JP2004095777A - インダクタ素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】高周波で用いられるインダクタ素子のうち、特に低抵抗半導体基板を用いるLSI製造プロセスにおいて使用されるインダクタ素子のQ値は低く、高周波での回路機能を十分に引き出す事が困難となっていた。
【解決手段】
インダクタ素子のインダクタ10を構成する配線材の形状を、中空のスパイラル状とし、シールド20はインダクタ10の配線材と重なる部分のみに配置し、しかもシールド20のシールド部22の形状を、インダクタ10の巻き線方向に角度を付けて切り込みを入れた形状とする。また、配線材11および12、およびアンダーパス5を接続するビアを、たかだか3箇所で使用する。これにより、高周波におけるインダクタ素子のQ値を改善する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、高周波の信号を扱う、低雑音増幅器(LNA)、電圧制御発振器(VCO)および電力増幅器(PA)において、負荷あるいはインピーダンス整合素子として用いられるインダクタ素子に関するものであり、特にその性能の中核をなすQ値の改善に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のインダクタ素子としては、例えばIEEE Journal of Solid−State Circuits、vol.33, no.5, ページ743〜752、1998年5月(On−Chip Spiral Inductors with Patterned Ground Shields for Si−Based RF ICs)に記載されるように、シリコン等の低抵抗半導体基板上にLSIを構成する半導体プロセスにおいて、該低抵抗半導体基板上に誘電体膜を作成し、該誘電体膜中に配置され上記低抵抗半導体基板の表面より離れた所に位置する、第1の配線材を用いて構成されるスパイラル状のインダクタと、第2の配線材およびビアを用いて該スパイラル状のインダクタの入出力端子を構成し、上記誘電体膜中に配置され低抵抗半導体基板に近接する第3の配線層を用いて、上記インダクタと低抵抗半導体基板間に上記インダクタの占有する領域を遮断する形で、鋸歯状にパターン化された第1のシールド電極を含み、前記スパイラル状のインダクタを回路に接続し、前記第1のシールド電極を、例えばグラウンドあるいは電源などの固定電位に接続して、高周波においてインダクタ素子のQ値を改善する構造が知られている。
【0003】
更に、例えばIEEE Transactions on Electron Devices, vol.43, no.9, ページ1559〜1570, 1996年9月(Integrated RF and Microwave Components in BiCMOS Technology)に記載されるように、上記スパイラル状のインダクタの構成法として、上記誘電体膜中に配置された複数の配線層を用いて、それぞれの配線層において同一形状のスパイラル状のインダクタを作成し、該複数のスパイラル状のインダクタを多数のビア(スルーホール)により並列に接続して、合成されたスパイラル状のインダクタの直列抵抗を低減せしめる事で、高周波におけるインダクタ素子のQ値を改善する構造が知られている。
【0004】
この場合、例えば図3に示すように、シールド20は、インダクタ10と配線層は異なるものの、インダクタが占める領域と重なる部分を存在領域とし、電位が固定となる第1のバイアス電位に接続してなる接続部21と、インダクタの直下部で中心に向かって鋸歯状に張り出したシールド部22よりなる形状となっている。なおインダクタ素子とは、インダクタ10、シールド20、誘電体50および低抵抗性半導体基板30より構成される素子をいう。この場合、インダクタ素子に第2のバイアス電位に接続してなる背面電極40を含める事もある。
【0005】
また、例えば図3に示すように、インダクタ10は、第1層の配線材11と第2層の配線材12を共に中心まで巻いた同一形状のスパイラルとなし、該両配線材を複数のビア3により接続し、両端T1、T2より、例えば外部回路に接続する入出力端子IN1および、ビアと第3層の配線材5を通して外部回路に接続する入出力端子IN2を所有する構造となっている。
【0006】
一般に、シリコン等の低抵抗半導体基板30は誘電体の性質と共に、導電性の性質を併せ持つので、抵抗と容量の並列接続により等価的に表される。これは、低抵抗半導体基板に電流が流れるような場合には、電力が消費される事を意味するものである。
【0007】
図3の構造では、インダクタ10と低抵抗半導体基板30は近接しているので、上記インダクタ10より発生する電界および磁界が、上記低抵抗半導体基板30内に入り込み、低抵抗半導体基板30内に渦電流が発生する。この渦電流はインダクタ10より発生する磁界を弱める方向に流れ、また上述の理由から上記低抵抗半導体基板30での電力消費が発生し、インダクタ素子のQ値が低下する。
【0008】
インダクタ10と上記低抵抗半導体基板30との間にアルミニウム、ポリシリコン等の導電性材料を用い、これらをグラウンドなどの固定電位に接続してシールド20により静電シールドを施せば(これをグラウンドシールドと呼ぶ)、上記インダクタ10より発生する電界が基板内に浸透するのを防ぐ事ができるので、上記低抵抗半導体基板30内での渦電流の発生が抑制され、さらに電力消費による損失が小となる。
【0009】
ただし、シールド20は導電性材料で構成されているため、上記インダクタ10より発生する電界および磁界が交差すれば、上記シールド20自身に渦電流が発生してしまう。この場合、シリコン基板30内で生じる渦電流および損失は小となるが、新たにシールド20において渦電流および損失が発生してしまう事となる。
【0010】
そこで、特に上記電界および磁界の交差が密なシールド部22に鋸歯状の切り込みを設け、この切込みが上記インダクタ10の巻き線方向と垂直に交わる形となるようにして、グラウンドシールドのシールド部22に渦電流の閉じた通路が構成されないようにしている。これは、渦電流は配線材11および12の巻き線方向と平行に流れるが、この平行な通路を垂直な切込みで遮断する事になるからである。
【0011】
このように、図3の構造のシールド20を用いることにより、低抵抗半導体基板30へ浸透する電界を遮蔽すると共に、該シールド20自身に発生する渦電流を抑制して、低抵抗半導体基板30への影響を軽減する事が出来る。
【0012】
一方、LSI上に実現する上記インダクタ10は、一般に、アルミニウムを中心とする配線材にて構成される。更に該配線材の厚さが薄いため、一般に該配線材のシート抵抗は大きなものとなっている。このため上記インダクタ10の直列抵抗は大となり、Q値が低下してしまう。
【0013】
このQ値の低下を防ぐため、例えば図3に示すように、複数の配線層を用いて、例えば11および12の同一形状のスパイラル状のインダクタを構成し、該配線材11および12を、ビア3を多数用いて接続することにより、上記インダクタ10の直列抵抗を低減せしめることがなされている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
図3に示した、上記従来技術のインダクタ10は、インダクタ巻き線を中心部まで巻く構造である。なお図4には図3の構造を、低抵抗半導体基板の上部より見た、平面図として併せて示した。この場合中央部に近い部分では、互いに逆方向に電流が流れる巻き線が近接し、これらの巻き線が発生する磁界が互いに打ち消しあうので、この結果、インダクタ10のインダクタンス値が減少する。これはインダクタ10の実効配線長が小となった事と等価である。これに対し、実際の配線長すなわち直列抵抗成分は変わらないので、実効的にQ値は低下する。
【0015】
さらに、シールド20の電極取り出し口となる接続部21およびシールド部22と、上記インダクタ10との間には容量が存在する。加えて上記インダクタ10と低抵抗半導体基板30間、あるいは上記インダクタ10自身の巻き線間にも容量が存在する。これらの合成容量は、上記インダクタ10の持つインダクタンス成分との間で共振現象を起こすが、この時の共振周波数を自己共振周波数といっている。グラウンドシールドが存在し上記合成容量が大である場合には、グラウンドシールドが存在せず上記合成容量が小である場合に比し、上記自己共振周波数が低下するので、Q値のピークを示す周波数も低下して、該Q値の増加が見込めなくなる。
【0016】
またさらに、上記インダクタ10においては、複数の配線材、例えば配線材11および12を多数のビア3を用いて接続するので、ビアの数が増大する。ビアの増大は、上記インダクタ10の設計が複雑となる事を意味する。また、半導体プロセスの加工精度にも依存するが、一般に面積の小さいビアを多数設ける事は、形状の不均一化や断線を引き起こすので信頼性上好ましくない。また、ビア3の寸法を大きくして信頼性を向上させようとすると、スパイラル状の配線材11および12の配線幅を大とする必要があるが、この場合、上記インダクタ10とシリコン基板30あるいはシールド20のシールド部22との容量が増加し、自己共振周波数が低下するので、やはり上記Qの増加が見込めなくなる。
【0017】
そこで本発明の目的は、インダクタ10の持つインダクタンス値と共振現象を起こす上記合成容量の値を極力小とし、しかも低抵抗半導体基板内で発生する損失を低減する事の出来る静電シールドの形状および特性、およびインダクタの直列抵抗を低減する簡便な並列接続手法、Q値を極力低下させないインダクタの形状あるいは巻き方を、提供することにある。
【0018】
【問題を解決するための手段】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたものであり、低抵抗半導体基板上に誘電体層を設け、該誘電体層中に配線材をスパイラル状に敷設することで構成する、インダクタ素子の構造において、上記低抵抗半導体基板と、上記低抵抗半導体基板上に設けた誘電体層と、上記誘電体層中に設けられた、第1層から第n層までの任意の複数の配線材を用いて、該複数の配線材を同一形状でスパイラル状に敷設して構成したインダクタと、上記インダクタと上記低抵抗半導体基板との中間に位置する第(n+1)層の配線材を用い、該第(n+1)層の配線材を、上記インダクタが存在する領域と重なった部分にのみ配置し、更に上記インダクタでの電流の流れる方向に対し、角度を付けて切込みを入れた形状となし、上記第(n+1)層の配線材を電圧が固定となるバイアス電位に接続してなるシールドを備える。
【0019】
上記シールドを構成する上記第(n+1)層の配線材として、ポリシリコン層、又は基板の表面部分に形成される拡散層を用いる事が好ましい。
【0020】
上記インダクタは、第1層から第n層までの任意の複数の配線材を用いて、該任意の複数の配線材を、各々が同一形状でかつ中空形状を持ったスパイラル状として敷設し、互いをビアを用いて第1の端子および第2の端子のみで並列に接続し、該第1の端子および第2の端子より外部回路との接続をなすための、配線材あるいはビアを用いて配線を延長し、上記インダクタの第1と第2の入出力端子とする事も好ましい。
【0021】
また、低抵抗半導体基板上に前記インダクタ素子を備えた半導体素子を実現するのも好ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づき詳細に説明する。図1は、本発明実施例のインダクタ素子の構成を示す構造図である。
【0023】
シールド20はLSIプロセスで、例えば誘電体50(酸化膜)中に形成されるポリシリコン層あるいは、低抵抗半導体基板30の表面に形成される拡散層を用いて作成され、グラウンドシールドとして使用される。シールド20は、インダクタ10の中空部分を除いた、残りの配線材の存在する領域に重なる、該シールド20の配線材層の領域に形成され、例えばグラウンドあるいは電源などの外部固定電位に接続される接続部21と、インダクタ10の配線材の方向に角度を付けて切り込みを入れた、例えば櫛状に伸びるシールド部22よりなる。ただし、櫛状に伸びるシールド部22の存在する領域は、スパイラル状の配線材11、12の存在する領域に重なる部分に限られる。
【0024】
誘電体50(酸化膜)中に、低抵抗半導体基板30の表面から離れた所に位置するインダクタ10は、任意の複数の配線層を用いて、中心部分を中空となした、同一形状の複数の配線材11および12より構成される。この複数の配線材11および12は、インダクタ10の端子T1およびT2において、ビア3により並列に接続される。ただし、並列接続を成す接続点は、端子T1およびT2におけるビア以外には存在しない。インダクタの端子T1およびT2は、一方を入出力端子IN1の配線を通して外部回路に接続し,他方をビア、他の配線材のアンダーパス5や入出力端子IN2の配線を通してやはり外部回路に接続する。従って、2端子回路としてのインダクタ素子の入出力端子はIN1とIN2である。
【0025】
なお図1では、任意の複数の配線材として、配線材11および配線材12の2層を形成する例が示されているが、これは特に連続する2層に限定されるものではなく、例えば第1層と第3層を選択することも可能であるし、第1層、第2層および第3層の3層を用いる事も考えられる。インダクタ10の直列抵抗は、配線層の並列数に反比例するが、配線材とシールド20あるいは低抵抗半導体基板30と距離が小さい場合は、両者間の容量が増大するので、可能な限り、該距離を大とする方が良い。
【0026】
また図1の例では、スパイラルの形状が矩形となっているが、該形状は矩形のみでなく他の形状も考えられる。矩形状のスパイラルでは四隅で電流密度に不均一性が現れ、損失が増大するので、多角形あるいは円形の形状が望ましいが、レイアウトに手間がかかること、インダクタンス値の計算が煩雑になる、などの欠点も存在する。
【0027】
図1の構造で、基板30は低抵抗半導体基板であり、背面には電極40が構成され、例えばグラウンドあるいは電源などの外部固定電位に接続される。いわゆるグラウンドプレーンである。高周波を取り扱うLSIなどの回路に於いては、該グラウンドプレーンの使用が一般的となる。
【0028】
インダクタ10とシールド20の形状、相対的な位置関係を、低抵抗半導体基板30の上部より見た形の平面図を図2により示す。配線材11および12は同一形状が望ましく、平面図では重なっている。配線材11および12は端子T1、T2においてビア3により並列接続され、入出力端子IN1より、あるいはアンダーパス5を通して入出力端子IN2より外部回路へと導かれる。この場合、図2に示されるビア3はたかだか3箇所であるから、その寸法を大きくとっても、インダクタ10全体の配線幅を増加させる必要はなく、上述のビアを多数とった場合に配線幅を大としなければならない場合に比して、低抵抗半導体基板30との間の容量を小とできる。したがって、インダクタ10の特性を劣化させる事なく、ビアの信頼性を向上させる事が可能である。ビアの有無はLSI上で、顕微鏡を使って確認出来る。ビアが存在する場合、ビアの輪郭が配線材と重なって見えるからである。インダクタ10の配線材の存在する領域に重なって作成され、櫛状の形を成すシールド部22は、例えばグラウンドあるいは電源などの外部固定電位に接続される接続部21、と共にシールド20を構成している。
【0029】
次に本例の動作について説明する。
図1のインダクタ10に高周波交流信号を加えると、インダクタ10の周囲に電磁界が発生する。この電磁界の一部は低抵抗半導体基板30に浸透し、低抵抗半導体基板30の抵抗が低い場合には渦電流を発生させる。この渦電流は抵抗体である低抵抗半導体基板30に流れるので、低抵抗半導体基板30における電力消費が発生する。また渦電流はインダクタ10の磁界を弱める方向に発生するので、インダクタ10のインダクタンス値が減少し、特性が劣化する。特に高周波回路では、インダクタ素子や容量の持つQ値が重要なパラメータとして評価される。Q値が大であると、インダクタ素子や容量の内部での高周波電力損失が小さく、高周波特性に優れた素子として扱われるが、上記渦電流が発生した場合には、Q値が低下する。
【0030】
この場合、従来技術の図3に示されるように、インダクタ10のスパイラル状に巻いた巻き線を中心部分まで巻くのではなく、中心部分を中空とした、図1の構造による方が、同一のインダクタンス値で考えた場合、Q値が高くなる。中央部に近い部分では、互いに逆方向に電流が流れる巻き線が近接し、これらの巻き線が発生する磁界が互いに打ち消しあうので、インダクタンス値が減少する。従って従来の構成を用いて、本発明と同一インダクタンス値のインダクタ素子を構成するには、図3の従来構造のインダクタ10の実効配線長を、図1の本発明の構造のインダクタ10の実効配線長よりも大となす必要がある。このことは直列抵抗成分の増加、あるいはシールド20あるいは低抵抗半導体基板30との間の容量の増加を意味し、従って従来の構成では、図3の構造のインダクタ素子のQ値は低下する。ただし、本発明の構造によれば、従来の構造に比し、インダクタ10の占有面積は増加するA B C D。
【0031】
約7nHという同一値を持つスパイラル状のインダクタ素子において、本発明のように巻き線の中心部を中空にした構造と、従来のように中心部まで巻いた構造とで、Q値の周波数特性を、電磁界シミュレータ(HFSS)によりシミュレーションし比較した結果を図5に示す。信号周波数は2[GHz]とした。ただし配線材は単層で、シールドも存在しない。
【0032】
ここで、中心部を中空にした構造の、本発明のインダクタ素子の一構成例としては、図1におけるインダクタ10の構造を持ち、巻き数は3.5回、その平面寸法は300×300[μm]、配線幅[10μm]、配線間距離5[μm]としている。また、中心部まで巻いた従来構造のインダクタ素子の一構成例としては、図3におけるインダクタ10の構造を持ち、巻き数は7.75回、その平面寸法は240×240[μm]、配線幅[10μm]、配線間距離[5μm]としている。いずれも0.35μmCMOS LSI プロセスの第4層目の配線材を配線材11に適用することを想定した。配線材11より低抵抗半導体基板30の表面までの距離は、5.3[μm]である。配線材12はアンダーパス5に当てた。また、配線材11のシート抵抗は30[mΩ/□]であり、配線材12のシート抵抗は50[mΩ/□]である。なお低抵抗半導体基板30はシリコン基板を想定し、その厚さは500[μm]で、抵抗率ρは、10[Ω・cm]とした。
【0033】
図5より、スパイラル状の巻き線の中心部を中空にした構造のインダクタ素子のQ値は、0.1〜5GHzの全周波数範囲において、中心部まで巻いた構造のインダクタ素子のQ値より大きい事がわかる。以上より、Q値の大きいインダクタ素子を得たいような場合には、占有面積は増大するものの、スパイラル状の巻き線の中心部を中空にした構造のインダクタが適すると言える。
【0034】
さらに図1に示すように、シールド20を、上記スパイラル状の巻き線の中心部を中空にした構造のインダクタ10と低抵抗半導体基板30との間に設置し、インダクタ10に高周波交流信号を加え、シールド20をグラウンドに接続してグラウンドシールドと成すと、電界が該シールドに終端されるので、低抵抗半導体基板内部に浸透する電界は減少する。一方、磁界はそれ程変化しないが、低抵抗半導体基板の表面付近で再分布が生じる為、渦電流の発生する領域での強度は低下する。このため渦電流の発生は減少し、Q値が上昇すると共に、低抵抗半導体基板内部での損失も低減される。
【0035】
ただし、インダクタ10と低抵抗半導体基板30との間にはもともと容量が存在している。グラウンド電位となるシールド20を中間に挿入すると、インダクタ10とシールド20の距離は短いので、大きな容量が付加されることになる。この容量は、インダクタ10のインダクタンスと並列に接続されるので、高周波信号をこのインダクタ10に印加したような場合には、ある周波数で共振を起こす。この周波数をインダクタ素子の自己共振周波数と呼ぶ。自己共振周波数において、インダクタ素子のQ値は零となり、これより高い周波数では、もはやインダクタ素子としては使えない。上記大きな容量が付加されると、上記自己共振周波数が低下するので、インダクタ素子として使用できる周波数範囲が狭くなり、また結果としてQ値も低下する。
【0036】
したがって、シールド20の効果は、電界を終端させる事でインダクタ素子のQ値を増大させるが、インダクタ10に並列に容量を付加することになるので上記インダクタ素子の自己共振周波数が低下し、Q値を減少させる、と言える。
【0037】
以上より、シールド20を用いてインダクタ素子のQ値を増大するには、シールド20による容量の増大を最小にする必要がある事がわかる。この場合、巻き線の内側を中空にした構造がQ値が高いと考えられるので、インダクタ10より発生する電磁界がこの中空部分に集中していなければ、この部分のシールドを取り去る事が可能となる。
【0038】
図6および図7は、図1の構造において、シールド20を取り除き、また、インダクタ10のスパイラル状の巻き線を配線材11のみで構成し、アンダーパスとして配線材5に代えて配線材12で構成する、単層のインダクタ10において、シリコン基板表面より背面電極方向に、インダクタ10による電界強度および磁界強度がどのように分布しているかを、2つの場所で、電磁界シミュレータ(HFSS)によりシミュレーションした結果である。信号周波数は2[GHz]である。分布を観測した場所は、インダクタ10で、スパイラル状の配線の存在する部分、の直下の低抵抗半導体基板内と、スパイラル状の配線の存在しない中空の中央部分、の直下の低抵抗半導体基板内である。なおこの場合、配線材の幅、配線材の抵抗率などの諸条件は、上記図5の中心部を中空にした構造のインダクタ素子と同一としてある。
【0039】
図6、図7の結果より、電界、磁界とも低抵抗半導体基板の内部に行くにしたがってその強度は低下するが、低抵抗半導体基板表面より約100[μm]の深さ辺りまで、その影響力が残っている事がわかる。また、スパイラル状の配線の存在する直下の部分に比較して、スパイラル状の配線の存在しないインダクタ10の中央部分の直下では、電界、磁界とも弱まっており、特に電界強度については1/5以下となっていることも判る。
【0040】
以上は、スパイラル状の配線の存在しないインダクタ10の中央部分においては、電界を遮蔽する静電シールドを設ける必要がない、という事を物語っている。これより、シールド20の形状として、スパイラル状の配線の存在しないインダクタ10の中央部分にシールドの存在しない図2の形状を用いた。ただし、シールド20に渦電流が発生すると更に大きな損失が発生する。渦電流はスパイラル状の配線に沿って発生するので、シールド20にスパイラル状の配線と垂直に切込みを入れ、櫛状のシールド部22となし、渦電流の発生を防いでいる。
【0041】
一方、シールド20での損失は、低抵抗半導体基板の場合と同様の議論より、その材料の抵抗率にも依存する。図8は、図1の構造で、シールド20をCMOS LSI プロセスにおける、ゲートポリシリコンの厚さおよび位置に想定し、ポリシリコンの抵抗率を変えてQ値のピーク値の変化をシミュレーションしたものである。ただしインダクタ10としては、図5で用いた中空形のものと同一のものを使用した。シールド20として最適な材料は、CMOS LSI プロセスにおけるゲートポリシリコンと同一の厚さおよび位置であれば、10[Ω]前後のシート抵抗を有するものである、と言える。ゲートポリシリコンはこの条件に合致するので、最適なシールド材の1つであると言える。また、シリコンなどの低抵抗半導体基板の表面部分に形成される拡散層のシート抵抗も概略10[Ω]前後であり、やはり最適なシールド材の1つと言える。なお、拡散層の方がゲートポリシリコン層より、インダクタ10から遠い距離にあり、したがって容量が小となる。
【0042】
LSIプロセスにおける配線材の抵抗率は、例えば30[mΩ/□]あるいは50[mΩ/□]以上と高く、インダクタ10を、アンダーパス部を除いて、単一の配線材により構成した場合には、インダクタ10の直列抵抗が大となり、インダクタ素子のQ値は上がらない。そこで複数の配線材を用いて、該配線材を同一形状でスパイラル状に敷設し、互いを接続して並列構成と成す手法が有効である。この場合、最下層の配線材はシリコン基板あるいはグラウンドシールドと近接する事になるので、容量の増大、すなわち自己共振周波数の低下が予想されるが、使用する配線材の数をNとすれば、インダクタの直列抵抗はほぼ1/Nとなるので、全体としてもQ値の改善が見込まれる。
【0043】
複数の配線材を並列接続するには、ビアを用いるが、従来よりの手法は、複数の配線材の相互作用を考慮せず、直列抵抗値を低下せしめる事にのみ注意がはらわれていたので、数多くのビアを用いて並列接続する方法が取られていた。これに対し図1あるいは図2に示すように、インダクタ10の端子T1およびT2、およびアンダーパス部5の3箇所のみにおいてビアにより並列接続する方法が考えられる。どちらの方法においてもQ値は変わらないが、ビアの数を大幅に減らす事が可能で、しかも3箇所のビアの寸法を大とすることが出来るので、インダクタ10の性能を損ねることなく、信頼性の向上を計ることが出来、好ましい事である。
【0044】
図9にこのQ値の周波数特性における改善効果のシミュレーション結果を示した。基本構造のインダクタ素子はグラウンドシールドを持っておらず、アンダーパス部を除くインダクタ部を、スパイラル状に巻いた単層の配線材で構成していた(図中の単層、シールド無し)。図1に示した構造のグラウンドシールドを使用するとQ値が増大する事が期待されるが、シールドの配線材としてLSIプロセスにおける最下層のアルミニウムを使用した場合(単層、アルミシールド付き)には、スパイラル状のインダクタを構成する配線材とアルミニウムとの距離が小さく、また最下層のアルミニウムは導電性の材料であるのでシート抵抗が低く、図8での議論からも、期待される効果は少ない事がわかる。これに対し、シールドの配線材としてLSIプロセスにおけるゲートポリシリコン層を使用した場合(単層、ポリシールド付き)には、Q値の増大が観測された。加えて、インダクタ部を複数(図9では2層)の配線材を並列に接続して図1と完全に同一の構造とした場合(並列接続、ポリシールド付き)には、Q値は更に改善される。ただし、グラウンドシールドを使用した場合にはいずれも自己共振周波数は低下している。また並列接続の場合には、最下層の配線材と、シールドおよび低抵抗半導体基板との距離が小となるので、更に自己共振周波数が低下し、注意が必要である。
【0045】
【発明の効果】
図1の構造を持つ本発明によれば、シリコンなどの低抵抗半導体基板上に作成する、インダクタ素子のQ値を増大する事が可能となる。スパイラル状に巻いたインダクタ素子の巻き線部分を中空形状とすれば、従来構造に比べて巻き線部分の直列抵抗を低減できる。
【0046】
また、グラウンドシールドを使用するが、該グラウンドシールドの存在する部分を上記インダクタ素子の巻き線部分と重なる部分に限定すれば、インダクタ素子の巻き線部分とグラウンドシールドとの間に存在する寄生容量を最小に出来る。なお、上記インダクタ素子の巻き線部分の直列抵抗を低減するためには、上記インダクタ素子の巻き線部分を複数の配線材を用い、これらを並列に接続して構成するのが効果的である。
【0047】
従来よりは該並列接続を多数のビアを用いることで行っていたが、本発明のごとく3箇所のみで並列接続を行う方法を取れば、ビアの寸法を自由に設定する事が出来るようになり、信頼性の向上等に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例のインダクタ素子の構造を示す立体図である。
【図2】本発明の実施例のインダクタ部とグラウンドシールドの形状を示す平面図である。
【図3】従来のインダクタ素子の構造を示す立体図である。
【図4】従来構造のインダクタ部とグラウンドシールドの形状を示す平面図である。
【図5】インダクタ素子の巻き線の形状の違いによるQ値の違いを比較したシミュレーション図である。
【図6】インダクタ素子の巻き線の下部の、シリコン基板内における電界強度を示すシミュレーション図である。
【図7】インダクタ素子の巻き線の下部の、シリコン基板内における磁界強度を示すシミュレーション図である。
【図8】グラウンドシールドのシート抵抗に依存した、インダクタ素子のQ値の変化を示すシミュレーション図である。
【図9】構造の違いによるスパイラルインダクタのQ値の周波数特性の違いを示すシミュレーション図である。
【符号の説明】
3        ビア
T1,T2    端子
IN1,IN2  入出力端子
5        アンダーパス
10       スパイラルインダクタ全体
11,12    配線材
20       シールド
21       接続部
22       シールド部
30       低抵抗半導体基板
40       背面電極
50       誘電体

Claims (4)

  1. 低抵抗半導体基板上に誘電体層を設け、該誘電体層中に配線材をスパイラル状に敷設することで構成する、インダクタ素子の構造において、
    前記低抵抗半導体基板と、
    前記低抵抗半導体基板上に設けた誘電体層と、
    前記誘電体層中に設けられた、第1層から第n層までの任意の複数の配線材を用いて、該複数の配線材を同一形状で中空形のスパイラル状に敷設して構成した
    インダクタと、
    前記インダクタと上記低抵抗半導体基板との中間に位置する第(n+1)層の配線材を用い、該第(n+1)層の配線材を、上記インダクタが存在する領域と重なった部分にのみ配置し、更に上記インダクタでの電流の流れる方向に対し、角度を付けて切込みを入れた形状となし、上記第(n+1)層の配線材を電圧が固定となるバイアス電位に接続してなるシールド、を備えることを特徴とするインダクタ素子。
  2. 前記シールドを構成する上記第(n+1)層の配線材として、ポリシリコン層、又は基板の表面部分に形成される拡散層を用いる事を特徴とする、請求項1に記載のインダクタ素子。
  3. 前記上記インダクタは、第1層から第n層までの任意の複数の配線材を用いて、該任意の複数の配線材を、互いにビアを用いて第1の端子および第2の端子のみで並列に接続し、該第1の端子および第2の端子より外部回路との接続をなすための、配線材あるいはビアを用いて配線を延長し、上記インダクタの第1と第2の入出力端子としたことを特徴とする、請求項1に記載のインダクタ素子。
  4. 低抵抗半導体基板上に請求項1乃至3の何れか一つに記載のインダクタ素子を備えた事を特徴とする、半導体素子。
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