JP2004091379A - 新規肝障害抑制剤 - Google Patents

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Yasushi Arimoto
有本 靖
Hiroyuki Suganuma
菅沼 大行
Takahiro Inaguma
稲熊 隆博
Kimio Sugiyama
杉山 公男
Tatsuya Morita
森田 達也
Hirokazu Kawagishi
河岸 洋和
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Abstract

【課題】安全かつ調製が容易な、肝障害抑制剤を提供する。
【解決手段】ナツメグ又はナツメグから有機溶媒を用いて抽出された抽出物もしくはその分画物を、肝障害抑制剤の有効成分とする。シリカゲルクロマトグラフにより精製し、有効成分としてミリスチンであることを確認した。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、肝障害抑制剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
肝臓障害のうち急性肝障害についてはある程度研究も進み種々の治療が行われているが、慢性肝障害については原因等、不明な点が多く効果的な治療方法は確立されていない。この慢性肝障害は免疫系を介する肝障害であると考えられている。
【0003】
慢性肝障害の治療には、インターフェロンなどの抗ウイルス剤や免疫抑制剤のような原因治療剤の投与が試みられているが、副作用などの問題が多い。一方、従来より、チオプロニンやプロトポルフィリン二ナトリウム、ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンなどの肝機能改善剤による治療が行なわれているが、対症療法に過ぎないことや、それぞれ、中毒性表皮壊死症や胃腸障害、頭痛、腹痛などの副作用の問題点があり、安全な医薬品の開発が望まれていた。
【0004】
一方、ナツメグは、ニクズク科のニクズク(Myristica fragrans)の種子中の仁の部分を乾燥させたものであり、スパイスとしてよく利用されている。また、その主要なフレーバー成分としてミリスチシンが知られている。
【0005】
このナツメグは、スパイスとしてだけでなく生薬としても利用されており、健胃作用(生薬学 第4版、廣川書店、p276)があるといわれている。さらに、痛風および高尿酸血症の改善作用(特開2002−121145)や血管平滑筋収縮抑制作用(特開平11−080013)、高脂血症の予防、改善作用(特開昭60−204722)が知られている。また、主要なフレーバー成分であるミリスチシンには、経皮吸収促進作用(特開平10−251164)やベンゾピレン誘発腫瘍形成の阻害作用(Carcinogenesis, Vol. 13, p1921−1923(1992))があることが知られているが、肝障害抑制作用については全く知られていなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記観点からなされたものであり、安全かつ調製が容易な肝障害抑制剤、特に慢性肝障害に効果的な肝障害抑制剤を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、ナツメグ処理物又はナツメグ処理物から有機溶媒を用いて抽出された抽出物もしくはその分画物に肝障害を抑制する作用(以下、「肝障害抑制作用」ともいう)があることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)ナツメグ又はナツメグから有機溶媒を用いて抽出された抽出物もしくはその分画物を有効成分として含有する、肝障害抑制剤。
(2)前記抽出物は、ナツメグからヘキサン又は70%エタノールを用いて抽出されたものである、(1)に記載の肝障害抑制剤。
(3)前記分画物は、ナツメグからヘキサンを用いて抽出された抽出物をシリカゲルカラムによりクロマトグラフ分画することによって得られるものであって、前記分画物は、ヘキサン/酢酸エチルの混合比が97/3の有機溶媒を展開溶媒として、メルク社製シリカゲル60を用いて薄層クロマトグラフィーを行った時、Rf値が0.58〜0.38の範囲にあるものである、(1)に記載の肝障害抑制剤。
(4)下記の式1で表される構造式からなる化合物を有効成分として含有する、肝障害抑制剤。
【0009】
【化2】
Figure 2004091379
(5)前記(1)〜(4)の何れかに記載の肝障害抑制剤を含有する医薬用組成物。
(6)前記(1)〜(4)の何れかに記載の肝障害抑制剤を含有する機能性食品。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
<1>本発明の肝障害抑制剤
本発明の肝障害抑制剤は、ナツメグ又はナツメグから有機溶媒を用いて抽出された抽出物もしくはその分画物を有効成分として含有する。
【0011】
ナツメグの処理物又はナツメグの処理物から有機溶媒を用いて抽出された抽出物もしくはその分画物には、以下の実施例から明らかなように肝障害抑制作用がある。よって、ナツメグ又はナツメグから有機溶媒を用いて抽出された抽出物もしくはその分画物を有効成分として、効果を示すに有効な量含有する剤は、肝障害抑制剤として好適に使用することができる。
【0012】
本発明で、ナツメグの処理物とは、ナツメグを粉砕、摩砕、乾燥、濃縮等を行ったものをいう。
【0013】
また、本発明では、ナツメグの粉末等、ナツメグ処理物を肝障害抑制剤の有効成分としてそのまま用いることも可能ではあるが、さらにこれから有機溶媒を用いて抽出を行い、それにより得られた抽出物もしくは分画物を本発明の肝障害抑制剤の有効成分とすることが好ましい。
【0014】
上記有機溶媒としては、ヘキサン、70%エタノールが好ましく例示できる。
【0015】
上記したナツメグから有機溶媒を用いて抽出される抽出物もしくはその分画物の抽出例を以下に例示するが、本発明はこの例に限定されるものではない。
(1)ヘキサンによる分画
ナツメグの乾燥粉末にヘキサンを加えて攪拌した後、残渣を取り除いた上清をヘキサン抽出液として得る。この抽出液を濃縮させてヘキサンによる抽出物(Fr.Iと表記する)を得る。これにより得られた抽出物を肝障害抑制剤に含有させることができる。
(2)70%エタノールによる分画
上記(1)の操作で得られた残渣に酢酸エチルを加えて攪拌した後、残渣を取り除く。さらにその取り除いた残渣に70%エタノールを加えて攪拌した後、残渣を取り除いた上清を70%エタノール抽出液として得る。この抽出液を濃縮させてエタノールによる抽出物(Fr.IIIと表記する)を得る。これにより得られた抽出物を肝障害抑制剤に含有させることができる。
(3)ヘキサン画分のシリカゲルカラムによる分画
上記(1)の操作で得られたヘキサン画分(Fr.I)を、シリカゲルカラムによりクロマトグラフ分画し、分画物を得る。具体的には組成を変化させたヘキサン/酢酸エチル溶媒を用いてクロマトグラフ分画物を得る。
【0016】
そしてこうして得る分画物は、以下の実施例でも明らかにしている通り、ヘキサン/酢酸エチル=97/3の有機溶媒を展開溶媒として、メルク社製シリカゲル60を用いて薄層クロマトグラフィーを行った時のRf値を指標として最終的に6画分に分けられる(Fr.I−1、Fr.I−2、トリグリセリド画分、Fr.I−3、Fr.I−4、Fr.I−5と表記する)。
【0017】
尚、本発明では、上記のようにして得られた分画物のうち、ヘキサン/酢酸エチル=49/1の有機溶媒を用いて溶出されるFr.I−1画分、ヘキサン/酢酸エチル=19/1の有機溶媒を用いて溶出されるFr.I−2画分、メタノールの有機溶媒を用いて溶出されるFr.I−5画分を本発明の肝障害抑制剤の有効成分として含有させることができる。特に、上記Fr.I−2画分を含有させることが好ましい。
【0018】
ここで、上記Fr.I−1画分は、ヘキサン/酢酸エチルの混合比が97/3の有機溶媒を展開溶媒として、メルク社製シリカゲル60を用いて薄層クロマトグラフィーを行った時、Rf値は0.86付近にある。また、上記Fr.I−2画分は、ヘキサン/酢酸エチルの混合比が97/3の有機溶媒を展開溶媒として、メルク社製シリカゲル60を用いて薄層クロマトグラフィーを行った時、Rf値は0.58〜0.38の範囲にある。また、上記Fr.I−5画分は、ヘキサン/酢酸エチルの混合比が97/3の有機溶媒を展開溶媒として、メルク社製シリカゲル60を用いて薄層クロマトグラフィーを行った時、Rf値は0.11〜0.00の範囲にある。
(4)Fr.I−2のジオールカラムによる分画
上記画分Fr.I−2をさらにジオールカラムに供し、ヘキサンで溶出させ、クロマトグラフ分画物を得る。
【0019】
そしてこうして得られる分画物は、以下の実施例でも明らかにしている通り、ヘキサン/酢酸エチル=95/5の有機溶媒を展開溶媒として、メルク社製シリカゲル60を用いて薄層クロマトグラフィーを行った時のRf値を指標として最終的に6画分に分けられる(Fr.I−2−1、Fr.I−2−2、Fr.I−2−3、Fr.I−2−4、Fr.I−2−5、Fr.I−2−6と表記する)。
【0020】
これにより得られた分画物を肝障害抑制剤に含有させることができる。特に、上記Fr.I−2−5画分を含有させることが好ましい。
【0021】
ここで、上記Fr.I−2−5画分は、ヘキサン/酢酸エチルの混合比が95/5の有機溶媒を展開溶媒として、メルク社製シリカゲル60を用いて薄層クロマトグラフィーを行った時、Rf値は0.27付近にある。
【0022】
そして、該Fr.I−2−5画分は、以下の実施例でも明らかにしている通り、下記の式1で表される構造式からなる化合物に対応する。つまり、Fr.I−2−5画分は、式1で表される構造式からなる化合物である。
【0023】
【化3】
Figure 2004091379
よって、本発明の肝障害抑制剤は、上記式1で表される構造式からなる化合物を有効成分として含むことが好ましい。
【0024】
上記のようにして得られたナツメグの処理物又はナツメグの抽出物もしくはその分画物の各画分における肝障害抑制作用の確認方法としては、後記実施例に示す評価方法を用いることができる。
【0025】
本発明の肝障害抑制剤と、医薬用又は食品用として通常用いられている他の任意成分とを組み合わせれば、肝障害特に慢性の肝障害を抑制することができる医薬用組成物や機能性食品を提供することができる。
<2>本発明の肝障害抑制剤を含有する医薬用組成物。
【0026】
本発明の医薬用組成物は、本発明の肝障害抑制剤が配合されている以外は、通常の医薬用組成物を適用することができる。本発明の肝障害抑制剤は、通常の医薬用組成物で用いられている方法にしたがって配合することができる。本発明の医薬用組成物は、肝障害抑制作用が期待できるものであれば特に限定されるものではない。
【0027】
また、本発明の医薬用組成物の剤型も特に限定されず、一般に製剤上許容される1または2種類以上の担体、賦形剤、統合剤、防腐剤、安定剤、香味剤等と共に混合して、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、水薬、ドリンク剤等の内服剤型とすることが好ましい。このような製剤化は、通常、医薬の製造に用いられる方法に従って製剤化することができる。
【0028】
上記医薬用組成物の投与量としては、疾患の種類、症状、患者の年齢、体重等により異なるが、成人1日当たり、ナツメグの処理物であるナツメグの乾燥粉末を100〜5,000mg、又はナツメグの抽出物(又は分画物)である例えば上記Fr.Iを20〜2,000mg、Fr.I−2−5(ミリスチシン)を1〜100mg含む肝障害抑制剤を含有する医薬用組成物を、1回ないし数回に分けて投与するのが好ましい。
<3>本発明の肝障害抑制剤を含有する機能性食品
本発明の機能性食品は、本発明の肝障害抑制剤が配合されている以外は、通常の食品用組成物を適用することができる。本発明の肝障害抑制剤は、通常の食品用組成物で用いられている方法にしたがって配合することができる。
【0029】
本発明の機能性食品としては、肝障害抑制作用が期待できるものであれば特に限定されるものではないが、種々の食品に、食品として通常用いられている任意成分とともに、食品原料に上記したナツメグの処理物やナツメグの抽出物もしくはその分画物を所要量配合することができる。このナツメグの処理物やナツメグの抽出物もしくはその分画物を配合する際に特に留意することはなく、通常の製造方法により加工製造することにより、健康食品等を含む各種機能性食品を製造することができる。
【0030】
配合量は、食品の種類により異なるが、食品の味を損なわず、且つ十分な肝障害抑制効果を得るためには、食品用組成物全量に対して、ナツメグの処理物であるナツメグの乾燥粉末を0.01〜1.0重量%、又はナツメグの抽出物(又は分画物)である例えば上記Fr.Iを0.005〜0.5重量%、Fr.I−2−5(ミリスチン)0.001〜0.1重量%を割合で配合させるのが好ましい。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
【0032】
【実施例1】<試料抽出方法>
ナツメグ粉末を図1に示す流れに従って分画し、後記の評価に使用した。
(1)ヘキサンによる分画
ナツメグの乾燥粉末500gに5Lのn−ヘキサンを加え十分に攪拌後、残渣を取り除いた上清をヘキサン抽出液として得た。この操作を更に2回繰り返し、計3回の操作により、15Lのヘキサン抽出液を得た。この抽出液をエバポレーターを用いて濃縮させることにより、191.7gの油状濃縮物をヘキサン画分(Fr.I)として得た。
(2)酢酸エチルによる分画
次に上記の操作(1)の残渣に酢酸エチル5Lを加え十分に攪拌後、残渣を取り除いた上清を酢酸エチル抽出液として得た。この操作を更に2回繰り返し、計3回の操作により、15Lの酢酸エチル抽出液を得た。この抽出液をエバポレーターを用いて濃縮乾固させることにより、10.9gの固形物を酢酸エチル画分(Fr.II)として得た。
(3)70%エタノールによる分画
次に上記の操作(2)の残渣に70%エタノール5Lを加え十分に攪拌後、残渣を取り除いた上清を70%エタノール抽出液として得た。この操作を更に2回繰り返し、計3回の操作により、15Lの70%エタノール抽出液を得た。この抽出液をエバポレーターを用いて濃縮乾固させることにより34.8gの固形物を70%エタノール画分(Fr.III)として得た。
以下、各画分の分画率を表1に示す。
【0033】
【表1】
Figure 2004091379
(4)ヘキサン画分のシリカゲルカラムによる分画
操作(1)により得られた油状濃縮物50gを、ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒(49/1)100mlに再溶解し、シリカゲルカラム(メルク社製シリカゲル60、8×57.5cm)に供し、組成を変化させた溶媒により溶出させた。ここで使用した溶出溶媒は、ヘキサン/酢酸エチル(49/1)、ヘキサン/酢酸エチル(19/1)、ヘキサン/酢酸エチル(9/1)、ヘキサン/酢酸エチル(4/1)、ヘキサン/酢酸エチル(3/2)、メタノールであり、この順にカラムに供し、溶出液を経時的に採取することにより分画した。
【0034】
これらの分画物について薄層クロマトグラフィー(メルク社製シリカゲル60、展開溶媒;ヘキサン/酢酸エチル=97/3)を行い、紫外吸収を有するバンドが確認できなくなった時点で、次の溶出溶媒に変更した。これら分画された溶出液の分画物について薄層クロマトグラフィー(メルク社製シリカゲル60、展開溶媒;ヘキサン/酢酸エチル=97/3)を行い、このRf値の結果を指標として、最終的に6画分に分けた。
【0035】
それぞれの画分の収量は、Fr.I−1は0.16g、Fr.I−2は2.41g、トリグリセリド画分は25.66g、Fr.I−3は9.43g、Fr.I−4は4.54g、Fr.I−5は2.95g、であった。
【0036】
各画分の薄層クロマトグラフィーにおけるRf値、分配率および溶出溶媒の組成は表2に示す通りである。
【0037】
【表2】
Figure 2004091379
(5)Fr.I−2のジオールカラムによる分画
操作(4)により得られたFr.I−2(1.79g)をヘキサン3mlに再溶解し、ジオールカラム(ウルトラパックDIOL−40D、5×30cm、山善(株)製)に供し、ヘキサン(800ml、流速20ml/min)で溶出させた。
【0038】
溶出液を経時的に採取することにより分画し、得られた分画物について薄層クロマトグラフィー(メルク社製シリカゲル60、展開溶媒;ヘキサン/酢酸エチル=95/5)を行い、このRf値の結果を指標として、最終的に6画分に分けた。
【0039】
それぞれの画分の収量は、Fr.I−2−1は0.03g、Fr.I−2−2は0.09g、Fr.I−2−3は0.24g、Fr.I−2−4は0.51g、Fr.I−2−5は0.64g、Fr.I−2−6は0.01gであった。
【0040】
各画分の薄層クロマトグラフィーにおけるRf値、分配率は表3に示す通りである。
【0041】
【表3】
Figure 2004091379
上記分画物Fr.I−2−5に対応する化合物の構造を解析した。
【0042】
分析結果を表4に示す。
【0043】
【表4】
Figure 2004091379
その結果、分画物Fr.I−2−5に対応する化合物は、下記の式1の構造のミリスチシンであることを確認した。
【0044】
【化4】
Figure 2004091379
【0045】
【実施例2】<ナツメグ粉末の肝障害抑制効果の評価>
慢性肝炎に対する肝保護作用は、ラットを用いたD−ガラクトサミン+リポ多糖誘導性の肝障害モデルにより評価した。
【0046】
四塩化炭素誘導性の肝障害モデルが急性毒性的な肝障害モデルであるのに対して、このD−ガラクトサミン+リポ多糖誘導性の肝障害モデルは、免疫系を介しての肝障害作用が示唆される慢性肝炎のモデルとされており、臨床試験での評価結果と相関性が高い。
【0047】
評価には、5週齢の雄性ウィスター系ラットを用いた。4〜5日間の予備飼育の後、各群の平均体重がほぼ等しくなるように各群8匹として群分けを行い、それぞれに各試験飼料を10日間摂取させた。
【0048】
試験に用いた飼料の組成を表5に示す。また、試験添加物としてのナツメグ粉末の飼料への添加は、30g/kgとし、ナツメグ粉末とコーンスターチの含有量を422.5g/kg(ナツメグ粉末30g/kg+コーンスターチ392.5g/kg)とした。またコントロール群においては試験添加物を含まず、コーンスターチのみで422.5g/kgとした。
【0049】
【表5】
Figure 2004091379
上記の試験飼料を10日間摂取させた後に、肝障害を誘発するD−ガラクトサミンを250mg/kgおよびリポ多糖(大腸菌由来、Becton Dickinson社製)を10μg/kg腹膜内投与した。そして、その8時間後に被検ラットを屠殺し、採血を行った。
【0050】
この採血した血液を用いて、肝細胞の脱落により血中濃度が上昇することが知られている酵素、すなわち、ALT:アラニン アミノトランスフェラーゼ(GPT)活性を市販の測定キット(和光純薬)により測定した。そして、この酵素活性の増減を肝障害の指標とした。酵素活性の増減の結果を図2に示す。
【0051】
図2に示したとおり、コントロール群では顕著にALT活性値が上昇しており、肝細胞の壊死がおきていることが示唆された。一方、ナツメグ粉末添加飼料で飼育した群は明らかな肝障害抑制作用が観察された。
【0052】
尚、中に示している*印は、コントロール群に対して、危険率5%未満で、統計的に有意な差があることを示す(Student’s t検定)。
【0053】
【実施例3】<ナツメグ分画物の肝障害抑制効果の評価>
慢性肝炎に対する肝保護作用は、マウスを用いたD−ガラクトサミン+リポ多糖誘導性の肝障害モデルにより評価した。
【0054】
評価には、5週齢の雄性ddy系マウスを用いた。4〜5日間の予備飼育の後、各群の平均体重がほぼ等しくなるように各群8匹として群分けを行った。そして、前記の分画物をオリーブ油に溶解させ、表6に記載した投与量になるように、カテーテルを用いてラットの胃の中へ注入した。
【0055】
なお、コントロール群には、オリーブ油のみを、カテーテルを用いてマウスの胃の中へ注入した。
【0056】
【表6】
Figure 2004091379
上記の分画物投与の3時間後に、肝障害を誘発するD−ガラクトサミンを700mg/kgおよびリポ多糖(大腸菌由来、Becton Dickinson社製)を10μg/kg静脈注射した。そして、その8時間後に被検マウスを屠殺し、採血及び肝臓摘出を行った。
【0057】
この採血した血液を用いて、ALT:アラニン アミノトランスフェラーゼ(GPT)活性を市販の測定キット(和光純薬)により測定した。そして、この酵素活性の増減を肝障害の指標とした。酵素活性の増減の結果を図3〜図5にそれぞれ示す。
【0058】
尚、図3〜5中に示している*印は、コントロール群に対して、危険率5%未満で、統計的に有意な差があることを示す(Student’s t検定)。
【0059】
図3に示したとおり、コントロール群では顕著にALT活性値が上昇しており、肝細胞の壊死がおきていることが示唆された。一方、ナツメグ溶媒抽出物の投与群の中では、ヘキサン画分(Fr.I)と70%エタノール画分(Fr.III)において、明らかな肝障害抑制作用が観察された。
【0060】
また、図4に示したとおり、ヘキサン画分(Fr.I)のシリカゲルカラムによる分画物の投与群の中では、Fr.I−2において、肝障害抑制作用が観察された。また、統計的な有意差は認められなかったがFr.I−1及びFr.I−5において肝障害抑制の傾向が見られた。
【0061】
さらに、図5に示したとおり、シリカゲルカラムによる分画物(Fr.I−2)をさらにジオールカラムで分画して得られた分画物Fr.I−2−5(ミリスチシン)は明らかな肝障害抑制作用が観察された。
【0062】
【発明の効果】
本発明により、安全かつ調製が容易な肝障害抑制剤、特に慢性肝障害に効果的な肝障害抑制剤を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の分画方法を説明する概略図。
【図2】実施例2のナツメグ粉末を用いて評価した結果を説明する図。
【図3】実施例3のナツメグの溶媒抽出物を用いて評価した結果を説明する図。
【図4】実施例3のナツメグの抽出物をシリカゲルカラムで分画することにより得られた分画物を用いて評価した結果を説明する図。
【図5】実施例3のナツメグの抽出物のシリカゲルカラムで分画された分画物をさらにジオールカラムで分画することにより得られた分画物(ミリスチシン)を用いて評価した結果を説明する図。

Claims (6)

  1. ナツメグ又はナツメグから有機溶媒を用いて抽出された抽出物もしくはその分画物を有効成分として含有する、肝障害抑制剤。
  2. 前記抽出物は、ナツメグからヘキサン又は70%エタノールを用いて抽出されたものである、請求項1に記載の肝障害抑制剤。
  3. 前記分画物は、ナツメグからヘキサンを用いて抽出された抽出物をシリカゲルカラムによりクロマトグラフ分画することによって得られるものであって、前記分画物は、ヘキサン/酢酸エチルの混合比が97/3の有機溶媒を展開溶媒として、メルク社製シリカゲル60を用いて薄層クロマトグラフィーを行った時、Rf値が0.58〜0.38の範囲にあるものである、請求項1に記載の肝障害抑制剤。
  4. 下記の式1で表される構造式からなる化合物を有効成分として含有する、肝障害抑制剤。
    Figure 2004091379
  5. 前記請求項1〜4の何れかに記載の肝障害抑制剤を含有する医薬用組成物。
  6. 前記請求項1〜4の何れかに記載の肝障害抑制剤を含有する機能性食品。
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