JP2004101308A - 超伝導電磁石を備えたプローバ装置および超伝導電磁石の冷却装置 - Google Patents

超伝導電磁石を備えたプローバ装置および超伝導電磁石の冷却装置 Download PDF

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Abstract

【課題】真空容器の内部に超伝導電磁石を備え、試料台に強い磁場を負荷することができるプローバ装置を提供する。
【解決手段】本発明にかかるプローバ装置は、真空容器2の内部に超伝導電磁石3と試料台4とを備えている。超伝導電磁石3は、試料台4に対して平行に密着させて一体構造としている。試料台4の内部には冷却剤としてヘリウムガスを流入することにより、冷却し、熱伝導により超伝導電磁石3も冷却している。これにより、超伝導電磁石3の超伝導性を維持して、試料台4に強い磁場を負荷できる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超伝導電磁石の冷却装置およびそれを備えたプローバ装置(探針装置)に関するものであり、特に、試料の磁気的・電気的特性の測定に好適に用いることのできる磁場発生機能を備えたプローバ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
次世代のメモリー等の電子デバイスとして、磁気特性を利用したMRAM(Magnetic Random Access Memory)、TMR(Tunneling Magneto Resistive)やGMR(Giant Magneto Resistive)、およびスピンエレクトロニクスの研究開発が精力的に行われている。
【0003】
このような電子デバイスの研究開発、製品および工程評価分析においては、電気的特性試験および磁気的伝導特性試験などの各種物性特性試験を行うことが重要となる。電気的特性試験は、開発製品などの試料を触針して、試料の電導性を評価する試験であり、磁気的伝導特性試験は、磁気による試料の抵抗値変化などの特性を評価する試験である。このような各種物質特性試験は、研究開発のスピードアップ、工程内試験として必須の試験である。なお、このような物性特性試験を行う対象には、電子デバイスばかりではなく、半導体物質および酸化物のセラミックス等の電子デバイス材料が含まれる。
【0004】
電気的特性の測定には、プローバ装置(探針装置)が汎用されている。例えば、半導体装置の電気的特性をウエハの段階で測定するために、プローバ装置が用いられる。一般に、室温以下1ケルビン(K)程度までの温度範囲での電気的特性測定する場合には、プローバ装置と、ヘリウムガスにより冷却されるクライオスタット(低温恒温槽装置:cryostat;cryogenic thermostat)とが組み合わせられる。この場合、クライオスタットの内部構造は、霜付き防止などの意味から、プローブ装置を内蔵した真空容器にする必要がある。すなわち、真空容器の内部にプローバ装置を内蔵している必要がある。
【0005】
一方、磁気的特性の測定には、クライオスタットが使用される。例えば、低温での磁気的特性を測定する場合、図7に示されるような、液体ヘリウムが充填されたクライオスタット50が使用される。クライオスタット50は、真空容器51内に液体ヘリウムタンク52と、超伝導電磁石53とが備えられている。なお、磁場を発生させる超伝導電磁石53は、電磁石を超伝導状態に保つために液体ヘリウムに浸漬して冷却されており、試料は超伝導電磁石53のほぼ中央部54に設置される。
【0006】
ところが、クライオスタット50を用いて磁気的特性を測定する場合、試料に接続する電極は、ボンディングなどの方法により接続しなければならない。このため、試料毎に電極を付け替える必要があり、また、付け替える時にはいったんクライオスタットの外部に試料を取り出す必要がある。その結果、測定用のリード線を引き出すので、測定が煩雑で長時間を要することになる。すなわち、クライオスタット50は、多くの試料の磁気的特性を評価するには不適切であるという問題点を有している。
【0007】
そこで、この問題を解決するために、例えば、図8に示されるような、真空容器56内に試料台57を備え、さらに、真空容器56を包囲するように収容室58に常伝導電磁石59を備えたプローバ装置55が使用される。プローバ装置55であれば、真空容器56に備えられた図示しないプローバ端針により試料に電流が供給される。これにより、試料を装置外部に取り出すことなく電極の付け替えが可能となる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、新規の電子デバイスや半導体物質の開発段階では、極低温(数十ケルビン(K)以下の温度)でのみ、目的とする特性を発現する場合が多い。また、製品の不良検査においては、室温では検出できない特性項目もある。したがって、このような試料の電気的・磁気的特性を測定するプローバ装置は、試料に強い磁場を負荷することができ、かつ、試料の温度を低温に維持できるものである必要がある。
【0009】
ところが、図8のプローバ装置55において、試料台57に1テスラ程度以上の強磁場を負荷するためには、極めて巨大な常伝導電磁石59が必要となるが、巨大な常伝導電磁石58を備えることは非現実的である。すなわち、従来のプローバ装置55では、試料台57に1テスラ以上の強磁場を負荷することができないという問題点を有している。なお、その他にも常伝導磁石58が大型であるため、大量の電流を流す必要がある;プローバ装置が大型化する;装置価格が高騰する;などの問題も生じる。
【0010】
前述のように、一般的な磁気的測定では、強磁場を得るために、例えば、特開平2001−203106号公報(公開日平成13年7月27日)に記載の超伝導電磁石が用いられるが、これまでにプローバ装置に超伝導電磁石が適用された例はない。その理由は、超伝導電磁石をプローバ装置に適用するには、通常10K以下の冷却が必要であるが、超伝導電磁石の冷却が困難であった。
【0011】
その原因として、従来より超伝導電磁石は、超伝導転移温度が10K程度のNb−Ti線材を用いているため、液体ヘリウムに浸漬して冷却する方式がとられてきたことが挙げられる。このため、プロ−バ装置に超伝導電磁石を用いる場合には、超伝導電磁石をヘリウムタンクの中に入れねばならない。その結果、電磁石使用中にヘリウムがどんどん気化していくので、長時間の使用に耐える超伝導電磁石には、大きなヘリウムタンクが必要となる。したがって、真空プロ−バ装置の内部にこのような大きなヘリウムタンクを包含するためには、真空プロ−バ容器も大型化せねばならず、現実化にはコストの増大等の大きな困難を伴う。
【0012】
このように、真空容器の内部に超伝導電磁石を備えたプローバ装置は、未だ開発されていないのが現状である。したがって、超伝導電磁石を備えたプローバ装置が開発されれば、試料に強い磁場を負荷することができ、かつ、試料の温度を低温に維持できる。また、試料の磁気的・電気的特性を同じ装置で測定できると考えられる。したがって、試料の測定時間の大幅な短縮が予想される。
【0013】
そこで、本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、真空容器の内部に超伝導電磁石を備え、試料台に1テスラ程度以上の高磁場を負荷することができるプローバ装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかるプローバ装置は、上記の課題を解決するために、真空容器に備えられた試料の電子デバイス特性を評価するプローバ装置において、試料台と、試料に電子デバイス特性を評価するための評価手段を供給する複数のプローバ端針と、試料に磁場を負荷する磁場発生手段とを真空容器の内部に備えていることを特徴としている。
【0015】
本発明において、「電子デバイス特性を評価」とは、新規の電子デバイス素子、既存の電子デバイス製品または製造工程途中における製品などの試料を、電子デバイスとして、または製品として適用できるか否かの評価を行うことを意味する。電気的特性、磁気的特性などの各種物性試験を行い、その特性を評価することを意味する。例えば、磁気抵抗特性、トランジスタ特性、電流電圧特性などの特性を評価することを意味する。
【0016】
上記「磁場発生手段」は、試料に磁場を負荷できるものであれば特に限定されるものではなく、超伝導電磁石磁石、常伝導電磁石、永久磁石、等が挙げられる。このうち、強い磁場を負荷できる超伝導電磁石が特に好ましい。以下の説明では、磁場発生手段を超伝導電磁石として説明する。
【0017】
また、上記「評価手段」は、試料の電子デバイス特性を評価するための手段、例えば、電流、電圧、磁場などを意味する。
【0018】
従来のプローバ装置は、試料台を備えた真空容器の外部に常伝導電磁石を備えている。その結果、試料台と常伝導電磁石との距離が遠くなり、試料に弱い磁場しか負荷できなかった。また、真空容器の外部に常伝導磁石が配置されるので、大型の常伝導電磁石が必要であった。すなわち、プローバ装置自体も大型化していた。
【0019】
これに対して、本発明のプローバ装置は、試料台を備えた真空容器の内部に超伝導電磁石などの磁場発生手段を備えている。その結果、試料台と超伝導電磁石との距離が近くなり、試料に1テスラ程度以上の強い磁場を負荷できる。これにより、試料の電気的・磁気的特性を測定することができる。また、プローバ端針により試料に電力が供給されるので、試料毎に電極を付け替える必要がない。したがって、多くの試料の電気的・磁気的特性を効率よく測定できる。また、真空容器の内部に超伝導電磁石を備えているので、従来のようにプローバ装置自体が大型化することもない。
【0020】
本発明にかかるプローバ装置は、上記の構成に加えて、さらに、上記超伝導電磁石および/または上記試料台の温度を制御する温度制御手段を備えていてもよい。
【0021】
新規の電子デバイスや半導体物質の開発段階では、極低温でのみ、目的とする特性を発現する場合が多い。また、製品の不良検査においては、室温では検出できない特性項目もある。したがって、試料の電気的・磁気的特性を測定するには、試料の測定温度を制御して、幅広い温度範囲で測定できることが好ましい。
【0022】
上記の構成によれば、超伝導電磁石および/または試料台の温度を制御する温度制御手段を備えている。これにより、温度を変化させて、試料の電気的・磁気的特性を測定することができる。
【0023】
本発明にかかるプローバ装置は、上記の構成に加えて、上記温度制御手段は、冷却剤により上記超伝導電磁石および/または上記試料台を冷却してもよい。
【0024】
上記の構成によれば、冷却剤により超伝導電磁石および/または試料台が冷却される。これにより、超伝導電磁石が超伝導性を失い常伝導状態となるいわゆるクエンチを防止できる。また、試料台を冷却すれば、低温での試料の電気的・磁気的特性を測定することができる。なお、冷却は、超伝導電磁石と試料台とのそれぞれを直接冷却してもよいし、試料台を冷却して熱伝導により間接的に超伝導電磁石も冷却してもよい。
【0025】
本発明にかかるプローバ装置は、上記の構成に加えて、上記温度制御手段が、上記磁場発生手段に電力を供給してもよい。
【0026】
すなわち、温度制御手段が、超伝導電磁石の温度制御(冷却)と超伝導電磁石への電力供給とを行うことを意味する。換言すれば、温度制御手段は、リード線の役割も果たすことになる。例えば、後述する実施形態のように、冷却剤をパイプに通して超伝導電磁石を冷却する場合、そのパイプの内部に冷却剤を通して真空容器に冷却剤を供給して超伝導電磁石を冷却すると共に、そのパイプに電流を流して超伝導電磁石に電力を供給する構成が挙げられる。
【0027】
リード線は、超伝導電磁石に電力を供給するため、最も熱の発生しやすい部分である。熱が発生すれば、超伝導電磁石がクエンチする可能性がある。しかし、上記の構成によれば、中空(パイプ状)のリード線に、冷却剤を流入させるので、超伝導電磁石に強磁場を負荷するために大きな電流を流しても、それにより発生する熱を効率よく冷却できる。これにより、超伝導電磁石のクエンチを確実に防止でき、また、装置も簡略化できる。
【0028】
なお、このような場合、温度制御手段は、発生する熱を冷却できれば特に限定されるものではないが、磁場発生手段に供給する電力を消費しにくい、無酸素銅などの低抵抗性の金属であることが好ましい。
【0029】
上記の構成によれば、超伝導電磁石に電圧または電流を供給するリード線などの電力供給手段の形状は中空(すなわちパイプ形状)であり、その内部に冷却剤を流入させている。これにより、リード線を効率よく冷却できる。
【0030】
本発明にかかるプローバ装置は、上記の構成に加えて、上記冷却剤は、ヘリウムガスであることが好ましい。
【0031】
例えば、冷却剤として液体ヘリウムを用いた場合に、熱により超伝導電磁石がクエンチしてしまったとすると、その時にヘリウムガスが大量に発生して装置が破損する場合がある。ところが、冷却剤としてヘリウムガスを用いれば、たとえ、超伝導電磁石がクエンチしたとしても、ヘリウムガスが大量に発生することはない。それゆえ、装置が破損するのを防止できる。
【0032】
本発明にかかるプローバ装置は、上記の構成に加えて、上記超伝導電磁石は、収容手段に収容されていてもよい。
【0033】
すなわち、真空容器の内部には、真空のプローバ容器内部とは仕切られた収容手段に収容された超伝導電磁石が備えられていることになる。したがって、真空容器の内部には、試料台と、収容手段に収容された超伝導電磁石とが独立して存在している。これにより、超伝導電磁石と試料台とを断熱できる。それゆえ、試料台の温度を上昇させても、超伝導電磁石のクエンチを防止できる。
【0034】
本発明にかかる超伝導電磁石の冷却装置は、上記の課題を解決するために、上記温度制御手段は、上記試料台および上記収容手段のそれぞれに設けられていてもよい。
【0035】
上記の構成によれば、試料台および収容手段のそれぞれに温度制御手段が備えられている。すなわち、試料台と超伝導電磁石とのそれぞれの温度制御が可能である。これにより、試料台と超伝導電磁石との冷却効率を向上できる。したがって、試料台の温度を上昇させても、超伝導電磁石のクエンチを確実に防止できる。
【0036】
本発明にかかる超伝導電磁石の冷却装置は、上記の構成に加えて、上記試料台と、上記収容手段とが、遮断手段により遮断されていてもよい。
【0037】
上記の構成によれば、遮断手段が試料台と超伝導電磁石が収容される収容手段とを遮断している。これにより、試料台と超伝導電磁石とがより一層断熱される。したがって、試料台の温度を上昇させても、超伝導電磁石がクエンチを確実に防止して、試料に強い磁場を負荷できる。
【0038】
本発明にかかるプローバ装置は、上記の構成に加えて、上記冷却剤を上記試料台または上記収容手段の内部に流入する流入口と、上記冷却剤を上記試料台または上記収容手段の外部に流出する流出口との間に、冷却剤の進行方向を制御する制御手段が備えられていてもよい。
【0039】
上記の構成によれば、冷却剤の流入口と流出口との間に制御手段が設けられている。これにより、冷却剤は、試料台または収容手段の内部を一方向に進むことになる。したがって、試料台または収容手段を一層効率よく冷却できる。
【0040】
本発明にかかるプローバ装置は、上記の構成に加えて、上記流入口および上記流出口に、上記磁場発生手段の温度を保持する保持手段が接続され、上記磁場発生手段と当該保持手段とが直接接続されていてもよい。
【0041】
上記の構成によれば、冷却剤の流入口および流出口に、超伝導電磁石の温度(超伝導電磁石を構成する超伝導線材の温度)を保持する保持手段(例えば、いわゆるサーマルアンカーなど)が直接接続され、当該保持手段と超伝導電磁石とが接続されている。換言すれば、保持手段には、温度制御手段と、磁場発生手段とが接続されている。すなわち、温度制御手段は、磁場発生手段を冷却すると共に、磁場発生手段に電力の供給も行い、温度制御手段と保持手段とがリード線の役割を果たす。リード線は最も熱の発生しやすい部分であるが、冷却剤によりこの熱を効率よく冷却でき、磁場発生手段も冷却できる。
【0042】
なお、保持手段は、温度制御手段に接続され磁場発生手段に電力を供給し、また磁場発生手段の温度をできる限り維持できることが好ましいので、無酸素銅を用いることが好ましい。無酸素銅は、低温においても高い熱伝導性を持つため、均一かつ迅速な冷却が可能である。
【0043】
本発明にかかるプローバ装置は、上記の構成に加えて、上記磁場発生手段は上記試料台の試料設置面に対して、平行または垂直に配置されてもよい。
【0044】
試料の電気的・磁気的特性を測定する場合には、試料に垂直または水平方向の磁場を負荷することが多い。例えば、一般にGMR素子などの磁気デバイスにおいて、素子磁気抵抗の制御は、外部水平磁場もしくは垂直磁場により行われている。上記の構成によれば、試料には、水平磁場または垂直磁場が負荷されるので、磁気デバイスにおける素子磁気抵抗を評価することができる。
【0045】
本発明にかかるプローバ装置は、上記の課題を解決するために、上記超伝導電磁石と、上記試料台とが一体構造となっていることを特徴としている。すなわち、超伝導電磁石の少なくとも一部が試料台に接触しているということもできる。また、超伝導電磁石が収容された収容手段と試料台とが一体構造となっていてもよい。
【0046】
このように一体構造となっていれば、試料台を冷却するだけで、熱伝導により同時に超伝導電磁石も冷却することができる。
【0047】
本発明にかかるプローバ装置は、上記の構成に加えて、上記温度制御手段は、上記試料台の温度を2ケルビン(K)〜400ケルビン(K)に制御してもよい。
【0048】
これにより、極低温〜室温程度まで幅広く、試料の電気的・磁気的特性を測定することができる。なお、2ケルビン(K)〜4.2ケルビン(K)の温度範囲は、ヘリウムガスを減圧して得ることができる。
【0049】
本発明にかかる冷却装置は、上記の課題を解決するために、真空容器の内部に収容されている超伝導電磁石を冷却する超伝導電磁石の冷却装置において、超伝導電磁石と、ヘリウムガスにより超伝導電磁石を冷却する冷却手段とを備えていることを特徴としている。
【0050】
従来の超伝導電磁石の冷却装置は、超伝導電磁石を液体ヘリウムなどに浸漬させることにより冷却されていた。しかし、超伝導電磁石を冷却するために、ヘリウムガスを適応された例はない。超伝導電磁石の冷却に、ヘリウムガスが利用されなかった理由の1つには、従来、前述したプローバ装置ではなく、クライオスタットが主に用いられていたことが考えられる。クライオスタットの場合、超伝導電磁石は、液体ヘリウムに浸漬して冷却する必要があるからである。
【0051】
上記の構成によれば、従来用いられていないヘリウムガスを用いて、超伝導電磁石を冷却できる。これにより、例えば、最近になり有効性が認められてきた低温プローバ装置に、超伝導電磁石を導入できる。すなわち、超伝導電磁石を備えたプローバ装置を提供できる。
【0052】
本発明にかかる冷却装置は、上記の課題を解決するために、真空容器の内部に収容されている超伝導電磁石を冷却する超伝導電磁石の冷却装置において、超伝導電磁石と、超伝導電磁石に冷却剤と電力とを供給する供給手段と、当該供給手段に接続され超伝導電磁石の温度を保持する保持手段とを真空容器の内部に備えていることを特徴としている。
【0053】
上記の構成によれば、供給手段は、冷却剤を真空容器の内部に供給し、超伝導電磁石を冷却すると共に、超伝導電磁石に電力を供給している。さらに、供給手段と保持手段とが直接接続されている。すなわち、供給手段と保持手段とからリード線が構成されている。リード線は最も熱の発生しやすい部分である。しかし上記の構成によれば、冷却剤がリード線(すなわち、供給手段と保持手段の両方)に供給されるので、1テスラ程度以上の磁場を発生させるために、大電流を流しても、発生する熱を効率よく冷却でき、超伝導電磁石の超伝導性を維持して効率用よく冷却できる。それゆえ、超伝導電磁石のクエンチを確実に防止できる。
【0054】
本発明にかかる冷却装置は、上記の構成に加えて、さらに、上記冷却剤を真空容器の内部に流入する流入口と、上記冷却剤を真空容器の外部に流出する流出口との間に、冷却剤の進行方向を制御する制御手段を備えていてもよい。
【0055】
上記の構成によれば、冷却剤の流入口と流出口との間に制御手段が設けられている。これにより、冷却剤は、真空容器の内部を一方向に進むことになる。したがって、超伝導電磁石を一層効率よく冷却できる。
【0056】
本発明にかかる冷却装置は、上記の構成に加えて、上記冷却剤は、ヘリウムガスであることが好ましい。
【0057】
冷却剤としてヘリウムガスを用いれば、たとえ、超伝導電磁石がクエンチしたとしても、ヘリウムガスが大量に発生することはない。それゆえ、装置が破損するのを防止できる。
【0058】
本発明にかかる超伝導電磁石の冷却方法は、上記の課題を解決するために、真空容器の内部に備えられた超伝導電磁石を冷却する超伝導電磁石の冷却方法において、ヘリウムガスにより超伝導電磁石を冷却することを特徴としている。
【0059】
従来の超伝導電磁石の冷却装置は、超伝導電磁石を液体ヘリウムなどに浸漬させることにより冷却されていた。しかし、超伝導電磁石を冷却するために、ヘリウムガスを適応された例はない。上記の構成によれば、従来用いられていないヘリウムガスを用いて、超伝導電磁石を冷却できる。
【0060】
また、本発明にかかる超伝導電磁石の冷却方法は、真空容器の内部に備えられた超伝導電磁石の冷却方法において、冷却剤により上記超伝導電磁石を冷却する際に、超伝導電磁石に電力を供給する中空のリード線に冷却剤を流入させる構成であってもよい。
【0061】
上記の構成によれば、中空のリード線に冷却剤が流入される。リード線は、超伝導電磁石に電力を供給するため、最も熱の発生しやすい部分である。熱が発生すれば、超伝導電磁石がクエンチする可能性がある。しかし、上記の構成によれば、リード線に冷却剤を流入させているので、1テスラ程度以上の磁場を発生させるために、超伝導電磁石に大きな電流を流してもリード線を効率よく冷却できる。
【0062】
このように、中空のリード線は、超伝導電磁石に電力を供給する役割と、超伝導電磁石を冷却する役割とを果たす。また、大電流を流すことにより発生する熱を抑制できるので、超伝導電磁石の超伝導性を維持できる。それゆえ、超伝導電磁石のクエンチを確実に防止できる。
【0063】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図1ないし図6に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0064】
〔実施の形態1〕
本発明にかかるプローバ装置の第1の実施形態について、図1ないし図3に基づいて説明する。
【0065】
本発明にかかるプローバ装置は、本発明にかかる超伝導電磁石の冷却装置を備えた、磁気プローバ装置である。
【0066】
図1は、本実施形態のプローバ装置の特徴部分である、超伝導電磁石の冷却装置1の構成を示した斜視図である。図1に示されるように、超伝導電磁石の冷却装置1は、真空容器2内に、超伝導電磁石3と、試料台4とを備えている。また、この冷却装置を備えたプローバ装置には、試料台4に設置された試料に電子デバイス特性を評価するための電流、磁場などの評価手段を供給するプローブ端針が真空容器1内に内蔵されている。
【0067】
超伝導電磁石3(磁場発生手段)は、図示しない電源からの電力の供給により磁界を発生し、試料台4に磁場を負荷する。
【0068】
超伝導電磁石3は、超伝導体線材をコイル状に巻いた電磁石であり、消費電力が極めて少なくて済み、体積も小さく、強磁場が得られるという利点がある。超伝導体線材としては、一般的に用いられる、Cu被覆Nb−Ti線材を用いればよい。
【0069】
試料台4は中空であり、試料台4の内部に2本の冷却用配管(温度制御手段、冷却手段、供給手段)5が接続され、冷却剤としてヘリウムガスが供給される。その結果、試料台4はヘリウムガスにより冷却され、2K〜10K程度の温度に設定することができる。なお、冷却用配管5は、一方が試料台4の内部にヘリウムガスを供給する流入配管であり、もう一方が試料台4の外部にヘリウムガスを流出する流出配管である。
【0070】
冷却剤としては、超伝導電磁石3の超伝導性を維持できればよく、ヘリウムガスのような気体、液体ヘリウム、液体水素などのような液体というように、冷却剤の状態は特に限定されない。ただし、例えば、液体ヘリウムを用いた場合、超伝導電磁石3の熱により、ヘリウムガスが大量に発生して装置が破損する虞があるため、冷却剤としては気体が好ましい。超伝導電磁石3を効率的に維持し、かつ、超伝導性を維持するためには、冷却剤がヘリウムガスであることが好ましい。なお、ヘリウムガスの次に沸点の低い物質は水素であるが、その沸点は20Kである。ただし、前述のように、Nb−Ti線材の超伝導転移温度は10K程度であるので、水素ガスでは超伝導性を維持できない。すなわち、Nb−Ti線材を用いる場合には、実質的に気体の冷却剤としては、ヘリウムガスが特に好ましい。
【0071】
また、試料台4には冷却剤が流入されるので、試料台4は熱伝導性の大きい素材であることが好ましい。例えば、金、銀、銅などが挙げられる。これにより、試料台4の試料設置面6の冷却効率が向上する。また、超伝導電磁石3の冷却効率も向上する。
【0072】
本実施形態では、超伝導電磁石3は、試料台4の試料設置面6に略平行に配置され、かつ、一体構造となっている。したがって、超伝導電磁石3は、ヘリウムガスにより冷却された試料台4によって冷却される。これにより、超伝導電磁石3から発生する熱を冷却でき、超伝導電磁石3の超伝導状態を維持できる。このように、超伝導電磁石3と試料台4とを一体構造とすれば、超伝導電磁石3または試料台4の一方をヘリウムガスにより冷却するだけで、試料に強磁場を負荷できる。
【0073】
図1では、試料台4の試料設置面6に超伝導電磁石3を密着させて一体構造としている。しかし、超伝導電磁石3の設置位置は、試料に磁場を負荷することができ、かつ、熱伝導により超伝導電磁石3および試料台4を冷却できれば、特に限定されるものではない。図1のように、超伝導電磁石3を試料台4の試料設置面6に設置すれば、確実に試料に強磁場を負荷できる。また、図1のように超伝導電磁石3が試料台4の試料設置面6内にあれば、効率よく冷却できる。
【0074】
本実施形態では、超伝導電磁石3と試料台4とは平行であるので、試料台4には垂直方向の磁場が負荷される。
【0075】
このように、本実施形態によれば、真空容器2内に超伝導電磁石3と試料台4とが備えられており、その距離も近いので、試料台4に強磁場を負荷できる。また、超伝導電磁石3と試料台4とが一体構造となっており、小型のプローバ装置を提供できる。これにより、超伝導電磁石3と試料台4とを同時に冷却でき、しかも試料に強磁場も負荷できる。
【0076】
なお、超伝導電磁石3は、そのまま試料台4と一体構造としてもよいし、後述のように超伝導電磁石3を真空容器の内部とは仕切られた収容器(収容手段)に収容したものを試料台4と一体構造としてもよい。また、本実施形態では超伝導電磁石と試料台とが一体構造であるため、試料台を加熱すると、熱により超伝導電磁石の超伝導性が失われる可能性があるので、試料台は加熱しない方がよい。
【0077】
〔実施の形態2〕
次に、本発明にかかるプローバ装置の第2の実施形態について、図2〜図4に基づいて説明する。なお、説明の便宜上、前記実施の形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。本実施の形態では、前記実施形態1との相違点について説明するものとする。
【0078】
図2は、本実施形態のプローバ装置の特徴部分である超伝導電磁石の冷却装置10の構成を示した斜視図である。図2に示される超伝導電磁石の冷却装置10は、超伝導電磁石3と試料台4とが一体構造ではなく、それぞれ独立して備えられている。超伝導電磁石3は、真空容器の内部とは仕切られた収容器(収容手段)8に収容されている。収容器8は、その中央部に、試料台4を配置できるようにドーナツ形状となっている。超伝導電磁石3は、真空容器8の形状に沿ったコイル状となっている。なお、収容器8の内部は、真空にしなくてもよい。
【0079】
また、試料台4および収容器8には、それぞれ冷却用配管5が接続されている。すなわち、試料台4および収容器8のそれぞれの温度制御が可能である。したがって、超伝導電磁石3および試料台4のそれぞれを独立して冷却できる。
【0080】
収容器8には、冷却剤であるヘリウムガスの流入配管と流出配管とからなる冷却配管5が接続されるが、さらに、図3に示されるように、収容器8の内部に接続された冷却用配管5の流入配管と流出配管との間に、遮断板(制御手段)11を備えていることが好ましい。これにより、図中の矢印で示したように、ヘリウムガスの進行方向が一方向に制御できる。したがって、超伝導電磁石3の全体を効率よく冷却できる。また、遮断板11を設ける場合、流入配管および流出配管は、遮断板11を介してできる限り近づけることが好ましい。これにより、超伝導電磁石全体を効率よく冷却できる。なお、試料台4も遮断板11を備えていてもよい。
【0081】
さらに、図3では、収容器8の内部に接続された冷却用配管5には、無酸素銅からなる中空のサーマルアンカー(保持手段)13が、溶接または銀ロウ付けなどの方法により、直接接続されている。サーマルアンカー13の周囲には、超伝導電磁石3の両端の超伝導線材13が巻きつけられ、その上からハンダなどでしっかりと、熱的・機械的に接着されている。
【0082】
このような構成では、冷却用配管5とサーマルアンカー13とが超伝導電磁石3へのリード線の役割を果たしており、このリード線は中空である。すなわち、本実施形態では、冷却用配管5は、収容器8にヘリウムガスなどの冷却剤を供給する役割と、超伝導電磁石3に電力を供給するリード線の役割との、両方の役割を果たしていることになる。リード線は、最も熱の発生しやすい部分である。しかし、本実施形態では、冷却用配管5およびサーマルアンカー13がリード線の役割も果たしているので、それらの内部にはヘリウムガスが流れる。したがって、リード線から発生する熱を極めて効率よく冷却でき、さらに、超伝導電磁石3およびその両端の超伝導線材12も効率よく冷却できる。それゆえ、超伝導電磁石3および超伝導線材13も十分に低温に維持できるので、その超伝導性が保持される。
【0083】
サーマルアンカー13として用いられる無酸素銅は、低温においても高い熱伝導性を持つ特性を有する。このため、超伝導電磁石3に電力を供給しながら、均一かつ迅速な冷却が可能である。冷却用配管5とサーマルアンカー13とによりリード線を構成する場合、サーマルアンカー13のみではなく冷却用配管5も低抵抗であることが望ましいので、冷却用配管5も無酸素銅からなることが好ましい。これにより、一層効率よく、リード線から発生する熱を極めて効率よく冷却でき、超伝導電磁石3および超伝導線材13も十分に低温に維持できるので、その超伝導性が保持される。
【0084】
本実施形態では、超伝導電磁石3は収容器8に収容されているので、超伝導電磁石3と試料台4とは独立している。すなわち、超伝導電磁石3は試料台4と断熱されている。したがって、試料台4をヒーターなどにより加熱することもできる。試料台4を加熱する場合、断熱効率を一層よくするために、試料台4と収容器8とを熱輻射シールド板(遮断手段)14により遮断することが好ましい。これにより、試料台4を加熱して発生する熱が、収容器8に伝導しない。すなわち超伝導電磁石3に熱が伝導しないので、超伝導電磁石3がクエンチするのを防止できる。
【0085】
ここで、具体例を挙げて、試料台4と収容器8とを遮断する構成について説明する。図4および図5は、試料台4と真空容器8とを熱輻射シールド板14により遮断したプローバ装置の断面図である。
【0086】
図4および図5に示されるように、真空容器2内には、試料台4と、真空容器8の内部に設けられた超伝導電磁石3と、試料に電流を供給するプローブ端針15を先端に備えたプローブアーム16とが備えられている。
【0087】
超伝導電磁石3は収容器8に備えられ、かつ、試料台4と収容器8とは、熱輻射シールド板14により、断熱されている。これにより、試料台4を図示しないヒーターなどで加熱しても、収容器8に熱が伝導しない。すなわち、超伝導電磁石3に熱が伝導しないので、超伝導電磁石3がクエンチするの確実に防止できる。
【0088】
なお、図4および図5のプローバ装置は、のぞき窓18から試料を見ながら、XYZマニピュレーター17に、試料の位置を調節している。また、真空容器2は、真空排気用接続菅20のバルブ19を調節して真空状態としている。
【0089】
また、本実施形態でも、超伝導電磁石3と試料台4とが平行である点は第1の実施形態と同様である。したがって、試料台4には垂直方向の磁場が得られる。
【0090】
このように、本実施形態によれば、収容器8に収容された超伝導電磁石3と、試料台4とが独立して設けられ、そのそれぞれにヘリウムガスが流入する構成となっている。さらに、試料台4と収容器8とが、熱輻射シールド板14により、遮断されているので、試料台4と収容器8とを確実に断熱できる。したがって、試料台4の温度を上昇させることもできる。
【0091】
さらに、冷却用配管5とサーマルアンカー13とからリード線を構成することにより、超伝導電磁石3へ電力を供給しながら、それらの内部にヘリウムガスを通して冷却できる。これにより、当該リード線から熱の発生を抑制して、超伝導電磁石3の冷却を向上させ、超伝導電磁石3の超伝導性を維持しクエンチを防止できる。
【0092】
〔実施の形態3〕
次に、本発明にかかるプローバ装置の第3の実施形態について、図6に基づいて説明する。なお、説明の便宜上、前記実施の形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。本実施の形態では、前記実施形態2との相違点について説明するものとする。
【0093】
図6は、本実施形態のプローバ装置の特徴部分である超伝導電磁石の冷却装置30の構成を示した斜視図である。図6に示される超伝導電磁石の冷却装置30は、2個の超伝導電磁石3が試料台4に対して垂直となるように、対向して配置されている。それ以外は、実施の形態2と同様の構成である。
【0094】
本実施形態によれば、超伝導電磁石3が試料台4に対して垂直に配置されているので、試料台4に水平方向の磁場を負荷できる。その他については、第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0095】
本発明は上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態の構成にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0096】
なお、試料の電気的特性を評価するためのプローバ装置は、例えば、特開2001−284417号公報、特開200−258491号公報などにも開示されているが、いずれのプローバ装置も超伝導電磁石を備えていない構成である。したがって、上記公報に記載のプローバ装置では、試料台に強磁場を負荷することができない。すなわち、試料台に強磁場を負荷できる本発明とは全く異なっている。
【0097】
また、特開平2001−2030106号公報には、超伝導磁石装置について開示されている。しかし、たとえ、この超伝導磁石装置を上記公報に記載のプローバ装置に適用したとしても、以下のような問題点が生じる。すなわち、プローバ装置は試料に電流を供給するためにプローブ端針を先端に有したプローブアーム(通常4本)を真空容器内に内蔵する必要がある。このため、真空容器(真空容器の直径)が大きくなる。したがって、超伝導電磁石およびその冷却装置を真空容器の外周に配置することになる。その結果、超伝導電磁石試料台との距離が遠くなるため、試料台に負荷される磁場は小さくなる;試料台に負荷される磁場を大きくしようとすると、超伝導電磁石が大型化し、コストがかかる;などの問題が生じる。
【0098】
また、上記公報に記載の超伝導磁石装置では、冷却剤として液体ヘリウムを用い、超伝導電磁石を浸漬している。このため、液体ヘリウム容器を真空容器の内部に配置することになる。その結果、超伝導電磁石がクエンチした場合、ヘリウムガスが発生して装置が破損する危険性がある。
【0099】
これに対して、本発明にかかるプローバ装置は、真空容器の内部に超伝導電磁石と試料台とを備えている。これにより、試料台に大きな磁場を負荷できる。また、冷却剤をヘリウムガスとすれば、プローバ装置が破損する危険性もない。さらに、本発明では、超伝導電磁石に電力を供給するリード線をパイプ状とし、そこにヘリウムガスを通して冷却効率を向上させている。このように、本発明と、上記公報とでは、構成が全く異なっており、本発明特有の構成により上記従来の問題を解消することができる。
【0100】
また、前述した実施形態では、超伝導電磁石を磁場発生手段として、真空容器の内部に1テスラ程度以上の強い磁場を加えるプローバ装置について説明したが、その他にも、磁場発生手段として常伝導電磁石または永久磁石などが利用可能である。ただし、常伝導電磁石を用いた場合、非常に大きい常伝導電磁石を備えなければならないので、装置自体も大型化してしまう。また、ネオジウムやサマリウムコバルトなどの強力な永久磁石を用いると、永久磁石と試料台との距離を数mm以下にする必要があり、また均一磁場が得にくくなる。
【0101】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の実施例では、米国Desert Cryogenic社製の2インチウエハ用プローバシステムの試料台部分を改良する例について説明する。
【0102】
〔実施例1〕
試料台の上に超伝導電磁石を設置し、超伝導電磁石を試料台に対して平行として密着させて、一体構造とした。また、冷却剤としてヘリウムガスを用いた。超伝導コイルはNb−Ti系線材を用いて10K以下に冷却した。その結果、試料台には、垂直方向磁場が得られ、その強度は0.5テスラ(5000ガウス)まで上昇させることが可能であった。ただしこの場合には、一体構造であるので、試料の温度を10K以上に上げることは困難であった。なお、試料台には垂直方向の磁場を負荷できた。
【0103】
〔実施例2〕
実施例1とは異なり、超伝導電磁石と試料台を熱輻射シールド板により分離し、それぞれにヘリウムガスを流入して冷却した。超伝導電磁石は、試料台に対して平行に、かつ、試料台の外周を包囲するように配置した。また、超伝導電磁石は、収容器に収容した。超伝導電磁石は超伝導を維持する10K以下に保持した。試料台にはヒータも設けた結果、4K〜400Kでの温度制御を可能となった。また、超伝導電磁石と常伝導金属からなる収容器とを接続する部分を無酸素銅(銅サーマルアンカー)とし、これをヘリウムガスにより冷却した。さらに、この収容器から真空容器外部に電流を引き出すリード線を空洞パイプ状とし、その内部に冷却用ヘリウムガスを流した。これにより、ジュール発熱によって生じる温度上昇をHeガス流により極力抑えることが可能であり、1テスラ以上の磁場を発生することができた。なお、試料台には垂直方向の磁場を負荷できた。
【0104】
〔実施例3〕
真空容器の内部に、収容器に収容した超伝導電磁石を2個設け、試料台に対して垂直となるように対向して配置した。それ以外は、実施例2と同様の構成とした。その結果、試料台には水平方向の磁場を負荷でき、その強度は、1テスラ以上が可能であった。
【0105】
【発明の効果】
以上のように、本発明のプローバ装置は、真空容器の内部に超伝導電磁石を備えることができるので、以下のような効果がある。▲1▼試料に対して1テスラ(1000ガウス)以上の強い磁場を負荷することができる。▲2▼試料台の温度制御が可能である。特に、極低温の制御が可能である。▲3▼装置が小型である。▲4▼測定試料の取り替えが容易である。
【0106】
また、本発明のプローバ装置によれば、多くの試料であっても効率よく試料の電気的・磁気的特性を同じ装置で測定でき、さらに、測定時間の大幅な短縮が期待される。また、材料評価とデバイス評価を同時に行うことができるので、製品の開発のスピードアップに威力を発揮する可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態における超伝導電磁石の冷却装置の斜視図である。
【図2】本発明の第2の実施形態における超伝導電磁石の冷却装置の斜視図である。
【図3】本発明の第2の実施形態における超伝導電磁石の冷却装置の斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態におけるプローバ装置の断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態におけるプローバ装置の断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態における超伝導電磁石の冷却装置の斜視図である。
【図7】従来の磁気的特性を測定するクライオスタットの断面図である。
【図8】従来の電気的特性を測定するプローバ装置の斜視図である。
【符号の説明】
1  超伝導電磁石の冷却装置
2  真空容器
3  超伝導電磁石(磁場発生手段)
4  試料台
5  冷却用配管(温度制御手段、冷却手段、供給手段)
6  試料設置面
8  収容器(収容手段)
10  超伝導電磁石の冷却装置
11  遮断板(制御手段)
12  超伝導線材
13  サーマルアンカー(保持手段)
14  熱輻射シールド板(遮断手段)
15  プローバ端針
16  プローブアーム
17  XYZマニピュレーター
18  のぞき窓
19  バルブ
20  真空排気用接続菅
30  超伝導電磁石の冷却装置

Claims (17)

  1. 真空容器に備えられた試料の電子デバイス特性を評価するプローバ装置において、
    試料台と、試料に電子デバイス特性を評価するための評価手段を供給する複数のプローバ端針と、試料に磁場を負荷する磁場発生手段とを真空容器の内部に備えていることを特徴とするプローバ装置。
  2. さらに、上記磁場発生手段および/または上記試料台の温度を制御する温度制御手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のプローバ装置。
  3. 上記温度制御手段は、冷却剤により上記磁場発生手段および/または上記試料台を冷却することを特徴とする請求項2に記載のプローバ装置。
  4. 上記温度制御手段が、上記磁場発生手段に電力を供給することを特徴とする請求項2または3に記載のプローバ装置。
  5. 上記冷却剤は、ヘリウムガスであることを特徴とする請求項3または4に記載のプローバ装置。
  6. 上記磁場発生手段は、収容手段に収容されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプローバ装置。
  7. 上記温度制御手段は、上記試料台および上記収容手段のそれぞれに設けられていることを特徴する請求項6に記載のプローバ装置。
  8. 上記試料台と、上記収容手段とが、遮断手段により遮断されていることを特徴とする請求項7または8に記載のプローバ装置。
  9. 上記冷却剤を上記試料台または上記収容手段の内部に流入する流入口と、上記冷却剤を上記試料台または上記収容手段の外部に流出する流出口との間に、冷却剤の進行方向を制御する制御手段が備えられていることを特徴とする請求項3〜8のいずれか1項に記載のプローバ装置。
  10. 上記流入口および上記流出口に、上記磁場発生手段の温度を保持する保持手段が接続され、さらに、
    上記磁場発生手段と当該保持手段とが接続されていることを特徴とする請求項9に記載のプローバ装置。
  11. 上記磁場発生手段は上記試料台の試料設置面に対して、平行または垂直に配置されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のプローバ装置。
  12. 上記磁場発生手段と、上記試料台とが一体構造となっていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のプローバ装置。
  13. 上記温度制御手段は、上記試料台の温度を2ケルビン(K)〜400ケルビン(K)に制御することを特徴とする請求項2〜12のいずれか1項に記載のプローバ装置。
  14. 真空容器の内部に収容されている超伝導電磁石を冷却する超伝導電磁石の冷却装置において、
    超伝導電磁石と、ヘリウムガスにより超伝導電磁石を冷却する冷却手段とを備えていることを特徴とする超伝導電磁石の冷却装置。
  15. 真空容器の内部に収容されている超伝導電磁石を冷却する超伝導電磁石の冷却装置において、
    超伝導電磁石と、超伝導電磁石に冷却剤と電力とを供給する供給手段と、当該供給手段に接続され超伝導電磁石の温度を保持する保持手段とを真空容器の内部に備えていることを特徴とする超伝導電磁石の冷却装置。
  16. さらに、上記冷却剤を真空容器の内部に流入する流入口と、上記冷却剤を真空容器の外部に流出する流出口との間に、冷却剤の進行方向を制御する制御手段を備えていることを特徴とする請求項15に記載の冷却装置。
  17. 真空容器の内部に備えられた超伝導電磁石を冷却する超伝導電磁石の冷却方法において、
    ヘリウムガスにより超伝導電磁石を冷却することを特徴とする超伝導電磁石の冷却方法。
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