JP2004112701A - マイクロホンアレー座標系の逐次的補正方法、マイクロホンアレーにおけるマイクロホン受信信号の補正方法および補正装置 - Google Patents

マイクロホンアレー座標系の逐次的補正方法、マイクロホンアレーにおけるマイクロホン受信信号の補正方法および補正装置 Download PDF

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Abstract

【課題】この発明は、マイクロホンアレーを構成する各マイクロホンの受信信号を、互いに遅延時間差のない信号に変換できるマイクロホンアレーにおけるマイクロホン受信信号の補正方法を提供することを目的とする。
【解決手段】可搬型機器に搭載されかつ可搬型機器を基準とした3次元空間のxy平面上に原点から等しい距離に配置された3以上のマイクロホンを有するマイクロホンアレーにおけるマイクロホン受信信号の補正方法において、各マイクロホンに目的音源信号が到達する際の遅延時間の差が0となるように、マイクロホンアレー座標系をx軸周りおよびy軸周りに回転させたとした場合の、x軸周りの回転角およびy軸周りの回転角を、所定時間毎に算出するステップ、および算出したx軸周りの回転角およびy軸周りの回転角に基づいて各マイクロホンの受信信号を遅延時間差のない信号に変換するステップを備えている。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、マイクロホンアレー座標系の逐次的補正方法、マイクロホンアレーにおけるマイクロホン受信信号の補正方法および補正装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、遠隔発話音声認識を実現するためのアプローチの1つとして、マイクロホンアレーを用いた雑音除去に関する研究が盛んに行われている。また、注目を浴びつつある携帯型音声認識装置において、現状では音声認識の性能確保のために接話マイクロホンを利用する必要があるが、将来的にはPDA(Portable Digital Assistance) 等でのマイクロホンアレーの利用が想定される。
【0003】
しかし、モバイル機器でのマイクロホンアレーの利用は、各マイクロホン素子の空間的な位置が時々刻々と変化するため、音源方向が固定されていたとしても適応的にビームパターンを設計する必要がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、マイクロホンアレーに対する音源方向を一定に保つことができ、固定ビームフォーミングの利用が可能となるマイクロホンアレー座標系の逐次的補正方法を提供することを目的とする。
【0005】
また、この発明は、マイクロホンアレーを構成する各マイクロホンの受信信号を、互いに遅延時間差のない信号に変換できるマイクロホンアレーにおけるマイクロホン受信信号の補正方法および補正回路を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、可搬型機器に搭載されたマイクロホンアレーの座標系の逐次的補正方法において、マイクロホンアレーに対する音源方向が一定に保たれるように、マイクロホンアレー座標系を逐次的に補正することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、可搬型機器に搭載されかつ可搬型機器を基準とした3次元空間のxy平面上に原点から等しい距離に配置された3以上のマイクロホンを有するマイクロホンアレーにおけるマイクロホン受信信号の補正方法において、各マイクロホンに目的音源信号が到達する際の遅延時間の差が0となるように、マイクロホンアレー座標系をx軸周りおよびy軸周りに回転させたとした場合の、x軸周りの回転角およびy軸周りの回転角を、所定時間毎に算出するステップ、および算出したx軸周りの回転角およびy軸周りの回転角に基づいて各マイクロホンの受信信号を遅延時間差のない信号に変換するステップを備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、可搬型機器に搭載されかつ可搬型機器を基準とした3次元空間のxy平面上に原点から等しい距離に配置された3以上のマイクロホンを有するマイクロホンアレーにおけるマイクロホン受信信号の補正装置において、各マイクロホンに目的音源信号が到達する際の遅延時間の差が0となるように、マイクロホンアレー座標系をx軸周りおよびy軸周りに回転させたとした場合の、x軸周りの回転角およびy軸周りの回転角を、所定時間毎に算出する手段、および算出したx軸周りの回転角およびy軸周りの回転角に基づいて各マイクロホンの受信信号を遅延時間差のない信号に変換する手段を備えていることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。
【0010】
〔1〕マイクロホンアレー座標系の定義
【0011】
図1は、マイクロホンアレー座標系を示している。
【0012】
マイクロホンアレーは、可搬型機器に搭載されている。マイクロホンM1,M2,M3は、可搬型機器を基準とした3次元空間(3次元座標系)のxy平面上に、原点oを重心とする1辺の長さが2dの正三角形の頂点に配置されている。マイクロホンMi (i=1,2,3)の座標pi は、幾何学的な関係から次式(1),(2),(3)のように表される。
【0013】
【数1】
Figure 2004112701
【0014】
また、座標系をx,y軸周りに回転する場合の回転角θx , θy は、回転軸となる座標軸の正の方向側から原点oを見て、座標を反時計周りに回す場合に回転角が正の値をとるように定義する。このとき、x,y軸周りの回転に関する回転行列Tx (θx ), Ty (θy )は、次式(4)、(5)のように与えられる。
【0015】
【数2】
Figure 2004112701
【0016】
したがって、時刻jにおける回転角をθx , θy とすると、マイクロホンMi の座標pi  (j) は、次式(6)のように与えられる。
【0017】
【数3】
Figure 2004112701
【0018】
〔2〕マイクロホンアレーにおけるマイクロホン受信信号を補正するための回路の説明
【0019】
図2は、マイクロホンアレーにおけるマイクロホン受信信号を補正するための回路を示している。
【0020】
各マイクロホンM1,M2,M3の受信信号x1(t),x2(t),x3(t)は、補正回路10に送られる。補正回路10は、受信信号x1(t),x2(t),x3(t)の遅延時間の差が0となるように、受信信号x1(t),x2(t),x3(t)を補正し、信号y1(t),y2(t),y3(t)として出力する。以下、補正回路10による補正方法について説明する。
【0021】
この実施の形態では、簡単化のために信号はすべて平面波で到来すると仮定する。目的音源信号をs(t) とし、これがマイクロホンMi へ到来する際の遅延時間をδi とすると、マイクロホンMi での受音信号xi (t) は、一般に次式(7)のように表される。
【0022】
【数4】
Figure 2004112701
【0023】
ただし、ni (t) はマイクロホンMi での雑音信号である。
【0024】
ここで、マイクロホンアレーに対する目的音源方向が、z軸上、すなわち、各マイクロホン間の遅延時間差が0になるようにマイクロホンアレー座標系を回転角θx , θy だけ回転したとする。
【0025】
このとき、遅延時間δi は、回転角θx , θy を用いて、次式(8)のように表すことができる。
【0026】
【数5】
Figure 2004112701
【0027】
ただし、cは音速である。この遅延時間δi (θx , θy )を用いて補正された出力信号yi (t) は、次式(9)のように表すことができる。
【0028】
【数6】
Figure 2004112701
【0029】
ただし、sinc(x) =sin(πx)/πx で与えられ、Tはサンプリング間隔である。ここで、次式(10)のような二乗誤差eを用いる。
【0030】
【数7】
Figure 2004112701
【0031】
これは、各出力信号yi 間の遅延時間差が0になった際に最小値をとる評価関数である。この二乗誤差eを最小化する回転角θx , θy の推定に最急降下法を用いると、k+1回目に推定された回転角θx  (k+1) , θy  (k+1) は、k回目に推定された回転角θx  (k) , θy  (k) によって、次式(11),(12)のように求められる。
【0032】
【数8】
Figure 2004112701
【0033】
ただし、μはステップサイズパラメータである。
【0034】
つまり、補正回路10は、上記式(11),(12)に基づいて、前回算出した出力信号yi 間の遅延時間差が0となるような回転角θx , θy を算出し、得られた回転角θx , θy と上記式(10)とに基づいて、出力信号yi を算出する。
【0035】
なお、前回算出した出力信号yi 間の遅延時間差が0となるような回転角θx , θy を算出することは、言い換えれば、マイクロホンアレーに対する音源方向が一定に保たれるように、マイクロホンアレー座標系を補正することに相当する。
【0036】
〔3〕評価
本発明手法の有効性を確認するため、計算機シミュレーションによる評価を行った。
【0037】
〔3.1〕シミュレーション条件
目的音源信号は平均0,分散0.05のshaped gaussian noise を用いた。雑音信号は0とした。なお、マイクロホン間距離2dは0.1m, サンプリング周波数は48kHz とした。
【0038】
マイクロホンMi での受音信号xi (t) は、目的音源信号を+3,−5,+2サンプル,および−4,+3,+1サンプルシフトしたもので模擬した。ただし,1サンプルはサンプリング間隔Tである。
【0039】
また、回転角θx , θy の推定における式(11),(12)のステップサイズパラメータμは0.01とし、回転角の初期値θx  (0) , θy  (0) は0rad とした。
【0040】
〔3.2〕シミュレーション結果
シミュレーション結果を図3に示す。横軸は更新回数k,縦軸は推定した回転角θx , θy である。実線は、目的音源信号を+3,−5,+2サンプルシフトし模擬した受音信号xi (t) な対する結果を示し、破線は目的音源信号を−4,+3,+1サンプルシフトし模擬した受音信号xi (t) に対する結果を示している。回転角の推定値は、理論値(θx , θy )=(0.30,0.59),(0.14,−0.51)にそれぞれ収束していることが確認できる。
【0041】
〔4〕まとめ
モバイル機器での利用が想定される可搬型マイクロホンアレーにおいて、マイクロホンアレーに対する音源方向が一定に保たれるように、マイクロホンアレー座標系を逐次的に補正する手法を提案し、計算機シミュレーションにより、補正が可能であることを確認した。
【0042】
【発明の効果】
この発明によれば、マイクロホンアレーに対する音源方向を一定に保つことができ、固定ビームフォーミングの利用が可能となる。
【0043】
この発明によれば、マイクロホンアレーを構成する各マイクロホンの受信信号を、互いに遅延時間差のない信号に変換できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】マイクロホンアレー座標系を示す模式図である。
【図2】マイクロホンアレーにおけるマイクロホン受信信号を補正するための回路の構成を示すブロック図である。
【図3】シミュレーション結果を示すグラフである。
【符号の説明】
M1,M2,M3:マイクロホン

Claims (3)

  1. 可搬型機器に搭載されたマイクロホンアレーの座標系の逐次的補正方法において、
    マイクロホンアレーに対する音源方向が一定に保たれるように、マイクロホンアレー座標系を逐次的に補正することを特徴とするマイクロホンアレー座標系の逐次的補正方法。
  2. 可搬型機器に搭載されかつ可搬型機器を基準とした3次元空間のxy平面上に原点から等しい距離に配置された3以上のマイクロホンを有するマイクロホンアレーにおけるマイクロホン受信信号の補正方法において、
    各マイクロホンに目的音源信号が到達する際の遅延時間の差が0となるように、マイクロホンアレー座標系をx軸周りおよびy軸周りに回転させたとした場合の、x軸周りの回転角およびy軸周りの回転角を、所定時間毎に算出するステップ、および
    算出したx軸周りの回転角およびy軸周りの回転角に基づいて各マイクロホンの受信信号を遅延時間差のない信号に変換するステップ、
    を備えていることを特徴とするマイクロホンアレーにおけるマイクロホン受信信号の補正方法。
  3. 可搬型機器に搭載されかつ可搬型機器を基準とした3次元空間のxy平面上に原点から等しい距離に配置された3以上のマイクロホンを有するマイクロホンアレーにおけるマイクロホン受信信号の補正装置において、
    各マイクロホンに目的音源信号が到達する際の遅延時間の差が0となるように、マイクロホンアレー座標系をx軸周りおよびy軸周りに回転させたとした場合の、x軸周りの回転角およびy軸周りの回転角を、所定時間毎に算出する手段、および
    算出したx軸周りの回転角およびy軸周りの回転角に基づいて各マイクロホンの受信信号を遅延時間差のない信号に変換する手段、
    を備えていることを特徴とするマイクロホンアレーにおけるマイクロホン受信信号の補正装置。
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