JP2004111444A - Ic部品の外装樹脂の除去装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】IC部品の外装樹脂の一部を内部のICチップの表面の中央、周辺部及びICチップ周囲の外装樹脂が過不足なく薬液で除去可能とすること。
【解決手段】少なくとも試料支持機能かつ薬液噴射機能を有する試料台、薬液供給手段、廃液回収手段、薬液温度制御手段を具備し、かつ前記薬液温度制御手段の数を少なくとも2個とすることによって、薬液温度の異なる2段階で外装樹脂を溶解除去する。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、IC部品の外装樹脂の除去装置に関し、故障したIC部品の故障解析、特に外装樹脂を用いて集積回路を封入したIC部品の外装樹脂の一部を溶解除去することにより外装樹脂の内部に封入されたICチップの表面及び周囲を露出させ、ICチップの表面の状況を光学顕微鏡や電子顕微鏡等を用いて観察する場合や元素分析装置を用いて元素分析する場合に関する。
【0002】
【従来の技術】
外装樹脂を用いて集積回路を封入したIC部品の外装樹脂の一部を例えば発煙硫酸等の薬液を該IC部品の外装樹脂の一部に噴射して溶解除去する場合に、試料温度及び上記薬液の温度を、上記の溶解除去作業の開始時から終了時までの間、例えば200℃付近のある一定温度に制御した状態で上記の溶解除去作業をするのが通例であった。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−340259号公報
【特許文献2】
特開2000−323506号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
試料であるIC部品の内部にICチップが位置し、そのICチップの上方に相当する部分の外装樹脂を薬品を用いて溶解除去する時に、上記の試料の溶解しようとする樹脂の面を下向きに設置し、かつ、薬液噴射ノズルの位置が上記の試料の溶解しようとする樹脂部分の中央の下方となるように試料を試料台に設置した状態で薬液噴射ノズルから薬液を試料に噴射して樹脂の溶解除去作業をしようとする場合、仮に、試料温度を例えば250℃といった比較的高い温度に設定すると、薬液と樹脂との反応速度が高く、時間の経過と共に既に樹脂が溶解された空間部分がICチップの周囲方向に拡大し、特に時間の経過した後の反応において薬液が薬液噴射ノズルの上方に位置するICチップ部分に短時間しか留まらず、ICチップの外側部分である上記の既に溶解された空間部分に拡散してしまい、結果として試料の特にICチップの周囲部分付近の樹脂の除去が不完全になるという問題点があった。
【0005】
一方、試料温度を例えば130℃といった比較的低い温度に設定すると薬品と樹脂の反応速度が低く、溶融される樹脂の範囲が狭く、結果として試料の特にICチップ表面上の樹脂の特に周囲部分の樹脂及び、ICチップの周囲の樹脂の残留量が多くなるという問題があった。
【0006】
上記の2つの問題を改善するには、開封途中に、以下に示す(i)(ii)のような外装樹脂に応じた最適な温度で外装樹脂の薬液による溶解除去を実施することが必要である。
【0007】
(i)IC部品の外装樹脂の薬液による溶解除去しようとする場所の表面付近からICチップ付近までの深さの範囲では外装樹脂に応じた比較的「低温」で狭い範囲の樹脂を徐々に溶解除去する。
【0008】
(ii)ICチップ表面付近の深さでは外装樹脂に応じた比較的「高温」で樹脂を速く溶解除去する。
【0009】
しかしながら、従来の市販の自動的に外装樹脂を薬液で溶解除去する装置では、試料と発煙硫酸の噴射ノズルを同時に1個の試料温度及び薬液温度制御手段を用いて温度制御する場合が通例であり、外装樹脂の溶解除去に要するせいぜい2分程度という時間内に、(i)(ii)のように開封途中に試料温度及び薬液の温度を制御することが困難であるという欠点があった。
【0010】
本発明は、上述の問題点に着目してなされたものであって、IC部品の外装樹脂内のICチップの表面上の中央及び周囲部、及び、ICチップの周囲の外装樹脂が過不足なく溶解除去することが可能なIC部品の外装樹脂の除去装置の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、以下(1)〜(4)の構成を備えるものである。
【0012】
(1)集積回路を外装樹脂を用いて封入したIC部品の外装樹脂一部を薬液を用いて溶解除去する装置において、
少なくとも試料支持機能かつ薬液噴射機能を有する試料台、薬液供給手段、廃液回収手段、薬液温度制御手段を具備し、かつ該薬液温度制御手段の数が少なくとも2個であることを特徴とするIC部品の外装樹脂の除去装置。
【0013】
(2)該薬液温度制御手段の数が2個であり、該2個の薬液温度制御手段が、互いに位置を入れ替えることが可能なことを特徴とする上記(1)記載のIC部品の外装樹脂の除去装置。
【0014】
(3)該薬液温度制御手段の数が2個であり、最初に1個の該温度制御手段を該試料台に固定して用い、所望の時間経過後に他の1個の該温度制御手段を該試料台に接触固定した1個の該温度制御手段に追加して用いることを特徴とする上記(1)記載のIC部品の外装樹脂の除去装置。
【0015】
(4)該薬液温度制御手段の数が3個で、かつ1個の該温度制御手段が該試料台に固定し、最初に2個の該温度制御手段のいずれか1方を該試料台に固定した1個の該温度制御手段に追加して用い、所望の時間の経過後に、先の接触させた該温度制御手段と入れ替えに、残りの1個の該温度制御手段を該試料台に固定した1個の該温度制御手段に追加して用いることを特徴とする上記(1)記載のIC部品の外装樹脂の除去装置。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を、実施例に基づいて図面を参照しながら説明する。
【0017】
【実施例】
(実施例1)
以下に、実施例1の装置として、請求項1と2を用いた装置の構成と実際の試行実験について図1を参照しながら説明する。
【0018】
実施例1の装置は、試料を支持し薬液を試料に噴射する試料台、試料台に薬液を供給する薬液供給手段、試料台で発生した廃液を回収する廃液回収手段、試料台に接触させて薬液の温度を制御する薬液温度制御手段から構成する。
【0019】
まず、試料支持し薬液噴射機能を有する試料台について説明する。この試料台は、図1に示すように、試料支持台1、薬液噴射管2、廃液回収管3、マスク手段4、試料押さえ手段6から構成した。試料支持台1は、耐酸性かつ耐熱性を有する材質であることが必要であり、本実施例においてはステンレスを以下のように加工して試作した。試料支持台1の外形寸法は、縦5cm横5cm高さが2cmの直方体状で、上面の中央に縦2cm横2cm深さ3mmの直方体状の凹部を掘削加工して設けた。さらに試料支持台1には図1に示すように、側面から上面の前述の直方体状の凹部に貫通する2系統の独立したトンネル状の空間部分を設け、薬液噴射管2及び廃液回収管3を設置した。薬液噴射管2は、耐酸性かつ耐熱性を有する材質であることが必要である。
【0020】
本実施例ではステンレス製で内径が約1mmの管を用い、前述の空間部分を通して試料支持台1の側面方向から上面の凹部へ先のトンネル状の空間部分を貫通させた。薬液噴射管2は、上方の先端部を約1mm、側面方向の先端部を約2cm試料支持台1から露出させた状態で試料支持台1に溶接固定した。マスク手段4は、試料5及び試料支持台1に密着するゴム製で、かつ耐熱性を有することが必要である。本実施例では厚さ3mmのバイトンゴムを縦3cm横3cmの直方体状に切断加工し、更に縦3cm横3cmの面の中央部に縦5mm横5mmの厚さ方向に貫通する矩形の開口部を切断加工して窓枠状にしたものを用いた。廃液回収管3は、試料支持台1の凹部で試料に噴射された後の廃液を回収する目的で用いるもので、耐酸性かつ耐熱性の材質であることが必要である。本実施例ではステンレス製で内径が約1mmの管を用い、前述の穴を通して試料支持台1の側面方向から上面の凹部へ先のトンネル上の穴を貫通させた。廃液回収管3は、上方の先端部を試料支持台1の凹部の底面と同じ高さとなるように、また側面方向の先端部を約2cm試料支持台1から露出させた状態で試料支持台1に溶接固定した。更に、試料支持台1には、試料5をマスク手段4上に上方から下方への応力で押さえて固定する目的の試料押さえ手段6を図1のようなステンレス製の板をL字状にげ加工したものを試作してナットで試料支持台1の上面に設置した。
【0021】
本実施例においては、上記のような試料支持台1、薬液噴射管2、廃液回収管3、マスク手段4、試料押さえ手段6を試作したが、上記に示した条件を満足するものであれば、各々の材質、寸法、外形は上記に限るものではない。
【0022】
次に、本実施例で用いた試料台に薬液を供給する薬液供給手段について説明する。薬液供給手段は、薬液収納手段8、加圧ポンプ9、電磁弁7、電磁弁開閉制御手段10、接続管11で構成した。薬液収納手段8は、薬液として使用する発煙硫酸等の強酸の液体を収納しても溶解しない材質であることが必要であり、本実施例では市販の容量50ccの耐熱ガラス製の容器を用いた。このガラス容器はバイトンゴム製のO−リングを有する蓋により密閉が可能で、また蓋の部分にガラス製の管をガラス加工により設置し外部から加圧可能なようにしたものを用いた。加圧ポンプ9は、上記のガラス容器と樹脂管で接続し、ガラス容器の内部の空気を加圧して、最終的に試料支持台1の薬液噴射管2を介して薬液を試料5に噴射する目的で用いるものである。本実施例においては加圧ポンプ9として市販のエアポンプを用いた。上記の薬液収納手段8と薬液噴射管2は接続管11で接続するが、両者の間には、薬液の1回の噴射量と噴射のタイミングを制御する目的で、市販の電磁弁7を接続して用いた。電磁弁7は、市販の電源で開閉し、電磁弁7の1回の開閉時間と開閉のタイミングは、市販のスイッチで上記の電源を手動でON/OFFすることによって制御した。接続管11の材質は、発煙硫酸などの強酸の液体によって溶解しないポリエチレン製で内径が約2mmの市販の管を用いた。
【0023】
試料台で発生した廃液を回収する廃液回収手段は、廃液収納手段12と接続管11で構成した。廃液収納手段12は、耐酸性かつ耐熱性が必要であり、本実施例では、容量500ccの耐熱ガラス製の蓋付瓶を用いた。この瓶の蓋はバイトンゴム製のO−リングを用いてガラス瓶と蓋を密閉可能とし、かつ試料支持台1に溶接固定した廃液回収管3に接続と接続管11を接続可能な穴を設け、蓋と接続管11間をバイトンゴム製のO−リングで隙間なく接続可能なように加工したものを試作した。以上のガラス瓶をポリエチレン製で内径が約2mmの市販の管を用いて接続した。
【0024】
試料台に接触させて薬液の温度を制御する薬液温度制御手段は、2個の薬液温度制御ヒータ13,15と各々の薬液温度制御ヒータ13,15に電力を供給しかつPID制御するヒータ温度制御手段14,16、不図示のスタンドから構成した。
【0025】
薬液温度制御ヒータ13,15は、試料支持台1の底面に密着させて試料支持台1を介して薬液噴射管2に熱を供給することで薬液の温度を制御する。薬液温度制御ヒータ13,15は、試料支持台1の底面に密着させ、約100℃から約300℃まで加熱可能であることが必要であり、ペルチエ素子、ラバーヒータ等のヒータが利用可能である。ここでは、試料支持台1の底面に密着するように縦6cm、横6cm高さ3cmの銅製の直方体状のものを加工し、内部に表面を絶縁加工した金属線ヒータを内蔵したものを2個試作して用いた。これらの2個の薬液温度制御ヒータ13,15は、各々独立したヒータ温度制御手段14,16として2台の市販のPID制御の温度コントローラを用いて電源の供給と温度制御をした。また、2個の薬液温度制御ヒータ13,15は、不図示のスタンドを用いて支持し、手動で各々の位置を入れ替えることを可能とした。具体的には、まず第一段階として不図示のスタンドで支持した薬液温度制御ヒータ13を試料支持台1の底面に密着させて用い、次に第二段階として不図示のスタンドを手動で上下左右方向に操作して薬液温度制御ヒータ13を試料支持台1から分離させ、同時に薬液温度制御ヒータ15を試料支持台1の下方に移動させ、試料支持台1の底面に密着させることを可能とした。本実施例においては上記の不図示のスタンドを用いたが、上記の2個の薬液温度制御ヒータ13,15の位置の入れ替えと試料支持台1との密着が可能であれば、形状、寸法、構造はこれに限るものでなく、例えば、精密な工業用ロボットを用いてもよい。
【0026】
以上のように構成した実施例1の装置を用いて実際に外装樹脂で集積回路を封入したIC部品の外装樹脂の薬品による溶解除去を試みた。
【0027】
まず、発煙硫酸を薬液収納容器8に約10ml入れ、前述の蓋で密閉した。電磁弁7は不図示のスイッチを用いて閉状態として、加圧ポンプ9を不図示の電源で作動して薬液収納容器8内の発煙硫酸を加圧し、薬液収納容器8と電磁弁7の間の接続管11を発煙硫酸で充満させた。次に不図示のスタンドで支持した2個の薬液温度制御ヒータ13,15のうちの薬液温度制御ヒータ13を試料支持台1の底面に密着させた。この状態で、試料支持台1にマスク手段4を設置し、その上に試料5として市販のボールグリッドアレイ型のIC部品を、外装樹脂の溶解除去する面を下にして設置し、試料押さえ手段6で上方から押さえて固定した。2個の薬液温度制御ヒータ13,15は、ヒータ温度制御手段14,16を用いて各々180℃、230℃一定となるように制御した。不図示の熱伝対を用いて試料の温度が180℃であることを確認し、電磁弁7を6秒間に1回、開状態となるように一定時間間隔で合計30秒間開閉させ、1回の開状態の時に時に薬液が1mlずつ薬液噴射管2を介して試料5に噴射されるように制御した。その後、電磁弁7が閉状態であることを確認した後、不図示のスタンドを手動で上下左右方向に操作して薬液温度制御ヒータ13を試料支持台1から分離させ、同時に薬液温度制御ヒータ15を試料支持台1の下方に移動させ、試料支持台1の底面に密着させた。この時点で不図示の熱電対を用いて試料支持台1の温度が230度であることを確認した後、先と同様に電磁弁7を6秒間に1回、開状態となるように一定時間間隔で合計30秒間開閉させ、1回の開状態の時に時に薬液が1mlずつ薬液噴射管2を介して試料5に噴射されるように制御した。
【0028】
以上のように外装樹脂を発煙硫酸を用いて溶解除去した試料を不図示のガラスビーカに満たしたイソプロピルアルコールに入れ、超音波洗浄装置を用いて洗浄した後、さらに不図示のガラスビーカに満たしたアセトンに移して超音波洗浄した。この試料を実体顕微鏡及び金属顕微鏡を用いて観察したところ、外装樹脂内のICチップは中央及び周囲部分の外装樹脂が残留することなく除去され、またIC周囲の外装樹脂が過度に除去されておらず、実施例1の装置によって当初の目的が達成されたことが確認できた。
【0029】
実施例1の装置を用いると上記のように2個の試料温度及び薬液温度制御ヒータ13,15の移動時に試料5の温度が一時的に下降する為、移動後の試料温度が所望の温度となるまで待つ必要があるが、当初の目的は以上のように達成可能であった。
【0030】
(実施例2)
以下に、実施例2の装置として、請求項1と3を用いた装置の説明と実際の試行実験について図2を参照しながら詳細に説明する。
【0031】
実施例2の装置は、実施例1と同様に試料を支持し薬液を試料に噴射する試料台、試料台に薬液を供給する薬液供給手段、試料台で発生した廃液を回収する廃液回収手段、試料台に接触させて薬液の温度を制御する薬液温度制御手段から構成する。しかし、特に薬液温度制御手段が実施例1と異なる。
【0032】
実施例2においては、試料支持台1、薬液噴射管2、廃液回収管3、マスク手段4、試料押さえ手段6から構成する試料台、及び、薬液収納手段8、加圧ポンプ9、電磁弁7、電磁弁開閉制御手段10、接続管11から構成する薬液供給手段、及び、廃液収納手段12と接続管11から構成する廃液回収手段は、各々実施例1と同様のものを用いた。本実施例においては、実施例1に説明した試料支持台1、薬液噴射管2、廃液回収管3、マスク手段4、試料押さえ手段6、薬液収納手段8、加圧ポンプ9、電磁弁7、電磁弁開閉制御手段10、接続管11、廃液収納手段12を試作したが、実施例1に各部分の説明で示した条件を満足するものであれば、各々の材質、寸法、外形は上記に限るものではない。
【0033】
次に、実施例2の薬液温度制御手段について図2を参照しながら説明する。本実施例においては、薬液温度制御手段が独立して2個ある点では実施例1と同様だが、最初に1個の温度制御手段を試料台に固定して用い、所望の時間経過後に他の1個の温度制御手段を試料台に接触固定した1個の温度制御手段に接触して用いることによって薬液の温度制御を実施する点が異なる。図2において、2個の薬液温度制御手段は、試料支持台1の底面に密着させて試料支持台1を介して薬液噴射管2に熱を供給することで薬液の温度を制御する目的の各々独立した薬液温度制御ヒータ17,19と各々の薬液温度制御ヒータ17,19に電力を供給しかつPID制御するヒータ温度制御手段18,20から構成した。2個の薬液温度制御ヒータ17,19のうちの1個である薬液温度制御ヒータ17は、試料支持台1に密着した状態で固定して用いる。一方、残りの1個の薬液温度制御ヒータ19は、不図示のスタンドに支持され、このスタンドの一部を上下左右に移動させることによって、薬液温度制御ヒータ17に密着可能とした。薬液温度制御ヒータ17は、実施例1で用いたものと同様に試作したものを用いた。一方、薬液温度制御ヒータ19は、薬液温度制御ヒータ17の底面に密着させることが可能な形状、寸法でかつ不図示のスタンドに支持し、上下左右に移動可能なものを試作して用いた。薬液温度制御ヒータ17,19は、実施例1と同様に内部に表面を絶縁加工した金属線ヒータを内蔵した。これらの2個の薬液温度制御ヒータ17,19は、各々独立したヒータ温度制御手段18,20として2台の市販のPID制御の温度コントローラを用いて電源の供給と温度制御をした。本実施例においては上記の不図示のスタンドを用いたが、上記の2個の薬液温度制御ヒータ19の位置の移動と薬液温度制御ヒータ17とを密着させることが可能であれば、形状、寸法、構造はこれに限るものでなく、例えば、精密な工業用ロボットを用いてもよい。
【0034】
以上のように構成した実施例2の装置を用いて実際に外装樹脂で集積回路を封入したIC部品の外装樹脂の薬品による溶解除去を試みたが、事前に以下のような予備実験を試みた。本実施例においては、まず薬液温度制御ヒータ17を約180℃に制御し、その後、薬液温度制御ヒータ17と薬液温度制御ヒータ19を接触させた時に所望の温度である230度となることが必要である。従って、予め、薬液温度制御ヒータ19を一定制御する温度を見積もっておくことが必要となるからである。今回は、薬液温度制御ヒータ17,19の接触後にヒータ温度制御手段18の設定温度とヒータ温度制御手段20の設定温度を同じにすることにして、数回の試行を繰り返したところ、設定温度として260℃を選択した。尚、このヒータ温度制御手段20の設定温度は、用いる試料台の材質、寸法、内部の薬液供給管2等の構成物の熱伝導性、及び薬液温度制御ヒータ17,19、ヒータ温度制御装置18,20の温度制御能力によって異なると思われる。また、本実施例で用いた260℃が最適値とは限らないと思われる。従って、本実施例の装置の最適値または推奨値を260℃に限定するものではない。
【0035】
上記の予備実験の後、当初の目的であるIC部品の外装樹脂の溶解除去を以下のように試みた。
【0036】
まず、実施例1と同様に、発煙硫酸を薬液収納容器8に約10ml入れ、前述の蓋で密閉した。電磁弁7は不図示のスイッチを用いて閉状態として、加圧ポンプ9を不図示の電源で作動して薬液収納容器8内の発煙硫酸を加圧し、薬液収納容器8と電磁弁7の間の接続管11を発煙硫酸で充満させた。薬液温度制御ヒータ17は不図示のスタンドを用いて試料支持台1の底面に密着固定させた。この状態で、試料支持台1にマスク手段4を設置し、その上に試料5として市販のボールグリッドアレイ型のIC部品を、外装樹脂の溶解除去する面を下にして設置し、試料押さえ手段6で上方から押さえて固定した。2個の薬液温度制御ヒータ17は、ヒータ温度制御手段18を用いて各々180℃一定となるように制御した。一方、薬液温度制御ヒータ19は、ヒータ温度制御装置20を用いて260℃一定となるように制御した。不図示の熱伝対を用いて試料支持台1の温度が180℃であることを確認し、電磁弁7を6秒間に1回、開状態となるように一定時間間隔で合計30秒間開閉させ、1回の開状態の時に時に薬液が1mlずつ薬液噴射管2を介して試料5に噴射されるように制御した。その後、電磁弁7が閉状態であることを確認した後、不図示のスタンドを手動で上下左右方向に操作して薬液温度制御ヒータ19を薬液温度制御ヒータ17の下方に移動させ、薬液温度制御ヒータ17の底面に密着させた。この時点でヒータ温度制御手段18の設定温度を260℃に変更した。不図示の熱電対を用いて試料支持台1の温度が約230度であることを確認した後、先と同様に電磁弁7を6秒間に1回、開状態となるように一定時間間隔で合計30秒間開閉させ、1回の開状態の時に時に薬液が1mlずつ薬液噴射管2を介して試料5に噴射されるように制御した。
【0037】
以上のように外装樹脂を発煙硫酸を用いて溶解除去した試料を実施例1と同様の手順で不図示のガラスビーカに満たしたイソプロピルアルコール及びアセトンを用いて超音波洗浄した。この試料を実体顕微鏡及び金属顕微鏡を用いて観察したところ、実施例1と同様に外装樹脂内のICチップは中央及び周囲部分の外装樹脂が残留することなく除去され、またIC周囲の外装樹脂が過度に除去されておらず、実施例2の装置によって当初の目的が達成されたことが確認できた。
【0038】
実施例2の装置を用いると実施例1のように試料の温度が一時的に温度が下降することがなく、実施例1に比して時間的な手間が省略可能であり、かつ当初の目的は以上のように達成可能であった。
【0039】
(実施例3)
以下に、実施例3の装置として、請求項1と4を用いた装置の説明と実際の試行実験について図3を参照しながら詳細に説明する。
【0040】
実施例3の装置は、実施例1、実施例2と同様に試料を設置し薬液を試料に噴射する試料台、試料台に薬液を供給する薬液供給手段、試料台で発生した廃液を回収する廃液回収手段、試料台に接触させて薬液の温度を制御する薬液温度制御手段から構成する。しかし、特に薬液温度制御手段が実施例1、実施例2と異なる。
【0041】
実施例3においては、試料支持台1、薬液噴射管2、廃液回収管3、マスク手段4、試料押さえ手段6から構成する試料台、及び、薬液収納手段8、加圧ポンプ9、電磁弁7、電磁弁開閉制御手段10、接続管11から構成する薬液供給手段、及び、廃液収納手段12と接続管11から構成する廃液回収手段は、各々実施例1、実施例2と同様のものを用いた。本実施例においては、実施例1、実施例2に説明した試料支持台1、薬液噴射管2、廃液回収管3、マスク手段4、試料押さえ手段6、薬液収納手段8、加圧ポンプ9、電磁弁7、電磁弁開閉制御手段10、接続管11、廃液収納手段12を試作したが、実施例1に各部分の説明で示した条件を満足するものであれば、各々の材質、寸法、外形は上記に限るものではない。
【0042】
次に、実施例3の薬液温度制御手段について図3を参照しながら説明する。本実施例においては、薬液温度制御手段が独立して3個ある点が実施例1、実施例3と異なる。これらの3個の薬液温度制御手段のうちの1個は、常時に固定して用いる。他の2個は、互いの位置を入れ替えることが可能であり、どちらか1個を先の常時固定の薬液温度制御手段とともに用いて薬液の温度制御をすることが可能とした。図3において、3個の薬液温度制御手段は各々独立した薬液温度制御ヒータ21,23,25と各々の薬液温度制御ヒータ21,23,25に電力を供給しかつPID制御するヒータ温度制御手段22,24,26から構成した。実際の使用においては、最初の段階で常時固定の薬液温度制御ヒータ21と移動可能な薬液温度制御ヒータ23を接触させて薬液の温度制御を行い、所望の時間経過後に、薬液温度制御ヒータ23と薬液温度制御ヒータ25の位置を入れ替え、常時固定の薬液温度制御ヒータ21と薬液温度制御ヒータ25を接触させて薬液の温度制御を行なう。
【0043】
試作した装置において薬液温度制御ヒータ21は、試料支持台1に密着した状態で不図示のスタンドで支持して固定して用いた。一方、残りの2個の薬液温度制御ヒータ23,25は、不図示のスタンドに支持され、このスタンドの継ぎ手を上下左右に移動させることによって、どちらか一方を薬液温度制御ヒータ21に密着させることを可能とした。薬液温度制御ヒータ21は、実施例1、実施例2で用いたものと同様に試作したものを用いた。一方、薬液温度制御ヒータ23,25は、薬液温度制御ヒータ21の底面に密着させることが可能な形状、寸法でかつ先に示した不図示のスタンドに支持し、上下左右に移動可能なものを試作して用いた。薬液温度制御ヒータ21,23,25は、実施例1、実施例2で用いた薬液温度制御ヒータと同様に内部に表面を絶縁加工した金属線ヒータを内蔵した。これらの3個の薬液温度制御ヒータ21,23,25は、各々独立したヒータ温度制御手段22,24,26として3台の市販のPID制御の温度コントローラを用いて電源の供給と温度制御をした。本実施例においては上記のように薬液温度制御ヒータ21用の固定スタンド、薬液温度制御ヒータ23,25の支持及び位置入れ替え用のスタンドを用いたが、先の固定スタンドは薬液温度制御ヒータ21を試料支持台1との密着固定させることが可能であること、また位置入れ替え用のスタンドは、位置の入れ替え及び薬液温度制御ヒータ23,25と薬液温度制御ヒータ21とを密着させることが可能であれば、形状、寸法、構造はこれに限るものでなく、例えば、精密な工業用ロボットを用いてもよい。
【0044】
以上のように構成した実施例3の装置を用いて実際に外装樹脂で集積回路を封入したIC部品の外装樹脂の薬品による溶解除去を試みたが、事前に以下のような予備実験を試みた。
【0045】
本実施例においては、まず薬液温度ヒータ21と薬液温度制御ヒータ23を接触させた状態で約180℃に制御し、所望の時間の経過後に薬液温度制御ヒータ23と薬液温度制御ヒータ25を入れ替え、今度は薬液温度ヒータ21と薬液温度制御ヒータ25を接触させた状態で所望の温度である230度とすることが必要である。
【0046】
先の段階で薬液温度制御ヒータ21と薬液温度制御ヒータ23の温度制御は、ヒータ温度制御手段22,25の設定温度を同じ180℃として制御する。次の段階で薬液温度制御ヒータ21と薬液温度制御ヒータ25を接触させて温度制御する場合にヒータ温度制御手段22,26の設定温度は別々の値とすることも可能であるが、本実施例においては例としてヒータ温度制御手段22,26の設定温度を同じとして試行実験を実施した。具体的には、まず薬液温度制御ヒータ21と薬液温度制御ヒータ23をヒータ温度制御手段22,25を用いて180℃一定に制御し、一方、薬液温度制御ヒータ25はヒータ温度制御手段26を用いて例えば240℃一定に制御しておく。各々の温度が安定したところで、薬液温度制御ヒータ23と薬液温度制御ヒータ25を入れ替え、薬液温度制御ヒータ21と薬液温度制御ヒータ25を接触させてヒータ温度制御手段22の設定温度を240℃に変更し、薬液の温度が所望の温度である230℃に速やかに変化するかどうかを不図示の熱電対を用いて観測した。ヒータ温度制御手段26の設定温度をいくつか変えて上記の予備実験を繰り返したところ、本実施例の試作装置を用いた場合、ヒータ温度制御手段26の設定温度として255℃選択した。尚、このヒータ温度制御手段26の設定温度は、用いる試料台の材質、寸法、内部の薬液供給管2等の構成物の熱伝導性、及び薬液温度ヒータ21,23,25、ヒータ温度制御手段22,24,26の温度制御能力によって異なると思われる。また、本実施例で用いた255℃が最適値とは限らないと思われる。従って、本実施例の装置の最適値または推奨値を255℃に限定するものではない。
【0047】
上記の予備実験の後、当初の目的であるIC部品の外装樹脂の溶解除去を以下のように試みた。
【0048】
まず、実施例1、実施例2と同様に発煙硫酸を薬液収納容器12に約10ml入れ、前述の蓋で密閉した。電磁弁7は不図示のスイッチを用いて閉状態として、加圧ポンプ9を不図示の電源で作動して薬液収納容器8内の発煙硫酸を加圧し、薬液収納容器8と電磁弁7の間の樹脂管(接続管)11を発煙硫酸で充満させた。薬液温度制御ヒータ21は不図示のスタンドを用いて試料支持台1の底面に密着固定させ、薬液温度制御ヒータ23は、薬液温度制御ヒータ21の底面に不図示のスタンドを用いて密着固定させた。この状態で、試料支持台1にマスク手段4を設置し、その上に試料5として市販のボールグリッドアレイ型のIC部品を、外装樹脂の溶解除去する面を下にして設置し、試料押さえ手段6で上方から押さえて固定した。上記のように互いに密着させた薬液温度制御ヒータ21と薬液温度制御ヒータ23は、ヒータ温度制御手段22,24を用いて各々180℃一定となるように制御した。
【0049】
一方、薬液温度制御ヒータ25は、ヒータ温度制御手段26を用いて255℃一定となるように制御した。不図示の熱伝対を用いて試料支持台1の温度が180℃であることを確認し、電磁弁7を6秒間に1回、開状態となるように一定時間間隔で合計30秒間開閉させ、1回の開状態の時に時に薬液が1mlずつ薬液噴射管2を介して試料5に噴射されるように制御した。その後、電磁弁7が閉状態であることを確認した後、不図示のスタンドを手動で上下左右方向に操作して薬液温度制御ヒータ23を薬液温度制御ヒータ21の下方に移動させて分離し、さらに薬液温度制御ヒータ23と薬液温度制御ヒータ25の位置を入れ替え、薬液温度制御ヒータ25を薬液温度制御ヒータ21の底面に密着させた。この時点で、ヒータ温度制御手段22の設定温度を255℃に変更した。不図示の熱電対を用いて試料支持台1の温度が約230度であることを確認した後、先と同様に電磁弁7を6秒間に1回開状態となるように一定時間間隔で合計30秒間開閉させ、1回の開状態の時に時に薬液が1mlずつ薬液噴射管2を介して試料5に噴射されるように制御した。
【0050】
以上のように外装樹脂を発煙硫酸を用いて溶解除去した試料を実施例1、2と同様の手順で不図示のガラスビーカに満たしたイソプロピルアルコール及びアセトンを用いて超音波洗浄した。この試料を実体顕微鏡及び金属顕微鏡を用いて観察したところ、実施例1、2と同様に外装樹脂内のICチップは中央及び周囲部分の外装樹脂が残留することなく除去され、またIC周囲の外装樹脂が過度に除去されておらず、実施例3の装置によって当初の目的が達成されたことが確認できた。
【0051】
実施例3の装置を用いると実施例2と同様、実施例1のように試料の温度が一時的に温度が下降することがなく、実施例1に比して時間的な手間が省略可能であり、かつ当初の目的は以上のように達成可能であった。
【0052】
【発明の効果】
時間的に先に試料温度及び薬液温度を比較的低く制御して溶融除去し、次に、試料温度及び薬液温度を比較的高く設定して外装樹脂を溶融除去することで、IC部品の外装樹脂内のICチップの表面上の中央及び周囲部、及び、ICチップの周囲の外装樹脂が過不足なく溶解除去可能となり、結果として露出したICチップ表面及び周囲の光学顕微鏡や電子顕微鏡等を用いた観察や元素分析装置を用いた元素分析がIC部品の外装樹脂に邪魔されること無く実施可能となるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の特徴を示す概念断面図
【図2】実施例2の特徴を示す概念断面図
【図3】実施例3の特徴を示す概念断面図
【符号の説明】
1 試料支持台
2 薬液噴射管
3 廃液回収管
4 マスク手段
5 試料
6 試料押さえ手段
7 電磁弁
8 薬液収納手段(薬液収納容器)
9 加圧ポンプ
10 電磁弁開閉制御手段
11 接続管
12 廃液収納手段
13、15、17、19、21、23、25 薬液温度制御ヒータ
14、16、18、20、22、24、26 ヒータ温度制御手段

Claims (4)

  1. 集積回路を外装樹脂を用いて封入したIC部品の外装樹脂一部を薬液を用いて溶解除去する装置において、
    少なくとも試料支持機能かつ薬液噴射機能を有する試料台、薬液供給手段、廃液回収手段、薬液温度制御手段を具備し、かつ該薬液温度制御手段の数が少なくとも2個であることを特徴とするIC部品の外装樹脂の除去装置。
  2. 該薬液温度制御手段の数が2個であり、該2個の薬液温度制御手段が、互いに位置を入れ替えることが可能なことを特徴とする請求項1記載のIC部品の外装樹脂の除去装置。
  3. 該薬液温度制御手段の数が2個であり、最初に1個の該温度制御手段を該試料台に固定して用い、所望の時間経過後に他の1個の該温度制御手段を該試料台に接触固定した1個の該温度制御手段に追加して用いることを特徴とする請求項1記載のIC部品の外装樹脂の除去装置。
  4. 該薬液温度制御手段の数が3個で、かつ1個の該温度制御手段が該試料台に固定し、最初に2個の該温度制御手段のいずれか1方を該試料台に固定した1個の該温度制御手段に追加して用い、所望の時間の経過後に、先の接触させた該温度制御手段と入れ替えに、残りの1個の該温度制御手段を該試料台に固定した1個の該温度制御手段に追加して用いることを特徴とする請求項1記載のIC部品の外装樹脂の除去装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009544845A (ja) * 2006-07-25 2009-12-17 エルピー バーマークタングス ゲーエムベーハー アンド シーオー.ケージー 表面の湿式化学処理を増進させる方法および装置
US11640099B2 (en) * 2020-02-11 2023-05-02 Saudi Arabian Oil Company High temperature high pressure (HTHP) cell in sum frequency generation (SFG) spectroscopy for liquid/liquid interface analysis
US11714079B2 (en) 2020-02-11 2023-08-01 Saudi Arabian Oil Company High temperature high pressure (HTHP) cell in sum frequency generation (SFG) spectroscopy for oil/brine interface analysis with reservoir conditions and dynamic compositions

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