JP2004124281A - 古紙配合軽包装紙およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】引張強度と引裂強度が高く、破袋トラブル等の発生を防止することのできる、しかも印刷適性の良好な古紙配合軽包装紙を得ること。
【解決手段】古紙パルプを配合した古紙配合軽包装紙において、雑誌古紙パルプを10%以上含有するとともに、JIS−P 8113に規定される引張強度が12.0KN/mで、且つJIS−P 8116に規定される引裂強度が15.0mN・m2/g以上であるようにする。雑誌古紙を含む古紙パルプの製造ラインで、0.12mm以下のスリット幅または孔径を有するスクリーンを用いて繊維懸濁液から夾雑物を分離除去するとともに、前記スクリーンのアクセプト側またはリジェクト側に自動夾雑物測定器を設け、その夾雑物の測定結果が目標値以下となるように、前記スクリーンのリジェクト率を10%以上の領域で変更することが推奨される。
【選択図】 図1
【解決手段】古紙パルプを配合した古紙配合軽包装紙において、雑誌古紙パルプを10%以上含有するとともに、JIS−P 8113に規定される引張強度が12.0KN/mで、且つJIS−P 8116に規定される引裂強度が15.0mN・m2/g以上であるようにする。雑誌古紙を含む古紙パルプの製造ラインで、0.12mm以下のスリット幅または孔径を有するスクリーンを用いて繊維懸濁液から夾雑物を分離除去するとともに、前記スクリーンのアクセプト側またはリジェクト側に自動夾雑物測定器を設け、その夾雑物の測定結果が目標値以下となるように、前記スクリーンのリジェクト率を10%以上の領域で変更することが推奨される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、古紙パルプを配合した軽包装紙と、その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
軽包装紙は包装用原紙、製袋用原紙としての用途を有し、その用途に応じた印刷を施して製品とし、また印刷を施し次いで製袋機にかけて製袋してさらに製品の付加価値を高めて市場へ出荷する。印刷機や製袋機に軽包装紙を給紙する場合には軽包装紙を規定寸法に裁断した平板紙の形態で給紙する場合が多い。平板紙で印刷機へ給紙する場合、紙の腰(こわさ)が不足すると紙がたれて印刷機にうまく給紙されなかったり、出口で印刷紙が不揃いになるなど印刷機の走行性が著しく低下し、また紙の腰が不足しているため製袋機の走行性及び製袋後の歩留りが著しく低下するという問題が発生する。また、軽包装紙の印刷面の表面強度が不足すると、印刷時に紙の表面がむけて版によごれが生じて印刷不良が発生し著しく製品価値が低下するという問題も発生する。
【0003】
近年、森林資源の保護、地球環境の保全の観点から紙の再利用がさかんになり、わが国の製紙原料の50%は紙を再離解しパルプに戻したいわゆる古紙からの古紙パルプであると言われている。
【0004】
再生紙の原材料となる古紙パルプは、新聞紙やチラシ等の古紙から製造するのが一般的であり、雑誌や書物等の古紙は、再生板紙の原料パルプ(古紙パルプ)とする場合の他ほとんど利用されていない。これは、雑誌や書物等の古紙は、ホットメルト等の背糊が残存していたり、ポリカーボネイト樹脂コンパクトディスク(以下、単にCDともいう。)がページ間に挟まれていたりするため、生産性が下がる虞や、再生紙の品質劣化、印字障害等を招く虞があることによる。
【0005】
古紙パルプを製紙原料パルプとして用いる技術は従来より研究がなされており、古紙パルプを30%以上配合した電子複写用及びフォーム用紙(特開昭57−128346号公報)、同パルプを10%以上含有した感圧複写紙(特開平3−199083号公報)、印刷用上級紙の紙料として用いる方法(特開昭58−98499号公報)、電子写真圧力定着転写紙及びその転写紙用原紙の紙料として用いる方法(特開昭58−40556号公報)、オフセット印刷用新聞用紙に用いる方法(特開平3−227500号公報)、中性電子写真用転写紙に用いる方法(特開平3−220398号公報)など多種、多岐にわたる古紙パルプの利用技術が提案されている。
【0006】
しかしながら、軽包装紙に関して、軽包装紙に古紙パルプがまざると紙の腰、表面強度が低下するという問題を有しているにもかかわらず、その低下を抑制する技術はいまだ提案されていない。古紙パルプを軽包装紙の原料として配合すると紙の腰や表面強度が低下するため、古紙パルプを軽包装紙の原料として用いるためには紙の腰、表面強度を維持する技術が不可欠である。
【0007】
従来は紙用薬品の添加又はその増量によって対応していたが効果は充分でなく、またコストの上昇をまねくという問題を有していた。また、紙用薬品の添加又はその増量は他の品質に悪影響を及ぼしかねないので、むやみに添加又はその増量ができないため古紙パルプの配合率は品質上の観点から30%程度(対軽包装紙、紙料パルプ、絶乾重量当り)が上限であるという問題も有していた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前記現状に鑑み、古紙パルプを配合した紙料パルプを使用し抄紙した軽包装紙の性質、特に紙の腰、表面強度の向上が要望されており、本発明の目的は前記性質を改善した古紙パルプ入り軽包装紙の製造方法を提供することにある。
【0009】
本願発明は、古紙パルプ配合の軽包装紙を製造するにあたって、原料パルプの一部として、雑誌古紙パルプを使用し、且つその夾雑物管理を行うことにより、低コストで、しかも引張強度と引裂強度を高くした、さらには印刷適性にすぐれた古紙パルプ配合の軽包装紙とその製造方法を提案しようとするものである。
【0010】
なお、この明細書において「雑誌古紙」という場合は、いわゆる「雑誌」のみからなる古紙のほか、新聞紙、チラシ、ピン付き雑誌、背糊付き雑誌、ビニール貼り雑誌、CD入り雑誌などが混在した「無選別古紙」をも含むものとする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本願発明の古紙配合軽包装紙は、配合される古紙パルプの一部として雑誌古紙パルプ(全パルプ中、5%以上)を使用し、さらに、JIS−P 8113に規定される引張強度が2.6KN/m以上であり、且つJIS−P 8116に規定される引裂強度が700mN・m2/g以上、JIS−P 8143に規定される剛度に基づく剛度指数が0.7以上であることを基本思想とする。
【0012】
本発明で規定する剛度指数は、JIS−P 8143に規定される剛度を試料の米坪で割った値である。
【0013】
雑誌古紙パルプ以外のパルプ材料としては、従来から軽包装紙用パルプとして使用されている種々のパルプ、たとえばNUKP(針葉樹クラフトパルプ)、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)等が使用可能である。
【0014】
また、本願発明の古紙配合軽包装紙を製造するにあたっては、古紙パルプの離解工程、粗選工程、熟成工程、脱墨工程、洗浄工程等からなる古紙パルプの製造ラインにおいて離解、粗選工程を経た後、0.12mm以下のスリット幅または孔径を有するスクリーンを使用して古紙パルプから夾雑物を分離除去することが推奨される。
【0015】
すなわち、0.12mm以下のスリット幅または孔径を有するスクリーンを使用するのは短繊維分と長繊維分の平均繊維長との差を大きくする理由からであり、その場合、短繊維分と長繊維分の平均繊維長との差は10%以上が望ましい。
【0016】
次に、本願発明の古紙配合軽包装紙の製造方法においては、スクリーンのアクセプト側またはリジェクト側に自動夾雑物測定器を設け、その夾雑物の測定結果が目標値以下となるように、前記スクリーンのリジェクト率を10%以上の領域で変更することが推奨される。そして、さらに、前記スクリーンのアクセプト原料に基づき古紙パルプを製造する一方で、前記スクリーンのリジェクト原料について、前記アクセプト原料とは別のラインで更に夾雑物の除去処理を行って古紙パルプを製造し、それらの両古紙パルプを10%以上配合することが推奨される。
【0017】
本願発明を実施するにあたっては、必要に応じて、かせいソーダ、炭酸ソーダ、珪酸ソーダ、過酸化水素、亜硫酸ソーダ、硫酸マグネシウム、トリポリ燐酸ソーダ、キレート剤、脱墨剤、捕集剤、発泡剤等の各種添加剤、あるいは各種助剤等を適宜使用することは何ら差支えない。
【0018】
【発明の効果】
本願発明の古紙配合軽包装紙は、雑誌古紙パルプを5%以上配合するとともに、JIS−P 8113に規定される引張強度が2.6KN/m以上であり、且つJIS−P 8116に規定される引裂強度が700mN・m2/g以上、JIS−P 8143に規定される剛度に基づく剛度指数が0.7以上であることを特徴としたことにより、印刷機での操業性向上、走行性の改善、また製袋機の走行性及び製袋後の歩留りが向上効果が向上しする。また、表面強度の向上による印刷不良発生の低減、破袋トラブル等の発生が少ない軽包装紙とすることができる効果がある。
【0019】
本願発明は、さらに、上記のように雑誌古紙パルプを使用するにあたって、雑誌古紙を含む古紙パルプの製造ラインで、0.12mm以下のスリット幅または孔径を有するスクリーンを用いて繊維懸濁液から夾雑物を分離除去するとともに、スクリーンのアクセプト側またはリジェクト側に自動夾雑物測定器を設け、その夾雑物の測定結果が目標値以下となるように、前記スクリーンのリジェクト率を10%以上の領域で変更することによって、雑誌古紙を含む古紙パルプを使用する場合であっても、良好な印刷適性をもつ軽包装紙を提供し得る効果がある。
【0020】
【実施例】
以下、本願発明のいくつかの好適な実施例1〜8を示すとともに、本願発明の技術的優位性を示すための比較対象としていくつかの比較例1〜3を示す。なお、各実施例及び比較例とも使用パルプとしては、NUKP、LUKP、NBKP、LBKPからなる任意配合のバージンパルプ、新聞古紙パルプ、雑誌古紙パルプを適宜配合比(表1参照)で使用した。
【0021】
各実施例における古紙パルプの処理方法
図1は、各実施例における古紙パルプの処理方法を示す概要図であり、同図において、1はパルパー、2はターボセパレーター、3は高濃度クリーナー、4は粗選スクリーン、5はプレフローテーター、6はクリーナー、7は精選スクリーン、8は脱水機、9はディスパーザー、10は過酸化水素タワー、11はポストフローテーター、12はストックタンク、13は完成脱水機、14は高濃度ポンプ、15は高濃度タワーである。
【0022】
まず、原料となる古紙は、新聞紙、チラシ、雑誌、書物等が混在した前記のような無選別古紙を、パルパー1に投入する。パルパー1では、古紙を水で希釈、離解し、繊維懸濁液にする。この繊維懸濁液は、ポンプ81によって、輸送管51を通してターボセパレータ2に送る。ターボセパレータ2では、繊維懸濁液中に残存するパルパー1において離解しきれなかった古紙を離解する。
【0023】
このようにして古紙を完全に離解した後、繊維懸濁液は、ポンプ82によって、輸送管52を通して高濃度クリーナー3に送る。高濃度クリーナー3では、古紙に付いていたホッチキス等の重い異物を除去する(比重の違いを利用した異物の除去)。重い異物を除去した後、繊維懸濁液は、輸送管53を通してスクリーン4に送る。スクリーン4では、比較的大きい異物を除去する(体積の違いを利用した異物の除去)。
【0024】
異物を除去した後、繊維懸濁液は、輸送管54を通してプレフローテーター5に送る。プレフローテーター5では、加圧浮上効果によって、繊維に付着しているインクを除去する。
【0025】
インクを除去した後、繊維懸濁液は、ポンプ83によって、輸送管55を通してクリーナー6に送り、さらに、輸送管56を通して、精選スクリーン7に送る。クリーナー6では比重の違いを利用して微細な異物を除去し、精選スクリーン7では体積の違いを利用して微細な異物を除去する。
【0026】
微細な異物を除去した後、繊維懸濁液は、輸送管57を通して脱水機8に送り脱水する。この脱水により高濃度になった繊維懸濁液は、ポンプ84によって、輸送管58を通してディスパーザー9に送る。ディスパーザー9では、クリーナー6及び精選スクリーン7で除去することができなかった異物を細かく分解し、インクとともに水中に分散させる。異物及びインクが分散した状態の繊維懸濁液は、輸送管59を通して過酸化水素タワー10に送る。過酸化水素タワー10では、過酸化水素によって繊維懸濁液中の繊維を漂白する。
【0027】
漂白した繊維懸濁液は、ポンプ85によって輸送管60を通してポストフローテーター11に送る。ポストフローテーター11では、加圧浮上効果によって、ディスパーザー9において分散させた異物及びインクを除去する。
【0028】
このようにして異物及びインクをほぼ完全に除去した後、繊維懸濁液は、輸送管61を通してストックタンク12に送る。ストックタンク12に貯留した繊維懸濁液は、適宜、ポンプ86によって、輸送管62を通して完成脱水機13に送る。完成脱水機13では、繊維懸濁液の濃度が約10質量%になるまで脱水を行い、古紙パルプを得る。この古紙パルプは、輸送管63及び64を通して高濃度タワー15に送る。輸送管63と64との間には、高濃度ポンプ14を備えてあり、この高濃度ポンプ14によって、古紙パルプを高濃度タワー15の上部にポンプアツプするようになっている。高濃度タワー15では、古紙パルプに二酸化チオ尿素等の漂白剤を添加し、漂白する。漂白した古紙パルプは、高濃度タワー15にストックしておき、必要に応じポンプ87によって、輸送管65を通してペーパーマシンに送る。
【0029】
なお、上記の原料パルプ処理工程中において、同原料パルプは精選スクリーン7のところで、0.12mm以下のスリットを使用して分級率10%以上で分級処理される。
【0030】
また、精選スクリーン7のアクセプト側(リジェクト側でもよい)には、自動夾雑物測定器が設けられており、夾雑物の測定結果が目標値以下となるように、精選スクリーン7のリジェクト率を10%以上の領域で変更管理するようにしている。なお、図1の実施例に示される古紙パルプ製造ラインでは、前記スクリーンのアクセプト原料に基づき古紙パルプを製造する一方で、前記スクリーンのリジェクト原料を、前記アクセプト原料とは別のラインで更に夾雑物の除去処理を行って古紙パルプを製造するようにしており、それらの両古紙パルプを10%以上配合するようにしている。
【0031】
次に、繊維懸濁液のpHの調整について説明すると、雑誌古紙から抄紙機に持ちこまれる顔料の中で、炭酸カルシウムは酸性領域では炭酸ガスを発生させるとともに、系内にスケールを作り出すことになるため、本願発明においては、好ましくはpH4.5程度の酸性抄紙よりpH6〜8の疑似中性か、若しくはpH7近辺の中性抄紙が好ましい。
【0032】
次に、各実施例におけるpHの調整方法について説明すると、図示の実施例では、熱溶融性かつアルカリ溶融性材料の除去が完了するまでの間、繊維懸濁液のpHを6〜9とするのが好ましいが、その調成方法を特に限定するものではない。この調整方法としては、たとえば、古紙の離解に際して、アルカリを0.5質量%以下添加するとよい。この際使用するアルカリとしては、その種類を何ら限定するものではなく、水酸化ナトリウムや、硅酸ナトリウム等を使用することができる。
【0033】
各実施例及び比較例における抄紙方法
表1に示す各配合紙原料を用い、紙力増強剤、サイズ剤を添加し、フォードリニア抄紙機により、pH5〜8で抄紙し、坪量50g/m2〜120g/m2の軽包装紙を得た。
【0034】
各比較例における古紙パルプの処理方法
比較例1では、図1とその説明で示した古紙パルプ処理方法において、分級スリットは0.12mmを使用したが、雑誌古紙パルプは使用しなかった。
【0035】
比較例2では、図1とその説明で示した古紙パルプ処理方法において、分級スリットは0.15mmを使用した。雑誌古紙パルプは3%、新聞古紙パルプを27%配合した。
【0036】
比較例3では、図1とその説明で示した古紙パルプ処理方法において、分級スリットは0.15mmを使用した。雑誌古紙パルプは10%、新聞古紙パルプを50%配合した。
【0037】
比較例4では、図1とその説明で示した古紙パルプ処理方法において、分級スリットは0.15mmを使用した。雑誌古紙パルプは5%、新聞古紙パルプを5%配合した。
【0038】
比較例5では、バージンパルプを100使用した。
【0039】
【表1】
【0040】
各実施例及び比較例の評価は次の通りである。
【0041】
実施例1〜8
各実施例とも、雑誌古紙パルプを5%以上含有するとともに、JIS−P 8113に規定される引張強度が2.6KN/m以上で、JIS−P 8116に規定される引裂強度が700mN・m2/g以上、JIS−P 8143に規定される剛度に基づく剛度指数が0.7以上であり、その結果、破袋トラブル等の発生もなく、良好な軽包装紙が得られた。
【0042】
また、図1の実施例は、雑誌古紙を含む古紙パルプの製造ラインで、0.12mm以下のスリット幅または孔径を有するスクリーンを用いて繊維懸濁液から夾雑物を分離除去するとともに、スクリーンのアクセプト側またはリジェクト側に自動夾雑物測定器を設け、その夾雑物の測定結果が目標値以下となるように、前記スクリーンのリジェクト率を10%以上の領域で変更することにより、夾雑物の少ない印刷適性の良好な軽包装紙を得ることができた。
【0043】
比較例1〜5
各比較例とも、表1から明らかなように、実施例に比較して、引張強度、引裂強度、剛度指数とも低く、ハ゜ルフ゜費用を含めた総合評価で実施例より劣るものであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の実施例で使用する古紙パルプ処理装置の概要図である。
【符号の説明】
1はパルパー、2はターボセパレーター、3は高濃度クリーナー、4は粗選スクリーン、5はプレフローテーター、6はクリーナー、7は精選スクリーン、8は脱水機、9はディスパーザー、10は過酸化水素タワー、11はポストフローテーター、12はストックタンク、13は完成脱水機、14は高濃度ポンプ、15は高濃度タワー、51〜65は輸送管、81〜87はポンプ。
【発明の属する技術分野】
本願発明は、古紙パルプを配合した軽包装紙と、その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
軽包装紙は包装用原紙、製袋用原紙としての用途を有し、その用途に応じた印刷を施して製品とし、また印刷を施し次いで製袋機にかけて製袋してさらに製品の付加価値を高めて市場へ出荷する。印刷機や製袋機に軽包装紙を給紙する場合には軽包装紙を規定寸法に裁断した平板紙の形態で給紙する場合が多い。平板紙で印刷機へ給紙する場合、紙の腰(こわさ)が不足すると紙がたれて印刷機にうまく給紙されなかったり、出口で印刷紙が不揃いになるなど印刷機の走行性が著しく低下し、また紙の腰が不足しているため製袋機の走行性及び製袋後の歩留りが著しく低下するという問題が発生する。また、軽包装紙の印刷面の表面強度が不足すると、印刷時に紙の表面がむけて版によごれが生じて印刷不良が発生し著しく製品価値が低下するという問題も発生する。
【0003】
近年、森林資源の保護、地球環境の保全の観点から紙の再利用がさかんになり、わが国の製紙原料の50%は紙を再離解しパルプに戻したいわゆる古紙からの古紙パルプであると言われている。
【0004】
再生紙の原材料となる古紙パルプは、新聞紙やチラシ等の古紙から製造するのが一般的であり、雑誌や書物等の古紙は、再生板紙の原料パルプ(古紙パルプ)とする場合の他ほとんど利用されていない。これは、雑誌や書物等の古紙は、ホットメルト等の背糊が残存していたり、ポリカーボネイト樹脂コンパクトディスク(以下、単にCDともいう。)がページ間に挟まれていたりするため、生産性が下がる虞や、再生紙の品質劣化、印字障害等を招く虞があることによる。
【0005】
古紙パルプを製紙原料パルプとして用いる技術は従来より研究がなされており、古紙パルプを30%以上配合した電子複写用及びフォーム用紙(特開昭57−128346号公報)、同パルプを10%以上含有した感圧複写紙(特開平3−199083号公報)、印刷用上級紙の紙料として用いる方法(特開昭58−98499号公報)、電子写真圧力定着転写紙及びその転写紙用原紙の紙料として用いる方法(特開昭58−40556号公報)、オフセット印刷用新聞用紙に用いる方法(特開平3−227500号公報)、中性電子写真用転写紙に用いる方法(特開平3−220398号公報)など多種、多岐にわたる古紙パルプの利用技術が提案されている。
【0006】
しかしながら、軽包装紙に関して、軽包装紙に古紙パルプがまざると紙の腰、表面強度が低下するという問題を有しているにもかかわらず、その低下を抑制する技術はいまだ提案されていない。古紙パルプを軽包装紙の原料として配合すると紙の腰や表面強度が低下するため、古紙パルプを軽包装紙の原料として用いるためには紙の腰、表面強度を維持する技術が不可欠である。
【0007】
従来は紙用薬品の添加又はその増量によって対応していたが効果は充分でなく、またコストの上昇をまねくという問題を有していた。また、紙用薬品の添加又はその増量は他の品質に悪影響を及ぼしかねないので、むやみに添加又はその増量ができないため古紙パルプの配合率は品質上の観点から30%程度(対軽包装紙、紙料パルプ、絶乾重量当り)が上限であるという問題も有していた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前記現状に鑑み、古紙パルプを配合した紙料パルプを使用し抄紙した軽包装紙の性質、特に紙の腰、表面強度の向上が要望されており、本発明の目的は前記性質を改善した古紙パルプ入り軽包装紙の製造方法を提供することにある。
【0009】
本願発明は、古紙パルプ配合の軽包装紙を製造するにあたって、原料パルプの一部として、雑誌古紙パルプを使用し、且つその夾雑物管理を行うことにより、低コストで、しかも引張強度と引裂強度を高くした、さらには印刷適性にすぐれた古紙パルプ配合の軽包装紙とその製造方法を提案しようとするものである。
【0010】
なお、この明細書において「雑誌古紙」という場合は、いわゆる「雑誌」のみからなる古紙のほか、新聞紙、チラシ、ピン付き雑誌、背糊付き雑誌、ビニール貼り雑誌、CD入り雑誌などが混在した「無選別古紙」をも含むものとする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本願発明の古紙配合軽包装紙は、配合される古紙パルプの一部として雑誌古紙パルプ(全パルプ中、5%以上)を使用し、さらに、JIS−P 8113に規定される引張強度が2.6KN/m以上であり、且つJIS−P 8116に規定される引裂強度が700mN・m2/g以上、JIS−P 8143に規定される剛度に基づく剛度指数が0.7以上であることを基本思想とする。
【0012】
本発明で規定する剛度指数は、JIS−P 8143に規定される剛度を試料の米坪で割った値である。
【0013】
雑誌古紙パルプ以外のパルプ材料としては、従来から軽包装紙用パルプとして使用されている種々のパルプ、たとえばNUKP(針葉樹クラフトパルプ)、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)等が使用可能である。
【0014】
また、本願発明の古紙配合軽包装紙を製造するにあたっては、古紙パルプの離解工程、粗選工程、熟成工程、脱墨工程、洗浄工程等からなる古紙パルプの製造ラインにおいて離解、粗選工程を経た後、0.12mm以下のスリット幅または孔径を有するスクリーンを使用して古紙パルプから夾雑物を分離除去することが推奨される。
【0015】
すなわち、0.12mm以下のスリット幅または孔径を有するスクリーンを使用するのは短繊維分と長繊維分の平均繊維長との差を大きくする理由からであり、その場合、短繊維分と長繊維分の平均繊維長との差は10%以上が望ましい。
【0016】
次に、本願発明の古紙配合軽包装紙の製造方法においては、スクリーンのアクセプト側またはリジェクト側に自動夾雑物測定器を設け、その夾雑物の測定結果が目標値以下となるように、前記スクリーンのリジェクト率を10%以上の領域で変更することが推奨される。そして、さらに、前記スクリーンのアクセプト原料に基づき古紙パルプを製造する一方で、前記スクリーンのリジェクト原料について、前記アクセプト原料とは別のラインで更に夾雑物の除去処理を行って古紙パルプを製造し、それらの両古紙パルプを10%以上配合することが推奨される。
【0017】
本願発明を実施するにあたっては、必要に応じて、かせいソーダ、炭酸ソーダ、珪酸ソーダ、過酸化水素、亜硫酸ソーダ、硫酸マグネシウム、トリポリ燐酸ソーダ、キレート剤、脱墨剤、捕集剤、発泡剤等の各種添加剤、あるいは各種助剤等を適宜使用することは何ら差支えない。
【0018】
【発明の効果】
本願発明の古紙配合軽包装紙は、雑誌古紙パルプを5%以上配合するとともに、JIS−P 8113に規定される引張強度が2.6KN/m以上であり、且つJIS−P 8116に規定される引裂強度が700mN・m2/g以上、JIS−P 8143に規定される剛度に基づく剛度指数が0.7以上であることを特徴としたことにより、印刷機での操業性向上、走行性の改善、また製袋機の走行性及び製袋後の歩留りが向上効果が向上しする。また、表面強度の向上による印刷不良発生の低減、破袋トラブル等の発生が少ない軽包装紙とすることができる効果がある。
【0019】
本願発明は、さらに、上記のように雑誌古紙パルプを使用するにあたって、雑誌古紙を含む古紙パルプの製造ラインで、0.12mm以下のスリット幅または孔径を有するスクリーンを用いて繊維懸濁液から夾雑物を分離除去するとともに、スクリーンのアクセプト側またはリジェクト側に自動夾雑物測定器を設け、その夾雑物の測定結果が目標値以下となるように、前記スクリーンのリジェクト率を10%以上の領域で変更することによって、雑誌古紙を含む古紙パルプを使用する場合であっても、良好な印刷適性をもつ軽包装紙を提供し得る効果がある。
【0020】
【実施例】
以下、本願発明のいくつかの好適な実施例1〜8を示すとともに、本願発明の技術的優位性を示すための比較対象としていくつかの比較例1〜3を示す。なお、各実施例及び比較例とも使用パルプとしては、NUKP、LUKP、NBKP、LBKPからなる任意配合のバージンパルプ、新聞古紙パルプ、雑誌古紙パルプを適宜配合比(表1参照)で使用した。
【0021】
各実施例における古紙パルプの処理方法
図1は、各実施例における古紙パルプの処理方法を示す概要図であり、同図において、1はパルパー、2はターボセパレーター、3は高濃度クリーナー、4は粗選スクリーン、5はプレフローテーター、6はクリーナー、7は精選スクリーン、8は脱水機、9はディスパーザー、10は過酸化水素タワー、11はポストフローテーター、12はストックタンク、13は完成脱水機、14は高濃度ポンプ、15は高濃度タワーである。
【0022】
まず、原料となる古紙は、新聞紙、チラシ、雑誌、書物等が混在した前記のような無選別古紙を、パルパー1に投入する。パルパー1では、古紙を水で希釈、離解し、繊維懸濁液にする。この繊維懸濁液は、ポンプ81によって、輸送管51を通してターボセパレータ2に送る。ターボセパレータ2では、繊維懸濁液中に残存するパルパー1において離解しきれなかった古紙を離解する。
【0023】
このようにして古紙を完全に離解した後、繊維懸濁液は、ポンプ82によって、輸送管52を通して高濃度クリーナー3に送る。高濃度クリーナー3では、古紙に付いていたホッチキス等の重い異物を除去する(比重の違いを利用した異物の除去)。重い異物を除去した後、繊維懸濁液は、輸送管53を通してスクリーン4に送る。スクリーン4では、比較的大きい異物を除去する(体積の違いを利用した異物の除去)。
【0024】
異物を除去した後、繊維懸濁液は、輸送管54を通してプレフローテーター5に送る。プレフローテーター5では、加圧浮上効果によって、繊維に付着しているインクを除去する。
【0025】
インクを除去した後、繊維懸濁液は、ポンプ83によって、輸送管55を通してクリーナー6に送り、さらに、輸送管56を通して、精選スクリーン7に送る。クリーナー6では比重の違いを利用して微細な異物を除去し、精選スクリーン7では体積の違いを利用して微細な異物を除去する。
【0026】
微細な異物を除去した後、繊維懸濁液は、輸送管57を通して脱水機8に送り脱水する。この脱水により高濃度になった繊維懸濁液は、ポンプ84によって、輸送管58を通してディスパーザー9に送る。ディスパーザー9では、クリーナー6及び精選スクリーン7で除去することができなかった異物を細かく分解し、インクとともに水中に分散させる。異物及びインクが分散した状態の繊維懸濁液は、輸送管59を通して過酸化水素タワー10に送る。過酸化水素タワー10では、過酸化水素によって繊維懸濁液中の繊維を漂白する。
【0027】
漂白した繊維懸濁液は、ポンプ85によって輸送管60を通してポストフローテーター11に送る。ポストフローテーター11では、加圧浮上効果によって、ディスパーザー9において分散させた異物及びインクを除去する。
【0028】
このようにして異物及びインクをほぼ完全に除去した後、繊維懸濁液は、輸送管61を通してストックタンク12に送る。ストックタンク12に貯留した繊維懸濁液は、適宜、ポンプ86によって、輸送管62を通して完成脱水機13に送る。完成脱水機13では、繊維懸濁液の濃度が約10質量%になるまで脱水を行い、古紙パルプを得る。この古紙パルプは、輸送管63及び64を通して高濃度タワー15に送る。輸送管63と64との間には、高濃度ポンプ14を備えてあり、この高濃度ポンプ14によって、古紙パルプを高濃度タワー15の上部にポンプアツプするようになっている。高濃度タワー15では、古紙パルプに二酸化チオ尿素等の漂白剤を添加し、漂白する。漂白した古紙パルプは、高濃度タワー15にストックしておき、必要に応じポンプ87によって、輸送管65を通してペーパーマシンに送る。
【0029】
なお、上記の原料パルプ処理工程中において、同原料パルプは精選スクリーン7のところで、0.12mm以下のスリットを使用して分級率10%以上で分級処理される。
【0030】
また、精選スクリーン7のアクセプト側(リジェクト側でもよい)には、自動夾雑物測定器が設けられており、夾雑物の測定結果が目標値以下となるように、精選スクリーン7のリジェクト率を10%以上の領域で変更管理するようにしている。なお、図1の実施例に示される古紙パルプ製造ラインでは、前記スクリーンのアクセプト原料に基づき古紙パルプを製造する一方で、前記スクリーンのリジェクト原料を、前記アクセプト原料とは別のラインで更に夾雑物の除去処理を行って古紙パルプを製造するようにしており、それらの両古紙パルプを10%以上配合するようにしている。
【0031】
次に、繊維懸濁液のpHの調整について説明すると、雑誌古紙から抄紙機に持ちこまれる顔料の中で、炭酸カルシウムは酸性領域では炭酸ガスを発生させるとともに、系内にスケールを作り出すことになるため、本願発明においては、好ましくはpH4.5程度の酸性抄紙よりpH6〜8の疑似中性か、若しくはpH7近辺の中性抄紙が好ましい。
【0032】
次に、各実施例におけるpHの調整方法について説明すると、図示の実施例では、熱溶融性かつアルカリ溶融性材料の除去が完了するまでの間、繊維懸濁液のpHを6〜9とするのが好ましいが、その調成方法を特に限定するものではない。この調整方法としては、たとえば、古紙の離解に際して、アルカリを0.5質量%以下添加するとよい。この際使用するアルカリとしては、その種類を何ら限定するものではなく、水酸化ナトリウムや、硅酸ナトリウム等を使用することができる。
【0033】
各実施例及び比較例における抄紙方法
表1に示す各配合紙原料を用い、紙力増強剤、サイズ剤を添加し、フォードリニア抄紙機により、pH5〜8で抄紙し、坪量50g/m2〜120g/m2の軽包装紙を得た。
【0034】
各比較例における古紙パルプの処理方法
比較例1では、図1とその説明で示した古紙パルプ処理方法において、分級スリットは0.12mmを使用したが、雑誌古紙パルプは使用しなかった。
【0035】
比較例2では、図1とその説明で示した古紙パルプ処理方法において、分級スリットは0.15mmを使用した。雑誌古紙パルプは3%、新聞古紙パルプを27%配合した。
【0036】
比較例3では、図1とその説明で示した古紙パルプ処理方法において、分級スリットは0.15mmを使用した。雑誌古紙パルプは10%、新聞古紙パルプを50%配合した。
【0037】
比較例4では、図1とその説明で示した古紙パルプ処理方法において、分級スリットは0.15mmを使用した。雑誌古紙パルプは5%、新聞古紙パルプを5%配合した。
【0038】
比較例5では、バージンパルプを100使用した。
【0039】
【表1】
【0040】
各実施例及び比較例の評価は次の通りである。
【0041】
実施例1〜8
各実施例とも、雑誌古紙パルプを5%以上含有するとともに、JIS−P 8113に規定される引張強度が2.6KN/m以上で、JIS−P 8116に規定される引裂強度が700mN・m2/g以上、JIS−P 8143に規定される剛度に基づく剛度指数が0.7以上であり、その結果、破袋トラブル等の発生もなく、良好な軽包装紙が得られた。
【0042】
また、図1の実施例は、雑誌古紙を含む古紙パルプの製造ラインで、0.12mm以下のスリット幅または孔径を有するスクリーンを用いて繊維懸濁液から夾雑物を分離除去するとともに、スクリーンのアクセプト側またはリジェクト側に自動夾雑物測定器を設け、その夾雑物の測定結果が目標値以下となるように、前記スクリーンのリジェクト率を10%以上の領域で変更することにより、夾雑物の少ない印刷適性の良好な軽包装紙を得ることができた。
【0043】
比較例1〜5
各比較例とも、表1から明らかなように、実施例に比較して、引張強度、引裂強度、剛度指数とも低く、ハ゜ルフ゜費用を含めた総合評価で実施例より劣るものであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の実施例で使用する古紙パルプ処理装置の概要図である。
【符号の説明】
1はパルパー、2はターボセパレーター、3は高濃度クリーナー、4は粗選スクリーン、5はプレフローテーター、6はクリーナー、7は精選スクリーン、8は脱水機、9はディスパーザー、10は過酸化水素タワー、11はポストフローテーター、12はストックタンク、13は完成脱水機、14は高濃度ポンプ、15は高濃度タワー、51〜65は輸送管、81〜87はポンプ。
Claims (3)
- 古紙パルプを配合した古紙配合軽包装紙であって、雑誌古紙パルプを5%以上含有するとともに、JIS−P 8113に規定される引張強度が2.6KN/m以上であり、且つJIS−P 8116に規定される引裂強度が700mN・m2/g以上であり、JIS−P 8143に規定される剛度に基づく剛度指数が0.7以上であることを特徴とする古紙配合軽包装紙。
- 雑誌古紙パルプを配合した古紙配合軽包装紙を製造する方法であって、雑誌古紙を含む古紙パルプの製造ラインで、0.12mm以下のスリット幅または孔径を有するスクリーンを用いて繊維懸濁液から夾雑物を分離除去するとともに、前記スクリーンのアクセプト側またはリジェクト側に自動夾雑物測定器を設け、その夾雑物の測定結果が目標値以下となるように、前記スクリーンのリジェクト率を10%以上の領域で変更することを特徴とする古紙配合軽包装紙の製造方法。
- 前記スクリーンのアクセプト原料に基づき古紙パルプを製造する一方で、前記スクリーンのリジェクト原料について、前記アクセプト原料とは別のラインで更に夾雑物の除去処理を行って古紙パルプを製造し、それらの両古紙パルプを10%以上配合したことを特徴とする請求項2記載の古紙配合軽包装紙の製造方法。
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