JP2004097966A - 洗浄処理方法 - Google Patents
洗浄処理方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004097966A JP2004097966A JP2002264391A JP2002264391A JP2004097966A JP 2004097966 A JP2004097966 A JP 2004097966A JP 2002264391 A JP2002264391 A JP 2002264391A JP 2002264391 A JP2002264391 A JP 2002264391A JP 2004097966 A JP2004097966 A JP 2004097966A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- cleaning
- ccm
- discharge
- electrodes
- processing
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Abstract
【課題】被処理物の表面に形成されたトランジスタや電気回路などの導電物にダメージを与えることなく、ITOガラス等の被処理物の洗浄処理を行えるようにする。
【解決手段】所定の間隔をあけて互いに対向する一対の電極21,22からなる対向電極2を用い、その対向電極2間に電界を印加することにより、放電プラズマを発生させて被処理物Sの洗浄処理を行うにあたり、対向電極2間に、処理ガス1000CCMに対し、7CCM以上50CCM未満の水蒸気を添加した加湿ガスを供給することで、グロー放電の安定化をはかり、電極間でのストリーマー放電を減少させる。
【選択図】図1
【解決手段】所定の間隔をあけて互いに対向する一対の電極21,22からなる対向電極2を用い、その対向電極2間に電界を印加することにより、放電プラズマを発生させて被処理物Sの洗浄処理を行うにあたり、対向電極2間に、処理ガス1000CCMに対し、7CCM以上50CCM未満の水蒸気を添加した加湿ガスを供給することで、グロー放電の安定化をはかり、電極間でのストリーマー放電を減少させる。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被処理物の表面に存在する有機物などのクリーニング(除去)、レジストの剥離、液晶用ガラス、クロムガラス及びITOガラスの表面クリーニングなどの洗浄処理を行う洗浄処理方法に関し、特に、常圧下の放電プラズマを用いた洗浄処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、IT分野が著しく成長し、とりわけ携帯電話、テレビジョン、モニター等のFPD(フラットパネルディスプレイ)の表示部材は、技術的にも市場的にも大きく発展している。
【0003】
FPD表示部の中心であるTFT(thin フィルムトランジスタ)ディスプレイは、透明電極であるITOガラスへの液晶の封入・張り合わせが必要でああり、各フィルムの表面には、非常に高いクリーン度及び濡れ性改善が必要となる。それらの特性が不足する場合、表示の耐久性が低くなったり、表示ドット部に表示が誤動作する箇所が発生してしまう。
【0004】
一般的に、各フィルムの生産工程はクリーンルーム内で行われるが、それでもミクロな汚物(塵)、コンタミ(固定中の系内外からの異物混入)による被膜付着は、完全には避けられないため、各表面の洗浄工程を入れることが常である。
【0005】
フィルム等の洗浄方法として、従来、湿式処理(薬品処理)や乾式処理(コロナ放電処理、UV処理、エキシマランプを用いた処理)等が知られている。
【0006】
湿式処理は、薬品の種類・濃度によって処理能力が変わるが、一般的にフットプリント(装置占有面積)が大きく、処理薬品の乾燥工程も必要である。また、乾燥が不十分であれば残存薬品が品質不良を起こすという問題がある。
【0007】
乾燥処理であるコロナ放電処理の場合、供給電力が大きいと処理基材のダメージが大きい。TFT処理においては、ITO表面のトランジスタが破壊されるケースが多い。また、供給電力が小さいと、放電が粗であるため処理ムラが大きくて品質が安定しない。
【0008】
エキシマランプによる処理は、UV処理よりも洗浄能力が大きいが、それでも洗浄品質を得るには複数(10本程度)のランプが必要であり、さらに、ランプ寿命が700〜1000時間程度であるため、ランニングコストも高額となる。
【0009】
大気圧近傍でプラズマを発生させて処理する方法も提案されている。例えば、平板電極と20mm直径の接地用電極ロールを使用してプラズマを発生させる装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、大気圧近傍下でロール電極と平板電極にて発生したプラズマを使って基材の処理を行うにあたり、パーティクルの発生を抑えるためにロール電極の直径を小さくする技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0010】
しかしながら、前記した特許文献1(特開平2001−35694号公報)に記載の技術では、プラズマ放電空間にストリーマー放電が多く発生するため、被処理物の電極(トランジスタ)へのダメージが大きい上、洗浄能力(スループット)も低いことから、ITO表面などの洗浄処理にそのまま採用することはできない。
【0011】
一方、前記した特許文献2(特開平11−172449号公報)には、プラズマ処理にて基材上に薄膜を形成する技術が示されているだけであり、ITO表面などの洗浄処理を行うことは全く想定されていない。
【0012】
【特許文献1】
特開平2001−35694号公報
【特許文献2】
特開平11−172449号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はそのような実情に鑑みてなされたもので、常圧条件下の放電プラズマ処理にて被処理物の洗浄処理を行うにあたり、被処理物の表面に形成されたトランジスタや電気回路などの導電物にダメージを与えることなく、被処理物を洗浄処理することが可能な洗浄処理方法の提供を目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の洗浄処理方法は、大気圧近傍の圧力下の放電プラズマ処理により被処理物を洗浄処理する方法であって、処理ガス1000CCM(cc/min)に対し、7CCM以上50CCM未満の水蒸気を添加した加湿ガスを放電処理して被処理物に接触させることによって特徴づけられる。
【0015】
本発明によれば、プラズマ放電に使用する処理ガス(例えば窒素、アルゴン、酸素、ヘリウム及びその混合ガス等)に水蒸気(水分子)を添加しているので、印加したエネルギの一部が水分子の分解に使用され、電極間の放電が分散・安定化し、ストリーマー放電が減少する。これによりグロー放電がマイルドになり、例えば、ITO表面の電極のトランジスタ部分にダメージを与えることなく、洗浄処理を行うことができる。また、放電プラズマによるITO表面のカーボン洗浄に加え、一部の水酸基がITO表面に化学結合するため、2つの効果で濡れ性がより向上する。
【0016】
ただし、処理ガスへの水蒸気の添加量が少ないと、水添加効果が少なくなるため、被処理物へのダメージが大きくなる。また、水蒸気の添加量が多すぎる場合は、水の分解にプラズマエネルギの大部分が消費されるため、プラズマによる異物除去や表面カーボンの除去などの洗浄効果が低下する。このような点を考慮して、本発明では、処理ガスへの水蒸気の添加量を、処理ガス1000CCMに対して7CCM以上50CCM未満としている。
【0017】
本発明において、所定の間隔をあけて互いに対向する一対の電極を有し、その一対の電極の少なくとも一方の電極対向面に固体誘電体が設けられてなる対向電極(例えば平行平板型の対向電極)を用い、その対向電極間に前記加湿ガスを供給した状態で、対向電極間に電界を印加することにより、加湿ガスを放電処理するようにしてもよい。
【0018】
上記対向電極間に印加する電界には、パルス立ち上がり及び/又は立ち下がり時間が100μs以下のパルス電界を用いることが好ましい。
【0019】
このように、電極対向面に固体誘電体が配置されてなる対向電極を用いるとともに、その対向電極間に印加する電界をパルス立ち上がり及び/又は立ち下がりが急峻なパルス電界とすることにより、より安定したプラズマ放電を得ることができ、洗浄能力(洗浄処理速度)をより一層高めることができる。
【0020】
本発明は、例えば、ガラス基板上にITOが積層されたITOガラス、または、ガラス基板上にクロムメッキが施されたクロムガラス、あるいは、ITOガラスのITO表面にトランジスタが配置された被処理物などの洗浄処理を行うのに適している。
【0021】
次に、本発明を更に詳しく説明する。
【0022】
まず、本発明で言う大気圧近傍の圧力下とは、1.333×104〜10.664×104Paの圧力下を指す。中でも、圧力調整が容易で、装置構成が簡便になる9.331×104〜10.397×104Paの範囲が好ましい。
【0023】
なお、本発明は、常温付近での洗浄処理に限られることなく、処理系の温度が常温以上(例えば60℃)になる洗浄処理にも適用できる。
【0024】
本発明において、処理ガスに水蒸気を添加した加湿ガスの放電プラズマを発生する際に用いる電極としては、平行平板型の対向電極、同軸円筒型の電極あるいはロール電極などが挙げられる。電極の材質としては、例えば、鉄、銅、Al等の金属単体、ステンレス、真鍮等の合金あるいは金属間化合物等などが挙げられる。電極は、電界集中によるアーク放電の発生を避けるために、プラズマ空間(電極間)の距離が一定となる構造であることが好ましい。より好ましくは平行平板型の対向電極である。
【0025】
また、プラズマを発生させる電極は、一対のうち少なくとも一方の電極対向面に固体誘電体が配置されている必要がある。この際、固体誘電体と設置される側の電極が密着し、かつ、接する電極の対向面を完全に覆うようにすることが好ましい。固体誘電体によって覆われずに電極同士が直接対向する部位があると、そこからアーク放電が生じやすくなる。
【0026】
上記固体誘電体の形状は、シート状もしくはフィルム状のいずれであってもよい。また、固体誘電体は、溶射法等にて電極表面にコーティングされた膜であってもよい。固体誘電体の厚みは、0.01〜4mmであることが好ましい。固体誘電体の厚みが厚すぎると放電プラズマを発生するのに高電圧を要することがあり、薄すぎると電圧印加時に絶縁破壊が起こり、アーク放電が発生することがある。
【0027】
上記固体誘電体としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック、ガラス、二酸化珪素、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン等の金属酸化物、チタン酸バリウム等の複酸化物等が挙げられる。
【0028】
また、固体誘電体は、比誘電率が2以上(25℃環境下、以下同じ)であることが好ましい。比誘電率が2以上の固体誘電体の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン、ガラス、金属酸化膜等を挙げることができる。さらに高密度の放電プラズマを安定して発生させるためには、比誘電率が10以上の固体誘電体を用いることが好ましい。比誘電率の上限は特に限定されるものではないが、現実の材料では18,500程度のものが知られている。上記比誘電率が10以上である固体誘電体としては、例えば、酸化チタニウム5〜50重量%、酸化アルミニウム50〜95重量%で混合された金属酸化物被膜、または、酸化ジルコニウムを含有する金属酸化物被膜からなるものを挙げることができる。
【0029】
上記対向電極の電極間の距離は、固体誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して適宜決定されるが、0.1〜5mmであることが好ましい。電極間の距離が0.1mm未満であると、電極間の間隔を置いて設置するのに十分でないことがあり、一方、5mmを超えると、均一な放電プラズマを発生させにくい。さらに好ましくは、放電が安定しやすい0.5〜3mmの間隔である。
【0030】
上記対向電極の電極間には、高周波、パルス波、マイクロ波等の電界が印加され、プラズマを発生させるが、パルス電界を印加することが好ましく、特に、電界の立ち上がり及び/または立ち下がり時間が10μs以下であるパルス電界が好ましい。10μsを超えると放電状態がアークに移行しやすくて不安定なものとなり、パルス電界による高密度プラズマ状態を保持しにくくなる。また、立ち上がり時間及び立ち下がり時間が短いほどプラズマ発生の際のガスの電離が効率よく行われるが、40ns未満の立ち上がり時間のパルス電界を実現することは、実際には困難である。立ち上がり時間及び立ち下がり時間のより好ましい範囲は50ns〜5μsである。なお、ここでいう立ち上がり時間とは、電圧(絶対値)が連続して増加する時間、立ち下がり時間とは、電圧(絶対値)が連続して減少する時間を指すものとする。
【0031】
上記パルス電界の電界強度は、10〜1000kV/cmであり、好ましくは20〜300kV/cmである。電界強度が10kV/cm未満であると処理に時間がかかりすぎ、1000kV/cmを超えるとアーク放電が発生しやすくなる。
【0032】
上記パルス電界の周波数は、0.5kHz以上であることが好ましい。0.5kHz未満であるとプラズマ密度が低いため処理に時間がかかりすぎる。上限は特に限定されないが、常用されている13.56MHz、試験的に使用されている500MHzといった高周波帯でも構わない。負荷との整合性のとり易さや取扱い性を考慮すると、500kHz以下が好ましい。このようなパルス電界を印加することにより、処理速度を大きく向上させることができる。
【0033】
また、上記パルス電界における1つのパルス継続時間は、200μs以下であることが好ましく、より好ましくは3〜200μsである。200μsを超えるとアーク放電に移行しやすくなる。ここで、1つのパルス継続時間とは、ON,OFFの繰り返しからなるパルス電界における、1つのパルスの連続するON時間を言う。
【0034】
本発明において洗浄処理を行う具体的な処理対象としては、前記した、ガラス基板上にITOが積層されたITOガラス、または、ガラス基板上にクロムメッキが施されたクロムガラス、あるいは、ITOガラスのITO表面にトランジスタが配置された被処理物のほか、素ガラス、シリコンウェハー、フォトレジスト等により、基材や基板の表面に電極や電気回路などの導電物が形成されたTABフィルム、FPCフィルム等が挙げられる。。
【0035】
また、本発明において処理できる基材(基板)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル樹脂等のプラスチック、ガラス、セラミック、金属、シリコンウェハー等が挙げられる。基材の形状としては、板状、フィルム状等のものが挙げられるが、特にこれらに限定されない。本発明によれば、様々な形状を有する基材の処理に容易に対応することができる。
【0036】
本発明に用いる処理ガスとしては、電界を印加することによってプラズマを発生するガスであれば、特に限定されず、洗浄処理の目的に応じて種々のガスを使用できる。また、常温状態であっても、処理系内で気化できる物質であれば使用可能である。処理ガスとしては、例えば、空気、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、CF4等のフッ素ガス、アルコール等の有機物質、TEOM[テトラエトキシシラン:Si(OC2H5)4 ]、チタンテトライソプロポキシド等の金属酸化物の原料(前駆体)となるアルコキシドなどが挙げられる。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
前記処理ガスに添加する水蒸気の添加量は、処理ガス1000CCMに対し、7CCM以上50CCM未満であり、より好ましくは12CCM以上35CCM未満である。水蒸気の添加量が7CCM未満であると、水添加効果が少なくなるため、被処理物へのダメージが大きくなる。また、添加量が50CCMよりも多いと、水の分解にプラズマエネルギの大部分が消費されるため、プラズマによる異物除去や表面カーボンの除去等の洗浄効果が低下するので問題となる。
【0038】
なお、本発明を実施する放電プラズマ処理装置によれば、プラズマ発生空間中に存在する気体の種類を問わずグロー放電プラズマを発生させることが可能である。また、特定のガス雰囲気下の大気圧プラズマ処理においては、外気から遮断された密閉容器内で処理を行うことが必須であったが、本発明を実施する放電プラズマ処理装置においては、開放系、あるいは、気体の自由な流失を防ぐ程度の低気密系での処理が可能となる。
【0039】
本発明を実施する放電プラズマ処理装置では、対向電極間において直接大気圧下で放電を生じさせることが可能であり、より単純化された電極構造、放電手順による大気圧プラズマ装置、及び処理手法でかつ高速処理を実現することができる。また、印加電界の周波数、電圧、電極間隔等のパラメータにより処理に関するパラメータも調整できる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0041】
図1は、本発明の洗浄方法を実施する洗浄処理系(放電プラズマ処理装置)の構成を模式的に示す図である。
【0042】
図1の放電処理系は、2段の放電プラズマ処理装置1,1と、各放電処理プラズマ装置1に被処理物Sを搬送する搬送ロール6・・6を備えている。
【0043】
放電プラズマ処理装置1は、上部電極21と下部電極22からなる平行平板型の対向電極2、パルス電源3、ガス導入部4、ガス排気部5などを備えている。
【0044】
上部電極21と下部電極22とは所定の間隔をあけて対向配置されており、これら上部電極21と下部電極22との間に放電空間20が形成される。上部電極21及び下部電極22の各表面はそれぞれ固体誘電体(図示せず)によって被覆されている。上部電極21にはパルス電源3が接続されており、下部電極22は接地に置かれている。
【0045】
上部電極21の側方両側にはそれぞれガス導入部4とガス排気部5が配置されている。ガス導入部4とガス排気部5には、それぞれ処理ガス供給源と排気装置(ともに図示せず)が接続されている。
【0046】
そして、この実施形態では、ガス導入部4に供給される処理ガスに、水蒸気供給源(例えばバブリングタンク、図示せず)からの水蒸気を添加している。その水蒸気の添加量は、ガスマスフローなどで制御され、処理ガス1000CCMに対して7CCM以上50CCM未満(好ましくは12CCM以上35CCM未満)の範囲に設定される。
【0047】
以上の放電プラズマ処理装置1において、上部電極21と下部電極22との間に被処理物S(例えばITOガラス)を配置し、その被処理物Sを搬送ロール6にて搬送しながら、上部電極21と下部電極22との間に、処理ガスに水蒸気を添加した加湿ガスをガス導入部4から供給するとともに、ガス排気部5にて排気を行った状態で、上部電極21と下部電極22との間にパルス電源3からのパルス電界を印加する。この電界印加により、上部電極21と下部電極22との間の放電空間20にグロー放電プラズマが発生し、その発生プラズマが被処理物Sの表面に接触することにより、被処理物Sの表面が洗浄処理される。
【0048】
このように、この実施形態によれば、処理ガスに所定量(7CCM以上50CCM未満)の水蒸気を添加した加湿ガスを用いて放電プラズマ処理を行うので、プラズマ放電空間でのストリーマー放電の発生が減少し、より安定したグロー放電プラズマを得ることができる。これにより、例えばITOガラスの表面に配置されたトランジスタや電気回路などの導電物にダメージを与えることなく、良好な洗浄処理(濡れ性の付与を含む)を行うことが可能になる。しかも、平行平板型の対向電極2を用いているので、洗浄能力(洗浄処理速度)が高く、スループットの向上もはかることができる。
【0049】
なお、以上の実施形態では、対向電極2の電極間に被処理物Sを配置してプラズマ放電処理を行うダイレクト方式の放電プラズマ処理装置に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られることなく、対向電極の電極間で発生した放電プラズマを、プラズマ発生空間の外部に配置した被処理物に導いて処理を行うリモート方式の放電プラズマ処理にも適用できる。
【0050】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例とともに説明する。
【0051】
<実施例1>
図1の放電プラズマ処理系において、2段の上部電極21(SUS304製:長さ30mm×幅1200mm、表面:アルミナ照射0.5mm)を電圧印加側とし、下部電極22(SUS304製:長さ30mm×幅1200mm、表面:アルミナ照射0.5mm)を接地側として、被処理物S(トランジスタが搭載されたITOガラス、厚さ:0.7mm、初期接触角:85°)を、搬送ロール6上に載せて上部電極21と下部電極22との間に配置した。
【0052】
そして、ガス導入部4から、ガスマスフローで流量を制御した加湿ガス(アルゴンガス=20000CCM、水添加量=300CCM(処理ガス1000CCMに対し水蒸気15CCM添加))を、上部電極21と下部電極22との電極間に流すとともに、ガス排気部5にて15L/minの排気ガス流を形成した状態で、上部電極21と下部電極22との電極間に、パルス電界(印加電圧Vpp=12kV、パルス周波数=10kHz、パルス幅=5μsを印加してグロー放電プラズマを発生させ、被処理物S表面の洗浄処理を行った。搬送ロール6による被処理物Sの移動速度は200cm/minとした。
【0053】
以上の洗浄処理を行った後の被処理物Sの接触角を測定したところ、接触角は7°であり、濡れ性が付与されていることが確認できた。また、洗浄処理後の被処理物Sについて、トランジスタへの通電によりダメージを確認したところ、トランジスタのダメージはなかった。
【0054】
<実施例2>
実施例1において、処理ガスのガス種・流量、水添加量、印加電圧VPP、並びに被処理物Sの搬送速度の各値を、下記の表1に示す値としたこと以外は、実施例1と同じとして被処理物S表面の洗浄処理を行った。この洗浄処理後の被処理物Sの接触角を測定したところ、接触角は7°であり、濡れ性が付与されていることが確認できた。また、洗浄処理後の被処理物Sについて、トランジスタへの通電によりダメージを確認したところ、トランジスタのダメージはなかった。
【0055】
<比較例1>
下記の表1に示すように、実施例1において、水の添加をしないこと、及び、印加電圧VPPを6kVとしたこと以外は、実施例1と同じとして被処理物S表面の洗浄処理を行った。この洗浄処理後の被処理物Sの接触角を測定したところ、接触角は25°であり、十分な濡れ性改善効果は見られなかった。また、洗浄処理後の被処理物Sについて、トランジスタへの通電によりダメージを確認したところ、トランジスタにダメージがあった。
【0056】
<比較例2>
下記の表1に示すように、実施例2において水の添加をしないこと以外は、実施例2と同じとして被処理物S表面の洗浄処理を行った。この洗浄処理後の被処理物Sの接触角を測定したところ、接触角は8°であり、濡れ性が付与されていることが確認できた。しかし、洗浄処理後の被処理物Sについて、トランジスタへの通電によりダメージを確認したところ、トランジスタにダメージがあった。
【0057】
<比較例3>
下記の表1に示すように、比較例2において、1500CCMの水添加(処理ガス1000CCMに対し水蒸気75CCM添加)を行ったこと以外は、比較例2と同じとして被処理物S表面の洗浄処理を行ったが、下記の表1に示すように洗浄効果は劣るものであった。
【0058】
【表1】
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、処理ガス1000CCMに対し、7CCM以上50CCM未満の水蒸気を添加した加湿ガスを、大気圧近傍の圧力下で放電処理して被処理物に接触させることにより、被処理物の洗浄を行うので、例えば、ガラス基板上にITOが積層されたITOガラスの洗浄処理に、本発明を適用することにより、ITO表面に搭載されたトランジスタや電気回路などにダメージを与えることなく、良好な洗浄処理を施すことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の洗浄処理方法を実施する洗浄処理系の構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1 放電プラズマ処理装置
2 対向電極(平行平板型)
20 放電空間
21 上部電極
22 下部電極
3 パルス電源
4 ガス導入部
5 ガス排気部
6 搬送ロール
S 被処理物
【発明の属する技術分野】
本発明は、被処理物の表面に存在する有機物などのクリーニング(除去)、レジストの剥離、液晶用ガラス、クロムガラス及びITOガラスの表面クリーニングなどの洗浄処理を行う洗浄処理方法に関し、特に、常圧下の放電プラズマを用いた洗浄処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、IT分野が著しく成長し、とりわけ携帯電話、テレビジョン、モニター等のFPD(フラットパネルディスプレイ)の表示部材は、技術的にも市場的にも大きく発展している。
【0003】
FPD表示部の中心であるTFT(thin フィルムトランジスタ)ディスプレイは、透明電極であるITOガラスへの液晶の封入・張り合わせが必要でああり、各フィルムの表面には、非常に高いクリーン度及び濡れ性改善が必要となる。それらの特性が不足する場合、表示の耐久性が低くなったり、表示ドット部に表示が誤動作する箇所が発生してしまう。
【0004】
一般的に、各フィルムの生産工程はクリーンルーム内で行われるが、それでもミクロな汚物(塵)、コンタミ(固定中の系内外からの異物混入)による被膜付着は、完全には避けられないため、各表面の洗浄工程を入れることが常である。
【0005】
フィルム等の洗浄方法として、従来、湿式処理(薬品処理)や乾式処理(コロナ放電処理、UV処理、エキシマランプを用いた処理)等が知られている。
【0006】
湿式処理は、薬品の種類・濃度によって処理能力が変わるが、一般的にフットプリント(装置占有面積)が大きく、処理薬品の乾燥工程も必要である。また、乾燥が不十分であれば残存薬品が品質不良を起こすという問題がある。
【0007】
乾燥処理であるコロナ放電処理の場合、供給電力が大きいと処理基材のダメージが大きい。TFT処理においては、ITO表面のトランジスタが破壊されるケースが多い。また、供給電力が小さいと、放電が粗であるため処理ムラが大きくて品質が安定しない。
【0008】
エキシマランプによる処理は、UV処理よりも洗浄能力が大きいが、それでも洗浄品質を得るには複数(10本程度)のランプが必要であり、さらに、ランプ寿命が700〜1000時間程度であるため、ランニングコストも高額となる。
【0009】
大気圧近傍でプラズマを発生させて処理する方法も提案されている。例えば、平板電極と20mm直径の接地用電極ロールを使用してプラズマを発生させる装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、大気圧近傍下でロール電極と平板電極にて発生したプラズマを使って基材の処理を行うにあたり、パーティクルの発生を抑えるためにロール電極の直径を小さくする技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0010】
しかしながら、前記した特許文献1(特開平2001−35694号公報)に記載の技術では、プラズマ放電空間にストリーマー放電が多く発生するため、被処理物の電極(トランジスタ)へのダメージが大きい上、洗浄能力(スループット)も低いことから、ITO表面などの洗浄処理にそのまま採用することはできない。
【0011】
一方、前記した特許文献2(特開平11−172449号公報)には、プラズマ処理にて基材上に薄膜を形成する技術が示されているだけであり、ITO表面などの洗浄処理を行うことは全く想定されていない。
【0012】
【特許文献1】
特開平2001−35694号公報
【特許文献2】
特開平11−172449号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はそのような実情に鑑みてなされたもので、常圧条件下の放電プラズマ処理にて被処理物の洗浄処理を行うにあたり、被処理物の表面に形成されたトランジスタや電気回路などの導電物にダメージを与えることなく、被処理物を洗浄処理することが可能な洗浄処理方法の提供を目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の洗浄処理方法は、大気圧近傍の圧力下の放電プラズマ処理により被処理物を洗浄処理する方法であって、処理ガス1000CCM(cc/min)に対し、7CCM以上50CCM未満の水蒸気を添加した加湿ガスを放電処理して被処理物に接触させることによって特徴づけられる。
【0015】
本発明によれば、プラズマ放電に使用する処理ガス(例えば窒素、アルゴン、酸素、ヘリウム及びその混合ガス等)に水蒸気(水分子)を添加しているので、印加したエネルギの一部が水分子の分解に使用され、電極間の放電が分散・安定化し、ストリーマー放電が減少する。これによりグロー放電がマイルドになり、例えば、ITO表面の電極のトランジスタ部分にダメージを与えることなく、洗浄処理を行うことができる。また、放電プラズマによるITO表面のカーボン洗浄に加え、一部の水酸基がITO表面に化学結合するため、2つの効果で濡れ性がより向上する。
【0016】
ただし、処理ガスへの水蒸気の添加量が少ないと、水添加効果が少なくなるため、被処理物へのダメージが大きくなる。また、水蒸気の添加量が多すぎる場合は、水の分解にプラズマエネルギの大部分が消費されるため、プラズマによる異物除去や表面カーボンの除去などの洗浄効果が低下する。このような点を考慮して、本発明では、処理ガスへの水蒸気の添加量を、処理ガス1000CCMに対して7CCM以上50CCM未満としている。
【0017】
本発明において、所定の間隔をあけて互いに対向する一対の電極を有し、その一対の電極の少なくとも一方の電極対向面に固体誘電体が設けられてなる対向電極(例えば平行平板型の対向電極)を用い、その対向電極間に前記加湿ガスを供給した状態で、対向電極間に電界を印加することにより、加湿ガスを放電処理するようにしてもよい。
【0018】
上記対向電極間に印加する電界には、パルス立ち上がり及び/又は立ち下がり時間が100μs以下のパルス電界を用いることが好ましい。
【0019】
このように、電極対向面に固体誘電体が配置されてなる対向電極を用いるとともに、その対向電極間に印加する電界をパルス立ち上がり及び/又は立ち下がりが急峻なパルス電界とすることにより、より安定したプラズマ放電を得ることができ、洗浄能力(洗浄処理速度)をより一層高めることができる。
【0020】
本発明は、例えば、ガラス基板上にITOが積層されたITOガラス、または、ガラス基板上にクロムメッキが施されたクロムガラス、あるいは、ITOガラスのITO表面にトランジスタが配置された被処理物などの洗浄処理を行うのに適している。
【0021】
次に、本発明を更に詳しく説明する。
【0022】
まず、本発明で言う大気圧近傍の圧力下とは、1.333×104〜10.664×104Paの圧力下を指す。中でも、圧力調整が容易で、装置構成が簡便になる9.331×104〜10.397×104Paの範囲が好ましい。
【0023】
なお、本発明は、常温付近での洗浄処理に限られることなく、処理系の温度が常温以上(例えば60℃)になる洗浄処理にも適用できる。
【0024】
本発明において、処理ガスに水蒸気を添加した加湿ガスの放電プラズマを発生する際に用いる電極としては、平行平板型の対向電極、同軸円筒型の電極あるいはロール電極などが挙げられる。電極の材質としては、例えば、鉄、銅、Al等の金属単体、ステンレス、真鍮等の合金あるいは金属間化合物等などが挙げられる。電極は、電界集中によるアーク放電の発生を避けるために、プラズマ空間(電極間)の距離が一定となる構造であることが好ましい。より好ましくは平行平板型の対向電極である。
【0025】
また、プラズマを発生させる電極は、一対のうち少なくとも一方の電極対向面に固体誘電体が配置されている必要がある。この際、固体誘電体と設置される側の電極が密着し、かつ、接する電極の対向面を完全に覆うようにすることが好ましい。固体誘電体によって覆われずに電極同士が直接対向する部位があると、そこからアーク放電が生じやすくなる。
【0026】
上記固体誘電体の形状は、シート状もしくはフィルム状のいずれであってもよい。また、固体誘電体は、溶射法等にて電極表面にコーティングされた膜であってもよい。固体誘電体の厚みは、0.01〜4mmであることが好ましい。固体誘電体の厚みが厚すぎると放電プラズマを発生するのに高電圧を要することがあり、薄すぎると電圧印加時に絶縁破壊が起こり、アーク放電が発生することがある。
【0027】
上記固体誘電体としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック、ガラス、二酸化珪素、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン等の金属酸化物、チタン酸バリウム等の複酸化物等が挙げられる。
【0028】
また、固体誘電体は、比誘電率が2以上(25℃環境下、以下同じ)であることが好ましい。比誘電率が2以上の固体誘電体の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン、ガラス、金属酸化膜等を挙げることができる。さらに高密度の放電プラズマを安定して発生させるためには、比誘電率が10以上の固体誘電体を用いることが好ましい。比誘電率の上限は特に限定されるものではないが、現実の材料では18,500程度のものが知られている。上記比誘電率が10以上である固体誘電体としては、例えば、酸化チタニウム5〜50重量%、酸化アルミニウム50〜95重量%で混合された金属酸化物被膜、または、酸化ジルコニウムを含有する金属酸化物被膜からなるものを挙げることができる。
【0029】
上記対向電極の電極間の距離は、固体誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して適宜決定されるが、0.1〜5mmであることが好ましい。電極間の距離が0.1mm未満であると、電極間の間隔を置いて設置するのに十分でないことがあり、一方、5mmを超えると、均一な放電プラズマを発生させにくい。さらに好ましくは、放電が安定しやすい0.5〜3mmの間隔である。
【0030】
上記対向電極の電極間には、高周波、パルス波、マイクロ波等の電界が印加され、プラズマを発生させるが、パルス電界を印加することが好ましく、特に、電界の立ち上がり及び/または立ち下がり時間が10μs以下であるパルス電界が好ましい。10μsを超えると放電状態がアークに移行しやすくて不安定なものとなり、パルス電界による高密度プラズマ状態を保持しにくくなる。また、立ち上がり時間及び立ち下がり時間が短いほどプラズマ発生の際のガスの電離が効率よく行われるが、40ns未満の立ち上がり時間のパルス電界を実現することは、実際には困難である。立ち上がり時間及び立ち下がり時間のより好ましい範囲は50ns〜5μsである。なお、ここでいう立ち上がり時間とは、電圧(絶対値)が連続して増加する時間、立ち下がり時間とは、電圧(絶対値)が連続して減少する時間を指すものとする。
【0031】
上記パルス電界の電界強度は、10〜1000kV/cmであり、好ましくは20〜300kV/cmである。電界強度が10kV/cm未満であると処理に時間がかかりすぎ、1000kV/cmを超えるとアーク放電が発生しやすくなる。
【0032】
上記パルス電界の周波数は、0.5kHz以上であることが好ましい。0.5kHz未満であるとプラズマ密度が低いため処理に時間がかかりすぎる。上限は特に限定されないが、常用されている13.56MHz、試験的に使用されている500MHzといった高周波帯でも構わない。負荷との整合性のとり易さや取扱い性を考慮すると、500kHz以下が好ましい。このようなパルス電界を印加することにより、処理速度を大きく向上させることができる。
【0033】
また、上記パルス電界における1つのパルス継続時間は、200μs以下であることが好ましく、より好ましくは3〜200μsである。200μsを超えるとアーク放電に移行しやすくなる。ここで、1つのパルス継続時間とは、ON,OFFの繰り返しからなるパルス電界における、1つのパルスの連続するON時間を言う。
【0034】
本発明において洗浄処理を行う具体的な処理対象としては、前記した、ガラス基板上にITOが積層されたITOガラス、または、ガラス基板上にクロムメッキが施されたクロムガラス、あるいは、ITOガラスのITO表面にトランジスタが配置された被処理物のほか、素ガラス、シリコンウェハー、フォトレジスト等により、基材や基板の表面に電極や電気回路などの導電物が形成されたTABフィルム、FPCフィルム等が挙げられる。。
【0035】
また、本発明において処理できる基材(基板)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル樹脂等のプラスチック、ガラス、セラミック、金属、シリコンウェハー等が挙げられる。基材の形状としては、板状、フィルム状等のものが挙げられるが、特にこれらに限定されない。本発明によれば、様々な形状を有する基材の処理に容易に対応することができる。
【0036】
本発明に用いる処理ガスとしては、電界を印加することによってプラズマを発生するガスであれば、特に限定されず、洗浄処理の目的に応じて種々のガスを使用できる。また、常温状態であっても、処理系内で気化できる物質であれば使用可能である。処理ガスとしては、例えば、空気、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、CF4等のフッ素ガス、アルコール等の有機物質、TEOM[テトラエトキシシラン:Si(OC2H5)4 ]、チタンテトライソプロポキシド等の金属酸化物の原料(前駆体)となるアルコキシドなどが挙げられる。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
前記処理ガスに添加する水蒸気の添加量は、処理ガス1000CCMに対し、7CCM以上50CCM未満であり、より好ましくは12CCM以上35CCM未満である。水蒸気の添加量が7CCM未満であると、水添加効果が少なくなるため、被処理物へのダメージが大きくなる。また、添加量が50CCMよりも多いと、水の分解にプラズマエネルギの大部分が消費されるため、プラズマによる異物除去や表面カーボンの除去等の洗浄効果が低下するので問題となる。
【0038】
なお、本発明を実施する放電プラズマ処理装置によれば、プラズマ発生空間中に存在する気体の種類を問わずグロー放電プラズマを発生させることが可能である。また、特定のガス雰囲気下の大気圧プラズマ処理においては、外気から遮断された密閉容器内で処理を行うことが必須であったが、本発明を実施する放電プラズマ処理装置においては、開放系、あるいは、気体の自由な流失を防ぐ程度の低気密系での処理が可能となる。
【0039】
本発明を実施する放電プラズマ処理装置では、対向電極間において直接大気圧下で放電を生じさせることが可能であり、より単純化された電極構造、放電手順による大気圧プラズマ装置、及び処理手法でかつ高速処理を実現することができる。また、印加電界の周波数、電圧、電極間隔等のパラメータにより処理に関するパラメータも調整できる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0041】
図1は、本発明の洗浄方法を実施する洗浄処理系(放電プラズマ処理装置)の構成を模式的に示す図である。
【0042】
図1の放電処理系は、2段の放電プラズマ処理装置1,1と、各放電処理プラズマ装置1に被処理物Sを搬送する搬送ロール6・・6を備えている。
【0043】
放電プラズマ処理装置1は、上部電極21と下部電極22からなる平行平板型の対向電極2、パルス電源3、ガス導入部4、ガス排気部5などを備えている。
【0044】
上部電極21と下部電極22とは所定の間隔をあけて対向配置されており、これら上部電極21と下部電極22との間に放電空間20が形成される。上部電極21及び下部電極22の各表面はそれぞれ固体誘電体(図示せず)によって被覆されている。上部電極21にはパルス電源3が接続されており、下部電極22は接地に置かれている。
【0045】
上部電極21の側方両側にはそれぞれガス導入部4とガス排気部5が配置されている。ガス導入部4とガス排気部5には、それぞれ処理ガス供給源と排気装置(ともに図示せず)が接続されている。
【0046】
そして、この実施形態では、ガス導入部4に供給される処理ガスに、水蒸気供給源(例えばバブリングタンク、図示せず)からの水蒸気を添加している。その水蒸気の添加量は、ガスマスフローなどで制御され、処理ガス1000CCMに対して7CCM以上50CCM未満(好ましくは12CCM以上35CCM未満)の範囲に設定される。
【0047】
以上の放電プラズマ処理装置1において、上部電極21と下部電極22との間に被処理物S(例えばITOガラス)を配置し、その被処理物Sを搬送ロール6にて搬送しながら、上部電極21と下部電極22との間に、処理ガスに水蒸気を添加した加湿ガスをガス導入部4から供給するとともに、ガス排気部5にて排気を行った状態で、上部電極21と下部電極22との間にパルス電源3からのパルス電界を印加する。この電界印加により、上部電極21と下部電極22との間の放電空間20にグロー放電プラズマが発生し、その発生プラズマが被処理物Sの表面に接触することにより、被処理物Sの表面が洗浄処理される。
【0048】
このように、この実施形態によれば、処理ガスに所定量(7CCM以上50CCM未満)の水蒸気を添加した加湿ガスを用いて放電プラズマ処理を行うので、プラズマ放電空間でのストリーマー放電の発生が減少し、より安定したグロー放電プラズマを得ることができる。これにより、例えばITOガラスの表面に配置されたトランジスタや電気回路などの導電物にダメージを与えることなく、良好な洗浄処理(濡れ性の付与を含む)を行うことが可能になる。しかも、平行平板型の対向電極2を用いているので、洗浄能力(洗浄処理速度)が高く、スループットの向上もはかることができる。
【0049】
なお、以上の実施形態では、対向電極2の電極間に被処理物Sを配置してプラズマ放電処理を行うダイレクト方式の放電プラズマ処理装置に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られることなく、対向電極の電極間で発生した放電プラズマを、プラズマ発生空間の外部に配置した被処理物に導いて処理を行うリモート方式の放電プラズマ処理にも適用できる。
【0050】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例とともに説明する。
【0051】
<実施例1>
図1の放電プラズマ処理系において、2段の上部電極21(SUS304製:長さ30mm×幅1200mm、表面:アルミナ照射0.5mm)を電圧印加側とし、下部電極22(SUS304製:長さ30mm×幅1200mm、表面:アルミナ照射0.5mm)を接地側として、被処理物S(トランジスタが搭載されたITOガラス、厚さ:0.7mm、初期接触角:85°)を、搬送ロール6上に載せて上部電極21と下部電極22との間に配置した。
【0052】
そして、ガス導入部4から、ガスマスフローで流量を制御した加湿ガス(アルゴンガス=20000CCM、水添加量=300CCM(処理ガス1000CCMに対し水蒸気15CCM添加))を、上部電極21と下部電極22との電極間に流すとともに、ガス排気部5にて15L/minの排気ガス流を形成した状態で、上部電極21と下部電極22との電極間に、パルス電界(印加電圧Vpp=12kV、パルス周波数=10kHz、パルス幅=5μsを印加してグロー放電プラズマを発生させ、被処理物S表面の洗浄処理を行った。搬送ロール6による被処理物Sの移動速度は200cm/minとした。
【0053】
以上の洗浄処理を行った後の被処理物Sの接触角を測定したところ、接触角は7°であり、濡れ性が付与されていることが確認できた。また、洗浄処理後の被処理物Sについて、トランジスタへの通電によりダメージを確認したところ、トランジスタのダメージはなかった。
【0054】
<実施例2>
実施例1において、処理ガスのガス種・流量、水添加量、印加電圧VPP、並びに被処理物Sの搬送速度の各値を、下記の表1に示す値としたこと以外は、実施例1と同じとして被処理物S表面の洗浄処理を行った。この洗浄処理後の被処理物Sの接触角を測定したところ、接触角は7°であり、濡れ性が付与されていることが確認できた。また、洗浄処理後の被処理物Sについて、トランジスタへの通電によりダメージを確認したところ、トランジスタのダメージはなかった。
【0055】
<比較例1>
下記の表1に示すように、実施例1において、水の添加をしないこと、及び、印加電圧VPPを6kVとしたこと以外は、実施例1と同じとして被処理物S表面の洗浄処理を行った。この洗浄処理後の被処理物Sの接触角を測定したところ、接触角は25°であり、十分な濡れ性改善効果は見られなかった。また、洗浄処理後の被処理物Sについて、トランジスタへの通電によりダメージを確認したところ、トランジスタにダメージがあった。
【0056】
<比較例2>
下記の表1に示すように、実施例2において水の添加をしないこと以外は、実施例2と同じとして被処理物S表面の洗浄処理を行った。この洗浄処理後の被処理物Sの接触角を測定したところ、接触角は8°であり、濡れ性が付与されていることが確認できた。しかし、洗浄処理後の被処理物Sについて、トランジスタへの通電によりダメージを確認したところ、トランジスタにダメージがあった。
【0057】
<比較例3>
下記の表1に示すように、比較例2において、1500CCMの水添加(処理ガス1000CCMに対し水蒸気75CCM添加)を行ったこと以外は、比較例2と同じとして被処理物S表面の洗浄処理を行ったが、下記の表1に示すように洗浄効果は劣るものであった。
【0058】
【表1】
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、処理ガス1000CCMに対し、7CCM以上50CCM未満の水蒸気を添加した加湿ガスを、大気圧近傍の圧力下で放電処理して被処理物に接触させることにより、被処理物の洗浄を行うので、例えば、ガラス基板上にITOが積層されたITOガラスの洗浄処理に、本発明を適用することにより、ITO表面に搭載されたトランジスタや電気回路などにダメージを与えることなく、良好な洗浄処理を施すことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の洗浄処理方法を実施する洗浄処理系の構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1 放電プラズマ処理装置
2 対向電極(平行平板型)
20 放電空間
21 上部電極
22 下部電極
3 パルス電源
4 ガス導入部
5 ガス排気部
6 搬送ロール
S 被処理物
Claims (5)
- 大気圧近傍の圧力下の放電プラズマ処理により被処理物を洗浄処理する方法であって、処理ガス1000CCMに対し、7CCM以上50CCM未満の水蒸気を添加した加湿ガスを放電処理して被処理物に接触させることを特徴とする洗浄処理方法。
- 所定の間隔をあけて互いに対向する一対の電極を有し、その一対の電極の少なくとも一方の電極対向面に固体誘電体が設けられてなる対向電極を用い、その対向電極間に前記加湿ガスを供給した状態で、対向電極間に電界を印加することにより、加湿ガスを放電処理することを特徴とする請求項1記載の洗浄処理方法。
- 前記対向電極間に印加する電界が、パルス立ち上がり及び/又は立ち下がり時間が100μs以下のパルス電界であることを特徴とする請求項2記載の洗浄処理方法。
- 被処理物が、ガラス基板上にITOが積層されたITOガラス、または、ガラス基板上にクロムメッキが施されたクロムガラスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の洗浄処理方法。
- 被処理物が、前記ITOの表面にトランジスタが配置されたITOガラスであることを特徴とする請求項4に記載の洗浄処理方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002264391A JP2004097966A (ja) | 2002-09-10 | 2002-09-10 | 洗浄処理方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002264391A JP2004097966A (ja) | 2002-09-10 | 2002-09-10 | 洗浄処理方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004097966A true JP2004097966A (ja) | 2004-04-02 |
Family
ID=32263849
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002264391A Pending JP2004097966A (ja) | 2002-09-10 | 2002-09-10 | 洗浄処理方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004097966A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006272319A (ja) * | 2005-03-02 | 2006-10-12 | Air Water Inc | プラズマ処理方法 |
-
2002
- 2002-09-10 JP JP2002264391A patent/JP2004097966A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006272319A (ja) * | 2005-03-02 | 2006-10-12 | Air Water Inc | プラズマ処理方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3959906B2 (ja) | プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法 | |
JP5021877B2 (ja) | 放電プラズマ処理装置 | |
JP2003093869A (ja) | 放電プラズマ処理装置 | |
JP2002151478A (ja) | ドライエッチング方法及びその装置 | |
JP2003166065A (ja) | 放電プラズマ処理装置 | |
JP2003218099A (ja) | 放電プラズマ処理方法及びその装置 | |
JP2003209096A (ja) | プラズマエッチング処理方法及びその装置 | |
JP4103565B2 (ja) | 表面処理装置及び表面処理方法 | |
JP2002155371A (ja) | 半導体素子の製造方法及びその装置 | |
JP2002151494A (ja) | 常圧プラズマ処理方法及びその装置 | |
JP2003318000A (ja) | 放電プラズマ処理装置 | |
JP2002143795A (ja) | 液晶用ガラス基板の洗浄方法 | |
JP2004207145A (ja) | 放電プラズマ処理装置 | |
JP2003163207A (ja) | 残フォトレジストの除去処理方法 | |
JP2004097966A (ja) | 洗浄処理方法 | |
JP2006005007A (ja) | アモルファスシリコン層の形成方法及び形成装置 | |
JP2002176050A (ja) | 酸化珪素膜の形成方法及びその装置 | |
JP2003129246A (ja) | 放電プラズマ処理装置 | |
JP2004097965A (ja) | 放電プラズマ処理装置 | |
JP2002151476A (ja) | レジスト除去方法及びその装置 | |
JP2002151507A (ja) | 半導体素子の製造方法及びその装置 | |
JP2003100733A (ja) | 放電プラズマ処理装置 | |
JP4238022B2 (ja) | 大気圧プラズマ処理方法 | |
JP2003154256A (ja) | 放電プラズマ処理装置及びそれを用いた放電プラズマ処理方法 | |
JP2004115896A (ja) | 放電プラズマ処理装置及び放電プラズマ処理方法 |