JP2004107882A - 落雪防止材料およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】同一の固体表面の少なくとも一部に、水接触角が90°以上の撥水部からなる領域と、水接触角が60°以下の親水部からなる領域とを組み合わせて形成することを特徴とする落雪防止材料の製造方法、および落雪防止材料。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は落雪防止材料およびその作製技術に関する。
【0002】
【従来技術】
固体表面の落雪制御は寒冷地での快適かつ安全な住環境の為の重要な技術課題であり、材料面や機構面から様々な提案がなされている。雪は、氷と水と空気の混合物であるが固体表面での雪の挙動は水分を多く含んだ湿雪と水分の少ない乾雪とでは著しく異なり、湿雪と乾雪の境界は概ね地上の気温で−2〜−3℃程度であることが知られている。着雪は一般に防止することが望ましいが、落雪については必ずしも促進される機能だけでなく、防止する機能が求められる場合もある。特に日本では、北陸地方を中心に比重が重い湿雪が降ることが多く、建築構造物などから大きな雪塊が落下した際に事故や災害を誘発する虞れがあることから湿雪の落雪防止技術に関するニーズが高い。
【0003】
吉田らは湿雪に関して表面が親水性の材料が落雪しやすいと報告している(非特許文献1)。すなわち、湿雪の場合、雪と材料間に水膜が形成されることにより固体間の摩擦が緩和されるため、水が濡れ広がりやすい親水性材料の方が落雪しやすいと考えられている。また、親水材料の表面粗さについては、表面粗さが小さいほど雪と固体の界面を覆うのに必要な水膜の厚さが薄くて良いため、小さいほうがよいと考察されている。
【0004】
昨年本発明者らは固体表面の撥水性と湿雪、乾雪それぞれに対する落雪の挙動を評価した(非特許文献2)。その結果、湿雪の落雪は、親水性表面では湿雪から水が固体表面に移行して雪と材料との間に水膜を形成するプロセスが支配的であるが、撥水性表面では湿雪から固体表面に水が移行しないため、湿雪を構成する系全体の粘性流動が支配的となることが明らかになった。本発明者らはこの知見をもとに研究を行い、表面に凹凸を形成して凹部を撥水、凸部を親水とすることにより湿雪の落雪を促進できる事を見出し、これを開示した(特許文献1)。このように、従来の研究から湿雪の落雪の挙動は雪から固体表面への水の移動が重要な因子になっていることが実験的に証明されており、落雪の防止にあたっては親水材料より撥水材料の方が効果的であることが知られている。しかしながら、単なる撥水処理だけでは湿雪の落雪防止性能は必ずしも充分でないことも多く、より優れた湿雪の落雪防止性能が寒冷地での多くの構造物品に対して求められていた。
【0005】
【特許文献1】
特願2002−028188(第1−2項)
【非特許文献1】
吉田外「北海道立試験所報告299」,2000年,p.13−17
【非特許文献2】
「日本セラミックス協会学術論文誌」,110〔3〕,2002年,p.186−192
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記の事実に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、優れた性能の落雪防止材料およびその作製技術を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明に係る落雪防止材料の製造方法は、同一の固体表面の少なくとも一部に、水接触角が90°以上の撥水部からなる領域と、水接触角が60°以下の親水部からなる領域とを組み合わせて形成することを特徴とする方法からなる。
【0008】
この方法においては、上記親水部からなる領域は、上記固体表面から固体表面外に向かって連続して延びるチャンネル状の領域に形成することが好ましい。
【0009】
上記撥水部および親水部の少なくとも一方には、50nm以上の表面粗さを持たせることが好ましい。
【0010】
本発明に係る落雪防止材料は、上記のような方法により製造されたものであり、優れた落雪防止効果を発揮する。
【0011】
本発明の理解を容易にするため実施の形態について具体的かつ詳細に説明する。本発明者らは、落雪制御の可能性を探るため、撥水性表面に親水部からなる領域を組み合わせた場合と、親水性単独(親水部のみからなる領域)、撥水性単独(撥水部のみからなる領域)のそれぞれの表面に対する湿雪の落雪特性を実暴試験により比較、検討を行なった。その結果、同一の固体表面の少なくとも一部に撥水部からなる領域と親水部からなる領域とを組み合わせたものでは撥水性単独よりも顕著な落雪防止性能が得られることが判った。
【0012】
湿雪の落雪挙動を検討するため模擬雪として比重が水とほぼ同じ(1.1g/cm3)で重力の影響の少なく、氷と同様に親水性である中空のガラスビーズと水とを混合した混合物の転落性を後述の試料について評価した結果、表面が親水性の単独の試料および親水部と撥水部が同一の固体表面の少なくとも一部に組み合わされている試料では、固体濃度が低い混合領域で固液分離が生じ、水が先に滑り出しガラスビーズ部分が取り残される現象が見られた。一方、撥水性単独の試料では固液分離がみられず、混合物中の固体濃度の上昇に伴う混合物の粘度上昇と転落角度の上昇が対応していたことから、混合物の粘性流動に転落が支配されていることが明らかになった。
【0013】
親水部に水膜が形成されるにもかかわらず撥水部と親水部を組み合わせた試料の落雪防止性能が撥水性単独の試料よりも優れているのは、親水部へ水が移行したことにより撥水部の上に乗っている雪の水分量が低下し、転落のための流動に必要な湿雪の系の粘性が上昇していたためと考えられる。
【0014】
本発明では撥水部は水接触角90°以上でなるべく高い方が好ましく、これに組み合わせる親水部は水接触角60°以下でなるべく低い方が望ましい。接触角が60°〜90°の固体表面をこれら撥水部または親水部と組み合わせて用いることもできるが、このような中間的な濡れ性の領域は全表面積の80%以下であることが望ましく、より好ましくは50%以下であるのが良い。
【0015】
また親水部と撥水部を組み合わせる場合、親水部をチャンネルとして組み合わせた方が望ましい。本発明におけるチャンネルとは、対象物の外部まで連続して繋がっている構造を意味する。親水部が連続していない、いわゆるアイランド状態でも撥水部に接している雪から親水部へ水が移動する事から雪全体の粘性が増大し落雪防止機能が発現するが、チャンネル形式で組み込み方が水が外部に排出され易くなるため効果が大きい。チャンネルは直線的であっても曲がっていても良いが、直線的である方が水が流れやすいためより好ましい。
【0016】
また必要に応じて撥水部および親水部の少なくとも一方に、表面粗さを持たせても良い。表面粗さは雪の転落に対して摩擦抵抗として作用する。また撥水部ではその撥水性が、親水部ではその親水性が強調される事が広く知られており、効果が更に大きくなる。この場合、表面粗さのレベルは50nm以上にする必要がある。50nm未満の表面粗さでは濡れ性の強調効果がほとんど期待できない。
【0017】
本発明が適用できる固体基材は無機、有機、金属、あるいはその複合体の何れでも良い。親水部の幅とピッチ、親水部と撥水部の面積比率、濡れ性の差、撥水部の粗さの程度によって落雪防止能の程度は異なるが、安定的に落雪を防止するためには撥水部の面積が、撥水部と親水部の合計面積の少なくとも1/2以上であることが望ましく、濡れ性の差も大きい方が望ましい。これらの濡れ性は固体独自の性質として発現されるものであってもコーティング等の後処理により達成されるものでもよい。
【0018】
本発明の実施に当たり重要な事は撥水部と親水部をほぼ同一の固体表面内に形成することである。撥水部と親水部との間で多少の高さの違いは許容されるが、湿雪が乗った際、谷の部分と雪との間に空気をかみ込んでしまうほど高さの差があってはならない。特に親水部が凸で撥水部が凹に明確になる構造では、全く逆に落雪を促進する機能が付与されるので注意を要する。
【0019】
【実施例】
以下に本発明の実施例について述べる。
実施例1
アクリル板(20cm× 20cm,厚み3 mm, 三菱レーヨン社製)にプライマー(石原産業、ST−K300)をスピンコート(1500rpm×10秒)でコーティングしたのち、70℃で1時間乾燥した。この表面にチタニア−シリカコート液(石原産業 ST−K211)をイソプロピルアルコール(IPA:和光純薬、特級)で10倍希釈したものをスピンコート(1500 rpm×10秒)でコーティングし、70℃で1日乾燥した。得られた親水性膜に1mm間隔で1mm幅のマスキングテープ(日東電工、N−380)を貼った。その後、市販の超撥水コート液(NTT−AT,HIREC−1550)をスプレーで約10 ccのコート液を5〜10秒かけてコートし、70℃で1時間乾燥した。このコーティングと乾燥のサイクルを2回繰り返した後、マスキングテープを剥離し、さらに70℃で1日乾燥させた。その後、ブラックライトで1.5 mW/cm2の紫外光を1日以上照射して、2次元親水性・超撥水性膜を有する試料を得た。
【0020】
作製した試料は新潟県長岡市にて45°に設置角度を固定し、屋外曝露実験を行い、着雪防止能と落雪促進能をそれぞれ着雪率、落雪開始積雪量で評価した。着雪率はあらかじめ屋外で雪がつかないように試料面を下向きにして1時間以上放置した後、45°の角度に全試料を同時に設置し、落雪が始まるまで試料を放置し、落雪が始まった際の積雪量を時間毎の雪のかさ密度とその時の積雪高さの変化量から以下の式に従って計算した。
(落雪開始積雪量)=(落雪時の雪のかさ密度)×(落雪時の積雪高さ)×(試料の表面積)
【0021】
実暴での着雪率と落雪開始積雪量を図1に示す。ほぼ同一固体表面内に超撥水部と親水部とを組み合わせた試料は最も高い落雪開始積雪量を示し、落雪防止性能が優れていることがわかった。
【0022】
比較例1
実施例1と同じアクリル板に深さ1mm,幅1mm,間隔2mmとなるようにフライス加工にて矩形の溝を入れたのち、前述のプライマー(ST−K300)をスピンコート(1500rpm×10秒)でコーティングし、70℃で1時間乾燥させた。凸部に前述のマスキングテープを貼り、前述の超撥水コート液を同様の方法でスプレーコートし、70℃で1時間乾燥した。このコーティングと乾燥のサイクルを2回繰り返した後、マスキングテープを取り除き、70℃で1日乾燥させた。その後、シャーレに入れた前述と同様のチタニア−シリカコート液に凸部のみを接触させることで凸部にのみ該液をコーティングし、70℃で1日乾燥させた。
【0023】
実暴での着雪率と落雪開始積雪量を図1に示す。超撥水性部と親水性部のレベルに凹凸を組み合わせたものは超撥水性単独と親水性単独の中間の落雪開始積雪量を示し、落雪防止性能はあまり優れていないことがわかった。
【0024】
比較例2
アクリル板(20cm× 20cm,厚み3mm,三菱レーヨン社製)にプライマー(石原産業、ST−K300)をスピンコート(1500rpm×10秒)でコーティングしたのち、70℃で1時間乾燥した。この表面にチタニア−シリカコート液(石原産業 ST−K211)をイソプロピルアルコール(IPA:和光純薬、特級)で10倍希釈したものをスピンコート(1500rpm×10秒)でコーティングし、70℃で1日乾燥した。
【0025】
この表面は100nm程度の表面粗さを持ち、水接触角は45°を示した。実暴での着雪率と落雪開始積雪量を図1に示す。親水性単独表面はきわめて低い落雪開始積雪量を示し、落雪防止性能は優れていないことがわかった。
【0026】
比較例3
前述と同じアクリル板に前述のプライマー(ST−K 300)をスピンコート(1500rpm×10秒)でコーティングしたのち、70℃で1時間乾燥させた。その表面に市販の超撥水コート液(NTT−AT,HIREC−1550)をスプレーで約10ccのコート液を5〜10秒かけてコートし、70℃で1時間乾燥した。このコーティングと乾燥のサイクルを2回繰り返したあと、さらに70℃で1日乾燥させ、超撥水表面を有する試料を得た。
【0027】
この表面は800nm程度の表面粗さを持ち、水接触角は157°となり超撥水性を示した。実暴での着雪率と落雪開始積雪量を図1に示す。超撥水単独表面は高い落雪開始積雪量を示したが、同一平面内に親水と超撥水を組み合わせ表面ほど落雪防止性能は優れていないことがわかった。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば落雪防止性能に優れた材料を容易に作製できる。これは寒冷地での各種の工業製品に好適に使用可能であり、安全で快適な生活の実現に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例と比較例における落雪開始積雪量を示すグラフである。
Claims (4)
- 同一の固体表面の少なくとも一部に、水接触角が90°以上の撥水部からなる領域と、水接触角が60°以下の親水部からなる領域とを組み合わせて形成することを特徴とする落雪防止材料の製造方法。
- 前記親水部からなる領域を、前記固体表面において固体表面外に向かって連続して延びるチャンネル状の領域に形成する、請求項1の落雪防止材料の製造方法。
- 前記撥水部および親水部の少なくとも一方に、50nm以上の表面粗さを持たせる、請求項1または2の落雪防止材料の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の方法により製造された落雪防止材料。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002268012A JP2004107882A (ja) | 2002-09-13 | 2002-09-13 | 落雪防止材料およびその製造方法 |
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2002
- 2002-09-13 JP JP2002268012A patent/JP2004107882A/ja active Pending
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