JP2004127691A - 粒子加速器及びその電子ビーム収束方法 - Google Patents

粒子加速器及びその電子ビーム収束方法 Download PDF

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松尾 健一
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Abstract

【課題】装置構成がコンパクトで、かつ、電子ビーム特性が良好な粒子加速器及びその電子ビーム収束方法を提供するものである。
【解決手段】本発明に係る粒子加速器11は、加速管12の一方端から入射された電子ビームb3を、加速空洞に通して高周波加速するものであって、加速空洞壁に一対のリング状の高周波電極用ディスク14,14を近接して設けて対ディスク13を形成すると共に、その対ディスク13を加速管12の長手方向に多数個形成し、各対ディスク13の高周波電極用ディスク14,14内部にそれぞれスリット22を形成し、各スリット22にリング状の磁性体ディスク23を挿入すると共に、近接する磁性体ディスク23,23間に磁性体からなる連結リング24を設けたものである。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、粒子加速器及びその電子ビーム収束方法に係り、特に、線形加速器及びその電子ビーム収束方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子、陽子、又はイオンなどのように電荷を持っている粒子(荷電粒子)の加速を行う粒子加速器の一つに、線形加速器(リニアック)がある。このリニアックは、直線状の加速管の一方端から入射された荷電粒子(リニアックでは主に電子ビーム)を、加速管の内部(加速空洞)に通し、一定周波数の高周波で電子ビームを真っ直ぐに加速している。
【0003】
加速管に入射された電子ビームを高周波加速する際、電子ビームの荷電粒子(電子)が空間電荷により反発し、ビーム径が広がってしまう。ビーム径が広がると、電子ビームが加速空洞壁に衝突して電子が消失し、電子ビームのビーム効率(透過率)が低下してしまう。また、空間的に広がった電子ビームは、異なった速度変調を受けるため、エネルギー的にも不均一なビームとなってしまう。
【0004】
従来においては、以下に示す2つの方法を用いて電子ビームの広がりを防いでいた(電子ビームの収束を行っていた)。
【0005】
▲1▼ ソレノイド電磁石を用いた収束方法は、図6に示すように、加速管(例えば、バイペリオディック型加速管)61の周囲にソレノイドコイル62a,62bを巻き付けてソレノイド電磁石を設けることで、加速管61の長手方向(電子ビームb1の進行方向(図6中では右方向))に一様な静磁界B1が形成される。この一様磁界により、電子ビームb1はローレンツ力を受けて収束し、平行ビームとなる。
【0006】
▲2▼ 磁気レンズを用いた収束方法は、図7に示すように、磁性体からなるリング状のヨーク72内部にソレノイドコイル73及びスペーサ(例えば、Alスペーサ)74を備えた磁気レンズ71を、図6に示した加速管61の下流側(出口側)に配置することで、電子ビームb2の進行方向(図7中では右方向)に静磁界B2(>B1)が形成される。この静磁界B2により、電子ビームb2は局所的にローレンツ力を受けて収束し、平行ビームとなる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、▲1▼の方法の場合、加速管61の周囲にソレノイドコイル62a,62bを巻き付けるため、加速管61の径が大きくなってしまう。また、加速管61の中心軸上に一様磁界を発生させるためには、大電流が必要となってしまう。
【0008】
▲2▼の方法の場合、加速管と別体の磁気レンズ71を必要とすることから、加速器が大型化してしまう。また、ソレノイドコイル73では、▲1▼よりも大きな静磁界B2を発生させて電子ビームb2を収束させているため、▲1▼よりも大きな電流が必要となってしまう。
【0009】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、装置構成がコンパクトで、かつ、電子ビーム特性が良好な粒子加速器及びその電子ビーム収束方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく本発明に係る粒子加速器は、加速管の一方端から入射された電子ビームを、加速空洞に通して高周波加速する粒子加速器において、加速空洞壁に一対のリング状の高周波電極用ディスクを近接して設けて対ディスクを形成すると共に、その対ディスクを加速管の長手方向に多数個形成し、各対ディスクの高周波電極用ディスク内部にそれぞれスリットを形成し、各スリットにリング状の磁性体ディスクを挿入すると共に、近接する磁性体ディスク間に磁性体からなる連結リングを設けたものである。
【0011】
これによって、加速管における各対ディスクを、高周波電極としてのみならず、磁極としても機能させるため、従来のように、加速管の周囲にソレノイドコイルを巻き付けたり、加速管の下流側に磁気レンズを配置する必要がなくなる。その結果、装置構成のコンパクト化を図ることができる。
【0012】
また、請求項2の発明は、上記磁性体ディスク及び上記連結リングを、半割可能に分割形成したものである。
【0013】
また、請求項3の発明は、上記連結リングの内周部又は外周部にソレノイドコイルを設けたものである。
【0014】
また、請求項4の発明は、上記各スリットに、リング状で、永久磁石からなる磁性体ディスクを挿入したものである。
【0015】
一方、本発明に係る粒子加速器の電子ビーム収束方法は、加速管の一方端から入射された電子ビームを、加速空洞に通して高周波加速する粒子加速器の電子ビーム収束方法において、加速空洞壁に一対のリング状の高周波電極用ディスクを近接して設けて対ディスクを形成すると共に、その対ディスクを加速管の長手方向に多数個形成し、各対ディスクの高周波電極用ディスク内部にそれぞれスリットを形成し、各スリットにリング状の磁性体ディスクを挿入すると共に、近接する磁性体ディスク間に磁性体からなる連結リングを設け、磁性体ディスク間に起磁力を与えて加速管の長手方向に一様な静磁界を形成し、その一様磁界により、各対ディスクのリング穴を通る電子ビームをローレンツ力により収束させるものである。
【0016】
これによって、加速管における各対ディスクが、高周波電極としてのみならず、磁極としても機能するため、各対ディスクにおいて高周波加速と磁気収束を同時に行うことができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適一実施の形態を添付図面に基いて説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態に係る粒子加速器(リニアック)11は、直線状の加速管12の一方端(図1中では左端)から入射された電子ビームb3を、加速空洞壁に長手方向に複数個設けられた対ディスク13のリング穴15に通し、一定周波数の高周波で電子ビームを真っ直ぐに加速するものであり、電子ビーム軸Cに対して軸対称な構造である。
【0019】
加速管12は、リング体16,16同士を向かい合わせて連結してなるユニットUを多数個連結してなるものであり、各リング体16は径方向(図1中では上下方向)に半割可能に形成される。各リング体16の向かい合わせ面の内周部には、径方向内側に鍔状に突出する高周波電極用ディスク14が一体に形成される。ユニットUの向かい合うディスク14,14により、対ディスク13が形成される。各リング体16は、Cu又はCu合金で、好ましくは無酸素銅(OFC)で構成される。
【0020】
図1の要部A(図1中の破線領域)の拡大図を図2に示すように、対ディスク13の各ディスク14内部にはそれぞれスリット22が形成され、各スリット22にはリング状の磁性体ディスク23がそれぞれ挿入して設けられる。磁性体ディスク23,23間で挟まれたスリット22には、磁性体からなる連結リング24が配設される。連結リング24の内周部(又は外周部)にはソレノイドコイル25が設けられ、連結リング24とソレノイドコイル25とでソレノイド電磁石が構成される。
【0021】
また、図3に示すように、磁性体ディスク23,23及び連結リング24は、各ユニットUのスリット22に対する取付け性を考慮して、分割線Lによりそれぞれ半割可能に形成される。
【0022】
また、磁性体ディスク23,23と連結リング24とは締結部材(例えば、ボルトやねじ)により連結される。この連結された磁性体ディスク23,23及び連結リング24もまた、締結部材(例えば、ボルトやねじ)によりリング体16,16に連結される。
【0023】
加速管12における長手方向の中途部(図1中では中央部)には、高周波Wを導波するための高周波導波管18が設けられる。
【0024】
各磁性体ディスク23の形状は、円盤状又はそれに近い形が好ましい。これによって、ディスク14,14のリング穴15近傍部間gに効率よく、かつ、一様な静磁界B3を発生させることができる。また、磁性体ディスク23,23及び連結リング24を構成する磁性体としては、鉄などが挙げられる。
【0025】
次に、本実施の形態に係る粒子加速器11を用いた電子ビーム収束方法を添付図面に基いて説明する。
【0026】
図1に示した加速管12の一方端から電子ビームb3を入射する。加速空洞に入射された電子ビームb3は、加速空洞中央部に突出する対ディスク13のリング穴15を通る。
【0027】
加速管12には、高周波導波管18から一定周波数の高周波Wによる進行波が導波されており、これによって、隣接する対ディスク13,13の、対向するディスク14,14間に高周波電界Eが形成され、各対ディスク13は高周波電極として機能することになる。この高周波電界Eによって、リング穴15を通る電子ビームb3が加速される。
【0028】
この時、連結リング24の内周部に設けたソレノイドコイル25に電流を流すことで、ソレノイド電磁石に起磁力が生じ、対ディスク13における各ディスク14のスリット22内に設けた磁性体ディスク23が磁極として機能することになる。これによって、対ディスク13における磁性体ディスク23,23間に磁路が形成され、加速空洞におけるディスク14,14のリング穴近傍部間gに、電子ビームb3の進行方向(図2中では右方向)と同方向の一様な静磁界(漏れ磁界)B3が形成される。つまり、各対ディスク13が、それぞれ図7に示した磁気レンズ71と同様の働きをすることになる。一様磁界B3の磁界強度は、ソレノイドコイル25に流す電流を制御することで、自在に制御することができる。
【0029】
この一様磁界B3によって、空間電荷のために加速管12の径方向外向きに力を受ける電子に、フレミング左手の法則に従って径方向内向きのローレンツ力が作用する。その結果、電子ビームb3は径方向内向きに収束され、らせんを描きながら電子ビーム軸Cと略平行に高周波加速される。よって、電子ビームb3は略均一な速度変調を受け、エネルギー的に均一な(ビーム特性が良好な)電子ビームb3となる。また、電子ビームb3は電子ビーム軸Cと略平行に高周波加速されることから、電子の広がり・消失を極力防ぐことができ、ビーム効率(透過率)も例えば80〜90%と良好となる。
【0030】
また、加速空洞内の全ての対ディスク13を、高周波電極のみならず磁極としても機能させることで、粒子加速器11は、小型の磁気レンズを多数個内蔵したリニアックとみなすことができる。このため、対ディスク13において、電子ビームb3の高周波加速と共に磁気収束も行うことができる。よって、加速管12の周囲にソレノイドコイルを巻き付けたり(図6参照)、また、加速管12の下流側(出口側)に磁気レンズを配置する(図7参照)ことが必要で無くなり、装置構成のコンパクト化および設置スペースの狭小化を図ることができる。
【0031】
また、ソレノイドコイル25の電子ビーム軸Cからの離間距離は、図6に示したソレノイドコイル62a,62b又は図7に示したソレノイドコイル73と比較すると短い。このため、対ディスク13におけるディスク14,14間に、ソレノイドコイル25によって形成する静磁界B3の磁界強度は、ソレノイドコイル62a,62bで形成する静磁界B1又はソレノイドコイル73で形成する静磁界B2の磁界強度と比べて小さくて済む。その結果、ソレノイドコイル25に流す電流は、ソレノイドコイル62a,62b又はソレノイドコイル73に流す電流と比較して小さくて済む。
【0032】
次に、本発明の他の実施の形態を添付図面に基いて説明する。
【0033】
第1の実施の形態に係る粒子加速器11は、対ディスク13におけるディスク14,14間に形成する静磁界B3の起磁力としてソレノイド電磁石を用いたものであった。
【0034】
これに対して、第2の実施の形態に係る粒子加速器41は、その主な構成は粒子加速器11と同じまま、静磁界B3の起磁力として永久磁石を用いるものである。
【0035】
具体的には、図4に示すように、各ディスク14のスリット22に、リング状で、永久磁石からなる磁性体ディスク43がそれぞれ挿入して設け、磁性体ディスク43,43間で挟まれたスリット22に、磁性体からなる連結リング24を配設したものである。各ユニットUのスリット22に対する取付け性を考慮して、磁性体ディスク43,43及び連結リング24もまた、分割線によりそれぞれ半割可能に形成される(図3参照)。
【0036】
本実施の形態の粒子加速器41においても、前実施の形態の粒子加速器11と同様の作用効果が得られる。粒子加速器41においては、静磁界B4の起磁力として永久磁石(磁性体ディスク43,43)を用いていることから、静磁界B4の磁界強度は制御することはできないものの、図2に示したソレノイドコイル25が不要となることから、装置構成が簡易になり、装置コストの低減を図ることができる。
【0037】
一方、第1及び第2の実施の形態に係る粒子加速器11,41は、各対ディスク13におけるディスク14,14が非常に近接したものであり、バイペリオディック型のリニアックに適用したものであった。
【0038】
これに対して、第3の実施の形態に係る粒子加速器51は、その主な構成は粒子加速器11と同じまま、図5に示すように、各対ディスク53におけるディスク14,14を離間して設けたものである。つまり、バイペリオディック型のリニアックだけではなく、通常のディスク形状のリニアックにも適用可能である。
【0039】
本実施の形態の粒子加速器51においても、前実施の形態の粒子加速器11,41と同様の作用効果が得られる。また、本実施の形態においては、静磁界B5の起磁力としてソレノイド電磁石(連結リング24及びソレノイドコイル25)を用いた場合について説明を行ったが、第2の実施の形態に係る粒子加速器41のように、静磁界の起磁力として永久磁石を用いてもよい。
【0040】
以上、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、他にも種々のものが想定されることは言うまでもない。
【0041】
【発明の効果】
次のような優れた効果を発揮する。
【0042】
以上要するに本発明によれば、
(1) 本発明に係る粒子加速器によれば、加速管における各対ディスクを、高周波電極としてのみならず、磁極としても機能させるため、従来のように、加速管の周囲にソレノイドコイルを巻き付けたり、加速管の下流側に磁気レンズを配置する必要がなくなる。その結果、装置構成のコンパクト化を図ることができる。
【0043】
(2) 加速管における各対ディスクが、高周波電極としてのみならず、磁極としても機能するため、各対ディスクにおいて電子ビームの高周波加速と磁気収束を同時に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態に係る粒子加速器の縦断面図である。
【図2】図1の要部Aの拡大図である。
【図3】磁性体ディスク及び連結リングの斜視図である。
【図4】第2の実施の形態に係る粒子加速器の縦断面図の要部拡大図である。
【図5】第3の実施の形態に係る粒子加速器の縦断面図の要部拡大図である。
【図6】ソレノイド電磁石を備えた従来の粒子加速器の縦断面図である。
【図7】磁気レンズを備えた従来の粒子加速器の縦断面図である。
【符号の説明】
11 粒子加速器
12 加速管
13 対ディスク
14 高周波電極用ディスク
15 リング穴
22 スリット
23 磁性体ディスク
24 連結リング
25 ソレノイドコイル
43 磁性体ディスク
b3 電子ビーム
B3 静磁界

Claims (5)

  1. 加速管の一方端から入射された電子ビームを、加速空洞に通して高周波加速する粒子加速器において、加速空洞壁に一対のリング状の高周波電極用ディスクを近接して設けて対ディスクを形成すると共に、その対ディスクを加速管の長手方向に多数個形成し、各対ディスクの高周波電極用ディスク内部にそれぞれスリットを形成し、各スリットにリング状の磁性体ディスクを挿入すると共に、近接する磁性体ディスク間に磁性体からなる連結リングを設けたことを特徴とする粒子加速器。
  2. 上記磁性体ディスク及び上記連結リングを、半割可能に分割形成した請求項1記載の粒子加速器。
  3. 上記連結リングの内周部又は外周部にソレノイドコイルを設けた請求項1又は2記載の粒子加速器。
  4. 上記各スリットに、リング状で、永久磁石からなる磁性体ディスクを挿入した請求項1又は2記載の粒子加速器。
  5. 加速管の一方端から入射された電子ビームを、加速空洞に通して高周波加速する粒子加速器の電子ビーム収束方法において、加速空洞壁に一対のリング状の高周波電極用ディスクを近接して設けて対ディスクを形成すると共に、その対ディスクを加速管の長手方向に多数個形成し、各対ディスクの高周波電極用ディスク内部にそれぞれスリットを形成し、各スリットにリング状の磁性体ディスクを挿入すると共に、近接する磁性体ディスク間に磁性体からなる連結リングを設け、磁性体ディスク間に起磁力を与えて加速管の長手方向に一様な静磁界を形成し、その一様磁界により、各対ディスクのリング穴を通る電子ビームをローレンツ力により収束させることを特徴とする粒子加速器の電子ビーム収束方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN105873349A (zh) * 2016-06-07 2016-08-17 中国工程物理研究院核物理与化学研究所 一种离子加速管
CN114126186A (zh) * 2021-11-26 2022-03-01 中山大学 核素制备用强流电子直线加速器bbu抑制结构

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