JP2004103571A - 誘電体膜 - Google Patents

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Abstract


【課題】Si基板上に形成されるCeO2 膜について、結晶性の高いCeO2 膜を提供する。
【解決手段】 酸素とCeの供給を交互に繰り返すことにより、Ce原子層とO原子層とを交互に積層することができ、その結果、(001)Si基板17の上に良好な結晶性を有する(001)CeO2 膜30を形成することができる。MEEモードによる単原子層を交互に形成すれば、ダブルドメインのない高い結晶性を有する(001)CeO2 膜を容易に形成することができる。
【選択図】図3

Description

 本発明は、金属Ceと酸素とを原料として、Si基板上に結晶性の高いCeO2 膜を有する誘電体膜に関する。
 近年、Si基板上に形成されるC−MOSデバイスの微細化、集積化の進展には著しいものがある。そして、それに伴いMOSFETの一部を構成するゲート絶縁膜の薄膜化も強く要請されている。ゲート絶縁膜の薄膜化が要請されるのは、以下の理由による。
 まず、省電力を目指して動作電圧が低下しつづけているにも関わらず、素子動作に必要な電荷量はほぼ一定であってさほど低減されていない。Q=CV(Q:電荷量、C:静電容量、V:電圧)の関係により、電荷量Qがほぼ一定でありながら、電圧Vが低下しつづけるためには、ゲート絶縁膜に保持することが可能な静電容量Cを上げざるを得ない。ここで、C=(εr ・S)/d(εr :比誘電率、S:キャパシタ面積、d:電極間隔)であるので、静電容量Cを増大するためには、まず、現在SiO2 により構成されているゲート絶縁膜の膜厚dを薄くすることによって実現できる。そのために、現在では10nm〜15nmあるいは10nm以下というゲート絶縁膜の薄膜化が試みられている。
 しかし、ゲート絶縁膜の薄膜化を進めると、ゲート絶縁膜の破壊耐圧の悪化や、リーク電流の増大という不具合が生じるおそれが出てきた。
 そこで、最近では、ゲート絶縁膜をSiO2 よりも高い比誘電率εr を有し、しかも、他の電気的特性もSiO2 に劣らない特性を有する絶縁膜材料が探索されている。すなわち、比誘電率εr を高くすることにより、厚みdをある程度厚くしても静電容量Cを高く維持できるので、低電圧化されても必要な電荷量Qを保持できるからである。このような観点から、現行のSiO2 ゲート絶縁膜と同等の性能を得ることができ、かつ、高い比誘電率と破壊耐圧を持ち、界面準位やリーク電流が小さい新しい絶縁材料からなる絶縁膜のSi基板上への形成方法が検討されつつある。
 また、別な要請から、Si基板上にSiO2 とは異なる絶縁体材料による絶縁膜の形成を行なう試みもなされている。例えば非特許文献1に開示されている例では、電界効果型トランジスタのゲートに強誘電性を持つ薄膜を用いてメモリー効果のあるトランジスタを実現することを目的とした研究について示されている。その検討の一つとして、ここでは、強誘電性を持つPbZr1-x Tix3 (PZT)からなる薄膜(PZT膜)の形成を試みている。しかしながら、このPZT膜は直接Si基板上に形成することが困難であるので、PZT膜とSi基板との間にCeO2 などからなるバッファ層となる絶縁膜を積層している。
 また、強誘電体材料を始めとしてその他の誘電体(例えば超伝導体)膜をSi基板上に形成するためにも、前述のゲート絶縁膜と同じように、比誘電率や破壊耐圧が高く、界面準位やリーク電流が小さいという特性を実現できるような新しい絶縁体膜のSi基板上への形成方法が検討されつつある。
 そして、それらの検討においても、CeO2 膜はバッファ層として非常に注目されている絶縁体材料の一つである。これは以下の理由による。CeO2 の格子定数は他の材料に比べてSiの格子定数に近く、CeO2 とSiとの格子不整合率が−0.37%(aCeO2=5.411Å、aSi=5.431Å)しかないからである。さらに、CeO2 の結晶構造は螢石型であり、ダイヤモンド構造を持つSi基板に連続して結晶格子をつくることができる。すなわち、Siでは全ての原子が4配位であるのに対して、CeO2 の場合は酸素原子が4配位、Ce原子が8配位となっているという違いはあるが、面心立方格子を基本とした立方晶系であるという点で両結晶は共通しており、両結晶は破綻なく積層することができる(酸素とCeの構成比は2:1になっている)。従って、Si基板上に非常に高い結晶性の薄膜を作製することが可能となり、さらにその上に重ねて高い結晶性を持つ強誘電体膜や超伝導体膜を形成しやすくなる。また、CeO2 はその比誘電率が26前後と高いので、SiO2 に代わるあたらしいゲート絶縁膜材料としての充分な可能性も持っている。
 非特許文献1以外にもSi基板上にCeO2 を形成することに関しては様々な試みが行われており、その代表例を幾つかあげると以下の文献がある。
 非特許文献2に開示されている例では、電子線(ELECTRON BEAM :EB)蒸着装置を備えた分子線エピタキシ(MOLECULAR BEAM EPITAXY:MBE)装置中において、ペレット状のCeO2 焼結体にEBを照射することによってCeO2 を蒸発させ、Si基板上に結晶性の高いCeO2 薄膜を形成している。この時、CeO2 の蒸発と同時に酸素ガスを供給し、CeO2 薄膜の酸素欠損による結晶性の低下を防いでいる。なお、上述の非特許文献1にあるCeO2 膜の形成もこれと同じ方法で行われている。
 非特許文献3に開示されている例では、非特許文献1,2の方法とは異なる薄膜形成方法を用いている。ここでは、金属Ceからなるターゲットを装着した反応性スパッタリング装置を用い、酸素ガスを供給しながらターゲット内のCe原子をスパッタし、Si基板上でCeと酸素とを反応させることによってSi基板上に結晶性の高いCeO2 薄膜を形成している。
 非特許文献4に開示されている例では、上記各方法とはさらに異なる方法によってCeO2 膜を形成している。ここでは、外部からArFによるエキシマレーザー光を導入することが可能なMBE装置を用い、内部に置かれたペレット状のCeO2 焼結体にこのレーザー光を照射してCeO2 を蒸発させ、それと同時に酸素ガスを導入することにより、Si基板上に結晶性の高いCeO2 薄膜を形成している。
JAPAN JOURNAL OF APPLIED PHYSICS 35, 4987,(1996) JAPAN JOURNAL OF APPLIED PHYSICS 1765,(1993) JAPAN JOURNAL OF APPLIED PHYSICS 270, 1994 APPLIED PHISICS LETTERS 2027, (1991) JAPAN JOURNAL OF APPLIED PHYSICS 31, L1736, (1992) JAPAN JOURNAL OF APPLIED PHYSICS 29, L1199, (1990)
 しかしながら、上記各文献における結晶性CeO2 薄膜の形成においては以下に示すような幾つかの不具合がある。
 ただし、以下の記載においては、(001)面という時は結晶学上{001}面として表される結晶面群を代表的に表すものとする。(011),(111)という時も同様である。また、(001)基板又は膜,(011)基板又は膜,(111)基板又は膜という時は、それぞれ主面が(001)面,(011)面,(111)面である基板又は膜をいうものとする。
 まず、非特許文献1,2にある例では、ペレット状のCeO2 をEBで加熱させて蒸発させることにより、酸素とCeが同時に供給されてしまう。すなわち、Si基板表面にはCeと酸素とが同時に到達することになり、CeO2 と同時にSiO2 も形成されてしまう。SiO2 が形成されてしまった場合、SiO2 は一般にアモルファス構造を有しているので、界面構造の結晶性の急峻性が低下し平坦性も悪くなる。また、SiO2 膜の形成後、素子として動作させようとした場合、せっかく比誘電率が高いCeO2 膜を形成しているにも関わらず、加えた電圧がより低い比誘電率を持つSiO2 膜に集中することになる。その結果、ゲート絶縁膜としての機能を確保するに足る電荷量を蓄積することが困難である。さらに、このようなSiO2 が混在したCeO2 膜を強誘電体膜や超伝導体膜のバッファ層として用いた場合にも、必要な電圧を強誘電体層や超伝導体層に印加することが困難である。
 非特許文献2にある例では、(111)Si基板の上には(111)CeO2 膜を形成することが可能であるが、(001)Si基板の上には(001)CeO2 膜が形成できず、(011)CeO2 膜しか形成されていない。すなわち、いくら格子定数が近くとも、両者の面方位がくい違っているために、格子歪みの発生を抑え、欠陥の発生を抑える効果が全く期待できない。しかも、実際には、同じ(011)CeO2 膜であってもSi基板の主面上で互いに90°の角度で回転対称となる2つの結晶が混在した多結晶構造となっているので、平滑で均一な単結晶薄膜を得ることは困難である。
 非特許文献5は、この理由について解説している。すなわち、高真空中で形成されるSi結晶の表面の(001)面上の2×1再構成構造上に現れるダングリングボンド(末端未結合手、浮遊未結合手)と、CeO2 結晶の(011)面内の酸素原子の位置とが近いので、両者の(001)面同士で連続するよりも、Si結晶の(001)面とCeO2 の(011)面とが連続する方が安定性が高いことによると考えられている。
 非特許文献4にある例では、(111)Si基板のに非常に結晶性の高い(111)CeO2 膜を形成することが可能であることが示されている。この例では、結晶成長中に反射型高エネルギー電子線回折(Reflection High Energy Electron Diffraction :RHEED)観察において、その回折パターン強度の振動(RHEED振動)が見られる。このRHEED振動の発生は、結晶の成長が二次元的であり、高い表面平滑性を持ち、層毎に進行しているということを表している。断面TEMによる観察でも大きな欠陥の存在はほとんど観測されず、SiとCeO2 の界面でのSiO2 の形成も見えない。しかしながら、この例でもSi結晶の(001)面上でのCeO2 結晶の(001)面の形成は報告されていない。
 非特許文献6は、このことについて開示している。すなわち、この系においてもCeと酸素が同時に供給されることになるので(001)Si基板の上には、(011)CeO2 膜が形成されてしまうのである。
 非特許文献3にある例においても、非特許文献2,4と同様に、Si基板の(111)面上に非常に結晶性の高いCeO2 の(111)を形成している。この例にあげられている方法では、供給原料として金属Ceを用いているのでSi基板界面にCeだけを供給してSiO2 の形成を抑制することに成功している。しかしながら、高い結晶性のCeO2 膜を得るために必要となる金属Ce単独の層の厚さが5nmと厚い。従って、トランジスタのゲート絶縁膜としての利用を考える場合、厚い金属層が存在してしまうことになり、素子の動作上重大な問題がある。また、やはりこの例においても(001)Si基板上での(001)CeO2 膜の形成は報告されていない。その理由は、同文献中には記載されていないが、5nm程度の厚い金属Ce層が存在している場合には、Si基板の結晶構造に関する情報を伝達して同じ面方位を持つCeO2 結晶を形成することが困難であることによると考えられる。
 本発明の目的は、Si基板の上に結晶性の高い単結晶のCeO2 膜を形成することにある。
 まず、本発明に係るCeO2 膜の形成方法に到達するために行なった考察について説明する。
 (001)Si基板の上には(011)CeO2 膜しか形成できず、(001)CeO2 膜が形成できない理由についていは、上述の非特許文献5に開示されている。その詳細について、以下に説明する。
 図8は、Si基板の(001)面上へのCeO2 結晶のエピタキシャル状態を示す図であって、非特許文献5中の図2に相当する図である。同図において、大きな白丸はCe原子1を、中ぐらいの斜線付丸はSi原子2を、小さな白丸は酸素原子3をそれぞれ示す。Si基板の表面には単位胞4を有するSi結晶の(001)面が現れている。この単位胞4の1つの辺は[100]方向に平行であり、単位胞4の他の辺は[010]方向に平行である。言い換えると、図8の紙面をSi結晶の結晶面(001)に平行な面と規定すると、Si結晶のx軸,y軸は紙面内に存在しており、Si結晶のz軸は紙面に垂直である。一方、Si結晶の(001)面と整合するCeO2 結晶としては、同図に示す単位胞5又は単位胞6で表される2つの結晶が同じ確率で生成される。各単位胞5,6の各1つの辺は[100]方向(つまりx軸方向)に平行であり、他の辺は[011]方向(つまりy軸に対して45°傾いた方向)に平行である。そして、単位胞5のx軸と単位胞6のx軸とは互いに直交しており、単位胞5の[011]方向と単位胞6の[011]方向とは互いに直交している。言い換えると、単位胞5と単位胞6とは図8の紙面に垂直な軸の回りに90°だけ回転移動させた関係にある。なお、各単位胞5,6のy軸及びz軸は図8の紙面から45°傾いている。
 同図に示すように、CeO2 の(011)面においては、O原子1がSi結晶中のSi原子列の中間部分の上方に位置している。Si結晶の格子構造の[100]方向に沿って一次元的に見た場合、つまり紙面に垂直な方向から見た場合、このO原子1の位置は、Si基板の最表面の2×1再構成構造に現れるダングリングボンドの位置と非常に近い。その結果、Si基板上に同時に供給されたCeとO(酸素)とは、CeO2 結晶の(001)面を形成するよりも、CeO2 の(011)面を形成しやすいことになる。そして、Si基板上にCeO2 結晶の(011)面が形成される場合、同図に示すように、単位胞5と単位胞6という互いに回転対称関係にある2つの結晶構造が同等の確率で現れることになる。従って、Si基板上にCeO2 結晶のエピタキシャル成長を行なった場合、2つの異なる方位を有する2つの結晶がドメインを作って混在し、全体として多結晶のCeO2 膜が形成される。
 図9は、上記非特許文献5に記載されているもので、CeO2 膜に2つのドメインが混在する状態を高分解能走査型トンネル電子顕微鏡(High Resolution Transmission Electron Microscopy:HRTM)で観察して得られた顕微鏡写真図である。同図に示すように、同図の横方向に平行なx軸[100]を有するドメインCrAと、同図の縦方向に平行なx軸[100]を有するドメインCrBとが混在しており、各ドメインCrA,CrBのサイズは10nm〜50nmである。
 図7は、(100)Si基板8の上に形成された(011)CeO2 膜9中に2種類のCeO2 結晶のドメインが形成されている状態を示す模式断面図である。
 次に、(111)Si基板の上に(111)CeO2 結晶を形成する過程を考える。この時のSi結晶とCeO2 結晶の構造については、上述の非特許文献6に開示されている。図10(a)〜(c)は、同文献中の図4に相当する図であって、Si基板の(001)面,(111)面及び(110)面にそれぞれエピタキシャル成長するCeO2 結晶の方位を示す図である。図10(a)は、非特許文献5と同様に、Si基板の(001)面上に膜面の方位が(011)面であるCeO2 結晶の2種類のドメインが形成されることを表している。一方、図10(c)は、(011)Si基板の上には(011)CeO2 膜と(111)CeO2 膜とが形成可能であることを表している。
 ここで、図10(b)に示すように、(111)Si基板の上には(111)CeO2 膜が成長しやすく、格子不整合も小さい。このとき、CeO2 結晶の構造は、厳密には基板面と垂直な方向にCeのみからなる層と酸素のみからなる層が交互に積層されたものとなっているが、両層の層間距離は非常に近いので、近似的には共通の面内に2つの原子が混在しているとみなすことができる。したがって、Ce原子とO原子という2種類の原子のうち一方の種類の原子を排除して他方の種類の原子のみからなる層を形成するエネルギーは、いずれの種類の原子の層についても大きくない。すなわち、Si基板上にCe原子とO原子とが同時に供給される場合にも、(111)CeO2 膜を形成することができ、これとは異なる面方位を有するCeO2 膜が形成されることはないといってよい。
 しかるに、(111)面はダイヤモンド構造を有する結晶中の最稠密面であるので、(111)面上には最も多くのSiダングリングボンド(未結合手)が存在している。このSi基板の表面上にO原子とCe原子とを同時に供給すると、Si基板の表面上にCeO2 結晶だけでなくSiO2 層も形成されることになる。従って、結晶性の悪化や比誘電率の低下を招くおそれがある。
 なお、非特許文献1,3,4,6では、形成したCeO2 薄膜の結晶性をX線によって評価している。それらのうちで最も小さな半値全幅(Full Width of Half Maximum:FWHM)の回折ピークを示しているのは、非特許文献4のものであるが、それでも半値全幅が3500 arc sec. と大きい。また、他の文献で得られている半値全幅はそれを大きく上回る。これは、Si結晶とCeO2 結晶との格子不整合率が−0.37%しかないことを考えると非常に悪い値であると考えられる。例えば、GaAsに対して0.26%の格子不整合率(aGaAs=5.6533、aZnSe=5.668)を持つZnSeのFWHMが300 arc sec. 以下である(ただし、2θ軸固定,ω軸走査のロッキングカーブの場合)。各文献で得られている半値前幅の値はω−2θ(θ−2θ)両軸走査によって得られている値であるので、その半分がω軸走査の値と等価であるとしてもおよそ6倍の違いがある。すなわち各文献において形成されているCeO2 膜は、TEMを用いて観察されるような局所的なレベルでは平滑で欠陥が少ないように見えていても、X線ビームのスポット径の範囲に亘って格子の乱れ・欠陥等不規則性が大きく、化合物半導体で用いられる結晶と比較した場合、その結晶性はかなり劣ると考えられる。このようにCeO2 膜の結晶性が低いということも、両者の間にSiO2 層を形成してしまう要因の一つと考えられる。すなわち、すでに形成されたCeO2 層で格子が乱れている場合、その部分を酸素(O)原子が透過しやすくなり、Si基板の表面に供給される酸素原子の量が増える。また、Si基板の表面部分においても直上のCeO2 層の結晶格子が乱れた部分にはダングリングボンドが多く存在するので、そこに酸素が結合しやすくなってSiO2 層の形成が促進される。
 本発明者は、以上の考察から、(001)Si基板の上にCeと酸素とを交互に供給し、しかもCe及び酸素の供給量を制御することで、(001)Si基板の上に単原子層のCe原子層とO原子層とを積層していけば、ダブルドメインを有する(011)CeO2 膜は形成されることがなく、単結晶の(001)CeO2 膜を形成することができることを想到するに至った。すなわち、螢石構造を有する(001)CeO2 膜の結晶成長においては、結晶格子中でCe原子だけが存在する層と酸素原子だけが存在する層とが等間隔で交互に繰返し現れることに着目したのである。
 以下、以上の考察から導かれた本発明について説明する。
 本発明の誘電体膜は、(001)Si基板と、(001)Si基板上に形成された(001)CeO2 膜とを備えている。
 (001)Si基板と(001)CeO2膜との間には、(001)Ce層が挟まれていることが好ましい。
 強誘電体膜をさらに備えている場合には、(001)CeO2 膜が強誘電体膜と(001)Si基板との間に挟まれているか、(001)CeO2 膜および(001)Ce層が強誘電体膜と上記(001)Si基板との間に挟まれていることが好ましい。
  (第1の実施形態)
 次に、本発明の誘電体膜の形成方法及び誘電体膜の形成装置に関する第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。
 図1は、本発明の第1の実施形態に係るK−セルを備えた誘電体膜の形成装置であるMBE装置の構成を概略的に示す断面図である。このMBE装置は、MBE成長又は成膜を行なうための真空容器13と、真空容器13内を減圧するための真空ポンプ16と、CeO2 薄膜の形成用の金属Ceを保持したK−セル12と、真空容器13内へのCeの供給量を制御するためのシャッター11と、真空容器13内への酸素ガスの供給量を制御するためのガスバルブ15とを備えている。そして、図示されていない試料取り付け部に被処理物である基板14を取り付けて、MBE成長又は成膜を行なうように構成されている。
 そして、シャッター11の開閉制御によっていわゆる分子線状のCeを供給することが可能に構成されている。また、真空容器13にK−セル12と共に装着されたガスバルブ15の制御により、真空容器13に連続的にかつCeとは個別に酸素を供給することが可能であるとともに、酸素の供給量を非常に短く規則正しいパルス状に(いわゆる分子線状に)制御することも可能である。すなわち、ガスバルブ15には、電磁弁が備えられており、この電磁弁の開閉は0.1秒以内で行なうことが可能であり、かつ、電磁弁を閉鎖した場合にはそのリークレートを1×10-5cc/sec.以下に抑制することが可能である。
 次に、MBEの手順について説明する。CeO2 薄膜の形成に先立って、K−セル12内に保持され真空容器13に装着された金属Ceが加熱される。金属Ceの融点は860℃程度であり、K−セル12は1200〜1300℃程度の温度まで加熱できるように構成されている。本実施形態においては、K−セル12は実際の薄膜形成に使用する温度よりも高い温度まで昇温され、数10分から数時間の間その温度に保持される。この時、基板14はMBE装置内にまだ装着されていない。その後、K−セル12の温度が非使用時の温度まで下げられ、金属Ceの蒸発・昇華がほとんど起こらない状態で数時間以上保持される。MBE装置内は、真空ポンプ16によって常時排気されている。この操作により、金属Ce中の不純物や表面付近の汚染物およびK−セル12に付着した汚染物を蒸発させることができる。その結果、実際に薄膜を形成するに際しては、不純物や汚染物の大部分が除去された高純度の金属Ceを用いてCe原子を真空容器13内に供給することができ、これにより、後述のように結晶性の良好なCeO2 薄膜を形成することができる。
 一方、被処理物である基板14は、以下のように準備される。まず、Si基板上にLOCOS膜などが形成された基板14が洗浄された後、基板14が弗化水素(HF)や弗化アンモニウム(NH4 F)を含む液に浸漬されて、水洗,乾燥された後直ちに結晶成長のためのMBE装置内に装着される。この時、この操作により基板14の表面は水素(H)原子やごく薄いSiO2 アモルファス層によって覆われている。Si基板の主面は(001)面であることが望ましいが、(111)面や他の高次の面方位、あるいはそれらを数度オフさせた面方位の主面を有するSi基板を用いてもよい。そして、MBE装置内で基板14が100℃〜400℃の温度まで昇温されると、基板14の表面に残る水分や吸着ガスが除去される。その後、さらに基板14が昇温されて800℃〜900℃に保持される。この時、基板14の表面を覆っていたH原子や薄いSiO2 アモルファス層も脱離し、基板14の清浄・平滑な面が真空容器13中に露出される。
 図2(a)〜(c)は、CeO2 膜が形成されていく過程を説明するための図である。
 まず、図2(a)に示すように、真空容器13内にCeが供給されると、清浄・平滑な面が露出されたSi基板17に蒸発Ce原子18が衝突する。このとき、シャッター11は開かれており、ガスバルブ15は閉じられている。Si基板17上に到達した拡散Ce原子19は基板面内を拡散して、Si基板17のダイヤモンド構造の結晶格子に連続するCeO2 結晶の格子点となるべき位置に安定して存在して固定Ce原子20となる。このとき、基板温度が低く抑えられているために、拡散Ce原子19は、最初にSi基板17に接した位置の近傍で拡散しもっとも安定した点で結晶格子に組み込まれて固定Ce原子20になるので、Ceのみで大きなアイランドを形成するなどの3次元的成長をすることはない。また、シャッター11の開放時間を正確に定めることにより、供給されるCeの量を制御して、Si基板17の表面を1原子層で覆うのに必要な量を上回る分のCe、すなわち過剰に供給されるCeの量を極力抑える。ただし、Si基板17とCeO2 層との境界面に欠陥をつくらないためには、Ceをわずかながらも過剰に供給する必要がある。過剰に供給されたCeの一部は、基板表面の固定Ce原子20の近傍にとどまっているが、残りは基板上に固定されることなく再脱離する。すなわちSi基板17上に到達した拡散Ce原子19がSi基板17上をほぼ二次元的に分散して固定Ce原子20となり、単原子層が形成される。このような結晶成長過程をMEE(Migration Enhanced Epitaxy)モードと呼ぶ。
 次に、図2(b)に示すように、Si基板17上が固定Ce原子20によって埋め尽くされて単原子層のCe原子層21が形成されると、ガスバルブ15を開いて蒸発O分子22を供給する。このとき、シャッター11はすでに閉じられている。Ce原子層21で覆われた基板表面に到達した拡散O分子23は、基板面内を拡散した後、Ce原子層21中の固定Ce原子20と反応して結合を形成し、固定O原子24となってCeO2 層の結晶格子内に組み込まれる。これにより、すでに形成されているCe原子層21の上に固定O原子24のみからなる単原子層のO原子層25が形成される。このとき、格子点に入らずCe原子層21の上に滞在していた拡散Ce原子19は、自然に排除されうるが、なるべく過剰なCeが生じないようにその供給量を制御することが好ましい。
 また、このときには、酸素もCeと同様に供給する量を制限されている。少なすぎるとCeO2 中のO原子が欠損して構成されるCe611やCe23 などの結晶ができるおそれがあり、そうなると全体としての結晶性が低下してしまう。しかしながら、酸素の供給量が多すぎるとSiO2 層が形成されてしまうおそれがので問題である。そこで、本実施形態においては、パルス状に酸素を照射することが可能なガスバルブ15を使って酸素が供給される。これを用いると、基板上がCe原子層21で表面が覆われている状態の時に、高い圧力の酸素を極短時間に供給することができる。このように高い圧力で酸素を供給すると、基板表面に到達した時点の酸素原子密度は高く、O原子とCe原子との反応が促進される。しかし、Ce原子層21の表面全体が固定O原子24によって覆われた後は、過剰の拡散O分子23は基板表面から真空容器13中へと脱離して最終的に真空ポンプ16によって排出される。酸素ガスはパルス状に供給されたもの以外には供給されていないので、真空容器13中にはほとんど酸素が存在しない。よって、拡散O分子23がSi基板17の表面まで浸透してSiO2 層を形成することはほとんどない。
 次に、図2(c)に示すように、Si基板17上にCe原子層21とO原子層25とが積層された後、シャッター11を開いて真空容器13内に再びCeが供給されると、蒸発Ce原子18が基板上に到達して拡散Ce原子19が拡散した後、固定Ce原子20となる。すなわち、上述の作用によって、基板上にCe原子層21が形成される。その後、酸素とCeの供給を交互に繰り返すことにより、Ce原子層21とO原子層25とを交互に積層することができる。
 その結果、図3に示すように、(001)Si基板の上に(001)CeO2 膜30が形成される。
 本実施形態の形成方法によると、酸素とCeの供給を交互に繰り返すことにより、Ce原子層21とO原子層25とを交互に積層することができ、その結果、(001)Si基板の上に良好な結晶性を有する(001)CeO2 膜30を形成することができる。すでに説明したように、上記従来の製造方法のごとく、O原子とCe原子とが同時に供給される条件でエピタキシャル成長を行なった場合には、(011)面での結晶成長の方がより起こりやすいが、本実施形態のように、MEEモードによる単原子層を交互に形成すれば、図8に示すような共通の格子面にCe原子とO原子とが共存する(011)CeO2 膜は形成されることがない。つまり、ダブルドメインのない高い結晶性を有する(001)CeO2 膜を容易に形成することができる。
 また、本実施形態の製造装置においては、K−セル12を利用して金属Ceの蒸発を行なわせているので、以下のような効果を発揮することができる。
 工業的な生産を前提とした場合に入手可能な金属Ceの純度は、現在99.9%オーダーである。これは、金属原料を用いるIII-V族半導体のMBE成長において用いられる金属Gaや金属砒素(As)においては99.99999%(7N)の純度を持つ原料が入手可能なことと比較するとかなり低い純度であると言える。また、金属Ceは非常に酸化されやすく、表面が酸化された後も内部まで酸素が浸透して酸化反応が起こりつづけるので大気中に放置しておくことができない。さらに、水分ともゆっくりと反応して酸化物を作り水素を発生させる。従って、通常、油分を表面に塗布する、あるいは油紙で包む、あるいは空気や水を溶かさない液体中に保存する、などの措置が必要である。その結果、通常、金属Ceの表面には油分が付着しており、本来純度が高くない上に油分で汚染されている金属Ceを使用する必要がある。したがって、市販の金属Ceをそのままの状態で原料としてもちいてCeO2 薄膜を形成すると、形成された膜中に不純物が多く含まれることとなり、結晶性を低下させるとともにその絶縁性を大きく低下させることが懸念される。また、デバイス動作中に不純物イオンの移動が発生し、経時的に電気特性を変化させて信頼性を低下させるおそれもある。
 これらの理由により、非特許文献4を除く非特許文献1〜6において、CeO2 薄膜作製用の原料にはCeO2 粉末あるいはその焼結体であるペレットが用いられていた。その結果、Si基板の表面にSiO2 層が形成されたり、(001)Si基板の上にダブルドメインの(011)CeO2 結晶膜が形成されるという不具合があった。
 それに対し、本実施形態おいては、真空容器13にK−セル12を付設して、K−セル12中に金属Ceを保持して加熱、蒸発させることができるので、CeO2 薄膜の形成に先駆けて金属Ceのみを加熱し、油分などの汚染物を始め金属Ce中にもともと含まれる高い蒸気圧を持つ不純物を蒸発除去し、金属Ceを高純度化することができる。そして、この高純度化された金属Ceを用いることにより、高い絶縁性と結晶性を持つ(001)CeO2 薄膜を形成することができる。
 また、図4に示されているように、Si基板17上に複数のCe原子層からなるCe層32を形成してもよい。通常、Si基板17の表面が全面に亘って原子層レベルで平滑ではないことを考慮した構造である。
 Si基板17の表面には、通常数原子層の段差がところどころに存在している。そこに、図2(b)に示すような単原子層のCe原子層21しか形成しない場合には、段差の側壁をCeで覆うことができない事態も生じうる。その場合、O原子がSi原子に直接結合してSiO2 層が形成されたり、部分的に(011)CeO2 膜が形成されるおそれがある。そこで、Si基板17がCe原子によって覆われずに露出することがないように、複数のCe原子層からなるCe層32を堆積することも効果的である。
 ただし、Si基板17に垂直な方向に積み重なるCe原子の数が多すぎると、金属Ce結晶の格子構造になってしまい、Si基板17の結晶構造に関する情報をその上のCeO2 膜に伝えられなくなる。従って、Ce原子層の数は4個(約5Å)以下であることが好ましい。
 なお、本実施形態においては、(001)Si基板上に(001)CeO2 結晶膜を形成する場合について説明したが、(111)基板上に(111)CeO2 膜を形成する場合も、上述のごとくCeと酸素とを交互にSi基板上に供給するようにできるので、SiO2 層の形成に起因する結晶性の悪化や比誘電率の低下などの不具合を回避することができる。
  (第2の実施形態)
 次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
 図5は、第2の実施形態に係るCeO2 薄膜を形成するためのMBE装置の構造を概略的に示す断面図である。同図に示すように、本実施形態のMBE装置においては、金属Ceを収納したK−セル12は、ロードロック機構34中に配置されている。このロードロック機構34と真空容器13との間には、ゲートバルブ35が介設されており、このゲートバルブ35を閉鎖するとロードロック機構34と真空容器13との間がほぼ完全に遮断される。また、シャッター46を開閉することによって、いわゆる分子線状のCeの供給を制御できるように構成されている。また、ロードロック機構34には、真空容器13を減圧するための真空ポンプ16とは別に、ロードロック機構34内を減圧するための真空ポンプ36が付設されている。その他の部分の構造は、上記第1の実施形態のMBE装置と共通している。
 次に、本実施形態におけるMBEの手順について説明する。
 CeO2 薄膜の形成に先立って、K−セル12内の金属Ceを加熱する。その際、ゲートバルブ35は閉じられており、ロードロック機構34と真空容器13とは遮断されている。従って、不純物や汚染物を含んだCeが真空容器13内に侵入することはない。K−セル12は、実際の薄膜形成に使用する温度よりも高い温度まで昇温されて、数10分から数時間の間その温度に保持される。その後K−セル12の温度が非使用時の温度まで戻される。ロードロック機構34内は真空ポンプ36によって常時排気されている。この操作により、金属Ce中の不純物や表面付近の汚染物およびK−セル12に付着した汚染物を蒸発させることができる。また、その作業において真空容器13を汚染することがない。その結果、実際に薄膜を形成するに当たっては不純物や汚染物の大部分が除去された高純度のCeを供給することができ、また、雰囲気中にも汚染物がほとんど残存しない。これにより高い結晶性を有するCeO2 薄膜を形成することができる。
 その後、基板14を洗浄し装置内に導入してCeO2 薄膜を形成するが、それらの工程は第1の実施形態の工程と同じなので詳細は省略する。
 本実施形態のCeO2 膜の形成方法によると、K−セル12とガスバルブ15とを用いて基板14上に交互にCeと酸素とを供給するようにしているので、上記第1の実施形態と同様に、(001)Si基板の上に結晶性のよい(001)CeO2 膜を形成することができる。
 加えて、本実施形態のMBE装置においては、K−セルがロードロック機構内に配置されているので、金属Ce中の不純物や表面付近の汚染物およびK−セルに付着した汚染物をより効果的に除去することができ、真空容器の内部の汚染を有効に防止することができる。そして、不純物や汚染物の大部分が除去された高純度のCeを利用して、高い結晶性を有するCeO2 薄膜を形成することができる。
 また、本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、(111)基板上に(111)CeO2 膜を形成することができる。
  (第3の実施形態)
 次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
  図6は、第3の実施形態に係るMBE装置の構造を概略的に示す断面図である。同図に示すように、本実施形態のMBE装置においては、バルブドクラッキングセル40が設けられている。このバルブドクラッキングセル40は、金属Ce41を収納するためのエフューザー42と、昇華したガスをさらに加熱して微細化するためのクラッカー43と、クラッカー43と真空容器13との間に介設されたバルブ47と、バルブドクラッキングセル40内を真空容器13内とは独立して減圧するための真空ポンプ45とによって構成されている。バルブ44は高い気密性を有し、バルブドクラッキングセル40と真空容器13との間をほぼ完全に遮断することができる。また、バルブ44の操作によっていわゆる分子線状のCeを供給することが可能に、かつ、基板14に供給される分子線を急峻に制御することが可能に構成されている。その他の部分の構造は、上記第1の実施形態のMBE装置と同様である。
 次に、本実施形態におけるMBEの手順について説明する。CeO2 薄膜の形成に先立って、バルブドクラッキングセル40に収納されている金属Ce41を加熱する。その間、バルブ44は閉じられており、バルブドクラッキングセル40と真空容器13との間は完全に遮断されている。従って、不純物や汚染物を含んだCeは全く真空容器13内には侵入することがない。また、エフューザー41及びクラッカー43によって、昇華したCeは実際の薄膜形成に使用する温度よりも高い温度まで昇温されて、数10分から数時間の間その温度に保持される。その後、非使用時の温度まで戻される。バルブドクラッキングセル40内は真空ポンプ45によって常時排気されている。この加熱操作により、金属Ce中の不純物や表面付近の汚染物およびバルブドクラッキングセル40に付着した汚染物を蒸発させ、かつ真空ポンプ45によって排出することができるので、バルブ44の詰まりを抑制することができる。また、その作業による真空容器13内の汚染をきたすことはない。その結果、実際に薄膜を形成するに当たっては不純物や汚染物の大部分が除去された高純度のCeを供給することができ、また、雰囲気中にも汚染物がほとんど残存しない。これにより高い結晶性を有するCeO2 薄膜を形成することができる。
 その後、基板14を洗浄し装置内に導入してCeO2 薄膜を形成するが、それらの工程は第1の実施形態の工程と同じなので詳細は省略する。
 本実施形態のCeO2 膜の形成方法によると、K−セル12とガスバルブ15とを用いて基板14上に交互にCeと酸素とを供給するようにしているので、上記第1の実施形態と同様に、(001)Si基板の上に結晶性のよい(001)CeO2 膜を形成することができる。
 加えて、本実施形態のMBE装置においては、金属Ceがバルブドクラッキングセル内に配置されているので、金属Ce中の不純物や表面付近の汚染物およびセル内に付着した汚染物をより効果的に除去することができ、真空容器の内部の汚染を有効に防止することができる。そして、不純物や汚染物の大部分が除去された高純度のCeを利用して、高い結晶性を有するCeO2 薄膜を形成することができる。
 また、本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、(111)基板上に(111)CeO2 膜を形成することができる。
  (第4の実施形態)
 次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
  図11は、第4の実施形態に係るMBE装置の構造を概略的に示す断面図である。同図に示すように、本実施形態のMBE装置においては、EB加熱装置48が設けられている。このEB加熱装置48は、金属Ce41を担持するとともに金属Ce41に電子線(Electron Beam :EB)を照射して加熱するための機構49を備えている。そして、シャッター46の操作によっていわゆる分子線状のCeを供給することが可能に構成されている。その他の部分の構造は、上記第1の実施形態のMBE装置と同様である。
 なお、EB加熱装置48の機構49において金属Ce41を直接担持する部分は、通常のEB装置において用いられているカーボン(C)や銅(cu)ではなく、タングステン(W)やモリブデン(Mo)あるいはタンタル(Ta)などによって構成されていることが好ましい。その理由は、以下の通りである。Cuの融点は1000℃前後であって、Ceの融点に対して100〜200℃しか余裕がないので、Ceを融解,蒸発させるときにCuも同時に融解して蒸発するおそれがある。また、カーボンは融点が3000℃前後とかなり高いが、Ceと化合物を形成しやすいため、1000℃以下でカーボンとCeとが化学反応して炭化物を形成し、機構49が壊れてしまうおそれがある。それに対して、W,Mo,Taは、それぞれ融点が2000℃以上であり、かつCeと化合物を形成しにくいことから、Ceの融点付近の低温状態では両者が化学反応を生じることもないので、金属Ce41を直接担持する部分を構成する材料として非常に安定している。
 次に、本実施形態におけるMBE成膜の手順について説明する。第1の実施形態において金属CeはK−セルに収納され、加熱されて、いわゆる分子線として基板に供給されていたが、本実施形態においては、K−セルの代わりにEB加熱装置48が用いられている点が特徴である。すなわち、EB加熱装置48の機構49に担持された金属Ce41に5〜30keVの電圧を印加して加速した電子線を照射することにより、金属Ce41を加熱,蒸発させていわゆる分子線として基板14に供給することができる。もし、金属Ce41の一部あるいは全部が何らかの理由で酸化されてしまって高融点の酸化セリウム(CeOx :x=1〜2)になり、K−セルでは十分な量の分子線を取り出すことができるなくなるほど、金属Ce41の大部分が高融点の酸化セリウムに変化したとしても、電子線で加熱することにより、酸化セリウムに変化した部分も容易に融解,蒸発させて基板14にいわゆる分子線状態のCeを供給することが可能である。
 その他の処理として、基板14を洗浄し真空容器13内に取り付けてからCeO2 膜を形成する処理が必要であるが、それらの工程は第1の実施形態で説明した通りである。
 また、供給するCe分子線の制御も、加熱に用いる電子線の加速強度とともに、シャッター46の操作によって行なわれ、第1の実施形態と同様にMEEモードを用いて、(001)Si基板上に、Ce層と0層とが交互に積層されてなる高い結晶性を有する(001)CeO2 膜を形成することができる。
 本発明の誘電体膜は、電子機器に搭載されるMISFETの一部として利用でき、有用性の高いものである。
本発明の第1の実施形態に係るK−セルを備えたMBE装置の構成を概略的に示す断面図である。 本発明の第1の実施形態におけるCeO2 膜が形成されていく過程を説明するための図である。 本発明の第1の実施形態に係る方法により形成されたCeO2 膜の結晶構造を示す模式断面図である。 本発明の第1の実施形態の変形例に係る方法により形成されたCeO2 膜の結晶構造を示す模式断面図である。 本発明の第2の実施形態に係るロードロック機構を備えたMBE装置の構成を概略的に示す断面図である。 本発明の第3の実施形態に係るバルブドクラッキングセルを備えたMBE装置の構成を概略的に示す断面図である。 (100)Si基板の上にCeO2 結晶の2種類のドメインが形成されている状態を示す模式断面図である。 非特許文献5に記載されている,Si基板の(001)面上へのCeO2 結晶のエピタキシャル状態を示す模式平面図である。 非特許文献5に記載されている,CeO2 膜に2つのドメインが混在する状態を高分解能走査型トンネル電子顕微鏡で観察して得られた顕微鏡写真図である。 非特許文献6に記載されている,Si基板の(001)面,(111)面及び(110)面にそれぞれエピタキシャル成長するCeO2 結晶の方位を示す模式平面図である。 本発明の第4の実施形態に係るEB加熱装置を備えたMBE装置の構成を概略的に示す断面図である。
符号の説明
 1  Ce原子
 2  Si原子
 3  O原子
 4  単位胞
 5  単位胞
 6  単位胞
 8  (001)Si基板
 9  (011)CeO2
 11 シャッター
 12 K−セル
 13 真空容器
 14 基板
 15 ガスバルブ
 16 真空ポンプ
 17 Si基板
 18 蒸発Ce原子
 19 拡散Ce原子
 20 固定Ce原子
 21 Ce原子層
 22 蒸発O分子
 23 拡散O分子
 24 固定O原子
 25 O原子層
 30 CeO2
 32 Ce層
 34 ロードロック機構
 35 ゲートバルブ
 36 真空ポンプ
 40 バルブドクラッキングセル
 41 金属Ce
 42 エフューザー
 43 クラッカー
 44 バルブ
 45 真空ポンプ
 46 シャッター
 48 EB加熱装置
 49 機構

Claims (4)

  1.  (001)Si基板と、
     上記(001)Si基板上に形成された(001)CeO2 膜と
    を備えている誘電体膜。
  2.  請求項1記載の誘電体膜において、
     上記(001)Si基板と上記(001)CeO2膜との間に、(001)Ce層が挟まれている,誘電体膜。
  3.  請求項1記載の誘電体膜において、
     強誘電体膜をさらに備え、
     上記(001)CeO2 膜は、上記強誘電体膜と上記(001)Si基板との間に挟まれている,誘電体膜。
  4.  請求項2記載の誘電体膜において、
     強誘電体膜をさらに備え、
     上記(001)CeO2 膜および上記(001)Ce層は、上記強誘電体膜と上記(001)Si基板との間に挟まれている,誘電体膜。
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JPWO2014199509A1 (ja) * 2013-06-14 2017-02-23 ルネサスエレクトロニクス株式会社 撮像装置の製造方法

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