JP2004095202A - 負極材料、負電極、及びそれを用いた非水系2次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】高容量かつ充電受入特性に優れた非水系2次電池用負極材料、及びそれを用いて充電受入特性を向上させることができる負電極、並びに非水系2次電池を提供すること。
【解決手段】ピッチを主成分とする該原料を熱反応に供することにより得られる多環芳香族系炭化水素からなる負極材料において、水素/炭素の元素比が0.50乃至0.05の範囲にあり、BET法による比表面積が0.1乃至50m2/gの範囲にあり、また上記材料の平均粒径が10μm以下であり、且つ粒径が1μm以下の体積分率が1%以上であることを特徴とし、また、非水系2次電池用負電極は、その負極材料に、少なくとも導電材と樹脂バインダーとを混ぜて成形することを特徴とすると共に、その非水系2次電池からなる。
【選択図】 なし
【解決手段】ピッチを主成分とする該原料を熱反応に供することにより得られる多環芳香族系炭化水素からなる負極材料において、水素/炭素の元素比が0.50乃至0.05の範囲にあり、BET法による比表面積が0.1乃至50m2/gの範囲にあり、また上記材料の平均粒径が10μm以下であり、且つ粒径が1μm以下の体積分率が1%以上であることを特徴とし、また、非水系2次電池用負電極は、その負極材料に、少なくとも導電材と樹脂バインダーとを混ぜて成形することを特徴とすると共に、その非水系2次電池からなる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、負極材料、負電極、及びそれを用いた非水系2次電池に関するものであり、特に、高容量且つ充填受け入れ性に優れた非水系2次電池用負極材、負電極、及び非水系2次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話に代表される小型携帯機器用の電源、深夜電力の貯蔵システム、太陽光発電による電力貯蔵などを行うための家庭用分散型蓄電システム、電気自動車のための蓄電システムなどに関連して、各種の高エネルギー密度電池の開発が精力的に行われている。特にリチウムイオン電池は、350Wh/lを超える高い体積エネルギー密度を有すること、安全性、サイクル特性などの信頼性が優れていることなどの理由により、その市場は飛躍的に拡大している。
【0003】
リチウムイオン電池は、正極としてLiCoO2、LiMn2O4などに代表されるリチウム含有遷移金属酸化物を用い、負極として黒鉛に代表される炭素系材料を用いている。現在、リチウムイオン電池はより一層の高容量化が進められているが、正極酸化物および負極炭素系材料の改良による高容量化は、ほぼ限界に達しており、450Wh/lを超えるエネルギー密度を達成することは困難である。また、今後予測される大型化のニーズに応える為には、材料コストの低減も、強く望まれている。
特に、電池の高エネルギー密度化および大型化のためには、安全性の確保が最重要課題であり、この観点からも、電極材料のさらなる特性改善が望まれている。
【0004】
従来、リチウムイオン電池の負極材料としては、種々の黒鉛系材料、炭素系材料および多環芳香族系共役構造物質(一般に、低温処理炭素材料あるいはポリアセン系材料と呼ばれている)が開発されている。特に、550〜1000℃程度の比較的低温で、種々の原料を熱処理して得られる多環芳香族系共役構造物質は、グラファイトの理論容量であるC6Li(372mAh/g)を超える材料として、特に注目を浴びている。
【0005】
その中でも特開2000−251885号公報、特開2002−63892号公報の記載によれば、石油、石炭ピッチを主成分とする原料を熱反応に供することにより得られる多環芳香族系炭化水素材料を非水系2次電池用負極材料とし、非水系2次電池用負極材料は、(1)水素/炭素の元素比が0.35乃至0.05の範囲にあり、(2)BET法による比表面積が50m2/g以下であることが好ましいとしている。
このような所定の熱反応により得られるH/C比が0.22の非水系2次電池用負極材料では、20時間のリチウムドーピングにより900mAh/gの容量が得られている。この点で、上述の課題を解決する材料として期待がされている。
【0006】
しかしながら、このような従来の非水系2次電池用負極材料は、その実用化においては改善すべき課題が未だ残されている。その一つに負極のリチウム受入性(充電受入特性)がある。また特開2002−63892号公報には多環芳香族系炭化水素を用いた二次電池が開示され、従来の市販リチウムイオン電池に比べて著しく容量が向上し、市販電池の2倍程度の高容量が得られることが記載されている。しかし、この電池の実用化においても、その充電受入特性に改善すべき課題があり、電池設計の観点から負電極における充電受入特性が望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高容量かつ充電受入特性に優れた非水系2次電池用負極材料、及びそれを用いて充電受入特性を向上させることができる負電極、並びに非水系2次電池を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために現状に留意しつつ鋭意検討を進めた結果、水素/炭素の元素比が特定範囲になるように形成した多環芳香族系炭化水素からなる材料であって、かかる材料の平均粒径を揃え、また粒度分布に一定の特性を持たせ、また比表面積を所定範囲内に収めることにより、その材料が負電極として優れた充電受入特性を有することを見出し、本発明に至ったものである。
【0009】
即ち、本発明に係る非水系2次電池用負極材料、負電極、及び非水系2次電池は、以下の構成或いは手段からなることを特徴とし、上記課題を解決するものである。
(1) ピッチを主成分とする該原料を熱反応に供することにより得られる多環芳香族系炭化水素からなる負極材料において、水素/炭素の元素比が0.50乃至0.05の範囲にあり、BET法による比表面積が0.1乃至50m2/gの範囲にあり、また上記材料の平均粒径が10μm以下であり、且つ粒径が1μm以下の体積分率が1%以上であることを特徴とする非水系2次電池用負極材料。
【0010】
(2) 上記材料の平均粒径が10μm以下であり、且つ粒径が1μm以下の体積分率が5%以上であることを特徴とする上記(1)記載の非水系2次電池用負極材料。
(3) 上記水素/炭素の元素比が0.40乃至0.15の範囲にあることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の非水系2次電池用負極材料。
(4) 上記BET法による比表面積が0.1乃至50m2/gの範囲にあることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の非水系2次電池用負極材料。
【0011】
(5) 上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の負極材料に、少なくとも導電材と樹脂バインダーとを混ぜて成形することを特徴とする非水系2次電池用負電極。
【0012】
(6) 上記(5)記載の非水系2次電池用負電極を用いた非水系2次電池。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る負極材料、その負電極、及びそれを用いた非水系2次電池の好ましい実施の形態を詳述する。尚、本発明に係る負極材料、その負電極、及びそれを用いた非水系2次電池は以下の実施形態及び実施例に限るものではない。
本発明に係る非水系2次電池用負極材料は、ピッチを主成分とした原料を熱反応に供することにより得られる多環芳香族系炭化水素からなる。
【0014】
上記負極材料の原料の主成分となるピッチは、所定の物性を備えた負極材料を得ることができる限り、特に限定されるものではないが、大別して石油系ピッチと石炭系ピッチとに分けられる。例えば、石油ピッチとしては、原料の蒸留残渣、流動性接触分解残渣(デカントオイルなど)、サーマルクラッカーからのボトム油、ナフサクラッキングの際に得られるエチレンタールなどが例示される。
また石炭系ピッチとしては、石炭の乾留時に得られる油分であるコールタールを蒸留して、軽質分を流出させた残査であるストレートピッチあるいはこれにアントラセン油、タールなどを添加したものなどが挙げることができる。これらピッチを原料として合成されるメソフェーズピッチも、本発明に係る負極材料の製造原料として挙げることができる。
更に、ナフタレンの重縮合により合成されるナフタレンピッチ等の合成ピッチを用いることができる。
これらのピッチは、現在安価でかつ大量に生産されており、主に製鉄用コークスバインダー、電極用含浸材、コークス用原料、炭素繊維用原料、成形炭素材科用バインダーなどの用途に用いられている。
【0015】
上記原料として使用するピッチの軟化点は、温度70乃至400℃程度の範囲のものが好ましく、より好ましくは温度100乃至350℃の範囲のもの、特に好ましくは温度150乃至300℃の範囲のものであることが望ましい。ピッチの軟化点が上記範囲を下回るような場合には、所望の熱反応生成物の収率を低下させる一方、ピッチの軟化点が上記範囲を上回るような場合には、熱反応生成物の比表面積を増大させて、所望の負極材料が得られなくなる。
【0016】
本発明に係る非水系2次電池用負極材料は、上記ピッチを主成分とした原料を熱反応に供することにより得られる多環芳香族系炭化水素(熱反応生成物)からなり、かかる炭化水素の水素/炭素の元素比(H/C)が0.5乃至0.05の範囲にあることが必要とされるものである。
特に、負極材料として使用する場合にあっては、好ましくは0.40乃至0.15の範囲、特に0.40乃至0.20の範囲である。
上記H/Cは原料、目的とする電池特性に応じて決定されるが、上記材料のH/Cが0.50を超えると、負極材料中に主要な多環芳香族系共役構造が十分に生じていないため、負極材料として負電極に使用した場合には、その容量および効率が低くなる。一方、上記材料のH/Cが0.05未満になると、炭素化が過度に進行して、本発明が目的とする負極材料としての十分な容量が得られない。
【0017】
尚、上記多環芳香族系炭化水素を主要成分とする負極材料にあっては、本発明に係る効果に影響を与えない範囲で炭素及び水素以外に他の元素を含んでいても良い。例えば、負極材料は、その原料由来の炭素および水素以外の元素(酸素、硫黄、窒素など)を含み易い。そして、このような元素により負極材料の特性を阻害しないためには、その他の元素の合計質量が20%以下、より好ましくは10%以下に抑えることが望ましい。このためには、不要元素の含有量の少ない原料を選択するか、あるいは不要元素を放出しやすい条件の熱反応条件を選択することが望ましい。
【0018】
上記原料ピッチの熱反応は窒素、アルゴンなどの不活性雰囲気中(真空を含む)で行う。反応温度は、上述の原料の種類・性状および温度以外の諸条件(昇温速度、反応時間、反応雰囲気、圧力、反応時に生成するガス成分の反応系外の除去速度など)をも考慮して、水素/炭素の元素比を上記範囲となる様に適宜選択することができる。
【0019】
上記熱反応温度は好ましくは550乃至750℃の範囲であり、より好ましくは600乃至700℃の範囲である。
上記ピッチを主成分とした原料を不活性雰囲気下の温度550乃至750℃の範囲で熱反応させれば、上記範囲の水素/炭素の元素比及び比表面積を有する多環芳香族系炭化水素材料が高収率で得られる。熱反応による上記多環芳香族系炭化水素の収率は、上述した原料の配合特性及びピッチの軟化点により左右されるが、本発明の製造方法においては少なくとも60%以上であることが望ましいとされ、上記温度範囲で原料及び軟化点等を適宜選択すれば、多環芳香族系炭化水素を60%以上の収率で十分に得ることができる。
【0020】
上記副次的条件として昇温速度は10乃至1000℃/時間程度の範囲にあることが好ましく、より好ましくは50乃至500℃/時間程度である。昇温速度は一定である必要はなく、例えば、温度300℃までは100℃/時間の速度で昇温し、温度300℃乃至650℃までは50℃/時間の速度で昇温することができる。また、反応時間(ピーク温度保持時間)は1乃至100時間程度である。圧力は常圧でよいが、減圧あるいは加圧状態で行うことも可能である。
【0021】
また、本発明に係る非水系2次電池用負極材料は、上記不定形な不溶不融化固体からなる熱反応生成物を粉砕したものであり、その粉砕材料は、平均粒径10μm以下であり、粒径分布においての1μm以下の体積分率が1%以上であること、BET法による比表面積が0.1乃至50m2/gの範囲にあることが必須とされる。
【0022】
上記材料のBET法による比表面積は、0.1乃至50m2/g以下の範囲である。より好ましくは比表面積が0.1乃至30m2/gの範囲である。
負極材料の比表面積が大き過ぎると、リチウムのドープおよび脱ドープの初期効率が悪くなるので、実用上好ましくない。従来報告されている多環芳香族系共役構造物質においては、一般に比表面積が高く、炭素系材料および黒鉛系材料に比べて大きく50m2/gを超えるものが殆どである。そこで、高い比表面積を低下させて効率を高めるために、従来、炭素系材料及び黒鉛系材料を再度表面処理する技術が開発されている。しかしながら、このような技術的処理は煩雑な操作を必要とし、製造上、工程が余分に付加され、負極材料の製造コストを著しく高めるので実用的に不利である。これに対して、本発明に係る非水系2次電池用負極材料にあっては後述するように、上記ピッチ原料の1回の熱反応により、比表面積を50m2/g以下とすることが可能であり製造が容易である。
一般に負極材料の比表面積は、熱処理反応温度を上昇させると低下して、リチウムのドープ及び脱ドープの初期効率が高くなるが、その反面、容量が急激に減少する。本発明に係る非水系2次電池用負極材料は、上述のH/C比の範囲を維持しながら、比表面積を50m2/g以下とすることを特徴とする。また、比表面積の下限値は0.1m2/g程度が取り扱い上好ましい。
【0023】
ピッチを原料とする本発明に係る非水系2次電池用負極材料は、上述したように熱反応条件を適宜制御することにより、特定の構造を得ることができる。特に、ピッチ原料を適切に選択することにより、熱反応条件による制限を緩和して容易に上記H/C比、及び粉砕後に上記比表面積となるような材料が得られる。
一般に、空気中でピッチを100〜400℃程度の温度で加熱するか、或いは硝酸、硫酸などの酸化性液体により処理して、ピッチ全体あるいはその表面を不融化処理(架橋処理)した後、不活性雰囲気中で熱処理することにより、製造される。しかしながら、本発明の製造方法においては、ピッチを不融化処理あるいは表面酸化処理しない状態で、熱反応に供することによって、上述したように1回の熱反応により本発明に係る非水系2次電池用負極材料を容易に得ることができる。
【0024】
本発明に係る非水系2次電池用負極材料は、不定形な上記熱反応生成物を所定の粒径に粉砕し、必要に応じて粒度調整を実施するが、その平均粒径が10μm以下であること、及び粒径分布における1μm以下の粒径の体積分率が1%以上で存在していることを必須としている。特に、好ましくは、平均粒径が10μm以下であって、1μm以下の粒径の体積分率が1乃至20%、より好ましくは3乃至15%、特に好ましくは5乃至10%の範囲であることが望ましい。
【0025】
上記熱反応生成物は不定形を呈するので、ボールミル、ジェットミル等の粉砕器で粉砕した後、更に必要に応じて、分級することにより所定の粒径とする。一般にリチウムイオン電池に用いられる黒鉛材料においては、平均粒径10μm以下且つ粒径が1μm以下の体積分率が1%以上の材料では、初期充放電効率の低下及び電極密度が上がり難いことから使用が差し控えられてきた。しかしながら、上記負極材料では、そのメカニズムは不明であるが上記範囲とすることにより電極密度が向上し、充電受入特性も向上する。平均粒径が10μmを超えると充電受入特性が低下する。また、粒径が1μmの体積分率が1%未満の場合は、電極密度が上がりにくく、かつ充電受入特性が低下し、体積分率が20%を超えると後述の電極の作製が困難となる。
【0026】
次に、本発明に係る非水系2次電池用負電極の実施の形態を示す。
本発明に係る非水系2次電池用負電極は、上記負極材料、導電材等を樹脂バインダーに分散させて成形することにより得られる。電極の成形は所望の非水系2次電池の形状、特性などを考慮しつつ、公知の方法により行うことができる。本発明において導電材、バインダーは、特に限定されるものではないないが、具体的には、導電材としてはアセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等が例示され、バインダーとしてはポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリ四フッ化エチレンなどのフッ素系樹脂;フッ素ゴム、SBRなどのゴム系材料;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;アクリル樹脂などが例示される。
【0027】
上記導電材の配合量は本発明の負極材料の種類、粒径、形状、目的とする電極の目付量、強度などに応じて適宜決定すれば良く、特に限定されるものではないが、通常本発明の負極材料の100質量部に対して1〜20質量部程度とすることが好ましい。
また、バインダーの配合量は、本発明の負極材料の種類、粒径、形状、目的とする電極の目付量、強度などに応じて適宜決定すれば良く、特に限定されるものではないが、通常本発明の負極材料の100質量部に対して1〜30質量部程度とすることが好ましい。
【0028】
本発明において、負電極を集電体上の片面或いは両面に形成することもできる。この場合、使用する集電体は特に限定されるものではないが、銅箔、ステンレス鋼箔、チタン箔などが挙げられる。更に、金属箔上或いは金属の隙間に電極が形成可能であるもの、例えば、エキスパンドメタル、メッシュなどを用いることもできる。
【0029】
次に、本発明に係る非水系2次電池の実施の態様について簡単に説明する。
本発明に係る非水系2次電池は上記非水系2次電池用負電極を負極に使用することを特徴とする。
本発明に係る非水系2次電池は、上記負電極が使用されている限り、その使用形態に制限はなく、また電池の採用形態に限定されるものではない。例えば、本発明の負電極、公知の正電極および公知の非水系電解液と組み合わせて、非水系2次電池を製造することができる。
【0030】
正電極としてはリチウムの吸蔵/放出が可能な正極材料であれば特に制限されず、高電圧と高容量のリチウム二次電池を得るために、例えば、公知のリチウム複合コバルト酸化物、リチウム複合ニッケル酸化物、リチウム複合マンガン酸化物、或いはこれらの混合物、更にこれらの酸化物に異種金属元素を一種以上添加した系などを用いることができる。また、マンガン、バナジウム、鉄などの金属酸化物、ジスルフィド系化合物、ポリアセン系物質、活性炭などを用いることも可能であり、特に、容量の観点からLiCoO2、LiNixCoyO2、LiNixMnyO2などを含むリチウム複合酸化物が好ましい。
また、本発明の負電極の上記負極材料中にあらかじめリチウムをドープした状態で、電池を組み立てることも可能であり、さらに負電極上にリチウム金属を張り合わせるなどの方法により、電池組立後に本発明負電極にリチウムをドープすることも可能である。
【0031】
非水系電解液としては、公知のリチウム塩を含む非水系電解液が用いられる。電解液の種類は、正極材料の種類、負極材料の性状、充電電圧などの使用条件などに応じて、適宜決定される。電解液としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4などのリチウム塩をプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、酢酸メチル、蟻酸メチルなどの1種または2種以上からなる有機溶媒に溶解したものが、好ましい。
【0032】
【実施例】
以下に、本発明に係る非水系2次電池材料、その負電極及びその非水系2次電池の実施例および比較例を示し、本発明の特徴とするところをさらに明確にする。
(実施例)
1) 石炭系等方性ピッチ(軟化点280℃)1000gをステンレス鋼製の皿に入れ、この皿を電気炉(炉内有効寸法300×300×300mm)内に配置して、熱反応に供した。熱反応は、窒素雰囲気下で行い、窒素流量は10リットル/分とした。熱反応に際しては室温から温度100℃/時間の速度で温度635℃(炉内温)まで昇温する。昇温後、同温度で4時間保持した後、自然冷却により、温度60℃まで冷却し、反応生成物を電気炉から取り出した。得られた生成物は、原料の形状を留めておらず、不定形な不溶不融性固体であった。熱反応温度、収量は804gであり、収率は80.4質量%であった。
【0033】
得られた生成物をジェットミルにより粉砕し、平均粒径が5.5μmであり、また1μm以下の粒子が体積分率7%の負極材料を得た。この負極材料を用いて、元素分析(測定機:パーキンエルマー社製 元素分析装置「PE2400シリーズII、CHNS/O」)、およびBET法による比表面積(測定機:エアサアイオニクス社製「NOVA1200」)の測定を行った。その結果、H/C=0.26であり、比表面積が24m2/gであった。
【0034】
2) 上記の負極材料90重量部、アセチレンブラック5重量部、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)7重量部、及びN−メチルピロリドン(NMP)を混合し、負極合材スラリーを得た。このスラリーを厚さ14μmの銅箔の片面に塗布し、乾燥した後、プレスを行うことにより、厚さ63μm(合材層厚さ49μm)、密度1.0g/cm3の負電極を得た。
【0035】
3)上記負電極を作用極として、金属リチウムを対極及び参照極に用い、電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを50:50の体積比で混合した溶媒に1mol/リットルの濃度にLiPF6を溶解した溶液)を用いて、電気化学セルをアルゴンドライボックス中で作成した。そして、負電極の充電受入特性を評価した。
負電極への充電受入特性は2サイクル目に評価することとし、2サイクル目のリチウムのドーピングは、リチウム電位に対して1mVになるまで160mA/gの速度で行い、次いで、160mA/gの速度でリチウム電位に対して2Vまで脱ドーピングを行い、得られた脱ドープ量で容量を評価した。その結果を表1に示す。
【0036】
(比較例)
比較例1及び比較例2は、上記実施例の1)の平均粒径、及び1μm以下の粒子の体積分率を表1に示す様に変えた以外は、実施例と同様にして試作、評価を実施した。
【0037】
【表1】
【0038】
表1の結果より、比較例1のように1μm以下の粒子の体積分率が1%未満の非水系2次電池用負極材料を用いた負電極或いは非水系2次電池では、充電受入特性が実施例に比べて劣っていることが判る。また、比較例2のように1μm以下の粒子の体積分率が1%以上であってもその非水系2次電池用負極材料の平均粒径が10μmを上回る場合にも、充電受入特性が実施例に比べて劣っていることが判る。
【0039】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明に係る非水系2次電池用負極材料は、水素/炭素の元素比が0.50乃至0.05の範囲にあり、BET法による比表面積が0.1乃至50m2/gの範囲にあり、また上記材料の平均粒径が10μm以下であり、且つ粒径が1μm以下の体積分率が1%以上であるので、高容量かつ充電受入特性に優れた材料となる。また非水系2次電池用負極材料を用いた負電極及び非水系2次電池は充電受入特性が向上する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、負極材料、負電極、及びそれを用いた非水系2次電池に関するものであり、特に、高容量且つ充填受け入れ性に優れた非水系2次電池用負極材、負電極、及び非水系2次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話に代表される小型携帯機器用の電源、深夜電力の貯蔵システム、太陽光発電による電力貯蔵などを行うための家庭用分散型蓄電システム、電気自動車のための蓄電システムなどに関連して、各種の高エネルギー密度電池の開発が精力的に行われている。特にリチウムイオン電池は、350Wh/lを超える高い体積エネルギー密度を有すること、安全性、サイクル特性などの信頼性が優れていることなどの理由により、その市場は飛躍的に拡大している。
【0003】
リチウムイオン電池は、正極としてLiCoO2、LiMn2O4などに代表されるリチウム含有遷移金属酸化物を用い、負極として黒鉛に代表される炭素系材料を用いている。現在、リチウムイオン電池はより一層の高容量化が進められているが、正極酸化物および負極炭素系材料の改良による高容量化は、ほぼ限界に達しており、450Wh/lを超えるエネルギー密度を達成することは困難である。また、今後予測される大型化のニーズに応える為には、材料コストの低減も、強く望まれている。
特に、電池の高エネルギー密度化および大型化のためには、安全性の確保が最重要課題であり、この観点からも、電極材料のさらなる特性改善が望まれている。
【0004】
従来、リチウムイオン電池の負極材料としては、種々の黒鉛系材料、炭素系材料および多環芳香族系共役構造物質(一般に、低温処理炭素材料あるいはポリアセン系材料と呼ばれている)が開発されている。特に、550〜1000℃程度の比較的低温で、種々の原料を熱処理して得られる多環芳香族系共役構造物質は、グラファイトの理論容量であるC6Li(372mAh/g)を超える材料として、特に注目を浴びている。
【0005】
その中でも特開2000−251885号公報、特開2002−63892号公報の記載によれば、石油、石炭ピッチを主成分とする原料を熱反応に供することにより得られる多環芳香族系炭化水素材料を非水系2次電池用負極材料とし、非水系2次電池用負極材料は、(1)水素/炭素の元素比が0.35乃至0.05の範囲にあり、(2)BET法による比表面積が50m2/g以下であることが好ましいとしている。
このような所定の熱反応により得られるH/C比が0.22の非水系2次電池用負極材料では、20時間のリチウムドーピングにより900mAh/gの容量が得られている。この点で、上述の課題を解決する材料として期待がされている。
【0006】
しかしながら、このような従来の非水系2次電池用負極材料は、その実用化においては改善すべき課題が未だ残されている。その一つに負極のリチウム受入性(充電受入特性)がある。また特開2002−63892号公報には多環芳香族系炭化水素を用いた二次電池が開示され、従来の市販リチウムイオン電池に比べて著しく容量が向上し、市販電池の2倍程度の高容量が得られることが記載されている。しかし、この電池の実用化においても、その充電受入特性に改善すべき課題があり、電池設計の観点から負電極における充電受入特性が望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高容量かつ充電受入特性に優れた非水系2次電池用負極材料、及びそれを用いて充電受入特性を向上させることができる負電極、並びに非水系2次電池を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために現状に留意しつつ鋭意検討を進めた結果、水素/炭素の元素比が特定範囲になるように形成した多環芳香族系炭化水素からなる材料であって、かかる材料の平均粒径を揃え、また粒度分布に一定の特性を持たせ、また比表面積を所定範囲内に収めることにより、その材料が負電極として優れた充電受入特性を有することを見出し、本発明に至ったものである。
【0009】
即ち、本発明に係る非水系2次電池用負極材料、負電極、及び非水系2次電池は、以下の構成或いは手段からなることを特徴とし、上記課題を解決するものである。
(1) ピッチを主成分とする該原料を熱反応に供することにより得られる多環芳香族系炭化水素からなる負極材料において、水素/炭素の元素比が0.50乃至0.05の範囲にあり、BET法による比表面積が0.1乃至50m2/gの範囲にあり、また上記材料の平均粒径が10μm以下であり、且つ粒径が1μm以下の体積分率が1%以上であることを特徴とする非水系2次電池用負極材料。
【0010】
(2) 上記材料の平均粒径が10μm以下であり、且つ粒径が1μm以下の体積分率が5%以上であることを特徴とする上記(1)記載の非水系2次電池用負極材料。
(3) 上記水素/炭素の元素比が0.40乃至0.15の範囲にあることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の非水系2次電池用負極材料。
(4) 上記BET法による比表面積が0.1乃至50m2/gの範囲にあることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の非水系2次電池用負極材料。
【0011】
(5) 上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の負極材料に、少なくとも導電材と樹脂バインダーとを混ぜて成形することを特徴とする非水系2次電池用負電極。
【0012】
(6) 上記(5)記載の非水系2次電池用負電極を用いた非水系2次電池。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る負極材料、その負電極、及びそれを用いた非水系2次電池の好ましい実施の形態を詳述する。尚、本発明に係る負極材料、その負電極、及びそれを用いた非水系2次電池は以下の実施形態及び実施例に限るものではない。
本発明に係る非水系2次電池用負極材料は、ピッチを主成分とした原料を熱反応に供することにより得られる多環芳香族系炭化水素からなる。
【0014】
上記負極材料の原料の主成分となるピッチは、所定の物性を備えた負極材料を得ることができる限り、特に限定されるものではないが、大別して石油系ピッチと石炭系ピッチとに分けられる。例えば、石油ピッチとしては、原料の蒸留残渣、流動性接触分解残渣(デカントオイルなど)、サーマルクラッカーからのボトム油、ナフサクラッキングの際に得られるエチレンタールなどが例示される。
また石炭系ピッチとしては、石炭の乾留時に得られる油分であるコールタールを蒸留して、軽質分を流出させた残査であるストレートピッチあるいはこれにアントラセン油、タールなどを添加したものなどが挙げることができる。これらピッチを原料として合成されるメソフェーズピッチも、本発明に係る負極材料の製造原料として挙げることができる。
更に、ナフタレンの重縮合により合成されるナフタレンピッチ等の合成ピッチを用いることができる。
これらのピッチは、現在安価でかつ大量に生産されており、主に製鉄用コークスバインダー、電極用含浸材、コークス用原料、炭素繊維用原料、成形炭素材科用バインダーなどの用途に用いられている。
【0015】
上記原料として使用するピッチの軟化点は、温度70乃至400℃程度の範囲のものが好ましく、より好ましくは温度100乃至350℃の範囲のもの、特に好ましくは温度150乃至300℃の範囲のものであることが望ましい。ピッチの軟化点が上記範囲を下回るような場合には、所望の熱反応生成物の収率を低下させる一方、ピッチの軟化点が上記範囲を上回るような場合には、熱反応生成物の比表面積を増大させて、所望の負極材料が得られなくなる。
【0016】
本発明に係る非水系2次電池用負極材料は、上記ピッチを主成分とした原料を熱反応に供することにより得られる多環芳香族系炭化水素(熱反応生成物)からなり、かかる炭化水素の水素/炭素の元素比(H/C)が0.5乃至0.05の範囲にあることが必要とされるものである。
特に、負極材料として使用する場合にあっては、好ましくは0.40乃至0.15の範囲、特に0.40乃至0.20の範囲である。
上記H/Cは原料、目的とする電池特性に応じて決定されるが、上記材料のH/Cが0.50を超えると、負極材料中に主要な多環芳香族系共役構造が十分に生じていないため、負極材料として負電極に使用した場合には、その容量および効率が低くなる。一方、上記材料のH/Cが0.05未満になると、炭素化が過度に進行して、本発明が目的とする負極材料としての十分な容量が得られない。
【0017】
尚、上記多環芳香族系炭化水素を主要成分とする負極材料にあっては、本発明に係る効果に影響を与えない範囲で炭素及び水素以外に他の元素を含んでいても良い。例えば、負極材料は、その原料由来の炭素および水素以外の元素(酸素、硫黄、窒素など)を含み易い。そして、このような元素により負極材料の特性を阻害しないためには、その他の元素の合計質量が20%以下、より好ましくは10%以下に抑えることが望ましい。このためには、不要元素の含有量の少ない原料を選択するか、あるいは不要元素を放出しやすい条件の熱反応条件を選択することが望ましい。
【0018】
上記原料ピッチの熱反応は窒素、アルゴンなどの不活性雰囲気中(真空を含む)で行う。反応温度は、上述の原料の種類・性状および温度以外の諸条件(昇温速度、反応時間、反応雰囲気、圧力、反応時に生成するガス成分の反応系外の除去速度など)をも考慮して、水素/炭素の元素比を上記範囲となる様に適宜選択することができる。
【0019】
上記熱反応温度は好ましくは550乃至750℃の範囲であり、より好ましくは600乃至700℃の範囲である。
上記ピッチを主成分とした原料を不活性雰囲気下の温度550乃至750℃の範囲で熱反応させれば、上記範囲の水素/炭素の元素比及び比表面積を有する多環芳香族系炭化水素材料が高収率で得られる。熱反応による上記多環芳香族系炭化水素の収率は、上述した原料の配合特性及びピッチの軟化点により左右されるが、本発明の製造方法においては少なくとも60%以上であることが望ましいとされ、上記温度範囲で原料及び軟化点等を適宜選択すれば、多環芳香族系炭化水素を60%以上の収率で十分に得ることができる。
【0020】
上記副次的条件として昇温速度は10乃至1000℃/時間程度の範囲にあることが好ましく、より好ましくは50乃至500℃/時間程度である。昇温速度は一定である必要はなく、例えば、温度300℃までは100℃/時間の速度で昇温し、温度300℃乃至650℃までは50℃/時間の速度で昇温することができる。また、反応時間(ピーク温度保持時間)は1乃至100時間程度である。圧力は常圧でよいが、減圧あるいは加圧状態で行うことも可能である。
【0021】
また、本発明に係る非水系2次電池用負極材料は、上記不定形な不溶不融化固体からなる熱反応生成物を粉砕したものであり、その粉砕材料は、平均粒径10μm以下であり、粒径分布においての1μm以下の体積分率が1%以上であること、BET法による比表面積が0.1乃至50m2/gの範囲にあることが必須とされる。
【0022】
上記材料のBET法による比表面積は、0.1乃至50m2/g以下の範囲である。より好ましくは比表面積が0.1乃至30m2/gの範囲である。
負極材料の比表面積が大き過ぎると、リチウムのドープおよび脱ドープの初期効率が悪くなるので、実用上好ましくない。従来報告されている多環芳香族系共役構造物質においては、一般に比表面積が高く、炭素系材料および黒鉛系材料に比べて大きく50m2/gを超えるものが殆どである。そこで、高い比表面積を低下させて効率を高めるために、従来、炭素系材料及び黒鉛系材料を再度表面処理する技術が開発されている。しかしながら、このような技術的処理は煩雑な操作を必要とし、製造上、工程が余分に付加され、負極材料の製造コストを著しく高めるので実用的に不利である。これに対して、本発明に係る非水系2次電池用負極材料にあっては後述するように、上記ピッチ原料の1回の熱反応により、比表面積を50m2/g以下とすることが可能であり製造が容易である。
一般に負極材料の比表面積は、熱処理反応温度を上昇させると低下して、リチウムのドープ及び脱ドープの初期効率が高くなるが、その反面、容量が急激に減少する。本発明に係る非水系2次電池用負極材料は、上述のH/C比の範囲を維持しながら、比表面積を50m2/g以下とすることを特徴とする。また、比表面積の下限値は0.1m2/g程度が取り扱い上好ましい。
【0023】
ピッチを原料とする本発明に係る非水系2次電池用負極材料は、上述したように熱反応条件を適宜制御することにより、特定の構造を得ることができる。特に、ピッチ原料を適切に選択することにより、熱反応条件による制限を緩和して容易に上記H/C比、及び粉砕後に上記比表面積となるような材料が得られる。
一般に、空気中でピッチを100〜400℃程度の温度で加熱するか、或いは硝酸、硫酸などの酸化性液体により処理して、ピッチ全体あるいはその表面を不融化処理(架橋処理)した後、不活性雰囲気中で熱処理することにより、製造される。しかしながら、本発明の製造方法においては、ピッチを不融化処理あるいは表面酸化処理しない状態で、熱反応に供することによって、上述したように1回の熱反応により本発明に係る非水系2次電池用負極材料を容易に得ることができる。
【0024】
本発明に係る非水系2次電池用負極材料は、不定形な上記熱反応生成物を所定の粒径に粉砕し、必要に応じて粒度調整を実施するが、その平均粒径が10μm以下であること、及び粒径分布における1μm以下の粒径の体積分率が1%以上で存在していることを必須としている。特に、好ましくは、平均粒径が10μm以下であって、1μm以下の粒径の体積分率が1乃至20%、より好ましくは3乃至15%、特に好ましくは5乃至10%の範囲であることが望ましい。
【0025】
上記熱反応生成物は不定形を呈するので、ボールミル、ジェットミル等の粉砕器で粉砕した後、更に必要に応じて、分級することにより所定の粒径とする。一般にリチウムイオン電池に用いられる黒鉛材料においては、平均粒径10μm以下且つ粒径が1μm以下の体積分率が1%以上の材料では、初期充放電効率の低下及び電極密度が上がり難いことから使用が差し控えられてきた。しかしながら、上記負極材料では、そのメカニズムは不明であるが上記範囲とすることにより電極密度が向上し、充電受入特性も向上する。平均粒径が10μmを超えると充電受入特性が低下する。また、粒径が1μmの体積分率が1%未満の場合は、電極密度が上がりにくく、かつ充電受入特性が低下し、体積分率が20%を超えると後述の電極の作製が困難となる。
【0026】
次に、本発明に係る非水系2次電池用負電極の実施の形態を示す。
本発明に係る非水系2次電池用負電極は、上記負極材料、導電材等を樹脂バインダーに分散させて成形することにより得られる。電極の成形は所望の非水系2次電池の形状、特性などを考慮しつつ、公知の方法により行うことができる。本発明において導電材、バインダーは、特に限定されるものではないないが、具体的には、導電材としてはアセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等が例示され、バインダーとしてはポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリ四フッ化エチレンなどのフッ素系樹脂;フッ素ゴム、SBRなどのゴム系材料;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;アクリル樹脂などが例示される。
【0027】
上記導電材の配合量は本発明の負極材料の種類、粒径、形状、目的とする電極の目付量、強度などに応じて適宜決定すれば良く、特に限定されるものではないが、通常本発明の負極材料の100質量部に対して1〜20質量部程度とすることが好ましい。
また、バインダーの配合量は、本発明の負極材料の種類、粒径、形状、目的とする電極の目付量、強度などに応じて適宜決定すれば良く、特に限定されるものではないが、通常本発明の負極材料の100質量部に対して1〜30質量部程度とすることが好ましい。
【0028】
本発明において、負電極を集電体上の片面或いは両面に形成することもできる。この場合、使用する集電体は特に限定されるものではないが、銅箔、ステンレス鋼箔、チタン箔などが挙げられる。更に、金属箔上或いは金属の隙間に電極が形成可能であるもの、例えば、エキスパンドメタル、メッシュなどを用いることもできる。
【0029】
次に、本発明に係る非水系2次電池の実施の態様について簡単に説明する。
本発明に係る非水系2次電池は上記非水系2次電池用負電極を負極に使用することを特徴とする。
本発明に係る非水系2次電池は、上記負電極が使用されている限り、その使用形態に制限はなく、また電池の採用形態に限定されるものではない。例えば、本発明の負電極、公知の正電極および公知の非水系電解液と組み合わせて、非水系2次電池を製造することができる。
【0030】
正電極としてはリチウムの吸蔵/放出が可能な正極材料であれば特に制限されず、高電圧と高容量のリチウム二次電池を得るために、例えば、公知のリチウム複合コバルト酸化物、リチウム複合ニッケル酸化物、リチウム複合マンガン酸化物、或いはこれらの混合物、更にこれらの酸化物に異種金属元素を一種以上添加した系などを用いることができる。また、マンガン、バナジウム、鉄などの金属酸化物、ジスルフィド系化合物、ポリアセン系物質、活性炭などを用いることも可能であり、特に、容量の観点からLiCoO2、LiNixCoyO2、LiNixMnyO2などを含むリチウム複合酸化物が好ましい。
また、本発明の負電極の上記負極材料中にあらかじめリチウムをドープした状態で、電池を組み立てることも可能であり、さらに負電極上にリチウム金属を張り合わせるなどの方法により、電池組立後に本発明負電極にリチウムをドープすることも可能である。
【0031】
非水系電解液としては、公知のリチウム塩を含む非水系電解液が用いられる。電解液の種類は、正極材料の種類、負極材料の性状、充電電圧などの使用条件などに応じて、適宜決定される。電解液としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4などのリチウム塩をプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、酢酸メチル、蟻酸メチルなどの1種または2種以上からなる有機溶媒に溶解したものが、好ましい。
【0032】
【実施例】
以下に、本発明に係る非水系2次電池材料、その負電極及びその非水系2次電池の実施例および比較例を示し、本発明の特徴とするところをさらに明確にする。
(実施例)
1) 石炭系等方性ピッチ(軟化点280℃)1000gをステンレス鋼製の皿に入れ、この皿を電気炉(炉内有効寸法300×300×300mm)内に配置して、熱反応に供した。熱反応は、窒素雰囲気下で行い、窒素流量は10リットル/分とした。熱反応に際しては室温から温度100℃/時間の速度で温度635℃(炉内温)まで昇温する。昇温後、同温度で4時間保持した後、自然冷却により、温度60℃まで冷却し、反応生成物を電気炉から取り出した。得られた生成物は、原料の形状を留めておらず、不定形な不溶不融性固体であった。熱反応温度、収量は804gであり、収率は80.4質量%であった。
【0033】
得られた生成物をジェットミルにより粉砕し、平均粒径が5.5μmであり、また1μm以下の粒子が体積分率7%の負極材料を得た。この負極材料を用いて、元素分析(測定機:パーキンエルマー社製 元素分析装置「PE2400シリーズII、CHNS/O」)、およびBET法による比表面積(測定機:エアサアイオニクス社製「NOVA1200」)の測定を行った。その結果、H/C=0.26であり、比表面積が24m2/gであった。
【0034】
2) 上記の負極材料90重量部、アセチレンブラック5重量部、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)7重量部、及びN−メチルピロリドン(NMP)を混合し、負極合材スラリーを得た。このスラリーを厚さ14μmの銅箔の片面に塗布し、乾燥した後、プレスを行うことにより、厚さ63μm(合材層厚さ49μm)、密度1.0g/cm3の負電極を得た。
【0035】
3)上記負電極を作用極として、金属リチウムを対極及び参照極に用い、電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを50:50の体積比で混合した溶媒に1mol/リットルの濃度にLiPF6を溶解した溶液)を用いて、電気化学セルをアルゴンドライボックス中で作成した。そして、負電極の充電受入特性を評価した。
負電極への充電受入特性は2サイクル目に評価することとし、2サイクル目のリチウムのドーピングは、リチウム電位に対して1mVになるまで160mA/gの速度で行い、次いで、160mA/gの速度でリチウム電位に対して2Vまで脱ドーピングを行い、得られた脱ドープ量で容量を評価した。その結果を表1に示す。
【0036】
(比較例)
比較例1及び比較例2は、上記実施例の1)の平均粒径、及び1μm以下の粒子の体積分率を表1に示す様に変えた以外は、実施例と同様にして試作、評価を実施した。
【0037】
【表1】
【0038】
表1の結果より、比較例1のように1μm以下の粒子の体積分率が1%未満の非水系2次電池用負極材料を用いた負電極或いは非水系2次電池では、充電受入特性が実施例に比べて劣っていることが判る。また、比較例2のように1μm以下の粒子の体積分率が1%以上であってもその非水系2次電池用負極材料の平均粒径が10μmを上回る場合にも、充電受入特性が実施例に比べて劣っていることが判る。
【0039】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明に係る非水系2次電池用負極材料は、水素/炭素の元素比が0.50乃至0.05の範囲にあり、BET法による比表面積が0.1乃至50m2/gの範囲にあり、また上記材料の平均粒径が10μm以下であり、且つ粒径が1μm以下の体積分率が1%以上であるので、高容量かつ充電受入特性に優れた材料となる。また非水系2次電池用負極材料を用いた負電極及び非水系2次電池は充電受入特性が向上する。
Claims (6)
- ピッチを主成分とする該原料を熱反応に供することにより得られる多環芳香族系炭化水素からなる負極材料において、水素/炭素の元素比が0.50乃至0.05の範囲にあり、BET法による比表面積が0.1乃至50m2/gの範囲にあり、また上記材料の平均粒径が10μm以下であり、且つ粒径が1μm以下の体積分率が1%以上であることを特徴とする非水系2次電池用負極材料。
- 上記材料の平均粒径が10μm以下であり、且つ粒径が1μm以下の体積分率が5%以上であることを特徴とする請求項1記載の非水系2次電池用負極材料。
- 上記水素/炭素の元素比が0.40乃至0.15の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2記載の非水系2次電池用負極材料。
- 上記BET法による比表面積が0.1乃至50m2/gの範囲にあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の非水系2次電池用負極材料。
- 上記請求項1乃至4のいずれかに記載の負極材料に、少なくとも導電材と樹脂バインダーとを混ぜて成形することを特徴とする非水系2次電池用負電極。
- 上記請求項5記載の非水系2次電池用負電極を用いた非水系2次電池。
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