JP2004096232A - 可変移相器およびこれを用いた無線中継装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡易な構成で、360°を越える大きな位相を高速に得ることができること。
【解決手段】入力端子T1から入力された高周波信号を複数の高周波信号に電力分配して出力する電力分配器1と、電力分配器によって分配された複数の高周波信号S2〜S4にそれぞれλ/4、λ/2、(3/4)・λ分、遅延を付与する複数の遅延線2〜4と、高周波信号S1および各遅延線2〜4から出力された各高周波信号の振幅値を可変に減衰する複数の可変減衰器R1〜R4と、複数の可変減衰器R1〜R4から出力された複数の高周波信号を電力合成して出力する電力合成器5と、電力合成器5から出力される高周波信号の位相が、指示された位相となるように複数の可変減衰器R1〜R4の減衰量を制御するコントローラC1とを備える。
【選択図】 図1
【解決手段】入力端子T1から入力された高周波信号を複数の高周波信号に電力分配して出力する電力分配器1と、電力分配器によって分配された複数の高周波信号S2〜S4にそれぞれλ/4、λ/2、(3/4)・λ分、遅延を付与する複数の遅延線2〜4と、高周波信号S1および各遅延線2〜4から出力された各高周波信号の振幅値を可変に減衰する複数の可変減衰器R1〜R4と、複数の可変減衰器R1〜R4から出力された複数の高周波信号を電力合成して出力する電力合成器5と、電力合成器5から出力される高周波信号の位相が、指示された位相となるように複数の可変減衰器R1〜R4の減衰量を制御するコントローラC1とを備える。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、通信装置、レーダ装置、各種高周波測定装置などの高周波信号を取り扱い、この高周波信号の位相の制御、さらには振幅の制御をも可能とする可変移相器およびこれを用いた無線中継装置に関し、特に干渉波抑圧機能が搭載された無線中継装置の干渉抑圧信号生成部に好適な可変移相器およびこれを用いた無線中継装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、高周波信号の位相を直接的に変化させる方式には、この高周波信号が伝搬する線路の物理的な長さを変えることによって位相を変化させる方式があり、たとえばトロンボーン型移相器が知られている。また、短時間に高周波信号の位相を変化させる方式としては、PINダイオードや可変容量ダイオードなどの半導体素子を用いた移相器がある。この半導体素子を用いた移相器は、ダイオードのバイアス電圧やバイアス電流を急速に変化させ、ダイオードのインピーダンスの変化を利用して位相を変化させるものであるが、具体的には、ローデッドライン型移相器が知られている。なお、大きな位相を得る場合には、上述した二つの方式、すなわち物理的な線路長を変化させる方式と半導体素子を用いた方式とを組み合わせて構成するハイブリッド型移相器が用いられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したトロンボーン型移相器などの物理的な線路長を変える方式では、可変位相範囲が物理長で限定されるため、任意の位相点から連続して360度以上の位相に変化させることが困難であるという問題点があった。さらに、この方式では、物理的な線路長を変えるので、位相変化に時間がかかり、高速な位相変化を必要とする装置あるいはシステムに用いることができないという問題点があった。
【0004】
また、上述したローデッドライン型移相器などの半導体素子を用いる方式では、ダイオードなどの半導体回路の構成上、大きな位相を得ようとすると帯域幅が狭くなり、実用上、45度以下の移相に限られて用いられるという問題点があった。
【0005】
さらに、上述したハイブリッド型移相器では、大きな位相を得ることができるものの、回路が複雑になるという問題点があった。
【0006】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、簡易な構成で、360°を越える大きな位相を高速に得ることができる可変移相器およびこれを用いた無線中継装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1にかかる可変移相器は、入力された高周波信号を複数の高周波信号に電力分配して出力する電力分配器と、前記電力分配器によって分配された複数の高周波信号にそれぞれ異なる遅延を付与する複数の遅延器と、各遅延器から出力された各高周波信号の振幅値を可変に減衰する複数の可変減衰器と、前記複数の可変減衰器から出力された複数の高周波信号を電力合成して出力する電力合成器と、前記電力合成器から出力される高周波信号の位相が、指示された位相となるように前記複数の可変減衰器の減衰量を制御するコントローラとを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項1の発明によれば、電力分配器が、入力された高周波信号を複数の高周波信号に電力分配して出力し、複数の遅延器が、前記電力分配器によって分配された複数の高周波信号にそれぞれ異なる遅延を付与し、該複数の遅延器の後段にそれぞれ接続された複数の可変減衰器に対して、コントローラの制御のもとに、該複数の可変減衰器の後段の電力合成器によって電力合成出力される高周波信号の位相が、指示された位相となるように前記複数の可変減衰器の減衰量を制御するようにしている。
【0009】
また、請求項2にかかる可変移相器は、上記の発明において、前記電力合成器から出力された高周波信号の振幅値を調整する電力調整用可変減衰器をさらに備え、前記コントローラは、前記電力調整用可変減衰器の減衰量を制御することを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明によれば、前記電力合成器から出力された高周波信号の振幅値を調整する電力調整用可変減衰器をさらに設け、前記コントローラが、前記電力調整用可変減衰器の減衰量をさらに制御するようにしている。
【0011】
また、請求項3にかかる可変移相器は、上記の発明において、前記複数の可変減衰器および前記電力調整用可変減衰器のそれぞれは、複数の部分可変減衰器を直列接続して形成されることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明によれば、前記複数の可変減衰器および前記電力調整用可変減衰器のそれぞれを、複数の部分可変減衰器を直列接続して構成し、減衰量が小さい領域では減衰に伴う高周波信号の移相が小さいという位相特性を用い、小さな減衰量の小さな移相の加算によって最終的に加算された移相が、一つの可変減衰器の大きな移相に比して小さくすることができる。
【0013】
また、請求項4にかかる可変移相器は、上記の発明において、前記電力分配器は、少なくとも3つの高周波信号に分配し、前記複数の遅延器は、異なる遅延量が付与される少なくとも3つの遅延素子を有し、前記コントローラは、前記電力合成器による各高周波信号のベクトル合成後の位相が、指示された位相となるように前記複数の可変減衰器の減衰量を制御することを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明によれば、前記電力分配器が、少なくとも3つの高周波信号に分配し、前記複数の遅延器が、異なる遅延量が付与される少なくとも3つの遅延素子によって構成され、前記コントローラが、前記電力合成器による各高周波信号のベクトル合成後の位相が、指示された位相となるように前記複数の可変減衰器の減衰量を制御し、最低限の構成によって高周波信号の位相制御を高速に行うことができる。
【0015】
また、請求項5にかかる可変移相器は、上記の発明において、前記コントローラは、前記複数の可変減衰器のうち、2つ以上の可変減衰器の減衰量を制御することを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明によれば、前記コントローラが、前記複数の可変減衰器のうち、2つ以上の可変減衰器の減衰量を制御し、2つの可変減衰器の減衰量の制御すなわち2つの位相軸の振幅値制御のみによっても、指示された位相が得られるようにしている。
【0017】
また、請求項6にかかる可変移相器は、上記の発明において、前記電力分配器は、3つの高周波信号に分配し、前記複数の遅延器は、3つの高周波信号がそれぞれ形成する各位相軸間の角度が90度を超えるように位相調整され、前記コントローラは、ベクトル合成後の位相が指示された位相となるように、3つの高周波信号に対応する各可変減衰器の減衰量を制御することを特徴とする。
【0018】
請求項6の発明によれば、前記電力分配器が、3つの高周波信号に分配し、前記複数の遅延器が、3つの高周波信号がそれぞれ形成する各位相軸間の角度が90度を超えるように位相調整し、前記コントローラが、ベクトル合成後の位相が指示された位相となるように、3つの高周波信号に対応する各可変減衰器の減衰量を制御するように、制御する位相軸の増大によって可変減衰器のダイナミックレンジを小さくし、可変減衰器自体による位相特性変化を最小限に抑えるようにしている。
【0019】
また、請求項7にかかる可変移相器は、上記の発明において、前記電力分配器は、4つの高周波信号に分配し、前記複数の遅延器は、4つの高周波信号のうち、2つの高周波信号が形成する各位相軸間の角度が180度未満となるように位相調整され、前記コントローラは、ベクトル合成後の位相が指示された位相となるように、4つの高周波信号に対応する各可変減衰器の減衰量を制御することを特徴とする。
【0020】
請求項7の発明によれば、前記電力分配器が、4つの高周波信号に分配し、前記複数の遅延器が、4つの高周波信号のうち、2つの高周波信号が形成する各位相軸間の角度が180度未満となるように位相調整し、前記コントローラが、ベクトル合成後の位相が指示された位相となるように、4つの高周波信号に対応する各可変減衰器の減衰量を制御するようにし、制御する位相軸の増大によって可変減衰器のダイナミックレンジを一層小さくし、可変減衰器自体による位相特性変化を最小限に抑えるようにしている。
【0021】
また、請求項8にかかる可変移相器は、上記の発明において、前記電力分配器によって分配された高周波信号の出力をスイッチングする複数のスイッチング素子をさらに備え、前記コントローラは、指示された位相が、前記複数の遅延器から出力された各高周波信号が示す位相に挟まれる領域のいずれの領域であるかを判断し、該判断された領域を挟む2つの高周波信号のみをオンさせるスイッチングを行って前記複数の可変減衰器の減衰量制御を行うことを特徴とする。
【0022】
請求項8の発明によれば、前記電力分配器によって分配された高周波信号の出力をスイッチングする複数のスイッチング素子をさらに設け、前記コントローラは、指示された位相が、前記複数の遅延器から出力された各高周波信号が示す位相に挟まれる領域のいずれの領域であるかを判断し、該判断された領域を挟む2つの高周波信号のみをオンさせるスイッチングを行って前記複数の可変減衰器の減衰量制御を行うようにしているので、可変減衰器の制御に伴う負荷を軽減できる。
【0023】
また、請求項9にかかる可変移相器は、上記の発明において、前記コントローラは、指示された位相が、前記複数の遅延器から出力された各高周波信号が示す位相に挟まれる領域のいずれの領域であるかを判断し、該判断された領域を挟む2つの高周波信号以外の高周波信号が流れる前記複数の遅延器の減衰量を最大にし、該2つの高周波信号以外の高周波信号をオフするスイッチングを行って前記複数の可変減衰器の減衰量制御を行うことを特徴とする。
【0024】
請求項9の発明によれば、前記コントローラは、指示された位相が、前記複数の遅延器から出力された各高周波信号が示す位相に挟まれる領域のいずれの領域であるかを判断し、該判断された領域を挟む2つの高周波信号以外の高周波信号が流れる前記複数の遅延器の減衰量を最大にし、該2つの高周波信号以外の高周波信号をオフするスイッチングを行って前記複数の可変減衰器の減衰量制御を行うようにしているので、可変減衰器がスイッチング素子の機能を兼ねるため、簡易な構成によって可変減衰器の制御に伴う負荷を軽減できる。
【0025】
また、請求項10にかかる可変移相器は、上記の発明において、前記複数の遅延器は、各遅延器の隣接間位相が90度である互いに直交した4つの遅延素子であり、該4つの遅延素子のうち、1つの遅延素子は遅延量が零であり、前記コントローラは、前記複数の可変減衰器の値を、所望の位相の正弦値および余弦値にそれぞれ対応した値を用いて前記複数の可変減衰器の減衰量制御を行うことを特徴とする。
【0026】
請求項10の発明によれば、前記複数の遅延器は、各遅延器の隣接間位相が90度である互いに直交した4つの遅延素子であり、該4つの遅延素子のうち、1つの遅延素子は遅延量が零であり、前記コントローラは、前記複数の可変減衰器の値を、所望の位相の正弦値および余弦値にそれぞれ対応した値を用いて前記複数の可変減衰器の減衰量制御を行うようにし、簡易な構成で実現され、かつ360度を越える位相であっても高速に位相制御を行うことができる。
【0027】
また、請求項11にかかる可変移相器は、上記の発明において、位相に対する正弦値および余弦値の値を格納する格納手段をさらに備え、前記コントローラは、指示された位相に対応する前記正弦値および前記余弦値を読み出し、この読み出した前記正弦値および前記余弦値を用いて前記複数の可変減衰器の減衰量制御を行うことを特徴とする。
【0028】
請求項11の発明によれば、格納手段が、位相に対する正弦値および余弦値の値を予め格納しておき、前記コントローラが、指示された位相に対応する前記正弦値および前記余弦値を読み出し、この読み出した前記正弦値および前記余弦値を用いて前記複数の可変減衰器の減衰量制御を行うようにしているので、さらに位相制御を高速に行うことができる。
【0029】
また、請求項12にかかる可変移相器は、上記の発明において、前記コントローラは、前記複数の可変減衰器および/または前記電力調整用可変減衰器が有する位相特性に対応した位相誤差を補正した位相を算出し、この算出した位相を用いて前記複数の可変減衰器および/または前記電力調整用可変減衰器の減衰量制御を行うことを特徴とする。
【0030】
請求項12の発明によれば、前記コントローラが、前記複数の可変減衰器および/または前記電力調整用可変減衰器が有する位相特性に対応した位相誤差を補正した位相を算出し、この算出した位相を用いて前記複数の可変減衰器および/または前記電力調整用可変減衰器の減衰量制御を行うようにしているので、精度の高い減衰量制御を行うことができる。
【0031】
また、請求項13にかかる無線中継装置は、請求項1〜12に記載の可変移相器を、回り込み信号をキャンセルする干渉波抑圧信号の生成に用いることを特徴とする。
【0032】
請求項13の発明によれば、請求項1〜12に記載の可変移相器を、回り込み信号をキャンセルする干渉波抑圧信号の生成に用いるようにしているので、干渉波抑圧信号の生成を簡易かつ高速に行うことができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる可変移相器およびこれを用いた無線中継装置について説明する。
【0034】
(実施の形態1)
まず、この発明の実施の形態1について説明する。図1は、この発明の実施の形態1である可変移相器の構成を示す回路図である。図1において、この可変移相器10は、電力分配器1を有し、電力分配器1は、入力端子T1から入力された高周波信号を4つに電力分配し、この電力分配した高周波信号S1〜S4として出力する。さらに、この4分配された高周波信号S1〜S4に対応した4つの可変減衰器R1〜R4を有し、高周波信号S1は、そのまま可変減衰器R1に入力される。電力分配器1と各可変減衰器R2〜R4との間には遅延線2〜4がそれぞれ設けられ、各遅延線2〜4は、それぞれ高周波信号S2〜S4を遅延して各可変減衰器R2〜R4に出力する。
【0035】
遅延線2は、高周波信号の波長を「λ」とすると、高周波信号S2をλ/4分遅延し、遅延線3は、高周波信号S3をλ/2分遅延し、遅延線4は、高周波信号S4を(3/4)λ分遅延する。すなわち、各遅延線2〜4は、同位相の高周波信号S2〜S4をそれぞれ90度、180度、270度移相している。ここで、電力分配器1と可変減衰器R1との間は直接接続されるため、遅延が生じないが、遅延線2〜4との関係で言えば、高周波信号S2〜S4と同位相の高周波信号S1を0度移相していることになる。換言すれば、各高周波信号S1〜S4は、90度単位で移相されることになる。そして、可変減衰器R1,R3に入力される高周波信号と可変減衰器R2,R4に入力される高周波信号とは、直交関係にある。
【0036】
コントローラC1は、各可変減衰器R1〜R4の抵抗値を可変制御する。電力合成器5は、各可変減衰器R1〜R4から出力された高周波信号を電力合成し、出力端子T2から、所望の位相をもつ高周波信号として出力する。
【0037】
ここで、図2を参照して、コントローラC1による可変減衰器R1〜R4に対する可変制御について説明する。図2では、入力端子T1から入力された高周波信号を400度移相する場合を示している。I軸のプラス側は可変減衰器R1の値に相当し、I軸のマイナス側は可変減衰器R3の値に相当し、Q軸のプラス側は可変減衰器R2の値に相当し、Q軸のマイナス側は可変減衰器R4の値に相当する。したがって、400度移相する場合、コントローラC1は、可変抵抗値R1の値を可変抵抗値R3の値よりも小さな値にしてI軸のプラス側になる値R11に設定し、可変抵抗値R2の値を可変抵抗値R4の値よりも小さな値にしてQ軸のプラス側になる値R12に設定し、値R11と値R12とのベクトル合成時における位相が400度になるようにそれぞれ値R11,R12を調整する。
【0038】
なお、上述した実施の形態1では、4つの可変抵抗値R1〜R4を用いているが、これに限らず、たとえば3つの可変抵抗値を用いてもよく、5つの可変抵抗値を用いてもよい。この場合、電力分配器1は、3つあるいは5つに電力分配することになる。さらに、遅延線によって与える位相の位相間隔は等しくてもよいし、異なっていてもよい。また、上述した実施の形態1に示したように、分配された高周波信号の一つをI軸と同じ位相を持たせることによって遅延線が不要となり、簡易な構成が実現できる。
【0039】
この実施の形態1では、電力分配された高周波信号を、90度毎に隣接する位相関係を持たせ、その後これらの高周波信号をそれぞれに調整して減衰させるようにしているので、可変抵抗値を調整するという簡易な構成でかつ迅速に所望の位相をもつ高周波信号を生成することができる。
【0040】
(実施の形態2)
つぎに、この発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、コントローラC1がすべての可変抵抗値R1〜R4を可変制御するようにしていたが、この実施の形態2では、実質的に最小限の可変抵抗値R1〜R4のみを可変制御するようにしている。
【0041】
図3は、この発明の実施の形態2である可変移相器の構成を示す図である。図3において、この可変移相器11は、電力分配器1の後段に4つのスイッチSW1〜SW4を設け、このスイッチSW1〜SW4によって、電力分配器1によって電力分配された4つの高周波信号が可変抵抗R1〜R4側に出力するスイッチングが行われる。コントローラC2は、各可変減衰器R1〜R4の抵抗値制御のほか、スイッチSW1〜SW4の切替制御を行う。その他の構成は図1に示した可変減衰器10と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0042】
図4は、コントローラC2の制御による可変移相制御を示す図である。図4に示すように、コントローラC2は、指示された位相に対応して最終的に合成される高周波信号が存在するI,Q軸の象限位置をもとに、4つの高周波信号のうち、2つの高周波信号のみを用いて減衰制御し、この減衰された2つの高周波信号を合成して所望の位相を有した高周波信号を出力するようにしている。
【0043】
たとえば、位相が400度のとき、最終的に合成される高周波信号は第1象限に存在することになる。このため、I軸のプラス側である可変減衰器R1とQ軸のプラス側である可変減衰器R2とを調整することなる。その結果、コントローラC2は、スイッチSW1,SW2をオンし、スイッチSW3,SW4をオフするスイッチング制御を行う。
【0044】
ここで、コントローラC2は、可変減衰器R1〜R4の値を決定する場合に、正弦波関数および余弦波関数を用いる。すなわち、可変減衰器R1,R3の値は、余弦波関数(cos関数)の値によって決定され、可変減衰器R2,R4の値は、正弦波関数(sin関数)の値によって決定される。たとえば、所望の位相が400度の場合、余弦波関数の値すなわちcos(400°)の値が可変減衰器R1に対する制御電圧として出力され、正弦波関数の値すなわちsin(400°)の値が可変減衰器R2に対する制御電圧として出力される。この場合、I軸のプラス、マイナス、あるいはQ軸のプラス、マイナスに関係なく、換言すればスイッチングに関わらず、正弦波関数の値は、可変減衰器R2,R4に対する制御電圧として出力し、余弦波関数の値は、可変減衰器R1,R3に対する制御電圧として出力する。
【0045】
なお、上述した実施の形態2では、コントローラC2がスイッチSW1〜SW4をスイッチング制御するようにしているが、実施の形態1と同様にスイッチSW1〜SW4を設けず、コントローラC2がスイッチSW1〜SW2のオフ制御に対応する各可変減衰器R1〜R4の抵抗値を最大、すなわち減衰量を最大にし、実質的に各可変減衰器R1〜R4上を流れる高周波信号をオフするようにしてもよい。
【0046】
この実施の形態2では、分配された4つの高周波信号の中から制御すべき2つの高周波信号をスイッチSW1〜SW4によって選択し、実質的に制御すべき可変減衰器R1〜R4を2つにしているとともに、可変減衰器R1〜R4の可変制御を正弦波関数および余弦波関数を用いて位相に対応する可変抵抗値を直接出力しているので、簡易な構成でかつ迅速な位相制御を行うことができる。
【0047】
(実施の形態3)
つぎに、この発明の実施の形態3について説明する。上述した実施の形態1,2では所望の位相をもった高周波信号を生成出力するようにしていたが、この実施の形態3では、この位相制御された高周波信号の振幅制御をも行うようにしている。
【0048】
図5は、この発明の実施の形態3である可変移相器の構成を示す図である。図5において、この可変移相器12は、図1に示した可変移相器10の構成に、電力調整用可変減衰器R5をさらに設けている。電力調整用可変減衰器R5は、電力合成器5の後段に設けられ、コントローラC3によって可変制御される。その他の構成は図1に示した構成と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0049】
コントローラC3は、実施の形態1と同様に可変減衰器R1〜R4の抵抗値を制御して所望の位相を有した高周波信号を電力合成器5から出力させ、さらにこの所望の位相を有した高周波信号S11に対して、電力調整用可変減衰器R5の減衰量を制御することによって、図6に示すように、所定の振幅値を有した高周波信号S12を生成して出力端子T3から出力させる。
【0050】
この実施の形態3では、位相の制御に引き続いて振幅値の制御をも行っているので、所望の振幅および位相となる高周波信号を迅速かつ簡易に得ることができる。なお、上述した実施の形態3では、実施の形態1に対応したものであったが、これに限らず、実施の形態2に対応させ、電力合成器5の後段に電力調整用可変減衰器R5を設ける構成にも適用できる。
【0051】
(実施の形態4)
つぎに、この発明の実施の形態4について説明する。この実施の形態4では、上述した可変減衰器R1〜R4および電力調整用可変減衰器R5を、それぞれ複数の可変減衰器を直列接続して構成するようにしている。
【0052】
図7は、この発明の実施の形態4である可変移相器の構成を示す図である。図7は、図5に示した可変移相器12の各可変減衰器R1〜R4および電力調整用可変減衰器R5を、それぞれn個の可変減衰器R1−1〜R1−n,R2−1〜R2−n,R3−1〜R3−n,R4−1〜R4−n,R5−1〜R5−nで構成し、各n個の可変減衰器は直列接続される。
【0053】
一般に、可変減衰器は、減衰量に応じて位相特性を有している。可変減衰器の位相特性は、図8に示すように減衰量に応じて位相が増大するが、小さい減衰量の場合における位相は小さな値である。たとえば、図8に示した可変減衰器では、減衰量が約10dBまでほぼ一定で3°程度の位相であるのに対し、減衰量が約10dBを越え、たとえば20dBの場合に位相が10°と大きくなる。この場合、20dBの減衰量を実現する場合、20dBの可変減衰器を用いると10°の位相をもった高周波信号が生成されてしまうが、10dBの2つの可変減衰器を直列接続して構成する場合、出力される高周波信号には6°の位相が生成されるのみである。
【0054】
したがって、図7に示すように各可変減衰器および電力調整用可変減衰器を、可変減衰領域における移相が小さな可変減衰器を直列に多段接続する構成に置き換える。たとえば、可変減衰器R1を、n個の可変減衰器R1−1〜R1−nに置き換える。これによって、減衰量に対応する移相を小さくすることができる。
【0055】
なお、上述した実施の形態4では、各可変減衰器および電力調整用可変減衰器が位相特性による位相誤差を少なくすることができるが、実際の制御に際し、この位相誤差を補正した位相制御を行うようにしてもよい。この位相制御は実施の形態4のみならず、実施の形態1〜4に適用することができる。たとえば、400°の位相を与える場合に可変減衰器の減衰量が20dB必要な場合、図8を参照すると10°の位相誤差が発生する。この場合、そのまま400°の位相制御を行うと実際には410°の位相制御を行ってしまうため、コントローラC1は、10°の位相誤差を減算し、390°の位相制御を行うようにする。この結果、実際には400°の位相制御がなされる。
【0056】
(実施の形態5)
つぎに、この発明の実施の形態5について説明する。実施の形態2においてコントローラC2が正弦波関数および余弦波関数を用いて可変減衰器R1〜R4の減衰量を制御するようにしていたが、この実施の形態5では、位相に対する正弦波の値および位相に対する余弦波の値を記憶させておき、位相に対する可変減衰器R1〜R4への制御量を瞬時に読み出して制御しようとするものである。
【0057】
図9は、この発明の実施の形態5である可変減衰器の構成を示す図である。図9において、この可変移相器14は、図3に示した可変減衰器11の構成に記憶部6を追加構成している。コントローラC5は、記憶部6に記憶されたデータをもとに可変減衰器R1〜R4の減衰量制御を行う。その他の構成は、図3に示した可変減衰器11の構成と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0058】
上述したように、記憶部6には、位相に対応する正弦波値および余弦波値を予め記憶され、コントローラC5は、指示された所望の位相に対応する正弦波値および余弦波値を記憶部6から読み出し、この読み出した値を用いて可変減衰器R1〜R4を制御する。これによって、所望の位相を有する高周波信号を瞬時に生成することができる。
【0059】
(実施の形態6)
つぎに、この発明の実施の形態6について説明する。上述した実施の形態1〜5では、基本的に遅延線2〜4を介した高周波信号S1〜S4の位相の間隔が90°であることを前提とし、2つの高周波信号あるいは4つの高周波信号の位相制御を行うようにしていたが、この実施の形態6では、3つの高周波信号に分配し、このうちの2以上の高周波信号の位相制御をしようとするものである。
【0060】
図10は、この発明の実施の形態6である可変位相器の構成を示す回路図である。図10において、この可変位相器20は、上述したように3つの高周波信号S21〜S23を生成し、2以上の高周波信号S21〜S23の位相を制御し、最終的に合成された高周波信号S25の位相を制御する。すなわち、電力分配器21は、入力端子T1から入力された高周波信号を3つに電力分配し、この電力分配した高周波信号S21〜S23として出力する。さらに、3分配された高周波信号S21〜S23のうち、高周波信号S21は直接に、高周波信号S22,S23は、それぞれ遅延線22,23を介し、高周波信号S22a,S23aとして、それぞれ可変減衰器R1〜R3に出力される。可変減衰器R1〜R3は、コントローラC20によって抵抗が制御され、振幅制御された各高周波信号は、合波器5によって合成され、所望の位相角を有した高周波信号S25として出力端子T2から出力される。ここで、遅延線22,23は、高周波信号S22,S23をそれぞれ(1/3)・λ,(2/3)・λ遅延し、それぞれ−120°,−240°移相する。
【0061】
図11は、高周波信号S21,S22a,S23aに対する位相制御を説明するベクトル図である。コントローラC20は、所望位相θを有した高周波信号S25を得るために、それぞれ
可変減衰器R1 : cos(0°−θ)+1
可変減衰器R2 : cos(120°−θ)+1
可変減衰器R3 : cos(240°−θ)+1
によって演算された値を制御電圧として各可変減衰器R1〜R3に対して出力する。なお、図11では、所望位相θ=−30°の場合を示している。また、図11では、遅延線22,23を介した各高周波信号S21,S22a,S23aの信号ペクトルの長さを「1」で規格化するために、「1/2」の係数を乗算している。
【0062】
図11に示すように、高周波信号S21,S22a,S23aに対応する信号ベクトルA1〜A3はそれぞれ、コントローラC20によって、
1/2{cos(0°−(−30°))+1}=0.933013
1/2{cos(120°−(−30°))+1}=0.5
1/2{cos(240°−(−30°))+1}=0.066987
の長さに制御される。その結果、高周波信号S25に対応する信号ベクトルAは、各信号ベクトルA1〜A3の合成によって、所望位相θ=−30°に制御され、長さ(振幅)は0.75となる。
【0063】
図8に示したように、一般に可変減衰器は、減衰量に対して位相特性を持ち、減衰量が大きくなると位相が大きく変わるが、この実施の形態6では、可変減衰器R1〜R3の可変減衰量が10dB程度しか可変できない場合であっても、3軸すなわち3つの高周波信号S21,S22a,S23aのみを制御することよって、360°の全ての位相を得ることができる。
【0064】
ところで、可変減衰器の減衰量が位相回転の少ない範囲、たとえば10dBの減衰量の範囲内で使用するという制限がある場合であって、所望位相θを挟む90°以内の2軸によって移相制御する場合では、たとえば、90°離れた2軸によって、360°の全ての位相を得ようとしても、軸近傍の位相すなわち軸に対して±6°の位相を得ることはできない(図12参照)。これは、一方の軸の減衰量が10dB以内と決まっているので、10dBよりも小さな長さを有した信号ベクトルを生成することができないからである。
【0065】
ここで、この実施の形態6に示した3軸制御を用いると、1つの軸の長さが10dBよりも小さな長さのベクトルとなるときであっても、残りの2軸を調整することによって、360°の全ての位相を得ることができる。
【0066】
図13は、この発明の実施の形態6の変形例である可変減衰器の動作を説明するベクトル図である。図13において、実施の形態6では、位相−240°の信号ベクトルA3の長さが0.066987であり、この減衰量は10dBを越えるため、10dBが最大減衰量である可変減衰器では、この信号ベクトルA3を生成することができない。しかし、この実施の形態6の変形例では、他の2軸の信号ベクトルの長さを調整することによって、最大減衰量が10dB以内の可変減衰器を用いても、所望位相θに移相することができる。
【0067】
すなわち、信号ベクトルA3の長さは、0.1(10dB)までしか短くすることができないため、−240°の信号ベクトルA3を、長さ0.1の信号ベクトルA3´に修正し、他の0°,−120°の信号ベクトルA1,A2に、信号ベクトルA3と信号ベクトルA3´との差分値ΔA3(=A3´−A3=0.033013)を加算した信号ベクトルA1´(=A1+ΔA3),A2´(=A2+ΔA3)に補正する。これによって、実施の形態6に示した所望位相θを有した信号ベクトルAを生成することができる。
【0068】
図14は、最大減衰量が10dBである可変減衰器を用いた場合において360°全範囲に対する所望位相θをもつ高周波信号を生成する各軸の減衰制御関係を示した図である。図14に示すように、この実施の形態6の変形例では、各軸(0°,―120°,―240°)の最大減衰量が10dB以内であっても、360°全ての所望位相をもった高周波信号を生成することができる。
【0069】
ここで、上述した実施の形態6の変形例では、各軸が最大減衰量10dBであったが、最大減衰量が3dB、すなわち信号ベクトルの長さが0.5以上の場合であっても容易に適用することができる。図15は、この発明の実施の形態6の第2変形例である可変減衰器の動作を示すベクトル図である。図15に示すように、所望位相θ=―30°で長さ0.3の信号ベクトルは、0.5以上の各軸の信号ベクトルB1〜B3を合成することによって生成することができる。また、所望位相θ=―180°で長さ0.3の信号ベクトルも、0.5以上の各軸の信号ベクトルC1〜C3を合成することによって生成することができる。
【0070】
この実施の形態6の第2変形例では、0.5以上の各軸の信号ベクトルを合成することによって、360°全ての所望位相を生成することができる(図16参照)。
【0071】
なお、上述した実施の形態6,実施の形態6の変形例および第2変形例では、いずれも各軸が0°,―120°,−240°であり、各軸間の角度が均等に120°であったが、各軸間の角度が均等でなくても、所望位相を得ることができる。図17は、0°の軸が20°に軸ずれした場合、すなわち各軸間の角度が、100°,140°,120°となった場合のベクトル図を示している。この場合、図17に示すように、制御できる範囲が円形でなく、楕円形状となってしまうが、360°全ての所望位相を得ることができることに変わりはない。また、合成される所望位相の信号ベクトルの長さを同じくするために、同心円を描こうとすると、軸ずれがない場合に比して小さな円の範囲となるが、この小さくなった分は、この可変位相器の通過損失としてみなせばよい。
【0072】
また、上述した実施の形態3〜5に示した構成も、上述した実施の形態6,実施の形態6の変形例および第2変形例に適用することができる。なお、振幅調整は、上述した同心円で示したように、各軸の合成時において調整するようにしてもよい。
【0073】
(実施の形態7)
つぎに、この発明の実施の形態7について説明する。この実施の形態7では、上述した実施の形態1〜6に示した可変移相器を、無線中継装置に適用するものである。
【0074】
一般に、移動体通信システムなどでは、基地局と移動局との間に、山岳地域や、平野部であってもビル内あるいはトンネル内などの比較的に電波の届きにくい場所が発生し、この場合、無線中継装置が用いられる。このほか、無線中継装置は、無線ゾーンのエリア拡大のためにも用いられる。
【0075】
この無線中継装置には、符号分割多元接続方式や符号分割多重方式を用い、受信した信号をそのまま、すなわち高周波信号のまま中継するRFリピータ装置がある。このRFリピータ装置は、高周波信号のまま中継するために、コスト的に有利な装置である。
【0076】
図18は、不感地帯をカバーする無線中継装置が用いられた移動通信システムの概要構成を示す図である。図18において、基地局100と移動局101とは、移動局101が不感地帯103に位置するため、直接通信を行うことができない。無線中継装置200は、基地局100と移動局101との間の通信を中継する。無線中継装置200は、基地局100からの下り信号fDをアンテナ201aで受信し、この下り信号fDを増幅してアンテナ201bから移動局101に送信する。一方、移動局101からの上り信号fUは、アンテナ201bで受信し、この上り信号fUを増幅してアンテナ201aから基地局100に送信する。
【0077】
ここで、RFリピータ装置としての無線中継装置200は、同一周波数の高周波信号をそのまま増幅し輻射するため、アンテナ201a,201b間のアイソレーションがリピータ利得よりも高く取るように設置される。しかし、送受信アンテナ間を十分離隔できないなど、RFリピータ装置の設置制約上から、送受信アンテナ間のアイソレーションが十分とれない場合が発生し、送受信アンテナ間の回り込み信号によって伝送品質が劣化し、あるいはアンテナ間のアイソレーションに比してリピータ利得が高い場合、発振してしまうという不具合が発生する。
【0078】
このため、無線中継装置200は、図19に示すように、回り込み信号Sa,Sbを抑圧する干渉抑圧回路220が設けられる。図19は、無線中継装置200の詳細構成を示すブロック図である。図19において、この無線中継装置200は、RFリピータ装置であり、基地局100からの下り受信信号は、アンテナ201aで受信され、サーキュレータ202aを介し、下り主線系信号SDとして方向性結合器203aに入力される。方向性結合器203aは、後述する干渉抑圧信号である下り抑圧系信号SDXと合成され、下り主線系信号SD内の回り込み信号Sa成分をキャンセルする。
【0079】
下り主線系信号SDは、その後、低雑音増幅器204aに入力されて増幅され、方向性結合器205aを介して遅延器206aに入力される。遅延器206aは1チップ以上、例えば800MHz帯の広帯域符号分割多元接続方式において750nsec以上の遅延を与える。さらに、下り主線系信号SDは、電力増幅器207aによって電力増幅され、方向性結合器208aを介して下り主線系信号SDの一部を下り抑圧系信号SDXとして分岐する。下り主線系信号SDは、サーキュレータ202bを介してアンテナ201bから下り主線系信号SDを放射し、その一部が回り込み信号Saとしてアンテナ201aに回り込む。
【0080】
方向性結合器208aから分岐された下り抑圧系信号SDXは、方向性結合器209aを介して遅延器210aに入力され、回り込み信号Saと下り抑圧系信号SDXの遅延差に相当する遅延量が付加される。その後、下り抑圧系信号SDXは、可変の移相器211aおよび可変の減衰器212aに入力される。ここで、方向性結合器205aから下り主線系信号SDの一部および方向性結合器209aから下り抑圧系信号SDXの一部がデジタル信号処理部C2aに入力される。デジタル信号処理部C2aは、下り抑圧系信号SDXが、回り込み信号Saと同振幅かつ逆位相とするべく、移相器211aの位相および減衰器212aの減衰量とを可変調整する。これによって、回り込み信号Saをキャンセルする下り抑圧系信号SDXが生成され、方向性結合器203aに出力され、回り込み信号Saの干渉抑圧が実行される。なお、アンテナ201bから受信される上り主線系信号SUについても上り抑圧系信号SUXが生成され、この上り抑圧系信号SUXによる干渉抑圧が実行される。
【0081】
ここで、上述した移相器211a、移相器211aと減衰器212aとの組み合わせ、移相器211b、移相器211bと減衰器212bとの組み合わせの各構成に、上述した実施の形態1〜5に示した可変移相器が適用される。
【0082】
実施の形態1〜6に示した可変移相器を無線中継装置に適用することによって、簡易な構成で、大きな位相の高速処理が可能となる。
【0083】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、電力分配器が、入力された高周波信号を複数の高周波信号に電力分配して出力し、複数の遅延器が、前記電力分配器によって分配された複数の高周波信号にそれぞれ異なる遅延を付与し、該複数の遅延器の後段にそれぞれ接続された複数の可変減衰器に対して、コントローラの制御のもとに、該複数の可変減衰器の後段の電力合成器によって電力合成出力される高周波信号の位相が、指示された位相となるように前記複数の可変減衰器の減衰量を制御するようにしているので、簡易な構成でかつ位相制御を高速に行うことができるという効果を奏する。
【0084】
また、請求項2の発明によれば、前記電力合成器から出力された高周波信号の振幅値を調整する電力調整用可変減衰器をさらに設け、前記コントローラが、前記電力調整用可変減衰器の減衰量をさらに制御するようにしているので、位相制御のみならず、振幅制御をも簡易な構成で実現することができるという効果を奏する。
【0085】
また、請求項3の発明によれば、前記複数の可変減衰器および前記電力調整用可変減衰器のそれぞれを、複数の部分可変減衰器を直列接続して構成し、減衰量が小さい領域では減衰に伴う高周波信号の移相が小さいという位相特性を用い、小さな減衰量の小さな移相の加算によって最終的に加算された移相が、一つの可変減衰器の大きな移相に比して小さくすることができるので、精度の高い位相制御を行うことができるという効果を奏する。
【0086】
また、請求項4の発明によれば、前記電力分配器が、少なくとも3つの高周波信号に分配し、前記複数の遅延器が、異なる遅延量が付与される少なくとも3つの遅延素子によって構成され、前記コントローラが、前記電力合成器による各高周波信号のベクトル合成後の位相が、指示された位相となるように前記複数の可変減衰器の減衰量を制御し、最低限の構成によって高周波信号の位相制御を高速に行うことができるという効果を奏する。
【0087】
また、請求項5の発明によれば、前記コントローラが、前記複数の可変減衰器のうち、2つ以上の可変減衰器の減衰量を制御し、2つの可変減衰器の減衰量の制御すなわち2つの位相軸の振幅値制御のみによっても、指示された位相が得られるようにしているので、簡易な構成によって高周波信号の位相制御を高速に行うことができるという効果を奏する。
【0088】
また、請求項6の発明によれば、前記電力分配器が、3つの高周波信号に分配し、前記複数の遅延器が、3つの高周波信号がそれぞれ形成する各位相軸間の角度が90度を超えるように位相調整し、前記コントローラが、ベクトル合成後の位相が指示された位相となるように、3つの高周波信号に対応する各可変減衰器の減衰量を制御するように、制御する位相軸の増大によって可変減衰器のダイナミックレンジを小さくし、可変減衰器自体による位相特性変化を最小限に抑えるようにしているので、簡易な構成で、高周波信号の位相制御を精度高く行うことができるという効果を奏する。
【0089】
また、請求項7の発明によれば、前記電力分配器が、4つの高周波信号に分配し、前記複数の遅延器が、4つの高周波信号のうち、2つの高周波信号が形成する各位相軸間の角度が180度未満となるように位相調整し、前記コントローラが、ベクトル合成後の位相が指示された位相となるように、4つの高周波信号に対応する各可変減衰器の減衰量を制御するようにし、制御する位相軸の増大によって可変減衰器のダイナミックレンジを一層小さくし、可変減衰器自体による位相特性変化を最小限に抑えるようにしているので、簡易な構成で、高周波信号の位相制御を一層精度高く行うことができるという効果を奏する。
【0090】
また、請求項8の発明によれば、前記電力分配器によって分配された高周波信号の出力をスイッチングする複数のスイッチング素子をさらに設け、前記コントローラは、指示された位相が、前記複数の遅延器から出力された各高周波信号が示す位相に挟まれる領域のいずれの領域であるかを判断し、該判断された領域を挟む2つの高周波信号のみをオンさせるスイッチングを行って前記複数の可変減衰器の減衰量制御を行うようにしているので、可変減衰器の制御に伴う負荷を軽減できるという効果を奏する。
【0091】
また、請求項9の発明によれば、前記コントローラは、指示された位相が、前記複数の遅延器から出力された各高周波信号が示す位相に挟まれる領域のいずれの領域であるかを判断し、該判断された領域を挟む2つの高周波信号以外の高周波信号が流れる前記複数の遅延器の減衰量を最大にし、該2つの高周波信号以外の高周波信号をオフするスイッチングを行って前記複数の可変減衰器の減衰量制御を行うようにしているので、可変減衰器がスイッチング素子の機能を兼ねるため、簡易な構成によって可変減衰器の制御に伴う負荷を軽減できるという効果を奏する。
【0092】
また、請求項10の発明によれば、前記複数の遅延器は、各遅延器の隣接間位相が90度である互いに直交した4つの遅延素子であり、該4つの遅延素子のうち、1つの遅延素子は遅延量が零であり、前記コントローラは、前記複数の可変減衰器の値を、所望の位相の正弦値および余弦値にそれぞれ対応した値を用いて前記複数の可変減衰器の減衰量制御を行うようにし、簡易な構成で実現され、かつ360°を越える位相であっても高速に位相制御を行うことができるという効果を奏する。
【0093】
また、請求項11の発明によれば、格納手段が、位相に対する正弦値および余弦値の値を予め格納しておき、前記コントローラが、指示された位相に対応する前記正弦値および前記余弦値を読み出し、この読み出した前記正弦値および前記余弦値を用いて前記複数の可変減衰器の減衰量制御を行うようにしているので、さらに位相制御を高速に行うことができるという効果を奏する。
【0094】
また、請求項12の発明によれば、前記コントローラが、前記複数の可変減衰器および/または前記電力調整用可変減衰器が有する位相特性に対応した位相誤差を補正した位相を算出し、この算出した位相を用いて前記複数の可変減衰器および/または前記電力調整用可変減衰器の減衰量制御を行うようにしているので、精度の高い減衰量制御を行うことができるという効果を奏する。
【0095】
また、請求項13の発明によれば、請求項1〜12に記載の可変移相器を、回り込み信号をキャンセルする干渉波抑圧信号の生成に用いるようにしているので、干渉波抑圧信号の生成を簡易かつ高速に行うことができ、回り込み信号の移相が高速に変化する信号であっても、干渉抑圧を行うことができる無線中継装置を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1である可変移相器の構成を示す図である。
【図2】図1に示したコントローラによる可変減衰器の制御を示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態2である可変移相器の構成を示す図である。
【図4】図3に示したコントローラによる可変減衰器の制御を示す説明図である。
【図5】この発明の実施の形態3である可変移相器の構成を示す図である。
【図6】図5に示したコントローラによる電力調整用可変減衰器の制御を示す説明図である。
【図7】この発明の実施の形態4である可変移相器の構成を示す図である。
【図8】図7に示した可変移相器に用いられる直列接続された可変減衰器の移相特性を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態5である可変移相器の構成を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態6である可変移相器の構成を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態6である可変移相器の動作を示すベクトル図である。
【図12】360°全ての所望位相の生成が困難な場合を含む所望角度と各軸の減衰量との関係を示す図である。
【図13】この発明の実施の形態6の変形例である可変移相器の動作を示すベクトル図である。
【図14】10dB以内の減衰量で360°全ての所望位相の生成を実現する所望角度と各軸の減衰量との関係を示す図である。
【図15】この発明の実施の形態6の第2変形例である可変移相器の動作を示すベクトル図である。
【図16】3dB以内の減衰量で360°全ての所望位相の生成を実現する所望角度と各軸の減衰量との関係を示す図である。
【図17】各軸間の角度が均等でない場合における信号ベクトルの合成を示すベクトル図である。
【図18】この発明の実施の形態1〜6が適用される無線中継装置の概要構成を示す図である。
【図19】図18に示した無線中継装置の詳細構成を示す図である。
【符号の説明】
1,21 電力分配器
2,3,4,22,23 遅延線
5 電力合成器
6 記憶部
S1〜S4,S21〜S23,S22a,S23a,S25 高周波信号
R1〜R4 可変減衰器
R5 電力調整用可変減衰器
C1〜C4,C20 コントローラ
SW1〜SW4 スイッチ
100 基地局
101 移動局
200 無線中継装置
211a,211b 移相器
212a,212b 減衰器
【発明の属する技術分野】
この発明は、通信装置、レーダ装置、各種高周波測定装置などの高周波信号を取り扱い、この高周波信号の位相の制御、さらには振幅の制御をも可能とする可変移相器およびこれを用いた無線中継装置に関し、特に干渉波抑圧機能が搭載された無線中継装置の干渉抑圧信号生成部に好適な可変移相器およびこれを用いた無線中継装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、高周波信号の位相を直接的に変化させる方式には、この高周波信号が伝搬する線路の物理的な長さを変えることによって位相を変化させる方式があり、たとえばトロンボーン型移相器が知られている。また、短時間に高周波信号の位相を変化させる方式としては、PINダイオードや可変容量ダイオードなどの半導体素子を用いた移相器がある。この半導体素子を用いた移相器は、ダイオードのバイアス電圧やバイアス電流を急速に変化させ、ダイオードのインピーダンスの変化を利用して位相を変化させるものであるが、具体的には、ローデッドライン型移相器が知られている。なお、大きな位相を得る場合には、上述した二つの方式、すなわち物理的な線路長を変化させる方式と半導体素子を用いた方式とを組み合わせて構成するハイブリッド型移相器が用いられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したトロンボーン型移相器などの物理的な線路長を変える方式では、可変位相範囲が物理長で限定されるため、任意の位相点から連続して360度以上の位相に変化させることが困難であるという問題点があった。さらに、この方式では、物理的な線路長を変えるので、位相変化に時間がかかり、高速な位相変化を必要とする装置あるいはシステムに用いることができないという問題点があった。
【0004】
また、上述したローデッドライン型移相器などの半導体素子を用いる方式では、ダイオードなどの半導体回路の構成上、大きな位相を得ようとすると帯域幅が狭くなり、実用上、45度以下の移相に限られて用いられるという問題点があった。
【0005】
さらに、上述したハイブリッド型移相器では、大きな位相を得ることができるものの、回路が複雑になるという問題点があった。
【0006】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、簡易な構成で、360°を越える大きな位相を高速に得ることができる可変移相器およびこれを用いた無線中継装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1にかかる可変移相器は、入力された高周波信号を複数の高周波信号に電力分配して出力する電力分配器と、前記電力分配器によって分配された複数の高周波信号にそれぞれ異なる遅延を付与する複数の遅延器と、各遅延器から出力された各高周波信号の振幅値を可変に減衰する複数の可変減衰器と、前記複数の可変減衰器から出力された複数の高周波信号を電力合成して出力する電力合成器と、前記電力合成器から出力される高周波信号の位相が、指示された位相となるように前記複数の可変減衰器の減衰量を制御するコントローラとを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項1の発明によれば、電力分配器が、入力された高周波信号を複数の高周波信号に電力分配して出力し、複数の遅延器が、前記電力分配器によって分配された複数の高周波信号にそれぞれ異なる遅延を付与し、該複数の遅延器の後段にそれぞれ接続された複数の可変減衰器に対して、コントローラの制御のもとに、該複数の可変減衰器の後段の電力合成器によって電力合成出力される高周波信号の位相が、指示された位相となるように前記複数の可変減衰器の減衰量を制御するようにしている。
【0009】
また、請求項2にかかる可変移相器は、上記の発明において、前記電力合成器から出力された高周波信号の振幅値を調整する電力調整用可変減衰器をさらに備え、前記コントローラは、前記電力調整用可変減衰器の減衰量を制御することを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明によれば、前記電力合成器から出力された高周波信号の振幅値を調整する電力調整用可変減衰器をさらに設け、前記コントローラが、前記電力調整用可変減衰器の減衰量をさらに制御するようにしている。
【0011】
また、請求項3にかかる可変移相器は、上記の発明において、前記複数の可変減衰器および前記電力調整用可変減衰器のそれぞれは、複数の部分可変減衰器を直列接続して形成されることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明によれば、前記複数の可変減衰器および前記電力調整用可変減衰器のそれぞれを、複数の部分可変減衰器を直列接続して構成し、減衰量が小さい領域では減衰に伴う高周波信号の移相が小さいという位相特性を用い、小さな減衰量の小さな移相の加算によって最終的に加算された移相が、一つの可変減衰器の大きな移相に比して小さくすることができる。
【0013】
また、請求項4にかかる可変移相器は、上記の発明において、前記電力分配器は、少なくとも3つの高周波信号に分配し、前記複数の遅延器は、異なる遅延量が付与される少なくとも3つの遅延素子を有し、前記コントローラは、前記電力合成器による各高周波信号のベクトル合成後の位相が、指示された位相となるように前記複数の可変減衰器の減衰量を制御することを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明によれば、前記電力分配器が、少なくとも3つの高周波信号に分配し、前記複数の遅延器が、異なる遅延量が付与される少なくとも3つの遅延素子によって構成され、前記コントローラが、前記電力合成器による各高周波信号のベクトル合成後の位相が、指示された位相となるように前記複数の可変減衰器の減衰量を制御し、最低限の構成によって高周波信号の位相制御を高速に行うことができる。
【0015】
また、請求項5にかかる可変移相器は、上記の発明において、前記コントローラは、前記複数の可変減衰器のうち、2つ以上の可変減衰器の減衰量を制御することを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明によれば、前記コントローラが、前記複数の可変減衰器のうち、2つ以上の可変減衰器の減衰量を制御し、2つの可変減衰器の減衰量の制御すなわち2つの位相軸の振幅値制御のみによっても、指示された位相が得られるようにしている。
【0017】
また、請求項6にかかる可変移相器は、上記の発明において、前記電力分配器は、3つの高周波信号に分配し、前記複数の遅延器は、3つの高周波信号がそれぞれ形成する各位相軸間の角度が90度を超えるように位相調整され、前記コントローラは、ベクトル合成後の位相が指示された位相となるように、3つの高周波信号に対応する各可変減衰器の減衰量を制御することを特徴とする。
【0018】
請求項6の発明によれば、前記電力分配器が、3つの高周波信号に分配し、前記複数の遅延器が、3つの高周波信号がそれぞれ形成する各位相軸間の角度が90度を超えるように位相調整し、前記コントローラが、ベクトル合成後の位相が指示された位相となるように、3つの高周波信号に対応する各可変減衰器の減衰量を制御するように、制御する位相軸の増大によって可変減衰器のダイナミックレンジを小さくし、可変減衰器自体による位相特性変化を最小限に抑えるようにしている。
【0019】
また、請求項7にかかる可変移相器は、上記の発明において、前記電力分配器は、4つの高周波信号に分配し、前記複数の遅延器は、4つの高周波信号のうち、2つの高周波信号が形成する各位相軸間の角度が180度未満となるように位相調整され、前記コントローラは、ベクトル合成後の位相が指示された位相となるように、4つの高周波信号に対応する各可変減衰器の減衰量を制御することを特徴とする。
【0020】
請求項7の発明によれば、前記電力分配器が、4つの高周波信号に分配し、前記複数の遅延器が、4つの高周波信号のうち、2つの高周波信号が形成する各位相軸間の角度が180度未満となるように位相調整し、前記コントローラが、ベクトル合成後の位相が指示された位相となるように、4つの高周波信号に対応する各可変減衰器の減衰量を制御するようにし、制御する位相軸の増大によって可変減衰器のダイナミックレンジを一層小さくし、可変減衰器自体による位相特性変化を最小限に抑えるようにしている。
【0021】
また、請求項8にかかる可変移相器は、上記の発明において、前記電力分配器によって分配された高周波信号の出力をスイッチングする複数のスイッチング素子をさらに備え、前記コントローラは、指示された位相が、前記複数の遅延器から出力された各高周波信号が示す位相に挟まれる領域のいずれの領域であるかを判断し、該判断された領域を挟む2つの高周波信号のみをオンさせるスイッチングを行って前記複数の可変減衰器の減衰量制御を行うことを特徴とする。
【0022】
請求項8の発明によれば、前記電力分配器によって分配された高周波信号の出力をスイッチングする複数のスイッチング素子をさらに設け、前記コントローラは、指示された位相が、前記複数の遅延器から出力された各高周波信号が示す位相に挟まれる領域のいずれの領域であるかを判断し、該判断された領域を挟む2つの高周波信号のみをオンさせるスイッチングを行って前記複数の可変減衰器の減衰量制御を行うようにしているので、可変減衰器の制御に伴う負荷を軽減できる。
【0023】
また、請求項9にかかる可変移相器は、上記の発明において、前記コントローラは、指示された位相が、前記複数の遅延器から出力された各高周波信号が示す位相に挟まれる領域のいずれの領域であるかを判断し、該判断された領域を挟む2つの高周波信号以外の高周波信号が流れる前記複数の遅延器の減衰量を最大にし、該2つの高周波信号以外の高周波信号をオフするスイッチングを行って前記複数の可変減衰器の減衰量制御を行うことを特徴とする。
【0024】
請求項9の発明によれば、前記コントローラは、指示された位相が、前記複数の遅延器から出力された各高周波信号が示す位相に挟まれる領域のいずれの領域であるかを判断し、該判断された領域を挟む2つの高周波信号以外の高周波信号が流れる前記複数の遅延器の減衰量を最大にし、該2つの高周波信号以外の高周波信号をオフするスイッチングを行って前記複数の可変減衰器の減衰量制御を行うようにしているので、可変減衰器がスイッチング素子の機能を兼ねるため、簡易な構成によって可変減衰器の制御に伴う負荷を軽減できる。
【0025】
また、請求項10にかかる可変移相器は、上記の発明において、前記複数の遅延器は、各遅延器の隣接間位相が90度である互いに直交した4つの遅延素子であり、該4つの遅延素子のうち、1つの遅延素子は遅延量が零であり、前記コントローラは、前記複数の可変減衰器の値を、所望の位相の正弦値および余弦値にそれぞれ対応した値を用いて前記複数の可変減衰器の減衰量制御を行うことを特徴とする。
【0026】
請求項10の発明によれば、前記複数の遅延器は、各遅延器の隣接間位相が90度である互いに直交した4つの遅延素子であり、該4つの遅延素子のうち、1つの遅延素子は遅延量が零であり、前記コントローラは、前記複数の可変減衰器の値を、所望の位相の正弦値および余弦値にそれぞれ対応した値を用いて前記複数の可変減衰器の減衰量制御を行うようにし、簡易な構成で実現され、かつ360度を越える位相であっても高速に位相制御を行うことができる。
【0027】
また、請求項11にかかる可変移相器は、上記の発明において、位相に対する正弦値および余弦値の値を格納する格納手段をさらに備え、前記コントローラは、指示された位相に対応する前記正弦値および前記余弦値を読み出し、この読み出した前記正弦値および前記余弦値を用いて前記複数の可変減衰器の減衰量制御を行うことを特徴とする。
【0028】
請求項11の発明によれば、格納手段が、位相に対する正弦値および余弦値の値を予め格納しておき、前記コントローラが、指示された位相に対応する前記正弦値および前記余弦値を読み出し、この読み出した前記正弦値および前記余弦値を用いて前記複数の可変減衰器の減衰量制御を行うようにしているので、さらに位相制御を高速に行うことができる。
【0029】
また、請求項12にかかる可変移相器は、上記の発明において、前記コントローラは、前記複数の可変減衰器および/または前記電力調整用可変減衰器が有する位相特性に対応した位相誤差を補正した位相を算出し、この算出した位相を用いて前記複数の可変減衰器および/または前記電力調整用可変減衰器の減衰量制御を行うことを特徴とする。
【0030】
請求項12の発明によれば、前記コントローラが、前記複数の可変減衰器および/または前記電力調整用可変減衰器が有する位相特性に対応した位相誤差を補正した位相を算出し、この算出した位相を用いて前記複数の可変減衰器および/または前記電力調整用可変減衰器の減衰量制御を行うようにしているので、精度の高い減衰量制御を行うことができる。
【0031】
また、請求項13にかかる無線中継装置は、請求項1〜12に記載の可変移相器を、回り込み信号をキャンセルする干渉波抑圧信号の生成に用いることを特徴とする。
【0032】
請求項13の発明によれば、請求項1〜12に記載の可変移相器を、回り込み信号をキャンセルする干渉波抑圧信号の生成に用いるようにしているので、干渉波抑圧信号の生成を簡易かつ高速に行うことができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる可変移相器およびこれを用いた無線中継装置について説明する。
【0034】
(実施の形態1)
まず、この発明の実施の形態1について説明する。図1は、この発明の実施の形態1である可変移相器の構成を示す回路図である。図1において、この可変移相器10は、電力分配器1を有し、電力分配器1は、入力端子T1から入力された高周波信号を4つに電力分配し、この電力分配した高周波信号S1〜S4として出力する。さらに、この4分配された高周波信号S1〜S4に対応した4つの可変減衰器R1〜R4を有し、高周波信号S1は、そのまま可変減衰器R1に入力される。電力分配器1と各可変減衰器R2〜R4との間には遅延線2〜4がそれぞれ設けられ、各遅延線2〜4は、それぞれ高周波信号S2〜S4を遅延して各可変減衰器R2〜R4に出力する。
【0035】
遅延線2は、高周波信号の波長を「λ」とすると、高周波信号S2をλ/4分遅延し、遅延線3は、高周波信号S3をλ/2分遅延し、遅延線4は、高周波信号S4を(3/4)λ分遅延する。すなわち、各遅延線2〜4は、同位相の高周波信号S2〜S4をそれぞれ90度、180度、270度移相している。ここで、電力分配器1と可変減衰器R1との間は直接接続されるため、遅延が生じないが、遅延線2〜4との関係で言えば、高周波信号S2〜S4と同位相の高周波信号S1を0度移相していることになる。換言すれば、各高周波信号S1〜S4は、90度単位で移相されることになる。そして、可変減衰器R1,R3に入力される高周波信号と可変減衰器R2,R4に入力される高周波信号とは、直交関係にある。
【0036】
コントローラC1は、各可変減衰器R1〜R4の抵抗値を可変制御する。電力合成器5は、各可変減衰器R1〜R4から出力された高周波信号を電力合成し、出力端子T2から、所望の位相をもつ高周波信号として出力する。
【0037】
ここで、図2を参照して、コントローラC1による可変減衰器R1〜R4に対する可変制御について説明する。図2では、入力端子T1から入力された高周波信号を400度移相する場合を示している。I軸のプラス側は可変減衰器R1の値に相当し、I軸のマイナス側は可変減衰器R3の値に相当し、Q軸のプラス側は可変減衰器R2の値に相当し、Q軸のマイナス側は可変減衰器R4の値に相当する。したがって、400度移相する場合、コントローラC1は、可変抵抗値R1の値を可変抵抗値R3の値よりも小さな値にしてI軸のプラス側になる値R11に設定し、可変抵抗値R2の値を可変抵抗値R4の値よりも小さな値にしてQ軸のプラス側になる値R12に設定し、値R11と値R12とのベクトル合成時における位相が400度になるようにそれぞれ値R11,R12を調整する。
【0038】
なお、上述した実施の形態1では、4つの可変抵抗値R1〜R4を用いているが、これに限らず、たとえば3つの可変抵抗値を用いてもよく、5つの可変抵抗値を用いてもよい。この場合、電力分配器1は、3つあるいは5つに電力分配することになる。さらに、遅延線によって与える位相の位相間隔は等しくてもよいし、異なっていてもよい。また、上述した実施の形態1に示したように、分配された高周波信号の一つをI軸と同じ位相を持たせることによって遅延線が不要となり、簡易な構成が実現できる。
【0039】
この実施の形態1では、電力分配された高周波信号を、90度毎に隣接する位相関係を持たせ、その後これらの高周波信号をそれぞれに調整して減衰させるようにしているので、可変抵抗値を調整するという簡易な構成でかつ迅速に所望の位相をもつ高周波信号を生成することができる。
【0040】
(実施の形態2)
つぎに、この発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、コントローラC1がすべての可変抵抗値R1〜R4を可変制御するようにしていたが、この実施の形態2では、実質的に最小限の可変抵抗値R1〜R4のみを可変制御するようにしている。
【0041】
図3は、この発明の実施の形態2である可変移相器の構成を示す図である。図3において、この可変移相器11は、電力分配器1の後段に4つのスイッチSW1〜SW4を設け、このスイッチSW1〜SW4によって、電力分配器1によって電力分配された4つの高周波信号が可変抵抗R1〜R4側に出力するスイッチングが行われる。コントローラC2は、各可変減衰器R1〜R4の抵抗値制御のほか、スイッチSW1〜SW4の切替制御を行う。その他の構成は図1に示した可変減衰器10と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0042】
図4は、コントローラC2の制御による可変移相制御を示す図である。図4に示すように、コントローラC2は、指示された位相に対応して最終的に合成される高周波信号が存在するI,Q軸の象限位置をもとに、4つの高周波信号のうち、2つの高周波信号のみを用いて減衰制御し、この減衰された2つの高周波信号を合成して所望の位相を有した高周波信号を出力するようにしている。
【0043】
たとえば、位相が400度のとき、最終的に合成される高周波信号は第1象限に存在することになる。このため、I軸のプラス側である可変減衰器R1とQ軸のプラス側である可変減衰器R2とを調整することなる。その結果、コントローラC2は、スイッチSW1,SW2をオンし、スイッチSW3,SW4をオフするスイッチング制御を行う。
【0044】
ここで、コントローラC2は、可変減衰器R1〜R4の値を決定する場合に、正弦波関数および余弦波関数を用いる。すなわち、可変減衰器R1,R3の値は、余弦波関数(cos関数)の値によって決定され、可変減衰器R2,R4の値は、正弦波関数(sin関数)の値によって決定される。たとえば、所望の位相が400度の場合、余弦波関数の値すなわちcos(400°)の値が可変減衰器R1に対する制御電圧として出力され、正弦波関数の値すなわちsin(400°)の値が可変減衰器R2に対する制御電圧として出力される。この場合、I軸のプラス、マイナス、あるいはQ軸のプラス、マイナスに関係なく、換言すればスイッチングに関わらず、正弦波関数の値は、可変減衰器R2,R4に対する制御電圧として出力し、余弦波関数の値は、可変減衰器R1,R3に対する制御電圧として出力する。
【0045】
なお、上述した実施の形態2では、コントローラC2がスイッチSW1〜SW4をスイッチング制御するようにしているが、実施の形態1と同様にスイッチSW1〜SW4を設けず、コントローラC2がスイッチSW1〜SW2のオフ制御に対応する各可変減衰器R1〜R4の抵抗値を最大、すなわち減衰量を最大にし、実質的に各可変減衰器R1〜R4上を流れる高周波信号をオフするようにしてもよい。
【0046】
この実施の形態2では、分配された4つの高周波信号の中から制御すべき2つの高周波信号をスイッチSW1〜SW4によって選択し、実質的に制御すべき可変減衰器R1〜R4を2つにしているとともに、可変減衰器R1〜R4の可変制御を正弦波関数および余弦波関数を用いて位相に対応する可変抵抗値を直接出力しているので、簡易な構成でかつ迅速な位相制御を行うことができる。
【0047】
(実施の形態3)
つぎに、この発明の実施の形態3について説明する。上述した実施の形態1,2では所望の位相をもった高周波信号を生成出力するようにしていたが、この実施の形態3では、この位相制御された高周波信号の振幅制御をも行うようにしている。
【0048】
図5は、この発明の実施の形態3である可変移相器の構成を示す図である。図5において、この可変移相器12は、図1に示した可変移相器10の構成に、電力調整用可変減衰器R5をさらに設けている。電力調整用可変減衰器R5は、電力合成器5の後段に設けられ、コントローラC3によって可変制御される。その他の構成は図1に示した構成と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0049】
コントローラC3は、実施の形態1と同様に可変減衰器R1〜R4の抵抗値を制御して所望の位相を有した高周波信号を電力合成器5から出力させ、さらにこの所望の位相を有した高周波信号S11に対して、電力調整用可変減衰器R5の減衰量を制御することによって、図6に示すように、所定の振幅値を有した高周波信号S12を生成して出力端子T3から出力させる。
【0050】
この実施の形態3では、位相の制御に引き続いて振幅値の制御をも行っているので、所望の振幅および位相となる高周波信号を迅速かつ簡易に得ることができる。なお、上述した実施の形態3では、実施の形態1に対応したものであったが、これに限らず、実施の形態2に対応させ、電力合成器5の後段に電力調整用可変減衰器R5を設ける構成にも適用できる。
【0051】
(実施の形態4)
つぎに、この発明の実施の形態4について説明する。この実施の形態4では、上述した可変減衰器R1〜R4および電力調整用可変減衰器R5を、それぞれ複数の可変減衰器を直列接続して構成するようにしている。
【0052】
図7は、この発明の実施の形態4である可変移相器の構成を示す図である。図7は、図5に示した可変移相器12の各可変減衰器R1〜R4および電力調整用可変減衰器R5を、それぞれn個の可変減衰器R1−1〜R1−n,R2−1〜R2−n,R3−1〜R3−n,R4−1〜R4−n,R5−1〜R5−nで構成し、各n個の可変減衰器は直列接続される。
【0053】
一般に、可変減衰器は、減衰量に応じて位相特性を有している。可変減衰器の位相特性は、図8に示すように減衰量に応じて位相が増大するが、小さい減衰量の場合における位相は小さな値である。たとえば、図8に示した可変減衰器では、減衰量が約10dBまでほぼ一定で3°程度の位相であるのに対し、減衰量が約10dBを越え、たとえば20dBの場合に位相が10°と大きくなる。この場合、20dBの減衰量を実現する場合、20dBの可変減衰器を用いると10°の位相をもった高周波信号が生成されてしまうが、10dBの2つの可変減衰器を直列接続して構成する場合、出力される高周波信号には6°の位相が生成されるのみである。
【0054】
したがって、図7に示すように各可変減衰器および電力調整用可変減衰器を、可変減衰領域における移相が小さな可変減衰器を直列に多段接続する構成に置き換える。たとえば、可変減衰器R1を、n個の可変減衰器R1−1〜R1−nに置き換える。これによって、減衰量に対応する移相を小さくすることができる。
【0055】
なお、上述した実施の形態4では、各可変減衰器および電力調整用可変減衰器が位相特性による位相誤差を少なくすることができるが、実際の制御に際し、この位相誤差を補正した位相制御を行うようにしてもよい。この位相制御は実施の形態4のみならず、実施の形態1〜4に適用することができる。たとえば、400°の位相を与える場合に可変減衰器の減衰量が20dB必要な場合、図8を参照すると10°の位相誤差が発生する。この場合、そのまま400°の位相制御を行うと実際には410°の位相制御を行ってしまうため、コントローラC1は、10°の位相誤差を減算し、390°の位相制御を行うようにする。この結果、実際には400°の位相制御がなされる。
【0056】
(実施の形態5)
つぎに、この発明の実施の形態5について説明する。実施の形態2においてコントローラC2が正弦波関数および余弦波関数を用いて可変減衰器R1〜R4の減衰量を制御するようにしていたが、この実施の形態5では、位相に対する正弦波の値および位相に対する余弦波の値を記憶させておき、位相に対する可変減衰器R1〜R4への制御量を瞬時に読み出して制御しようとするものである。
【0057】
図9は、この発明の実施の形態5である可変減衰器の構成を示す図である。図9において、この可変移相器14は、図3に示した可変減衰器11の構成に記憶部6を追加構成している。コントローラC5は、記憶部6に記憶されたデータをもとに可変減衰器R1〜R4の減衰量制御を行う。その他の構成は、図3に示した可変減衰器11の構成と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0058】
上述したように、記憶部6には、位相に対応する正弦波値および余弦波値を予め記憶され、コントローラC5は、指示された所望の位相に対応する正弦波値および余弦波値を記憶部6から読み出し、この読み出した値を用いて可変減衰器R1〜R4を制御する。これによって、所望の位相を有する高周波信号を瞬時に生成することができる。
【0059】
(実施の形態6)
つぎに、この発明の実施の形態6について説明する。上述した実施の形態1〜5では、基本的に遅延線2〜4を介した高周波信号S1〜S4の位相の間隔が90°であることを前提とし、2つの高周波信号あるいは4つの高周波信号の位相制御を行うようにしていたが、この実施の形態6では、3つの高周波信号に分配し、このうちの2以上の高周波信号の位相制御をしようとするものである。
【0060】
図10は、この発明の実施の形態6である可変位相器の構成を示す回路図である。図10において、この可変位相器20は、上述したように3つの高周波信号S21〜S23を生成し、2以上の高周波信号S21〜S23の位相を制御し、最終的に合成された高周波信号S25の位相を制御する。すなわち、電力分配器21は、入力端子T1から入力された高周波信号を3つに電力分配し、この電力分配した高周波信号S21〜S23として出力する。さらに、3分配された高周波信号S21〜S23のうち、高周波信号S21は直接に、高周波信号S22,S23は、それぞれ遅延線22,23を介し、高周波信号S22a,S23aとして、それぞれ可変減衰器R1〜R3に出力される。可変減衰器R1〜R3は、コントローラC20によって抵抗が制御され、振幅制御された各高周波信号は、合波器5によって合成され、所望の位相角を有した高周波信号S25として出力端子T2から出力される。ここで、遅延線22,23は、高周波信号S22,S23をそれぞれ(1/3)・λ,(2/3)・λ遅延し、それぞれ−120°,−240°移相する。
【0061】
図11は、高周波信号S21,S22a,S23aに対する位相制御を説明するベクトル図である。コントローラC20は、所望位相θを有した高周波信号S25を得るために、それぞれ
可変減衰器R1 : cos(0°−θ)+1
可変減衰器R2 : cos(120°−θ)+1
可変減衰器R3 : cos(240°−θ)+1
によって演算された値を制御電圧として各可変減衰器R1〜R3に対して出力する。なお、図11では、所望位相θ=−30°の場合を示している。また、図11では、遅延線22,23を介した各高周波信号S21,S22a,S23aの信号ペクトルの長さを「1」で規格化するために、「1/2」の係数を乗算している。
【0062】
図11に示すように、高周波信号S21,S22a,S23aに対応する信号ベクトルA1〜A3はそれぞれ、コントローラC20によって、
1/2{cos(0°−(−30°))+1}=0.933013
1/2{cos(120°−(−30°))+1}=0.5
1/2{cos(240°−(−30°))+1}=0.066987
の長さに制御される。その結果、高周波信号S25に対応する信号ベクトルAは、各信号ベクトルA1〜A3の合成によって、所望位相θ=−30°に制御され、長さ(振幅)は0.75となる。
【0063】
図8に示したように、一般に可変減衰器は、減衰量に対して位相特性を持ち、減衰量が大きくなると位相が大きく変わるが、この実施の形態6では、可変減衰器R1〜R3の可変減衰量が10dB程度しか可変できない場合であっても、3軸すなわち3つの高周波信号S21,S22a,S23aのみを制御することよって、360°の全ての位相を得ることができる。
【0064】
ところで、可変減衰器の減衰量が位相回転の少ない範囲、たとえば10dBの減衰量の範囲内で使用するという制限がある場合であって、所望位相θを挟む90°以内の2軸によって移相制御する場合では、たとえば、90°離れた2軸によって、360°の全ての位相を得ようとしても、軸近傍の位相すなわち軸に対して±6°の位相を得ることはできない(図12参照)。これは、一方の軸の減衰量が10dB以内と決まっているので、10dBよりも小さな長さを有した信号ベクトルを生成することができないからである。
【0065】
ここで、この実施の形態6に示した3軸制御を用いると、1つの軸の長さが10dBよりも小さな長さのベクトルとなるときであっても、残りの2軸を調整することによって、360°の全ての位相を得ることができる。
【0066】
図13は、この発明の実施の形態6の変形例である可変減衰器の動作を説明するベクトル図である。図13において、実施の形態6では、位相−240°の信号ベクトルA3の長さが0.066987であり、この減衰量は10dBを越えるため、10dBが最大減衰量である可変減衰器では、この信号ベクトルA3を生成することができない。しかし、この実施の形態6の変形例では、他の2軸の信号ベクトルの長さを調整することによって、最大減衰量が10dB以内の可変減衰器を用いても、所望位相θに移相することができる。
【0067】
すなわち、信号ベクトルA3の長さは、0.1(10dB)までしか短くすることができないため、−240°の信号ベクトルA3を、長さ0.1の信号ベクトルA3´に修正し、他の0°,−120°の信号ベクトルA1,A2に、信号ベクトルA3と信号ベクトルA3´との差分値ΔA3(=A3´−A3=0.033013)を加算した信号ベクトルA1´(=A1+ΔA3),A2´(=A2+ΔA3)に補正する。これによって、実施の形態6に示した所望位相θを有した信号ベクトルAを生成することができる。
【0068】
図14は、最大減衰量が10dBである可変減衰器を用いた場合において360°全範囲に対する所望位相θをもつ高周波信号を生成する各軸の減衰制御関係を示した図である。図14に示すように、この実施の形態6の変形例では、各軸(0°,―120°,―240°)の最大減衰量が10dB以内であっても、360°全ての所望位相をもった高周波信号を生成することができる。
【0069】
ここで、上述した実施の形態6の変形例では、各軸が最大減衰量10dBであったが、最大減衰量が3dB、すなわち信号ベクトルの長さが0.5以上の場合であっても容易に適用することができる。図15は、この発明の実施の形態6の第2変形例である可変減衰器の動作を示すベクトル図である。図15に示すように、所望位相θ=―30°で長さ0.3の信号ベクトルは、0.5以上の各軸の信号ベクトルB1〜B3を合成することによって生成することができる。また、所望位相θ=―180°で長さ0.3の信号ベクトルも、0.5以上の各軸の信号ベクトルC1〜C3を合成することによって生成することができる。
【0070】
この実施の形態6の第2変形例では、0.5以上の各軸の信号ベクトルを合成することによって、360°全ての所望位相を生成することができる(図16参照)。
【0071】
なお、上述した実施の形態6,実施の形態6の変形例および第2変形例では、いずれも各軸が0°,―120°,−240°であり、各軸間の角度が均等に120°であったが、各軸間の角度が均等でなくても、所望位相を得ることができる。図17は、0°の軸が20°に軸ずれした場合、すなわち各軸間の角度が、100°,140°,120°となった場合のベクトル図を示している。この場合、図17に示すように、制御できる範囲が円形でなく、楕円形状となってしまうが、360°全ての所望位相を得ることができることに変わりはない。また、合成される所望位相の信号ベクトルの長さを同じくするために、同心円を描こうとすると、軸ずれがない場合に比して小さな円の範囲となるが、この小さくなった分は、この可変位相器の通過損失としてみなせばよい。
【0072】
また、上述した実施の形態3〜5に示した構成も、上述した実施の形態6,実施の形態6の変形例および第2変形例に適用することができる。なお、振幅調整は、上述した同心円で示したように、各軸の合成時において調整するようにしてもよい。
【0073】
(実施の形態7)
つぎに、この発明の実施の形態7について説明する。この実施の形態7では、上述した実施の形態1〜6に示した可変移相器を、無線中継装置に適用するものである。
【0074】
一般に、移動体通信システムなどでは、基地局と移動局との間に、山岳地域や、平野部であってもビル内あるいはトンネル内などの比較的に電波の届きにくい場所が発生し、この場合、無線中継装置が用いられる。このほか、無線中継装置は、無線ゾーンのエリア拡大のためにも用いられる。
【0075】
この無線中継装置には、符号分割多元接続方式や符号分割多重方式を用い、受信した信号をそのまま、すなわち高周波信号のまま中継するRFリピータ装置がある。このRFリピータ装置は、高周波信号のまま中継するために、コスト的に有利な装置である。
【0076】
図18は、不感地帯をカバーする無線中継装置が用いられた移動通信システムの概要構成を示す図である。図18において、基地局100と移動局101とは、移動局101が不感地帯103に位置するため、直接通信を行うことができない。無線中継装置200は、基地局100と移動局101との間の通信を中継する。無線中継装置200は、基地局100からの下り信号fDをアンテナ201aで受信し、この下り信号fDを増幅してアンテナ201bから移動局101に送信する。一方、移動局101からの上り信号fUは、アンテナ201bで受信し、この上り信号fUを増幅してアンテナ201aから基地局100に送信する。
【0077】
ここで、RFリピータ装置としての無線中継装置200は、同一周波数の高周波信号をそのまま増幅し輻射するため、アンテナ201a,201b間のアイソレーションがリピータ利得よりも高く取るように設置される。しかし、送受信アンテナ間を十分離隔できないなど、RFリピータ装置の設置制約上から、送受信アンテナ間のアイソレーションが十分とれない場合が発生し、送受信アンテナ間の回り込み信号によって伝送品質が劣化し、あるいはアンテナ間のアイソレーションに比してリピータ利得が高い場合、発振してしまうという不具合が発生する。
【0078】
このため、無線中継装置200は、図19に示すように、回り込み信号Sa,Sbを抑圧する干渉抑圧回路220が設けられる。図19は、無線中継装置200の詳細構成を示すブロック図である。図19において、この無線中継装置200は、RFリピータ装置であり、基地局100からの下り受信信号は、アンテナ201aで受信され、サーキュレータ202aを介し、下り主線系信号SDとして方向性結合器203aに入力される。方向性結合器203aは、後述する干渉抑圧信号である下り抑圧系信号SDXと合成され、下り主線系信号SD内の回り込み信号Sa成分をキャンセルする。
【0079】
下り主線系信号SDは、その後、低雑音増幅器204aに入力されて増幅され、方向性結合器205aを介して遅延器206aに入力される。遅延器206aは1チップ以上、例えば800MHz帯の広帯域符号分割多元接続方式において750nsec以上の遅延を与える。さらに、下り主線系信号SDは、電力増幅器207aによって電力増幅され、方向性結合器208aを介して下り主線系信号SDの一部を下り抑圧系信号SDXとして分岐する。下り主線系信号SDは、サーキュレータ202bを介してアンテナ201bから下り主線系信号SDを放射し、その一部が回り込み信号Saとしてアンテナ201aに回り込む。
【0080】
方向性結合器208aから分岐された下り抑圧系信号SDXは、方向性結合器209aを介して遅延器210aに入力され、回り込み信号Saと下り抑圧系信号SDXの遅延差に相当する遅延量が付加される。その後、下り抑圧系信号SDXは、可変の移相器211aおよび可変の減衰器212aに入力される。ここで、方向性結合器205aから下り主線系信号SDの一部および方向性結合器209aから下り抑圧系信号SDXの一部がデジタル信号処理部C2aに入力される。デジタル信号処理部C2aは、下り抑圧系信号SDXが、回り込み信号Saと同振幅かつ逆位相とするべく、移相器211aの位相および減衰器212aの減衰量とを可変調整する。これによって、回り込み信号Saをキャンセルする下り抑圧系信号SDXが生成され、方向性結合器203aに出力され、回り込み信号Saの干渉抑圧が実行される。なお、アンテナ201bから受信される上り主線系信号SUについても上り抑圧系信号SUXが生成され、この上り抑圧系信号SUXによる干渉抑圧が実行される。
【0081】
ここで、上述した移相器211a、移相器211aと減衰器212aとの組み合わせ、移相器211b、移相器211bと減衰器212bとの組み合わせの各構成に、上述した実施の形態1〜5に示した可変移相器が適用される。
【0082】
実施の形態1〜6に示した可変移相器を無線中継装置に適用することによって、簡易な構成で、大きな位相の高速処理が可能となる。
【0083】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、電力分配器が、入力された高周波信号を複数の高周波信号に電力分配して出力し、複数の遅延器が、前記電力分配器によって分配された複数の高周波信号にそれぞれ異なる遅延を付与し、該複数の遅延器の後段にそれぞれ接続された複数の可変減衰器に対して、コントローラの制御のもとに、該複数の可変減衰器の後段の電力合成器によって電力合成出力される高周波信号の位相が、指示された位相となるように前記複数の可変減衰器の減衰量を制御するようにしているので、簡易な構成でかつ位相制御を高速に行うことができるという効果を奏する。
【0084】
また、請求項2の発明によれば、前記電力合成器から出力された高周波信号の振幅値を調整する電力調整用可変減衰器をさらに設け、前記コントローラが、前記電力調整用可変減衰器の減衰量をさらに制御するようにしているので、位相制御のみならず、振幅制御をも簡易な構成で実現することができるという効果を奏する。
【0085】
また、請求項3の発明によれば、前記複数の可変減衰器および前記電力調整用可変減衰器のそれぞれを、複数の部分可変減衰器を直列接続して構成し、減衰量が小さい領域では減衰に伴う高周波信号の移相が小さいという位相特性を用い、小さな減衰量の小さな移相の加算によって最終的に加算された移相が、一つの可変減衰器の大きな移相に比して小さくすることができるので、精度の高い位相制御を行うことができるという効果を奏する。
【0086】
また、請求項4の発明によれば、前記電力分配器が、少なくとも3つの高周波信号に分配し、前記複数の遅延器が、異なる遅延量が付与される少なくとも3つの遅延素子によって構成され、前記コントローラが、前記電力合成器による各高周波信号のベクトル合成後の位相が、指示された位相となるように前記複数の可変減衰器の減衰量を制御し、最低限の構成によって高周波信号の位相制御を高速に行うことができるという効果を奏する。
【0087】
また、請求項5の発明によれば、前記コントローラが、前記複数の可変減衰器のうち、2つ以上の可変減衰器の減衰量を制御し、2つの可変減衰器の減衰量の制御すなわち2つの位相軸の振幅値制御のみによっても、指示された位相が得られるようにしているので、簡易な構成によって高周波信号の位相制御を高速に行うことができるという効果を奏する。
【0088】
また、請求項6の発明によれば、前記電力分配器が、3つの高周波信号に分配し、前記複数の遅延器が、3つの高周波信号がそれぞれ形成する各位相軸間の角度が90度を超えるように位相調整し、前記コントローラが、ベクトル合成後の位相が指示された位相となるように、3つの高周波信号に対応する各可変減衰器の減衰量を制御するように、制御する位相軸の増大によって可変減衰器のダイナミックレンジを小さくし、可変減衰器自体による位相特性変化を最小限に抑えるようにしているので、簡易な構成で、高周波信号の位相制御を精度高く行うことができるという効果を奏する。
【0089】
また、請求項7の発明によれば、前記電力分配器が、4つの高周波信号に分配し、前記複数の遅延器が、4つの高周波信号のうち、2つの高周波信号が形成する各位相軸間の角度が180度未満となるように位相調整し、前記コントローラが、ベクトル合成後の位相が指示された位相となるように、4つの高周波信号に対応する各可変減衰器の減衰量を制御するようにし、制御する位相軸の増大によって可変減衰器のダイナミックレンジを一層小さくし、可変減衰器自体による位相特性変化を最小限に抑えるようにしているので、簡易な構成で、高周波信号の位相制御を一層精度高く行うことができるという効果を奏する。
【0090】
また、請求項8の発明によれば、前記電力分配器によって分配された高周波信号の出力をスイッチングする複数のスイッチング素子をさらに設け、前記コントローラは、指示された位相が、前記複数の遅延器から出力された各高周波信号が示す位相に挟まれる領域のいずれの領域であるかを判断し、該判断された領域を挟む2つの高周波信号のみをオンさせるスイッチングを行って前記複数の可変減衰器の減衰量制御を行うようにしているので、可変減衰器の制御に伴う負荷を軽減できるという効果を奏する。
【0091】
また、請求項9の発明によれば、前記コントローラは、指示された位相が、前記複数の遅延器から出力された各高周波信号が示す位相に挟まれる領域のいずれの領域であるかを判断し、該判断された領域を挟む2つの高周波信号以外の高周波信号が流れる前記複数の遅延器の減衰量を最大にし、該2つの高周波信号以外の高周波信号をオフするスイッチングを行って前記複数の可変減衰器の減衰量制御を行うようにしているので、可変減衰器がスイッチング素子の機能を兼ねるため、簡易な構成によって可変減衰器の制御に伴う負荷を軽減できるという効果を奏する。
【0092】
また、請求項10の発明によれば、前記複数の遅延器は、各遅延器の隣接間位相が90度である互いに直交した4つの遅延素子であり、該4つの遅延素子のうち、1つの遅延素子は遅延量が零であり、前記コントローラは、前記複数の可変減衰器の値を、所望の位相の正弦値および余弦値にそれぞれ対応した値を用いて前記複数の可変減衰器の減衰量制御を行うようにし、簡易な構成で実現され、かつ360°を越える位相であっても高速に位相制御を行うことができるという効果を奏する。
【0093】
また、請求項11の発明によれば、格納手段が、位相に対する正弦値および余弦値の値を予め格納しておき、前記コントローラが、指示された位相に対応する前記正弦値および前記余弦値を読み出し、この読み出した前記正弦値および前記余弦値を用いて前記複数の可変減衰器の減衰量制御を行うようにしているので、さらに位相制御を高速に行うことができるという効果を奏する。
【0094】
また、請求項12の発明によれば、前記コントローラが、前記複数の可変減衰器および/または前記電力調整用可変減衰器が有する位相特性に対応した位相誤差を補正した位相を算出し、この算出した位相を用いて前記複数の可変減衰器および/または前記電力調整用可変減衰器の減衰量制御を行うようにしているので、精度の高い減衰量制御を行うことができるという効果を奏する。
【0095】
また、請求項13の発明によれば、請求項1〜12に記載の可変移相器を、回り込み信号をキャンセルする干渉波抑圧信号の生成に用いるようにしているので、干渉波抑圧信号の生成を簡易かつ高速に行うことができ、回り込み信号の移相が高速に変化する信号であっても、干渉抑圧を行うことができる無線中継装置を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1である可変移相器の構成を示す図である。
【図2】図1に示したコントローラによる可変減衰器の制御を示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態2である可変移相器の構成を示す図である。
【図4】図3に示したコントローラによる可変減衰器の制御を示す説明図である。
【図5】この発明の実施の形態3である可変移相器の構成を示す図である。
【図6】図5に示したコントローラによる電力調整用可変減衰器の制御を示す説明図である。
【図7】この発明の実施の形態4である可変移相器の構成を示す図である。
【図8】図7に示した可変移相器に用いられる直列接続された可変減衰器の移相特性を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態5である可変移相器の構成を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態6である可変移相器の構成を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態6である可変移相器の動作を示すベクトル図である。
【図12】360°全ての所望位相の生成が困難な場合を含む所望角度と各軸の減衰量との関係を示す図である。
【図13】この発明の実施の形態6の変形例である可変移相器の動作を示すベクトル図である。
【図14】10dB以内の減衰量で360°全ての所望位相の生成を実現する所望角度と各軸の減衰量との関係を示す図である。
【図15】この発明の実施の形態6の第2変形例である可変移相器の動作を示すベクトル図である。
【図16】3dB以内の減衰量で360°全ての所望位相の生成を実現する所望角度と各軸の減衰量との関係を示す図である。
【図17】各軸間の角度が均等でない場合における信号ベクトルの合成を示すベクトル図である。
【図18】この発明の実施の形態1〜6が適用される無線中継装置の概要構成を示す図である。
【図19】図18に示した無線中継装置の詳細構成を示す図である。
【符号の説明】
1,21 電力分配器
2,3,4,22,23 遅延線
5 電力合成器
6 記憶部
S1〜S4,S21〜S23,S22a,S23a,S25 高周波信号
R1〜R4 可変減衰器
R5 電力調整用可変減衰器
C1〜C4,C20 コントローラ
SW1〜SW4 スイッチ
100 基地局
101 移動局
200 無線中継装置
211a,211b 移相器
212a,212b 減衰器
Claims (13)
- 入力された高周波信号を複数の高周波信号に電力分配して出力する電力分配器と、
前記電力分配器によって分配された複数の高周波信号にそれぞれ異なる遅延を付与する複数の遅延器と、
各遅延器から出力された各高周波信号の振幅値を可変に減衰する複数の可変減衰器と、
前記複数の可変減衰器から出力された複数の高周波信号を電力合成して出力する電力合成器と、
前記電力合成器から出力される高周波信号の位相が、指示された位相となるように前記複数の可変減衰器の減衰量を制御するコントローラと、
を備えたことを特徴とする可変移相器。 - 前記電力合成器から出力された高周波信号の振幅値を調整する電力調整用可変減衰器をさらに備え、
前記コントローラは、前記電力調整用可変減衰器の減衰量を制御することを特徴とする請求項1に記載の可変移相器。 - 前記複数の可変減衰器および前記電力調整用可変減衰器のそれぞれは、複数の部分可変減衰器を直列接続して形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の可変移相器。
- 前記電力分配器は、少なくとも3つの高周波信号に分配し、前記複数の遅延器は、異なる遅延量が付与される少なくとも3つの遅延素子を有し、
前記コントローラは、前記電力合成器による各高周波信号のベクトル合成後の位相が、指示された位相となるように前記複数の可変減衰器の減衰量を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の可変移相器。 - 前記コントローラは、前記複数の可変減衰器のうち、2つ以上の可変減衰器の減衰量を制御することを特徴とする請求項4に記載の可変移相器。
- 前記電力分配器は、3つの高周波信号に分配し、
前記複数の遅延器は、3つの高周波信号がそれぞれ形成する各位相軸間の角度が90度を超えるように位相調整され、
前記コントローラは、ベクトル合成後の位相が指示された位相となるように、3つの高周波信号に対応する各可変減衰器の減衰量を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の可変移相器。 - 前記電力分配器は、4つの高周波信号に分配し、
前記複数の遅延器は、4つの高周波信号のうち、2つの高周波信号が形成する各位相軸間の角度が180度未満となるように位相調整され、
前記コントローラは、ベクトル合成後の位相が指示された位相となるように、4つの高周波信号に対応する各可変減衰器の減衰量を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の可変移相器。 - 前記電力分配器によって分配された高周波信号の出力をスイッチングする複数のスイッチング素子をさらに備え、
前記コントローラは、指示された位相が、前記複数の遅延器から出力された各高周波信号が示す位相に挟まれる領域のいずれの領域であるかを判断し、該判断された領域を挟む2つの高周波信号のみをオンさせるスイッチングを行って前記複数の可変減衰器の減衰量制御を行うことを特徴とする請求項4に記載の可変移相器。 - 前記コントローラは、指示された位相が、前記複数の遅延器から出力された各高周波信号が示す位相に挟まれる領域のいずれの領域であるかを判断し、該判断された領域を挟む2つの高周波信号以外の高周波信号が流れる前記複数の遅延器の減衰量を最大にし、該2つの高周波信号以外の高周波信号をオフするスイッチングを行って前記複数の可変減衰器の減衰量制御を行うことを特徴とする請求項4に記載の可変移相器。
- 前記複数の遅延器は、各遅延器の隣接間位相が90度である互いに直交した4つの遅延素子であり、該4つの遅延素子のうち、1つの遅延素子は遅延量が零であり、
前記コントローラは、前記複数の可変減衰器の値を、所望の位相の正弦値および余弦値にそれぞれ対応した値を用いて前記複数の可変減衰器の減衰量制御を行うことを特徴とする請求項8または9に記載の可変移相器。 - 位相に対する正弦値および余弦値の値を格納する格納手段をさらに備え、
前記コントローラは、指示された位相に対応する前記正弦値および前記余弦値を読み出し、この読み出した前記正弦値および前記余弦値を用いて前記複数の可変減衰器の減衰量制御を行うことを特徴とする請求項10に記載の可変移相器。 - 前記コントローラは、前記複数の可変減衰器および/または前記電力調整用可変減衰器が有する位相特性に対応した位相誤差を補正した位相を算出し、この算出した位相を用いて前記複数の可変減衰器および/または前記電力調整用可変減衰器の減衰量制御を行うことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の可変移相器。
- 請求項1〜12に記載の可変移相器を、回り込み信号をキャンセルする干渉波抑圧信号の生成に用いることを特徴とする無線中継装置。
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Cited By (2)
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JP2008085971A (ja) * | 2006-09-25 | 2008-04-10 | Alor Micro Corp | 同相信号及び直交信号のセットの調整方法 |
WO2023112250A1 (ja) * | 2021-12-16 | 2023-06-22 | 日本電信電話株式会社 | 位相調整回路 |
-
2002
- 2002-08-29 JP JP2002251739A patent/JP2004096232A/ja active Pending
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