JP2004122706A - 印刷版材料及びプロセスレス印刷版 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐傷性、特に耐スクラッチ性、耐ゴム擦り性を有し、且つ、耐刷性に優れた印刷版材料及びプロセスレス印刷版を提供する。
【解決手段】基材上の一方の面に、少なくとも1層の親水性層を有する印刷版材料において、該基材がプラスチックフィルムであり、平坦指数が、0.01〜0.075であることを特徴とする印刷版材料。
【選択図】 なし
【解決手段】基材上の一方の面に、少なくとも1層の親水性層を有する印刷版材料において、該基材がプラスチックフィルムであり、平坦指数が、0.01〜0.075であることを特徴とする印刷版材料。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷版材料及び印刷版に関し、特に、コンピューター・トゥー・プレート(CTP)方式により画像形成が可能な印刷版材料及びCTP方式により画像形成する印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】
印刷データのデジタル化に伴い、安価で取扱いが容易でPS版と同等の印刷適性を有したCTP(コンピューター・トゥー・プレート)が求められている。特に近年、特別な薬剤による現像液処理が不要な、いわゆるプロセスレス印刷版への期待が高まっている。
【0003】
プロセスレス印刷版の構成としては、PS版と同じアルミ砂目を用いる場合も考えられるが、層構成の自由度やコストダウンの観点から、塗布形成された親水性層を有する種々の方式のプロセスレス印刷版が提案されている。
【0004】
プロセスレス印刷版の画像形成方式の一つとして有力であるのが、赤外線レーザ記録であり、大きく分けて、後述するアブレーションタイプと熱融着画像層機上現像タイプ及び熱溶融転写タイプの三種の記録方法が存在する。
【0005】
赤外線レーザ記録では、高解像度画像を短時間で記録することが可能となるが、露光系の装置価格が高いという問題を有している。
【0006】
アブレーションタイプとしては、例えば、基材上に親水性層と親油性層とを有し、何れかの層を表層として積層したものが挙げられる(例えば、特許文献1〜6参照。)。表層が親水性層であれば、画像様に露光し、親水性層をアブレートさせて画像様に除去して親油性層を露出することで画像部を形成することができる。ただし、アブレートした表層の飛散物による露光装置内部の汚染が問題になりやすく、そのため、親水性層上に更に水溶性の保護層を設けて、アブレートした表層の飛散を防止し、印刷機上で保護層とともにアブレートした表層を除去する方式も提案されている。
【0007】
熱融着画像層機上現像タイプとしては、親水性層もしくはアルミ砂目上に、画像形成層に熱可塑性微粒子と水溶性の結合剤とを用いたものが挙げられる(例えば、特許文献7参照。)。
【0008】
しかし、親水性基材としてアルミ砂目を用いた場合には、光熱変換素材(一般的には可視光にも着色している)を画像形成層に添加する必要があり、現像した際に印刷機を汚染する懸念があるため、層構成としては基材上に光熱変換素材を含有した親水性層を形成したものを使用して、画像形成層からは光熱変換素材を除いたものの方が有利である。
【0009】
又、熱溶融転写方式としては、例えば、マンローランド社のDICOwebのような熱転写リボンを用いて、アルミ砂目ではなく、繰り返し使用可能な親水性表面を有する金属スリーブに熱溶融素材を画像様に転写した後、加熱して画像を定着させる方法が挙げられる。
【0010】
このように、赤外線レーザ記録用のプロセスレス印刷版としては、何れのタイプの記録原理ではあっても、印刷版非画像部の水受容表面として塗布形成された親水性層を用いるのがほとんどである。
【0011】
一方、プロセスレス印刷版の画像形成方法として、もう一つの有力な方法は、インクジェット記録方式であり、種々の記録方法や画像形成素材が提案されている。インクジェット記録方式は、現状では赤外線レーザ記録方式ほどの高解像度及び記録速度を得ることはできていないが、装置価格が比較的安価であるという利点も有している。
【0012】
インクジェット記録方式によるプロセスレス印刷版は、一般的には親水性表面を有する印刷版材料に、親油性の画像形成素材を画像様に付与し、その後、必要であれば画像定着もしくは画像強度向上のための処理を行って作製される印刷版である。画像形成素材を含む記録用インクとしては、光重合性インク組成物(例えば、特許文献8参照。)や、ホットメルトインク(例えば、特許文献9参照。)、油性インク(例えば、特許文献10参照。)などが挙げられ、親水性表面を有する印刷版材料としては、アルミ砂目や親水性層を有する印刷版材料が挙げられるが、インクジェット記録の特徴として、滴下後のインクの広がり抑制やインクの定着性の観点から、被記録材料には適度なインク吸収性が要求され、印刷版材料としては多孔質な親水性層を有する印刷版材料である方が有利である。
【0013】
このように、プロセスレス印刷版の種々の画像記録方式には、アルミ砂目を用いた印刷版材料よりも、塗布形成した親水性層を有する印刷版材料が適していると言える。
【0014】
しかしながら、これらのプロセスレス印刷版は、印刷適性、特に耐刷性が不十分な性能であった。又印刷版の取り扱い時の耐傷性において十分な性能が得られていないという問題があった。
【0015】
【特許文献1】
特表平8−507727号公報
【0016】
【特許文献2】
特開平6−186750号公報
【0017】
【特許文献3】
特開平6−199064号公報
【0018】
【特許文献4】
特開平7−314934号公報
【0019】
【特許文献5】
特開平10−58636号公報
【0020】
【特許文献6】
特開平10−244773号公報
【0021】
【特許文献7】
特許第2938397号明細書
【0022】
【特許文献8】
特開平5−204138号公報
【0023】
【特許文献9】
特開平9−58144号公報
【0024】
【特許文献10】
特開平10−272753号公報
【0025】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐傷性、特に耐スクラッチ性、耐ゴム擦り性を有し、且つ、耐刷性に優れた印刷版材料及びプロセスレス印刷版を提供することである。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の構成1〜9により達成された。
【0027】
1.基材上の一方の面に、少なくとも1層の親水性層を有する印刷版材料において、該基材がプラスチックフィルムであり、且つ、前記基材の前記一般式(1)で定義される平坦指数が、0.01〜0.075であることを特徴とする印刷版材料。
【0028】
2.基材上の一方の面に、少なくとも1層の親水性層を有する印刷版材料において、該基材がプラスチックフィルムであり、撓み量が0mm〜50mmであることを特徴とする印刷版材料。
【0029】
3.親水性層の少なくとも1層が、多孔質構造を有することを特徴とする前記1または2に記載の印刷版材料。
【0030】
4.基材上に、熱で画像形成可能な画像形成機能層を有し、且つ、該基材上のいずれか1層が光熱変換素材を含有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【0031】
5.親水性層上に、熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子を含有する熱で画像形成可能な画像形成機能層を有することを特徴とする前記4に記載の印刷版材料。
【0032】
6.前記1〜5のいずれか1項に記載の印刷版材料の親水性層上に、画像形成素材を画像様に付与される工程を経て形成された画像を有することを特徴とするプロセスレス印刷版。
【0033】
7.画像形成素材を含むインクを用い、インクジェット方式により画像が付与されることを特徴とする前記6に記載のプロセスレス印刷版。
【0034】
8.画像形成素材を含むインクが、放射線硬化性インクであることを特徴とする前記7に記載のプロセスレス印刷版。
【0035】
9.放射線硬化性インクをインクジェット方式により付与した後、光照射により画像が形成されることを特徴とする前記8に記載のプロセスレス印刷版。
【0036】
以下、本発明を詳細に説明する。
《基材》
本発明に係る基材について説明する。
【0037】
本発明の印刷板材料や本発明のプロセスレス印刷版に、耐傷性、特に耐スクラッチ性、耐ゴム擦り性、且つ、良好な耐刷性を付与するためには、請求項1に記載の平坦指数が、0.01〜0.075の範囲に入るように調整するか、または、請求項2に記載のように、撓み量が、0mm〜50mmの範囲になるように調整することが必須要件である。
【0038】
《平坦指数》
本発明に係る平坦指数について説明する。
【0039】
請求項1に記載の、本発明の印刷版材料は、基材上に親水性層を有し、使用される基材がプラスチックフィルムであり、且つ、前記の一般式(1)で定義された平坦指数が0.01〜0.075の範囲にあることを特徴とする。
【0040】
本発明に関わる平坦指数は、好ましくは、0.015〜0.06が好ましく、更に好ましくは、0.02〜0.05である。
【0041】
ここで、前記一般式(1)で定義される平坦指数、前記一般式(2)で定義されるΔLm(長手方向寸法変化率)、前記一般式(3)で定義されるΔLmレンジ等は、具体的には、TMA(Thermal Mechanical Analysis)分析により求めることが出来る。
【0042】
低張力熱処理後(低張力熱処理については後述する)の基材を幅方向に5等分した点において、長手方向(縦方向;MD)35mm、幅方向(TD)4mmにサンプリングする。これをチャック間距離が25mmになるようセットした後、5.4gの加重を掛け、窒素気流中で25℃〜200℃まで2℃/分で昇温しながら寸法変化を測定する。
【0043】
測定には、TMA分析装置(例えばTA insturument社製 2200型)を使用する。全測定点について25℃の寸法と160℃の寸法を測定し、前記一般式(2)に従い、ΔLm(長手方向寸法変化率)を求める。
【0044】
上記ΔLm(長手方向寸法変化率)を複数回測定後、平均値として、ΔLm(平均値)を求める。
【0045】
また、複数回の測定により求められた上記ΔLm(長手方向寸法変化率)測定値の中から、最大値である、ΔLm(最大値)、最小値である、ΔLm(最小値)を各々選択し、前記一般式(3)により、ΔLmレンジを求める。
【0046】
ついで、得られたΔLm(平均値)、ΔLmレンジを用い、前記一般式(1)により、本発明に係る平坦指数を求めることが出来る。
【0047】
請求項1に記載の本発明の印刷版材料では、前記一般式(1)で定義される、基材の平坦指数を0.01〜0.075にするために、160℃において収縮しないプラスチックフィルムであることが好ましい。従来公知のプラスチックフィルムは通常多軸延伸されているため、延伸温度を上回る160℃では延伸歪みを回復するために収縮が始まることが多い。収縮時に平面性が低下するため、収縮はなるべく小さいほうが好ましい。
【0048】
一方、プラスチックフィルムは温度の上昇に伴い、熱膨張(線膨張)しようとする。このため160℃でのプラスチックフィルムの寸法は熱膨張による伸びと熱収縮による縮みの差で決定される。従って、熱収縮が大きな基材は140℃で収縮>伸張となるため、ΔLm(長手方向寸法変化率)は、負の値になりやすい。このような熱収縮が大きなプラスチックフィルムは熱寸法変化が大きく好ましくない。従って、ΔLm(長手方向寸法変化率)の大きな基材ほど好ましいが、収縮量=0の場合はプラスチックフィルムの熱膨張のみとなり上限が存在する。
【0049】
従って、ΔLm(長手方向寸法変化率)は、0.10%〜0.60%の範囲が好ましく、更に好ましくは、0.15%〜0.55%であり、特に好ましくは、0.25%〜0.50%である。
【0050】
一方、基材が全幅に渡り均等に熱処理され、幅方向の寸法の不均一性に起因する故障を低減し、且つ、熱処理に伴う弊害(オリゴマの析出、基材の黄変による透明性の低下等)を防止する観点からは、前記一般式(3)で定義されるΔLmレンジは、0.01%〜1.0%の範囲に調整されることが好ましく、更に好ましくは、0.01%〜0.8%の範囲に調整されることである。
【0051】
《撓み量》
本発明に関わる撓み量について説明する。
【0052】
請求項2に記載の、本発明の印刷版材料は、基材上に親水性層を有し、使用される基材がプラスチックフィルムであり、且つ、撓み量が0mm〜50mmの範囲にあることを特徴とする。また、基材の撓み量としては、好ましくは、0mm〜40mmであり、特に好ましくは、0mm〜30mmである。
【0053】
ここで、撓み量の測定法を図1をもとにして説明する。
図1は、基材の撓み量の測定方法を示す模式図である。この図に示すように低張力熱処理後の基材を全幅でMD方向に5mサンプリングし、これを5m離れた2本の平行に並べたロール1、1′に両端を固定する。ロール1を固定し、自由に回転できるロール1′に一定荷重(5kg/1m幅)をかけ、基材に張力を掛ける。平行に並べたロール1、1′を結ぶ平面から、下に弛んだ長さを測り、その最大長さ(A)を測定する。低張力熱処理前の基材も同様に測定した(B)。この差(A−B)の絶対値を撓み量とする。尚、2は荷重、3はサンプル基材を示す。
【0054】
《低張力熱処理》
本発明に係る低張力熱処理について説明する。
【0055】
本発明に関わる基材に、上記のような平坦指数または撓み量を付与する手段としては、具体的には、製膜時の原反の中央(製膜中央)をオフセットしてスリットした、即ちオフセット裁断した(製膜中央に対して左右非対称にスリットした)基材を低張力熱処理する等が一例としてあげられる。即ち、製膜時の中央と熱処理時の中央(熱処理中央)をずらせる等の手段が一例として挙げられる。
【0056】
これは以下の理由による。即ち製膜時の熱固定〜緩和工程においてチャックで固定されている両端部は十分緩和できず熱収縮しやすく、これが熱処理中に収縮する。
【0057】
一方、製膜中央は製膜時に十分緩和しているため熱処理中の収縮が小さい。このように熱収縮性が幅方向で異なる(ボーイング)。このような基材は熱処理中に製膜中央が両端に比べたるみ易い傾向を有する。このような撓みは熱処理中の張力や温度のかかり方等に不均一性を発生する。これを防止するために製膜中央と熱処理中央をずらすことが有効である。即ち最も撓みの大きい製膜中央が熱処理中央になると最も撓みが大きいが、これを中央からずらすことで撓みを小さくでき、熱処理の不均一性を小さくすることができる。このような撓みは本発明のように低張力で熱処理する場合に特に顕著である。
【0058】
(オフセット量)
製膜中央と熱処理中央との差をオフセット量というが、本発明では、3%〜45%の範囲が好ましく、更に好ましくは、5%〜40%であり、特に好ましくは、8%〜35%である。
【0059】
ここで、オフセット量は、下記式で定義される。
オフセット量(%)=(製膜中央と熱処理中央の距離)/(製膜原反幅)×100(%)
このような熱処理は製膜後の原反をスリットすることで容易に達成できる。本発明に使用出来るプラスチック基材、特にポリエステル基材はポリエステルを形成するジカルボン酸のうち50モル%以上が芳香族ジカルボン酸から成る芳香族ポリエステルが好ましく、より具体的にはポリエチレンテレフタレート系ポリマー、ポリエチレンナフタレート系ポリマー、ポリブチレンテレフタレート系ポリマー、ポリブチレンナフタレート系ポリマーが挙げられる。更に好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが挙げられる。これらの平均分子量(Mw)は5千以上100万以下が好ましく、1万以上30万以下がより好ましい。
【0060】
これらのポリエステル基材は2軸以上に製膜されることが望ましい。例えば融点(Tm)〜Tm+50℃の間で熔融した後、ガラス転位温度(Tg)−50℃〜Tg+20℃の冷却ドラムに押し出し未延伸シートを形成する。このとき冷却ドラムに静電印加することも好ましい。この未延伸シートをTg〜Tg+60℃の間で2倍〜4倍に縦に延伸し、更にTg〜Tg+60℃の間で2〜5倍に横に延伸する。これをTm−60℃〜Tmで5秒〜1分熱固定する。この後にTm−60℃〜Tmで横/縦の少なくとも一方に0〜10%緩和することも好ましい。
【0061】
この後、更に縦/横に再度延伸することも好ましい。このようにして得られたポリエステル基材の厚みは50μm〜500μmが好ましく、より好ましくは70μm〜300μm、更に好ましくは90μm〜200μmである。好ましい製膜幅は0.6m〜10mであり、より好ましくは0.8m〜8mであり、更に好ましくは1.0m〜7mである。このようにして製膜した基材を低熱収縮処理用にスリットする。好ましいスリットの幅は0.5m〜8mであり、より好ましくは0.7m〜6mであり、更に好ましくは0.9〜5mである。スリット後に両端にナーリング(エンボス加工)を施すことも好ましい。
【0062】
本発明に用いられるポリエステル基材を製造するに当り低張力熱処理は基材を熱処理ゾーン内を搬送しながら実施する。熱処理にあたり、例えば、ポリエステル基材中に含まれるオリゴマーの表面への析出を防止し、ヘイズの上昇や熱収縮を抑制する観点から、熱処理温度を120℃〜220℃の範囲に調整することが好ましく、更に好ましくは、135℃〜200℃であり、特に好ましくは、145℃〜180℃である。
【0063】
このような温度制御は断熱材を用いた熱処理ゾーン内に熱風を吹き込んで達成してもよく、ヒートロールのような高温の熱媒体に接触させて伝熱でポリエステル基材が昇温してもよく、赤外線ヒーターのようなものを用いて輻射熱で昇温してもよい。何れの方法でもよいが、幅方向の温度分布を小さくすることが熱収縮の幅方向分布を小さくするために好ましい。これには熱風の吹き出し口にフィンを設置し風の向きを調整することで吹き溜まりを無くしたり、温度の低くなりやすい両端部の温度が高くなるようにヒートロールや赤外線ヒーターを分割制御することで達成できる。搬送張力(張力を基材の断面積で割った値)は0.001kg/mm2〜0.05kg/mm2が好ましく、より好ましくは、0.003kg/mm2〜0.03kg/mm2であり、特に好ましくは、0.007kg/mm2〜0.02kg/mm2である。
【0064】
このような張力は巻き取り側、送り出し側の少なくとも一方に設置したモーターを調整することで達成できる。このときテンションピックアップを設置し、張力をモニターしながら調整するのが好ましい。
【0065】
上記のような搬送しながらの熱処理は、ロール搬送でも良く、非接触搬送(空気浮上搬送)でも良いが、より高い平面性の得やすい前者が好ましい。熱処理後の基材は急冷すると皺が発生しやすいため、冷却速度5℃/分以下で冷却するのが好ましく、より好ましくは3℃/分以下で冷却する。更に巻き取りは巻崩れ防止のため、テンションカットした後、高い張力で巻き取るのが好ましい。
【0066】
これらの低張力熱処理は、後述する、製膜後のポリエステル基材をそのまま用いてもよく、表面処理(グロー処理、コロナ処理、火炎処理、紫外線処理)を施したもの、或いは更に塗布層、例えば水溶性ポリマー塗工層(ゼラチン、水溶性ポリエステル等)やラテックス層(例えばスチレン−ブタジエンゴム、塩化ビニリデン、アクリレート樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィンなど)、有機溶剤塗工層(セルロースエステル、ニトロセルロース、ウレタン、アクリレート、ポリオレフィン等)を付与した後低張力熱処理することも好ましい。これらの塗布層は乾燥工程を含むため、乾燥中の熱により熱収縮率を小さくすることができるためである。更にこれらの層の中に、静電防止剤(酸化スズ、五酸化バナジウム、カチオンポリマー等)や、反射防止染料、マット剤(シリカ、アルミナ、架橋ポリスチレン、架橋PMMA等)を含んでいてもよい。このようにして得た基材上に親水性層を塗設することで本発明の印刷版材料を形成することができる。
【0067】
《基材として用いられるプラスチックフィルム》
本発明に係る基材としてはプラスチックフィルムが用いられ、該フィルムの厚さとしては印刷機に取り付け可能であれば特に制限されるものではないが、50μm〜500μmのものが好ましい。
【0068】
該プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類等を挙げることができる。特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレンなどのポリエステルフィルムが好ましい。これらプラスチックフィルムは塗布層との接着性を向上させるために、塗布面に易接着処理や下引き層塗布を行うことが好ましい。易接着処理としては、コロナ放電処理や火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が挙げられる。又、下引き層としては、ゼラチンやラテックスを含む層等が挙げられる。
【0069】
又、本発明においては、上記プラスチックフィルムと金属板(例えば、鉄、ステンレス、アルミニウムなど)やポリエチレンで被覆した紙などの材料を適宜貼り合わせた複合基材を用いることもできる。これらの複合基材は、塗布層を形成する前に貼り合わせても良く、又、塗布層を形成した後に貼り合わせても良く、印刷機に取り付ける直前に貼り合わせても良い。
【0070】
《親水性層》
本発明に係る親水性層について説明する。ここで、親水性層とは、本発明の印刷版材料を印刷版として用いる際に、インクに対する親和性が低く、且つ、水に対する親和性の高い層として定義される。
【0071】
請求項3に記載のように、本発明の印刷版材料は、基材上に設けられた親水性層の少なくとも1層が、多孔質構造を有することが好ましい。前記多孔質構造を有する親水性層を形成するためには、下記に記載の親水性マトリクスを形成する素材が好ましく用いられる。
【0072】
(金属酸化物)
親水性層マトリクスを形成する素材としては、金属酸化物が好ましい。金属酸化物としては、金属酸化物微粒子を含むことが好ましく、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。該金属酸化物微粒子の形態としては、球状、針状、羽毛状、その他の何れの形態でも良く、平均粒径としては、3nm〜100nmの範囲が好ましく、平均粒径が異なる数種の金属酸化物微粒子を併用することもできる。また、粒子表面に表面処理がなされていても良い。
【0073】
上記金属酸化物微粒子は、その造膜性を利用して結合剤としての使用が可能である。有機の結合剤を用いるよりも親水性の低下が少なく、親水性層への使用に適している。
【0074】
(コロイダルシリカ)
中でも、コロイダルシリカが特に好ましく使用できる。コロイダルシリカは、比較的低温の乾燥条件であっても造膜性が高いという利点があり、良好な強度を得ることができる。コロイダルシリカとしては、後述するネックレス状コロイダルシリカ、平均粒径20nm以下の微粒子コロイダルシリカを含むことが好ましく、更に、コロイダルシリカはコロイド溶液としてアルカリ性を呈することが好ましい。
【0075】
ネックレス状コロイダルシリカとは、一次粒子径がnmのオーダーである球状シリカの水分散系の総称であり、一次粒粒子径が10nm〜50nmの球状コロイダルシリカが50nm〜400nmの長さに結合した「パールネックレス状」のコロイダルシリカを意味する。
【0076】
パールネックレス状(即ち真珠ネックレス状)とは、コロイダルシリカのシリカ粒子が連なって結合した状態のイメージが、真珠ネックレスの様な形状をしていることを意味している。
【0077】
ネックレス状コロイダルシリカを構成するシリカ粒子同士の結合は、シリカ粒子表面に存在する−SiOH基が脱水結合した−Si−O−Si−と推定される。ネックレス状のコロイダルシリカとしては、具体的には日産化学工業(株)製の「スノーテックス−PS」シリーズなどが挙げられ、製品名としては「スノーテックス−PS−S(連結した状態の平均粒子径は110nm程度)」、「スノーテックス−PS−M(連結した状態の平均粒子径は120nm程度)」及び「スノーテックス−PS−L(連結した状態の平均粒子径は170nm程度)」があり、これらに各々対応する酸性の製品が「スノーテックス−PS−S−O」、「スノーテックス−PS−M−O」及び「スノーテックス−PS−L−O」である。
【0078】
ネックレス状コロイダルシリカを添加することにより、層の多孔性を確保しつつ、強度を維持することが可能となり、親水性層マトリクスの多孔質化材として好ましく使用できる。これらの中でも、アルカリ性である「スノーテックスPS−S」、「スノーテックスPS−M」、「スノーテックスPS−L」を用いると、親水性層の強度が向上し、また、印刷枚数が多い場合でも地汚れの発生が抑制され、特に好ましい。
【0079】
また、コロイダルシリカは、粒子径が小さいほど結合力が強くなることが知られており、本発明では平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカを用いることが好ましく、更に好ましくは、3nm〜15nmのものである。
【0080】
前述のようにコロイダルシリカの中ではアルカリ性のものが、地汚れ発生を抑制する効果が高く特に好ましい。平均粒径がこの範囲にあるアルカリ性のコロイダルシリカとしては、例えば、日産化学社製の「スノーテックス−20(粒子径10nm〜20nm)」、「スノーテックス−30(粒子径10nm〜20nm)」、「スノーテックス−40(粒子径10nm〜20nm)」、「スノーテックス−N(粒子径10nm〜20nm)」、「スノーテックス−S(粒子径8nm〜11nm)」、「スノーテックス−XS(粒子径4nm〜6nm)」が挙げられる。
【0081】
平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカは、前述のネックレス状コロイダルシリカと併用することで、形成する層の多孔質性を維持しながら、強度をさらに向上させることが可能となり、特に好ましい。
【0082】
平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカ/ネックレス状コロイダルシリカの比率は95/5〜5/95の範囲が好ましく、更に好ましくは、70/30〜20/80の範囲がより好ましく、60/40〜30/70の範囲が更に好ましい。
【0083】
(多孔質金属酸化物粒子)
本発明において、親水性層マトリクス構造の多孔質化材として、粒径が1μm未満の多孔質金属酸化物粒子を含有することができる。多孔質金属酸化物粒子としては、以下に記載の多孔質シリカ、多孔質アルミノシリケート粒子または、ゼオライト粒子を好ましく用いることができる。
【0084】
(多孔質シリカ多孔質シリカ、多孔質アルミノシリケート粒子)
多孔質シリカ粒子は、一般に湿式法または、乾式法により製造される。湿式法では、ケイ酸塩水溶液を中和して得られるゲルを乾燥、粉砕するか、もしくは中和して析出した沈降物を粉砕することで得ることができる。乾式法では、四塩化珪素を水素と酸素と共に燃焼し、シリカを析出することで得られる。これらの粒子は製造条件の調整により、多孔性や粒径を制御することが可能である。多孔質シリカ粒子としては、湿式法のゲルから得られるものが特に好ましい。
【0085】
多孔質アルミノシリケート粒子は、例えば、特開平10−71764号公報に記載されている方法により製造される。即ち、アルミニウムアルコキシドと珪素アルコキシドを主成分として加水分解法により合成された非晶質な複合体粒子である。粒子中のアルミナとシリカの比率は1:4〜4:1の範囲で合成することが可能である。また、製造時にその他の金属のアルコキシドを添加して3成分以上の複合体粒子として製造したものも本発明に使用できる。これらの複合体粒子も製造条件の調整により多孔性や粒径を制御することが可能である。
【0086】
粒子の多孔性としては、細孔容積で0.5ml/g以上であることが好ましく、0.8ml/g以上であることがより好ましく、1.0〜2.5ml/gであることが更に好ましい。細孔容積は、塗膜の保水性と密接に関連しており、細孔容積が大きいほど保水性が良好となって印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなるが、2.5ml/gよりも大きくなると粒子自体が非常に脆くなるため塗膜の耐久性が低下する。逆に、細孔容積が0.5ml/g未満の場合には、印刷性能がやや不十分となる場合がある。
【0087】
(細孔容積の測定方法)
ここで、上記の細孔容積の測定は、オートソーブ−1(カンタクローム社製)を使用し、定容法を用いた窒素吸着測定により、粉体の空隙が窒素により、充填されていると仮定して相対圧力が0.998における窒素吸着量から算出されるものである。
【0088】
(ゼオライト粒子)
ゼオライトは、結晶性のアルミノケイ酸塩であり、細孔径が0.3nm〜1nmの規則正しい三次元網目構造の空隙を有する多孔質体である。天然及び合成ゼオライトを合わせた一般式は、次のように表される。
【0089】
(M1、(M2)0.5)m(AlmSinO2)(m+n)・xH2O
ここで、M1、M2は交換性のカチオンであって、M1はLi+、Na+、K+、Tl+、Me4N+(TMA)、Et4N+(TEA)、Pr4N+(TPA)、C7H15N2+、C8H16N+等であり、M2はCa2+、Mg2+、Ba2+、Sr2+、C8H18N2 2+等である。また、n≧mであり、m/nの値つまりはAl/Si比率は1以下となる。Al/Si比率が高いほど交換性カチオンの量が多く含まれるため極性が高く、従って親水性も高い。好ましいAl/Si比率は0.4〜1.0であり、更に好ましくは0.8〜1.0である。xは整数を表す。
【0090】
本発明で使用するゼオライト粒子としては、Al/Si比率が安定しており、又粒径分布も比較的シャープである合成ゼオライトが好ましく、例えばゼオライトA:Na12(Al12Si12O48)・27H2O;Al/Si比率1.0、ゼオライトX:Na86(Al86Si106O384)・264H2O;Al/Si比率0.811、ゼオライトY:Na56(Al56Si136O384)・250H2O;Al/Si比率0.412等が挙げられる。
【0091】
Al/Si比率が0.4〜1.0である親水性の高い多孔質粒子を含有することで、親水性層自体の親水性も大きく向上し、印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなる。また、指紋跡の汚れも大きく改善される。Al/Si比率が0.4未満では親水性が不充分であり、上記性能の改善効果が小さくなる。
【0092】
また、親水層を構成する親水性層マトリクス構造は、層状粘土鉱物粒子を含有することができる。該層状鉱物粒子としては、例えば、カオリナイト、ハロイサイト、タルク、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サボナイト等)、バーミキュライト、マイカ(雲母)、クロライトといった粘土鉱物及び、ハイドロタルサイト、層状ポリケイ酸塩(カネマイト、マカタイト、アイアライト、マガディアイト、ケニヤアイト等)等が挙げられる。特に、単位層(ユニットレイヤー)の電荷密度が高いほど極性が高く、親水性も高いと考えられる。好ましい電荷密度としては0.25以上、更に好ましくは0.6以上である。このような電荷密度を有する層状鉱物としては、スメクタイト(電荷密度0.25〜0.6;陰電荷)、バーミキュライト(電荷密度0.6〜0.9;陰電荷)等が挙げられる。特に、合成フッ素雲母は粒径等安定した品質のものを入手することができ好ましい。また、合成フッ素雲母の中でも、膨潤性のものが好ましく、自由膨潤であるものが更に好ましい。
【0093】
また、上記の層状鉱物のインターカレーション化合物(ピラードクリスタル等)や、イオン交換処理を施したもの、表面処理(シランカップリング処理、有機バインダとの複合化処理等)を施したものも使用することができる。
【0094】
平板状層状鉱物粒子のサイズとしては、層中に含有されている状態で(膨潤工程、分散剥離工程を経た場合も含めて)、平均粒径(粒子の最大長)が1μm未満であり、平均アスペクト比が50以上であることが好ましい。粒子サイズが上記範囲にある場合、薄層状粒子の特徴である平面方向の連続性及び柔軟性が塗膜に付与され、クラックが入りにくく乾燥状態で強靭な塗膜とすることができる。また、粒子物を多く含有する塗布液においては、層状粘土鉱物の増粘効果によって、粒子物の沈降を抑制することができる。粒子径が上記範囲より大きくなると、塗膜に不均一性が生じて、局所的に強度が弱くなる場合がある。また、アスペクト比が上記範囲以下である場合、添加量に対する平板状の粒子数が少なくなり、増粘性が不充分となり、粒子物の沈降を抑制する効果が低減する。
【0095】
層状鉱物粒子の含有量としては、層全体の0.1質量%〜30質量%であることが好ましく、1質量%〜10質量%であることがより好ましい。特に膨潤性合成フッ素雲母やスメクタイトは少量の添加でも効果が見られるため好ましい。層状鉱物粒子は、塗布液に粉体で添加してもよいが、簡便な調液方法(メディア分散等の分散工程を必要としない)でも良好な分散度を得るために、層状鉱物粒子を単独で水に膨潤させたゲルを調製した後、塗布液に添加することが好ましい。
【0096】
親水層を構成する親水性層マトリクスにはその他の添加素材として、ケイ酸塩水溶液も使用することができる。ケイ酸Na、ケイ酸K、ケイ酸Liといったアルカリ金属ケイ酸塩が好ましく、そのSiO2/M2O比率はケイ酸塩を添加した際の塗布液全体のpHが13を超えない範囲となるように選択することが無機粒子の溶解を防止する上で好ましい。
【0097】
また、金属アルコキシドを用いた、いわゆるゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーも使用することができる。ゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーの形成については、例えば、「ゾル−ゲル法の応用」(作花済夫著/アグネ承風社発行)に記載されているか、又は本書に引用されている文献に記載されている公知の方法を使用することができる。
【0098】
また、本発明では、水溶性樹脂を含有してもよい。水溶性樹脂としては、例えば、多糖類、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられるが、本発明に用いられる水溶性樹脂としては、多糖類を用いることが好ましい。
【0099】
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルランなどが使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。これは、親水性層に多糖類を含有させることにより、親水性層の表面形状を好ましい状態形成する効果が得られるためである。
【0100】
親水性層の表面は、PS版のアルミ砂目のように0.1μm〜20μmピッチの凹凸構造を有することが好ましく、この凹凸により保水性や画像部の保持性が向上する。このような凹凸構造は、親水性層マトリクスに適切な粒径のフィラーを適切な量含有させて形成することも可能であるが、親水性層の塗布液に前述のアルカリ性コロイダルシリカと前述の水溶性多糖類とを含有させ、親水性層を塗布、乾燥させる際に相分離を生じさせて形成することがより良好な印刷適性を有する構造を得ることができ、好ましい。
【0101】
凹凸構造の形態(ピッチ及び表面粗さなど)は、アルカリ性コロイダルシリカの種類及び添加量、水溶性多糖類の種類及び添加量、その他添加材の種類及び添加量、塗布液の固形分濃度、ウエット膜厚、乾燥条件等で適宜コントロールすることが可能である。
【0102】
本発明において、親水性マトリクス構造部に添加される水溶性樹脂は、少なくともその一部が水溶性の状態のまま、水に溶出可能な状態で存在することが好ましい。水溶性の素材であっても、架橋剤等によって架橋し、水に不溶の状態になると、その親水性は低下して印刷適性を劣化させる懸念があるためである。また、さらにカチオン性樹脂を含有しても良く、カチオン性樹脂としては、例えば、ポリエチレンアミン、ポリプロピレンポリアミン等のようなポリアルキレンポリアミン類又はその誘導体、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、ジアクリルアミン等が挙げられる。カチオン性樹脂は、微粒子状の形態で添加しても良く、例えば、特開平6−161101号公報に記載のカチオン性マイクロゲルが挙げられる。
【0103】
また、本発明に係る親水性層を塗設する為に用いられる塗布液には、塗布性改善等の目的で水溶性の界面活性剤を含有させることができ、Si系または、F系等の界面活性剤を使用することができるが、特にSi元素を含む界面活性剤を使用することが印刷汚れを生じる懸念がなく、好ましい。該界面活性剤の含有量は、親水性層全体(塗布液としては固形分)の0.01質量%〜3質量%が好ましく、0.03質量%〜1質量%が更に好ましい。
【0104】
また、親水性層には、リン酸塩を含むことができる。本発明では、親水性層の塗布液がアルカリ性であることが好ましいため、リン酸塩としてはリン酸三ナトリウムやリン酸水素二ナトリウムとして添加することが好ましい。リン酸塩を添加することで、印刷時の網の目開きを改善する効果が得られる。リン酸塩の添加量としては、水和物を除いた有効量として、0.1質量%〜5質量%が好ましく、0.5質量%〜2質量%が更に好ましい。
【0105】
また、後述する光熱変換素材を含有することもできる。光熱変換素材としては、粒子状素材の場合は粒径が1μm未満であることが好ましい。
【0106】
(粒径が1μm以上の無機粒子もしくは無機素材で被覆された粒子)
本発明で用いることのできる無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなど、公知の金属酸化物粒子を用いることができるが、塗布液中での沈降を抑制するために、多孔質な金属酸化物粒子を用いることが好ましい。多孔質な金属酸化物粒子としては、前述の多孔質シリカ粒子や多孔質アルミノシリケート粒子を好ましく用いることができる。
【0107】
また、無機素材で被覆された粒子としては、例えば、ポリメチルメタアクリレートやポリスチレンといった有機粒子を芯材とし、芯材粒子よりも粒径の小さな無機粒子で被覆した粒子が挙げられる。無機粒子の粒径としては、芯材粒子の1/10〜1/100程度であることが好ましい。また、無機粒子としては、同様にシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなど、公知の金属酸化物粒子を用いることができる。被覆方法としては、種々の公知の方法を用いることができるが、ハイブリダイザのような空気中で芯材粒子と被覆材粒子とを高速に衝突させて芯材粒子表面に被覆材粒子を食い込ませて固定、被覆する乾式の被覆方法を好ましく用いることができる。
【0108】
また、有機粒子の芯材を金属メッキした粒子も用いることができる。このような粒子としては、例えば、樹脂粒子に金メッキを施した積水化学工業社製の「ミクロパールAU」等が挙げられる。
【0109】
粒径は、1μm〜10μmが好ましく、更に好ましくは、1.5μm〜8μmであり、特に好ましくは、2μm〜6μmである。
【0110】
本発明では、粒径が1μm以上の粒子の添加量としては、親水性層全体の1質量%〜50質量%であることが好ましく、5質量%〜40質量%であることがより好ましい。親水性層全体としては、有機樹脂やカーボンブラック等の炭素を含有する素材の含有比率が低いことが親水性を向上させるために好ましく、これらの素材の合計が9質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましい。
【0111】
《熱溶融性及びまたは熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層》
本発明に係る画像形成機能層は、熱溶融性微粒子または、熱融着性微粒子を含有する構成が好ましく用いられる。
【0112】
《熱溶融性微粒子》
本発明に係る熱溶融性微粒子とは、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子である。
【0113】
保存性、インク着肉感度向上の観点から、物性としては、軟化点40℃〜120℃、融点60℃〜160℃であることが好ましく、軟化点40℃〜100℃、融点60℃〜120℃であることが更に好ましい。
【0114】
使用可能な素材としては、例えば、パラフィン、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、脂肪酸系ワックス等が挙げられる。これらは分子量800〜10000程度のものであり、また乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基などの極性基を導入することもできる。
【0115】
更には、軟化点を下げたり作業性を向上させるためにこれらのワックスに、例えば、ステアリン酸アミド、リノレン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、オレイン酸アミド、マレイン酸アミド、メサコン酸アミド、シトラコン酸アミド、マロン酸アミド、アジピン酸アミド、アゼライン酸アミド、セバシン酸アミド、ピメリン酸アミド、シュウ酸アミド、こはく酸アミド、グルタル酸アミド、スベリン酸アミド、ピバル酸アミド、酪酸アミド、プロピオン酸アミド、硬化牛脂肪酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミド等の脂肪酸アミド化合物、または、これらの脂肪酸アミドのメチロール化物、メチレンビスステラロアミド、エチレンビスステラロアミドなどを添加することも可能である。また、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー、これらの樹脂の共重合体も使用することができる。
【0116】
中でも、ポリエチレン、マイクロクリスタリン、脂肪酸エステル、脂肪酸の何れかを含有することが好ましい。これらの素材は融点が比較的低く、溶融粘度も低いため、高感度の画像形成を行うことができる。また、これらの素材は潤滑性を有するため、印刷版材料の表面に剪断力が加えられた際のダメージが低減し、擦りキズ等による印刷汚れ耐性が向上する。
【0117】
(熱溶融性微粒子の平均粒径)
熱溶融性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、また、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中及び/または、親水性層表面の微細な凹凸の隙間への侵入をなくし、十分な機上現像を実施可能にして地汚れを防止する、且つ、本発明の印刷版材料の解像度向上の観点から、平均粒径が、0.01μm〜10μmに調整されることが好ましく、更に好ましくは、0.1μm〜3μmである。
【0118】
また、熱溶融性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は、公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0119】
構成層中での熱溶融性微粒子の含有量としては、層全体の1質量%〜90質量%が好ましく、更に好ましくは、5質量%〜80質量%である。
【0120】
《熱融着性微粒子》
本発明に係る熱融着性微粒子としては、熱可塑性微粒子が挙げられ、該熱可塑性微粒子の軟化温度に特定の上限はないが、温度は熱可塑性微粒子の分解温度より低いことが好ましい。また、熱可塑性微粒子が高分子から構成される場合は、重量平均分子量(Mw)は10、000〜1、000、000の範囲であることが好ましい。
【0121】
熱可塑性微粒子を構成する高分子の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類等が好ましく用いられる。
【0122】
熱可塑性微粒子の作製方法としては、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、気相重合法等、公知の重合法で作製された高分子を用いることが出来る。
【0123】
溶液重合法または、気相重合法等の重合法により作製された高分子を微粒子化する方法としては、高分子を有機溶媒に溶解して調製した溶解液を不活性ガス中に噴霧、乾燥して微粒子化する方法、高分子を水に非混和性の有機溶媒に溶解し、得られた溶液を水または、水性媒体に分散、有機溶媒を留去して微粒子化する方法等が挙げられる。
【0124】
また、熱可塑性微粒子(熱融着性微粒子ともいう)は、何れの方法においても、必要に応じ重合あるいは微粒子化の際に分散剤、安定剤として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を用いてもよい。また、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等を含有させても良い。
【0125】
(熱可塑性微粒子の平均粒径)
熱可塑性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、また、上記の熱溶融性微粒子と同様な理由から、その平均粒径は0.01μm〜10μmの範囲に調整されることが好ましく、更に好ましくは、0.1μm〜3μmである。
【0126】
また、熱可塑性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0127】
構成層中の熱可塑性微粒子の含有量としては、層全体の1質量%〜90質量%が好ましく、5質量%〜80質量%がさらに好ましい。
【0128】
(水溶性素材)
本発明に係る熱溶融性微粒子及び/または熱融着性微粒子(熱可塑性微粒子ともいう)を含有する画像形成機能層には、更に水溶性素材を含有することが好ましい。水溶性素材を含有することにより、印刷機上で湿し水やインクを用いて未露光部の画像形成機能層を除去する際に、その除去性が向上する。
【0129】
水溶性素材としては、親水性層に含有可能な素材として挙げた水溶性樹脂を用いることもできるが、本発明に係る画像形成機能層としては、糖類を用いることが好ましく、特にオリゴ糖を用いることが好ましい。オリゴ糖は水に速やかに溶解するため、印刷装置上での未露光部の画像形成機能層の除去も非常に速やかとなり、特別な除去操作を意識することなく、通常のPS版の刷出し操作と同様の操作で刷出すことで除去可能であり、刷出しの損紙が増加することもない。
【0130】
また、オリゴ糖は親水性層の親水性を低下させる懸念もなく、親水性層の良好な印刷適性を維持することができる。オリゴ糖は水に可溶な、一般に甘みを有する結晶性物質で、数個の単糖がグリコシド結合を形成し、脱水縮合したものである。オリゴ糖は糖をアグリコンとする一種のo−グリコシドであるから、酸で容易に加水分解されて単糖を生じ、生成する単糖の分子数によって二糖、三糖、四糖、五糖などに分類される。本発明におけるオリゴ糖とは、二糖〜十糖までのものをいう。
【0131】
これらのオリゴ糖は、還元基の有無によって、還元性オリゴ糖と非還元性オリゴ糖とに大別され、また、単一の単糖から構成されているホモオリゴ糖と、2種類以上の単糖から構成されているヘテロオリゴ糖にも分類される。オリゴ糖は、遊離状または、配糖類として天然に存在し、また、多糖の酸または、酵素による部分加水分解によっても得られる。この他酵素によるグリコシル転移によっても種々のオリゴ糖が生成する。
【0132】
オリゴ糖は通常雰囲気中では水和物として存在することが多い。また、水和物と無水物とでは融点が異なり、下記に具体例を示す。
【0133】
オリゴ糖の種類 水和物(融点℃) 無水物(融点℃)
ラフィノース(三糖) 80℃(5水和物) 118℃
トレハロース(二糖) 97℃(2水和物) 215℃
マルトース(二糖) 103℃(1水和物) 108℃
ガラクトース(二糖) 119℃(1水和物) 167℃
スクロース(二糖) 水和物無し 182℃
ラクトース(二糖) 201℃(1水和物) 252℃
本発明では、糖類を含有する層を水溶液で塗布形成することが好ましいため、水溶液から形成された場合は、層中に存在するオリゴ糖が水和物を形成するオリゴ糖である場合は、その融点は水和物の融点であると考えられる。このように、比較的低融点を有しているため、熱溶融微粒子が溶融する温度範囲や熱融着微粒子が融着する温度範囲でオリゴ糖も溶融し、熱溶融微粒子の多孔質親水性層への溶融浸透や熱融着微粒子の融着といった画像形成を妨げることがない。
【0134】
オリゴ糖の中でもトレハロースは、比較的純度の高い状態のものが工業的に安価に入手可能可能であり、水への溶解度が高いにもかかわらず、吸湿性は非常に低く、機上現像性及び保存性共に非常に良好である。
【0135】
また、オリゴ糖水和物を熱溶融させて水和水を除去した後に凝固させると(凝固後短時間のうちは)無水物の結晶となるが、トレハロースは水和物よりも無水物の融点が100℃以上も高いことが特徴的である。これは赤外線露光で熱溶融し、再凝固した直後は露光済部は高融点で溶融しにくい状態となることを意味し、バンディング等の露光時の画像欠陥を起こしにくくする効果がある。本発明の目的を達成するには、オリゴ糖の中でも特にトレハロースが好ましい。
【0136】
構成層中のオリゴ糖の含有量としては、層全体の1質量%〜90質量%が好ましく、10〜80質量%がさらに好ましい。
【0137】
《赤外線による画像形成》
請求項4、請求項5に示されているような、本発明の印刷版材料の一態様においては、画像形成は、熱により行うことができるが、特に赤外線レーザによる露光によって画像形成を行うことが好ましい。
【0138】
本発明に関する露光に関し、より具体的には、赤外及び/または近赤外領域で発光する、すなわち700nm〜1500nmの波長範囲で発光するレーザを使用した走査露光が好ましい。レーザとしてはガスレーザを用いてもよいが、近赤外領域で発光する半導体レーザを使用することが特に好ましい。
【0139】
走査露光に好適な装置としては、半導体レーザを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であってもよい。
【0140】
一般的には、
(1)平板状保持機構に保持された印刷版材料に一本もしくは複数本のレーザビームを用いて2次元的な走査を行って印刷版材料全面を露光する方式、
(2)固定された円筒状の保持機構の内側に、円筒面に沿って保持された印刷版材料に、円筒内部から一本もしくは複数本のレーザビームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式、
(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラム表面に保持された印刷版材料に、円筒外部から一本もしくは複数本のレーザビームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式があげられる。
【0141】
本発明に関しては、特に(3)項記載の走査露光方式が好ましく、特に印刷装置上で露光を行う装置においては、(3)項記載の露光方式が用いられる。
【0142】
《光熱変換素材》
請求項4、請求項5に記載のような、本発明の印刷版材料の一態様においては、基材上の、いずれか1層、例えば、本発明に係る親水性層、下層及びその他に設けられる層に、光熱変換素材を含有させることが好ましい。
【0143】
光熱変換素材としては下記のような素材を添加することができる。
(赤外吸収色素)
一般的な赤外吸収色素であるシアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号公報、同64−33547号公報、特開平1−160683号公報、同1−280750号公報、同1−293342号公報、同2−2074号公報、同3−26593号公報、同3−30991号公報、同3−34891号公報、同3−36093号公報、同3−36094号公報、同3−36095号公報、同3−42281号公報、同3−97589号公報、同3−103476号等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種または、二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0144】
(顔料)
顔料としては、カーボン、グラファイト、金属、金属酸化物等が挙げられる。カーボンとしては、特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0145】
(グラファイト)
グラファイトとしては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
【0146】
(金属)
金属としては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であれば何れの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等何れの形状でも良い。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
【0147】
(金属酸化物)
金属酸化物としては、可視光域で黒色を呈している素材、または素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。前者としては、黒色酸化鉄(Fe3O4)や、前述の二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物が挙げられる。後者としては、例えば、SbをドープしたSnO2(ATO)、Snを添加したIn2O3(ITO)、TiO2、TiO2を還元したTiO(酸化窒化チタン、一般的にはチタンブラック)などが挙げられる。また、これらの金属酸化物で芯材(BaSO4、TiO2、9Al2O3・2B2O、K2O・nTiO2等)を被覆したものも使用することができる。これらの粒径は、0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
【0148】
これらの光熱変換素材のうち、二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物がより好ましい素材として挙げられ、具体的には、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Baから選ばれる二種以上の金属からなる複合金属酸化物である。これらは、特開平8−27393号公報、同9−25126号公報、同9−237570号公報、同9−241529号公報、同10−231441号等に開示されている方法により製造することができる。
【0149】
本発明に用いる複合金属酸化物としては、特にCu−Cr−Mn系またはCu−Fe−Mn系の複合金属酸化物であることが好ましい。Cu−Cr−Mn系の場合には、6価クロムの溶出を低減させるために、特開平8−27393号公報に開示されている処理を施すことが好ましい。これらの複合金属酸化物は添加量に対する着色、つまり、光熱変換効率が良好である。
【0150】
これらの複合金属酸化物は、平均一次粒子径が1μm以下であることが好ましく、平均一次粒子径が0.01μm〜0.5μmの範囲にあることがより好ましい。平均一次粒子径が1μm以下とすることで、添加量に対する光熱変換能がより良好となり、平均一次粒子径が0.01μm〜0.5μmの範囲とすることで添加量に対する光熱変換能がより良好となる。ただし、添加量に対する光熱変換能は、粒子の分散度にも大きく影響を受け、分散が良好であるほど良好となる。したがって、これらの複合金属酸化物粒子は、層の塗布液に添加する前に、別途公知の方法により分散して、分散液(ペースト)としておくことが好ましい。平均一次粒子径が0.01未満となると分散が困難となるため好ましくない。分散には適宜分散剤を使用することができる。分散剤の添加量は複合金属酸化物粒子に対して0.01質量%〜5質量%が好ましく、0.1質量%〜2質量%がより好ましい。
【0151】
これらの複合金属酸化物の添加量としては、親水性層や下層に対して0.1質量%〜50質量%の範囲が好ましく、更に好ましくは、1質量%〜30質量%であり、特に好ましくは、3質量%〜25質量%である。
【0152】
次に、本発明では、請求項6に記載のように、印刷版材料の親水性層上に、画像形成素材を画像様に付与することにより画像を形成することを特徴とするプロセスレス印刷版が好ましい一態様として挙げられる。前記プロセスレス印刷版としては、請求項7に記載のように、画像形成素材を含むインクを用い、インクジェット方式により画像が付与される態様が好ましく、また、請求項8に記載のように、前記インクが放射線硬化性インクであることが好ましく、更には、請求項9に記載のように、前記放射線硬化性インクをインクジェット方式により付与した後、光照射により画像が形成されることが好ましい。
【0153】
《親油性素材を画像様に付与する方法》
また、本発明の印刷版材料においては、その親水性層表面に直接、画像形成素材(親油性素材から構成される)を画像様に付与することによっても画像形成が可能である。
【0154】
親油性素材から構成される画像形成材料を画像様に付与する方法のひとつとして、公知の熱転写方式を用いる方法が挙げられる。具体的には熱転写方式のプリンタを用いて、サーマルヘッドにより熱溶融性インク層を有するインクリボンから熱溶融性インクを親水性層表面に画像様に転写させる方法が挙げられる。
【0155】
また、赤外線レーザ熱溶融転写方式のデジタルプルーフ装置を用いて、露光ドラム上に印刷版材料を親水性層を外側にして巻付け、その上にさらに熱溶融性インク層を有したインクシートをインク面を親水性層に接して巻付け、画像様に赤外線レーザで露光し、熱溶融性インクを親水性層表面に画像様に転写させる方法も挙げることができる。この場合、光熱変換素材は親水性層が含有していてもよいし、インクシート側がいずれかの層に含有していてもよいし、両者ともに含有していてもよい。
【0156】
親水性層上に熱溶融性のインクで画像を形成した後に、印刷版材料を加熱して、親水性層と画像との接着をより強固なものとすることもできる。親水性層が上記の光熱変換素材を含有していてもよく、その場合には、この加熱処理を赤外線レーザ照射や公知のキセノンランプ等によるフラッシュ露光を用いて行うこともできる。
【0157】
もうひとつの方法としては、公知のインクジェット方式を用いる方法が挙げられる。用いるインクとしては、特許2995075号明細書に開示されている油性インクや、特開平10−24550号公報に開示されているようなホットメルトインクや、同10−157053号公報に開示されているような常温で固体かつ疎水性の樹脂粒子が分散された油性インク、あるいは常温で固体かつ疎水性の熱可塑性樹脂粒子が分散された水性インク等を用いることができるが、本発明の態様としては、下記に示すような放射線硬化性インクを好ましく用いることができる。
【0158】
《放射線硬化性インク》
本発明に係る放射線硬化性インクは、少なくとも重合性化合物から構成され、また、可視画性を得る目的で色材を添加することもできる。
【0159】
色材としては、重合性化合物の主成分に溶解または分散できる色材、つまりは種々の染料、顔料を使用することができ、顔料を添加する場合には、その分散性が着色度に大きな影響を与えるため、適宜分散を行う。顔料の分散には、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。また、顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤は高分子分散剤を用いることが好ましい高分子分散剤としてはZeneca社のSolsperseシリーズが挙げられる。また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤及び分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。分散媒体は溶剤または重合性化合物で行うが、本発明に用いる照射線硬化型インクは、インク着弾直後に反応・硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。溶剤が硬化画像に残ってしまうと、耐溶剤性の劣化、残留する溶剤のVOCの問題が生じる。よって、分散媒体は溶剤では無く重合性化合物、その中でも最も粘度の低いモノマーを選択することが分散適性上好ましい。
【0160】
分散は、平均粒径を0.08μm〜0.5μmとすることが好ましく、最大粒径は0.3μm〜10μm、好ましくは0.3μm〜3μmとなるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性及び硬化感度を維持することができる。色材はインク全体の0.1質量%〜10質量%の添加量が好ましい。
【0161】
放射線重合性化合物は、ラジカル重合性化合物、例えば、特開平7−159983号公報、特公平7−31399号公報、特開平8−224982号公報、同10−863号公報等の各号公報に記載されている光重合性組成物を用いた光硬化型材料と、カチオン重合系の光硬化性樹脂が知られており、最近では可視光以上の長波長域に増感された光カチオン重合系の光硬化性樹脂として、特開平6−43633号公報、同8−324137号公報等に開示がある。
【0162】
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であればどの様なものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態をもつものが含まれる。ラジカル重合性化合物は1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。また、単官能化合物よりも官能基を2つ以上持つ多官能化合物の方がより好ましい。更に好ましくは多官能化合物を2種以上併用して用いることが、反応性、物性などの性能を制御する上で好ましい。
【0163】
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エステル、ウレタン、アミドや無水物、アクリロニトリル、スチレン、さらに種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。具体的には、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート等のアクリル酸誘導体、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル誘導体、その他、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられ、さらに具体的には、山下晋三編,「架橋剤ハンドブック」、(1981年大成社);加藤清視編,「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」,79頁,(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著,「ポリエステル樹脂ハンドブック」,(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品もしくは業界で公知のラジカル重合性ないし架橋性のモノマー、オリゴマー及びポリマーを用いることができる。上記ラジカル重合性化合物の添加量は、1質量%〜97質量%の範囲が好ましく、更に好ましくは、30質量%〜95質量%である。
【0164】
カチオン重合系光硬化樹脂としては、カチオン重合により高分子化の起こるタイプのモノマー(主にエポキシタイプ)、エポキシタイプの紫外線硬化性プレポリマー、1分子内にエポキシ基を2個以上含有するプレポリマー等を挙げることができる。このようなプレポリマーとしては、例えば、脂環式ポリエポキシド類、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ化合物類及びエポキシ化ポリブタジエン類等を挙げることができる。これらのプレポリマーは、その一種を単独で使用することもできるし、また、その二種以上を混合して使用することもできる。
【0165】
本発明に用いられる重合性化合物は、(メタ)アクリル系モノマーあるいはプレポリマー、エポキシ系モノマーあるいはプレポリマー、ウレタン系モノマーあるいはプレポリマー等が好ましく用いられるが、更に好ましくは下記化合物である。
【0166】
重合性化合物(重合性単量体ともいう)の例としては、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、メトキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、エトキシ化フェニルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、ノニルフェノールEO(エチレンオキサイド)付加物アクリレート、変性グリセリントリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、変性ビスフェノールAジアクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキサイド)付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ラクトン変性可トウ性アクリレート、ブトキシエチルアクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、2−ヒドロキシエチルアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ステアリルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレートを挙げることができる。
【0167】
これらのアクリレート化合物は、従来公知のUV(紫外線)硬化型インクに用いられてきた重合性化合物より、皮膚刺激性や感作性(かぶれ)が小さく、比較的粘度を下げることが出来、安定したインク射出性が得られ、重合感度、記録媒体との密着性も良好である。上記化合物群を20質量%〜95質量%、好ましくは50質量%〜95質量%、更に好ましくは70質量%〜95質量%用いる。
【0168】
上述した重合性化合物に列挙しているモノマーは低分子量であっても、感作性が小さいものであり、なおかつ反応性が高く、粘度が低く、親水性層への浸透性、密着性に優れる。
【0169】
更に感度、滲み、親水性層との密着性をより改善するためには、上述したモノアクリレートと、分子量400以上、好ましくは500以上の多官能アクリレートモノマーまたは、多官能アクリレートオリゴマーを併用することが感度、密着性向上の点で好ましい。安全性を維持しつつ、更に、感度、滲み、記録媒体との密着性をより改善することができる。オリゴマーとしてはエポキシアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマーが特に好ましい。
【0170】
上記化合物群の中から選ばれるモノアクリレートと、多官能アクリレートモノマーまたは、多官能アクリレートオリゴマーとを併用すると、膜に可とう性を持たせられ、密着性を高めつつ膜強度を高められるため好ましい。モノアクリレートとしてはステアリルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソミスチルアクリレート、イソステアリルアクリレートが感度も高く、低収縮性で画像部の内部応力による強度低下を抑制でき、さらに、滲み防止、印刷物の臭気、照射装置のコストダウンの点で好ましい。
【0171】
なお、メタクリレートは皮膚刺激性がアクリレートより良好であるが、感作性は概してアクリレートと差が無く、アクリレートに比べて感度が下がるので適さないが、反応性が高く、感作性の良好なものであれば、好適に使用することができる。なお、上記化合物の中でもアルコキシアクリレートは、感度が低く、滲み、臭気、照射光源の問題が生じるため、その量を70質量部未満に留め、その他のアクリレートを併用することが好ましい。
【0172】
本発明に用いるインクには、必要に応じて、その他の成分を添加することができる。
【0173】
照射光として電子線、X線等を用いる場合、開始剤は不要であるが、線源としてUV光、可視光、赤外光を用いる場合は、それぞれの波長に応じたラジカル重合開始剤、開始助剤、増感色素を添加する。これらの量はインク全体の1質量部〜10質量部が必要となる。開始剤は公知の様々な化合物を使用することができるが、上記重合性化合物に溶解するものから選択する。具体的な開始剤としては、キサントンまたはチオオキサントン系、ベンゾフェノン系、キノン系、フォスフィンオキシド系が挙げられる。
【0174】
また、保存性を高めるために、重合禁止剤を200ppm〜20000ppm添加することができる。本発明に係るインクは40℃〜80℃の範囲で加熱、低粘度化して射出することが好ましいので、熱重合によるヘッド詰まりを防ぐためにも重合禁止剤を入れることが好ましい。
【0175】
この他に、必要に応じて界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を添加することができる。オレフィンやPET等の記録媒体への密着性を改善するためには、重合を阻害しないタッキファイヤーを含有させることが好ましい。具体的には、特開2001−49200号公報5〜6pに記載されている、高分子量の粘着性ポリマー((メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステル、からなる共重合物)や、重合性不飽和結合を持つ低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0176】
親水性層との密着性を改善するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、添加量としては、0.1質量%〜5質量%が好ましく、更に好ましくは0.1質量%〜3質量%である。
【0177】
また、インク色材による遮光効果による感度低下を防ぐ手段として、開始剤寿命の長いカチオン重合性モノマーと開始剤を組み合わせ、ラジカル・カチオンのハイブリッド型硬化インクとすることも可能である。
【0178】
インクは、射出性を考慮し射出時の温度で、好ましくは7mPa・s〜30mPa・s、更に好ましくは7mPa・s〜20mPa・sとなるよう、組成比を決める。なお、25℃でのインク粘度は、35mPa・s〜500mPa・s、更に、35mPa・s〜200mPa・sとすることが好ましい。室温での粘度を上げることにより、多孔質な記録媒体にもインクの浸透を防ぎ、未硬化モノマーの低減、臭気低減が可能となるし、着弾時のドット滲みを抑えることが出来、画質が改善される。
【0179】
インクの滲み防止、浸透性の改良、インクの濡れ性向上の観点から、表面張力は好ましくは200μN/cm〜300μN/cm、更に好ましくは230μN/cm〜280μN/cmである。
【0180】
《インクジェット記録方法》
本発明に用いられる記録方法としては、上記インクを40℃〜80℃に加熱し、インク粘度を下げて射出することが射出安定性の点で好ましい。照射線硬化型インクは、概して水性インクより粘度が高いため、温度変動による粘度変動幅が大きい。粘度変動はそのまま液滴サイズ、液滴射出速度に大きく影響を与え、画質劣化を起こすため、インク温度をできるだけ一定に保つことが必要である。インク温度の制御幅は設定温度±5℃、好ましくは設定温度±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃である。記録装置にはインク温度の安定化手段を備えるが、一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)、からノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。
【0181】
温度コントロールのため、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体、外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断もしくは断熱されていることが好ましい。加熱に要する記録装置立上げ時間を短縮するため、また熱エネルギのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0182】
インクジェット記録後の光照射には、紫外線、電子線、X線、可視光、赤外光など、様々な線源を用いることが可能であるが、硬化性、線源のコスト等を考慮すると、紫外線が好ましい。紫外線線源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーランプ、紫外線レーザ・LEDなどを用いることができる。
【0183】
基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。これによると、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間を置いて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。また、国際公開第99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へ紫外光を照射する方法が開示されている。本発明に係る記録方法においては、これらの照射方法を用いることが可能である。またヘッドの背面から照射することが好ましい。
【0184】
ヘッド背面から露光する方式は、光ファイバーや、高価な光学系を用いることなく、着弾直後のインクに、速やかに照射することができる。また、ヘッド背面からの照射であるため、記録媒体からの反射線による、ノズル界面のインク硬化を防ぐ効果もある。線源は記録媒体へ投影形状を、走査一回分の記録幅を持つ帯状とさせることが好ましい。
【0185】
具体的には、帯状のメタルハライドランプ管、紫外線ランプ管が好ましい。線源は、実質的に記録装置に固定化し、可動部を無くすことで、安価な構成とすることが可能である。また、何れの露光方式でも線源は2種用意し、第2の線源によって、硬化を完了させることが好ましい形態のひとつである。これは、2色目の着弾インクの濡れ性、インク間の接着性を得ることと、線源を安価に組むことに寄与する。
【0186】
なお、第1の線源と、第2の線源とは、露光波長または露光照度を変えることが好ましい。第一照射エネルギを第二の照射エネルギより小さく、即ち第一の照射エネルギを照射エネルギ総量の1%〜20%、好ましくは1%〜10%、更に好ましくは1%〜5%とする。照度を変えた照射を行うことで、硬化後の分子量分布が好ましいものとなる。即ち、一度に高照度の照射を行ってしまうと、重合率は高められるものの、重合したポリマーの分子量は小さく、強度が得られない。インクジェットインクのように極端に粘度の低い組成では、顕著な効果が得られる。
【0187】
また、第一の照射は、第二のより長波長とすることで、第一の照射では、インクの表層を硬化させて、インクの滲みを抑えられ、第二の照射では照射線が届き難い記録媒体近傍のインクを硬化させ、密着性を改善することができる。インク内部の硬化促進のためにも、第二の照射線波長は長波長であることが好ましい。
【0188】
本発明における記録方法の特徴は、上記インクを用い、一定温度にインクを加温するとともに、着弾から照射までの時間を0.01秒〜0.5秒、好ましくは0.01秒〜0.3秒、更に好ましくは0.01秒〜0.15秒後に放射線を照射することにある。このように着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、着弾インクが硬化前に滲むことを防止することが可能となる。また、多孔質な記録媒体に対しても光源の届かない深部までインクが浸透する前に露光することができる為、未反応モノマーの残留を抑えられ、臭気を低減できる。これは、本発明に係るインクを用いることで大きな相乗効果をもたらすことになる。特に、25℃におけるインク粘度が35mPa・s〜500mPa・sのインクを用いると大きな効果を得ることができる。このような記録方法を取ることで、表面の濡れ性が異なる様々な記録媒体に対しても、着弾したインクのドット径を一定に保つことが出来、画質が向上する。
【0189】
ヘッドユニットは、インクジェットノズルヘッド、インク液供給系、インク及びヘッドの温度制御機構、制御基板等から構成される。背面から光照射する場合、ヘッドユニットは、できるだけ記録媒体への投影面積が小さい方が好ましい。小さい方が、第一の照射がより有効に活用される。
【0190】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0191】
実施例1
《ポリエステルフィルムの作製》
下記のようにして、本発明に係る基材として用いるポリエステルフィルム(PET1、PET2、PEN)を各々作製した。
【0192】
(ポリエチレンテレフタレート1(PET1))
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従い固有粘度0.66(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから静電印加した50℃のキャスティングドラム上に押し出し、熱固定後の膜厚が175μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。これを、周速の異なるロールを用い3.3倍に縦延伸、ついでテンターで4.5倍に横延伸を実施した。この時の温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。
【0193】
この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンターのチャック部をスリットした後、両端に厚み10μmのナーリングを幅1cmで施した。このようにして幅(製膜幅)2.5mのポリエチレンテレフタレート1(PET1)を作製した。
【0194】
(ポリエチレンテレフタレート2(PET2))
ポリエチレンテレフタレート1の作製において、幅(製膜幅)を6.0mに設定した以外は同様にして、ポリエチレンテレフタレート2(PET2)を作製した。
【0195】
(ポリエチレン−2,6−ナフタレート;PEN)
ナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジメチルとエチレングリコールを用い、常法に従い、固有粘度=0.58(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPENを得た。これをペレット化した後160℃で4時間乾燥した後、320℃で溶融後T型ダイから静電印加した50℃のキャスティングドラム上に押し出し、熱固定後の膜厚が175μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。これを、周速の異なるロールを用い2.8倍に縦延伸、ついでテンターで3.7倍に横延伸を実施した。この時の温度はそれぞれ、140℃、160℃であった。
【0196】
この後、250℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンターのチャック部をスリットした後、両端に厚み10μmのナーリングを幅1cmで施した。このようにして得たPENフィルムの幅(製膜幅)は2.5mであった。
【0197】
《下引き済み基材1〜4の作製》
上記で得られたPET1、PET2及びPENの各々のポリエステルフィルムの両面に、8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、次いで、一方の面に下記下引き塗布液a−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し乾燥させて下引き層A−1を有する下引き面Aを形成し、また、反対側の面に下記帯電防止加工した下引き塗布液b−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し乾燥させて表面電気抵抗が106Ωの帯電防止加工下引き層B−1を有する下引き面Bを形成した。ついで、それぞれの下引き層表面に下記プラズマ処理条件でプラズマ処理を施した後、スリットを行い、ついで、ナーリング加工や低張力熱処理を行い、下引き済み基材1〜4を各々作製した。
【0198】
《下引き塗布液a−1》
ブチルアクリレート(30質量%)
t−ブチルアクリレート(20質量%)
スチレン(25質量%)
2−ヒドロキシエチルアクリレート(25質量%)
の共重合体ラテックス液(固形分30%) 270g
ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレンウレア) 0.8g
ポリスチレン微粒子(平均粒径3μm) 0.05g
コロイダルシリカ(平均粒径90μm) 0.1g
水で1リットルに仕上げる
《プラズマ処理条件》
バッチ式の大気圧プラズマ処理装置(イーシー化学(株)製、AP−I−H−340)を用いて、高周波出力が4.5kW、周波数が5kHz、処理時間が5秒及びガス条件としてアルゴン、窒素及び水素の体積比をそれぞれ90%及び5%で、プラズマ処理を行った。
【0199】
《スリット》
オフセット量及び幅が表1に示した値になるよう、下引き層塗設後の基材をスリットした。スリット後の両端に幅10mm、高さ10μmのナーリングを付与した。
【0200】
《低張力熱処理時の張力測定》
スリット後の基材に対し、表1に示した条件で低張力熱処理を実施した。ここで、表1に示した張力については、熱処理ゾ−ンの直前、直後のロ−ルに差動トランス式張力試験機(例えば三菱電気製 LX−TC−100)を設置し、25℃下での張力を測定し、これの平均値を求めた。
【0201】
得られた下引き済み基材1〜4の構成を表1に示す。
【0202】
【表1】
【0203】
《下引き済み基材1〜4への親水性層1、親水性層2の塗設》
表2に示す親水性層2用塗布液(調製方法は下記に示す)、表3に示す親水性層1用塗布液(調製方法は下記に示す)の各塗布液を、下引き済み基材1〜4の各々の下引き面A上に、親水性層1、親水性層2の順番でワイヤーバーを用いて塗布し、100℃で3分間乾燥して、2層の親水性層まで塗布済みの試料を作製した。親水性層2まで塗布した段階で、60℃で24時間の加熱処理を施した。
【0204】
《親水性層2用塗布液の調製》
表2に記載の各素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、表2に記載の組成で混合、濾過して親水性層2用塗布液を調製した。
【0205】
なお、表2中に記載の各素材の詳細は、以下の通りであり、表中の数値は質量部を表す。
【0206】
【表2】
【0207】
《親水性層1用塗布液の調製》
表3に記載の各素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、表3に記載の組成で混合、濾過して親水性層1用塗布液を調製した。
【0208】
【表3】
【0209】
《印刷版材料1〜4(赤外線レーザ用)の作製》
上記で作製した、下引き済み基材1〜4(A面上に、親水性層1、親水性層2をこの順に各々塗設済み)に対して、下記に記載の画像形成機能層塗布液を、ワイヤーバーを用いて、乾燥付量が0.6g/m2となるように塗布し、50℃で3分間乾燥して赤外線レーザ露光用である、印刷版材料1〜4を作製した。
【0210】
尚、前記下引き済み基材1(親水性層1、親水性層2を各々塗設済み)を用いた試料については、厚さ190μmのスムース表面を有するアルミ板表面に接着剤を塗布し、前記下引き済み基材1の塗布層が設けられていない面と接着貼合して240μm厚の試料とした。上記作製した各試料は、画像形成機能層を塗布した後、40℃で24時間の加熱処理を施した。
【0211】
《画像形成機能層塗布液の組成》
二糖類トレハロース粉体(林原商事社製商品名トレハロース、融点97℃)
の水溶液固形分5質量% 30質量部
カルナバワックスエマルジョンA118(岐阜セラック社製、平均粒子径0.3μm、軟化点65℃、融点80℃、140℃での溶融粘度8cps、固形分40質量%)を固形分5質量%に純水で希釈した分散液 70質量部
《印刷版材料1〜4の評価》
印刷版材料1〜4の特性評価は、下記のように赤外線レーザ方式による画像形成を行って得られたプロセスレス印刷版1〜4を用いて行った。
【0212】
(a)赤外線レーザ方式による画像形成
上記作製した印刷版材料1〜4の各試料を露光ドラムに巻付け固定した。露光には、波長830nm、スポット径約18μmのレーザビームを用い、露光エネルギを300mJ/cm2とした条件で、2400dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。)、175線で画像を形成し、プロセスレス印刷版試料1〜4を各々作製した。
【0213】
(b)上記で画像形成したプロセスレス印刷版試料1〜4について、下記の印刷方法により、印刷版としての諸特性を評価した。
【0214】
《印刷方法》
印刷装置として、三菱重工業社製のDAIYA1F−1を用いて、コート紙と、湿し水としてアストロマーク3(日研化学研究所製)の2質量%溶液、インクとして、東洋インク社製のトーヨーキングハイエコーM紅を使用して印刷を行った。
【0215】
《耐スクラッチ性評価》
プロセスレス印刷版試料1〜4の各試料の未露光部の画像形成機能層表面に、先端が0.3mmφのサファイア触針を用いてスクラッチ筋をつけた。その際の荷重を変化させて、印刷刷出し50枚目のシートで、汚れが確認できる荷重を確認し、この荷重値を耐スクラッチ性の尺度とした。
【0216】
《耐ゴム擦り性評価》
プロセスレス印刷版試料1〜4の各試料の未露光部の画像形成機能層表面に、先端が5mmφのゴム球となったゴムペンを用いて擦り筋をつけた。その際の荷重を変化させて、印刷刷出し50枚目のシートで汚れが確認できる荷重を確認し、この荷重値を耐ゴム擦り性の尺度とした。
【0217】
《耐刷性の評価》
プロセスレス印刷版試料1〜4の各々を用いて印刷した画像の3%の小点の欠落、またはベタ部の濃度低下の何れかが確認された段階で耐刷終点とし、その枚数を求めた。
【0218】
得られた結果を表4に示す。
【0219】
【表4】
【0220】
表4から、平坦指数が、0.01〜0.075の範囲に入っている基材を有する印刷版材料から作製されたプロセスレス印刷版2〜4は、そうでないプロセスレス印刷版1に比べて、耐スクラッチ性、耐ゴム擦り性及び耐刷性のすべてにおいて良好な特性を示すことが判る。
【0221】
実施例2
《プロセスレス印刷版(インクジェット記録)21〜24の作製》
実施例1における印刷版材料1〜4の作製において、親水性層1用塗布液、親水性層2用塗布液の代わりに、各々、下記に示す親水性層3用塗布液、親水性層4用塗布液を各々用いて、印刷版材料21〜24を各々作製後、前記印刷版材料を用いて下記に示すようにインクジェット方式による画像形成を行ない、プロセスレス印刷版21〜24を各々作製した。
【0222】
《親水性層4用塗布液の調製》
表5に記載の各素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、表5に記載の組成で混合、濾過して親水性層4用塗布液を調製した。尚、表中、単位記載のない数値は質量部を示す。
【0223】
【表5】
【0224】
《親水性層3用塗布液の調製》
表6に記載の各素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、表6に記載の組成で混合、濾過して親水性層3用塗布液を調製した。
【0225】
【表6】
【0226】
《インクジェット方式による画像形成》
(a)マゼンタ顔料分散物の調製
下記の素材を順次混合及び分散してマゼンタ顔料分散物を作製した。なお、分散は、マゼンタ顔料粒子の平均粒径として、0.2μm〜0.3μmの範囲となるように分散条件を適宜調整した。
【0227】
C.I.ピグメントレッド57:1 15質量部
高分子分散剤(Zeneca社製 Solsperse) 5質量部
ステアリルアクリレート 80質量部
(b)マゼンタインクの調製
マゼンタ顔料分散物(上記で調製) 20質量部
ステアリルアクリレート 60質量部
2官能芳香族ウレタンアクリレート(分子量1500) 10質量部
6官能脂肪族ウレタンアクリレート(分子量1000) 5質量部
開始剤(Ciba製、イルガキュアー184) 5質量部
上記の材料を混合し、次いで絶対濾過精度2μmのフィルタで濾過して、マゼンタインクを調製した。調製したマゼンタインクの25℃における粘度は120mPa・sであり、70℃における粘度は15mPa・s、25℃における表面張力は250μN/cmであった。
【0228】
(c)インクジェット画像の形成
インクジェット画像の形成には、ピエゾ型インクジェットノズルを用いたインクジェット記録装置を用いて、印刷版材料である各試料へ画像記録を行った。インク供給系は、インクタンク、供給パイプ、ヘッド直前の前室インクタンク、フィルタ付き配管、ピエゾヘッドから構成され、前室インクタンクからヘッド部分まで断熱及び加温を行った。温度センサーは前室インクタンク及びピエゾヘッドのノズル付近にそれぞれ設け、ノズル部分が常に60℃±2℃となるように温度制御を行った。ピエゾヘッドは、ノズル径24μmで、8pl〜30plのマルチサイズドットを720×720dpiの解像度で射出できるよう駆動した。着弾後はUV−A光を露光面照度100mW/cm2に集光し、インク着弾後0.1秒後に照射が始まるよう露光系・主走査速度・射出周波数を調整した。露光時間を可変とし、照射露光エネルギを調整可能した。
【0229】
上記装置を用いて、環境温度25℃にて、上記調製したマゼンタインクを射出し、直後にUV光を照射した。照射した露光エネルギは300mJ/cm2で行った。
【0230】
《プロセスレス印刷版21〜24の評価》
上記で作製したプロセスレス印刷版21〜24の評価は、実施例1のプロセスレス印刷版試料1〜4と同様に評価した。但し、耐刷性については、下記の方法に従い、評価した。
【0231】
(耐刷性の評価)
印刷した画像のベタ部の濃度低下が確認された段階で耐刷終点とし、その枚数を求めた。
【0232】
得られた結果を表7に示す。
【0233】
【表7】
【0234】
表7から、撓み量が、0mm〜50mmの範囲に入っている基材を有する印刷版材料から作製されたプロセスレス印刷版22〜24(インクジェット記録により画像形成)は、そうでないプロセスレス印刷版21に比べて、耐スクラッチ性、耐ゴム擦り性及び耐刷性のすべてにおいて良好な特性を示すことが判る。
【0235】
【発明の効果】
本発明により、耐傷性、特に耐スクラッチ性、耐ゴム擦り性を有し、且つ、耐刷性に優れた印刷版材料及びプロセスレス印刷版を提供することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【図1】基材の撓み量の測定方法を示す模式図である。
【符号の説明】
1、1′ ロール
2 荷重
3 サンプル基材
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷版材料及び印刷版に関し、特に、コンピューター・トゥー・プレート(CTP)方式により画像形成が可能な印刷版材料及びCTP方式により画像形成する印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】
印刷データのデジタル化に伴い、安価で取扱いが容易でPS版と同等の印刷適性を有したCTP(コンピューター・トゥー・プレート)が求められている。特に近年、特別な薬剤による現像液処理が不要な、いわゆるプロセスレス印刷版への期待が高まっている。
【0003】
プロセスレス印刷版の構成としては、PS版と同じアルミ砂目を用いる場合も考えられるが、層構成の自由度やコストダウンの観点から、塗布形成された親水性層を有する種々の方式のプロセスレス印刷版が提案されている。
【0004】
プロセスレス印刷版の画像形成方式の一つとして有力であるのが、赤外線レーザ記録であり、大きく分けて、後述するアブレーションタイプと熱融着画像層機上現像タイプ及び熱溶融転写タイプの三種の記録方法が存在する。
【0005】
赤外線レーザ記録では、高解像度画像を短時間で記録することが可能となるが、露光系の装置価格が高いという問題を有している。
【0006】
アブレーションタイプとしては、例えば、基材上に親水性層と親油性層とを有し、何れかの層を表層として積層したものが挙げられる(例えば、特許文献1〜6参照。)。表層が親水性層であれば、画像様に露光し、親水性層をアブレートさせて画像様に除去して親油性層を露出することで画像部を形成することができる。ただし、アブレートした表層の飛散物による露光装置内部の汚染が問題になりやすく、そのため、親水性層上に更に水溶性の保護層を設けて、アブレートした表層の飛散を防止し、印刷機上で保護層とともにアブレートした表層を除去する方式も提案されている。
【0007】
熱融着画像層機上現像タイプとしては、親水性層もしくはアルミ砂目上に、画像形成層に熱可塑性微粒子と水溶性の結合剤とを用いたものが挙げられる(例えば、特許文献7参照。)。
【0008】
しかし、親水性基材としてアルミ砂目を用いた場合には、光熱変換素材(一般的には可視光にも着色している)を画像形成層に添加する必要があり、現像した際に印刷機を汚染する懸念があるため、層構成としては基材上に光熱変換素材を含有した親水性層を形成したものを使用して、画像形成層からは光熱変換素材を除いたものの方が有利である。
【0009】
又、熱溶融転写方式としては、例えば、マンローランド社のDICOwebのような熱転写リボンを用いて、アルミ砂目ではなく、繰り返し使用可能な親水性表面を有する金属スリーブに熱溶融素材を画像様に転写した後、加熱して画像を定着させる方法が挙げられる。
【0010】
このように、赤外線レーザ記録用のプロセスレス印刷版としては、何れのタイプの記録原理ではあっても、印刷版非画像部の水受容表面として塗布形成された親水性層を用いるのがほとんどである。
【0011】
一方、プロセスレス印刷版の画像形成方法として、もう一つの有力な方法は、インクジェット記録方式であり、種々の記録方法や画像形成素材が提案されている。インクジェット記録方式は、現状では赤外線レーザ記録方式ほどの高解像度及び記録速度を得ることはできていないが、装置価格が比較的安価であるという利点も有している。
【0012】
インクジェット記録方式によるプロセスレス印刷版は、一般的には親水性表面を有する印刷版材料に、親油性の画像形成素材を画像様に付与し、その後、必要であれば画像定着もしくは画像強度向上のための処理を行って作製される印刷版である。画像形成素材を含む記録用インクとしては、光重合性インク組成物(例えば、特許文献8参照。)や、ホットメルトインク(例えば、特許文献9参照。)、油性インク(例えば、特許文献10参照。)などが挙げられ、親水性表面を有する印刷版材料としては、アルミ砂目や親水性層を有する印刷版材料が挙げられるが、インクジェット記録の特徴として、滴下後のインクの広がり抑制やインクの定着性の観点から、被記録材料には適度なインク吸収性が要求され、印刷版材料としては多孔質な親水性層を有する印刷版材料である方が有利である。
【0013】
このように、プロセスレス印刷版の種々の画像記録方式には、アルミ砂目を用いた印刷版材料よりも、塗布形成した親水性層を有する印刷版材料が適していると言える。
【0014】
しかしながら、これらのプロセスレス印刷版は、印刷適性、特に耐刷性が不十分な性能であった。又印刷版の取り扱い時の耐傷性において十分な性能が得られていないという問題があった。
【0015】
【特許文献1】
特表平8−507727号公報
【0016】
【特許文献2】
特開平6−186750号公報
【0017】
【特許文献3】
特開平6−199064号公報
【0018】
【特許文献4】
特開平7−314934号公報
【0019】
【特許文献5】
特開平10−58636号公報
【0020】
【特許文献6】
特開平10−244773号公報
【0021】
【特許文献7】
特許第2938397号明細書
【0022】
【特許文献8】
特開平5−204138号公報
【0023】
【特許文献9】
特開平9−58144号公報
【0024】
【特許文献10】
特開平10−272753号公報
【0025】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐傷性、特に耐スクラッチ性、耐ゴム擦り性を有し、且つ、耐刷性に優れた印刷版材料及びプロセスレス印刷版を提供することである。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の構成1〜9により達成された。
【0027】
1.基材上の一方の面に、少なくとも1層の親水性層を有する印刷版材料において、該基材がプラスチックフィルムであり、且つ、前記基材の前記一般式(1)で定義される平坦指数が、0.01〜0.075であることを特徴とする印刷版材料。
【0028】
2.基材上の一方の面に、少なくとも1層の親水性層を有する印刷版材料において、該基材がプラスチックフィルムであり、撓み量が0mm〜50mmであることを特徴とする印刷版材料。
【0029】
3.親水性層の少なくとも1層が、多孔質構造を有することを特徴とする前記1または2に記載の印刷版材料。
【0030】
4.基材上に、熱で画像形成可能な画像形成機能層を有し、且つ、該基材上のいずれか1層が光熱変換素材を含有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【0031】
5.親水性層上に、熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子を含有する熱で画像形成可能な画像形成機能層を有することを特徴とする前記4に記載の印刷版材料。
【0032】
6.前記1〜5のいずれか1項に記載の印刷版材料の親水性層上に、画像形成素材を画像様に付与される工程を経て形成された画像を有することを特徴とするプロセスレス印刷版。
【0033】
7.画像形成素材を含むインクを用い、インクジェット方式により画像が付与されることを特徴とする前記6に記載のプロセスレス印刷版。
【0034】
8.画像形成素材を含むインクが、放射線硬化性インクであることを特徴とする前記7に記載のプロセスレス印刷版。
【0035】
9.放射線硬化性インクをインクジェット方式により付与した後、光照射により画像が形成されることを特徴とする前記8に記載のプロセスレス印刷版。
【0036】
以下、本発明を詳細に説明する。
《基材》
本発明に係る基材について説明する。
【0037】
本発明の印刷板材料や本発明のプロセスレス印刷版に、耐傷性、特に耐スクラッチ性、耐ゴム擦り性、且つ、良好な耐刷性を付与するためには、請求項1に記載の平坦指数が、0.01〜0.075の範囲に入るように調整するか、または、請求項2に記載のように、撓み量が、0mm〜50mmの範囲になるように調整することが必須要件である。
【0038】
《平坦指数》
本発明に係る平坦指数について説明する。
【0039】
請求項1に記載の、本発明の印刷版材料は、基材上に親水性層を有し、使用される基材がプラスチックフィルムであり、且つ、前記の一般式(1)で定義された平坦指数が0.01〜0.075の範囲にあることを特徴とする。
【0040】
本発明に関わる平坦指数は、好ましくは、0.015〜0.06が好ましく、更に好ましくは、0.02〜0.05である。
【0041】
ここで、前記一般式(1)で定義される平坦指数、前記一般式(2)で定義されるΔLm(長手方向寸法変化率)、前記一般式(3)で定義されるΔLmレンジ等は、具体的には、TMA(Thermal Mechanical Analysis)分析により求めることが出来る。
【0042】
低張力熱処理後(低張力熱処理については後述する)の基材を幅方向に5等分した点において、長手方向(縦方向;MD)35mm、幅方向(TD)4mmにサンプリングする。これをチャック間距離が25mmになるようセットした後、5.4gの加重を掛け、窒素気流中で25℃〜200℃まで2℃/分で昇温しながら寸法変化を測定する。
【0043】
測定には、TMA分析装置(例えばTA insturument社製 2200型)を使用する。全測定点について25℃の寸法と160℃の寸法を測定し、前記一般式(2)に従い、ΔLm(長手方向寸法変化率)を求める。
【0044】
上記ΔLm(長手方向寸法変化率)を複数回測定後、平均値として、ΔLm(平均値)を求める。
【0045】
また、複数回の測定により求められた上記ΔLm(長手方向寸法変化率)測定値の中から、最大値である、ΔLm(最大値)、最小値である、ΔLm(最小値)を各々選択し、前記一般式(3)により、ΔLmレンジを求める。
【0046】
ついで、得られたΔLm(平均値)、ΔLmレンジを用い、前記一般式(1)により、本発明に係る平坦指数を求めることが出来る。
【0047】
請求項1に記載の本発明の印刷版材料では、前記一般式(1)で定義される、基材の平坦指数を0.01〜0.075にするために、160℃において収縮しないプラスチックフィルムであることが好ましい。従来公知のプラスチックフィルムは通常多軸延伸されているため、延伸温度を上回る160℃では延伸歪みを回復するために収縮が始まることが多い。収縮時に平面性が低下するため、収縮はなるべく小さいほうが好ましい。
【0048】
一方、プラスチックフィルムは温度の上昇に伴い、熱膨張(線膨張)しようとする。このため160℃でのプラスチックフィルムの寸法は熱膨張による伸びと熱収縮による縮みの差で決定される。従って、熱収縮が大きな基材は140℃で収縮>伸張となるため、ΔLm(長手方向寸法変化率)は、負の値になりやすい。このような熱収縮が大きなプラスチックフィルムは熱寸法変化が大きく好ましくない。従って、ΔLm(長手方向寸法変化率)の大きな基材ほど好ましいが、収縮量=0の場合はプラスチックフィルムの熱膨張のみとなり上限が存在する。
【0049】
従って、ΔLm(長手方向寸法変化率)は、0.10%〜0.60%の範囲が好ましく、更に好ましくは、0.15%〜0.55%であり、特に好ましくは、0.25%〜0.50%である。
【0050】
一方、基材が全幅に渡り均等に熱処理され、幅方向の寸法の不均一性に起因する故障を低減し、且つ、熱処理に伴う弊害(オリゴマの析出、基材の黄変による透明性の低下等)を防止する観点からは、前記一般式(3)で定義されるΔLmレンジは、0.01%〜1.0%の範囲に調整されることが好ましく、更に好ましくは、0.01%〜0.8%の範囲に調整されることである。
【0051】
《撓み量》
本発明に関わる撓み量について説明する。
【0052】
請求項2に記載の、本発明の印刷版材料は、基材上に親水性層を有し、使用される基材がプラスチックフィルムであり、且つ、撓み量が0mm〜50mmの範囲にあることを特徴とする。また、基材の撓み量としては、好ましくは、0mm〜40mmであり、特に好ましくは、0mm〜30mmである。
【0053】
ここで、撓み量の測定法を図1をもとにして説明する。
図1は、基材の撓み量の測定方法を示す模式図である。この図に示すように低張力熱処理後の基材を全幅でMD方向に5mサンプリングし、これを5m離れた2本の平行に並べたロール1、1′に両端を固定する。ロール1を固定し、自由に回転できるロール1′に一定荷重(5kg/1m幅)をかけ、基材に張力を掛ける。平行に並べたロール1、1′を結ぶ平面から、下に弛んだ長さを測り、その最大長さ(A)を測定する。低張力熱処理前の基材も同様に測定した(B)。この差(A−B)の絶対値を撓み量とする。尚、2は荷重、3はサンプル基材を示す。
【0054】
《低張力熱処理》
本発明に係る低張力熱処理について説明する。
【0055】
本発明に関わる基材に、上記のような平坦指数または撓み量を付与する手段としては、具体的には、製膜時の原反の中央(製膜中央)をオフセットしてスリットした、即ちオフセット裁断した(製膜中央に対して左右非対称にスリットした)基材を低張力熱処理する等が一例としてあげられる。即ち、製膜時の中央と熱処理時の中央(熱処理中央)をずらせる等の手段が一例として挙げられる。
【0056】
これは以下の理由による。即ち製膜時の熱固定〜緩和工程においてチャックで固定されている両端部は十分緩和できず熱収縮しやすく、これが熱処理中に収縮する。
【0057】
一方、製膜中央は製膜時に十分緩和しているため熱処理中の収縮が小さい。このように熱収縮性が幅方向で異なる(ボーイング)。このような基材は熱処理中に製膜中央が両端に比べたるみ易い傾向を有する。このような撓みは熱処理中の張力や温度のかかり方等に不均一性を発生する。これを防止するために製膜中央と熱処理中央をずらすことが有効である。即ち最も撓みの大きい製膜中央が熱処理中央になると最も撓みが大きいが、これを中央からずらすことで撓みを小さくでき、熱処理の不均一性を小さくすることができる。このような撓みは本発明のように低張力で熱処理する場合に特に顕著である。
【0058】
(オフセット量)
製膜中央と熱処理中央との差をオフセット量というが、本発明では、3%〜45%の範囲が好ましく、更に好ましくは、5%〜40%であり、特に好ましくは、8%〜35%である。
【0059】
ここで、オフセット量は、下記式で定義される。
オフセット量(%)=(製膜中央と熱処理中央の距離)/(製膜原反幅)×100(%)
このような熱処理は製膜後の原反をスリットすることで容易に達成できる。本発明に使用出来るプラスチック基材、特にポリエステル基材はポリエステルを形成するジカルボン酸のうち50モル%以上が芳香族ジカルボン酸から成る芳香族ポリエステルが好ましく、より具体的にはポリエチレンテレフタレート系ポリマー、ポリエチレンナフタレート系ポリマー、ポリブチレンテレフタレート系ポリマー、ポリブチレンナフタレート系ポリマーが挙げられる。更に好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが挙げられる。これらの平均分子量(Mw)は5千以上100万以下が好ましく、1万以上30万以下がより好ましい。
【0060】
これらのポリエステル基材は2軸以上に製膜されることが望ましい。例えば融点(Tm)〜Tm+50℃の間で熔融した後、ガラス転位温度(Tg)−50℃〜Tg+20℃の冷却ドラムに押し出し未延伸シートを形成する。このとき冷却ドラムに静電印加することも好ましい。この未延伸シートをTg〜Tg+60℃の間で2倍〜4倍に縦に延伸し、更にTg〜Tg+60℃の間で2〜5倍に横に延伸する。これをTm−60℃〜Tmで5秒〜1分熱固定する。この後にTm−60℃〜Tmで横/縦の少なくとも一方に0〜10%緩和することも好ましい。
【0061】
この後、更に縦/横に再度延伸することも好ましい。このようにして得られたポリエステル基材の厚みは50μm〜500μmが好ましく、より好ましくは70μm〜300μm、更に好ましくは90μm〜200μmである。好ましい製膜幅は0.6m〜10mであり、より好ましくは0.8m〜8mであり、更に好ましくは1.0m〜7mである。このようにして製膜した基材を低熱収縮処理用にスリットする。好ましいスリットの幅は0.5m〜8mであり、より好ましくは0.7m〜6mであり、更に好ましくは0.9〜5mである。スリット後に両端にナーリング(エンボス加工)を施すことも好ましい。
【0062】
本発明に用いられるポリエステル基材を製造するに当り低張力熱処理は基材を熱処理ゾーン内を搬送しながら実施する。熱処理にあたり、例えば、ポリエステル基材中に含まれるオリゴマーの表面への析出を防止し、ヘイズの上昇や熱収縮を抑制する観点から、熱処理温度を120℃〜220℃の範囲に調整することが好ましく、更に好ましくは、135℃〜200℃であり、特に好ましくは、145℃〜180℃である。
【0063】
このような温度制御は断熱材を用いた熱処理ゾーン内に熱風を吹き込んで達成してもよく、ヒートロールのような高温の熱媒体に接触させて伝熱でポリエステル基材が昇温してもよく、赤外線ヒーターのようなものを用いて輻射熱で昇温してもよい。何れの方法でもよいが、幅方向の温度分布を小さくすることが熱収縮の幅方向分布を小さくするために好ましい。これには熱風の吹き出し口にフィンを設置し風の向きを調整することで吹き溜まりを無くしたり、温度の低くなりやすい両端部の温度が高くなるようにヒートロールや赤外線ヒーターを分割制御することで達成できる。搬送張力(張力を基材の断面積で割った値)は0.001kg/mm2〜0.05kg/mm2が好ましく、より好ましくは、0.003kg/mm2〜0.03kg/mm2であり、特に好ましくは、0.007kg/mm2〜0.02kg/mm2である。
【0064】
このような張力は巻き取り側、送り出し側の少なくとも一方に設置したモーターを調整することで達成できる。このときテンションピックアップを設置し、張力をモニターしながら調整するのが好ましい。
【0065】
上記のような搬送しながらの熱処理は、ロール搬送でも良く、非接触搬送(空気浮上搬送)でも良いが、より高い平面性の得やすい前者が好ましい。熱処理後の基材は急冷すると皺が発生しやすいため、冷却速度5℃/分以下で冷却するのが好ましく、より好ましくは3℃/分以下で冷却する。更に巻き取りは巻崩れ防止のため、テンションカットした後、高い張力で巻き取るのが好ましい。
【0066】
これらの低張力熱処理は、後述する、製膜後のポリエステル基材をそのまま用いてもよく、表面処理(グロー処理、コロナ処理、火炎処理、紫外線処理)を施したもの、或いは更に塗布層、例えば水溶性ポリマー塗工層(ゼラチン、水溶性ポリエステル等)やラテックス層(例えばスチレン−ブタジエンゴム、塩化ビニリデン、アクリレート樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィンなど)、有機溶剤塗工層(セルロースエステル、ニトロセルロース、ウレタン、アクリレート、ポリオレフィン等)を付与した後低張力熱処理することも好ましい。これらの塗布層は乾燥工程を含むため、乾燥中の熱により熱収縮率を小さくすることができるためである。更にこれらの層の中に、静電防止剤(酸化スズ、五酸化バナジウム、カチオンポリマー等)や、反射防止染料、マット剤(シリカ、アルミナ、架橋ポリスチレン、架橋PMMA等)を含んでいてもよい。このようにして得た基材上に親水性層を塗設することで本発明の印刷版材料を形成することができる。
【0067】
《基材として用いられるプラスチックフィルム》
本発明に係る基材としてはプラスチックフィルムが用いられ、該フィルムの厚さとしては印刷機に取り付け可能であれば特に制限されるものではないが、50μm〜500μmのものが好ましい。
【0068】
該プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類等を挙げることができる。特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレンなどのポリエステルフィルムが好ましい。これらプラスチックフィルムは塗布層との接着性を向上させるために、塗布面に易接着処理や下引き層塗布を行うことが好ましい。易接着処理としては、コロナ放電処理や火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が挙げられる。又、下引き層としては、ゼラチンやラテックスを含む層等が挙げられる。
【0069】
又、本発明においては、上記プラスチックフィルムと金属板(例えば、鉄、ステンレス、アルミニウムなど)やポリエチレンで被覆した紙などの材料を適宜貼り合わせた複合基材を用いることもできる。これらの複合基材は、塗布層を形成する前に貼り合わせても良く、又、塗布層を形成した後に貼り合わせても良く、印刷機に取り付ける直前に貼り合わせても良い。
【0070】
《親水性層》
本発明に係る親水性層について説明する。ここで、親水性層とは、本発明の印刷版材料を印刷版として用いる際に、インクに対する親和性が低く、且つ、水に対する親和性の高い層として定義される。
【0071】
請求項3に記載のように、本発明の印刷版材料は、基材上に設けられた親水性層の少なくとも1層が、多孔質構造を有することが好ましい。前記多孔質構造を有する親水性層を形成するためには、下記に記載の親水性マトリクスを形成する素材が好ましく用いられる。
【0072】
(金属酸化物)
親水性層マトリクスを形成する素材としては、金属酸化物が好ましい。金属酸化物としては、金属酸化物微粒子を含むことが好ましく、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。該金属酸化物微粒子の形態としては、球状、針状、羽毛状、その他の何れの形態でも良く、平均粒径としては、3nm〜100nmの範囲が好ましく、平均粒径が異なる数種の金属酸化物微粒子を併用することもできる。また、粒子表面に表面処理がなされていても良い。
【0073】
上記金属酸化物微粒子は、その造膜性を利用して結合剤としての使用が可能である。有機の結合剤を用いるよりも親水性の低下が少なく、親水性層への使用に適している。
【0074】
(コロイダルシリカ)
中でも、コロイダルシリカが特に好ましく使用できる。コロイダルシリカは、比較的低温の乾燥条件であっても造膜性が高いという利点があり、良好な強度を得ることができる。コロイダルシリカとしては、後述するネックレス状コロイダルシリカ、平均粒径20nm以下の微粒子コロイダルシリカを含むことが好ましく、更に、コロイダルシリカはコロイド溶液としてアルカリ性を呈することが好ましい。
【0075】
ネックレス状コロイダルシリカとは、一次粒子径がnmのオーダーである球状シリカの水分散系の総称であり、一次粒粒子径が10nm〜50nmの球状コロイダルシリカが50nm〜400nmの長さに結合した「パールネックレス状」のコロイダルシリカを意味する。
【0076】
パールネックレス状(即ち真珠ネックレス状)とは、コロイダルシリカのシリカ粒子が連なって結合した状態のイメージが、真珠ネックレスの様な形状をしていることを意味している。
【0077】
ネックレス状コロイダルシリカを構成するシリカ粒子同士の結合は、シリカ粒子表面に存在する−SiOH基が脱水結合した−Si−O−Si−と推定される。ネックレス状のコロイダルシリカとしては、具体的には日産化学工業(株)製の「スノーテックス−PS」シリーズなどが挙げられ、製品名としては「スノーテックス−PS−S(連結した状態の平均粒子径は110nm程度)」、「スノーテックス−PS−M(連結した状態の平均粒子径は120nm程度)」及び「スノーテックス−PS−L(連結した状態の平均粒子径は170nm程度)」があり、これらに各々対応する酸性の製品が「スノーテックス−PS−S−O」、「スノーテックス−PS−M−O」及び「スノーテックス−PS−L−O」である。
【0078】
ネックレス状コロイダルシリカを添加することにより、層の多孔性を確保しつつ、強度を維持することが可能となり、親水性層マトリクスの多孔質化材として好ましく使用できる。これらの中でも、アルカリ性である「スノーテックスPS−S」、「スノーテックスPS−M」、「スノーテックスPS−L」を用いると、親水性層の強度が向上し、また、印刷枚数が多い場合でも地汚れの発生が抑制され、特に好ましい。
【0079】
また、コロイダルシリカは、粒子径が小さいほど結合力が強くなることが知られており、本発明では平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカを用いることが好ましく、更に好ましくは、3nm〜15nmのものである。
【0080】
前述のようにコロイダルシリカの中ではアルカリ性のものが、地汚れ発生を抑制する効果が高く特に好ましい。平均粒径がこの範囲にあるアルカリ性のコロイダルシリカとしては、例えば、日産化学社製の「スノーテックス−20(粒子径10nm〜20nm)」、「スノーテックス−30(粒子径10nm〜20nm)」、「スノーテックス−40(粒子径10nm〜20nm)」、「スノーテックス−N(粒子径10nm〜20nm)」、「スノーテックス−S(粒子径8nm〜11nm)」、「スノーテックス−XS(粒子径4nm〜6nm)」が挙げられる。
【0081】
平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカは、前述のネックレス状コロイダルシリカと併用することで、形成する層の多孔質性を維持しながら、強度をさらに向上させることが可能となり、特に好ましい。
【0082】
平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカ/ネックレス状コロイダルシリカの比率は95/5〜5/95の範囲が好ましく、更に好ましくは、70/30〜20/80の範囲がより好ましく、60/40〜30/70の範囲が更に好ましい。
【0083】
(多孔質金属酸化物粒子)
本発明において、親水性層マトリクス構造の多孔質化材として、粒径が1μm未満の多孔質金属酸化物粒子を含有することができる。多孔質金属酸化物粒子としては、以下に記載の多孔質シリカ、多孔質アルミノシリケート粒子または、ゼオライト粒子を好ましく用いることができる。
【0084】
(多孔質シリカ多孔質シリカ、多孔質アルミノシリケート粒子)
多孔質シリカ粒子は、一般に湿式法または、乾式法により製造される。湿式法では、ケイ酸塩水溶液を中和して得られるゲルを乾燥、粉砕するか、もしくは中和して析出した沈降物を粉砕することで得ることができる。乾式法では、四塩化珪素を水素と酸素と共に燃焼し、シリカを析出することで得られる。これらの粒子は製造条件の調整により、多孔性や粒径を制御することが可能である。多孔質シリカ粒子としては、湿式法のゲルから得られるものが特に好ましい。
【0085】
多孔質アルミノシリケート粒子は、例えば、特開平10−71764号公報に記載されている方法により製造される。即ち、アルミニウムアルコキシドと珪素アルコキシドを主成分として加水分解法により合成された非晶質な複合体粒子である。粒子中のアルミナとシリカの比率は1:4〜4:1の範囲で合成することが可能である。また、製造時にその他の金属のアルコキシドを添加して3成分以上の複合体粒子として製造したものも本発明に使用できる。これらの複合体粒子も製造条件の調整により多孔性や粒径を制御することが可能である。
【0086】
粒子の多孔性としては、細孔容積で0.5ml/g以上であることが好ましく、0.8ml/g以上であることがより好ましく、1.0〜2.5ml/gであることが更に好ましい。細孔容積は、塗膜の保水性と密接に関連しており、細孔容積が大きいほど保水性が良好となって印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなるが、2.5ml/gよりも大きくなると粒子自体が非常に脆くなるため塗膜の耐久性が低下する。逆に、細孔容積が0.5ml/g未満の場合には、印刷性能がやや不十分となる場合がある。
【0087】
(細孔容積の測定方法)
ここで、上記の細孔容積の測定は、オートソーブ−1(カンタクローム社製)を使用し、定容法を用いた窒素吸着測定により、粉体の空隙が窒素により、充填されていると仮定して相対圧力が0.998における窒素吸着量から算出されるものである。
【0088】
(ゼオライト粒子)
ゼオライトは、結晶性のアルミノケイ酸塩であり、細孔径が0.3nm〜1nmの規則正しい三次元網目構造の空隙を有する多孔質体である。天然及び合成ゼオライトを合わせた一般式は、次のように表される。
【0089】
(M1、(M2)0.5)m(AlmSinO2)(m+n)・xH2O
ここで、M1、M2は交換性のカチオンであって、M1はLi+、Na+、K+、Tl+、Me4N+(TMA)、Et4N+(TEA)、Pr4N+(TPA)、C7H15N2+、C8H16N+等であり、M2はCa2+、Mg2+、Ba2+、Sr2+、C8H18N2 2+等である。また、n≧mであり、m/nの値つまりはAl/Si比率は1以下となる。Al/Si比率が高いほど交換性カチオンの量が多く含まれるため極性が高く、従って親水性も高い。好ましいAl/Si比率は0.4〜1.0であり、更に好ましくは0.8〜1.0である。xは整数を表す。
【0090】
本発明で使用するゼオライト粒子としては、Al/Si比率が安定しており、又粒径分布も比較的シャープである合成ゼオライトが好ましく、例えばゼオライトA:Na12(Al12Si12O48)・27H2O;Al/Si比率1.0、ゼオライトX:Na86(Al86Si106O384)・264H2O;Al/Si比率0.811、ゼオライトY:Na56(Al56Si136O384)・250H2O;Al/Si比率0.412等が挙げられる。
【0091】
Al/Si比率が0.4〜1.0である親水性の高い多孔質粒子を含有することで、親水性層自体の親水性も大きく向上し、印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなる。また、指紋跡の汚れも大きく改善される。Al/Si比率が0.4未満では親水性が不充分であり、上記性能の改善効果が小さくなる。
【0092】
また、親水層を構成する親水性層マトリクス構造は、層状粘土鉱物粒子を含有することができる。該層状鉱物粒子としては、例えば、カオリナイト、ハロイサイト、タルク、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サボナイト等)、バーミキュライト、マイカ(雲母)、クロライトといった粘土鉱物及び、ハイドロタルサイト、層状ポリケイ酸塩(カネマイト、マカタイト、アイアライト、マガディアイト、ケニヤアイト等)等が挙げられる。特に、単位層(ユニットレイヤー)の電荷密度が高いほど極性が高く、親水性も高いと考えられる。好ましい電荷密度としては0.25以上、更に好ましくは0.6以上である。このような電荷密度を有する層状鉱物としては、スメクタイト(電荷密度0.25〜0.6;陰電荷)、バーミキュライト(電荷密度0.6〜0.9;陰電荷)等が挙げられる。特に、合成フッ素雲母は粒径等安定した品質のものを入手することができ好ましい。また、合成フッ素雲母の中でも、膨潤性のものが好ましく、自由膨潤であるものが更に好ましい。
【0093】
また、上記の層状鉱物のインターカレーション化合物(ピラードクリスタル等)や、イオン交換処理を施したもの、表面処理(シランカップリング処理、有機バインダとの複合化処理等)を施したものも使用することができる。
【0094】
平板状層状鉱物粒子のサイズとしては、層中に含有されている状態で(膨潤工程、分散剥離工程を経た場合も含めて)、平均粒径(粒子の最大長)が1μm未満であり、平均アスペクト比が50以上であることが好ましい。粒子サイズが上記範囲にある場合、薄層状粒子の特徴である平面方向の連続性及び柔軟性が塗膜に付与され、クラックが入りにくく乾燥状態で強靭な塗膜とすることができる。また、粒子物を多く含有する塗布液においては、層状粘土鉱物の増粘効果によって、粒子物の沈降を抑制することができる。粒子径が上記範囲より大きくなると、塗膜に不均一性が生じて、局所的に強度が弱くなる場合がある。また、アスペクト比が上記範囲以下である場合、添加量に対する平板状の粒子数が少なくなり、増粘性が不充分となり、粒子物の沈降を抑制する効果が低減する。
【0095】
層状鉱物粒子の含有量としては、層全体の0.1質量%〜30質量%であることが好ましく、1質量%〜10質量%であることがより好ましい。特に膨潤性合成フッ素雲母やスメクタイトは少量の添加でも効果が見られるため好ましい。層状鉱物粒子は、塗布液に粉体で添加してもよいが、簡便な調液方法(メディア分散等の分散工程を必要としない)でも良好な分散度を得るために、層状鉱物粒子を単独で水に膨潤させたゲルを調製した後、塗布液に添加することが好ましい。
【0096】
親水層を構成する親水性層マトリクスにはその他の添加素材として、ケイ酸塩水溶液も使用することができる。ケイ酸Na、ケイ酸K、ケイ酸Liといったアルカリ金属ケイ酸塩が好ましく、そのSiO2/M2O比率はケイ酸塩を添加した際の塗布液全体のpHが13を超えない範囲となるように選択することが無機粒子の溶解を防止する上で好ましい。
【0097】
また、金属アルコキシドを用いた、いわゆるゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーも使用することができる。ゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーの形成については、例えば、「ゾル−ゲル法の応用」(作花済夫著/アグネ承風社発行)に記載されているか、又は本書に引用されている文献に記載されている公知の方法を使用することができる。
【0098】
また、本発明では、水溶性樹脂を含有してもよい。水溶性樹脂としては、例えば、多糖類、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられるが、本発明に用いられる水溶性樹脂としては、多糖類を用いることが好ましい。
【0099】
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルランなどが使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。これは、親水性層に多糖類を含有させることにより、親水性層の表面形状を好ましい状態形成する効果が得られるためである。
【0100】
親水性層の表面は、PS版のアルミ砂目のように0.1μm〜20μmピッチの凹凸構造を有することが好ましく、この凹凸により保水性や画像部の保持性が向上する。このような凹凸構造は、親水性層マトリクスに適切な粒径のフィラーを適切な量含有させて形成することも可能であるが、親水性層の塗布液に前述のアルカリ性コロイダルシリカと前述の水溶性多糖類とを含有させ、親水性層を塗布、乾燥させる際に相分離を生じさせて形成することがより良好な印刷適性を有する構造を得ることができ、好ましい。
【0101】
凹凸構造の形態(ピッチ及び表面粗さなど)は、アルカリ性コロイダルシリカの種類及び添加量、水溶性多糖類の種類及び添加量、その他添加材の種類及び添加量、塗布液の固形分濃度、ウエット膜厚、乾燥条件等で適宜コントロールすることが可能である。
【0102】
本発明において、親水性マトリクス構造部に添加される水溶性樹脂は、少なくともその一部が水溶性の状態のまま、水に溶出可能な状態で存在することが好ましい。水溶性の素材であっても、架橋剤等によって架橋し、水に不溶の状態になると、その親水性は低下して印刷適性を劣化させる懸念があるためである。また、さらにカチオン性樹脂を含有しても良く、カチオン性樹脂としては、例えば、ポリエチレンアミン、ポリプロピレンポリアミン等のようなポリアルキレンポリアミン類又はその誘導体、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、ジアクリルアミン等が挙げられる。カチオン性樹脂は、微粒子状の形態で添加しても良く、例えば、特開平6−161101号公報に記載のカチオン性マイクロゲルが挙げられる。
【0103】
また、本発明に係る親水性層を塗設する為に用いられる塗布液には、塗布性改善等の目的で水溶性の界面活性剤を含有させることができ、Si系または、F系等の界面活性剤を使用することができるが、特にSi元素を含む界面活性剤を使用することが印刷汚れを生じる懸念がなく、好ましい。該界面活性剤の含有量は、親水性層全体(塗布液としては固形分)の0.01質量%〜3質量%が好ましく、0.03質量%〜1質量%が更に好ましい。
【0104】
また、親水性層には、リン酸塩を含むことができる。本発明では、親水性層の塗布液がアルカリ性であることが好ましいため、リン酸塩としてはリン酸三ナトリウムやリン酸水素二ナトリウムとして添加することが好ましい。リン酸塩を添加することで、印刷時の網の目開きを改善する効果が得られる。リン酸塩の添加量としては、水和物を除いた有効量として、0.1質量%〜5質量%が好ましく、0.5質量%〜2質量%が更に好ましい。
【0105】
また、後述する光熱変換素材を含有することもできる。光熱変換素材としては、粒子状素材の場合は粒径が1μm未満であることが好ましい。
【0106】
(粒径が1μm以上の無機粒子もしくは無機素材で被覆された粒子)
本発明で用いることのできる無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなど、公知の金属酸化物粒子を用いることができるが、塗布液中での沈降を抑制するために、多孔質な金属酸化物粒子を用いることが好ましい。多孔質な金属酸化物粒子としては、前述の多孔質シリカ粒子や多孔質アルミノシリケート粒子を好ましく用いることができる。
【0107】
また、無機素材で被覆された粒子としては、例えば、ポリメチルメタアクリレートやポリスチレンといった有機粒子を芯材とし、芯材粒子よりも粒径の小さな無機粒子で被覆した粒子が挙げられる。無機粒子の粒径としては、芯材粒子の1/10〜1/100程度であることが好ましい。また、無機粒子としては、同様にシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなど、公知の金属酸化物粒子を用いることができる。被覆方法としては、種々の公知の方法を用いることができるが、ハイブリダイザのような空気中で芯材粒子と被覆材粒子とを高速に衝突させて芯材粒子表面に被覆材粒子を食い込ませて固定、被覆する乾式の被覆方法を好ましく用いることができる。
【0108】
また、有機粒子の芯材を金属メッキした粒子も用いることができる。このような粒子としては、例えば、樹脂粒子に金メッキを施した積水化学工業社製の「ミクロパールAU」等が挙げられる。
【0109】
粒径は、1μm〜10μmが好ましく、更に好ましくは、1.5μm〜8μmであり、特に好ましくは、2μm〜6μmである。
【0110】
本発明では、粒径が1μm以上の粒子の添加量としては、親水性層全体の1質量%〜50質量%であることが好ましく、5質量%〜40質量%であることがより好ましい。親水性層全体としては、有機樹脂やカーボンブラック等の炭素を含有する素材の含有比率が低いことが親水性を向上させるために好ましく、これらの素材の合計が9質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましい。
【0111】
《熱溶融性及びまたは熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層》
本発明に係る画像形成機能層は、熱溶融性微粒子または、熱融着性微粒子を含有する構成が好ましく用いられる。
【0112】
《熱溶融性微粒子》
本発明に係る熱溶融性微粒子とは、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子である。
【0113】
保存性、インク着肉感度向上の観点から、物性としては、軟化点40℃〜120℃、融点60℃〜160℃であることが好ましく、軟化点40℃〜100℃、融点60℃〜120℃であることが更に好ましい。
【0114】
使用可能な素材としては、例えば、パラフィン、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、脂肪酸系ワックス等が挙げられる。これらは分子量800〜10000程度のものであり、また乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基などの極性基を導入することもできる。
【0115】
更には、軟化点を下げたり作業性を向上させるためにこれらのワックスに、例えば、ステアリン酸アミド、リノレン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、オレイン酸アミド、マレイン酸アミド、メサコン酸アミド、シトラコン酸アミド、マロン酸アミド、アジピン酸アミド、アゼライン酸アミド、セバシン酸アミド、ピメリン酸アミド、シュウ酸アミド、こはく酸アミド、グルタル酸アミド、スベリン酸アミド、ピバル酸アミド、酪酸アミド、プロピオン酸アミド、硬化牛脂肪酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミド等の脂肪酸アミド化合物、または、これらの脂肪酸アミドのメチロール化物、メチレンビスステラロアミド、エチレンビスステラロアミドなどを添加することも可能である。また、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー、これらの樹脂の共重合体も使用することができる。
【0116】
中でも、ポリエチレン、マイクロクリスタリン、脂肪酸エステル、脂肪酸の何れかを含有することが好ましい。これらの素材は融点が比較的低く、溶融粘度も低いため、高感度の画像形成を行うことができる。また、これらの素材は潤滑性を有するため、印刷版材料の表面に剪断力が加えられた際のダメージが低減し、擦りキズ等による印刷汚れ耐性が向上する。
【0117】
(熱溶融性微粒子の平均粒径)
熱溶融性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、また、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中及び/または、親水性層表面の微細な凹凸の隙間への侵入をなくし、十分な機上現像を実施可能にして地汚れを防止する、且つ、本発明の印刷版材料の解像度向上の観点から、平均粒径が、0.01μm〜10μmに調整されることが好ましく、更に好ましくは、0.1μm〜3μmである。
【0118】
また、熱溶融性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は、公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0119】
構成層中での熱溶融性微粒子の含有量としては、層全体の1質量%〜90質量%が好ましく、更に好ましくは、5質量%〜80質量%である。
【0120】
《熱融着性微粒子》
本発明に係る熱融着性微粒子としては、熱可塑性微粒子が挙げられ、該熱可塑性微粒子の軟化温度に特定の上限はないが、温度は熱可塑性微粒子の分解温度より低いことが好ましい。また、熱可塑性微粒子が高分子から構成される場合は、重量平均分子量(Mw)は10、000〜1、000、000の範囲であることが好ましい。
【0121】
熱可塑性微粒子を構成する高分子の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類等が好ましく用いられる。
【0122】
熱可塑性微粒子の作製方法としては、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、気相重合法等、公知の重合法で作製された高分子を用いることが出来る。
【0123】
溶液重合法または、気相重合法等の重合法により作製された高分子を微粒子化する方法としては、高分子を有機溶媒に溶解して調製した溶解液を不活性ガス中に噴霧、乾燥して微粒子化する方法、高分子を水に非混和性の有機溶媒に溶解し、得られた溶液を水または、水性媒体に分散、有機溶媒を留去して微粒子化する方法等が挙げられる。
【0124】
また、熱可塑性微粒子(熱融着性微粒子ともいう)は、何れの方法においても、必要に応じ重合あるいは微粒子化の際に分散剤、安定剤として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を用いてもよい。また、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等を含有させても良い。
【0125】
(熱可塑性微粒子の平均粒径)
熱可塑性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、また、上記の熱溶融性微粒子と同様な理由から、その平均粒径は0.01μm〜10μmの範囲に調整されることが好ましく、更に好ましくは、0.1μm〜3μmである。
【0126】
また、熱可塑性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0127】
構成層中の熱可塑性微粒子の含有量としては、層全体の1質量%〜90質量%が好ましく、5質量%〜80質量%がさらに好ましい。
【0128】
(水溶性素材)
本発明に係る熱溶融性微粒子及び/または熱融着性微粒子(熱可塑性微粒子ともいう)を含有する画像形成機能層には、更に水溶性素材を含有することが好ましい。水溶性素材を含有することにより、印刷機上で湿し水やインクを用いて未露光部の画像形成機能層を除去する際に、その除去性が向上する。
【0129】
水溶性素材としては、親水性層に含有可能な素材として挙げた水溶性樹脂を用いることもできるが、本発明に係る画像形成機能層としては、糖類を用いることが好ましく、特にオリゴ糖を用いることが好ましい。オリゴ糖は水に速やかに溶解するため、印刷装置上での未露光部の画像形成機能層の除去も非常に速やかとなり、特別な除去操作を意識することなく、通常のPS版の刷出し操作と同様の操作で刷出すことで除去可能であり、刷出しの損紙が増加することもない。
【0130】
また、オリゴ糖は親水性層の親水性を低下させる懸念もなく、親水性層の良好な印刷適性を維持することができる。オリゴ糖は水に可溶な、一般に甘みを有する結晶性物質で、数個の単糖がグリコシド結合を形成し、脱水縮合したものである。オリゴ糖は糖をアグリコンとする一種のo−グリコシドであるから、酸で容易に加水分解されて単糖を生じ、生成する単糖の分子数によって二糖、三糖、四糖、五糖などに分類される。本発明におけるオリゴ糖とは、二糖〜十糖までのものをいう。
【0131】
これらのオリゴ糖は、還元基の有無によって、還元性オリゴ糖と非還元性オリゴ糖とに大別され、また、単一の単糖から構成されているホモオリゴ糖と、2種類以上の単糖から構成されているヘテロオリゴ糖にも分類される。オリゴ糖は、遊離状または、配糖類として天然に存在し、また、多糖の酸または、酵素による部分加水分解によっても得られる。この他酵素によるグリコシル転移によっても種々のオリゴ糖が生成する。
【0132】
オリゴ糖は通常雰囲気中では水和物として存在することが多い。また、水和物と無水物とでは融点が異なり、下記に具体例を示す。
【0133】
オリゴ糖の種類 水和物(融点℃) 無水物(融点℃)
ラフィノース(三糖) 80℃(5水和物) 118℃
トレハロース(二糖) 97℃(2水和物) 215℃
マルトース(二糖) 103℃(1水和物) 108℃
ガラクトース(二糖) 119℃(1水和物) 167℃
スクロース(二糖) 水和物無し 182℃
ラクトース(二糖) 201℃(1水和物) 252℃
本発明では、糖類を含有する層を水溶液で塗布形成することが好ましいため、水溶液から形成された場合は、層中に存在するオリゴ糖が水和物を形成するオリゴ糖である場合は、その融点は水和物の融点であると考えられる。このように、比較的低融点を有しているため、熱溶融微粒子が溶融する温度範囲や熱融着微粒子が融着する温度範囲でオリゴ糖も溶融し、熱溶融微粒子の多孔質親水性層への溶融浸透や熱融着微粒子の融着といった画像形成を妨げることがない。
【0134】
オリゴ糖の中でもトレハロースは、比較的純度の高い状態のものが工業的に安価に入手可能可能であり、水への溶解度が高いにもかかわらず、吸湿性は非常に低く、機上現像性及び保存性共に非常に良好である。
【0135】
また、オリゴ糖水和物を熱溶融させて水和水を除去した後に凝固させると(凝固後短時間のうちは)無水物の結晶となるが、トレハロースは水和物よりも無水物の融点が100℃以上も高いことが特徴的である。これは赤外線露光で熱溶融し、再凝固した直後は露光済部は高融点で溶融しにくい状態となることを意味し、バンディング等の露光時の画像欠陥を起こしにくくする効果がある。本発明の目的を達成するには、オリゴ糖の中でも特にトレハロースが好ましい。
【0136】
構成層中のオリゴ糖の含有量としては、層全体の1質量%〜90質量%が好ましく、10〜80質量%がさらに好ましい。
【0137】
《赤外線による画像形成》
請求項4、請求項5に示されているような、本発明の印刷版材料の一態様においては、画像形成は、熱により行うことができるが、特に赤外線レーザによる露光によって画像形成を行うことが好ましい。
【0138】
本発明に関する露光に関し、より具体的には、赤外及び/または近赤外領域で発光する、すなわち700nm〜1500nmの波長範囲で発光するレーザを使用した走査露光が好ましい。レーザとしてはガスレーザを用いてもよいが、近赤外領域で発光する半導体レーザを使用することが特に好ましい。
【0139】
走査露光に好適な装置としては、半導体レーザを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であってもよい。
【0140】
一般的には、
(1)平板状保持機構に保持された印刷版材料に一本もしくは複数本のレーザビームを用いて2次元的な走査を行って印刷版材料全面を露光する方式、
(2)固定された円筒状の保持機構の内側に、円筒面に沿って保持された印刷版材料に、円筒内部から一本もしくは複数本のレーザビームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式、
(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラム表面に保持された印刷版材料に、円筒外部から一本もしくは複数本のレーザビームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式があげられる。
【0141】
本発明に関しては、特に(3)項記載の走査露光方式が好ましく、特に印刷装置上で露光を行う装置においては、(3)項記載の露光方式が用いられる。
【0142】
《光熱変換素材》
請求項4、請求項5に記載のような、本発明の印刷版材料の一態様においては、基材上の、いずれか1層、例えば、本発明に係る親水性層、下層及びその他に設けられる層に、光熱変換素材を含有させることが好ましい。
【0143】
光熱変換素材としては下記のような素材を添加することができる。
(赤外吸収色素)
一般的な赤外吸収色素であるシアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号公報、同64−33547号公報、特開平1−160683号公報、同1−280750号公報、同1−293342号公報、同2−2074号公報、同3−26593号公報、同3−30991号公報、同3−34891号公報、同3−36093号公報、同3−36094号公報、同3−36095号公報、同3−42281号公報、同3−97589号公報、同3−103476号等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種または、二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0144】
(顔料)
顔料としては、カーボン、グラファイト、金属、金属酸化物等が挙げられる。カーボンとしては、特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0145】
(グラファイト)
グラファイトとしては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
【0146】
(金属)
金属としては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であれば何れの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等何れの形状でも良い。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
【0147】
(金属酸化物)
金属酸化物としては、可視光域で黒色を呈している素材、または素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。前者としては、黒色酸化鉄(Fe3O4)や、前述の二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物が挙げられる。後者としては、例えば、SbをドープしたSnO2(ATO)、Snを添加したIn2O3(ITO)、TiO2、TiO2を還元したTiO(酸化窒化チタン、一般的にはチタンブラック)などが挙げられる。また、これらの金属酸化物で芯材(BaSO4、TiO2、9Al2O3・2B2O、K2O・nTiO2等)を被覆したものも使用することができる。これらの粒径は、0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
【0148】
これらの光熱変換素材のうち、二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物がより好ましい素材として挙げられ、具体的には、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Baから選ばれる二種以上の金属からなる複合金属酸化物である。これらは、特開平8−27393号公報、同9−25126号公報、同9−237570号公報、同9−241529号公報、同10−231441号等に開示されている方法により製造することができる。
【0149】
本発明に用いる複合金属酸化物としては、特にCu−Cr−Mn系またはCu−Fe−Mn系の複合金属酸化物であることが好ましい。Cu−Cr−Mn系の場合には、6価クロムの溶出を低減させるために、特開平8−27393号公報に開示されている処理を施すことが好ましい。これらの複合金属酸化物は添加量に対する着色、つまり、光熱変換効率が良好である。
【0150】
これらの複合金属酸化物は、平均一次粒子径が1μm以下であることが好ましく、平均一次粒子径が0.01μm〜0.5μmの範囲にあることがより好ましい。平均一次粒子径が1μm以下とすることで、添加量に対する光熱変換能がより良好となり、平均一次粒子径が0.01μm〜0.5μmの範囲とすることで添加量に対する光熱変換能がより良好となる。ただし、添加量に対する光熱変換能は、粒子の分散度にも大きく影響を受け、分散が良好であるほど良好となる。したがって、これらの複合金属酸化物粒子は、層の塗布液に添加する前に、別途公知の方法により分散して、分散液(ペースト)としておくことが好ましい。平均一次粒子径が0.01未満となると分散が困難となるため好ましくない。分散には適宜分散剤を使用することができる。分散剤の添加量は複合金属酸化物粒子に対して0.01質量%〜5質量%が好ましく、0.1質量%〜2質量%がより好ましい。
【0151】
これらの複合金属酸化物の添加量としては、親水性層や下層に対して0.1質量%〜50質量%の範囲が好ましく、更に好ましくは、1質量%〜30質量%であり、特に好ましくは、3質量%〜25質量%である。
【0152】
次に、本発明では、請求項6に記載のように、印刷版材料の親水性層上に、画像形成素材を画像様に付与することにより画像を形成することを特徴とするプロセスレス印刷版が好ましい一態様として挙げられる。前記プロセスレス印刷版としては、請求項7に記載のように、画像形成素材を含むインクを用い、インクジェット方式により画像が付与される態様が好ましく、また、請求項8に記載のように、前記インクが放射線硬化性インクであることが好ましく、更には、請求項9に記載のように、前記放射線硬化性インクをインクジェット方式により付与した後、光照射により画像が形成されることが好ましい。
【0153】
《親油性素材を画像様に付与する方法》
また、本発明の印刷版材料においては、その親水性層表面に直接、画像形成素材(親油性素材から構成される)を画像様に付与することによっても画像形成が可能である。
【0154】
親油性素材から構成される画像形成材料を画像様に付与する方法のひとつとして、公知の熱転写方式を用いる方法が挙げられる。具体的には熱転写方式のプリンタを用いて、サーマルヘッドにより熱溶融性インク層を有するインクリボンから熱溶融性インクを親水性層表面に画像様に転写させる方法が挙げられる。
【0155】
また、赤外線レーザ熱溶融転写方式のデジタルプルーフ装置を用いて、露光ドラム上に印刷版材料を親水性層を外側にして巻付け、その上にさらに熱溶融性インク層を有したインクシートをインク面を親水性層に接して巻付け、画像様に赤外線レーザで露光し、熱溶融性インクを親水性層表面に画像様に転写させる方法も挙げることができる。この場合、光熱変換素材は親水性層が含有していてもよいし、インクシート側がいずれかの層に含有していてもよいし、両者ともに含有していてもよい。
【0156】
親水性層上に熱溶融性のインクで画像を形成した後に、印刷版材料を加熱して、親水性層と画像との接着をより強固なものとすることもできる。親水性層が上記の光熱変換素材を含有していてもよく、その場合には、この加熱処理を赤外線レーザ照射や公知のキセノンランプ等によるフラッシュ露光を用いて行うこともできる。
【0157】
もうひとつの方法としては、公知のインクジェット方式を用いる方法が挙げられる。用いるインクとしては、特許2995075号明細書に開示されている油性インクや、特開平10−24550号公報に開示されているようなホットメルトインクや、同10−157053号公報に開示されているような常温で固体かつ疎水性の樹脂粒子が分散された油性インク、あるいは常温で固体かつ疎水性の熱可塑性樹脂粒子が分散された水性インク等を用いることができるが、本発明の態様としては、下記に示すような放射線硬化性インクを好ましく用いることができる。
【0158】
《放射線硬化性インク》
本発明に係る放射線硬化性インクは、少なくとも重合性化合物から構成され、また、可視画性を得る目的で色材を添加することもできる。
【0159】
色材としては、重合性化合物の主成分に溶解または分散できる色材、つまりは種々の染料、顔料を使用することができ、顔料を添加する場合には、その分散性が着色度に大きな影響を与えるため、適宜分散を行う。顔料の分散には、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。また、顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤は高分子分散剤を用いることが好ましい高分子分散剤としてはZeneca社のSolsperseシリーズが挙げられる。また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤及び分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。分散媒体は溶剤または重合性化合物で行うが、本発明に用いる照射線硬化型インクは、インク着弾直後に反応・硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。溶剤が硬化画像に残ってしまうと、耐溶剤性の劣化、残留する溶剤のVOCの問題が生じる。よって、分散媒体は溶剤では無く重合性化合物、その中でも最も粘度の低いモノマーを選択することが分散適性上好ましい。
【0160】
分散は、平均粒径を0.08μm〜0.5μmとすることが好ましく、最大粒径は0.3μm〜10μm、好ましくは0.3μm〜3μmとなるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性及び硬化感度を維持することができる。色材はインク全体の0.1質量%〜10質量%の添加量が好ましい。
【0161】
放射線重合性化合物は、ラジカル重合性化合物、例えば、特開平7−159983号公報、特公平7−31399号公報、特開平8−224982号公報、同10−863号公報等の各号公報に記載されている光重合性組成物を用いた光硬化型材料と、カチオン重合系の光硬化性樹脂が知られており、最近では可視光以上の長波長域に増感された光カチオン重合系の光硬化性樹脂として、特開平6−43633号公報、同8−324137号公報等に開示がある。
【0162】
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であればどの様なものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態をもつものが含まれる。ラジカル重合性化合物は1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。また、単官能化合物よりも官能基を2つ以上持つ多官能化合物の方がより好ましい。更に好ましくは多官能化合物を2種以上併用して用いることが、反応性、物性などの性能を制御する上で好ましい。
【0163】
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エステル、ウレタン、アミドや無水物、アクリロニトリル、スチレン、さらに種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。具体的には、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート等のアクリル酸誘導体、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル誘導体、その他、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられ、さらに具体的には、山下晋三編,「架橋剤ハンドブック」、(1981年大成社);加藤清視編,「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」,79頁,(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著,「ポリエステル樹脂ハンドブック」,(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品もしくは業界で公知のラジカル重合性ないし架橋性のモノマー、オリゴマー及びポリマーを用いることができる。上記ラジカル重合性化合物の添加量は、1質量%〜97質量%の範囲が好ましく、更に好ましくは、30質量%〜95質量%である。
【0164】
カチオン重合系光硬化樹脂としては、カチオン重合により高分子化の起こるタイプのモノマー(主にエポキシタイプ)、エポキシタイプの紫外線硬化性プレポリマー、1分子内にエポキシ基を2個以上含有するプレポリマー等を挙げることができる。このようなプレポリマーとしては、例えば、脂環式ポリエポキシド類、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ化合物類及びエポキシ化ポリブタジエン類等を挙げることができる。これらのプレポリマーは、その一種を単独で使用することもできるし、また、その二種以上を混合して使用することもできる。
【0165】
本発明に用いられる重合性化合物は、(メタ)アクリル系モノマーあるいはプレポリマー、エポキシ系モノマーあるいはプレポリマー、ウレタン系モノマーあるいはプレポリマー等が好ましく用いられるが、更に好ましくは下記化合物である。
【0166】
重合性化合物(重合性単量体ともいう)の例としては、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、メトキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、エトキシ化フェニルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、ノニルフェノールEO(エチレンオキサイド)付加物アクリレート、変性グリセリントリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、変性ビスフェノールAジアクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキサイド)付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ラクトン変性可トウ性アクリレート、ブトキシエチルアクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、2−ヒドロキシエチルアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ステアリルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレートを挙げることができる。
【0167】
これらのアクリレート化合物は、従来公知のUV(紫外線)硬化型インクに用いられてきた重合性化合物より、皮膚刺激性や感作性(かぶれ)が小さく、比較的粘度を下げることが出来、安定したインク射出性が得られ、重合感度、記録媒体との密着性も良好である。上記化合物群を20質量%〜95質量%、好ましくは50質量%〜95質量%、更に好ましくは70質量%〜95質量%用いる。
【0168】
上述した重合性化合物に列挙しているモノマーは低分子量であっても、感作性が小さいものであり、なおかつ反応性が高く、粘度が低く、親水性層への浸透性、密着性に優れる。
【0169】
更に感度、滲み、親水性層との密着性をより改善するためには、上述したモノアクリレートと、分子量400以上、好ましくは500以上の多官能アクリレートモノマーまたは、多官能アクリレートオリゴマーを併用することが感度、密着性向上の点で好ましい。安全性を維持しつつ、更に、感度、滲み、記録媒体との密着性をより改善することができる。オリゴマーとしてはエポキシアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマーが特に好ましい。
【0170】
上記化合物群の中から選ばれるモノアクリレートと、多官能アクリレートモノマーまたは、多官能アクリレートオリゴマーとを併用すると、膜に可とう性を持たせられ、密着性を高めつつ膜強度を高められるため好ましい。モノアクリレートとしてはステアリルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソミスチルアクリレート、イソステアリルアクリレートが感度も高く、低収縮性で画像部の内部応力による強度低下を抑制でき、さらに、滲み防止、印刷物の臭気、照射装置のコストダウンの点で好ましい。
【0171】
なお、メタクリレートは皮膚刺激性がアクリレートより良好であるが、感作性は概してアクリレートと差が無く、アクリレートに比べて感度が下がるので適さないが、反応性が高く、感作性の良好なものであれば、好適に使用することができる。なお、上記化合物の中でもアルコキシアクリレートは、感度が低く、滲み、臭気、照射光源の問題が生じるため、その量を70質量部未満に留め、その他のアクリレートを併用することが好ましい。
【0172】
本発明に用いるインクには、必要に応じて、その他の成分を添加することができる。
【0173】
照射光として電子線、X線等を用いる場合、開始剤は不要であるが、線源としてUV光、可視光、赤外光を用いる場合は、それぞれの波長に応じたラジカル重合開始剤、開始助剤、増感色素を添加する。これらの量はインク全体の1質量部〜10質量部が必要となる。開始剤は公知の様々な化合物を使用することができるが、上記重合性化合物に溶解するものから選択する。具体的な開始剤としては、キサントンまたはチオオキサントン系、ベンゾフェノン系、キノン系、フォスフィンオキシド系が挙げられる。
【0174】
また、保存性を高めるために、重合禁止剤を200ppm〜20000ppm添加することができる。本発明に係るインクは40℃〜80℃の範囲で加熱、低粘度化して射出することが好ましいので、熱重合によるヘッド詰まりを防ぐためにも重合禁止剤を入れることが好ましい。
【0175】
この他に、必要に応じて界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を添加することができる。オレフィンやPET等の記録媒体への密着性を改善するためには、重合を阻害しないタッキファイヤーを含有させることが好ましい。具体的には、特開2001−49200号公報5〜6pに記載されている、高分子量の粘着性ポリマー((メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステル、からなる共重合物)や、重合性不飽和結合を持つ低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0176】
親水性層との密着性を改善するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、添加量としては、0.1質量%〜5質量%が好ましく、更に好ましくは0.1質量%〜3質量%である。
【0177】
また、インク色材による遮光効果による感度低下を防ぐ手段として、開始剤寿命の長いカチオン重合性モノマーと開始剤を組み合わせ、ラジカル・カチオンのハイブリッド型硬化インクとすることも可能である。
【0178】
インクは、射出性を考慮し射出時の温度で、好ましくは7mPa・s〜30mPa・s、更に好ましくは7mPa・s〜20mPa・sとなるよう、組成比を決める。なお、25℃でのインク粘度は、35mPa・s〜500mPa・s、更に、35mPa・s〜200mPa・sとすることが好ましい。室温での粘度を上げることにより、多孔質な記録媒体にもインクの浸透を防ぎ、未硬化モノマーの低減、臭気低減が可能となるし、着弾時のドット滲みを抑えることが出来、画質が改善される。
【0179】
インクの滲み防止、浸透性の改良、インクの濡れ性向上の観点から、表面張力は好ましくは200μN/cm〜300μN/cm、更に好ましくは230μN/cm〜280μN/cmである。
【0180】
《インクジェット記録方法》
本発明に用いられる記録方法としては、上記インクを40℃〜80℃に加熱し、インク粘度を下げて射出することが射出安定性の点で好ましい。照射線硬化型インクは、概して水性インクより粘度が高いため、温度変動による粘度変動幅が大きい。粘度変動はそのまま液滴サイズ、液滴射出速度に大きく影響を与え、画質劣化を起こすため、インク温度をできるだけ一定に保つことが必要である。インク温度の制御幅は設定温度±5℃、好ましくは設定温度±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃である。記録装置にはインク温度の安定化手段を備えるが、一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)、からノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。
【0181】
温度コントロールのため、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体、外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断もしくは断熱されていることが好ましい。加熱に要する記録装置立上げ時間を短縮するため、また熱エネルギのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0182】
インクジェット記録後の光照射には、紫外線、電子線、X線、可視光、赤外光など、様々な線源を用いることが可能であるが、硬化性、線源のコスト等を考慮すると、紫外線が好ましい。紫外線線源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーランプ、紫外線レーザ・LEDなどを用いることができる。
【0183】
基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。これによると、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間を置いて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。また、国際公開第99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へ紫外光を照射する方法が開示されている。本発明に係る記録方法においては、これらの照射方法を用いることが可能である。またヘッドの背面から照射することが好ましい。
【0184】
ヘッド背面から露光する方式は、光ファイバーや、高価な光学系を用いることなく、着弾直後のインクに、速やかに照射することができる。また、ヘッド背面からの照射であるため、記録媒体からの反射線による、ノズル界面のインク硬化を防ぐ効果もある。線源は記録媒体へ投影形状を、走査一回分の記録幅を持つ帯状とさせることが好ましい。
【0185】
具体的には、帯状のメタルハライドランプ管、紫外線ランプ管が好ましい。線源は、実質的に記録装置に固定化し、可動部を無くすことで、安価な構成とすることが可能である。また、何れの露光方式でも線源は2種用意し、第2の線源によって、硬化を完了させることが好ましい形態のひとつである。これは、2色目の着弾インクの濡れ性、インク間の接着性を得ることと、線源を安価に組むことに寄与する。
【0186】
なお、第1の線源と、第2の線源とは、露光波長または露光照度を変えることが好ましい。第一照射エネルギを第二の照射エネルギより小さく、即ち第一の照射エネルギを照射エネルギ総量の1%〜20%、好ましくは1%〜10%、更に好ましくは1%〜5%とする。照度を変えた照射を行うことで、硬化後の分子量分布が好ましいものとなる。即ち、一度に高照度の照射を行ってしまうと、重合率は高められるものの、重合したポリマーの分子量は小さく、強度が得られない。インクジェットインクのように極端に粘度の低い組成では、顕著な効果が得られる。
【0187】
また、第一の照射は、第二のより長波長とすることで、第一の照射では、インクの表層を硬化させて、インクの滲みを抑えられ、第二の照射では照射線が届き難い記録媒体近傍のインクを硬化させ、密着性を改善することができる。インク内部の硬化促進のためにも、第二の照射線波長は長波長であることが好ましい。
【0188】
本発明における記録方法の特徴は、上記インクを用い、一定温度にインクを加温するとともに、着弾から照射までの時間を0.01秒〜0.5秒、好ましくは0.01秒〜0.3秒、更に好ましくは0.01秒〜0.15秒後に放射線を照射することにある。このように着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、着弾インクが硬化前に滲むことを防止することが可能となる。また、多孔質な記録媒体に対しても光源の届かない深部までインクが浸透する前に露光することができる為、未反応モノマーの残留を抑えられ、臭気を低減できる。これは、本発明に係るインクを用いることで大きな相乗効果をもたらすことになる。特に、25℃におけるインク粘度が35mPa・s〜500mPa・sのインクを用いると大きな効果を得ることができる。このような記録方法を取ることで、表面の濡れ性が異なる様々な記録媒体に対しても、着弾したインクのドット径を一定に保つことが出来、画質が向上する。
【0189】
ヘッドユニットは、インクジェットノズルヘッド、インク液供給系、インク及びヘッドの温度制御機構、制御基板等から構成される。背面から光照射する場合、ヘッドユニットは、できるだけ記録媒体への投影面積が小さい方が好ましい。小さい方が、第一の照射がより有効に活用される。
【0190】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0191】
実施例1
《ポリエステルフィルムの作製》
下記のようにして、本発明に係る基材として用いるポリエステルフィルム(PET1、PET2、PEN)を各々作製した。
【0192】
(ポリエチレンテレフタレート1(PET1))
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従い固有粘度0.66(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから静電印加した50℃のキャスティングドラム上に押し出し、熱固定後の膜厚が175μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。これを、周速の異なるロールを用い3.3倍に縦延伸、ついでテンターで4.5倍に横延伸を実施した。この時の温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。
【0193】
この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンターのチャック部をスリットした後、両端に厚み10μmのナーリングを幅1cmで施した。このようにして幅(製膜幅)2.5mのポリエチレンテレフタレート1(PET1)を作製した。
【0194】
(ポリエチレンテレフタレート2(PET2))
ポリエチレンテレフタレート1の作製において、幅(製膜幅)を6.0mに設定した以外は同様にして、ポリエチレンテレフタレート2(PET2)を作製した。
【0195】
(ポリエチレン−2,6−ナフタレート;PEN)
ナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジメチルとエチレングリコールを用い、常法に従い、固有粘度=0.58(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPENを得た。これをペレット化した後160℃で4時間乾燥した後、320℃で溶融後T型ダイから静電印加した50℃のキャスティングドラム上に押し出し、熱固定後の膜厚が175μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。これを、周速の異なるロールを用い2.8倍に縦延伸、ついでテンターで3.7倍に横延伸を実施した。この時の温度はそれぞれ、140℃、160℃であった。
【0196】
この後、250℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンターのチャック部をスリットした後、両端に厚み10μmのナーリングを幅1cmで施した。このようにして得たPENフィルムの幅(製膜幅)は2.5mであった。
【0197】
《下引き済み基材1〜4の作製》
上記で得られたPET1、PET2及びPENの各々のポリエステルフィルムの両面に、8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、次いで、一方の面に下記下引き塗布液a−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し乾燥させて下引き層A−1を有する下引き面Aを形成し、また、反対側の面に下記帯電防止加工した下引き塗布液b−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し乾燥させて表面電気抵抗が106Ωの帯電防止加工下引き層B−1を有する下引き面Bを形成した。ついで、それぞれの下引き層表面に下記プラズマ処理条件でプラズマ処理を施した後、スリットを行い、ついで、ナーリング加工や低張力熱処理を行い、下引き済み基材1〜4を各々作製した。
【0198】
《下引き塗布液a−1》
ブチルアクリレート(30質量%)
t−ブチルアクリレート(20質量%)
スチレン(25質量%)
2−ヒドロキシエチルアクリレート(25質量%)
の共重合体ラテックス液(固形分30%) 270g
ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレンウレア) 0.8g
ポリスチレン微粒子(平均粒径3μm) 0.05g
コロイダルシリカ(平均粒径90μm) 0.1g
水で1リットルに仕上げる
《プラズマ処理条件》
バッチ式の大気圧プラズマ処理装置(イーシー化学(株)製、AP−I−H−340)を用いて、高周波出力が4.5kW、周波数が5kHz、処理時間が5秒及びガス条件としてアルゴン、窒素及び水素の体積比をそれぞれ90%及び5%で、プラズマ処理を行った。
【0199】
《スリット》
オフセット量及び幅が表1に示した値になるよう、下引き層塗設後の基材をスリットした。スリット後の両端に幅10mm、高さ10μmのナーリングを付与した。
【0200】
《低張力熱処理時の張力測定》
スリット後の基材に対し、表1に示した条件で低張力熱処理を実施した。ここで、表1に示した張力については、熱処理ゾ−ンの直前、直後のロ−ルに差動トランス式張力試験機(例えば三菱電気製 LX−TC−100)を設置し、25℃下での張力を測定し、これの平均値を求めた。
【0201】
得られた下引き済み基材1〜4の構成を表1に示す。
【0202】
【表1】
【0203】
《下引き済み基材1〜4への親水性層1、親水性層2の塗設》
表2に示す親水性層2用塗布液(調製方法は下記に示す)、表3に示す親水性層1用塗布液(調製方法は下記に示す)の各塗布液を、下引き済み基材1〜4の各々の下引き面A上に、親水性層1、親水性層2の順番でワイヤーバーを用いて塗布し、100℃で3分間乾燥して、2層の親水性層まで塗布済みの試料を作製した。親水性層2まで塗布した段階で、60℃で24時間の加熱処理を施した。
【0204】
《親水性層2用塗布液の調製》
表2に記載の各素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、表2に記載の組成で混合、濾過して親水性層2用塗布液を調製した。
【0205】
なお、表2中に記載の各素材の詳細は、以下の通りであり、表中の数値は質量部を表す。
【0206】
【表2】
【0207】
《親水性層1用塗布液の調製》
表3に記載の各素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、表3に記載の組成で混合、濾過して親水性層1用塗布液を調製した。
【0208】
【表3】
【0209】
《印刷版材料1〜4(赤外線レーザ用)の作製》
上記で作製した、下引き済み基材1〜4(A面上に、親水性層1、親水性層2をこの順に各々塗設済み)に対して、下記に記載の画像形成機能層塗布液を、ワイヤーバーを用いて、乾燥付量が0.6g/m2となるように塗布し、50℃で3分間乾燥して赤外線レーザ露光用である、印刷版材料1〜4を作製した。
【0210】
尚、前記下引き済み基材1(親水性層1、親水性層2を各々塗設済み)を用いた試料については、厚さ190μmのスムース表面を有するアルミ板表面に接着剤を塗布し、前記下引き済み基材1の塗布層が設けられていない面と接着貼合して240μm厚の試料とした。上記作製した各試料は、画像形成機能層を塗布した後、40℃で24時間の加熱処理を施した。
【0211】
《画像形成機能層塗布液の組成》
二糖類トレハロース粉体(林原商事社製商品名トレハロース、融点97℃)
の水溶液固形分5質量% 30質量部
カルナバワックスエマルジョンA118(岐阜セラック社製、平均粒子径0.3μm、軟化点65℃、融点80℃、140℃での溶融粘度8cps、固形分40質量%)を固形分5質量%に純水で希釈した分散液 70質量部
《印刷版材料1〜4の評価》
印刷版材料1〜4の特性評価は、下記のように赤外線レーザ方式による画像形成を行って得られたプロセスレス印刷版1〜4を用いて行った。
【0212】
(a)赤外線レーザ方式による画像形成
上記作製した印刷版材料1〜4の各試料を露光ドラムに巻付け固定した。露光には、波長830nm、スポット径約18μmのレーザビームを用い、露光エネルギを300mJ/cm2とした条件で、2400dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。)、175線で画像を形成し、プロセスレス印刷版試料1〜4を各々作製した。
【0213】
(b)上記で画像形成したプロセスレス印刷版試料1〜4について、下記の印刷方法により、印刷版としての諸特性を評価した。
【0214】
《印刷方法》
印刷装置として、三菱重工業社製のDAIYA1F−1を用いて、コート紙と、湿し水としてアストロマーク3(日研化学研究所製)の2質量%溶液、インクとして、東洋インク社製のトーヨーキングハイエコーM紅を使用して印刷を行った。
【0215】
《耐スクラッチ性評価》
プロセスレス印刷版試料1〜4の各試料の未露光部の画像形成機能層表面に、先端が0.3mmφのサファイア触針を用いてスクラッチ筋をつけた。その際の荷重を変化させて、印刷刷出し50枚目のシートで、汚れが確認できる荷重を確認し、この荷重値を耐スクラッチ性の尺度とした。
【0216】
《耐ゴム擦り性評価》
プロセスレス印刷版試料1〜4の各試料の未露光部の画像形成機能層表面に、先端が5mmφのゴム球となったゴムペンを用いて擦り筋をつけた。その際の荷重を変化させて、印刷刷出し50枚目のシートで汚れが確認できる荷重を確認し、この荷重値を耐ゴム擦り性の尺度とした。
【0217】
《耐刷性の評価》
プロセスレス印刷版試料1〜4の各々を用いて印刷した画像の3%の小点の欠落、またはベタ部の濃度低下の何れかが確認された段階で耐刷終点とし、その枚数を求めた。
【0218】
得られた結果を表4に示す。
【0219】
【表4】
【0220】
表4から、平坦指数が、0.01〜0.075の範囲に入っている基材を有する印刷版材料から作製されたプロセスレス印刷版2〜4は、そうでないプロセスレス印刷版1に比べて、耐スクラッチ性、耐ゴム擦り性及び耐刷性のすべてにおいて良好な特性を示すことが判る。
【0221】
実施例2
《プロセスレス印刷版(インクジェット記録)21〜24の作製》
実施例1における印刷版材料1〜4の作製において、親水性層1用塗布液、親水性層2用塗布液の代わりに、各々、下記に示す親水性層3用塗布液、親水性層4用塗布液を各々用いて、印刷版材料21〜24を各々作製後、前記印刷版材料を用いて下記に示すようにインクジェット方式による画像形成を行ない、プロセスレス印刷版21〜24を各々作製した。
【0222】
《親水性層4用塗布液の調製》
表5に記載の各素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、表5に記載の組成で混合、濾過して親水性層4用塗布液を調製した。尚、表中、単位記載のない数値は質量部を示す。
【0223】
【表5】
【0224】
《親水性層3用塗布液の調製》
表6に記載の各素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、表6に記載の組成で混合、濾過して親水性層3用塗布液を調製した。
【0225】
【表6】
【0226】
《インクジェット方式による画像形成》
(a)マゼンタ顔料分散物の調製
下記の素材を順次混合及び分散してマゼンタ顔料分散物を作製した。なお、分散は、マゼンタ顔料粒子の平均粒径として、0.2μm〜0.3μmの範囲となるように分散条件を適宜調整した。
【0227】
C.I.ピグメントレッド57:1 15質量部
高分子分散剤(Zeneca社製 Solsperse) 5質量部
ステアリルアクリレート 80質量部
(b)マゼンタインクの調製
マゼンタ顔料分散物(上記で調製) 20質量部
ステアリルアクリレート 60質量部
2官能芳香族ウレタンアクリレート(分子量1500) 10質量部
6官能脂肪族ウレタンアクリレート(分子量1000) 5質量部
開始剤(Ciba製、イルガキュアー184) 5質量部
上記の材料を混合し、次いで絶対濾過精度2μmのフィルタで濾過して、マゼンタインクを調製した。調製したマゼンタインクの25℃における粘度は120mPa・sであり、70℃における粘度は15mPa・s、25℃における表面張力は250μN/cmであった。
【0228】
(c)インクジェット画像の形成
インクジェット画像の形成には、ピエゾ型インクジェットノズルを用いたインクジェット記録装置を用いて、印刷版材料である各試料へ画像記録を行った。インク供給系は、インクタンク、供給パイプ、ヘッド直前の前室インクタンク、フィルタ付き配管、ピエゾヘッドから構成され、前室インクタンクからヘッド部分まで断熱及び加温を行った。温度センサーは前室インクタンク及びピエゾヘッドのノズル付近にそれぞれ設け、ノズル部分が常に60℃±2℃となるように温度制御を行った。ピエゾヘッドは、ノズル径24μmで、8pl〜30plのマルチサイズドットを720×720dpiの解像度で射出できるよう駆動した。着弾後はUV−A光を露光面照度100mW/cm2に集光し、インク着弾後0.1秒後に照射が始まるよう露光系・主走査速度・射出周波数を調整した。露光時間を可変とし、照射露光エネルギを調整可能した。
【0229】
上記装置を用いて、環境温度25℃にて、上記調製したマゼンタインクを射出し、直後にUV光を照射した。照射した露光エネルギは300mJ/cm2で行った。
【0230】
《プロセスレス印刷版21〜24の評価》
上記で作製したプロセスレス印刷版21〜24の評価は、実施例1のプロセスレス印刷版試料1〜4と同様に評価した。但し、耐刷性については、下記の方法に従い、評価した。
【0231】
(耐刷性の評価)
印刷した画像のベタ部の濃度低下が確認された段階で耐刷終点とし、その枚数を求めた。
【0232】
得られた結果を表7に示す。
【0233】
【表7】
【0234】
表7から、撓み量が、0mm〜50mmの範囲に入っている基材を有する印刷版材料から作製されたプロセスレス印刷版22〜24(インクジェット記録により画像形成)は、そうでないプロセスレス印刷版21に比べて、耐スクラッチ性、耐ゴム擦り性及び耐刷性のすべてにおいて良好な特性を示すことが判る。
【0235】
【発明の効果】
本発明により、耐傷性、特に耐スクラッチ性、耐ゴム擦り性を有し、且つ、耐刷性に優れた印刷版材料及びプロセスレス印刷版を提供することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【図1】基材の撓み量の測定方法を示す模式図である。
【符号の説明】
1、1′ ロール
2 荷重
3 サンプル基材
Claims (9)
- 基材上の一方の面に、少なくとも1層の親水性層を有する印刷版材料において、
該基材がプラスチックフィルムであり、且つ、前記基材の下記一般式(1)で定義される平坦指数が、0.01〜0.075であることを特徴とする印刷版材料。
一般式(1)
平坦指数=(ΔLm(平均値))×(ΔLmレンジ)
〔式中、ΔLm(平均値)は、下記一般式(2)で定義される、前記基材のΔLm(長手方向寸法変化率)を、前記基材の幅方向に複数回測定した平均値を表し、ΔLmレンジは、下記一般式(3)で定義される、前記ΔLm(長手方向寸法変化率)における、ΔLm(最大値)とΔLm(最小値)の差を表す。〕
一般式(2)
ΔLm(長手方向寸法変化率)=100×{(160℃での基材の長手方向寸法)−(25℃での基材の長手方向寸法)}/(25℃での基材の長手方向寸法)(%)
一般式(3)
ΔLmレンジ={(ΔLm(最大値))−(ΔLm(最小値))}(%) - 基材上の一方の面に、少なくとも1層の親水性層を有する印刷版材料において、
該基材がプラスチックフィルムであり、撓み量が0mm〜50mmであることを特徴とする印刷版材料。 - 親水性層の少なくとも1層が、多孔質構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載の印刷版材料。
- 基材上に、熱で画像形成可能な画像形成機能層を有し、且つ、該基材上のいずれか1層が光熱変換素材を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷版材料。
- 親水性層上に、熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子を含有する熱で画像形成可能な画像形成機能層を有することを特徴とする請求項4に記載の印刷版材料。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の印刷版材料の親水性層上に、画像形成素材を画像様に付与される工程を経て形成された画像を有することを特徴とするプロセスレス印刷版。
- 画像形成素材を含むインクを用い、インクジェット方式により画像が付与されることを特徴とする請求項6に記載のプロセスレス印刷版。
- 画像形成素材を含むインクが、放射線硬化性インクであることを特徴とする請求項7に記載のプロセスレス印刷版。
- 放射線硬化性インクをインクジェット方式により付与した後、光照射により画像が形成されることを特徴とする請求項8に記載のプロセスレス印刷版。
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Legal Events
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