JP2004114140A - 密閉鍛造方法、その装置及び鍛造成形品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鍛造時にパンチの外周面がダイスの成形孔内周面と接触するパンチとダイスとを組み合わせる金型を用いて鍛造成形品を製造する密閉鍛造方法において、成形孔内周面の成形孔上端側に潤滑剤を付着させずに鍛造成形を開始することを特徴とする密閉鍛造方法によって解決される。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属を素材とする密閉鍛造方法、その装置及び鍛造成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関ピストンは、従来は鋳造法によって製造されていたが、より軽量化、高出力化が求められるようになってきた。そこで、パンチとダイスとを組み合わせる金型を用いて、ダイスの成形孔内の素材をパンチによってパンチの動作方向に対して後方に押出しする密閉鍛造によって内燃機関ピストンが製造されるようになってきている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
一方、従来からプレス加工時には、スプレー装置を用いて金型に離型剤を塗布している(例えば、特許文献2参照)。離型剤としては潤滑剤が用いられている。
【0004】
高品位の内燃機関ピストンは、その使用時において燃焼面側とクランクシャフト側の同軸度が良好であることが求められ、鍛造金型においてもパンチとダイスの高い同軸度が求められている。そこで、ダイスの成形孔内の素材をパンチによってパンチの動作方向に対して前方に押出しする密閉鍛造によって内燃機関ピストンを製造することが検討されてきている(例えば、特許文献3参照)。この時、パンチと成形孔の間に隙間があると素材の回り込みによる隙間バリが発生するので、これを抑えるためには、パンチとダイスのクリアランスが小さい金型を用いる必要がある。この場合の、クリアランスは通常、径で0.01mm〜0.4mmとしている。
【0005】
【特許文献1】
特開平08−114151号公報
【特許文献2】
特開昭54−124867号公報
【特許文献3】
特開2000−213412号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、クリアランスを小さくすると、パンチは鍛造素材と接触する前にダイスの成形孔の内周に予め付着させた潤滑剤と接触することになる。その時、接触により成形孔内周の壁面から削がれた潤滑剤はパンチの成形面に付着したまま、さらに下降するパンチと素材との間に挟まれることになる。その結果、潤滑剤の付着したパンチ形状が鍛造形状として転写され、成形品の表面形状が不良になる。いわゆる潤滑剤の打ち込み・ダレといわれる鍛造不良が発生することとなる。そのため、ここの箇所は後工程によって除去するか、又は不良の激しいものは不良品として廃棄しなくてはならなかった。
【0007】
今回の発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、パンチの成形面に鍛造不良を発生させる量以上の潤滑剤が付着することを抑えることにより、潤滑剤の打ち込み・ダレといった不良の発生を抑えた鍛造成形品を容易に得られる製造方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鍛造成形工程における潤滑剤の挙動について鋭意研究をおこないその知見に基づいて本発明を完成するに至った。
1)上記課題を解決するための第1の発明は、鍛造時にパンチの外周面がダイスの成形孔内周面と接触するパンチとダイスとを組み合わせる金型を用いて鍛造成形品を製造する密閉鍛造方法において、成形孔内周面の成形孔上端側に潤滑剤を付着させずに鍛造成形を開始することを特徴とする密閉鍛造方法である。
2)上記課題を解決するための第2の発明は、潤滑剤を付着させない範囲が、ダイスの成形孔上端から成形孔内に投入される鍛造金属素材の上面までの距離を100%とした時、70%以上の範囲であることを特徴とする1)に記載の密閉鍛造方法である。
3)上記課題を解決するための第3の発明は、潤滑剤を成形孔内周面に塗布してから鍛造成形開始までの間に、成形孔の内周面に付着した潤滑剤を拭取ることにより、成形孔内周面に潤滑剤を付着させない状態とすることを特徴とする、1)または2)に記載の密閉鍛造方法である。
4)上記課題を解決するための第4の発明は、スプレーノズルを有するスプレー装置を用いてスプレーノズルから噴霧させた潤滑剤を成形孔内周面に塗布するに際して、開口部を有する遮蔽部材をスプレーノズルとダイスの間に保持した状態とすることにより、成形孔内周面に潤滑剤を付着させない状態とすることを特徴とする、1)または2)に記載の密閉鍛造方法である。
5)上記課題を解決するための第5の発明は、開口部を有する遮蔽部材が、板状体であることを特徴とする、4)に記載の密閉鍛造方法である。
6)上記課題を解決するための第6の発明は、開口部を有する遮蔽部材が、パイプ状体であることを特徴とする、4)に記載の密閉鍛造方法である。
7)上記課題を解決するための第7の発明は、開口部を有する遮蔽部材が、円錐状パイプであることを特徴とする、4)に記載の密閉鍛造方法である。
8)上記課題を解決するための第8の発明は、開口部を有する遮蔽部材が、スプレー装置に固定されていることを特徴とする、4)乃至7)のいずれか1項に記載の密閉鍛造方法である。
9)上記課題を解決するための第9の発明は、噴霧角度を有するスプレーノズルを用いて、成形孔内周面に潤滑剤を付着させない状態となるように予め調整した保持位置から潤滑剤を噴霧して潤滑剤を成形孔内周面に塗布することにより、成形孔内周面に潤滑剤を付着させない状態とすることを特徴とする、1)または2)に記載の密閉鍛造方法である。
10)上記課題を解決するための第10の発明は、成形孔内周面に潤滑剤を付着させない状態となるように予め噴霧圧力を調整しておいた、噴霧角度を有するスプレーノズルから潤滑剤を噴霧して、潤滑剤を成形孔内周面に塗布することにより、成形孔内周面に潤滑剤を付着させない状態を得ることを特徴とする、1)または2)に記載の密閉鍛造方法である。
11)上記課題を解決するための第11の発明は、鍛造成形品が内燃機関ピストンであることを特徴とする、1)乃至10)のいずれか1項に記載の密閉鍛造方法である。
12)上記課題を解決するための第12の発明は、鍛造時にパンチの外周面がダイスの成形孔内周面と接触するパンチとダイスとを組み合わせる金型を用いて鍛造成形品を製造する密閉鍛造装置において、ダイスの成形孔上端から成形孔内に投入される鍛造金属素材の上面までの距離を100%とした時、成形孔上端から少なくとも70%以上の範囲の成形孔内周面を、潤滑剤を付着させない状態とする潤滑剤塗布手段を有していることを特徴とする密閉鍛造装置である。
13)上記課題を解決するための第13の発明は、潤滑剤塗布手段が、スプレーノズルとノズル移動装置とを有するスプレー装置と、拭き取り装置とを含んで構成されることを特徴とする、12)に記載の密閉鍛造装置である。
14)上記課題を解決するための第14の発明は、潤滑剤塗布手段が、スプレーノズルとノズル移動装置とを有するスプレー装置と、成形孔入口の形状と相似形状であってかつ成形孔入口よりも小さい開口部を有する板状体と、板状体移動装置とを含んで構成されることを特徴とする、12)に記載の密閉鍛造装置である。
15)上記課題を解決するための第15の発明は、潤滑剤塗布手段が、スプレーノズルとノズル移動装置とを有するスプレー装置と、断面が成形孔入口の形状と相似形状であってかつその成形孔入口よりも小さく、かつダイスの成形孔上端から成形孔内に投入される鍛造金属素材の上面までの距離を100%とした時成形孔上端から少なくとも70%以上の範囲の成形孔内周面を覆う長さを有するパイプ状体と、パイプ状体移動装置とを含んで構成されることを特徴とする、12)に記載の密閉鍛造装置である。
16)上記課題を解決するための第16の発明は、潤滑剤塗布手段が、スプレーノズルとノズル移動装置とを有するスプレー装置と、下端開口部の形状が成形孔入口と相似形状であってその面積が成形孔入口よりも小さい円錐状パイプとを含んでいることを特徴とする、12)に記載の密閉鍛造装置である。
17)上記課題を解決するための第17の発明は、鍛造成形品が内燃機関ピストンであることを特徴とする、12)乃至16)のいずれか1項に記載の密閉鍛造装置である。
18)上記課題を解決するための第18の発明は、1)乃至11)のいずれか1項に記載の閉塞鍛造方法で製造され、パンチの形状と鍛造成形品の形状が対称であって、成形品の表面に潤滑剤の挟みこまれが無いことを特徴とする鍛造成形品である。
【0009】
【発明の実施の形態】
<方法の詳細な説明>
本発明の鍛造方法の一例について図1に基づいて説明する。
まず装置構成を図1(A)に基づいて説明する。本発明に用いる金型は、パンチ(107)、ダイス(104)を組み合わせたもので、ダイス(104)には成形孔(102)が設けられている。パンチは、鍛造成形加工時に、その外周面(105)を成形孔の内周面(101)に一部接触しながら成形孔内に下降して、鍛造成形品の形状を有した密閉空間を形成する。なお、ダイスには、鍛造成形品を排出するためのノックアウトピン(111)が含まれている。プレス機には、パンチとダイスの間にはスプレー装置(113)に取りつけられたスプレーノズル(103)が配設されている。スプレー装置はスプレー移動装置(112)を有しており、金型に潤滑剤を塗布する時は、ダイス成形部の中心軸位置まで移動して潤滑剤を塗布する。鍛造成形時には、パンチ下降の時にパンチ及び上型ダイセットなどの可動部とスプレーノズルが干渉しない位置までスプレーノズルを移動させる。
【0010】
内燃機関ピストンを密閉鍛造方法で製造する工程の概略は以下のとおりである。まず、所定量の水溶性潤滑剤又は油性潤滑剤をダイスの成形孔内に、例えばスプレーノズル(103)を用いて噴霧して塗布する。
【0011】
油性潤滑剤、水溶性潤滑剤を各々単独で塗布しても良いし、その両方を塗布しても良い。
【0012】
水溶性潤滑剤としては黒鉛粉末を水に分散させたもの、油性潤滑剤としては黒鉛粉末を灯油にといたものをあげることができる。
塗布量は、水溶性潤滑剤の場合は、1〜20g、油性潤滑剤の場合は、0.3〜10gとすることができる。
【0013】
次に、鍛造用素材(110)を成形孔内に投入する(図1(B))。ここで、パンチの下面(106)には所定量以下の潤滑剤しか塗布されていない状態が好ましい。所定量とは、塗布された潤滑剤があっても、パンチ表面の金属光沢が見える厚さのことを言う。また鍛造用素材(110)のパンチ側の面(114)は所定量以下の潤滑剤を塗布したもの、もしくは潤滑剤を塗布しないものが好ましい。ここで言う所定量とは、パンチの形状が製品形状として充分転写された状態に素材が成形される潤滑剤量の上限である。鍛造用素材には、特開平04−189897号公報に開示があるようにリン酸亜鉛皮膜処理いわゆるボンデ処理を行ったものを用いても良い。
【0014】
本発明は、この時、成形孔上端近傍の範囲(L)の成形孔内周面に潤滑剤を付着させない状態とする(図1(B))。
【0015】
潤滑剤を付着させない範囲は次ぎのように予め予備実験で決めたものである。
(1)潤滑剤を付着させない範囲を変えて成形加工を実施して成形品を得る。
(2)パンチ形状が転写された成形品の形状を測定する。
(3)形状測定結果が製品形状の好ましい仕様値内(形状合格品。)となる範囲を求め、本発明の潤滑剤を付着させない範囲とする。
【0016】
次にパンチが投入した鍛造用素材の上面(109)まで下降する(図1(C))。さらにパンチを下降させて投入した鍛造用素材を成形加工する。
【0017】
内燃機関ピストンを鍛造成形するには、精度の高い鍛造成形品を得る為にパンチとダイスのクリアランス(隙間)(例えば 0.1mm以下。)を小さくするが、このような場合でも、成形孔内周面の成形孔上端側に潤滑剤を付着させないので、パンチが、その外周面をダイス側面に接触しながら鍛造素材に到達するまで移動する間に、成形孔内周面に付着している潤滑剤を削り取って成形品の形状に転写され形状不良となるような潤滑剤の塊を下面(106)に形成することはない。
【0018】
よって、削り取られた潤滑剤がパンチの成形面に塊となって付着して鍛造素材上面との間に挟みこまれて、成形品の形状に潤滑剤の塊が転写されて品質不良が発生することを抑えることができる。その結果、潤滑剤の打ち込み・ダレといった不良の発生を抑えた鍛造成形品を容易に得られる製造方法となる。
【0019】
潤滑剤を付着させない範囲(L)が、ダイスの成形孔の開口部上端(108)から成形孔内に投入される鍛造金属素材の上面(109)までの距離(S)を100%とした時、70%の範囲であることが好ましい。このようにすることによって、パンチ下面に付着する潤滑剤の量を充分に減らすことができ、形状が転写される潤滑剤の塊の発生をより抑えることができるからである。また、残りの範囲には潤滑剤が付着されているので、パンチと成形孔の内周面との間の潤滑効果を確保できるので好ましい。
【0020】
潤滑剤が塗布されない状態で素材が成形孔内周面に加圧接触すると、鍛造成形中に鍛造素材が外周面で焼き付きを起こしてしまい鍛造品の外周面にむしれを起こしてしまうおそれがあるので、潤滑剤が塗布されない状態の範囲(符号L)は100%未満とするのが好ましい。100%以上の範囲、即ち鍛造用素材と成形孔内周面が接触する範囲では潤滑剤が付着した状態であるのが好ましい。
【0021】
ここで、潤滑剤を付着させない状態とは、少なくとも表面の一部にダイスの素材の金属光沢が見える状態である。
【0022】
前方押出し工法での例を説明したが、後方押出しの箇所が一部ある鍛造であっても、パンチの外周面が成形孔内周面に接触しながら最終的に密閉空間を形成する鍛造方法であるものは、本発明の方法の目的に含まれる。後方押出しの箇所において、パンチの下面と成形孔内周面で形成される密閉空間へ潤滑剤塊が発生することを抑えることができ、形状不良の発生を抑えるという効果が得られるからである。
【0023】
本発明の鍛造方法は、上述した潤滑剤塗布方法を中心に以下の工程を含むものである。
【0024】
1)連続鋳造丸棒を鍛造製品所定の長さに切断する工程。
2)鍛造用素材を成形孔へ搬送する工程。
3)ダイスの成形孔内周面に上記潤滑剤塗布方法により潤滑剤を塗布する工程
4)鍛造用素材を鍛造する工程。
5)ノックアウト機構により鍛造成形品を成形孔内から排出する工程。
6)取り出した鍛造成形品を連続的に溶体化・時効処理を実施する熱処理工程。
【0025】
アルミニウム合金の温間鍛造または熱間鍛造の場合、金型(ダイス)の温度はヒーター(図示せず)によって100℃〜400℃に加熱保持されているのが好ましい。鍛造用素材は200℃〜500℃の間に加熱するのが好ましい。
【0026】
本発明による製造方法では、鍛造素材の材料として金属材料を用いることができる。例えば、アルミニウム、鉄、マグネシウム、およびこれらを主成分とする合金を挙げることができる。アルミニウム合金であれば例えば、AA規格A390、JIS4032等を用いることができる。
【0027】
本発明に用いる素材の製法は、連続鋳造、押出、圧延等いずれであっても良い。素材としては、アルミニウム合金鋳造棒、アルミニウム合金鋳造棒の押し出し材および粉末アルミニウム合金の押し出し材を挙げることができる。アルミニウムやアルミニウム合金の場合、連続鋳造された丸棒材が安価で好ましい。アルミニウム合金においては、気体加圧式ホットトップ鋳造法で連続鋳造された丸棒材(例えば、SHOTIC:昭和電工(株)商標。)が、優れた内部健全性を持ち、結晶粒が微細であり、かつ塑性加工による結晶粒の異方性がない為より好ましい。
【0028】
また、スプレー装置(703)が、パンチ(702)下面への潤滑剤の巻き上がり防止傘が付加されていることが好ましい。潤滑剤がパンチ下面に付着するのを抑えることができるからである。潤滑剤の巻き上がり防止傘(701)の一例を図7に示す。図7に示すように、巻き上がり防止傘としてノズルとパンチとの間に平板または傘状の円錐状の板が設けられ該板はノズルの回転と一緒に回転することにより、ノズルから噴出された噴霧状の潤滑剤がパンチに付着するのを抑えることができる。巻き上がり防止傘はノズルと一体になるように固定されているのが装置を小型軽量化することができ好ましい。巻き上がり防止傘の材質としては、鋼、ステンレス、アルミ、プラスチックを挙げることができる。
【0029】
<拭き取る方法の詳細な説明>
潤滑剤を付着させない状態を得るための一例を説明する。図2は用いる装置の概略図である。
鍛造時、スプレー装置(203)にて潤滑剤(水溶性及び油性潤滑剤)をダイス(202)の成形孔の内周面に塗布して、内周面の全面(205)を潤滑剤が塗布された状態にする。鍛造金属素材を投入する前に、成形孔上端側の範囲(206)の成形孔内周面に対して、拭き取り用の布または拭き取る為の治具を使用して、塗布した潤滑剤の拭取りを施す。拭き取り量について詳しく述べる。潤滑剤が塗布されたダイスの成形孔内周表面は、潤滑剤によって金属光沢が見えない状態になっている。拭き取り量は、ダイスの素材の金属光沢が得られるまで拭き取ることとする。その結果、成形孔上端側の成形孔内周面は潤滑剤を付着させない状態となる。
【0030】
その後、ダイスの成形孔(201)へ鍛造金属素材を投入し、パンチを下降させ鍛造成形をおこなう。
【0031】
本発明の方法で潤滑剤を拭き取ることにより、成形孔上端側の成形孔内周面に潤滑剤を付着させないので、パンチは、成形孔内周面に付着している潤滑剤を削り取って、成形品の形状に転写されて品質に影響を与える塊をパンチ下面に形成することはない。よって、削り取られた潤滑剤がパンチの成形面に塊となって付着して鍛造素材上面との間に挟みこまれて、成形品の形状に潤滑剤の塊が転写されて品質不良が発生することを抑えることができる。その結果、潤滑剤の打ち込み・ダレといった不良の発生を抑えた鍛造成形品を容易に得ることができる。
【0032】
拭き取り用の布としては、綿、ガラスクロス、スチールウールなどを挙げることができる。また、灯油、アルコールなどの溶剤又は、水を含浸せたものを用いるのが効果的である。
【0033】
図2(B)では、円板状の拭き取り用の布(207)を成形孔内に挿入して回転させて潤滑剤を拭き取る拭き取り治具(208)を用いた場合の実施例の概略を示した。回転速度、拭き取り時間、挿入位置を予め決めて自動運転することで、安定した拭き取りができる。より好ましくは、ダイス内周面に沿った動きをする装置に拭き取り用の布を取りつけるとより正確に拭き取り自動運転ができるので良い。
【0034】
また、ダイス成形孔の内周面の温度は100℃〜400℃に加熱保持されているのが好ましい。この範囲であると、成形孔の内周面に付着した潤滑剤の溶媒が十分乾燥するので、より容易に成形孔上端側の成形孔内周面に潤滑剤を付着させない状態とすることができるからである。
【0035】
さらに、潤滑剤を塗布してから0.5秒以上経過した後に拭き取るのが好ましい。塗布された潤滑剤が乾燥して金型から剥離しやすい状態になるので拭き取りに適しているからである。0.5秒未満では、溶媒の乾燥が不充分なので拭き取りが困難である。5秒を超えると、生産性が悪くなる。
【0036】
<付着させないようにする方法>
開口部を有する遮蔽部材を、スプレー装置のスプレーノズルとダイスの間に保持した状態で、スプレーノズルで潤滑剤を噴霧して潤滑剤を成形孔内周面に塗布することにより、成形孔上端側の成形孔内周面に潤滑剤を付着させない状態として密閉鍛造方法ことができる。本明細書中では、「スプレーノズルとダイスの間」とは成形孔内の空間も含む。
【0037】
<リング状の邪魔板でスプレーを遮る方法の詳細な説明>
開口部を有する遮蔽部材の例を説明する。図3は用いる装置の概略図である。鍛造時、成形孔内周面への潤滑剤を塗布する前に、ダイス(303)の成形孔(301)開口部(302)の形状と相似形状であってかつ成形孔開口部(302)よりも小さい面積を有する穴(304)の開いた板状体(305)を遮蔽部材として、スプレーノズル(306)とダイス(303)の間に保持する。その状態で、スプレーノズル(306)から潤滑剤を噴霧して成形孔内周面に潤滑剤の塗布を施す。この時、成形孔入口、板状体の穴の中心位置を一致させるのが好ましい。
【0038】
板状体の穴の大きさ、板状態の保持位置は、スプレーノズルからの潤滑剤の噴霧の軌跡が所定の範囲に届かないように決める。この結果、成形孔上端側の成形孔内周面に潤滑剤を付着させない状態となる。
【0039】
ここで、(i)スプレーノズルの位置を成形孔にできるだけ近づける、(ii)板状体の保持位置をできるだけ成形孔に近づける、(iii)この状態で開口部の大きさを決定するという順で決定した開口部は精度良く噴霧範囲を制御できるので好ましい。
【0040】
温間鍛造又は熱間鍛造で使用する場合、ダイス加熱時の金型ヒーター(図示せず。)の熱影響があるので、板状体の材質については、熱が加えられても変形しにくい例えば、SS400、SUS304、アルミ合金の材質の物を選ぶ必要がある。また、板状体の移動装置(308)をより小さくするためには、軽量な材質、例えばSS400、アルミ合金6061、チタン合金が好ましい。スプレー後に、板状体は板状体の移動装置(308)により、パンチ(307)の下降(鍛造)作動範囲から外の位置まで移動する。または、板状体は、スプレー装置(309)に固定することができ、移動装置を別途用意する必要が無いので好ましい。
【0041】
板状体の動作については、ダイス上面からの所定の距離を保てれば手動でもよいが、スプレー装置(309)に取りつけてスプレー装置と一緒に動作をさせるとより効率的である。又、スプレー装置は、固定式でなくダイス上面に平行な面で成形孔中心を回転軸としてダイス上面に平行な面で回転するタイプを使用することにより成形孔内周面への塗布をより均一とできるのでより好ましい。
【0042】
噴霧状態と板状体との関係について詳しく述べる。
スプレーノズル自身の噴霧角度は、スプレーノズルの吐出口を頂点とした角度(m)である。一方、成形孔上端側の所定の範囲(i)、(g)の位置と吐出口を線で結んだ内側に穴を有した板状体を設けることにより、一部の噴霧角度は板状体によりさえぎられる為、結果的に板状体より下は制御された噴霧角度(h)の範囲で、内周面に潤滑剤が塗布されることになる。このようにして、成形孔上端側の成形孔内周面に潤滑剤を付着させない状態とすることができる。
【0043】
なお、板状体上面にさえぎられた潤滑剤が蓄積されるが、吸引装置などを用いることで、潤滑剤を板状体上面から除去できる。
【0044】
本発明の方法で潤滑剤を塗布することにより、成形孔上端側の成形孔内周面に潤滑剤を付着させないので、パンチは、成形孔内周面に付着している潤滑剤を削り取って、成形品の形状に転写されて品質に影響を与える塊をパンチ下面に形成することはない。よって、削り取られた潤滑剤がパンチの成形面に塊となって付着して鍛造素材上面との間に挟みこまれて、成形品の形状に潤滑剤の塊が転写されて品質不良が発生することを抑えることができる。
【0045】
<パイプ状の邪魔板でスプレーを遮る方法詳細な説明>
開口部を有する遮蔽部材の別の例を説明する。図4は用いる装置の概略図である。
鍛造、成形孔内周面への潤滑剤を塗布する前に、ダイス(403)の成形孔(401)の開口部(402)の形状と相似形状あってかつ成形孔入口(402)よりも小さい面積を有する穴(404)の開いたパイプ状体(405)を遮蔽部材として、成形孔内周面の成形孔上端側の範囲を覆うように保持する。その状態で、スプレーノズル(408)から潤滑剤を噴霧して成形孔内周面に潤滑剤の塗布を施す。
【0046】
パイプ状体の大きさは、その断面が成形孔輪郭形状と相似形状で成形孔内周面とのクリアランスが0.1mm〜5mm(より好ましくは1mm〜3mm。)で、パイプ状体の上端はダイス内に装填される鍛造金属素材上面位置以上スプレー装置以下で、パイプ状体の成形孔深さ方向の長さは所定の範囲を覆うものであることが好ましい。
【0047】
パイプ状体の上端には、その外周にフランジ(406)が設けられているのが好ましい(パイプ状体の外周面と成形孔の隙間(411)から潤滑剤が流入することを防ぐことができるからである)。フランジの寸法は、ダイスの直径以下であって、成形孔入口の径よりも大きい(好ましくは1.1倍以上)である。
【0048】
温間鍛造又は熱間鍛造で使用する場合、ダイス加熱時の金型ヒーターの熱影響があるので、パイプ状体の材質については、熱が加えられても変形しにくい例えばSS400、SUS304、アルミ合金の材質の物を選ぶ必要がある。また、パイプ状体の移動装置(407)をより小さくするためには、軽量な材質、例えばSS400、アルミ合金6061、チタン合金が好ましい。スプレー後に、パイプ状体は移動装置(407)により、パンチ(410)の下降(鍛造)作動範囲から外の位置まで移動する。または、パイプ状体は、スプレー装置(409)に固定することができ、移動装置を余分に用意する必要が無いので好ましい。
【0049】
噴霧状態とパイプ状体の関係について詳しく述べる。スプレーノズル自身の噴霧角度は、符号(f)である。しかし、所定の範囲の成形孔内周面がパイプ状体よって覆われるためパイプ状体で覆われた範囲は噴霧角度が広角であっても噴霧対象となることはない。この結果、成形孔上端側の成形孔内周面に潤滑剤を付着させない状態となる。
【0050】
なお、パイプ状体にさえぎられた潤滑剤は成形孔の鍛造時に潤滑剤を必要とする範囲に落ち付着するので、そのまま鍛造しても鍛造品形状に影響しない
【0051】
本発明の方法で潤滑剤を塗布することにより、成形孔上端側の成形孔内周面に潤滑剤を付着させないので、パンチは、成形孔内周面に付着している潤滑剤を削り取って、成形品の形状に転写されて品質に影響を与える塊をパンチ下面に形成することはない。よって、削り取られた潤滑剤がパンチの成形面に塊となって付着して鍛造素材上面との間に挟みこまれて、成形品の形状に潤滑剤の塊が転写されて品質不良が発生することを抑えることができる。
【0052】
<傘状の邪魔板でスプレーを遮る方法の詳細な説明>
開口部を有する遮蔽部材の別の例を説明する。図5は用いる装置の概略図である。
鍛造時に、上部がスプレーノズルより大きい径で、下端開口部がダイス(503)の成形孔(501)開口部(502)の形状と相似形状であってかつ成形孔開口部(502)よりも小さい面積を有する穴(504)の開いた円錐状パイプ(505)をスプレーノズルとダイスの間に保持した状態で、成形孔内周面への潤滑剤の塗布を施すことで、スプレーの噴霧角度を制御して所定の範囲に潤滑剤が付着するのを防ぐことができる。円錐状パイプを使用することでスプレーノズルからの噴霧角度が、制御されるため所定の範囲については潤滑剤が塗布されない。
【0053】
円錐状パイプについて詳しく述べる。板厚は、1mm〜3mmである。温間鍛造又は熱間鍛造で使用する場合、ダイス加熱時の金型ヒーターの熱影響があるので、円錐状パイプの材質については、熱が加えられても変形しにくい例えばSS400、SUS304、アルミ合金の材質の物を選ぶ必要がある。また、移動装置をより小さくするためには、軽量な材質、例えばSS400、アルミ合金6061、チタン合金が好ましい。スプレー後に、円錐状パイプは移動装置により、パンチの下降(鍛造)作動範囲から外の位置まで移動する。または、円錐状パイプは、スプレー装置に固定することができ、移動装置を別途用意する必要が無いので好ましい。図5では円錐状パイプ(505)がスプレー装置(506)に固定された例を示した。
【0054】
なお、円錐状パイプにさえぎられた潤滑剤は円錐状パイプの先端から成形孔内へ滴下するが、鍛造成形で潤滑剤を必要とする範囲に滴下するので、そのまま鍛造しても鍛造形状には影響が無い。
【0055】
本発明の方法で潤滑剤を塗布することにより、成形孔上端側の成形孔内周面に潤滑剤を付着させないので、パンチは、成形孔内周面に付着している潤滑剤を削り取って、成形品の形状に転写されて品質に影響を与える塊をパンチ下面に形成することはない。よって、削り取られた潤滑剤がパンチの成形面に塊となって付着して鍛造素材上面との間に挟みこまれて、成形品の形状に潤滑剤の塊が転写されて品質不良が発生することを抑えることができる。
【0056】
<スプレーノズルとダイスの距離を調整するの詳細な説明>
潤滑剤を付着させない状態を得るための別の例を、図6をもとに説明する。図6は用いる装置の概略図である。
【0057】
スプレー装置(602)に含まれるスプレーノズル移動装置(601)として、噴霧時のスプレーノズル(603)の位置を予め設定しておくことで、動作時の位置を制御できる装置を用いる。
【0058】
鍛造時に使用するスプレーノズルが、噴霧角度(e)が一定となることを予め確認して、その確認したスプレーノズルの噴霧角度と成形孔入口の径から、所定の範囲(L)を満たすためのスプレーを保持する位置を求めておき、スプレー移動装置の高さ条件としてスプレー移動装置に入力しておく。その後、スプレー移動装置を動作させてスプレーノズルを設定位置に移動させた後に、成形孔内周面への潤滑剤の塗布を行うことで成形孔上端側に潤滑剤を付着させない状態を得ることができる。
【0059】
本発明の方法で潤滑剤を塗布することにより、成形孔上端側の成形孔内周面に潤滑剤を付着させないので、パンチは、成形孔内周面に付着している潤滑剤を削り取って、成形品の形状に転写されて品質に影響を与える塊をパンチ下面に形成することはない。よって、削り取られた潤滑剤がパンチの成形面に塊となって付着して鍛造素材上面との間に挟みこまれて、成形品の形状に潤滑剤の塊が転写されて品質不良が発生することを抑えることができる。
【0060】
<スプレーノズル形状と噴霧圧力とで噴霧角度を調整する方法の詳細な説明>
潤滑剤を付着させない状態を得るためのさらに別の例を説明する。
スプレーノズルからの潤滑剤の噴出状態は、小さい圧力では噴霧角度が小さく、大きい圧力では角度が大きくなる傾向がある。
【0061】
スプレーノズルからの潤滑剤の噴出を使用して成形孔内への潤滑剤の塗布を行う際に、使用するスプレーノズルと潤滑剤の噴霧圧力の組み合わせを変えることにより成形孔上端側の成形孔内周面に潤滑剤を付着させない状態とすることができる。
【0062】
噴霧角度が鉛直方向に対して5〜60度であるのが、噴霧角度内での潤滑剤が均一となるので好ましい。5度未満では、スプレーとダイスの距離を大きくする必要が生じるため、プレス機の取り合い寸法上好ましくない。60度を超えると潤滑剤を角度の全域で均一に噴霧するのが困難である。
【0063】
噴霧圧力は、圧力調整弁を通過した気体によって加圧する方法が噴霧圧力の変動を抑えることができるので好ましい。
【0064】
噴霧圧力の変動が大きい場合には、スプレー装置に噴霧圧力値を検出する機能を設けて、その変動値に合わせてスプレーノズル移動装置のノズル位置の制御信号を制御することにより閉ループで塗布範囲を制御できるので、より安定した塗布範囲を得ることができる。
【0065】
本発明の方法で潤滑剤を塗布することにより、成形孔上端側の成形孔内周面に潤滑剤を付着させないので、パンチは、成形孔内周面に付着している潤滑剤を削り取って、成形品の形状に転写されて品質に影響を与える塊をパンチ下面に形成することはない。よって、削り取られた潤滑剤がパンチの成形面に塊となって付着して鍛造素材上面との間に挟みこまれて、成形品の形状に潤滑剤の塊が転写されて品質不良が発生することを抑えることができる。
【0066】
以上説明した本発明の製造方法で製造された鍛造成形品は、パンチの形状が好ましい以上に転写された形状であって、成形品の表面に潤滑剤の挟みこまれの発生が抑えられていることを特徴とする鍛造成形品である。その結果、成形面に仕上のための加工を施す必要が無いので、生産性の良い鍛造成形品となる。
【0067】
本発明の密閉鍛造装置について説明する。図10は、装置の一例の概略を示すブロック図である。パンチとダイスと潤滑剤塗布手段とを含むものである。ここでパンチとダイスは、鍛造時にパンチの外周面がダイスの成形孔内周面と接触する組み合わせの金型である。前述したように、潤滑剤塗布手段には、スプレーノズル、ノズル移動装置に加えて、拭き取り手段とまたは板状体、パイプ状体もしくは円錐状パイプのいずれかとそれの移動装置とが含まれている。
【0068】
潤滑剤塗布手段は、塗布手段制御装置によって、潤滑剤の噴出圧力、噴出タイミング、塗布手段の各構成の位置や動作が制御されている。
【0069】
パンチ、潤滑剤塗布手段、塗布手段制御装置は成形動作制御装置によって、潤滑剤塗布動作、成形動作の各動作タイミング、各動作条件が制御されている。
【0070】
本発明の鍛造装置では、塗布手段の構成状態、これらの位置や動作の制御は、ダイスの成形孔上端から成形孔内に投入される鍛造金属素材の上面までの距離を100%とした時、成形孔上端から少なくとも70%以上の範囲の成形孔内周面を、潤滑剤を付着させない状態となるように設定されている。
【0071】
本発明の鍛造装置を用いることにより、パンチの形状が好ましい以上に転写された形状であって、成形品の表面に潤滑剤の挟みこまれの発生が抑えられている鍛造成形品を容易に製造することができる。
特に本発明の鍛造装置を用いて製造した鍛造成形品の内燃機関ピストンは、パンチで形成されるピストンヘッド部上面の形状が良好になるので好ましい。
本発明の内燃機関ピストンは、必要に応じて鍛造後に機械加工を施こして最終製品の形状とすることができる。
【0072】
【実施例】
以下、実施例にて具体的に説明するが、本発明の目的を限定するものではない。[実施例1]
(1) 材料:AA規格4032
(2) 対象品:密閉鍛造前方押出しによる内燃ピストン
(3) 潤滑剤塗布手段:
(i)噴霧用圧縮空気吐出口と潤滑剤吐出口が同心的に配置された潤滑剤塗布用ノズル
(ii)布を使用しての手動ふき取り。使用した布の材質は綿。
(4) 手順
プレス装置に、図8(A)に示した密閉前方押出しによる内燃ピストンを成形するための金型をセットした。セットしたダイスにあらかじめ直径96mmラ厚さ17mmに切断されたJIS規格4032アルミニウム合金材料を投入した。成形孔上端から素材上面までの距離が、設計上の値と実際の値とが一致していたを確認した。その値は15mmであった。ここで、成形孔上端から15mmの範囲を拭き取り範囲の100%とした。
【0073】
確認が終了した後に一度素材を取り出し、鍛造装置に初期状態を設定した。
図示しない金型ヒーターにより200℃に保持されたダイスに、ダイス上面でダイス上面に平行な面で回転するスプレー装置にて黒鉛系水溶性潤滑剤を塗布した。
【0074】
潤滑塗布が完了後、ダイス上面から14mmの内周側面の範囲について布を治具で成形孔内周面に押し付けながら一周させて、付着している潤滑剤を金属光沢が見える状態まで拭き取り除去した。成形孔上端から素材上面までの距離15mmを100%とした時、14mmは93%となる。
【0075】
加熱炉にて350℃に加熱した素材を成形孔内に投入して、パンチを下降させることにより鍛造を行い成形品を成形後、成形品を排出した。鍛造荷重は400トンとした。
(5)結果
実施例の鍛造結果について、図8を用いて説明する。
得られた成形品の成形品凸曲面形状を、形状測定機(Mitutoyo社製)にて測定した。その結果、成形品凸曲面形状を成形するに用いた金型凹曲面形状部(j)の曲率半径が1.0mmであったのに対して、成形品凸曲面形状部(k)の曲率半径は1.0mmであった。
【0076】
[実施例2]
潤滑剤の拭き取り範囲を変更した以外は、実施例1と同様の条件で鍛造を行った。成形孔上端から素材上面までの距離15mmに対し、潤滑剤塗布後の内周面の拭き取り範囲を10mmとして、拭き取りを実施して成形を行った。すなわち、潤滑剤の塗布されていない状態を66%の範囲とした。実施例1と同様に形状を測定した結果、成形品凸曲面形状を成形するに用いた金型凹曲面形状部の曲率半径が1.0mmであったのに対して、成形品凸曲面形状部の曲率半径は2.2mmであった。
【0077】
[比較例1]
潤滑剤の拭き取りを全く実施しなかったこと以外は、実施例1と同様の条件で鍛造を行った。潤滑剤塗布後の内周面の拭き取りを行わずに、素材を成形孔に投入して成形を行った。得られた成形品は、実施例1と同様に形状を測定した結果、成形品凸曲面形状を成形するに用いた金型凹曲面形状部の曲率半径が1.0mmであったのに対して、成形品凸曲面形状部の曲率半径は2.7mmであった。
【0078】
[比較例2]
潤滑剤の拭き取り方法を変更した以外は、実施例1と同様の条件で鍛造を行った。成形孔上端から素材上面までの距離15mmに対し、潤滑剤塗布後の内周面の拭き取り範囲を20mmとして、拭き取りを実施して成形を行った。すなわち潤滑剤の塗布されていない状態を133%の範囲とした。得られた成形品は、成形品凸曲面形状を成形するに用いた金型凹曲面形状部の曲率半径に対して、好ましい成形品凸曲面形状部の曲率半径を有したものだったが、成形品の側面部に焼きつきによるむしれ(p)が発生した成形品(図9)であった。
【0079】
【発明の効果】
本発明の製造方法は、鍛造時にパンチの外周面がダイスの成形孔内周面と接触するパンチとダイスとを組み合わせる金型を用いて鍛造成形品を製造する密閉鍛造方法において、成形孔上端側の成形孔内周面に潤滑剤を付着させない状態で鍛造成形を開始することを特徴とする密閉鍛造方法であるので、パンチの成形面に鍛造不良を発生させる量の潤滑剤が付着することを抑えて、潤滑剤の打ち込み・ダレといった不良の発生を抑えた鍛造成形品を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の説明図である。(A)は装置概略図、(B)は潤滑剤塗布状態の図、(C)はプロセス途中の図である。
【図2】本発明の実施形態の一例の説明図である。(A)は全面塗布状態の図、(B)は拭き取り状態の図である。
【図3】本発明の実施形態の一例の説明図である。
【図4】本発明の実施形態の一例の説明図である。
【図5】本発明の実施形態の一例の説明図である。
【図6】本発明の実施形態の一例の説明図である。
【図7】本発明に用いる巻き上がり防止装置を有するスプレー装置の一例である。
【図8】本発明の実施例の説明図である。(A)は、ダイスとパンチの組み合わせの図、(B)は成形品の外観図、(C)は成形品の形状断面の部分図である。
【図9】本発明の比較例の説明図である。
【図10】本発明の装置のブロック図である。
【符号の説明】
101:成形孔の内周面、102:成形孔、103:スプレーノズル、104:ダイス、105:パンチの外周面、106:パンチの下面、107:パンチ、108:開口部上端、109:鍛造用素材の上面、110:鍛造用素材、111:ノックアウトピン、112:スプレー移動装置、113:スプレー装置、114:パンチ側の面、
201:成形孔、202:ダイス、203:スプレー装置、204:パンチ、205:内周面の全面、206:潤滑剤を付着させない範囲、207:拭き取り用の布、208:拭き取り治具、
301:成形孔、302:開口部、303:ダイス、304:穴、305:板状体、306:スプレーノズル、307:パンチ、308:板状体の移動装置、309:スプレー装置、
401:成形孔、402:開口部、403:ダイス、404:穴、405:パイプ状体、406:フランジ、407:パイプ状体の移動装置、408:スプレーノズル、409:スプレー装置、410:パンチ、411:隙間
501:成形孔、502:開口部、503:ダイス、504:穴、505:円錐状パイプ、506:スプレー装置
601:スプレーノズル移動装置、602:スプレー装置、603:スプレーノズル
701:巻き上がり防止傘、702:パンチ、703:スプレー装置、
L:潤滑剤を付着させない範囲、S:成形孔の開口部上端から投入された鍛造金属素材の上面までの距離、
e:一定の噴霧角度、f:ノズル自身の噴霧角度、g:潤滑剤を付着させない範囲を示す位置、h:制御された噴霧角度、i:潤滑剤を付着させない範囲を示す位置、j:金型凹曲面形状部、k:成形品凸曲面形状部、m:ノズル自身の噴霧角度、p:焼きつきによるむしれ、
Claims (18)
- 鍛造時にパンチの外周面がダイスの成形孔内周面と接触するパンチとダイスとを組み合わせる金型を用いて鍛造成形品を製造する密閉鍛造方法において、成形孔内周面の成形孔上端側に潤滑剤を付着させずに鍛造成形を開始することを特徴とする密閉鍛造方法。
- 潤滑剤を付着させない範囲が、ダイスの成形孔上端から成形孔内に投入される鍛造金属素材の上面までの距離を100%とした時、70%以上の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の密閉鍛造方法。
- 潤滑剤を成形孔内周面に塗布してから鍛造成形開始までの間に、成形孔の内周面に付着した潤滑剤を拭取ることにより、成形孔内周面に潤滑剤を付着させない状態とすることを特徴とする、請求項1または2に記載の密閉鍛造方法。
- スプレーノズルを有するスプレー装置を用いてスプレーノズルから噴霧させた潤滑剤を成形孔内周面に塗布するに際して、開口部を有する遮蔽部材をスプレーノズルとダイスの間に保持した状態とすることにより、成形孔内周面に潤滑剤を付着させない状態とすることを特徴とする、請求項1または2に記載の密閉鍛造方法。
- 開口部を有する遮蔽部材が、板状体であることを特徴とする、請求項4に記載の密閉鍛造方法。
- 開口部を有する遮蔽部材が、パイプ状体であることを特徴とする、請求項4に記載の密閉鍛造方法。
- 開口部を有する遮蔽部材が、円錐状パイプであることを特徴とする、請求項4に記載の密閉鍛造方法。
- 開口部を有する遮蔽部材が、スプレー装置に固定されていることを特徴とする、請求項4乃至7のいずれか1項に記載の密閉鍛造方法。
- 噴霧角度を有するスプレーノズルを用いて、成形孔内周面に潤滑剤を付着させない状態となるように予め調整した保持位置から潤滑剤を噴霧して潤滑剤を成形孔内周面に塗布することにより、成形孔内周面に潤滑剤を付着させない状態とすることを特徴とする、請求項1または2に記載の密閉鍛造方法。
- 成形孔内周面に潤滑剤を付着させない状態となるように予め噴霧圧力を調整しておいた、噴霧角度を有するスプレーノズルから潤滑剤を噴霧して、潤滑剤を成形孔内周面に塗布することにより、成形孔内周面に潤滑剤を付着させない状態を得ることを特徴とする、請求項1または2に記載の密閉鍛造方法。
- 鍛造成形品が内燃機関ピストンであることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の密閉鍛造方法。
- 鍛造時にパンチの外周面がダイスの成形孔内周面と接触するパンチとダイスとを組み合わせる金型を用いて鍛造成形品を製造する密閉鍛造装置において、ダイスの成形孔上端から成形孔内に投入される鍛造金属素材の上面までの距離を100%とした時、成形孔上端から少なくとも70%以上の範囲の成形孔内周面を、潤滑剤を付着させない状態とする潤滑剤塗布手段を有していることを特徴とする密閉鍛造装置。
- 潤滑剤塗布手段が、スプレーノズルとノズル移動装置とを有するスプレー装置と、拭き取り装置とを含んで構成されることを特徴とする、請求項12に記載の密閉鍛造装置。
- 潤滑剤塗布手段が、スプレーノズルとノズル移動装置とを有するスプレー装置と、成形孔入口の形状と相似形状であってかつ成形孔入口よりも小さい開口部を有する板状体と、板状体移動装置とを含んで構成されることを特徴とする、請求項12に記載の密閉鍛造装置。
- 潤滑剤塗布手段が、スプレーノズルとノズル移動装置とを有するスプレー装置と、断面が成形孔入口の形状と相似形状であってかつその成形孔入口よりも小さく、かつダイスの成形孔上端から成形孔内に投入される鍛造金属素材の上面までの距離を100%とした時成形孔上端から少なくとも70%以上の範囲の成形孔内周面を覆う長さを有するパイプ状体と、パイプ状体移動装置とを含んで構成されることを特徴とする、請求項12に記載の密閉鍛造装置。
- 潤滑剤塗布手段が、スプレーノズルとノズル移動装置とを有するスプレー装置と、下端開口部の形状が成形孔入口と相似形状であってその面積が成形孔入口よりも小さい円錐状パイプとを含んでいることを特徴とする、請求項12に記載の密閉鍛造装置。
- 鍛造成形品が内燃機関ピストンであることを特徴とする、請求項12乃至16のいずれか1項に記載の密閉鍛造装置。
- 請求項1乃至11のいずれか1項に記載の閉塞鍛造方法で製造され、パンチの形状と鍛造成形品の形状が対称であって、成形品の表面に潤滑剤の挟みこまれが無いことを特徴とする鍛造成形品。
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