JP2004097113A - 脂溶性ビタミン類含有飲食品および脂溶性ビタミン類の安定化方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】保存時あるいは製造時における脂溶性ビタミン類の活性低下が抑制された脂溶性ビタミン類含有飲食品の提供。
【解決手段】油中水中油型エマルジョンを配合してなる脂溶性ビタミン類含有飲食品であって、油中水中油型エマルジョンが内部油相部と水相部と外部油相部とからなり、内部油相部が脂溶性ビタミン類を含有する飲食品。
【選択図】 なし
【解決手段】油中水中油型エマルジョンを配合してなる脂溶性ビタミン類含有飲食品であって、油中水中油型エマルジョンが内部油相部と水相部と外部油相部とからなり、内部油相部が脂溶性ビタミン類を含有する飲食品。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、油中水中油型エマルジョンを配合してなる脂溶性ビタミン類含有飲食品に関する。本発明はまた、飲食品中で脂溶性ビタミン類を安定化させる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、菓子、パン、飲料の製造において、脂溶性ビタミン類を配合しても、その後の焼成工程やレトルト殺菌工程での熱の影響により、その脂溶性ビタミン類の活性が低下する。さらには、酸化反応や微量金属の影響により、賞味期間中においても脂溶性ビタミン類の活性が著しく減少する。脂溶性ビタミン類の中でもとりわけビタミンAおよびβ−カロテンについては、その活性低下が著しく、これにより、例えば、栄養補助目的の一部としてビタミンAまたはβ−カロテンを配合した飲食品において、平成8年に施行された栄養表示基準第3条第1項第6号に定められている、ビタミンAの表示値に対する誤差の許容範囲−20%〜+50%を遵守できず、その表示を行うことができないという問題点があった。
【0003】
したがって、これまで、ビタミンAおよびβ−カロテンの残存活性を高めた菓子や食品が得られていないのが現状である。
【0004】
前記のような飲食品の酸化を抑制するため、L−アスコルビン酸のような抗酸化剤を添加することも有効ではあるが、抗酸化剤自身が酸化された時に褐変し、これが斑点となって賞味期間中であっても飲食品の外観を著しく損なうという問題点があり、この技術を採用することは好ましくない。
【0005】
一方、脂溶性ビタミン類の粉末化については、ビタミンの構成からなる粉末油脂が知られている。しかしながら、粉末化する際の乾燥工程における劣化や、直接的に粉体化されたものでは、ビタミン類の活性を維持できないなど問題があった。また、分散性などの問題があり使用しにくい。
【0006】
これまで、多重被覆油脂の技術については、例えば、特開昭63−173568号公報(特許文献1)に、油性物と1次被覆剤として該油性物の外表面に1次被覆された水溶性物とからなる被覆粉末油脂と、さらに該被覆粉末油脂の外表面に2次被覆された融点40℃以上の脂質紛状体とを含む2次被覆された粉末油脂が開示されている。
【0007】
しかし、融点が40℃以上の粉末状態の油脂を使用するので、食品への分散性が悪く、また、食感が悪いなど問題がある。
【0008】
また、脂溶性ビタミン類を含有する飲食品の製造法に関して、特開昭59−173053号公報(特許文献2)には、脂溶性ビタミン類をゲル化剤を含有するゾルに乳化分散させた後、ゲル化させ、その脂溶性ビタミン含有ゲルより成る粒子を飲食品に混入させる技術が開示されている。しかし、脂溶性ビタミンを飲食品に溶解する方法であって、本発明であるビタミン類の残存活性の維持を達成することはできない。
【0009】
【特許文献1】
特開昭63−173568号公報
【特許文献2】
特開昭59−173053号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、長期間の保存においても脂溶性ビタミン類の活性が維持された脂溶性ビタミン類含有飲食品の提供をその目的とする。
【0011】
本発明はまた、製造工程における脂溶性ビタミン類の失活が抑制された脂溶性ビタミン類含有飲食品、特に焼成菓子、の提供をその目的とする。
【0012】
本発明は更に、飲食品中に配合させる脂溶性ビタミン類の安定化方法の提供をその目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、内部油相部が脂溶性ビタミン類を含有する油中水中油型エマルジョンを飲食品に配合すると、製造時および保存時における脂溶性ビタミン類の活性低下を抑制できることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
【0014】
すなわち本発明によれば、油中水中油型エマルジョンを配合してなる脂溶性ビタミン類含有飲食品であって、油中水中油型エマルジョンが内部油相部と水相部と外部油相部とからなり、内部油相部が脂溶性ビタミン類を含有する飲食品が提供される。
【0015】
本発明によればまた、脂溶性ビタミン類を含有する内部油相部を水相部に乳化させてなる水中油型エマルジョンを外部油相部に乳化させてなる油中水中油型エマルジョンを飲食品に配合することを含んでなる、飲食品中に配合される脂溶性ビタミン類の安定化方法が提供される。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明による飲食品に配合される脂溶性ビタミン類としては、ビタミンA、プロビタミンA、およびビタミンK並びにそれらの誘導体が挙げられる。
【0017】
ビタミンAとしては、下記式:
【化1】
で表されるレチノール(ビタミンA1)や3−デヒドロレチノール(ビタミンA2)が挙げられる。
【0018】
ビタミンAの誘導体としては、ビタミンA脂肪酸エステル、レチナール、レチノイン酸が挙げられる。ビタミンA脂肪酸エステルとしては、日本薬局方で規定されている、パルミチン酸レチノールや酢酸レチノールが挙げられる。
【0019】
ビタミンAおよびその誘導体は、単独で用いてもよいし、食用油脂に配合して希釈したものであってもよい。またビタミンAおよびその誘導体は、ビタミンA油であってもよい。ビタミンA油としては、魚の肝油やビタミンA脂肪酸エステルを含有する食用油脂が挙げられる。臭気や味覚の観点から植物油にビタミンA脂肪酸エステルを配合させてなるビタミンA油が好ましい。
【0020】
プロビタミンAとしては、α−カロテン、β−カロテン、γ−カロテン、クリプトキサンチンのような体内でビタミンAに変換されうる化合物が挙げられる。β−カロテンは下記式:
【化2】
で表される化合物であり、緑葉野菜やニンジンからエーテル抽出されたもの、β−ヨノンから合成されたものであってもよい。β−カロテンはまた、食用油脂に配合して希釈したものを使用してもよい。
【0021】
本発明において使用される油中水中油型エマルジョンは、内部油相部と水相部と外部油相部とからなり、脂溶性ビタミン類を含有する内部油相部を水相部に乳化させてなる水中油型エマルジョンを、外部油相部に乳化させて得ることができる。
【0022】
内部油相部は、脂溶性ビタミン類を含有する油性成分に対して乳化剤0.1〜10重量%を単独にあるいは混合して添加することにより調製できる。水相部は、乳化剤0.1〜15重量%を水に添加することにより調製できる。外部油相部は、乳化剤0.1〜10重量%を油性成分に添加することにより調製できる。
【0023】
使用できる乳化剤としては、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、またはソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。乳化剤は単独で用いても、混合して用いてもよい。
【0024】
内部油相部に使用される希釈用の油性成分としては、食用油脂やその他油性成分が挙げられ、食用として供されるものであれば、特に制限されない。
【0025】
内部油相部に用いられる食用油脂としては、天然動植物油脂並びにその硬化油、エステル交換油、およびウィンタリング油などが挙げられる。天然動植物油脂としては、大豆油、菜種油、パーム油、コーン油、綿実油、精製魚油硬化油、および前記植物油の硬化油脂等が挙げられる。特に好ましくは、菜種油、パーム油、コーン油、菜種硬化油、パーム硬化油、コーン油の硬化油、精製魚油の硬化油である。
【0026】
脂溶性ビタミン類を希釈用の油性成分に添加して内部油相部とする場合には、脂溶性ビタミン類と希釈用の油性成分との配合比は、例えば、1:0.1〜1:20重量比とすることができ、好ましくは1:1〜1:20重量比、より好ましくは1:1〜1:10重量比である。1:0.1よりも脂溶性ビタミン類が多いと風味に悪影響を及ぼす可能性があり、1:20よりも内部油相部が多いと脂溶性ビタミン類の量が少なくなり、全体量を多くする必要が生じうるので好ましくない。もちろん、脂溶性ビタミン類を希釈せずにそのまま内部油相部として用いてもよい。
【0027】
外部油相部に用いられる油性成分としては、内部油相部に用いられる食用油脂が挙げられる。
【0028】
内部油相部、水相部、および外部油相部は、更に任意の添加物を含んでいても良い。内部油相部に添加できる任意の添加成分としては、トコフェロール、アスコルビン酸のような天然または合成の添加物や香料が挙げられる。水相部に添加できる任意の添加成分としては、ガム質、呈味素材、タンパク質、澱粉類などの食品用高分子類や粉乳、発酵乳、香辛料などの呈味素材が挙げられる。外部油相部に添加できる任意の添加成分としては、香料やカロテンなどの着色料が挙げられる。
【0029】
脂溶性ビタミン類の含有量は特に制限されないが、例えば、多重エマルジョン全量に対して0.5〜10重量%とすることができ、より好ましくは、1〜5重量%である。脂溶性ビタミン類の含有量が0.5重量%より少ないと、目的とする脂溶性ビタミン類の飲食品における含有量が少なくなる場合があり、脂溶性ビタミンの含有量が10重量%を超えると飲食品に多重エマルジョンを添加した場合、風味が悪くなる場合がある。
【0030】
本発明においては、脂溶性ビタミン類のうちビタミンA、プロビタミンA、およびそれらの誘導体の配合比および配合割合(重量%)はレチノール当量で算出される。例えば、ビタミンAの脂肪酸エステルが配合されている場合には、その配合比はビタミンAの国際単位(IU)に基づいて算出される。1ビタミンA国際単位(IU)はビタミンA(アルコール型)0.3μgに相当する。すなわち、油性ビタミンA脂肪酸エステル1gが1,000,000IUである場合、ビタミンAの重量としては300mgに相当する。
【0031】
本発明において使用される多重エマルジョンにおいて、内相となる水中油型(O/W型)エマルジョンは、乳化剤等を溶解した内部油相部10〜90重量%と、乳化剤、ガム質、呈味素材等を溶解、分散した水相部10〜90重量%とを乳化することにより調製できる。また上記水中油型(O/W型)エマルジョンと最外相を形成する外部油相部の配合比率は、重量比で10:2〜1:400とすることができる。特に好ましくは、内相を形成する水中油型(O/W型)エマルジョンの内部油相部と水相部が重量比で1:4〜4:1であり、内相を形成する水中油型(O/W型)エマルジョンと外部油相部が重量比で2:10〜8:10である。
【0032】
本発明に使用する多重エマルジョンは下記のようにして製造できる。まず、水相部中に最内相となる内部油相部を添加し、攪拌機を用いて水中油型(O/W型)エマルジョンに予備乳化した後、ホモジナイザーにより均質化して水中油型(O/W型)エマルジョンを得る。この場合、内部油相部及び水相部には、各相に添加する物質を溶解または分散するのに必要な最低限の熱を加えることができる。各溶液を調製するときおよび予備乳化するときの液温は、60℃以下とすることが好ましく、さらに製造工程中の熱による品質低下を最小限にくい止めるためには、10〜45℃であることがより好ましい。次いで、この均質化された水中油型(O/W型)エマルジョンを最外相となる外部油相部に加え、攪拌機を用いて混合乳化する。混合乳化する際の液の温度は、40〜70℃に保つことが好ましく、40〜55℃がより好ましい。均一に乳化後、急冷捏和装置により可塑化して、本発明に使用する多重エマルジョンを得る。本発明において使用されるエマルジョンの製造に当たっては、特開平7−313055号公報に記載の方法を参照できる。
【0033】
このように得られた内部油相部に脂溶性ビタミン類を含有する油中水中油型エマルジョンを飲食品に配合することにより、飲食品の製造工程中あるいは保存中における脂溶性ビタミン類の活性低下を抑制することができる。すなわち、本発明によれば飲食品に配合される脂溶性ビタミン類の活性の安定化を図ることができる。
【0034】
本発明による飲食品としては、焼成菓子等の菓子類;パン類;清涼飲料、ゼリー飲料等の飲料が挙げられる。食品用材料としては、前記の焼成菓子に使用される材料として、例えば、小麦、大麦やトウモロコシ等の澱粉粉末、加工澱粉、砂糖や果糖等の甘味料、ハーブ植物やそれらの抽出物、香料、呈味料が挙げられる。また、飲料に用いられる材料としてはミネラル類等が挙げられる。
【0035】
本発明による飲食品には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を添加することができる。つなぎに添加できる成分としては、乾燥卵白の他に、例えばグラニュウ糖、乳糖、麦芽糖、果糖、ブドウ糖、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、ゲル化剤としては例えばゼラチン、カラギナン、寒天、ペクチン、タマリンドガム、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビンガム、アラビアガム、ジェランガムが挙げられ、乳化油脂、香料が挙げられる。またボディーに添加できる成分としては、薄力粉、中力粉、強力粉、加工澱粉、乳化油脂、呈味素材、強化剤としては例えば、ビタミンA、β−カロテン、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ナイアシン、パントテン酸カルシウム、葉酸、ピロリン酸鉄、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、焼成カルシウム、未焼成カルシウム、ドロマイト、乳化剤としてはグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルが挙げられる。
【0036】
本発明の好ましい態様によれば、油中水中油型エマルジョンを配合してなる脂溶性ビタミン類含有焼成菓子であって、油中水中油型エマルジョンが脂溶性ビタミン類を含有する内部油相部を水相部に乳化させてなる水中油型エマルジョンを外部油相部に乳化させてなるものである、焼成菓子が提供される。本発明による焼成菓子は下記のように製造できる。まず、水、糖質、卵、ゲル化剤などを混合しメレンゲを得、このメレンゲ90〜100重量%を、乳化油脂、香料を混合させたものを0〜10重量%と混合する。これを焼成菓子を形作るためのつなぎとする。次いで、小麦粉、澱粉、呈味素材などを混合した粉末88.6〜98重量%と本発明に使用する多重エマルジョン0.04〜2重量%を混合させ、これを焼成菓子の本体となるボディとする。つなぎ50〜60重量%とボディ40〜50重量%をミキサーを用いて混合し、焼成前の生地であるドウを得る。得られたドウをガスオーブン等を用いて、例えば、焼成温度180℃〜250℃、焼成時間は5〜8分で焼成され、本発明による焼成菓子が得られる。
【0037】
焼成菓子においてはその製造工程中において菓子生地が焼成されるため脂溶性ビタミン類の活性の低下が懸念されるが、油中水中油型エマルジョンの内部油相部に脂溶性ビタミン類を含有させて飲食品に配合することにより、その活性低下を著しく抑制することができる。
【0038】
本発明による飲食品に含まれる脂溶性ビタミン類のうちビタミンAおよびその誘導体の含有量は、中央法規 財団法人日本食品分析センター編集「五訂日本食品標準成分表分析マニュアルの解説」第125〜130ページに記載の方法に従って測定できる。β―カロテンの含有量は、日本食品衛生協会編食品衛生検査指針・理化学編(1991)厚生省生活衛生局監修、第54ページおよび58〜60ページ、日本食品衛生協会編、食品衛生検査指針・食品中の食品添加物分析法(1989)厚生省生活衛生局監修第7〜9ページ、第136〜138ページに記載の方法に従って測定できる。
【0039】
【実施例】
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
製造例1:多重エマルジョンA
内部油相部、水相部、および外部油相部として表1の配合を用い、脂溶性ビタミン含有多重エマルジョンを製造した。内部油相部および水相部をそれぞれ42℃に加熱し、攪拌機(スリーワンモーター:Heidon社製)を用いて攪拌しながら、水相部に内部油相部を徐々に加えて乳化させ、そのまま20分間予備乳化を続けた。次いで、この水中油型(O/W型)予備乳化物をホモジナイザーを用い、ホモジナイザー圧力200kg/cm2で均質化し、水中油型(O/W型)エマルジョンを得た。外部油相部を70℃に加熱し、これに40℃に保った上記の水中油型(O/W型)エマルジョンを徐々に加え、攪拌しながら20分間乳化したのち、急冷捏和装置により可塑化して、油中水中油型(O/W/O型)エマルジョンを得た。
【0041】
【0042】
製造例2:多重エマルジョンB
製造例1に記載の方法に従って、表2に記載の配合の多重エマルジョンを製造した。
【0043】
製造例3:多重エマルジョンC
製造例1に記載の方法に従って、表3に記載の配合の多重エマルジョンを製造した。
【0044】
実施例1:焼成菓子(1)
表4に示すように、ボディーとして、小麦粉(薄力粉Hウェハース;鳥越製粉社製)26.8kg、呈味素材(トラビアータ;ピュラトスジャパン製)8.9kg、加工澱粉(フードスターチTB;松谷化学(株))13.89kg、炭酸カルシウム(卵殻カルシウム;キューピー社製)2.02kg、油脂(デリシャス40;日本油脂(株)社製)1.3kg、ピロリン酸第二鉄(ピロリン酸第二鉄;米山化学社製)0.04kg、ショ糖脂肪酸エステル(リョートーシュガーエステルS−370F;三菱化学フーズ製0.4kg)を攪拌機(ダブルフォース;サンカシアーノ社)によって、混合した後、つなぎとして予め、油脂(デリシャス40;日本油脂(株)社製)2.0kg、ゼラチン(イナゲルV−40;伊那食品社製)2.20kg、砂糖(グラニュウ糖 HGS;第一糖業社製)14.5kgをプラネタリーミキサーによって混合したものを添加してから、攪拌機(ダブルフォース;サンカシアーノ社)によって十分に混合した。次いで、製造例1で作製したビタミンA含有多重エマルジョンA0.2kgと香料(ローストフレーバーMK−53−1;長谷川香料(株)社製)0.3kgを攪拌機(ダブルフォース;サンカシアーノ社)によって混合した。次いで、つなぎ、ボディとして、表4の配合を用いてドウを製造した。攪拌機(プラネタリーミキサー;サンカシアーノ社)を用いてメレンゲを得た後、乳化油脂および香料を加えて比重0.8まで攪拌を続けてつなぎを得た。一方、攪拌機(ダブルフォース;サンカシアーノ社)を用いて200rpmで攪拌、混合して得られたボディ原料に加えた後、再び攪拌機(ダブルフォース;サンカシアーノ社)を200rpmで攪拌してドウを得る。ドウの生地温度は30℃以下になるようにする。ドウはスチールバンドオーブン(デニッシュフード社)で180℃〜240℃で6分焙焼して焼成菓子を得た。
【0045】
【0046】
実施例2:焼成菓子(2)
実施例1に記載の方法に従って、表5に記載の配合の焼成菓子を製造した。
【0047】
実施例3:焼成菓子(3)
実施例2に記載の方法に従って、表6に記載の配合の焼成菓子を製造した。
【0048】
比較例1:
実施例1に記載の方法に従って、表7に記載の配合の焼成菓子を製造した。
【0049】
比較例2:
実施例1に記載の方法に従って、表8に記載の配合の焼成菓子を製造した。
【0050】
試験例:焼成菓子中のビタミンAの含有量の測定
焼成前、焼成後、および20℃で1年保存後の、ビタミンAの焼成菓子100gに対する含有量(IU)を測定した。具体的には、中央法規 財団法人日本食品分析センター編集、「五訂日本食品標準成分表分析マニュアルの解説」第125〜130ページに記載の方法に従って焼成菓子中のビタミンA含有量を測定した。ビタミンA含有量はレチノール当量で判断した。
【0051】
結果は表9に示される通りであった。焼成前のビタミンAの含有量を100として、焼成直後および20℃で1年保存後のビタミンAの割合を%で表示した。ビタミンAの残存率が80%以上であるものを従来品と比較して有意差有りと判断した。
【0052】
【表1】
実施例1で得られた焼成菓子、すなわち、ビタミンAを内部油相部に含有する多重エマルジョン(O/W/O型エマルジョン)を添加した焼成菓子は、焼成後1年相当経過後のビタミンA含有量が、81.0%であり、比較例1の22.6%と比較して残存率が著しく高いことがわかる。
【0053】
また、実施例2および3で得られた焼成菓子も、焼成後1年相当経過後のビタミンA残存率が高いことがわかる。
【0054】
一方、多重エマルジョンを用いず、ボディにビタミンAを直接添加して得られた焼成菓子は、焼成後1年相当経過後のビタミンA残存率が、22.6%で低かったことがわかる。また、多重エマルジョンを用いず、ボディにビタミンAを直接添加すると共に、酸化防止剤としてビタミンCを添加して得られた焼成菓子は、焼成後1年相当経過後のビタミンA残存率が77.3%と実施例1〜3と同様の高さを示したが、酸化防止目的に使用したビタミンCの酸化に伴う黒色の斑点が多く認められ、製品としてふさわしいとは言い難いものであった。
【0055】
以上より、焼成菓子において脂溶性ビタミン類を最内相の油相部に含有させ、その外側に順次水相部、さらに最外相を油相部とする多重エマルジョンの形態で配合することにより、従来の焼成菓子生地に直接脂溶性ビタミン類を添加する方法よりも脂溶性ビタミン類の残存率を高く維持することができ、脂溶性ビタミン類の耐熱性および保存性が向上することが判明した。これにより食品としての美的外観を維持しつつ、脂溶性ビタミン類の表示値に対する誤差の許容範囲−20%〜+50%を遵守することが容易になる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、油中水中油型エマルジョンを配合してなる脂溶性ビタミン類含有飲食品に関する。本発明はまた、飲食品中で脂溶性ビタミン類を安定化させる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、菓子、パン、飲料の製造において、脂溶性ビタミン類を配合しても、その後の焼成工程やレトルト殺菌工程での熱の影響により、その脂溶性ビタミン類の活性が低下する。さらには、酸化反応や微量金属の影響により、賞味期間中においても脂溶性ビタミン類の活性が著しく減少する。脂溶性ビタミン類の中でもとりわけビタミンAおよびβ−カロテンについては、その活性低下が著しく、これにより、例えば、栄養補助目的の一部としてビタミンAまたはβ−カロテンを配合した飲食品において、平成8年に施行された栄養表示基準第3条第1項第6号に定められている、ビタミンAの表示値に対する誤差の許容範囲−20%〜+50%を遵守できず、その表示を行うことができないという問題点があった。
【0003】
したがって、これまで、ビタミンAおよびβ−カロテンの残存活性を高めた菓子や食品が得られていないのが現状である。
【0004】
前記のような飲食品の酸化を抑制するため、L−アスコルビン酸のような抗酸化剤を添加することも有効ではあるが、抗酸化剤自身が酸化された時に褐変し、これが斑点となって賞味期間中であっても飲食品の外観を著しく損なうという問題点があり、この技術を採用することは好ましくない。
【0005】
一方、脂溶性ビタミン類の粉末化については、ビタミンの構成からなる粉末油脂が知られている。しかしながら、粉末化する際の乾燥工程における劣化や、直接的に粉体化されたものでは、ビタミン類の活性を維持できないなど問題があった。また、分散性などの問題があり使用しにくい。
【0006】
これまで、多重被覆油脂の技術については、例えば、特開昭63−173568号公報(特許文献1)に、油性物と1次被覆剤として該油性物の外表面に1次被覆された水溶性物とからなる被覆粉末油脂と、さらに該被覆粉末油脂の外表面に2次被覆された融点40℃以上の脂質紛状体とを含む2次被覆された粉末油脂が開示されている。
【0007】
しかし、融点が40℃以上の粉末状態の油脂を使用するので、食品への分散性が悪く、また、食感が悪いなど問題がある。
【0008】
また、脂溶性ビタミン類を含有する飲食品の製造法に関して、特開昭59−173053号公報(特許文献2)には、脂溶性ビタミン類をゲル化剤を含有するゾルに乳化分散させた後、ゲル化させ、その脂溶性ビタミン含有ゲルより成る粒子を飲食品に混入させる技術が開示されている。しかし、脂溶性ビタミンを飲食品に溶解する方法であって、本発明であるビタミン類の残存活性の維持を達成することはできない。
【0009】
【特許文献1】
特開昭63−173568号公報
【特許文献2】
特開昭59−173053号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、長期間の保存においても脂溶性ビタミン類の活性が維持された脂溶性ビタミン類含有飲食品の提供をその目的とする。
【0011】
本発明はまた、製造工程における脂溶性ビタミン類の失活が抑制された脂溶性ビタミン類含有飲食品、特に焼成菓子、の提供をその目的とする。
【0012】
本発明は更に、飲食品中に配合させる脂溶性ビタミン類の安定化方法の提供をその目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、内部油相部が脂溶性ビタミン類を含有する油中水中油型エマルジョンを飲食品に配合すると、製造時および保存時における脂溶性ビタミン類の活性低下を抑制できることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
【0014】
すなわち本発明によれば、油中水中油型エマルジョンを配合してなる脂溶性ビタミン類含有飲食品であって、油中水中油型エマルジョンが内部油相部と水相部と外部油相部とからなり、内部油相部が脂溶性ビタミン類を含有する飲食品が提供される。
【0015】
本発明によればまた、脂溶性ビタミン類を含有する内部油相部を水相部に乳化させてなる水中油型エマルジョンを外部油相部に乳化させてなる油中水中油型エマルジョンを飲食品に配合することを含んでなる、飲食品中に配合される脂溶性ビタミン類の安定化方法が提供される。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明による飲食品に配合される脂溶性ビタミン類としては、ビタミンA、プロビタミンA、およびビタミンK並びにそれらの誘導体が挙げられる。
【0017】
ビタミンAとしては、下記式:
【化1】
で表されるレチノール(ビタミンA1)や3−デヒドロレチノール(ビタミンA2)が挙げられる。
【0018】
ビタミンAの誘導体としては、ビタミンA脂肪酸エステル、レチナール、レチノイン酸が挙げられる。ビタミンA脂肪酸エステルとしては、日本薬局方で規定されている、パルミチン酸レチノールや酢酸レチノールが挙げられる。
【0019】
ビタミンAおよびその誘導体は、単独で用いてもよいし、食用油脂に配合して希釈したものであってもよい。またビタミンAおよびその誘導体は、ビタミンA油であってもよい。ビタミンA油としては、魚の肝油やビタミンA脂肪酸エステルを含有する食用油脂が挙げられる。臭気や味覚の観点から植物油にビタミンA脂肪酸エステルを配合させてなるビタミンA油が好ましい。
【0020】
プロビタミンAとしては、α−カロテン、β−カロテン、γ−カロテン、クリプトキサンチンのような体内でビタミンAに変換されうる化合物が挙げられる。β−カロテンは下記式:
【化2】
で表される化合物であり、緑葉野菜やニンジンからエーテル抽出されたもの、β−ヨノンから合成されたものであってもよい。β−カロテンはまた、食用油脂に配合して希釈したものを使用してもよい。
【0021】
本発明において使用される油中水中油型エマルジョンは、内部油相部と水相部と外部油相部とからなり、脂溶性ビタミン類を含有する内部油相部を水相部に乳化させてなる水中油型エマルジョンを、外部油相部に乳化させて得ることができる。
【0022】
内部油相部は、脂溶性ビタミン類を含有する油性成分に対して乳化剤0.1〜10重量%を単独にあるいは混合して添加することにより調製できる。水相部は、乳化剤0.1〜15重量%を水に添加することにより調製できる。外部油相部は、乳化剤0.1〜10重量%を油性成分に添加することにより調製できる。
【0023】
使用できる乳化剤としては、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、またはソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。乳化剤は単独で用いても、混合して用いてもよい。
【0024】
内部油相部に使用される希釈用の油性成分としては、食用油脂やその他油性成分が挙げられ、食用として供されるものであれば、特に制限されない。
【0025】
内部油相部に用いられる食用油脂としては、天然動植物油脂並びにその硬化油、エステル交換油、およびウィンタリング油などが挙げられる。天然動植物油脂としては、大豆油、菜種油、パーム油、コーン油、綿実油、精製魚油硬化油、および前記植物油の硬化油脂等が挙げられる。特に好ましくは、菜種油、パーム油、コーン油、菜種硬化油、パーム硬化油、コーン油の硬化油、精製魚油の硬化油である。
【0026】
脂溶性ビタミン類を希釈用の油性成分に添加して内部油相部とする場合には、脂溶性ビタミン類と希釈用の油性成分との配合比は、例えば、1:0.1〜1:20重量比とすることができ、好ましくは1:1〜1:20重量比、より好ましくは1:1〜1:10重量比である。1:0.1よりも脂溶性ビタミン類が多いと風味に悪影響を及ぼす可能性があり、1:20よりも内部油相部が多いと脂溶性ビタミン類の量が少なくなり、全体量を多くする必要が生じうるので好ましくない。もちろん、脂溶性ビタミン類を希釈せずにそのまま内部油相部として用いてもよい。
【0027】
外部油相部に用いられる油性成分としては、内部油相部に用いられる食用油脂が挙げられる。
【0028】
内部油相部、水相部、および外部油相部は、更に任意の添加物を含んでいても良い。内部油相部に添加できる任意の添加成分としては、トコフェロール、アスコルビン酸のような天然または合成の添加物や香料が挙げられる。水相部に添加できる任意の添加成分としては、ガム質、呈味素材、タンパク質、澱粉類などの食品用高分子類や粉乳、発酵乳、香辛料などの呈味素材が挙げられる。外部油相部に添加できる任意の添加成分としては、香料やカロテンなどの着色料が挙げられる。
【0029】
脂溶性ビタミン類の含有量は特に制限されないが、例えば、多重エマルジョン全量に対して0.5〜10重量%とすることができ、より好ましくは、1〜5重量%である。脂溶性ビタミン類の含有量が0.5重量%より少ないと、目的とする脂溶性ビタミン類の飲食品における含有量が少なくなる場合があり、脂溶性ビタミンの含有量が10重量%を超えると飲食品に多重エマルジョンを添加した場合、風味が悪くなる場合がある。
【0030】
本発明においては、脂溶性ビタミン類のうちビタミンA、プロビタミンA、およびそれらの誘導体の配合比および配合割合(重量%)はレチノール当量で算出される。例えば、ビタミンAの脂肪酸エステルが配合されている場合には、その配合比はビタミンAの国際単位(IU)に基づいて算出される。1ビタミンA国際単位(IU)はビタミンA(アルコール型)0.3μgに相当する。すなわち、油性ビタミンA脂肪酸エステル1gが1,000,000IUである場合、ビタミンAの重量としては300mgに相当する。
【0031】
本発明において使用される多重エマルジョンにおいて、内相となる水中油型(O/W型)エマルジョンは、乳化剤等を溶解した内部油相部10〜90重量%と、乳化剤、ガム質、呈味素材等を溶解、分散した水相部10〜90重量%とを乳化することにより調製できる。また上記水中油型(O/W型)エマルジョンと最外相を形成する外部油相部の配合比率は、重量比で10:2〜1:400とすることができる。特に好ましくは、内相を形成する水中油型(O/W型)エマルジョンの内部油相部と水相部が重量比で1:4〜4:1であり、内相を形成する水中油型(O/W型)エマルジョンと外部油相部が重量比で2:10〜8:10である。
【0032】
本発明に使用する多重エマルジョンは下記のようにして製造できる。まず、水相部中に最内相となる内部油相部を添加し、攪拌機を用いて水中油型(O/W型)エマルジョンに予備乳化した後、ホモジナイザーにより均質化して水中油型(O/W型)エマルジョンを得る。この場合、内部油相部及び水相部には、各相に添加する物質を溶解または分散するのに必要な最低限の熱を加えることができる。各溶液を調製するときおよび予備乳化するときの液温は、60℃以下とすることが好ましく、さらに製造工程中の熱による品質低下を最小限にくい止めるためには、10〜45℃であることがより好ましい。次いで、この均質化された水中油型(O/W型)エマルジョンを最外相となる外部油相部に加え、攪拌機を用いて混合乳化する。混合乳化する際の液の温度は、40〜70℃に保つことが好ましく、40〜55℃がより好ましい。均一に乳化後、急冷捏和装置により可塑化して、本発明に使用する多重エマルジョンを得る。本発明において使用されるエマルジョンの製造に当たっては、特開平7−313055号公報に記載の方法を参照できる。
【0033】
このように得られた内部油相部に脂溶性ビタミン類を含有する油中水中油型エマルジョンを飲食品に配合することにより、飲食品の製造工程中あるいは保存中における脂溶性ビタミン類の活性低下を抑制することができる。すなわち、本発明によれば飲食品に配合される脂溶性ビタミン類の活性の安定化を図ることができる。
【0034】
本発明による飲食品としては、焼成菓子等の菓子類;パン類;清涼飲料、ゼリー飲料等の飲料が挙げられる。食品用材料としては、前記の焼成菓子に使用される材料として、例えば、小麦、大麦やトウモロコシ等の澱粉粉末、加工澱粉、砂糖や果糖等の甘味料、ハーブ植物やそれらの抽出物、香料、呈味料が挙げられる。また、飲料に用いられる材料としてはミネラル類等が挙げられる。
【0035】
本発明による飲食品には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を添加することができる。つなぎに添加できる成分としては、乾燥卵白の他に、例えばグラニュウ糖、乳糖、麦芽糖、果糖、ブドウ糖、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、ゲル化剤としては例えばゼラチン、カラギナン、寒天、ペクチン、タマリンドガム、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビンガム、アラビアガム、ジェランガムが挙げられ、乳化油脂、香料が挙げられる。またボディーに添加できる成分としては、薄力粉、中力粉、強力粉、加工澱粉、乳化油脂、呈味素材、強化剤としては例えば、ビタミンA、β−カロテン、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ナイアシン、パントテン酸カルシウム、葉酸、ピロリン酸鉄、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、焼成カルシウム、未焼成カルシウム、ドロマイト、乳化剤としてはグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルが挙げられる。
【0036】
本発明の好ましい態様によれば、油中水中油型エマルジョンを配合してなる脂溶性ビタミン類含有焼成菓子であって、油中水中油型エマルジョンが脂溶性ビタミン類を含有する内部油相部を水相部に乳化させてなる水中油型エマルジョンを外部油相部に乳化させてなるものである、焼成菓子が提供される。本発明による焼成菓子は下記のように製造できる。まず、水、糖質、卵、ゲル化剤などを混合しメレンゲを得、このメレンゲ90〜100重量%を、乳化油脂、香料を混合させたものを0〜10重量%と混合する。これを焼成菓子を形作るためのつなぎとする。次いで、小麦粉、澱粉、呈味素材などを混合した粉末88.6〜98重量%と本発明に使用する多重エマルジョン0.04〜2重量%を混合させ、これを焼成菓子の本体となるボディとする。つなぎ50〜60重量%とボディ40〜50重量%をミキサーを用いて混合し、焼成前の生地であるドウを得る。得られたドウをガスオーブン等を用いて、例えば、焼成温度180℃〜250℃、焼成時間は5〜8分で焼成され、本発明による焼成菓子が得られる。
【0037】
焼成菓子においてはその製造工程中において菓子生地が焼成されるため脂溶性ビタミン類の活性の低下が懸念されるが、油中水中油型エマルジョンの内部油相部に脂溶性ビタミン類を含有させて飲食品に配合することにより、その活性低下を著しく抑制することができる。
【0038】
本発明による飲食品に含まれる脂溶性ビタミン類のうちビタミンAおよびその誘導体の含有量は、中央法規 財団法人日本食品分析センター編集「五訂日本食品標準成分表分析マニュアルの解説」第125〜130ページに記載の方法に従って測定できる。β―カロテンの含有量は、日本食品衛生協会編食品衛生検査指針・理化学編(1991)厚生省生活衛生局監修、第54ページおよび58〜60ページ、日本食品衛生協会編、食品衛生検査指針・食品中の食品添加物分析法(1989)厚生省生活衛生局監修第7〜9ページ、第136〜138ページに記載の方法に従って測定できる。
【0039】
【実施例】
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
製造例1:多重エマルジョンA
内部油相部、水相部、および外部油相部として表1の配合を用い、脂溶性ビタミン含有多重エマルジョンを製造した。内部油相部および水相部をそれぞれ42℃に加熱し、攪拌機(スリーワンモーター:Heidon社製)を用いて攪拌しながら、水相部に内部油相部を徐々に加えて乳化させ、そのまま20分間予備乳化を続けた。次いで、この水中油型(O/W型)予備乳化物をホモジナイザーを用い、ホモジナイザー圧力200kg/cm2で均質化し、水中油型(O/W型)エマルジョンを得た。外部油相部を70℃に加熱し、これに40℃に保った上記の水中油型(O/W型)エマルジョンを徐々に加え、攪拌しながら20分間乳化したのち、急冷捏和装置により可塑化して、油中水中油型(O/W/O型)エマルジョンを得た。
【0041】
【0042】
製造例2:多重エマルジョンB
製造例1に記載の方法に従って、表2に記載の配合の多重エマルジョンを製造した。
【0043】
製造例3:多重エマルジョンC
製造例1に記載の方法に従って、表3に記載の配合の多重エマルジョンを製造した。
【0044】
実施例1:焼成菓子(1)
表4に示すように、ボディーとして、小麦粉(薄力粉Hウェハース;鳥越製粉社製)26.8kg、呈味素材(トラビアータ;ピュラトスジャパン製)8.9kg、加工澱粉(フードスターチTB;松谷化学(株))13.89kg、炭酸カルシウム(卵殻カルシウム;キューピー社製)2.02kg、油脂(デリシャス40;日本油脂(株)社製)1.3kg、ピロリン酸第二鉄(ピロリン酸第二鉄;米山化学社製)0.04kg、ショ糖脂肪酸エステル(リョートーシュガーエステルS−370F;三菱化学フーズ製0.4kg)を攪拌機(ダブルフォース;サンカシアーノ社)によって、混合した後、つなぎとして予め、油脂(デリシャス40;日本油脂(株)社製)2.0kg、ゼラチン(イナゲルV−40;伊那食品社製)2.20kg、砂糖(グラニュウ糖 HGS;第一糖業社製)14.5kgをプラネタリーミキサーによって混合したものを添加してから、攪拌機(ダブルフォース;サンカシアーノ社)によって十分に混合した。次いで、製造例1で作製したビタミンA含有多重エマルジョンA0.2kgと香料(ローストフレーバーMK−53−1;長谷川香料(株)社製)0.3kgを攪拌機(ダブルフォース;サンカシアーノ社)によって混合した。次いで、つなぎ、ボディとして、表4の配合を用いてドウを製造した。攪拌機(プラネタリーミキサー;サンカシアーノ社)を用いてメレンゲを得た後、乳化油脂および香料を加えて比重0.8まで攪拌を続けてつなぎを得た。一方、攪拌機(ダブルフォース;サンカシアーノ社)を用いて200rpmで攪拌、混合して得られたボディ原料に加えた後、再び攪拌機(ダブルフォース;サンカシアーノ社)を200rpmで攪拌してドウを得る。ドウの生地温度は30℃以下になるようにする。ドウはスチールバンドオーブン(デニッシュフード社)で180℃〜240℃で6分焙焼して焼成菓子を得た。
【0045】
【0046】
実施例2:焼成菓子(2)
実施例1に記載の方法に従って、表5に記載の配合の焼成菓子を製造した。
【0047】
実施例3:焼成菓子(3)
実施例2に記載の方法に従って、表6に記載の配合の焼成菓子を製造した。
【0048】
比較例1:
実施例1に記載の方法に従って、表7に記載の配合の焼成菓子を製造した。
【0049】
比較例2:
実施例1に記載の方法に従って、表8に記載の配合の焼成菓子を製造した。
【0050】
試験例:焼成菓子中のビタミンAの含有量の測定
焼成前、焼成後、および20℃で1年保存後の、ビタミンAの焼成菓子100gに対する含有量(IU)を測定した。具体的には、中央法規 財団法人日本食品分析センター編集、「五訂日本食品標準成分表分析マニュアルの解説」第125〜130ページに記載の方法に従って焼成菓子中のビタミンA含有量を測定した。ビタミンA含有量はレチノール当量で判断した。
【0051】
結果は表9に示される通りであった。焼成前のビタミンAの含有量を100として、焼成直後および20℃で1年保存後のビタミンAの割合を%で表示した。ビタミンAの残存率が80%以上であるものを従来品と比較して有意差有りと判断した。
【0052】
【表1】
実施例1で得られた焼成菓子、すなわち、ビタミンAを内部油相部に含有する多重エマルジョン(O/W/O型エマルジョン)を添加した焼成菓子は、焼成後1年相当経過後のビタミンA含有量が、81.0%であり、比較例1の22.6%と比較して残存率が著しく高いことがわかる。
【0053】
また、実施例2および3で得られた焼成菓子も、焼成後1年相当経過後のビタミンA残存率が高いことがわかる。
【0054】
一方、多重エマルジョンを用いず、ボディにビタミンAを直接添加して得られた焼成菓子は、焼成後1年相当経過後のビタミンA残存率が、22.6%で低かったことがわかる。また、多重エマルジョンを用いず、ボディにビタミンAを直接添加すると共に、酸化防止剤としてビタミンCを添加して得られた焼成菓子は、焼成後1年相当経過後のビタミンA残存率が77.3%と実施例1〜3と同様の高さを示したが、酸化防止目的に使用したビタミンCの酸化に伴う黒色の斑点が多く認められ、製品としてふさわしいとは言い難いものであった。
【0055】
以上より、焼成菓子において脂溶性ビタミン類を最内相の油相部に含有させ、その外側に順次水相部、さらに最外相を油相部とする多重エマルジョンの形態で配合することにより、従来の焼成菓子生地に直接脂溶性ビタミン類を添加する方法よりも脂溶性ビタミン類の残存率を高く維持することができ、脂溶性ビタミン類の耐熱性および保存性が向上することが判明した。これにより食品としての美的外観を維持しつつ、脂溶性ビタミン類の表示値に対する誤差の許容範囲−20%〜+50%を遵守することが容易になる。
Claims (10)
- 油中水中油型エマルジョンを配合してなる脂溶性ビタミン類含有飲食品であって、油中水中油型エマルジョンが内部油相部と水相部と外部油相部とからなり、内部油相部が脂溶性ビタミン類を含有する飲食品。
- 油中水中油型エマルジョンが、脂溶性ビタミン類を含有する内部油相部を水相部に乳化させてなる水中油型エマルジョンを、外部油相部に乳化させてなるものである、請求項1に記載の飲食品。
- 脂溶性ビタミン類と内部油相部の希釈用の油性成分の配合比(重量比)が、1:1〜1:20である、請求項1または2に記載の飲食品。
- 脂溶性ビタミン類がビタミンA、プロビタミンA、およびビタミンK並びにそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の飲食品。
- 内部油相部の希釈用の油性成分および外部油相部の油性成分が食用油脂からなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の飲食品。
- 食用油脂が、天然動植物油脂並びにその硬化油、エステル交換油、およびウィンタリング油からなる群から選択される、請求項5に記載の飲食品。
- 飲食品100重量部に対し、エマルジョン中の脂溶性ビタミン類が0.01〜0.5重量部配合された、請求項1〜6のいずれか一項に記載の飲食品。
- 飲食品が焼成菓子である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の飲食品。
- 油中水中油型エマルジョンを配合してなる菓子生地を焼成することにより得られる、請求項8に記載の飲食品。
- 内部油相部が脂溶性ビタミン類を含有する油中水中油型エマルジョンを飲食品に配合することを含んでなる、飲食品中に配合される脂溶性ビタミン類の安定化方法。
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