、除去する工程と
を有することを特徴とする半導体レーザ素子の製造方法。 - 保護膜を誘電体薄膜上に成膜する工程では、出射端面及びリア端面の誘電体薄膜上に保護膜を成膜し、所定の工程を経た後、半導体レーザ素子の出射端面及びリア端面を加熱して保護膜を昇華させ、除去することを特徴とする請求項6に記載の半導体レーザ素子の製造方法。
- 保護膜として樟脳(C10H16O)又はナフタレン(C10H8 )を成膜することを特徴とする請求項4から7のうちのいずれか1項に記載の半導体レーザ素子の製造方法。
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