JP2004089924A - 水溶性セレン除去剤およびそれを用いた水溶性セレンの除去方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水溶性セレンにより汚染された物質から水溶性セレンを除去するための水溶性セレン除去剤において、非晶質水酸化鉄(III)、あるいは、硝酸鉄(III)水溶液をアルカリ金属水酸化物で中和することにより沈殿として得られる物質を含有させる。また、上記水溶性セレン除去剤を水溶性セレンにより汚染された物質と接触させ、上記水溶性セレン除去剤に水溶性セレンを吸着させて不溶化させる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、環境を浄化するために、水溶性セレンにより汚染された土壌(セレン汚染土壌)やセレンを含む廃水(セレン汚染廃水)等から水溶性セレンを吸着して不溶化することにより水溶性セレンを除去する方法、およびそれに用いる水溶性セレン除去剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
セレンは、光電池、整流器、黄色ガラスや赤色ガラス、プラスチック、インキ、塗料、顔料、有機合成化学における酸化剤や触媒等の工業用材料として長年使用されてきた。
【0003】
しかしながら、土壌等の環境に存在する高濃度の水溶性セレンは、水や食物を通じて生態系や人体に影響を及ぼすので、セレンによる環境汚染を防ぐことが重視されるべきである。それにもかかわらず、日本でセレン含有廃棄物が環境汚染物質として規制されるようになったのは、ごく最近の1997年である。そのため、既に廃棄されたセレン含有廃棄物により、土壌の汚染などの環境汚染が発生している。
【0004】
従って、このような積年の多様なセレン汚染の除去は、今や必須かつ急務の課題である。また、セレンを使用する工場等で発生するセレン含有廃水については、排水中のセレンを除去した上で排出することが必要となっている。そのため、水溶性セレンの除去方法が、農業のみならず、他の産業においても多大な関心を集めている。
【0005】
従来より、水溶性セレンによって汚染された土壌や(セレン汚染土壌)やセレンによって汚染された廃水(セレン汚染廃水)から水溶性セレンを除去する方法として、(1)植物による土壌汚染除去法(phytoremediation)、(2)微生物による汚染除去法(bioremediation)、(3)化学的不動化による方法が提案されている。
【0006】
植物による土壌汚染除去方法は、セレン汚染土壌で特定の作物を生育させることにより多量の水溶性セレンを抽出するものである(Banuelos, G. S., H. A. Ajwa, N. Terry and A. Zayed, J. Soil and Water Cons., 52(6), pp.426−430 (1997), ”Phytoremediation of selenium laden soils: A new technology”参照)。すなわち、この方法では、水溶性セレンを吸収し、蓄積し、かつ蒸発させる能力を十分備えた植物種(Brassica spp)をセレン汚染土壌で生育させることで、セレン汚染土壌から水溶性セレンを除去する。植物の組織に蓄積された水溶性セレンは、植物を収穫することで汚染部から除去できる。
【0007】
微生物による汚染除去法は、セレンを含む沈殿物や水からセレンを除去するために開発された技術である。Thompson−Eagle, E. T. and W. T. Frankenberger Jr, ”Advances in Soil Science, 17, Soil Restoration” (Springer−Verlag), pp.261−310 (1992), ”Bioremediation of soils contaminated with selenium”には、塩類濃度の高いアルカリ性排水、および土壌の中に自然に存在する微生物が、セレンをメチル化して揮発性のジメチルセレン(dimethyl−Se)に変換することが示されている。この方法では、セレンをジメチルセレンとして揮発させるので、汚染された土壌や水からセレンの一部を永久的に除去することができる。
【0008】
化学的不動化により水溶性セレンを除去する方法は、土壌中のセレン汚染を修復するためのもう一つの処理方法である。化学的不動化による方法として、アルカリ性水溶液と、塩化鉄等のような鉄の酸性塩との中和反応によって(水)酸化鉄を生成させ、この(水)酸化鉄と共にセレンを沈殿させる中和沈殿法や、鉄(II)の酸化反応によって(水)酸化鉄(III)を生成させ、この(水)酸化鉄と共にセレンを沈殿させる酸化沈殿法等が提案されている。
【0009】
セレン汚染廃水からセレンを除去するための中和沈殿法として、メリル(Merrill)らは、石炭火力発電所からの灰沈殿池の排水(セレンを含有する)に塩化鉄(III)を加えて中和することによって、溶出液中のセレンを鉄((水)酸化鉄(iron (hydr)oxide)として沈殿する)と共に沈殿させる方法を開示している(Merrill, D. T., M. A. Manzione, J. J. Peterson, D. S. Parker, W. Chow and A. 0. Hobbs, Journal WPCF, 58(1), 18−26 (1986), ”Field evaluation of arsenic and selenium removal by iron coprecipitation”)。
【0010】
また、土壌中の水溶性セレンを除去する中和沈殿法として、特開平2002−59150号公報には、セレンによって汚染された土壌を硫酸又はリン酸水溶液で洗浄した後、塩化鉄(III)水溶液を加え、水酸化ナトリウムで中和することによって、土壌中のセレンを鉄と共に沈殿させる方法が開示されている。
【0011】
また、セレン汚染廃水からセレンを除去するための酸化沈殿法として、鉄(II)イオンを酸素酸化することによって酸化鉄(III)の沈殿を生成させ、この沈殿によってセレンを共沈させる方法(米国特許第4,222,999号)や、鉄粉から生成させた鉄(II)イオンを過酸化水素で酸化することによって酸化鉄(III)の沈殿を生成させ、この沈殿によってセレンを共沈させる方法(米国特許第4,222,999号)が知られている。
【0012】
また、他の化学的不動化により土壌中の水溶性セレンを除去する方法として、特開平2002−59150号公報には、セレンによって汚染された土壌を硫酸又はリン酸水溶液で洗浄した後、FeO(OH)懸濁液を加えることによって、土壌中のセレンを不溶化させる方法が開示されている。
【0013】
さらに、他の化学的不動化によりセレン汚染廃水からセレンを除去する方法として、鉄(III)イオンを導入したカチオン交換樹脂を用いてカチオン交換する方法が報告されている(米国特許第5,453,201号および米国特許第5,591,346号)。
【0014】
さらに他の化学的不動化による方法として、ミョウバンおよび硫酸鉄(III)を用いて凝固させる方法、石灰軟水化法、活性アルミナを用いる方法、強アルカリ樹脂によりイオン交換を行う方法等がある(前述のThompson−Eagle, E. T. and W. T. Frankenbergerの文献を参照)。
【0015】
また、スー(Su)およびスアレス(Suarez)は、非晶質(水)酸化鉄(III)が、針鉄鉱(goethite)と比較して亜セレン酸イオンおよびセレン酸イオンに対する吸着能が高いことを報告している(Su, C. and D. Suarez, Soil Sci. Soc. AM. J., 64, pp.101−111 (2000), ”Selenate and selenite sorption on iron (hydr)oxides: an infrared and electrophoretic study”)。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、植物による土壌汚染除去法では、植物に取り込まれて除去されるセレンは、土壌中の水に溶出するセレンに限られるので、土壌中のセレンを十分に除去することが難しい。
【0017】
また、微生物による汚染除去法では、ジメチルセレンによる大気汚染が生じるという問題や、汚泥が残るという問題がある。
【0018】
その上、都市の土壌や産業廃棄物のような汚染部では生物活性が低いと考えられるので、植物や微生物による生物的方法は、都市の土壌や産業廃棄物へ適用するのは難しい。都市の土壌や産業廃棄物中のセレン汚染に対しては、生物的方法よりも化学的処理方法の方が、除去効率およびコストの両面で効果的であると考えられる。
【0019】
また、水溶性セレンとしては亜セレン酸イオンとセレン酸イオンとが存在するので、双方を除去することが必要であるが、沈殿法では、メリル(Merrill)らの報告によれば、石炭燃料火力発電所からの灰沈殿池の排水に塩化鉄(III)を加えた場合、亜セレン酸イオンは(水)酸化鉄によって強く吸着されるが、セレン酸イオンは(水)酸化鉄に吸着されない。したがって、沈殿法では、セレン酸イオンを十分に除去できないと考えられる。
【0020】
その上、特開平2002−59150号公報に記載の沈殿法では、強酸性条件(最終pHが0.85または−0.60)下で処理が行われているので、土壌の植物生育能を消失させてしまい(一般にpH3.5以下で土壌の植物生育能は消失する)、いわゆる土壌の死をもたらすという問題を生じる。
【0021】
また、特開平2002−59150号公報に記載のFeO(OH)を用いた方法も、同様に強酸性条件下で処理が行われているので、土壌の植物生育能を消失させてしまい、いわゆる土壌の死をもたらすという問題を生じる。その上、FeO(OH)は、後述する実施例の結果から明らかなように吸着能が低いために、セレンを不溶化する効果が低い。
【0022】
また、沈殿法以外の化学的不動化による方法、すなわち前述したミョウバンおよび硫酸鉄(III)を用いて凝固させる方法、石灰軟水化法、活性アルミナを用いる方法、強アルカリ樹脂によりイオン交換を行う方法等は、一般に、セレン酸イオンの除去よりも亜セレン酸の除去に効果的であり、セレン酸イオンの除去効果が低いという欠点を有している(前述のThompson−Eagle, E. T. and W. T. Frankenbergerの文献を参照)。また、アルミナは、アルミニウムそのものが毒性を示すので、安全性が心配される。
【0023】
本発明は、上記従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、亜セレン酸イオンおよびセレン酸イオンの両方を効率良く吸着して除去することができる水溶性セレン除去剤、および、低コストで、かつ、簡便な操作で水溶性セレンを効率良く除去することができる化学的な水溶性セレンの除去方法を提供することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本願発明者等は、(水)酸化鉄(III)類が水溶性セレンに対して高い親和性を持っていることに着目し、水溶性セレンを、吸着能の高い(水)酸化鉄(III)類に吸着させると共に固定化(不溶化)する化学的処理で除去することに想到した。そして、水溶性セレンを吸着させる水溶性セレン除去剤(セレン汚染除去材料)として効果的な(水)酸化鉄(III)類を探索した。そして、針鉄鉱(goethite;α−FeO(OH))、赤鉄鉱(hematite;α−Fe2O3)、鱗鉄鉱(lepidocrocite;γ−FeO(OH)) 、および非晶質水酸化鉄(III)(amorphous iron(hydr)oxide)の4種類の鉄鉱物への亜セレン酸塩イオンおよびセレン酸塩イオンの吸着挙動を検討した。その結果、非晶質水酸化鉄(III)が、他の(水)酸化鉄(III)類と比較して亜セレン酸イオンおよびセレン酸イオンに対する吸着能が顕著に高いことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0025】
本発明の水溶性セレン除去剤は、上記の課題を解決するために、水溶性セレン(特にセレン酸イオンおよび/または亜セレン酸イオン)により汚染された土壌や廃水等の物質から水溶性セレンを水溶性セレンを除去するための水溶性セレン除去剤において、非晶質水酸化鉄(III)を(有効成分として)含有することを特徴としている。
【0026】
また、本発明の水溶性セレン除去剤は、上記の課題を解決するために、水溶性セレンにより汚染された物質から水溶性セレンを除去するための水溶性セレン除去剤において、硝酸鉄(III)水溶液をアルカリ金属水酸化物で中和することにより沈殿として得られる物質を含有することを特徴としている。
【0027】
また、本発明の水溶性セレンの除去方法は、上記の課題を解決するために、水溶性セレンにより汚染された物質から水溶性セレンを除去するための水溶性セレンの除去方法において、上記水溶性セレン除去剤を、水溶性セレンにより汚染された物質と接触させ、上記水溶性セレン除去剤に水溶性セレンを吸着させて(水に対して)不溶化(固定化;不動化)させることを特徴としている。
【0028】
本発明の水溶性セレン除去剤によれば、水溶性セレンに対して強い親和性を持つ鉄元素を含み、かつ、亜セレン酸イオンおよびセレン酸イオンの両方に対して高い吸着能を持つ非晶質水酸化鉄(III)、あるいは硝酸鉄(III)水溶液をアルカリ金属水酸化物で中和することにより沈殿として得られる物質(以下、「硝酸鉄(III)中和沈殿物」と称する)を含有している。そのため、上記水溶性セレン除去剤を用いて、汚染物質中の亜セレン酸イオンおよびセレン酸イオンを非晶質水酸化鉄(III)あるいは硝酸鉄(III)中和沈殿物に吸着させて不溶化させることにより、従来の化学的不動化による水溶性セレンの除去方法よりも効率良く、汚染物質中に含まれる亜セレン酸イオンおよびセレン酸イオンの両方を除去することができる。このとき、汚染物質が土壌等の固体物質であれば、不溶化されたセレンは、固体物質中に残るが、固体物質から溶出しないので、無害である。その結果、水溶性セレンによって汚染された物質をより効果的に浄化することができ、生態系への悪影響を防ぐことができる。
【0029】
また、非晶質水酸化鉄(III)あるいは硝酸鉄(III)中和沈殿物は、他の(水)酸化鉄(III)類、針鉄鉱(Goethite;α−FeO(OH))、赤鉄鉱(Hematite;α−Fe2O3)、および鱗鉄鉱(Lepidocrocite;γ−FeO(OH))と比べて、セレンを吸着する表面の面積が約5〜10倍広く(上記3種の鉄(III)化合物の比表面積が15.3〜45.5m2/gであるのに対して、非晶質水酸化鉄(III)の比表面積は273.6m2/g)、鉄(III)化合物の中で最も優れたセレン吸着能を持っている。その結果、本願発明者らの実験結果では、非晶質水酸化鉄(III)あるいは硝酸鉄(III)中和沈殿物は、針鉄鉱、赤鉄鉱、および鱗鉄鉱と比べて、セレン吸着量が約13倍以上大きい。
【0030】
また、非晶質水酸化鉄(III)は、土壌中等に自然に存在する物質であり、アルミニウムや重金属元素等を含んでいないので、本発明の水溶性セレン除去剤は、環境に対する安全性が高い。
【0031】
また、硝酸鉄(III)水溶液をアルカリ金属水酸化物で中和することにより沈殿として得られる非晶質水酸化鉄(III)(硝酸鉄(III)中和沈殿物)は、原料となる硝酸鉄(III)および水酸化ナトリウムが安価であり、また容易に合成できるため、安価に製造できる。したがって、上記構成の水溶性セレン除去剤は、安価である。また、それゆえに、本発明の水溶性セレンの除去方法において、上記構成の水溶性セレン除去剤を用いると、セレン除去処理のコストが低廉となる。
【0032】
また、セレンによって汚染された物質が土壌である場合には、強酸性条件で処理を行う沈殿法と比較すると、土壌への影響を小さくできるという利点もある。すなわち、本発明の水溶性セレン除去剤は、pH4〜6.5で十分なセレン吸着機能を発揮するので、土壌の死(土壌の植物生育能の消失)が起こることを回避できる(pH3.5以下で土壌の植物生育能は消失する)。したがって、本発明の水溶性セレンの除去方法は、セレンによって汚染された土壌の処理方法として好適である。
【0033】
また、本発明の水溶性セレンの除去方法は、化学的処理法であるため、セレン汚染土壌だけではなく、生物的処理法ではセレン汚染除去が難しい、市街地セレン汚染土壌や各種のセレン汚染産業汚泥、セレン汚染廃水などのセレン汚染物質を対象とした水溶性セレンの除去も可能となる。
【0034】
また、本発明の水溶性セレンの除去方法は、水溶性セレン除去剤に対して、水溶性セレンにより汚染された物質を接触させるだけでよいので、沈殿法と比較して、操作が簡便である。
【0035】
なお、本願明細書において、「非晶質水酸化鉄(III)」とは、”amorphous iron(hydr)oxide”、”amorphous ferric(III) iron (hydr)oxide”、”amorphous ferric hydroxide oxide”などとも呼ばれている非晶質の鉄(III)化合物(3価の鉄イオン(Fe3+)と陰イオンとからなる化合物)である。非晶質水酸化鉄(III)は、Fe2O3・nH2Oの組成を持つ含水酸化鉄の一種である。非晶質水酸化鉄(III)は、水酸化鉄(III)(Fe(OH)3)、オキシ水酸化鉄(III)(FeO(OH))、および水素化酸化鉄(III)(FeHO2)が混在した無定形のものである。また、「(水)酸化鉄(III)類」とは、Fe2O3・nH2Oの組成で表される化合物、すなわち酸化鉄または含水酸化鉄を表す。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の水溶性セレン除去剤は、上記の課題を解決するために、水溶性セレンにより汚染された物質から水溶性セレンを水溶性セレンを除去するための水溶性セレン除去剤において、非晶質水酸化鉄(III)、あるいは硝酸鉄(III)水溶液をアルカリ金属水酸化物で中和することにより沈殿として得られる物質を含有するものである。
【0037】
本発明における処理対象となる水溶性セレンによって汚染された物質(以下、「セレン汚染物質」と称する)とは、水溶性セレンが環境に影響を与える量で含まれる物質である。ここで、水溶性セレンとは、水中に溶出しうる状態にあるセレン、特にセレン亜セレン酸イオンやセレン酸イオンである。水溶性セレンは、どのような形態で存在していてもよいが、一般に、亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸カリウム等の亜セレン酸塩;セレン酸ナトリウム、セレン酸カリウム等のセレン酸塩;亜セレン酸;セレン酸等として存在している。
【0038】
本発明における処理対象となるセレン汚染物質は、固体、液体、気体のいずれであってもよい。セレン汚染物質としては、水溶性セレンによって汚染された物質土壌(以下、「セレン汚染土壌」と称する)、セレン汚染廃水、セレン汚染産業廃棄物等が代表的である。セレン汚染産業廃棄物としては、セレン含有製品の廃棄品等が挙げられる。セレン汚染廃水としては、上述した種々のセレン含有製品を製造する工場の廃水、火力発電所の廃水等が挙げられる。セレン汚染土壌としては上述した種々のセレン汚染廃棄物やセレン汚染廃水によって汚染された土壌が挙げられる。
【0039】
非晶質水酸化鉄(III)の比表面積は、250m2/g以上であることがより好ましく、270m2/g以上であることがさらに好ましい。これにより、吸着能が向上し、水溶性セレンを効率よく除去できる。
【0040】
また、非晶質水酸化鉄(III)の比表面積は、製法や組成等に関係なく、他の(水)酸化鉄(III)類より高いと考えられるが、製法や組成等によってある程度まで変化すると考えられる。そのため、非晶質水酸化鉄(III)としては、比表面積が十分に高い(約270m2/g)ことが確認されている物質、すなわち、硝酸鉄(III)水溶液をアルカリ金属水酸化物で中和することにより沈殿として得られる物質であることが好ましい。硝酸鉄(III)水溶液を水酸化ナトリウムや水酸化カリウムで中和する方法で非晶質水酸化鉄(III)を調製した場合、原料の硝酸鉄(III)や水酸化ナトリウム(または水酸化カリウム)が安価であるため、非晶質水酸化鉄(III)を安価に製造でき、安価な水溶性セレン除去剤を提供できる。
【0041】
なお、水溶性セレン除去剤は、鉄(III)イオンを含み、かつ、大きな比表面積を持つことが重要である。したがって、非晶質水酸化鉄(III)以外の鉄(III)化合物であっても、50m2/g以上、好ましくは250m2/g以上の比表面積を持つものであれば、水溶性セレン除去剤として好適に使用できると考えられる。
【0042】
本発明に係る水溶性セレンの除去方法は、水溶性セレンにより汚染された物質から水溶性セレンを除去するための水溶性セレンの除去方法において、上記水溶性セレン除去剤を、水溶性セレンにより汚染された物質と接触させ、上記水溶性セレン除去剤に水溶性セレンを吸着させて不溶化させる方法である。
【0043】
セレン汚染物質と水溶性セレン除去剤とを接触させる方法としては、特に限定されるものではないが、セレン汚染物質がセレン汚染土壌等の固体物質(セレン汚染固体)である場合には、水溶性セレン除去剤への吸着効率が高い点で、セレン汚染固体と水溶性セレン除去剤とを水溶液中で混合する方法が好適である。
【0044】
また、セレン汚染物質が、セレン汚染廃水等の液体物質(セレン汚染液体)である場合には、水溶性セレン除去剤をカラムに充填し、水溶性セレン除去剤の充填層にセレン汚染液体を通液する方法や、セレン汚染液体と水溶性セレン除去剤とを容器に入れて撹拌する方法を用いることができる。
【0045】
セレン汚染物質と水溶性セレン除去剤とを接触させて吸着処理を行う際の温度は、5〜50℃の範囲内であることが好ましい。処理温度を5℃以上にすることで、水溶性セレン除去剤への水溶性セレンの吸着が起こり易くなり、水溶性セレンを効率良く除去することが可能となる。また、処理温度を50℃以下にすることで、セレン汚染物質の変質を回避でき、水溶性セレンが除去された物質、特に土壌を再利用することが可能となる。
【0046】
本発明に係る水溶性セレンの除去方法において、セレン汚染固体と水溶性セレン除去剤とを水溶液中で混合する場合や、水溶性セレンによって汚染された物質が水性液体である場合など、水溶液中で吸着処理を行う場合、反応系(水溶液)のpHは、4〜6.5の範囲内であることが好ましく、4.5〜6の範囲内であることがより好ましい。pHを6.5以下、より好ましくは6以下とすることで、非晶質水酸化鉄(III)による水溶性セレンの吸着が起こり易くなり、水溶性セレンを効率良く除去することが可能となる。また、pHを4以上、より好ましくは4.5以上とすることで、セレン汚染物質の変質を回避でき、水溶性セレンが除去された物質を再利用することが可能となる。特に、セレン汚染物質がセレン汚染土壌である場合、pHを4以上、より好ましくは4.5以上とすることで、土壌の死(土壌の植物生育能の消失)が起こることを回避でき、土壌を再利用することが可能となる。さらに、pHが4以上に保つことで、重金属やアルミニウムなどの有害成分がセレン汚染土壌から外に溶出することを回避できる。なお、上記pHの調整は、塩酸、硝酸等の酸、あるいは水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリを用いて行えばよい。
【0047】
また、本発明に係る水溶性セレンの除去方法において、水溶性セレン除去剤の使用量は、特に限定されるものではなく、セレン汚染物質の水溶性セレン含有量によって決める。これにより、特にセレン汚染物質がセレン汚染土壌である場合に、水溶性セレン濃度をWHO(世界保健機構)の飲料水基準以下に抑えることができる。なお、本願発明者等の実験では、セレン汚染物質100重量部に対して1〜2重量部(添加率1〜2重量%)の水溶性セレン除去剤で水溶性セレン濃度をWHOの飲料水基準(10μg/L)以下に抑えることができた。
【0048】
また、本発明に係る水溶性セレンの除去方法において、セレン汚染土壌と水溶性セレン除去剤とを水溶液中で混合する場合、混合物の含水率が40%以上であることが好ましい。これにより、混合が容易に行えるようになる。
【0049】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
〔(水)酸化鉄(III)類の用意〕
本発明にかかる非晶質水酸化鉄(III)(amorphous iron (hydr)oxide)と、比較用の(水)酸化鉄(III)類としての針鉄鉱(goethite;α−FeOOH)、赤鉄鉱(hematite)、および鱗鉄鉱(lepidocrocite)とを用意した。
【0051】
針鉄鉱および赤鉄鉱はそれぞれ、添川理化学株式会社(Soekawa Chemicals)および和光純薬工業株式会社から購入したものを精製することなくそのまま使用した。
【0052】
一方、鱗鉄鉱および非晶質水酸化鉄(III)は、以下のような実験室での合成的方法により製造した。
【0053】
鱗鉄鉱は、以下の方法により合成した。まず、ピリジン800mL中にFeCl2・4H2Oの飽和水溶液200mLを添加し、次いで、得られた混合液を室温で12時間静置して結晶を生成させた。混合液を濾過することによって結晶を単離し、結晶をピリジンで洗浄し、風乾した。風乾した結晶40gを2Lの純水(脱イオン水)に溶解し、3時間かけて空気酸化し、得られた混合物を濾過することにより、結晶、すなわち鱗鉄鉱を単離した。
【0054】
非晶質水酸化鉄(III)は、以下の方法により合成した。まず、0.1mol/Lの硝酸鉄(III)9水和物(Fe(N03)3・9H2O)水溶液に対して、室温で、水溶液のpHが7に達するまで0.1mol/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を添加し、沈殿を生成させた。次に、室温(20℃)で3時間静置した。混合液のpHを再度pH7に調整した後、混合液を4時間静置し、沈殿を熟成させた。次に、混合液を濾過することによって、沈殿、すなわち非晶質水酸化鉄(III)を単離した。
【0055】
これらの合成した(水)酸化鉄(III)類(鱗鉄鉱および非晶質水酸化鉄(III))は、電気伝導度が純水の電気伝導度に等しくなるまで、純水で毎日二度純水を取り替えながら透析することにより、精製した。次に、精製した(水)酸化鉄(III)類を凍結乾燥し、その後の実験のために保存した。
【0056】
これら(水)酸化鉄(III)類のいくつかの特性を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
〔実施例1〕
本実施例および以降の実施例では、セレン汚染土壌のための汚染除去材料(水溶性セレン除去剤)として適した物質を見出すために、(水)酸化鉄(III)類への水溶性セレンの吸着挙動を検討した。すなわち、針鉄鉱、赤鉄鉱、鱗鉄鉱、および非晶質水酸化鉄(III)の4種類の(水)酸化鉄(III)類への亜セレン酸塩イオン(selenite)およびセレン酸塩イオン(selenate)の吸着挙動を調べた。
【0059】
本実施例では、(水)酸化鉄(III)類上への水溶性セレン含有水の吸着実験を行った。
【0060】
まず、いくつかの濃度(0.015〜6.97mmol/L)の亜セレン酸塩水溶液、および、いくつかの濃度(0.015〜1.90mmol/L)のセレン酸塩水溶液を、それぞれ、「試薬用」グレードの亜セレン酸ナトリウム(Na2SeO3)およびセレン酸ナトリウム(Na2SeO4)を0.1mol/Lの塩化ナトリウム(NaCl)水溶液中に加えることで調製した。
【0061】
そして、針鉄鉱、赤鉄鉱、鱗鉄鉱、および非晶質水酸化鉄(III)上への亜セレン酸塩およびセレン酸塩の平衡状態における吸着実験を、pH4.5、pH5.5、およびpH6.5においてバッチ(回分)式で行った。いくつかの濃度(0.015〜6.97mmol/L)の亜セレン酸塩水溶液といくつかの濃度(0.015〜1.90mmol/L)のセレン酸塩水溶液を、亜セレン酸塩またはセレン酸塩に対して等モル量の(水)酸化鉄(III)に導入した。
【0062】
ポリエチレン遠心管に50mgの(水)酸化鉄(III)を入れ、次に、所定濃度のセレンを含む亜セレン酸塩水溶液またはセレン酸塩水溶液を20mL加えた。得られた懸濁液のpHを、希塩酸(dil.HCl)または水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を用いて手作業で所定のpH値となるように(pH4.5、pH5.5、またはpH6.5)に調整した。pH調整した懸濁液を、往復振とう機で24時間、振とうし、平衡化させた。平衡化の後、懸濁液を1157Gで10分間遠心分離し、最終のpHを測定した。次に、上澄みを0.22μmのマイクロフィルタに通して濾過した。
【0063】
濾液を、誘導結合プラズマ発光分析装置(Inductively Coupled Plasma AtomicEmission Spectroscopy)(株式会社島津製作所(Shimadzu)製の「ICPS−1000IV」)を用いて分析することにより、セレンを定量した。そして、(水)酸化鉄(III)類によって吸着された水溶性セレンの量を、初期状態と平衡状態との間におけるセレン濃度の差により計算した。
【0064】
4種類の(水)酸化鉄(III)類、非晶質水酸化鉄(III)、鱗鉄鉱、針鉄鉱、および赤鉄鉱による亜セレン酸イオン(Se(IV))のバッチ式の平衡状態吸着実験の結果をそれぞれ図1、図2、図3、および図4に示す。また、4種類の(水)酸化鉄(III)類、非晶質水酸化鉄(III)、鱗鉄鉱、針鉄鉱、および赤鉄鉱によるセレン酸イオン(Se(VI))のバッチ式の平衡状態吸着実験の結果をそれぞれ図5、図6、図7、および図8に示す。
【0065】
なお、図1〜8は、上述した実験条件(0.1mol/LのNaClを含む溶液20mL中で(水)酸化鉄(III)類50mgを使用)における(水)酸化鉄(III)類による亜セレン酸イオンおよびセレン酸イオンの吸着等温線を示すグラフである。
【0066】
平衡状態溶液での全セレン濃度の変化は、亜セレン酸イオンおよびセレン酸イオン両方の吸着に影響を与えた。亜セレン酸イオンおよびセレン酸イオンは、低濃度では、全てが(水)酸化鉄(III)類によって吸着された。全セレン濃度の上昇にしたがって、吸着量は次第に増大し、より高いレベルに移行した。いくつかの濃度では、吸着濃度は、すべての(水)酸化鉄(III)類で最大値に達した。この段階では、(水)酸化鉄(III)類の活性な表面部位がセレンによって飽和されていると考えられる。吸着濃度が上昇するにつれて、(水)酸化鉄(III)類表面の結合能力は低下する傾向がある。
【0067】
また、図1〜8の結果から、(水)酸化鉄(III)類上への亜セレン酸イオンおよびセレン酸イオンの吸着挙動は、pHに強い影響を受けることが分かった。亜セレン酸イオンおよびセレン酸イオンの両方の吸着量が、pHの減少にしたがって増加した。(水)酸化鉄(III)類の種類の違いによって、セレンの最大吸着量はかなり異なった。
【0068】
非晶質水酸化鉄(III)は、pH4.5において最大86.4mg/g(1gあたりの水溶性セレン吸着量)の亜セレン酸イオンを吸着した。この亜セレン酸イオン吸着量は、鱗鉄鉱の14倍、針鉄鉱の21倍、赤鉄鉱の47倍にあたる。同様に、非晶質水酸化鉄(III)は、pH4.5において27mg/gのセレン酸イオンを吸着した。このセレン酸イオン吸着量は、鱗鉄鉱の11倍、針鉄鉱の17倍、赤鉄鉱の45倍にあたる。これら(水)酸化鉄(III)類のセレン吸着能の序列は、
非晶質水酸化鉄(III)>>鱗鉄鉱>針鉄鉱>赤鉄鉱
の順であった。非晶質水酸化鉄(III)が最も高い吸着能を示したのは、表1に示すように、3つの水溶性セレン除去剤と比較して、最大の比表面積を有すること、シュウ酸アンモニウム−シュウ酸混合液によって抽出可能な鉄分の量が多いこと、結晶度が低いことによって説明できる。
【0069】
以上の結果から、非晶質水酸化鉄(III)がpH6.5以下において亜セレン酸イオンとセレン酸イオン両方に対して優れた吸着能を持っていることは明らかである。それゆえ、本発明では、セレン汚染修復剤として非晶質水酸化鉄(III)を選択した。
【0070】
〔土壌試料およびその分析〕
土壌試料は、日本国高知県三宝山から採集した。本実施例では、人間の活動の影響を避けるためにC−層からの土壌を用いた。上記土壌は、pH5.0のシルト質埴壌土であった。上記土壌の全炭素含有量および全窒素含有量は、それぞれ5.8g/kgおよび0.32g/kgであった。上記土壌において、酸性シュウ塩で抽出可能な鉄分は4.9g/kgであり、亜二チオン酸ナトリウム−クエン酸ナトリウム−炭酸水素ナトリウムで抽出可能な鉄分は11.9g/kgであった。上記土壌は、全セレン含有量(水溶性セレンおよび不溶性セレンの合計含有量)が0.3mg/kgであり、水溶性セレンの含有量は検出限界未満であった。土壌試料の成分を表2にまとめて示す。
【0071】
【表2】
【0072】
〔セレン汚染土壌の調製〕
セレン汚染土壌は、容易に入手できないため、本実施例では人工的に調製した。セレンは、自然系では、亜セレン酸イオン(SeO3 2−)として存在する酸化数4のセレン(Se(IV))、セレン酸イオン(SeO4 2−)として存在する酸化数6のセレン(Se(VI))、元素セレン(Se)、およびセレン化物イオン(Se2−)として存在する酸化数−2のセレンの4つの酸化状態をとる。酸化条件下の土壌中においては、上述した4種のうち、前の2種(亜セレン酸イオン、セレン酸イオン)が支配的な化学種である。後の2種(元素セレンおよびセレン化物イオン)は、還元条件下では安定であるが、酸化条件に達するまで還元電位が上昇したときに速やかに酸化される。
【0073】
それゆえ、本実施例では、亜セレン酸イオンおよびセレン酸イオンのどちらか単独または両方を土壌に導入することによってセレン汚染土壌を調製した。
【0074】
具体的には、亜セレン酸イオンによって汚染された土壌、およびセレン酸イオンによって汚染されたセレン汚染土壌は、それぞれ、亜セレン酸ナトリウム(Na2SeO3)水溶液およびセレン酸ナトリウム(Na2SeO4)水溶液を土壌に添加することによって調製した。亜セレン酸イオンおよびセレン酸イオンの混在するセレン汚染土壌は、亜セレン酸ナトリウムとセレン酸ナトリウムとの混合水溶液を土壌に添加することによって調製した。これらセレン汚染土壌は、セレン水溶液の添加の後に、十分に混合して、24時間静置した。混合されたスラリーを風乾し、粉砕して、次の実験のために保存した。粉砕したセレン汚染土壌(土壌(g):水(ml)=1:10)について、全セレン含有量、および水溶性セレンの含有量を測定した。
【0075】
調製されたセレン汚染土壌の全セレン含有量および水溶性セレン含有量の測定結果を表3にまとめて示す。
【0076】
【表3】
【0077】
土壌の全セレン含有量の測定値(10.9〜155.6mg/kg)は、計算値(10〜150mg/kg)に近い値を示した。これらの調製された土壌は、土壌セレンの天然賦存量(0.1〜2mg/kg)と比較して、全セレン含有量が際立って高い。
【0078】
水溶性セレンは、土壌から容易にしみ出るので、植物に取り込まれたり、環境に対して有害な影響を与える可能性がある。9つの調製した土壌において、水溶性セレンの含有量は8〜3790mg/Lの広い範囲の値を示したが、各化学種の含有量は全セレン含有量の増加に伴って増加した。水溶性セレンの含有量は、同じ汚染レベルにおいては、Se(IV)よりもSe(VI)の方が100倍程度高い値を示した。例えば、汚染レベル20mg/kgのセレン汚染土壌では、Se(VI)含有量は820μg/L、Se(IV)含有量は8μg/Lであった。また、汚染レベル50mg/kgのセレン汚染土壌では、Se(VI)含有量は2261μg/L、Se(IV)含有量は21μg/Lであった。この事実は、セレン酸イオンが、亜セレン酸イオンよりも土壌に吸着されにくいことを示唆している。
【0079】
〔実施例2〕
非晶質水酸化鉄(III)によるセレン汚染土壌の処理を行った。
【0080】
上記3種類のセレン汚染土壌に対して非晶質水酸化鉄(III)を7種類の使用量で使用し、吸着挙動を調べた。すなわち、各セレン汚染土壌10gに対して、非晶質水酸化鉄(III)を0g、0.1g、0.2g、0.3g、0.4g、0.5g、および0.75gの7種類の使用量でそれぞれ使用した(ただし、0gの場合は非晶質水酸化鉄(III)を使用しない)。次に、4mLの純水を添加して均一に混合し、湿った土壌試料を得た。その後、湿った土壌試料を、一晩、静置した。5gの湿った土壌試料に30mLの純水を加え、続いて、室温で6時間振とうした。次に、得られた混合物を遠心分離し、0.45μmのマイクロフィルタを通してろ過した。得られた濾液について、水溶性セレン含有量およびpHを測定した。
【0081】
さらに、含水率、pH、および非晶質水酸化鉄(III)の使用量を変化させて、セレン汚染土壌中の水溶性セレンの不溶化(固定化)に対する非晶質水酸化鉄(III)の効果の変化を調べた。
【0082】
まず、含水率の影響を評価するために、純水を加えることによって、土壌と非晶質水酸化鉄(III)との混合物の含水率を20重量%または40重量%に調整した。これら2種類の含水率において、水溶性セレン含有量の有意な差はなかった。それゆえ、含水率が40重量%の場合に土壌と非晶質水酸化鉄(III)とを容易に混合することができたので、40重量%を混合物の含水率として採用した。
【0083】
上述したように、非晶質水酸化鉄(III)上への亜セレン酸イオンおよびセレン酸イオンの吸着量はpHの低下に従って増加し、pH4.5において最大吸着量を示した。さらに、pHの上昇にしたがって、非晶質水酸化鉄(III)による亜セレン酸イオンおよびセレン酸イオンの両方の吸着率が低下した。他方、pHが4未満になると、重金属やアルミニウムなどの有害成分が、土壌から外に溶出する可能性がある。それゆえ、処理のためのpHは、塩酸を加えることによって約4に定めた。
【0084】
また、非晶質水酸化鉄(III)の使用量の影響を評価するために、50mg/kgのセレン酸イオンを含む土壌を、1重量%(土壌を1とする)の非晶質水酸化鉄(III)、2重量%の非晶質水酸化鉄(III)、および5重量%の非晶質水酸化鉄(III)のそれぞれと混合した。セレン汚染土壌10gをpH4.5において4mLの純水で処理したときの、セレン汚染土壌における水溶性セレンの含有量を、非晶質水酸化鉄(III)の使用量の関数として図9〜11のグラフに示す。
【0085】
汚染セレンの化学種に関係なく、非晶質水酸化鉄(III)の使用は、亜セレン酸イオンおよびセレン酸イオンの両方の固定化(不溶化)に顕著な効果を示し、水溶性セレンの含有量を劇的に減少させた。亜セレン酸イオンによって汚染された土壌については、図9に示すように、0.99重量%(土壌を1とする)の非晶質水酸化鉄(III)の使用により、水溶性セレン含有量が8〜155μg/Lから3〜6μg/Lまで減少した。また、非晶質水酸化鉄(III)の使用量をそれ以上増やしても、顕著な変化は観測されなかった。同様の非晶質水酸化鉄(III)の効果は、亜セレン酸イオンとセレン酸イオンとが入り混ざったセレン汚染土壌でも得られた。水溶性セレンの含有量が比較的低いセレン汚染土壌においては、0.99重量%(土壌を1とする)の非晶質水酸化鉄(III)の使用により、水溶性セレン含有量が、WHOによって提案されている飲料水基準値10μg/Lよりも低い値に抑えることができた。
【0086】
しかしながら、50mg/kgのセレン酸イオン(Se(VI))を含有する土壌や、亜セレン酸イオン(Se(IV))とセレン酸イオン(Se(VI))との両方を合計で150mg/kg含有する土壌など、汚染レベル(水溶性セレンの含有量)が比較的高いセレン汚染土壌においては、水溶性セレンは、飲料水基準と比較して非常に高い含有量(2.26mg/Lおよび3.79mg/L)を示した。
【0087】
非晶質水酸化鉄(III)の使用量が0.99重量%(土壌を1とする)の場合には、上記2つの土壌中における水溶性セレン含有量がそれぞれ12μg/Lおよび18μg/Lまで低減され、非晶質水酸化鉄(III)の使用量が1.96重量%(土壌を1とする)の場合には、上記2つの土壌中における水溶性セレン含有量がそれぞれそれぞれ3μg/Lおよび5μg/Lまで低減された。
【0088】
亜セレン酸イオンおよびセレン酸イオンの固定化(不溶化)の機構は、非晶質水酸化鉄(III)表面上への水溶性セレンの吸着であると考えられる。(水)酸化鉄(III)類への水溶性セレンの強い親和性と、非晶質水酸化鉄(III)の広い表面積とが、顕著なセレン吸着効果が得られた原因であると考えられる。ただし、本実施例の結果では、非晶質水酸化鉄(III)によってセレン酸イオンよりも亜セレン酸イオンの方がより多く吸着される。
【0089】
以上の実施例の結果から、非晶質水酸化鉄(III)がセレン汚染土壌中の亜セレン酸イオンまたはセレン酸イオンに対して顕著な不溶化(固定化)効果を持っていることが確認された。本実施例の方法では、非晶質水酸化鉄(III)を用いることによって、セレン汚染土壌中における水溶性セレンの濃度を環境安全レベル(10μg/L以下)に抑えることができた。
【0090】
本実施例の方法は、工場下水および廃水を含むさまざまな他のセレン汚染物質にも適用できる。
【0091】
また、鉄(水)酸化物類は、土壌中に自然に存在するものであるので、セレン汚染土壌への非晶質水酸化鉄(III)の使用は、有害な効果をもたらさない。
【0092】
加えて、非晶質水酸化鉄(III)は、硝酸鉄(III)および水酸化ナトリウムから容易に合成することができ、これら両方の試薬とも、安価で、市販されているので、従来のセレン汚染修復法に対するコスト低減の効果も大きい。
【0093】
【発明の効果】
本発明の水溶性セレン除去剤は、以上のように、非晶質水酸化鉄(III)、あるいは、硝酸鉄(III)水溶液をアルカリ金属水酸化物で中和することにより沈殿として得られる物質を含有する構成である。
【0094】
上記構成によれば、水溶性セレンに対して強い親和性を持つ鉄元素を含み、かつ、亜セレン酸イオンおよびセレン酸イオンの両方に対して高い吸着能を持つ非晶質水酸化鉄(III)、あるいは硝酸鉄(III)水溶液をアルカリ金属水酸化物で中和することにより沈殿として得られる物質を含有している。そのため、汚染物質中に含まれる亜セレン酸イオンおよびセレン酸イオンの両方を効率良く除去することができる水溶性セレン除去剤を提供できる。
【0095】
本発明の水溶性セレンの除去方法は、以上のように、上記水溶性セレン除去剤を、水溶性セレンにより汚染された物質と接触させ、上記水溶性セレン除去剤に水溶性セレンを吸着させて不溶化させる方法である。
【0096】
上記方法によれば、上記水溶性セレン除去剤が硝酸鉄(III)および水酸化ナトリウムを原料として安価に製造でき、また、特別な装置等も必要としないので、セレン除去処理のコストが低廉である。
【0097】
また、上記方法によれば、生物的処理法ではセレン汚染除去が難しい、市街地セレン汚染土壌や各種のセレン汚染産業汚泥、セレン汚染廃水などのセレン汚染物質を対象とした水溶性セレンの除去も可能となる。
【0098】
さらに、上記方法によれば、水溶性セレン除去剤に対して、水溶性セレンにより汚染された物質を接触させるだけでよいので、沈殿法と比較して、操作が簡便である。
【0099】
本発明は、水溶性セレンにより汚染された土壌、水、空気等から水溶性セレンを除去することにより環境を浄化することができるので、土木、建設、建築、農業等での利用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】非晶質水酸化鉄(III)による亜セレン酸イオン(Se(IV))の吸着等温線を示すグラフである。
【図2】鱗鉄鉱による亜セレン酸イオン(Se(IV))の吸着等温線を示すグラフである。
【図3】針鉄鉱による亜セレン酸イオン(Se(IV))の吸着等温線を示すグラフである。
【図4】赤鉄鉱による亜セレン酸イオン(Se(IV))の吸着等温線を示すグラフである。
【図5】非晶質水酸化鉄(III)によるセレン酸イオン(Se(VI))の吸着等温線を示すグラフである。
【図6】鱗鉄鉱によるセレン酸イオン(Se(VI))の吸着等温線を示すグラフである。
【図7】針鉄鉱によるセレン酸イオン(Se(VI))の吸着等温線を示すグラフである。
【図8】赤鉄鉱によるセレン酸イオン(Se(VI))の吸着等温線を示すグラフである。
【図9】非晶質水酸化鉄(III)で処理した亜セレン酸イオン(Se(IV))含有土壌からの浸出液中における水溶性セレンの含有量を示すグラフであり、(a)は亜セレン酸イオンの濃度が20mg/kgの場合、(b)は亜セレン酸イオンの濃度が50mg/kgの場合、(c)は亜セレン酸イオンの濃度が100mg/kgの場合である。
【図10】非晶質水酸化鉄(III)で処理したセレン酸イオン(Se(VI))含有土壌からの浸出液中における水溶性セレンの含有量を示すグラフであり、(a)はセレン酸イオンの濃度が10mg/kgの場合、(b)はセレン酸イオンの濃度が20mg/kgの場合、(c)はセレン酸イオンの濃度が50mg/kgの場合である。
【図11】非晶質水酸化鉄(III)で処理した亜セレン酸イオン(Se(IV))およびセレン酸イオン(Se(VI))を含有する土壌からの浸出液中における水溶性セレンの含有量を示すグラフであり、(a)は亜セレン酸イオンの濃度が20mg/kg、セレン酸イオンの濃度が10mg/kgの場合、(b)は亜セレン酸イオンの濃度が50mg/kg、セレン酸イオンの濃度が20mg/kgの場合、(c)は亜セレン酸イオンの濃度が100mg/kg、セレン酸イオンの濃度が50mg/kgの場合である。
Claims (5)
- 水溶性セレンにより汚染された物質から水溶性セレンを除去するための水溶性セレン除去剤において、
非晶質水酸化鉄(III)を含有することを特徴とする水溶性セレン除去剤。 - 水溶性セレンにより汚染された物質から水溶性セレンを除去するための水溶性セレン除去剤において、
硝酸鉄(III)水溶液をアルカリ金属水酸化物で中和することにより沈殿として得られる物質を含有することを特徴とする水溶性セレン除去剤。 - 水溶性セレンにより汚染された物質から水溶性セレンを除去するための水溶性セレンの除去方法において、
請求項1または2記載の水溶性セレン除去剤を、水溶性セレンにより汚染された物質と接触させ、上記水溶性セレン除去剤に水溶性セレンを吸着させて不溶化させることを特徴とする水溶性セレンの除去方法。 - 水溶性セレンにより汚染された物質が、水溶性セレンにより汚染された土壌であることを特徴とする請求項3記載の水溶性セレンの除去方法。
- 水溶性セレンにより汚染された土壌と上記水溶性セレン除去剤とを、pH4〜6.5の水溶液中で混合することを特徴とする請求項4記載の水溶性セレンの除去方法。
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