JP2004116621A - 車両用制動力制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ブレーキシューの磨耗量のチェックに要する処理時間の短縮を図る。
【解決手段】速度検出器7で検出した車輪の回転速度又は速度検出器8で検出した電動機の回転速度に基づく車輪の回転速度と、機械ブレーキ力検出器10で検出した実際の機械ブレーキ力との積を算出し、これを逐次積分して、データ保存器11に格納する。ブレーキシューの磨耗量は、機械ブレーキ力の発生に伴い消費エネルギに略近似し、消費エネルギは、機械ブレーキ力とこの機械ブレーキ力が発生しているときの車輪の回転速度との積から推定することができるから、これら積を逐次算出しこれを逐次積分することによりトータルの消費エネルギを推定することができ、これからブレーキシューの磨耗量を推定することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】速度検出器7で検出した車輪の回転速度又は速度検出器8で検出した電動機の回転速度に基づく車輪の回転速度と、機械ブレーキ力検出器10で検出した実際の機械ブレーキ力との積を算出し、これを逐次積分して、データ保存器11に格納する。ブレーキシューの磨耗量は、機械ブレーキ力の発生に伴い消費エネルギに略近似し、消費エネルギは、機械ブレーキ力とこの機械ブレーキ力が発生しているときの車輪の回転速度との積から推定することができるから、これら積を逐次算出しこれを逐次積分することによりトータルの消費エネルギを推定することができ、これからブレーキシューの磨耗量を推定することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、摩擦力を利用して制動力を発生するようにした機械ブレーキ力発生手段を備えた車両用制動力制御装置に関し、特に、機械ブレーキ発生手段の摩擦部材の磨耗量を容易に推定するようにした車両用制動力制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、鉄道車両用のブレーキとして、電気ブレーキ、機械ブレーキ等が知られている。前記電気ブレーキの代表的なものとしては、駆動力を発生させるための駆動用電動機を発電機として動作させ、車軸に制動トルクを与えて、車両を減速、停止させるものがある。
【0003】
また、機械ブレーキとしては、圧縮空気や油圧等によって、機械的にブレーキシューを車輪の踏面やブレーキ用ディスク等に押し付けて摩擦力を発生させ、これによって車両を減速させ、停止させるものがある。
そして、例えば、電気ブレーキ及び機械ブレーキを備えた電動車1両と、機械ブレーキのみを備えた付随車2両との3両編成の場合には、各車両の重量を荷重検出器でそれぞれ検出し、この各検出値と運転手の操作等により与えられる運転指令とに基づいて、編成全体として必要なブレーキ力を算出すると共に、この算出した必要ブレーキ力と電動車の重量とから、電気ブレーキで発生すべきブレーキ力を算出している。そして、この電気ブレーキで発生すべき指令値に基づき、駆動用電動機を制御し指定された電気ブレーキ力を発生させると共に、実際に発生している電気ブレーキ力を算出し、必要ブレーキ力と電気ブレーキ力の実際値との差から、機械ブレーキで補足すべき機械ブレーキ力を演算し、これを、各車両の重量、電動車の電気ブレーキ力実際値等に基づいて各車両の機械ブレーキで発生すべき機械ブレーキ力を割り振り、これにしたがって、各車両の機械ブレーキで指定された機械ブレーキ力を発生させるようにしている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
【非特許文献1】
「最新 電気鉄道工学」コロナ社、2000年9月、p.67−78
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、摩擦によってブレーキ力を発生させるようにした方法においては、車輪或いはブレーキ用ディスクにブレーキシュー等の摩擦部材を押し当てて摩擦力を発生させるため、ブレーキシュー等の摩擦部材は、ブレーキをかける度に磨耗していく。このため、摩擦部材の磨耗状態を監視することが重要である。
【0006】
ところで、電気ブレーキは、電気ブレーキ力指令値とは無関係に駆動用電動機へ給電するための電源の状態等に応じてブレーキ力を絞り込む機能が設けられているため、その時々の状態に応じて電気ブレーキ力の実際値は、大きく変化する。このため、機械ブレーキ側で補足すべき機械ブレーキ力も大きく変化することになる。
【0007】
また、発生すべき必要ブレーキ力や、ブレーキをかける頻度は、乗客の乗車具合や、普通列車であるか特急列車であるかといった運用状態、運転手の運転の仕方等にも依存する。
したがって、ブレーキシューの磨耗量を推定するには、走行距離等といった単純な情報だけでは困難である。
【0008】
このため、現状では、定期検査等の機会に検査員がブレーキシューの磨耗状態等を測定して、メンテンナンスの要否等を全数チェックするようにしている。
しかしながら、各車両には多数のブレーキシューが配置されているため、このブレーキシューの検査に膨大な時間がかかってしまうという問題がある。
また、電気車と付随車等、機械ブレーキの使用頻度は各車両によって異なることから、ブレーキシューの磨耗量に大きなばらつきが生じる場合がある。このため、最大の磨耗量を想定して定期点検を行わなければならず、比較的短い周期で点検を行わなければならないという問題もある。
【0009】
そこで、この発明は、上記従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、容易且つ的確に機械ブレーキの摩擦部材の磨耗量を推定することの可能な車両用制動力制御装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る車両用制動力制御装置は、車輪又は車輪と一体に回転する回転体に摩擦部材を押し付けて制動力を発生する機械ブレーキ力発生手段を備えた車両用制動力制御装置において、前記機械ブレーキ力発生手段により発生される制動力を検出する制動力検出手段と、当該制動力検出手段により前記制動力を検出した時の前記車輪又は前記回転体の回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記制動力検出手段で検出した検出制動力と前記回転速度検出手段で検出した検出回転速度との積を算出し、これを積分して前記摩擦部材の磨耗量に応じた磨耗量相当値を算出する磨耗量相当値算出手段と、を備えることを特徴としている。
【0011】
また、請求項2に係る車両用制動力制御装置は、請求項1に記載の前記機械ブレーキ力発生手段は、指定された目標制動力に応じた制動力を発生し、前記制動力検出手段は、前記検出制動力として前記目標制動力を検出することを特徴としている。
また、請求項3に係る車両用制動力制御装置は、請求項2に記載の車両用制動力制御装置において、車両の荷重を検出する車両荷重検出手段を備え、前記機械ブレーキ力発生手段は、非常作動指示が行われたとき前記目標制動力に替えて前記車両荷重検出手段で検出された車両荷重に応じた非常用制動力を発生し、前記制動力検出手段は、前記非常作動指示が行われたとき前記車両荷重検出手段で検出された車両荷重に基づいて前記機械ブレーキ力発生手段で発生される非常用制動力を推定する非常用制動力推定手段を有し、前記非常作動指示が行われたときには前記目標制動力に替えて前記非常用制動力推定手段で推定した非常用制動力推定値を前記検出制動力として設定するようになっていることを特徴としている。
【0012】
また、請求項4に係る車両用制動力制御装置は、請求項1乃至3の何れかに記載の車両用制動力制御装置は、1又は複数の、前記車輪又は前記回転体を同一の制御グループとし、つまり1又は複数の車輪を同一の制御グループ、或いは1又は複数の回転体を同一の制御グループとし、この制御グループ内の車輪又は回転体に対し、同一の制動力を付与するようにした車両用制動力制御装置であって、前記回転速度検出手段は、前記制御グループ内の車輪又は回転体の回転速度の代表値を検出し、前記磨耗量相当値算出手段は、前記制御グループの前記回転速度の代表値に基づいて前記制御グループの前記磨耗量相当値の代表値を算出することを特徴としている。
【0013】
また、請求項5に係る車両用制動力制御装置は、請求項4記載の前記回転速度検出手段は、前記制御グループ内の各車輪又は各回転体の回転速度を検出し、検出した回転速度のうちの最大値を前記回転速度の代表値として設定するようになっていることを特徴としている。
また、請求項6に係る車両用制動力制御装置は、請求項4記載の前記回転速度検出手段は、前記制御グループ内の各車輪又は各回転体の回転速度を検出し、検出した回転速度の平均値を前記回転速度の代表値として設定するようになっていることを特徴としている。
【0014】
また、請求項7に係る車両用制動力制御装置は、請求項4乃至6の何れかに記載の車両用制動力制御装置は、前記磨耗量相当値算出手段で算出した前記制御グループ毎の前記磨耗量相当値の代表値又は当該代表値に基づく前記磨耗量に基づき、前記磨耗量相当値の代表値又は当該代表値に基づく前記磨耗量がより大きい制御グループの車輪又は回転体に対して付与される制動力をより小さな値に補正し、且つ前記磨耗量相当値の代表値又は当該代表値に基づく前記磨耗量がより小さい制御グループの車輪又は回転体に対して付与される制動力をより大きな値に補正する補正手段、を備えることを特徴としている。
【0015】
また、請求項8に係る車両用制動力制御装置は、請求項1乃至7の何れかに記載の車両用制動力制御装置は、前記磨耗量相当値又は当該磨耗長相当値に基づく前記磨耗量が規定値を超えたとき、警報を発する警報発生手段、を備えることを特徴としている。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
まず、第1の実施の形態を説明する。
図1は、第1の実施の形態における車両用制動力制御装置を適用した電気車のブレーキ制御システムの一例を示したものである。
【0017】
このブレーキ制御システムは、電気ブレーキ及び機械ブレーキにより制動力を発生させることの可能な電動車100と、機械ブレーキのみにより制動力を発生させることの可能な付随車200及び300の計3両で、1つの編成を構成している。各車両には、4つの車輪があり、全ての車両の全ての車輪で機械ブレーキによる制動力(以後、機械ブレーキ力ともいう。)を発生することができるように構成されている。また、電動車100においては、4つの車輪において電気ブレーキによる制動力(以後、電気ブレーキ力ともいう。)も発生することができるように構成されている。
【0018】
なお、ここでは、機械ブレーキによる制動力は車両単位で制御し、各車両内の各車輪では同一の制動力を発生するものとする。
図1において、1は荷重検出器であって、各車両に設けられ、乗客数等によって変化する各車両の重量を検出する。これら各荷重検出器1の検出値は、電動車100に搭載された必要ブレーキ力演算器2に入力される。
【0019】
この必要ブレーキ力演算器2では、運転手の操作等によって入力される運転指令に基づいて、編成全体で必要とする、必要ブレーキ力FN を演算する。また、必要ブレーキ力演算器2では、算出した必要ブレーキ力FN と電動車100の車両重量とに基づいて、電気ブレーキにより発生させる制動力の指令値として、電気ブレーキ力指令値SE を演算し、これを車両駆動装置3に出力する。
【0020】
この車両駆動装置3では、運転手の操作等によって入力される運転指令及び、駆動用電動機4の回転速度を検出する電動機回転速度検出器8の検出信号に基づいて、前記駆動用電動機4を駆動制御し、この駆動用電動機4とギヤ等を介して接続された、図示しない各車輪を駆動する。また、電気ブレーキ力指令値SE に基づき、電動車100の各駆動用電動機4で発生可能な電気ブレーキ力を発生させると共に、実際に発生している電気ブレーキ力実際値VE を逐次演算する。この電気ブレーキ力実際値VE の算出は、例えば駆動用電動機4が誘導電動機の場合には、公知のベクトル制御の理論に基づいて、車両駆動装置3内で検出した駆動用電動機4の電流を磁化電流とトルク電流とにベクトル分解し、これらから駆動用電動機4の発生トルクを求める。そして、駆動用電動機4と図示しない車輪との間のギヤ比を、車輪の半径で割り算した[ギヤ比/車輪の半径]を乗じて、その車輪のブレーキ力を求める。この演算を車輪毎に行い、その結果を合計することにより算出する。つまり、図1の場合には、4輪についてそれぞれブレーキ力を求め、これら4輪のブレーキ力の合計を算出する。
【0021】
補足ブレーキ力演算器5は、必要ブレーキ力演算器2で算出した必要ブレーキ力FN と、車両駆動装置3で算出した電気ブレーキ力実際値VE との差から、機械ブレーキで補足すべき機械ブレーキ力を演算し、この補足機械ブレーキ力と、各車両の重量と、電動車100で発生した電気ブレーキ力実際値VE とに基づいて、前記補足機械ブレーキ力を各車両に割り振り、これを機械ブレーキ力指令値SM1〜SM3として各車両に搭載された機械ブレーキ制御器6に出力する。
【0022】
前記補足機械ブレーキ力の割り振りは、例えば次のように行う。すなわち、前記補足機械ブレーキ力が、各付随車毎にその重量に応じて設定された機械ブレーキ力の制限値の合計値に達していない場合には、各付随車のみに、各付随車両の機械ブレーキ力と各付随車両の重量との比(=各付随車両の機械ブレーキ力/各付随車両の重量)が一定となるように補足機械ブレーキ力を分配する。また、補足機械ブレーキ力が、前記各付随車毎の機械ブレーキ力の制限値の合計値を超える場合には、その超える分を電動車100に配分する。
【0023】
各車両の機械ブレーキ制御器6では、機械ブレーキ力指令値SM1〜SM3に基づいて車両内の4つの車輪に対して、例えばブレーキシューを車輪の踏面に押し付け、各車輪に対して機械ブレーキによる均一な制動力を付与する。
また、付随車200及び300には、各車輪毎に、車輪の回転速度を検出する車輪速度検出器7が設けられ、付随車200及び300に搭載された各機械ブレーキ制御器6では、各車輪速度検出器7の検出信号に基づいて、各車輪に対して機械ブレーキ力付与中に生じる車輪の滑走の有無を検知し、車輪の滑走を検知したときには、各車両毎に全車輪の機械ブレーキ力を絞り込んで再び粘着状態に戻す等といった、公知の制御も行う。
【0024】
また、電動車100には、各駆動用電動機4毎に、電動機の回転速度を検出する電動機速度検出器8が設けられ、電動車100に搭載された機械ブレーキ制御器6では、駆動用電動機4と各車輪との間に設けられている図示しないギヤのギヤ比を考慮して、各電動機速度検出器8の検出値を各車輪の回転速度に変換し、この算出した各車輪の回転速度に基づいて、付随車200、300と同様に、車輪の滑走に対する機械ブレーキ力の絞込を行う。
【0025】
さらに各車両には、各車輪毎に設けられ且つ各車輪における制動力の発生に伴う消費エネルギを算出するための消費エネルギ演算器9と、各車輪で実際に発生される実際の機械ブレーキ力を検出する機械ブレーキ力検出器10が搭載されている。この機械ブレーキ力検出器10は、例えば、機械ブレーキ制御器6が、空気ブレーキを用いて機械ブレーキ力を発生させる場合には、ブレーキシューを動かすブレーキシリンダの空気圧を検出し、予め求めた、この空気圧と空気ブレーキ力との関係に基づいて、実際に発生された機械ブレーキ力を検出する。
【0026】
なお、図1の場合には、一つの車両内の各車輪に対し同一の制動力を付与するように制御を行っているため、ここでは、代表値として何れか一つの車輪における機械ブレーキ力を検出している。例えば、一つの車両内の各車輪に対する機械ブレーキ力も個別に制御するようにした場合等、機械ブレーキ力の制御単位が異なる場合には、その制御単位毎に機械ブレーキ力を検出するようにすればよい。
【0027】
前記消費エネルギ演算器9では、各車輪に対して機械ブレーキ制御器6によって機械ブレーキ力が付与されている間に、前記機械ブレーキ力検出器10で検出された車輪への機械ブレーキ力の実際値と、車輪速度検出器7で検出した各車輪の回転速度又は電動機速度検出器8で検出された電動機速度に基づいて演算した各車輪の回転速度とを車輪毎に乗算し、この乗算結果を車輪毎に逐次積分する。そして、各車両で検出した車輪毎の乗算結果の積分値を、データ保存器11に格納する。なお、このデータ保存器11に格納したデータは、データ読み出し器12で読み出すことができるようになっている。
【0028】
ここで、ブレーキシューの磨耗量は、近似的に、機械ブレーキによって消費されるエネルギと比例関係にあることが知られている。また、機械ブレーキで消費されるエネルギは、機械ブレーキにより作用した制動力と、ブレーキシューを押し付けた車輪の回転速度とから、次式(1)で算出することができる。
消費エネルギ=∫{〔機械ブレーキ力〕×〔速度〕}dt ……(1)
したがって、機械ブレーキ力検出器10で検出された機械ブレーキ力の実際値と、車輪速度検出器7又は電動機速度検出器8で検出された電動機速度に基づいて演算した各車輪の回転速度とを乗算し、この乗算結果を逐次積分することによって、各車輪における消費エネルギが推定され、すなわち、ブレーキシューの磨耗量に応じた値が算出されることになる。
【0029】
つまり、データ保存器11には、各車両の各車輪毎に設けられた消費エネルギ検出器9で算出した、各車輪の消費エネルギが格納されるから、定期検査時等には、このデータ保存器11に格納された各車輪の消費エネルギを、データ読み出し器12を用いて読み出すことによって各車輪の消費エネルギを認識することができ、つまり、ブレーキシューの磨耗量を推定することができる。
【0030】
したがって、従来のように、定期検査時等には、全ての車輪についてブレーキシューの磨耗量をチェックする必要はなく、データ保存器11に格納されている各車輪の消費エネルギを参照するだけで、磨耗量のチェックを行うことができるから、ブレーキシューの磨耗量のチェックに要する処理時間を、従来に比較して大幅に短縮することができる。
【0031】
また、ブレーキは、安全上重要な設備であることから、必要ブレーキ力に対して実際に発生しているブレーキ力が不足する等といったブレーキの異常を検出するために、異常検出等の目的で、実際の機械ブレーキ力を検出するための機械ブレーキ力検出器10が搭載されている場合がある。したがって、このように機械ブレーキ力検出器10が既に搭載されている車両においては、機械ブレーキ力検出器10を新たに設けることなく実現することができる。
【0032】
また、このように、データ保存器11に格納されている各車両の消費エネルギを参照するだけで磨耗量をチェックすることができるから、例えば、データ読み出し器12を運転席の近傍に設けておき、定期的にこれをチェックすることによって、各ブレーキシューの磨耗量を容易に検出することができる。
また、定期的に磨耗量をチェックすることによって、ブレーキシューの取り替え時期を予測することができるから、これに合わせてブレーキシューの調達を行うことによって調達の効率化を図ることができると共に、ブレーキシューの保管数の削減等を図ることができ、ブレーキシューを効率よく運用することができる。
【0033】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。
この第2の実施の形態は、図2に示すように、図1に示す第1の実施の形態において、機械ブレーキ力検出器10を取り除いたものである。
そして、消費エネルギ演算器9では、機械ブレーキ力指令値SM1〜SM3をもとに、消費エネルギを演算する。
【0034】
つまり、機械ブレーキは、電気ブレーキのように、給電される電源等といった、他の状態に応じてブレーキ力が操作されることはなく、滑走や、危険回避等の際に機械ブレーキ力指令SM1〜SM3に関係なく、各車両で機械ブレーキ力を発生させる非常ブレーキ時等の特別な場合を除き、指令値どおりのブレーキ力を発生させる。つまり、上述のような特別な状況を除けば実際に発生している機械ブレーキ力は、ほぼ機械ブレーキ力の指令値と等しいとみなすことができる。
【0035】
したがって、機械ブレーキ力検出器10で検出される実際に発生される機械ブレーキ力に代えて、機械ブレーキ力の指令値SM1〜SM3に基づいて消費エネルギを演算することによって、上記第1の実施の形態と同等に消費エネルギを算出することができる。
これによって、機械ブレーキ力検出器10を搭載していない車両用制動力制御装置であっても、新たに機械ブレーキ力検出器10を搭載することなく実現することができ、その分、コスト削減を図ることができる。
【0036】
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。
この第3の実施の形態は、上記第2の実施の形態において、非常ブレーキ操作に伴うブレーキシューの磨耗も考慮するようにしたものである。
この第3の実施の形態は、図3に示すように、図2に示す第2の実施の形態において、非常ブレーキ指令により非常ブレーキの作動指示が行われたときに、機械ブレーキ制御器6により発生される機械ブレーキ力の実際値を算出する非常ブレーキ力演算器20が新たに設けられている。
【0037】
ここで、電動車100では、運転手等により非常ブレーキの作動操作が行われた場合、電気ブレーキは作動させずに、機械ブレーキのみを発生させるようになっており、電動車100及び付随車200、300の各機械ブレーキ制御器6では、運転手等により、非常ブレーキの作動操作が行われ、これによって非常ブレーキ指令が通知されると非常ブレーキの作動操作が解除されるまでの間、前記機械ブレーキ力の指令値SM1〜SM3に関わらず、減速度が一定となるように、荷重検出器1で検出された車両の重量に応じて機械ブレーキ力を発生させる。これによって、非常ブレーキの作動操作が行われたときには、運転指令に関わらず、車両の重量の応じた機械ブレーキ力が強制的に発生されるようになっている。
【0038】
そして、前記非常ブレーキ力演算器20は、非常ブレーキの作動操作が行われ非常ブレーキ指令が通知されると、非常ブレーキの作動操作が解除されるまでの間、前記荷重検出器1の検出値に基づいて、各車両で発生しているはずの機械ブレーキ力を各車両毎に算出し、これを消費エネルギ演算器9に出力する。
この機械ブレーキ力の算出は、次のように行う。つまり、非常ブレーキ時の各車両における機械ブレーキ力は、例えば、その車両の重量がある値Mである場合に、一定の減速度とするために必要な機械ブレーキ力をFM とすると、次式(2)から算出することができる。
【0039】
〔非常ブレーキ時の機械ブレーキ力〕
=〔FM /M〕×〔非常ブレーキ時の車両重量〕 ……(2)
したがって、〔FM /M〕を予め算出しておき、この値と荷重検出器1で検出される車両の重量とをもとに、非常ブレーキ時の機械ブレーキ力を算出する。
前記消費エネルギ演算器9では、非常ブレーキ力演算器20から非常ブレーキ操作による機械ブレーキ力が通知されると、この通知された機械ブレーキ力と、車輪速度検出器7又は電動機速度検出器8で検出された電動機速度に基づいて演算した各車輪の回転速度とを乗算し、この乗算結果についても逐次積分する。
【0040】
つまり、消費エネルギ演算器9では、運転指令に応じて発生される機械ブレーキ力による消費エネルギと非常ブレーキ指令に伴って発生される機械ブレーキ力による消費エネルギとの総和を算出するから、すなわち、非常ブレーキに伴うブレーキシューの磨耗量も考慮した消費エネルギを得ることができる。
したがって、非常ブレーキを用いる頻度が比較的多く、非常ブレーキによるブレーキシューの磨耗を無視することができないような場合であっても、ブレーキシューの磨耗量を高精度に推定することができる。
【0041】
次に、本発明の第4の実施の形態を説明する。
この第4の実施の形態は、図4に示すように、上記第2の実施の形態において、各車両毎に、車輪速度検出器7又は電動機速度検出器8の検出値の最大値を選択するための最大値選択器13を設けている。また、各車輪毎に設けられた消費エネルギ検出器9に代えて、前記最大値選択器13で選択した速度に基づいて消費エネルギを算出する消費エネルギ検出器9aを設けている。そして、この消費エネルギ検出器9aでは、最大値選択器13で選択した、各車輪の回転速度のうちの最大値と、各車両に対応する機械ブレーキ力指令値SM1〜SM3とに基づいて、消費エネルギを算出し、これをデータ保存器11に格納する。
【0042】
ここで、各車輪に対し、車両単位でブレーキ力の制御が行われ、各車輪では、同一の機械ブレーキ力を発生するように制御されている。
各車輪の速度は、滑走による車速の誤差が生じる程度であって、この誤差は頻繁に発生するものではない。よって、速度誤差が消費エネルギの算出に及ぼす影響は小さいものとみなすことができる。
【0043】
したがって、機械ブレーキ制御の単位内、つまり、この場合には、車両内で、1つの代表した車輪の回転速度に基づいて消費エネルギを推定しこれに基づきブレーキシューの磨耗量を推定することによって、各車輪毎の回転速度に基づいて消費エネルギを算出する場合と同等の演算結果を得ることができ、演算を簡素化することができる。
【0044】
また、このとき、代表する回転速度として、最大速度を選択するようにしているから、ほぼ制御単位内の最大磨耗量を求めることができる。このとき、最小速度に基づいて磨耗量を推定した場合には、車両単位の磨耗量としては、実際の磨耗量よりも小さくなる傾向に算出されることになり、この磨耗量に基づいて処理を行った場合、実際よりも小さな磨耗量に基づいて処理が行われる場合も考えられるが、最大速度に基づいて算出することによって、実際の磨耗量よりも大きくなる傾向に算出されるから、これに基づいて処理を行うことによって、磨耗に対する対処を早めに行うことができる。
【0045】
なお、ここでは、車輪の回転速度の最大値を代表値として消費エネルギを算出するようにした場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、車輪の回転速度の平均値を代表値として用いるようにしてもよく、このように平均値に基づいて消費エネルギを算出することによって、車両毎のブレーキシューの平均磨耗量を算出することができる。
【0046】
また、車両毎に磨耗量の代表値を算出することによって、算出負荷を低減することができると共に、データ保存器11で保存するデータ量も削減することができるから効果的である。
なお、上記第4の実施の形態においては、上記第2の実施の形態に適用した場合について説明したが、上記第1或いは第3の実施の形態に適用することができることはいうまでもない。
【0047】
また、上記第4の実施の形態においては、各車輪の回転速度を検出し、その最大値を代表値とするようにした場合について説明したが、これに限らず、例えば、何れかの車輪についてのみ回転速度を検出し、この回転速度を代表値として設定するようにすることも可能である。この場合、代表値に基づく磨耗量と、実際の各車輪に対応するブレーキシューの磨耗量とのばらつきが大きくなる場合があるが、磨耗量の許容範囲をより厳しく設定し、磨耗量に対して検査或いは交換等の対処を早めに行うようにすればよい。
【0048】
次に、本発明の第5の実施の形態を説明する。
この第5の実施の形態は、図5に示すように、上記第4の実施の形態において、さらに、比較器14及びこの比較器14の比較結果に応じて警報を発するアラーム表示器15を追加したものである。
前記比較器14は、前記各消費エネルギ検出器9で検出された消費エネルギを入力し、これら各消費エネルギと規定値とを比較する。この規定値は、消費エネルギから推測されるブレーキシューの磨耗量が許容範囲であるとみなすことの可能な値に基づいて設定される。
【0049】
そして、比較器14での比較の結果、各車両毎の消費エネルギの何れか一つでも規定値を超えるときには、アラーム信号を発生する。前記アラーム表示器15は、例えば、運転席近傍に配置され、前記比較器14からアラーム信号を受信したとき、磨耗量が許容範囲を超えたことを通知するための表示を行い、運転手にこれを通知する。
【0050】
なお、このとき、何れの車両の磨耗量が規定値を超えているかを表示するようにしてもよく、また、各車両の磨耗量を表示するようにしてもよい。
このように、磨耗量が規定値を超えた場合には、これが自動的に検出されて通知されるから、例えば、走行状況等によって磨耗が非常に進んだ場合等、定期検査の間隔内に、磨耗量が規定値を超えた場合等であっても、速やかにこれを検出することができ、予想外に磨耗が進んだような場合であっても的確にこれを検知することができる。
【0051】
なお、上記第5の実施の形態においては、上記第4の実施の形態に適用した場合について説明したが、これに限らず、上記第1〜第3の実施の形態に適用することも可能であり、この場合には、各消費エネルギ検出器9で検出された各車輪毎の消費エネルギ毎に、比較器14において規定値を比較するようにすればよい。
【0052】
また、上記第5の実施の形態においては、消費エネルギが規定値を超えた場合に警報を発するようにした場合について説明したが、消費エネルギに基づいて磨耗量を推定し、この磨耗量と磨耗量の規定値とを比較することによって、警報を発生させるようにしてもよいことはいうまでもない。
次に、本発明の第6の実施の形態を説明する。
【0053】
この第6の実施の形態は、図6に示すように、上記第4の実施の形態において、データ保存器11に格納された、付随車200及び300の消費エネルギつまり磨耗量に基づいて、付随車200及び300への機械ブレーキ力指令値SM2及びSM3の補正量ΔF1、ΔF2を算出する機械ブレーキ力補正量演算器16と、この機械ブレーキ力補正量演算器16で算出した補正量ΔF1、ΔF2に応じて付随車200及び300への機械ブレーキ力指令値をそれぞれ補正するための加算器17を備えている。
【0054】
そして、前記機械ブレーキ力補正量演算器16では、データ保存器11に格納された前記付随車200及び300の消費エネルギつまり積分値を比較し、これらのうちの何れか大きい方に基づいて、補正量を算出する。例えば、積分値が大きい方の付随車をCmax 、小さい方の付随車をCmin とすると、付随車Cmax への機械ブレーキ力指令値補正量ΔFmax 、付随車Cmin への機械ブレーキ力指令値補正量ΔFmin は、次式(3)に基づき算出する。
【0055】
ΔFmin =−ΔFmax
=〔付随車Cmax 用機械ブレーキ力指令値〕×10% ……(3)
そして、このようにして算出した、補正量ΔFmax 及びΔFmin を、それぞれ対応する加算器17において、機械ブレーキ力指令値に加算する。
つまり、付随車200及び300における磨耗量が等しくなる方向に、機械ブレーキ力指令値の補正を行う。
【0056】
なお、前記補正量の算出は、運転手の操作等による運転指令が行われたときに行う。つまり、運転指令によって制動が指示されたときに、データ保存器11に格納された付随車200、300の消費エネルギに基づいて補正量を算出する。そして、制動が指示されている間、制動が指示された時点における補正量に基づいて補正を行う。
【0057】
したがって、この第6の実施の形態においては、走行状態等によって、付随車200及び300との間の磨耗量に差が生じた場合には、これらの差に応じて機械ブレーキ力指令値SM2及びSM3が補正され、磨耗がより進んでいる付随車においては、機械ブレーキ力指令値が小さくなる方向に補正されることから、磨耗の進みが遅くなり、逆に磨耗がより小さい付随車においては、機械ブレーキ力指令値が大きくなる方向に補正される。
【0058】
したがって、磨耗量が均等になるように補正されることになり、電動車に比べて磨耗が激しい付随車間で磨耗量に差が生じることに起因して、磨耗量が規定値に達する時期にバラツキを生じ、ブレーキシュー交換のために、交換作業場へ頻繁に入場させ、運用を休止する等といったことが生じることを回避することができる。すなわち、磨耗量がほぼ均等となるように補正を行うことによって、一度に全付随車のブレーキシュー交換が可能となり、ブレーキシューの交換作業のために、運用を休止する頻度を低減することができる。
【0059】
なお、上記第6の実施の形態においては、前記(3)式に基づいて補正量を算出するようにした場合について説明したが、これに限るものではない。(3)式では、磨耗が進んでいる付随車への機械ブレーキ力指令値の10%を補正量とするようにしているが、例えば、2つの付随車間の消費エネルギつまり積分値の偏差を算出し、これらの偏差が大きいほど補正量が大きくなるように補正量を変化させるようにしてもよい。このようにすることによって、2つの付随車間の磨耗量の偏差をより速やかに均等化することができる。
【0060】
また、運転指令によって制動指示が行われたときに、補正量を算出するようにしているが、これに限らず、定期的に補正量を算出するようにしてもよく、また、運転手が補正量の算出指示を行ったときに補正量を算出するようにし、例えば、一日の始まりに車両を運転するとき、或いは、午前及び午後等、算出指示が行われたときに、補正量を算出するようにしてもよい。
【0061】
なお、ここでは、2両の付随車を備えた編成であるため、2両の付随車間で磨耗量の均等化を図るようにした場合について説明したが、3両以上の付随車を備えた編成であっても適用することができる。例えば付随車が3両である場合には、磨耗量が最大の付随車への機械ブレーキ力指令値の10%を補正量として算出し、この補正量に基づいて、磨耗量が最大の付随車への機械ブレーキ力指令値は小さくなるように補正し、前記補正量の1/2の値を、他の2両の付随車への機械ブレーキ力指令値にそれぞれ加算し、各付随車へのトータルの機械ブレーキ力指令値は変化しないように、補正を行うようにすればよい。また、複数の付随車から編成されている場合には、複数ずつのグループ毎に均等化を図るようにしてもよく、また、全ての付随車の間で均等化を図るようにしてもよい。
【0062】
また、付随車間に限らず、電動車を含めて磨耗量の均等化を図るようにすることも可能である。
また、上記第6の実施の形態においては、車両間で均等化を図るようにした場合について説明したが、例えば、各車輪毎に、これに対する機械ブレーキ力を個別に制御し、各車輪毎にブレーキシューの磨耗量を推定している場合には、上記と同様にして車輪間で磨耗量の均等化を図るようにしてもよい。要は、車両毎、或いは車輪毎といった、機械ブレーキ力の制御単位間で、均等化を図るようにすることも可能である。
【0063】
また、上記第6の実施の形態においては、第3の実施の形態に適用した場合について説明したが、これに限らず、上記第1〜第3の実施の形態或いは、第5の実施の形態に形容することも可能である。
なお、上記各実施の形態においては、電動車を備えた3両の車両からなる編成に適用した場合について説明したが、電動車を含まない編成であっても適用することができ、また、3両編成に限らず適用することができ、第1〜第5の実施の形態については何両編成であっても適用することができる。
【0064】
また、上記各実施の形態においては、車両1両に車輪が4つある場合について説明したが、これに限らず、車輪がいくつある場合であっても適用することができる。
また、上記各実施の形態においては、車輪の踏面にブレーキシューを押し付けて制動力を発生させるようにした機械ブレーキに適用した場合について説明したが、これに限らず、例えばブレーキディスクの側面にブレーキシューを押し付けて制動力を発生させるようにした機械ブレーキであっても適用することができ、要は摩擦力を用いて制動力を発生させるようにした機械ブレーキであれば適用することができる。
【0065】
また、上記第1、第2、第5の実施の形態においては、鉄道車両に適用した場合について説明したが、自動車車両に適用することもできる。
なお、上記各実施の形態において、機械ブレーキ制御器6が機械ブレーキ力発生手段に対応し、機械ブレーキ力検出器10が制動力検出手段に対応し、車輪速度検出器7又は電動機速度検出器8が回転速度検出手段に対応し、消費エネルギ検出器9が磨耗量相当値算出手段に対応し、非常ブレーキ力演算器20が非常用制動力推定手段に対応し、機械ブレーキ力補正量演算器16及び加算器17が補正手段に対応し、アラーム表示器15が警報発生手段に対応している。
【0066】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の請求項1乃至8に係る車両用制動力制御装置によれば、機械ブレーキ力発生手段により発生される制動力を検出し、この検出制動力と、この検出制動力を検出したときの車輪又は車輪と一体に回転する回転体の回転速度との積を積分して、機械ブレーキ力発生手段の消費エネルギを推定し、これに基づき機械ブレーキ力発生手段の摩擦部材の磨耗量を推定するようにしたから、実際に摩擦部材の磨耗量のチェックを行わなくとも、消費エネルギを参照することによって容易に磨耗量を推定することができる。
【0067】
また、請求項2に係る発明によれば、目標制動力を発生するよう動作する機械ブレーキ力発生手段への前記目標制動力を前記検出制動力として検出し、これに基づいて乗算及び積分処理を行うことによって、新たに制動力検出手段を設けることなく実現できる。
また、請求項3に係る発明によれば、非常作動指示が行われたときには、目標制動力に替えて車両荷重検出手段で検出された車両荷重に応じた非常用制動力を発生するようになっている機械ブレーキ力発生手段の場合には、制動力検出手段において、目標制動力を検出制動力として検出するが、非常作動指示が行われたときには、目標制動力に替えて、非常用制動力推定手段で算出した非常用制動力推定値を検出制動力として設定することによって、非常作動指示にしたがって機械ブレーキ力発生手段が作動したことに伴う、磨耗量をも考慮した磨耗量相当値を得ることができる。
【0068】
また、請求項4に係る発明によれば、同一制御グループ内の1又は複数の車輪或いは車輪と一体に回転する回転体に対して同じ駆動力制御及び制動力制御を行うようにした場合には、この制御グループの車輪又は前記回転体の回転速度はほぼ同等として車輪又は回転体の回転速度の代表値を検出し、これに基づいて磨耗量相当値を算出することにより制御グループの磨耗量相当値の代表値を算出するようにしたから、演算負荷の削減を図ることができる。
【0069】
また、請求項5に係る発明によれば、制御グループ内の各車輪又は各回転体の回転速度のうちの最大値を回転速度の代表値として設定するようにしたから、制御グループ内のほぼ最大の磨耗量相当値つまり磨耗量を推定することができる。
また、請求項6に係る発明によれば、制御グループ内の各車輪又は各回転体の回転速度の平均値を回転速度の代表値として設定するようにしたから、制御グループ内の磨耗量相当値つまり磨耗量の平均値を推定することができる。
【0070】
また、請求項7に係る発明によれば、磨耗量相当値算出手段で算出した磨耗量相当値つまり磨耗量に偏りがあるときには、この偏りがなくなるように機械ブレーキ力発生手段で発生する制動力を補正するようにしたから、磨耗量の均一化を図ることができ、摩擦部材の交換タイミングのばらつきを抑制することができる。
【0071】
さらに、請求項8に係る発明によれば、磨耗量相当値算出手段で算出した磨耗量相当値又は、これに基づく磨耗量が規定値を超えたときには警報を発するようにしたから、摩擦部材の磨耗量が規定値を超えた時点で、これを容易に通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態における車両用制動力制御装置の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態における車両用制動力制御装置の一例を示すブロック図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態における車両用制動力制御装置の一例を示すブロック図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態における車両用制動力制御装置の一例を示すブロック図である。
【図5】本発明の第5の実施の形態における車両用制動力制御装置の一例を示すブロック図である。
【図6】本発明の第6の実施の形態における車両用制動力制御装置の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 荷重検出器
2 必要ブレーキ力演算器
3 車両駆動装置
4 駆動用電動機
5 補足ブレーキ力演算器
6 機械ブレーキ制御器
7 車輪速度検出器
8 電動機速度検出器
9、9a 消費エネルギ演算器
10 機械ブレーキ力検出器
11 データ保存器
12 データ読み出し器
13 最大値選択器
14 比較器
15 アラーム表示器
16 機械ブレーキ力補正量演算器
17 加算器
20 非常ブレーキ力演算器
【発明の属する技術分野】
この発明は、摩擦力を利用して制動力を発生するようにした機械ブレーキ力発生手段を備えた車両用制動力制御装置に関し、特に、機械ブレーキ発生手段の摩擦部材の磨耗量を容易に推定するようにした車両用制動力制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、鉄道車両用のブレーキとして、電気ブレーキ、機械ブレーキ等が知られている。前記電気ブレーキの代表的なものとしては、駆動力を発生させるための駆動用電動機を発電機として動作させ、車軸に制動トルクを与えて、車両を減速、停止させるものがある。
【0003】
また、機械ブレーキとしては、圧縮空気や油圧等によって、機械的にブレーキシューを車輪の踏面やブレーキ用ディスク等に押し付けて摩擦力を発生させ、これによって車両を減速させ、停止させるものがある。
そして、例えば、電気ブレーキ及び機械ブレーキを備えた電動車1両と、機械ブレーキのみを備えた付随車2両との3両編成の場合には、各車両の重量を荷重検出器でそれぞれ検出し、この各検出値と運転手の操作等により与えられる運転指令とに基づいて、編成全体として必要なブレーキ力を算出すると共に、この算出した必要ブレーキ力と電動車の重量とから、電気ブレーキで発生すべきブレーキ力を算出している。そして、この電気ブレーキで発生すべき指令値に基づき、駆動用電動機を制御し指定された電気ブレーキ力を発生させると共に、実際に発生している電気ブレーキ力を算出し、必要ブレーキ力と電気ブレーキ力の実際値との差から、機械ブレーキで補足すべき機械ブレーキ力を演算し、これを、各車両の重量、電動車の電気ブレーキ力実際値等に基づいて各車両の機械ブレーキで発生すべき機械ブレーキ力を割り振り、これにしたがって、各車両の機械ブレーキで指定された機械ブレーキ力を発生させるようにしている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
【非特許文献1】
「最新 電気鉄道工学」コロナ社、2000年9月、p.67−78
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、摩擦によってブレーキ力を発生させるようにした方法においては、車輪或いはブレーキ用ディスクにブレーキシュー等の摩擦部材を押し当てて摩擦力を発生させるため、ブレーキシュー等の摩擦部材は、ブレーキをかける度に磨耗していく。このため、摩擦部材の磨耗状態を監視することが重要である。
【0006】
ところで、電気ブレーキは、電気ブレーキ力指令値とは無関係に駆動用電動機へ給電するための電源の状態等に応じてブレーキ力を絞り込む機能が設けられているため、その時々の状態に応じて電気ブレーキ力の実際値は、大きく変化する。このため、機械ブレーキ側で補足すべき機械ブレーキ力も大きく変化することになる。
【0007】
また、発生すべき必要ブレーキ力や、ブレーキをかける頻度は、乗客の乗車具合や、普通列車であるか特急列車であるかといった運用状態、運転手の運転の仕方等にも依存する。
したがって、ブレーキシューの磨耗量を推定するには、走行距離等といった単純な情報だけでは困難である。
【0008】
このため、現状では、定期検査等の機会に検査員がブレーキシューの磨耗状態等を測定して、メンテンナンスの要否等を全数チェックするようにしている。
しかしながら、各車両には多数のブレーキシューが配置されているため、このブレーキシューの検査に膨大な時間がかかってしまうという問題がある。
また、電気車と付随車等、機械ブレーキの使用頻度は各車両によって異なることから、ブレーキシューの磨耗量に大きなばらつきが生じる場合がある。このため、最大の磨耗量を想定して定期点検を行わなければならず、比較的短い周期で点検を行わなければならないという問題もある。
【0009】
そこで、この発明は、上記従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、容易且つ的確に機械ブレーキの摩擦部材の磨耗量を推定することの可能な車両用制動力制御装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る車両用制動力制御装置は、車輪又は車輪と一体に回転する回転体に摩擦部材を押し付けて制動力を発生する機械ブレーキ力発生手段を備えた車両用制動力制御装置において、前記機械ブレーキ力発生手段により発生される制動力を検出する制動力検出手段と、当該制動力検出手段により前記制動力を検出した時の前記車輪又は前記回転体の回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記制動力検出手段で検出した検出制動力と前記回転速度検出手段で検出した検出回転速度との積を算出し、これを積分して前記摩擦部材の磨耗量に応じた磨耗量相当値を算出する磨耗量相当値算出手段と、を備えることを特徴としている。
【0011】
また、請求項2に係る車両用制動力制御装置は、請求項1に記載の前記機械ブレーキ力発生手段は、指定された目標制動力に応じた制動力を発生し、前記制動力検出手段は、前記検出制動力として前記目標制動力を検出することを特徴としている。
また、請求項3に係る車両用制動力制御装置は、請求項2に記載の車両用制動力制御装置において、車両の荷重を検出する車両荷重検出手段を備え、前記機械ブレーキ力発生手段は、非常作動指示が行われたとき前記目標制動力に替えて前記車両荷重検出手段で検出された車両荷重に応じた非常用制動力を発生し、前記制動力検出手段は、前記非常作動指示が行われたとき前記車両荷重検出手段で検出された車両荷重に基づいて前記機械ブレーキ力発生手段で発生される非常用制動力を推定する非常用制動力推定手段を有し、前記非常作動指示が行われたときには前記目標制動力に替えて前記非常用制動力推定手段で推定した非常用制動力推定値を前記検出制動力として設定するようになっていることを特徴としている。
【0012】
また、請求項4に係る車両用制動力制御装置は、請求項1乃至3の何れかに記載の車両用制動力制御装置は、1又は複数の、前記車輪又は前記回転体を同一の制御グループとし、つまり1又は複数の車輪を同一の制御グループ、或いは1又は複数の回転体を同一の制御グループとし、この制御グループ内の車輪又は回転体に対し、同一の制動力を付与するようにした車両用制動力制御装置であって、前記回転速度検出手段は、前記制御グループ内の車輪又は回転体の回転速度の代表値を検出し、前記磨耗量相当値算出手段は、前記制御グループの前記回転速度の代表値に基づいて前記制御グループの前記磨耗量相当値の代表値を算出することを特徴としている。
【0013】
また、請求項5に係る車両用制動力制御装置は、請求項4記載の前記回転速度検出手段は、前記制御グループ内の各車輪又は各回転体の回転速度を検出し、検出した回転速度のうちの最大値を前記回転速度の代表値として設定するようになっていることを特徴としている。
また、請求項6に係る車両用制動力制御装置は、請求項4記載の前記回転速度検出手段は、前記制御グループ内の各車輪又は各回転体の回転速度を検出し、検出した回転速度の平均値を前記回転速度の代表値として設定するようになっていることを特徴としている。
【0014】
また、請求項7に係る車両用制動力制御装置は、請求項4乃至6の何れかに記載の車両用制動力制御装置は、前記磨耗量相当値算出手段で算出した前記制御グループ毎の前記磨耗量相当値の代表値又は当該代表値に基づく前記磨耗量に基づき、前記磨耗量相当値の代表値又は当該代表値に基づく前記磨耗量がより大きい制御グループの車輪又は回転体に対して付与される制動力をより小さな値に補正し、且つ前記磨耗量相当値の代表値又は当該代表値に基づく前記磨耗量がより小さい制御グループの車輪又は回転体に対して付与される制動力をより大きな値に補正する補正手段、を備えることを特徴としている。
【0015】
また、請求項8に係る車両用制動力制御装置は、請求項1乃至7の何れかに記載の車両用制動力制御装置は、前記磨耗量相当値又は当該磨耗長相当値に基づく前記磨耗量が規定値を超えたとき、警報を発する警報発生手段、を備えることを特徴としている。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
まず、第1の実施の形態を説明する。
図1は、第1の実施の形態における車両用制動力制御装置を適用した電気車のブレーキ制御システムの一例を示したものである。
【0017】
このブレーキ制御システムは、電気ブレーキ及び機械ブレーキにより制動力を発生させることの可能な電動車100と、機械ブレーキのみにより制動力を発生させることの可能な付随車200及び300の計3両で、1つの編成を構成している。各車両には、4つの車輪があり、全ての車両の全ての車輪で機械ブレーキによる制動力(以後、機械ブレーキ力ともいう。)を発生することができるように構成されている。また、電動車100においては、4つの車輪において電気ブレーキによる制動力(以後、電気ブレーキ力ともいう。)も発生することができるように構成されている。
【0018】
なお、ここでは、機械ブレーキによる制動力は車両単位で制御し、各車両内の各車輪では同一の制動力を発生するものとする。
図1において、1は荷重検出器であって、各車両に設けられ、乗客数等によって変化する各車両の重量を検出する。これら各荷重検出器1の検出値は、電動車100に搭載された必要ブレーキ力演算器2に入力される。
【0019】
この必要ブレーキ力演算器2では、運転手の操作等によって入力される運転指令に基づいて、編成全体で必要とする、必要ブレーキ力FN を演算する。また、必要ブレーキ力演算器2では、算出した必要ブレーキ力FN と電動車100の車両重量とに基づいて、電気ブレーキにより発生させる制動力の指令値として、電気ブレーキ力指令値SE を演算し、これを車両駆動装置3に出力する。
【0020】
この車両駆動装置3では、運転手の操作等によって入力される運転指令及び、駆動用電動機4の回転速度を検出する電動機回転速度検出器8の検出信号に基づいて、前記駆動用電動機4を駆動制御し、この駆動用電動機4とギヤ等を介して接続された、図示しない各車輪を駆動する。また、電気ブレーキ力指令値SE に基づき、電動車100の各駆動用電動機4で発生可能な電気ブレーキ力を発生させると共に、実際に発生している電気ブレーキ力実際値VE を逐次演算する。この電気ブレーキ力実際値VE の算出は、例えば駆動用電動機4が誘導電動機の場合には、公知のベクトル制御の理論に基づいて、車両駆動装置3内で検出した駆動用電動機4の電流を磁化電流とトルク電流とにベクトル分解し、これらから駆動用電動機4の発生トルクを求める。そして、駆動用電動機4と図示しない車輪との間のギヤ比を、車輪の半径で割り算した[ギヤ比/車輪の半径]を乗じて、その車輪のブレーキ力を求める。この演算を車輪毎に行い、その結果を合計することにより算出する。つまり、図1の場合には、4輪についてそれぞれブレーキ力を求め、これら4輪のブレーキ力の合計を算出する。
【0021】
補足ブレーキ力演算器5は、必要ブレーキ力演算器2で算出した必要ブレーキ力FN と、車両駆動装置3で算出した電気ブレーキ力実際値VE との差から、機械ブレーキで補足すべき機械ブレーキ力を演算し、この補足機械ブレーキ力と、各車両の重量と、電動車100で発生した電気ブレーキ力実際値VE とに基づいて、前記補足機械ブレーキ力を各車両に割り振り、これを機械ブレーキ力指令値SM1〜SM3として各車両に搭載された機械ブレーキ制御器6に出力する。
【0022】
前記補足機械ブレーキ力の割り振りは、例えば次のように行う。すなわち、前記補足機械ブレーキ力が、各付随車毎にその重量に応じて設定された機械ブレーキ力の制限値の合計値に達していない場合には、各付随車のみに、各付随車両の機械ブレーキ力と各付随車両の重量との比(=各付随車両の機械ブレーキ力/各付随車両の重量)が一定となるように補足機械ブレーキ力を分配する。また、補足機械ブレーキ力が、前記各付随車毎の機械ブレーキ力の制限値の合計値を超える場合には、その超える分を電動車100に配分する。
【0023】
各車両の機械ブレーキ制御器6では、機械ブレーキ力指令値SM1〜SM3に基づいて車両内の4つの車輪に対して、例えばブレーキシューを車輪の踏面に押し付け、各車輪に対して機械ブレーキによる均一な制動力を付与する。
また、付随車200及び300には、各車輪毎に、車輪の回転速度を検出する車輪速度検出器7が設けられ、付随車200及び300に搭載された各機械ブレーキ制御器6では、各車輪速度検出器7の検出信号に基づいて、各車輪に対して機械ブレーキ力付与中に生じる車輪の滑走の有無を検知し、車輪の滑走を検知したときには、各車両毎に全車輪の機械ブレーキ力を絞り込んで再び粘着状態に戻す等といった、公知の制御も行う。
【0024】
また、電動車100には、各駆動用電動機4毎に、電動機の回転速度を検出する電動機速度検出器8が設けられ、電動車100に搭載された機械ブレーキ制御器6では、駆動用電動機4と各車輪との間に設けられている図示しないギヤのギヤ比を考慮して、各電動機速度検出器8の検出値を各車輪の回転速度に変換し、この算出した各車輪の回転速度に基づいて、付随車200、300と同様に、車輪の滑走に対する機械ブレーキ力の絞込を行う。
【0025】
さらに各車両には、各車輪毎に設けられ且つ各車輪における制動力の発生に伴う消費エネルギを算出するための消費エネルギ演算器9と、各車輪で実際に発生される実際の機械ブレーキ力を検出する機械ブレーキ力検出器10が搭載されている。この機械ブレーキ力検出器10は、例えば、機械ブレーキ制御器6が、空気ブレーキを用いて機械ブレーキ力を発生させる場合には、ブレーキシューを動かすブレーキシリンダの空気圧を検出し、予め求めた、この空気圧と空気ブレーキ力との関係に基づいて、実際に発生された機械ブレーキ力を検出する。
【0026】
なお、図1の場合には、一つの車両内の各車輪に対し同一の制動力を付与するように制御を行っているため、ここでは、代表値として何れか一つの車輪における機械ブレーキ力を検出している。例えば、一つの車両内の各車輪に対する機械ブレーキ力も個別に制御するようにした場合等、機械ブレーキ力の制御単位が異なる場合には、その制御単位毎に機械ブレーキ力を検出するようにすればよい。
【0027】
前記消費エネルギ演算器9では、各車輪に対して機械ブレーキ制御器6によって機械ブレーキ力が付与されている間に、前記機械ブレーキ力検出器10で検出された車輪への機械ブレーキ力の実際値と、車輪速度検出器7で検出した各車輪の回転速度又は電動機速度検出器8で検出された電動機速度に基づいて演算した各車輪の回転速度とを車輪毎に乗算し、この乗算結果を車輪毎に逐次積分する。そして、各車両で検出した車輪毎の乗算結果の積分値を、データ保存器11に格納する。なお、このデータ保存器11に格納したデータは、データ読み出し器12で読み出すことができるようになっている。
【0028】
ここで、ブレーキシューの磨耗量は、近似的に、機械ブレーキによって消費されるエネルギと比例関係にあることが知られている。また、機械ブレーキで消費されるエネルギは、機械ブレーキにより作用した制動力と、ブレーキシューを押し付けた車輪の回転速度とから、次式(1)で算出することができる。
消費エネルギ=∫{〔機械ブレーキ力〕×〔速度〕}dt ……(1)
したがって、機械ブレーキ力検出器10で検出された機械ブレーキ力の実際値と、車輪速度検出器7又は電動機速度検出器8で検出された電動機速度に基づいて演算した各車輪の回転速度とを乗算し、この乗算結果を逐次積分することによって、各車輪における消費エネルギが推定され、すなわち、ブレーキシューの磨耗量に応じた値が算出されることになる。
【0029】
つまり、データ保存器11には、各車両の各車輪毎に設けられた消費エネルギ検出器9で算出した、各車輪の消費エネルギが格納されるから、定期検査時等には、このデータ保存器11に格納された各車輪の消費エネルギを、データ読み出し器12を用いて読み出すことによって各車輪の消費エネルギを認識することができ、つまり、ブレーキシューの磨耗量を推定することができる。
【0030】
したがって、従来のように、定期検査時等には、全ての車輪についてブレーキシューの磨耗量をチェックする必要はなく、データ保存器11に格納されている各車輪の消費エネルギを参照するだけで、磨耗量のチェックを行うことができるから、ブレーキシューの磨耗量のチェックに要する処理時間を、従来に比較して大幅に短縮することができる。
【0031】
また、ブレーキは、安全上重要な設備であることから、必要ブレーキ力に対して実際に発生しているブレーキ力が不足する等といったブレーキの異常を検出するために、異常検出等の目的で、実際の機械ブレーキ力を検出するための機械ブレーキ力検出器10が搭載されている場合がある。したがって、このように機械ブレーキ力検出器10が既に搭載されている車両においては、機械ブレーキ力検出器10を新たに設けることなく実現することができる。
【0032】
また、このように、データ保存器11に格納されている各車両の消費エネルギを参照するだけで磨耗量をチェックすることができるから、例えば、データ読み出し器12を運転席の近傍に設けておき、定期的にこれをチェックすることによって、各ブレーキシューの磨耗量を容易に検出することができる。
また、定期的に磨耗量をチェックすることによって、ブレーキシューの取り替え時期を予測することができるから、これに合わせてブレーキシューの調達を行うことによって調達の効率化を図ることができると共に、ブレーキシューの保管数の削減等を図ることができ、ブレーキシューを効率よく運用することができる。
【0033】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。
この第2の実施の形態は、図2に示すように、図1に示す第1の実施の形態において、機械ブレーキ力検出器10を取り除いたものである。
そして、消費エネルギ演算器9では、機械ブレーキ力指令値SM1〜SM3をもとに、消費エネルギを演算する。
【0034】
つまり、機械ブレーキは、電気ブレーキのように、給電される電源等といった、他の状態に応じてブレーキ力が操作されることはなく、滑走や、危険回避等の際に機械ブレーキ力指令SM1〜SM3に関係なく、各車両で機械ブレーキ力を発生させる非常ブレーキ時等の特別な場合を除き、指令値どおりのブレーキ力を発生させる。つまり、上述のような特別な状況を除けば実際に発生している機械ブレーキ力は、ほぼ機械ブレーキ力の指令値と等しいとみなすことができる。
【0035】
したがって、機械ブレーキ力検出器10で検出される実際に発生される機械ブレーキ力に代えて、機械ブレーキ力の指令値SM1〜SM3に基づいて消費エネルギを演算することによって、上記第1の実施の形態と同等に消費エネルギを算出することができる。
これによって、機械ブレーキ力検出器10を搭載していない車両用制動力制御装置であっても、新たに機械ブレーキ力検出器10を搭載することなく実現することができ、その分、コスト削減を図ることができる。
【0036】
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。
この第3の実施の形態は、上記第2の実施の形態において、非常ブレーキ操作に伴うブレーキシューの磨耗も考慮するようにしたものである。
この第3の実施の形態は、図3に示すように、図2に示す第2の実施の形態において、非常ブレーキ指令により非常ブレーキの作動指示が行われたときに、機械ブレーキ制御器6により発生される機械ブレーキ力の実際値を算出する非常ブレーキ力演算器20が新たに設けられている。
【0037】
ここで、電動車100では、運転手等により非常ブレーキの作動操作が行われた場合、電気ブレーキは作動させずに、機械ブレーキのみを発生させるようになっており、電動車100及び付随車200、300の各機械ブレーキ制御器6では、運転手等により、非常ブレーキの作動操作が行われ、これによって非常ブレーキ指令が通知されると非常ブレーキの作動操作が解除されるまでの間、前記機械ブレーキ力の指令値SM1〜SM3に関わらず、減速度が一定となるように、荷重検出器1で検出された車両の重量に応じて機械ブレーキ力を発生させる。これによって、非常ブレーキの作動操作が行われたときには、運転指令に関わらず、車両の重量の応じた機械ブレーキ力が強制的に発生されるようになっている。
【0038】
そして、前記非常ブレーキ力演算器20は、非常ブレーキの作動操作が行われ非常ブレーキ指令が通知されると、非常ブレーキの作動操作が解除されるまでの間、前記荷重検出器1の検出値に基づいて、各車両で発生しているはずの機械ブレーキ力を各車両毎に算出し、これを消費エネルギ演算器9に出力する。
この機械ブレーキ力の算出は、次のように行う。つまり、非常ブレーキ時の各車両における機械ブレーキ力は、例えば、その車両の重量がある値Mである場合に、一定の減速度とするために必要な機械ブレーキ力をFM とすると、次式(2)から算出することができる。
【0039】
〔非常ブレーキ時の機械ブレーキ力〕
=〔FM /M〕×〔非常ブレーキ時の車両重量〕 ……(2)
したがって、〔FM /M〕を予め算出しておき、この値と荷重検出器1で検出される車両の重量とをもとに、非常ブレーキ時の機械ブレーキ力を算出する。
前記消費エネルギ演算器9では、非常ブレーキ力演算器20から非常ブレーキ操作による機械ブレーキ力が通知されると、この通知された機械ブレーキ力と、車輪速度検出器7又は電動機速度検出器8で検出された電動機速度に基づいて演算した各車輪の回転速度とを乗算し、この乗算結果についても逐次積分する。
【0040】
つまり、消費エネルギ演算器9では、運転指令に応じて発生される機械ブレーキ力による消費エネルギと非常ブレーキ指令に伴って発生される機械ブレーキ力による消費エネルギとの総和を算出するから、すなわち、非常ブレーキに伴うブレーキシューの磨耗量も考慮した消費エネルギを得ることができる。
したがって、非常ブレーキを用いる頻度が比較的多く、非常ブレーキによるブレーキシューの磨耗を無視することができないような場合であっても、ブレーキシューの磨耗量を高精度に推定することができる。
【0041】
次に、本発明の第4の実施の形態を説明する。
この第4の実施の形態は、図4に示すように、上記第2の実施の形態において、各車両毎に、車輪速度検出器7又は電動機速度検出器8の検出値の最大値を選択するための最大値選択器13を設けている。また、各車輪毎に設けられた消費エネルギ検出器9に代えて、前記最大値選択器13で選択した速度に基づいて消費エネルギを算出する消費エネルギ検出器9aを設けている。そして、この消費エネルギ検出器9aでは、最大値選択器13で選択した、各車輪の回転速度のうちの最大値と、各車両に対応する機械ブレーキ力指令値SM1〜SM3とに基づいて、消費エネルギを算出し、これをデータ保存器11に格納する。
【0042】
ここで、各車輪に対し、車両単位でブレーキ力の制御が行われ、各車輪では、同一の機械ブレーキ力を発生するように制御されている。
各車輪の速度は、滑走による車速の誤差が生じる程度であって、この誤差は頻繁に発生するものではない。よって、速度誤差が消費エネルギの算出に及ぼす影響は小さいものとみなすことができる。
【0043】
したがって、機械ブレーキ制御の単位内、つまり、この場合には、車両内で、1つの代表した車輪の回転速度に基づいて消費エネルギを推定しこれに基づきブレーキシューの磨耗量を推定することによって、各車輪毎の回転速度に基づいて消費エネルギを算出する場合と同等の演算結果を得ることができ、演算を簡素化することができる。
【0044】
また、このとき、代表する回転速度として、最大速度を選択するようにしているから、ほぼ制御単位内の最大磨耗量を求めることができる。このとき、最小速度に基づいて磨耗量を推定した場合には、車両単位の磨耗量としては、実際の磨耗量よりも小さくなる傾向に算出されることになり、この磨耗量に基づいて処理を行った場合、実際よりも小さな磨耗量に基づいて処理が行われる場合も考えられるが、最大速度に基づいて算出することによって、実際の磨耗量よりも大きくなる傾向に算出されるから、これに基づいて処理を行うことによって、磨耗に対する対処を早めに行うことができる。
【0045】
なお、ここでは、車輪の回転速度の最大値を代表値として消費エネルギを算出するようにした場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、車輪の回転速度の平均値を代表値として用いるようにしてもよく、このように平均値に基づいて消費エネルギを算出することによって、車両毎のブレーキシューの平均磨耗量を算出することができる。
【0046】
また、車両毎に磨耗量の代表値を算出することによって、算出負荷を低減することができると共に、データ保存器11で保存するデータ量も削減することができるから効果的である。
なお、上記第4の実施の形態においては、上記第2の実施の形態に適用した場合について説明したが、上記第1或いは第3の実施の形態に適用することができることはいうまでもない。
【0047】
また、上記第4の実施の形態においては、各車輪の回転速度を検出し、その最大値を代表値とするようにした場合について説明したが、これに限らず、例えば、何れかの車輪についてのみ回転速度を検出し、この回転速度を代表値として設定するようにすることも可能である。この場合、代表値に基づく磨耗量と、実際の各車輪に対応するブレーキシューの磨耗量とのばらつきが大きくなる場合があるが、磨耗量の許容範囲をより厳しく設定し、磨耗量に対して検査或いは交換等の対処を早めに行うようにすればよい。
【0048】
次に、本発明の第5の実施の形態を説明する。
この第5の実施の形態は、図5に示すように、上記第4の実施の形態において、さらに、比較器14及びこの比較器14の比較結果に応じて警報を発するアラーム表示器15を追加したものである。
前記比較器14は、前記各消費エネルギ検出器9で検出された消費エネルギを入力し、これら各消費エネルギと規定値とを比較する。この規定値は、消費エネルギから推測されるブレーキシューの磨耗量が許容範囲であるとみなすことの可能な値に基づいて設定される。
【0049】
そして、比較器14での比較の結果、各車両毎の消費エネルギの何れか一つでも規定値を超えるときには、アラーム信号を発生する。前記アラーム表示器15は、例えば、運転席近傍に配置され、前記比較器14からアラーム信号を受信したとき、磨耗量が許容範囲を超えたことを通知するための表示を行い、運転手にこれを通知する。
【0050】
なお、このとき、何れの車両の磨耗量が規定値を超えているかを表示するようにしてもよく、また、各車両の磨耗量を表示するようにしてもよい。
このように、磨耗量が規定値を超えた場合には、これが自動的に検出されて通知されるから、例えば、走行状況等によって磨耗が非常に進んだ場合等、定期検査の間隔内に、磨耗量が規定値を超えた場合等であっても、速やかにこれを検出することができ、予想外に磨耗が進んだような場合であっても的確にこれを検知することができる。
【0051】
なお、上記第5の実施の形態においては、上記第4の実施の形態に適用した場合について説明したが、これに限らず、上記第1〜第3の実施の形態に適用することも可能であり、この場合には、各消費エネルギ検出器9で検出された各車輪毎の消費エネルギ毎に、比較器14において規定値を比較するようにすればよい。
【0052】
また、上記第5の実施の形態においては、消費エネルギが規定値を超えた場合に警報を発するようにした場合について説明したが、消費エネルギに基づいて磨耗量を推定し、この磨耗量と磨耗量の規定値とを比較することによって、警報を発生させるようにしてもよいことはいうまでもない。
次に、本発明の第6の実施の形態を説明する。
【0053】
この第6の実施の形態は、図6に示すように、上記第4の実施の形態において、データ保存器11に格納された、付随車200及び300の消費エネルギつまり磨耗量に基づいて、付随車200及び300への機械ブレーキ力指令値SM2及びSM3の補正量ΔF1、ΔF2を算出する機械ブレーキ力補正量演算器16と、この機械ブレーキ力補正量演算器16で算出した補正量ΔF1、ΔF2に応じて付随車200及び300への機械ブレーキ力指令値をそれぞれ補正するための加算器17を備えている。
【0054】
そして、前記機械ブレーキ力補正量演算器16では、データ保存器11に格納された前記付随車200及び300の消費エネルギつまり積分値を比較し、これらのうちの何れか大きい方に基づいて、補正量を算出する。例えば、積分値が大きい方の付随車をCmax 、小さい方の付随車をCmin とすると、付随車Cmax への機械ブレーキ力指令値補正量ΔFmax 、付随車Cmin への機械ブレーキ力指令値補正量ΔFmin は、次式(3)に基づき算出する。
【0055】
ΔFmin =−ΔFmax
=〔付随車Cmax 用機械ブレーキ力指令値〕×10% ……(3)
そして、このようにして算出した、補正量ΔFmax 及びΔFmin を、それぞれ対応する加算器17において、機械ブレーキ力指令値に加算する。
つまり、付随車200及び300における磨耗量が等しくなる方向に、機械ブレーキ力指令値の補正を行う。
【0056】
なお、前記補正量の算出は、運転手の操作等による運転指令が行われたときに行う。つまり、運転指令によって制動が指示されたときに、データ保存器11に格納された付随車200、300の消費エネルギに基づいて補正量を算出する。そして、制動が指示されている間、制動が指示された時点における補正量に基づいて補正を行う。
【0057】
したがって、この第6の実施の形態においては、走行状態等によって、付随車200及び300との間の磨耗量に差が生じた場合には、これらの差に応じて機械ブレーキ力指令値SM2及びSM3が補正され、磨耗がより進んでいる付随車においては、機械ブレーキ力指令値が小さくなる方向に補正されることから、磨耗の進みが遅くなり、逆に磨耗がより小さい付随車においては、機械ブレーキ力指令値が大きくなる方向に補正される。
【0058】
したがって、磨耗量が均等になるように補正されることになり、電動車に比べて磨耗が激しい付随車間で磨耗量に差が生じることに起因して、磨耗量が規定値に達する時期にバラツキを生じ、ブレーキシュー交換のために、交換作業場へ頻繁に入場させ、運用を休止する等といったことが生じることを回避することができる。すなわち、磨耗量がほぼ均等となるように補正を行うことによって、一度に全付随車のブレーキシュー交換が可能となり、ブレーキシューの交換作業のために、運用を休止する頻度を低減することができる。
【0059】
なお、上記第6の実施の形態においては、前記(3)式に基づいて補正量を算出するようにした場合について説明したが、これに限るものではない。(3)式では、磨耗が進んでいる付随車への機械ブレーキ力指令値の10%を補正量とするようにしているが、例えば、2つの付随車間の消費エネルギつまり積分値の偏差を算出し、これらの偏差が大きいほど補正量が大きくなるように補正量を変化させるようにしてもよい。このようにすることによって、2つの付随車間の磨耗量の偏差をより速やかに均等化することができる。
【0060】
また、運転指令によって制動指示が行われたときに、補正量を算出するようにしているが、これに限らず、定期的に補正量を算出するようにしてもよく、また、運転手が補正量の算出指示を行ったときに補正量を算出するようにし、例えば、一日の始まりに車両を運転するとき、或いは、午前及び午後等、算出指示が行われたときに、補正量を算出するようにしてもよい。
【0061】
なお、ここでは、2両の付随車を備えた編成であるため、2両の付随車間で磨耗量の均等化を図るようにした場合について説明したが、3両以上の付随車を備えた編成であっても適用することができる。例えば付随車が3両である場合には、磨耗量が最大の付随車への機械ブレーキ力指令値の10%を補正量として算出し、この補正量に基づいて、磨耗量が最大の付随車への機械ブレーキ力指令値は小さくなるように補正し、前記補正量の1/2の値を、他の2両の付随車への機械ブレーキ力指令値にそれぞれ加算し、各付随車へのトータルの機械ブレーキ力指令値は変化しないように、補正を行うようにすればよい。また、複数の付随車から編成されている場合には、複数ずつのグループ毎に均等化を図るようにしてもよく、また、全ての付随車の間で均等化を図るようにしてもよい。
【0062】
また、付随車間に限らず、電動車を含めて磨耗量の均等化を図るようにすることも可能である。
また、上記第6の実施の形態においては、車両間で均等化を図るようにした場合について説明したが、例えば、各車輪毎に、これに対する機械ブレーキ力を個別に制御し、各車輪毎にブレーキシューの磨耗量を推定している場合には、上記と同様にして車輪間で磨耗量の均等化を図るようにしてもよい。要は、車両毎、或いは車輪毎といった、機械ブレーキ力の制御単位間で、均等化を図るようにすることも可能である。
【0063】
また、上記第6の実施の形態においては、第3の実施の形態に適用した場合について説明したが、これに限らず、上記第1〜第3の実施の形態或いは、第5の実施の形態に形容することも可能である。
なお、上記各実施の形態においては、電動車を備えた3両の車両からなる編成に適用した場合について説明したが、電動車を含まない編成であっても適用することができ、また、3両編成に限らず適用することができ、第1〜第5の実施の形態については何両編成であっても適用することができる。
【0064】
また、上記各実施の形態においては、車両1両に車輪が4つある場合について説明したが、これに限らず、車輪がいくつある場合であっても適用することができる。
また、上記各実施の形態においては、車輪の踏面にブレーキシューを押し付けて制動力を発生させるようにした機械ブレーキに適用した場合について説明したが、これに限らず、例えばブレーキディスクの側面にブレーキシューを押し付けて制動力を発生させるようにした機械ブレーキであっても適用することができ、要は摩擦力を用いて制動力を発生させるようにした機械ブレーキであれば適用することができる。
【0065】
また、上記第1、第2、第5の実施の形態においては、鉄道車両に適用した場合について説明したが、自動車車両に適用することもできる。
なお、上記各実施の形態において、機械ブレーキ制御器6が機械ブレーキ力発生手段に対応し、機械ブレーキ力検出器10が制動力検出手段に対応し、車輪速度検出器7又は電動機速度検出器8が回転速度検出手段に対応し、消費エネルギ検出器9が磨耗量相当値算出手段に対応し、非常ブレーキ力演算器20が非常用制動力推定手段に対応し、機械ブレーキ力補正量演算器16及び加算器17が補正手段に対応し、アラーム表示器15が警報発生手段に対応している。
【0066】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の請求項1乃至8に係る車両用制動力制御装置によれば、機械ブレーキ力発生手段により発生される制動力を検出し、この検出制動力と、この検出制動力を検出したときの車輪又は車輪と一体に回転する回転体の回転速度との積を積分して、機械ブレーキ力発生手段の消費エネルギを推定し、これに基づき機械ブレーキ力発生手段の摩擦部材の磨耗量を推定するようにしたから、実際に摩擦部材の磨耗量のチェックを行わなくとも、消費エネルギを参照することによって容易に磨耗量を推定することができる。
【0067】
また、請求項2に係る発明によれば、目標制動力を発生するよう動作する機械ブレーキ力発生手段への前記目標制動力を前記検出制動力として検出し、これに基づいて乗算及び積分処理を行うことによって、新たに制動力検出手段を設けることなく実現できる。
また、請求項3に係る発明によれば、非常作動指示が行われたときには、目標制動力に替えて車両荷重検出手段で検出された車両荷重に応じた非常用制動力を発生するようになっている機械ブレーキ力発生手段の場合には、制動力検出手段において、目標制動力を検出制動力として検出するが、非常作動指示が行われたときには、目標制動力に替えて、非常用制動力推定手段で算出した非常用制動力推定値を検出制動力として設定することによって、非常作動指示にしたがって機械ブレーキ力発生手段が作動したことに伴う、磨耗量をも考慮した磨耗量相当値を得ることができる。
【0068】
また、請求項4に係る発明によれば、同一制御グループ内の1又は複数の車輪或いは車輪と一体に回転する回転体に対して同じ駆動力制御及び制動力制御を行うようにした場合には、この制御グループの車輪又は前記回転体の回転速度はほぼ同等として車輪又は回転体の回転速度の代表値を検出し、これに基づいて磨耗量相当値を算出することにより制御グループの磨耗量相当値の代表値を算出するようにしたから、演算負荷の削減を図ることができる。
【0069】
また、請求項5に係る発明によれば、制御グループ内の各車輪又は各回転体の回転速度のうちの最大値を回転速度の代表値として設定するようにしたから、制御グループ内のほぼ最大の磨耗量相当値つまり磨耗量を推定することができる。
また、請求項6に係る発明によれば、制御グループ内の各車輪又は各回転体の回転速度の平均値を回転速度の代表値として設定するようにしたから、制御グループ内の磨耗量相当値つまり磨耗量の平均値を推定することができる。
【0070】
また、請求項7に係る発明によれば、磨耗量相当値算出手段で算出した磨耗量相当値つまり磨耗量に偏りがあるときには、この偏りがなくなるように機械ブレーキ力発生手段で発生する制動力を補正するようにしたから、磨耗量の均一化を図ることができ、摩擦部材の交換タイミングのばらつきを抑制することができる。
【0071】
さらに、請求項8に係る発明によれば、磨耗量相当値算出手段で算出した磨耗量相当値又は、これに基づく磨耗量が規定値を超えたときには警報を発するようにしたから、摩擦部材の磨耗量が規定値を超えた時点で、これを容易に通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態における車両用制動力制御装置の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態における車両用制動力制御装置の一例を示すブロック図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態における車両用制動力制御装置の一例を示すブロック図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態における車両用制動力制御装置の一例を示すブロック図である。
【図5】本発明の第5の実施の形態における車両用制動力制御装置の一例を示すブロック図である。
【図6】本発明の第6の実施の形態における車両用制動力制御装置の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 荷重検出器
2 必要ブレーキ力演算器
3 車両駆動装置
4 駆動用電動機
5 補足ブレーキ力演算器
6 機械ブレーキ制御器
7 車輪速度検出器
8 電動機速度検出器
9、9a 消費エネルギ演算器
10 機械ブレーキ力検出器
11 データ保存器
12 データ読み出し器
13 最大値選択器
14 比較器
15 アラーム表示器
16 機械ブレーキ力補正量演算器
17 加算器
20 非常ブレーキ力演算器
Claims (8)
- 車輪又は車輪と一体に回転する回転体に摩擦部材を押し付けて制動力を発生する機械ブレーキ力発生手段を備えた車両用制動力制御装置において、
前記機械ブレーキ力発生手段により発生される制動力を検出する制動力検出手段と、
当該制動力検出手段により前記制動力を検出した時の前記車輪又は前記回転体の回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記制動力検出手段で検出した検出制動力と前記回転速度検出手段で検出した検出回転速度との積を算出し、これを積分して前記摩擦部材の磨耗量に応じた磨耗量相当値を算出する磨耗量相当値算出手段と、を備えることを特徴とする車両用制動力制御装置。 - 前記機械ブレーキ力発生手段は、指定された目標制動力に応じた制動力を発生し、
前記制動力検出手段は、前記検出制動力として前記目標制動力を検出することを特徴とする請求項1記載の車両用制動力制御装置。 - 車両の荷重を検出する車両荷重検出手段を備え、
前記機械ブレーキ力発生手段は、非常作動指示が行われたとき前記目標制動力に替えて前記車両荷重検出手段で検出された車両荷重に応じた非常用制動力を発生し、
前記制動力検出手段は、前記非常作動指示が行われたとき前記車両荷重検出手段で検出された車両荷重に基づいて前記機械ブレーキ力発生手段で発生される非常用制動力を推定する非常用制動力推定手段を有し、前記非常作動指示が行われたときには前記目標制動力に替えて前記非常用制動力推定手段で推定した非常用制動力推定値を前記検出制動力として設定するようになっていることを特徴とする請求項2記載の車両用制動力制御装置。 - 1又は複数の、前記車輪又は前記回転体を同一の制御グループとし、当該制御グループ内の車輪又は回転体に対し、同一の制動力を付与するようにした車両用制動力制御装置であって、
前記回転速度検出手段は、前記制御グループ内の車輪又は回転体の回転速度の代表値を検出し、
前記磨耗量相当値算出手段は、前記制御グループの前記回転速度の代表値に基づいて前記制御グループの前記磨耗量相当値の代表値を算出することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の車両用制動力制御装置。 - 前記回転速度検出手段は、前記制御グループ内の各車輪又は各回転体の回転速度を検出し、検出した回転速度のうちの最大値を前記回転速度の代表値として設定するようになっていることを特徴とする請求項4記載の車両用制動力制御装置。
- 前記回転速度検出手段は、前記制御グループ内の各車輪又は各回転体の回転速度を検出し、検出した回転速度の平均値を前記回転速度の代表値として設定するようになっていることを特徴とする請求項4記載の車両用制動力制御装置。
- 前記磨耗量相当値算出手段で算出した前記制御グループ毎の前記磨耗量相当値の代表値又は当該代表値に基づく前記磨耗量に基づき、前記磨耗量相当値の代表値又は当該代表値に基づく前記磨耗量がより大きい制御グループの車輪又は回転体に対して付与される制動力をより小さな値に補正し、且つ前記磨耗量相当値の代表値又は当該代表値に基づく前記磨耗量がより小さい制御グループの車輪又は回転体に対して付与される制動力をより大きな値に補正する補正手段、を備えることを特徴とする請求項4乃至6の何れかに記載の車両用制動力制御装置。
- 前記磨耗量相当値又は当該磨耗長相当値に基づく前記磨耗量が規定値を超えたとき、警報を発する警報発生手段、を備えることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の車両用制動力制御装置。
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