JP2004114060A - 高融点金属の溶解鋳造方法および装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】Ti,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Taなどの高融点金属を、数十gの単位で、少ない熱ロスで、汚染を実質上防止した状態で溶解し、ただちに鋳造する技術を提供する。
【解決手段】円筒状ないし上部が開いた円錐形筒状の高周波誘導コイルに電力を供給し、コイル内の空間で金属を溶解するとともに溶湯の底部を水冷された金属製の棒の上端面で支持することにより、溶湯の形状をほぼ球体に保った半浮揚溶解を行なう。溶解後は、下方から金属製の鋳型を押し上げて高周波誘導コイルの内部に置くことにより磁場を遮断して浮揚力を失わせ、球形状を失った溶湯を鋳型内に流入させて鋳造する。
【選択図】 図1
【解決手段】円筒状ないし上部が開いた円錐形筒状の高周波誘導コイルに電力を供給し、コイル内の空間で金属を溶解するとともに溶湯の底部を水冷された金属製の棒の上端面で支持することにより、溶湯の形状をほぼ球体に保った半浮揚溶解を行なう。溶解後は、下方から金属製の鋳型を押し上げて高周波誘導コイルの内部に置くことにより磁場を遮断して浮揚力を失わせ、球形状を失った溶湯を鋳型内に流入させて鋳造する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、Ti,V,Cr,Zr,Nb,MoおよびTaなどの、融点の高い金属およびそれらの合金を溶解鋳造する方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上に挙げたような高融点の金属やその合金(以下、まとめて「高融点金属」という。)を、任意の組成において完全に均一に溶解することができれば、従来にない特性を有する新規な製品を開拓することが可能になる。そのためにはまず、これらの高融点金属の溶解に適した、新しいタイプの溶解手段が必要である。
【0003】
この観点から、レビテーション溶解が有力である。レビテーション溶解炉は、電子ビームやプラズマを熱源とする溶解炉と異なり、電磁撹拝による均一な混合を実現する機能を有し、均質材料の製造に好都合であり、かつ、ルツボによる汚染が少ないこと有利である。しかし、従来型の水冷銅ルツボ方式のレビテーション溶解炉は、溶融金属とルツボとの接触面積が他のコールドハースよりも少ないとはいえ、高融点金属を溶解するためには、まだ接触面積が広く、接触に起因する熱ロスが問題である。
【0004】
これに対して、完全浮揚方式のレビテーション溶解炉は、ルツボそのものがなく、接触面積がなくて熱ロスが少ないのが利点である。完全浮揚方式の限界は、浮揚金属球の底部を空中に支える電磁気力がないので、溶融金属球体の大きさが、表面張力で球形を保つことができる範囲の、ごく小さなものに限られることである。
【0005】
この限界を打破する試みとして、上部が円筒形で下部が上に開いた円錐筒形の高周波誘導コイルを使用して溶融金属の球を空中に保持し、下方から連続的に溶湯を引き出して棒状の鋳片とし、上方から原料を補給するという「連続鋳造用浮揚溶解装置」が提案された(特開平10−166107)。しかし、このアイデアは、設備の諸元の設計に問題があるうえに安定した運転を実現することは容易でなく、実用的なものとは言い難い。
【0006】
発明者は、レビテーション溶解において、溶融金属球を空中に完全に浮揚させることの困難さを、支持体とのわずかな接触で解決することを着想し、実験の結果、完全浮揚方式よりも大量の、具体的には10〜20gの金属を溶融金属球として保持することが可能であり、しかも既知の水冷銅ルツボ方式より接触面積が画期的に小さくてすむため、熱ロスと汚染が顕著に減少することを確認した。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明の目的は、上述の発明者の新知見を活かし、直接鋳造品とするに通常耐える、まとまった量の高融点金属を、より少ない熱ロスで、かつ、実質上は問題にならない程度の汚染で溶解し、ただちに鋳造することによって、高融点金属から所望の鋳造部品を製造する方法および装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成する本発明の高融点金属の溶解鋳造方法は、融点の高い金属またはその合金を溶解し鋳造する方法であって、円筒状ないし上部が開いた円錐形筒状の高周波誘導コイルに電力を供給し、コイル内の空間で金属を溶解するとともに溶湯の底部を水冷された金属製の棒の上端面で支持することにより、溶湯の形状をほぼ球体に保った半浮揚溶解を行ない、下方から金属製の鋳型を押し上げて高周波誘導コイルの内部に置くことにより磁場を遮断して浮揚力を失わせ、球形状を失った溶湯を鋳型内に流入させて鋳造することからなる。この溶解は、完全なフルレビテーション溶解ではないが、それに近いものであって、「擬フルレビテーション溶解」とでも呼ぶべき技術である。
【0009】
この方法の実施に使用する本発明の高融点金属の溶解鋳造装置は、融点の高い金属またはその合金を溶解し鋳造する装置であって、図1に示すように、円筒状ないし上部が開いた円錐形筒状の高周波誘導コイル(1)、金属の溶湯を下方から支える水冷された金属製の支持棒(2)、およびこの金属製の棒を囲む外形であって、上面に所望の形状の鋳型キャビティを有する、昇降可能に設置した金属製の鋳型(4)を本質的な構成部分とし、高周波電力の供給手段(図示してない)を加えてなる。
【0010】
【発明の実施形態】
本発明による溶解鋳造の対象となる融点の高い金属は、Ti,V,Cr,Zr,Nb,Mo,TaおよびW、またそれらの合金である。
【0011】
溶解鋳造は、雰囲気をコントロールした条件で行なうことが好ましく、とくに不活性ガスまたは真空中で実施することが好ましい。この目的には、高周波コイルの内側に、耐熱性の材料で製造した透明なパイプ(5)を置き、内部の雰囲気をコントロール可能にすることが推奨される。このパイプは、石英または耐熱ガラスで製造すればよい。
【0012】
上記の透明なパイプは、耐熱性のある材料で製造するにしても、高温度にある溶融金属からの輻射熱を受けて高温になりがちであるから、パイプの内側に、相互に間隔をもって円周上に配置された、高周波誘導コイルに直交する方向に走る水冷銅パイプ(6)の列を置いて、パイプの過熱を防止することが望ましい。
【0013】
水冷した支持棒の太さは、高周波誘導コイルの内径の10〜50%に相当する直径をとすることが好適である。あまり細くては、溶融金属球(9)の支持に不安があり、また水冷機構の構成が困難になる。しかし太すぎては、鋳型の面積および鋳造物の形状に制約が多くなる。支持棒は、Cu、TaまたはWで製造するとよい。本体をCuで製造し、溶融金属球と接する端部にWのチップを置く構造が有利である。
【0014】
高周波誘導コイルと支持棒との相対的な高さ関係を、ある範囲内で可変に設けることが望ましい。その理由は、後述するように、高周波誘導コイルの内部における溶融金属球の位置を、微妙に調節する必要があることである。
【0015】
【実施例】
図1に示した構造の溶解鋳造装置を製作した。この装置は、溶解により得た溶融金属球の直径として、最大25mmを想定している。その場合の溶解重量は、純Tiにして30gであり、Nbならば70g、Moならば82gである。溶融金属球(9)を支持するのは、端面の直径が8mmの、端面にW−チップ(3)をはめた水冷銅パイプである。高周波誘導コイル(1)の内径は44mmである。コイルの内側に肉厚2mmの透明石英管を置いて気密にし、石英管を強烈な輻射熱から守るために、外径が4mmの水冷銅パイプ16本を、その内側の円周上に等間隔に配置した。溶解装置の内部の様相は、これらの水冷銅パイプの隙間から観察可能である。原料の供給や、溶解途中で合金元素を添加する場合にそなえて、溶解装置の上部にロウト(7)を配置してある。
【0016】
この擬フルレビテーション方式の溶解装置においては、溶融金属とルツボの接触はなく、支持体との接触による熱ロスは軽微であるため、金属の融点が3000℃のものまで対応できる。溶融金属球(9)を最適な位置に保持し、溶解を速やかに行なって高温度を達成するためには、浮揚力とジュール加熱能力の最適なバランスを実現しなければならない。この観点から、高周波電源の出力を30kW、周波数を100kHzに選定した。溶解が完了した後は、中央の水冷支持棒(2)を取囲むように配置した金属製とくに銅製の鋳型(4)を上昇させることにより、高周波誘導コイル(1)からの磁場が遮蔽されて、溶融金属が球形を保つ力が加わらなくなるので、溶融金属が流れ落ちて鋳型キャビティに入り、鋳造される。
【0017】
以下、この溶解鋳造装置の設計について説明する。
[溶融金属球に与える浮揚力]
一般的に、高周波コイル内に置かれた球状金属に作用する浮揚力は、式(1)で表される。
F=(3/2)πμI2a3GxKz (1)
ここで、F:鉛直上向きの浮揚力(N)、
μ:透磁率(常磁性金属ではμ=μo=4π×10−7H/mとなって、真空の透磁率に等しい。)
I:コイル電流(A)
a:は金属球の半径(m)
【0018】
Gxは電流浸透深さδ(m)に関係し、1に収束する無次元飽和関数であって、式(2)および(3)で示される。
Gx=1−(3/4X)(sinh2X−sin2X)/(sinh2X+sin2X) (2)
X=a/δ=a/(πfμρ)−1/2 (3)
ここで、f:電流の周波数(Hzまたはs−1)
σ:電気伝導度(Ωm−1) チタンの電気伝導度をσ=2.3×106とすると、f=100,000すなわち100kHzでは、δ=1.0×10−3m(1mm)となる。
金属球の直径を2a=25mmとすればX=12.5であり、この場合のGxの値は0.85と計算される。
【0019】
Kzは、コイルと球体の相対的高さ位置に関する関数であり、式(4)で示される。
Kz=Σ[bn 2/{bn 2+(z−zn)2}3/2]Σ[bn 2(z−zn)/{bn 2+(z−zn)2}5/2](4)
ここで、b:n番目のコイルの内半径
z0:基準面からの高さ
z:球体中心の高さ
【0020】
製造した溶解鋳造装置では、円筒状に5ターンのコイルを用いており、bn=2.25cmで一定である。各コイルの間隔は0.6cmである。位置についてzみると、最下端のコイル高さ位置を0とすると、最上端のコイル位置では2.4cmである。式(4)からzとKzとの関係を求めると、つぎの表のようになる。溶融金属球中心を、Kzの値が正の最大値となる付近に置く。
【0021】
表1
【0022】
[溶湯温度]
定常状態では、電力による入熱と輻射による放熱とが平衡して、温度が一定になる。この温度をT℃として、式(5)により概略の計算をする。
Q=4.88ε{(T+273)/100}44πR2/860 (5)
ここで、Q(kW)は電力による入熱に等しいので、電力効率を15%とすれば、Q=30kW×0.15=4.5kWであり、輻射率ε=0.3とし、金属球の半径R=0.0125cmとすると、T=3130℃を得る。すなわち、本発明の溶解鋳造装置によれば、融点が3000℃を超える金属の溶解が可能である。
【0023】
【発明の効果】
本発明は、既知のレビテーション溶解法、すなわち水冷ルツボ方式と完全浮揚方式とがそれぞれ持っていた利点をある限度内で合わせ、それらの欠点をほぼ解消した、新規なレビテーション溶解を実現したものである。本発明により、数十gという、種々の鋳造部品の製造に関して実用的な量の高融点金属が、少ない熱ロスと、実質上ないといえるほど低い汚染度をもって、効率よく溶解鋳造することができる。
【0024】
本発明の溶解鋳造技術により開発可能になる製品の例を挙げれば、つぎのとおりである。
・高融点タービンブレード:ガスタービンの効率向上をはかるために、ブレードの耐熱温度を現状の1150℃(Ni基合金、冷却式)から、1300℃以上(NbSi系、無冷却式)に高める。
・高精度形状記憶合金:金属間化合物である形状記憶合金の技術ポイントは成分の制御と清浄度である。これに、非汚染で添加合金歩留りが高いレビテーション溶解を活用できる。
・高融点水素吸蔵合金:Ti−V系その他、軽量高性能合金を見出す。
・真空ポンプゲッター:Ti−Mo系を中心として、最適合金を見出す。
・その他:これまでその融点が高すぎて、試作が不能またはきわめて困難であった合金の試作が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶解鋳造装置の構成を示す縦断面図。
【符号の説明】
1 高周波誘導コイル
2 水冷された金属製の支持棒
3 W−チップ
4 金属製の鋳型
5 透明なパイプ
6 水冷銅パイプ
7 ロウト
9 溶融金属球
【発明の属する技術分野】
本発明は、Ti,V,Cr,Zr,Nb,MoおよびTaなどの、融点の高い金属およびそれらの合金を溶解鋳造する方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上に挙げたような高融点の金属やその合金(以下、まとめて「高融点金属」という。)を、任意の組成において完全に均一に溶解することができれば、従来にない特性を有する新規な製品を開拓することが可能になる。そのためにはまず、これらの高融点金属の溶解に適した、新しいタイプの溶解手段が必要である。
【0003】
この観点から、レビテーション溶解が有力である。レビテーション溶解炉は、電子ビームやプラズマを熱源とする溶解炉と異なり、電磁撹拝による均一な混合を実現する機能を有し、均質材料の製造に好都合であり、かつ、ルツボによる汚染が少ないこと有利である。しかし、従来型の水冷銅ルツボ方式のレビテーション溶解炉は、溶融金属とルツボとの接触面積が他のコールドハースよりも少ないとはいえ、高融点金属を溶解するためには、まだ接触面積が広く、接触に起因する熱ロスが問題である。
【0004】
これに対して、完全浮揚方式のレビテーション溶解炉は、ルツボそのものがなく、接触面積がなくて熱ロスが少ないのが利点である。完全浮揚方式の限界は、浮揚金属球の底部を空中に支える電磁気力がないので、溶融金属球体の大きさが、表面張力で球形を保つことができる範囲の、ごく小さなものに限られることである。
【0005】
この限界を打破する試みとして、上部が円筒形で下部が上に開いた円錐筒形の高周波誘導コイルを使用して溶融金属の球を空中に保持し、下方から連続的に溶湯を引き出して棒状の鋳片とし、上方から原料を補給するという「連続鋳造用浮揚溶解装置」が提案された(特開平10−166107)。しかし、このアイデアは、設備の諸元の設計に問題があるうえに安定した運転を実現することは容易でなく、実用的なものとは言い難い。
【0006】
発明者は、レビテーション溶解において、溶融金属球を空中に完全に浮揚させることの困難さを、支持体とのわずかな接触で解決することを着想し、実験の結果、完全浮揚方式よりも大量の、具体的には10〜20gの金属を溶融金属球として保持することが可能であり、しかも既知の水冷銅ルツボ方式より接触面積が画期的に小さくてすむため、熱ロスと汚染が顕著に減少することを確認した。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明の目的は、上述の発明者の新知見を活かし、直接鋳造品とするに通常耐える、まとまった量の高融点金属を、より少ない熱ロスで、かつ、実質上は問題にならない程度の汚染で溶解し、ただちに鋳造することによって、高融点金属から所望の鋳造部品を製造する方法および装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成する本発明の高融点金属の溶解鋳造方法は、融点の高い金属またはその合金を溶解し鋳造する方法であって、円筒状ないし上部が開いた円錐形筒状の高周波誘導コイルに電力を供給し、コイル内の空間で金属を溶解するとともに溶湯の底部を水冷された金属製の棒の上端面で支持することにより、溶湯の形状をほぼ球体に保った半浮揚溶解を行ない、下方から金属製の鋳型を押し上げて高周波誘導コイルの内部に置くことにより磁場を遮断して浮揚力を失わせ、球形状を失った溶湯を鋳型内に流入させて鋳造することからなる。この溶解は、完全なフルレビテーション溶解ではないが、それに近いものであって、「擬フルレビテーション溶解」とでも呼ぶべき技術である。
【0009】
この方法の実施に使用する本発明の高融点金属の溶解鋳造装置は、融点の高い金属またはその合金を溶解し鋳造する装置であって、図1に示すように、円筒状ないし上部が開いた円錐形筒状の高周波誘導コイル(1)、金属の溶湯を下方から支える水冷された金属製の支持棒(2)、およびこの金属製の棒を囲む外形であって、上面に所望の形状の鋳型キャビティを有する、昇降可能に設置した金属製の鋳型(4)を本質的な構成部分とし、高周波電力の供給手段(図示してない)を加えてなる。
【0010】
【発明の実施形態】
本発明による溶解鋳造の対象となる融点の高い金属は、Ti,V,Cr,Zr,Nb,Mo,TaおよびW、またそれらの合金である。
【0011】
溶解鋳造は、雰囲気をコントロールした条件で行なうことが好ましく、とくに不活性ガスまたは真空中で実施することが好ましい。この目的には、高周波コイルの内側に、耐熱性の材料で製造した透明なパイプ(5)を置き、内部の雰囲気をコントロール可能にすることが推奨される。このパイプは、石英または耐熱ガラスで製造すればよい。
【0012】
上記の透明なパイプは、耐熱性のある材料で製造するにしても、高温度にある溶融金属からの輻射熱を受けて高温になりがちであるから、パイプの内側に、相互に間隔をもって円周上に配置された、高周波誘導コイルに直交する方向に走る水冷銅パイプ(6)の列を置いて、パイプの過熱を防止することが望ましい。
【0013】
水冷した支持棒の太さは、高周波誘導コイルの内径の10〜50%に相当する直径をとすることが好適である。あまり細くては、溶融金属球(9)の支持に不安があり、また水冷機構の構成が困難になる。しかし太すぎては、鋳型の面積および鋳造物の形状に制約が多くなる。支持棒は、Cu、TaまたはWで製造するとよい。本体をCuで製造し、溶融金属球と接する端部にWのチップを置く構造が有利である。
【0014】
高周波誘導コイルと支持棒との相対的な高さ関係を、ある範囲内で可変に設けることが望ましい。その理由は、後述するように、高周波誘導コイルの内部における溶融金属球の位置を、微妙に調節する必要があることである。
【0015】
【実施例】
図1に示した構造の溶解鋳造装置を製作した。この装置は、溶解により得た溶融金属球の直径として、最大25mmを想定している。その場合の溶解重量は、純Tiにして30gであり、Nbならば70g、Moならば82gである。溶融金属球(9)を支持するのは、端面の直径が8mmの、端面にW−チップ(3)をはめた水冷銅パイプである。高周波誘導コイル(1)の内径は44mmである。コイルの内側に肉厚2mmの透明石英管を置いて気密にし、石英管を強烈な輻射熱から守るために、外径が4mmの水冷銅パイプ16本を、その内側の円周上に等間隔に配置した。溶解装置の内部の様相は、これらの水冷銅パイプの隙間から観察可能である。原料の供給や、溶解途中で合金元素を添加する場合にそなえて、溶解装置の上部にロウト(7)を配置してある。
【0016】
この擬フルレビテーション方式の溶解装置においては、溶融金属とルツボの接触はなく、支持体との接触による熱ロスは軽微であるため、金属の融点が3000℃のものまで対応できる。溶融金属球(9)を最適な位置に保持し、溶解を速やかに行なって高温度を達成するためには、浮揚力とジュール加熱能力の最適なバランスを実現しなければならない。この観点から、高周波電源の出力を30kW、周波数を100kHzに選定した。溶解が完了した後は、中央の水冷支持棒(2)を取囲むように配置した金属製とくに銅製の鋳型(4)を上昇させることにより、高周波誘導コイル(1)からの磁場が遮蔽されて、溶融金属が球形を保つ力が加わらなくなるので、溶融金属が流れ落ちて鋳型キャビティに入り、鋳造される。
【0017】
以下、この溶解鋳造装置の設計について説明する。
[溶融金属球に与える浮揚力]
一般的に、高周波コイル内に置かれた球状金属に作用する浮揚力は、式(1)で表される。
F=(3/2)πμI2a3GxKz (1)
ここで、F:鉛直上向きの浮揚力(N)、
μ:透磁率(常磁性金属ではμ=μo=4π×10−7H/mとなって、真空の透磁率に等しい。)
I:コイル電流(A)
a:は金属球の半径(m)
【0018】
Gxは電流浸透深さδ(m)に関係し、1に収束する無次元飽和関数であって、式(2)および(3)で示される。
Gx=1−(3/4X)(sinh2X−sin2X)/(sinh2X+sin2X) (2)
X=a/δ=a/(πfμρ)−1/2 (3)
ここで、f:電流の周波数(Hzまたはs−1)
σ:電気伝導度(Ωm−1) チタンの電気伝導度をσ=2.3×106とすると、f=100,000すなわち100kHzでは、δ=1.0×10−3m(1mm)となる。
金属球の直径を2a=25mmとすればX=12.5であり、この場合のGxの値は0.85と計算される。
【0019】
Kzは、コイルと球体の相対的高さ位置に関する関数であり、式(4)で示される。
Kz=Σ[bn 2/{bn 2+(z−zn)2}3/2]Σ[bn 2(z−zn)/{bn 2+(z−zn)2}5/2](4)
ここで、b:n番目のコイルの内半径
z0:基準面からの高さ
z:球体中心の高さ
【0020】
製造した溶解鋳造装置では、円筒状に5ターンのコイルを用いており、bn=2.25cmで一定である。各コイルの間隔は0.6cmである。位置についてzみると、最下端のコイル高さ位置を0とすると、最上端のコイル位置では2.4cmである。式(4)からzとKzとの関係を求めると、つぎの表のようになる。溶融金属球中心を、Kzの値が正の最大値となる付近に置く。
【0021】
表1
【0022】
[溶湯温度]
定常状態では、電力による入熱と輻射による放熱とが平衡して、温度が一定になる。この温度をT℃として、式(5)により概略の計算をする。
Q=4.88ε{(T+273)/100}44πR2/860 (5)
ここで、Q(kW)は電力による入熱に等しいので、電力効率を15%とすれば、Q=30kW×0.15=4.5kWであり、輻射率ε=0.3とし、金属球の半径R=0.0125cmとすると、T=3130℃を得る。すなわち、本発明の溶解鋳造装置によれば、融点が3000℃を超える金属の溶解が可能である。
【0023】
【発明の効果】
本発明は、既知のレビテーション溶解法、すなわち水冷ルツボ方式と完全浮揚方式とがそれぞれ持っていた利点をある限度内で合わせ、それらの欠点をほぼ解消した、新規なレビテーション溶解を実現したものである。本発明により、数十gという、種々の鋳造部品の製造に関して実用的な量の高融点金属が、少ない熱ロスと、実質上ないといえるほど低い汚染度をもって、効率よく溶解鋳造することができる。
【0024】
本発明の溶解鋳造技術により開発可能になる製品の例を挙げれば、つぎのとおりである。
・高融点タービンブレード:ガスタービンの効率向上をはかるために、ブレードの耐熱温度を現状の1150℃(Ni基合金、冷却式)から、1300℃以上(NbSi系、無冷却式)に高める。
・高精度形状記憶合金:金属間化合物である形状記憶合金の技術ポイントは成分の制御と清浄度である。これに、非汚染で添加合金歩留りが高いレビテーション溶解を活用できる。
・高融点水素吸蔵合金:Ti−V系その他、軽量高性能合金を見出す。
・真空ポンプゲッター:Ti−Mo系を中心として、最適合金を見出す。
・その他:これまでその融点が高すぎて、試作が不能またはきわめて困難であった合金の試作が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶解鋳造装置の構成を示す縦断面図。
【符号の説明】
1 高周波誘導コイル
2 水冷された金属製の支持棒
3 W−チップ
4 金属製の鋳型
5 透明なパイプ
6 水冷銅パイプ
7 ロウト
9 溶融金属球
Claims (9)
- 融点の高い金属またはその合金を溶解し鋳造する方法であって、円筒状ないし上部が開いた円錐形筒状の高周波誘導コイルに電力を供給し、コイル内の空間で金属を溶解するとともに溶湯の底部を水冷された金属製の棒の上端面で支持することにより、溶湯の形状をほぼ球体に保ったレビテーション溶解を行ない、溶解後は、下方から金属製の鋳型を押し上げて高周波誘導コイルの内部に置くことにより、磁場を遮断して浮揚力を失わせ、球形状を保持できなくなった溶湯を鋳型内に流入させて鋳造することからなる高融点金属の溶解鋳造方法。
- 溶解鋳造の対象とする融点の高い金属が、Ti,V,Cr,Zr,Nb,Mo,TaもしくはW、またはそれらの合金である請求項1の溶解鋳造方法。
- 溶解鋳造の雰囲気を、不活性ガスまたは真空中とする請求項1の溶解鋳造方法。
- 融点の高い金属またはその合金を溶解し鋳造する装置であって、円筒状ないし上部が開いた円錐形筒状の高周波誘導コイル、金属の溶湯を下方から支える水冷された金属製の支持棒、およびこの金属製の棒を囲む外形であって、上面に所望の形状の鋳型キャビティを有する、昇降可能に設置した金属製の鋳型を本質的な構成部分とし、高周波電力の供給手段を加えてなる高融点金属の溶解鋳造装置。
- 高周波コイルの内側に、耐熱性の材料で製造した透明なパイプを置き、内部の雰囲気をコントロール可能にした請求項4の溶解鋳造装置。
- 透明なパイプの内側に、相互に間隔をもって円周上に配置された、高周波誘導コイルに直交する方向に走る水冷銅パイプの列を有する請求項5の溶解鋳造装置。
- 支持棒が、高周波誘導コイルの内径の10〜50%に相当する直径を有する請求項4の溶解鋳造装置。
- 支持棒を、Cu、TaまたはWで製造した請求項4の溶解鋳造装置。
- 高周波誘導コイルと支持棒との相対的な高さ関係を可変に設けた請求項4の溶解鋳造装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002277586A JP2004114060A (ja) | 2002-09-24 | 2002-09-24 | 高融点金属の溶解鋳造方法および装置 |
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JP2007210032A (ja) * | 2006-02-09 | 2007-08-23 | General Electric Co <Ge> | ニオブ基部品から中子を除去する方法 |
CN106424634A (zh) * | 2016-09-30 | 2017-02-22 | 张斌 | 一种非晶金属真空熔炼成型设备及其使用方法 |
CN110396613A (zh) * | 2019-08-13 | 2019-11-01 | 南京理工大学 | 一种应用于牙根种植体的钛锆合金的制备方法 |
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2002
- 2002-09-24 JP JP2002277586A patent/JP2004114060A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2007210032A (ja) * | 2006-02-09 | 2007-08-23 | General Electric Co <Ge> | ニオブ基部品から中子を除去する方法 |
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CN106424634B (zh) * | 2016-09-30 | 2018-05-29 | 张斌 | 一种非晶金属真空熔炼成型设备及其使用方法 |
CN110396613A (zh) * | 2019-08-13 | 2019-11-01 | 南京理工大学 | 一种应用于牙根种植体的钛锆合金的制备方法 |
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