JP2004103094A - 磁気ディスクおよび磁気ディスク装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】保護膜の膜厚が5nm以下に薄くなっても、耐久性に優れ、磁気ヘッドの浮上安定性を劣化させない磁気ディスクおよび磁気ディスク装置を提供する。
【解決手段】非磁性基板上に少なくとも磁性金属膜、炭素保護膜及びフッ素含有潤滑膜を設けた磁気ディスクにおいて、該炭素保護膜がダイヤモンド状炭素膜(DLC:Diamond Like Carbon)であり、保護膜中および保護膜表面の水素濃度が45at%以下1at%以上であり、sp3構造をとるCH2結合におけるシンメトリーなCH2結合のアシンメトリーなCH2結合に対する比率と水素濃度の積が0.25以下0.05以上であり、かつ保護膜上に塗布された液体潤滑剤が化学式(1)で示す潤滑剤であることを特徴とする磁気ディスク。
(化1)
ここでm=0または1以上の整数、n=0または1以上の整数であり、平均分子量は1000〜6000である。
【選択図】 図3
【解決手段】非磁性基板上に少なくとも磁性金属膜、炭素保護膜及びフッ素含有潤滑膜を設けた磁気ディスクにおいて、該炭素保護膜がダイヤモンド状炭素膜(DLC:Diamond Like Carbon)であり、保護膜中および保護膜表面の水素濃度が45at%以下1at%以上であり、sp3構造をとるCH2結合におけるシンメトリーなCH2結合のアシンメトリーなCH2結合に対する比率と水素濃度の積が0.25以下0.05以上であり、かつ保護膜上に塗布された液体潤滑剤が化学式(1)で示す潤滑剤であることを特徴とする磁気ディスク。
(化1)
ここでm=0または1以上の整数、n=0または1以上の整数であり、平均分子量は1000〜6000である。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、極薄膜のカーボン保護膜を有する磁気ディスクにおいて、磁気ディスクの浮上安定性を著しく向上させる保護膜質と潤滑膜との組み合わせに関するものである。また、潤滑剤を装置内へ供給する機構を有する磁気ディスク装置において、磁気ディスク装置を高信頼化させる磁気ディスクの保護膜質および潤滑膜と装置から供給される潤滑剤との関係に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
磁気ディスク装置の高記録密度化に伴い、磁気ヘッドと磁気ディスクの磁性膜との間隔を狭めるため、保護膜の薄膜化が進んでいる。従来から磁気ディスクの保護膜はアモルファス炭素膜或いはダイヤモンド状炭素膜(DLC:Diamond Like Carbon)が用いられている。近年の薄膜化に対し、強度的により優れたDLC膜の形成を目的として、ケミカルベーパーデポジション(CVD)法やイオンビームデポジション(IBD)法、フィルタードカソディックアーク法等の製法が提案されている。
【0003】
DLC膜はその膜中(膜表面も含む。以下同様)にsp2およびsp3構造のカーボンの結合とカーボンと水素の結合が存在する。特に膜中の水素濃度によってDLC膜の物性は大きく変化する。一般的に、ある水素濃度で硬度は最大になり、それ以上取り込まれると次第に炭化水素構造が増えるため硬度が低下することが知られている。このことからDLC膜内の水素濃度の最適化は、膜質を制御する上で重要な課題である。この課題に対し、特開平6−195694号公報では炭素/水素の原子比が、60/40以上、90/10以下と規定している。
【0004】
しかし、発明者らが鋭意検討した結果、膜中の水素濃度のみではDLC膜の膜質を決定することが出来ないことが判明した。すなわち、同じ量の水素が保護膜中に存在したとしても、その水素と炭素の結合状態とくに重合度合いによって膜質が異なり、その結果として、ヘッドの浮上性が異なる。例えば、sp3構造を持つCH2の結合が存在したとしても、ポリエチレンに類似の重合度の大きい保護膜成分が多い場合と少ない場合でその特性は異なる。
【0005】
また特開平9−128732号公報等ではラマンスペクトルの蛍光強度比から水素量との相関をとり、膜中の水素濃度を10〜37at%としている。これらの従来例では保護膜の膜厚は10nm以上であり非常に厚いため、保護膜の膜質評価もFTIR(フーリエ変換型赤外分光)やラマンなどによって簡便に行うことが可能であった。
【0006】
しかしながら、現在では保護膜の膜厚が5nm以下と極薄膜となっているため、DLC保護膜の膜質評価において上記のFTIR、ラマンといった測定は検出信号が微弱となり困難となる。そのため保護膜の膜厚を厚くして測定しても、実際に使用する膜厚の保護膜の膜質とは、成膜温度や成膜レートが異なってしまうために正確な膜質の評価にはならない。すなわち、極薄膜のDLC保護膜の膜質を決定するためには、極薄膜状態の保護膜を評価する手法も重要である。
【0007】
次に、特開平09−282642号公報に記載のように磁気ディスクの保護膜上にはフッ素含有潤滑剤が塗布されている。潤滑剤はパーフルオロポリエーテルと呼ばれる潤滑剤が一般的であり、その膜厚は1〜3nm程度である。しかしながら、保護膜と潤滑膜との関係において磁気ヘッドを安定に浮上させる組み合わせについての開示はない。
【0008】
磁気ディスク装置内に潤滑剤をガスとして供給する技術は特開昭59−215657号公報や特開昭62−208952号公報に記載のようにヘッドディスクアセンブリ内に潤滑剤供給源を配置したものであった。潤滑剤を供給する目的は潤滑剤の回転や熱による飛散を少なくすることである。従来例では供給する潤滑剤の材料、吸着特性と磁気ディスクに形成されている潤滑膜の材料、吸着特性およびその組合せ、また保護膜の膜質と供給される潤滑剤の材料との組み合わせ、供給された後の潤滑膜の膜厚との組み合わせについては考慮されておらず、従来例の場合には潤滑剤を磁気ディスクやヘッドディスクインタフェースへ供給しても信頼性を向上させることができない場合があった。また、供給に使用する潤滑剤によっては磁気ヘッドの浮上安定性を維持できなくなり、信頼性の低下を引き起こした。
【0009】
磁気ディスクの保護膜の製造方法としては、前述の特開平6−195694号公報にあるように濃度50%以下の炭化水素ガス、並びに水素ガス及び/又は不活性ガスを含む混合ガス雰囲気中で、非磁性基板上に形成された磁性膜を有する基板の温度を 150℃以上 250℃以下に保持して、炭素質のターゲットを用いて、前記磁性膜上に前記記載の保護膜を形成する方法がある。また、エチレンを含む濃度50%以下の炭化水素ガス並びに、水素ガスまたは不活性ガスのうちの一種以上のガスとの混合ガス雰囲気中で、非磁性基板上に形成された磁性膜を有する基板の温度を150℃以上 250℃以下に保持するとともに、前記基板に負のバイアス電圧を印加して、炭素質のターゲットを用いて磁性膜上に前記記載の保護膜を形成する方法などがある。
【0010】
さらに保護膜と潤滑剤との組み合わせを改善するために特開2001−266328号公報、特開2001−14657号公報、特開平9−128732号公報に開示されているように保護膜表面を窒素プラズマ処理し保護膜中に窒素を含有させる方法や、保護膜を2層にして上部保護膜に窒素を含有した保護膜を形成することが行われている。
【0011】
現在磁気ディスクの保護膜厚は4〜5nm以下であり、このような極薄膜で磁気ヘッドと磁気ディスクの接触に対する耐摺動信頼性の確保が一層厳しく、従来例のようなDLC保護膜の評価手法で求めた水素濃度で膜質を最適化するのでは不十分となってきた。また、磁気ヘッドの浮上量も15nm以下が当然となってきた現状では、磁気ヘッドの浮上安定性、とくに信頼性試験の一つであるグライドテストの際にこの浮上安定性の低下が良品率の低下を招く。すなわち、従来開示されてきた保護膜と潤滑剤との組み合わせでは不充分である。
【0012】
【特許文献1】「特開平6−195694号公報」
【特許文献2】「特開平9−128732号公報」
【特許文献3】「特開平9−282642号公報」
【特許文献4】「特開昭59−215657号公報」
【特許文献5】「特開昭62−208952号公報」
【特許文献6】「特開2001−266328号公報」
【特許文献7】「特開2001−14657号公報」
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の従来技術における問題を解決し、保護膜の膜厚が5nm以下に薄くなっても、耐久性に優れ、磁気ヘッドの浮上安定性を劣化させない磁気ディスクおよび磁気ディスク装置を提供することを目的としている。さらに詳しくは、極薄膜炭素保護膜の膜質と潤滑膜の材料の最適な組み合わせを提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明では、非磁性基板上に少なくとも磁性金属膜、炭素保護膜及びフッ素含有潤滑膜を設けた磁気ディスクにおいて、該炭素保護膜がダイヤモンド状炭素膜(DLC:Diamond Like Carbon)であり、保護膜中および保護膜表面の水素濃度が45at%以下1at%以上であり、sp3構造を取るCH2結合におけるシンメトリーなCH2結合のアシンメトリーなCH2結合に対する比率と水素濃度との積が0.25以下0.05以上であり、かつ保護膜表面の保護膜上に塗布された液体潤滑剤が化学式(1)で示す潤滑剤であるようにした。
(化1)
ここにおいて、m=0または1以上の整数、n=0または1以上の整数であり、平均分子量は1000〜6000であるようにした。
【0014】
また、保護膜に窒素を含み、保護膜中および保護膜表面の窒素濃度が3at%以上6at%以下であるようにした。
【0015】
さらに、信号の記録再生を行う磁気ヘッドと、上記記載の何れかの磁気ディスクと、磁気ヘッドを位置決めする機構、および記録再生のための信号処理回路とを少なくとも有する磁気ディスク装置において、磁気ディスク装置内に潤滑剤をガスとして磁気ディスク面に補給する機構を有し、かつその潤滑剤が化学式2で示される潤滑剤であるようにした。
(化2)
ここにおいて、m=0または1以上の整数、n=0または1以上の整数であり、平均分子量は600〜2400であるようにした。
【0016】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の実施の形態の概要を述べる。本発明の対象となる磁気ディスクは保護膜の膜厚が5nm以下の極薄膜炭素保護膜の磁気ディスクである。前述したようにこのような極薄膜の保護膜でその膜質とくに膜中の水素の結合状態を求めることは困難であった。しかし、本発明者らはこのような極薄膜炭素保護膜であってもFT−IR−ATR法(多重散乱フーリエ変換型赤外分光法)により、炭素保護膜中のsp3構造をもった炭素と結合する水素の結合状態の差を評価できることを見出した。従来のFT−IR法は特開平6−195694号公報に開示されているようにsp2構造の炭素とsp3構造の炭素とに結合している水素のC−H結合に起因する吸光スペクトルが測定できる。しかし、極薄膜炭素保護膜をFT−IR−ATR法で測定した場合には3000cm−1〜2850cm−1のsp3構造の炭素と結合する水素のC−H結合の吸光スペクトルのみしか得られない。当初、このスペクトルは磁気ディスク上に付着したコンタミネーションガスに起因するものであると考えていたが、詳細な検討を行った結果、このスペクトルが保護膜中のsp3構造の炭素と結合する水素のC−H結合の吸光スペクトルであることが判明した。保護膜中にはsp2構造の炭素とsp3構造の炭素とが混在している。DLC保護膜は、成膜材料として炭化水素ガス、例えばメタン、エチレン、アセチレン、トルエンなどを分解し、保護膜として磁性膜上に堆積させるので、保護膜中および表面にはsp2構造の炭素とsp3構造の炭素だけではなく、炭化水素ガスの不完全分解物も取りこまれている。そのため、これら不完全分解物の炭化水素系ポリマーが磁気ヘッドの浮上安定性を劣化させる。すなわち、保護膜中の水素濃度が等しくても炭素と水素の結合状態の重合度により、その特性は大きく異なる。
【0017】
また、保護膜中の水素濃度はERDA(Elastic Recoil Detection Analysis)により測定することが可能である。本発明者らは上記のように保護膜中の水素濃度をERDAにより測定し、かつ保護膜中のsp3構造の炭素と結合している水素のC−H結合の比率を求めることで、極薄膜炭素保護膜の炭化水素ポリマーの重合度合いを推定できることを見出した。
【0018】
このようにして種々の保護膜についてその膜質を定量化するとともに、種々の潤滑剤を組み合わせてグライドテストを行ったところ、保護膜質と化学式1に示す潤滑剤との組み合わせで磁気ヘッドの浮上安定性が大きく改善する組み合わせが存在することを発見した。
【0019】
(化1)
ここでm=0または1以上の整数、n=0または1以上の整数であり、平均分子量は1000〜6000である。
【0020】
次に保護膜と潤滑剤との付着性をさらに改善して耐摩耗性・飛散性などを改善するために保護膜中に窒素を添加することを検討した。その結果、保護膜中の水素の結合状態を上記のごとく保ったまま、窒素を3〜6at%添加することで潤滑剤の付着性のみ改善し、磁気ヘッドの浮上安定性も確保できることを見出した。
【0021】
このような保護膜を形成する方法として、従来は保護膜を2層にする方法、保護膜表面をプラズマ処理する方法があったが、これらの方法では製造装置のコストが高くなることや、製造処理時間が長くかかること、あるいは成膜中、プラズマ処理中にチャンバ内の塵埃が磁気ディスク表面に付着して欠陥となることが問題となっている。そこで本発明者らは、一つの成膜チャンバで所望の保護膜を得るため創意工夫を行った。DLC膜の成膜方法としてCVD(Chemical VaporDeposition)法、あるいはIBD(Ion Beam Deposition)法がよく知られている。これらの成膜方法では炭化水素系ガスをチャンバ内に導入した後、プラズマ化して炭化水素ガスを分解させる。そして磁気ディスクへ印加したバイアス電圧で炭素イオンを堆積させる手法である。一般的に一つのチャンバで成膜される保護膜の厚さは3〜5nm程度であり、要する時間は数秒である。また通常、成膜中の炭化水素ガスの流量、バイアス電圧は一定である。磁気ヘッドの浮上安定性を阻害する要因としては保護膜表面に多く残る不完全分解ガスの付着が問題であろうと考え、炭化水素系ガスの流量を成膜中時間とともに段階的に減少させることで炭化水素ガスの分解が完全に行われるようにし、保護膜表面に不完全分解ガスの付着が少なくなるようにした。またバイアス電圧を成膜中時間とともに段階的に増加させることで同様の効果を得ることも見出した。このような手法により、所望の保護膜を得ることが可能となった。
【0022】
さらに、これら所望の磁気ディスクを組み込む磁気ディスク装置に潤滑剤をガスとして磁気ディスク面に補給する機構があった場合、保護膜質とこの補給される潤滑剤との組み合わせにおいては磁気ヘッドの浮上安定性を阻害するものもあると考えられる。そこで、種々の保護膜と種々の潤滑剤よりなる磁気ディスク装置に組み込み試験したところ、上記の本発明の磁気ディスクと化学式2の潤滑剤を磁気ディスク装置内で補給する組み合わせにおいて優れた磁気ヘッドの浮上安定性を達成できることが判明した。
(化2)
ここでm=0または1以上の整数、n=0または1以上の整数であり、平均分子量は600〜2400である。
以上のように、本発明により耐摩耗性、磁気ヘッドの浮上安定性の優れた磁気ディスク、磁気ディスク装置を提供することが出来る。
【0023】
本発明を、さらなる実施例を用いて詳細に説明する。本発明の磁気ディスクにおいて、非磁性基板としてガラス基板を使用した。(外径3.0インチ、厚さ1.27mm)基板の粗さはRa(中心線平均粗さ)約0.6nmである。作製した磁気ディスクの断面図の概略図を図1に示す。
【0024】
1はガラス基板、2はNiTa合金シード膜、3はCrTi系合金下地膜、4はCoCr系合金下層磁性膜、5はRu中間層、6はCoCr系合金上層磁性膜、7はDLC保護膜、8は化学式(1)であらわされるパーフルオロポリエーテル潤滑剤である。ただし、潤滑剤の平均分子量は約2000である。次に磁気ディスクの作成方法について説明する。ガラス基板1を洗浄し、乾燥させた後NiTaシード膜2を30nm形成した。その後ランプヒータによりシード膜が形成されたガラス基板1を約280℃で加熱した後、CrTi系合金下地膜3を10nm形成した。更に厚さ4nmのCoCr系合金下層磁性膜4を形成、続けてRu中間層5を0.5nm、CoCr系合金上層磁性膜6を17.5nm形成した。その上のDLC保護膜7はIBD法により成膜を行い、膜厚は4nmとした。成膜装置はIntevac社製である。
【0025】
IBD法での成膜条件は、エミッション電流0.5A、アノード電圧60V、バイアス電圧0〜120V、エチレン(C2H4)ガス流量25〜50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)、窒素を保護膜中に添加するためN2Oガスを流量10sccmで混合した。各実施例および比較例の保護膜の成膜条件の詳細を表1に示す。また、実施例1、比較例4のエチレン流量変化をそれぞれ図2、図4に、実施例2のバイアス電圧変化を図3に示す。
【0026】
【表1】
表1に示した実施例と比較例には化学式(1)の潤滑剤フォンブリンZ−Tetraol(アウジモント社製)と比較のためフォンブリンZ−DOL(アウジモント社製:平均分子量4000)およびフォンブリンZ−DOLTX(アウジモント社製:平均分子量3000)をそれぞれ2nmの膜厚で塗布した。実施例及び比較例における各試料と、潤滑剤の組み合わせは後出の表2に示した通りである。
【0027】
これらの各試料についてERDA測定、FT−IR−ATR測定を行った。ERDA測定は、神戸製鋼社製高分解能RBS分析装置HRBS500を用いて、窒素イオンを70度の角度で潤滑剤を塗布した磁気ディスク表面に入射し、反跳しされた水素イオンを検出した。測定結果はシステムのバックグランドを差し引いた後、保護膜の構成元素を炭素と水素のみとして、密度を1.8g/cm3と仮定して水素の比率を求めた。測定例として実施例1の解析結果を図5に示す。水素濃度は保護膜表面から2nmまでの平均値を用いた。またその他の実施例、比較例について水素濃度を求めた結果は表1に示す。その他の成膜方法の実施例としてCVD法、FCA法、およびスパッタ法によって成膜した磁気ディスクのカーボン保護膜について同様の分析を行った結果も併せて示す。
【0028】
FT−IR−ATR測定はIFS−120HRI(Bruker製FT−IR)にて測定を行った(入射角:60°、プリズム:Ge、偏光:P)。測定結果の一例を図6に示す。
FT−IR−ATRの吸収スペクトルには5本のピークが測定される。ピーク1〜4についてはsp3構造の炭素と結合する水素のC−H結合に由来するピークである。発明者らが着目したのはおよそ2850cm−1に観察されるピーク4とおよそ2920cm−1に観察されるピーク2であり、それぞれ、シンメトリーなメチレン基のCH2結合の量とアシンメトリーなメチレン基のCH2結合の量とを表している。そこで、ピーク2とピーク4のピーク強度の比(ピーク4の強度/ピーク2の強度)から保護膜中のポリエチレン類似の不完全分解の炭化水素ポリマーの量を算出した。実施例、比較例のそれぞれについて測定し求めた結果を表1に示した。
【0029】
実施例と比較例について磁気ヘッドの浮上安定性を評価した。浮上安定性の評価は、浮上量8nmのヘッドを用いて磁気ディスク上を内周から外周まで浮上させ、そのときの接触度合いをヘッドに搭載したピエゾ素子により検出した。そしてピエゾ素子の出力がある閾値を超えたとき接触が起こったと判断して、接触の回数として比較した。また潤滑剤を溶媒でリンスしたときに残存する潤滑膜厚をリンス前の潤滑膜厚との比率で表した固定比率をそれぞれ求めた。浮上安定性の評価結果と固定比率の測定結果を表2に示す。
【0030】
【表2】
また、保護膜中(保護膜表面を含む)の水素濃度、および、FT−IR−ATRで測定した2850cm−1と2920cm−1の吸収ピークの強度比、すなわち、I2850/I2920の比率と、ヘッドの浮上性との関係を比較した結果を図7に示す。ここでI2850/I2920の比率はsp3構造を取るCH2結合におけるシンメトリーなCH2結合のアシンメトリーなCH2結合に対する比率を表している。さらに、I2850/I2920の比率と水素濃度との積とヘッド接触回数との関係を図8に示す。
【0031】
図7に示された結果から、ヘッドの浮上性の良否は水素濃度あるいはピーク強度比I2850/I2920単独で説明できないことは明らかである。また、図8に示した結果から水素濃度とピーク強度比(I2850/I292)の積で結果を整理すると、この積の値が小さいほど接触回数が小さいこと、すなわち浮上性が良好であることがわかる。また、磁気ディスクに塗布する潤滑剤として化学式1の構造を有するZ−Tetraolを用いた場合の方が、Z−DOLあるいはZ−DOLTXを用いた場合よりはるかに良好な浮上性を示すことも明らかとなった。
【0032】
これらの結果から、保護膜中の水素濃度と水素の結合状態と潤滑剤との組み合わせにおいてのみ磁気ヘッドの浮上安定性を確保できると考えられる。かかる観点で上記の測定結果を総合すると、保護膜の水素濃度として保護膜中および保護膜表面の水素濃度が45%以下1%以上であり、sp3構造を取るCH2結合におけるシンメトリーなCH2結合のアシンメトリーなCH2結合に対する比率と水素濃度の積が0.25以下0.05%以上であり、潤滑剤として化学式1の構造を有する潤滑剤を用いた磁気ディスクが良好な浮上性を有するという結論を得ることが出来る。
【0033】
なお、水素ガスを添加しないスパッタ法によって炭素保護膜を作成すると、実施例5に示したように、膜保護膜中の水素濃度が約12%、メチレン基のC−H2結合の比率I2850/I2920が114%という測定結果を得ている。このような結果は、おそらくは成膜中に不純物ガスとして水素が保護膜中に取り込まれたためと考えられる。
【0034】
次に保護膜成膜後にプラズマ処理することで欠陥が多くなるかどうかという観点で、実施例1と比較例3の磁気ディスクを光学式欠陥検出装置で欠陥数を比較した。そうすると実施例は欠陥数が10〜55個/面であったのに対して、比較例3では欠陥数が230〜450個/面と多かった。つまり、プラズマ処理することによって磁気ディスク以外の部分、例えば磁気ディスクの保持部などに付着している膜も処理することになるため、膜が剥離して磁気ディスク面に付着して欠陥数が増加したと考えられる。
【0035】
保護膜中の窒素の比率はESCA(Electron Scattering of Chemical Analysis)により調査した。ESCAは潤滑剤を塗布していない実施例1、2、比較例3のサンプルの表面にX線を角度30度、70度で入射させ、散乱される光電子のエネルギスペクトルを分析した。炭素の比率に対して窒素の比率は、実施例1の場合5.8%、2.8%、実施例2の場合6.2%、3.5%、比較例3の場合5.3%、2.4%であった。表2に明らかなように実施例1、2、比較例3は潤滑剤の固定比率が大きくなっていることが明らかであり、保護膜中に窒素を添加したことの効果と考えられる。
【0036】
最後に、実施例1の磁気ディスクに潤滑剤としてZ−TETRAOLとZ−DOLを塗布したものを磁気ディスク装置に組み込み、試験を行った。磁気ディスク装置の回転数は10,000min−1であり、磁気ヘッドの浮上量は13nm、装置内の塵埃フィルタには化学式(2)の潤滑剤Z−DOL(アウジモント社製:平均分子量2000)を1.0mg滴下して、磁気ディスク面へこの潤滑剤が補給されるようになっている。試験は60℃の環境で、一定半径位置でヘッドを位置決めしたまま記録再生を繰り返し、エラーの発生数をモニタした。その結果、Z−DOLを塗布した実施例1では300時間でエラーが発生し、500時間でクラッシュに至ったが、Z−TETRAOLを塗布した磁気ディスクでは1000時間後もエラーの発生が無かった。また、実施例1の磁気ディスクの代りに実施例2、3、4、5、あるいは6の磁気ディスクを用いた場合も同様の結果が得られた。このことから、所定の保護膜とZ−TETRAOLとを組み合わせた磁気ディスクをZ−DOLを潤滑剤補給源としてもつ磁気ディスク装置へ組み込むことで、優れた信頼性を持つ装置とすることが可能となる。
【0037】
【発明の効果】
本発明により、耐摩耗性・耐食性に優れ、磁気ヘッドの浮上安定性を損なわない信頼性の高い高密度記録に適した磁気ディスクおよび磁気ディスク装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁気ディスク断面図である。
【図2】実施例1のエチレン流量変化を示す図である。
【図3】実施例2のバイアス電圧変化を示す図である。
【図4】比較例4のエチレン流量変化を示す図である。
【図5】実施例1のERDA分析結果を示す図である。
【図6】FT−IR−ATR測定の測定例を示す図である。
【図7】保護膜中の水素量とI2850/I2920比率とヘッドの浮上性の良否の関係を示す図である。
【図8】潤滑剤の種類をパラメータとして、水素濃度とI2850/I2920比率との積の対するヘッドの接触回数の関係を示す図である。
【符号の説明】
1…ガラス基板、2…NiTaシード膜、3…CrTi系合金下地膜、4…CoCr系合金下層磁性膜、5…Ru中間層、6…CoCr系合金上層磁性膜、7…炭素保護膜、8…パーフルオロポリエーテル潤滑膜。
【発明の属する技術分野】
本発明は、極薄膜のカーボン保護膜を有する磁気ディスクにおいて、磁気ディスクの浮上安定性を著しく向上させる保護膜質と潤滑膜との組み合わせに関するものである。また、潤滑剤を装置内へ供給する機構を有する磁気ディスク装置において、磁気ディスク装置を高信頼化させる磁気ディスクの保護膜質および潤滑膜と装置から供給される潤滑剤との関係に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
磁気ディスク装置の高記録密度化に伴い、磁気ヘッドと磁気ディスクの磁性膜との間隔を狭めるため、保護膜の薄膜化が進んでいる。従来から磁気ディスクの保護膜はアモルファス炭素膜或いはダイヤモンド状炭素膜(DLC:Diamond Like Carbon)が用いられている。近年の薄膜化に対し、強度的により優れたDLC膜の形成を目的として、ケミカルベーパーデポジション(CVD)法やイオンビームデポジション(IBD)法、フィルタードカソディックアーク法等の製法が提案されている。
【0003】
DLC膜はその膜中(膜表面も含む。以下同様)にsp2およびsp3構造のカーボンの結合とカーボンと水素の結合が存在する。特に膜中の水素濃度によってDLC膜の物性は大きく変化する。一般的に、ある水素濃度で硬度は最大になり、それ以上取り込まれると次第に炭化水素構造が増えるため硬度が低下することが知られている。このことからDLC膜内の水素濃度の最適化は、膜質を制御する上で重要な課題である。この課題に対し、特開平6−195694号公報では炭素/水素の原子比が、60/40以上、90/10以下と規定している。
【0004】
しかし、発明者らが鋭意検討した結果、膜中の水素濃度のみではDLC膜の膜質を決定することが出来ないことが判明した。すなわち、同じ量の水素が保護膜中に存在したとしても、その水素と炭素の結合状態とくに重合度合いによって膜質が異なり、その結果として、ヘッドの浮上性が異なる。例えば、sp3構造を持つCH2の結合が存在したとしても、ポリエチレンに類似の重合度の大きい保護膜成分が多い場合と少ない場合でその特性は異なる。
【0005】
また特開平9−128732号公報等ではラマンスペクトルの蛍光強度比から水素量との相関をとり、膜中の水素濃度を10〜37at%としている。これらの従来例では保護膜の膜厚は10nm以上であり非常に厚いため、保護膜の膜質評価もFTIR(フーリエ変換型赤外分光)やラマンなどによって簡便に行うことが可能であった。
【0006】
しかしながら、現在では保護膜の膜厚が5nm以下と極薄膜となっているため、DLC保護膜の膜質評価において上記のFTIR、ラマンといった測定は検出信号が微弱となり困難となる。そのため保護膜の膜厚を厚くして測定しても、実際に使用する膜厚の保護膜の膜質とは、成膜温度や成膜レートが異なってしまうために正確な膜質の評価にはならない。すなわち、極薄膜のDLC保護膜の膜質を決定するためには、極薄膜状態の保護膜を評価する手法も重要である。
【0007】
次に、特開平09−282642号公報に記載のように磁気ディスクの保護膜上にはフッ素含有潤滑剤が塗布されている。潤滑剤はパーフルオロポリエーテルと呼ばれる潤滑剤が一般的であり、その膜厚は1〜3nm程度である。しかしながら、保護膜と潤滑膜との関係において磁気ヘッドを安定に浮上させる組み合わせについての開示はない。
【0008】
磁気ディスク装置内に潤滑剤をガスとして供給する技術は特開昭59−215657号公報や特開昭62−208952号公報に記載のようにヘッドディスクアセンブリ内に潤滑剤供給源を配置したものであった。潤滑剤を供給する目的は潤滑剤の回転や熱による飛散を少なくすることである。従来例では供給する潤滑剤の材料、吸着特性と磁気ディスクに形成されている潤滑膜の材料、吸着特性およびその組合せ、また保護膜の膜質と供給される潤滑剤の材料との組み合わせ、供給された後の潤滑膜の膜厚との組み合わせについては考慮されておらず、従来例の場合には潤滑剤を磁気ディスクやヘッドディスクインタフェースへ供給しても信頼性を向上させることができない場合があった。また、供給に使用する潤滑剤によっては磁気ヘッドの浮上安定性を維持できなくなり、信頼性の低下を引き起こした。
【0009】
磁気ディスクの保護膜の製造方法としては、前述の特開平6−195694号公報にあるように濃度50%以下の炭化水素ガス、並びに水素ガス及び/又は不活性ガスを含む混合ガス雰囲気中で、非磁性基板上に形成された磁性膜を有する基板の温度を 150℃以上 250℃以下に保持して、炭素質のターゲットを用いて、前記磁性膜上に前記記載の保護膜を形成する方法がある。また、エチレンを含む濃度50%以下の炭化水素ガス並びに、水素ガスまたは不活性ガスのうちの一種以上のガスとの混合ガス雰囲気中で、非磁性基板上に形成された磁性膜を有する基板の温度を150℃以上 250℃以下に保持するとともに、前記基板に負のバイアス電圧を印加して、炭素質のターゲットを用いて磁性膜上に前記記載の保護膜を形成する方法などがある。
【0010】
さらに保護膜と潤滑剤との組み合わせを改善するために特開2001−266328号公報、特開2001−14657号公報、特開平9−128732号公報に開示されているように保護膜表面を窒素プラズマ処理し保護膜中に窒素を含有させる方法や、保護膜を2層にして上部保護膜に窒素を含有した保護膜を形成することが行われている。
【0011】
現在磁気ディスクの保護膜厚は4〜5nm以下であり、このような極薄膜で磁気ヘッドと磁気ディスクの接触に対する耐摺動信頼性の確保が一層厳しく、従来例のようなDLC保護膜の評価手法で求めた水素濃度で膜質を最適化するのでは不十分となってきた。また、磁気ヘッドの浮上量も15nm以下が当然となってきた現状では、磁気ヘッドの浮上安定性、とくに信頼性試験の一つであるグライドテストの際にこの浮上安定性の低下が良品率の低下を招く。すなわち、従来開示されてきた保護膜と潤滑剤との組み合わせでは不充分である。
【0012】
【特許文献1】「特開平6−195694号公報」
【特許文献2】「特開平9−128732号公報」
【特許文献3】「特開平9−282642号公報」
【特許文献4】「特開昭59−215657号公報」
【特許文献5】「特開昭62−208952号公報」
【特許文献6】「特開2001−266328号公報」
【特許文献7】「特開2001−14657号公報」
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の従来技術における問題を解決し、保護膜の膜厚が5nm以下に薄くなっても、耐久性に優れ、磁気ヘッドの浮上安定性を劣化させない磁気ディスクおよび磁気ディスク装置を提供することを目的としている。さらに詳しくは、極薄膜炭素保護膜の膜質と潤滑膜の材料の最適な組み合わせを提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明では、非磁性基板上に少なくとも磁性金属膜、炭素保護膜及びフッ素含有潤滑膜を設けた磁気ディスクにおいて、該炭素保護膜がダイヤモンド状炭素膜(DLC:Diamond Like Carbon)であり、保護膜中および保護膜表面の水素濃度が45at%以下1at%以上であり、sp3構造を取るCH2結合におけるシンメトリーなCH2結合のアシンメトリーなCH2結合に対する比率と水素濃度との積が0.25以下0.05以上であり、かつ保護膜表面の保護膜上に塗布された液体潤滑剤が化学式(1)で示す潤滑剤であるようにした。
(化1)
ここにおいて、m=0または1以上の整数、n=0または1以上の整数であり、平均分子量は1000〜6000であるようにした。
【0014】
また、保護膜に窒素を含み、保護膜中および保護膜表面の窒素濃度が3at%以上6at%以下であるようにした。
【0015】
さらに、信号の記録再生を行う磁気ヘッドと、上記記載の何れかの磁気ディスクと、磁気ヘッドを位置決めする機構、および記録再生のための信号処理回路とを少なくとも有する磁気ディスク装置において、磁気ディスク装置内に潤滑剤をガスとして磁気ディスク面に補給する機構を有し、かつその潤滑剤が化学式2で示される潤滑剤であるようにした。
(化2)
ここにおいて、m=0または1以上の整数、n=0または1以上の整数であり、平均分子量は600〜2400であるようにした。
【0016】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の実施の形態の概要を述べる。本発明の対象となる磁気ディスクは保護膜の膜厚が5nm以下の極薄膜炭素保護膜の磁気ディスクである。前述したようにこのような極薄膜の保護膜でその膜質とくに膜中の水素の結合状態を求めることは困難であった。しかし、本発明者らはこのような極薄膜炭素保護膜であってもFT−IR−ATR法(多重散乱フーリエ変換型赤外分光法)により、炭素保護膜中のsp3構造をもった炭素と結合する水素の結合状態の差を評価できることを見出した。従来のFT−IR法は特開平6−195694号公報に開示されているようにsp2構造の炭素とsp3構造の炭素とに結合している水素のC−H結合に起因する吸光スペクトルが測定できる。しかし、極薄膜炭素保護膜をFT−IR−ATR法で測定した場合には3000cm−1〜2850cm−1のsp3構造の炭素と結合する水素のC−H結合の吸光スペクトルのみしか得られない。当初、このスペクトルは磁気ディスク上に付着したコンタミネーションガスに起因するものであると考えていたが、詳細な検討を行った結果、このスペクトルが保護膜中のsp3構造の炭素と結合する水素のC−H結合の吸光スペクトルであることが判明した。保護膜中にはsp2構造の炭素とsp3構造の炭素とが混在している。DLC保護膜は、成膜材料として炭化水素ガス、例えばメタン、エチレン、アセチレン、トルエンなどを分解し、保護膜として磁性膜上に堆積させるので、保護膜中および表面にはsp2構造の炭素とsp3構造の炭素だけではなく、炭化水素ガスの不完全分解物も取りこまれている。そのため、これら不完全分解物の炭化水素系ポリマーが磁気ヘッドの浮上安定性を劣化させる。すなわち、保護膜中の水素濃度が等しくても炭素と水素の結合状態の重合度により、その特性は大きく異なる。
【0017】
また、保護膜中の水素濃度はERDA(Elastic Recoil Detection Analysis)により測定することが可能である。本発明者らは上記のように保護膜中の水素濃度をERDAにより測定し、かつ保護膜中のsp3構造の炭素と結合している水素のC−H結合の比率を求めることで、極薄膜炭素保護膜の炭化水素ポリマーの重合度合いを推定できることを見出した。
【0018】
このようにして種々の保護膜についてその膜質を定量化するとともに、種々の潤滑剤を組み合わせてグライドテストを行ったところ、保護膜質と化学式1に示す潤滑剤との組み合わせで磁気ヘッドの浮上安定性が大きく改善する組み合わせが存在することを発見した。
【0019】
(化1)
ここでm=0または1以上の整数、n=0または1以上の整数であり、平均分子量は1000〜6000である。
【0020】
次に保護膜と潤滑剤との付着性をさらに改善して耐摩耗性・飛散性などを改善するために保護膜中に窒素を添加することを検討した。その結果、保護膜中の水素の結合状態を上記のごとく保ったまま、窒素を3〜6at%添加することで潤滑剤の付着性のみ改善し、磁気ヘッドの浮上安定性も確保できることを見出した。
【0021】
このような保護膜を形成する方法として、従来は保護膜を2層にする方法、保護膜表面をプラズマ処理する方法があったが、これらの方法では製造装置のコストが高くなることや、製造処理時間が長くかかること、あるいは成膜中、プラズマ処理中にチャンバ内の塵埃が磁気ディスク表面に付着して欠陥となることが問題となっている。そこで本発明者らは、一つの成膜チャンバで所望の保護膜を得るため創意工夫を行った。DLC膜の成膜方法としてCVD(Chemical VaporDeposition)法、あるいはIBD(Ion Beam Deposition)法がよく知られている。これらの成膜方法では炭化水素系ガスをチャンバ内に導入した後、プラズマ化して炭化水素ガスを分解させる。そして磁気ディスクへ印加したバイアス電圧で炭素イオンを堆積させる手法である。一般的に一つのチャンバで成膜される保護膜の厚さは3〜5nm程度であり、要する時間は数秒である。また通常、成膜中の炭化水素ガスの流量、バイアス電圧は一定である。磁気ヘッドの浮上安定性を阻害する要因としては保護膜表面に多く残る不完全分解ガスの付着が問題であろうと考え、炭化水素系ガスの流量を成膜中時間とともに段階的に減少させることで炭化水素ガスの分解が完全に行われるようにし、保護膜表面に不完全分解ガスの付着が少なくなるようにした。またバイアス電圧を成膜中時間とともに段階的に増加させることで同様の効果を得ることも見出した。このような手法により、所望の保護膜を得ることが可能となった。
【0022】
さらに、これら所望の磁気ディスクを組み込む磁気ディスク装置に潤滑剤をガスとして磁気ディスク面に補給する機構があった場合、保護膜質とこの補給される潤滑剤との組み合わせにおいては磁気ヘッドの浮上安定性を阻害するものもあると考えられる。そこで、種々の保護膜と種々の潤滑剤よりなる磁気ディスク装置に組み込み試験したところ、上記の本発明の磁気ディスクと化学式2の潤滑剤を磁気ディスク装置内で補給する組み合わせにおいて優れた磁気ヘッドの浮上安定性を達成できることが判明した。
(化2)
ここでm=0または1以上の整数、n=0または1以上の整数であり、平均分子量は600〜2400である。
以上のように、本発明により耐摩耗性、磁気ヘッドの浮上安定性の優れた磁気ディスク、磁気ディスク装置を提供することが出来る。
【0023】
本発明を、さらなる実施例を用いて詳細に説明する。本発明の磁気ディスクにおいて、非磁性基板としてガラス基板を使用した。(外径3.0インチ、厚さ1.27mm)基板の粗さはRa(中心線平均粗さ)約0.6nmである。作製した磁気ディスクの断面図の概略図を図1に示す。
【0024】
1はガラス基板、2はNiTa合金シード膜、3はCrTi系合金下地膜、4はCoCr系合金下層磁性膜、5はRu中間層、6はCoCr系合金上層磁性膜、7はDLC保護膜、8は化学式(1)であらわされるパーフルオロポリエーテル潤滑剤である。ただし、潤滑剤の平均分子量は約2000である。次に磁気ディスクの作成方法について説明する。ガラス基板1を洗浄し、乾燥させた後NiTaシード膜2を30nm形成した。その後ランプヒータによりシード膜が形成されたガラス基板1を約280℃で加熱した後、CrTi系合金下地膜3を10nm形成した。更に厚さ4nmのCoCr系合金下層磁性膜4を形成、続けてRu中間層5を0.5nm、CoCr系合金上層磁性膜6を17.5nm形成した。その上のDLC保護膜7はIBD法により成膜を行い、膜厚は4nmとした。成膜装置はIntevac社製である。
【0025】
IBD法での成膜条件は、エミッション電流0.5A、アノード電圧60V、バイアス電圧0〜120V、エチレン(C2H4)ガス流量25〜50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)、窒素を保護膜中に添加するためN2Oガスを流量10sccmで混合した。各実施例および比較例の保護膜の成膜条件の詳細を表1に示す。また、実施例1、比較例4のエチレン流量変化をそれぞれ図2、図4に、実施例2のバイアス電圧変化を図3に示す。
【0026】
【表1】
表1に示した実施例と比較例には化学式(1)の潤滑剤フォンブリンZ−Tetraol(アウジモント社製)と比較のためフォンブリンZ−DOL(アウジモント社製:平均分子量4000)およびフォンブリンZ−DOLTX(アウジモント社製:平均分子量3000)をそれぞれ2nmの膜厚で塗布した。実施例及び比較例における各試料と、潤滑剤の組み合わせは後出の表2に示した通りである。
【0027】
これらの各試料についてERDA測定、FT−IR−ATR測定を行った。ERDA測定は、神戸製鋼社製高分解能RBS分析装置HRBS500を用いて、窒素イオンを70度の角度で潤滑剤を塗布した磁気ディスク表面に入射し、反跳しされた水素イオンを検出した。測定結果はシステムのバックグランドを差し引いた後、保護膜の構成元素を炭素と水素のみとして、密度を1.8g/cm3と仮定して水素の比率を求めた。測定例として実施例1の解析結果を図5に示す。水素濃度は保護膜表面から2nmまでの平均値を用いた。またその他の実施例、比較例について水素濃度を求めた結果は表1に示す。その他の成膜方法の実施例としてCVD法、FCA法、およびスパッタ法によって成膜した磁気ディスクのカーボン保護膜について同様の分析を行った結果も併せて示す。
【0028】
FT−IR−ATR測定はIFS−120HRI(Bruker製FT−IR)にて測定を行った(入射角:60°、プリズム:Ge、偏光:P)。測定結果の一例を図6に示す。
FT−IR−ATRの吸収スペクトルには5本のピークが測定される。ピーク1〜4についてはsp3構造の炭素と結合する水素のC−H結合に由来するピークである。発明者らが着目したのはおよそ2850cm−1に観察されるピーク4とおよそ2920cm−1に観察されるピーク2であり、それぞれ、シンメトリーなメチレン基のCH2結合の量とアシンメトリーなメチレン基のCH2結合の量とを表している。そこで、ピーク2とピーク4のピーク強度の比(ピーク4の強度/ピーク2の強度)から保護膜中のポリエチレン類似の不完全分解の炭化水素ポリマーの量を算出した。実施例、比較例のそれぞれについて測定し求めた結果を表1に示した。
【0029】
実施例と比較例について磁気ヘッドの浮上安定性を評価した。浮上安定性の評価は、浮上量8nmのヘッドを用いて磁気ディスク上を内周から外周まで浮上させ、そのときの接触度合いをヘッドに搭載したピエゾ素子により検出した。そしてピエゾ素子の出力がある閾値を超えたとき接触が起こったと判断して、接触の回数として比較した。また潤滑剤を溶媒でリンスしたときに残存する潤滑膜厚をリンス前の潤滑膜厚との比率で表した固定比率をそれぞれ求めた。浮上安定性の評価結果と固定比率の測定結果を表2に示す。
【0030】
【表2】
また、保護膜中(保護膜表面を含む)の水素濃度、および、FT−IR−ATRで測定した2850cm−1と2920cm−1の吸収ピークの強度比、すなわち、I2850/I2920の比率と、ヘッドの浮上性との関係を比較した結果を図7に示す。ここでI2850/I2920の比率はsp3構造を取るCH2結合におけるシンメトリーなCH2結合のアシンメトリーなCH2結合に対する比率を表している。さらに、I2850/I2920の比率と水素濃度との積とヘッド接触回数との関係を図8に示す。
【0031】
図7に示された結果から、ヘッドの浮上性の良否は水素濃度あるいはピーク強度比I2850/I2920単独で説明できないことは明らかである。また、図8に示した結果から水素濃度とピーク強度比(I2850/I292)の積で結果を整理すると、この積の値が小さいほど接触回数が小さいこと、すなわち浮上性が良好であることがわかる。また、磁気ディスクに塗布する潤滑剤として化学式1の構造を有するZ−Tetraolを用いた場合の方が、Z−DOLあるいはZ−DOLTXを用いた場合よりはるかに良好な浮上性を示すことも明らかとなった。
【0032】
これらの結果から、保護膜中の水素濃度と水素の結合状態と潤滑剤との組み合わせにおいてのみ磁気ヘッドの浮上安定性を確保できると考えられる。かかる観点で上記の測定結果を総合すると、保護膜の水素濃度として保護膜中および保護膜表面の水素濃度が45%以下1%以上であり、sp3構造を取るCH2結合におけるシンメトリーなCH2結合のアシンメトリーなCH2結合に対する比率と水素濃度の積が0.25以下0.05%以上であり、潤滑剤として化学式1の構造を有する潤滑剤を用いた磁気ディスクが良好な浮上性を有するという結論を得ることが出来る。
【0033】
なお、水素ガスを添加しないスパッタ法によって炭素保護膜を作成すると、実施例5に示したように、膜保護膜中の水素濃度が約12%、メチレン基のC−H2結合の比率I2850/I2920が114%という測定結果を得ている。このような結果は、おそらくは成膜中に不純物ガスとして水素が保護膜中に取り込まれたためと考えられる。
【0034】
次に保護膜成膜後にプラズマ処理することで欠陥が多くなるかどうかという観点で、実施例1と比較例3の磁気ディスクを光学式欠陥検出装置で欠陥数を比較した。そうすると実施例は欠陥数が10〜55個/面であったのに対して、比較例3では欠陥数が230〜450個/面と多かった。つまり、プラズマ処理することによって磁気ディスク以外の部分、例えば磁気ディスクの保持部などに付着している膜も処理することになるため、膜が剥離して磁気ディスク面に付着して欠陥数が増加したと考えられる。
【0035】
保護膜中の窒素の比率はESCA(Electron Scattering of Chemical Analysis)により調査した。ESCAは潤滑剤を塗布していない実施例1、2、比較例3のサンプルの表面にX線を角度30度、70度で入射させ、散乱される光電子のエネルギスペクトルを分析した。炭素の比率に対して窒素の比率は、実施例1の場合5.8%、2.8%、実施例2の場合6.2%、3.5%、比較例3の場合5.3%、2.4%であった。表2に明らかなように実施例1、2、比較例3は潤滑剤の固定比率が大きくなっていることが明らかであり、保護膜中に窒素を添加したことの効果と考えられる。
【0036】
最後に、実施例1の磁気ディスクに潤滑剤としてZ−TETRAOLとZ−DOLを塗布したものを磁気ディスク装置に組み込み、試験を行った。磁気ディスク装置の回転数は10,000min−1であり、磁気ヘッドの浮上量は13nm、装置内の塵埃フィルタには化学式(2)の潤滑剤Z−DOL(アウジモント社製:平均分子量2000)を1.0mg滴下して、磁気ディスク面へこの潤滑剤が補給されるようになっている。試験は60℃の環境で、一定半径位置でヘッドを位置決めしたまま記録再生を繰り返し、エラーの発生数をモニタした。その結果、Z−DOLを塗布した実施例1では300時間でエラーが発生し、500時間でクラッシュに至ったが、Z−TETRAOLを塗布した磁気ディスクでは1000時間後もエラーの発生が無かった。また、実施例1の磁気ディスクの代りに実施例2、3、4、5、あるいは6の磁気ディスクを用いた場合も同様の結果が得られた。このことから、所定の保護膜とZ−TETRAOLとを組み合わせた磁気ディスクをZ−DOLを潤滑剤補給源としてもつ磁気ディスク装置へ組み込むことで、優れた信頼性を持つ装置とすることが可能となる。
【0037】
【発明の効果】
本発明により、耐摩耗性・耐食性に優れ、磁気ヘッドの浮上安定性を損なわない信頼性の高い高密度記録に適した磁気ディスクおよび磁気ディスク装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁気ディスク断面図である。
【図2】実施例1のエチレン流量変化を示す図である。
【図3】実施例2のバイアス電圧変化を示す図である。
【図4】比較例4のエチレン流量変化を示す図である。
【図5】実施例1のERDA分析結果を示す図である。
【図6】FT−IR−ATR測定の測定例を示す図である。
【図7】保護膜中の水素量とI2850/I2920比率とヘッドの浮上性の良否の関係を示す図である。
【図8】潤滑剤の種類をパラメータとして、水素濃度とI2850/I2920比率との積の対するヘッドの接触回数の関係を示す図である。
【符号の説明】
1…ガラス基板、2…NiTaシード膜、3…CrTi系合金下地膜、4…CoCr系合金下層磁性膜、5…Ru中間層、6…CoCr系合金上層磁性膜、7…炭素保護膜、8…パーフルオロポリエーテル潤滑膜。
Claims (3)
- 非磁性基板上に少なくとも磁性金属膜、炭素保護膜及びフッ素含有潤滑膜を設けた磁気ディスクにおいて、該炭素保護膜がダイヤモンド状炭素膜(DLC:Diamond Like Carbon)であり、保護膜中および保護膜表面の水素濃度が45at%以下1at%以上であり、sp3構造を取るCH2結合におけるシンメトリーなCH2結合のアシンメトリーなCH2結合に対する比率と水素濃度との積が0.25以下0.05以上であり、かつ保護膜上に塗布された液体潤滑剤が化学式(1)で示す潤滑剤であることを特徴とする磁気ディスク。
(化1)
ここでm=0または1以上の整数、n=0または1以上の整数であり、平均分子量は1000〜6000である。 - 上記保護膜は窒素を含み、保護膜中およびの保護膜表面の窒素濃度が3at%以上6at%以下であることを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスク。
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