JP2004117026A - 免疫センサ及びこのセンサを用いる測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ターゲット化合物が低分子量物質の場合にも、高い感度で測定できる、免疫センサ及びターゲット化合物の測定方法を提供する。
【解決手段】基板表面に抗ターゲット化合物抗体が固定化されている免疫検査用プレート。前記抗ターゲット化合物抗体は、前記基板表面の金薄膜表面にスペーサー及びプロティンAまたはプロティンGを介して、基板表面に固定化されている。この検査用プレートとこの検査用プレート表面の表面プラズモン共鳴を測定するための装置とを含む免疫センサ。ターゲット化合物と標識分子を結合したターゲット化合物(標識分子結合ターゲット化合物という)とを、抗ターゲット化合物抗体を固定化した基板表面に接触させ、抗ターゲット化合物抗体と結合した標識分子結合ターゲット化合物を、表面プラズモン共鳴を用いて検出することを含むターゲット化合物の測定方法。前記標識分子がヘモシアニンであり、かつ前記抗ターゲット化合物抗体が、基板表面の金薄膜表面にスペーサー及びプロティンAまたはプロティンGを介して基板表面に固定化されている。
【選択図】図4
【解決手段】基板表面に抗ターゲット化合物抗体が固定化されている免疫検査用プレート。前記抗ターゲット化合物抗体は、前記基板表面の金薄膜表面にスペーサー及びプロティンAまたはプロティンGを介して、基板表面に固定化されている。この検査用プレートとこの検査用プレート表面の表面プラズモン共鳴を測定するための装置とを含む免疫センサ。ターゲット化合物と標識分子を結合したターゲット化合物(標識分子結合ターゲット化合物という)とを、抗ターゲット化合物抗体を固定化した基板表面に接触させ、抗ターゲット化合物抗体と結合した標識分子結合ターゲット化合物を、表面プラズモン共鳴を用いて検出することを含むターゲット化合物の測定方法。前記標識分子がヘモシアニンであり、かつ前記抗ターゲット化合物抗体が、基板表面の金薄膜表面にスペーサー及びプロティンAまたはプロティンGを介して基板表面に固定化されている。
【選択図】図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、競争法を用いた免疫検査法並びにそれに用いる免疫検査用プレート及び免疫センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
バイオセンサには、主として生体内に存在する低分子量物質(例えば、糖、有機酸、アルコール)を測定対象とする酵素センサと、病原菌、ウイルス、タンパク質、ペプチド、農薬、ダイオキシン、環境ホルモン、麻薬などを測定対象とする免疫センサとがある。
【0003】
表面プラズモン共鳴(SPR)現象を利用したセンサとして、テキサスインスツルメンツ社の Spreeta(スプリータ、登録商標)がある。SPRを利用したセンサは、リアルタイムな測定が可能であり、標識物質のB/F分離も不要であり、免疫センサとして利用すれば、病原菌等の測定には十分な感度を有するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
例えば、非特許文献1に記載のように、SPRを利用した免疫センサは、基板表面に抗ターゲット化合物抗体が固定化されている免疫検査用プレートとこの検査用プレート表面の表面プラズモン共鳴を測定するための装置とを含む。そして、抗ターゲット化合物抗体は、基板表面の金薄膜表面にプロティンAまたはプロティンGを介して、基板表面に固定化されている。この抗ターゲット化合物抗体を固定化した基板表面に接触させ、抗ターゲット化合物抗体と結合した標識分子結合ターゲット化合物を、表面プラズモン共鳴を用いて検出する。
【0005】
従来の免疫センサ及びターゲット化合物の測定方法では、例えば、非特許文献2に記載のように、標識分子として、アルブミンが使用されていた。しかし、ターゲット化合物が低分子量物質の場合、標識分子としてアルブミンを使用するのでは感度が不十分であり、より感度の高い測定方法及び免疫センサが望まれていた。
【0006】
【非特許文献1】M. Suzuki, F. Ozawa, W. Sugimoto, S. Aso; Analytical andBioanalytical Chemistry, Vol.372, No.2, 301−304, (2002)
【非特許文献2】N. Miura, K. Ogata, G. Sakai, T. Uda, N. Yamazoe, Chemistry Letters, 713(1997)
【0007】
そこで本発明は、ターゲット化合物が低分子量物質の場合にも、高い感度で測定できる、免疫センサ及びターゲット化合物の測定方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の通りである。
(1)基板表面に抗ターゲット化合物抗体が固定化されている免疫検査用プレートであって、前記抗ターゲット化合物抗体は、前記基板表面の金薄膜表面にスペーサー及びプロティンAまたはプロティンGを介して、基板表面に固定化されていることを特徴とする前記検査用プレート。
(2)スペーサーが長鎖アルキルを含む(1)に記載の検査用プレート。
(3)長鎖アルキルがウンデカンである(2)に記載の検査用プレート。
(4)ウンデカンが、11−アミノ−1−ウンデカンチオールの反応生成物である(3)に記載の検査用プレート。
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の検査用プレートとこの検査用プレート表面の表面プラズモン共鳴を測定するための装置とを含む免疫センサ。
(6)ターゲット化合物と標識分子を結合したターゲット化合物(以下、標識分子結合ターゲット化合物という)とを、抗ターゲット化合物抗体を固定化した基板表面に接触させ、抗ターゲット化合物抗体と結合した標識分子結合ターゲット化合物を、表面プラズモン共鳴を用いて検出することを含むターゲット化合物の測定方法であって、
前記標識分子がヘモシアニンであり、かつ
前記抗ターゲット化合物抗体が、基板表面の金薄膜表面にスペーサー及びプロティンAまたはプロティンGを介して基板表面に固定化されていることを特徴とする前記測定方法。
(7)スペーサーが長鎖アルキルを含む(6)に記載の測定方法。
(8)長鎖アルキルがウンデカンである(7)に記載の測定方法。
(9)ウンデカンが、11−アミノ−1−ウンデカンチオールの反応生成物である(8)に記載の測定方法。
(10)ターゲット化合物が低分子量化合物である(6)〜(9)のいずれか1項に記載の測定方法。
(11)ターゲット化合物と標識分子結合ターゲット化合物とを含む水溶液の流通下に、抗ターゲット化合物抗体を固定化した基板表面を置き、表面プラズモン共鳴による抗ターゲット化合物抗体と結合した標識分子結合ターゲット化合物の検出を連続的に行う、(6)〜(11)のいずれか1項に記載の方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
検査用プレート
本発明の免疫検査用プレートは、基板表面に抗ターゲット化合物抗体が固定化されており、前記抗ターゲット化合物抗体が、基板表面の金薄膜表面にスペーサー及びプロティンAまたはプロティンGを介して、基板表面に固定化されていることを特徴とする。
前記特許文献1及び2に記載の免疫検査用プレートは、抗ターゲット化合物抗体が、基板表面の金薄膜表面にプロティンAまたはプロティンGを介して、基板表面に固定化されている。即ち、金薄膜表面に直接固定されたプロティンAまたはプロティンGに抗ターゲット化合物抗体が結合している。
【0010】
それに対して、本発明の免疫検査用プレートでは、抗ターゲット化合物抗体は、スペーサーを介して、基板表面の金薄膜表面に固定されたプロティンAまたはプロティンGに結合している。これは、本発明の免疫検査用プレートを用いる測定方法では、標識分子として、従来使用されていたアルブミンより高分子量のヘモシアニンを使用することに起因する。標識分子としてヘモシアニンを使用した場合、金薄膜表面に直接固定されたプロティンAまたはプロティンGに結合した抗ターゲット化合物抗体に対する標識分子結合ターゲット化合物の反応性が低いことが、本発明者らの検討の結果分かった。
【0011】
それに対して、スペーサーを介して基板表面の金薄膜表面に固定されたプロティンAまたはプロティンGに結合した抗ターゲット化合物抗体に対しては、標識分子としてヘモシアニンを使用しても、高い反応性が得られることが判明した。
【0012】
スペーサーとしては、例えば、長鎖アルキルを含むものを挙げることができるが、これに制限されるものではない。長鎖アルキルは、例えば、炭素数6〜20のアルキルであることができ、長鎖アルキルは、例えば、ウンデカンであることが好ましい。
【0013】
スペーサーは、例えば、両端に反応性基を有する長鎖アルキルを用いて、一方の反応性基を基板表面の金薄膜表面に固定し、他方の反応性基をプロティンAまたはプロティンGに結合させることで、導入できる。金薄膜表面に反応し得る反応性基としては、例えば、チオール基を挙げることができ、プロティンAまたはプロティンGと反応し得る反応性基としては、例えば、アミノ基を挙げることができる。
【0014】
両端に反応性基を有する長鎖アルキルとしては、例えば、11−アミノ−1−ウンデカンチオール、6−アミノ−1−ヘキサンチオール及び8−アミノ−1−オクタンチオール等を挙げることができる。
【0015】
金薄膜表面と11−アミノ−1−ウンデカンチオールとは、11−アミノ−1−ウンデカンチオールの持つチオール基が金とメルカプチドを形成して結合する。この反応は、例えば、11−アミノ−1−ウンデカンチオールの2mMエタノール溶液と2時間、室温で行うことができる。
【0016】
次に、金薄膜表面にチオール基を介して結合した11−アミノ−1−ウンデカンチオールのアミノ基をグルタルアルデヒドで活性化し、プロティンAまたはプロティンGと結合させる。グルタルアルデヒドでの活性化は、5%グルタルアルデヒドと室温で2時間反応させることで行うことができる。グルタルアルデヒドでの活性化の後、例えば、0.1g/lのプロティンAまたはプロティンGを反応させることができる。
【0017】
プロティンAまたはプロティンGへの抗ターゲット化合物抗体の結合は、例えば、プロティンA及びプロティンGが抗体のFcフラグメントと特異的に結合することを利用して行い、例えば、以下のようにして実施できる。
例えば、プロティンAまたはプロティンGを結合させたところへ、10mg/Lの抗体溶液を加えることで、室温、中性条件下で抗体分子はプロティンAまたはプロティンGに結合する。
【0018】
抗ターゲット化合物抗体は、ターゲット化合物に応じて適宜選択することができ、ターゲット化合物としては、後述するように、各種低分子量化合物を挙げることができる。また、ターゲット化合物の種類によっては、抗ターゲット化合物抗体は市販品として入手可能である。
【0019】
免疫センサ
本発明の免疫センサは、上記本発明の免疫検査用プレートとこの検査用プレート表面の表面プラズモン共鳴を測定するための装置とを含む。
表面プラズモン共鳴を利用したセンサは、プリズムの上に形成した金薄膜の表面における屈折率変化を敏感に検出することを測定原理とする。プリズムに全反射が起きる条件で単色光を入射し、入射角に対する反射光の強度を調べる。このとき、金薄膜がプリズムの表面に形成される表面プラズモン共鳴現象により、臨界角より大きな入射角で光の吸収が起きる。光吸収が最大になる角度(共鳴角)は金薄膜の表面における屈折率に依存する。
【0020】
本発明の免疫センサについて、テキサスインスツルメンツ社の Spreeta(スプリータ、登録商標) を利用した例で説明する。図1にSpreetaを横から見た図を示す。
図1に示す免疫センサ1は、プリズムの上に形成した金薄膜2が、上記免疫検査用プレートに相当し、プリズムの上に形成した金薄膜に、11−アミノ−1−ウンデカンチオール及びプロティンAまたはプロティンGを介して抗ターゲット化合物抗体が固定されている。免疫センサ1は、さらに、光源となるLED3及びシリコンフォトダイオードアレーセンサ4を有する。
【0021】
測定に際しては、LED3からの近赤外光が表面プラズモン効果を増幅するために分極される。光ビームは免疫検査用プレート2表面にて反射され、さらに金鏡面5を介してシリコンフォトダイオードアレーセンサ4で検出される。免疫検査用プレート(金薄膜)2の入射光の角度は、フォトダイオードアレーセンサ4により特定される。
【0022】
測定方法
本発明のターゲット化合物の測定方法は、ターゲット化合物と標識分子結合ターゲット化合物とを、抗ターゲット化合物抗体を固定化した基板表面に接触させ、抗ターゲット化合物抗体と結合した標識分子結合ターゲット化合物を、表面プラズモン共鳴を用いて検出することを含むターゲット化合物の測定方法である。そして、第1の特徴は、前記標識分子がヘモシアニンであることである。標識分子がヘモシアニンであることで、ターゲット化合物が低分子量化合物であっても、高感度で測定することができる。ヘモシアニンは、従来使用されているアルブミンの約100倍の分子量を有する巨大分子である。標識分子としてヘモシアニンがターゲット化合物に結合することで、より大きな屈折率変化が得られることにより、高感度に表面プラズモン共鳴の測定が可能になる。
【0023】
さらに、第2の特徴は、前記抗ターゲット化合物抗体が、基板表面の金薄膜表面に11−アミノ−1−ウンデカンチオール及びプロティンAまたはプロティンGを介して基板表面に固定化されていることである。
この点は、上記免疫検査用プレートにつていの説明と同様である。
【0024】
本発明の測定方法において、抗ターゲット化合物抗体を固定化した基板表面に接触させるターゲット化合物と標識分子結合ターゲット化合物においては、標識分子結合ターゲット化合物の濃度は一定にしておく必要がある。この濃度を変えることで、ターゲット化合物の測定濃度範囲を調整できる。
【0025】
抗ターゲット化合物抗体と結合した標識分子結合ターゲット化合物の、表面プラズモン共鳴を用いた検出は、常法により行うことができる。
【0026】
本発明の測定方法においては、ターゲット化合物となり得る物質は特に制限されない。但し、本発明の測定方法は、ターゲット化合物が低分子量化合物である場合に、特に有利である。低分子量化合物とは、例えば、100〜1000程度の分子量を有する化合物であることができる。具体的には、ペプチド、ホルモン、各種農薬、覚せい剤、内分泌攪乱物質、ダイオキシン等を例示できる。
【0027】
ターゲット化合物とヘモシアニンとの結合は、例えば、以下のように行うことができる。
1mg/mlのターゲット化合物溶液に、1−エチル−3(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロライド(EDC)を10mg/mlとなるように加え、pHを5に調整する。室温で5分間放置後、同体積のヘモシアニン溶液を加え、室温で4時間放置する。pH4.2の酢酸ナトリウム溶液を100mMとなるように加えて反応を停止させ、室温で1時間放置した後、リン酸緩衝液に対して透析する。
【0028】
本発明の測定方法は、ターゲット化合物と標識分子結合ターゲット化合物とを含む水溶液の流通下に、抗ターゲット化合物抗体を固定化した基板表面を置き、表面プラズモン共鳴による抗ターゲット化合物抗体と結合した標識分子結合ターゲット化合物の検出を連続的に行うことができる。
【0029】
この方法を、図2を用いて具体的に説明する。
図2中、1が抗ターゲット化合物抗体を固定化した基板表面を含む本発明の免疫センサであり、ターゲット化合物と標識分子結合ターゲット化合物とを含む水溶液が10のマイクロシリンジに格納され、この水溶液はインジェクタ11により、必要によりシリンジポンプ12からの移送液とともに免疫センサ1に供給される。また、免疫センサ1からの廃液はペリスタポンプ(図示せず)により、免疫センサ1から排出される。これにより、抗ターゲット化合物抗体と結合した標識分子結合ターゲット化合物の表面プラズモン共鳴による検出を連続的に行うことができる。
尚、免疫センサ1からの表面プラズモン共鳴データはコンピューター14に取り込まれ、適宜データ処理に供される。また、コントロールボックス13は、電源供給、信号取り出し、及びパソコンとのインターフェースの役割を有する。
【0030】
尚、上記測定を行った後、例えば、pH3.0のGly−HClを免疫センサに注入することで、プロティンAまたはGから抗ターゲット化合物抗体を解離させ、このセンサを繰り返し測定に使用することができる。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
実施例1
(1) プロティンA単独使用
図3に示すように、プロティンA (ProteinA―Soluble Extra cellular (品番P―6031 SIGMA))が抗体のFcフラグメントと特異的に結合する事を利用し、金薄膜にプロティンAを物理的に吸着させて抗体を固定化した。DNP(ジニトロフェノール)(特級 品番045−03572 和光純薬工業)と抗体の解離が出来なかったので、抗体ごとDNP及び標識DNPを解離させて、再び抗体を結合させて繰り返し測定を行った。標識DNP としては、DNP−BSA (DNP−Albumin Conjugate,Bovine (品番324101 CALBIOCHEM))及びDNP−γグロブリン(DNP−γ−Globulin Conjugate,Bovine (品番324111 CALBIOCHEM))を用いた。
【0032】
以下に手順を示す。インジェクタ(レオダイン、タイプ7125 500μl)への注入はマイクロシリンジ(MS−500R イトー)を用い、試料は全て500μl注入した。流速は全て50μl/minで行った。
【0033】
(1)pH7.4 0.05Mのリン酸緩衝液をSPR角が安定するまで流した。
(2)インジェクターを用いて、0.1g/lのプロティンA(G)を注入し、金薄膜面に吸着させた。
(3)10g/lのカゼイン溶液を注入し、プロティンAの吸着していない金薄膜表面をブロッキングした。
(4)10mg/lの抗DNP抗体を注入し、プロティンAと結合させて免疫センサを構築した。
(5)測定を行った後、pH3.0のGly−HClを注入してプロティンAから抗体を解離させ、再び抗体を注入して結合させ、繰り返し測定を行った。
【0034】
上記手法を用いて、DNP濃度0〜10−6Mの範囲での標識DNP としてDNP−BSA及びDNP−γグロブリンを用いた場合のSPR角を求め、図4に示す。
【0035】
(2)プロティンA及び11−アミノ−1−ウンデカンチオールを使用
(1)で示したプロティンA再生法では、DNP−BSA及びDNP−γグロブリンを標識抗原として用いた競争法は実施できた。
しかし、標識DNP としてDNP−ヘモシアニン(DNP−Hemocyanin Conjugate,Keyhole Limpet(品番324121 CALBIOCHEM))を用いた場合、競争法は実施できなかった。これは、DNP−ヘモシアニンが他の2つに比べて分子が大きい事が原因ではないかと考えた。そこで、本発明の手法により、金薄膜表面に11−アミノ−1−ウンデカンチオールをつけ、グルタルアルデヒドでアミノ基をアルデヒド基にかえた後にプロティンAと結合させ、免疫センサを構築した。
この点を、図5を用いて説明する。流速は、11−アミノ−1−ウンデカンチオールをつけて、グルタルアルデヒドで活性化させるまではペリスタポンプを用いて100μl/minとし、それ以降は静水圧を利用した送液装置で50μl/minで行った。
【0036】
(1)ペリスタポンプを用いて、11−アミノ−1−ウンデカンチオールの2mMエタノール溶液を2時間、循環させた。
(2)金薄膜表面に付かなかった11−アミノ−1−ウンデカンチオールを、エタノールを10分間流して洗浄した。
(3)5%のグルタルアルデヒドを2時間循環させて、アミノ基をアルデヒド基に変えた。
(4)ペリスタポンプから静水圧を利用した送液装置に代えて、SPR角が安定するまでリン酸緩衝液を流した。
(5)インジェクタを用いて0.1g/lのプロティンAを500μl注入し、11−アミノ−1−ウンデカンチオールと結合させた。
(6)0.1MのTris−HClを注入し、プロティンAが結合しなかった11−アミノ−1−ウンデカンチオールのアルデヒド基をブロッキングした。
(1)の(4)(5)と同じ手順で、繰り返し測定を行った。
【0037】
上記手法を用いて、DNP濃度0〜10−6Mの範囲での標識DNP としてDNP−ヘモシアニンを用いた場合のSPR角を求め、図4に示す。
【0038】
本実施例の測定方法は、分子量の小さな物を,屈折率変化を増大させ、得られるSPR角の変化を大きくして測定する方法であって、低分子量物質としてDNP(分子量:184.11)を用いて、競争法で測定を行った。競争法について、図6を用いて説明する。
まず、センサ表面にプロティンAを物理吸着させ、抗DNP抗体を結合させて免疫センサを構築する。そこに、抗原であるDNPと、DNPに分子量の大きな物質を結合させた標識DNPを一定量混ぜた液を流す。DNP濃度が低ければ、抗体と結合する標識DNPは多くなるので、得られる角度変化は大きくなる。逆に、DNP濃度が高ければ、それだけ抗体と結合する標識DNPは少なくなり、角度変化は小さくなる。その結果、DNP濃度が多くなるにしたがって角度変化が小さくなる検量線が得られる。これを競争法と言う。
【0039】
本発明では、標識物質の分子量が大きい方が大きな屈折率変化を得られるのではないかと考えて、一般的に用いられているDNP−BSA(分子量:6万9千)に加えDNP−γグロブリン(分子量:15万)及びDNP−ヘモシアニン(分子量:750万)を用いて、溶液中の標識DNP濃度は0〜10−6Mの範囲で変化させて測定を行い、その値を図4にて比較した。図4に示す結果から分かるように、DNP−ヘモシアニン(分子量:750万)を用いた場合、DNP−BSA(分子量:6万9千)及びDNP−γグロブリン(分子量:15万)を用いた場合に比べて7〜10倍大きな角度変化が得られ、この件では、高感度での測定が可能であることを示している。
【0040】
本発明によれば、ターゲット化合物が低分子量物質の場合にも、高い感度で測定できる、免疫センサ及びターゲット化合物の測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】テキサスインスツルメンツ社の Spreeta(スプリータ、登録商標) を横から見た図。
【図2】免疫センサを含む測定装置の概略図。
【図3】プロティンAを単独使用した測定方法の説明図。
【図4】DNP濃度0〜10−6Mの範囲での角度変化(SPR角)の測定結果。
【図5】プロティンA及び11−アミノ−1−ウンデカンチオールを使用した測定方法の説明図。
【図6】競争法の説明図。
【符号の説明】
1 免疫センサ
2 金薄膜
3 LED
4 シリコンフォトダイオードアレーセンサ
5 金鏡面
10 マイクロシリンジ
11 インジェクタ
12 シリンジポンプ
13 コントロールボックス
14 コンピューター
【発明の属する技術分野】
本発明は、競争法を用いた免疫検査法並びにそれに用いる免疫検査用プレート及び免疫センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
バイオセンサには、主として生体内に存在する低分子量物質(例えば、糖、有機酸、アルコール)を測定対象とする酵素センサと、病原菌、ウイルス、タンパク質、ペプチド、農薬、ダイオキシン、環境ホルモン、麻薬などを測定対象とする免疫センサとがある。
【0003】
表面プラズモン共鳴(SPR)現象を利用したセンサとして、テキサスインスツルメンツ社の Spreeta(スプリータ、登録商標)がある。SPRを利用したセンサは、リアルタイムな測定が可能であり、標識物質のB/F分離も不要であり、免疫センサとして利用すれば、病原菌等の測定には十分な感度を有するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
例えば、非特許文献1に記載のように、SPRを利用した免疫センサは、基板表面に抗ターゲット化合物抗体が固定化されている免疫検査用プレートとこの検査用プレート表面の表面プラズモン共鳴を測定するための装置とを含む。そして、抗ターゲット化合物抗体は、基板表面の金薄膜表面にプロティンAまたはプロティンGを介して、基板表面に固定化されている。この抗ターゲット化合物抗体を固定化した基板表面に接触させ、抗ターゲット化合物抗体と結合した標識分子結合ターゲット化合物を、表面プラズモン共鳴を用いて検出する。
【0005】
従来の免疫センサ及びターゲット化合物の測定方法では、例えば、非特許文献2に記載のように、標識分子として、アルブミンが使用されていた。しかし、ターゲット化合物が低分子量物質の場合、標識分子としてアルブミンを使用するのでは感度が不十分であり、より感度の高い測定方法及び免疫センサが望まれていた。
【0006】
【非特許文献1】M. Suzuki, F. Ozawa, W. Sugimoto, S. Aso; Analytical andBioanalytical Chemistry, Vol.372, No.2, 301−304, (2002)
【非特許文献2】N. Miura, K. Ogata, G. Sakai, T. Uda, N. Yamazoe, Chemistry Letters, 713(1997)
【0007】
そこで本発明は、ターゲット化合物が低分子量物質の場合にも、高い感度で測定できる、免疫センサ及びターゲット化合物の測定方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の通りである。
(1)基板表面に抗ターゲット化合物抗体が固定化されている免疫検査用プレートであって、前記抗ターゲット化合物抗体は、前記基板表面の金薄膜表面にスペーサー及びプロティンAまたはプロティンGを介して、基板表面に固定化されていることを特徴とする前記検査用プレート。
(2)スペーサーが長鎖アルキルを含む(1)に記載の検査用プレート。
(3)長鎖アルキルがウンデカンである(2)に記載の検査用プレート。
(4)ウンデカンが、11−アミノ−1−ウンデカンチオールの反応生成物である(3)に記載の検査用プレート。
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の検査用プレートとこの検査用プレート表面の表面プラズモン共鳴を測定するための装置とを含む免疫センサ。
(6)ターゲット化合物と標識分子を結合したターゲット化合物(以下、標識分子結合ターゲット化合物という)とを、抗ターゲット化合物抗体を固定化した基板表面に接触させ、抗ターゲット化合物抗体と結合した標識分子結合ターゲット化合物を、表面プラズモン共鳴を用いて検出することを含むターゲット化合物の測定方法であって、
前記標識分子がヘモシアニンであり、かつ
前記抗ターゲット化合物抗体が、基板表面の金薄膜表面にスペーサー及びプロティンAまたはプロティンGを介して基板表面に固定化されていることを特徴とする前記測定方法。
(7)スペーサーが長鎖アルキルを含む(6)に記載の測定方法。
(8)長鎖アルキルがウンデカンである(7)に記載の測定方法。
(9)ウンデカンが、11−アミノ−1−ウンデカンチオールの反応生成物である(8)に記載の測定方法。
(10)ターゲット化合物が低分子量化合物である(6)〜(9)のいずれか1項に記載の測定方法。
(11)ターゲット化合物と標識分子結合ターゲット化合物とを含む水溶液の流通下に、抗ターゲット化合物抗体を固定化した基板表面を置き、表面プラズモン共鳴による抗ターゲット化合物抗体と結合した標識分子結合ターゲット化合物の検出を連続的に行う、(6)〜(11)のいずれか1項に記載の方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
検査用プレート
本発明の免疫検査用プレートは、基板表面に抗ターゲット化合物抗体が固定化されており、前記抗ターゲット化合物抗体が、基板表面の金薄膜表面にスペーサー及びプロティンAまたはプロティンGを介して、基板表面に固定化されていることを特徴とする。
前記特許文献1及び2に記載の免疫検査用プレートは、抗ターゲット化合物抗体が、基板表面の金薄膜表面にプロティンAまたはプロティンGを介して、基板表面に固定化されている。即ち、金薄膜表面に直接固定されたプロティンAまたはプロティンGに抗ターゲット化合物抗体が結合している。
【0010】
それに対して、本発明の免疫検査用プレートでは、抗ターゲット化合物抗体は、スペーサーを介して、基板表面の金薄膜表面に固定されたプロティンAまたはプロティンGに結合している。これは、本発明の免疫検査用プレートを用いる測定方法では、標識分子として、従来使用されていたアルブミンより高分子量のヘモシアニンを使用することに起因する。標識分子としてヘモシアニンを使用した場合、金薄膜表面に直接固定されたプロティンAまたはプロティンGに結合した抗ターゲット化合物抗体に対する標識分子結合ターゲット化合物の反応性が低いことが、本発明者らの検討の結果分かった。
【0011】
それに対して、スペーサーを介して基板表面の金薄膜表面に固定されたプロティンAまたはプロティンGに結合した抗ターゲット化合物抗体に対しては、標識分子としてヘモシアニンを使用しても、高い反応性が得られることが判明した。
【0012】
スペーサーとしては、例えば、長鎖アルキルを含むものを挙げることができるが、これに制限されるものではない。長鎖アルキルは、例えば、炭素数6〜20のアルキルであることができ、長鎖アルキルは、例えば、ウンデカンであることが好ましい。
【0013】
スペーサーは、例えば、両端に反応性基を有する長鎖アルキルを用いて、一方の反応性基を基板表面の金薄膜表面に固定し、他方の反応性基をプロティンAまたはプロティンGに結合させることで、導入できる。金薄膜表面に反応し得る反応性基としては、例えば、チオール基を挙げることができ、プロティンAまたはプロティンGと反応し得る反応性基としては、例えば、アミノ基を挙げることができる。
【0014】
両端に反応性基を有する長鎖アルキルとしては、例えば、11−アミノ−1−ウンデカンチオール、6−アミノ−1−ヘキサンチオール及び8−アミノ−1−オクタンチオール等を挙げることができる。
【0015】
金薄膜表面と11−アミノ−1−ウンデカンチオールとは、11−アミノ−1−ウンデカンチオールの持つチオール基が金とメルカプチドを形成して結合する。この反応は、例えば、11−アミノ−1−ウンデカンチオールの2mMエタノール溶液と2時間、室温で行うことができる。
【0016】
次に、金薄膜表面にチオール基を介して結合した11−アミノ−1−ウンデカンチオールのアミノ基をグルタルアルデヒドで活性化し、プロティンAまたはプロティンGと結合させる。グルタルアルデヒドでの活性化は、5%グルタルアルデヒドと室温で2時間反応させることで行うことができる。グルタルアルデヒドでの活性化の後、例えば、0.1g/lのプロティンAまたはプロティンGを反応させることができる。
【0017】
プロティンAまたはプロティンGへの抗ターゲット化合物抗体の結合は、例えば、プロティンA及びプロティンGが抗体のFcフラグメントと特異的に結合することを利用して行い、例えば、以下のようにして実施できる。
例えば、プロティンAまたはプロティンGを結合させたところへ、10mg/Lの抗体溶液を加えることで、室温、中性条件下で抗体分子はプロティンAまたはプロティンGに結合する。
【0018】
抗ターゲット化合物抗体は、ターゲット化合物に応じて適宜選択することができ、ターゲット化合物としては、後述するように、各種低分子量化合物を挙げることができる。また、ターゲット化合物の種類によっては、抗ターゲット化合物抗体は市販品として入手可能である。
【0019】
免疫センサ
本発明の免疫センサは、上記本発明の免疫検査用プレートとこの検査用プレート表面の表面プラズモン共鳴を測定するための装置とを含む。
表面プラズモン共鳴を利用したセンサは、プリズムの上に形成した金薄膜の表面における屈折率変化を敏感に検出することを測定原理とする。プリズムに全反射が起きる条件で単色光を入射し、入射角に対する反射光の強度を調べる。このとき、金薄膜がプリズムの表面に形成される表面プラズモン共鳴現象により、臨界角より大きな入射角で光の吸収が起きる。光吸収が最大になる角度(共鳴角)は金薄膜の表面における屈折率に依存する。
【0020】
本発明の免疫センサについて、テキサスインスツルメンツ社の Spreeta(スプリータ、登録商標) を利用した例で説明する。図1にSpreetaを横から見た図を示す。
図1に示す免疫センサ1は、プリズムの上に形成した金薄膜2が、上記免疫検査用プレートに相当し、プリズムの上に形成した金薄膜に、11−アミノ−1−ウンデカンチオール及びプロティンAまたはプロティンGを介して抗ターゲット化合物抗体が固定されている。免疫センサ1は、さらに、光源となるLED3及びシリコンフォトダイオードアレーセンサ4を有する。
【0021】
測定に際しては、LED3からの近赤外光が表面プラズモン効果を増幅するために分極される。光ビームは免疫検査用プレート2表面にて反射され、さらに金鏡面5を介してシリコンフォトダイオードアレーセンサ4で検出される。免疫検査用プレート(金薄膜)2の入射光の角度は、フォトダイオードアレーセンサ4により特定される。
【0022】
測定方法
本発明のターゲット化合物の測定方法は、ターゲット化合物と標識分子結合ターゲット化合物とを、抗ターゲット化合物抗体を固定化した基板表面に接触させ、抗ターゲット化合物抗体と結合した標識分子結合ターゲット化合物を、表面プラズモン共鳴を用いて検出することを含むターゲット化合物の測定方法である。そして、第1の特徴は、前記標識分子がヘモシアニンであることである。標識分子がヘモシアニンであることで、ターゲット化合物が低分子量化合物であっても、高感度で測定することができる。ヘモシアニンは、従来使用されているアルブミンの約100倍の分子量を有する巨大分子である。標識分子としてヘモシアニンがターゲット化合物に結合することで、より大きな屈折率変化が得られることにより、高感度に表面プラズモン共鳴の測定が可能になる。
【0023】
さらに、第2の特徴は、前記抗ターゲット化合物抗体が、基板表面の金薄膜表面に11−アミノ−1−ウンデカンチオール及びプロティンAまたはプロティンGを介して基板表面に固定化されていることである。
この点は、上記免疫検査用プレートにつていの説明と同様である。
【0024】
本発明の測定方法において、抗ターゲット化合物抗体を固定化した基板表面に接触させるターゲット化合物と標識分子結合ターゲット化合物においては、標識分子結合ターゲット化合物の濃度は一定にしておく必要がある。この濃度を変えることで、ターゲット化合物の測定濃度範囲を調整できる。
【0025】
抗ターゲット化合物抗体と結合した標識分子結合ターゲット化合物の、表面プラズモン共鳴を用いた検出は、常法により行うことができる。
【0026】
本発明の測定方法においては、ターゲット化合物となり得る物質は特に制限されない。但し、本発明の測定方法は、ターゲット化合物が低分子量化合物である場合に、特に有利である。低分子量化合物とは、例えば、100〜1000程度の分子量を有する化合物であることができる。具体的には、ペプチド、ホルモン、各種農薬、覚せい剤、内分泌攪乱物質、ダイオキシン等を例示できる。
【0027】
ターゲット化合物とヘモシアニンとの結合は、例えば、以下のように行うことができる。
1mg/mlのターゲット化合物溶液に、1−エチル−3(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロライド(EDC)を10mg/mlとなるように加え、pHを5に調整する。室温で5分間放置後、同体積のヘモシアニン溶液を加え、室温で4時間放置する。pH4.2の酢酸ナトリウム溶液を100mMとなるように加えて反応を停止させ、室温で1時間放置した後、リン酸緩衝液に対して透析する。
【0028】
本発明の測定方法は、ターゲット化合物と標識分子結合ターゲット化合物とを含む水溶液の流通下に、抗ターゲット化合物抗体を固定化した基板表面を置き、表面プラズモン共鳴による抗ターゲット化合物抗体と結合した標識分子結合ターゲット化合物の検出を連続的に行うことができる。
【0029】
この方法を、図2を用いて具体的に説明する。
図2中、1が抗ターゲット化合物抗体を固定化した基板表面を含む本発明の免疫センサであり、ターゲット化合物と標識分子結合ターゲット化合物とを含む水溶液が10のマイクロシリンジに格納され、この水溶液はインジェクタ11により、必要によりシリンジポンプ12からの移送液とともに免疫センサ1に供給される。また、免疫センサ1からの廃液はペリスタポンプ(図示せず)により、免疫センサ1から排出される。これにより、抗ターゲット化合物抗体と結合した標識分子結合ターゲット化合物の表面プラズモン共鳴による検出を連続的に行うことができる。
尚、免疫センサ1からの表面プラズモン共鳴データはコンピューター14に取り込まれ、適宜データ処理に供される。また、コントロールボックス13は、電源供給、信号取り出し、及びパソコンとのインターフェースの役割を有する。
【0030】
尚、上記測定を行った後、例えば、pH3.0のGly−HClを免疫センサに注入することで、プロティンAまたはGから抗ターゲット化合物抗体を解離させ、このセンサを繰り返し測定に使用することができる。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
実施例1
(1) プロティンA単独使用
図3に示すように、プロティンA (ProteinA―Soluble Extra cellular (品番P―6031 SIGMA))が抗体のFcフラグメントと特異的に結合する事を利用し、金薄膜にプロティンAを物理的に吸着させて抗体を固定化した。DNP(ジニトロフェノール)(特級 品番045−03572 和光純薬工業)と抗体の解離が出来なかったので、抗体ごとDNP及び標識DNPを解離させて、再び抗体を結合させて繰り返し測定を行った。標識DNP としては、DNP−BSA (DNP−Albumin Conjugate,Bovine (品番324101 CALBIOCHEM))及びDNP−γグロブリン(DNP−γ−Globulin Conjugate,Bovine (品番324111 CALBIOCHEM))を用いた。
【0032】
以下に手順を示す。インジェクタ(レオダイン、タイプ7125 500μl)への注入はマイクロシリンジ(MS−500R イトー)を用い、試料は全て500μl注入した。流速は全て50μl/minで行った。
【0033】
(1)pH7.4 0.05Mのリン酸緩衝液をSPR角が安定するまで流した。
(2)インジェクターを用いて、0.1g/lのプロティンA(G)を注入し、金薄膜面に吸着させた。
(3)10g/lのカゼイン溶液を注入し、プロティンAの吸着していない金薄膜表面をブロッキングした。
(4)10mg/lの抗DNP抗体を注入し、プロティンAと結合させて免疫センサを構築した。
(5)測定を行った後、pH3.0のGly−HClを注入してプロティンAから抗体を解離させ、再び抗体を注入して結合させ、繰り返し測定を行った。
【0034】
上記手法を用いて、DNP濃度0〜10−6Mの範囲での標識DNP としてDNP−BSA及びDNP−γグロブリンを用いた場合のSPR角を求め、図4に示す。
【0035】
(2)プロティンA及び11−アミノ−1−ウンデカンチオールを使用
(1)で示したプロティンA再生法では、DNP−BSA及びDNP−γグロブリンを標識抗原として用いた競争法は実施できた。
しかし、標識DNP としてDNP−ヘモシアニン(DNP−Hemocyanin Conjugate,Keyhole Limpet(品番324121 CALBIOCHEM))を用いた場合、競争法は実施できなかった。これは、DNP−ヘモシアニンが他の2つに比べて分子が大きい事が原因ではないかと考えた。そこで、本発明の手法により、金薄膜表面に11−アミノ−1−ウンデカンチオールをつけ、グルタルアルデヒドでアミノ基をアルデヒド基にかえた後にプロティンAと結合させ、免疫センサを構築した。
この点を、図5を用いて説明する。流速は、11−アミノ−1−ウンデカンチオールをつけて、グルタルアルデヒドで活性化させるまではペリスタポンプを用いて100μl/minとし、それ以降は静水圧を利用した送液装置で50μl/minで行った。
【0036】
(1)ペリスタポンプを用いて、11−アミノ−1−ウンデカンチオールの2mMエタノール溶液を2時間、循環させた。
(2)金薄膜表面に付かなかった11−アミノ−1−ウンデカンチオールを、エタノールを10分間流して洗浄した。
(3)5%のグルタルアルデヒドを2時間循環させて、アミノ基をアルデヒド基に変えた。
(4)ペリスタポンプから静水圧を利用した送液装置に代えて、SPR角が安定するまでリン酸緩衝液を流した。
(5)インジェクタを用いて0.1g/lのプロティンAを500μl注入し、11−アミノ−1−ウンデカンチオールと結合させた。
(6)0.1MのTris−HClを注入し、プロティンAが結合しなかった11−アミノ−1−ウンデカンチオールのアルデヒド基をブロッキングした。
(1)の(4)(5)と同じ手順で、繰り返し測定を行った。
【0037】
上記手法を用いて、DNP濃度0〜10−6Mの範囲での標識DNP としてDNP−ヘモシアニンを用いた場合のSPR角を求め、図4に示す。
【0038】
本実施例の測定方法は、分子量の小さな物を,屈折率変化を増大させ、得られるSPR角の変化を大きくして測定する方法であって、低分子量物質としてDNP(分子量:184.11)を用いて、競争法で測定を行った。競争法について、図6を用いて説明する。
まず、センサ表面にプロティンAを物理吸着させ、抗DNP抗体を結合させて免疫センサを構築する。そこに、抗原であるDNPと、DNPに分子量の大きな物質を結合させた標識DNPを一定量混ぜた液を流す。DNP濃度が低ければ、抗体と結合する標識DNPは多くなるので、得られる角度変化は大きくなる。逆に、DNP濃度が高ければ、それだけ抗体と結合する標識DNPは少なくなり、角度変化は小さくなる。その結果、DNP濃度が多くなるにしたがって角度変化が小さくなる検量線が得られる。これを競争法と言う。
【0039】
本発明では、標識物質の分子量が大きい方が大きな屈折率変化を得られるのではないかと考えて、一般的に用いられているDNP−BSA(分子量:6万9千)に加えDNP−γグロブリン(分子量:15万)及びDNP−ヘモシアニン(分子量:750万)を用いて、溶液中の標識DNP濃度は0〜10−6Mの範囲で変化させて測定を行い、その値を図4にて比較した。図4に示す結果から分かるように、DNP−ヘモシアニン(分子量:750万)を用いた場合、DNP−BSA(分子量:6万9千)及びDNP−γグロブリン(分子量:15万)を用いた場合に比べて7〜10倍大きな角度変化が得られ、この件では、高感度での測定が可能であることを示している。
【0040】
本発明によれば、ターゲット化合物が低分子量物質の場合にも、高い感度で測定できる、免疫センサ及びターゲット化合物の測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】テキサスインスツルメンツ社の Spreeta(スプリータ、登録商標) を横から見た図。
【図2】免疫センサを含む測定装置の概略図。
【図3】プロティンAを単独使用した測定方法の説明図。
【図4】DNP濃度0〜10−6Mの範囲での角度変化(SPR角)の測定結果。
【図5】プロティンA及び11−アミノ−1−ウンデカンチオールを使用した測定方法の説明図。
【図6】競争法の説明図。
【符号の説明】
1 免疫センサ
2 金薄膜
3 LED
4 シリコンフォトダイオードアレーセンサ
5 金鏡面
10 マイクロシリンジ
11 インジェクタ
12 シリンジポンプ
13 コントロールボックス
14 コンピューター
Claims (11)
- 基板表面に抗ターゲット化合物抗体が固定化されている免疫検査用プレートであって、前記抗ターゲット化合物抗体は、前記基板表面の金薄膜表面にスペーサー及びプロティンAまたはプロティンGを介して、基板表面に固定化されていることを特徴とする前記検査用プレート。
- スペーサーが長鎖アルキルを含む請求項1に記載の検査用プレート。
- 長鎖アルキルがウンデカンである請求項2に記載の検査用プレート。
- ウンデカンが、11−アミノ−1−ウンデカンチオールの反応生成物である請求項3に記載の検査用プレート。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の検査用プレートとこの検査用プレート表面の表面プラズモン共鳴を測定するための装置とを含む免疫センサ。
- ターゲット化合物と標識分子を結合したターゲット化合物(以下、標識分子結合ターゲット化合物という)とを、抗ターゲット化合物抗体を固定化した基板表面に接触させ、抗ターゲット化合物抗体と結合した標識分子結合ターゲット化合物を、表面プラズモン共鳴を用いて検出することを含むターゲット化合物の測定方法であって、
前記標識分子がヘモシアニンであり、かつ
前記抗ターゲット化合物抗体が、基板表面の金薄膜表面にスペーサー及びプロティンAまたはプロティンGを介して基板表面に固定化されていることを特徴とする前記測定方法。 - スペーサーが長鎖アルキルを含む請求項6に記載の測定方法。
- 長鎖アルキルがウンデカンである請求項7に記載の測定方法。
- ウンデカンが、11−アミノ−1−ウンデカンチオールの反応生成物である請求項8に記載の測定方法。
- ターゲット化合物が低分子量化合物である請求項6〜9のいずれか1項に記載の測定方法。
- ターゲット化合物と標識分子結合ターゲット化合物とを含む水溶液の流通下に、抗ターゲット化合物抗体を固定化した基板表面を置き、表面プラズモン共鳴による抗ターゲット化合物抗体と結合した標識分子結合ターゲット化合物の検出を連続的に行う、請求項6〜11のいずれか1項に記載の方法。
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JP2002277186A JP2004117026A (ja) | 2002-09-24 | 2002-09-24 | 免疫センサ及びこのセンサを用いる測定方法 |
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Cited By (1)
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---|---|---|---|---|
JP2010164513A (ja) * | 2009-01-19 | 2010-07-29 | Fujifilm Corp | 抗体固定基板、並びに該抗体固定基板の製造方法及び利用 |
-
2002
- 2002-09-24 JP JP2002277186A patent/JP2004117026A/ja active Pending
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