JP2004116491A - ロータリーエンジンの燃料供給制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ハウジング2,3内に収容したロータ6の回転に伴い、その外周側の作動室5,5,5がそれぞれ周方向に移動しながら順に吸気、圧縮、膨張及び排気の各行程を行うロータリーエンジン1において、比較的吸気流量の少ないときでも燃料の輸送効率を向上して、制御応答性を向上し、ひいいては出力及び燃費の改善を図る。
【解決手段】各気筒4毎に第1及び第2の独立吸気通路21,22を設けて、該第1独立吸気通路21に連通する第1吸気ポート11にプライマリインジェクタ26を配設する一方、第2独立吸気通路22にはセカンダリインジェクタ32とシャッター弁28とを配設する。エンジン低回転域(ne≦ne1)ではシャッター弁28を閉じる。低中回転域(ne1<ne<ne2)では境界線Bの低負荷側でシャッター弁28を閉じる一方、高負荷側ではシャッター弁28を開く。その境界線Bは、エンジン回転速度neの高いときほど低負荷側の値となるように設定する。
【選択図】 図4
【解決手段】各気筒4毎に第1及び第2の独立吸気通路21,22を設けて、該第1独立吸気通路21に連通する第1吸気ポート11にプライマリインジェクタ26を配設する一方、第2独立吸気通路22にはセカンダリインジェクタ32とシャッター弁28とを配設する。エンジン低回転域(ne≦ne1)ではシャッター弁28を閉じる。低中回転域(ne1<ne<ne2)では境界線Bの低負荷側でシャッター弁28を閉じる一方、高負荷側ではシャッター弁28を開く。その境界線Bは、エンジン回転速度neの高いときほど低負荷側の値となるように設定する。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロータリーエンジンに燃料を供給するための燃料供給制御装置に関し、特に、各気筒毎に複数の吸気通路を設けて、その各吸気通路にそれぞれ燃料噴射弁を配設したものに係る。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ロータリーエンジンへの燃料供給制御装置として、例えば特許文献1に開示されるように、各気筒毎に第1及び第2の2つの吸気通路を備え、その各吸気通路にそれぞれ燃料噴射弁を配設して、低出力領域では第1燃料噴射弁のみにより燃料を噴射させることにより、燃料の制御性を高める一方、高出力領域では第1及び第2の両方の燃料噴射弁により燃料を噴射させて、十分な燃料供給量を確保するようにしたものがある。
【0003】
また、前記のものでは、第2吸気通路にアクチュエータ駆動の吸気流量制御弁を設けて、エンジンの冷機時に第2吸気通路の吸気流を絞ることにより、気筒内のガス流動を強化して燃焼安定性を高めるようにしている。すなわち、第1及び第2吸気通路の下流端は互いに対向するようにして作動室に開口しており、その内の一方(第2吸気通路)からの吸気流が弱くなれば、他方(第1吸気通路)からの吸気流が作動室に強いガス流動を形成し、これにより、冷機時に増量補正される燃料と空気とが十分に混じり合い、且つ気化霧化が促進されて、燃焼性が向上するものである。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−158495号公報(第4頁〜第6頁、第2図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、高出力化の要請に従ってロータリーエンジンの最高回転速度は従来以上に高くなっており、これに応じて十分な吸気量を確保するために吸気通路の断面積は拡大される傾向がある。このことは、相対的に吸気流量の少ない低負荷側乃至低回転側において吸気の流速が大幅に低下することを意味し、結果として吸気による燃料の輸送効率が低下したり、吸気通路壁面への燃料の付着量が多くなったりして、制御の応答性が低下するという不具合を生じる。
【0006】
そして、そのような応答性の悪さを補うために、特にエンジンの加速運転時のように出力要求が増加するときには燃料噴射量を増量せざるを得ないから、自ずと燃費の悪化を招くことにもなる。
【0007】
尚、前記従来例のものでは、エンジンの冷機時に第2吸気通路に設けた吸気流量調整弁により吸気流を絞るようにしており、この結果として第1吸気通路における吸気の流速は高くなるが、このときには第2吸気通路の吸気流速が極端に低下して、そこに噴射される燃料の輸送効率が著しく低下するという弊害がある。また、エンジン冷機時のガス流動の強化は、大幅な燃料増量と共に行って初めて意味のあるものであり、前記した温間の低出力状態のときの不具合に対してはあまり有効なものとはいえない。
【0008】
本発明は、前記した温間の吸気流量の少ないときの不具合に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ロータリーエンジンに吸気及び燃料を供給するための構成に工夫を凝らして、吸気流量の少ないときでも燃料の輸送効率を向上することにより、制御応答性を向上し、ひいいては出力及び燃費の改善を図ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本発明では、エンジンへの吸気流量の変化に応じて第2吸気通路のシャッター弁を開閉することにより、吸気の流速をいつでも適切な範囲に維持して、燃料の輸送効率を高めるようにした。
【0010】
具体的に、請求項1の発明では、ハウジング内にロータを収容してその外周側に複数の作動室を区画し、該ロータの回転に連れて各作動室がそれぞれ周方向に移動しながら、順に吸気、圧縮、膨張及び排気の各行程を行うようにしたロータリーエンジンの燃料供給制御装置を対象として、前記吸気行程にある作動室に個別に連通するようにそれぞれ設けられた第1及び第2吸気通路と、この各吸気通路にそれぞれ燃料を噴射するように配設された第1及び第2燃料噴射弁と、前記第2吸気通路に配設されたシャッター弁と、エンジン回転速度が第1設定回転速度以下のときに前記シャッター弁を閉じる一方、その第1設定回転速度よりも高い第2設定回転速度以上ではシャッター弁を開き、さらに、前記第1設定回転速度よりも高く且つ第2設定回転速度よりも低いときには、エンジン負荷に応じてシャッター弁を開閉制御するシャッター弁制御手段とを備えるものとし、さらに、このシャッター弁制御手段を、エンジン回転速度が前記第1設定回転速度よりも高く且つ第2設定回転速度よりも低いときには、エンジン負荷が、エンジン回転速度の高いときほど低負荷側の値となるように設定した閾値を超えたときに、シャッター弁を開くものとした。
【0011】
前記の構成により、ロータリーエンジンの運転中に、エンジン回転速度が第1設定回転速度以下のときにはシャッター弁制御手段により第2吸気通路のシャッター弁が閉じられて、吸気は第1吸気通路のみから作動室に吸入されるようになる。このことで、吸気流量の少ない状態であっても、第1吸気通路の吸気流速が十分に高くなり、この第1吸気通路に第1燃料噴射弁から燃料を噴射すれば、その燃料をあまり通路壁面に付着させることなく、効率良く作動室へ輸送することができるとともに、燃料の気化霧化も促進できる。
【0012】
一方、エンジン回転速度が第2設定回転速度以上であれば、前記シャッター弁は開かれて、第1及び第2の両方の吸気通路から十分な量の吸気を作動室へ供給できる。このときには第1及び第2吸気通路の吸気流速は何れも十分に高いので、第1及び第2燃料噴射弁の両方から燃料を噴射するようにすればよい。
【0013】
さらに、エンジン回転速度が前記第1設定回転速度よりも高く且つ第2設定回転速度よりも低いときには、エンジン負荷が予め設定した閾値を超えたときに、前記シャッター弁が開かれる。この閾値は、エンジン回転速度の高いときほど低負荷側の値となるように設定されているので、シャッター弁は、エンジンの負荷乃至回転速度の上昇に対応する吸気流量の増大に応じて、吸気の流速を適切な範囲に維持できるようなタイミングで開かれることになる。
【0014】
つまり、エンジンの低速域や低中速域においても吸気の流速を燃料の輸送効率が高くなるような適切な範囲に維持して、エンジン出力乃至燃費を改善することができる。
【0015】
より具体的には、前記シャッター弁の開作動の閾値は、当該シャッター弁を開いた状態で第1及び第2吸気通路をそれぞれ流通する吸気の流速がいずれも第1の設定値以上になるような値とするのが好ましい(請求項2の発明)。その第1の設定値としては、吸気の流れによって所要の輸送能力が得られるような流速値を例えば実験や数値計算等によって求めて、設定すればよい。
【0016】
また、前記閾値は、シャッター弁を閉じた状態で第1吸気通路のみを流通する吸気の流速が、第1設定値よりも高い第2の設定値以下になるような値とするのが好ましい(請求項3の発明)。すなわち、第2設定値は、第1吸気通路のみを流通する吸気の抵抗が過大なものとならないように実験や数値計算等によって求めて、設定すればよい。
【0017】
或いは、前記閾値は、シャッター弁を開いた状態で第1及び第2吸気通路をそれぞれ流通する吸気の流速と、シャッター弁を閉じた状態で第1吸気通路のみを流通する吸気の流速との偏差が、所定値以下になるような値とすればよい(請求項4の発明)。すなわち、吸気が第1吸気通路のみを流通するときの速度と、第1及び第2吸気通路に分かれて流通するときの速度とがあまり異ならない状況下でシャッター弁の開閉を行うようにすれば、その開閉に伴うエンジントルクの変動が小さくなり、ショックのない良好な運転フィーリングが得られる。尚、前記偏差の許容値(所定値)も実験的に求めて設定すればよい。
【0018】
さらに、請求項5の発明として、第1燃料噴射弁よりも上流の第1吸気通路に燃料を噴射するように第3燃料噴射弁を配設し、この第3燃料噴射弁の容量を、第2燃料噴射弁と略同じで且つ前記第1燃料噴射弁よりも大きいものとするのが好ましい。
【0019】
こうすれば、エンジンの高出力化に対して十分な燃料供給能力を得ることができ、しかも、相対的に容量の大きな第2、第3の燃料噴射弁を共通化できるから、燃料噴射弁の個数は増えてもコストの増大は抑えられる。また、低出力時に単独で用いる第1燃料噴射弁の容量は相対的に小さくて済み、自ずと最小分解能の高いものになるので、制御精度も向上する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基いて説明する。
【0021】
(エンジンの全体構成)
図2は、本発明の実施形態に係るロータリーエンジン1の要部の構成を示し、トロコイド内周面2aを有する繭状のロータハウジング2とサイドハウジング3とに囲まれたロータ収容室4(気筒)には概略三角形状のロータ6が収容されていて、その外周側に3つの作動室5,5,5が区画されている。このロータリーエンジン1は、図3に示すように、2つのロータハウジング2,2を3つのサイドハウジング3,3,3の間に挟み込むようにして一体化し、その間に形成される2つの気筒4,4にそれぞれロータ6,6を収容した2ロータタイプのものである。以下、この実施形態では、2つのロータハウジング2,2の中間に位置するサイドハウジング3(図2に示すもの)を両端側のものと区別して、インターミディエイトハウジング3と呼ぶものとする。
【0022】
前記ロータ6の内側には、図示しないが内歯車が形成されていて、この内歯車とサイドハウジング3側の外歯車とが噛合するとともに、ロータ6は、インターミディエイトハウジング3及びサイドハウジング3を貫通するクランクシャフト7に対して、遊星回転運動をするように支持されている。すなわち、前記ロータ6の回転運動は内歯車と外歯車との噛み合いによって規定され、ロータ6は、外周の3つの頂部にそれぞれ配設されたシール部が各々ロータハウジング2のトロコイド内周面2aに当接した状態で、前記クランクシャフト7の偏心輪7aの周りを自転しながら、該クランクシャフト7の軸心Xの周りに公転する。そして、ロータ6が1回転する間に、該ロータ6の各頂部間にそれぞれ形成された作動室5,5,…が周方向に移動しながら、吸気、圧縮、膨張(燃焼)及び排気の各行程を行い、これにより発生する回転力がロータ6を介してクランクシャフト7から出力される。
【0023】
より具体的に、図2に示すようにクランクシャフト7の軸心Xの方向に見ると、各気筒4の左右方向の一側(図例では左側)が概ね吸気及び排気行程の領域になり、その反対側(図例では右側)が概ね圧縮及び膨張行程の領域になる。そして、図示の如く第1吸気ポート11(後述)等に連通する作動室5(図の左上側の作動室)は吸気行程の後半にあり、この作動室5がロータ6の回転に連れて図の時計回りに移動して圧縮行程に移行すると、その内部に吸入された混合気が圧縮され、その後、図の右側に示す作動室5のように圧縮行程の終盤から膨張行程にかけて所定のタイミングにて点火プラグ9,10により混合気に点火されて、燃焼が行われるものである。
【0024】
前記インターミディエイトハウジング3には、両側の2つの気筒4,4においてそれぞれ吸気行程にある作動室5に連通するように一対の第1吸気ポート11,11(図2には1つのみ示す)が形成され、同様に、排気行程にある作動室5,5にそれぞれ連通するように一対の第1排気ポート12,12(図2には1つのみ示す)が形成されている。一方、前記サイドハウジング3には、吸気行程にある作動室5にそれぞれ連通するように第2及び第3の2つの吸気ポート13,14が形成され、また、排気行程にある作動室5に連通するように第2排気ポート15が形成されている。
【0025】
そして、前記第1、第2及び第3吸気ポート11,13,14が、それぞれ、各気筒4の吸気行程にある作動室5に吸気を供給する吸気通路16の下流端部を構成している。すなわち、図1に示すように、吸気通路16は、各気筒4毎に3つに分岐してそれぞれ前記3つの吸気ポート11,13,14に連通していて、それら3つの経路による吸気の供給状態をエンジン1の運転状態に応じて変更することで、低負荷低回転から高負荷高回転まで全ての運転領域に渡って気筒4への吸気の充填を効率良く行えるようになっている。尚、図1は、2つの気筒4,4のうちの一方(図3における手前側のもの)を模式的に2つに分けて、吸排気系の全体的な構成と制御システムの構成とを示したものであり、図の左側には、図2と同様にインターミディエイトハウジング3の側が、また、図の右側にはサイドハウジング3の側が示されている。
【0026】
前記図1に示すように、吸気通路16の上流端にはエアクリーナ17が配設され、そこから下流側に向かって順に、ホットワイヤ式エアフローセンサ18と、ステッピングモータ等により駆動されて通路の断面積を調節する第1の電気式スロットル弁23とが配設されている。また、吸気通路16はスロットル弁23よりも下流側で2つの通路19,20に分岐し、そのうちの一方の通路19は下流側でさらに2つの独立吸気通路21,22に分かれている。そして、第1の独立吸気通路21の下流端が前記第1吸気ポート11に接続され、第2の独立吸気通路22の下流端が前記第2吸気ポート13に連通されている。
【0027】
また、前記他方の通路20の下流端は第3吸気ポート14に接続されるとともに、そこにはアクチュエータにより駆動される電磁式のロータリーバルブ(図示せず)が配設されており、前記第1及び第2独立吸気通路21,22による吸気の供給だけでは吸気量が不足する所定の高回転状態でのみ、前記ロータリーバルブが開かれて、吸気を供給するようになっている。以下、この通路20を追加吸気通路20と呼ぶ。
【0028】
前記第1独立吸気通路21には、吸気マニホルド24内の通路に燃料を噴射するように比較的大容量のマニホルド噴射用第1インジェクタ25(燃料噴射弁)が配設されるとともに、それよりも下流側の第1吸気ポート11内に燃料を噴射するように比較的小容量のポート噴射用インジェクタ26(燃料噴射弁)が配設されている。このポート噴射用インジェクタ26は、作動室5に開口する第1吸気ポート11の下流端部近傍に向かって燃料を噴射するように配置されており、さらに、そのように噴射された燃料噴霧が衝突するポート壁面に向かって、スロットル弁23よりも上流の吸気通路16から取り出した高速の空気流を吹出すように、空気吹出し通路27が設けられている。
【0029】
一方、前記第2独立吸気通路22には、この通路22を開閉するシャッター弁28が配設されている。このシャッター弁28はバタフライバルブからなり、吸気通路16の負圧を利用する電磁空圧式のアクチュエータ29によって駆動されて、第2独立吸気通路22を全閉とするか又は全開とするかのいずれかの状態に切換えられるようになっている。尚、シャッター弁28は、弁体の固着を防止するために、全閉状態であっても通路22の周壁との間に所定量の隙間を生じるように設けられている。また、前記シャッター弁28よりも下流側の第2独立吸気通路22には、前記第1独立吸気通路21のマニホルド噴射用第1インジェクタ25と同じインジェクタ(マニホルド噴射用第2インジェクタ32)が配設されている。
【0030】
尚、図1及び図2に示す符号30は、ロータ6側面等から吹き抜けたブローバイガスの一部を回収するキャッチタンクであり、ここで回収されたブローバイガスは、図1にのみ示すブローバイガス通路31によって吸気通路16に導入される。
【0031】
上述の如き構成の吸気系に対し、エンジン1の排気系は、前記第1及び第2排気ポート12,15がそれぞれ排気マニホルド33に接続し、この排気マニホルド33において2つの気筒4,4からの排気が集合されて、下流側の排気管34に流通するようになっている。そして、前記排気マニホルド33には、排気中の酸素濃度を検出するリニアO2センサ35が配設され、また、排気管34には排気を浄化するための2つの触媒コンバータ36,37が直列に配設されている。前記リニアO2センサ35は、理論空燃比を含む所定の空燃比範囲において酸素濃度に対しリニアな信号を出力するものであり、前記インジェクタ25,26,32による燃料噴射量のフィードバック制御のために用いられる。
【0032】
尚、図1に示す符号38は、ロータリーエンジン1のクランクシャフト7の一端側に配設されてその回転角度を検出する電磁式のクランク角センサである。また、符号39は、ロータハウジング2の内部に形成されたウォータジャケット(図示せず)に臨んで冷却水の温度状態(エンジン水温)を検出する水温センサである。
【0033】
前記点火プラグ9,10の点火回路、スロットル弁23のモータ、インジェクタ25,26,32、シャッター弁28のアクチュエータ29等は、コントロールユニット40(以下、ECUと略称する)により作動制御されるようになっている。このECU40には少なくとも前記エアフローセンサ18の出力信号と、リニアO2センサ35の出力信号と、クランク角センサ38の出力信号と、水温センサ39の出力信号とが入力され、さらに、アクセル開度センサ41からの信号が入力されるようになっている。そして、このECU40においてエンジン1の運転状態(例えばエンジン負荷及びエンジン回転速度)を判定するとともに、その運転状態に応じて各気筒4に点火時期の制御や燃料噴射量及び噴射タイミングの制御が行われ、さらに吸気の流通する経路の切換え等が行われる。
【0034】
すなわち、図4に制御マップの一例を示すように、エンジン1の低負荷域及び中負荷域では各気筒4の作動室5,5,…に供給される空気及び燃料の比率(空燃比)は略理論空燃比になるように制御され(図にλ=1領域と示す)、一方、高負荷域では理論空燃比よりもリッチになるように制御される(図にエンリッチ領域と示す)。具体的には、スロットル弁23により調整される吸気の流量がエアフローセンサ18により検出され、この検出値に応じて、目標とする空燃比になるようにインジェクタ25,26,32による燃料の噴射量が制御される。
【0035】
尚、図示のエンリッチ領域の高回転側に斜線を入れて示す領域では、エンジン1及び触媒コンバータ36,37の過度の温度上昇を抑制すべく、意図的に排ガスの温度を下げる必要があり、このために、空燃比をエンリッチ領域でも特にリッチな状態(例えばA/F=11〜12)になるように制御する。
【0036】
また、主にエンジン回転速度neに対応してシャッター弁28の開閉状態が切換えられる。すなわち、シャッター弁28は、エンジン回転速度neが第1設定回転速度ne1(例えば3000rpm)以下の低回転域では全閉とされ、それよりも高回転側で且つ第2設定回転速度ne2(例えば4000rpm)よりも低回転側の低中回転域では、図に破線で示す境界線Bの下側(境界線Bを含む低負荷側)で全閉とされる一方、該境界線Bよりも上側(高負荷側)では全開とされる。
【0037】
さらに、シャッター弁28は、エンジン回転速度neが第2設定回転速度ne2以上の中高回転域乃至高回転域では全開とされる。また、例えば6500rpm以上の高回転域では追加吸気通路20と第3吸気ポート14との間のロータリーバルブが開かれて、気筒4には追加吸気通路20及び第3吸気ポート14からも吸気が供給されるようになる。
【0038】
前記境界線Bは、エンジン1の低中回転域(ne1<ne<ne2)においては、シャッター弁28の開閉制御のためのエンジン負荷(吸気充填効率ce)の閾値を示すものであり、エンジン回転速度neの高いときほど低負荷側の値となるように設定されている。また、境界線B上の吸気充填効率ceの値は、シャッター弁28閉じたとしても第1独立吸気通路21及び第1吸気ポート11における吸気抵抗が過度に大きくならず、しかも、シャッター弁28を開いたとしても、前記第1吸気ポート11等と第2独立吸気通路22との両方で所要の吸気流速が得られるような範囲に設定されている。
【0039】
より具体的には、例えば、前記シャッター弁28を開いた状態で第1吸気ポート11や第2独立吸気通路22をそれぞれ流通する吸気の流速を実験や数値計算等によって求め、その吸気流によって所要の燃料輸送効率を得られるような値を設定するとともに(第1設定値)、同様にして、シャッター弁28を閉じた状態で第1吸気ポート11等の吸気の抵抗が過大なものとならないように、流速の上限値を設定する(第2設定値)。そして、シャッター弁28閉じたときの第1吸気ポート11等の吸気流速が前記第2設定値以下になり、且つ、シャッター弁28を開いたときの前記第1吸気ポート11等及び第2独立吸気通路22の吸気流速が何れも前記第1設定値以上になるような吸気流量を目安として、前記境界線Bを設定する。
【0040】
(燃料噴射制御)
次に、各気筒4毎に3つのインジェクタ25,26,32を使い分ける燃料供給制御の手順について、詳細に説明する。
【0041】
まず、図5の機能ブロック図に示すように、ECU40には、クランク角センサ38からの信号に基づいてエンジン回転速度neを演算する回転速度演算部40aと、そうして求めたエンジン回転速度neとエアフローセンサ18の信号から求めた吸気量とに基づいて、作動室5への吸気充填効率ce(エンジン負荷)を演算するエンジン負荷演算部40bと、エンジン水温や大気圧、さらには空調装置の作動状態等の環境条件を検出し、この環境条件やエンジン1の運転状態に応じた空燃比のリッチ化補正等のための補正係数を演算する環境条件演算部40cと、それら各演算部による演算結果に基づいて、即ち、主にエンジン1の運転状態に基づいて、3つのインジェクタ25,26,32による総噴射量(目標燃料供給量)を演算する総噴射量演算部40d(燃料供給量決定手段)とを備えている。
【0042】
さらに、ECU40には、前記総噴射量演算部40dにより演算された総噴射量とエンジン回転速度neとに基づいて、ポート噴射用インジェクタ26、マニホルド噴射用第2インジェクタ32及びマニホルド噴射用第1インジェクタ25のそれぞれによる燃料噴射量を演算する第1、第2及び第3の3つの噴射量演算部40e,40f,40gと、前記マニホルド噴射用第2インジェクタ32の作動状態に対応するように、シャッター弁28の開閉切換えの判断を行うシャッター弁開閉判断部40hとを備えている。尚、前記40a〜40hの各部の機能は、いずれも、ECU40のメモリに電子的に格納されているプログラムがCPUにより実行されることによって、実現する。
【0043】
前記3つのインジェクタ25,26,32による燃料噴射の順序は、基本的には、まず、ポート噴射用インジェクタ26を作動させ、次にマニホルド噴射用第2インジェクタ32を作動させ、その次にマニホルド噴射用第1インジェクタ25を作動させるというものである。このことから、以下、前記ポート噴射用インジェクタ26をプライマリインジェクタ26と呼び、マニホルド噴射用第2インジェクタ32をセカンダリインジェクタ32と呼び、さらに、マニホルド噴射用第1インジェクタ25をサードインジェクタ25と呼ぶことにする。従って、前記第1噴射量演算部40eはプライマリインジェクタ26の燃料噴射量を演算し、第2噴射量演算部40fはセカンダリインジェクタ32の燃料噴射量を演算し、第3噴射量演算部40gはサードインジェクタ25の燃料噴射量を演算する。
【0044】
より具体的には、図6のダイヤグラムに示すように、3つのインジェクタ25,26,32の使い分けは、基本的に、ECU40の総噴射量演算部40dによって演算された総噴射量Qに基づいて決定される。すなわち、まず、図の横軸に示す総噴射量Qが第1設定量Q1以下のときには(Q≦Q1)、図に実線で示すように、プライマリインジェクタ26のみに燃料の噴射作動を行わせる。ここで、第1設定量Q1というのは、シャッター弁28の制御における低中速域での閾値に対応するものであり、図4のマップで中低速域における境界線B上の吸気充填効率ceの値に対して、略理論空燃比になるような燃料噴射量である。これは、プライマリインジェクタ26の燃料パルス巾である図示のTαに相当する。
【0045】
この実施形態では、前記のパルス巾Tαは、プライマリインジェクタ26によって燃料を所定のクランク角期間内に噴射し得るように設定したパルス巾Tβよりも小さい。その所定のクランク角期間というのは、プライマリインジェクタ26によって噴射した燃料が吸気の流れに載って良好に輸送されて、第1吸気ポート11の壁面やロータ6の側面等にあまり付着することなく、作動室5に吸入されるような期間(以下、好適噴射期間ともいう)のことであり、インジェクタ26による燃料の噴射期間が好適噴射期間内に収まるかどうかは、実質的にはインジェクタ26の開弁期間の長さ(クランク角)、即ちパルス巾T1が設定パルス巾Tβ以下になるかどうかで判断できる。
【0046】
前記のように、燃料をプライマリインジェクタ26のみにより噴射するようにすれば、最小分解能の高い小容量のインジェクタ26のみによって燃料が噴射されることで、自ずと噴射量の制御精度が高くなるとともに、燃料は作動室5への開口部に近い第1吸気ポート11に噴射されることから、輸送遅れが小さくなって、制御の応答性も高くなる。
【0047】
その際、シャッター弁28は全閉とされ、吸気は主に第1独立吸気通路21のみに流通するようになるから、吸気の総流量の少ない状態であっても、第1独立吸気通路21における吸気の流速は十分に高くなる。このことで、作動室5への吸気及び燃料の吸入は極めて効率良く行われて、輸送遅れが可及的に小さくなるとともに、燃料のポート壁面への付着も軽減され、気化霧化も良好なものとなる。しかも、吸気の流速が高くなり過ぎて、無用の吸気抵抗の増大を招くこともない。
【0048】
次に、総噴射量Qが前記第1設定量Q1よりも多くて、且つ第2設定量Q2以下のときには、前記プライマリインジェクタ26だけでなく、セカンダリインジェクタ32によっても燃料を噴射させ(図には破線で示す)、且つ、それら両方のインジェクタ26,32による燃料噴射量を互いに略同じになるように制御する。ここで、図の縦軸に示す燃料パルス巾は、プライマリインジェクタ26の容量がセカンダリインジェクタ32よりも小さいことを反映して、プライマリインジェクタ26のパルス巾T1がセカンダリインジェクタのパルス巾T2よりも長くなっているが、2つのインジェクタ26,32によって各々第1及び第2独立吸気通路21,22に噴射される燃料の量は略同じである。
【0049】
その際、前記のセカンダリインジェクタ32による噴射作動の開始に対応してシャッター弁28が開かれ、これにより、第1及び第2独立吸気通路21,22を略同じ量の吸気が流通するようになる。このときには既に吸気の流量が十分に多くなっていて、両方の独立吸気通路21、22を流通する吸気の流速は、燃料の輸送に適した十分に高いものとなる。そして、そのようにして第1及び第2独立吸気通路21,22を流通した吸気は、第1及び第2吸気ポート11,13を介して作動室5に対しその両側から導入される。
【0050】
ここで、前記第1及び第2吸気ポート11,13は、それぞれ、ロータ6の両側面に摺接するインターミディエイトハウジング3及びサイドハウジング3の各内壁面に開口されており、ロータ6の回転に伴い吸気行程にある作動室5が第1及び第2吸気ポート11,13に連通し、さらにその作動室5の容積が増大すると、これに伴い第1及び第2独立吸気通路21,22並びに第1及び第2吸気ポート11,13からそれぞれ略同じ量の混合気が相対向して作動室5に導入されるようになる。このように、ロータ6及び作動室5の移動する方向に対して相対向する両側から略同じ量の混合気(吸気及び燃料)が導入されることで、作動室5における燃料分布の偏りは非常に小さくなり、燃焼性が大幅に向上する。
【0051】
次に、総噴射量Qが第2設定量Q2よりも多くなれば、3つのインジェクタ25,26,32の全てによって燃料を噴射させる。この際、プライマリインジェクタ26による燃料噴射量は、前記設定パルス巾Tβに対応する分量に固定して(T1=Tβ)、セカンダリインジェクタ32による燃料噴射量は総噴射量Qの略半分とし、さらに、それらの噴射量を合わせても総噴射量Qに不足する残りの燃料を、図6において一点差線で示すようにサードインジェクタ25によって噴射させる。言い換えると、前記プライマリインジェクタ26及びサードインジェクタ25によって総噴射量の略半分の燃料を第1独立吸気通路21に噴射させるとともに、前記セカンダリインジェクタ32によって総噴射量Qの略半分の燃料を第2独立吸気通路22に噴射させる。
【0052】
このことで、燃料の総噴射量Qが多くなっても、プライマリインジェクタ26による燃料の噴射期間を好適噴射期間内に留めて、噴射した燃料を作動室5に対し良好に輸送することができるとともに、第1及び第2独立吸気通路21,22にそれぞれ噴射する燃料の量を略同じにして、その略同量の燃料を作動室5に対しその両側から導入することができる。
【0053】
さらに、引き続いて総噴射量Qが増大して、セカンダリインジェクタ32による燃料噴射量が増量され、このセカンダリインジェクタ32によって前記好適噴射期間内に噴射し得る量を超えたときでも(Q>Q3)、該セカンダリインジェクタ32による燃料噴射量はサードインジェクタ25と略同様に増量するようにする(T2>Tβ)。このことは、セカンダリインジェクタ32からの燃料の作動室5への輸送効率がやや低下しても、当該作動室5に対してその両側から略同量の吸気及び燃料を供給することを優先するということである。
【0054】
そして、さらに総噴射量Qが多くなって、セカンダリインジェクタ32による燃料噴射量が、このインジェクタ32によって燃料を噴射し得る制御上の上限値に達すれば(Q=Q4)、該セカンダリインジェクタ32による燃料噴射量はその上限値に固定せざるを得ないので(T2=Tmax)、それ以降は、サードインジェクタ25の燃料噴射量のみを増量するようにする。そして、サードインジェクタ25による燃料噴射量が好適噴射期間内に噴射し得る量を超えれば(Q>Q5)、該サードインジェクタ25による燃料噴射量は設定パルス巾Tβに対応する量に固定して(T3=Tβ)、プライマリインジェクタ26による燃料噴射量を増量するようにする(T1>Tβ)。
【0055】
すなわち、プライマリインジェクタ26又はサードインジェクタ25のいずれか一方により燃料を、好適噴射期間を超えて噴射しなくてはならないのであれば、そのときには制御応答性の高いプライマリインジェクタ26の方を増量するようにする。こうすれば、その後に総噴射量Qが減少したときに、プライマリインジェクタ26の燃料噴射量は直ちに減量することができ、好適噴射期間を超えて燃料を噴射することによる悪影響を比較的、小さくすることができる。
【0056】
そうして、さらに総噴射量Qが多くなって、前記プライマリインジェクタ26による燃料噴射量も制御上の上限値に達すれば(Q=Q6)、該プライマリインジェクタ26による燃料噴射量はその上限値に固定せざるを得ないから(T1=Tmax)、それ以降は、サード1インジェクタ25による燃料噴射量を増量するようにする(T3>Tβ)。
【0057】
以下に、前記の如くインジェクタ25,26,32を使い分ける制御の手順を図7及び図8に示すフローチャート図に基づいて具体的に説明する。尚、この制御は、各気筒4の作動室5,5,…毎にその点火時期に同期した所定のタイミングにて、実行される。
【0058】
まず、図7に示すフローのスタート後のステップSA1において、クランク角センサ38からの信号に基づいてエンジン回転速度neを演算し、続くステップSA2では前記エンジン回転速度neとエアフローセンサ18からの信号とに基づいて作動室5への吸気充填効率ce(エンジン負荷)を演算する。続いて、ステップSA3ではエンジン水温等の環境条件等に基づいて補正係数を演算し、続くステップSA4において、前記の演算した吸気充填効率ceに対して目標とする空燃比(図4の制御マップ参照)になるように、インジェクタ総噴射量Qを演算する。尚、前記の如く演算したエンジン回転速度ne、吸気充填効率ce、総噴射量Q等は逐次ECU40のメモリに記憶更新される。この点は、以下のステップにおける噴射パルス巾T1,T2,T3についても同様である。
【0059】
続いて、ステップSA5において、プライマリインジェクタ26へ出力する燃料噴射パルスのパルス巾T1を演算する。ここで求めるのは、前記ステップSA4で求めたインジェクタ総噴射量Qを全てプライマリインジェクタ26により噴射する場合に必要なパルス巾であり、総噴射量Qとインジェクタ26の流量係数とに基づいて周知の計算により求めればよい。そして、ステップSA6において、そのようにして求めたパルス巾T1が、シャッター弁28の制御における閾値に対応するパルス巾Tα以下かどうか判定し(T1≦Tα?)、この判定がYESならば図8のフローのステップSA17に進んで、プライマリインジェクタ26に燃料噴射パルスを出力して、燃料を噴射させ(噴射実行)、しかる後にリターンする。
【0060】
一方、前記の判定がNOであればステップSA7に進み、今度はセカンダリインジェクタ32へ出力する燃料噴射パルスのパルス巾T2を演算する。続いて、ステップSA8においてプライマリインジェクタ26への燃料噴射パルス巾T1を再度、演算して、図8のフローに示すステップSA9に進む。すなわち、総噴射量Qを2等分して、それぞれプライマリ及びセカンダリインジェクタ26,32により噴射させるよう、燃料噴射パルス巾T1,T2をそれぞれ決定する。この際、インジェクタの容量が異なることから、燃料噴射パルス巾T1,T2の大小関係は、T1>T2になる。また、プライマリインジェクタ26の燃料噴射パルス巾T1は後述の如く再度、演算される場合があるが、セカンダリインジェクタ32の燃料噴射パルス巾T2は再度、演算されることはない。それ故、パルス巾T2については制御上の上限値Tmax以下に制限される。
【0061】
前記ステップSA8に続いて、図8に示すフローのステップSA9では、今度は、プライマリインジェクタ26の燃料噴射パルス巾T1が好適噴射期間に対応する設定範囲内にあるかどうか判定する(T1≦Tβ?)。この判定がYESならばステップSA17に進んで、プライマリ及びセカンダリインジェクタ26,32にそれぞれ燃料噴射パルスを出力して、両方のインジェクタ26,32から略同量の燃料を噴射させ(噴射実行)、しかる後にリターンする。
【0062】
一方、前記の判定がNOであればステップSA10に進み、一旦、プライマリインジェクタ26の燃料噴射パルス巾T1を前記設定範囲の上限値である設定パルス巾Tβに固定し(T1←Tβ)、続くステップSA11において、サードインジェクタ25へ出力する燃料噴射パルスのパルス巾T3を演算する。すなわち、まず、総噴射量Qを半分にして、これから前記設定パルス巾にてプライマリインジェクタ26が噴射する燃料の量を減算し、これにより得られた量の燃料をサードインジェクタ25により噴射する場合のパルス巾を求める。そして、ステップSA12において、前記サードインジェクタ25の燃料噴射パルス巾T3が好適噴射期間に対応する設定範囲内にあるかどうか判定し(T3≦Tβ?)、この判定がYESならばステップSA17に進んで、プライマリ、セカンダリ及びサードインジェクタ26,32、25にそれぞれ燃料噴射パルスを出力して、3つのインジェクタ25,26,32により燃料を噴射させ(噴射実行)、しかる後にリターンする。
【0063】
すなわち、プライマリインジェクタ26により総噴射量Qの略半分の燃料を所定クランク角期間内にて噴射できるときには、このプライマリインジェクタ26とセカンダリインジェクタ32とによって略同量の燃料を噴射させる。また、そうでないときでもプライマリインジェクタ26の燃料噴射量は前記所定クランク角期間内にて噴射可能な量に制限し、不足分はサードインジェクタ25により噴射させて、該プライマリ及びサードインジェクタ26,25による燃料噴射量とセカンダリインジェクタ32による燃料噴射量とが略同じになるようにする。
【0064】
前記ステップSA12における判定がNOで、サードインジェクタ25により燃料を好適噴射期間内に噴射できない場合には、ステップSA13に進んでサードインジェクタ25の燃料噴射パルス巾T3を前記設定パルス巾Tβに固定し(T3←Tβ)、続くステップSA14において、プライマリインジェクタ26への燃料噴射パルス巾T1を再度、演算する。すなわち、総噴射量Qからセカンダリインジェクタ32による燃料噴射量を減算し、そこからさらにサードインジェクタ25による燃料噴射量(前記設定パルス巾Tβにてサードインジェクタ25が噴射する燃料の量)を減算し、これにより得られた量の燃料をプライマリインジェクタ26により噴射する場合のパルス巾を求める。
【0065】
続いて、ステップSA15において、前記プライマリインジェクタ26の燃料噴射パルス巾T1が、制御上の上限値Tmax以下であるかどうか判定し(T1≦Tmax?)、この判定がYESならばステップSA17に進んで、プライマリ、セカンダリ及びサードインジェクタ26,32、25にそれぞれ燃料噴射パルスを出力して、3つのインジェクタ25,26,32により燃料を噴射させ(噴射実行)、しかる後にリターンする。
【0066】
つまり、総噴射量Qが多くなって、その半分の燃料をプライマリ及びサードインジェクタ32によっても所定クランク角期間内にて噴射できないようになれば、それ以降はサードインジェクタ25ではなく、より応答性の高いプライマリインジェクタ26の燃料噴射量を制御上の上限値になるまで増量する。
【0067】
一方、前記プライマリインジェクタ26の燃料噴射パルス巾T1が制御上の上限値Tmaxを超えていれば(判定がNO)、ステップSA16に進んで、サードインジェクタ25への燃料噴射パルス巾T3を再度、演算する。すなわち、総噴射量Qからセカンダリインジェクタ32による燃料噴射量と前記上限値のパルス巾Tmaxにてプライマリインジェクタ26により噴射される燃料の量とをそれぞれ減算し、これにより得られた量の燃料をサードインジェクタ25により噴射する場合のパルス巾を求める。そうして、ステップSA17に進んで、プライマリ、セカンダリ及びサードインジェクタ26,32、25にそれぞれ燃料噴射パルスを出力して、3つのインジェクタ25,26,32により燃料を噴射させ(噴射実行)、しかる後にリターンする。
【0068】
つまり、プライマリインジェクタ26の燃料噴射量が制御上の上限値に達すれば、それ以降はサードインジェクタ25の燃料噴射量のみを制御上の上限値になるまで増量する。
【0069】
前記図7に示すフローのステップSA1がECU40の回転速度演算部40aに、また、ステップSA2がエンジン負荷演算部40bに、それぞれ対応する。さらに、ステップSA3が環境条件演算部40cに、また、ステップSA4が総噴射量演算部40dに、それぞれ対応する。
【0070】
また、前記フローのステップSA5、SA8、及び図8のフローのステップSA10、SA14が第1噴射量演算部40eに、ステップSA7が第2噴射量演算部40fに、さらに、ステップSA11、SA13、SA16が第3噴射量演算部40gに、それぞれ対応する。
【0071】
次に、本発明の特徴部分として、ECU40のシャッター弁開閉判断部40hによるシャッター弁28の制御手順を図9に示すフローチャート図に基づいて具体的に説明する。尚、この制御も前記したインジェクタの制御と同じタイミングにて、実行される。
【0072】
まず、スタート後のステップSB1,SB2において、それぞれ、前記図7のフローのステップSA1,SA2にて演算されて、ECU40のメモリに記憶更新されているエンジン回転速度ne及び吸気充填効率ceを読み込む。続いて、ステップSB3において、同様に前記フローのステップSA7にて演算されて、ECU40のメモリに記憶更新されているセカンダリインジェクタ32の燃料噴射パルス巾T2を読み込む。
【0073】
続いて、ステップSB4において、燃料噴射パルス巾T2に基づいて、セカンダリインジェクタ32により燃料を噴射するのか否かを判定するとともに、エンジン回転速度neが第2設定回転速度ne2以上であるかどうか判定する。そして、それらの判定の結果、少なくとも一方がYESならばステップSB5に進んでシャッター弁28を開く一方、いずれの判定結果もNOであればステップSB6に進んでシャッター弁28を閉じ、しかる後にリターンする。
【0074】
つまり、シャッター弁28は、エンジン回転速度neが第2設定回転速度ne2以上であるか、又はセカンダリインジェクタ32による噴射作動が行われるときに、開かれるようになっている。換言すれば、シャッター弁28は、エンジン1の低中速域(ne1<ne<ne2)においては吸気充填効率ce(エンジン負荷)が閾値(図4の境界線Bを参照)を超えたときに、開かれる。
【0075】
尚、中高回転域以上の運転域において(ne≧ne2)、エンジン負荷の大小に拘わらずシャッター弁28を開くようにしているのは、特に低負荷且つ高回転の状態でシャッター弁28を開閉することに起因する燃焼の不安定化を防止するためであり、また、高回転域での加速運転に際して、シャッター弁28の作動遅れによって運転フィーリングが悪化することを防止するためである。さらに、高回転域で特にエンジン負荷の低いときには、実際にはいわゆる燃料カット制御が行われることになり、一時的に燃料の供給が停止されるが、この状態で次にアクセルペダルが踏まれて、燃料の供給を再開するときのためにも、予めシャッター弁28を開いておく必要がある。
【0076】
したがって、この実施形態に係るロータリーエンジン1の燃料供給制御装置Aによると、各気筒4に連通する吸気通路16の下流側を3本に分岐させ、そのうちの第1独立吸気通路21に連通する第1吸気ポート11に比較的小容量のプライマリインジェクタ26を配設し、第2独立吸気通路22には比較的大容量のセカンダリインジェクタ32を配設するとともに、これと同じインジェクタ25を前記プライマリインジェクタ26よりも上流の第1独立吸気通路21にも配設したことで、即ち、各気筒4毎に3つのインジェクタ25,26,32を装備したことにより、燃料の最大供給能力を確保して、エンジン1の高負荷高回転状態での運転にも十分に対応することができる。
【0077】
ここで、吸気ポート噴射用のプライマリインジェクタ26の容量は比較的小さなものとしており、また、マニホルド噴射用のセカンダリ及びサードインジェクタ32,25の容量もあまり大きくする必要はないから、特に容量の大きな専用のインジェクタを用いる必要がなくなり、しかも、マニホルド噴射用の2つのインジェクタ32,25は同じものを用いているので、部品の共通化によるコストの低減が図られ、インジェクタの個数は多くても、コストの増大を抑制できる。
【0078】
また、この実施形態では、エンジン1が低速域にあるか(ne≦ne1)、或いは低中速域にあって(ne1<ne≦ne2)且つエンジン負荷が予め設定した閾値以下のときには、第2独立吸気通路22のシャッター弁28を閉じて、吸気を主に第1独立吸気通路21のみに流通させるとともに、燃料をプライマリインジェクタ26のみから噴射させるようにしている。このことで、吸気の流量が少ないときでもその流速を十分に高めて、燃料の吸気ポート壁面への付着を抑制し、気化霧化を促しながら、燃料及び空気を作動室5へ極めて効率良く吸入させることができる。
【0079】
一方、エンジン1が低中速域にあって且つエンジン負荷が前記閾値よりも大きいか、或いは中高速域以上(ne2≦ne)の状態にあるときには、吸気の流量が多くなって、第1及び第2の両方の独立吸気通路21,22においてそれぞれ十分な流速が得られる状況なので、このときにはシャッター弁28は開いて、少なくともプライマリ及びセカンダリインジェクタ26,32から燃料を噴射させるようにしている。このように噴射した燃料は、第1及び第2吸気ポート11,13を介して作動室5へその両側から効率良く吸入され、しかもそれらが略同量の吸気及び燃料であることから、該作動室5における燃料分布の適正化が図られて、燃焼性の向上により出力及び燃費が改善する。
【0080】
特に、エンジンが低中速域にあるときには、前記の如くエンジン負荷(吸気充填効率ce)の大小を加味して、吸気の流速を燃料の輸送効率が高い適切な範囲に維持するように、シャッター弁28を開閉するようにしており、このことで、該シャッター弁28を閉じているときに第1独立吸気通路21や第1吸気ポート11の流速が高くなり過ぎて、吸気抵抗の無用の増大を招くことがなく、また、第1及び第2独立吸気通路21,22の流速が低下して燃料の輸送効率が落ちることもない。
【0081】
尚、本発明の構成は、前記実施形態のものに限定されることはなく、その他の種々の構成を包含するものである。すなわち、前記実施形態では、エンジン1の中低速域におけるシャッター弁28の開閉制御の閾値を、当該シャッター弁28を閉じていても吸気流速が過度に高くはならず、且つ、シャッター弁28を開いても適度に高い流速が得られるような範囲にて設定するようにしているが、これに限るものではない。例えば、シャッター弁28を開いた状態で第1及び第2独立吸気通路21,22をそれぞれ流通する吸気の流速と、シャッター弁28を閉じた状態で第1独立吸気通路21のみを流通する吸気の流速との間の偏差が、あまり大きくならないように設定するようにしてもよい。
【0082】
すなわち、吸気が第1独立吸気通路21のみを流通するときの流速と、第1及び第2独立吸気通路21,22に分かれて流通するときの流速とが、大きく異なる状況下でシャッター弁28を開閉すると、これに伴いエンジントルクが大きく変動して、運転者がショックを感じることになるので、そのようなエンジントルクの変動があまり大きくならないように、前記吸気流速の偏差の許容値(所定値)を実験等に基づいて設定するのである。
【0083】
また、前記実施形態では、追加吸気通路20を設けて、特に吸気量の多くなる高回転域においては第1及び第2独立吸気通路21,22に加えて前記追加吸気通路20からも作動室5に吸気を導入するようにしているが、この追加吸気通路20は設けなくてもよい。さらに、サードインジェクタ25を設けない構成とすることも可能である。
【0084】
【発明の効果】
以上、説明したように、請求項1の発明に係るロータリーエンジンの燃料供給制御装置によると、吸気行程にある作動室に個別に連通するように設けられた第1及び第2吸気通路に、それぞれ第1及び第2燃料噴射弁を配設するとともに、第2吸気通路にはシャッター弁を配設して、エンジンへの吸気流量の変化に応じてそのシャッター弁を開閉することにより、吸気の流速を燃料輸送効率の高い適切な範囲に維持することができる。特に、エンジンの低中速域において、エンジン負荷が予め設定した閾値を超えたときにシャッター弁を開くようにしており、その閾値はエンジン回転速度の高いときほど低負荷側の値となるように設定しているので、シャッター弁は、エンジンの負荷乃至回転速度の上昇に対応する吸気流量の増大に対応して開かれることになり、このことで、第1及び第2吸気通路における吸気の流速をいつでも適切な範囲に維持して燃料の輸送効率を向上し、もって制御応答性を向上し、ひいいては出力及び燃費を改善することができる。
【0085】
請求項2の発明によると、シャッター弁の開作動の閾値を、該シャッター弁を開いた状態で第1及び第2吸気通路をそれぞれ流通する吸気の流速がいずれも十分に高くなるような値に設定することで、所要の輸送能力が得られて、請求項1の発明の効果がより確実なものとなる。
【0086】
請求項3の発明によると、シャッター弁の開作動の閾値を、該シャッター弁を閉じた状態で第1吸気通路のみを流通する吸気の流速があまり高くならないように設定することで、吸気抵抗の増大を抑えて、請求項1の発明の効果がより確実なものとなる。
【0087】
請求項4の発明によると、シャッター弁の開作動の閾値を、シャッター弁を開いたときと閉じたときとで吸気流速の偏差があまり大きくならないような値に設定することで、シャッター弁の開閉に伴うエンジントルクの変動が小さくなり、ショックのない良好な運転フィーリングが得られる。
【0088】
請求項5の発明によると、第1燃料噴射弁よりも上流の第1吸気通路に燃料を噴射するように第3燃料噴射弁を配設し、この第3燃料噴射弁の容量を、第2燃料噴射弁と略同じで且つ前記第1燃料噴射弁よりも大きいものとすることで、エンジンの高出力化に対して十分な燃料供給能力を確保できる一方、低出力時の燃料制御精度が向上し、その上さらに、コストの増大を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るロータリーエンジンの燃料供給制御装置の全体構成を示す図である。
【図2】エンジンの要部構成を示す図である。
【図3】エンジンの要部の構成を一部分、切り欠いて示す斜視図である。
【図4】エンジンの運転制御マップの一例を示す図である。
【図5】燃料供給制御の構成を示す機能ブロック図である。
【図6】総噴射量の変化と、これに対する各インジェクタの燃料噴射パルス巾の変化との対応関係を示すダイヤグラムである。
【図7】燃料噴射制御の前半の手順を示すフローチャート図である。
【図8】燃料噴射制御の後半の手順を示すフローチャート図である。
【図9】シャッター弁の制御手順を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
A 燃料供給制御装置
1 ロータリーエンジン
2 ロータハウジング
3 サイドハウジング、インターミディエイトハウジング
4 気筒
5 作動室
6 ロータ
11 第1吸気ポート(第1吸気通路)
13 第2吸気ポート(第2吸気通路)
21 第1独立吸気通路(第1吸気通路)
22 第2独立吸気通路(第2吸気通路)
25 サードインジェクタ(第3燃料噴射弁)
26 プライマリインジェクタ(第1燃料噴射弁)
28 シャッター弁
32 セカンダリインジェクタ(第2燃料噴射弁)
40 コントロールユニット(ECU)
40h シャッター弁開閉判断部(シャッター弁制御手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロータリーエンジンに燃料を供給するための燃料供給制御装置に関し、特に、各気筒毎に複数の吸気通路を設けて、その各吸気通路にそれぞれ燃料噴射弁を配設したものに係る。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ロータリーエンジンへの燃料供給制御装置として、例えば特許文献1に開示されるように、各気筒毎に第1及び第2の2つの吸気通路を備え、その各吸気通路にそれぞれ燃料噴射弁を配設して、低出力領域では第1燃料噴射弁のみにより燃料を噴射させることにより、燃料の制御性を高める一方、高出力領域では第1及び第2の両方の燃料噴射弁により燃料を噴射させて、十分な燃料供給量を確保するようにしたものがある。
【0003】
また、前記のものでは、第2吸気通路にアクチュエータ駆動の吸気流量制御弁を設けて、エンジンの冷機時に第2吸気通路の吸気流を絞ることにより、気筒内のガス流動を強化して燃焼安定性を高めるようにしている。すなわち、第1及び第2吸気通路の下流端は互いに対向するようにして作動室に開口しており、その内の一方(第2吸気通路)からの吸気流が弱くなれば、他方(第1吸気通路)からの吸気流が作動室に強いガス流動を形成し、これにより、冷機時に増量補正される燃料と空気とが十分に混じり合い、且つ気化霧化が促進されて、燃焼性が向上するものである。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−158495号公報(第4頁〜第6頁、第2図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、高出力化の要請に従ってロータリーエンジンの最高回転速度は従来以上に高くなっており、これに応じて十分な吸気量を確保するために吸気通路の断面積は拡大される傾向がある。このことは、相対的に吸気流量の少ない低負荷側乃至低回転側において吸気の流速が大幅に低下することを意味し、結果として吸気による燃料の輸送効率が低下したり、吸気通路壁面への燃料の付着量が多くなったりして、制御の応答性が低下するという不具合を生じる。
【0006】
そして、そのような応答性の悪さを補うために、特にエンジンの加速運転時のように出力要求が増加するときには燃料噴射量を増量せざるを得ないから、自ずと燃費の悪化を招くことにもなる。
【0007】
尚、前記従来例のものでは、エンジンの冷機時に第2吸気通路に設けた吸気流量調整弁により吸気流を絞るようにしており、この結果として第1吸気通路における吸気の流速は高くなるが、このときには第2吸気通路の吸気流速が極端に低下して、そこに噴射される燃料の輸送効率が著しく低下するという弊害がある。また、エンジン冷機時のガス流動の強化は、大幅な燃料増量と共に行って初めて意味のあるものであり、前記した温間の低出力状態のときの不具合に対してはあまり有効なものとはいえない。
【0008】
本発明は、前記した温間の吸気流量の少ないときの不具合に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ロータリーエンジンに吸気及び燃料を供給するための構成に工夫を凝らして、吸気流量の少ないときでも燃料の輸送効率を向上することにより、制御応答性を向上し、ひいいては出力及び燃費の改善を図ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本発明では、エンジンへの吸気流量の変化に応じて第2吸気通路のシャッター弁を開閉することにより、吸気の流速をいつでも適切な範囲に維持して、燃料の輸送効率を高めるようにした。
【0010】
具体的に、請求項1の発明では、ハウジング内にロータを収容してその外周側に複数の作動室を区画し、該ロータの回転に連れて各作動室がそれぞれ周方向に移動しながら、順に吸気、圧縮、膨張及び排気の各行程を行うようにしたロータリーエンジンの燃料供給制御装置を対象として、前記吸気行程にある作動室に個別に連通するようにそれぞれ設けられた第1及び第2吸気通路と、この各吸気通路にそれぞれ燃料を噴射するように配設された第1及び第2燃料噴射弁と、前記第2吸気通路に配設されたシャッター弁と、エンジン回転速度が第1設定回転速度以下のときに前記シャッター弁を閉じる一方、その第1設定回転速度よりも高い第2設定回転速度以上ではシャッター弁を開き、さらに、前記第1設定回転速度よりも高く且つ第2設定回転速度よりも低いときには、エンジン負荷に応じてシャッター弁を開閉制御するシャッター弁制御手段とを備えるものとし、さらに、このシャッター弁制御手段を、エンジン回転速度が前記第1設定回転速度よりも高く且つ第2設定回転速度よりも低いときには、エンジン負荷が、エンジン回転速度の高いときほど低負荷側の値となるように設定した閾値を超えたときに、シャッター弁を開くものとした。
【0011】
前記の構成により、ロータリーエンジンの運転中に、エンジン回転速度が第1設定回転速度以下のときにはシャッター弁制御手段により第2吸気通路のシャッター弁が閉じられて、吸気は第1吸気通路のみから作動室に吸入されるようになる。このことで、吸気流量の少ない状態であっても、第1吸気通路の吸気流速が十分に高くなり、この第1吸気通路に第1燃料噴射弁から燃料を噴射すれば、その燃料をあまり通路壁面に付着させることなく、効率良く作動室へ輸送することができるとともに、燃料の気化霧化も促進できる。
【0012】
一方、エンジン回転速度が第2設定回転速度以上であれば、前記シャッター弁は開かれて、第1及び第2の両方の吸気通路から十分な量の吸気を作動室へ供給できる。このときには第1及び第2吸気通路の吸気流速は何れも十分に高いので、第1及び第2燃料噴射弁の両方から燃料を噴射するようにすればよい。
【0013】
さらに、エンジン回転速度が前記第1設定回転速度よりも高く且つ第2設定回転速度よりも低いときには、エンジン負荷が予め設定した閾値を超えたときに、前記シャッター弁が開かれる。この閾値は、エンジン回転速度の高いときほど低負荷側の値となるように設定されているので、シャッター弁は、エンジンの負荷乃至回転速度の上昇に対応する吸気流量の増大に応じて、吸気の流速を適切な範囲に維持できるようなタイミングで開かれることになる。
【0014】
つまり、エンジンの低速域や低中速域においても吸気の流速を燃料の輸送効率が高くなるような適切な範囲に維持して、エンジン出力乃至燃費を改善することができる。
【0015】
より具体的には、前記シャッター弁の開作動の閾値は、当該シャッター弁を開いた状態で第1及び第2吸気通路をそれぞれ流通する吸気の流速がいずれも第1の設定値以上になるような値とするのが好ましい(請求項2の発明)。その第1の設定値としては、吸気の流れによって所要の輸送能力が得られるような流速値を例えば実験や数値計算等によって求めて、設定すればよい。
【0016】
また、前記閾値は、シャッター弁を閉じた状態で第1吸気通路のみを流通する吸気の流速が、第1設定値よりも高い第2の設定値以下になるような値とするのが好ましい(請求項3の発明)。すなわち、第2設定値は、第1吸気通路のみを流通する吸気の抵抗が過大なものとならないように実験や数値計算等によって求めて、設定すればよい。
【0017】
或いは、前記閾値は、シャッター弁を開いた状態で第1及び第2吸気通路をそれぞれ流通する吸気の流速と、シャッター弁を閉じた状態で第1吸気通路のみを流通する吸気の流速との偏差が、所定値以下になるような値とすればよい(請求項4の発明)。すなわち、吸気が第1吸気通路のみを流通するときの速度と、第1及び第2吸気通路に分かれて流通するときの速度とがあまり異ならない状況下でシャッター弁の開閉を行うようにすれば、その開閉に伴うエンジントルクの変動が小さくなり、ショックのない良好な運転フィーリングが得られる。尚、前記偏差の許容値(所定値)も実験的に求めて設定すればよい。
【0018】
さらに、請求項5の発明として、第1燃料噴射弁よりも上流の第1吸気通路に燃料を噴射するように第3燃料噴射弁を配設し、この第3燃料噴射弁の容量を、第2燃料噴射弁と略同じで且つ前記第1燃料噴射弁よりも大きいものとするのが好ましい。
【0019】
こうすれば、エンジンの高出力化に対して十分な燃料供給能力を得ることができ、しかも、相対的に容量の大きな第2、第3の燃料噴射弁を共通化できるから、燃料噴射弁の個数は増えてもコストの増大は抑えられる。また、低出力時に単独で用いる第1燃料噴射弁の容量は相対的に小さくて済み、自ずと最小分解能の高いものになるので、制御精度も向上する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基いて説明する。
【0021】
(エンジンの全体構成)
図2は、本発明の実施形態に係るロータリーエンジン1の要部の構成を示し、トロコイド内周面2aを有する繭状のロータハウジング2とサイドハウジング3とに囲まれたロータ収容室4(気筒)には概略三角形状のロータ6が収容されていて、その外周側に3つの作動室5,5,5が区画されている。このロータリーエンジン1は、図3に示すように、2つのロータハウジング2,2を3つのサイドハウジング3,3,3の間に挟み込むようにして一体化し、その間に形成される2つの気筒4,4にそれぞれロータ6,6を収容した2ロータタイプのものである。以下、この実施形態では、2つのロータハウジング2,2の中間に位置するサイドハウジング3(図2に示すもの)を両端側のものと区別して、インターミディエイトハウジング3と呼ぶものとする。
【0022】
前記ロータ6の内側には、図示しないが内歯車が形成されていて、この内歯車とサイドハウジング3側の外歯車とが噛合するとともに、ロータ6は、インターミディエイトハウジング3及びサイドハウジング3を貫通するクランクシャフト7に対して、遊星回転運動をするように支持されている。すなわち、前記ロータ6の回転運動は内歯車と外歯車との噛み合いによって規定され、ロータ6は、外周の3つの頂部にそれぞれ配設されたシール部が各々ロータハウジング2のトロコイド内周面2aに当接した状態で、前記クランクシャフト7の偏心輪7aの周りを自転しながら、該クランクシャフト7の軸心Xの周りに公転する。そして、ロータ6が1回転する間に、該ロータ6の各頂部間にそれぞれ形成された作動室5,5,…が周方向に移動しながら、吸気、圧縮、膨張(燃焼)及び排気の各行程を行い、これにより発生する回転力がロータ6を介してクランクシャフト7から出力される。
【0023】
より具体的に、図2に示すようにクランクシャフト7の軸心Xの方向に見ると、各気筒4の左右方向の一側(図例では左側)が概ね吸気及び排気行程の領域になり、その反対側(図例では右側)が概ね圧縮及び膨張行程の領域になる。そして、図示の如く第1吸気ポート11(後述)等に連通する作動室5(図の左上側の作動室)は吸気行程の後半にあり、この作動室5がロータ6の回転に連れて図の時計回りに移動して圧縮行程に移行すると、その内部に吸入された混合気が圧縮され、その後、図の右側に示す作動室5のように圧縮行程の終盤から膨張行程にかけて所定のタイミングにて点火プラグ9,10により混合気に点火されて、燃焼が行われるものである。
【0024】
前記インターミディエイトハウジング3には、両側の2つの気筒4,4においてそれぞれ吸気行程にある作動室5に連通するように一対の第1吸気ポート11,11(図2には1つのみ示す)が形成され、同様に、排気行程にある作動室5,5にそれぞれ連通するように一対の第1排気ポート12,12(図2には1つのみ示す)が形成されている。一方、前記サイドハウジング3には、吸気行程にある作動室5にそれぞれ連通するように第2及び第3の2つの吸気ポート13,14が形成され、また、排気行程にある作動室5に連通するように第2排気ポート15が形成されている。
【0025】
そして、前記第1、第2及び第3吸気ポート11,13,14が、それぞれ、各気筒4の吸気行程にある作動室5に吸気を供給する吸気通路16の下流端部を構成している。すなわち、図1に示すように、吸気通路16は、各気筒4毎に3つに分岐してそれぞれ前記3つの吸気ポート11,13,14に連通していて、それら3つの経路による吸気の供給状態をエンジン1の運転状態に応じて変更することで、低負荷低回転から高負荷高回転まで全ての運転領域に渡って気筒4への吸気の充填を効率良く行えるようになっている。尚、図1は、2つの気筒4,4のうちの一方(図3における手前側のもの)を模式的に2つに分けて、吸排気系の全体的な構成と制御システムの構成とを示したものであり、図の左側には、図2と同様にインターミディエイトハウジング3の側が、また、図の右側にはサイドハウジング3の側が示されている。
【0026】
前記図1に示すように、吸気通路16の上流端にはエアクリーナ17が配設され、そこから下流側に向かって順に、ホットワイヤ式エアフローセンサ18と、ステッピングモータ等により駆動されて通路の断面積を調節する第1の電気式スロットル弁23とが配設されている。また、吸気通路16はスロットル弁23よりも下流側で2つの通路19,20に分岐し、そのうちの一方の通路19は下流側でさらに2つの独立吸気通路21,22に分かれている。そして、第1の独立吸気通路21の下流端が前記第1吸気ポート11に接続され、第2の独立吸気通路22の下流端が前記第2吸気ポート13に連通されている。
【0027】
また、前記他方の通路20の下流端は第3吸気ポート14に接続されるとともに、そこにはアクチュエータにより駆動される電磁式のロータリーバルブ(図示せず)が配設されており、前記第1及び第2独立吸気通路21,22による吸気の供給だけでは吸気量が不足する所定の高回転状態でのみ、前記ロータリーバルブが開かれて、吸気を供給するようになっている。以下、この通路20を追加吸気通路20と呼ぶ。
【0028】
前記第1独立吸気通路21には、吸気マニホルド24内の通路に燃料を噴射するように比較的大容量のマニホルド噴射用第1インジェクタ25(燃料噴射弁)が配設されるとともに、それよりも下流側の第1吸気ポート11内に燃料を噴射するように比較的小容量のポート噴射用インジェクタ26(燃料噴射弁)が配設されている。このポート噴射用インジェクタ26は、作動室5に開口する第1吸気ポート11の下流端部近傍に向かって燃料を噴射するように配置されており、さらに、そのように噴射された燃料噴霧が衝突するポート壁面に向かって、スロットル弁23よりも上流の吸気通路16から取り出した高速の空気流を吹出すように、空気吹出し通路27が設けられている。
【0029】
一方、前記第2独立吸気通路22には、この通路22を開閉するシャッター弁28が配設されている。このシャッター弁28はバタフライバルブからなり、吸気通路16の負圧を利用する電磁空圧式のアクチュエータ29によって駆動されて、第2独立吸気通路22を全閉とするか又は全開とするかのいずれかの状態に切換えられるようになっている。尚、シャッター弁28は、弁体の固着を防止するために、全閉状態であっても通路22の周壁との間に所定量の隙間を生じるように設けられている。また、前記シャッター弁28よりも下流側の第2独立吸気通路22には、前記第1独立吸気通路21のマニホルド噴射用第1インジェクタ25と同じインジェクタ(マニホルド噴射用第2インジェクタ32)が配設されている。
【0030】
尚、図1及び図2に示す符号30は、ロータ6側面等から吹き抜けたブローバイガスの一部を回収するキャッチタンクであり、ここで回収されたブローバイガスは、図1にのみ示すブローバイガス通路31によって吸気通路16に導入される。
【0031】
上述の如き構成の吸気系に対し、エンジン1の排気系は、前記第1及び第2排気ポート12,15がそれぞれ排気マニホルド33に接続し、この排気マニホルド33において2つの気筒4,4からの排気が集合されて、下流側の排気管34に流通するようになっている。そして、前記排気マニホルド33には、排気中の酸素濃度を検出するリニアO2センサ35が配設され、また、排気管34には排気を浄化するための2つの触媒コンバータ36,37が直列に配設されている。前記リニアO2センサ35は、理論空燃比を含む所定の空燃比範囲において酸素濃度に対しリニアな信号を出力するものであり、前記インジェクタ25,26,32による燃料噴射量のフィードバック制御のために用いられる。
【0032】
尚、図1に示す符号38は、ロータリーエンジン1のクランクシャフト7の一端側に配設されてその回転角度を検出する電磁式のクランク角センサである。また、符号39は、ロータハウジング2の内部に形成されたウォータジャケット(図示せず)に臨んで冷却水の温度状態(エンジン水温)を検出する水温センサである。
【0033】
前記点火プラグ9,10の点火回路、スロットル弁23のモータ、インジェクタ25,26,32、シャッター弁28のアクチュエータ29等は、コントロールユニット40(以下、ECUと略称する)により作動制御されるようになっている。このECU40には少なくとも前記エアフローセンサ18の出力信号と、リニアO2センサ35の出力信号と、クランク角センサ38の出力信号と、水温センサ39の出力信号とが入力され、さらに、アクセル開度センサ41からの信号が入力されるようになっている。そして、このECU40においてエンジン1の運転状態(例えばエンジン負荷及びエンジン回転速度)を判定するとともに、その運転状態に応じて各気筒4に点火時期の制御や燃料噴射量及び噴射タイミングの制御が行われ、さらに吸気の流通する経路の切換え等が行われる。
【0034】
すなわち、図4に制御マップの一例を示すように、エンジン1の低負荷域及び中負荷域では各気筒4の作動室5,5,…に供給される空気及び燃料の比率(空燃比)は略理論空燃比になるように制御され(図にλ=1領域と示す)、一方、高負荷域では理論空燃比よりもリッチになるように制御される(図にエンリッチ領域と示す)。具体的には、スロットル弁23により調整される吸気の流量がエアフローセンサ18により検出され、この検出値に応じて、目標とする空燃比になるようにインジェクタ25,26,32による燃料の噴射量が制御される。
【0035】
尚、図示のエンリッチ領域の高回転側に斜線を入れて示す領域では、エンジン1及び触媒コンバータ36,37の過度の温度上昇を抑制すべく、意図的に排ガスの温度を下げる必要があり、このために、空燃比をエンリッチ領域でも特にリッチな状態(例えばA/F=11〜12)になるように制御する。
【0036】
また、主にエンジン回転速度neに対応してシャッター弁28の開閉状態が切換えられる。すなわち、シャッター弁28は、エンジン回転速度neが第1設定回転速度ne1(例えば3000rpm)以下の低回転域では全閉とされ、それよりも高回転側で且つ第2設定回転速度ne2(例えば4000rpm)よりも低回転側の低中回転域では、図に破線で示す境界線Bの下側(境界線Bを含む低負荷側)で全閉とされる一方、該境界線Bよりも上側(高負荷側)では全開とされる。
【0037】
さらに、シャッター弁28は、エンジン回転速度neが第2設定回転速度ne2以上の中高回転域乃至高回転域では全開とされる。また、例えば6500rpm以上の高回転域では追加吸気通路20と第3吸気ポート14との間のロータリーバルブが開かれて、気筒4には追加吸気通路20及び第3吸気ポート14からも吸気が供給されるようになる。
【0038】
前記境界線Bは、エンジン1の低中回転域(ne1<ne<ne2)においては、シャッター弁28の開閉制御のためのエンジン負荷(吸気充填効率ce)の閾値を示すものであり、エンジン回転速度neの高いときほど低負荷側の値となるように設定されている。また、境界線B上の吸気充填効率ceの値は、シャッター弁28閉じたとしても第1独立吸気通路21及び第1吸気ポート11における吸気抵抗が過度に大きくならず、しかも、シャッター弁28を開いたとしても、前記第1吸気ポート11等と第2独立吸気通路22との両方で所要の吸気流速が得られるような範囲に設定されている。
【0039】
より具体的には、例えば、前記シャッター弁28を開いた状態で第1吸気ポート11や第2独立吸気通路22をそれぞれ流通する吸気の流速を実験や数値計算等によって求め、その吸気流によって所要の燃料輸送効率を得られるような値を設定するとともに(第1設定値)、同様にして、シャッター弁28を閉じた状態で第1吸気ポート11等の吸気の抵抗が過大なものとならないように、流速の上限値を設定する(第2設定値)。そして、シャッター弁28閉じたときの第1吸気ポート11等の吸気流速が前記第2設定値以下になり、且つ、シャッター弁28を開いたときの前記第1吸気ポート11等及び第2独立吸気通路22の吸気流速が何れも前記第1設定値以上になるような吸気流量を目安として、前記境界線Bを設定する。
【0040】
(燃料噴射制御)
次に、各気筒4毎に3つのインジェクタ25,26,32を使い分ける燃料供給制御の手順について、詳細に説明する。
【0041】
まず、図5の機能ブロック図に示すように、ECU40には、クランク角センサ38からの信号に基づいてエンジン回転速度neを演算する回転速度演算部40aと、そうして求めたエンジン回転速度neとエアフローセンサ18の信号から求めた吸気量とに基づいて、作動室5への吸気充填効率ce(エンジン負荷)を演算するエンジン負荷演算部40bと、エンジン水温や大気圧、さらには空調装置の作動状態等の環境条件を検出し、この環境条件やエンジン1の運転状態に応じた空燃比のリッチ化補正等のための補正係数を演算する環境条件演算部40cと、それら各演算部による演算結果に基づいて、即ち、主にエンジン1の運転状態に基づいて、3つのインジェクタ25,26,32による総噴射量(目標燃料供給量)を演算する総噴射量演算部40d(燃料供給量決定手段)とを備えている。
【0042】
さらに、ECU40には、前記総噴射量演算部40dにより演算された総噴射量とエンジン回転速度neとに基づいて、ポート噴射用インジェクタ26、マニホルド噴射用第2インジェクタ32及びマニホルド噴射用第1インジェクタ25のそれぞれによる燃料噴射量を演算する第1、第2及び第3の3つの噴射量演算部40e,40f,40gと、前記マニホルド噴射用第2インジェクタ32の作動状態に対応するように、シャッター弁28の開閉切換えの判断を行うシャッター弁開閉判断部40hとを備えている。尚、前記40a〜40hの各部の機能は、いずれも、ECU40のメモリに電子的に格納されているプログラムがCPUにより実行されることによって、実現する。
【0043】
前記3つのインジェクタ25,26,32による燃料噴射の順序は、基本的には、まず、ポート噴射用インジェクタ26を作動させ、次にマニホルド噴射用第2インジェクタ32を作動させ、その次にマニホルド噴射用第1インジェクタ25を作動させるというものである。このことから、以下、前記ポート噴射用インジェクタ26をプライマリインジェクタ26と呼び、マニホルド噴射用第2インジェクタ32をセカンダリインジェクタ32と呼び、さらに、マニホルド噴射用第1インジェクタ25をサードインジェクタ25と呼ぶことにする。従って、前記第1噴射量演算部40eはプライマリインジェクタ26の燃料噴射量を演算し、第2噴射量演算部40fはセカンダリインジェクタ32の燃料噴射量を演算し、第3噴射量演算部40gはサードインジェクタ25の燃料噴射量を演算する。
【0044】
より具体的には、図6のダイヤグラムに示すように、3つのインジェクタ25,26,32の使い分けは、基本的に、ECU40の総噴射量演算部40dによって演算された総噴射量Qに基づいて決定される。すなわち、まず、図の横軸に示す総噴射量Qが第1設定量Q1以下のときには(Q≦Q1)、図に実線で示すように、プライマリインジェクタ26のみに燃料の噴射作動を行わせる。ここで、第1設定量Q1というのは、シャッター弁28の制御における低中速域での閾値に対応するものであり、図4のマップで中低速域における境界線B上の吸気充填効率ceの値に対して、略理論空燃比になるような燃料噴射量である。これは、プライマリインジェクタ26の燃料パルス巾である図示のTαに相当する。
【0045】
この実施形態では、前記のパルス巾Tαは、プライマリインジェクタ26によって燃料を所定のクランク角期間内に噴射し得るように設定したパルス巾Tβよりも小さい。その所定のクランク角期間というのは、プライマリインジェクタ26によって噴射した燃料が吸気の流れに載って良好に輸送されて、第1吸気ポート11の壁面やロータ6の側面等にあまり付着することなく、作動室5に吸入されるような期間(以下、好適噴射期間ともいう)のことであり、インジェクタ26による燃料の噴射期間が好適噴射期間内に収まるかどうかは、実質的にはインジェクタ26の開弁期間の長さ(クランク角)、即ちパルス巾T1が設定パルス巾Tβ以下になるかどうかで判断できる。
【0046】
前記のように、燃料をプライマリインジェクタ26のみにより噴射するようにすれば、最小分解能の高い小容量のインジェクタ26のみによって燃料が噴射されることで、自ずと噴射量の制御精度が高くなるとともに、燃料は作動室5への開口部に近い第1吸気ポート11に噴射されることから、輸送遅れが小さくなって、制御の応答性も高くなる。
【0047】
その際、シャッター弁28は全閉とされ、吸気は主に第1独立吸気通路21のみに流通するようになるから、吸気の総流量の少ない状態であっても、第1独立吸気通路21における吸気の流速は十分に高くなる。このことで、作動室5への吸気及び燃料の吸入は極めて効率良く行われて、輸送遅れが可及的に小さくなるとともに、燃料のポート壁面への付着も軽減され、気化霧化も良好なものとなる。しかも、吸気の流速が高くなり過ぎて、無用の吸気抵抗の増大を招くこともない。
【0048】
次に、総噴射量Qが前記第1設定量Q1よりも多くて、且つ第2設定量Q2以下のときには、前記プライマリインジェクタ26だけでなく、セカンダリインジェクタ32によっても燃料を噴射させ(図には破線で示す)、且つ、それら両方のインジェクタ26,32による燃料噴射量を互いに略同じになるように制御する。ここで、図の縦軸に示す燃料パルス巾は、プライマリインジェクタ26の容量がセカンダリインジェクタ32よりも小さいことを反映して、プライマリインジェクタ26のパルス巾T1がセカンダリインジェクタのパルス巾T2よりも長くなっているが、2つのインジェクタ26,32によって各々第1及び第2独立吸気通路21,22に噴射される燃料の量は略同じである。
【0049】
その際、前記のセカンダリインジェクタ32による噴射作動の開始に対応してシャッター弁28が開かれ、これにより、第1及び第2独立吸気通路21,22を略同じ量の吸気が流通するようになる。このときには既に吸気の流量が十分に多くなっていて、両方の独立吸気通路21、22を流通する吸気の流速は、燃料の輸送に適した十分に高いものとなる。そして、そのようにして第1及び第2独立吸気通路21,22を流通した吸気は、第1及び第2吸気ポート11,13を介して作動室5に対しその両側から導入される。
【0050】
ここで、前記第1及び第2吸気ポート11,13は、それぞれ、ロータ6の両側面に摺接するインターミディエイトハウジング3及びサイドハウジング3の各内壁面に開口されており、ロータ6の回転に伴い吸気行程にある作動室5が第1及び第2吸気ポート11,13に連通し、さらにその作動室5の容積が増大すると、これに伴い第1及び第2独立吸気通路21,22並びに第1及び第2吸気ポート11,13からそれぞれ略同じ量の混合気が相対向して作動室5に導入されるようになる。このように、ロータ6及び作動室5の移動する方向に対して相対向する両側から略同じ量の混合気(吸気及び燃料)が導入されることで、作動室5における燃料分布の偏りは非常に小さくなり、燃焼性が大幅に向上する。
【0051】
次に、総噴射量Qが第2設定量Q2よりも多くなれば、3つのインジェクタ25,26,32の全てによって燃料を噴射させる。この際、プライマリインジェクタ26による燃料噴射量は、前記設定パルス巾Tβに対応する分量に固定して(T1=Tβ)、セカンダリインジェクタ32による燃料噴射量は総噴射量Qの略半分とし、さらに、それらの噴射量を合わせても総噴射量Qに不足する残りの燃料を、図6において一点差線で示すようにサードインジェクタ25によって噴射させる。言い換えると、前記プライマリインジェクタ26及びサードインジェクタ25によって総噴射量の略半分の燃料を第1独立吸気通路21に噴射させるとともに、前記セカンダリインジェクタ32によって総噴射量Qの略半分の燃料を第2独立吸気通路22に噴射させる。
【0052】
このことで、燃料の総噴射量Qが多くなっても、プライマリインジェクタ26による燃料の噴射期間を好適噴射期間内に留めて、噴射した燃料を作動室5に対し良好に輸送することができるとともに、第1及び第2独立吸気通路21,22にそれぞれ噴射する燃料の量を略同じにして、その略同量の燃料を作動室5に対しその両側から導入することができる。
【0053】
さらに、引き続いて総噴射量Qが増大して、セカンダリインジェクタ32による燃料噴射量が増量され、このセカンダリインジェクタ32によって前記好適噴射期間内に噴射し得る量を超えたときでも(Q>Q3)、該セカンダリインジェクタ32による燃料噴射量はサードインジェクタ25と略同様に増量するようにする(T2>Tβ)。このことは、セカンダリインジェクタ32からの燃料の作動室5への輸送効率がやや低下しても、当該作動室5に対してその両側から略同量の吸気及び燃料を供給することを優先するということである。
【0054】
そして、さらに総噴射量Qが多くなって、セカンダリインジェクタ32による燃料噴射量が、このインジェクタ32によって燃料を噴射し得る制御上の上限値に達すれば(Q=Q4)、該セカンダリインジェクタ32による燃料噴射量はその上限値に固定せざるを得ないので(T2=Tmax)、それ以降は、サードインジェクタ25の燃料噴射量のみを増量するようにする。そして、サードインジェクタ25による燃料噴射量が好適噴射期間内に噴射し得る量を超えれば(Q>Q5)、該サードインジェクタ25による燃料噴射量は設定パルス巾Tβに対応する量に固定して(T3=Tβ)、プライマリインジェクタ26による燃料噴射量を増量するようにする(T1>Tβ)。
【0055】
すなわち、プライマリインジェクタ26又はサードインジェクタ25のいずれか一方により燃料を、好適噴射期間を超えて噴射しなくてはならないのであれば、そのときには制御応答性の高いプライマリインジェクタ26の方を増量するようにする。こうすれば、その後に総噴射量Qが減少したときに、プライマリインジェクタ26の燃料噴射量は直ちに減量することができ、好適噴射期間を超えて燃料を噴射することによる悪影響を比較的、小さくすることができる。
【0056】
そうして、さらに総噴射量Qが多くなって、前記プライマリインジェクタ26による燃料噴射量も制御上の上限値に達すれば(Q=Q6)、該プライマリインジェクタ26による燃料噴射量はその上限値に固定せざるを得ないから(T1=Tmax)、それ以降は、サード1インジェクタ25による燃料噴射量を増量するようにする(T3>Tβ)。
【0057】
以下に、前記の如くインジェクタ25,26,32を使い分ける制御の手順を図7及び図8に示すフローチャート図に基づいて具体的に説明する。尚、この制御は、各気筒4の作動室5,5,…毎にその点火時期に同期した所定のタイミングにて、実行される。
【0058】
まず、図7に示すフローのスタート後のステップSA1において、クランク角センサ38からの信号に基づいてエンジン回転速度neを演算し、続くステップSA2では前記エンジン回転速度neとエアフローセンサ18からの信号とに基づいて作動室5への吸気充填効率ce(エンジン負荷)を演算する。続いて、ステップSA3ではエンジン水温等の環境条件等に基づいて補正係数を演算し、続くステップSA4において、前記の演算した吸気充填効率ceに対して目標とする空燃比(図4の制御マップ参照)になるように、インジェクタ総噴射量Qを演算する。尚、前記の如く演算したエンジン回転速度ne、吸気充填効率ce、総噴射量Q等は逐次ECU40のメモリに記憶更新される。この点は、以下のステップにおける噴射パルス巾T1,T2,T3についても同様である。
【0059】
続いて、ステップSA5において、プライマリインジェクタ26へ出力する燃料噴射パルスのパルス巾T1を演算する。ここで求めるのは、前記ステップSA4で求めたインジェクタ総噴射量Qを全てプライマリインジェクタ26により噴射する場合に必要なパルス巾であり、総噴射量Qとインジェクタ26の流量係数とに基づいて周知の計算により求めればよい。そして、ステップSA6において、そのようにして求めたパルス巾T1が、シャッター弁28の制御における閾値に対応するパルス巾Tα以下かどうか判定し(T1≦Tα?)、この判定がYESならば図8のフローのステップSA17に進んで、プライマリインジェクタ26に燃料噴射パルスを出力して、燃料を噴射させ(噴射実行)、しかる後にリターンする。
【0060】
一方、前記の判定がNOであればステップSA7に進み、今度はセカンダリインジェクタ32へ出力する燃料噴射パルスのパルス巾T2を演算する。続いて、ステップSA8においてプライマリインジェクタ26への燃料噴射パルス巾T1を再度、演算して、図8のフローに示すステップSA9に進む。すなわち、総噴射量Qを2等分して、それぞれプライマリ及びセカンダリインジェクタ26,32により噴射させるよう、燃料噴射パルス巾T1,T2をそれぞれ決定する。この際、インジェクタの容量が異なることから、燃料噴射パルス巾T1,T2の大小関係は、T1>T2になる。また、プライマリインジェクタ26の燃料噴射パルス巾T1は後述の如く再度、演算される場合があるが、セカンダリインジェクタ32の燃料噴射パルス巾T2は再度、演算されることはない。それ故、パルス巾T2については制御上の上限値Tmax以下に制限される。
【0061】
前記ステップSA8に続いて、図8に示すフローのステップSA9では、今度は、プライマリインジェクタ26の燃料噴射パルス巾T1が好適噴射期間に対応する設定範囲内にあるかどうか判定する(T1≦Tβ?)。この判定がYESならばステップSA17に進んで、プライマリ及びセカンダリインジェクタ26,32にそれぞれ燃料噴射パルスを出力して、両方のインジェクタ26,32から略同量の燃料を噴射させ(噴射実行)、しかる後にリターンする。
【0062】
一方、前記の判定がNOであればステップSA10に進み、一旦、プライマリインジェクタ26の燃料噴射パルス巾T1を前記設定範囲の上限値である設定パルス巾Tβに固定し(T1←Tβ)、続くステップSA11において、サードインジェクタ25へ出力する燃料噴射パルスのパルス巾T3を演算する。すなわち、まず、総噴射量Qを半分にして、これから前記設定パルス巾にてプライマリインジェクタ26が噴射する燃料の量を減算し、これにより得られた量の燃料をサードインジェクタ25により噴射する場合のパルス巾を求める。そして、ステップSA12において、前記サードインジェクタ25の燃料噴射パルス巾T3が好適噴射期間に対応する設定範囲内にあるかどうか判定し(T3≦Tβ?)、この判定がYESならばステップSA17に進んで、プライマリ、セカンダリ及びサードインジェクタ26,32、25にそれぞれ燃料噴射パルスを出力して、3つのインジェクタ25,26,32により燃料を噴射させ(噴射実行)、しかる後にリターンする。
【0063】
すなわち、プライマリインジェクタ26により総噴射量Qの略半分の燃料を所定クランク角期間内にて噴射できるときには、このプライマリインジェクタ26とセカンダリインジェクタ32とによって略同量の燃料を噴射させる。また、そうでないときでもプライマリインジェクタ26の燃料噴射量は前記所定クランク角期間内にて噴射可能な量に制限し、不足分はサードインジェクタ25により噴射させて、該プライマリ及びサードインジェクタ26,25による燃料噴射量とセカンダリインジェクタ32による燃料噴射量とが略同じになるようにする。
【0064】
前記ステップSA12における判定がNOで、サードインジェクタ25により燃料を好適噴射期間内に噴射できない場合には、ステップSA13に進んでサードインジェクタ25の燃料噴射パルス巾T3を前記設定パルス巾Tβに固定し(T3←Tβ)、続くステップSA14において、プライマリインジェクタ26への燃料噴射パルス巾T1を再度、演算する。すなわち、総噴射量Qからセカンダリインジェクタ32による燃料噴射量を減算し、そこからさらにサードインジェクタ25による燃料噴射量(前記設定パルス巾Tβにてサードインジェクタ25が噴射する燃料の量)を減算し、これにより得られた量の燃料をプライマリインジェクタ26により噴射する場合のパルス巾を求める。
【0065】
続いて、ステップSA15において、前記プライマリインジェクタ26の燃料噴射パルス巾T1が、制御上の上限値Tmax以下であるかどうか判定し(T1≦Tmax?)、この判定がYESならばステップSA17に進んで、プライマリ、セカンダリ及びサードインジェクタ26,32、25にそれぞれ燃料噴射パルスを出力して、3つのインジェクタ25,26,32により燃料を噴射させ(噴射実行)、しかる後にリターンする。
【0066】
つまり、総噴射量Qが多くなって、その半分の燃料をプライマリ及びサードインジェクタ32によっても所定クランク角期間内にて噴射できないようになれば、それ以降はサードインジェクタ25ではなく、より応答性の高いプライマリインジェクタ26の燃料噴射量を制御上の上限値になるまで増量する。
【0067】
一方、前記プライマリインジェクタ26の燃料噴射パルス巾T1が制御上の上限値Tmaxを超えていれば(判定がNO)、ステップSA16に進んで、サードインジェクタ25への燃料噴射パルス巾T3を再度、演算する。すなわち、総噴射量Qからセカンダリインジェクタ32による燃料噴射量と前記上限値のパルス巾Tmaxにてプライマリインジェクタ26により噴射される燃料の量とをそれぞれ減算し、これにより得られた量の燃料をサードインジェクタ25により噴射する場合のパルス巾を求める。そうして、ステップSA17に進んで、プライマリ、セカンダリ及びサードインジェクタ26,32、25にそれぞれ燃料噴射パルスを出力して、3つのインジェクタ25,26,32により燃料を噴射させ(噴射実行)、しかる後にリターンする。
【0068】
つまり、プライマリインジェクタ26の燃料噴射量が制御上の上限値に達すれば、それ以降はサードインジェクタ25の燃料噴射量のみを制御上の上限値になるまで増量する。
【0069】
前記図7に示すフローのステップSA1がECU40の回転速度演算部40aに、また、ステップSA2がエンジン負荷演算部40bに、それぞれ対応する。さらに、ステップSA3が環境条件演算部40cに、また、ステップSA4が総噴射量演算部40dに、それぞれ対応する。
【0070】
また、前記フローのステップSA5、SA8、及び図8のフローのステップSA10、SA14が第1噴射量演算部40eに、ステップSA7が第2噴射量演算部40fに、さらに、ステップSA11、SA13、SA16が第3噴射量演算部40gに、それぞれ対応する。
【0071】
次に、本発明の特徴部分として、ECU40のシャッター弁開閉判断部40hによるシャッター弁28の制御手順を図9に示すフローチャート図に基づいて具体的に説明する。尚、この制御も前記したインジェクタの制御と同じタイミングにて、実行される。
【0072】
まず、スタート後のステップSB1,SB2において、それぞれ、前記図7のフローのステップSA1,SA2にて演算されて、ECU40のメモリに記憶更新されているエンジン回転速度ne及び吸気充填効率ceを読み込む。続いて、ステップSB3において、同様に前記フローのステップSA7にて演算されて、ECU40のメモリに記憶更新されているセカンダリインジェクタ32の燃料噴射パルス巾T2を読み込む。
【0073】
続いて、ステップSB4において、燃料噴射パルス巾T2に基づいて、セカンダリインジェクタ32により燃料を噴射するのか否かを判定するとともに、エンジン回転速度neが第2設定回転速度ne2以上であるかどうか判定する。そして、それらの判定の結果、少なくとも一方がYESならばステップSB5に進んでシャッター弁28を開く一方、いずれの判定結果もNOであればステップSB6に進んでシャッター弁28を閉じ、しかる後にリターンする。
【0074】
つまり、シャッター弁28は、エンジン回転速度neが第2設定回転速度ne2以上であるか、又はセカンダリインジェクタ32による噴射作動が行われるときに、開かれるようになっている。換言すれば、シャッター弁28は、エンジン1の低中速域(ne1<ne<ne2)においては吸気充填効率ce(エンジン負荷)が閾値(図4の境界線Bを参照)を超えたときに、開かれる。
【0075】
尚、中高回転域以上の運転域において(ne≧ne2)、エンジン負荷の大小に拘わらずシャッター弁28を開くようにしているのは、特に低負荷且つ高回転の状態でシャッター弁28を開閉することに起因する燃焼の不安定化を防止するためであり、また、高回転域での加速運転に際して、シャッター弁28の作動遅れによって運転フィーリングが悪化することを防止するためである。さらに、高回転域で特にエンジン負荷の低いときには、実際にはいわゆる燃料カット制御が行われることになり、一時的に燃料の供給が停止されるが、この状態で次にアクセルペダルが踏まれて、燃料の供給を再開するときのためにも、予めシャッター弁28を開いておく必要がある。
【0076】
したがって、この実施形態に係るロータリーエンジン1の燃料供給制御装置Aによると、各気筒4に連通する吸気通路16の下流側を3本に分岐させ、そのうちの第1独立吸気通路21に連通する第1吸気ポート11に比較的小容量のプライマリインジェクタ26を配設し、第2独立吸気通路22には比較的大容量のセカンダリインジェクタ32を配設するとともに、これと同じインジェクタ25を前記プライマリインジェクタ26よりも上流の第1独立吸気通路21にも配設したことで、即ち、各気筒4毎に3つのインジェクタ25,26,32を装備したことにより、燃料の最大供給能力を確保して、エンジン1の高負荷高回転状態での運転にも十分に対応することができる。
【0077】
ここで、吸気ポート噴射用のプライマリインジェクタ26の容量は比較的小さなものとしており、また、マニホルド噴射用のセカンダリ及びサードインジェクタ32,25の容量もあまり大きくする必要はないから、特に容量の大きな専用のインジェクタを用いる必要がなくなり、しかも、マニホルド噴射用の2つのインジェクタ32,25は同じものを用いているので、部品の共通化によるコストの低減が図られ、インジェクタの個数は多くても、コストの増大を抑制できる。
【0078】
また、この実施形態では、エンジン1が低速域にあるか(ne≦ne1)、或いは低中速域にあって(ne1<ne≦ne2)且つエンジン負荷が予め設定した閾値以下のときには、第2独立吸気通路22のシャッター弁28を閉じて、吸気を主に第1独立吸気通路21のみに流通させるとともに、燃料をプライマリインジェクタ26のみから噴射させるようにしている。このことで、吸気の流量が少ないときでもその流速を十分に高めて、燃料の吸気ポート壁面への付着を抑制し、気化霧化を促しながら、燃料及び空気を作動室5へ極めて効率良く吸入させることができる。
【0079】
一方、エンジン1が低中速域にあって且つエンジン負荷が前記閾値よりも大きいか、或いは中高速域以上(ne2≦ne)の状態にあるときには、吸気の流量が多くなって、第1及び第2の両方の独立吸気通路21,22においてそれぞれ十分な流速が得られる状況なので、このときにはシャッター弁28は開いて、少なくともプライマリ及びセカンダリインジェクタ26,32から燃料を噴射させるようにしている。このように噴射した燃料は、第1及び第2吸気ポート11,13を介して作動室5へその両側から効率良く吸入され、しかもそれらが略同量の吸気及び燃料であることから、該作動室5における燃料分布の適正化が図られて、燃焼性の向上により出力及び燃費が改善する。
【0080】
特に、エンジンが低中速域にあるときには、前記の如くエンジン負荷(吸気充填効率ce)の大小を加味して、吸気の流速を燃料の輸送効率が高い適切な範囲に維持するように、シャッター弁28を開閉するようにしており、このことで、該シャッター弁28を閉じているときに第1独立吸気通路21や第1吸気ポート11の流速が高くなり過ぎて、吸気抵抗の無用の増大を招くことがなく、また、第1及び第2独立吸気通路21,22の流速が低下して燃料の輸送効率が落ちることもない。
【0081】
尚、本発明の構成は、前記実施形態のものに限定されることはなく、その他の種々の構成を包含するものである。すなわち、前記実施形態では、エンジン1の中低速域におけるシャッター弁28の開閉制御の閾値を、当該シャッター弁28を閉じていても吸気流速が過度に高くはならず、且つ、シャッター弁28を開いても適度に高い流速が得られるような範囲にて設定するようにしているが、これに限るものではない。例えば、シャッター弁28を開いた状態で第1及び第2独立吸気通路21,22をそれぞれ流通する吸気の流速と、シャッター弁28を閉じた状態で第1独立吸気通路21のみを流通する吸気の流速との間の偏差が、あまり大きくならないように設定するようにしてもよい。
【0082】
すなわち、吸気が第1独立吸気通路21のみを流通するときの流速と、第1及び第2独立吸気通路21,22に分かれて流通するときの流速とが、大きく異なる状況下でシャッター弁28を開閉すると、これに伴いエンジントルクが大きく変動して、運転者がショックを感じることになるので、そのようなエンジントルクの変動があまり大きくならないように、前記吸気流速の偏差の許容値(所定値)を実験等に基づいて設定するのである。
【0083】
また、前記実施形態では、追加吸気通路20を設けて、特に吸気量の多くなる高回転域においては第1及び第2独立吸気通路21,22に加えて前記追加吸気通路20からも作動室5に吸気を導入するようにしているが、この追加吸気通路20は設けなくてもよい。さらに、サードインジェクタ25を設けない構成とすることも可能である。
【0084】
【発明の効果】
以上、説明したように、請求項1の発明に係るロータリーエンジンの燃料供給制御装置によると、吸気行程にある作動室に個別に連通するように設けられた第1及び第2吸気通路に、それぞれ第1及び第2燃料噴射弁を配設するとともに、第2吸気通路にはシャッター弁を配設して、エンジンへの吸気流量の変化に応じてそのシャッター弁を開閉することにより、吸気の流速を燃料輸送効率の高い適切な範囲に維持することができる。特に、エンジンの低中速域において、エンジン負荷が予め設定した閾値を超えたときにシャッター弁を開くようにしており、その閾値はエンジン回転速度の高いときほど低負荷側の値となるように設定しているので、シャッター弁は、エンジンの負荷乃至回転速度の上昇に対応する吸気流量の増大に対応して開かれることになり、このことで、第1及び第2吸気通路における吸気の流速をいつでも適切な範囲に維持して燃料の輸送効率を向上し、もって制御応答性を向上し、ひいいては出力及び燃費を改善することができる。
【0085】
請求項2の発明によると、シャッター弁の開作動の閾値を、該シャッター弁を開いた状態で第1及び第2吸気通路をそれぞれ流通する吸気の流速がいずれも十分に高くなるような値に設定することで、所要の輸送能力が得られて、請求項1の発明の効果がより確実なものとなる。
【0086】
請求項3の発明によると、シャッター弁の開作動の閾値を、該シャッター弁を閉じた状態で第1吸気通路のみを流通する吸気の流速があまり高くならないように設定することで、吸気抵抗の増大を抑えて、請求項1の発明の効果がより確実なものとなる。
【0087】
請求項4の発明によると、シャッター弁の開作動の閾値を、シャッター弁を開いたときと閉じたときとで吸気流速の偏差があまり大きくならないような値に設定することで、シャッター弁の開閉に伴うエンジントルクの変動が小さくなり、ショックのない良好な運転フィーリングが得られる。
【0088】
請求項5の発明によると、第1燃料噴射弁よりも上流の第1吸気通路に燃料を噴射するように第3燃料噴射弁を配設し、この第3燃料噴射弁の容量を、第2燃料噴射弁と略同じで且つ前記第1燃料噴射弁よりも大きいものとすることで、エンジンの高出力化に対して十分な燃料供給能力を確保できる一方、低出力時の燃料制御精度が向上し、その上さらに、コストの増大を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るロータリーエンジンの燃料供給制御装置の全体構成を示す図である。
【図2】エンジンの要部構成を示す図である。
【図3】エンジンの要部の構成を一部分、切り欠いて示す斜視図である。
【図4】エンジンの運転制御マップの一例を示す図である。
【図5】燃料供給制御の構成を示す機能ブロック図である。
【図6】総噴射量の変化と、これに対する各インジェクタの燃料噴射パルス巾の変化との対応関係を示すダイヤグラムである。
【図7】燃料噴射制御の前半の手順を示すフローチャート図である。
【図8】燃料噴射制御の後半の手順を示すフローチャート図である。
【図9】シャッター弁の制御手順を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
A 燃料供給制御装置
1 ロータリーエンジン
2 ロータハウジング
3 サイドハウジング、インターミディエイトハウジング
4 気筒
5 作動室
6 ロータ
11 第1吸気ポート(第1吸気通路)
13 第2吸気ポート(第2吸気通路)
21 第1独立吸気通路(第1吸気通路)
22 第2独立吸気通路(第2吸気通路)
25 サードインジェクタ(第3燃料噴射弁)
26 プライマリインジェクタ(第1燃料噴射弁)
28 シャッター弁
32 セカンダリインジェクタ(第2燃料噴射弁)
40 コントロールユニット(ECU)
40h シャッター弁開閉判断部(シャッター弁制御手段)
Claims (5)
- ハウジング内にロータを収容してその外周側に複数の作動室を区画し、該ロータの回転に連れて各作動室がそれぞれ周方向に移動しながら、順に吸気、圧縮、膨張及び排気の各行程を行うようにしたロータリーエンジンの燃料供給制御装置であって、
前記吸気行程にある作動室に個別に連通するようにそれぞれ設けられた第1及び第2吸気通路と、
前記各吸気通路にそれぞれ燃料を噴射するように配設された第1及び第2燃料噴射弁と、
前記第2吸気通路に配設されたシャッター弁と、
エンジン回転速度が第1設定回転速度以下のときに前記シャッター弁を閉じる一方、その第1設定回転速度よりも高い第2設定回転速度以上ではシャッター弁を開き、さらに、前記第1設定回転速度よりも高く且つ第2設定回転速度よりも低いときには、エンジン負荷に応じてシャッター弁を開閉制御するシャッター弁制御手段とを備え、
前記シャッター弁制御手段は、エンジン回転速度が前記第1設定回転速度よりも高く且つ第2設定回転速度よりも低いときには、エンジン負荷が、エンジン回転速度の高いときほど低負荷側の値となるように設定した閾値を超えたときに、シャッター弁を開くように構成されていることを特徴とするロータリーエンジンの燃料供給制御装置。 - 請求項1において、
シャッター弁制御手段によりシャッター弁が開かれる閾値は、当該シャッター弁を開いた状態で第1及び第2吸気通路をそれぞれ流通する吸気の流速がいずれも第1の設定値以上になるような値とされていることを特徴とするロータリーエンジンの燃料供給制御装置。 - 請求項2において、
シャッター弁制御手段によりシャッター弁が開かれる閾値は、当該シャッター弁を閉じた状態で第1吸気通路のみを流通する吸気の流速が、第1設定値よりも高い第2の設定値以下になるような値とされていることを特徴とするロータリーエンジンの燃料供給制御装置。 - 請求項1において、
シャッター弁制御手段によりシャッター弁が開かれる閾値は、当該シャッター弁を開いた状態で第1及び第2吸気通路をそれぞれ流通する吸気の流速と、シャッター弁を閉じた状態で第1吸気通路のみを流通する吸気の流速との偏差が、所定値以下になるような値とされていることを特徴とするロータリーエンジンの燃料供給制御装置。 - 請求項1において、
第1燃料噴射弁よりも上流の第1吸気通路に燃料を噴射するように第3燃料噴射弁が配設されており、この第3燃料噴射弁の容量が第2燃料噴射弁と略同じであって且つ前記第1燃料噴射弁よりも大きいことを特徴とするロータリーエンジンの燃料供給制御装置。
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Cited By (1)
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JP2020084931A (ja) * | 2018-11-29 | 2020-06-04 | マツダ株式会社 | ロータリピストンエンジン |
-
2002
- 2002-09-30 JP JP2002284960A patent/JP2004116491A/ja not_active Abandoned
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2020084931A (ja) * | 2018-11-29 | 2020-06-04 | マツダ株式会社 | ロータリピストンエンジン |
JP7159820B2 (ja) | 2018-11-29 | 2022-10-25 | マツダ株式会社 | ロータリピストンエンジン |
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