JP2004098148A - ダイカスト鋳造方法及びダイカスト鋳造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】初期凝固片の鋳造製品への混入をより確実に防止する。
【解決手段】スリーブ13が設けられた固定型11には、ランナ16及びビスケット形成部17が形成されている。可動型12には、スリーブ13の吐出口13bに対向するように突出し、型締め時にビスケット形成部17内に配置される凸部20が設けられている。凸部20は、型締め時にスリーブ13の吐出口13bの内周面との間に絞り部21を形成する。絞り部21は、鋳造時にスリーブ13からキャビティ15に注入される金属溶湯によって金網フィルタ22がスリーブ13からキャビティ15内に押し流されないように金網フィルタ22の移動を制限し、充填完了までフィルタ効果を持続させる。
【選択図】 図3
【解決手段】スリーブ13が設けられた固定型11には、ランナ16及びビスケット形成部17が形成されている。可動型12には、スリーブ13の吐出口13bに対向するように突出し、型締め時にビスケット形成部17内に配置される凸部20が設けられている。凸部20は、型締め時にスリーブ13の吐出口13bの内周面との間に絞り部21を形成する。絞り部21は、鋳造時にスリーブ13からキャビティ15に注入される金属溶湯によって金網フィルタ22がスリーブ13からキャビティ15内に押し流されないように金網フィルタ22の移動を制限し、充填完了までフィルタ効果を持続させる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルタ部材を用いたダイカスト鋳造方法、及び、同方法に使用するダイカスト鋳造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ダイカスト鋳造は、寸法精度、生産性が高いことから、自動車の機械部品等に広く用いられている。しかし、従来のダイカスト鋳造品には、その引っ張り強さ等の機械的性質に、大きなばらつきがでる場合があった。
【0003】
この原因の1つは、鋳造時に、スリーブ内に注入された金属溶湯の一部が初期凝固し、この初期凝固片(破断チル層、粗大初晶Al)が製品キャビティ内に圧入されることによるものである。このため、鋳造された製品の内部に混入した初期凝固片の界面での強度が著しく低くなり、製品の機械的性質が大きくばらつくことになる。
【0004】
本出願人の1人は、このような問題を解消するためのダイカスト鋳造用方法を提案している(特許文献1参照)。
この鋳造方法では、先ず、図18(a)に示すように、固定型90と可動型91とを型開きしている状態で、固定型90に設けられたスリーブ92の開口に、多数の貫通孔を有する網目構造体93を圧入する。そして、図18(b)に示すように、網目構造体93をスリーブ92内に配置した状態で鋳造を行う。これにより、スリーブ92内に注入した金属溶湯を、網目構造体93を通してランナ94からキャビティ95内に注入する。このため、スリーブ92内で生じた初期凝固片が網目構造体93に捕捉され、鋳造製品に混入する初期凝固片の量が抑制される。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−137050号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、鋳造後の製品には、スリーブ92及びランナ94内で凝固した非製品部がくっついている。この非製品部は、再び溶かされて再使用できることが望ましい。このため、上記鋳造方法で用いる網目構造体93の材質として、鋳造用合金と同じ、例えばアルミニウム系合金を用いることが望ましい。
【0007】
ところが、アルミニウム系合金の強度が弱いため、鋳造時に、高速、高圧で注入される溶湯によって、スリーブ92の吐出口付近からキャビティ95側に高い圧力で網目構造体93が押し流され、初期凝固片と共に鋳造製品内に入り込む虞があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、初期凝固片の鋳造製品への混入をより確実に防止することができるダイカスト鋳造方法及びダイカスト鋳造装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、第1金型と、この第1金型と共にキャビティを形成する第2金型とを備えたダイカスト鋳造装置を用いたダイカスト鋳造方法である。先ず、型開き状態で、スリーブ、又は、スリーブを前記キャビティに連通する湯路内にフィルタ部材を配置する。その後、型閉じすることで前記スリーブから前記湯路までの経路上において前記フィルタ部材よりもキャビティ側にフィルタ保持部を形成する。さらにその後、スリーブからキャビティに金属溶湯を注入することにより、前記フィルタ部材を前記フィルタ保持部に保持させた状態で、金属溶湯を濾過する。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、スリーブ内、又は、スリーブをキャビティに連通する湯路内に配置されたフィルタ部材が、鋳造時に、フィルタ部材よりもキャビティ側に設けられたフィルタ保持部によって保持される。そして、スリーブからキャビティに注入される金属溶湯によるフィルタ部材のキャビティ側への移動を制限し、フィルタ効果を持続させる。このため、鋳造時にスリーブ内で生成された初期凝固片がフィルタ部材により確実に捕捉され、鋳造された製品内により混入し難くなる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、第1金型と、この第1金型と共にキャビティを形成する第2金型と、フィルタ部材とを備え、スリーブ、又は、スリーブを前記キャビティに連通する湯路内に前記フィルタ部材が配置された状態で前記スリーブからキャビティに金属溶湯が注入され、金属溶湯を前記フィルタ部材によって濾過するダイカスト鋳造装置である。前記スリーブから前記湯路までの経路上には、スリーブからキャビティに注入される金属溶湯によって前記フィルタ部材が前記キャビティ内へ移動しないようにフィルタ部材の移動を制限するフィルタ保持部が設けられている。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、スリーブ内、又は、スリーブをキャビティに連通する湯路内に設けられたフィルタ保持部が、鋳造時にスリーブからキャビティに注入される金属溶湯によるフィルタ部材のキャビティ側への移動を制限し、フィルタ効果を持続させる。このため、鋳造時にスリーブ内で生成された初期凝固片がフィルタ部材により確実に捕捉され、鋳造された製品内により混入し難くなる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記スリーブは、前記第1金型に設けられている。前記フィルタ保持部は、前記スリーブから前記湯路までの経路上に形成され、スリーブ内に配置された前記フィルタ部材の移動を制限する絞り部である。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の作用に加えて、スリーブから湯路までの経路上に形成される絞り部が、スリーブ内に配置されたフィルタ部材の移動を制限し、フィルタ効果を持続させる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、スリーブが設けられた第1金型と、この第1金型と共にキャビティ及び前記スリーブを前記キャビティに連通する湯路を形成する第2金型とを備え、前記スリーブにフィルタ部材が配置された状態でスリーブからキャビティに金属溶湯が注入され、金属溶湯を前記フィルタ部材によって濾過するダイカスト鋳造装置である。前記スリーブは、略円形の流路断面を有している。前記第2金型は、型締め時に前記スリーブの流路断面の一部を閉塞して、前記スリーブの周縁からなる円弧部と、前記円弧部の両端部を連結する直線部とに囲まれた流路断面が略半円状の絞り部を形成する。該絞り部は、スリーブからキャビティに注入される金属溶湯によって前記フィルタ部材が前記スリーブからキャビティ内へ移動しないようにフィルタ部材の移動を制限する。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、型締め時に、第1金型に設けられた略円形の流路断面を有するスリーブと、第2金型とによって、流路断面が略半円状の絞り部が形成される。この絞り部が、鋳造時にスリーブからキャビティ側に流れる金属溶湯によるフィルタ部材の移動を制限し、フィルタ効果を持続させる。このため、鋳造時にスリーブ内で生成された初期凝固片がフィルタ部材により確実に捕捉され、鋳造された製品内により混入し難くなる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記絞り部は、その流路断面における前記スリーブの径方向での最大長さが、絞り部が対向する位置での前記湯路の最大厚さにほぼ等しい大きさから、スリーブの内径を約1/3倍した大きさまでの範囲内となるように形成されている。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明の作用に加えて、絞り部の流路断面でのスリーブの径方向における最大長さが、絞り部が対抗する部位での湯路の最大深さにほぼ等しい大きさより小さいと、その流路断面積が小さくなり過ぎて湯回り不良が発生する可能性がある。また、同じく、スリーブの内径を約1/3倍した大きさより大きいと、その流路断面積が大きくなり過ぎてフィルタ部材が金属溶湯によってキャビティまで押し流される可能性がある。このため、絞り部の流路断面の最大長さが上記範囲であればその流路断面積が適切となり、湯回り不良が発生し難く、しかも、フィルタ部材がキャビティ内へより確実に入り込まないようにすることができる。従って、より一層確実に初期凝固片が捕捉される。
【0019】
請求項6に記載の発明は、スリーブが設けられた第1金型と、この第1金型と共にキャビティ及び前記スリーブを前記キャビティに連通する湯路を形成する第2金型とを備え、前記スリーブにフィルタ部材が配置された状態でスリーブからキャビティに金属溶湯が注入され、金属溶湯を前記フィルタ部材によって濾過するダイカスト鋳造装置である。前記第2金型には、前記スリーブの吐出口に対向するように突出し、型締め時には前記湯路内に配置される凸部が設けられている。該凸部は、型締め時に前記スリーブの流路断面の一部を閉塞して絞り部を形成する。該絞り部は、スリーブからキャビティに注入される金属溶湯によって前記フィルタ部材がスリーブからキャビティ内に移動しないようにフィルタ部材の移動を制限する。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、第1金型に設けられたスリーブと、第2金型に設けられた凸部とによって、型締め時に絞り部が形成される。この絞り部は、スリーブからキャビティに注入される金属溶湯によって前記フィルタ部材がスリーブからキャビティ内に移動しないようにフィルタ部材の移動を制限し、フィルタ効果を持続させる。このため、鋳造時にスリーブ内で生成された初期凝固片がフィルタ部材により確実に捕捉され、鋳造された製品内により混入し難くなる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記スリーブは、略円形の流路断面を有している。前記凸部は、前記スリーブの流路断面に対応する略円柱状に形成されるとともに前記円柱の軸線と平行な平面によって一部が平面状に切り欠かれている。前記絞り部は、スリーブの内周面からなる円弧部と、前記凸部の平面部とによってその流路断面が略半円状に形成されている。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、請求項6に記載の発明の作用に加えて、このように形成される絞り部は、鋳造時におけるフィルタ部材の移動を制限してキャビティ内への移動を防止し、しかも、湯回り不良を発生させないことが確認された。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記凸部は、前記絞り部の流路長さが、ほぼ「0」から、前記スリーブの内径を3倍した大きさから絞り部が対向する前記湯路の部位の最大厚さを差し引いた大きさ程度までの範囲内となるように形成されている。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、請求項7に記載の発明の作用に加えて、凸部が湯路内に突出する高さが、絞り部が対向する部位での湯路の最大厚さより小さいと、絞り部の流路断面が略半円状とならず、フィルタ部材が金属溶湯によってキャビティまで押し流される可能性がある。また、同じく、スリーブの内径を3倍した高さより大きいと、絞り部の流路長さが長くなりすぎて湯回り不良が発生する可能性がある。従って、絞り部の流路断面の最大長さが上記範囲内であれば流路長さが適切となり、湯回り不良が発生し難く、しかも、フィルタ部材がキャビティ内へより確実に入り込まないようにすることができる。
【0025】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は請求項8に記載の発明において、前記凸部は、前記絞り部の流路断面における前記スリーブの径方向での最大長さが、前記絞り部が対向する部位での前記湯路の最大深さとほぼ同じ大きさから、スリーブの内径を約1/3倍した大きさまでの範囲内となるように形成されている。
【0026】
請求項9に記載の発明によれば、請求項7又は請求項8に記載の発明の作用に加えて、絞り部の流路断面におけるスリーブの径方向における最大長さが、スリーブの吐出口に対抗する部位での湯路の最大深さと同じ長さより小さいと、流路断面積が小さすぎて湯回り不良が発生する可能性がある。また、同じく、スリーブの内径を1/3倍した長さより大きいと、流路断面積が大きすぎてフィルタ部材が金属溶湯によってキャビティまで押し流される可能性がある。従って、絞り部の流路断面の最大長さが上記範囲内であれば流路断面積が適切となり、湯回り不良が発生せず、しかも、フィルタ部材がキャビティ内へより確実に入り込まないようにすることができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明を、横型ダイカスト鋳造装置に具体化した第1実施形態を図1〜図10に従って説明する。
【0028】
図1及び図2に示すように、ダイカスト鋳造装置10は横型であって、固定型11(第1金型)及び可動型12(第2金型)を備えている。
固定型11には、金属溶湯を圧入するためのスリーブ13が水平方向に装着されている。
【0029】
スリーブ13は円筒状に形成され、その内周面13aが形成する流路は内径D1の円形の流路断面を有している。流路は、その長さ方向に直交する吐出口13bによって外部に開口されている。スリーブ13には、その注入口13cから金属溶湯が注入される。スリーブ13に注入された金属溶湯は、射出プランジャ14によって吐出口13bから排出される。
【0030】
また、可動型12の移動によって、型開き及び型締めが行われる。
図2に示すように、固定型11と可動型12とは、型締め時に、それぞれの当接面11a,12a同士を当接させる。そして、固定型11と可動型12とによって、キャビティ15及びランナ(湯路)16が形成される。
【0031】
キャビティ15は可動型12側に形成され、ランナ16は固定型11側に形成される。鋳造は、スリーブ13に注入された金属溶湯が、ランナ16を通じてキャビティ15に供給されることで行われる。
【0032】
図3(a),(b)に示すように、ランナ16は、略円形のビスケット形成部17と、略扇状のランナ形成部18とからなる。
ビスケット形成部17は、その内径が、スリーブ13の外径とほぼ等しく形成されている。ビスケット形成部17の底面には、スリーブ13の吐出口13bが配置されている。
【0033】
ランナ形成部18は、扇状に拡開する先端側の縁端部がキャビティ15へのゲート部とされている。
ランナ16は、ランナ形成部18のゲート部を除く全体が等しい厚さT1に形成されている。厚さT1は、スリーブ13の内径D1の約1/8倍に設定されている。
【0034】
図3(a),(b)に示すように、可動型12の当接面12a上には、スリーブ13の吐出口13bに対向するように突出し、型締め時にはランナ16内に配置される凸部20が設けられている。
【0035】
凸部20は、図4に示すように、スリーブ13の流路断面に対応する略円柱状に形成され、また、その円柱の軸線と平行な平面によってその一部が平面状に切り欠かれている。
【0036】
凸部20は、図3(a),(b)及び図5に示すように、型締め時に、スリーブ13の吐出口13b(流路断面)の一部を閉塞して、流路断面が略半円状の絞り部(フィルタ保持部)21を形成する。
【0037】
絞り部21は、吐出口13bの周縁からなる円弧部と、該円弧部の両端部を連結する凸部20の平面部20aとに囲まれた流路断面が略半円状に形成されている。絞り部21は、スリーブ13からランナ16までの経路上に形成される。また、絞り部21は、ビスケット形成部17に対向するように開口する。
【0038】
次に、凸部20について詳述する。
凸部20は、図4に示すように、その最大径D2が、スリーブ13の内径D1の0.9倍の大きさに形成されている。但し、最大径D2は、内径D1の0.9倍の大きさに限らず、例えば、内径D1より0.1mmだけ小さくてもよい。
【0039】
また、凸部20は、可動型12の当接面12aから吐出口13b側へ突出する高さHが、図6(a),(b)に示すように、ランナ16の厚さT1と同じ大きさになっている。また、この高さHは、図6(a),(b)に示す大きさから、図7(a),(b)に示すように、スリーブ13の内径D1を3倍した大きさまでの範囲内で変更してもよい。本実施形態では、ランナ16の厚さT1が、絞り部21が対向するビスケット形成部17の部位の最大厚さである。
【0040】
また、凸部20は、その径方向での最小長さD3が、図6(a),(b)に示すように、スリーブ13の内径D1からランナ16の厚さT1だけ小さい大きさになっている。また、この最小長さD3は、図6(a),(b)に示す大きさから、図7(a),(b)に示すように、スリーブ13の内径D1を2/3倍した大きさまでの範囲内で変更してもよい。
【0041】
これにより、絞り部21は、その流路長さLが、ほぼ「0」から、スリーブ13の内径D1を3倍した大きさからランナ16の厚さT1を差し引いた大きさ程度までの範囲内に形成されている。
【0042】
また、絞り部21の流路断面は、スリーブ13の径方向におけるその最大長さD4が、ランナ16の厚さT1とほぼ同じ大きさから、スリーブ13の内径D1を約1/3倍した大きさまでの範囲内に形成されている。
【0043】
次に、本実施形態のダイカスト鋳造装置を使用してダイカスト鋳造を行う方法について説明する。
先ず、図1に示すように、型開き状態で、スリーブ13内にその吐出口13bから金網フィルタ(フィルタ部材)22を挿入する。
【0044】
金網フィルタ22は、例えば、アルミニウム合金の線材からなる網材を、曲げ加工等によって中空球状にしたものである。
この金網フィルタ22の外径は、スリーブ13の内径D1よりもやや大きくされており、スリーブ13内に圧入される。なお、この金網フィルタ22の外径はスリーブ13の内径D1より小さいもの(ただし、図6,7に示す絞り部21の最大長さD4より大きいもの)を用いて、スリーブ13に挿入してもかまわない。
【0045】
次に、可動型12を移動させて型締めし、スリーブ13の注入口13cからスリーブ13に金属溶湯を注入した後、射出プランジャ14を駆動して、スリーブ13から金網フィルタ22を通してランナ16さらにキャビティ15に金属溶湯を加圧注入する。
【0046】
このとき、絞り部21は、金属溶湯による金網フィルタ22の変形や移動を制限し、充填完了までフィルタ効果が持続するように金網フィルタ22を保持する。そして、金網フィルタ22は、スリーブ13内で生成された初期凝固片を金属溶湯中から濾過し、初期凝固片を殆ど含まない金属溶湯をキャビティ15側に供給する。
【0047】
なお、金網フィルタ22は、金属溶湯の注入初期には、粗大初晶及び粗大チル層等の凝固片をその表面に捕捉する。さらに、金網フィルタ22は、注入が進むにつれてその表面に堆積した粗大凝固片のフィルタ効果によって、より小さく破損した凝固片をも捕捉する。
【0048】
また、このとき、金網フィルタ22によって、スリーブ13の吐出口13b側で生じる溶湯の波打ちが抑制され、スリーブ13内での気泡の巻き込みが抑制される。さらに、凸部20により、溶湯が可動型12に衝突することによる波の発生が抑制され、波の発生に起因する空気の巻き込みが抑制される。
【0049】
この結果、図8(a),(b)に示すように、製品30に、ランナ部31及びビスケット部32が一体となった鋳造体33がダイカスト鋳造される。
また、金網フィルタ22は、金属溶湯の充填完了後、鋳造体のビスケット部32に鋳込まれた状態となる。
【0050】
次に、本実施形態のダイカスト鋳造装置でダイカスト鋳造した鋳造体を、従来のダイカスト鋳造装置で鋳造した鋳造体と比較した結果について説明する。
なお、射出圧力及び射出速度は、同じにして試験を行った。
【0051】
本実施形態のダイカスト鋳造装置10で鋳造した鋳造体33では、図9にその断面を示すように、金網フィルタ22は、絞り部21に対応する部位に留まり、初期凝固層34が金網フィルタ22より上流側に形成されている。このため、初期凝固片が製品30内に混入することはなかった。
【0052】
一方、従来のダイカスト鋳造装置で鋳造した鋳造体40では、図10にその断面を示すように、金網フィルタ22は金属溶湯によって押し流され、球形から大きく変形して製品41内まで流れ込んでいた。このとき、初期凝固片は、変形した金網フィルタ22の横を通過して製品41内に混入していた。
【0053】
次に、凸部20の形状を変化させ、絞り部21の流路断面積及び流路長さLを変化させたときの試験結果について説明する。
表1に、凸部20の高さH及び最小長さD3を共に変えて、絞り部21の流路断面積及び流路長さLを変化させて試験鋳造を行ったときの鋳造体の観察結果を示す。
【0054】
【表1】
この観察結果によれば、凸部20の高さHをランナ16の厚さT1の0.8倍まで小さくしたときには、その最小長さD3を、スリーブ13の内径D1からランナ16の厚さT1の0.8倍を差し引いた大きさまで大きくしても金網フィルタ22がゲート部まで押し流された。すなわち、凸部20の先端面をスリーブ13の吐出口13bから離れさせたときには、絞り部21の流路断面の最大長さD4をランナ16の厚さT1を約0.8倍した大きさまで小さくしても金網フィルタ22が押し流された。
【0055】
また、凸部20の高さHをスリーブ13の内径D1の4倍まで大きくしたときには、その最小長さD3を、内径D1の1/2倍まで小さくしても湯回り不良が発生した。すなわち、絞り部21の流路長さLを、スリーブ13の内径D1の4倍からランナ16の厚さT1分だけ差し引いた大きさ程度まで大きくしたときには、その流路断面の最大長さD4を内径D1の約1/2倍の大きさまで大きくしても湯回り不良が発生した。
【0056】
また、凸部20の最小長さD3をスリーブ13の内径D1からランナ16の厚さT1の0.8倍を差し引いた大きさまで大きくしたときには、その高さHをランナ16の厚さT1と同じに小さくしても湯回り不良が発生した。すなわち、絞り部21の流路断面の最大長さD4をランナ16の厚さT1を約0.8倍した大きさまで小さくしたときには、その流路長さLを最小の「0」としても湯回り不良が発生した。
【0057】
また、凸部20の最小長さD3をスリーブ13の内径D1の1/2倍まで小さくしたときには、その高さHを内径D1の3倍まで大きくしても金網フィルタ22がゲート部まで押し流された。すなわち、絞り部21の流路断面の最大長さD4を内径D1の約1/2倍まで大きくしたときには、その流路長さLを内径D1の3倍からランナ16の厚さT1分だけ差し引いた大きさ程度まで大きくしても金網フィルタ22が押し流された。
【0058】
一方、凸部20の高さH及び最小長さD3が、次のように設定されているときには、湯回り不良が発生せず、また、金網フィルタ22がゲート部まで押し流されることがない。
【0059】
・ 高さHが、ランナ16の厚さT1と同じ大きさから、スリーブ13の内径D1の3倍までの大きさの範囲であること。
・ 最小長さD3が、スリーブ13の内径D1の2/3倍の大きさから、内径D1からランナ16の厚さT1分を差し引いた大きさまでの範囲であること。
【0060】
すなわち、絞り部21の流路断面の最大長さD4及び流路長さLが、次のように設定されていれば、湯回り不良が発生せず、また、金網フィルタ22がゲート部まで押し流されることがない。
【0061】
・ 流路断面の最大長さD4が、ランナ16の厚さT1の大きさ程度から、スリーブ13の内径D1の約1/3倍までの範囲であること。
・ 流路長さLが、ほぼ「0」から、スリーブ13の内径D1の3倍からランナ16の厚さT1を差し引いた大きさ程度までの範囲であること。
【0062】
次に、以上詳述した本実施形態が有する効果を列記する。
(1) 型締め時に、固定型11に設けられたスリーブ13の吐出口13bの一部を、可動型12に設けられた凸部20が閉塞して絞り部(フィルタ保持部)21を形成する。この絞り部21は、鋳造時にスリーブ13からキャビティ15に注入される金属溶湯による金網フィルタ(フィルタ部材)22の変形及び移動を制限して保持し、充填完了までフィルタ効果を持続させる。このため、鋳造時に、スリーブ13内で生成された初期凝固片が金網フィルタ22により確実に捕捉され、キャビティ15内により流れ込み難くなる。
【0063】
その結果、初期凝固片の鋳造製品への混入をより確実に防止することができるため、鋳造製品の機械的性質がよりばらつかないようにすることができる。
(2) 絞り部21の略半円状の流路断面は、スリーブ13の径方向におけるその最大長さD4が、絞り部21が対向する部位でのランナ16の厚さT1とほぼ同じ大きさから、スリーブ13の内径D1を約1/3倍した大きさまでの範囲となるように凸部20の最小長さD3が設定されている。
【0064】
このため、絞り部21の流路断面積が小さすぎることによる湯回り不良が発生せず、また、流路断面積が大きすぎることによって金網フィルタ22がキャビティ15のゲート部まで流されるようなことがない。
【0065】
(3) 絞り部21の流路長さLが、「0」から、スリーブ13の内径D1の3倍から絞り部21が対向するランナ16の厚さT1だけ差し引いた大きさ程度となるように凸部20の高さHが設定されている。
【0066】
このため、流路長さが長すぎることによる湯回り不良が発生せず、また、流路断面が略半円状でなくなることによって金網フィルタ22がキャビティ15のゲート部まで押し流されるようなことがない。
【0067】
(4) 凸部20が、スリーブ13の吐出口13bに対向するように突出しているので、溶湯が可動型12に衝突することによる波の発生が抑制され、波の発生に起因する空気の巻き込みが抑制される。このため、鋳造体33の製品30中に気泡巣ができ難いので、製品30の機械的性質がばらつき難くなる。
【0068】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を図11及び図12に従って説明する。
【0069】
図11に示すように、本実施形態のダイカスト鋳造装置50は、第1実施形態と同様、固定型(第1金型)51及び可動型(第2金型)52からなる。
本実施形態は、第1実施形態と同じスリーブ13を備えている。
【0070】
スリーブ13は、その吐出口13bが固定型51の当接面51aに開口されている。
固定型51及び可動型52によって、キャビティ53及びランナ54,55が形成される。キャビティ53及びランナ(湯路)54は可動型52に形成され、ランナ55は固定型51に形成されている。
【0071】
ランナ54は、その一部がスリーブ13の吐出口13bに対向するように設けられている。また、ランナ54は、スリーブ13との連通部と、ランナ55との連通部を除く全部分が同じ厚さT2に形成されている。
【0072】
ランナ55は、その一部がランナ54に連通され、別の一部がキャビティ53のゲート部となっている。
図12(a),(b)に示すように、ランナ54は、吐出口13b側から略扇状に拡開するように形成され、拡開する先端側の縁部がランナ55と連通される。
【0073】
そして、可動型52は、型締め時にその当接面52aでスリーブ13の吐出口13b(流路断面)の一部を閉塞し、吐出口13bの周縁からなる円弧部と、該円弧部の両端部を連結するランナ54の周縁の直線部とに囲まれた流路断面が略半円状の絞り部(フィルタ保持部)56を形成する。
【0074】
絞り部56は、スリーブ13からランナ54,55までの経路上に設けられている。絞り部56の一部は、ランナ54の厚さT2の部位に対向する。
また、絞り部56の流路断面は、スリーブ13の径方向におけるその最大長さD5が、ランナ54の厚さT2とほぼ同じ大きさから、スリーブ13の内径D1の約1/3倍の大きさまでの範囲に形成されている。本実施形態では、ランナ54の厚さT2が、スリーブ13の吐出口13bが対向する部位でのランナ54の最大厚さである。
【0075】
本実施形態のダイカスト鋳造装置50も、スリーブ13内に、金属溶湯を濾過した後に鋳造体に鋳込まれる金網フィルタ22を配置した状態で使用される。
絞り部56は、鋳造時に、スリーブ13からキャビティ53側に注入される溶湯によって、金網フィルタ22がスリーブ13からキャビティ53内に移動しないように金網フィルタ22の移動を制限し、充填完了までフィルタ効果を持続させる。
【0076】
以上詳述した本実施形態は、前記第1実施形態の(1)に記載した効果を有する。
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態を図13及び図14に従って説明する。なお、本実施形態は、前記第1実施形態における凸部20を無くしたことと、スリーブ13をスリーブ60に代えたことのみが第1実施形態と異なる。従って、第1実施形態と同じ構成については符号を同じにしてその説明を省略し、スリーブ60のみについて詳述する。
【0077】
図13(a),(b)に示すように、本実施形態のスリーブ60は、スリーブ13と同様に円筒状に形成され、固定型11の当接面11aに開口する開口端60aを有している。開口端60aは、型締め時に可動型12の当接面12aによって閉塞される。
【0078】
また、図13(a),(b)及び図14に示すように、スリーブ60には、開口端60aの周壁に開口する絞り部(フィルタ保持部)61が設けられている。すなわち、絞り部61は、スリーブ60からランナ形成部18までの経路上に設けられている。
【0079】
絞り部61は、型締め時にスリーブ13をランナ16に連通する。
絞り部61は、鋳造時にスリーブ60からキャビティ15に注入される金属溶湯によって金網フィルタ22がキャビティ15側に移動しないように、金網フィルタ22の移動を制限し、充填完了までフィルタ効果を持続させる。
【0080】
以上詳述した本実施形態は、前記第1実施形態の(1)に記載した効果を有する。
(第4実施形態)
次に、本発明を具体化した第4実施形態を図15及び図16に従って説明する。なお、本実施形態は、前記第1実施形態における凸部20を無くしたことと、新たに突起70を設けたことのみが第1実施形態と異なる。従って、第1実施形態と同じ構成については符号を同じにしてその説明を省略し、突起70のみについて詳述する。
【0081】
図15(a),(b)及び図16に示すように、本実施形態では、ランナ形成部18内に、ビスケット形成部17との境界に沿って4つの突起70が設けられている。すなわち、4つの突起70は、ランナ(湯路)16の経路上に設けられている。本実施形態では、4つの突起70がフィルタ保持部を構成する。
【0082】
4つの突起70は、鋳造時にスリーブ13からキャビティ15に注入される金属溶湯によって金網フィルタ22がキャビティ15内へ移動しないように、金網フィルタ22を係止してその移動を制限し、充填完了までフィルタ効果を持続させる。
【0083】
以上詳述した本実施形態は、前記第1実施形態の(1)に記載した効果を有する。
次に、上記第1〜第4実施形態以外の実施形態を列記する。
【0084】
○ 前記第1実施形態で、絞り部21は、キャビティ15に対する金属溶湯の充填が完了する時点まで金網フィルタ22を止めず、充填完了の前の時点でランナ16内に移動させるように形成されていてもよい。この場合であっても、金網フィルタ22がキャビティ15内まで押し流されず、あるいは、初期凝固片が製品30に流れ込まなければよい。第2〜第4実施形態についても同様である。
【0085】
○ 前記第1〜第4実施形態で、金網フィルタ22の形態は、型開き状態で、スリーブ13(60)に容易に圧入することができ、しかも、鋳造時に、絞り部21(56)、絞り部61あるいは突起70によってキャビティ15(53)内への移動を確実に制限されるものであればよい。本実施形態のような球体に限らず、例えば、図17(a)に示すような半球体や、図17(b)に示すような中空の円筒体や、また、図17(c)に示すような円筒部の両端に半球部が接合されたような中空立体のものであってもよい。
【0086】
○ 前記第1〜第4実施形態で、金網フィルタ22が形成される線材の材質は、アルミニウム系合金、鉄系合金等のいずれであってもよい。
○ 前記第1〜第4実施形態で、固定型及び可動型は、1つ又は複数のスライドコアを有する型式であってもよい。
【0087】
○ 前記第1〜第4実施形態で、縦型のダイカスト鋳造装置に実施してもよい。
以下、前記各実施形態から把握される技術的思想をその効果とともに列記する。
【0088】
(1) 請求項2〜請求項9のいずれか一項に記載の発明において、前記フィルタ部材は、金属の線材からなる網材によって中空立体に形成されているダイカスト鋳造装置。
【0089】
(2) 請求項2に記載の発明において、前記スリーブは、前記第1金型に設けられ、型締め時に前記第2金型によって閉塞される開口端(60a)を有し、前記フィルタ保持部は、前記開口端の周壁に開口し、型締め時にスリーブを前記湯路に連通する絞り部(61)であるダイカスト鋳造装置。このような構成には、前記第3実施形態の効果がある。
【0090】
(3) 請求項2に記載の発明において、前記スリーブ13は、前記第1金型に設けられ、型締め時に前記湯路に連通する吐出口を有し、前記フィルタ保持部は、前記湯路に設けられ、フィルタ部材を係止可能な係止手段(突起70)であるダイカスト鋳造装置。このような構成には、前記第4実施形態の効果がある。
【0091】
(4) 請求項7に記載の発明において、前記凸部は、前記絞り部の流路長さが、前記スリーブの内径から絞り部が対向する前記湯路の部位の最大厚さを差し引いた大きさ程度から、該内径を3倍した大きさから前記最大厚さを差し引いた大きさ程度までの範囲内となるように形成されているダイカスト鋳造装置。
【0092】
(5) 請求項7又は請求項8に記載の発明において、前記凸部は、前記絞り部の流路断面における前記スリーブの径方向での最大長さが、前記絞り部が対向する部位での前記湯路の最大深さを約2倍した大きさから、スリーブの内径を約1/3倍した大きさまでの範囲内となるように形成されているダイカスト鋳造装置。
【0093】
【発明の効果】
請求項1〜請求項9に記載の発明によれば、初期凝固片を濾過するフィルタ部材がキャビティ内へより確実に流されないようにすることができるので、初期凝固片の鋳造製品への混入をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態のダイカスト鋳造装置を示す模式縦断面図。
【図2】同じく型締め状態を示す模式縦断面図。
【図3】(a)は絞り部を示す模式縦断面図、(b)は(a)のA−A線断面図。
【図4】凸部を示す模式斜視図。
【図5】絞り部を示す模式斜視図。
【図6】(a)は凸部及びスリーブを示す模式縦断面図、(b)は(a)のB−B線断面図。
【図7】(a)は凸部及びスリーブを示す模式縦断面図、(b)は(a)のC−C断面図。
【図8】(a)は鋳造体を示す側面図、(b)は同じく正面図。
【図9】図8(b)のD−D線断面図。
【図10】同じく比較例の断面図。
【図11】第2実施形態の金型の要部を示す模式縦断面図。
【図12】(a)は絞り部を示す図11の要部模式縦断面図、(b)は(a)のE−E線断面図。
【図13】(a)は第3実施形態の金型の要部を示す要部縦断面図、(b)は(a)のF−F線断面図。
【図14】フィルタ保持部を示す模式斜視図。
【図15】(a)は第4実施形態の金型の要部を示す模式縦断面図、(b)は(a)のG−G線断面図。
【図16】フィルタ保持部を示す模式斜視図。
【図17】(a),(b),(c)は共に金網フィルタの他の実施形態を示す模式斜視図。
【図18】(a),(b)は共に従来のダイカスト鋳造装置を示す模式縦断面図。
【符号の説明】
10…ダイカスト鋳造装置、11…第1金型としての固定型、12…第2金型としての可動型、13…スリーブ、13a…内周面、13b…流路断面としての吐出口、15…キャビティ、16…湯路としてのランナ、17…湯路を構成するビスケット形成部、18…同じくランナ形成部、20…凸部、20a…平面部、21…フィルタ保持部としての絞り部、22…フィルタ部材としての金網フィルタ、33,40…鋳造体、50…ダイカスト鋳造装置、51…第1金型としての固定型、52…第2金型としての可動型、53…キャビティ、54,55…湯路としてのランナ、56…フィルタ保持部としての絞り部、60…スリーブ、60a…開口端、61…フィルタ保持部としての絞り部、70…フィルタ保持部を構成する突起、D1…(スリーブ13の)内径、D3…(凸部20の)最小長さ、D4…(絞り部20の流路断面の径方向)最大長さ、D5…(絞り部56の流路断面の径方向)最大長さ、H…(凸部20の)高さ、L…(絞り部21の)流路長さ、T1…(ランナ16の)厚さ、T2…(ランナ54の)厚さ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルタ部材を用いたダイカスト鋳造方法、及び、同方法に使用するダイカスト鋳造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ダイカスト鋳造は、寸法精度、生産性が高いことから、自動車の機械部品等に広く用いられている。しかし、従来のダイカスト鋳造品には、その引っ張り強さ等の機械的性質に、大きなばらつきがでる場合があった。
【0003】
この原因の1つは、鋳造時に、スリーブ内に注入された金属溶湯の一部が初期凝固し、この初期凝固片(破断チル層、粗大初晶Al)が製品キャビティ内に圧入されることによるものである。このため、鋳造された製品の内部に混入した初期凝固片の界面での強度が著しく低くなり、製品の機械的性質が大きくばらつくことになる。
【0004】
本出願人の1人は、このような問題を解消するためのダイカスト鋳造用方法を提案している(特許文献1参照)。
この鋳造方法では、先ず、図18(a)に示すように、固定型90と可動型91とを型開きしている状態で、固定型90に設けられたスリーブ92の開口に、多数の貫通孔を有する網目構造体93を圧入する。そして、図18(b)に示すように、網目構造体93をスリーブ92内に配置した状態で鋳造を行う。これにより、スリーブ92内に注入した金属溶湯を、網目構造体93を通してランナ94からキャビティ95内に注入する。このため、スリーブ92内で生じた初期凝固片が網目構造体93に捕捉され、鋳造製品に混入する初期凝固片の量が抑制される。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−137050号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、鋳造後の製品には、スリーブ92及びランナ94内で凝固した非製品部がくっついている。この非製品部は、再び溶かされて再使用できることが望ましい。このため、上記鋳造方法で用いる網目構造体93の材質として、鋳造用合金と同じ、例えばアルミニウム系合金を用いることが望ましい。
【0007】
ところが、アルミニウム系合金の強度が弱いため、鋳造時に、高速、高圧で注入される溶湯によって、スリーブ92の吐出口付近からキャビティ95側に高い圧力で網目構造体93が押し流され、初期凝固片と共に鋳造製品内に入り込む虞があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、初期凝固片の鋳造製品への混入をより確実に防止することができるダイカスト鋳造方法及びダイカスト鋳造装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、第1金型と、この第1金型と共にキャビティを形成する第2金型とを備えたダイカスト鋳造装置を用いたダイカスト鋳造方法である。先ず、型開き状態で、スリーブ、又は、スリーブを前記キャビティに連通する湯路内にフィルタ部材を配置する。その後、型閉じすることで前記スリーブから前記湯路までの経路上において前記フィルタ部材よりもキャビティ側にフィルタ保持部を形成する。さらにその後、スリーブからキャビティに金属溶湯を注入することにより、前記フィルタ部材を前記フィルタ保持部に保持させた状態で、金属溶湯を濾過する。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、スリーブ内、又は、スリーブをキャビティに連通する湯路内に配置されたフィルタ部材が、鋳造時に、フィルタ部材よりもキャビティ側に設けられたフィルタ保持部によって保持される。そして、スリーブからキャビティに注入される金属溶湯によるフィルタ部材のキャビティ側への移動を制限し、フィルタ効果を持続させる。このため、鋳造時にスリーブ内で生成された初期凝固片がフィルタ部材により確実に捕捉され、鋳造された製品内により混入し難くなる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、第1金型と、この第1金型と共にキャビティを形成する第2金型と、フィルタ部材とを備え、スリーブ、又は、スリーブを前記キャビティに連通する湯路内に前記フィルタ部材が配置された状態で前記スリーブからキャビティに金属溶湯が注入され、金属溶湯を前記フィルタ部材によって濾過するダイカスト鋳造装置である。前記スリーブから前記湯路までの経路上には、スリーブからキャビティに注入される金属溶湯によって前記フィルタ部材が前記キャビティ内へ移動しないようにフィルタ部材の移動を制限するフィルタ保持部が設けられている。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、スリーブ内、又は、スリーブをキャビティに連通する湯路内に設けられたフィルタ保持部が、鋳造時にスリーブからキャビティに注入される金属溶湯によるフィルタ部材のキャビティ側への移動を制限し、フィルタ効果を持続させる。このため、鋳造時にスリーブ内で生成された初期凝固片がフィルタ部材により確実に捕捉され、鋳造された製品内により混入し難くなる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記スリーブは、前記第1金型に設けられている。前記フィルタ保持部は、前記スリーブから前記湯路までの経路上に形成され、スリーブ内に配置された前記フィルタ部材の移動を制限する絞り部である。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の作用に加えて、スリーブから湯路までの経路上に形成される絞り部が、スリーブ内に配置されたフィルタ部材の移動を制限し、フィルタ効果を持続させる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、スリーブが設けられた第1金型と、この第1金型と共にキャビティ及び前記スリーブを前記キャビティに連通する湯路を形成する第2金型とを備え、前記スリーブにフィルタ部材が配置された状態でスリーブからキャビティに金属溶湯が注入され、金属溶湯を前記フィルタ部材によって濾過するダイカスト鋳造装置である。前記スリーブは、略円形の流路断面を有している。前記第2金型は、型締め時に前記スリーブの流路断面の一部を閉塞して、前記スリーブの周縁からなる円弧部と、前記円弧部の両端部を連結する直線部とに囲まれた流路断面が略半円状の絞り部を形成する。該絞り部は、スリーブからキャビティに注入される金属溶湯によって前記フィルタ部材が前記スリーブからキャビティ内へ移動しないようにフィルタ部材の移動を制限する。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、型締め時に、第1金型に設けられた略円形の流路断面を有するスリーブと、第2金型とによって、流路断面が略半円状の絞り部が形成される。この絞り部が、鋳造時にスリーブからキャビティ側に流れる金属溶湯によるフィルタ部材の移動を制限し、フィルタ効果を持続させる。このため、鋳造時にスリーブ内で生成された初期凝固片がフィルタ部材により確実に捕捉され、鋳造された製品内により混入し難くなる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記絞り部は、その流路断面における前記スリーブの径方向での最大長さが、絞り部が対向する位置での前記湯路の最大厚さにほぼ等しい大きさから、スリーブの内径を約1/3倍した大きさまでの範囲内となるように形成されている。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明の作用に加えて、絞り部の流路断面でのスリーブの径方向における最大長さが、絞り部が対抗する部位での湯路の最大深さにほぼ等しい大きさより小さいと、その流路断面積が小さくなり過ぎて湯回り不良が発生する可能性がある。また、同じく、スリーブの内径を約1/3倍した大きさより大きいと、その流路断面積が大きくなり過ぎてフィルタ部材が金属溶湯によってキャビティまで押し流される可能性がある。このため、絞り部の流路断面の最大長さが上記範囲であればその流路断面積が適切となり、湯回り不良が発生し難く、しかも、フィルタ部材がキャビティ内へより確実に入り込まないようにすることができる。従って、より一層確実に初期凝固片が捕捉される。
【0019】
請求項6に記載の発明は、スリーブが設けられた第1金型と、この第1金型と共にキャビティ及び前記スリーブを前記キャビティに連通する湯路を形成する第2金型とを備え、前記スリーブにフィルタ部材が配置された状態でスリーブからキャビティに金属溶湯が注入され、金属溶湯を前記フィルタ部材によって濾過するダイカスト鋳造装置である。前記第2金型には、前記スリーブの吐出口に対向するように突出し、型締め時には前記湯路内に配置される凸部が設けられている。該凸部は、型締め時に前記スリーブの流路断面の一部を閉塞して絞り部を形成する。該絞り部は、スリーブからキャビティに注入される金属溶湯によって前記フィルタ部材がスリーブからキャビティ内に移動しないようにフィルタ部材の移動を制限する。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、第1金型に設けられたスリーブと、第2金型に設けられた凸部とによって、型締め時に絞り部が形成される。この絞り部は、スリーブからキャビティに注入される金属溶湯によって前記フィルタ部材がスリーブからキャビティ内に移動しないようにフィルタ部材の移動を制限し、フィルタ効果を持続させる。このため、鋳造時にスリーブ内で生成された初期凝固片がフィルタ部材により確実に捕捉され、鋳造された製品内により混入し難くなる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記スリーブは、略円形の流路断面を有している。前記凸部は、前記スリーブの流路断面に対応する略円柱状に形成されるとともに前記円柱の軸線と平行な平面によって一部が平面状に切り欠かれている。前記絞り部は、スリーブの内周面からなる円弧部と、前記凸部の平面部とによってその流路断面が略半円状に形成されている。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、請求項6に記載の発明の作用に加えて、このように形成される絞り部は、鋳造時におけるフィルタ部材の移動を制限してキャビティ内への移動を防止し、しかも、湯回り不良を発生させないことが確認された。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記凸部は、前記絞り部の流路長さが、ほぼ「0」から、前記スリーブの内径を3倍した大きさから絞り部が対向する前記湯路の部位の最大厚さを差し引いた大きさ程度までの範囲内となるように形成されている。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、請求項7に記載の発明の作用に加えて、凸部が湯路内に突出する高さが、絞り部が対向する部位での湯路の最大厚さより小さいと、絞り部の流路断面が略半円状とならず、フィルタ部材が金属溶湯によってキャビティまで押し流される可能性がある。また、同じく、スリーブの内径を3倍した高さより大きいと、絞り部の流路長さが長くなりすぎて湯回り不良が発生する可能性がある。従って、絞り部の流路断面の最大長さが上記範囲内であれば流路長さが適切となり、湯回り不良が発生し難く、しかも、フィルタ部材がキャビティ内へより確実に入り込まないようにすることができる。
【0025】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は請求項8に記載の発明において、前記凸部は、前記絞り部の流路断面における前記スリーブの径方向での最大長さが、前記絞り部が対向する部位での前記湯路の最大深さとほぼ同じ大きさから、スリーブの内径を約1/3倍した大きさまでの範囲内となるように形成されている。
【0026】
請求項9に記載の発明によれば、請求項7又は請求項8に記載の発明の作用に加えて、絞り部の流路断面におけるスリーブの径方向における最大長さが、スリーブの吐出口に対抗する部位での湯路の最大深さと同じ長さより小さいと、流路断面積が小さすぎて湯回り不良が発生する可能性がある。また、同じく、スリーブの内径を1/3倍した長さより大きいと、流路断面積が大きすぎてフィルタ部材が金属溶湯によってキャビティまで押し流される可能性がある。従って、絞り部の流路断面の最大長さが上記範囲内であれば流路断面積が適切となり、湯回り不良が発生せず、しかも、フィルタ部材がキャビティ内へより確実に入り込まないようにすることができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明を、横型ダイカスト鋳造装置に具体化した第1実施形態を図1〜図10に従って説明する。
【0028】
図1及び図2に示すように、ダイカスト鋳造装置10は横型であって、固定型11(第1金型)及び可動型12(第2金型)を備えている。
固定型11には、金属溶湯を圧入するためのスリーブ13が水平方向に装着されている。
【0029】
スリーブ13は円筒状に形成され、その内周面13aが形成する流路は内径D1の円形の流路断面を有している。流路は、その長さ方向に直交する吐出口13bによって外部に開口されている。スリーブ13には、その注入口13cから金属溶湯が注入される。スリーブ13に注入された金属溶湯は、射出プランジャ14によって吐出口13bから排出される。
【0030】
また、可動型12の移動によって、型開き及び型締めが行われる。
図2に示すように、固定型11と可動型12とは、型締め時に、それぞれの当接面11a,12a同士を当接させる。そして、固定型11と可動型12とによって、キャビティ15及びランナ(湯路)16が形成される。
【0031】
キャビティ15は可動型12側に形成され、ランナ16は固定型11側に形成される。鋳造は、スリーブ13に注入された金属溶湯が、ランナ16を通じてキャビティ15に供給されることで行われる。
【0032】
図3(a),(b)に示すように、ランナ16は、略円形のビスケット形成部17と、略扇状のランナ形成部18とからなる。
ビスケット形成部17は、その内径が、スリーブ13の外径とほぼ等しく形成されている。ビスケット形成部17の底面には、スリーブ13の吐出口13bが配置されている。
【0033】
ランナ形成部18は、扇状に拡開する先端側の縁端部がキャビティ15へのゲート部とされている。
ランナ16は、ランナ形成部18のゲート部を除く全体が等しい厚さT1に形成されている。厚さT1は、スリーブ13の内径D1の約1/8倍に設定されている。
【0034】
図3(a),(b)に示すように、可動型12の当接面12a上には、スリーブ13の吐出口13bに対向するように突出し、型締め時にはランナ16内に配置される凸部20が設けられている。
【0035】
凸部20は、図4に示すように、スリーブ13の流路断面に対応する略円柱状に形成され、また、その円柱の軸線と平行な平面によってその一部が平面状に切り欠かれている。
【0036】
凸部20は、図3(a),(b)及び図5に示すように、型締め時に、スリーブ13の吐出口13b(流路断面)の一部を閉塞して、流路断面が略半円状の絞り部(フィルタ保持部)21を形成する。
【0037】
絞り部21は、吐出口13bの周縁からなる円弧部と、該円弧部の両端部を連結する凸部20の平面部20aとに囲まれた流路断面が略半円状に形成されている。絞り部21は、スリーブ13からランナ16までの経路上に形成される。また、絞り部21は、ビスケット形成部17に対向するように開口する。
【0038】
次に、凸部20について詳述する。
凸部20は、図4に示すように、その最大径D2が、スリーブ13の内径D1の0.9倍の大きさに形成されている。但し、最大径D2は、内径D1の0.9倍の大きさに限らず、例えば、内径D1より0.1mmだけ小さくてもよい。
【0039】
また、凸部20は、可動型12の当接面12aから吐出口13b側へ突出する高さHが、図6(a),(b)に示すように、ランナ16の厚さT1と同じ大きさになっている。また、この高さHは、図6(a),(b)に示す大きさから、図7(a),(b)に示すように、スリーブ13の内径D1を3倍した大きさまでの範囲内で変更してもよい。本実施形態では、ランナ16の厚さT1が、絞り部21が対向するビスケット形成部17の部位の最大厚さである。
【0040】
また、凸部20は、その径方向での最小長さD3が、図6(a),(b)に示すように、スリーブ13の内径D1からランナ16の厚さT1だけ小さい大きさになっている。また、この最小長さD3は、図6(a),(b)に示す大きさから、図7(a),(b)に示すように、スリーブ13の内径D1を2/3倍した大きさまでの範囲内で変更してもよい。
【0041】
これにより、絞り部21は、その流路長さLが、ほぼ「0」から、スリーブ13の内径D1を3倍した大きさからランナ16の厚さT1を差し引いた大きさ程度までの範囲内に形成されている。
【0042】
また、絞り部21の流路断面は、スリーブ13の径方向におけるその最大長さD4が、ランナ16の厚さT1とほぼ同じ大きさから、スリーブ13の内径D1を約1/3倍した大きさまでの範囲内に形成されている。
【0043】
次に、本実施形態のダイカスト鋳造装置を使用してダイカスト鋳造を行う方法について説明する。
先ず、図1に示すように、型開き状態で、スリーブ13内にその吐出口13bから金網フィルタ(フィルタ部材)22を挿入する。
【0044】
金網フィルタ22は、例えば、アルミニウム合金の線材からなる網材を、曲げ加工等によって中空球状にしたものである。
この金網フィルタ22の外径は、スリーブ13の内径D1よりもやや大きくされており、スリーブ13内に圧入される。なお、この金網フィルタ22の外径はスリーブ13の内径D1より小さいもの(ただし、図6,7に示す絞り部21の最大長さD4より大きいもの)を用いて、スリーブ13に挿入してもかまわない。
【0045】
次に、可動型12を移動させて型締めし、スリーブ13の注入口13cからスリーブ13に金属溶湯を注入した後、射出プランジャ14を駆動して、スリーブ13から金網フィルタ22を通してランナ16さらにキャビティ15に金属溶湯を加圧注入する。
【0046】
このとき、絞り部21は、金属溶湯による金網フィルタ22の変形や移動を制限し、充填完了までフィルタ効果が持続するように金網フィルタ22を保持する。そして、金網フィルタ22は、スリーブ13内で生成された初期凝固片を金属溶湯中から濾過し、初期凝固片を殆ど含まない金属溶湯をキャビティ15側に供給する。
【0047】
なお、金網フィルタ22は、金属溶湯の注入初期には、粗大初晶及び粗大チル層等の凝固片をその表面に捕捉する。さらに、金網フィルタ22は、注入が進むにつれてその表面に堆積した粗大凝固片のフィルタ効果によって、より小さく破損した凝固片をも捕捉する。
【0048】
また、このとき、金網フィルタ22によって、スリーブ13の吐出口13b側で生じる溶湯の波打ちが抑制され、スリーブ13内での気泡の巻き込みが抑制される。さらに、凸部20により、溶湯が可動型12に衝突することによる波の発生が抑制され、波の発生に起因する空気の巻き込みが抑制される。
【0049】
この結果、図8(a),(b)に示すように、製品30に、ランナ部31及びビスケット部32が一体となった鋳造体33がダイカスト鋳造される。
また、金網フィルタ22は、金属溶湯の充填完了後、鋳造体のビスケット部32に鋳込まれた状態となる。
【0050】
次に、本実施形態のダイカスト鋳造装置でダイカスト鋳造した鋳造体を、従来のダイカスト鋳造装置で鋳造した鋳造体と比較した結果について説明する。
なお、射出圧力及び射出速度は、同じにして試験を行った。
【0051】
本実施形態のダイカスト鋳造装置10で鋳造した鋳造体33では、図9にその断面を示すように、金網フィルタ22は、絞り部21に対応する部位に留まり、初期凝固層34が金網フィルタ22より上流側に形成されている。このため、初期凝固片が製品30内に混入することはなかった。
【0052】
一方、従来のダイカスト鋳造装置で鋳造した鋳造体40では、図10にその断面を示すように、金網フィルタ22は金属溶湯によって押し流され、球形から大きく変形して製品41内まで流れ込んでいた。このとき、初期凝固片は、変形した金網フィルタ22の横を通過して製品41内に混入していた。
【0053】
次に、凸部20の形状を変化させ、絞り部21の流路断面積及び流路長さLを変化させたときの試験結果について説明する。
表1に、凸部20の高さH及び最小長さD3を共に変えて、絞り部21の流路断面積及び流路長さLを変化させて試験鋳造を行ったときの鋳造体の観察結果を示す。
【0054】
【表1】
この観察結果によれば、凸部20の高さHをランナ16の厚さT1の0.8倍まで小さくしたときには、その最小長さD3を、スリーブ13の内径D1からランナ16の厚さT1の0.8倍を差し引いた大きさまで大きくしても金網フィルタ22がゲート部まで押し流された。すなわち、凸部20の先端面をスリーブ13の吐出口13bから離れさせたときには、絞り部21の流路断面の最大長さD4をランナ16の厚さT1を約0.8倍した大きさまで小さくしても金網フィルタ22が押し流された。
【0055】
また、凸部20の高さHをスリーブ13の内径D1の4倍まで大きくしたときには、その最小長さD3を、内径D1の1/2倍まで小さくしても湯回り不良が発生した。すなわち、絞り部21の流路長さLを、スリーブ13の内径D1の4倍からランナ16の厚さT1分だけ差し引いた大きさ程度まで大きくしたときには、その流路断面の最大長さD4を内径D1の約1/2倍の大きさまで大きくしても湯回り不良が発生した。
【0056】
また、凸部20の最小長さD3をスリーブ13の内径D1からランナ16の厚さT1の0.8倍を差し引いた大きさまで大きくしたときには、その高さHをランナ16の厚さT1と同じに小さくしても湯回り不良が発生した。すなわち、絞り部21の流路断面の最大長さD4をランナ16の厚さT1を約0.8倍した大きさまで小さくしたときには、その流路長さLを最小の「0」としても湯回り不良が発生した。
【0057】
また、凸部20の最小長さD3をスリーブ13の内径D1の1/2倍まで小さくしたときには、その高さHを内径D1の3倍まで大きくしても金網フィルタ22がゲート部まで押し流された。すなわち、絞り部21の流路断面の最大長さD4を内径D1の約1/2倍まで大きくしたときには、その流路長さLを内径D1の3倍からランナ16の厚さT1分だけ差し引いた大きさ程度まで大きくしても金網フィルタ22が押し流された。
【0058】
一方、凸部20の高さH及び最小長さD3が、次のように設定されているときには、湯回り不良が発生せず、また、金網フィルタ22がゲート部まで押し流されることがない。
【0059】
・ 高さHが、ランナ16の厚さT1と同じ大きさから、スリーブ13の内径D1の3倍までの大きさの範囲であること。
・ 最小長さD3が、スリーブ13の内径D1の2/3倍の大きさから、内径D1からランナ16の厚さT1分を差し引いた大きさまでの範囲であること。
【0060】
すなわち、絞り部21の流路断面の最大長さD4及び流路長さLが、次のように設定されていれば、湯回り不良が発生せず、また、金網フィルタ22がゲート部まで押し流されることがない。
【0061】
・ 流路断面の最大長さD4が、ランナ16の厚さT1の大きさ程度から、スリーブ13の内径D1の約1/3倍までの範囲であること。
・ 流路長さLが、ほぼ「0」から、スリーブ13の内径D1の3倍からランナ16の厚さT1を差し引いた大きさ程度までの範囲であること。
【0062】
次に、以上詳述した本実施形態が有する効果を列記する。
(1) 型締め時に、固定型11に設けられたスリーブ13の吐出口13bの一部を、可動型12に設けられた凸部20が閉塞して絞り部(フィルタ保持部)21を形成する。この絞り部21は、鋳造時にスリーブ13からキャビティ15に注入される金属溶湯による金網フィルタ(フィルタ部材)22の変形及び移動を制限して保持し、充填完了までフィルタ効果を持続させる。このため、鋳造時に、スリーブ13内で生成された初期凝固片が金網フィルタ22により確実に捕捉され、キャビティ15内により流れ込み難くなる。
【0063】
その結果、初期凝固片の鋳造製品への混入をより確実に防止することができるため、鋳造製品の機械的性質がよりばらつかないようにすることができる。
(2) 絞り部21の略半円状の流路断面は、スリーブ13の径方向におけるその最大長さD4が、絞り部21が対向する部位でのランナ16の厚さT1とほぼ同じ大きさから、スリーブ13の内径D1を約1/3倍した大きさまでの範囲となるように凸部20の最小長さD3が設定されている。
【0064】
このため、絞り部21の流路断面積が小さすぎることによる湯回り不良が発生せず、また、流路断面積が大きすぎることによって金網フィルタ22がキャビティ15のゲート部まで流されるようなことがない。
【0065】
(3) 絞り部21の流路長さLが、「0」から、スリーブ13の内径D1の3倍から絞り部21が対向するランナ16の厚さT1だけ差し引いた大きさ程度となるように凸部20の高さHが設定されている。
【0066】
このため、流路長さが長すぎることによる湯回り不良が発生せず、また、流路断面が略半円状でなくなることによって金網フィルタ22がキャビティ15のゲート部まで押し流されるようなことがない。
【0067】
(4) 凸部20が、スリーブ13の吐出口13bに対向するように突出しているので、溶湯が可動型12に衝突することによる波の発生が抑制され、波の発生に起因する空気の巻き込みが抑制される。このため、鋳造体33の製品30中に気泡巣ができ難いので、製品30の機械的性質がばらつき難くなる。
【0068】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を図11及び図12に従って説明する。
【0069】
図11に示すように、本実施形態のダイカスト鋳造装置50は、第1実施形態と同様、固定型(第1金型)51及び可動型(第2金型)52からなる。
本実施形態は、第1実施形態と同じスリーブ13を備えている。
【0070】
スリーブ13は、その吐出口13bが固定型51の当接面51aに開口されている。
固定型51及び可動型52によって、キャビティ53及びランナ54,55が形成される。キャビティ53及びランナ(湯路)54は可動型52に形成され、ランナ55は固定型51に形成されている。
【0071】
ランナ54は、その一部がスリーブ13の吐出口13bに対向するように設けられている。また、ランナ54は、スリーブ13との連通部と、ランナ55との連通部を除く全部分が同じ厚さT2に形成されている。
【0072】
ランナ55は、その一部がランナ54に連通され、別の一部がキャビティ53のゲート部となっている。
図12(a),(b)に示すように、ランナ54は、吐出口13b側から略扇状に拡開するように形成され、拡開する先端側の縁部がランナ55と連通される。
【0073】
そして、可動型52は、型締め時にその当接面52aでスリーブ13の吐出口13b(流路断面)の一部を閉塞し、吐出口13bの周縁からなる円弧部と、該円弧部の両端部を連結するランナ54の周縁の直線部とに囲まれた流路断面が略半円状の絞り部(フィルタ保持部)56を形成する。
【0074】
絞り部56は、スリーブ13からランナ54,55までの経路上に設けられている。絞り部56の一部は、ランナ54の厚さT2の部位に対向する。
また、絞り部56の流路断面は、スリーブ13の径方向におけるその最大長さD5が、ランナ54の厚さT2とほぼ同じ大きさから、スリーブ13の内径D1の約1/3倍の大きさまでの範囲に形成されている。本実施形態では、ランナ54の厚さT2が、スリーブ13の吐出口13bが対向する部位でのランナ54の最大厚さである。
【0075】
本実施形態のダイカスト鋳造装置50も、スリーブ13内に、金属溶湯を濾過した後に鋳造体に鋳込まれる金網フィルタ22を配置した状態で使用される。
絞り部56は、鋳造時に、スリーブ13からキャビティ53側に注入される溶湯によって、金網フィルタ22がスリーブ13からキャビティ53内に移動しないように金網フィルタ22の移動を制限し、充填完了までフィルタ効果を持続させる。
【0076】
以上詳述した本実施形態は、前記第1実施形態の(1)に記載した効果を有する。
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態を図13及び図14に従って説明する。なお、本実施形態は、前記第1実施形態における凸部20を無くしたことと、スリーブ13をスリーブ60に代えたことのみが第1実施形態と異なる。従って、第1実施形態と同じ構成については符号を同じにしてその説明を省略し、スリーブ60のみについて詳述する。
【0077】
図13(a),(b)に示すように、本実施形態のスリーブ60は、スリーブ13と同様に円筒状に形成され、固定型11の当接面11aに開口する開口端60aを有している。開口端60aは、型締め時に可動型12の当接面12aによって閉塞される。
【0078】
また、図13(a),(b)及び図14に示すように、スリーブ60には、開口端60aの周壁に開口する絞り部(フィルタ保持部)61が設けられている。すなわち、絞り部61は、スリーブ60からランナ形成部18までの経路上に設けられている。
【0079】
絞り部61は、型締め時にスリーブ13をランナ16に連通する。
絞り部61は、鋳造時にスリーブ60からキャビティ15に注入される金属溶湯によって金網フィルタ22がキャビティ15側に移動しないように、金網フィルタ22の移動を制限し、充填完了までフィルタ効果を持続させる。
【0080】
以上詳述した本実施形態は、前記第1実施形態の(1)に記載した効果を有する。
(第4実施形態)
次に、本発明を具体化した第4実施形態を図15及び図16に従って説明する。なお、本実施形態は、前記第1実施形態における凸部20を無くしたことと、新たに突起70を設けたことのみが第1実施形態と異なる。従って、第1実施形態と同じ構成については符号を同じにしてその説明を省略し、突起70のみについて詳述する。
【0081】
図15(a),(b)及び図16に示すように、本実施形態では、ランナ形成部18内に、ビスケット形成部17との境界に沿って4つの突起70が設けられている。すなわち、4つの突起70は、ランナ(湯路)16の経路上に設けられている。本実施形態では、4つの突起70がフィルタ保持部を構成する。
【0082】
4つの突起70は、鋳造時にスリーブ13からキャビティ15に注入される金属溶湯によって金網フィルタ22がキャビティ15内へ移動しないように、金網フィルタ22を係止してその移動を制限し、充填完了までフィルタ効果を持続させる。
【0083】
以上詳述した本実施形態は、前記第1実施形態の(1)に記載した効果を有する。
次に、上記第1〜第4実施形態以外の実施形態を列記する。
【0084】
○ 前記第1実施形態で、絞り部21は、キャビティ15に対する金属溶湯の充填が完了する時点まで金網フィルタ22を止めず、充填完了の前の時点でランナ16内に移動させるように形成されていてもよい。この場合であっても、金網フィルタ22がキャビティ15内まで押し流されず、あるいは、初期凝固片が製品30に流れ込まなければよい。第2〜第4実施形態についても同様である。
【0085】
○ 前記第1〜第4実施形態で、金網フィルタ22の形態は、型開き状態で、スリーブ13(60)に容易に圧入することができ、しかも、鋳造時に、絞り部21(56)、絞り部61あるいは突起70によってキャビティ15(53)内への移動を確実に制限されるものであればよい。本実施形態のような球体に限らず、例えば、図17(a)に示すような半球体や、図17(b)に示すような中空の円筒体や、また、図17(c)に示すような円筒部の両端に半球部が接合されたような中空立体のものであってもよい。
【0086】
○ 前記第1〜第4実施形態で、金網フィルタ22が形成される線材の材質は、アルミニウム系合金、鉄系合金等のいずれであってもよい。
○ 前記第1〜第4実施形態で、固定型及び可動型は、1つ又は複数のスライドコアを有する型式であってもよい。
【0087】
○ 前記第1〜第4実施形態で、縦型のダイカスト鋳造装置に実施してもよい。
以下、前記各実施形態から把握される技術的思想をその効果とともに列記する。
【0088】
(1) 請求項2〜請求項9のいずれか一項に記載の発明において、前記フィルタ部材は、金属の線材からなる網材によって中空立体に形成されているダイカスト鋳造装置。
【0089】
(2) 請求項2に記載の発明において、前記スリーブは、前記第1金型に設けられ、型締め時に前記第2金型によって閉塞される開口端(60a)を有し、前記フィルタ保持部は、前記開口端の周壁に開口し、型締め時にスリーブを前記湯路に連通する絞り部(61)であるダイカスト鋳造装置。このような構成には、前記第3実施形態の効果がある。
【0090】
(3) 請求項2に記載の発明において、前記スリーブ13は、前記第1金型に設けられ、型締め時に前記湯路に連通する吐出口を有し、前記フィルタ保持部は、前記湯路に設けられ、フィルタ部材を係止可能な係止手段(突起70)であるダイカスト鋳造装置。このような構成には、前記第4実施形態の効果がある。
【0091】
(4) 請求項7に記載の発明において、前記凸部は、前記絞り部の流路長さが、前記スリーブの内径から絞り部が対向する前記湯路の部位の最大厚さを差し引いた大きさ程度から、該内径を3倍した大きさから前記最大厚さを差し引いた大きさ程度までの範囲内となるように形成されているダイカスト鋳造装置。
【0092】
(5) 請求項7又は請求項8に記載の発明において、前記凸部は、前記絞り部の流路断面における前記スリーブの径方向での最大長さが、前記絞り部が対向する部位での前記湯路の最大深さを約2倍した大きさから、スリーブの内径を約1/3倍した大きさまでの範囲内となるように形成されているダイカスト鋳造装置。
【0093】
【発明の効果】
請求項1〜請求項9に記載の発明によれば、初期凝固片を濾過するフィルタ部材がキャビティ内へより確実に流されないようにすることができるので、初期凝固片の鋳造製品への混入をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態のダイカスト鋳造装置を示す模式縦断面図。
【図2】同じく型締め状態を示す模式縦断面図。
【図3】(a)は絞り部を示す模式縦断面図、(b)は(a)のA−A線断面図。
【図4】凸部を示す模式斜視図。
【図5】絞り部を示す模式斜視図。
【図6】(a)は凸部及びスリーブを示す模式縦断面図、(b)は(a)のB−B線断面図。
【図7】(a)は凸部及びスリーブを示す模式縦断面図、(b)は(a)のC−C断面図。
【図8】(a)は鋳造体を示す側面図、(b)は同じく正面図。
【図9】図8(b)のD−D線断面図。
【図10】同じく比較例の断面図。
【図11】第2実施形態の金型の要部を示す模式縦断面図。
【図12】(a)は絞り部を示す図11の要部模式縦断面図、(b)は(a)のE−E線断面図。
【図13】(a)は第3実施形態の金型の要部を示す要部縦断面図、(b)は(a)のF−F線断面図。
【図14】フィルタ保持部を示す模式斜視図。
【図15】(a)は第4実施形態の金型の要部を示す模式縦断面図、(b)は(a)のG−G線断面図。
【図16】フィルタ保持部を示す模式斜視図。
【図17】(a),(b),(c)は共に金網フィルタの他の実施形態を示す模式斜視図。
【図18】(a),(b)は共に従来のダイカスト鋳造装置を示す模式縦断面図。
【符号の説明】
10…ダイカスト鋳造装置、11…第1金型としての固定型、12…第2金型としての可動型、13…スリーブ、13a…内周面、13b…流路断面としての吐出口、15…キャビティ、16…湯路としてのランナ、17…湯路を構成するビスケット形成部、18…同じくランナ形成部、20…凸部、20a…平面部、21…フィルタ保持部としての絞り部、22…フィルタ部材としての金網フィルタ、33,40…鋳造体、50…ダイカスト鋳造装置、51…第1金型としての固定型、52…第2金型としての可動型、53…キャビティ、54,55…湯路としてのランナ、56…フィルタ保持部としての絞り部、60…スリーブ、60a…開口端、61…フィルタ保持部としての絞り部、70…フィルタ保持部を構成する突起、D1…(スリーブ13の)内径、D3…(凸部20の)最小長さ、D4…(絞り部20の流路断面の径方向)最大長さ、D5…(絞り部56の流路断面の径方向)最大長さ、H…(凸部20の)高さ、L…(絞り部21の)流路長さ、T1…(ランナ16の)厚さ、T2…(ランナ54の)厚さ。
Claims (9)
- 第1金型と、この第1金型と共にキャビティを形成する第2金型とを備えたダイカスト鋳造装置を用いたダイカスト鋳造方法であって、
型開き状態で、スリーブ、又は、スリーブを前記キャビティに連通する湯路内にフィルタ部材を配置し、その後、型閉じすることで前記スリーブから前記湯路までの経路上において前記フィルタ部材よりもキャビティ側にフィルタ保持部を形成し、さらにその後、スリーブからキャビティに金属溶湯を注入することにより、前記フィルタ部材を前記フィルタ保持部に保持させた状態で、金属溶湯を濾過するダイカスト鋳造方法。 - 第1金型と、この第1金型と共にキャビティを形成する第2金型と、フィルタ部材とを備え、スリーブ、又は、スリーブを前記キャビティに連通する湯路内に前記フィルタ部材が配置された状態で前記スリーブからキャビティに金属溶湯が注入され、金属溶湯を前記フィルタ部材によって濾過するダイカスト鋳造装置であって、
前記スリーブから前記湯路までの経路上には、スリーブからキャビティに注入される金属溶湯によって前記フィルタ部材が前記キャビティ内へ移動しないようにフィルタ部材の移動を制限するフィルタ保持部が設けられているダイカスト鋳造装置。 - 前記スリーブは、前記第1金型に設けられ、
前記フィルタ保持部は、前記スリーブから前記湯路までの経路上に形成され、前記スリーブ内に配置された前記フィルタ部材の移動を制限する絞り部である請求項2に記載のダイカスト鋳造装置。 - スリーブが設けられた第1金型と、この第1金型と共にキャビティ及び前記スリーブを前記キャビティに連通する湯路を形成する第2金型とを備え、前記スリーブにフィルタ部材が配置された状態でスリーブからキャビティに金属溶湯が注入され、金属溶湯を前記フィルタ部材によって濾過するダイカスト鋳造装置であって、
前記スリーブは、略円形の流路断面を有し、
前記第2金型は、型締め時に前記スリーブの流路断面の一部を閉塞して、前記スリーブの周縁からなる円弧部と、前記円弧部の両端部を連結する直線部とに囲まれた流路断面が略半円状の絞り部を形成し、
該絞り部は、スリーブからキャビティに注入される金属溶湯によって前記フィルタ部材が前記スリーブからキャビティ内へ移動しないようにフィルタ部材の移動を制限するダイカスト鋳造装置。 - 前記絞り部は、その流路断面における前記スリーブの径方向での最大長さが、絞り部が対向する位置での前記湯路の最大厚さにほぼ等しい大きさから、スリーブの内径を約1/3倍した大きさまでの範囲内となるように形成されている請求項4に記載のダイカスト鋳造装置。
- スリーブが設けられた第1金型と、この第1金型と共にキャビティ及び前記スリーブを前記キャビティに連通する湯路を形成する第2金型とを備え、前記スリーブにフィルタ部材が配置された状態でスリーブからキャビティに金属溶湯が注入され、金属溶湯を前記フィルタ部材によって濾過するダイカスト鋳造装置であって、
前記第2金型には、前記スリーブの吐出口に対向するように突出し、型締め時には前記湯路内に配置される凸部が設けられ、
該凸部は、型締め時に前記スリーブの流路断面の一部を閉塞して絞り部を形成し、
該絞り部は、スリーブからキャビティに注入される金属溶湯によって前記フィルタ部材がスリーブからキャビティ内に移動しないようにフィルタ部材の移動を制限するダイカスト鋳造装置。 - 前記スリーブは、略円形の流路断面を有し、前記凸部は、前記スリーブの流路断面に対応する略円柱状に形成されるとともに前記円柱の軸線と平行な平面によって一部が平面状に切り欠かれ、
前記絞り部は、スリーブの内周面からなる円弧部と、前記凸部の平面部とによってその流路断面が略半円状に形成されている請求項6に記載のダイカスト鋳造装置。 - 前記凸部は、前記絞り部の流路長さが、ほぼ「0」から、前記スリーブの内径を3倍した大きさから絞り部が対向する前記湯路の部位の最大厚さを差し引いた大きさ程度までの範囲内となるように形成されている請求項7に記載のダイカスト鋳造装置。
- 前記凸部は、前記絞り部の流路断面における前記スリーブの径方向での最大長さが、前記絞り部が対向する部位での前記湯路の最大深さとほぼ同じ大きさから、スリーブの内径を約1/3倍した大きさまでの範囲内となるように形成されている請求項7又は請求項8に記載のダイカスト鋳造装置。
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