JP2004093211A - 非破壊検査装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】試料の欠陥の種類を判別できる非破壊検査装置を提供する。
【解決手段】この発明の非破壊検査装置1は、レーザ光源10、照射光学系12、XYθステージ14、SQUID磁束計16、制御・画像処理装置18、および表示装置20を有している。照射光学系12には、光スキャナ122が含まれている。照射光学系は、レーザビームをウェーハ5に照射する。このレーザビームによってウェーハが走査される。SQUID磁束計は、レーザ光の照射により誘起された磁場を検出する。制御・画像処理装置は、磁束計によって取得された磁場分布データから良品の磁場分布データを減算し、差分データを生成する。差分データを正の第1しきい値および負の第2しきい値と比較することにより、欠陥の有無が判定される。二つのしきい値を使用するので、2種類の欠陥を判別できる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、非破壊検査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイスの製造では、半導体ウェーハ上に複数のダイ(チップ)を形成した後、ウェーハ検査が行われる。ウェーハ検査には、非破壊検査装置が用いられる。非破壊検査装置の一例として、走査型SQUID顕微鏡が知られている。SQUID顕微鏡は、試料の表面にレーザスポット光を照射し、それによって誘起された磁場の強度をSQUID磁束計(超伝導量子干渉磁束計)で検出する。磁場強度の分布は、SQUID磁束計の出力信号を用いて画像化される。この画像を観察することにより、ウェーハを検査できる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術では、試料の欠陥の有無を調べることはできても、欠陥の種類を判別することはできない。そこで、この発明は、試料の欠陥の種類を判別できる非破壊検査装置の提供を課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る第1の態様は、試料に設けられた所定の構造の欠陥を検出する非破壊検査装置である。この装置は、照射手段、走査手段、磁場検出手段、減算手段、比較手段、および判定手段を備えている。照射手段は、試料にレーザ光を照射する。走査手段は、試料上におけるレーザ光の照射位置を移動させて試料を走査する。磁場検出手段は、試料の走査によって発生する磁場を検出し、磁場分布データを取得する。減算手段は、磁場分布データおよび所定の標準分布データの一方から他方を減算して差分データを生成する。比較手段は、差分データを正の第1しきい値および負の第2しきい値と比較する。判定手段は、レーザ光の一つの照射位置に対応する差分データが第1しきい値以上のとき、その照射位置に第1の種類の欠陥が存在すると判定する。また、判定手段は、レーザ光の一つの照射位置に対応する差分データが第2しきい値以下のとき、その照射位置に第2の種類の欠陥が存在すると判定する。
【0005】
差分データが正負の二つのしきい値と比較されるので、2種類の欠陥を判別できる。標準分布データよりも強い磁場を誘起する欠陥は、第1しきい値を用いて判定される。また、標準分布データよりも弱い磁場を誘起する欠陥は、第2しきい値を用いて判定される。
【0006】
この発明の第2の態様は、試料上の同一の形状を有する複数の領域の各々について、その領域に設けられた所定の構造の欠陥を検出する非破壊検査装置である。この装置は、照射手段、走査手段、磁場検出手段、減算手段、比較手段、および判定手段を備えている。照射手段は、試料にレーザ光を照射する。走査手段は、試料上におけるレーザ光の照射位置を移動させて試料上の前記領域を走査する。磁場検出手段は、前記領域の走査によって発生する磁場の強度を検出し、磁場分布データを取得する。減算手段は、第1の領域の磁場分布データから第2の領域の磁場分布データを減算して、第1の差分データを生成する。また、減算手段は、第2の領域の磁場分布データから第3の領域の磁場分布データを減算して、第2の差分データを生成する。比較手段は、第1差分データを正の第1しきい値および負の第2しきい値と比較する。また、比較手段は、第2差分データを第1しきい値および第2しきい値と比較する。判定手段は、比較手段による比較の結果に応じて、第2領域における欠陥の有無を判定する。判定手段は、第1、第2および第3領域の共通の座標において第1差分データが第2しきい値以下かつ第2差分データが第1しきい値以上のとき、第2領域中の当該座標に第1の種類の欠陥が存在すると判定する。また、判定手段は、第1、第2および第3領域の共通の座標において第1差分データが第1しきい値以上かつ第2差分データが第2しきい値以下のとき、前記第2領域中の当該座標に第2の種類の欠陥が存在すると判定する。
【0007】
第1および第2差分データがそれぞれ正負の二つのしきい値と比較されるので、2種類の欠陥を判別できる。正常な試料よりも強い磁場を誘起する欠陥は、第1しきい値を用いて判定される。また、正常な試料よりも弱い磁場を誘起する欠陥は、第2しきい値を用いて判定される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0009】
(実施形態1)
図1は、第1の実施形態に係る非破壊検査装置1の構成を示す概略図である。装置1は、走査型レーザSQUID顕微鏡である。装置1は、試料として、半導体ウェーハ5を検査する。
【0010】
図2は、半導体ウェーハ5の表面を示す平面図である。ウェーハ5は、複数のダイ52を有している。これらのダイ52は、ウェーハ5の表面上で2次元的に配列されている。各ダイ52には、所定の構造が形成されている。この構造は、半導体デバイスパターンである。これらのダイ52は、すべて同じデバイスパターンを有することを予定されている。非破壊検査装置1は、各ダイ52のデバイスパターンにおける欠陥の有無を検査する。
【0011】
再び、図1を参照する。非破壊検査装置1は、IRレーザ光源10、照射光学系12、XYθステージ14、SQUID磁束計16、および制御・画像処理装置18を有している。IRレーザ光源10は、照射光学系12に光学的に結合されている。IRレーザ光源10、XYθステージ14およびSQUID磁束計16は、制御・画像処理装置18に電気的に接続されている。装置1は、フォトダイオード11、ステージコントローラ17、SQUIDコントローラ19、表示装置20、Z軸ステージ22、ステージコントローラ24、および近赤外線照明装置26をさらに有している。フォトダイオード11は、照射光学系12に光学的に結合されている。フォトダイオード11、ステージコントローラ17および24、SQUIDコントローラ19、表示装置20ならびに照明装置26は、制御・画像処理装置18に電気的に接続されている。Z軸ステージ22は、照明光学系12に取り付けられている。
【0012】
装置1によるウェーハ5の検査の際、ウェーハ5は、XYθステージ14上に載置される。XYθステージ14の上面には、チャック15が設置されている。チャック15は、ウェーハ5の裏面のエッジ部分を吸着してウェーハ5を保持する。この実施形態では、チャック15は透明であり、IRレーザ光源10から発する赤外レーザ光および照明装置26から発する近赤外照明光を透過させる。
【0013】
なお、透明チャックの代わりに、環状のチャックを使用してもよい。環状チャックも、透明チャックと同様に、ウェーハ5の裏面5bのエッジ部分を吸着してウェーハ5を保持する。IRレーザ光源10からのレーザ光は、環状チャックの中央開口部を通過してウェーハ5に照射される。このため、環状チャックは、透明でなくてもよい。
【0014】
IRレーザ光源10は、赤外レーザ光を発する発光素子である。IRレーザ光源10には、光ファイバ40の一端が光学的に接続されている。光ファイバ40の他端は、照射光学系12に光学的に接続されている。IRレーザ光源10から発したレーザ光は、光ファイバ40に入射し、光ファイバ40によって伝搬され、照射光学系12に入射する。
【0015】
近赤外線照明装置26は、近赤外照明光を発する。照明装置26には、光ファイバ42の一端が光学的に接続されている。光ファイバ42の他端は、照射光学系12に光学的に接続されている。照明装置26から発した照明光は、光ファイバ42に入射し、光ファイバ42によって伝搬され、照射光学系12に入射する。
【0016】
フォトダイオード11は、ウェーハ5で反射されて照射光学系12から出射する赤外レーザ光を受光する光検出素子である。フォトダイオード11は、受光した赤外レーザ光の強度に応じた出力信号を生成する。この出力信号は、制御・画像処理装置18に送られる。フォトダイオード11と照射光学系12内の光スキャナ122との間には、図示しないコンデンサレンズが配置されている。このコンデンサレンズは、照射光学系12内に設置されている。光スキャナ122からのレーザ光は、このコンデンサレンズによって集光され、フォトダイオード11へ送られる。
【0017】
照射光学系12は、IRレーザ光源10から赤外レーザ光を受け取り、そのレーザ光からレーザビームを形成してウェーハ5へ照射する。また、照射光学系12は、照明装置26から近赤外照明光を受け取り、その照明光をウェーハ5へ照射する。照射光学系12は、XYθステージ14の下方に配置されている。照射光学系12から出射する赤外レーザビームおよび近赤外照明光は、XYθステージ14の開口部を通ってチャック15に入射する。レーザビームおよび照明光は、チャック15を透過して、ウェーハ5に到達する。こうして、ウェーハ5の裏面側からレーザビームおよび照明光が照射される。
【0018】
照射光学系12は、光スキャナ122、光路設定部124、電動レボルバ125、対物レンズ126、および近赤外線カメラ127を有している。光路設定部124は、ビームスプリッタ、反射ミラーおよびズーム式瞳投影レンズを含んでいる。
【0019】
光スキャナ122には、光ファイバ40の一端が光学的に接続されている。したがって、光スキャナ122は、光ファイバ40を介してIRレーザ光源10に光学的に接続されている。光スキャナ122と光ファイバ40との間には、図示しないコリメータレンズが配置されている。このコリメータレンズは、照射光学系12内に設置されている。光源10からのレーザ光は、光ファイバ40から出射すると、コリメータレンズによって集束され、レーザビームとなる。このレーザビームは、光スキャナ122に向かう。
【0020】
光スキャナ122は、このレーザビームを反射して、光路設定部124へ送る。この反射角度は可変である。反射角度を連続的に変化させると、レーザビームが連続的に移動する。これが、レーザビームの走査である。光スキャナ122は、制御・画像処理装置18に電気的に接続されている。制御・画像処理装置18は、光スキャナ122に駆動信号を送って光スキャナを作動させる。制御・画像処理装置18は、光スキャナ122によるレーザビームの反射角度を制御でき、したがってレーザビームの移動(走査)を制御できる。
【0021】
光路設定部124は、光スキャナ122から送られるレーザビームをレボルバ125に向かわせる。光路設定部124には、光ファイバ42の一端が光学的に接続されている。したがって、光路設定部124は、光ファイバ42を介して近赤外線照明装置26に光学的に接続されている。照明装置26からの近赤外線照明光は、光ファイバ42から出射すると、光路設定部124に入射する。光路設定部124は、この照明光をレボルバ125へ送る。
【0022】
レボルバ125には、倍率の異なる複数の対物レンズ126が装着されている。レボルバ125は、光路設定部124から送られる光を、これらの対物レンズ126の一つに入射させる。レーザビームは、対物レンズ126によってウェーハ上に縮小投影される。この結果、レーザビームは、ウェーハ5上でスポット光を成す。レボルバ125は、回転機構を有している。レボルバ125を回転させることにより、光路設定部124からの光の光路上に配置される対物レンズ126を切り換えられる。
【0023】
近赤外線カメラ127は、光路設定部124に光学的に結合されている。カメラ127は、ウェーハ5で反射された近赤外照明光を受光する。これにより、ウェーハ5を撮像できる。なお、ウェーハ5は、チャック15へのロードの前に、プリアライメントされる。プリアライメントにより、ウェーハ5は、カメラ127の視野内に配置される。このプリアライメントは、例えば、プリアライナを用いて実行される。カメラ127は、制御・画像処理装置18に電気的に接続されている。カメラ127は、ウェーハ5の撮像信号を制御・画像処理装置18に送る。制御・画像処理装置18は、この撮像信号からウェーハ5の画像データを生成する。この画像データは、ウェーハ5のアライメントに利用される。
【0024】
Z軸ステージ22は、Z軸方向に沿って照射光学系12を平行移動させることができる。Z軸方向は、ウェーハ5の主表面と実質的に垂直である。Z軸ステージ22の駆動によって、カメラ127とウェーハ5との距離を調整できる。Z軸ステージ22は、カメラ127によってウェーハ5を撮像するときのオートフォーカスに使用される。
【0025】
Z軸ステージ22は、ステージコントローラ24を介して制御・画像処理装置18に電気的に接続されている。ステージコントローラ24は、制御・画像処理装置18からステージ駆動命令を受け取る。このステージ駆動命令は、Z軸ステージ22の移動の向きおよび移動量をステージコントローラ24に指示する。ステージコントローラ24は、ステージ駆動命令に応答してステージ駆動信号を生成し、このステージ駆動信号をZ軸ステージ22に送る。Z軸ステージ22は、このステージ駆動信号に応答して駆動する。この結果、Z軸ステージ22は、制御・画像処理装置18が指示する向きおよび移動量だけ照射光学系12を移動させる。
【0026】
XYθステージ14は、ウェーハ5の主表面と実質的に平行な平面内で、ウェーハ5およびチャック15を平行移動および回転させることができる。XYθステージ14は、ウェーハ5およびチャック15をX方向に沿って平行移動させることができる。また、XYθステージ14は、X方向と直交するY方向に沿ってウェーハ5およびチャック15を平行移動させることができる。さらに、XYθステージ14は、XY平面に垂直なZ軸の周りにウェーハ5およびチャック15を回転させることができる。XYθステージ14は、照射光学系12から出射するレーザビームに対して相対的にウェーハ5を移動させることができる。したがって、XYθステージ14の駆動により、ウェーハ5におけるレーザビームの照射位置を変えることができる。
【0027】
XYθステージ14は、ステージコントローラ17を介して制御・画像処理装置18に電気的に接続されている。ステージコントローラ17は、制御・画像処理装置18からステージ駆動命令を受け取る。このステージ駆動命令は、ステージ14の移動方向および移動量をステージコントローラ17に指示する。ステージコントローラ17は、ステージ駆動命令に応答してステージ駆動信号を生成し、このステージ駆動信号をXYθステージ14に送る。XYθステージ14は、このステージ駆動信号に応答して駆動する。この結果、XYθステージ14は、制御・画像処理装置18が指示する移動方向および移動量だけウェーハ5を移動させる。
【0028】
SQUID磁束計16は、ウェーハ5の上方に設置されている。SQUID磁束計16は、ウェーハ5へのレーザ光照射によって発生する磁場を検出する。赤外レーザ光がウェーハ5に照射されると、熱起電力または光起電力が発生する。この熱起電力または光起電力は、ウェーハ5内に電流を生じさせる。この電流によって、磁場が誘起される。この磁場は、ウェーハ5の構造を反映する。SQUID磁束計16は、この誘起磁場を検出する。SQUID磁束計16は、検出した磁場の強度に応じた出力電圧信号(計測磁場信号)を生成する。この信号は、SQUIDコントローラ19を介して制御・画像処理装置18へ送られる。
【0029】
SQUID磁束計16は、SQUIDコントローラ19を介して、制御・画像処理装置18に電気的に接続されている。SQUIDコントローラ19は、制御・画像処理装置18からの命令にしたがって、SQUID磁束計16を作動させ、またはSQUID磁束計16の動作を停止させる。SQUIDコントローラ19は、制御・画像処理装置18からSQUID作動命令を受け取ると、SQUID磁束計16に作動電力を供給する。これによりSQUID磁束計16が作動し、磁場が検出される。SQUIDコントローラ19は、制御・画像処理装置18からSQUID停止命令を受け取ると、SQUID磁束計16への作動電力の供給を停止する。これにより、SQUID磁束計16は、その動作を停止する。
【0030】
制御・画像処理装置18は、IRレーザ光源10、XYθステージ14、SQUID磁束計16、Z軸ステージ22、レボルバ125および照明装置26の動作を制御する。制御・画像処理装置18は、照射光学系12内に配置された光スキャナ122の動作も制御する。
【0031】
制御・画像処理装置18は、ウェーハ5へのレーザ光照射によって誘起された磁場の分布を画像化することができる。制御・画像処理装置18は、ウェーハ5上におけるレーザ光の照射位置をピクセル位置に対応付ける。制御・画像処理装置18は、ウェーハ5上のある位置にレーザ光を照射したときの計測磁場信号レベルを、その照射位置に対応付けられたピクセルの輝度に変換する。これにより、ウェーハ5へのレーザ光照射によって誘起された磁場の画像データが得られる。以下では、この画像を「SQUID画像」と呼ぶことにする。SQUID画像データは、磁場の分布を示す磁場分布データでもある。SQUID画像データは、画像信号の形で処理されることがある。制御・画像処理装置18は、ダイ52の各々についてSQUID画像データを算出する。
【0032】
制御・画像処理装置18は、SQUID画像データを用いて各ダイ52内の欠陥の有無を判定する。制御・画像処理装置18は、ダイ52内に欠陥が存在すると判定すると、その欠陥の位置を示す画像データを生成する。制御・画像処理装置18は、フォトダイオード11の出力信号を受け取る。この出力信号は、ダイ52の反射画像を表す。制御・画像処理装置18は、必要に応じて、ダイ52の反射画像に欠陥位置を重ねた画像データを生成する。制御・画像処理装置18は、生成した画像データを表示装置20に送る。
【0033】
表示装置20は、制御・画像処理装置18から画像データを受け取る。表示装置20は、この画像データにしたがって画像を画面上に表示する。
【0034】
以下では、非破壊検査装置1による検査処理を説明する。装置1は、ウェーハアライメント、試料の走査、欠陥の有無の判定、および結果表示を実行する。
【0035】
非破壊検査装置1は、まず、近赤外線カメラ127を用いてウェーハアライメントを実行する。制御・画像処理装置18は、照明装置26を発光させ、ウェーハ5の裏面全体に近赤外照明光を照射する。ウェーハ5によって反射された照明光は、対物レンズ126、レボルバ125および光路設定部124を通過して、カメラ127に入射する。これにより、カメラ127はウェーハ5を裏面側から撮像し、撮像信号を制御・画像処理装置18へ送る。なお、上述のように、ウェーハ5は、カメラ127の視野内に位置するようにプリアライメントされている。制御・画像処理装置18は、必要に応じてZ軸ステージ22を駆動し、オートフォーカスを行う。この後、制御・画像処理装置18は、撮像されたウェーハ画像の輝度を計測し、最適な輝度が得られるように照明装置26の発光量を制御する。
【0036】
次いで、制御・画像処理装置18は、撮像されたウェーハ画像に基づいて、ウェーハ5の位置を調整する。制御・画像処理装置18は、撮像されたウェーハ画像と、あらかじめ用意されたリファレンス画像との間でパターンマッチングを行う。そして、制御・画像処理装置18は、マッチング度が最も高くなるように、ウェーハ5の位置を調整する。ウェーハ5の位置は、XYθステージ14を用いて変更できる。ウェーハ5の位置調整は、低倍率の対物レンズ126を用いた粗調整と、高倍率の対物レンズ126を用いた微調整を含んでいる。これに応じて、粗調整用のリファレンス画像と、微調整用のリファレンス画像とがあらかじめ用意される。始めに粗調整を行い、次に微調整を行う。低倍率と高倍率の対物レンズ126は、レボルバ125を回転させることにより切り換えられる。
【0037】
ウェーハアライメントが完了すると、非破壊検査装置1は、ウェーハ5上におけるレーザビームの照射位置を移動させて、ウェーハ5上のすべてのダイ52を走査する。照射位置の移動は、例えば、ステージスキャンと呼ばれる方法によって実行できる。ステージスキャンでは、XYθステージ14の移動により、ウェーハ5をレーザビームに対して相対的に移動させる。ステージスキャンでは、レーザビームは固定される。
【0038】
ステージスキャンに代えて、レーザスキャンと呼ばれる方法によって照射位置を移動させることもできる。図3は、レーザスキャンによる照射位置の移動を示す概略図である。レーザスキャンでは、行列状に配列された複数の走査領域61に順次にレーザビームが照射される。これらの走査領域は、同一の形状を有している。走査領域61の形状および大きさは、ダイ52の形状および大きさに加えSQUID磁束計16の感度領域、SQUID磁束計16とウェーハ5との間の距離、および対物レンズ126の倍率に応じて決められる。レーザビームの照射位置は、XYθステージ14の駆動と光スキャナ122によるレーザビームの移動(走査)の双方を用いて移動させられる。矢印60で示されるように、レーザビームの走査は、単一の走査領域内で照射位置を移動させるために使用される。矢印62で示されるように、ステージ14の駆動は、一つ走査領域61から別の走査領域61へ照射位置を移動させるために使用される。
【0039】
ウェーハ5へのレーザビームの照射により、磁場が誘起される。レーザビームの照射中、SQUID磁束計16にはSQUIDコントローラ19から作動電力が供給される。したがって、誘起磁場は、SQUID磁束計16によって検出される。制御・画像処理装置18は、SQUID磁束計16からSQUIDコントローラ19を介して計測磁場信号を受け取る。制御・画像処理装置18は、この計測磁場信号を用いて、各ダイ52のSQUID画像データを生成する。
【0040】
レーザビームの一部は、ウェーハ5によって反射される。反射光は、対物レンズ126、レボルバ125、光路設定部124および光スキャナ122を通過して、フォトダイオード11に入射する。フォトダイオード11は、この反射光を検出し、反射光の強度に応じた出力信号を生成する。フォトダイオード11の出力信号は、制御・画像処理装置18に送られる。レーザビームの照射位置はウェーハ5の全体にわたって移動するから、フォトダイオード11の出力信号は、ウェーハ5の反射画像を示す。制御・画像処理装置18は、フォトダイオード11の出力信号に基づいて、ウェーハ5の反射画像データを生成する。
【0041】
非破壊検査装置1は、各ダイ52のSQUID画像に基づいて、各ダイ52内の欠陥の有無を判定する。SQUID磁束計16によって検出される磁場は、ダイ52に含まれるデバイスの構造に応じて変化する。また、検出される磁場には、レーザビームの照射によって誘起された磁場のほかに、外部磁場がバックグラウンドノイズとして含まれることがある。このため、ダイ52のSQUID画像を単独で観察しても、欠陥を精度良く検出することは難しい。そこで、制御・画像処理装置18は、各ダイ52のSQUID画像データを、あらかじめ用意された良品ダイのSQUID画像データと比較することにより、各ダイ52内の欠陥の有無を判定する。
【0042】
以下では、図4を参照しながら、欠陥判定処理を詳しく説明する。図4は、欠陥判定処理の説明図である。図4の「計測SQUID画像」は、一つのダイ52の走査によって生成されるSQUID画像の一例である。符号71、72は、ダイ52中の欠陥を示している。計測SQUID画像中の破線は、走査経路の一つである。これらの欠陥71および72は、同じ走査経路上に位置するものとする。計測SQUID画像の下に示されている電圧信号は、その計測SQUID画像の画像信号の一部である。この信号部分は、計測SQUID画像中の破線に沿った走査によって生成される。したがって、この信号部分の横軸座標(時間情報)は、その破線によって示される走査経路上のレーザビームの照射位置に対応し、また、計測SQUID画像においてその破線上のピクセル位置に対応する。
【0043】
図4の「良品SQUID画像」は、良品ダイに関する計測磁場信号から生成されるSQUID画像である。良品SQUID画像は、非破壊検査装置1を用いて良品ダイを事前に検査することにより取得される。良品SQUID画像中の破線は、走査経路の一つである。この走査経路は、計測SQUID画像中の破線が示す走査経路と同一である。つまり、これらの走査経路は、それぞれ良品ダイおよび被検査ダイの同一座標を通過する。良品SQUID画像の下に示されている電圧信号は、その良品SQUID画像の画像信号の一部である。この信号部分は、良品SQUID画像中の破線に沿った走査によって生成される。したがって、この信号部分の横軸座標(時間情報)は、その破線によって示される走査経路上のレーザビームの照射位置に対応し、また、良品SQUID画像においてその破線上のピクセル位置に対応する。
【0044】
計測SQUID画像中の欠陥71は、良品ダイの同一箇所に比べて高い輝度を有する。つまり、欠陥71は、プラスの輝度方向を有している。これは、欠陥71の走査により検出される磁場強度が、良品ダイの同一箇所の走査により検出される磁場強度より高いことに起因する。このような欠陥をプラス欠陥と呼ぶことにする。一方、欠陥72は、良品ダイの同一箇所に比べて低い輝度を有する。つまり、欠陥72は、マイナスの輝度方向を有している。これは、欠陥72の走査により検出される磁場強度が、良品ダイの同一箇所の走査により検出される磁場強度より低いことに起因する。このような欠陥をマイナス欠陥と呼ぶことにする。このように、欠陥には、SQUID磁束計16によって検出される磁場強度を高くするものと低くするものとがある。
【0045】
制御・画像処理装置18は、各ダイ52の欠陥の有無を検査するために、各ダイ52の計測SQUID画像を良品SQUID画像と比較する。具体的には、制御・画像処理装置18は、計測SQUID画像データから良品SQUID画像データを減算して、差画像データを生成する。生成された差画像は、図4の右側に「減算SQUID画像」として示されている。理想的な差画像では、欠陥のみが表示される。
【0046】
図4において、差画像の下に示されている電圧信号は、その差画像の画像信号の一部である。この信号部分は、差画像中の破線に沿った走査によって得られる。差画像信号では、欠陥71が信号の山71a、すなわち信号レベルの上昇として現れる。また、差画像信号では、欠陥72が信号の谷72b、すなわち信号レベルの降下として現れる。このように、差画像信号の山は、被検査ダイ52のプラス欠陥を示す。また、差画像信号の谷は、被検査ダイ52のマイナス欠陥を示す。
【0047】
制御・画像処理装置18は、この差画像信号のレベルを所定のしきい値と比較する。制御・画像処理装置18は、二つの異なるしきい値を有している。以下では、高い方のしきい値を第1しきい値、低い方のしきい値を第2しきい値と呼ぶことにする。図4では、第1しきい値が破線81で、第2しきい値が破線82でそれぞれ示されている。この実施形態では、第1しきい値は正値であり、第2しきい値は負値である。制御・画像処理装置18は、差画像信号のレベルが第1しきい値以上または第2しきい値以下の場合に、欠陥が検出されたと判定する。第1しきい値以上の一連の信号部分および第2しきい値以下の一連の信号部分が、それぞれ一つの欠陥と認識される。二つのしきい値を用いるのは、プラス欠陥とマイナス欠陥を判別するためである。
【0048】
図5は、二つのしきい値の算出方法を説明するための図である。第1および第2しきい値は、装置1を用いて、二つの良品ダイのそれぞれについてSQUID画像データを取得することにより算出される。この算出は、制御・画像処理装置18が実行する。制御・画像処理装置18は、これらのSQUID画像データの一方から他方を減算して差画像データを生成し、その差画像の輝度ヒストグラムを算出する。制御・画像処理装置18は、輝度ヒストグラムの標準偏差も算出する。第1しきい値は、(輝度ヒストグラムのピーク値)+(標準偏差のk倍)によって算出される。第2しきい値は、(輝度ヒストグラムのピーク値)−(標準偏差のk倍)によって算出される。ここで、kは所定の定数である。kの値は、非破壊検査装置1のオペレータが任意に設定できる。
【0049】
また、このしきい値の算出は、ダイ中の同一位置をウェーハ全体でサンプリングして、ダイを構成するピクセル単位で設定する手法でも対応が可能である。
【0050】
制御・画像処理装置18は、より適切な第1および第2しきい値を得るために、マージ機能を有している。マージ機能は、しきい値を設定するためのサンプル数を増やす機能である。マージ機能は、新たに一つ以上のダイについてSQUID画像を取得し、既存のSQUID画像との間で減算処理を行い、輝度ヒストグラムのサンプル数を増やす。マージ機能を達成するため、輝度ヒストグラムの算出に用いられたSQUID画像は、制御・画像処理装置18内の記憶装置に保存される。
【0051】
制御・画像処理装置18は、第1しきい値以上の差画像信号レベルを与えるピクセル位置にプラス欠陥が存在すると判定する。図4の例では、制御・画像処理装置18は、山71aのうち第1しきい値81以上の部分をプラス欠陥と判定する。また、制御・画像処理装置18は、第2しきい値以下の差画像信号レベルを与えるピクセル位置にマイナス欠陥が存在すると判定する。図4の例では、制御・画像処理装置18は、谷72bのうち第2しきい値82以下の部分をマイナス欠陥と判定する。差画像信号の横軸座標は、SQUID画像のピクセル位置およびダイ52におけるレーザビームの照射位置に対応している。制御・画像処理装置18は、欠陥と判定された信号部分の横軸座標から、その欠陥の位置を算出できる。
【0052】
制御・画像処理装置18は、すべてのダイ52について欠陥の有無を判定すると、判定結果を示す画像のデータを生成する。この画像データは、表示装置20に送られる。これにより、表示装置20の画面上では、検出された欠陥がウェーハマップ上に表示される。また、装置1のオペレータによってダイ52が指定されると、制御・画像処理装置18は、より詳細な結果表示用の画像データを生成する。この画像データも、表示装置20に送られ、画面に表示される。これにより、指定されたダイ52内の欠陥位置情報がそのダイ52の反射画像に重ねて表示される。なお、欠陥は、その種類に応じて異なる表示態様で表示される。例えば、プラス欠陥とマイナス欠陥を違う色で表示してもよい。
【0053】
以下では、非破壊検査装置1の利点を説明する。装置1は、主に、二つの利点を有している。
【0054】
第1に、装置1は、欠陥の種類を判別できる。これは、計測SQUID画像信号と良品SQUID画像信号から得られる差画像信号のレベルを、正負の二つのしきい値と比較するからである。正のしきい値によってプラス欠陥の有無を判定し、負のしきい値によってマイナス欠陥を判定するので、これらの欠陥を判別できる。これら2種類の欠陥の位置は、異なる表示態様で表示される。したがって、装置1のオペレータは、欠陥の種類をその表示態様から確認できる。
【0055】
第2に、装置1は、ウェーハ5の欠陥の有無を精度良く検査することができる。これは、計測SQUID画像信号から良品SQUID画像信号を減算するからである。差画像信号には、ウェーハ5の構造にかかわらず、欠陥のみが山または谷として現れる。バックグラウンドノイズである外部磁場は、その減算によって相殺される。したがって、精度良く欠陥を検出できる。
【0056】
(実施形態2)
以下では、この発明の第2の実施形態を説明する。この実施形態に係る非破壊検査装置は、実施形態1の装置1と同様の構成を有している。しかし、実施形態2の非破壊検査装置は、実施形態1の装置1と異なる欠陥判定処理を採用する。実施形態1では、欠陥の有無を判定するために、ダイ52の計測SQUID画像を、あらかじめ取得した良品ダイのSQUID画像と比較する。しかし、実施形態2では、この代わりに、複数のダイ52の計測SQUID画像同士を比較する。
【0057】
図6および図7を参照しながら、異なるダイ52間のSQUID画像比較による欠陥検出処理を説明する。図6は、この欠陥検出処理の概略説明図である。図7は、この欠陥検出処理の詳細説明図である。
【0058】
図6の左側には、(n−1)番目のダイ52とn番目のダイ52の計測SQUID画像が示されている。ここで、nは2以上の整数である。以下では、(n−1)番目のダイ52をダイ(n−1)と呼び、n番目のダイ52をダイ(n)と呼ぶことにする。これらは、例えば、走査経路に沿って隣接して配置されたダイ52である。符号73、74は、ダイ(n−1)中の欠陥を示している。符号75、76は、ダイn中の欠陥を示している。欠陥73および75は、上述したマイナス欠陥であり、欠陥74および76は、上述したプラス欠陥である。各計測SQUID画像中の破線は、走査経路の一つである。各破線によって示される走査経路は、ダイ(n−1)およびダイ(n)の共通の位置座標を通過する。欠陥73〜76は、いずれも破線の走査経路上に位置するものとする。
【0059】
図6において計測SQUID画像の右側に示される電圧信号は、その計測SQUID画像中の破線に沿った走査により得られる画像信号である。ダイ(n−1)の画像信号には、欠陥73が谷73bとして現れ、欠陥74が山74aとして現れる。同様に、ダイ(n)の画像信号には、欠陥75が谷75bとして現れ、欠陥76が山76aとして現れる。
【0060】
制御・画像処理装置18は、すべてのダイ52に関して、ダイ(n−1)の計測SQUID画像とダイ(n)の計測SQUID画像を比較する。つまり、ダイ(1)とダイ(2)、ダイ(2)とダイ(3)、…ダイ(N−1)とダイ(N)間で、それぞれ計測SQUID画像が比較される。ここで、Nはダイの総数である。具体的には、制御・画像処理装置18は、ダイ(n−1)の計測SQUID画像からダイ(n)の計測SQUID画像を減算して、差画像信号を生成する。差画像信号の一部は、図6の右側に示されている。差画像信号では、欠陥74および75が山74aおよび75aとして現れ、欠陥73および76が谷73bおよび76bとして現れる。このように、この差画像信号の山は、ダイ(n−1)のプラス欠陥またはダイ(n)のマイナス欠陥を示す。また、この差画像信号の谷は、ダイ(n−1)のマイナス欠陥またはダイ(n)のプラス欠陥を示す。差画像信号の横軸座標は、ダイの位置座標に対応する。
【0061】
制御・画像処理装置18は、この差画像信号のレベルを第1および第2のしきい値と比較する。上記実施形態と同様に、第1しきい値は正値であり、第2しきい値は負値である。これらのしきい値の算出方法は、図5を参照して上述した通りである。制御・画像処理装置18は、差画像信号のレベルが第1しきい値以上または第2しきい値以下の場合に、欠陥が検出されたと判定する。第1しきい値以上の一連の信号部分および第2しきい値以下の一連の信号部分が、それぞれ一つの欠陥と認識される。この信号部分の横軸座標は、ダイ(n−1)およびダイ(n)の共通の位置座標に対応する。
【0062】
差画像信号のうち第1しきい値以上の部分は、ダイ(n−1)のプラス欠陥である可能性とダイ(n)のマイナス欠陥である可能性を有する。同様に、第2しきい値以下の部分は、ダイ(n−1)のマイナス欠陥である可能性とダイ(n)のプラス欠陥である可能性を有する。欠陥がどちらのダイに含まれるのかを特定するため、制御・画像処理装置18は、ダイ(n)とダイ(n+1)間の計測SQUID画像の比較結果を利用する。以下では、図7を参照しながら、欠陥検出処理をさらに詳しく説明する。
【0063】
図7の左側には、ダイ(1)〜(6)の計測SQUID画像が示されている。ダイ(1)、ダイ(2)、ダイ(5)およびダイ(6)は、欠陥を有さない。ダイ(3)は、マイナス欠陥77を有している。ダイ(4)は、プラス欠陥78を有している。図7の中央には、相隣る番号のダイ間の差画像信号が示されている。図7において「減算(m−1)−m」(mは、2以上N以下の整数。ここで、Nはダイの総数。)は、ダイ(m−1)の計測SQUID画像信号からダイ(m)の計測SQUID画像信号を減算することを意味する。
【0064】
図7に示されるように、制御・画像処理装置18は、すべてのm値について順次に減算(m−1)−mを実行する。その後、すべての差画像信号について、その信号レベルを第1および第2しきい値と比較する。減算2−3による差画像信号には、第1しきい値81を上回るピーク値を有する山77aが現れている。制御・画像処理装置18は、山77aのうち第1しきい値81以上の部分を欠陥と判定する。この欠陥は、ダイ(2)のプラス欠陥である可能性と、ダイ(3)のマイナス欠陥である可能性がある。
【0065】
減算3−4による差画像信号には、減算2−3による差画像信号の山77aと同じ横軸位置に、第2しきい値82を下回るピーク値を有する谷77bが現れている。制御・画像処理装置18は、谷77bのうち第2しきい値82以下の部分を欠陥と判定する。この欠陥は、ダイ(3)のマイナス欠陥である可能性と、ダイ(4)のプラス欠陥である可能性がある。
【0066】
減算2−3および減算3−4によって共通に予想されるのは、ダイ(3)のマイナス欠陥だけである。したがって、制御・画像処理装置18は、ダイ(3)にマイナス欠陥が存在すると判定する。このように、制御・画像処理装置18は、減算2−3による差画像信号と減算3−4による差画像信号の双方において同一の横軸座標に欠陥が検出されると、ダイ(3)中において、その横軸座標に対応する位置座標に欠陥が存在すると判定する。
【0067】
減算3−4による差画像信号には、第2しきい値82を下回るピーク値を有する谷78bも現れている。制御・画像処理装置18は、谷78bのうち第2しきい値82以下の部分を欠陥と判定する。この欠陥は、ダイ(3)のマイナス欠陥である可能性と、ダイ(4)のプラス欠陥である可能性がある。減算4−5による差画像信号には、減算3−4信号における谷78bと同じ横軸座標に、第1しきい値81を上回るピーク値を有する山78aが現れている。制御・画像処理装置18は、山78aのうち第1しきい値81以上の部分を欠陥と判定する。この欠陥は、ダイ(4)のプラス欠陥である可能性と、ダイ(5)のマイナス欠陥である可能性がある。減算3−4および減算4−5によって共通に予想されるのは、ダイ(4)のプラス欠陥だけである。したがって、制御・画像処理装置18は、ダイ(4)中に欠陥が存在すると判定する。ダイ(4)における欠陥の位置座標は、差画像信号における欠陥の横軸座標から特定される。
【0068】
このように、欠陥制御・画像処理装置18は、減算(n−1)−nによる差画像信号と減算n−(n+1)による差画像信号の双方において同一の横軸座標に欠陥が検出されると、ダイ(n)において、その横軸座標に対応する位置座標に欠陥が存在すると判定する。また、欠陥制御・画像処理装置18は、減算(n−1)−nによる差画像信号で欠陥が検出され、減算n−(n+1)による差画像信号において同一の横軸座標に欠陥が検出されない場合は、ダイ(n−1)に欠陥が存在すると判定する。さらに、欠陥制御・画像処理装置18は、減算n−(n+1)による差画像信号で欠陥が検出され、減算(n−1)−nによる差画像信号において同一の横軸座標に欠陥が検出されない場合は、ダイ(n+1)に欠陥が存在すると判定する。どのダイに欠陥が存在するかが特定されれば、その欠陥が差画像信号において山であるか谷であるかに応じて、その欠陥の種類も特定される。
【0069】
なお、「二つの差画像信号の同一の横軸座標に欠陥が検出される」とは、横軸座標が完全に一致する場合のほか、所定の許容値だけ横軸座標がずれている場合を含んでいてもよい。この場合、二つの差画像の同一画素にそれぞれ欠陥が検出される場合のほか、二つの差画像の欠陥の位置が数ピクセルずれている場合も、同一の画素に欠陥が存在するとみなされる。所定値以内のずれを許容するのは、欠陥の検出位置の誤差を考慮したものである。
【0070】
制御・画像処理装置18は、すべてのダイ52について欠陥の有無を判定すると、判定結果を示す画像を生成する。表示装置20は、その生成された画像を画面上に表示する。この画像の生成および表示は、実施形態1に関して説明した通りである。
【0071】
実施形態2の非破壊検査装置は、実施形態1の装置1と同じ利点を有している。すなわち、実施形態2の非破壊検査装置は、欠陥の種類を判別できる。これは、二つのダイの計測SQUID画像信号から得られる差画像信号のレベルを、正負の二つのしきい値と比較するからである。また、実施形態2の非破壊検査装置は、ウェーハ5の欠陥の有無を精度良く検査することができる。これは、二つのダイ52間で計測SQUID画像信号を減算するからである。
【0072】
(実施形態3)
この発明の第3の実施形態を説明する。図8は、この実施形態に係る非破壊検査装置1aの構成を示す概略図である。装置1aは、3本のレーザビームをウェーハ5に照射する点および3個のSQUID磁束計16a〜16cを備えている点で、1本のレーザビームと1個のSQUID磁束計16を使用する図1の装置1と異なっている。
【0073】
非破壊検査装置1aでは、IRレーザ光源10と光スキャナ122との間にファイバ分岐器25が配置されている。光源10とファイバ分岐器25とは、光ファイバ40を介して光学的に接続されている。ファイバ分岐器25と光スキャナ122とは、3本の光ファイバ43a、43bおよび43cを介して光学的に接続されている。光源10からのレーザ光は、ファイバ分岐器25によって3本のレーザ光に分岐される。これら3本のレーザ光は、それぞれ光ファイバ43a〜43cによって照射光学系12a内へ伝送される。
【0074】
照射光学系12aは、光スキャナ122、光路設定部124、近赤外線カメラ127、集光ズームレンズ128およびレンズ移動機構129を有している。光スキャナ122と光ファイバ43a〜43cの各々との間には、それぞれ図示しないコリメータレンズが配置されている。これらのコリメータレンズは、照射光学系12a内に設置されている。ファイバ分岐器25からの3本のレーザ光は、光ファイバ43a〜43cから出射すると、それぞれコリメータレンズによってレーザビームに変換される。これら3本のレーザビームは、光スキャナ122に向かう。光スキャナ122は、これらのレーザビームを反射して、光路設定部124へ送る。光路設定部124は、これらのレーザビームを集光ズームレンズ128に向かわせる。
【0075】
集光ズームレンズ128は、対物レンズとして機能する。集光ズームレンズ128は、レンズ移動機構129により内部のレンズを移動させる。その結果、レンズの焦点距離が変わるので、ズーム比を調整することができる。
【0076】
レンズ移動機構129は、コントローラ130を介して制御・画像処理装置18に電気的に接続されている。コントローラ130は、制御・画像処理装置18からズーム命令を受け取る。このズーム命令は、レンズ移動機構129の移動の向きおよび移動量をコントローラ130に指示する。コントローラ130は、ズーム命令に応答して駆動信号を生成し、この駆動信号をレンズ移動機構129に送る。レンズ移動機構129は、この駆動信号に応答して駆動する。この結果、レンズ移動機構129は、制御・画像処理装置18が指示する向きおよび移動量だけ集光ズームレンズ128を移動させる。
【0077】
集光ズームレンズ128は、光路設定部124から3本のレーザビームを受光すると、これらのレーザビームをそれぞれ3本の平行な光束に集光する。これらの光束の間隔は、ズームレンズ128のズーム比によって決まる。ズームレンズ128を透過した3本のレーザビームは、XYθステージ14の開口部を通過し、チャック15を透過して、ウェーハ5に照射される。これらのレーザビームはズームレンズ128によって縮小投影されるので、ウェーハ5上でスポット光を成す。これらのレーザビームの照射位置は、等間隔に配置される。なお、近赤外線照明装置26からの照明光も、ズームレンズ128を透過してウェーハ5に照射される。
【0078】
フォトダイオード11には、3本の光ファイバ41a、41bおよび41cを介して照射光学系12に光学的に接続されている。ウェーハ5に照射された各レーザビームの一部は、ウェーハ5によって反射される。3本の反射光は、集光ズームレンズ128、光路設定部124および光スキャナ122を通過して、光ファイバ41a〜41cにそれぞれ入射する。これらの反射光は、光ファイバ41a〜41cによって伝搬され、フォトダイオード11に入射する。
【0079】
ウェーハ5の上方には、3個のSQUID磁束計16a、16bおよび16cが設置されている。磁束計16a〜16cは、等間隔に配置されている。磁束計16a〜16cは、それぞれSQUIDコントローラ19a〜19cを介して、制御・画像処理装置18に電気的に接続されている。磁束計16a〜16cおよびコントローラ19a〜19cの機能は、実施形態1の磁束計16およびコントローラ19と同じである。
【0080】
SQUID磁束計16a〜16cは、位置調整機構28に取り付けられている。位置調整機構28は、ウェーハ5の表面に実質的に平行な平面内で磁束計16a〜16cを移動させ、これらの間隔を調整する。位置調整機構28は、コントローラ29を介して制御・画像処理装置18に電気的に接続されている。コントローラ29は、制御・画像処理装置18から位置調整命令を受け取る。この位置調整命令は、磁束計16a〜16cの間隔をコントローラ29に指示する。コントローラ29は、位置調整命令に応答して駆動信号を生成し、この駆動信号を位置調整機構28に送る。位置調整機構28は、この駆動信号に応答して駆動する。この結果、位置調整機構28は、制御・画像処理装置18が指示する距離にヘッド間隔を調整する。
【0081】
SQUID磁束計16a〜16cと位置調整機構28は、一つの磁場検出装置を構成している。磁束計16a〜16cは、この磁場検出装置の検出ヘッドとして機能する。
【0082】
以下では、非破壊検査装置1aによる検査処理を説明する。装置1aは、ウェーハアライメント、試料の走査、欠陥の有無の判定、および結果表示を実行する。
【0083】
ウェーハアライメントでは、実施形態1と同様にオートフォーカスおよび輝度調整が行われる。この後、制御・画像処理装置18は、カメラ127によって撮像されたウェーハ画像と、あらかじめ用意されたリファレンス画像との間でパターンマッチングを行い、マッチング度が最も高くなるようにウェーハ5の位置を調整する。ウェーハ5の位置は、XYθステージ14を用いて変更できる。ウェーハ5の位置調整は、低倍率のウェーハ画像を用いた粗調整と、高倍率のウェーハ画像を用いた微調整を含んでいる。これに応じて、粗調整用のリファレンス画像と、微調整用のリファレンス画像とがあらかじめ用意される。始めに粗調整を行い、次に微調整を行う。低倍率および高倍率のウェーハ画像は、ズームレンズ128のズーム比を切り換えて撮像される。
【0084】
ウェーハアライメントが完了すると、非破壊検査装置1aは、ウェーハ5上における3本のレーザビームの照射位置を移動させて、ウェーハ5上のすべてのダイ52を走査する。照射位置の移動は、実施形態1に関して説明したステージスキャンおよびレーザスキャンのいずれによっても実行できる。
【0085】
3本のレーザビームは、隣接する3個のダイ52に同時に照射される。これにより、隣接する3個のダイ52が同時に走査される。制御・画像処理装置18は、ウェーハ5の走査を開始する前に、レーザビームの間隔を調整する。これにより、3本のレーザビームが3個のダイ52の実質的に同一の位置座標に同時に照射されるようになる。
【0086】
制御・画像処理装置18は、ウェーハ5の走査を開始する前に、SQUID磁束計16a〜16cの間隔も調整する。これにより、3個の磁束計16a〜16cが、それぞれ3本のレーザビームの照射位置に対向するように位置決めされる。
【0087】
3本のレーザビームを用いたウェーハ5の走査により、3個のダイ52で同時に磁場が誘起される。各ダイ52の誘起磁場は、SQUID磁束計16a〜16cによって検出される。制御・画像処理装置18は、SQUID磁束計16a〜16cからの計測磁場信号を用いて、3個のダイ52のSQUID画像データを生成する。このように、この実施形態では、3個のダイ52のSQUID画像データが一括して取得される。非破壊検査装置1aは、3個のダイ52の一括走査を繰り返すことにより、ウェーハ5上のすべてのダイ52を走査する。
【0088】
各レーザビームの一部は、ウェーハ5によって反射され、フォトダイオード11に到達する。各レーザビームが一つのダイ52を走査すれば、フォトダイオード11の出力信号は、そのダイ52の反射画像を示すことになる。制御・画像処理装置18は、フォトダイオード11の出力信号に基づいて、ダイ52の反射画像データを生成する。この実施形態では3個のダイ52が同時に走査されるので、3個のダイ52の反射画像が一括して取得される。
【0089】
非破壊検査装置1は、各ダイ52のSQUID画像に基づいて、各ダイ52内の欠陥の有無を判定する。欠陥判定処理は、図7を参照して上述したものと同じである。つまり、制御・画像処理装置18は、複数のダイ52の計測SQUID画像同士を比較して、ダイ52中の欠陥の有無を判定する。検出された欠陥の位置情報は、上記実施形態と同様にして、表示装置20の画面上に表示される。
【0090】
なお、ウェーハ5は、ダイ52が3個並んでいない部分を含んでいる可能性もある。この場合、制御・画像処理装置18は、実施形態1と同様に被検査ダイを良品ダイと比較するか、あるいは2個の被検査ダイを比較することによって、欠陥の有無を判定する。
【0091】
実施形態3の非破壊検査装置1aは、実施形態2の非破壊検査装置と同じ利点に加えて、次のような利点を有している。すなわち、非破壊検査装置1aは、3個のダイ52を同時に走査するので、比較に必要なSQUID画像データを迅速に取得できる。したがって、装置1aは、ウェーハ5を高速に検査できる。
【0092】
3個のダイについてSQUID画像データを一括して取得することは、本実施形態で採用する欠陥判定処理において重要な意義を有する。この欠陥判定処理では、第1のダイと第2のダイの比較によって検出された欠陥がどちらのダイに存在するかを特定するために、第2のダイと第3のダイの比較結果を利用する。この実施形態では第1〜第3ダイのSQUID画像データを一括して取得できるので、第1および第2ダイ間の比較ならびに第2および第3ダイ間の比較をリアルタイムで実行することが可能である。これにより、ウェーハ5の検査をいっそう迅速に行える。
【0093】
第1および第2ダイ間の比較ならびに2および第3ダイ間の比較をリアルタイムで実行する場合、1個のダイが、連続する2回の一括走査で重複して走査されるようにするとよい。具体的に述べると、第i回目の一括走査では、ダイ(2i−1)、ダイ(2i)およびダイ(2i+1)(ここで、iは自然数)が同時に走査される。例えば、1回目の一括走査でダイ(1)、ダイ(2)およびダイ(3)を走査し、2回目の一括走査でダイ(3)、ダイ(4)、ダイ(5)を走査する。ダイ(3)は、1回目と2回目の一括走査で重複して走査される。この場合、1回目の一括走査に応じて、ダイ(1)とダイ(2)の比較およびダイ(2)とダイ(3)の比較をリアルタイムに実行できる。また、2回目の一括走査によって、ダイ(3)とダイ(4)の比較およびダイ(4)とダイ(5)の比較をリアルタイムに実行できる。
【0094】
逆に、二つの一括走査でダイの重複がない場合、非破壊検査装置1aは、少なくとも一部のダイについてSQUID画像信号を保存しなければならない。例えば、1回目の一括走査でダイ(1)、ダイ(2)およびダイ(3)を走査し、2回目の一括走査でダイ(4)、ダイ(5)、ダイ(6)を走査するとする。ダイ(3)とダイ(4)の比較を実行するためには、1回目の走査により取得されたダイ(3)のSQUID画像データを保存しておく必要がある。このため、ダイ間のSQUID画像データを完全にリアルタイムで比較することはできない。上述のように、連続する二つの一括走査で一つのダイを重複して走査すれば、ダイのSQUID画像データを保存する必要がなくなり、ダイ間のSQUID画像データをリアルタイムに比較できる。
【0095】
(実施形態4)
この発明の第4の実施形態を説明する。図9は、この実施形態に係る非破壊検査装置1bの構成を示す概略図である。装置1bは、照射光学系の構成が実施形態3の非破壊検査装置1aと異なっている。実施形態3の装置1aでは、欠陥検出の際、集光ズームレンズ128のズーム比がダイ52の間隔によって決定されてしまう。これに対し、実施形態4は、対物レンズとしてのズームレンズの使用を避けている。以下では、装置1bの照射光学系12bを中心に説明する。
【0096】
照射光学系12bは、3本の鏡筒30a、30bおよび30c、位置調整機構32、ビームスプリッタ35、ならびに近赤外線カメラ127を有している。位置調整機構32は、鏡筒30a〜30cに取り付けられている。鏡筒30a〜30cは、それぞれ光スキャナ31a〜31cを収容している。光スキャナ31a〜31cは、それぞれ光ファイバ43a〜43cを介してファイバ分岐器25に光学的に接続されている。また、光スキャナ31a〜31cは、それぞれ光ファイバ41a〜41cを介してフォトダイオード11に光学的に接続されている。
【0097】
光スキャナ31a〜31cと光ファイバ43a〜43cの間には、それぞれ図示しないコリメータレンズが配置されている。これらのコリメータレンズは、鏡筒30a〜30cにそれぞれ収容されている。ファイバ分岐器25からの3本のレーザ光は、光ファイバ43a〜43cから出射すると、それぞれコリメータレンズによってレーザビームに変換される。これら3本のレーザビームは、それぞれ光スキャナ31a〜31cに向かう。光スキャナ31a〜31cは、これらのレーザビームを反射して、鏡筒30a〜30c内の対物レンズ(図示せず)へ送る。これらの対物レンズは、それぞれレボルバ(図示せず)に装着されている。これらの対物レンズは、いずれもズームレンズではない。3本のレーザビームは、これらの対物レンズをそれぞれ透過してXYθステージ14に向かう。これらのレーザビームは、XYθステージ14の開口部を通過し、チャック15を透過してウェーハ5に照射される。これらのレーザビームは、対物レンズによって縮小投影されるので、ウェーハ5上でスポット光を成す。
【0098】
光スキャナ31a〜31cと光ファイバ41a〜41cの間には、それぞれ図示しないコンデンサレンズが配置されている。これらのコンデンサレンズは、それぞれ鏡筒30a〜30c内に収容されている。光スキャナ31a〜31cからのレーザ光は、これらのコンデンサレンズによって集光され、それぞれ光ファイバ41a〜41cに入射する。
【0099】
光スキャナ31a〜31cは、スキャンコントローラ37を介して制御・処理装置18に電気的に接続されている。スキャンコントローラ37は、制御・画像処理装置18からスキャン命令を受け取る。このスキャン命令は、光スキャナ31a〜31cによるレーザビームの反射角度をスキャンコントローラ37に指示する。スキャンコントローラ37は、スキャン命令に応答してスキャナ駆動信号を生成し、このスキャナ駆動信号を光スキャナ31a〜31cに送る。光スキャナ31a〜31cは、共通のスキャナ駆動信号に応答して駆動する。この結果、光スキャナ31a〜31cは、制御・画像処理装置18が指示する角度にレーザビームを反射する。反射角度を連続的に変化させれば、レーザビームが移動してウェーハ5を走査する。制御・画像処理装置18は、光スキャナ31a〜31cに共通の走査を行わせる。
【0100】
位置調整機構32は、ウェーハ5の表面に実質的に平行な平面内で鏡筒30a〜30cを移動させ、これらの鏡筒の間隔を調整する。位置調整機構32は、コントローラ38を介して制御・画像処理装置18に電気的に接続されている。コントローラ38は、制御・画像処理装置18から位置調整命令を受け取る。この位置調整命令は、鏡筒30a〜30cの間隔をコントローラ38に指示する。コントローラ38は、位置調整命令に応答して駆動信号を生成し、この駆動信号を位置調整機構32に送る。位置調整機構32は、この駆動信号に応答して駆動する。この結果、位置調整機構32は、制御・画像処理装置18が指示する距離に鏡筒の間隔を調整する。これに応じて、3本のレーザビームの間隔が調整される。
【0101】
中央の鏡筒30bには、ビームスプリッタ33が収容されている。鏡筒30bと近赤外線照明装置26との間には、ビームスプリッタ35が配置されている。照明装置26からの照明光は、光ファイバ42を介してビームスプリッタ35へ送られる。この照明光は、ビームスプリッタ35を透過して、鏡筒30b内のビームスプリッタ33に入射する。ビームスプリッタ33によって反射された照明光は、鏡筒30b内の対物レンズを透過してウェーハ5に照射される。ウェーハ5で反射された照明光は、ビームスプリッタ33および35を介して近赤外線カメラ127に受光される。これにより、ウェーハ5を撮像できる。撮像された画像は、ウェーハアライメントに使用される。
【0102】
以下では、非破壊検査装置1bによる検査処理を説明する。装置1bは、ウェーハアライメント、試料の走査、欠陥の有無の判定、および結果表示を実行する。
【0103】
ウェーハアライメントは実施形態1と同様に実行される。粗調整用のウェーハ画像と微調整用のウェーハ画像は、低倍率と高倍率の対物レンズを切り換えることにより撮像される。
【0104】
ウェーハアライメントが完了すると、非破壊検査装置1bは、ウェーハ5上における3本のレーザビームの照射位置を移動させて、ウェーハ5上のすべてのダイ52を走査する。照射位置の移動は、実施形態1に関して説明したステージスキャンおよびレーザスキャンのいずれによっても実行できる。
【0105】
3本のレーザビームは、隣接する3個のダイ52に同時に照射される。これにより、隣接する3個のダイ52が一括走査される。制御・画像処理装置18は、ウェーハ5の走査を開始する前に、レーザビームの間隔を調整する。このビーム間隔の調整により、3本のレーザビームが3個のダイ52の実質的に同一の位置座標に同時に照射されるようになる。
【0106】
制御・画像処理装置18は、ウェーハ5の走査を開始する前に、SQUID磁束計16a〜16cのヘッドの間隔も調整する。3個のヘッドは、3本のレーザビームの照射位置に対向するように位置決めされる。
【0107】
3本のレーザビームを用いたウェーハ5の走査により、3個のダイ52で同時に磁場が誘起される。各ダイ52の誘起磁場は、SQUID磁束計16a〜16cによって検出される。これにより、実施形態3と同様に、3個のダイ52のSQUID画像データが一括して取得される。
【0108】
各レーザビームの一部は、ウェーハ5によって反射され、フォトダイオード11に到達する。制御・画像処理装置18は、フォトダイオード11の出力信号に基づいて、ダイ52の反射画像データを生成する。実施形態3と同様に、3個のダイの反射画像が一括して取得される。
【0109】
ウェーハ5の走査の後、非破壊検査装置1は、各ダイ52のSQUID画像に基づいて、各ダイ52内の欠陥の有無を判定する。欠陥判定処理は、実施形態3と同じである。検出された欠陥の位置情報は、上記実施形態と同様にして、表示装置20の画面上に表示される。
【0110】
実施形態4の非破壊検査装置1bは、実施形態3の非破壊検査装置1aと同じ利点を有している。すなわち、非破壊検査装置1bは、ウェーハ5の欠陥をその種類を判別しながら精度良く検査できる。さらに、装置1bは、3個のダイ52を同時に走査するので、比較に必要なSQUID画像データを迅速に取得し、ウェーハ5を高速に検査できる。
【0111】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0112】
【発明の効果】
この発明の非破壊検査装置は、二つの磁場分布データ間の差分データを求め、その差分データを二つのしきい値と比較するので、2種類の欠陥を判別できる。また、差分データを求めるための減算によってバックグラウンドノイズが相殺されるので、精度良く欠陥を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の非破壊検査装置の構成を示す概略図である。
【図2】ウェーハ5の表面を示す概略平面図である。
【図3】ウェーハ5の走査方法の一例を示す概略平面図である。
【図4】被検査ダイと良品ダイとのSQUID画像の比較による欠陥判定処理の説明図である。
【図5】第1および第2しきい値の算出方法の説明図である
【図6】異なるダイ間のSQUID画像比較による欠陥判定処理の概略説明図である。
【図7】図6の欠陥判定処理の詳細説明図である。
【図8】第3実施形態の被破壊検査装置1aの構成を示す概略図である。
【図9】第4実施形態の被破壊検査装置1bの構成を示す概略図である。
【符号の説明】
1、1a、1b…非破壊検査装置、5…ウェーハ、10…赤外レーザ光光源、11…フォトダイオード、12…照射手段としての照射光学系、14…走査手段としてのXYθステージ、16…磁場検出手段としてのSQUID磁束計、18…減算手段、比較手段、判定手段および画像生成手段としての制御・画像処理装置、20…表示装置、52…ダイ、31a〜31cおよび120…走査手段としての光スキャナ。

Claims (9)

  1. 試料に設けられた所定の構造の欠陥を検出する非破壊検査装置であって、
    前記試料にレーザ光を照射する照射手段と、
    前記試料上における前記レーザ光の照射位置を移動させて前記試料を走査する走査手段と、
    前記試料の走査によって発生する磁場を検出し、磁場分布データを取得する磁場検出手段と、
    前記磁場分布データおよび所定の標準分布データの一方から他方を減算して差分データを生成する減算手段と、
    前記差分データを正の第1しきい値および負の第2しきい値と比較する比較手段と、
    前記レーザ光の一つの照射位置に対応する前記差分データが前記第1しきい値以上のとき、当該照射位置に第1の種類の欠陥が存在すると判定し、前記レーザ光の一つの照射位置に対応する前記差分データが前記第2しきい値以下のとき、当該照射位置に第2の種類の欠陥が存在すると判定する判定手段と、
    を備える非破壊検査装置。
  2. 試料上の同一の形状を有する複数の領域の各々について、その領域に設けられた所定の構造の欠陥を検出する非破壊検査装置であって、
    前記試料にレーザ光を照射する照射手段と、
    前記試料上における前記レーザ光の照射位置を移動させて前記試料上の前記領域を走査する走査手段と、
    前記領域の走査によって発生する磁場の強度を検出し、磁場分布データを取得する磁場検出手段と、
    第1の前記領域の磁場分布データから第2の前記領域の磁場分布データを減算して第1の差分データを生成するとともに、前記第2領域の磁場分布データから第3の前記領域の磁場分布データを減算して第2の差分データを生成する減算手段と、
    前記第1差分データを正の第1しきい値および負の第2しきい値と比較するとともに、前記第2差分データを前記第1および第2しきい値と比較する比較手段と、
    前記比較手段による比較の結果に応じて、前記第2領域における欠陥の有無を判定する判定手段と、
    を備え、
    前記判定手段は、
    前記第1、第2および第3領域の共通の座標において前記第1差分データが前記第2しきい値以下かつ前記第2差分データが前記第1しきい値以上のとき、前記第2領域中の当該座標に第1の種類の欠陥が存在すると判定し、
    前記第1、第2および第3領域の共通の座標において前記第1差分データが前記第1しきい値以上かつ前記第2差分データが前記第2しきい値以下のとき、前記第2領域中の当該座標に第2の種類の欠陥が存在すると判定する
    非破壊検査装置。
  3. 前記照射手段は、3本のレーザ光をそれぞれ3個の前記領域に同時に照射し、
    前記走査手段は、前記3本のレーザ光の照射位置をそれぞれ前記3個の領域内で移動させて、前記3個の領域を一括走査し、この一括走査を繰り返すことにより、すべての前記領域を走査し、
    前記第1、第2および第3領域は、1回の前記一括走査によって走査される前記3個の領域である
    請求項2記載の非破壊検査装置。
  4. 前記走査手段は、連続する2回の前記一括走査において1個の前記領域を重複して走査する、請求項3記載の非破壊検査装置。
  5. 前記走査手段は、
    前記3本のレーザ光をそれぞれ移動させる3個の光スキャナと、
    前記3個の光スキャナを移動させて、前記3本のレーザ光の間隔を変更するスキャナ位置調整機構と、
    を備えている
    請求項3または4記載の非破壊検査装置。
  6. 前記磁場検出手段は、個別に磁場を検出して前記磁場分布データを取得する3個の検出ヘッドを有している、請求項3〜5のいずれかに記載の非破壊検査装置。
  7. 前記磁場検出手段は、前記3個の検出ヘッドを移動させてこれらの間隔を変更するヘッド位置調整機構をさらに備えている、請求項6記載の非破壊検査装置。
  8. 前記判定手段によって判定された欠陥の位置を示す画像を生成する画像生成手段と、
    前記画像生成手段によって生成された画像を画面上に表示する表示装置と、
    をさらに備える請求項1または2記載の非破壊検査装置であって、
    前記画像において前記第1の種類の欠陥は、第1の表示態様で表示され、
    前記画像において前記第2の種類の欠陥は、前記第1表示態様と異なる第2の表示態様で表示される
    請求項1または2記載の非破壊検査装置。
  9. 前記第1および第2しきい値を算出するしきい値決定手段をさらに備える請求項1または2記載の被破壊検査装置であって、
    前記しきい値決定手段は、
    二つの正常な試料の磁場分布データの一方から他方を減算して、正常試料間の差分データを生成し、
    前記正常試料間差分データのヒストグラムを算出するとともに、前記正常試料間差分データの標準偏差を算出し、
    前記ヒストグラムにおいて最大の頻度を有する差分データ値を特定し、
    前記最大の頻度を有する差分データ値に前記標準偏差の定数倍を加算して前記第1しきい値を算出し、
    前記最大の頻度を有する差分データ値から前記標準偏差の定数倍を減算して前記第2しきい値を算出する
    請求項1または2記載の非破壊検査装置。
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