JP2004105166A - ネコフォリスタチンおよびその高純度製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高純度のネコフォリスタチンを効率良く生産する。
【解決手段】ネコの下垂体に作用して卵胞刺激ホルモンの基礎分泌を特異的に抑制し、黄体形成ホルモンの基礎分泌を抑制せず、アクチビンとの結合能を有しそのアンタゴニストとしての能力を有するネコフォリスタチン、該ネコフォリスタチンをコードするDNA配列、該DNA配列を含む組換えベクター、該組換えベクターにより宿主細胞を形質転換してなる形質転換体、および該形質転換体を培養または飼育しネコフォリスタチンを採取することを特徴とするネコフォリスタチンの製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】ネコの下垂体に作用して卵胞刺激ホルモンの基礎分泌を特異的に抑制し、黄体形成ホルモンの基礎分泌を抑制せず、アクチビンとの結合能を有しそのアンタゴニストとしての能力を有するネコフォリスタチン、該ネコフォリスタチンをコードするDNA配列、該DNA配列を含む組換えベクター、該組換えベクターにより宿主細胞を形質転換してなる形質転換体、および該形質転換体を培養または飼育しネコフォリスタチンを採取することを特徴とするネコフォリスタチンの製造方法。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、蛋白質の一次構造がネコの遺伝情報由来であるネコフォリスタチンを遺伝子操作技術により量産し、以て動物用医薬品(慢性腎疾患薬、肝疾患治療薬)とすることを目的とした、プラスミド、形質転換体、ネコフォリスタチン及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フォリスタチンは、分子量が約35,000〜32,000の糖蛋白質である。アミノ酸数が315個および288個のどちらのフォリスタチンもアクチビンとの結合能を有し、下垂体培養細胞の卵胞刺激ホルモン(FSH)産生を抑制する作用を有している。
【0003】
尿細管由来のMadin−Darby Canine kidney(MDCK)細胞をI型コラーゲン内で培養すると嚢胞を形成するが、そこに肝細胞増殖因子(HGF)を添加すると管腔形成が見られる(非特許文献1)。しかし、本効果をアクチビンは濃度依存的に阻害した。またアクチビンのアンタゴニストとされるフォリスタチンはHGF非存在下でも管腔形成を誘導した。
【0004】
遺伝子操作技術によりこれまで多くの種のフォリスタチン遺伝子が単離されており(非特許文献2)、例えばHomo sapiens(ヒト)とMus musculus(マウス)間で91%のホモロジーを有する。ネコのフォリスタチンcDNAクローニングの報告は未だない。
【0005】
ネコの疾患には、ウイルス性の疾患以外に、慢性腎疾患、慢性腎不全が知られている。ネコの慢性腎疾患では、ステロイド製剤やヒトエリスロポエチン製剤などが使用されているが、根本的な治療法は確立していない。
【0006】
また、フォリスタチンの精製法としては、フォリスタチンと結合能を有するアクチビンAを適当な担体に架橋して作製したカラムによる精製法(非特許文献3)や電気泳動したゲルから直接タンパク質を調製する方法(非特許文献4)などがあるが、これらの方法は医薬品等の開発手段としては好ましくなく、より汎用で大量に精製可能な方法を確立する必要がある。
【0007】
【非特許文献1】
Maeshima Aら:Cytokine Growth Factor Rev.2001 12(4)289−98
【0008】
【非特許文献2】
Shimasaki Sら:Proc Natl Acad SciUSA.1988. 85(12)4218−22
【0009】
【非特許文献3】
De Winter JPら:Mol Cell Endocrinol 1996.116(1).105−114
【0010】
【非特許文献4】
0.Yokoyama Yら:J Clin Endocrinol Metab 1995.80(3).915−921
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ネコのフォリスタチンを製造することにより、従来とは異なる作用によるネコの慢性腎疾患治療薬を提供することを目的とする。
【0012】
すなわち、腎疾患でその発現が高進しているアクチビンと結合し、さらに尿細管形成を促進し、またアクチビンが誘導する細胞外マトリックスの産生や組織の線維化を阻害することにより、腎臓の再生および組織障害の遅延化を可能にしようとするものである。
【0013】
また、培養液等から有用タンパク質を医薬品とする場合、目的の成分を精製で分離・分画することが重要な課題である。
【0014】
従って、培養液中の不純物を含むネコフォリスタチンを高純度で容易に分離・分画する方法を確立することができれば、医薬品等としての開発の途が開かれると期待される。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため、ネコフォリスタチンcDNAクローニングおよびそれを用いた大量生産を目的とし、創意工夫をなし、ネコのcDNAからネコフォリスタチンをコードする遺伝子をクローニングすることに成功し、更にこれらを発現ベクターに連結したプラスミドを用いてネコフォリスタチンを生産する細胞の作製に成功し、以って簡単に大量にネコフォリスタチンを製造する方法を確立し、さらに2種のカラムクロマト担体を用いて高純度製造を可能にし、かくして本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち本発明は、ネコの下垂体に作用して卵胞刺激ホルモンの基礎分泌を特異的に抑制し、黄体形成ホルモンの基礎分泌を抑制せず、アクチビンとの結合能を有しそのアンタゴニストとしての能力を有するネコフォリスタチン、該ネコフォリスタチンをコードするDNA配列、該DNA配列を含む組換えベクター、該組換えベクターにより宿主細胞を形質転換してなる形質転換体、および該形質転換体を培養または飼育し、カラムクロマト精製により高純度なネコフォリスタチンを採取することを特徴とするネコフォリスタチンの製造方法である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のネコフォリスタチンは、天然型および遺伝子組換え型のいずれをも包含するものであって、以下の(1)〜(3)の機能を有するものである。
(1)ネコの下垂体に作用して卵胞刺激ホルモンの基礎分泌を特異的に抑制する。
(2)黄体形成ホルモンの基礎分泌を抑制しない。
(3)アクチビンとの結合能を有しそのアンタゴニストとしての能力を有する。
【0018】
ここで、アクチビンとの結合能を有するか否かは、アクチビンをラベルしたアクチビンのバインディング・アッセイによって確認することができる。なお、アクチビンはネコ慢性腎疾患において過剰発現するものと予想される。
【0019】
ネコフォリスタチンのアミノ酸配列は常法により決定することができ、配列番号1および配列番号2の配列はその一例である。配列番号2の配列のC末端の27アミノ酸残基を削除したものが配列番号1の配列となっている。上記の(1)〜(3)の機能が実質的に保持される限り、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列中の1もしくは数個のアミノ酸が欠失しても、他のアミノ酸に置換されても、あるいは1もしくは数個のアミノ酸が付加されてもよい。
【0020】
本発明のネコフォリスタチンをコードするDNA配列のうち好ましいものは、上記配列番号1または配列番号2をコードするものであり、特に配列番号3、4もしくは5で表されるDNA配列、またはこれらとハイブリダイズするDNA配列である。
【0021】
本発明のネコフォリスタチン蛋白質をコードするDNAを組み込んだ組換えベクターは例えば次のようにして製造することができる。すなわち、ネコの細胞からポリ(A)RNAを抽出した後、cDNAを合成し、マウスやヒトのフォリスタチンをコードする遺伝子配列を元にしたプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(以下PCRと略す)を行うことによって、ネコフォリスタチン活性を示す遺伝子をクローニングすることができる。また合成したcDNA組換え体よりファージライブラリーを作製し、PCRにより得られた2つの遺伝子断片とプラークハイブリダイゼーションを行うことにより、ネコフォリスタチンをクローニングすることができる。
【0022】
ネコの臓器や細胞、ネコの腎細胞由来のCRFKなどよりRNAを得る方法としては、通常の方法、例えばポリソームの分離、ショ糖密度勾配遠心や電気泳動を利用した方法があげられる。ネコ細胞からRNAを抽出する方法としては、グアニジン・チオシアネート処理後CsCl密度勾配遠心を行うグアニジン・チオシアネート−塩化セシウム法(参考文献1)、バナジウム複合体を用いてリボヌクレアーゼインヒビター存在下に界面活性剤で処理した後フェノール抽出を行う方法(参考文献2)、グアニジン・チオシアネート−ホット・フェノール法、グアニジン・チオシアネート−グアニジン塩酸法、グアニジン・チオシアネート−フェノール・クロロホルム法、グアニジン・チオシアネートで処理した後、塩化リチウムで処理してRNAを沈殿させる方法などの中から適当な方法を選択して行うことができる。
【0023】
得られたRNAから塩化リチウム/尿素法、グアニジン・イソチオシアネート法、オリゴdTセルロースカラム法等によりmRNAを単離し、得られたmRNAから逆転写酵素やプライマーによるDNAポリメラーゼを用いてcDNAを合成する。
【0024】
このcDNAを鋳型として、マウスやヒトの塩基配列を基にしたプライマーを用いてPCRを行うことによりネコフォリスタチン遺伝子をクローニングできる。また合成したcDNAをλファージベクターに連結した後、in vitroでλファージのコート蛋白質などと混合することによりパッケージングし、その生成されたファージ粒子を宿主となる大腸菌に感染させる。λファージが感染した大腸菌は溶菌し、1個1個のクローンがプラークとして回収される。このプラークを適当なフィルターに転写し、予め標識したオリゴマーもしくはPCRで得られた遺伝子をプローブとしてハイブリダイゼーションによりネコフォリスタチン遺伝子をクローニングすることができる。
【0025】
宿主としては原核生物もしくは真核生物を用いることができる。原核生物の例としては大腸菌を用いることができる。真核生物としては例えば、動物細胞や昆虫細胞などを使用することができる。
【0026】
発現ベクターとしては、プラスミド、ファージミド、コスミド、ファージ、レトロウイルス等を使用できる。発現ベクター中のプロモーター及び薬剤選択マーカーは宿主細胞に依存して選択される。例えば細菌ではlacプロモーター、昆虫細胞ではバキュロウイルスプロモーター、動物細胞ではSV40プロモーター等である。また形質転換体の培養は常法に従って行うことができる。
【0027】
産生されたネコフォリスタチンは、還元条件下、SDS−PAGEを行うことにより、その分子量は約35,000〜32,000である。
【0028】
本発明では、ネコフォリスタチンの精製に際し陽イオン交換担体を用いることが、より好ましくはさらに引き続いてヘパリン担体を用いることが重要である。両カラム担体を使用することで、より高純度のネコフォリスタチンを得ることができる。
【0029】
ネコフォリスタチンの分離・分画に使用される陽イオン交換担体ととしては、アガロース、セルロース、セファロース、合成ポリマーゲルなどに、親水性のスペーサーを介して、化学的に安定なエーテル結合によって陰イオン官能基を導入したものが挙げられる。好ましくは、SP Sepharose(Amersham−Pharmacia製)などが用いられる。また、ヘパリン担体としては、アガロース、セルロース、セファロース、合成ポリマーゲルなどに、親水性のスペーサーを介して、化学的に安定なエーテル結合によってヘパリン基を導入したものが挙げられる。好ましくは、Heparin Sepharose(Amersham−Pharmacia製)などが用いられる。
【0030】
本発明における精製工程では、ネコフォリスタチンを含む溶液を陽イオン交換担体、およびヘパリン担体に接触させ、担体への吸着物を溶出剤で溶出させる方法が好ましく採用される。
【0031】
陽イオン交換担体からの溶出は、塩濃度を徐々に上昇させリガンドである陽イオン交換基とのイオン的相互作用を打ち消し、かつ吸着したタンパクのイオン強度の違いによって分離・分画することができる。また、ヘパリン担体からの溶出は、塩濃度を徐々に上昇させリガンドであるヘパリン基との特異的相互作用を打ち消し、分離・分画することができる。一般にフォリスタチンに限らずタンパク質を各種生産系で生産した場合、培養液中の培養液組成物や血清中のタンパク質など、不純物が混在する。これら成分からネコフォリスタチンのみを分離することは容易でないと考えられる。本発明で使用される陽イオン交換担体およびヘパリン担体は、溶出剤の濃度の差により、培養液中の不純物からネコフォリスタチンを分離・分画できる。
【0032】
なお、陽イオン交換担体およびヘパリン担体を用いた精製操作における、溶出剤の組成、液量などは特に限定されるものではなく、最適な分離条件は存在する夾雑タンパク質、有用タンパク質各成分の量、およびカラムの寸法などに応じて適宜決定される。
【0033】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0034】
実施例1
ネコフォリスタチン遺伝子のクローニング
(1)ネコcDNAのファージライブラリー調製
ネコ腎由来細胞CRFKを150cm2フラスコで3〜4日培養し、5×107cellsの細胞沈殿物を調製した。mRNA isolation kit(Strtagene社)によりmRNAを調製した。すなわち、CRFKの沈殿物にグアニジン・チオシアネートを含むdenaturing solutionを加え、21Gニードルで混入したDNAをせん断した。次にelution bufferを加え遠心を行い、その上清を得た。得られた上清をオリゴdTセルロースカラムにアプライし、カラムの洗浄を行った後、予め68℃に加温しておいたelution bufferによりポリ(A)RNAを溶出した。次に得られたポリ(A)RNAを用いて、ZAP−DNA Synthesis kit(TOYOBO社)によりcDNAファージライブラリーを合成した。すなわちkitのマニュアルに従い2本鎖cDNAを合成し、さらにEcoRI/NotIアダプターを連結した。次にUni−ZAP XR vectorに連結した後、GigapackIIIpackaging extract(stratagene社)を用いてパッケージングを行い、組換え体ファージライブラリーを作製した。
【0035】
(2)ネコフォリスタチン遺伝子のクローニング
ヒトフォリスタチンのN末端およびC末端の塩基配列(参考文献3)をもとに、配列番号6と配列番号7の2種類のプライマーをDNAシンセサイザーにて合成した。上記(1)のCRFKcDNAを0.5mLのマイクロチューブに1μLを入れ、各プライマー20pmol、20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)、1.5mM MgSO4、25mM KCl、50μM各dNTP、KODを添加し、全量50μLとした。DNAの変性条件94℃,30秒、プライマーのアニーリング条件を60℃,30秒、プライマーの伸張条件を68℃,1分の各条件でBio−RAD社製DNAサーマルサイクラーを用いて、35サイクル反応させた。これを1%アガロースゲルにて電気泳動し、約900bpのDNA断片を常法(参考文献4)に従って調製した。
【0036】
このDNA断片をpUC108(アマシャムファルマシア社)にDNA Ligation kit Ver.2を用いて連結した。これを用いて常法に従って大腸菌を形質転換し、得られた形質転換体よりプラスミドDNAを常法により調製した。次にこのプラスミドにPCR断片が挿入されていることを前述と同条件のPCRおよびEcoRIおよびHindIIIによる制限酵素処理により確認し、ABI PRISM 377XL(Applied Biosystems)により、BigDye Terminator Cycle Sequencing法(参考文献5)でネコフォリスタチンと思われるDNAの塩基配列を決定した。この配列を配列番号3に示す。また、この配列を含む、900bpのDNA断片に日本ロッシュ社製のDIG DNA Labeling kitを用いてDIG標識し、プローブを作製した。上記(1)で作製した組換え体ファージライブラリーを大腸菌XL1Blue MRF’上でプラークとして形成させ、日本ロシュ社製のナイロンメンブレンに常法に従って転写した。転写したナイロンメンブレンは、DNAの固定を行った後、2mg/mLプロテイナーゼK溶液中に浸し、37℃1時間インキュベートした。さらにそのナイロンメンブレンを、最終濃度20ng/mLになるようにプローブを加えたDIG EASY HYB(日本ロシュ社製)中に入れ、42℃で1晩インキュベートを行い、ハイブリダイズさせた。ハイブリダイズしたナイロンメンブレンを、2×SSC(30mMNaCl、3mMクエン酸ナトリウム)、0.1%SDS中5分、2回洗浄を行い、さらに0.5×SSC(7.5mMNaCl、0.75mMクエン酸ナトリウム)、0.1%SDS中65℃下、15分、2回洗浄を行った。ナイロンメンブレンをCDP−Starによる化学発光により陽性プラークの検出を行った。すなわち、洗浄したナイロンメンブレンをブロッキング溶液(日本ロシュ社製)に室温下30分以上インキュベートした後、アルカリフォスファターゼ標識抗ジゴキシゲニン抗体(日本ロシュ社製)を含むブロッキング溶液内に入れてさらに30分インキュベートした。抗体溶液を捨て、洗浄バッファー(100mMマレイン酸、150mMNaCl、0.3%Tween20)で15分間、各2回ずつナイロンメンブレンを洗浄し、検出バッファー(100mMTris−HCl(pH9.5)、100mMNaCl)内に溶解させたCDP−Starをナイロンメンブレンに処理し、5分間室温で、さらに15分間37℃下でインキュベートした。得られたナイロンメンブレンをX−ray Filterに露光し、陽性シグナルを有するプラークを常法に従い再スクリーニングした。3回のスクリーニングの結果、陽性シグナルを有する1個の組換え体ファージを得た。この組換え体ファージよりin vivo exision法により、組換えプラスミドを含む大腸菌を得た。この大腸菌を培養し、常法に従いプラスミドを調製し、ABI PRISM 377XL(Applied Biosystems)により、BigDye Terminator Cycle Sequencing法(参考文献5)でネコフォリスタチンDNAの塩基配列(配列番号5)を決定した。
【0037】
得られたネコフォリスタチン遺伝子のホモロジー検索の結果、Equus caballus(ウマ):95%、O aries(ヒツジ):94%、Bos taurus(ウシ):94%、Homo sapiens(ヒト):94%、Rattus norvegicus(ラット):91%、Mus musculus(マウス):90%であった。
【0038】
実施例2
ネコフォリスタチンの生産
(1)ネコフォリスタチン組換えウイルスの調製
発現ベクターpVL1392を制限酵素BglII及びEcoRIで切断し、ウシ由来アルカリフォスファターゼで末端を脱リン酸化し、調製した。一方、ネコフォリスタチンDNA断片は配列番号8と配列番号9の2種類の切断部位(BglII及びEcoRI)を付加したプライマーを作製し、実施例1(2)で調製したネコフォリスタチンDNAを鋳型として、DNAの変性条件94℃,30秒、プライマーのアニーリング条件を60℃,30秒、プライマーの伸張条件を68℃,1分の各条件でBio−RAD社製DNAサーマルサイクラーを用いて、35サイクル反応させた。エタノール沈殿後、制限酵素で切断し、1%アガロースゲル電気泳動にて約1kbpのDNA断片を調製した。
【0039】
このDNA断片をT4 polynucleotide kinaseによりリン酸化した後、pVL1392にDNA Ligation kit Ver.2を用いて連結した。これを用いて常法に従い大腸菌に形質転換し、得られた形質転換体よりプラスミドDNAを常法により調製した。次にこのプラスミドとAcNPVと共に昆虫細胞Sf9に常法に従いco−transfectionを行い、ネコフォリスタチンを発現する組換えウイルスを得た。
【0040】
さらに、作製した発現プラスミド中のネコフォリスタチンDNAの塩基配列を確認した。
【0041】
(2)昆虫細胞Sf9でのネコフォリスタチンの発現
上記(1)で得られた組換えウイルスを27℃下培養したSf9に感染させた。27℃下5日間培養し、培養上清を回収した後2,000G,10分遠心しその上清を回収した。
【0042】
(3)ネコフォリスタチンの活性測定
上記(2)で生産されたネコフォリスタチンの活性測定は以下のようにして行った。K562細胞を用いてアクチビンAによるヘモグロビン放出作用の抑制を確認した(参考文献6)。
【0043】
96穴プレートにK562細胞(2×105cells/mL)を、10%FBSを含むRPMI−1640培地により、アクチビンA非存在下または存在(20ng/mL)下、ネコフォリスタチン非存在下または存在下4日間培養を行った。次に細胞をPBSにより2回Washし、滅菌した水50uLに懸濁し、遠心操作により上清画分40μLを得た。得られた上清に0.5mg/mL O−phenylenediamine と0.03%過酸化水素を含むクエン酸緩衝液200μLを加え、暗下15分処理した。その後2.5M硫酸を50μL加え、490nmの吸光度の測定を行った。その結果、ネコフォリスタチン存在下有意にヘモグロビン産生の抑制が見られた(図1)。
実施例3
ネコフォリスタチンの精製法
(1)陽イオン交換担体によるネコフォリスタチンの精製
実施例2(2)で得られた培養上清を、予め20mMリン酸緩衝液で平衡化した陽イオン交換担体であるSP Sepharoseに導入し、再度20mMリン酸緩衝液を用いて洗浄を行った。次に0〜1M塩化ナトリウムを含有する20mMリン酸緩衝液を用いてステップワイズ法による溶出を行い得られた溶出液を用いてイムノブロッティング並びに実施例2(3)による方法で活性測定を行ったところ、0.5M塩化ナトリウムを含む画分でネコフォリスタチンを検出した。
【0044】
(2)ヘパリン担体によるネコフォリスタチンの精製
上記で得られた溶出液を、予め0.2M塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液で平衡化したヘパリン担体に導入し、再度0.2M塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液を用いて洗浄を行った。次に0.2M〜1M塩化ナトリウムを含有する20mMリン酸緩衝液を用いてステップワイズ法による溶出を行い得られた溶出液を用いてイムノブロッティング並びに実施例2(3)による方法で活性測定を行ったところ、0.8M塩化ナトリウムを含む画分でネコフォリスタチンを検出した。
【0045】
参考文献
1.Chirgwinら:Biochemistry 1979. 18. 5294−5304
2.Bergerら:Biochemistry 1979. 18. 5143−49
3.Uenoら:Proc Natl Acad SciUSA.1984. 84. 8282−86
4.Molecular Cloning .Cold Spring Harbor Laboratory.New York.1982
5.Takabeら:Mol Cell Biol.1988 .8 .466−472
6.Jennieら:Endcrinology.1993.132.2732−34
【0046】
【発明の効果】
本発明によりネコフォリスタチンを効率良く産生させることができる。
【0047】
【配列表】
【0048】
【配列表フリーテキスト】
配列番号6、7、8および9:合成
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、ネコフォリスタチンを用いたアクチビンAによるヘモグロビン放出作用の抑制を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、蛋白質の一次構造がネコの遺伝情報由来であるネコフォリスタチンを遺伝子操作技術により量産し、以て動物用医薬品(慢性腎疾患薬、肝疾患治療薬)とすることを目的とした、プラスミド、形質転換体、ネコフォリスタチン及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フォリスタチンは、分子量が約35,000〜32,000の糖蛋白質である。アミノ酸数が315個および288個のどちらのフォリスタチンもアクチビンとの結合能を有し、下垂体培養細胞の卵胞刺激ホルモン(FSH)産生を抑制する作用を有している。
【0003】
尿細管由来のMadin−Darby Canine kidney(MDCK)細胞をI型コラーゲン内で培養すると嚢胞を形成するが、そこに肝細胞増殖因子(HGF)を添加すると管腔形成が見られる(非特許文献1)。しかし、本効果をアクチビンは濃度依存的に阻害した。またアクチビンのアンタゴニストとされるフォリスタチンはHGF非存在下でも管腔形成を誘導した。
【0004】
遺伝子操作技術によりこれまで多くの種のフォリスタチン遺伝子が単離されており(非特許文献2)、例えばHomo sapiens(ヒト)とMus musculus(マウス)間で91%のホモロジーを有する。ネコのフォリスタチンcDNAクローニングの報告は未だない。
【0005】
ネコの疾患には、ウイルス性の疾患以外に、慢性腎疾患、慢性腎不全が知られている。ネコの慢性腎疾患では、ステロイド製剤やヒトエリスロポエチン製剤などが使用されているが、根本的な治療法は確立していない。
【0006】
また、フォリスタチンの精製法としては、フォリスタチンと結合能を有するアクチビンAを適当な担体に架橋して作製したカラムによる精製法(非特許文献3)や電気泳動したゲルから直接タンパク質を調製する方法(非特許文献4)などがあるが、これらの方法は医薬品等の開発手段としては好ましくなく、より汎用で大量に精製可能な方法を確立する必要がある。
【0007】
【非特許文献1】
Maeshima Aら:Cytokine Growth Factor Rev.2001 12(4)289−98
【0008】
【非特許文献2】
Shimasaki Sら:Proc Natl Acad SciUSA.1988. 85(12)4218−22
【0009】
【非特許文献3】
De Winter JPら:Mol Cell Endocrinol 1996.116(1).105−114
【0010】
【非特許文献4】
0.Yokoyama Yら:J Clin Endocrinol Metab 1995.80(3).915−921
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ネコのフォリスタチンを製造することにより、従来とは異なる作用によるネコの慢性腎疾患治療薬を提供することを目的とする。
【0012】
すなわち、腎疾患でその発現が高進しているアクチビンと結合し、さらに尿細管形成を促進し、またアクチビンが誘導する細胞外マトリックスの産生や組織の線維化を阻害することにより、腎臓の再生および組織障害の遅延化を可能にしようとするものである。
【0013】
また、培養液等から有用タンパク質を医薬品とする場合、目的の成分を精製で分離・分画することが重要な課題である。
【0014】
従って、培養液中の不純物を含むネコフォリスタチンを高純度で容易に分離・分画する方法を確立することができれば、医薬品等としての開発の途が開かれると期待される。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため、ネコフォリスタチンcDNAクローニングおよびそれを用いた大量生産を目的とし、創意工夫をなし、ネコのcDNAからネコフォリスタチンをコードする遺伝子をクローニングすることに成功し、更にこれらを発現ベクターに連結したプラスミドを用いてネコフォリスタチンを生産する細胞の作製に成功し、以って簡単に大量にネコフォリスタチンを製造する方法を確立し、さらに2種のカラムクロマト担体を用いて高純度製造を可能にし、かくして本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち本発明は、ネコの下垂体に作用して卵胞刺激ホルモンの基礎分泌を特異的に抑制し、黄体形成ホルモンの基礎分泌を抑制せず、アクチビンとの結合能を有しそのアンタゴニストとしての能力を有するネコフォリスタチン、該ネコフォリスタチンをコードするDNA配列、該DNA配列を含む組換えベクター、該組換えベクターにより宿主細胞を形質転換してなる形質転換体、および該形質転換体を培養または飼育し、カラムクロマト精製により高純度なネコフォリスタチンを採取することを特徴とするネコフォリスタチンの製造方法である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のネコフォリスタチンは、天然型および遺伝子組換え型のいずれをも包含するものであって、以下の(1)〜(3)の機能を有するものである。
(1)ネコの下垂体に作用して卵胞刺激ホルモンの基礎分泌を特異的に抑制する。
(2)黄体形成ホルモンの基礎分泌を抑制しない。
(3)アクチビンとの結合能を有しそのアンタゴニストとしての能力を有する。
【0018】
ここで、アクチビンとの結合能を有するか否かは、アクチビンをラベルしたアクチビンのバインディング・アッセイによって確認することができる。なお、アクチビンはネコ慢性腎疾患において過剰発現するものと予想される。
【0019】
ネコフォリスタチンのアミノ酸配列は常法により決定することができ、配列番号1および配列番号2の配列はその一例である。配列番号2の配列のC末端の27アミノ酸残基を削除したものが配列番号1の配列となっている。上記の(1)〜(3)の機能が実質的に保持される限り、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列中の1もしくは数個のアミノ酸が欠失しても、他のアミノ酸に置換されても、あるいは1もしくは数個のアミノ酸が付加されてもよい。
【0020】
本発明のネコフォリスタチンをコードするDNA配列のうち好ましいものは、上記配列番号1または配列番号2をコードするものであり、特に配列番号3、4もしくは5で表されるDNA配列、またはこれらとハイブリダイズするDNA配列である。
【0021】
本発明のネコフォリスタチン蛋白質をコードするDNAを組み込んだ組換えベクターは例えば次のようにして製造することができる。すなわち、ネコの細胞からポリ(A)RNAを抽出した後、cDNAを合成し、マウスやヒトのフォリスタチンをコードする遺伝子配列を元にしたプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(以下PCRと略す)を行うことによって、ネコフォリスタチン活性を示す遺伝子をクローニングすることができる。また合成したcDNA組換え体よりファージライブラリーを作製し、PCRにより得られた2つの遺伝子断片とプラークハイブリダイゼーションを行うことにより、ネコフォリスタチンをクローニングすることができる。
【0022】
ネコの臓器や細胞、ネコの腎細胞由来のCRFKなどよりRNAを得る方法としては、通常の方法、例えばポリソームの分離、ショ糖密度勾配遠心や電気泳動を利用した方法があげられる。ネコ細胞からRNAを抽出する方法としては、グアニジン・チオシアネート処理後CsCl密度勾配遠心を行うグアニジン・チオシアネート−塩化セシウム法(参考文献1)、バナジウム複合体を用いてリボヌクレアーゼインヒビター存在下に界面活性剤で処理した後フェノール抽出を行う方法(参考文献2)、グアニジン・チオシアネート−ホット・フェノール法、グアニジン・チオシアネート−グアニジン塩酸法、グアニジン・チオシアネート−フェノール・クロロホルム法、グアニジン・チオシアネートで処理した後、塩化リチウムで処理してRNAを沈殿させる方法などの中から適当な方法を選択して行うことができる。
【0023】
得られたRNAから塩化リチウム/尿素法、グアニジン・イソチオシアネート法、オリゴdTセルロースカラム法等によりmRNAを単離し、得られたmRNAから逆転写酵素やプライマーによるDNAポリメラーゼを用いてcDNAを合成する。
【0024】
このcDNAを鋳型として、マウスやヒトの塩基配列を基にしたプライマーを用いてPCRを行うことによりネコフォリスタチン遺伝子をクローニングできる。また合成したcDNAをλファージベクターに連結した後、in vitroでλファージのコート蛋白質などと混合することによりパッケージングし、その生成されたファージ粒子を宿主となる大腸菌に感染させる。λファージが感染した大腸菌は溶菌し、1個1個のクローンがプラークとして回収される。このプラークを適当なフィルターに転写し、予め標識したオリゴマーもしくはPCRで得られた遺伝子をプローブとしてハイブリダイゼーションによりネコフォリスタチン遺伝子をクローニングすることができる。
【0025】
宿主としては原核生物もしくは真核生物を用いることができる。原核生物の例としては大腸菌を用いることができる。真核生物としては例えば、動物細胞や昆虫細胞などを使用することができる。
【0026】
発現ベクターとしては、プラスミド、ファージミド、コスミド、ファージ、レトロウイルス等を使用できる。発現ベクター中のプロモーター及び薬剤選択マーカーは宿主細胞に依存して選択される。例えば細菌ではlacプロモーター、昆虫細胞ではバキュロウイルスプロモーター、動物細胞ではSV40プロモーター等である。また形質転換体の培養は常法に従って行うことができる。
【0027】
産生されたネコフォリスタチンは、還元条件下、SDS−PAGEを行うことにより、その分子量は約35,000〜32,000である。
【0028】
本発明では、ネコフォリスタチンの精製に際し陽イオン交換担体を用いることが、より好ましくはさらに引き続いてヘパリン担体を用いることが重要である。両カラム担体を使用することで、より高純度のネコフォリスタチンを得ることができる。
【0029】
ネコフォリスタチンの分離・分画に使用される陽イオン交換担体ととしては、アガロース、セルロース、セファロース、合成ポリマーゲルなどに、親水性のスペーサーを介して、化学的に安定なエーテル結合によって陰イオン官能基を導入したものが挙げられる。好ましくは、SP Sepharose(Amersham−Pharmacia製)などが用いられる。また、ヘパリン担体としては、アガロース、セルロース、セファロース、合成ポリマーゲルなどに、親水性のスペーサーを介して、化学的に安定なエーテル結合によってヘパリン基を導入したものが挙げられる。好ましくは、Heparin Sepharose(Amersham−Pharmacia製)などが用いられる。
【0030】
本発明における精製工程では、ネコフォリスタチンを含む溶液を陽イオン交換担体、およびヘパリン担体に接触させ、担体への吸着物を溶出剤で溶出させる方法が好ましく採用される。
【0031】
陽イオン交換担体からの溶出は、塩濃度を徐々に上昇させリガンドである陽イオン交換基とのイオン的相互作用を打ち消し、かつ吸着したタンパクのイオン強度の違いによって分離・分画することができる。また、ヘパリン担体からの溶出は、塩濃度を徐々に上昇させリガンドであるヘパリン基との特異的相互作用を打ち消し、分離・分画することができる。一般にフォリスタチンに限らずタンパク質を各種生産系で生産した場合、培養液中の培養液組成物や血清中のタンパク質など、不純物が混在する。これら成分からネコフォリスタチンのみを分離することは容易でないと考えられる。本発明で使用される陽イオン交換担体およびヘパリン担体は、溶出剤の濃度の差により、培養液中の不純物からネコフォリスタチンを分離・分画できる。
【0032】
なお、陽イオン交換担体およびヘパリン担体を用いた精製操作における、溶出剤の組成、液量などは特に限定されるものではなく、最適な分離条件は存在する夾雑タンパク質、有用タンパク質各成分の量、およびカラムの寸法などに応じて適宜決定される。
【0033】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0034】
実施例1
ネコフォリスタチン遺伝子のクローニング
(1)ネコcDNAのファージライブラリー調製
ネコ腎由来細胞CRFKを150cm2フラスコで3〜4日培養し、5×107cellsの細胞沈殿物を調製した。mRNA isolation kit(Strtagene社)によりmRNAを調製した。すなわち、CRFKの沈殿物にグアニジン・チオシアネートを含むdenaturing solutionを加え、21Gニードルで混入したDNAをせん断した。次にelution bufferを加え遠心を行い、その上清を得た。得られた上清をオリゴdTセルロースカラムにアプライし、カラムの洗浄を行った後、予め68℃に加温しておいたelution bufferによりポリ(A)RNAを溶出した。次に得られたポリ(A)RNAを用いて、ZAP−DNA Synthesis kit(TOYOBO社)によりcDNAファージライブラリーを合成した。すなわちkitのマニュアルに従い2本鎖cDNAを合成し、さらにEcoRI/NotIアダプターを連結した。次にUni−ZAP XR vectorに連結した後、GigapackIIIpackaging extract(stratagene社)を用いてパッケージングを行い、組換え体ファージライブラリーを作製した。
【0035】
(2)ネコフォリスタチン遺伝子のクローニング
ヒトフォリスタチンのN末端およびC末端の塩基配列(参考文献3)をもとに、配列番号6と配列番号7の2種類のプライマーをDNAシンセサイザーにて合成した。上記(1)のCRFKcDNAを0.5mLのマイクロチューブに1μLを入れ、各プライマー20pmol、20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)、1.5mM MgSO4、25mM KCl、50μM各dNTP、KODを添加し、全量50μLとした。DNAの変性条件94℃,30秒、プライマーのアニーリング条件を60℃,30秒、プライマーの伸張条件を68℃,1分の各条件でBio−RAD社製DNAサーマルサイクラーを用いて、35サイクル反応させた。これを1%アガロースゲルにて電気泳動し、約900bpのDNA断片を常法(参考文献4)に従って調製した。
【0036】
このDNA断片をpUC108(アマシャムファルマシア社)にDNA Ligation kit Ver.2を用いて連結した。これを用いて常法に従って大腸菌を形質転換し、得られた形質転換体よりプラスミドDNAを常法により調製した。次にこのプラスミドにPCR断片が挿入されていることを前述と同条件のPCRおよびEcoRIおよびHindIIIによる制限酵素処理により確認し、ABI PRISM 377XL(Applied Biosystems)により、BigDye Terminator Cycle Sequencing法(参考文献5)でネコフォリスタチンと思われるDNAの塩基配列を決定した。この配列を配列番号3に示す。また、この配列を含む、900bpのDNA断片に日本ロッシュ社製のDIG DNA Labeling kitを用いてDIG標識し、プローブを作製した。上記(1)で作製した組換え体ファージライブラリーを大腸菌XL1Blue MRF’上でプラークとして形成させ、日本ロシュ社製のナイロンメンブレンに常法に従って転写した。転写したナイロンメンブレンは、DNAの固定を行った後、2mg/mLプロテイナーゼK溶液中に浸し、37℃1時間インキュベートした。さらにそのナイロンメンブレンを、最終濃度20ng/mLになるようにプローブを加えたDIG EASY HYB(日本ロシュ社製)中に入れ、42℃で1晩インキュベートを行い、ハイブリダイズさせた。ハイブリダイズしたナイロンメンブレンを、2×SSC(30mMNaCl、3mMクエン酸ナトリウム)、0.1%SDS中5分、2回洗浄を行い、さらに0.5×SSC(7.5mMNaCl、0.75mMクエン酸ナトリウム)、0.1%SDS中65℃下、15分、2回洗浄を行った。ナイロンメンブレンをCDP−Starによる化学発光により陽性プラークの検出を行った。すなわち、洗浄したナイロンメンブレンをブロッキング溶液(日本ロシュ社製)に室温下30分以上インキュベートした後、アルカリフォスファターゼ標識抗ジゴキシゲニン抗体(日本ロシュ社製)を含むブロッキング溶液内に入れてさらに30分インキュベートした。抗体溶液を捨て、洗浄バッファー(100mMマレイン酸、150mMNaCl、0.3%Tween20)で15分間、各2回ずつナイロンメンブレンを洗浄し、検出バッファー(100mMTris−HCl(pH9.5)、100mMNaCl)内に溶解させたCDP−Starをナイロンメンブレンに処理し、5分間室温で、さらに15分間37℃下でインキュベートした。得られたナイロンメンブレンをX−ray Filterに露光し、陽性シグナルを有するプラークを常法に従い再スクリーニングした。3回のスクリーニングの結果、陽性シグナルを有する1個の組換え体ファージを得た。この組換え体ファージよりin vivo exision法により、組換えプラスミドを含む大腸菌を得た。この大腸菌を培養し、常法に従いプラスミドを調製し、ABI PRISM 377XL(Applied Biosystems)により、BigDye Terminator Cycle Sequencing法(参考文献5)でネコフォリスタチンDNAの塩基配列(配列番号5)を決定した。
【0037】
得られたネコフォリスタチン遺伝子のホモロジー検索の結果、Equus caballus(ウマ):95%、O aries(ヒツジ):94%、Bos taurus(ウシ):94%、Homo sapiens(ヒト):94%、Rattus norvegicus(ラット):91%、Mus musculus(マウス):90%であった。
【0038】
実施例2
ネコフォリスタチンの生産
(1)ネコフォリスタチン組換えウイルスの調製
発現ベクターpVL1392を制限酵素BglII及びEcoRIで切断し、ウシ由来アルカリフォスファターゼで末端を脱リン酸化し、調製した。一方、ネコフォリスタチンDNA断片は配列番号8と配列番号9の2種類の切断部位(BglII及びEcoRI)を付加したプライマーを作製し、実施例1(2)で調製したネコフォリスタチンDNAを鋳型として、DNAの変性条件94℃,30秒、プライマーのアニーリング条件を60℃,30秒、プライマーの伸張条件を68℃,1分の各条件でBio−RAD社製DNAサーマルサイクラーを用いて、35サイクル反応させた。エタノール沈殿後、制限酵素で切断し、1%アガロースゲル電気泳動にて約1kbpのDNA断片を調製した。
【0039】
このDNA断片をT4 polynucleotide kinaseによりリン酸化した後、pVL1392にDNA Ligation kit Ver.2を用いて連結した。これを用いて常法に従い大腸菌に形質転換し、得られた形質転換体よりプラスミドDNAを常法により調製した。次にこのプラスミドとAcNPVと共に昆虫細胞Sf9に常法に従いco−transfectionを行い、ネコフォリスタチンを発現する組換えウイルスを得た。
【0040】
さらに、作製した発現プラスミド中のネコフォリスタチンDNAの塩基配列を確認した。
【0041】
(2)昆虫細胞Sf9でのネコフォリスタチンの発現
上記(1)で得られた組換えウイルスを27℃下培養したSf9に感染させた。27℃下5日間培養し、培養上清を回収した後2,000G,10分遠心しその上清を回収した。
【0042】
(3)ネコフォリスタチンの活性測定
上記(2)で生産されたネコフォリスタチンの活性測定は以下のようにして行った。K562細胞を用いてアクチビンAによるヘモグロビン放出作用の抑制を確認した(参考文献6)。
【0043】
96穴プレートにK562細胞(2×105cells/mL)を、10%FBSを含むRPMI−1640培地により、アクチビンA非存在下または存在(20ng/mL)下、ネコフォリスタチン非存在下または存在下4日間培養を行った。次に細胞をPBSにより2回Washし、滅菌した水50uLに懸濁し、遠心操作により上清画分40μLを得た。得られた上清に0.5mg/mL O−phenylenediamine と0.03%過酸化水素を含むクエン酸緩衝液200μLを加え、暗下15分処理した。その後2.5M硫酸を50μL加え、490nmの吸光度の測定を行った。その結果、ネコフォリスタチン存在下有意にヘモグロビン産生の抑制が見られた(図1)。
実施例3
ネコフォリスタチンの精製法
(1)陽イオン交換担体によるネコフォリスタチンの精製
実施例2(2)で得られた培養上清を、予め20mMリン酸緩衝液で平衡化した陽イオン交換担体であるSP Sepharoseに導入し、再度20mMリン酸緩衝液を用いて洗浄を行った。次に0〜1M塩化ナトリウムを含有する20mMリン酸緩衝液を用いてステップワイズ法による溶出を行い得られた溶出液を用いてイムノブロッティング並びに実施例2(3)による方法で活性測定を行ったところ、0.5M塩化ナトリウムを含む画分でネコフォリスタチンを検出した。
【0044】
(2)ヘパリン担体によるネコフォリスタチンの精製
上記で得られた溶出液を、予め0.2M塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液で平衡化したヘパリン担体に導入し、再度0.2M塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液を用いて洗浄を行った。次に0.2M〜1M塩化ナトリウムを含有する20mMリン酸緩衝液を用いてステップワイズ法による溶出を行い得られた溶出液を用いてイムノブロッティング並びに実施例2(3)による方法で活性測定を行ったところ、0.8M塩化ナトリウムを含む画分でネコフォリスタチンを検出した。
【0045】
参考文献
1.Chirgwinら:Biochemistry 1979. 18. 5294−5304
2.Bergerら:Biochemistry 1979. 18. 5143−49
3.Uenoら:Proc Natl Acad SciUSA.1984. 84. 8282−86
4.Molecular Cloning .Cold Spring Harbor Laboratory.New York.1982
5.Takabeら:Mol Cell Biol.1988 .8 .466−472
6.Jennieら:Endcrinology.1993.132.2732−34
【0046】
【発明の効果】
本発明によりネコフォリスタチンを効率良く産生させることができる。
【0047】
【配列表】
【0048】
【配列表フリーテキスト】
配列番号6、7、8および9:合成
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、ネコフォリスタチンを用いたアクチビンAによるヘモグロビン放出作用の抑制を示す図である。
Claims (10)
- ネコの下垂体に作用して卵胞刺激ホルモンの基礎分泌を特異的に抑制し、黄体形成ホルモンの基礎分泌を抑制せず、アクチビンとの結合能を有しそのアンタゴニストとしての能力を有するネコフォリスタチン。
- 配列番号1もしくは配列番号2で表されるアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなる請求項1に記載のネコフォリスタチン。
- 請求項1または2に記載のネコフォリスタチンをコードするDNA配列。
- 配列番号3、4もしくは5で表されるDNA配列、または該DNA配列からなるDNAとハイブリダイズするDNA配列。
- 請求項3または4記載のDNA配列を含む組換えベクター。
- 請求項5記載の組換えベクターにより宿主細胞を形質転換してなる形質転換体。
- 請求項6記載の形質転換体を培養または飼育し、ネコフォリスタチンを採取することを特徴とする、ネコフォリスタチンの製造方法。
- 請求項7記載の形質転換体を培養した培養液中に含まれるネコフォリスタチンを、陽イオン交換担体に接触させ、該担体への吸着物を溶出剤で溶出させることを特徴とするネコフォリスタチンの高純度製造方法。
- 請求項8記載の溶出されたネコフォリスタチンを含む溶液を、ヘパリン担体に接触させ、該担体への吸着物を溶出剤で溶出させることを特徴とするネコフォリスタチンの高純度製造方法。
- 溶出剤が塩化ナトリウム溶液である請求項8または9に記載のネコフォリスタチンの高純度製造方法。
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-
2003
- 2003-04-24 JP JP2003119534A patent/JP2004105166A/ja active Pending
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