JP2004091303A - 光ファイバ母材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ガラスパイプ2内の大気圧に対する圧力P[kPa]を、−10kPa≦P<0kPaを満たすように設定して、ガラスパイプ2とガラスロッド3との一体化を行う。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、クラッド用ガラスパイプ内に、コア用ガラスロッド、又はコア及びクラッド用ガラスロッドを挿入し、上記ガラスパイプ内を減圧しながら両者を加熱することで、上記ガラスパイプとガラスロッドとの一体化及び延伸を行う光ファイバ母材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、光ファイバにおいてクラッドとなるガラスパイプ内に、光ファイバにおいてコアとなるガラスロッド、又はコア及びクラッドとなるガラスロッドを挿入し、このガラスパイプとガラスロッドとを一体化させて光ファイバ母材を製造する、いわゆるロッドインチューブ法が知られている(例えば、特許文献1参照)。このロッドインチューブ法では、例えばガラスロッドが内挿されたガラスパイプ内を減圧しつつ、このガラスパイプとガラスロッドとの双方を、その軸方向に略リング状のヒータ内に通過させる。こうすることで、ガラスパイプとガラスロッドとがその一端から他端に向かって順次加熱され、溶融したガラスパイプがこのガラスパイプ内外の圧力差によって縮径する。このことによって、ガラスパイプとガラスロッドとが順次一体化して、光ファイバ母材が製造される。
【0003】
こうして製造された光ファイバ母材は線引き工程によって光ファイバとなるわけであるが、この線引き工程を上記ロッドインチューブ法による光ファイバ母材の製造と同時に行う方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
ところで、近年、生産コストの低減化等の観点から、光ファイバ母材を大型化することが求められており、このため、上記光ファイバ母材を大径にすることが行われている。
【0005】
ところが、このような大径の光ファイバ母材をそのまま線引きすると、目標径の光ファイバに安定させるまでに長時間を要することとなってしまい、大量の母材を初期安定化に消費してしまうようになってしまう。その結果、上記光ファイバ母材から光ファイバへの歩留まりが悪化してしまい、本来低コスト化の目的で行った光ファイバ母材の大型化が、逆にその目的を達成できないものとなってしまうという不都合がある。
【0006】
そこで、このような不都合を解消するために、通常は製造された大径の光ファイバ母材を、線引き工程の前に歩留まりが最大となる最適の径まで縮径させるようにしている。そして、この光ファイバ母材の縮径工程を、上記ガラスパイプ及びガラスロッドの一体化による光ファイバ母材の製造と同時に行うことにより、生産性を向上させる方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】
特公昭56−45867号公報
【特許文献2】
特開昭50−85345号公報
【特許文献3】
特開平7−10580号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ロッドインチューブ法による光ファイバ母材の製造においては、ガラスパイプとガラスロッドとの間に生じている隙間を、ガラスパイプを縮径させることによって潰して、ガラスパイプとガラスロッドとを一体化させるようにしている。このため、その製造条件によっては、ガラスパイプとガラスロッドとが偏心した状態で一体化してしまう場合がある。こうしてガラスパイプとガラスロッドとが偏心してしまうと、光ファイバ母材において、光ファイバのコアとなる部分(以下、この部分をコア部という)が偏心してしまうこととなり、それに伴い、この光ファイバ母材を線引きした光ファイバにおいてはコアが偏心してしまうようになる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ガラスパイプとガラスロッドとの一体化及び延伸によって光ファイバ母材を製造するときにコア部の偏心を防止することにあり、ひいてはコアの偏心が抑制された光ファイバを製造することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明者は、ガラスパイプとガラスロッドとを一体化させるときのガラスパイプ内の圧力に着目した。すなわち、従来のロッドインチューブ法による光ファイバの製造方法では、ガラスパイプとガラスロッドとの一体化を確実に行うため、ガラスパイプ内の圧力を極力低くして(ガラスパイプ内の真空度を高めて)、ガラスパイプとガラスロッドとの一体化を行うようにしていた。具体的には、ガラスパイプ内の圧力(ゲージ圧)を−10kPaよりも低く設定していた。
【0011】
このように、ガラスパイプ内の圧力を低く設定することによりガラスパイプ内外の圧力差が大きくなり、ガラスパイプを縮径させる力が高まって、ガラスパイプとガラスロッドとを確実に一体化させることが可能になるものの、ガラスパイプ内の圧力が低いときには、コアの偏心を招いてしまうことが、本発明者が行った実験により確認された。これは、ガラスパイプ内の圧力を低く設定することによりガラスパイプを縮径させる力が高まることで、ガラスロッドが溶融する前の、ガラスパイプとガラスロッドとの間の隙間が大きい状態で、ガラスパイプが急激に縮径してガラスロッドと一体化するためと考えられる。
【0012】
すなわち、この場合は、ガラスパイプとガラスロッドとの一体化のタイミングが早いため、固体状態のガラスロッドがガラスパイプに対して偏心している状態で、ガラスパイプの縮径変形によってガラスパイプとガラスロッドとが一体化してしまい、その結果、光ファイバ母材におけるコア部の偏心を招き、ひいては光ファイバにおけるコアの偏心を招いているものと考えられる。
【0013】
そこで、本発明者が、ガラスパイプ内の圧力を比較的高く設定して、光ファイバ母材を製造したところ、ガラスパイプとガラスロッドとの偏心が抑制された。これは、ガラスパイプ内の圧力が高いことでガラスパイプを縮径させる力が小さくなるが、こうすることで、ガラスパイプの縮径変形は緩やかになって、ガラスロッドが十分に溶融した後に、ガラスパイプがガラスロッドと一体化するようになるためと考えられる。
【0014】
つまり、この場合は、十分に溶融されたガラスロッドが、上記ガラスパイプの縮径変形によってその中心に向かって移動するようになり、ガラスパイプとガラスロッドとが略同軸となった状態で、このガラスパイプとガラスロッドとが一体化するためと考えられる。その結果、光ファイバ母材におけるコア部の偏心が抑制され、ひいては光ファイバにおけるコアの偏心が抑制されると考えられる。
【0015】
しかも、こうしてガラスパイプ内の圧力を比較的高く設定しても、単位時間当たりに一体化するガラスパイプ及びガラスロッドの総ガラス量であるガラス処理量や、ガラスパイプ及びガラスロッドを加熱する加熱温度等を調整することにより、ガラスパイプとガラスロッドとを確実に一体化させることが可能である点を確認して、本発明を完成するに至ったものである。
【0016】
具体的に、本発明は、ガラスロッドが内挿されたガラスパイプ内を減圧しながら、該ガラスパイプ及びガラスロッドの双方を、その一端から他端に向かって軸方向に順次加熱することで上記ガラスパイプとガラスロッドとを順次一体化しつつ、所定の外径に延伸して光ファイバ母材を製造する光ファイバ母材の製造方法に係る。
【0017】
そして、本発明に係る光ファイバ母材の製造方法では、上記ガラスパイプ内の大気圧に対する圧力をP[kPa]としたときに、−10kPa≦P<0kPaを満たすように上記圧力Pを設定して、上記ガラスパイプとガラスロッドとの一体化を行うこととする。
【0018】
この製造方法によると、ガラスパイプ内の大気圧に対する圧力Pを−10kPa以上の比較的高い圧力に設定することにより、上述したように、ガラスパイプを縮径させる力が小さくなり、これにより、ガラスパイプの急激な縮径変形が抑制される。このため、ガラスロッドが、ガラスパイプと略同軸に移動した後に、ガラスパイプとガラスロッドとが一体化するようになり、その結果、ガラスパイプとガラスロッドとの偏心が抑制される。こうして、光ファイバ母材において、そのコア部の偏心が抑制されるため、上記光ファイバ母材を線引きした光ファイバにおけるコアの偏心が抑制される。
【0019】
このように、ガラスパイプ内の大気圧に対する圧力を−10kPa以上に設定した場合においても、ガラス処理量及び加熱温度等の製造条件を適宜設定することによって、ガラスパイプとガラスロッドとを確実に一体化させて、例えばガラスパイプとガラスロッドとを一体化させたときの、パイプ及びロッドの界面における気泡や剥離(以下、界面におけるこうした気泡や剥離を輝点ともいう)の発生を防止することが可能である。
【0020】
ここで、上記ガラスパイプ内の大気圧に対する圧力Pは、大気圧よりも低い限り高い程、光ファイバ母材におけるコア部の偏心が抑制される。例えば上記圧力Pを−5kPa以上とした方が、コアの偏心がより一層抑制されるため好ましい。さらに、上記圧力Pを−3kPa以上とすると、光ファイバ母材においてコア部の偏心がより確実に抑制されるようになる。
【0021】
また、上記ガラスパイプとしては、その外径をD[mm]としたときに、φ100mm≦D≦φ200mmを満たすものとすることが好ましい。これは、ガラスパイプがφ100mm以上の外径を有する場合、このガラスパイプ内の圧力Pを−10kPa以上に設定しても、ガラス処理量や加熱温度等の調整によって、光ファイバ母材を製造することが可能となるためである。つまり、ガラスパイプがφ100mmよりも小さい外径を有する場合は、輝点の発生を防止することのできる製造条件を設定することが困難であるのに対し、ガラスパイプがφ100mm以上の外径を有する場合は、適切な製造条件を設定可能になるのである。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明における光ファイバ母材の製造方法によれば、ガラスパイプとガラスロッドとを一体化するときに、ガラスパイプ内の大気圧に対する圧力P[kPa]を、−10kPa≦P<0kPaを満たすように設定することで、光ファイバ母材におけるコア部の偏心を抑制することができ、これにより、コアの偏心が抑制された光ファイバを製造することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基いて説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る光ファイバ母材の製造装置1を示している。この製造装置1は、ロッドインチューブ法により光ファイバ母材7を製造するものであって、具体的には、光ファイバにおいてクラッドとなるガラスパイプ2と、光ファイバにおいてコアとなる、又はコア及びクラッドとなるガラスロッド3とを一体化させて光ファイバ母材7を製造するように構成されている。
【0025】
ここで、上記ガラスパイプ2としては、例えば、OVD(Outside Vapor−phase Deposition)法等によって製造されたものを用いるようにすればよい。また、ガラスパイプ2としては、その外径がφ180mm程度、内径がφ50mm程度、長さが2000mm程度のものが例示される。
【0026】
また、上記ガラスロッド3としては、VAD(Vapor−phase Axial Deposition)法によってガラス微粒子を堆積させたガラス微粒子堆積体を焼結して延伸したものや、MCVD(Modified Chemical Vapor Deposition)法でクラッドパイプ内面にコアガラスを形成し中実化したものを用いるようにすればよい。また、ガラスロッド3としては、その径がφ45〜50mm程度、長さが2500mm程度のものが例示される。
【0027】
上記製造装置1には、Z方向(同図における上下方向)に延びて配設された上記ガラスパイプ2の上端部分を把持することで、このガラスパイプ2を吊り下げ状態にする第1把持部41と、同じくZ方向に延びて配設された上記ガラスロッド3の上端部分を把持することで、このガラスロッド3を吊り下げ状態にする第2把持部42とが設けられている。この第1及び第2把持部41,42はそれぞれ、ガラスパイプ2及びガラスロッド3の位置を、X方向(同図における紙面横方向)及びY方向(紙面に直行する方向)に移動可能に構成されていると共に、上記ガラスパイプ2及びガラスロッド3のZ方向に対する傾きを調整可能に構成されている。この構成により、上記ガラスパイプ2及びガラスロッド3は、それぞれ鉛直にかつ、互いに同軸に位置付けられるようになる。
【0028】
また、上記各把持部41,42はそれぞれ、Z方向に移動可能に構成されており、この各把持部41,42の下方への移動に伴い、上記ガラスパイプ2及びガラスロッド3がそれぞれ下方に移動するようにしている。尚、上記第1及び第2把持部41,42の移動速度は、それぞれ変更可能であると共に、第1把持部41と第2把持部42とで互いに異なる速度に設定することも可能である。このため、上記ガラスパイプ2及びガラスロッド3の移動速度(後述するヒータ5への送り速度)が調整可能にされており、さらに、上記ガラスパイプ2の送り速度とガラスロッド3の送り速度とを互いに異ならせることも可能にされている。
【0029】
上記第1把持部41の下方位置には、上記ガラスパイプ2及びガラスロッド3を加熱する略リング状のヒータ5が配設されている。このヒータ5は、図示省略の加熱炉内に配設されたものであって、上記ガラスパイプ2の外径よりも大きい内径を有していると共に、上記ガラスパイプ2及びガラスロッド3と略同軸となる位置に配設されている。これにより、上記ガラスパイプ2及びガラスロッド3はその軸方向に上記ヒータ5内を通過可能にされている。
【0030】
この構成によって、上記第1及び第2把持部41,42によってガラスパイプ2及びガラスロッド3が下方に移動されると、このガラスパイプ2及びガラスロッド3は上記ヒータ5内をその一端(下端)から順次通過するようになる。これにより、ガラスパイプ2及びガラスロッド3が、その一端から他端に向かって順次加熱されることになる。
【0031】
尚、このヒータ5を備える加熱炉としては、具体的には、カーボン抵抗加熱炉や高周波誘導加熱炉が例示される。
【0032】
上記ヒータ5の下方位置には、このヒータ5の中心軸を挟んだX方向の両側位置に、それぞれ2つのローラ6,6、…が配設されている。この各ローラ6は、Y軸回りに回転可能に構成されており、上記ヒータ5を通過することによって一体化したガラスパイプ2とガラスロッド3との一体化物(光ファイバ母材7)を、X方向に相対向した二対のローラ6,6,…で挟み込んで、この一体化物を下方に引き取るように構成されている。この各ローラ6,6の回転速度は変更可能に構成されており、これにより、一体化物のヒータ5からの引き取り速度を調整することが可能にされている。こうして一体化物のヒータ5からの引き取り速度を調整することにより、上記一体化物の外径を所定の径の光ファイバ母材7にさせるようにしている。
【0033】
また、上記第1把持部41に把持されたガラスパイプ2の上端面には、その上端開口を閉止する閉止キャップ8が取り付けられる。この閉止キャップ8には、図示省略の真空ポンプが接続されており、この真空ポンプを駆動させることによって、上記ガラスパイプ2内を減圧にすることができるようになっている。
【0034】
次に、この製造装置1による光ファイバ母材7の製造方法について説明すると、先ず、ガラスパイプ2の上端部分を第1把持部41によって把持し、この第1把持部41によって、上記ガラスパイプ2がヒータ5に対して同軸となるように上記ガラスパイプ2のX,Y方向位置をそれぞれ調整すると共に、上記ガラスパイプ2が鉛直に配設されるように上記ガラスパイプ2の傾きを調整する。
【0035】
次に、ガラスロッド3の上端部分を第2把持部42によって把持し、この第2把持部42によって、上記ガラスロッド3がガラスパイプ3に対して同軸となるように上記ガラスロッド3のX,Y方向位置をそれぞれ調整すると共に、上記ガラスロッド3が鉛直に配設されるように上記ガラスロッド3の傾きを調整する。そして、ガラスロッド3をガラスパイプ2内に内挿する。
【0036】
尚、図示は省略するが、ガラスパイプ2の上端に、このガラスパイプ2と同軸となるように補助パイプを取り付け、この補助パイプの上端部分を上記第1把持部41によって把持するようにしてもよい。また、ガラスロッド3の上端に、このガラスロッド3と同軸となるように補助ロッドを取り付け、この補助ロッドの上端部分を上記第2把持部42によって把持するようにしてもよい。
【0037】
そして、上記ガラスパイプ2の上端開口を閉止キャップ8により閉止し、真空ポンプを駆動させて上記ガラスパイプ2内を減圧する。こうしてガラスパイプ2内を減圧しながら、上記第1及び第2把持部41,42をそれぞれ所定の速度で下方に移動させることにより、上記ガラスパイプ2とガラスロッド3とをヒータ5内に送る。
【0038】
これにより、上記ガラスパイプ2とガラスロッド3とが、その軸方向に上記ヒータ5内を通過するようになって、上記ガラスパイプ2とガラスロッド3とが、その下端から上端に向かって上記ヒータ5により順次加熱される。このため、上記ガラスパイプ2とガラスロッド3とは、その下端から上端に向かって順次溶融するが、このとき、ガラスパイプ2内が減圧されているため、このガラスパイプ2内外の圧力差によって溶融したガラスパイプ2が縮径する。その結果、ガラスパイプ2とガラスロッド3とが、その長手方向に順次一体化する。
【0039】
こうして一体化したガラスパイプ2とガラスロッド3との一体化物は、ローラ6,6,…によって引き取られることで、所定の外径になるまで延伸され、光ファイバ母材7が製造されることになる。
【0040】
そして、本実施形態では、上記ガラスパイプ2とガラスロッド3とを一体化させるときの上記ガラスパイプ2内の圧力P(大気圧に対する圧力P)を、真空ポンプの作動調整により適宜設定することで、光ファイバ母材7におけるコア部(光ファイバにおいてコアとなる部分)の偏心を抑制し、それによって、上記光ファイバ母材7を線引きした光ファイバにおけるコアの偏心を抑制するようにしている。
【0041】
具体的には、上記圧力P[kPa]を、
−10kPa≦P<0kPa
を満たすように設定して、ガラスパイプ2とガラスロッド3とを一体化させる。
【0042】
従来は、ガラスパイプ2内の圧力Pは、−10kPaよりも低い圧力に設定してガラスパイプ2とガラスロッド3との一体化を行うようにしていたが、このように、ガラスパイプ2内の圧力Pを比較的低く設定した場合には、ガラスパイプ2を縮径させる力が高まり、ガラスパイプ2とガラスロッド3とを確実に一体化させることが可能になるものの、光ファイバ母材7におけるコア部の偏心を招きやすい。これは、ガラスパイプ2を縮径させる力が高まることで、ガラスパイプ2とガラスロッド3との間の隙間が大きい状態で、ガラスパイプ2が急激に縮径してガラスロッド3と一体化するようになるためであり、このように、ガラスパイプ2とガラスロッド3との一体化のタイミングが早くなることで、固体状態のガラスロッド3がガラスパイプ2に対して偏心している状態で、ガラスパイプ2とガラスロッド3とが一体化してしまい、その結果、光ファイバ母材7におけるコア部の偏心を招き、ひいては光ファイバにおけるコアの偏心を招くものと考えられる。
【0043】
これに対し、ガラスパイプ2内の圧力Pを、−10kPa以上の比較的高い圧力に設定してガラスパイプ2とガラスロッド3との一体化を行うと、光ファイバ母材7におけるコア部の偏心が抑制される。これは、ガラスパイプ2内の圧力が高いことでガラスパイプ2を縮径させる力が小さくなるが、これにより、ガラスパイプ2の縮径変形が緩やかになって、ガラスパイプ2とガラスロッド3とが一体化する前に、十分に溶融されたガラスロッド3が、上記ガラスパイプ2の縮径変形によってその中心に向かって移動するようになると考えられる。こうして、ガラスパイプ2とガラスロッド3とが略同軸となった状態で、このガラスパイプ2とガラスロッド3とが一体化するため、光ファイバ母材7におけるコア部の偏心が抑制されると考えられる。
【0044】
ここで、上記ガラスパイプ2内の圧力Pは、より好ましくは−5kPa以上である。こうすることで、光ファイバ母材7におけるコア部の偏心がより一層抑制される。また、上記ガラスパイプ2内の圧力Pを−3kPa以上とすれば、光ファイバ母材7におけるコア部の偏心がより確実に防止される。つまり、ガラスパイプ2内の圧力Pは、大気圧以下であれば高い程よい。
【0045】
このように、ガラスパイプ2内の圧力Pを比較的高く設定しても、単位時間当たりに一体化するガラスパイプ2及びガラスロッド3の総ガラス量であるガラス処理量や、ガラスパイプ2及びガラスロッド3を加熱する加熱温度等の調整により、ガラスパイプ2とガラスロッド3との界面に気泡や剥離を生じさせることなく、上記ガラスパイプ2とガラスロッド3とを確実に一体化させることが可能である。尚、ガラス処理量の調整は、主にガラスパイプ2の送り速度とガラスロッド3の送り速度との調整によって行い、加熱温度の調整は、ヒータ5の作動条件の調整によって行う。
【0046】
また特に、ガラスパイプ2として、その外径Dがφ100mm≦D≦φ200mmを満たすものを用いた場合には、ガラスパイプ2内の圧力Pを−10kPa以上の比較的高い圧力に設定しても、ガラス処理量の調整及び加熱温度の調整等によって、コア部の偏心を抑制しつつも、輝点の発生が防止された光ファイバ母材7を製造することが可能になる。つまり、ガラスパイプ2がφ100mm以上の外径を有するものであるときには、ガラスパイプ2内の圧力Pを−10kPa以上に設定しても、適切な製造条件が得られる。
【0047】
尚、上記ガラスパイプ2の最大外径として規定したφ200mmの値は、主に製造装置1の大きさによって規定される値である。従って、例えば製造装置1がより大型のものであって、φ200mm以上の外径を有するガラスパイプ2であっても光ファイバ母材7を製造可能なものであれば、φ200mm以上のガラスパイプ2を用いて光ファイバ母材7を製造する際に、ガラスパイプ2内の圧力Pを−10kPa以上に設定するようにしてもよい。
【0048】
こうして、本実施形態に係る光ファイバ母材7の製造方法では、ガラスパイプ2とガラスロッド3との一体化の際に、ガラスパイプ2内の圧力を大気圧以下で比較的高く設定することにより、光ファイバ母材7におけるコア部の偏心を抑制することができる。これにより、上記光ファイバ母材7を線引きした光ファイバは、そのコアの偏心が抑制された光ファイバとなるため、本実施形態に係る光ファイバ母材7の製造方法によると、コアの偏心が抑制された光ファイバを製造することができる。
【0049】
【実施例】
次に、本発明に関して具体的に実施した実施例について説明する。
【0050】
先ず、表1に示す製造条件で、ガラスパイプ2とガラスロッド3とを一体化させた光ファイバ母材を2つ製造した(実施例及び比較例)。尚、このとき使用したガラスパイプ2は、外径がφ180mm、内径がφ54mmのものである。また、ガラスロッド3は、外径がφ50mmのものである。
【0051】
【表1】
【0052】
表中、「ガラス処理量」とは、単位時間当たりに一体化するガラスパイプ2及びガラスロッド3の総ガラス量であって、このガラス処理量は、製造装置1における第1及び第2把持部41,42の移動速度を調整することにより、ガラスパイプ2及びガラスロッド3のヒータ5への送り速度を調整することによって、調整する。また、「速度比」とは、ガラスパイプ2の送り速度とガラスロッド3の送り速度との比であって、この速度比も、第1及び第2把持部41,42の移動速度の調整によって、調整する。
【0053】
また、ガラスパイプ2及びガラスロッド3の加熱温度(定温度)は、ヒータ出力の調整によって調整する。
【0054】
さらに、製造装置1には、ガラスパイプ2内の圧力を低下させるための真空ポンプとして、第1及び第2の2つの真空ポンプが設けられており、この内、第1の真空ポンプは、その作動条件を制御可能に、つまり目標圧力を設定可能に構成されているのに対し、第2の真空ポンプは、その作動条件を制御不可に、つまり作動のON・OFFのみが可能に構成されている。そして、第1の真空ポンプ(真空1)の目標圧力を−5kPaとし、第2の真空ポンプ(真空2)をOFFとしたときには、ガラスパイプ2内の圧力は−3kPaとなる(実施例)。一方、第1の真空ポンプの目標圧力を−5kPaとし、第2の真空ポンプをONとしたときには、ガラスパイプ2内の圧力は−11kPaとなる(比較例)。このように、実施例では、ガラスパイプ2内の圧力Pを比較的高く設定したのに対し、比較例では、ガラスパイプ2内の圧力Pを比較的低く設定した。
【0055】
そして、以上の製造条件で、上述したように、ガラスパイプ2とガラスロッド3とを一体化させて、実施例に係る光ファイバ母材7と、比較例に係る光ファイバ母材7とをそれぞれ製造したところ、表1に示すように、実施例に係る光ファイバ母材7においては、コア部の偏心量の最小値が0.08mm、その最大値が0.32mmであった。一方、比較例に係る光ファイバ母材7においては、コア部の偏心量の最小値が0.06mm、その最大値が0.39mmであり、実施例に係る光ファイバ母材7の方が、コア部の偏心量(最大値)が小さくなった。
【0056】
尚、実施例及び比較例のいずれの光ファイバ母材7においても、ガラスパイプ2とガラスロッド3との界面に輝点は発生しなかった(表中、○で示す)。
【0057】
次に、上記実施例及び比較例の光ファイバ母材7を、それぞれ線引きして光ファイバとした。実施例に係る光ファイバの、長手方向の各位置におけるコアの偏心量を図2に示す。一方、比較例に係る光ファイバの、長手方向の各位置におけるコアの偏心量を図3に示す。
【0058】
図2及び図3によると、比較例に係る光ファイバにおいては、コアの偏心量が0.5μm程度であるのに対し、実施例に係る光ファイバにおいては、コアの偏心量が0.3μm程度であり、実施例に係る光ファイバは、比較例に係る光ファイバに比べて、コアの偏心が抑制されていることが判る。
【0059】
以上の結果から、ガラスパイプ2とガラスロッド3とを一体化させるときに、ガラスパイプ2内の圧力Pを比較的高く設定する(−10kPa≦P<0kPa)ことにより、ガラスパイプ2とガラスロッド3とを一体化させた光ファイバ母材7におけるコア部の偏心が抑制され、これによって、この光ファイバ母材7を線引きした光ファイバにおいて、コアの偏心が抑制されることが判る。
【図面の簡単な説明】
【図1】光ファイバ母材の製造装置を示す概略図である。
【図2】実施例に係る光ファイバのコアの偏心量を示す図である。
【図3】比較例に係る光ファイバのコアの偏心量を示す図である。
【符号の説明】
2 ガラスパイプ
3 ガラスロッド
7 光ファイバ母材
Claims (3)
- ガラスロッドが内挿されたガラスパイプ内を減圧しながら、該ガラスパイプ及びガラスロッドの双方を、その一端から他端に向かって軸方向に順次加熱することで上記ガラスパイプとガラスロッドとを順次一体化しつつ、所定の外径に延伸して光ファイバ母材を製造する光ファイバ母材の製造方法であって、
上記ガラスパイプ内の大気圧に対する圧力をP[kPa]としたときに、
−10kPa≦P<0kPa
を満たすように上記圧力Pを設定して、上記ガラスパイプとガラスロッドとの一体化を行う
ことを特徴とする光ファイバ母材の製造方法。 - 請求項1において、
ガラスパイプ内の大気圧に対する圧力をP[kPa]としたときに、
−5kPa≦P<0kPa
を満たすように上記圧力Pを設定して、上記ガラスパイプとガラスロッドとの一体化を行う
ことを特徴とする光ファイバ母材の製造方法。 - 請求項1又は請求項2において、
ガラスパイプとして、その外径をD[mm]としたときに、
φ100mm≦D≦φ200mm
を満たすものを用いる
ことを特徴とする光ファイバ母材の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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