JP2004095459A - 荷電粒子線装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】絞り穴の汚れ、あるいは、像質の劣化をモニターし自動的に絞り穴を変更し装置の自動化を図る。
【解決手段】絞り板6と対地間に絞り板に照射される電子線量を検出する検出器19を設置して絞り穴の汚れを評価し、評価された汚れ度合に応じて絞り板の絞り穴を変更する。あるいは、試料台に分解能抽出用の積層膜試料14を設置して分解能を評価し、評価された分解能に応じて絞り板の絞り穴を変更する。
【選択図】 図1
【解決手段】絞り板6と対地間に絞り板に照射される電子線量を検出する検出器19を設置して絞り穴の汚れを評価し、評価された汚れ度合に応じて絞り板の絞り穴を変更する。あるいは、試料台に分解能抽出用の積層膜試料14を設置して分解能を評価し、評価された分解能に応じて絞り板の絞り穴を変更する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、荷電粒子線で試料を照射し、試料から得られる信号を検出して試料像を得たり、試料を加工したりする荷電粒子線装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
荷電粒子線で試料を照射して得られる信号を検出して試料像を得る荷電粒子線装置として、例えば電子ビームを用いた透過電子顕微鏡や走査電子顕微鏡がある。荷電粒子線を試料に照射して試料を加工する装置として、イオンビームを用いるFIB装置がある。また、試料に荷電粒子線を照射してパターンを描画する装置として電子線描画装置がある。
【0003】
これらの荷電粒子線装置は、一次電子線など試料に照射される一次荷電粒子線の不要な領域を除去するために絞り穴を設けた絞り板を用いている。絞り板は、その絞り穴が長時間の電子線照射などにより汚れると、試料観察時に試料像の像質劣化の原因となる。この像質劣化の発生は、一般的に目視又は画像処理技術により判断され、その結果、像質劣化が生じたと判断される場合には絞り穴を手動で変更する。像質劣化を画像処理技術で判断するための試料として、多層薄膜試料を設置する方法が、特開平11−25898号公報に記載されている。この方法は、多層膜試料からラインプロファイルを作成して分解能を定量的に判断し、評価された分解能に応じて電子顕微鏡の光学系、真空系、又は電子銃を調整する方法である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題 】
上記のように従来は、絞り板に電子線が長時間照射され絞り穴が汚れた場合、人間の判断により絞り穴を変更していた。その結果、絞り穴を手動で変更する必要があり装置自動化の妨げとなっていた。さらに、この絞り穴の変更に当っては、大型装置の場合、装置の外周部から絞り部までの距離が遠く、手動で行うには大がかりな作業を必要としていた。また、特願平11−25898号公報に記載された多層膜試料を備えた電子顕微鏡は、得られた分解能に基づいて電子顕微鏡の光学系、真空系、又は電子銃を適正に再調整するが、絞り穴が過度のコンタミネーションにより汚れると焦点合わせができず、再調整が不可能になるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑み、適切な時期に絞り穴を自動的に変更でき、ユーザーの利便性の向上と装置自動化を可能にする荷電粒子線装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明では、絞り板とグラウンド間に絞り板に照射される荷電粒子線量を検出するための検出器を設置した。また、検出器からの信号に基づいて絞り穴の汚れを評価し、評価された汚れ度合に応じて荷電粒子線装置の絞り穴を変更する手段を設置した。別の手段としては、像質の劣化を判定するために、2次荷電粒子の発生が異なる材料の薄膜を積層した部分を含む試料を設置し、その試料から発生する2次荷電粒子を検出して得られる試料断面像に基づいて荷電粒子線装置の分解能を評価し、評価された分解能に応じて荷電粒子線装置の絞り穴を変更する手段を設けた。
【0007】
上記した構成によれば、一定量の荷電粒子線量が照射された絞り穴の汚れを判断することにより、絞り穴を変更することが可能になる。また、像質の劣化を判断することにより、絞り穴を変更することが可能になる。この結果、絞り穴の汚れあるいは絞り穴の汚れに起因する分解能低下を自動的に判断し、使用する絞り穴を変更することで、装置の性能低下を防止することができる。
【0008】
すなわち、本発明による荷電粒子線装置は、荷電粒子を発生する荷電粒子源と、荷電粒子源から放出された荷電粒子線を集束するための集束レンズと、集束レンズによって集束された荷電粒子線の不要な領域を除去するための絞り穴が複数個形成されている絞り板と、絞り板を駆動するアクチュエータと、絞り板の絞り穴を通過した荷電粒子線を試料に照射するためのレンズ系と、試料から発生する信号を検出する検出器と、検出器の出力をもとに試料像を表示する表示手段とを備えた荷電粒子線装置において、表示手段に表示された像質の劣化をモニターする像質モニター手段を有し、像質モニター手段によって像質の劣化が判定されたとき、アクチュエータによって絞り板を駆動し光軸上に位置する絞り穴を変更することを特徴とする。像質モニター手段は、2次電子、反射荷電粒子又は透過荷電粒子等の2次荷電粒子の発生効率が異なる材料の薄膜を積層した試料の断面像に基づいて評価された分解能を基準の分解能と比較することによって像質の劣化を判定することができる。
【0009】
本発明による荷電粒子線装置は、また、荷電粒子を発生する荷電粒子源と、荷電粒子源から放出された荷電粒子線を集束するための集束レンズと、集束レンズによって集束された荷電粒子線の不要な領域を除去するための絞り穴が複数個形成されている絞り板と、絞り板を駆動するアクチュエータとを備えた荷電粒子線装置において、絞り板の使用中の絞り穴の汚れを検出する汚れ検出手段を備え、汚れ検出手段によって検出された絞り穴の汚れが設定値を超えたとき、アクチュエータによって絞り板を駆動し光軸上に位置する絞り穴を変更することを特徴とする。
【0010】
本発明による荷電粒子線装置は、また、荷電粒子を発生する荷電粒子源と、荷電粒子源から放出された荷電粒子線を集束するための集束レンズと、集束レンズによって集束された荷電粒子線の不要な領域を除去するための絞り穴が複数個形成されている絞り板と、絞り板を駆動するアクチュエータとを備えた荷電粒子線装置において、絞り板とグラウンドとの間に流れる電流を測定する電流測定手段を備え、絞り板の第1の絞り穴が光軸上にあるとき電流測定手段で測定された電流の時間積分値が予め設定した値を超えたとき、アクチュエータによって絞り板を駆動し光軸上に位置する絞り穴を前記第1の絞り穴から他の絞り穴に変更することを特徴とする。
【0011】
電流測定手段による電流の測定値の経時変化から光軸ずれあるいは荷電粒子源の異常を検出する手段を備えるのが好ましい。検出された光軸ずれあるいは荷電粒子源の異常は表示装置に表示するのが好ましい。電流測定手段による電流測定値が予め設定した閾値を超えた場合、アクチュエータあるいは荷電粒子線が異常状態であることを表示する手段を備えてもよい。
【0012】
絞り板の各絞り穴が光軸上にあるとき電流測定手段で測定された電流の時間積分値を表示する手段と、各絞り穴に対する電流の時間積分値の上限を入力する手段と、入力された上限値を記憶する手段とを備えるのが好ましい。
【0013】
絞り板よりも荷電粒子源側に配置された、絞り板に当たる荷電粒子線スポットを認識するためのセンサ手段と、センサ手段の出力に基づいて荷電粒子線の光軸ずれを補正する手段とを備えるのが好ましい。更に、絞り板の形状変化を検出するためのセンサ手段を備えるのが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下では、荷電粒子線装置として走査電子顕微鏡を例にとって説明する。しかし、本発明は、走査電子顕微鏡に限らず、透過電子顕微鏡やFIB装置、電子線描画装置など、試料に照射される一次荷電粒子線の不要な領域を除去するために絞り穴を設けた絞り板を用いる荷電粒子線装置一般に適用することができるものである。
【0015】
図1は、本発明による走査電子顕微鏡の一例を示す概略断面図である。陰極1と第一陽極2の間には、CPU22で制御される高電圧制御電源20により電圧が印加され、所定のエミッション電流が陰極1から引き出される。陰極1と第二陽極3の間にはCPU22で制御される高電圧制御電源20により加速電圧が印加されるため、陰極1から放出された一次電子線4は加速されて後段のレンズ系に進行する。一次電子線4は、集束レンズ制御電源23で制御された集束レンズ5で集束され、絞り板6に設けられた絞り穴で不要な領域が除去される。その後、一次電子線4は、対物レンズ制御電源16で制御された対物レンズ7により試料8上に微小スポットとして集束され、偏向コイル9で試料上を二次元的に走査される。偏向コイル9の走査信号は、観察倍率に応じて偏向コイル制御電源17により制御される。
【0016】
対物レンズ7より電子源側には二次電子12を検出するための検出器10が配置されている。検出器10により検出された信号は増幅器11により増幅され、一次電子線4の走査と同期してCPU22にて処理され、表示装置21に試料像として表示される。また、表示装置21にはキーボード等の入力装置24が接続され数値入力、ファイル名入力などに使用される。28はメモリである。
【0017】
絞り板6にはCPU22からの制御信号によって駆動されるアクチュエータ18が接続され、アクチュエータ18によって絞り板6はX,Y方向に移動することができる。絞り板6とグラウンドの間には電流計19が接続されている。試料台13には、像質の劣化を判断するための基準試料として、積層膜試料14とそれを固定するための固定台が設置されている。
【0018】
図2は絞り板の概略図であり、図2(a)は概略断面図、図2(b)は概略上面図である。絞り板6には所定の間隔で複数の絞り穴6a〜6dが設けられており、またグラウンドとの間に電流計19が設置されている。CPU22からの制御信号によってアクチュエータ18を駆動することにより、所望の絞り穴を光軸上に位置づけることができる。ここでは、アクチュエータ18を駆動して絞り板6の一つの絞り穴6bを光軸上に位置させている場合を考える。絞り板6上での一次電子線4のスポット径は絞り穴6bより大きく、一次電子線4を照射し続けると、絞り穴6bの周りの領域6pに汚れが発生する。
【0019】
絞り穴の汚れの発生原因は、絞り板6に一次電子線4が当たり続けるとき発生するコンタミネーションによるものと考えられる。絞り穴の汚れは、絞り板6に照射される一次電子線4の総量に比例すると考えることは自然である。絞り板6とグラウンドの間に電流計19を設置すると、一次電子線4が絞り板6に照射されている間は電荷が絞り板6からグラウンドの方向に流れる。電流をi、電荷をq、時間をtとするとき、電流iは式(1)で表されるので、電子線照射開始時刻t1から電子線照射終了時刻t2の間に絞り板6に当った一次電子線4の総電荷量q1は、式(2)で計算される。
【0020】
【数1】
【0021】
絞り板6に当った一次電子線4の総電荷量q1が予め定めた基準値を超えたとき、絞り穴の汚れ(コンタミネーション)が像質に影響を与えない許容限界値を超えたと判断し、絞り穴をアクチュエータ18で切り替える。例えば、通常の走査電子顕微鏡のプローブ電流8pA、倍率20000倍の条件で実験したところ、q1は約20クーロンであり、1つの絞り穴の周囲に約20クーロンを超えて一次電子線が照射されると像質の劣化が生じた。ここで、機種によってq1に変動がある場合には、目視相関実験により機種毎にq1の設定を変えても良い。
【0022】
なお、絞りの穴径に対し、絞り板6に当る一次電子線4のスポット径d(絞り穴の汚れ領域)は数倍から10倍程度の大きさを有するため、予め絞りに対し光軸を合わせて初期設定すると、一次電子線4が微少に光軸ずれを起こしてもiあるいはqが変動することはない。この特性を利用すると、一次電子線の光軸ずれの検出あるいは陰極1の故障検出を行うことができる。
【0023】
図3は、絞り板6とグラウンドの間に流れる電流iをモニターして光軸ずれや陰極の呼称検出を行う方法を示す模式図である。図3(a)は正常な状態を示し、図3(b)は一次電子線が光軸ずれをおこしている場合を示す。初期設定では、一次電子線4は絞り板6の絞り穴6bが光軸上に設定されているものとする。
【0024】
図3(a)に示すように、絞り穴6bに対し一次電子線4が適正に当っている間は電流iの検出量は一定である。一方、図3(b)に示すように、外乱により一次電子線4の光軸が微少にずれた場合、絞り穴6bを通過する一次電子線4は光軸がずれるにつれて減少し、逆に絞り板6からグラウンドに流れる電流(電流計19で検出される電流)iは増加する。その後、絞り穴6bから光軸が完全にずれると、電流iの検出量は一定に遷移する。従って、電流計19によって検出される電流iが一定から増加への傾きをCPU22で計算し、電流iの増加が検出された場合には、表示装置21に光軸ずれとして警告表示する。また、電流計19で検出される電流iを常時モニタリングすることにより、電流計19の検出量が一定からゼロに変化する瞬間を捉えることで、陰極1の異常検出を行うことも可能である。
【0025】
走査電子顕微鏡での像観察において、一時的にマニュアルにて最良の像を得る時は絞りずらしを行なう。絞りずらしとは、本来の光学系光軸中心よりもわずかにずれた位置に一次電子線4を移すことによって光学系収差を最小にする(最良の像を得る)ための手段である。具体的には、光学系の収差を取るために、一次電子線4を光学系の中心軸に合わせるアライメントを行うが、光学系の種々の条件によりわずかに軸が異なるところに最良値が存在する。この時、絞りを微少動かして合わせる方法である。この際、電流計19からの出力は変動しないが、特殊な使い方(例えば、陰極1からの一次電子線4を絞った設定)においては、CPU22にて絞りの位置を認識し、且つ、外乱からの一次電子線4への光軸ずれの影響を考慮して電流計19出力の経時変化からの変動幅を予め決めておきq1の計算をする方法もある。この計算について図4によりより詳しく説明する。
【0026】
図4は、電流計出力の変動幅を考慮した絞り穴の汚れ測定の一例を示す図である。図4(a)は陰極あるいは一次電子線4に作用する外乱によって瞬間的に光軸ずれが生じた場合を模式的に示し、図4(b)はアクチュエータ18あるいは絞り板に対する外乱によって光軸ずれが生じた場合を模式的に示している。
【0027】
電流計19の出力の測定基準値よりの変動幅i1、i2を予め決めておき、電流計19の出力がこの変動幅を越える場合はq1の計算から除外する。この除外は、コンパレータIC等を用いて電気的に行うこともできる。ここで電流計19出力が、i1、i2の設定値を超える場合は、図4(a)に示すような外乱による瞬時的な光軸ずれか、図4(b)に示すアクチュエータ18あるいは絞り板に対する外乱によるものと考えられる。従って、光軸ずれを偏向コイル9で瞬時に補正できる装置においては、電流計19からの出力に含まれるこのような外乱による誤差を取り除いて、絞り穴の汚れをより正確に把握することが可能になる。
また、電流計19のi1、i2の設定値をiが超えた場合はX、Y軸のアクチュエータ18か陰極1の異常と判断し、表示装置21にその旨を表示するようにしてもよい。
【0028】
ここで、q1(絞りの汚れ限度設定値)の入力は装置各々に異なるので、予め汚れ設定量をキーボード24で入力し、メモリ28に記憶する。また、絞りの汚れ量の測定量と測定経過を表示装置21上に表示すればユーザに分かりやすいものになる。
【0029】
図5は、絞りの汚れの状態や汚れの限度設定値を入力する画面の一例を示す図である。
表示装置21の表示画面は、メニューバーの検査条件30がクリックされたとき、絞り板の複数の絞り穴に対して汚れ限度設定値を登録する入力ボックス31を表示する。オペレータは、この画面にてキーボード24より汚れ限度設定値を入力することができる。汚れ限度設定値は、電流の時間積分値、すなわち電荷量を入力ボックス31に入力するこによって設定する。また、複数の絞り穴の汚れ具合を、棒グラフ32によって汚れ限度設定値に対する割合で表示する。また、所望の絞り穴の汚れ量を示す棒グラフをクリックすると、ポップアップウィンドウ33が開き、その絞り穴の汚れ量を折れ線グラフ34によって時系列的に表示する。なお、絞り板を交換した場合には、リセットボタン35を押すことによって、各絞り穴の絞り汚れ量を表す棒グラフ32及び汚れ限度設定値の数値をリセットすることができる。
【0030】
本実施例では、絞り板に流れる電流によって絞り穴の汚れをモニターし、絞り穴の汚れ量が像質に影響を与える程に達している場合には絞り穴を変更するようにしたが、第2のモニターの方法として、像質の劣化を試料台13上の積層膜試料14から二次電子12をモニターして絞り穴を変更する方法を以下説明する。
【0031】
試料台13への積層膜試料14の搭載は、例えば特開平11−25898号公報の図14に示されているように、試料台13に試料8を保持する領域と積層膜支障14を載置する領域を設けることによって行う。積層膜試料14は、特開平11−25898号公報に記載されているように、一次電子線4が試料断面に当たった際に、2次電子12が異なる発生効率で生ずる材質のものをに交互に設置(膜厚は一定に作成)したものである。一次電子線4がこの積層膜試料を走査した際に、試料断面から発生する2次荷電粒子を検出して試料断面の2次荷電粒子像を得、その2次荷電粒子像に基づいて電子顕微鏡の分解能を評価する。得られた分解能を予め記憶してある基準分解能と比較し、分解能の低下、すなわち像質の劣化が生じていると判定された場合には、CPU22からアクチュエータ18に絞り穴を切り換えるよう命令を送り、アクチュエータ18により絞り板6を鏡筒内に所定量押し込み、あるいは引き出すことで光軸上に位置する絞り穴を切り換える。
【0032】
図6は、CPU22が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。最初に、初期設定を行う。すなわち、ステップ11において、分解能、加速電圧、エミッション電流等の検査条件を複数設定する。この設定入力は、表示装置21に設定画面を表示し、この表示画面に対する入力をキーボード24から行う。また、ステップ12において、絞りの汚れ限度量等の値を登録する。
次に、通常使用時に分解能評価による検査を実行する。最初に、ステップ13において実際に実行する検査条件を選択する。次に、ステップ14に進み、電子線を試料に照射しフォーカスを合わす。その後、設定された検査条件による検査を実行する。具体的には、ステップ15において積層膜試料の断面を走査し、像質判定を行う。この像質判定は、積層膜試料14を走査することによって発生されるステップ信号の応答の微分(ビームプロファイル)を検出し、ビームプロファイルに対して予め設定されている半値幅等の閾値からのずれ幅をもとに行う。
【0033】
ステップ16では、像質劣化の場合、その原因が絞り板によるものか、絞り穴を交互に切り換える等によりCPUにて判定する。絞り穴を切り替えて他の絞り穴を使用したとき、像質劣化が生じなかったならば、像質劣化は使用している絞り穴が原因と判定される。ステップ17では、原因が絞り板によるものであると判定された場合、絞り板をアクチュエータにて移動し、使用する絞り穴を別のものに変更する。また、全ての絞りが汚れている場合は表示装置に警告表示する。次にステップ18に進み、設定値が設定されているときには、設定値自動補正制御とフォーカス合わせを実行する(絞り穴を変更したことによる調整)。最後にステップ19にて、検査結果を出力する。上記の処理において、ステップ15からステップ19の処理は一定時間毎に反復実行する。
【0034】
図7は、本発明による走査電子顕微鏡の他の例を示す概略断面図である。図7において、図1と同じ機能部分には図1と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本例の走査電子顕微鏡は、図1に示した走査電子顕微鏡に加えて、絞り板6に当たる一次電子線のスポット形状を把握するためのセンサ25とセンサ信号を増幅するための増幅器26を加えたものに相当する。
【0035】
センサ25としては、例えば一次電子線4の照射によって絞り板6から発生される二次電子を捉える画像センサ、例えばマイクロチャネルプレートが挙げられる。この構成では、絞り板6上に当たる一次電子線スポットが外乱により光軸ずれを起こした場合、X,Y軸方向のずれ量を把握できるので、CPU22からの判断により偏向コイル9で電子線スポットの光軸のずれの補正を行うことが可能になる。この結果、電流計19からの出力に対する外乱の影響を排除でき(例えば図4により説明した一次電子線に作用する外乱による瞬時的な光軸ずれや、アクチュエータ18あるいは絞り板に対する外乱に起因する光軸ずれなどの影響を排除できる)、電流計19の出力が安定するというメリットがある。
【0036】
図8はX、Y軸方向の光軸ずれ量の検出の一例を示す模式図であり、図8(a)は絞り板の側面図、図8(b)(c)は絞り板の上面図である。図8(b)は光軸ずれのない場合を示し、図8(c)は一次電子線4が光軸ずれをおこした場合を示している。外乱により一次電子線4の光軸がずれた時には、センサ25よりスポットの変移量ΔX、ΔYを測定することが可能になる。
【0037】
この構成に加えて、絞り板6の形状変化を把握するために図7に示すように、少なくとも1つのセンサ27を追加することもできる。センサ27としては、例えばCCDカメラを用いることができる。センサ27としてCCDカメラを用いる場合には、それと対になる外部照明27aを絞り板6を挟んだ反対側に設置するとよい。
図9は、形状変化を検出するためにCCDセンサ27と外部照明27aを付設した絞り板6の概略側面図である。図9(a)は絞り板6が正常の状態を示し、図9(b)は絞り板6が下方に曲がった状態を示す。
【0038】
この構成によると、センサ25による一次電子線の光軸ずれの検出に加えて、センサ27によって絞り板6のZ方向の外乱による形状変化も把握できる。絞り板6が外乱により曲がった場合は、センサ27からの情報(絞り板のZ方向の水平面からの傾きθ)を基にCPU22にて判断して電流計19による測定を中止し、表示装置21にて警告表示する。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、電子顕微鏡等の荷電粒子線装置において、絞り穴の汚れ、あるいは像質の劣化を判断し、絞り穴を自動的に変更して良好な像質を保つことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による荷電粒子線装置の一例を示す概略断面図。
【図2】絞り穴の汚れを測定する一例を示す図。
【図3】光軸ずれの検出と陰極の故障検出の一例を示す図。
【図4】電流計出力の変動幅を考慮した絞り穴の汚れ測定の一例を示す図。
【図5】絞りの汚れ限度設定値を入力する画面の一例を示す図。
【図6】CPUが実行する制御処理の一例を示す図。
【図7】本発明による荷電粒子線装置の他の構成例を示す概略図。
【図8】X、Y軸方向の光軸ずれ量の検出の一例を示す図。
【図9】絞り板のZ軸方向の形状変化の検出の一例を示す図。
【符号の説明】
1…陰極、2…第1陽極、3…第2陽極、4…一次電子線、5…集束レンズ、6…絞り板、7…対物レンズ、8…試料、9…偏向コイル、10…検出器、11…増幅器、12…二次電子、13…試料台、14…積層膜試料、16…対物レンズ制御電源、17…偏向コイル制御電源、18…アクチュエータ、19…電流計、20…高圧制御電源、21…表示装置、22…CPU、23…集束レンズ制御電源、24…キーボード、25…センサ、26…増幅器、27…センサ、28…メモリ
【発明の属する技術分野】
本発明は、荷電粒子線で試料を照射し、試料から得られる信号を検出して試料像を得たり、試料を加工したりする荷電粒子線装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
荷電粒子線で試料を照射して得られる信号を検出して試料像を得る荷電粒子線装置として、例えば電子ビームを用いた透過電子顕微鏡や走査電子顕微鏡がある。荷電粒子線を試料に照射して試料を加工する装置として、イオンビームを用いるFIB装置がある。また、試料に荷電粒子線を照射してパターンを描画する装置として電子線描画装置がある。
【0003】
これらの荷電粒子線装置は、一次電子線など試料に照射される一次荷電粒子線の不要な領域を除去するために絞り穴を設けた絞り板を用いている。絞り板は、その絞り穴が長時間の電子線照射などにより汚れると、試料観察時に試料像の像質劣化の原因となる。この像質劣化の発生は、一般的に目視又は画像処理技術により判断され、その結果、像質劣化が生じたと判断される場合には絞り穴を手動で変更する。像質劣化を画像処理技術で判断するための試料として、多層薄膜試料を設置する方法が、特開平11−25898号公報に記載されている。この方法は、多層膜試料からラインプロファイルを作成して分解能を定量的に判断し、評価された分解能に応じて電子顕微鏡の光学系、真空系、又は電子銃を調整する方法である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題 】
上記のように従来は、絞り板に電子線が長時間照射され絞り穴が汚れた場合、人間の判断により絞り穴を変更していた。その結果、絞り穴を手動で変更する必要があり装置自動化の妨げとなっていた。さらに、この絞り穴の変更に当っては、大型装置の場合、装置の外周部から絞り部までの距離が遠く、手動で行うには大がかりな作業を必要としていた。また、特願平11−25898号公報に記載された多層膜試料を備えた電子顕微鏡は、得られた分解能に基づいて電子顕微鏡の光学系、真空系、又は電子銃を適正に再調整するが、絞り穴が過度のコンタミネーションにより汚れると焦点合わせができず、再調整が不可能になるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑み、適切な時期に絞り穴を自動的に変更でき、ユーザーの利便性の向上と装置自動化を可能にする荷電粒子線装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明では、絞り板とグラウンド間に絞り板に照射される荷電粒子線量を検出するための検出器を設置した。また、検出器からの信号に基づいて絞り穴の汚れを評価し、評価された汚れ度合に応じて荷電粒子線装置の絞り穴を変更する手段を設置した。別の手段としては、像質の劣化を判定するために、2次荷電粒子の発生が異なる材料の薄膜を積層した部分を含む試料を設置し、その試料から発生する2次荷電粒子を検出して得られる試料断面像に基づいて荷電粒子線装置の分解能を評価し、評価された分解能に応じて荷電粒子線装置の絞り穴を変更する手段を設けた。
【0007】
上記した構成によれば、一定量の荷電粒子線量が照射された絞り穴の汚れを判断することにより、絞り穴を変更することが可能になる。また、像質の劣化を判断することにより、絞り穴を変更することが可能になる。この結果、絞り穴の汚れあるいは絞り穴の汚れに起因する分解能低下を自動的に判断し、使用する絞り穴を変更することで、装置の性能低下を防止することができる。
【0008】
すなわち、本発明による荷電粒子線装置は、荷電粒子を発生する荷電粒子源と、荷電粒子源から放出された荷電粒子線を集束するための集束レンズと、集束レンズによって集束された荷電粒子線の不要な領域を除去するための絞り穴が複数個形成されている絞り板と、絞り板を駆動するアクチュエータと、絞り板の絞り穴を通過した荷電粒子線を試料に照射するためのレンズ系と、試料から発生する信号を検出する検出器と、検出器の出力をもとに試料像を表示する表示手段とを備えた荷電粒子線装置において、表示手段に表示された像質の劣化をモニターする像質モニター手段を有し、像質モニター手段によって像質の劣化が判定されたとき、アクチュエータによって絞り板を駆動し光軸上に位置する絞り穴を変更することを特徴とする。像質モニター手段は、2次電子、反射荷電粒子又は透過荷電粒子等の2次荷電粒子の発生効率が異なる材料の薄膜を積層した試料の断面像に基づいて評価された分解能を基準の分解能と比較することによって像質の劣化を判定することができる。
【0009】
本発明による荷電粒子線装置は、また、荷電粒子を発生する荷電粒子源と、荷電粒子源から放出された荷電粒子線を集束するための集束レンズと、集束レンズによって集束された荷電粒子線の不要な領域を除去するための絞り穴が複数個形成されている絞り板と、絞り板を駆動するアクチュエータとを備えた荷電粒子線装置において、絞り板の使用中の絞り穴の汚れを検出する汚れ検出手段を備え、汚れ検出手段によって検出された絞り穴の汚れが設定値を超えたとき、アクチュエータによって絞り板を駆動し光軸上に位置する絞り穴を変更することを特徴とする。
【0010】
本発明による荷電粒子線装置は、また、荷電粒子を発生する荷電粒子源と、荷電粒子源から放出された荷電粒子線を集束するための集束レンズと、集束レンズによって集束された荷電粒子線の不要な領域を除去するための絞り穴が複数個形成されている絞り板と、絞り板を駆動するアクチュエータとを備えた荷電粒子線装置において、絞り板とグラウンドとの間に流れる電流を測定する電流測定手段を備え、絞り板の第1の絞り穴が光軸上にあるとき電流測定手段で測定された電流の時間積分値が予め設定した値を超えたとき、アクチュエータによって絞り板を駆動し光軸上に位置する絞り穴を前記第1の絞り穴から他の絞り穴に変更することを特徴とする。
【0011】
電流測定手段による電流の測定値の経時変化から光軸ずれあるいは荷電粒子源の異常を検出する手段を備えるのが好ましい。検出された光軸ずれあるいは荷電粒子源の異常は表示装置に表示するのが好ましい。電流測定手段による電流測定値が予め設定した閾値を超えた場合、アクチュエータあるいは荷電粒子線が異常状態であることを表示する手段を備えてもよい。
【0012】
絞り板の各絞り穴が光軸上にあるとき電流測定手段で測定された電流の時間積分値を表示する手段と、各絞り穴に対する電流の時間積分値の上限を入力する手段と、入力された上限値を記憶する手段とを備えるのが好ましい。
【0013】
絞り板よりも荷電粒子源側に配置された、絞り板に当たる荷電粒子線スポットを認識するためのセンサ手段と、センサ手段の出力に基づいて荷電粒子線の光軸ずれを補正する手段とを備えるのが好ましい。更に、絞り板の形状変化を検出するためのセンサ手段を備えるのが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下では、荷電粒子線装置として走査電子顕微鏡を例にとって説明する。しかし、本発明は、走査電子顕微鏡に限らず、透過電子顕微鏡やFIB装置、電子線描画装置など、試料に照射される一次荷電粒子線の不要な領域を除去するために絞り穴を設けた絞り板を用いる荷電粒子線装置一般に適用することができるものである。
【0015】
図1は、本発明による走査電子顕微鏡の一例を示す概略断面図である。陰極1と第一陽極2の間には、CPU22で制御される高電圧制御電源20により電圧が印加され、所定のエミッション電流が陰極1から引き出される。陰極1と第二陽極3の間にはCPU22で制御される高電圧制御電源20により加速電圧が印加されるため、陰極1から放出された一次電子線4は加速されて後段のレンズ系に進行する。一次電子線4は、集束レンズ制御電源23で制御された集束レンズ5で集束され、絞り板6に設けられた絞り穴で不要な領域が除去される。その後、一次電子線4は、対物レンズ制御電源16で制御された対物レンズ7により試料8上に微小スポットとして集束され、偏向コイル9で試料上を二次元的に走査される。偏向コイル9の走査信号は、観察倍率に応じて偏向コイル制御電源17により制御される。
【0016】
対物レンズ7より電子源側には二次電子12を検出するための検出器10が配置されている。検出器10により検出された信号は増幅器11により増幅され、一次電子線4の走査と同期してCPU22にて処理され、表示装置21に試料像として表示される。また、表示装置21にはキーボード等の入力装置24が接続され数値入力、ファイル名入力などに使用される。28はメモリである。
【0017】
絞り板6にはCPU22からの制御信号によって駆動されるアクチュエータ18が接続され、アクチュエータ18によって絞り板6はX,Y方向に移動することができる。絞り板6とグラウンドの間には電流計19が接続されている。試料台13には、像質の劣化を判断するための基準試料として、積層膜試料14とそれを固定するための固定台が設置されている。
【0018】
図2は絞り板の概略図であり、図2(a)は概略断面図、図2(b)は概略上面図である。絞り板6には所定の間隔で複数の絞り穴6a〜6dが設けられており、またグラウンドとの間に電流計19が設置されている。CPU22からの制御信号によってアクチュエータ18を駆動することにより、所望の絞り穴を光軸上に位置づけることができる。ここでは、アクチュエータ18を駆動して絞り板6の一つの絞り穴6bを光軸上に位置させている場合を考える。絞り板6上での一次電子線4のスポット径は絞り穴6bより大きく、一次電子線4を照射し続けると、絞り穴6bの周りの領域6pに汚れが発生する。
【0019】
絞り穴の汚れの発生原因は、絞り板6に一次電子線4が当たり続けるとき発生するコンタミネーションによるものと考えられる。絞り穴の汚れは、絞り板6に照射される一次電子線4の総量に比例すると考えることは自然である。絞り板6とグラウンドの間に電流計19を設置すると、一次電子線4が絞り板6に照射されている間は電荷が絞り板6からグラウンドの方向に流れる。電流をi、電荷をq、時間をtとするとき、電流iは式(1)で表されるので、電子線照射開始時刻t1から電子線照射終了時刻t2の間に絞り板6に当った一次電子線4の総電荷量q1は、式(2)で計算される。
【0020】
【数1】
【0021】
絞り板6に当った一次電子線4の総電荷量q1が予め定めた基準値を超えたとき、絞り穴の汚れ(コンタミネーション)が像質に影響を与えない許容限界値を超えたと判断し、絞り穴をアクチュエータ18で切り替える。例えば、通常の走査電子顕微鏡のプローブ電流8pA、倍率20000倍の条件で実験したところ、q1は約20クーロンであり、1つの絞り穴の周囲に約20クーロンを超えて一次電子線が照射されると像質の劣化が生じた。ここで、機種によってq1に変動がある場合には、目視相関実験により機種毎にq1の設定を変えても良い。
【0022】
なお、絞りの穴径に対し、絞り板6に当る一次電子線4のスポット径d(絞り穴の汚れ領域)は数倍から10倍程度の大きさを有するため、予め絞りに対し光軸を合わせて初期設定すると、一次電子線4が微少に光軸ずれを起こしてもiあるいはqが変動することはない。この特性を利用すると、一次電子線の光軸ずれの検出あるいは陰極1の故障検出を行うことができる。
【0023】
図3は、絞り板6とグラウンドの間に流れる電流iをモニターして光軸ずれや陰極の呼称検出を行う方法を示す模式図である。図3(a)は正常な状態を示し、図3(b)は一次電子線が光軸ずれをおこしている場合を示す。初期設定では、一次電子線4は絞り板6の絞り穴6bが光軸上に設定されているものとする。
【0024】
図3(a)に示すように、絞り穴6bに対し一次電子線4が適正に当っている間は電流iの検出量は一定である。一方、図3(b)に示すように、外乱により一次電子線4の光軸が微少にずれた場合、絞り穴6bを通過する一次電子線4は光軸がずれるにつれて減少し、逆に絞り板6からグラウンドに流れる電流(電流計19で検出される電流)iは増加する。その後、絞り穴6bから光軸が完全にずれると、電流iの検出量は一定に遷移する。従って、電流計19によって検出される電流iが一定から増加への傾きをCPU22で計算し、電流iの増加が検出された場合には、表示装置21に光軸ずれとして警告表示する。また、電流計19で検出される電流iを常時モニタリングすることにより、電流計19の検出量が一定からゼロに変化する瞬間を捉えることで、陰極1の異常検出を行うことも可能である。
【0025】
走査電子顕微鏡での像観察において、一時的にマニュアルにて最良の像を得る時は絞りずらしを行なう。絞りずらしとは、本来の光学系光軸中心よりもわずかにずれた位置に一次電子線4を移すことによって光学系収差を最小にする(最良の像を得る)ための手段である。具体的には、光学系の収差を取るために、一次電子線4を光学系の中心軸に合わせるアライメントを行うが、光学系の種々の条件によりわずかに軸が異なるところに最良値が存在する。この時、絞りを微少動かして合わせる方法である。この際、電流計19からの出力は変動しないが、特殊な使い方(例えば、陰極1からの一次電子線4を絞った設定)においては、CPU22にて絞りの位置を認識し、且つ、外乱からの一次電子線4への光軸ずれの影響を考慮して電流計19出力の経時変化からの変動幅を予め決めておきq1の計算をする方法もある。この計算について図4によりより詳しく説明する。
【0026】
図4は、電流計出力の変動幅を考慮した絞り穴の汚れ測定の一例を示す図である。図4(a)は陰極あるいは一次電子線4に作用する外乱によって瞬間的に光軸ずれが生じた場合を模式的に示し、図4(b)はアクチュエータ18あるいは絞り板に対する外乱によって光軸ずれが生じた場合を模式的に示している。
【0027】
電流計19の出力の測定基準値よりの変動幅i1、i2を予め決めておき、電流計19の出力がこの変動幅を越える場合はq1の計算から除外する。この除外は、コンパレータIC等を用いて電気的に行うこともできる。ここで電流計19出力が、i1、i2の設定値を超える場合は、図4(a)に示すような外乱による瞬時的な光軸ずれか、図4(b)に示すアクチュエータ18あるいは絞り板に対する外乱によるものと考えられる。従って、光軸ずれを偏向コイル9で瞬時に補正できる装置においては、電流計19からの出力に含まれるこのような外乱による誤差を取り除いて、絞り穴の汚れをより正確に把握することが可能になる。
また、電流計19のi1、i2の設定値をiが超えた場合はX、Y軸のアクチュエータ18か陰極1の異常と判断し、表示装置21にその旨を表示するようにしてもよい。
【0028】
ここで、q1(絞りの汚れ限度設定値)の入力は装置各々に異なるので、予め汚れ設定量をキーボード24で入力し、メモリ28に記憶する。また、絞りの汚れ量の測定量と測定経過を表示装置21上に表示すればユーザに分かりやすいものになる。
【0029】
図5は、絞りの汚れの状態や汚れの限度設定値を入力する画面の一例を示す図である。
表示装置21の表示画面は、メニューバーの検査条件30がクリックされたとき、絞り板の複数の絞り穴に対して汚れ限度設定値を登録する入力ボックス31を表示する。オペレータは、この画面にてキーボード24より汚れ限度設定値を入力することができる。汚れ限度設定値は、電流の時間積分値、すなわち電荷量を入力ボックス31に入力するこによって設定する。また、複数の絞り穴の汚れ具合を、棒グラフ32によって汚れ限度設定値に対する割合で表示する。また、所望の絞り穴の汚れ量を示す棒グラフをクリックすると、ポップアップウィンドウ33が開き、その絞り穴の汚れ量を折れ線グラフ34によって時系列的に表示する。なお、絞り板を交換した場合には、リセットボタン35を押すことによって、各絞り穴の絞り汚れ量を表す棒グラフ32及び汚れ限度設定値の数値をリセットすることができる。
【0030】
本実施例では、絞り板に流れる電流によって絞り穴の汚れをモニターし、絞り穴の汚れ量が像質に影響を与える程に達している場合には絞り穴を変更するようにしたが、第2のモニターの方法として、像質の劣化を試料台13上の積層膜試料14から二次電子12をモニターして絞り穴を変更する方法を以下説明する。
【0031】
試料台13への積層膜試料14の搭載は、例えば特開平11−25898号公報の図14に示されているように、試料台13に試料8を保持する領域と積層膜支障14を載置する領域を設けることによって行う。積層膜試料14は、特開平11−25898号公報に記載されているように、一次電子線4が試料断面に当たった際に、2次電子12が異なる発生効率で生ずる材質のものをに交互に設置(膜厚は一定に作成)したものである。一次電子線4がこの積層膜試料を走査した際に、試料断面から発生する2次荷電粒子を検出して試料断面の2次荷電粒子像を得、その2次荷電粒子像に基づいて電子顕微鏡の分解能を評価する。得られた分解能を予め記憶してある基準分解能と比較し、分解能の低下、すなわち像質の劣化が生じていると判定された場合には、CPU22からアクチュエータ18に絞り穴を切り換えるよう命令を送り、アクチュエータ18により絞り板6を鏡筒内に所定量押し込み、あるいは引き出すことで光軸上に位置する絞り穴を切り換える。
【0032】
図6は、CPU22が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。最初に、初期設定を行う。すなわち、ステップ11において、分解能、加速電圧、エミッション電流等の検査条件を複数設定する。この設定入力は、表示装置21に設定画面を表示し、この表示画面に対する入力をキーボード24から行う。また、ステップ12において、絞りの汚れ限度量等の値を登録する。
次に、通常使用時に分解能評価による検査を実行する。最初に、ステップ13において実際に実行する検査条件を選択する。次に、ステップ14に進み、電子線を試料に照射しフォーカスを合わす。その後、設定された検査条件による検査を実行する。具体的には、ステップ15において積層膜試料の断面を走査し、像質判定を行う。この像質判定は、積層膜試料14を走査することによって発生されるステップ信号の応答の微分(ビームプロファイル)を検出し、ビームプロファイルに対して予め設定されている半値幅等の閾値からのずれ幅をもとに行う。
【0033】
ステップ16では、像質劣化の場合、その原因が絞り板によるものか、絞り穴を交互に切り換える等によりCPUにて判定する。絞り穴を切り替えて他の絞り穴を使用したとき、像質劣化が生じなかったならば、像質劣化は使用している絞り穴が原因と判定される。ステップ17では、原因が絞り板によるものであると判定された場合、絞り板をアクチュエータにて移動し、使用する絞り穴を別のものに変更する。また、全ての絞りが汚れている場合は表示装置に警告表示する。次にステップ18に進み、設定値が設定されているときには、設定値自動補正制御とフォーカス合わせを実行する(絞り穴を変更したことによる調整)。最後にステップ19にて、検査結果を出力する。上記の処理において、ステップ15からステップ19の処理は一定時間毎に反復実行する。
【0034】
図7は、本発明による走査電子顕微鏡の他の例を示す概略断面図である。図7において、図1と同じ機能部分には図1と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本例の走査電子顕微鏡は、図1に示した走査電子顕微鏡に加えて、絞り板6に当たる一次電子線のスポット形状を把握するためのセンサ25とセンサ信号を増幅するための増幅器26を加えたものに相当する。
【0035】
センサ25としては、例えば一次電子線4の照射によって絞り板6から発生される二次電子を捉える画像センサ、例えばマイクロチャネルプレートが挙げられる。この構成では、絞り板6上に当たる一次電子線スポットが外乱により光軸ずれを起こした場合、X,Y軸方向のずれ量を把握できるので、CPU22からの判断により偏向コイル9で電子線スポットの光軸のずれの補正を行うことが可能になる。この結果、電流計19からの出力に対する外乱の影響を排除でき(例えば図4により説明した一次電子線に作用する外乱による瞬時的な光軸ずれや、アクチュエータ18あるいは絞り板に対する外乱に起因する光軸ずれなどの影響を排除できる)、電流計19の出力が安定するというメリットがある。
【0036】
図8はX、Y軸方向の光軸ずれ量の検出の一例を示す模式図であり、図8(a)は絞り板の側面図、図8(b)(c)は絞り板の上面図である。図8(b)は光軸ずれのない場合を示し、図8(c)は一次電子線4が光軸ずれをおこした場合を示している。外乱により一次電子線4の光軸がずれた時には、センサ25よりスポットの変移量ΔX、ΔYを測定することが可能になる。
【0037】
この構成に加えて、絞り板6の形状変化を把握するために図7に示すように、少なくとも1つのセンサ27を追加することもできる。センサ27としては、例えばCCDカメラを用いることができる。センサ27としてCCDカメラを用いる場合には、それと対になる外部照明27aを絞り板6を挟んだ反対側に設置するとよい。
図9は、形状変化を検出するためにCCDセンサ27と外部照明27aを付設した絞り板6の概略側面図である。図9(a)は絞り板6が正常の状態を示し、図9(b)は絞り板6が下方に曲がった状態を示す。
【0038】
この構成によると、センサ25による一次電子線の光軸ずれの検出に加えて、センサ27によって絞り板6のZ方向の外乱による形状変化も把握できる。絞り板6が外乱により曲がった場合は、センサ27からの情報(絞り板のZ方向の水平面からの傾きθ)を基にCPU22にて判断して電流計19による測定を中止し、表示装置21にて警告表示する。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、電子顕微鏡等の荷電粒子線装置において、絞り穴の汚れ、あるいは像質の劣化を判断し、絞り穴を自動的に変更して良好な像質を保つことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による荷電粒子線装置の一例を示す概略断面図。
【図2】絞り穴の汚れを測定する一例を示す図。
【図3】光軸ずれの検出と陰極の故障検出の一例を示す図。
【図4】電流計出力の変動幅を考慮した絞り穴の汚れ測定の一例を示す図。
【図5】絞りの汚れ限度設定値を入力する画面の一例を示す図。
【図6】CPUが実行する制御処理の一例を示す図。
【図7】本発明による荷電粒子線装置の他の構成例を示す概略図。
【図8】X、Y軸方向の光軸ずれ量の検出の一例を示す図。
【図9】絞り板のZ軸方向の形状変化の検出の一例を示す図。
【符号の説明】
1…陰極、2…第1陽極、3…第2陽極、4…一次電子線、5…集束レンズ、6…絞り板、7…対物レンズ、8…試料、9…偏向コイル、10…検出器、11…増幅器、12…二次電子、13…試料台、14…積層膜試料、16…対物レンズ制御電源、17…偏向コイル制御電源、18…アクチュエータ、19…電流計、20…高圧制御電源、21…表示装置、22…CPU、23…集束レンズ制御電源、24…キーボード、25…センサ、26…増幅器、27…センサ、28…メモリ
Claims (10)
- 荷電粒子を発生する荷電粒子源と、前記荷電粒子源から放出された荷電粒子線を集束するための集束レンズと、前記集束レンズによって集束された荷電粒子線の不要な領域を除去するための絞り穴が複数個形成されている絞り板と、前記絞り板を駆動するアクチュエータと、前記絞り板の絞り穴を通過した荷電粒子線を試料に照射するためのレンズ系と、試料から発生する信号を検出する検出器と、前記検出器の出力をもとに試料像を表示する表示手段とを備えた荷電粒子線装置において、
前記表示手段に表示された像質の劣化をモニターする像質モニター手段を有し、前記像質モニター手段によって像質の劣化が判定されたとき、前記アクチュエータによって前記絞り板を駆動し光軸上に位置する絞り穴を変更することを特徴とする荷電粒子線装置。 - 請求項1記載の荷電粒子線装置において、前記像質モニター手段は、2次電子、反射荷電粒子又は透過荷電粒子等の2次荷電粒子の発生効率が異なる材料の薄膜を積層した試料の断面像に基づいて評価された分解能を基準の分解能と比較することによって像質の劣化を判定することを特徴とする荷電粒子線装置。
- 荷電粒子を発生する荷電粒子源と、前記荷電粒子源から放出された荷電粒子線を集束するための集束レンズと、前記集束レンズによって集束された荷電粒子線の不要な領域を除去するための絞り穴が複数個形成されている絞り板と、前記絞り板を駆動するアクチュエータとを備えた荷電粒子線装置において、
前記絞り板の使用中の絞り穴の汚れを検出する汚れ検出手段を備え、前記汚れ検出手段によって検出された絞り穴の汚れが設定値を超えたとき、前記アクチュエータによって前記絞り板を駆動し光軸上に位置する絞り穴を変更することを特徴とする荷電粒子線装置。 - 荷電粒子を発生する荷電粒子源と、前記荷電粒子源から放出された荷電粒子線を集束するための集束レンズと、前記集束レンズによって集束された荷電粒子線の不要な領域を除去するための絞り穴が複数個形成されている絞り板と、前記絞り板を駆動するアクチュエータとを備えた荷電粒子線装置において、
前記絞り板とグラウンドとの間に流れる電流を測定する電流測定手段を備え、前記絞り板の第1の絞り穴が光軸上にあるとき前記電流測定手段で測定された電流の時間積分値が予め設定した値を超えたとき、前記アクチュエータによって前記絞り板を駆動し光軸上に位置する絞り穴を前記第1の絞り穴から他の絞り穴に変更することを特徴とする荷電粒子線装置。 - 請求項4記載の荷電粒子線装置において、前記電流測定手段による電流の測定値の経時変化から光軸ずれあるいは前記荷電粒子源の異常を検出する手段を備えることを特徴とする荷電粒子線装置。
- 請求項5記載の荷電粒子線装置において、検出された前記光軸ずれあるいは前記荷電粒子源の異常を表示装置に表示することを特徴とする荷電粒子線装置。
- 請求項4記載の荷電粒子線装置において、前記電流測定手段による電流測定値が予め設定した閾値を超えた場合、前記アクチュエータあるいは前記荷電粒子線が異常状態であることを表示する手段を備えた荷電粒子線装置。
- 請求項4記載の荷電粒子線装置において、前記絞り板の各絞り穴が光軸上にあるとき前記電流測定手段で測定された電流の時間積分値を表示する手段と、各絞り穴に対する前記電流の時間積分値の上限を入力する手段と、入力された上限値を記憶する手段とを備えたことを特徴とする荷電粒子線装置。
- 請求項4記載の荷電粒子線装置において、前記絞り板よりも前記荷電粒子源側に配置された、前記絞り板に当たる荷電粒子線スポットを認識するためのセンサ手段と、前記センサ手段の出力に基づいて前記荷電粒子線の光軸ずれを補正する手段とを備えたことを特徴とする荷電粒子線装置。
- 請求項9記載の荷電粒子線装置において、絞り板の形状変化を検出するためのセンサ手段を備えたことを特徴とする荷電粒子線装置。
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