JP2004110602A - 波形パターンデータから設備の診断・監視又は製品の良品・不良品検査のための特徴を抽出する方法及びプログラム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】波形パターンデータを平準化するステップと、元の波形パターンデータと平準化された波形パターンデータとの差分を計算するステップと、差分計算によって得られた波形パターンデータについて、着目する時点の近傍の所定範囲における波形パターンデータを選択し、選択した波形パターンデータについて、1本又は複数本の標本線を定めるステップと、定められた標本線上における、差分計算によって得られた波形パターンデータの変化量、存在量、存在量の最小値、存在量の最大値、波形パターンの開始点、又は波形パターンの終了点のうち一部又は全部を抽出するステップとを含む。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は一般に、波形パターンデータから設備の診断・監視又は製品の良品・不良品検査のための特徴を抽出する方法及びプログラムに関する。本発明が対象とする波形パターンデータには、時系列で変化する計測値による波形パターン(以下「時系列波形パターン」という)のデータと、スペクトル波形パターンのデータの2種類の波形パターンデータが含まれる。
【0002】
【従来の技術】
食品製造設備や発電設備等の各種設備には、ボイラ、ポンプ、冷却機器等が配置されており、これらの設備全体や各構成機器の稼働状況を診断・監視するため、温度センサ、圧力センサ、流量センサ等の計測センサが設置されている。そして、計測センサ毎に一定の時間間隔で値が計測され、一般的にはその時々刻々の値がディスプレイに表示され、或いはコンピュータのデータベースに蓄積される。このようなデータは、隣接する時点における値を結ぶことにより、図3(a)に示されるように、波形パターンとして表され、波形パターンが各センサから得られるが、これらの波形パターンデータを基にして、設備全体及び/又は各構成機器の稼働状況を監視し、或いは今後の推移予測に利用することができる。
【0003】
一方、蛍光管等のような製品は、スペクトル波形パターンによってその特性を表すことができる。すなわち、蛍光管は、図9に示されるように、波長ごとに光エネルギに大小があり、スペクトル波形によって蛍光管の発光特性が表される。このような蛍光管の発光特性は、良品か不良品かを判定する基準の1つとして利用されており、例えば、登録されている良品のスペクトル波形群と同等か否かによって判定される。すなわち、図9(a)と図9(b)では殆どの個所で同じ性質の波形パターンとみなすことができるが、<4>の山の形状が図9(a)と図9(b)とでは相違しており、スペクトル波形の同一性に疑義が生ずることになる。また、蛍光管の他にも化学薬品や医薬品等の分野において、良品か不良品かの判定にスペクトル波形が利用されている。
【0004】
従来は、上述のような診断・監視や良品・不良品の判定は、人間によって行われていたが、近年、このような作業をコンピュータに実行させることが増加している。作業をコンピュータに実行させる場合には、波形パターンから、その性質を代表する「数値としての特徴」を的確かつ十分に抽出することが重要となる。このような作業の際に要求される特徴について、上述の2種類の波形パターンデータに分けて説明する。
【0005】
時系列波形パターンにおいては、(1)対象とする波形パターンデータの固有の特徴(例えば、周波数、振幅など)に関する特徴を代表すること、(2)設備が異常になりかけていることを示すような、振動しながら大きなうねりを有する現象については、その時間的な変化の性質をも有することが必要とされる。一方、スペクトル波形パターンにおいては、上述の(1)、即ち、対象とする波形パターンデータの固有の特徴(例えば、周波数、振幅など)に関する特徴を代表することの他、(3)各ピークの位置や高さ及び各ピークの形状に関する特徴を代表することが必要とされる。また、このような必要事項を満足する特徴を、コンピュータが短時間で処理することができることが望ましい。
【0006】
従来の波形パターンデータについて抽出される特徴には、以下のようなものがある。時系列波形パターンについては、計測値自体、又は、移動平均等により計測値を平準化した値、振幅、振動数、周波数特性等があげられる。また、近年、簡単な処理により波形パターンの特徴を抽出する手段として、微分特性及び積分特性という概念が提案されており(例えば、非特許文献1参照)、それらの応用例についても発表されている(例えば、非特許文献2参照)。また、時系列の計測データに関して、或る時点での計測値と一定時間遡った計測値との差分を特徴とする事例も紹介されている(例えば、非特許文献3参照)。一方、スペクトル波形パターンについては、各ピークの横軸位置、ピーク高さ、ピークの半値幅、ピーク部の面積等があげられる。
【0007】
ここで、図13を参照して、微分特性及び積分特性について簡単に説明する。一定範囲の波形に対して、適当な本数(図13(a)では5本)の横線(以下「標本線」という)を引いた状態を考えると、微分特性とは、標本線と波形とが交差する個所の数であり(図13(a)の例では、微分特性は9)であり、積分特性とは、標本線より上(即ち、y軸方向に大きい側)に波形が存在する範囲(図13(b)において太線で図示)の長さの和である。換言すると、微分特性は、波形の標本線上における変化量、積分特性は、波形の標本線上における存在量と考えることができる(以下、微分特性及び積分特性を意味する語として「変化量」及び「存在量」という用語を使用する)。これらの特性を標本線<1>〜<5>について求めた結果が、図13(c)に示されている。これにより、図13(a)、(b)の波形パターンが、図13(c)に示される10個の数値として表現されたことになる。
【0008】
【非特許文献1】
田口玄一,「音声のパターン認識」,品質工学,品質工学会,1995年10月,第3巻,第5号,p.3−7
【非特許文献2】
手島昌一他,「マハラノビス・タグチ・システム法を適用した外観検査技術の研究」,品質工学,品質工学会,1997年10月,第5巻,第5号,p.38−45
【非特許文献3】
鴨下他,「マハラノビスの距離による多次元情報システムの最適化−火災報知システムの場合−」,品質工学,品質工学会,1996年6月,第4巻,第3号,p.54−68
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらのような従来の波形パターンデータの特徴抽出方法では、上述の(1)、(2)及び(3)の条件を満たすのには十分ではなく、対象とする問題によっては、何らかのパターン認識手段(例えば、統計的手段、ニューラルネットワーク等)で認識しても、目的とする認識結果が不十分となることがあった。
【0010】
例えば、時系列波形パターンデータの場合には、或る時点における大きなうねりに関する性質とそこに含まれる振動的性質とを同時に、簡単な処理で表現する手段がなかった。「周波数特性」等では、うねりに関する性質と振動に関する性質の両方を捉えるためには、一定以上のデータサンプリングが必要であり、かつ、波形の形状に関するデータが不十分である。また、交差点数と存在量は、波形の形状情報を比較的含んではいるが、それらだけでは、波形の大きなうねりがある場合には、波形と標本線との交差点が少ない個所が生じ、波形と交差しない標本線からは実質的な情報が得られないという不都合がある。
【0011】
また、スペクトル波形パターンデータの場合には、上述の特徴量、即ち、各ピークの横軸位置、ピーク高さ、ピークの半値幅、ピーク部の面積等では、ピークの立ち上り位置、即ち平坦部又は非ピーク部からピーク開始部分を明確に定義することは困難であり、その定義の仕方により特徴値が大きく変動し、データとしての信頼性に問題が生ずることがあった。また、例えば、図9(a)、(b)のピーク部<4>における形状の相違を捉えるための情報が不十分であり、スペクトル波形パターンから良品であるか不良品であるかを判定するための情報としては不十分であるという課題があった。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みて案出されたものであって、時系列波形パターンから、対象とする波形パターンが有する固有の特徴を代表し、振動しながらも大きなうねりや傾向を有する現象の異常有無や、時間的変化の性質も保有する波形パターンの特徴抽出方法及びプログラムを提供し、さらに、スペクトル波形の各ピーク部の形状等に関する性質を代表する波形パターンデータの特徴抽出方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本願請求項1に記載の時系列波形パターンデータから設備の診断・監視のための特徴を抽出する方法は、波形パターンデータを平準化する第1ステップと、元の波形パターンデータと平準化された波形パターンデータとの差分を計算する第2ステップと、差分計算によって得られた波形パターンデータについて、着目する時点の近傍の所定範囲における波形パターンデータを選択し、選択した波形パターンデータについて、1本又は複数本の標本線を定める第3ステップと、前記定められた標本線上における、前記差分抽出によって得られた波形パターンデータの変化量、存在量、存在量の最小値、存在量の最大値、波形パターンの開始点、又は波形パターンの終了点のうち一部又は全部を抽出する第4ステップとを含むことを特徴とするものである。
【0014】
本願請求項2に記載の時系列波形パターンデータから設備の診断・監視のための特徴を抽出する方法は、前記請求項1の方法において、前記第4ステップによって得られた変化量、存在量、存在量の最小値、存在量の最大値、波形パターンの開始点、又は波形パターンの終了点について、時間差分を求めるステップを更に含むことを特徴とするものである。
【0015】
本願請求項3に記載の時系列で変化する計測値による波形パターンデータから設備の診断・監視のための特徴を抽出するプログラムは、波形パターンデータを平準化して記憶装置に格納するステップと、元の波形パターンデータと平準化された波形パターンデータとの差分を計算して記憶装置に格納するステップと、差分計算によって得られた波形パターンデータについて、着目する時点の近傍の所定範囲における波形パターンデータを選択し、選択した波形パターンデータについて、1本又は複数本の標本線を定めて記憶装置に格納するステップと、前記定められた標本線上における、前記差分計算によって得られた波形パターンデータの変化量、存在量、存在量の最小値、存在量の最大値、波形パターンの開始点、又は波形パターンの終了点のうち一部又は全部を抽出して記憶装置に格納するステップとをコンピュータに実行させることを特徴とするものである。
【0016】
本願請求項4に記載の時系列で変化する計測値による波形パターンデータから設備の診断・監視のための特徴を抽出するプログラムは、前記請求項3のプログラムにおいて、変化量、存在量、存在量の最小値、存在量の最大値、波形パターンの開始点、又は波形パターンの終了点について、時間差分を求めて記憶装置に格納するステップを更に含むことを特徴とするものである。
【0017】
本願請求項5に記載のスペクトル波形パターンデータから製品の良品・不良品の検査のための特徴を抽出する方法は、スペクトル波形パターンデータを横軸方向に1又は複数の範囲に分割する第1ステップと、分割した複数の範囲におけるスペクトル波形パターンデータについて、1本又は複数本の標本線をそれぞれ定める第2ステップと、前記定められた標本線上における、前記スペクトル波形パターンデータの変化量、存在量、存在量の最小値、存在量の最大値、波形パターンの開始点、又は波形パターンの終了点のうち一部又は全部を抽出する第3ステップとを含むことを特徴とするものである。
【0018】
本願請求項6に記載のスペクトル波形パターンデータから製品の良品・不良品の検査のための特徴を抽出する方法は、スペクトル波形パターンデータを平準化する第1ステップと、平準化されたスペクトル波形パターンデータを横軸方向に1又は複数の範囲に分割する第2ステップと、分割した複数の範囲におけるスペクトル波形パターンデータについて、1本又は複数本の標本線をそれぞれ定める第3ステップと、前記定められた標本線上における、前記スペクトル波形パターンデータの変化量、存在量、存在量の最小値、存在量の最大値、波形パターンの開始点、又は波形パターンの終了点のうち一部又は全部を抽出する第4ステップとを含むことを特徴とするものである。
【0019】
本願請求項7に記載のスペクトル波形パターンデータから製品の良品・不良品の検査のための特徴を抽出するプログラムは、スペクトル波形パターンデータを横軸方向に1又は複数の範囲に分割して記憶装置に格納するステップと、分割した複数の範囲におけるスペクトル波形パターンデータについて、1本又は複数本の標本線をそれぞれ定めて記憶装置に格納するステップと、前記定められた標本線上における、前記スペクトル波形パターンデータの変化量、存在量、存在量の最小値、存在量の最大値、波形パターンの開始点、又は波形パターンの終了点のうち一部又は全部を抽出して記憶装置に格納するステップとをコンピュータに実行させることを特徴とするものである。
【0020】
本願請求項8に記載のスペクトル波形パターンデータから製品の良品・不良品の検査のための特徴を抽出するプログラムは、スペクトル波形パターンデータを平準化して記憶装置に格納するステップと、平準化されたスペクトル波形パターンデータを横軸方向に1又は複数の範囲に分割して記憶装置に格納する第2ステップと、分割した複数の範囲におけるスペクトル波形パターンデータについて、1本又は複数本の標本線をそれぞれ定めて記憶装置に格納するステップと、前記定められた標本線上における、前記スペクトル波形パターンデータの変化量、存在量、存在量の最小値、存在量の最大値、波形パターンの開始点、又は波形パターンの終了点のうち一部又は全部を抽出して記憶装置に格納するステップとをコンピュータに実行させることを特徴とするものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。最初に、時系列波形パターンの特徴抽出方法について説明する。まず、時系列で入力される波形パターン(図3(a)参照)を平準化して、平準化された波形パターン(図3(b)参照)を得る(ステップA1)。本例では、平準化手段として、過去5時点分の平均を順次計算することとする(移動平均)。
【0022】
次いで、図3(c)に示されるように、元の波形パターンと平準化された波形パターンとの差分計算により新たな波形パターン(以下「差分波形パターン」という)を得る(ステップA2)。
【0023】
次いで、差分波形パターンについて、着目する時点の近傍の適当な範囲における波形パターンデータを選択し、選択した波形パターンデータについて、1本又は複数本のほぼ時間軸方向に引かれた標本線(直線又は曲線)を定める(ステップA3)。その際、まず、標本線の数Lhとその振幅方向の位置を設定する。本例では、Lh=3本とし、その位置は、図3(c)のグラフにおける差分値Y=1、0、−1とする。この設定は、予め対象とする時系列波形パターンデータを試験的に採取し、差分波形パターンを確認したうえで決定するのが好ましいが、その方法は任意でよい。なお、Lhは、差分波形パターンからどの程度詳細な特徴を抽出するのかによって決定する。
【0024】
次いで、変化量、存在量などの特徴を抽出する(ステップA4)。特徴には、変化量、存在量の他、後述する存在量の最小値、存在量の最大値、波形パターンの開始点、波形パターンの終了点が含まれる。
【0025】
以上の手順について具体例を用いて説明する。図4の“元データ(Y)”欄には、図3(a)の計測値が示されている(例えば、時点T=1において元データY=70.06,時点T=2において元データY=68.28等)。いま、時点T=1,2,3,・・・の計測値を順次入力して、T≧Th以降に移動平均Hを計算する(ここで、Th:移動平均が可能となる時点。本例では、計測値の入力開始後5時点以降とする)。その値が、図4の“平準化値(H)”欄に示されている。次いで、元の計測値と移動平均との差分(Y−H)を計算する。その値が、図4の“Y−H”欄に示されている。次いで、3本の標本線を引き、標本線上の変化量、存在量などを計算する。
【0026】
一例として、図4のT=30時点の下線301を付した個所で説明すると、図4には、元のデータ値(72.16)、移動平均値(70.844)、差分(1.316)、差分波形パターンのY=1の標本線における変化量(値=1)などが示されている。変化量、存在量などは、その時点の近傍の波形パターンを対象として定められるが、ここでは「30時点から7時点までの範囲」を“近傍”とする。すなわち、23時点から30時点までの範囲であり、この範囲の波形を図5(a)に示す。図5(a)では、グラフの左端が23時点における差分値、右端が30時点における差分値である。この差分波形パターンの(変化量,存在量)は、図5(a)に引いた3本の標本線Y=1、0、−1(破線で図示)から求められ、その値は、上の標本線から順に(1,4)、(1,5)、(1,7)となる。図4において、変化量、存在量などを求めるための波形パターンの範囲(時点の数)をTdで表示すると、差分波形パターンの変化量、存在量を求めるのは、必然的に(Th+Td)時点以降となる。
【0027】
以上のようにして求めた値は、下記のような性質を有する。図3(c)は、図3(a)の元の計測値による波形パターンから、図3(b)の大きなうねりを取り除いた変化の状況を示す。換言すると、上述の処理により、うねりを除いた波形パターンデータの周波数的性質及び振幅的性質が数値として捉えられる。図5(a)には、図4の23時点〜30時点までの差分波形パターンが示されているが、他の時点における差分波形パターンが、例えば図5(b)に示されるものであれば、これについても変化量及び存在量として捉えることができる。
【0028】
図6(a)〜図6(f)には、図3(c)の差分波形パターンの標本線Y=1、0、−1における変化量及び存在量が示されている。例えば、図6(a)は、標本線“1”上の変化量を示しており、波形パターン全体のうち初期の波形では標本線“1”上の変化量が一定値であるが、変化量が次第に小さくなっていることが分かる。また、図6(b)は、標本線“1”上の存在量を示しており、波形パターン全体のうち初期の波形では存在量が一定値であるが、存在量が次第に小さくなっていることが分かる。これらのことから、差分波形パターンは、「初期段階では振幅が1を越えることが多いが、次第に振幅が小さくなる」ことを数値として示していることが分かり、図3(c)と対比すると、妥当な結果であることが分かる。同様にして、図6(c)〜図6(f)からも同様の性質を確認することができる。
【0029】
上述のようにして得られた変化量、存在量等の特徴について、時間差分を求めるステップ(ステップA5)を付加してもよい。いま、時間差分をTfとすると、図4においてはTf=10であるが、これは、変化量などの「10時点前との差分」をその時点の特徴とすることを意味する。すなわち、下線を付した30時点においては、標本線“1”の10時点前の値は、「20時点目の2」であり、30時点目の値「1」との差分は「−1」となる。同様にして、他の特徴についても時間差分を求める。
【0030】
以上のようにして求めた時間差分は、差分波形パターンの周波数的性質又は振動的性質が10時点の間にどの程度変化しているか、という性質を有する。例えば、周波数的性質が或る幅で変化することは、設備の計測値においては生じ得ることであるとしても、その時間的変化が急激なときには、何らかの異常を示す場合があり、そのような場合に、ここに示した時間差分が有効な意味を持つことになる。時間差分の間隔をどの値に設定するかは、例えば監視員の経験に基づいて決めることも有益ではあるが、未知の場合には、10時点、20時点、50時点などの複数の間隔を設定することも有益である。
【0031】
また、上述の特徴抽出は、1時点毎に入力される計測値、即ち波形パターンデータについて逐次実行されるが、1時点毎に実行してもよいし、2時点以上の間隔で実行してもよい。
【0032】
以上説明したように、差分波形パターンから変化量、存在量、又はそれらの時間差分を特徴として抽出することにより、設備の稼働状況を診断・監視するための有効な特徴を得ることができる。
【0033】
なお、本発明の特徴抽出方法においては、他の特徴(例えば、計測値自身、平準化値、平準化値における時間差分等)を抽出するステップを含んでもよい(ステップA6)。ステップA4、ステップA5、ステップA6で得られた特徴は好ましくは、認識システムに入力される(ステップA7)。認識システムに入力することによって、設備の効果的な診断・監視が可能になる。なお、認識システムとしては、統計理論を適用したもの、ニューラルネットワーク等の人工知能理論を適用したもの等、種々のシステムが適用可能である。
【0034】
次に、コンピュータに上述のステップ(即ち、ステップA1〜ステップA5)を実行させるためのプログラムについて説明する。本プログラムが実行されるコンピュータは、バスによって相互に接続されたCPU(中央処理装置)、メモリ、ハードディスク等の記憶装置、キーボード等の入力装置、表示装置、及び出力装置(いずれも図示せず)を有する一般的な形式のものでよいし、或いはマイクロチップ形式の処理装置等でもよい。
【0035】
まず、入力装置によって入力された時系列波形パターンデータがメモリに格納される。メモリに格納された時系列波形パターンデータは、CPUにおいて平準化され、平準化された波形パターンデータが、メモリに格納される(ステップA1)。次いで、メモリに格納されている元の波形パターンデータと平準化された波形パターンデータとの差分計算が、CPUにおいて実行され、差分波形パターンデータがメモリに格納される(ステップA2)。
【0036】
次いで、予め入力装置から入力されている「範囲」における差分波形パターンデータが選択され、選択された差分波形パターンデータがメモリに格納される。次いで、選択された差分波形パターンデータについて、CPUにおいて1本又は複数本の標本線が定められ、標本線が定められた選択された差分波形パターンデータがメモリに格納される(ステップA3)。
【0037】
次いで、メモリに格納された標本線が定められた差分波形パターンデータについて、変化量、存在量等の特徴がCPUにおいて計算・抽出され、このようにして抽出された特徴がメモリに格納される(ステップA4)。
【0038】
さらに、メモリに格納された特徴について、CPUにおいて時間差分を計算し、時間差分を計算した特徴をメモリに格納してもよい(ステップA5)。ステップA4、ステップA5によって得られたデータは、出力装置等から、認識システムに入力される。なお、上述の例では、データがメモリに格納されるものとして説明したが、データ量が多い場合には、ハードディスク等の大容量記憶装置に格納される。
【0039】
次に、スペクトル波形パターンの特徴抽出方法について説明する。スペクトル波形パータンには、始点と終点とがある。本実施の形態では、図9に示される蛍光管のスペクトル波形のような波形パターンを例にして説明する。まず、スペクトル波形パターンを複数個の範囲に分割する(ステップB1)。分割数や範囲設定の方法については種々考えられるが、正常な蛍光管のスペクトル波形パターンは、その形状がほぼ決まっており、複数の波長個所にほぼ一定高さで一定形状のピークが現れる。したがって、スペクトル波形パターンをピークの存在する個所毎に分割する。すなわち、図10に示されるように、範囲<1>〜<7>に分割する。分割は、図10に示されるように各範囲が重複しないように定義してもよいし、或いは重複するように定義してもよい。この際、対象とする波長の全範囲にわたって、定義されていない個所がないように分割するのが好ましいが、定義されていない個所が存在するように分割してもかまわない。なお、ピークが1個の場合等のように、分割が不要な場合もある。
【0040】
次いで、分割したスペクトル波形パターンについて、Lh本の標本線を定める(ステップB2)。標本線の数Lhは、スペクトル波形パターンからどの程度詳細な特徴を抽出するかに応じて決定し、範囲<1>〜<7>で一律であってもよいし、各範囲毎に設定してもよい。
【0041】
次いで、各範囲毎に、標本線L=1〜Lhにおける変化量、存在量、存在量の最小値、存在量の最大値、波形の開始点、又は波形の終了点のうち一部又は全部を求める(ステップB3)。変化量及び存在量については、上述の通りである。他の特徴、即ち、存在量の最小値、存在量の最大値、波形パターンの開始点、及び波形パターンの終了点について、図11(a)を参照して説明する。
【0042】
図11においては、説明を容易にするため、図10の範囲<1>〜<3>が1つの範囲として示されている。まず、存在量の最小値とは、例えば図11(a)の標本線ロにおける区間c−dの長さである。すなわち、標本線ロでは、標本線上に波形が存在する個所はc−dとe−fであるが、そのうち最小長さの個所c−dの長さが存在量の最小値となる。これに対し、存在量の最大値とは、区間e−fの長さである。また、波形パターンの開始点とは、標本線上で最初に波形が存在し始める位置、即ち、図11(a)の標本線ロについてはc点であり、標本線ロの開始位置s点からc点までの長さになる。これに対し、波形パターンの終了点とは、標本線上で波形が終了する位置、即ち、図11(a)の標本線ロについてはf点であり、標本線ロの開始位置s点からf点までの長さになる。波形の開始点パターン、及び波形パターンの終了点は、図11(a)の標本線イについては、それぞれ位置a、位置bであり、それぞれの値は、s′−a、s′−bの長さとなる。
【0043】
図10のスペクトル波形パターンの範囲<4>を取り出して描いた図12を参照して、これらの特徴について更に説明する。図12(a)、(b)のようなスペクトル波形パターンの特徴を図12(c)、(d)に示す。図12(c)、(d)は、図12(a)、(b)の標本線の下から順に1,2,・・・と番号を付した場合における存在量、波形の開始点、及び波形の終了点をそれぞれ示したものである。図12(a)と図12(b)では、ピーク位置やピーク部の面積はほぼ同等であるが、山の形状は相違している。その相違している状況が、図12(c)、(d)の標本線6〜9における各特徴に現れていることが分かる。また、ピーク位置は、10番目の標本線の開始位置や終了位置として得られており、ピーク部の面積も各標本線の存在量に内包されている。すなわち、ここに示される特徴により、ピーク部の形状の相違を数値の相違として表現することが可能となる。なお、図12(c)、(d)では、標本線11以降の特徴は全て「0」となっているが、これは、特徴の初期値を「0」とし、波形が存在しない標本線では初期値のままとしているからである。図12(c)、(d)では、3種類の特徴のみが示されているが、良品・不良品の相違の検出目的に応じて、変化量等の他の特徴を使用することもできる。
【0044】
以上のようにして、図10の全範囲<1>〜<7>について特徴を求め、図12(d)のように一連の特徴群とすることによって、スペクトル波形パターン全体の特徴が得られる。本例における特徴の総数は、例えば、標本線数が20本、各標本線における特徴が変化量、存在量等の6種類であるとすると、20×6=120個ずつとなる。したがって、範囲<1>〜<7>において同数の特徴を抽出する場合には、全特徴数は、120×7=840個となる。
【0045】
本発明の特徴抽出方法においても、上述の時系列波形パターンからの特徴抽出方法と同様に、スペクトル波形パターンデータを平準化する前処理ステップを含んでもよい。この前処理ステップを実施する場合には、前処理ステップによって得られた平準化されたスペクトル波形パターンデータについて、上述のステップB1〜ステップB3を実施する。
【0046】
さらに、本発明の特徴抽出方法においても、他の特徴(例えば、ピーク位置など従来用いられている特徴)を抽出するステップを含んでもよい(ステップB4)。ステップB3、ステップB4で得られた特徴は好ましくは、認識システムに入力される(ステップB5)。なお、認識システムとしては、上述の時系列波形パターンの場合と同様に、統計理論を適用したもの、ニューラルネットワーク等の人工知能理論を適用したもの等、種々のシステムが適用可能である。
【0047】
次に、コンピュータに上述のステップ(即ち、ステップB1〜ステップB3)を実行させるためのプログラムについて説明する。本プログラムが実行されるコンピュータは、上述のような一般的な形式のものでよいし、或いはマイクロチップ形式の処理装置等でもよい。
【0048】
まず、入力装置によって入力されたスペクトル波形パターンデータがメモリに格納される。メモリに格納されたスペクトル波形パターンデータは、予め入力装置から入力されている「分割数」に従ってCPUにおいて分割され、分割されたスペクトル波形パターンデータがメモリに格納される(ステップB1)。
【0049】
次いで、分割されたスペクトル波形パターンデータについて、予め入力された「標本線数」に従ってCPUにおいて1本又は複数本の標本線が定められ、標本線が定められた分割されたスペクトル波形パターンデータがメモリに格納される(ステップB2)。
【0050】
次いで、メモリに格納された標本線が定められたスペクトル波形パターンデータについて、変化量、存在量等の特徴がCPUにおいて計算・抽出され、このようにして抽出された特徴がメモリに格納される(ステップB3)。
【0051】
また、メモリに格納されたスペクトル波形パターンデータをCPUにおいて平準化し、平準化したスペクトル波形パターンデータを一旦メモリに格納し、この平準化したスペクトル波形パターンデータについてステップB1を実行してもよい。ステップB3によって得られたデータは、出力装置等から、認識システムに入力される。なお、上述の例では、データがメモリに格納されるものとして説明したが、データ量が多い場合には、ハードディスク等の大容量記憶装置に格納される。
【0052】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0053】
例えば、前記2つの実施の形態では、標本線は、水平な直線として示されているが、傾斜した直線(図11(b)参照)、上方に凸の曲線(図11(c)参照)、下方に凸の曲線(図示せず)、非平行線等、任意の線を使用してよい。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、時系列波形パターンから、対象とする波形パターンが有する固有の特徴を代表し、振動しながらも大きなうねりや傾向を有する現象の異常の有無や、時間的変化の性質も保有する波形パターンの特徴を抽出することができ、これにより設備の診断・監視を的確に行うことが可能となる。また、スペクトル波形パターンから、スペクトル波形の各ピーク部の形状等に関する性質を代表する波形パターンの特徴を抽出することができ、これにより製品の良品・不良品の検査を精度良く行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい実施の形態に係る時系列波形パターンの特徴抽出方法の構成を示したフロー図である。
【図2】図1の特徴抽出方法のうち一部の手順を詳細に示したフロー図である。
【図3】(a)は時系列波形パターンを示したグラフ、(b)は平準化した波形パターンを示したグラフ、(c)は差分波形パターンを示したグラフである。
【図4】時系列波形パターンから特徴抽出する手順を説明するための表でる。
【図5】一定範囲における差分波形パターンと標本線を示したグラフである。
【図6】変化量及び存在量の時間的変化を説明するためのグラフである。
【図7】本発明の好ましい実施の形態に係るスペクトル波形パターンの特徴抽出方法の構成を示したフロー図である。
【図8】図7の特徴抽出方法のうち一部の手順を詳細に示したフロー図である。
【図9】スペクトル波形パターンを示したグラフである。
【図10】複数の範囲に分割されたスペクトル波形パターンを示したグラフである。
【図11】標本線の種類及び特徴を説明するためのグラフである。
【図12】(a)、(b)は一定範囲におけるスペクトル波形パターン及び標本線を示したグラフ、(c)、(d)は(a)、(b)における特徴をそれぞれ示した表、(e)は一連の特徴群を示した概念図である。
【図13】変化量及び存在量を説明するための図表である。
Claims (8)
- 時系列で変化する計測値による波形パターンデータから設備の診断・監視のための特徴を抽出する方法であって、
波形パターンデータを平準化する第1ステップと、
元の波形パターンデータと平準化された波形パターンデータとの差分を計算する第2ステップと、
差分計算によって得られた波形パターンデータについて、着目する時点の近傍の所定範囲における波形パターンデータを選択し、選択した波形パターンデータについて、1本又は複数本の標本線を定める第3ステップと、
前記定められた標本線上における、前記差分計算によって得られた波形パターンデータの変化量、存在量、存在量の最小値、存在量の最大値、波形パターンの開始点、又は波形パターンの終了点のうち一部又は全部を抽出する第4ステップと、
を含むことを特徴とする方法。 - 前記第4ステップによって得られた変化量、存在量、存在量の最小値、存在量の最大値、波形パターンの開始点、又は波形パターンの終了点について、時間差分を求めるステップを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 時系列で変化する計測値による波形パターンデータから設備の診断・監視のための特徴を抽出するプログラムであって、
波形パターンデータを平準化して記憶装置に格納するステップと、
元の波形パターンデータと平準化された波形パターンデータとの差分を計算して記憶装置に格納するステップと、
差分計算によって得られた波形パターンデータについて、着目する時点の近傍の所定範囲における波形パターンデータを選択し、選択した波形パターンデータについて、1本又は複数本の標本線を定めて記憶装置に格納するステップと、
前記定められた標本線上における、前記差分計算によって得られた波形パターンデータの変化量、存在量、存在量の最小値、存在量の最大値、波形パターンの開始点、又は波形パターンの終了点のうち一部又は全部を抽出して記憶装置に格納するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。 - 変化量、存在量、存在量の最小値、存在量の最大値、波形パターンの開始点、又は波形パターンの終了点について、時間差分を求めて記憶装置に格納するステップを更に含むことを特徴とする請求項3に記載のコンピュータに実行させるためのプログラム。
- スペクトル波形パターンデータから製品の良品・不良品の検査のための特徴を抽出する方法であって、
スペクトル波形パターンデータを横軸方向に1又は複数の範囲に分割する第1ステップと、
分割した複数の範囲におけるスペクトル波形パターンデータについて、1本又は複数本の標本線をそれぞれ定める第2ステップと、
前記定められた標本線上における、前記スペクトル波形パターンデータの変化量、存在量、存在量の最小値、存在量の最大値、波形パターンの開始点、又は波形パターンの終了点のうち一部又は全部を抽出する第3ステップと、
を含むことを特徴とする方法。 - スペクトル波形パターンデータから製品の良品・不良品の検査のための特徴を抽出する方法であって、
スペクトル波形パターンデータを平準化する第1ステップと、
平準化されたスペクトル波形パターンデータを横軸方向に1又は複数の範囲に分割する第2ステップと、
分割した複数の範囲におけるスペクトル波形パターンデータについて、1本又は複数本の標本線をそれぞれ定める第3ステップと、
前記定められた標本線上における、前記スペクトル波形パターンデータの変化量、存在量、存在量の最小値、存在量の最大値、波形パターンの開始点、又は波形パターンの終了点のうち一部又は全部を抽出する第4ステップと、
を含むことを特徴とする方法。 - スペクトル波形パターンデータから製品の良品・不良品の検査のための特徴を抽出するプログラムであって、
スペクトル波形パターンデータを横軸方向に1又は複数の範囲に分割して記憶装置に格納するステップと、
分割した複数の範囲におけるスペクトル波形パターンデータについて、1本又は複数本の標本線をそれぞれ定めて記憶装置に格納するステップと、
前記定められた標本線上における、前記スペクトル波形パターンデータの変化量、存在量、存在量の最小値、存在量の最大値、波形パターンの開始点、又は波形パターンの終了点のうち一部又は全部を抽出して記憶装置に格納するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。 - スペクトル波形パターンデータから製品の良品・不良品の検査のための特徴を抽出するプログラムであって、
スペクトル波形パターンデータを平準化して記憶装置に格納するステップと、
平準化されたスペクトル波形パターンデータを横軸方向に1又は複数の範囲に分割して記憶装置に格納する第2ステップと、
分割した複数の範囲におけるスペクトル波形パターンデータについて、1本又は複数本の標本線をそれぞれ定めて記憶装置に格納するステップと、
前記定められた標本線上における、前記スペクトル波形パターンデータの変化量、存在量、存在量の最小値、存在量の最大値、波形パターンの開始点、又は波形パターンの終了点のうち一部又は全部を抽出して記憶装置に格納するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
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