JP2004099408A - 光ファイバ母材の製造方法、及び光ファイバの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、光ファイバとしたときのRDSなどの光学特性のばらつきがほとんどない光ファイバ母材を容易に実現できる製造方法と、それを用いた光ファイバの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の光ファイバ母材の製造方法は、コア部とクラッド部の一部を有してなる光ファイバコア材11の屈折率分布を測定する第1の工程と、該屈折率分布の測定値より、光ファイバとしたときのRDSのばらつきが−4〜4%となる光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12を算出する第2の工程と、該クラッド部の全厚さ12の算出値に基づいて、前記光ファイバコア材11上に、およその残部のクラッド部13を形成する第3の工程と、該およその残部のクラッド部13を研磨するか、又は該およその残部のクラッド部13の上に、追加のクラッド部を形成する第4の工程を有する構成とする。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明の光ファイバ母材の製造方法は、コア部とクラッド部の一部を有してなる光ファイバコア材11の屈折率分布を測定する第1の工程と、該屈折率分布の測定値より、光ファイバとしたときのRDSのばらつきが−4〜4%となる光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12を算出する第2の工程と、該クラッド部の全厚さ12の算出値に基づいて、前記光ファイバコア材11上に、およその残部のクラッド部13を形成する第3の工程と、該およその残部のクラッド部13を研磨するか、又は該およその残部のクラッド部13の上に、追加のクラッド部を形成する第4の工程を有する構成とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分散スロープ、波長分散などの光学特性のばらつきを抑制した光ファイバの製造方法、及びその半製品である光ファイバ母材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光通信の伝送容量の増大に伴い、波長多重伝送の開発が進められており、40Gbit/s級の高速伝送システムの導入が検討されている。伝送速度が高速になると、許容される波長分散の値は小さくなる。例えば40Gbit/s級の高速伝送システムでは、累積波長分散の許容値が60ps/nmと極端に小さくなることが報告されている(非特許文献1参照。)。
【0003】
また光ファイバの波長分散は、温度によって変動することが知られている(非特許文献2参照。)。
このため使用環境の温度変化による波長分散の変動を考慮すると、実質の累積波長分散の許容値は更に小さいものとなる。そこで伝送用光ファイバとしては、波長分散の小さいものが要求される。
【0004】
また波長多重伝送では、分散スロープを低減し、信号光の波長による波長分散の差を無くし、広い波長帯域でほぼ一定の波長分散とすることが要求される。
例えば分散スロープが0.03ps/nm2/km以下に低減された光ファイバが提案されている(特許文献1参照。)。このような分散スロープの小さい光ファイバは、温度変化による波長分散の変動量が小さく、波長分散が温度に対して安定していることが報告されている(非特許文献3参照。)。
このためこのような分散スロープを小さくした光ファイバ(以下、低分散スロープ型光ファイバと示す。)は、波長多重伝送への実用化が望まれている。
【0005】
低分散スロープ型光ファイバは、MCVD法、外付け法などによって光ファイバ母材を製造し、これを溶融線引きして製造される。低分散スロープ型光ファイバ用の光ファイバ母材は、屈折率分布が複雑であり、製造条件の変動によって長手方向に一定の屈折率分布を形成することが難しく、これにより光ファイバとしたときの光学特性が長手方向に大きく変動する問題がある。
【0006】
図12は、従来の方法で製造された光ファイバ母材において、長手方向の各地点から得られる光ファイバの分散スロープを波長分散で割った値(以下、RDSと示す)の推定値を示す。これは、光ファイバ母材の各地点での屈折率分布より、光ファイバとしたときのRDSをシミュレーションにより算出した値である。図12に示されたように、RDSは0.0032〜0.0039nm−1と大きく変動しており、従来の方法で製造された光ファイバ母材は、屈折率分布が長手方向に変動しており、これにより光ファイバのRDSに大きなばらつきが生じることがわかる。
【0007】
通常、光通信システムでは、伝送用光ファイバの所定の距離毎に、分散補償光ファイバなどを用いた分散補償器を設置し、伝送用光ファイバの波長分散を補償する。精度良く波長分散を補償し、残留分散をほぼゼロとするためには、伝送用光ファイバと分散補償光ファイバにおいて、RDSを精度良く一致させることが有効である。
【0008】
このため伝送用光ファイバでは、長手方向のRDSのばらつきを低減し、分散補償光ファイバモジュールを設置する所定の距離毎でほぼ一定のRDSを示すことが要求される。
例えば40Gbit/sで高速伝送システムを実現する場合、伝送用光ファイバのRDSは、安定して0.0033〜0.0036nm−1の範囲内とする必要があるといわれており、従来の方法で製造された低分散スロープ型光ファイバでは、RDSのばらつきが大きく、波長多重伝送への実用化ができていないのが現状である。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−255433号公報
【非特許文献1】
カミノフ(Kaminow),コッホ(Koch)著,「オプティカル・ファイバー・テレコミュニケーションズ(Optical Fiber Telecommunications)(第IIIA巻)」,(米国),アカデミック・プレス(Academic Press),1997年,p.167
【非特許文献2】
クワン・キム(Kwang S. Kim)等,「ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Journal of Applied Physics)」,(米国),1993年3月,第73巻,第5号,p.2069−2074
【非特許文献3】
加藤孝利,「電子情報通信学会総合大会予稿集」,2000年3月,p.C−3−46
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、上記した事情に鑑みなされたものである。すなわち低分散スロープ型光ファイバなどのように、屈折率分布が複雑で製造条件の変動によって長手方向に一定の屈折率分布を形成することが難しいものであっても、長手方向に所望の屈折率分布が形成でき、これにより光ファイバとしたときのRDSなどの光学特性のばらつきがほとんどない光ファイバ母材を製造できる方法と、それを用いた光ファイバの製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため、請求項1にかかる発明は、コア部とクラッド部の一部を有してなる光ファイバコア材の屈折率分布を測定する第1の工程と、該屈折率分布の測定値より、光ファイバとしたときのRDSのばらつきが−4〜4%となる光ファイバ母材のクラッド部の全厚さを算出する第2の工程と、該クラッド部の全厚さの算出値に基づいて、前記光ファイバコア材上に、およその残部のクラッド部を形成する第3の工程と、該およその残部のクラッド部を研磨するか、又は該およその残部のクラッド部の上に、追加のクラッド部を形成する第4の工程を有することを特徴とする光ファイバ母材の製造方法である。
【0012】
ここで、RDSのばらつきや、後述する波長分散、カットオフ波長、実効断面積、曲げ損失のばらつきは、以下の式(1)で表された値である。式(1)中、平均値とは長手方向の各測定点での測定値を平均した値である。
【0013】
【数1】
【0014】
請求項2にかかる発明は、前記光ファイバとしたときのRDSのばらつきが−2〜2%であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ母材の製造方法である。
【0015】
請求項3にかかる発明は、前記第2の工程が、光ファイバとしたときの1550nmでの分散スロープにおいても0.04ps/nm2/km以下となるように光ファイバ母材のクラッド部の全厚さを算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバ母材の製造方法である。
【0016】
請求項4にかかる発明は、前記光ファイバとしたときの1550nmでの分散スロープが0.02ps/nm2/km以下であることを特徴とする請求項3に記載の光ファイバ母材の製造方法である。
【0017】
請求項5にかかる発明は、前記第2の工程が、光ファイバとしたときの波長分散のばらつきにおいても−5〜5%となるように光ファイバ母材のクラッド部の全厚さを算出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光ファイバ母材の製造方法である。
【0018】
請求項6にかかる発明は、前記第2の工程が、光ファイバとしたときのカットオフ波長のばらつきにおいても−2〜2%であり、かつ実効断面積のばらつきにおいても−2〜2%となるように光ファイバ母材のクラッド部の全厚さを算出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の光ファイバ母材の製造方法である。
【0019】
請求項7にかかる発明は、前記第2の工程が、光ファイバとしたときの曲げ損失のばらつきにおいても−15〜15%となるように光ファイバ母材のクラッド部の全厚さを算出することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の光ファイバ母材の製造方法である。
【0020】
請求項8にかかる発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の光ファイバ母材を線引きし、紡糸することを特徴とする光ファイバの製造方法である。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
本実施形態は、分散スロープが0.02ps/nm2/km以下の低分散スロープ型のノン零分散シフト光ファイバを製造するものに関する。本実施形態の光ファイバ母材の製造方法は、まず第1の工程として、コア部とクラッド部の一部を有してなる光ファイバコア材について、プリフォームアナライザーを用いて屈折率分布を測定する。
ここで、コア部とクラッド部の一部を有してなる光ファイバコア材は、MCVD法、VAD法などの化学気相蒸着法、ロッドインチューブ法などの公知の方法により製造できる。
【0022】
この光ファイバコア材の側面側へ平行光線又はレーザ光線を入射し、透過して出射した光を検光器で検出する。このとき平行光線又はレーザ光線の入射角度と出射角度の測定値より屈折角を求める。そして種々の入射角度での屈折角を求め、屈折率分布を算出する。
光ファイバコア材の屈折率分布の測定は、長手方向に異なる複数の位置で測定する。これにより長手方向の屈折率分布のばらつきを精度良く求めることができる。
【0023】
図1(a)は、第2の工程の概略模式図を示す。第2の工程として、光ファイバコア材11の長手方向の屈折率分布の測定値を用い、シミュレーションによって、目標とする光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12を算出する。ここで、目標とする光ファイバ母材とは、光ファイバとしたとき光学特性のばらつきが所望の範囲となるものである。
【0024】
上記した光ファイバコア材11の長手方向の屈折率分布に基づいて演算を行い、光ファイバ母材から得られる光ファイバにおいて、RDSのばらつきが−4〜4%、分散スロープが0.04ps/nm2/km以下、波長分散のばらつきが−5〜5%、カットオフ波長のばらつきが−2〜2%、実効断面積のばらつきが−2〜2%、曲げ損失のばらつきが−15〜15%となるように、目標とする光ファイバコア材11の屈折率分布を算出し、この算出した屈折率分布から、目標とする光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12を決定する。
【0025】
図1(b)は、第3の工程の概略模式図を示す。上記した第2の工程にて算出されたクラッド部の全厚さ12に基づいて、光ファイバコア材11上に、外付け法によりクラッド用ガラスを堆積させ、およその残部のクラッド部13を形成する。このとき光ファイバコア材11の長手方向の全区間において、算出された目標とする光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12よりも多くなるように、およその残部のクラッド部13を形成する。
【0026】
図1(c)は、第4の工程の概略模式図を示しており、火炎研磨や機械研磨によって、形成されたおよその残部のクラッド部13を研磨し、目標とする光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12とする。研磨するクラッド部の厚みが、第3の工程にて形成されたおよその残部のクラッド部13の厚みの10%以下となるように、およその残部のクラッド部13を形成することが好ましい。
10%を超える場合、クラッド部の研磨に時間がかかり、生産性が低下することとなり、好ましくない。
【0027】
図2は、本実施形態で製造された光ファイバ母材において、長手方向の各地点から得られる光ファイバの分散スロープを波長分散で割った値(以下、RDSと示す)の推定値を示す。RDSは0.0034〜0.0036nm−1であり、このRDSのばらつきは−4〜4%の範囲内である。
【0028】
本実施形態では上記したように、あらかじめ、光ファイバとしたときのRDSが所望の範囲となるクラッド部の全厚さ12を算出し、この算出値となるように第3,4の工程にて、クラッド部の研磨や追加のクラッド部を形成し、光ファイバ母材とする。このため長手方向に所望の屈折率分布が精度良く形成でき、これにより図2に示されたように、光ファイバ母材の長手方向の各地点について、得られる光ファイバのRDSのばらつきが所望の範囲に低減された光ファイバ母材が実現できる。
【0029】
上述した本実施形態の方法によって製造された光ファイバ母材を、長手方向が鉛直方向になるように配置し、この下端を加熱して溶融線引きし、光ファイバ裸線とした後、紫外線硬化性樹脂を光ファイバ表面に塗布する。次に紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化し光ファイバ素線とする。
溶融線引きに係る製造条件は、公知の条件が適用でき、加熱温度、引取速度、引取張力を適宜決定することにより、実用的な機械強度が得られる。以上により光学特性のばらつきが低減され、所望の範囲となる光ファイバが製造される。
【0030】
図3は、本実施形態で製造された光ファイバにおいて、長手方向の各地点でのRDSを示す。このRDSのばらつきは−4〜4%の範囲内であることがわかる。
この光ファイバを伝送路に使用し、更にこのRDSの平均値と同じ値のRDSを有する分散補償器と、所望の距離毎に接続することにより、波長分散をほぼ完全に補償できる。これにより残留分散を低く抑えることができ、高速伝送システムが実現できる。このことは以下のようにして実証できる。
【0031】
一例として40Gbit/sで400kmの高速伝送システムについて、所望の距離毎に分散補償器に接続し、累積波長分散を許容値以内とする場合、必要となる伝送用光ファイバのRDSのばらつきの許容値を例示する。
40Gbit/sでは、伝送用光ファイバの累積波長分散の許容値は60ps/nmである。本実施形態で製造された光ファイバのようにノン零分散シフト光ファイバは、通常、波長分散の温度変化率が0.0006ps/nm/km/℃である。−50〜50℃の温度変化があると、400kmの伝送路には波長分散が最大で24ps/nm変動することになる。
この温度変化による波長分散の変動を考慮すると、実質の累積波長分散の許容値は36ps/nm(0.09ps/nm/km)となる。
【0032】
図4は、ノン零分散シフト光ファイバのRDSの波長依存性を示す。サンプル1が基準となる光ファイバであり、サンプル1に対して1550nmのRDSのばらつきが+3.9%となる光ファイバ(サンプル2)、RDSのばらつきが−2.4%となる光ファイバ(サンプル3)、RDSのばらつきが+6.0%となる光ファイバ(サンプル4)、RDSのばらつきが−3.9%となる光ファイバ(サンプル5)である。
【0033】
このサンプル1〜5の光ファイバを分散補償器に接続して残留分散を測定し、残留分散が許容値の−0.09〜0.09ps/nm/kmの範囲を満たす光ファイバのRDSのばらつきを求める。ここで、分散補償器は、サンプル1の光ファイバの波長分散を補償するように調整されたものである。
【0034】
図5は、補償率が91%の分散補償器Xに接続したときの残留分散を示す。また図6は補償率が109%の分散補償器Yに接続したときの残留分散を示す。
通常、分散補償光ファイバは、補償率90〜110%である。この分散補償器X,Yは、この補償率のばらつきを考慮して設定されたものである。
【0035】
サンプル1〜3のノン零分散シフト光ファイバは、いずれの補償率を有する分散補償器X,Yと接続しても、1520〜1610nmにおいて、残留分散が−0.09〜0.09ps/nm/kmの範囲内であり、累積波長分散の許容値を満たしていることがわかる。このサンプル2,3の光ファイバは、サンプル1に対して、RDSのばらつきが−4〜4%の範囲内である。
【0036】
以上により伝送用光ファイバにおいて、所望の距離毎に分散補償器を接続して波長分散を補償する場合、RDSのばらつきを−4〜4%とすることによって、各経路にて分散補償器によって精度良く波長分散を補償でき、これにより40Gbit/sの高速伝送システムが実現できることがわかる。
【0037】
更に高速伝送システムは、波長多重伝送を行うため、分散スロープを低減する必要がある。本実施形態で製造された光ファイバは、1550nmでの分散スロープが0.04ps/nm2/km以下である。このため、広い伝送波長帯域にて信号光の波長による波長分散の差がほとんど無く、波長多重伝送が実現できる。
【0038】
また図7は、本実施形態で製造された光ファイバにおいて、長手方向の各地点での波長分散を示す。波長分散のばらつきは−5〜5%の範囲内であることがわかる。このため特に長距離伝送用の光ファイバとして使用した場合でも、波長分散のばらつきが小さいため、所望の距離毎に分散補償器と組み合わせることにより、波長分散をほぼ完全に補償でき、残留分散を低く抑えることができる。
【0039】
更に本実施形態で製造された光ファイバは、以下に示されたように、他の光学特性についてもばらつきが所望の範囲となるものである。
図8は、本実施形態で製造された光ファイバにおいて、長手方向の各地点でのカットオフ波長を示す。カットオフ波長のばらつきは−2〜2%の範囲内である。また図9は、本実施形態で製造された光ファイバにおいて、長手方向の各地点での実効断面積を示す。実効断面積のばらつきは−2〜2%の範囲内である。更に図10は、本実施形態で製造された光ファイバにおいて、長手方向の各地点での曲げ損失を示す。曲げ損失のばらつきは−15〜15%の範囲内である。
【0040】
このように、カットオフ波長、実効断面積、曲げ損失の光学特性について、ばらつきが上記した範囲内であるため、伝送用光ファイバとして使用した場合、安定して光伝送が行える。
【0041】
本実施形態の光ファイバ母材の製造方法は、光ファイバコア材11の屈折率分布を測定し、この測定値を用いて光ファイバとしたときのRDSなどの光学特性のばらつきが所望の範囲となるクラッド部の全厚さ12を算出し、この算出値となるようにクラッド部を形成し、光ファイバ母材とする。このため、長手方向に所望の屈折率分布が精度良く形成された光ファイバ母材が実現できる。
【0042】
このようにして製造された光ファイバ母材を用いることによって、上記したように所望の光学特性のばらつきを有する光ファイバが製造できる。製造された光ファイバは、特にRDSなどの光学特性のばらつきが所望の範囲となり、例えば伝送用光ファイバとして用いることによって、40Gbit/s級の高速伝送システムが実現できる。
【0043】
また本実施形態の光ファイバ母材の製造方法は、屈折率分布が複雑なものであっても精度良く製造でき、光ファイバとしたときの光学特性のばらつきを所望の範囲とすることができる。
図11は、本実施形態で製造された光ファイバの屈折率分布である。この屈折率分布は、4重W型屈折率分布と呼ばれ、第1〜3のコア、第1、2のクラッドよりなる。それぞれのコア、クラッドの比屈折率差、径方向の厚さを精密に制御し所望の値とすることによって、分散スロープ、波長分散を低く抑えた光ファイバとなる。
【0044】
このように屈折率分布が複雑であっても、本実施形態では、上記したように、光ファイバとしたときの光学特性のばらつきが所望の範囲となるクラッド部の全厚さ12を算出し、この算出値となるようにクラッド部を形成するため、精度良く製造できる。
【0045】
また本実施形態では、光ファイバ母材の製造方法において、第2の工程にて、目標とする光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12を算出するため、光ファイバ母材から得られる光ファイバにおいて、RDSのばらつきだけでなく、分散スロープ、波長分散、カットオフ波長、実効断面積、曲げ損失などの光学特性のばらつきについても所望の範囲となるクラッド部の全厚さ12を決定することができる。これにより目標とする光ファイバ母材を実現できる。
【0046】
更に第3の工程にて、光ファイバとしたときのRDSのばらつきが−4〜4%となる光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12を算出する。このRDSのばらつきは、好ましくは−2〜2%である。
【0047】
このとき製造された光ファイバ母剤は、図3に示されたようにRDSのばらつきが上記した範囲のばらつきの小さい光ファイバとすることができる。製造された光ファイバを伝送路に使用し、更にこのRDSの平均値と同じ値のRDSを有する分散補償器と、所望の距離毎に組み合わせることにより、波長分散をほぼ完全に補償できる。これにより残留分散を低く抑えることができ、波長多重伝送が実現できる。
【0048】
RDSのばらつきが−4%よりも小さいか又は4%よりも大きい場合、製造された光ファイバのRDSのばらつきが大きく、分散補償器と組み合わせても波長分散を十分に補償できず、特に40Gbit/s級の高速伝送システムの実現が困難となり、好ましくない。
【0049】
また第3の工程にて、光ファイバとしたときの1550nmでの分散スロープにおいても0.04ps/nm2/km以下であり、好ましくは0.02ps/nm2/km以下となるように、光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12を算出する。
このとき製造された光ファイバ母剤は、分散スロープが上記した値の光ファイバとすることができる。製造された光ファイバは、広い伝送波長帯域にて波長による波長分散の差がほとんど無く、波長多重伝送が実現できる。
【0050】
更に本実施形態では、光ファイバとしたときの波長分散のばらつきにおいても−5〜5%であり、好ましくは−3.5〜3.5%となるように、光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12を算出する。
【0051】
このとき製造された光ファイバ母剤は、図7に示されたように波長分散のばらつきが上記した範囲のばらつきの小さい光ファイバとすることができる。製造された光ファイバは、特に長距離伝送用の光ファイバとして使用した場合でも、波長分散のばらつきが小さいため、所望の距離毎に分散補償器と組み合わせることにより、波長分散をほぼ完全に補償でき、これにより残留分散を低く抑えることができる。
【0052】
また本実施形態では、第3の工程にて、光ファイバとしたときのカットオフ波長のばらつきにおいても−2〜2%であり、好ましくは−1.0〜1.0%となるように、光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12を算出する。また実効断面積のばらつきにおいても−2〜2%であり、好ましくは−0.5〜0.5%となるように、光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12を算出する。更に曲げ損失のばらつきが−15〜15%であり、好ましくは−10〜10%となるように、光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12を算出する。
【0053】
このとき製造された光ファイバ母剤は、図8〜10に示されたようにカットオフ波長、実効断面積、曲げ損失のばらつきについても上記した範囲となる光ファイバとすることができる。
製造された光ファイバは、伝送用光ファイバとして使用した場合、上記した光学特性のばらつきが小さいため、安定して光伝送が行える。また光ファイバとしたとき上記した光学特性のばらつきが小さいため、本実施形態の光ファイバ母材を用いることによって、歩留まり良く光ファイバを製造できる。
【0054】
なお、本発明の技術範囲は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば本実施形態の光ファイバ母材の製造方法において、第1の工程では、プリフォームアナライザーを用いた方法以外の光学的方法、X線解析を用いた方法などの公知の方法でも測定できる。具体的には、光ファイバコア材11へX線を照射し、ゲルマニウムなどのドーパント元素から放出される特性X線強度を測定し、ドーパント元素の添加量を算出することで、この添加量から屈折率分布が求められる。
【0055】
また第3の工程では、およその残部のクラッド部13は、VAD法、ロッドインチューブ法などの公知の方法も適用できる。例えばおよその残部のクラッド部13となるガラス管を、光ファイバコア材11に被せる方法によっても形成できる。
【0056】
第3の工程にて、光ファイバコア材11の長手方向の全区間において、算出された目標とする光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12よりも少なく、およその残部のクラッド部13を形成しても構わない。このとき第4の工程にて、およその残部のクラッド部13の上に、追加のクラッド部を形成する。
【0057】
第4の工程では、およその残部のクラッド部13を研磨する方法としては、火炎研磨や機械研磨以外に、化学研磨、化学的火炎研磨などの石英を主体とするガラスを研磨する公知の方法が適用できる。例えばフッ酸を用いてエッチングする方法、酸水素炎や、酸素又はアルゴンなどのプラズマ火炎を用いた方法、六フッ化硫黄などのフッ素系ガスを混合した火炎を用いた方法などによって研磨できる。
上記した方法は単独で使用しても構わない。また研磨を複数回に分けて行う場合、同一の方法で行ってもよいが、2種以上の方法を用いて行っても構わない。
【0058】
また第4の工程にて、およその残部のクラッド部13の上に、追加のクラッド部を形成しても構わない。このとき、追加のクラッド部は、外付け法によってクラッド用のガラスの薄層を蒸着させてもよく、またロッドインチューブ法によって肉厚1〜2mm程度のガラス管を被せる方法でも形成できる。
【0059】
また第4の工程にて、クラッド部を研磨するか、又はクラッド部上に追加のクラッド部を形成する作業は、1回でもよく、また2回以上でも構わない。目標とする光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12となるまで、繰り返し行われる。ここでいうクラッド部とは、およその残部のクラッド部13と、追加のクラッド部とを合わせて指すものであり、光ファイバコア材11に含まれる「クラッド部の一部」を指すものではない。
【0060】
またクラッド部を研磨するか、又はクラッド部上に追加のクラッド部を、2回以上行う場合、光ファイバコア材の屈折率分布を再度測定し、シミュレーションによって、目標とする光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12を再度算出しても構わない。これにより目的とする光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12を、優れた精度で形成できる。
【0061】
第4の工程では、本実施形態のように、およその残部のクラッド部13の研磨、又は追加のクラッド部の形成は、いずれか一方を1回のみ行うようにすることが好ましい。これにより光ファイバ母材の製造にかかる作業が簡略化でき、生産性を向上できる。
【0062】
また本実施形態では、製造する光ファイバ母材は特に限定されず、屈折率分布を適宜決定することで長手方向の製造できる。例えば分散シフト光ファイバ用母材、分散補償光ファイバ用母材、1.3μm帯用シングルモード光ファイバ用母材などが挙げられる。
【0063】
特に本実施形態では、光ファイバとしたときの光学特性のばらつきがほとんどない光ファイバを製造できるため、分散シフト光ファイバ用母材、分散補償光ファイバ用母材のように、複雑な屈折率分布を有し、光学特性のばらつきを小さくすることが困難な光ファイバ母材を好ましく製造できる。
【0064】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、請求項1乃至7のいずれかに係る発明は、RDSのばらつきが−4〜4%の光ファイバとなる光ファイバ母材を製造できる。
この光ファイバ母材を用いて製造された光ファイバは、伝送路に使用し、更にこのRDSの平均値と同じ値のRDSを有する分散補償器と、所望の距離毎に組み合わせることにより、波長分散を精度良く補償できる。これにより残留分散を低く抑えることができ、波長多重伝送が実現できる。
【0065】
また請求項3又は4に係る発明は、分散スロープが0.04ps/nm2/km以下の光ファイバとなる光ファイバ母材を製造できる。
この光ファイバ母材を用いて製造された光ファイバは、広い伝送波長帯域にて波長による波長分散の差がほとんど無く、波長多重伝送が実現できる。
【0066】
また請求項5に係る発明は、波長分散のばらつきが−5〜5%の光ファイバとなる光ファイバ母材を製造できる。
この光ファイバ母材を用いて製造された光ファイバは、特に長距離伝送用の光ファイバとして使用した場合でも、波長分散のばらつきが小さいため、所望の距離毎に分散補償器と組み合わせることにより、波長分散をほぼ完全に補償でき、これにより残留分散を低く抑えることができる。
【0067】
更に請求項6に係る発明は、カットオフ波長のばらつきが−2〜2%であり、かつ実効断面積のばらつきが−2〜2%の光ファイバとなる光ファイバ母材を製造できる。
また請求項7に係る発明は、曲げ損失のばらつきが−15〜15%の光ファイバとなる光ファイバ母材を製造できる。
【0068】
これら光ファイバ母材を用いて製造された光ファイバは、伝送用光ファイバとして使用した場合、カットオフ波長、実効断面積、曲げ損失のばらつきが小さいため、安定して光伝送が行える。また上記したように光学特性のばらつきが小さいため、歩留まり良く光ファイバを製造できる。
【0069】
また請求項8に係る発明は、本発明の製造方法にて製造された光ファイバ母材を線引きし、紡糸することによって、上記したように光学特性のばらつきの少ない光ファイバが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の光ファイバ母材の製造工程の一例を示す概略模式図である。
【図2】本実施形態で製造された光ファイバ母材において、長手方向の各地点から得られる光ファイバのRDSの推定値の一例を示す図である。
【図3】本実施形態で製造された光ファイバのRDSの一例を示す図である。
【図4】光ファイバのRDSの波長依存性の一例を示す図である。
【図5】光ファイバに分散補償光ファイバモジュールを組合わせたときの残留分散の一例を示す図である。
【図6】光ファイバに分散補償光ファイバモジュールを組合わせたときの残留分散の他の一例を示す図である。
【図7】本実施形態で製造された光ファイバの波長分散の一例を示す図である。
【図8】本実施形態で製造された光ファイバのカットオフ波長の一例を示す図である。
【図9】本実施形態で製造された光ファイバの実効断面積の一例を示す図である。
【図10】本実施形態で製造された光ファイバの曲げ損失の一例を示す図である。
【図11】本実施形態で製造された光ファイバの屈折率分布の一例を示す概略模式図である。
【図12】従来の方法で製造された光ファイバ母材において、長手方向の各地点から得られる光ファイバのRDSの推定値の一例を示す図である。
【符号の説明】
11・・・光ファイバコア材,12・・・算出されたクラッド部の全厚さ,13・・・およその残部のクラッド部
【発明の属する技術分野】
本発明は、分散スロープ、波長分散などの光学特性のばらつきを抑制した光ファイバの製造方法、及びその半製品である光ファイバ母材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光通信の伝送容量の増大に伴い、波長多重伝送の開発が進められており、40Gbit/s級の高速伝送システムの導入が検討されている。伝送速度が高速になると、許容される波長分散の値は小さくなる。例えば40Gbit/s級の高速伝送システムでは、累積波長分散の許容値が60ps/nmと極端に小さくなることが報告されている(非特許文献1参照。)。
【0003】
また光ファイバの波長分散は、温度によって変動することが知られている(非特許文献2参照。)。
このため使用環境の温度変化による波長分散の変動を考慮すると、実質の累積波長分散の許容値は更に小さいものとなる。そこで伝送用光ファイバとしては、波長分散の小さいものが要求される。
【0004】
また波長多重伝送では、分散スロープを低減し、信号光の波長による波長分散の差を無くし、広い波長帯域でほぼ一定の波長分散とすることが要求される。
例えば分散スロープが0.03ps/nm2/km以下に低減された光ファイバが提案されている(特許文献1参照。)。このような分散スロープの小さい光ファイバは、温度変化による波長分散の変動量が小さく、波長分散が温度に対して安定していることが報告されている(非特許文献3参照。)。
このためこのような分散スロープを小さくした光ファイバ(以下、低分散スロープ型光ファイバと示す。)は、波長多重伝送への実用化が望まれている。
【0005】
低分散スロープ型光ファイバは、MCVD法、外付け法などによって光ファイバ母材を製造し、これを溶融線引きして製造される。低分散スロープ型光ファイバ用の光ファイバ母材は、屈折率分布が複雑であり、製造条件の変動によって長手方向に一定の屈折率分布を形成することが難しく、これにより光ファイバとしたときの光学特性が長手方向に大きく変動する問題がある。
【0006】
図12は、従来の方法で製造された光ファイバ母材において、長手方向の各地点から得られる光ファイバの分散スロープを波長分散で割った値(以下、RDSと示す)の推定値を示す。これは、光ファイバ母材の各地点での屈折率分布より、光ファイバとしたときのRDSをシミュレーションにより算出した値である。図12に示されたように、RDSは0.0032〜0.0039nm−1と大きく変動しており、従来の方法で製造された光ファイバ母材は、屈折率分布が長手方向に変動しており、これにより光ファイバのRDSに大きなばらつきが生じることがわかる。
【0007】
通常、光通信システムでは、伝送用光ファイバの所定の距離毎に、分散補償光ファイバなどを用いた分散補償器を設置し、伝送用光ファイバの波長分散を補償する。精度良く波長分散を補償し、残留分散をほぼゼロとするためには、伝送用光ファイバと分散補償光ファイバにおいて、RDSを精度良く一致させることが有効である。
【0008】
このため伝送用光ファイバでは、長手方向のRDSのばらつきを低減し、分散補償光ファイバモジュールを設置する所定の距離毎でほぼ一定のRDSを示すことが要求される。
例えば40Gbit/sで高速伝送システムを実現する場合、伝送用光ファイバのRDSは、安定して0.0033〜0.0036nm−1の範囲内とする必要があるといわれており、従来の方法で製造された低分散スロープ型光ファイバでは、RDSのばらつきが大きく、波長多重伝送への実用化ができていないのが現状である。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−255433号公報
【非特許文献1】
カミノフ(Kaminow),コッホ(Koch)著,「オプティカル・ファイバー・テレコミュニケーションズ(Optical Fiber Telecommunications)(第IIIA巻)」,(米国),アカデミック・プレス(Academic Press),1997年,p.167
【非特許文献2】
クワン・キム(Kwang S. Kim)等,「ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Journal of Applied Physics)」,(米国),1993年3月,第73巻,第5号,p.2069−2074
【非特許文献3】
加藤孝利,「電子情報通信学会総合大会予稿集」,2000年3月,p.C−3−46
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、上記した事情に鑑みなされたものである。すなわち低分散スロープ型光ファイバなどのように、屈折率分布が複雑で製造条件の変動によって長手方向に一定の屈折率分布を形成することが難しいものであっても、長手方向に所望の屈折率分布が形成でき、これにより光ファイバとしたときのRDSなどの光学特性のばらつきがほとんどない光ファイバ母材を製造できる方法と、それを用いた光ファイバの製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため、請求項1にかかる発明は、コア部とクラッド部の一部を有してなる光ファイバコア材の屈折率分布を測定する第1の工程と、該屈折率分布の測定値より、光ファイバとしたときのRDSのばらつきが−4〜4%となる光ファイバ母材のクラッド部の全厚さを算出する第2の工程と、該クラッド部の全厚さの算出値に基づいて、前記光ファイバコア材上に、およその残部のクラッド部を形成する第3の工程と、該およその残部のクラッド部を研磨するか、又は該およその残部のクラッド部の上に、追加のクラッド部を形成する第4の工程を有することを特徴とする光ファイバ母材の製造方法である。
【0012】
ここで、RDSのばらつきや、後述する波長分散、カットオフ波長、実効断面積、曲げ損失のばらつきは、以下の式(1)で表された値である。式(1)中、平均値とは長手方向の各測定点での測定値を平均した値である。
【0013】
【数1】
【0014】
請求項2にかかる発明は、前記光ファイバとしたときのRDSのばらつきが−2〜2%であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ母材の製造方法である。
【0015】
請求項3にかかる発明は、前記第2の工程が、光ファイバとしたときの1550nmでの分散スロープにおいても0.04ps/nm2/km以下となるように光ファイバ母材のクラッド部の全厚さを算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバ母材の製造方法である。
【0016】
請求項4にかかる発明は、前記光ファイバとしたときの1550nmでの分散スロープが0.02ps/nm2/km以下であることを特徴とする請求項3に記載の光ファイバ母材の製造方法である。
【0017】
請求項5にかかる発明は、前記第2の工程が、光ファイバとしたときの波長分散のばらつきにおいても−5〜5%となるように光ファイバ母材のクラッド部の全厚さを算出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光ファイバ母材の製造方法である。
【0018】
請求項6にかかる発明は、前記第2の工程が、光ファイバとしたときのカットオフ波長のばらつきにおいても−2〜2%であり、かつ実効断面積のばらつきにおいても−2〜2%となるように光ファイバ母材のクラッド部の全厚さを算出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の光ファイバ母材の製造方法である。
【0019】
請求項7にかかる発明は、前記第2の工程が、光ファイバとしたときの曲げ損失のばらつきにおいても−15〜15%となるように光ファイバ母材のクラッド部の全厚さを算出することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の光ファイバ母材の製造方法である。
【0020】
請求項8にかかる発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の光ファイバ母材を線引きし、紡糸することを特徴とする光ファイバの製造方法である。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
本実施形態は、分散スロープが0.02ps/nm2/km以下の低分散スロープ型のノン零分散シフト光ファイバを製造するものに関する。本実施形態の光ファイバ母材の製造方法は、まず第1の工程として、コア部とクラッド部の一部を有してなる光ファイバコア材について、プリフォームアナライザーを用いて屈折率分布を測定する。
ここで、コア部とクラッド部の一部を有してなる光ファイバコア材は、MCVD法、VAD法などの化学気相蒸着法、ロッドインチューブ法などの公知の方法により製造できる。
【0022】
この光ファイバコア材の側面側へ平行光線又はレーザ光線を入射し、透過して出射した光を検光器で検出する。このとき平行光線又はレーザ光線の入射角度と出射角度の測定値より屈折角を求める。そして種々の入射角度での屈折角を求め、屈折率分布を算出する。
光ファイバコア材の屈折率分布の測定は、長手方向に異なる複数の位置で測定する。これにより長手方向の屈折率分布のばらつきを精度良く求めることができる。
【0023】
図1(a)は、第2の工程の概略模式図を示す。第2の工程として、光ファイバコア材11の長手方向の屈折率分布の測定値を用い、シミュレーションによって、目標とする光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12を算出する。ここで、目標とする光ファイバ母材とは、光ファイバとしたとき光学特性のばらつきが所望の範囲となるものである。
【0024】
上記した光ファイバコア材11の長手方向の屈折率分布に基づいて演算を行い、光ファイバ母材から得られる光ファイバにおいて、RDSのばらつきが−4〜4%、分散スロープが0.04ps/nm2/km以下、波長分散のばらつきが−5〜5%、カットオフ波長のばらつきが−2〜2%、実効断面積のばらつきが−2〜2%、曲げ損失のばらつきが−15〜15%となるように、目標とする光ファイバコア材11の屈折率分布を算出し、この算出した屈折率分布から、目標とする光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12を決定する。
【0025】
図1(b)は、第3の工程の概略模式図を示す。上記した第2の工程にて算出されたクラッド部の全厚さ12に基づいて、光ファイバコア材11上に、外付け法によりクラッド用ガラスを堆積させ、およその残部のクラッド部13を形成する。このとき光ファイバコア材11の長手方向の全区間において、算出された目標とする光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12よりも多くなるように、およその残部のクラッド部13を形成する。
【0026】
図1(c)は、第4の工程の概略模式図を示しており、火炎研磨や機械研磨によって、形成されたおよその残部のクラッド部13を研磨し、目標とする光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12とする。研磨するクラッド部の厚みが、第3の工程にて形成されたおよその残部のクラッド部13の厚みの10%以下となるように、およその残部のクラッド部13を形成することが好ましい。
10%を超える場合、クラッド部の研磨に時間がかかり、生産性が低下することとなり、好ましくない。
【0027】
図2は、本実施形態で製造された光ファイバ母材において、長手方向の各地点から得られる光ファイバの分散スロープを波長分散で割った値(以下、RDSと示す)の推定値を示す。RDSは0.0034〜0.0036nm−1であり、このRDSのばらつきは−4〜4%の範囲内である。
【0028】
本実施形態では上記したように、あらかじめ、光ファイバとしたときのRDSが所望の範囲となるクラッド部の全厚さ12を算出し、この算出値となるように第3,4の工程にて、クラッド部の研磨や追加のクラッド部を形成し、光ファイバ母材とする。このため長手方向に所望の屈折率分布が精度良く形成でき、これにより図2に示されたように、光ファイバ母材の長手方向の各地点について、得られる光ファイバのRDSのばらつきが所望の範囲に低減された光ファイバ母材が実現できる。
【0029】
上述した本実施形態の方法によって製造された光ファイバ母材を、長手方向が鉛直方向になるように配置し、この下端を加熱して溶融線引きし、光ファイバ裸線とした後、紫外線硬化性樹脂を光ファイバ表面に塗布する。次に紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化し光ファイバ素線とする。
溶融線引きに係る製造条件は、公知の条件が適用でき、加熱温度、引取速度、引取張力を適宜決定することにより、実用的な機械強度が得られる。以上により光学特性のばらつきが低減され、所望の範囲となる光ファイバが製造される。
【0030】
図3は、本実施形態で製造された光ファイバにおいて、長手方向の各地点でのRDSを示す。このRDSのばらつきは−4〜4%の範囲内であることがわかる。
この光ファイバを伝送路に使用し、更にこのRDSの平均値と同じ値のRDSを有する分散補償器と、所望の距離毎に接続することにより、波長分散をほぼ完全に補償できる。これにより残留分散を低く抑えることができ、高速伝送システムが実現できる。このことは以下のようにして実証できる。
【0031】
一例として40Gbit/sで400kmの高速伝送システムについて、所望の距離毎に分散補償器に接続し、累積波長分散を許容値以内とする場合、必要となる伝送用光ファイバのRDSのばらつきの許容値を例示する。
40Gbit/sでは、伝送用光ファイバの累積波長分散の許容値は60ps/nmである。本実施形態で製造された光ファイバのようにノン零分散シフト光ファイバは、通常、波長分散の温度変化率が0.0006ps/nm/km/℃である。−50〜50℃の温度変化があると、400kmの伝送路には波長分散が最大で24ps/nm変動することになる。
この温度変化による波長分散の変動を考慮すると、実質の累積波長分散の許容値は36ps/nm(0.09ps/nm/km)となる。
【0032】
図4は、ノン零分散シフト光ファイバのRDSの波長依存性を示す。サンプル1が基準となる光ファイバであり、サンプル1に対して1550nmのRDSのばらつきが+3.9%となる光ファイバ(サンプル2)、RDSのばらつきが−2.4%となる光ファイバ(サンプル3)、RDSのばらつきが+6.0%となる光ファイバ(サンプル4)、RDSのばらつきが−3.9%となる光ファイバ(サンプル5)である。
【0033】
このサンプル1〜5の光ファイバを分散補償器に接続して残留分散を測定し、残留分散が許容値の−0.09〜0.09ps/nm/kmの範囲を満たす光ファイバのRDSのばらつきを求める。ここで、分散補償器は、サンプル1の光ファイバの波長分散を補償するように調整されたものである。
【0034】
図5は、補償率が91%の分散補償器Xに接続したときの残留分散を示す。また図6は補償率が109%の分散補償器Yに接続したときの残留分散を示す。
通常、分散補償光ファイバは、補償率90〜110%である。この分散補償器X,Yは、この補償率のばらつきを考慮して設定されたものである。
【0035】
サンプル1〜3のノン零分散シフト光ファイバは、いずれの補償率を有する分散補償器X,Yと接続しても、1520〜1610nmにおいて、残留分散が−0.09〜0.09ps/nm/kmの範囲内であり、累積波長分散の許容値を満たしていることがわかる。このサンプル2,3の光ファイバは、サンプル1に対して、RDSのばらつきが−4〜4%の範囲内である。
【0036】
以上により伝送用光ファイバにおいて、所望の距離毎に分散補償器を接続して波長分散を補償する場合、RDSのばらつきを−4〜4%とすることによって、各経路にて分散補償器によって精度良く波長分散を補償でき、これにより40Gbit/sの高速伝送システムが実現できることがわかる。
【0037】
更に高速伝送システムは、波長多重伝送を行うため、分散スロープを低減する必要がある。本実施形態で製造された光ファイバは、1550nmでの分散スロープが0.04ps/nm2/km以下である。このため、広い伝送波長帯域にて信号光の波長による波長分散の差がほとんど無く、波長多重伝送が実現できる。
【0038】
また図7は、本実施形態で製造された光ファイバにおいて、長手方向の各地点での波長分散を示す。波長分散のばらつきは−5〜5%の範囲内であることがわかる。このため特に長距離伝送用の光ファイバとして使用した場合でも、波長分散のばらつきが小さいため、所望の距離毎に分散補償器と組み合わせることにより、波長分散をほぼ完全に補償でき、残留分散を低く抑えることができる。
【0039】
更に本実施形態で製造された光ファイバは、以下に示されたように、他の光学特性についてもばらつきが所望の範囲となるものである。
図8は、本実施形態で製造された光ファイバにおいて、長手方向の各地点でのカットオフ波長を示す。カットオフ波長のばらつきは−2〜2%の範囲内である。また図9は、本実施形態で製造された光ファイバにおいて、長手方向の各地点での実効断面積を示す。実効断面積のばらつきは−2〜2%の範囲内である。更に図10は、本実施形態で製造された光ファイバにおいて、長手方向の各地点での曲げ損失を示す。曲げ損失のばらつきは−15〜15%の範囲内である。
【0040】
このように、カットオフ波長、実効断面積、曲げ損失の光学特性について、ばらつきが上記した範囲内であるため、伝送用光ファイバとして使用した場合、安定して光伝送が行える。
【0041】
本実施形態の光ファイバ母材の製造方法は、光ファイバコア材11の屈折率分布を測定し、この測定値を用いて光ファイバとしたときのRDSなどの光学特性のばらつきが所望の範囲となるクラッド部の全厚さ12を算出し、この算出値となるようにクラッド部を形成し、光ファイバ母材とする。このため、長手方向に所望の屈折率分布が精度良く形成された光ファイバ母材が実現できる。
【0042】
このようにして製造された光ファイバ母材を用いることによって、上記したように所望の光学特性のばらつきを有する光ファイバが製造できる。製造された光ファイバは、特にRDSなどの光学特性のばらつきが所望の範囲となり、例えば伝送用光ファイバとして用いることによって、40Gbit/s級の高速伝送システムが実現できる。
【0043】
また本実施形態の光ファイバ母材の製造方法は、屈折率分布が複雑なものであっても精度良く製造でき、光ファイバとしたときの光学特性のばらつきを所望の範囲とすることができる。
図11は、本実施形態で製造された光ファイバの屈折率分布である。この屈折率分布は、4重W型屈折率分布と呼ばれ、第1〜3のコア、第1、2のクラッドよりなる。それぞれのコア、クラッドの比屈折率差、径方向の厚さを精密に制御し所望の値とすることによって、分散スロープ、波長分散を低く抑えた光ファイバとなる。
【0044】
このように屈折率分布が複雑であっても、本実施形態では、上記したように、光ファイバとしたときの光学特性のばらつきが所望の範囲となるクラッド部の全厚さ12を算出し、この算出値となるようにクラッド部を形成するため、精度良く製造できる。
【0045】
また本実施形態では、光ファイバ母材の製造方法において、第2の工程にて、目標とする光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12を算出するため、光ファイバ母材から得られる光ファイバにおいて、RDSのばらつきだけでなく、分散スロープ、波長分散、カットオフ波長、実効断面積、曲げ損失などの光学特性のばらつきについても所望の範囲となるクラッド部の全厚さ12を決定することができる。これにより目標とする光ファイバ母材を実現できる。
【0046】
更に第3の工程にて、光ファイバとしたときのRDSのばらつきが−4〜4%となる光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12を算出する。このRDSのばらつきは、好ましくは−2〜2%である。
【0047】
このとき製造された光ファイバ母剤は、図3に示されたようにRDSのばらつきが上記した範囲のばらつきの小さい光ファイバとすることができる。製造された光ファイバを伝送路に使用し、更にこのRDSの平均値と同じ値のRDSを有する分散補償器と、所望の距離毎に組み合わせることにより、波長分散をほぼ完全に補償できる。これにより残留分散を低く抑えることができ、波長多重伝送が実現できる。
【0048】
RDSのばらつきが−4%よりも小さいか又は4%よりも大きい場合、製造された光ファイバのRDSのばらつきが大きく、分散補償器と組み合わせても波長分散を十分に補償できず、特に40Gbit/s級の高速伝送システムの実現が困難となり、好ましくない。
【0049】
また第3の工程にて、光ファイバとしたときの1550nmでの分散スロープにおいても0.04ps/nm2/km以下であり、好ましくは0.02ps/nm2/km以下となるように、光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12を算出する。
このとき製造された光ファイバ母剤は、分散スロープが上記した値の光ファイバとすることができる。製造された光ファイバは、広い伝送波長帯域にて波長による波長分散の差がほとんど無く、波長多重伝送が実現できる。
【0050】
更に本実施形態では、光ファイバとしたときの波長分散のばらつきにおいても−5〜5%であり、好ましくは−3.5〜3.5%となるように、光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12を算出する。
【0051】
このとき製造された光ファイバ母剤は、図7に示されたように波長分散のばらつきが上記した範囲のばらつきの小さい光ファイバとすることができる。製造された光ファイバは、特に長距離伝送用の光ファイバとして使用した場合でも、波長分散のばらつきが小さいため、所望の距離毎に分散補償器と組み合わせることにより、波長分散をほぼ完全に補償でき、これにより残留分散を低く抑えることができる。
【0052】
また本実施形態では、第3の工程にて、光ファイバとしたときのカットオフ波長のばらつきにおいても−2〜2%であり、好ましくは−1.0〜1.0%となるように、光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12を算出する。また実効断面積のばらつきにおいても−2〜2%であり、好ましくは−0.5〜0.5%となるように、光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12を算出する。更に曲げ損失のばらつきが−15〜15%であり、好ましくは−10〜10%となるように、光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12を算出する。
【0053】
このとき製造された光ファイバ母剤は、図8〜10に示されたようにカットオフ波長、実効断面積、曲げ損失のばらつきについても上記した範囲となる光ファイバとすることができる。
製造された光ファイバは、伝送用光ファイバとして使用した場合、上記した光学特性のばらつきが小さいため、安定して光伝送が行える。また光ファイバとしたとき上記した光学特性のばらつきが小さいため、本実施形態の光ファイバ母材を用いることによって、歩留まり良く光ファイバを製造できる。
【0054】
なお、本発明の技術範囲は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば本実施形態の光ファイバ母材の製造方法において、第1の工程では、プリフォームアナライザーを用いた方法以外の光学的方法、X線解析を用いた方法などの公知の方法でも測定できる。具体的には、光ファイバコア材11へX線を照射し、ゲルマニウムなどのドーパント元素から放出される特性X線強度を測定し、ドーパント元素の添加量を算出することで、この添加量から屈折率分布が求められる。
【0055】
また第3の工程では、およその残部のクラッド部13は、VAD法、ロッドインチューブ法などの公知の方法も適用できる。例えばおよその残部のクラッド部13となるガラス管を、光ファイバコア材11に被せる方法によっても形成できる。
【0056】
第3の工程にて、光ファイバコア材11の長手方向の全区間において、算出された目標とする光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12よりも少なく、およその残部のクラッド部13を形成しても構わない。このとき第4の工程にて、およその残部のクラッド部13の上に、追加のクラッド部を形成する。
【0057】
第4の工程では、およその残部のクラッド部13を研磨する方法としては、火炎研磨や機械研磨以外に、化学研磨、化学的火炎研磨などの石英を主体とするガラスを研磨する公知の方法が適用できる。例えばフッ酸を用いてエッチングする方法、酸水素炎や、酸素又はアルゴンなどのプラズマ火炎を用いた方法、六フッ化硫黄などのフッ素系ガスを混合した火炎を用いた方法などによって研磨できる。
上記した方法は単独で使用しても構わない。また研磨を複数回に分けて行う場合、同一の方法で行ってもよいが、2種以上の方法を用いて行っても構わない。
【0058】
また第4の工程にて、およその残部のクラッド部13の上に、追加のクラッド部を形成しても構わない。このとき、追加のクラッド部は、外付け法によってクラッド用のガラスの薄層を蒸着させてもよく、またロッドインチューブ法によって肉厚1〜2mm程度のガラス管を被せる方法でも形成できる。
【0059】
また第4の工程にて、クラッド部を研磨するか、又はクラッド部上に追加のクラッド部を形成する作業は、1回でもよく、また2回以上でも構わない。目標とする光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12となるまで、繰り返し行われる。ここでいうクラッド部とは、およその残部のクラッド部13と、追加のクラッド部とを合わせて指すものであり、光ファイバコア材11に含まれる「クラッド部の一部」を指すものではない。
【0060】
またクラッド部を研磨するか、又はクラッド部上に追加のクラッド部を、2回以上行う場合、光ファイバコア材の屈折率分布を再度測定し、シミュレーションによって、目標とする光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12を再度算出しても構わない。これにより目的とする光ファイバ母材のクラッド部の全厚さ12を、優れた精度で形成できる。
【0061】
第4の工程では、本実施形態のように、およその残部のクラッド部13の研磨、又は追加のクラッド部の形成は、いずれか一方を1回のみ行うようにすることが好ましい。これにより光ファイバ母材の製造にかかる作業が簡略化でき、生産性を向上できる。
【0062】
また本実施形態では、製造する光ファイバ母材は特に限定されず、屈折率分布を適宜決定することで長手方向の製造できる。例えば分散シフト光ファイバ用母材、分散補償光ファイバ用母材、1.3μm帯用シングルモード光ファイバ用母材などが挙げられる。
【0063】
特に本実施形態では、光ファイバとしたときの光学特性のばらつきがほとんどない光ファイバを製造できるため、分散シフト光ファイバ用母材、分散補償光ファイバ用母材のように、複雑な屈折率分布を有し、光学特性のばらつきを小さくすることが困難な光ファイバ母材を好ましく製造できる。
【0064】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、請求項1乃至7のいずれかに係る発明は、RDSのばらつきが−4〜4%の光ファイバとなる光ファイバ母材を製造できる。
この光ファイバ母材を用いて製造された光ファイバは、伝送路に使用し、更にこのRDSの平均値と同じ値のRDSを有する分散補償器と、所望の距離毎に組み合わせることにより、波長分散を精度良く補償できる。これにより残留分散を低く抑えることができ、波長多重伝送が実現できる。
【0065】
また請求項3又は4に係る発明は、分散スロープが0.04ps/nm2/km以下の光ファイバとなる光ファイバ母材を製造できる。
この光ファイバ母材を用いて製造された光ファイバは、広い伝送波長帯域にて波長による波長分散の差がほとんど無く、波長多重伝送が実現できる。
【0066】
また請求項5に係る発明は、波長分散のばらつきが−5〜5%の光ファイバとなる光ファイバ母材を製造できる。
この光ファイバ母材を用いて製造された光ファイバは、特に長距離伝送用の光ファイバとして使用した場合でも、波長分散のばらつきが小さいため、所望の距離毎に分散補償器と組み合わせることにより、波長分散をほぼ完全に補償でき、これにより残留分散を低く抑えることができる。
【0067】
更に請求項6に係る発明は、カットオフ波長のばらつきが−2〜2%であり、かつ実効断面積のばらつきが−2〜2%の光ファイバとなる光ファイバ母材を製造できる。
また請求項7に係る発明は、曲げ損失のばらつきが−15〜15%の光ファイバとなる光ファイバ母材を製造できる。
【0068】
これら光ファイバ母材を用いて製造された光ファイバは、伝送用光ファイバとして使用した場合、カットオフ波長、実効断面積、曲げ損失のばらつきが小さいため、安定して光伝送が行える。また上記したように光学特性のばらつきが小さいため、歩留まり良く光ファイバを製造できる。
【0069】
また請求項8に係る発明は、本発明の製造方法にて製造された光ファイバ母材を線引きし、紡糸することによって、上記したように光学特性のばらつきの少ない光ファイバが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の光ファイバ母材の製造工程の一例を示す概略模式図である。
【図2】本実施形態で製造された光ファイバ母材において、長手方向の各地点から得られる光ファイバのRDSの推定値の一例を示す図である。
【図3】本実施形態で製造された光ファイバのRDSの一例を示す図である。
【図4】光ファイバのRDSの波長依存性の一例を示す図である。
【図5】光ファイバに分散補償光ファイバモジュールを組合わせたときの残留分散の一例を示す図である。
【図6】光ファイバに分散補償光ファイバモジュールを組合わせたときの残留分散の他の一例を示す図である。
【図7】本実施形態で製造された光ファイバの波長分散の一例を示す図である。
【図8】本実施形態で製造された光ファイバのカットオフ波長の一例を示す図である。
【図9】本実施形態で製造された光ファイバの実効断面積の一例を示す図である。
【図10】本実施形態で製造された光ファイバの曲げ損失の一例を示す図である。
【図11】本実施形態で製造された光ファイバの屈折率分布の一例を示す概略模式図である。
【図12】従来の方法で製造された光ファイバ母材において、長手方向の各地点から得られる光ファイバのRDSの推定値の一例を示す図である。
【符号の説明】
11・・・光ファイバコア材,12・・・算出されたクラッド部の全厚さ,13・・・およその残部のクラッド部
Claims (8)
- コア部とクラッド部の一部を有してなる光ファイバコア材の屈折率分布を測定する第1の工程と、該屈折率分布の測定値より、光ファイバとしたときのRDSのばらつきが−4〜4%となる光ファイバ母材のクラッド部の全厚さを算出する第2の工程と、該クラッド部の全厚さの算出値に基づいて、前記光ファイバコア材上に、およその残部のクラッド部を形成する第3の工程と、該およその残部のクラッド部を研磨するか、又は該およその残部のクラッド部の上に、追加のクラッド部を形成する第4の工程を有することを特徴とする光ファイバ母材の製造方法。
- 前記光ファイバとしたときのRDSのばらつきが−2〜2%であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ母材の製造方法。
- 前記第2の工程が、光ファイバとしたときの1550nmでの分散スロープにおいても0.04ps/nm2/km以下となるように光ファイバ母材のクラッド部の全厚さを算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバ母材の製造方法。
- 前記光ファイバとしたときの1550nmでの分散スロープが0.02ps/nm2/km以下であることを特徴とする請求項3に記載の光ファイバ母材の製造方法。
- 前記第2の工程が、光ファイバとしたときの波長分散のばらつきにおいても−5〜5%となるように光ファイバ母材のクラッド部の全厚さを算出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光ファイバ母材の製造方法。
- 前記第2の工程が、光ファイバとしたときのカットオフ波長のばらつきにおいても−2〜2%であり、かつ実効断面積のばらつきにおいても−2〜2%となるように光ファイバ母材のクラッド部の全厚さを算出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の光ファイバ母材の製造方法。
- 前記第2の工程が、光ファイバとしたときの曲げ損失のばらつきにおいても−15〜15%となるように光ファイバ母材のクラッド部の全厚さを算出することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の光ファイバ母材の製造方法。
- 請求項1乃至7のいずれかに記載の光ファイバ母材を線引きし、紡糸することを特徴とする光ファイバの製造方法。
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JP2002266778A JP2004099408A (ja) | 2002-09-12 | 2002-09-12 | 光ファイバ母材の製造方法、及び光ファイバの製造方法 |
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JP2006315941A (ja) * | 2005-04-11 | 2006-11-24 | Sumitomo Electric Ind Ltd | 光ファイバ母材製造方法および光ファイバ製造方法 |
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2002
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