JP2004101493A - 分子輸送抽出方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】マイクロチップ上で、迅速、かつ高精度での各種の超微量分子、特に蛋白質などの生化学的活性物質を、細胞を破砕した溶液より選択的に分離・抽出を可能とする分子輸送抽出方法を提供すること。
【解決手段】幅500μm以下、深さ300μm以下のマイクロチャンネル内において、被抽出物質を水相と逆ミセル有機相界面を通しての分子輸送を行って逆ミセル抽出する分子輸送抽出方法であり、マイクロチャンネル内で水相と逆ミセル有機相が接触しながら、各相が層流を維持した状態で並列に流れ、被抽出物質が水相に含まれ、水相と逆ミセル有機相界面を通して逆ミセル有機相に抽出を行うか又は被抽出物質が逆ミセル有機相に含まれ、水相と逆ミセル有機相界面を通して水相に抽出を行う分子輸送抽出方法。
【選択図】 図1
【解決手段】幅500μm以下、深さ300μm以下のマイクロチャンネル内において、被抽出物質を水相と逆ミセル有機相界面を通しての分子輸送を行って逆ミセル抽出する分子輸送抽出方法であり、マイクロチャンネル内で水相と逆ミセル有機相が接触しながら、各相が層流を維持した状態で並列に流れ、被抽出物質が水相に含まれ、水相と逆ミセル有機相界面を通して逆ミセル有機相に抽出を行うか又は被抽出物質が逆ミセル有機相に含まれ、水相と逆ミセル有機相界面を通して水相に抽出を行う分子輸送抽出方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロチャンネルを用い溶液中に含まれる蛋白質などの生化学的活性物質を分離する分子輸送抽出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、一般に行われる蛋白質などの生化学的活性物質の分離精製・抽出する方法としては、採取した生物組織、細胞、血液などのサンプルを、ホモジナイズにより細胞を破砕した後、500〜800g程度の遠心分離を行い、未破砕物や核画分を分離し、さらに成分の分画や、膜蛋白質の可溶化、限外濾過による濃縮等の処理を行うため非常に煩雑であり、微少量の蛋白質は容器への吸着等により失われるため、蛋白質の分析に定性、定量的な限界が問題となっている。
【0003】
最近はマイクロリアクターやマイクロアナリシスシステムと呼ばれる微細加工技術を利用した化学反応や分離システムの微小化の研究が盛んになっており、マイクロチャンネルを持つマイクロチップ上で行う核酸、タンパク質などの分析や合成、微量化学物質の迅速分析、医薬品・薬物のハイスループットスクリーニングへの応用が期待されている。このようなシステムのマイクロ化の利点としては、サンプルや試薬の使用量あるいは廃液の排出量が軽減され、省スペースで持ち運び可能な安価なシステムの実現が考えられている。また体積に対する表面積の比率が向上することにより、熱移動・物質移動の高速化が実現でき、その結果、反応や分離の精密な制御、高速・高効率化、副反応の抑制が期待される。
上記の目的でマイクロチップに組み込まれるシステムの一つとして蛋白質などの生化学的活性物質の分離精製・抽出も含まれており、マイクロチップ上で分離精製を行う目的としては、マイクロチップ上で化学物質のスクリーニングや分析を行うときの前処理、バイオリアクター等で合成される有用物質の高速高分解分離ほか様々のものが可能になると考えられる。
【0004】
このような分離精製方法として、従来はガラス基板上にマイクロチャンネル(微細流路)を切削し、これを用いて電気泳動分析を集積化しようとする試みがなされてきている。このような試みは、キャピラリー電気泳動分析法から派生してきたものであって、分析に使用する試料が少なく、迅速で高分解分離が可能であることから、DNA解析の高速化などに有用なものとして注目されている。
しかしながら、以上のような従来の試みは、電気泳動分析法を目的とすることに限られており、また電気泳動を行う前にあらかじめ蛋白質の溶液を精製しなければならない。
【0005】
マイクロチップ上で蛋白質などの生化学的活性物質の分離精製・抽出する方法としては、特開2001−38246号公報のように溶液中の被抽出物に予め蛍光標識抗体等を用いて標識化した後、溶液をマイクロチャンネルに流しラベルを検出して、その検出シグナルに応じてマイクロチャンネルに電圧を印可して分離を行っている。しかし、上記の方法では被抽出物を標識化してあるため、分離後に被抽出物と標識物質の分離を行わなければならない。
【0006】
また、特開2001−137613号公報、特開2000−298079号公報では一本のマイクロチャンネル内に水相と有機相の層流を並列に流して、水相−有機相界面で相間分子輸送を行い、高速高分解の分離抽出操作を実現している。例として水相−キシレン相によるフェノールフタレインまたはコバルト錯体の抽出方法、水相−クロロホルム相による鉄錯体の抽出方法が記載されている。この応用として水相−フェノール相や水相−エタノール相により、細胞を破砕した溶液から核酸の分離精製方法が実現できる考えられる。しかし、上記の方法では、蛋白質の分離精製を行うことはできない。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−38246号公報
【特許文献2】
特開2001−137613号公報
【特許文献3】
特開2000−298079号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、マイクロチップ上で、迅速、かつ高精度での各種の超微量分子、特に蛋白質などの生化学的活性物質を、細胞を破砕した溶液より選択的に分離・抽出を可能とする分子輸送抽出方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、
(1) 幅500μm以下、深さ300μm以下のマイクロチャンネル内において、被抽出物質を水相と逆ミセル有機相界面を通しての分子輸送を行って逆ミセル抽出する分子輸送抽出方法、
(2)マイクロチャンネル内で水相と逆ミセル有機相が接触しながら、各相が層流を維持した状態で並列に流れる(1)の分子輸送抽出方法、
(3)被抽出物質が水相に含まれ、水相と逆ミセル有機相界面を通して逆ミセル有機相に抽出を行う(1)または(2)の分子輸送抽出方法、
(4)被抽出物質が逆ミセル有機相に含まれ、水相と逆ミセル有機相界面を通して水相に抽出を行う(1)または(2)の分子輸送抽出方法、
(5)逆ミセル有機相で形成される逆ミセルの内部直径が1〜30nmである(1)〜(4)いずれかの分子輸送抽出方法、
(6)水相の水溶媒または逆ミセル有機相の有機溶媒に界面活性剤を加えることで逆ミセル有機相を形成する(1)〜(5)いずれかの分子輸送抽出方法、
である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の分子輸送抽出方法を実施するマイクロチャンネルは幅500μm以下、深さ300μm以下の断面を有し、一本のマイクロチャンネル内で水相と逆ミセル有機相を層流で並行に流通することが可能な構造である。
マイクロチャンネルは幅500μm以下、深さ300μm以下の断面を有しており、このようなマイクロチャンネル内を流れる液体のレイノルズ数は、マイクロチャンネルを円管とした場合、R=vρD/η (ρ:液体の密度,η:液体の粘性率,v:平均流速,D:管の直径)で示されるので水溶液であればR<2000になり、層流を形成する。このマイクロチャンネル内で水溶液と有機溶媒の液体が浅い角度で合流した場合、二つの溶液は混合せず、水相と有機相の界面を形成しながら層流を形成する。
さらにマイクロチャンネルは、断面積が非常に小さいため、断面方向への物質の拡散は短時間で終了する特徴を持ち、2相間の物質の移動も短時間で終了する。
【0011】
本発明に使用する逆ミセル有機相とは逆ミセルが含まれる有機溶媒の相である。逆ミセルは有機溶媒中にナノメートルサイズの水滴を界面活性剤がその親水基を水側に、疎水基を有機溶媒側に向けて取り囲んで形成する分子集合体であり、また熱力学的に安定で、塩を含む水溶液と二相平衡状態で存在するので、両相間の分配平衡に基づき、種々の物質の抽出分離が可能である。
逆ミセル有機相の形成方法は、有機溶媒中に界面活性剤が含まれていれば特に制限はないが、マイクロチャンネルに投入する有機溶媒に予め界面活性剤を溶解しておけばよい。または、水溶液に界面活性剤を溶解し、マイクロチャンネル内で有機溶媒に界面活性剤が分子拡散させて逆ミセル有機相を形成してもよい。
【0012】
本発明では逆ミセルで生化学的活性物質の高分子として蛋白質を選択的取り込み、生化学的活性物質の分離を行うことが一つの目的である。逆ミセルの内部は水相で基本的には親水性の高分子を取り込むことが可能であり、逆ミセルの内部直径が大きいと核酸も取り込むことが可能であるため、内部直径を制限してDNA等の核酸を取り込まないようにする。具体的には逆ミセル有機相で形成される逆ミセルの内部直径が1〜30nmであることが好ましい。逆ミセルの内部直径はX線小角散乱法、または内部に含まれる水分量より推算することが可能である。
【0013】
逆ミセル有機相へのタンパク質の抽出は、蛋白質の等電点より低いpHの水相中で、蛋白質が界面にできている界面活性剤の膜を拡散して界面に到達し、界面で膜から逆ミセルが作られるときに蛋白質を取り込んで、有機溶媒中に拡散する。次に逆ミセル有機相から水相への逆抽出は、蛋白質の等電点より高いpHの水相中で、蛋白質を含む逆ミセルが逆ミセル有機相−水相の界面に達すると、蛋白質は逆ミセルより脱離して界面から水相に拡散することで分離精製抽出を行うことが可能である。
また、細胞を破砕した水溶液に含まれるDNAなどの核酸はミセル半径よりも分子長が長く、分子サイズが大きいため、逆ミセルで取り込むことができず、上記の操作を行っても水相に残留される形で分離することができる。
膜及び脂質は有機溶媒によって抽出することが可能であり、上記の操作によって膜及び脂質は逆ミセル有機相に分離することができる。
その結果、逆抽出が行われた水相より精製蛋白溶液を得ることが可能である。
【0014】
【実施例】
図1のように大きさ75mm×25mm、厚さ1mmのガラス製基板(1)の内部に幅300μm、深さ100μmのマイクロチャンネル(2)が設けられており、マイクロチャンネル(2)の両端が分岐して幅100μm、深さ100μmのマイクロチャンネルが3本ずつ付属し、各マイクロチャンネルの先端に開口部A〜Fを設けて溶液の注入排出が可能なマイクロチップを作製した。
このマイクロチップを用いて以下のように相間分子輸送を行い、細胞中に含まれる蛋白質の分離精製抽出を行った、
開口部Aからは細胞を破砕して600gで10分間遠心した上清を回収し、弱酸性に調整した溶液を
、開口部Bからは非イオン性海面活性剤を0.2Mで溶解したイソオクタン溶液を、また開口部Cからは塩化カリウムを1Nで溶解した水溶液を、マイクロシリンジポンプを用いて流入する。3つの溶液はマイクロチャンネル内で合流した後、3つの液相が並行する層流を形成し、分岐部でそれぞれの液相に別れ、開口部D〜Fから排出される。
3つの液相が並行する層流を形成しているマイクロチャンネル(1)内で、蛋白質を拡散によって水相からイソオクタン相への相間移動させ、さらに塩化カリウムを含む水相に相関移動させた。
上記抽出操作を行った後に開口部D〜Fから排出される溶液を回収した。
開口部Dから回収される水相の溶液は、Protein assay dye reagent(バイオラッド)を用い溶液中の蛋白質を定量した。
開口部Eから回収される有機相の溶液は、界面活性剤を含むリン酸塩緩衝液を2倍の量で加え撹拌した後に、Protein assay dye reagentを用い溶液中の蛋白質を定量した。また、有機溶媒に含まれる水分量より、逆ミセルの内部直径は約13nmと推算された。
開口部Fから回収される塩化カリウムを含む水相の溶液は、塩酸とリン酸塩緩衝液を加えてpHを中和した後にProtein assay dye reagentを用いて蛋白質を定量した。
また、開口部Aに投入した細胞破砕液を遠心分離した上清と同じ量の溶液を遠心分離し、界面活性剤で膜蛋白質を可溶化した後、Protein assay dye reagentを用いて溶液中の蛋白質を定量した。
(各溶液の蛋白質の分布比率)
実施例で定量した蛋白質の量について、開口部Aに投入した上清の蛋白量を100とした比較の値を表1に示す。
【0015】
【表1】
【0016】
【発明の効果】
本発明によって、マイクロチップ上で、迅速、かつ高精度での各種の超微量分子、特に蛋白質などの生化学的活性物質を、細胞を破砕した溶液より選択的に分離・抽出を可能とする分子輸送抽出方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の分子輸送抽出方法を行うマイクロチップの一例の模式図である。
【符号の簡単な説明】
1 ガラス製基板
2 マイクロチャンネル
A 開口部A
B 開口部B
C 開口部C
D 開口部D
E 開口部E
F 開口部F
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロチャンネルを用い溶液中に含まれる蛋白質などの生化学的活性物質を分離する分子輸送抽出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、一般に行われる蛋白質などの生化学的活性物質の分離精製・抽出する方法としては、採取した生物組織、細胞、血液などのサンプルを、ホモジナイズにより細胞を破砕した後、500〜800g程度の遠心分離を行い、未破砕物や核画分を分離し、さらに成分の分画や、膜蛋白質の可溶化、限外濾過による濃縮等の処理を行うため非常に煩雑であり、微少量の蛋白質は容器への吸着等により失われるため、蛋白質の分析に定性、定量的な限界が問題となっている。
【0003】
最近はマイクロリアクターやマイクロアナリシスシステムと呼ばれる微細加工技術を利用した化学反応や分離システムの微小化の研究が盛んになっており、マイクロチャンネルを持つマイクロチップ上で行う核酸、タンパク質などの分析や合成、微量化学物質の迅速分析、医薬品・薬物のハイスループットスクリーニングへの応用が期待されている。このようなシステムのマイクロ化の利点としては、サンプルや試薬の使用量あるいは廃液の排出量が軽減され、省スペースで持ち運び可能な安価なシステムの実現が考えられている。また体積に対する表面積の比率が向上することにより、熱移動・物質移動の高速化が実現でき、その結果、反応や分離の精密な制御、高速・高効率化、副反応の抑制が期待される。
上記の目的でマイクロチップに組み込まれるシステムの一つとして蛋白質などの生化学的活性物質の分離精製・抽出も含まれており、マイクロチップ上で分離精製を行う目的としては、マイクロチップ上で化学物質のスクリーニングや分析を行うときの前処理、バイオリアクター等で合成される有用物質の高速高分解分離ほか様々のものが可能になると考えられる。
【0004】
このような分離精製方法として、従来はガラス基板上にマイクロチャンネル(微細流路)を切削し、これを用いて電気泳動分析を集積化しようとする試みがなされてきている。このような試みは、キャピラリー電気泳動分析法から派生してきたものであって、分析に使用する試料が少なく、迅速で高分解分離が可能であることから、DNA解析の高速化などに有用なものとして注目されている。
しかしながら、以上のような従来の試みは、電気泳動分析法を目的とすることに限られており、また電気泳動を行う前にあらかじめ蛋白質の溶液を精製しなければならない。
【0005】
マイクロチップ上で蛋白質などの生化学的活性物質の分離精製・抽出する方法としては、特開2001−38246号公報のように溶液中の被抽出物に予め蛍光標識抗体等を用いて標識化した後、溶液をマイクロチャンネルに流しラベルを検出して、その検出シグナルに応じてマイクロチャンネルに電圧を印可して分離を行っている。しかし、上記の方法では被抽出物を標識化してあるため、分離後に被抽出物と標識物質の分離を行わなければならない。
【0006】
また、特開2001−137613号公報、特開2000−298079号公報では一本のマイクロチャンネル内に水相と有機相の層流を並列に流して、水相−有機相界面で相間分子輸送を行い、高速高分解の分離抽出操作を実現している。例として水相−キシレン相によるフェノールフタレインまたはコバルト錯体の抽出方法、水相−クロロホルム相による鉄錯体の抽出方法が記載されている。この応用として水相−フェノール相や水相−エタノール相により、細胞を破砕した溶液から核酸の分離精製方法が実現できる考えられる。しかし、上記の方法では、蛋白質の分離精製を行うことはできない。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−38246号公報
【特許文献2】
特開2001−137613号公報
【特許文献3】
特開2000−298079号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、マイクロチップ上で、迅速、かつ高精度での各種の超微量分子、特に蛋白質などの生化学的活性物質を、細胞を破砕した溶液より選択的に分離・抽出を可能とする分子輸送抽出方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、
(1) 幅500μm以下、深さ300μm以下のマイクロチャンネル内において、被抽出物質を水相と逆ミセル有機相界面を通しての分子輸送を行って逆ミセル抽出する分子輸送抽出方法、
(2)マイクロチャンネル内で水相と逆ミセル有機相が接触しながら、各相が層流を維持した状態で並列に流れる(1)の分子輸送抽出方法、
(3)被抽出物質が水相に含まれ、水相と逆ミセル有機相界面を通して逆ミセル有機相に抽出を行う(1)または(2)の分子輸送抽出方法、
(4)被抽出物質が逆ミセル有機相に含まれ、水相と逆ミセル有機相界面を通して水相に抽出を行う(1)または(2)の分子輸送抽出方法、
(5)逆ミセル有機相で形成される逆ミセルの内部直径が1〜30nmである(1)〜(4)いずれかの分子輸送抽出方法、
(6)水相の水溶媒または逆ミセル有機相の有機溶媒に界面活性剤を加えることで逆ミセル有機相を形成する(1)〜(5)いずれかの分子輸送抽出方法、
である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の分子輸送抽出方法を実施するマイクロチャンネルは幅500μm以下、深さ300μm以下の断面を有し、一本のマイクロチャンネル内で水相と逆ミセル有機相を層流で並行に流通することが可能な構造である。
マイクロチャンネルは幅500μm以下、深さ300μm以下の断面を有しており、このようなマイクロチャンネル内を流れる液体のレイノルズ数は、マイクロチャンネルを円管とした場合、R=vρD/η (ρ:液体の密度,η:液体の粘性率,v:平均流速,D:管の直径)で示されるので水溶液であればR<2000になり、層流を形成する。このマイクロチャンネル内で水溶液と有機溶媒の液体が浅い角度で合流した場合、二つの溶液は混合せず、水相と有機相の界面を形成しながら層流を形成する。
さらにマイクロチャンネルは、断面積が非常に小さいため、断面方向への物質の拡散は短時間で終了する特徴を持ち、2相間の物質の移動も短時間で終了する。
【0011】
本発明に使用する逆ミセル有機相とは逆ミセルが含まれる有機溶媒の相である。逆ミセルは有機溶媒中にナノメートルサイズの水滴を界面活性剤がその親水基を水側に、疎水基を有機溶媒側に向けて取り囲んで形成する分子集合体であり、また熱力学的に安定で、塩を含む水溶液と二相平衡状態で存在するので、両相間の分配平衡に基づき、種々の物質の抽出分離が可能である。
逆ミセル有機相の形成方法は、有機溶媒中に界面活性剤が含まれていれば特に制限はないが、マイクロチャンネルに投入する有機溶媒に予め界面活性剤を溶解しておけばよい。または、水溶液に界面活性剤を溶解し、マイクロチャンネル内で有機溶媒に界面活性剤が分子拡散させて逆ミセル有機相を形成してもよい。
【0012】
本発明では逆ミセルで生化学的活性物質の高分子として蛋白質を選択的取り込み、生化学的活性物質の分離を行うことが一つの目的である。逆ミセルの内部は水相で基本的には親水性の高分子を取り込むことが可能であり、逆ミセルの内部直径が大きいと核酸も取り込むことが可能であるため、内部直径を制限してDNA等の核酸を取り込まないようにする。具体的には逆ミセル有機相で形成される逆ミセルの内部直径が1〜30nmであることが好ましい。逆ミセルの内部直径はX線小角散乱法、または内部に含まれる水分量より推算することが可能である。
【0013】
逆ミセル有機相へのタンパク質の抽出は、蛋白質の等電点より低いpHの水相中で、蛋白質が界面にできている界面活性剤の膜を拡散して界面に到達し、界面で膜から逆ミセルが作られるときに蛋白質を取り込んで、有機溶媒中に拡散する。次に逆ミセル有機相から水相への逆抽出は、蛋白質の等電点より高いpHの水相中で、蛋白質を含む逆ミセルが逆ミセル有機相−水相の界面に達すると、蛋白質は逆ミセルより脱離して界面から水相に拡散することで分離精製抽出を行うことが可能である。
また、細胞を破砕した水溶液に含まれるDNAなどの核酸はミセル半径よりも分子長が長く、分子サイズが大きいため、逆ミセルで取り込むことができず、上記の操作を行っても水相に残留される形で分離することができる。
膜及び脂質は有機溶媒によって抽出することが可能であり、上記の操作によって膜及び脂質は逆ミセル有機相に分離することができる。
その結果、逆抽出が行われた水相より精製蛋白溶液を得ることが可能である。
【0014】
【実施例】
図1のように大きさ75mm×25mm、厚さ1mmのガラス製基板(1)の内部に幅300μm、深さ100μmのマイクロチャンネル(2)が設けられており、マイクロチャンネル(2)の両端が分岐して幅100μm、深さ100μmのマイクロチャンネルが3本ずつ付属し、各マイクロチャンネルの先端に開口部A〜Fを設けて溶液の注入排出が可能なマイクロチップを作製した。
このマイクロチップを用いて以下のように相間分子輸送を行い、細胞中に含まれる蛋白質の分離精製抽出を行った、
開口部Aからは細胞を破砕して600gで10分間遠心した上清を回収し、弱酸性に調整した溶液を
、開口部Bからは非イオン性海面活性剤を0.2Mで溶解したイソオクタン溶液を、また開口部Cからは塩化カリウムを1Nで溶解した水溶液を、マイクロシリンジポンプを用いて流入する。3つの溶液はマイクロチャンネル内で合流した後、3つの液相が並行する層流を形成し、分岐部でそれぞれの液相に別れ、開口部D〜Fから排出される。
3つの液相が並行する層流を形成しているマイクロチャンネル(1)内で、蛋白質を拡散によって水相からイソオクタン相への相間移動させ、さらに塩化カリウムを含む水相に相関移動させた。
上記抽出操作を行った後に開口部D〜Fから排出される溶液を回収した。
開口部Dから回収される水相の溶液は、Protein assay dye reagent(バイオラッド)を用い溶液中の蛋白質を定量した。
開口部Eから回収される有機相の溶液は、界面活性剤を含むリン酸塩緩衝液を2倍の量で加え撹拌した後に、Protein assay dye reagentを用い溶液中の蛋白質を定量した。また、有機溶媒に含まれる水分量より、逆ミセルの内部直径は約13nmと推算された。
開口部Fから回収される塩化カリウムを含む水相の溶液は、塩酸とリン酸塩緩衝液を加えてpHを中和した後にProtein assay dye reagentを用いて蛋白質を定量した。
また、開口部Aに投入した細胞破砕液を遠心分離した上清と同じ量の溶液を遠心分離し、界面活性剤で膜蛋白質を可溶化した後、Protein assay dye reagentを用いて溶液中の蛋白質を定量した。
(各溶液の蛋白質の分布比率)
実施例で定量した蛋白質の量について、開口部Aに投入した上清の蛋白量を100とした比較の値を表1に示す。
【0015】
【表1】
【0016】
【発明の効果】
本発明によって、マイクロチップ上で、迅速、かつ高精度での各種の超微量分子、特に蛋白質などの生化学的活性物質を、細胞を破砕した溶液より選択的に分離・抽出を可能とする分子輸送抽出方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の分子輸送抽出方法を行うマイクロチップの一例の模式図である。
【符号の簡単な説明】
1 ガラス製基板
2 マイクロチャンネル
A 開口部A
B 開口部B
C 開口部C
D 開口部D
E 開口部E
F 開口部F
Claims (6)
- 幅500μm以下、深さ300μm以下のマイクロチャンネル内において、被抽出物質を水相と逆ミセル有機相界面を通しての分子輸送を行って逆ミセル抽出することを特徴とする分子輸送抽出方法。
- マイクロチャンネル内で水相と逆ミセル有機相が接触しながら、各相が層流を維持した状態で並列に流れる請求項1記載の分子輸送抽出方法。
- 被抽出物質が水相に含まれ、水相と逆ミセル有機相界面を通して逆ミセル有機相に抽出を行う請求項1または請求項2記載の分子輸送抽出方法。
- 被抽出物質が逆ミセル有機相に含まれ、水相と逆ミセル有機相界面を通して水相に抽出を行う請求項1または請求項2記載の分子輸送抽出方法。
- 逆ミセル有機相で形成される逆ミセルの内部直径が1〜30nmである請求項1〜4いずれか記載の分子輸送抽出方法。
- 水相の水溶媒または逆ミセル有機相の有機溶媒に界面活性剤を加えることで逆ミセル有機相を形成する請求項1〜5いずれか記載の分子輸送抽出方法。
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JP (1) | JP2004101493A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007101403A (ja) * | 2005-10-05 | 2007-04-19 | Hitachi Software Eng Co Ltd | 生体高分子検出方法及び生体高分子検出用器具 |
JP2008533460A (ja) * | 2005-03-11 | 2008-08-21 | セントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック | 流体分離装置 |
US8920845B2 (en) | 2006-11-02 | 2014-12-30 | National University Corporation Nagoya University | Method of producing microcapsules |
-
2002
- 2002-09-13 JP JP2002267623A patent/JP2004101493A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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