JP2004089922A - 油水混相流体中の油分の分離あるいは濃縮方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】管路(1)内において、上流側で油水混相流体(A)の旋回流を生成させ、旋回流の軸中心付近の油分(B)流れを抜出す。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【従来の技術と発明の課題】
従来より、危険物施設や一般施設の汚水排水処理施設では、下水道や一般河川等に流す前に、法的に定められた水質まで浄化するようにしている。
【0002】
その処理過程では、▲1▼物理学的方法(スクリーニング、沈殿、ろ過、浮上、攪拌)、▲2▼化学的方法(凝集、活性炭吸着、pH調整、酸化還元、消毒、イオン交換)、▲3▼生物学的方法(好気処理、嫌気・好気処理、嫌気処理)が利用されており、通常これらが組み合わされて処理されている。
【0003】
ここで、▲1▼物理学的方法とは、水との重さの違いや、除去する物の大きさを利用した処理方法であり、▲2▼化学的方法とは、分子間の引力や電荷、化学反応を利用した方法、▲3▼生物学的方法とは、汚水中の有機物をえさとして生活できる細菌などを利用した方法である。
【0004】
これら従来の処理施設では、処理が必要とされる規模と混在する油分の処理が大きな課題になっている。
【0005】
たとえば、大規模な上水使用後の処理や雨水等の処理において油分の分離が必要とされる空港施設が例として挙げられる。
【0006】
空港施設においては、上水は、空港ターミナルビルのレストラン厨房やオフィス洗面台等に、国際空港の規模において、年間200〜250万トンが使用され、処理後に下水道や河川に放流され、一部は中水(再利用水)に処理されてターミナルビルのトイレ洗浄水等として利用されることになる。この場合の処理施設設計上の水質基準としては、たとえば、厨房処理において表1のようであり、中水については表2のように定められる。
【0007】
【表1】
【0008】
【表2】
【0009】
また、雨水等については、空港エプロン地区や給油施設地区等において、たとえば成田国際空港では年間460万トンの雨水が降り、一部は排水溝を通して滞水池に流れ込み希釈されて下流河川に流れ、一部は中水として空調用冷却水等に利用される。また、さらに一部は下水道品質基準に適合する為の処置を施して専用下水道を通じ排水されている。
【0010】
たとえば、以上の例において、上水使用後の処置で油分の分離・回収を効果的に行なうことが重要な課題になる。また雨水等の外部水が外に出ていく場合は、空港内で汚れたり、有機・無機、化学物質の混入により雨水の性格が変わらないよう監視するシステムが導入されている。しかし、突発的な物質の混入を未然に防止し、下流河川に安全な水の流下を保証する対策は極めて重要な視点である。
【0011】
その意味で空港から排出される雨水等の混相水の中から、油分を分離・回収するか、あるいは、希釈放流可能となる安全な濃度まで取り除いてやる装置の開発は極めて重要な検討課題である。
【0012】
食用油、燃料、オイル等の油分を水と分離する方法としては、水と油の比重差を利用した分離処理が多く採用されている。
【0013】
その方法としては、まず、たとえば図3に例示したように、排水処理経路に、処理量に応じた大きさの分離槽を2つ以上設け、上流槽から下流槽に流入する位置を水面より下の高さにすることによって、比重の軽い油分を上流槽の水面上に溜めて分離するようにしたものが知られている。また、この方法において、分離槽の数を増やすことにより、分離を繰り返し、下流槽の水質をさらに向上させるようにしたものが知られている。
【0014】
そして、水分中に溶け込んでいる油分については、流量を抑え、分離槽に長い時間滞留させることにより、自然作用により油分を浮上させ水と分離することや、図4のように、圧力をかけた圧縮空気を水に溶解させ、それを分離槽下から流し込んで細かい気泡を油分に付着させることにより、水面に浮上させて分離するようにした工夫もなされている。
【0015】
さらに分離槽の水面に浮いた油分の処理方法については、従来は、分離槽が小さいものであれば柄杓等ですくい、大きな分離槽であれば油吸着剤、油処理剤を用いて除去している。
【0016】
また、このような作業のほかには、図5に例示したように、油分の滞留している分離槽の水面高さを調整し、水面上に浮いた油分を重力で別の槽に排出する方法や、吸引により処理する方法が知られている。
【0017】
しかしながら、従来の油水分離の方法については▲1▼処理流量の制限、設備の規模▲2▼分離油処理の手間、▲3▼加圧水による浮上分離においては、当然のこととして、加圧水を生成させるための設備が必要となり、その設置と保守コストも問題となる。
【0018】
また、排水含有油分の分離における自然作用における油分の浮上処理に関しては、分離に要する時間に応じた処理流量の制限があり、上流側において流量の調整が必要になる。さらにまた、浮上分離の処理流量を上げる場合は、分離槽の容量を大きくしたり、増設することが必要であり、施設全体の規模も大きくならざるを得ない。
【0019】
そして、いずれの場合においても、浮上油分の除去のための多くの労力と資材コスト等が問題にならざるを得ない。
【0020】
そこで、この出願の発明は、油水混合物の処理として油分を効率的に分離することができ、以上のような既存の設備と組合わせることによってもこれら設備の負担を大幅に軽減することができる、簡便なプロセスで、省スペース、省エネルギー化が図られ、コスト負担の軽減が可能とされる、新しい油水分離のための技術手段を提供することを課題としている。
【0021】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとしては、第1には、管路内において、上流側で油水混相流体の旋回流を生成させ、旋回流の軸中心付近の油分の流れを抜き出すことを特徴とする油水混相流体中の油分の分離あるいは濃縮方法を提供する。
【0022】
また、この出願の発明は、上記の方法について、第2には、管路ベント部における非軸対称2次流の利用、管路内への案内羽根の設置、管路内への噴出ノズルの設置および管路の接線方向に流入させる流入管の設置のうちの少くともいずれかの手段により管路内の上流側に油水混相流体の旋回流を生成させることを特徴とする油水混相流体中の油分の分離あるいは濃縮方法を、第3には、管路ベント部において非対称2次流により旋回流を生成させ、その下流側に漸縮小管を設けることにより旋回流を変形させ、流れの軸中心近傍の油分を抜き出すことを特徴とする油水混相流体中の油分の分離あるいは濃縮方法。
【0023】
第4には、管路内部に、上流側に向けて開口する小径管路を管路と同心に配置して、この小径管路により軸中心付近の油分を抜き出すことを特徴とする油水混相流体中の油分の分離あるいは濃縮方法を、第5には、管路内に、紐を軸中心付近に設けることで、軸中心付近の油分の抜き出しを促進することを特徴とする油分の分離あるいは濃縮方法を提供する。
【0024】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0025】
この出願の発明においては、油水混相流体中の油分を、流体現象の渦を利用して容易に、かつ、高効率に分離・濃縮して、油分の再利用や、浄化水の中水としての利用、さらには河川への放出を可能とする。
【0026】
このような流体の渦現象の利用は、この出願の発明者による着想とその実証についての数多くの事例を通しての検討の結果導かれたものであって、その一部はスパイラル流体技術として実用化されてもいる。この出願の発明はこれらの背景からなされたものである。
【0027】
この出願の発明においては、油水混相流体からの油分の分離、つまり油分としての濃縮を行うために、基本的には、管路内において、その上流側で油水混合の混相流体の旋回流を生成させ、下流側で、旋回流の軸中心付近の油分を流水として抜き出すことを特徴としている。
【0028】
この方法では、対象とする油水混相流体についてはその種類(油分と水分)について特に限定はない。たとえば前記の空港施設地区においては、油分としては、石油系、尿素系、そしてグリコール系のものを主な対象として考慮されることになる。
【0029】
その混合比についても特段の制約はないが、一般的には、油分/水の重量比として1%以下程度のものであることが好ましい。この比率は、多くの処理施設において油分含有の水の浄化処理の対象として一般的なものである。
【0030】
旋回流の生成については、各種の手段が考慮されてよく、自然旋回流の生成手段、強制旋回流の生成手段のうちの適宜なものであってよい。このような手段としては、たとえば前記のとおり、管路ベント部における非対称2次流を利用することや、管路内への案内板の設置、管路内への噴出ノズルの設置、あるいは管路の接線方向に流入させる流入管の設置等の手段が好適なものとして挙げられる。もちろん、これらの手段は1種でもよいし、2種以上のものが組合わされてもよい。
【0031】
これら手段によって生成された旋回流においては、流れに追随できる油分(追随性は、油であれば粒径と比重に依存する)が旋回流の軸中心近傍に集まった流れを形成することになる。そこで、この出願の発明では、この軸中心近傍の流れとしての油分を管路内から抜き出すことになる。抜き出しのための手段も各種のものが考慮されてよいが、代表的な手段としては、上流側に向けて開口する小径管路を管路と同心に配置して、この小径管路により軸中心付近の流れとしての油分を抜き出すことが例示される。
【0032】
より具体的な実施の形態を例示したものが図1および図2の例である。図1の例においては、油水混相流体(A)が流れる管路(1)にベント部(11)を設け、このベント部(11)で非対称2次流による旋回流が生成されるようにしている。そしてさらに管路(1)には、下流側に漸縮小管部(12)を設け、ここで旋回流が変形されて、軸中心の流れの分布度(流速分布)が強められたスパイラル流が形成されるようにしている。
【0033】
軸中心付近の油分の流れは、より軸中心への集中の度合を高められることになる。
【0034】
軸中心付近の油分(B)については、管路(1)内に、上流側に向けて開口し、管路(1)と同心に配置された小径管路(2)によって、その開口から抜出すようにしている。
【0035】
管路(1)に設けたベント部(11)と漸縮小管部(2)そして小径管路(2)という簡単な手段の配置によって、油水混相流体(A)からの効率的な油分(B)の分離回収(濃縮)が可能となる。油分(B)が分離された後には、管路(1)からは浄化された水(C)が回収される。
【0036】
この図1の例においては、油水混相流体(A)の組成や流速等によっても相違するが、油分の効果的な分離・濃縮のためには、その装置や操作の条件としては一般的に以下のものが好ましいものとして考慮される。
【0037】
▲1▼ 油水混相流体(A)の
流速(m/min):50〜100
▲2▼ 管路(1)の上流側小径(D1)
と下流側内径(D2)の比
D2/D1 :10/100〜25/100
▲3▼ 小径管路内径(D3)と上流
側内径(D1)の比D3/D1:2/10〜5/10
▲4▼ 漸縮小管部(12)の長さ(L1)
との比L1/D1:1〜3
▲5▼ 小径管路(2)開口までの
距離(L2)の比L2/L1:7/10〜15/10
もちろんこれらは一般的な目安である。そして、図1の例においては、そのバリエーションとして、ベント部(11)への上流側に漸拡大管部を設けることも有効である。油分の種類や比重によってはこの方法によってより効果的な分離が可能ともなる。
【0038】
そして、図2は、図1の例の構成に加えて、旋回流の軸中心付近になるように紐(3)を配置したこの出願の発明の例を示している。この紐(3)は、軸中心付近の流れとなる油分を小径管路(2)へと効果的に誘導する役割を果たすものである。その素材については特に限定はないが、合成樹脂繊維や天然繊維、たとえば毛糸等として構成されたものが考慮される。紐(3)の性状としては、その表面は毛糸のように細い繊維が沢山存在する状態が望ましい。その理由としては、油・水・空気(表面が毛羽たっているために小さな空気バブルが合成繊維に内包されている)の電気的極性と紐の電気的極性の相互作用が考慮される。水中では表面電荷はディスチャージされて、電気極性の相互作用は生じないが、紐に内包されている空気が何らかの役割を演じているように思われるからである。
【0039】
実際、たとえば合成繊維は、水をはじくが、油を吸着する。これは、空気の泡が存在することで、電気的極性の相互作用が生じ、紐近傍に旋回流により収れんしてきた油を吸着するものと考えられる。
【0040】
そして紐(3)は、油分の吸着捕獲とともに、旋回流の中で渦芯近傍に位置決めされやすく、しかも紐(3)は渦の崩壊を防ぎ、渦度を高めるという作用効果も奏する。
【0041】
そして、紐(3)については、その始端が漸縮小管部(12)の始まりの位置とし、終端は、小径管路(2)内に挿入された位置とするのが好ましい。
【0042】
たとえば以上のとおりのこの出願の発明の方法は、単独のプロセスとして浄水装置や浄化設備に配置してもよいし、より大規模な処理の場合には、従来既設の処理設備が従来公知のプロセスと組合わせて複合化してもよい。この複合化によれば、従来プロセスに比べて油分の分離・濃縮のための操作作業やエネルギー、そしてコストの負担ははるかに小さなものに軽減可能とされる。
【0043】
好適にこの出願の発明が実施される例が、前記のとおりの大規模な上水使用後の処理や雨水等の処理が必要とされる空港施設である。
【0044】
前記の従来技術の項でも説明したとおり、油分が混入された油水混相流体について、たとえば空港施設では、従来法としての加圧水ポンプ設備を備えた加圧浮上槽方式による油分の分離回収が行われるが、この従来の設備において、その前段プロセスとして、たとえば図1もしくは図2の方法によるプロセスを配置することで、エネルギー消費とコストを1/5以下にまで軽減することができる。空港からの排水は窒素成分が希薄なため生物処理が難しく、凍結濃縮はエマルジョンになっているために対応が難しいという問題があるが、この出願の発明においては簡便に油分の濃縮回収が可能であって、回収された油分は、たとえば防水剤成分のプロピレングリコールの引火点が99℃であることからも、これを燃料として再資源化を図ることもできる。
【0045】
また、この発明のプロセスを、複数並列に、あるいは直列に配置することによって、従来プロセスの全面的代替も可能となる。
【0046】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、油水混合物の処理として油分を効率的に分離することができ、以上のような既存の設備と組合わせることによってもこれら設備の負担を大幅に軽減することができる、簡便なプロセスで、省スペース、省エネルギー化が図られ、コスト負担の軽減が可能とされる、新しい油水分離のための技術手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願の一例を示した構成断面図である。
【図2】図1とは別の一例を示した構成断面図である。
【図3】従来の簡易分離の方法とその設備を例示した概要断面図である。
【図4】従来の加圧水による分離とその処理槽を例示した概要断面図である。
【図5】油回収装置付分離槽を例示した概要断面図である。
【符号の説明】
A 油水混相流体
B 油分
C 水
1 管路
11 ベント部
12 漸縮小管部
2 小径管路
3 紐
Claims (5)
- 管路内において、上流側で油水混相流体の旋回流を生成させ、旋回流の軸中心付近の油分の流れを抜き出すことを特徴とする油水混相流体中の油分の分離あるいは濃縮方法。
- 管路ベント部における非軸対称2次流の利用、管路内への案内羽根の設置、管路内への噴出ノズルの設置および管路の接線方向に流入させる流入管の設置のうちの少くともいずれかの手段により管路内の上流側に油水混相流体の旋回流を生成させることを特徴とする請求項1の油水混相流体中の油分の分離あるいは濃縮方法。
- 管路ベント部において非対称2次流により旋回流を生成させ、その下流側に漸縮小管を設けることにより旋回流を変形させ、流れの軸中心近傍の油分を抜き出すことを特徴とする請求項1または2の油水混相流体中の油分の分離あるいは濃縮方法。
- 管路内部に、上流側に向けて開口する小径管路を管路と同心に配置して、この小径管路により軸中心付近の油分を抜き出すことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの油水混相流体中の油分の分離あるいは濃縮方法。
- 管路内に、紐を軸中心付近に設けることで、軸中心付近の油分の抜き出しを促進することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの油分の分離あるいは濃縮方法。
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JP2002257074A JP4063616B2 (ja) | 2002-09-02 | 2002-09-02 | 油水混相流体中の油分の分離あるいは濃縮方法 |
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