JP2004099352A - 炭化珪素/炭素複合材料及びこれを用いた摺動材料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】全組成物中にカーボンブラック及び熱硬化性樹脂を焼成して得られる炭素を11.5〜16.5重量%含有してなる炭化珪素/炭素複合材料並びに前記の炭化珪素/炭素複合材料を用いた摺動材料。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭化珪素/炭素複合材料及びこれを用いた摺動材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭化珪素は極めて硬く、水潤滑で使用される場合や相手材が炭素の場合には良好な潤滑性を有し、耐摩耗性、耐薬品性に優れるため、メカニカルシールや軸受によく使用されている。しかし、空気中で炭化珪素同士で使用した場合には摩擦係数が大きく、簡単に焼き付いてしまう問題がある。
【0003】
従来から炭化珪素に炭素、BN等の固体潤滑剤を添加した材料が提案されている(特許文献1、2、3等参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開昭59−223273号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平03−112866号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開平10−139546号公報(特許請求の範囲)
【0005】
しかしながら、BNは高価であり、安価な摺動材料には適さないという問題点がある。
また、炭素との複合材料において、その添加物として、(特許文献4参照)に示されるような黒鉛、(特許文献5参照)に示されるようなコークス、(特許文献6参照)に示されるようなタールピッチ、(特許文献6、7参照)に示されるようなカーボンブラックがある。
【0006】
【特許文献4】
特開昭58−130165号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】
特開平01−278475号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】
特開昭60−200861号公報(特許請求の範囲)
【特許文献7】
特公昭61−043310号公報(特許請求の範囲)
【特許文献8】
特開昭61−063569号公報(特許請求の範囲)
【0007】
前記、特許文献7にはα炭化珪素に対し1〜5体積%のカーボンブラックを添加した焼結体が示されるが、該焼結体は、水潤滑での摩擦特性には優れた効果を有するが、空気中における摩擦係数は初期で0.40程度と大きく、直ぐに焼き付いてしまうという問題点がある。
【0008】
一方、前記、特許文献8には炭素として6〜12重量%に相当する量のカーボンブラックを添加した焼結体が示されるが、該焼結体は、油槽中での摩擦係数には優れた効果を有するが、空気中における摩擦係数は大きく、直ぐに焼き付いてしまうという問題点がある。
即ち、上記に示す焼結体は水潤滑や油潤滑での摺動については良好であるが、空気中での摺動については焼き付きが生じ使用することができないという問題点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
請求項1、2及び3記載の発明は、空気中でも良好な潤滑性を有し、かつ無加圧焼結で焼結できる炭化珪素/炭素複合材料を提供するものである。
請求項4記載の発明は、空気中でも潤滑性に優れた摺動材料を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は次のものに関する。
(1) 全組成物中にカーボンブラック及び熱硬化性樹脂を焼成して得られる炭素を11.5〜16.5重量%含有してなる炭化珪素/炭素複合材料。
(2) カーボンブラックの含有量が10〜14重量%及び熱硬化性樹脂を焼成して得られる炭素の含有量が1〜5重量%である上記(1)記載の炭化珪素/炭素複合材料。
(3) 空気中での摩擦係数が0.30以下である上記(1)又は(2)記載の炭化珪素/炭素複合材料。
(4) 上記(1)、(2)又は(3)記載の炭化珪素/炭素複合材料を用いた摺動材料。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明において、カーボンブラック及び熱硬化性樹脂を焼成して得られる炭素の含有量は、全組成物中(炭化珪素/炭素複合材料中)に11.5〜16.5重量%、好ましくは12〜16重量%の範囲とされ、11.5重量%未満であると空気中で十分な潤滑性を得ることが困難となり、16.5重量%を超えると焼結性が悪くなり、摩耗が増加する。
【0012】
上記成分は、合計が全組成物中に11.5〜16.5重量%の範囲とされるが、このうちカーボンブラックの含有量は、10〜14重量%の範囲が好ましく、11〜13重量%の範囲がさらに好ましい。一方、熱硬化性樹脂を焼成して得られる炭素の含有量は、1〜5重量%が好ましく、2〜3重量%の範囲がさらに好ましい。
【0013】
焼成して炭素を得るために用いられる熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、フラン樹脂等が挙げられるが、これらのうちフェノール樹脂を用いることが好ましい。
【0014】
本発明になる炭化珪素/炭素複合材料は、主成分としてSiC粉が用いられるが、該SiC粉としては、α型、β型のいずれでもよいが、価格が安く、また焼成時の結晶構造変化の少ないα型のSiC粉を用いることが好ましい。SiC粉の粒径は平均粒径が0.1μm以上が好ましく、0.3〜1.0μmの範囲がより好ましく、0.5〜0.8μmの範囲がさらに好ましい。
【0015】
また、本発明になる炭化珪素/炭素複合材料は、上記成分以外に、炭化珪素の焼結助剤として硼素化合物などを添加することができる。硼素化合物としては元素状硼素、炭化硼素、窒化硼素等種々のものが使用でき、この含有量は、硼素として0.1〜3重量%程度とすることが好ましい。
【0016】
本発明になる炭化珪素/炭素複合材料は、SiC粉、カーボンブラック、熱硬化性樹脂、焼結助剤等を均一に混合し、成形及び焼成することにより得られる。なお、焼成する際の条件として無加圧で焼成することが好ましいが、加圧下で焼成してもよく特に制限はない。焼成温度は、1900〜2300℃の範囲で焼成することが好ましく、2100〜2200℃の範囲で焼成することがさらに好ましい。
【0017】
得られる炭化珪素/炭素複合材料には、気孔を埋めるために熱硬化性樹脂や金属を含浸しても差し支えないが、できれば含浸をせずに用いることが好ましい。また、得られる炭化珪素/炭素複合材料は、空気中での摩擦係数は0.30以下であることが好ましく、0.25以下であることがより好ましく、0.20以下であることがさらに好ましい。
炭化珪素/炭素複合材料を用いた摺動材料としては、メカニカルシールや軸受又は電子部品の用途に用いることができる。
【0018】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。
実施例1〜5、比較例1〜6
平均粒径が0.6μmのα型のSiC粉82.5〜97.5重量部に平均粒径が1.5μmのB4C粉0.5重量部、炭素0〜2重量部に相当する量のフェノール樹脂、平均粒径が38nmのカーボンブラック0〜15重量部、ポリビニルアルコール水溶液を固形分で1重量部及び純水120重量部を樹脂製ボールミルで混合後、スプレードライヤーで造粒し、成形粉を得た。
【0019】
この後、成形粉を金型内に充填し、98MPaの圧力を加えて外形が35mm及び厚さが6mmの円盤を成形した。次いで成形体をアルゴンガス雰囲気中で2100〜2200℃の温度で1時間保持して炭化珪素/炭素複合材料を得た。得られた炭化珪素/炭素複合材料の嵩密度を表1に示す。なお嵩密度は、次式から求めた。
【0020】
【数1】
【0021】
【表1】
【0022】
次に、自社製の炭化珪素(商標名:ヘキサロイSA)を外径が24.6mm、内径が15.5mm及び高さが3mmのリング状に加工し、1μmのダイヤモンドペーストで鏡面にラッピングして各実施例及び各比較例で得られた炭化珪素/炭素複合材料の摺動試験の相手材とした。一方、各実施例及び各比較例で得られた炭化珪素/炭素複合材料を上記と同様の条件でラッピングし、摺動試験片とした。
【0023】
各実施例及び各比較例で得られた炭化珪素/炭素複合材料の円盤状の試験片を固定側とし、自社製のリング状の炭化珪素を相手材として、0.3MPaの圧力で加圧しながら2000min−1で摺動し、空気中で摩擦係数を測定した。その結果を表2に示す。なお、摩擦係数はリング状の炭化珪素にかかる摩擦力を荷重で割った値である。
【0024】
【表2】
【0025】
表2に示されるように、本発明になる実施例の摺動試験片は、摩擦係数が0.20以下と低く、摺動が安定しており、摺動面の状態も良好であることが明らかである。これに対し比較例1〜5及び比較例7〜9の摺動試験片は、数分で焼き付いた為試験を停止した。また比較例6及び10の摺動試験片は、摩擦係数が0.11及び0.15と低く、摺動が安定しているが、相対密度が低すぎる為摩耗が認められた。
【0026】
【発明の効果】
請求項1、2及び3記載の炭化珪素/炭素複合材料は、空気中でも良好な潤滑性を有し、かつ無加圧焼結で焼結でき、乾式で用いる摺動材料に好適である。
請求項4記載の摺動材料は、空気中でも潤滑性に優れ、メカニカルシールや軸受に好適である。
Claims (4)
- 全組成物中にカーボンブラック及び熱硬化性樹脂を焼成して得られる炭素を11.5〜16.5重量%含有してなる炭化珪素/炭素複合材料。
- カーボンブラックの含有量が10〜14重量%及び熱硬化性樹脂を焼成して得られる炭素の含有量が1〜5重量%である請求項1記載の炭化珪素/炭素複合材料。
- 空気中での摩擦係数が0.30以下である請求項1又は2記載の炭化珪素/炭素複合材料。
- 請求項1、2又は3記載の炭化珪素/炭素複合材料を用いた摺動材料。
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