JP2004088815A - 超音波モータの駆動方法および超音波モータ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】駆動速度の制御範囲を低速側へ拡大させる超音波モータの駆動方法および超音波モータ装置を提供する。
【解決手段】超音波モータ(L1B4型モータ)装置10は、振動子11と移動子12とを有するL1B4型モータ10Aと、電源16a・16bと、電源16aから出力される駆動電圧と電源16bから出力される駆動電圧の位相をずらす位相制御装置17と、振動子11を保持して移動子12に所定の力で押し付ける与圧機構18と、を有している。電源16a・16bから出力される2種類の駆動電圧の位相を変化させることによって移動子12の移動速度を変化させる。
【選択図】 図1
【解決手段】超音波モータ(L1B4型モータ)装置10は、振動子11と移動子12とを有するL1B4型モータ10Aと、電源16a・16bと、電源16aから出力される駆動電圧と電源16bから出力される駆動電圧の位相をずらす位相制御装置17と、振動子11を保持して移動子12に所定の力で押し付ける与圧機構18と、を有している。電源16a・16bから出力される2種類の駆動電圧の位相を変化させることによって移動子12の移動速度を変化させる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波振動を利用した超音波モータの駆動方法と、超音波モータ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
超音波振動を利用した超音波モータは、電磁ノイズを発生させないことや、低速でも高いトルクを発生させることから、精密位置決め用ステージ等の駆動装置として注目されている。超音波モータには種々の振動モードを利用するものが知られているが、一例として、図8に異形縮退縦L1−横B4モードの平板モータ(以下「L1B4型モータ」という)90を有するモータ装置90´の概略構成を示す。なお、図8においてはL1B4型モータ90は断面図で示されている。
【0003】
モータ装置90´は、振動子91と移動子92とを有するL1B4型モータ90と、振動子91を駆動する駆動電源96a・96bと、振動子91と移動子92との間に所定の摩擦力が生ずるように振動子91を移動子92側へ押圧する与圧機構97とを有している。振動子91は、矩形の弾性体93と、弾性体93の表裏面にそれぞれ2個ずつ取り付けられた圧電素子94a〜94dと、弾性体93に生ずる振動を移動子92に伝える突起体95と、を有している。
【0004】
圧電素子94a〜94dは、一般的には圧電体の表裏面に電極(図示せず)が形成された単板型の圧電素子である。圧電素子94a・94dを1組とし、圧電素子94b・94cを1組として、駆動電源96a・96bから各組の圧電素子に位相が90度ずれた正弦波電圧等の交流電圧を印加すると、弾性体93には長手方向(X方向とする)の一次の伸縮共振と4次の曲げ共振が同時に発生し、突起体95の付け根部分に楕円運動が生じ、その楕円運動が突起体95の先端に伝えられて、突起体95の先端に楕円運動が生ずる。
【0005】
与圧機構97は、振動の節となる弾性体93の長手方向中央を保持し、振動子91を移動子92側に所定の力で押し付けている。これによって突起体95の先端の楕円運動の動きが移動子92に伝えられ、移動子92はX方向に延在するガイド(図示せず)に沿って直線的に移動する。なお、このL1B4型モータ90の詳細な駆動原理は、例えば、「新版超音波モータ((株)トリッケップス、上羽・富川著)」に解説されている。
【0006】
このようなL1B4型モータ90の駆動速度の調整方法、つまり移動子92の移動速度の調整方法としては、圧電素子94a〜94dに印加する電圧値(振幅の大きさ)を変える方法が知られている。また、従来、与圧機構97によって振動子91を移動子92に押し付ける与圧は、使用用途に応じて一定に保持されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、L1B4型モータ90では、突起体95の先端の振動振幅がある程度大きくならないと移動子の移動が始まらない、いわゆる不感帯が存在する。つまり、L1B4型モータ90は、印加する駆動電圧を徐々に上げていくと、駆動電圧がある値に達した時点で急に駆動を開始する。
【0008】
このときの駆動速度の値(駆動最低速度)は、与圧機構97による与圧の大きさを変えることによって、ある程度は変えることができる。ところが、先に述べたように、与圧機構97による与圧の大きさは一定に保持されているために、現実問題として、与圧の大きさを変えることによって、駆動最低速度を低速側へシフトさせることは行われていない。精密位置決め装置においては、最終的な微調整を低速度で行う方が位置決め精度を高めることができることから、駆動最低速度が定まっているL1B4型モータ90を精密位置決め装置に適用した場合には、位置決め精度を高めることが困難である。
【0009】
また、L1B4型モータ90の駆動速度は、与圧機構97によって振動子91を移動子92に押し付ける与圧の大きさに依存し、最高速度を与える与圧では推力は比較的小さく、さらに与圧を上げると推力は大きくなるが駆動速度は低下する。従来は与圧機構97による与圧の大きさは使用される用途に応じて一定に設定されていたために、L1B4型モータ90の能力が最大限に引き出されていなかった。これらの問題は他の構造の超音波モータにおいても同様に発生する。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、駆動速度の制御範囲を低速側へ拡大させる超音波モータの駆動方法および超音波モータ装置を提供することを目的とする。また、本発明は、推力と速度とをバランスよく得ることができる超音波モータの駆動方法および超音波モータ装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明によれば、所定周波数で位相の異なる2種類の駆動電圧が印加される複数の圧電素子を有し、前記圧電素子の振動によって所定の振動モードで振動する振動子と、
前記振動子の振動に応じて相対運動を行う移動子と、
を有する超音波モータの駆動方法であって、
前記駆動電圧の位相を変化させることによって前記移動子の移動速度を変化させることを特徴とする超音波モータの駆動方法、が提供される。
【0012】
また本発明によれば、上記超音波モータの駆動方法を実施する超音波モータ装置、すなわち、
所定周波数で位相の異なる2種類の駆動電圧を出力可能な電源装置と、
前記2種類の駆動電圧が印加される複数の圧電素子を有し、前記圧電素子の振動によって所定の振動モードで振動する振動子と、
前記振動子の振動に応じて相対運動を行う移動子と、
前記移動子の移動速度が変化するように前記電源装置から出力される前記2種類の駆動電圧の位相を変化させる位相制御装置と、
を具備することを特徴とする超音波モータ装置、が提供される。
【0013】
このような超音波モータの駆動方法および超音波モータ装置によれば、振動子から移動子に伝わる駆動力の成分のうち、振動子を移動子に押し付ける方向の成分の大きさを一定値以上に確保しながら、移動子の移動方向の成分の大きさを変化させることができるため、振動子の駆動速度の範囲を低速側へと拡げることができる。これによりステージ等の位置決め用途に適用した場合には、高い精度での位置決めを行うことが可能となる。また、駆動電圧を上げなくとも超音波モータの駆動速度をより高速で駆動することも可能となる。
【0014】
さらに本発明によれば、圧電素子の振動によって所定の振動モードで振動する振動子と、
前記振動子と所定の与圧で接し、前記振動子の振動に応じて相対運動を行う移動子と、
を有する超音波モータの駆動方法であって、
前記与圧を変化させることにより前記移動子の移動速度を変化させることを特徴とする超音波モータの駆動方法、が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、このような超音波モータの駆動方法を実施する超音波モータ装置、すなわち、
圧電素子の振動によって所定の振動モードで振動する振動子と、
前記振動子の振動に応じて相対運動を行う移動子と、
前記振動子を前記移動子に所定の力で押圧する与圧手段と、
前記移動子の移動速度に応じて前記与圧手段による与圧を調整する与圧制御機構と、
を具備することを特徴とする超音波モータ装置、が提供される。
【0016】
このような超音波モータの駆動方法および超音波モータ装置によれば、大きな推力を得たい場合や駆動速度を速くしたい場合に応じて与圧を変化させることにより、駆動速度と推力とのバランスを制御することができる。これにより超音波モータの特性を最大限に引き出すことができ、例えば、移動子の目的位置への到達時間を短縮することが可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1はL1B4型モータ装置10の概略構成を示す説明図であり、図1中にL1B4型モータ10Aが断面図で示されている。L1B4型モータ装置10は、振動子11と移動子12とを有するL1B4型モータ10Aと、電源16a・16bと、電源16aから出力される駆動電圧と電源16bから出力される駆動電圧の位相をずらす位相制御装置17と、振動子11を保持して移動子12に所定の力で押し付ける与圧機構18と、を有している。
【0018】
L1B4型モータ10Aの振動子11は、矩形の弾性体13と、弾性体13の表裏面にそれぞれ2個ずつ取り付けられた圧電素子14a〜14dと、弾性体13に生ずる振動変位を拡大して移動子12に伝える2本の脚部15と、を有している。与圧機構18は弾性体13の長手方向中央を保持して、所定の力で振動子11を移動に押しあてて、振動子11と移動子12を摩擦保持する。
【0019】
弾性体13としては、金属材料やセラミックス材料が好適に用いられる。圧電素子14a〜14dは樹脂接着剤を用いて弾性体13の表裏面に取り付けられている。圧電素子14a〜14dはそれぞれ、単板の圧電体21の表面(弾性体13との非接着面)に電極22aが形成され、圧電体21の裏面(弾性体13との接着面)に電極22bが形成された構成を有する。圧電体としては、機械的品質係数Qmの大きいチタン酸ジルコン酸鉛系の圧電セラミックスが好適に用いられる。
【0020】
弾性体13が金属の場合には、弾性体13は圧電素子14a〜14dが具備する電極22bと導通する。これにより弾性体13を圧電素子14a〜14dに駆動電圧を印加する際のターミナルとして利用することができる。弾性体13がセラミックス(絶縁体)からなる場合には、表裏面に金属膜を形成し、この金属膜と圧電素子14a〜14dが具備する電極22bとを導通させる。これにより圧電素子14a〜14dの電極22bが外部へと取り出され、電源との接続が容易となる。
【0021】
圧電素子14a〜14dを駆動するための配線は図1に示す通りである。2個の圧電素子14a・14dを1組とし、2個の圧電素子14b・14cを1組として、電源16a・16bから、所定の位相差を有する所定の周波数(振動子11の異形縮退縦L1−横B4モードの共振周波数近傍)の駆動電圧を各組の圧電素子に対して供給する。
【0022】
電源16a・16bは、例えば、所定波形の信号を発生させるパルスジェネレータと、発生された信号を所定の振幅まで増大させるアンプと、を有する。また、位相制御装置17は、電源16a・16bから同位相で発信された駆動電圧の信号を比較して、両信号間に所定の位相差を生じさせる。位相制御装置17としては、例えば、ディレイ(遅延装置)が挙げられる。
【0023】
ここで、L1B4モータ10Aの圧電素子14a〜14dへ印加する駆動電圧について詳細に説明する。圧電素子14a〜14dには、縦L1モードの共振を起こす電圧と横B4モードを起こす電圧を同時に掛ける必要がある。そこで、縦L1モードの共振を起こす電圧VL1は圧電素子14a〜14dに共通であり、下式(1)で示される。また、横B4モードの共振をL1モードの共振と位相を90度(π/2)ずらして起こす電圧VB4−adとVB4−bcは、圧電素子14a・14dについては下式(2)で表され、圧電素子14b・14cについては下式(3)で表される。なお、V1、V2はゼロ−ピーク電圧、2πfは駆動周波数、tは時間である。
【0024】
【数1】
【0025】
圧電素子14aに印加する電圧Vは(1)式と(2)式を加えることで求められ、圧電素子14b〜14dについても同様である。したがって、これら(1)式〜(3)式から、圧電素子14a・14dに印加する電圧Vadは下式(4)および下式(6)で表され、圧電素子14b・14cに印加する電圧Vbcは下式(5)および下式(6)で表される。
【0026】
【数2】
【0027】
(4)式〜(6)式において、例えば、V1=V2=V/21/2とすると、tanθ=1、つまりθ=π/4となるから、(4)式は下式(7)のように変形され、(5)式は下式(8)のように変形される。これら(7)式と(8)式から、V1=V2の場合には、圧電素子14a・14dに印加する駆動電圧Vadと圧電素子14b・14cに印加する駆動電圧Vbcの位相差2θをπ/2とすればよいことがわかる。
【0028】
【数3】
【0029】
例えば、電源16aからVad=Vsin(2πft−θ)(V;ゼロ−ピーク電圧、f;周波数、t;時間、2θ;位相差(0<2θ<π))の電圧を供給し、電源16bからVbc=Vsin(2πft+θ)の電圧を供給する。これにより弾性体13には長手方向(X方向)の一次の伸縮共振と4次の曲げ共振が同時に発生し、これらの振動が組み合わさることによって弾性体13における脚部15の取り付け部分に楕円軌跡を描く振動が発生する。
【0030】
こうして発生した楕円運動は脚部15の先端に伝えられるが、このとき、L1B4モータ10Aにおいては、振動子11を所定の駆動周波数で駆動した際に、弾性体13に異形縮退縦L1−横B4モードの共振振動が発生し、かつ、脚部15に曲げモードの共振振動が発生するように、弾性体13と脚部15の形状を予め調整しておく。これにより振動子11においては、弾性体13の異形縮退縦L1−横B4モードの共振振動に基づいて脚部15の先端に生じている楕円運動のX方向の変位が、脚部15の曲げモードの振動によって拡大されて、脚部15の先端がX方向に大きく振れるようになる。
【0031】
なお、脚部15は弾性体13の変位部に取り付けられるために、図1に示すように、脚部15は弾性体13と一体的に構成されていることが好ましい。これにより脚部15の脱離等を防止することができるため、信頼性が高められる。また、脚部15を溶接等によって弾性体13と一体化できる場合には、弾性体13と脚部15とが最初から一体的に構成されていた場合と同等の信頼性を得ることができる。
【0032】
図2(a)〜(c)に、電源16a・16bから出力される駆動電圧の位相差と脚部15の先端に生ずる楕円運動の軌跡との関係を示す説明図を示す。ここで、図2(a)は位相差2θがπ/2の場合であり、図2(b)は位相差2θが0<2θ<π/2の場合であり、図2(c)は位相差2θがπ/2<2θ<πの場合である。また、図3は、図2(a)〜(c)に示される各楕円運動に対応するL1B4モータ10Aの駆動速度(移動子12の移動速度)と駆動電圧の関係を示す説明図である。
【0033】
図3中の速度特性線aは、位相差2θがπ/2のときのL1B4モータ10Aの駆動速度と駆動電圧(ゼロ−ピーク電圧値の大きさ)との関係を示している。この速度特性線aに示されるように、駆動電圧を0Vから徐々に大きくしていくと、駆動電圧VAでL1B4モータ10Aの駆動が始まる。この駆動電圧VAにおけるL1B4モータ10Aの駆動速度をu1とする。この駆動速度u1を与える脚部15の先端の楕円軌跡(以下単に「楕円軌跡」という)は図2に楕円軌跡a´で示されている。
【0034】
駆動電圧がVA未満のためにL1B4モータ10Aが駆動しない不感帯の発生は、脚部15の上げ下げの変位量が振動子11と移動子12の接触面の面粗度以下となっていることに起因すると考えられている。このために、楕円軌跡a´のZ方向成分の大きさをz1とすると、L1B4モータ10Aを駆動させるためには、ある駆動電圧における楕円軌跡のZ方向成分の大きさがz1以上あることが必要となる。駆動電圧を駆動電圧VAから上げていくと、楕円軌跡は、楕円軌跡aで示されるように、楕円軌跡a´の略相似形を維持しながら大きくなる。
【0035】
図3中の速度特性線bは、位相差2θが0<2θ<π/2の場合のL1B4モータ10Aの駆動速度と駆動電圧との関係を示している。また、速度特性線bは図2(b)と対応しており、駆動電圧VBにおける楕円軌跡が図2(b)中の楕円軌跡b´であり、駆動電圧VAにおける楕円軌跡が楕円軌跡b″であり、駆動電圧がVBよりも大きい所定値の場合の楕円軌跡が楕円軌跡bである。
【0036】
位相差2θが0<2θ<π/2の場合には、(4)式と(5)式においてθが0<θ<π/4となるために、0<tanθ=V2/V1<1(但し、ゼロ−ピーク電圧V=(V1 2+V2 2)1/2)となる。この場合には、電源16aから圧電素子14a・14dにVad=Vsin(2πft−θ)の駆動電圧を供給し、電源16bから圧電素子14b・14cにVbc=Vsin(2πft+θ)の駆動電圧を供給した際に、L1モードの共振に割り当てられる電圧V1がB4モードの共振に割り当てられる電圧V2よりも大きくなる。
【0037】
これにより振動子11の異形縮退縦L1−横B4モードの共振において、振動子11の長手方向(X方向)の変位量が大きくなり、厚み方向(Z方向)の変位量が小さくなるため、楕円軌跡は、図2(b)に示される楕円軌跡b・b´・b″のように、楕円軌跡aと比較すると、X方向の径が延びてZ方向の径が短くなった形となる。
【0038】
位相差2θが0<2θ<π/2の場合には、駆動電圧の値がVAに達しても、そのときの楕円軌跡b″のZ方向成分の大きさがz1に達しないためにL1B4モータ10Aは駆動せず、より大きい駆動電圧VBになった際に楕円軌跡b´のZ方向成分の大きさがz1に達して駆動し始める。この駆動電圧VBにおける楕円軌跡b´の水平方向成分の大きさx2は、位相差2θがπ/2でZ方向成分の大きさがz1である楕円軌跡a´の水平方向成分の大きさx1よりも大きいために、位相差2θが0<2θ<π/2の場合の駆動電圧VBにおける駆動速度u2は、位相差2θがπ/2で駆動電圧の値がVBの場合の駆動速度u1´よりも速くなる。さらに駆動電圧の値を大きくすると、楕円軌跡bの水平方向成分に割り当てられる電圧の割合が、位相差2θ=π/2の場合よりも多いために、駆動速度の駆動電圧に対する勾配は、通常、大きくなる。
【0039】
図3中の速度特性線cは、位相差2θがπ/2<2θ<πの場合のL1B4モータ10Aの駆動速度と駆動電圧との関係を示している。また、速度特性線cは図2(c)と対応しており、駆動電圧VCにおける楕円軌跡が図2(c)中の楕円軌跡c´であり、駆動電圧がVCよりも大きい所定値の場合の楕円軌跡が楕円軌跡cである。
【0040】
位相差2θがπ/2<2θ<πの場合には、(4)式と(5)式においてθがπ/4<θ<π/2となるために、tanθ=V2/V1>1(但し、ゼロ−ピーク電圧V=(V1 2+V2 2)1/2)となる。この場合には、電源16aから圧電素子14a・14dにVad=Vsin(2πft−θ)の駆動電圧を供給し、電源16bから圧電素子14b・14cにVbc=Vsin(2πft+θ)の駆動電圧を供給した際に、L1モードの共振に割り当てられる電圧V1がB4モードの共振に割り当てられる電圧V2よりも小さくなる。
【0041】
これにより振動子11の異形縮退縦L1−横B4モードの共振において、振動子11の長手方向(X方向)の変位量が小さくなり、厚み方向(Z方向)の変位量が大きくなるため、楕円軌跡は、図2(c)中の楕円c・c´で示されるように、楕円aと比較すると、X方向の径が短くなって、Z方向の径が長くなった形となる。
【0042】
位相差2θがπ/2<2θ<πの場合には、駆動電圧の値がVAに達する前のVCにおいて、楕円軌跡c´のZ方向成分の大きさがz1に達するために、L1B4モータ10Aが駆動し始める。電圧値VCにおける楕円軌跡c´の水平方向成分の大きさx3は、位相差2θがπ/2で電圧値がVAの場合よりも小さいために、電圧値VCにおける駆動速度u3は、位相差2θがπ/2で駆動電圧がVBの場合よりも遅くなる。さらに駆動電圧の値を大きくすると、楕円軌跡cの水平方向成分に割り当てられる電圧の割合は、位相差2θ=π/2の場合よりも少ないために、駆動速度の駆動電圧に対する勾配は、通常、小さくなる。
【0043】
このように、位相差2θがπ/2<2θ<πの場合には、駆動開始電圧を下げて不感帯の範囲を狭くし、駆動速度を低速度化することができる。これにより、L1B4モータ10Aを位置決め機構に適用した場合に、精密な位置決めを行うことが可能となる。
【0044】
また、例えば、最初に位相差2θをπ/3(0<2θ<π/2の一例)として圧電素子14a〜14dに所定の駆動電圧を印加し、L1B4モータ10Aを駆動させる。これによりL1B4モータ10Aを高速駆動することができる。次に、駆動電圧を下げて駆動速度を下げて、L1B4モータ10Aが停止する前に位相差2θを徐々にπ/2に近付けるように位相制御装置17を操作する。これにより駆動電圧を一定に保持しながら駆動速度を下げることができる。位相差2θがπ/2になったら、徐々に駆動電圧を下げてさらに駆動速度を下げて、L1B4モータ10Aが停止する前に位相差2θを徐々に4π/5(π/2<2θ<πの範囲)に近付けるように位相制御装置17を操作する。これにより駆動電圧を一定に保持しながら駆動速度を下げることができる。位相差2θが4π/5になったら、徐々に駆動電圧を下げてL1B4モータ10Aを低速度で駆動する。これにより移動体12を最初に高速で移動させて、最後に精密に位置決めすることができる。
【0045】
次に、与圧機構18について詳細に説明する。図4は与圧機構18の概略構造を示す説明図である。与圧機構18は、L1B4モータ10Aの振動子11を保持する保持部材31と、保持部材31に取り付けられたバネ32と、回転によってZ方向に移動し、バネ32の縮み代を調節するボルト33と、ボルト33を保持するガイド部材34と、ボルト33を所定角度回転させてボルト33をZ方向で移動させるステッピングモータ35と、ステッピングモータ35の回転を制御する回転制御装置36と、を有している。なお、ガイド部材34は図示しないフレームや壁部材に固定されている。
【0046】
与圧機構18では、回転制御装置36がステッピングモータ35を所定角度回転させることによって、ボルト33を上下に移動させ、このときにバネ32の縮み代が変化して、バネ32の付勢力、つまりバネ32が保持部材31を介して振動子11を移動子12側へ押し付ける与圧(押圧力)の大きさを変化させる。例えば、移動子12の移動速度を測定するセンサ(図示せず)を設け、このセンサの計測結果に基づいて、振動子11に適切な与圧が加わるように、回転制御装置36がステッピングモータ35を制御するように構成することができる。
【0047】
図5は与圧機構18が振動子11に加える与圧が一定の場合におけるL1B4モータ10Aの駆動速度と推力との関係を示すグラフである。図5より、推力が小さいときには、与圧の大きさが小さい場合で駆動速度が速い。一方、推力が大きいときには、与圧の大きさが大きい場合の方が駆動速度が速くなっている。このような関係は、L1B4モータ10Aに限らず、超音波モータ(他のリニアモータや回転型モータ等)に一般に見られる傾向である。
【0048】
静止している移動子12を加速する場合は、推力が大きい方が加速は速い。したがって、図5の2本の線の上側になっている部分の与圧を使う方が加速が速くなる。換言すれば、低速度側で高い与圧を使い、高速度側で低い与圧を用いることで、加速を速くすることができる。図5に示される2本の折れ線をそれぞれ直線近似すると、これらの交点は推力0.5N、駆動速度180mm/秒の点である。そこで、初期与圧を7.88Nとし、駆動速度が180mm/秒に達した時点で与圧の大きさを4.38Nに切り替えるように与圧機構18を動作させた場合の駆動速度と時間との関係を図6に、移動子12の移動距離と時間との関係を図7に示す。なお、図6および図7には、与圧の大きさを7.88Nで固定した場合と、4.38Nで固定した場合の結果を並記している。
【0049】
図6に示されるように、駆動速度に応じて与圧を切り替えた場合(曲線a)に加速が一番速く、これにより図7に示されるように、移動子12を0.1mよりも遠くへ移動させる場合には、短時間で目的位置まで移動させることができることが確認された。このように、静止しているものを動かす場合や、動いているものの速度をさらに上げる場合といった状況に応じて与圧を制御することによって、必要な速度と推力とをバランスよく得ることが可能となる。
【0050】
なお、図6および図7に示した例では、移動子12を0.1m以下の範囲内で移動させる場合には与圧を変える必要はない。しかし、これは与圧の大きさを7.88Nと4.38Nとの間で切り替えた場合に限られることであり、与圧を移動子12の速度に対応して切り替えるという趣旨によれば、例えば、移動子12を0.1m以下の範囲で移動させる場合には、初期与圧をより7.88Nよりも大きい値に設定し、その後により小さい与圧へ変えることによって、目的場所に到達させる時間を短縮することができる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。本発明に係る位相差2θを制御する駆動方法と与圧を制御する駆動方法は、L1B4モータ10Aに限らず、他の振動モードを用いるリニア型超音波モータと円盤型超音波モータにも適用することができる。
【0052】
また、超音波モータは基本的に振動子の共振現象を利用するものであるが、一般的に振動子の共振周波数は明確な1つの値を示さず、共振を起こしていると考えられる一定の周波数範囲では、同等の性能で超音波モータを駆動することができる。本発明においては、超音波モータの駆動に用いられる共振周波数には一定の範囲があり、そのような範囲内の周波数で駆動されるときの振動子の振動もまた共振と擬制されることが理解されるべきである。
【0053】
また、例えば、圧電素子14a〜14dに位相差を有する駆動信号を印加する場合において、上記説明においては、2台の電源16a・16bを用いた場合について説明したが、例えば、電源として位相差を制御する機能を有するマルチチャンネルのパルスジェネレータを有する電源を用い、このパルスジェネレータで最初から位相差を設けた2種類の駆動信号を発生させてアンプで増幅し、圧電素子14a〜14dに印加してもよい。
【0054】
さらに、図3に示す線a〜cは相対的な上下位置を示しているものであって、絶対的な位置を示しているものではない。例えば、位相差2θがπ/2に近い一定値に定められている場合には、線bと線cは線aに近接する。また、上記説明においては、位相差2θの調整と与圧の調整を別々に行った場合について説明したが、位相差2θを変化させながら同時に与圧を変化させて、L1B4モータ10Aの駆動を制御することも可能である。
【0055】
与圧機構18はバネの付勢力を用いるものに限定されず、例えば、重錘の重力を利用し、その重錘の数を変えることによって与圧を調整するものや、重さの異なる重錘を用いて与圧を調整するもの、エアーシリンダや油圧シリンダ等を用いることも可能である。
【0056】
L1B4型モータ10Aは、振動子11が固定され、移動子12を移動させるが、振動子11を平面ステージや直線状のレールの表面に載置し、振動子11の自重を利用してこれらの面上を自走させることも可能である。この場合には、与圧機構18は振動子11と共に移動させる必要がある。また、平行に配置された2本のガイドレールの一方に与圧機構18を移動自在に嵌め込み、振動子11の脚部15を別のガイドレールに押し当てることにより、振動子11をガイドレールに沿って移動させることも可能である。
【0057】
【発明の効果】
上述の通り、本発明によれば、振動子から移動子に伝わる駆動力の成分のうち、振動子を移動子に押し付ける方向の成分の大きさを一定値以上に確保しながら、移動子の移動方向の成分の大きさを変化させることができるため、振動子の駆動速度の範囲を低速側へと拡げることができる。これによりステージ等の位置決め用途に適用した場合には、高い精度での位置決めを行うことが可能となる。また、駆動電圧を上げなくとも超音波モータの駆動速度をより高速で駆動することも可能となる。また、大きな推力を得たい場合や駆動速度を速くしたい場合等の状況に応じて、駆動速度と推力とのバランスを制御することができる。これにより、超音波モータの有する特性を最大限に引き出すことができ、例えば、移動子の目的位置への到達時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態であるL1B4型モータ装置の概略構成を示す説明図。
【図2】駆動電圧の位相差と、脚部先端の楕円軌跡との関係を示す説明図。
【図3】図3は、図2に示される各楕円軌跡に対応するL1B4モータの駆動速度と駆動電圧の関係を示す説明図。
【図4】与圧機構の概略構造を示す説明図。
【図5】与圧が一定の場合のL1B4モータの駆動速度と推力との関係を示すグラフ。
【図6】与圧機構による与圧を一定とした場合または変化させた場合のL1B4モータの駆動速度と時間との関係を示すグラフ。
【図7】与圧機構による与圧を一定とした場合または変化させた場合のL1B4モータの移動子の移動距離と時間との関係を示すグラフ。
【図8】従来のL1B4型モータの一般的な構造を示す平面図(上図)および断面図(下図)。
【符号の説明】
10;L1B4型モータ装置
10A;L1B4型モータ
11;振動子
12;移動子
13;弾性体
14a〜14d;圧電素子
15;脚部
16a・16b;電源
17;位相制御装置
18;与圧機構
21;圧電体
22a・22b;電極
90;L1B4型モータ
90´;モータ装置
91;振動子
92;移動子
93;弾性体
94a〜94d;圧電素子
95;突起体
96;駆動電源
97;与圧機構
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波振動を利用した超音波モータの駆動方法と、超音波モータ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
超音波振動を利用した超音波モータは、電磁ノイズを発生させないことや、低速でも高いトルクを発生させることから、精密位置決め用ステージ等の駆動装置として注目されている。超音波モータには種々の振動モードを利用するものが知られているが、一例として、図8に異形縮退縦L1−横B4モードの平板モータ(以下「L1B4型モータ」という)90を有するモータ装置90´の概略構成を示す。なお、図8においてはL1B4型モータ90は断面図で示されている。
【0003】
モータ装置90´は、振動子91と移動子92とを有するL1B4型モータ90と、振動子91を駆動する駆動電源96a・96bと、振動子91と移動子92との間に所定の摩擦力が生ずるように振動子91を移動子92側へ押圧する与圧機構97とを有している。振動子91は、矩形の弾性体93と、弾性体93の表裏面にそれぞれ2個ずつ取り付けられた圧電素子94a〜94dと、弾性体93に生ずる振動を移動子92に伝える突起体95と、を有している。
【0004】
圧電素子94a〜94dは、一般的には圧電体の表裏面に電極(図示せず)が形成された単板型の圧電素子である。圧電素子94a・94dを1組とし、圧電素子94b・94cを1組として、駆動電源96a・96bから各組の圧電素子に位相が90度ずれた正弦波電圧等の交流電圧を印加すると、弾性体93には長手方向(X方向とする)の一次の伸縮共振と4次の曲げ共振が同時に発生し、突起体95の付け根部分に楕円運動が生じ、その楕円運動が突起体95の先端に伝えられて、突起体95の先端に楕円運動が生ずる。
【0005】
与圧機構97は、振動の節となる弾性体93の長手方向中央を保持し、振動子91を移動子92側に所定の力で押し付けている。これによって突起体95の先端の楕円運動の動きが移動子92に伝えられ、移動子92はX方向に延在するガイド(図示せず)に沿って直線的に移動する。なお、このL1B4型モータ90の詳細な駆動原理は、例えば、「新版超音波モータ((株)トリッケップス、上羽・富川著)」に解説されている。
【0006】
このようなL1B4型モータ90の駆動速度の調整方法、つまり移動子92の移動速度の調整方法としては、圧電素子94a〜94dに印加する電圧値(振幅の大きさ)を変える方法が知られている。また、従来、与圧機構97によって振動子91を移動子92に押し付ける与圧は、使用用途に応じて一定に保持されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、L1B4型モータ90では、突起体95の先端の振動振幅がある程度大きくならないと移動子の移動が始まらない、いわゆる不感帯が存在する。つまり、L1B4型モータ90は、印加する駆動電圧を徐々に上げていくと、駆動電圧がある値に達した時点で急に駆動を開始する。
【0008】
このときの駆動速度の値(駆動最低速度)は、与圧機構97による与圧の大きさを変えることによって、ある程度は変えることができる。ところが、先に述べたように、与圧機構97による与圧の大きさは一定に保持されているために、現実問題として、与圧の大きさを変えることによって、駆動最低速度を低速側へシフトさせることは行われていない。精密位置決め装置においては、最終的な微調整を低速度で行う方が位置決め精度を高めることができることから、駆動最低速度が定まっているL1B4型モータ90を精密位置決め装置に適用した場合には、位置決め精度を高めることが困難である。
【0009】
また、L1B4型モータ90の駆動速度は、与圧機構97によって振動子91を移動子92に押し付ける与圧の大きさに依存し、最高速度を与える与圧では推力は比較的小さく、さらに与圧を上げると推力は大きくなるが駆動速度は低下する。従来は与圧機構97による与圧の大きさは使用される用途に応じて一定に設定されていたために、L1B4型モータ90の能力が最大限に引き出されていなかった。これらの問題は他の構造の超音波モータにおいても同様に発生する。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、駆動速度の制御範囲を低速側へ拡大させる超音波モータの駆動方法および超音波モータ装置を提供することを目的とする。また、本発明は、推力と速度とをバランスよく得ることができる超音波モータの駆動方法および超音波モータ装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明によれば、所定周波数で位相の異なる2種類の駆動電圧が印加される複数の圧電素子を有し、前記圧電素子の振動によって所定の振動モードで振動する振動子と、
前記振動子の振動に応じて相対運動を行う移動子と、
を有する超音波モータの駆動方法であって、
前記駆動電圧の位相を変化させることによって前記移動子の移動速度を変化させることを特徴とする超音波モータの駆動方法、が提供される。
【0012】
また本発明によれば、上記超音波モータの駆動方法を実施する超音波モータ装置、すなわち、
所定周波数で位相の異なる2種類の駆動電圧を出力可能な電源装置と、
前記2種類の駆動電圧が印加される複数の圧電素子を有し、前記圧電素子の振動によって所定の振動モードで振動する振動子と、
前記振動子の振動に応じて相対運動を行う移動子と、
前記移動子の移動速度が変化するように前記電源装置から出力される前記2種類の駆動電圧の位相を変化させる位相制御装置と、
を具備することを特徴とする超音波モータ装置、が提供される。
【0013】
このような超音波モータの駆動方法および超音波モータ装置によれば、振動子から移動子に伝わる駆動力の成分のうち、振動子を移動子に押し付ける方向の成分の大きさを一定値以上に確保しながら、移動子の移動方向の成分の大きさを変化させることができるため、振動子の駆動速度の範囲を低速側へと拡げることができる。これによりステージ等の位置決め用途に適用した場合には、高い精度での位置決めを行うことが可能となる。また、駆動電圧を上げなくとも超音波モータの駆動速度をより高速で駆動することも可能となる。
【0014】
さらに本発明によれば、圧電素子の振動によって所定の振動モードで振動する振動子と、
前記振動子と所定の与圧で接し、前記振動子の振動に応じて相対運動を行う移動子と、
を有する超音波モータの駆動方法であって、
前記与圧を変化させることにより前記移動子の移動速度を変化させることを特徴とする超音波モータの駆動方法、が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、このような超音波モータの駆動方法を実施する超音波モータ装置、すなわち、
圧電素子の振動によって所定の振動モードで振動する振動子と、
前記振動子の振動に応じて相対運動を行う移動子と、
前記振動子を前記移動子に所定の力で押圧する与圧手段と、
前記移動子の移動速度に応じて前記与圧手段による与圧を調整する与圧制御機構と、
を具備することを特徴とする超音波モータ装置、が提供される。
【0016】
このような超音波モータの駆動方法および超音波モータ装置によれば、大きな推力を得たい場合や駆動速度を速くしたい場合に応じて与圧を変化させることにより、駆動速度と推力とのバランスを制御することができる。これにより超音波モータの特性を最大限に引き出すことができ、例えば、移動子の目的位置への到達時間を短縮することが可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1はL1B4型モータ装置10の概略構成を示す説明図であり、図1中にL1B4型モータ10Aが断面図で示されている。L1B4型モータ装置10は、振動子11と移動子12とを有するL1B4型モータ10Aと、電源16a・16bと、電源16aから出力される駆動電圧と電源16bから出力される駆動電圧の位相をずらす位相制御装置17と、振動子11を保持して移動子12に所定の力で押し付ける与圧機構18と、を有している。
【0018】
L1B4型モータ10Aの振動子11は、矩形の弾性体13と、弾性体13の表裏面にそれぞれ2個ずつ取り付けられた圧電素子14a〜14dと、弾性体13に生ずる振動変位を拡大して移動子12に伝える2本の脚部15と、を有している。与圧機構18は弾性体13の長手方向中央を保持して、所定の力で振動子11を移動に押しあてて、振動子11と移動子12を摩擦保持する。
【0019】
弾性体13としては、金属材料やセラミックス材料が好適に用いられる。圧電素子14a〜14dは樹脂接着剤を用いて弾性体13の表裏面に取り付けられている。圧電素子14a〜14dはそれぞれ、単板の圧電体21の表面(弾性体13との非接着面)に電極22aが形成され、圧電体21の裏面(弾性体13との接着面)に電極22bが形成された構成を有する。圧電体としては、機械的品質係数Qmの大きいチタン酸ジルコン酸鉛系の圧電セラミックスが好適に用いられる。
【0020】
弾性体13が金属の場合には、弾性体13は圧電素子14a〜14dが具備する電極22bと導通する。これにより弾性体13を圧電素子14a〜14dに駆動電圧を印加する際のターミナルとして利用することができる。弾性体13がセラミックス(絶縁体)からなる場合には、表裏面に金属膜を形成し、この金属膜と圧電素子14a〜14dが具備する電極22bとを導通させる。これにより圧電素子14a〜14dの電極22bが外部へと取り出され、電源との接続が容易となる。
【0021】
圧電素子14a〜14dを駆動するための配線は図1に示す通りである。2個の圧電素子14a・14dを1組とし、2個の圧電素子14b・14cを1組として、電源16a・16bから、所定の位相差を有する所定の周波数(振動子11の異形縮退縦L1−横B4モードの共振周波数近傍)の駆動電圧を各組の圧電素子に対して供給する。
【0022】
電源16a・16bは、例えば、所定波形の信号を発生させるパルスジェネレータと、発生された信号を所定の振幅まで増大させるアンプと、を有する。また、位相制御装置17は、電源16a・16bから同位相で発信された駆動電圧の信号を比較して、両信号間に所定の位相差を生じさせる。位相制御装置17としては、例えば、ディレイ(遅延装置)が挙げられる。
【0023】
ここで、L1B4モータ10Aの圧電素子14a〜14dへ印加する駆動電圧について詳細に説明する。圧電素子14a〜14dには、縦L1モードの共振を起こす電圧と横B4モードを起こす電圧を同時に掛ける必要がある。そこで、縦L1モードの共振を起こす電圧VL1は圧電素子14a〜14dに共通であり、下式(1)で示される。また、横B4モードの共振をL1モードの共振と位相を90度(π/2)ずらして起こす電圧VB4−adとVB4−bcは、圧電素子14a・14dについては下式(2)で表され、圧電素子14b・14cについては下式(3)で表される。なお、V1、V2はゼロ−ピーク電圧、2πfは駆動周波数、tは時間である。
【0024】
【数1】
【0025】
圧電素子14aに印加する電圧Vは(1)式と(2)式を加えることで求められ、圧電素子14b〜14dについても同様である。したがって、これら(1)式〜(3)式から、圧電素子14a・14dに印加する電圧Vadは下式(4)および下式(6)で表され、圧電素子14b・14cに印加する電圧Vbcは下式(5)および下式(6)で表される。
【0026】
【数2】
【0027】
(4)式〜(6)式において、例えば、V1=V2=V/21/2とすると、tanθ=1、つまりθ=π/4となるから、(4)式は下式(7)のように変形され、(5)式は下式(8)のように変形される。これら(7)式と(8)式から、V1=V2の場合には、圧電素子14a・14dに印加する駆動電圧Vadと圧電素子14b・14cに印加する駆動電圧Vbcの位相差2θをπ/2とすればよいことがわかる。
【0028】
【数3】
【0029】
例えば、電源16aからVad=Vsin(2πft−θ)(V;ゼロ−ピーク電圧、f;周波数、t;時間、2θ;位相差(0<2θ<π))の電圧を供給し、電源16bからVbc=Vsin(2πft+θ)の電圧を供給する。これにより弾性体13には長手方向(X方向)の一次の伸縮共振と4次の曲げ共振が同時に発生し、これらの振動が組み合わさることによって弾性体13における脚部15の取り付け部分に楕円軌跡を描く振動が発生する。
【0030】
こうして発生した楕円運動は脚部15の先端に伝えられるが、このとき、L1B4モータ10Aにおいては、振動子11を所定の駆動周波数で駆動した際に、弾性体13に異形縮退縦L1−横B4モードの共振振動が発生し、かつ、脚部15に曲げモードの共振振動が発生するように、弾性体13と脚部15の形状を予め調整しておく。これにより振動子11においては、弾性体13の異形縮退縦L1−横B4モードの共振振動に基づいて脚部15の先端に生じている楕円運動のX方向の変位が、脚部15の曲げモードの振動によって拡大されて、脚部15の先端がX方向に大きく振れるようになる。
【0031】
なお、脚部15は弾性体13の変位部に取り付けられるために、図1に示すように、脚部15は弾性体13と一体的に構成されていることが好ましい。これにより脚部15の脱離等を防止することができるため、信頼性が高められる。また、脚部15を溶接等によって弾性体13と一体化できる場合には、弾性体13と脚部15とが最初から一体的に構成されていた場合と同等の信頼性を得ることができる。
【0032】
図2(a)〜(c)に、電源16a・16bから出力される駆動電圧の位相差と脚部15の先端に生ずる楕円運動の軌跡との関係を示す説明図を示す。ここで、図2(a)は位相差2θがπ/2の場合であり、図2(b)は位相差2θが0<2θ<π/2の場合であり、図2(c)は位相差2θがπ/2<2θ<πの場合である。また、図3は、図2(a)〜(c)に示される各楕円運動に対応するL1B4モータ10Aの駆動速度(移動子12の移動速度)と駆動電圧の関係を示す説明図である。
【0033】
図3中の速度特性線aは、位相差2θがπ/2のときのL1B4モータ10Aの駆動速度と駆動電圧(ゼロ−ピーク電圧値の大きさ)との関係を示している。この速度特性線aに示されるように、駆動電圧を0Vから徐々に大きくしていくと、駆動電圧VAでL1B4モータ10Aの駆動が始まる。この駆動電圧VAにおけるL1B4モータ10Aの駆動速度をu1とする。この駆動速度u1を与える脚部15の先端の楕円軌跡(以下単に「楕円軌跡」という)は図2に楕円軌跡a´で示されている。
【0034】
駆動電圧がVA未満のためにL1B4モータ10Aが駆動しない不感帯の発生は、脚部15の上げ下げの変位量が振動子11と移動子12の接触面の面粗度以下となっていることに起因すると考えられている。このために、楕円軌跡a´のZ方向成分の大きさをz1とすると、L1B4モータ10Aを駆動させるためには、ある駆動電圧における楕円軌跡のZ方向成分の大きさがz1以上あることが必要となる。駆動電圧を駆動電圧VAから上げていくと、楕円軌跡は、楕円軌跡aで示されるように、楕円軌跡a´の略相似形を維持しながら大きくなる。
【0035】
図3中の速度特性線bは、位相差2θが0<2θ<π/2の場合のL1B4モータ10Aの駆動速度と駆動電圧との関係を示している。また、速度特性線bは図2(b)と対応しており、駆動電圧VBにおける楕円軌跡が図2(b)中の楕円軌跡b´であり、駆動電圧VAにおける楕円軌跡が楕円軌跡b″であり、駆動電圧がVBよりも大きい所定値の場合の楕円軌跡が楕円軌跡bである。
【0036】
位相差2θが0<2θ<π/2の場合には、(4)式と(5)式においてθが0<θ<π/4となるために、0<tanθ=V2/V1<1(但し、ゼロ−ピーク電圧V=(V1 2+V2 2)1/2)となる。この場合には、電源16aから圧電素子14a・14dにVad=Vsin(2πft−θ)の駆動電圧を供給し、電源16bから圧電素子14b・14cにVbc=Vsin(2πft+θ)の駆動電圧を供給した際に、L1モードの共振に割り当てられる電圧V1がB4モードの共振に割り当てられる電圧V2よりも大きくなる。
【0037】
これにより振動子11の異形縮退縦L1−横B4モードの共振において、振動子11の長手方向(X方向)の変位量が大きくなり、厚み方向(Z方向)の変位量が小さくなるため、楕円軌跡は、図2(b)に示される楕円軌跡b・b´・b″のように、楕円軌跡aと比較すると、X方向の径が延びてZ方向の径が短くなった形となる。
【0038】
位相差2θが0<2θ<π/2の場合には、駆動電圧の値がVAに達しても、そのときの楕円軌跡b″のZ方向成分の大きさがz1に達しないためにL1B4モータ10Aは駆動せず、より大きい駆動電圧VBになった際に楕円軌跡b´のZ方向成分の大きさがz1に達して駆動し始める。この駆動電圧VBにおける楕円軌跡b´の水平方向成分の大きさx2は、位相差2θがπ/2でZ方向成分の大きさがz1である楕円軌跡a´の水平方向成分の大きさx1よりも大きいために、位相差2θが0<2θ<π/2の場合の駆動電圧VBにおける駆動速度u2は、位相差2θがπ/2で駆動電圧の値がVBの場合の駆動速度u1´よりも速くなる。さらに駆動電圧の値を大きくすると、楕円軌跡bの水平方向成分に割り当てられる電圧の割合が、位相差2θ=π/2の場合よりも多いために、駆動速度の駆動電圧に対する勾配は、通常、大きくなる。
【0039】
図3中の速度特性線cは、位相差2θがπ/2<2θ<πの場合のL1B4モータ10Aの駆動速度と駆動電圧との関係を示している。また、速度特性線cは図2(c)と対応しており、駆動電圧VCにおける楕円軌跡が図2(c)中の楕円軌跡c´であり、駆動電圧がVCよりも大きい所定値の場合の楕円軌跡が楕円軌跡cである。
【0040】
位相差2θがπ/2<2θ<πの場合には、(4)式と(5)式においてθがπ/4<θ<π/2となるために、tanθ=V2/V1>1(但し、ゼロ−ピーク電圧V=(V1 2+V2 2)1/2)となる。この場合には、電源16aから圧電素子14a・14dにVad=Vsin(2πft−θ)の駆動電圧を供給し、電源16bから圧電素子14b・14cにVbc=Vsin(2πft+θ)の駆動電圧を供給した際に、L1モードの共振に割り当てられる電圧V1がB4モードの共振に割り当てられる電圧V2よりも小さくなる。
【0041】
これにより振動子11の異形縮退縦L1−横B4モードの共振において、振動子11の長手方向(X方向)の変位量が小さくなり、厚み方向(Z方向)の変位量が大きくなるため、楕円軌跡は、図2(c)中の楕円c・c´で示されるように、楕円aと比較すると、X方向の径が短くなって、Z方向の径が長くなった形となる。
【0042】
位相差2θがπ/2<2θ<πの場合には、駆動電圧の値がVAに達する前のVCにおいて、楕円軌跡c´のZ方向成分の大きさがz1に達するために、L1B4モータ10Aが駆動し始める。電圧値VCにおける楕円軌跡c´の水平方向成分の大きさx3は、位相差2θがπ/2で電圧値がVAの場合よりも小さいために、電圧値VCにおける駆動速度u3は、位相差2θがπ/2で駆動電圧がVBの場合よりも遅くなる。さらに駆動電圧の値を大きくすると、楕円軌跡cの水平方向成分に割り当てられる電圧の割合は、位相差2θ=π/2の場合よりも少ないために、駆動速度の駆動電圧に対する勾配は、通常、小さくなる。
【0043】
このように、位相差2θがπ/2<2θ<πの場合には、駆動開始電圧を下げて不感帯の範囲を狭くし、駆動速度を低速度化することができる。これにより、L1B4モータ10Aを位置決め機構に適用した場合に、精密な位置決めを行うことが可能となる。
【0044】
また、例えば、最初に位相差2θをπ/3(0<2θ<π/2の一例)として圧電素子14a〜14dに所定の駆動電圧を印加し、L1B4モータ10Aを駆動させる。これによりL1B4モータ10Aを高速駆動することができる。次に、駆動電圧を下げて駆動速度を下げて、L1B4モータ10Aが停止する前に位相差2θを徐々にπ/2に近付けるように位相制御装置17を操作する。これにより駆動電圧を一定に保持しながら駆動速度を下げることができる。位相差2θがπ/2になったら、徐々に駆動電圧を下げてさらに駆動速度を下げて、L1B4モータ10Aが停止する前に位相差2θを徐々に4π/5(π/2<2θ<πの範囲)に近付けるように位相制御装置17を操作する。これにより駆動電圧を一定に保持しながら駆動速度を下げることができる。位相差2θが4π/5になったら、徐々に駆動電圧を下げてL1B4モータ10Aを低速度で駆動する。これにより移動体12を最初に高速で移動させて、最後に精密に位置決めすることができる。
【0045】
次に、与圧機構18について詳細に説明する。図4は与圧機構18の概略構造を示す説明図である。与圧機構18は、L1B4モータ10Aの振動子11を保持する保持部材31と、保持部材31に取り付けられたバネ32と、回転によってZ方向に移動し、バネ32の縮み代を調節するボルト33と、ボルト33を保持するガイド部材34と、ボルト33を所定角度回転させてボルト33をZ方向で移動させるステッピングモータ35と、ステッピングモータ35の回転を制御する回転制御装置36と、を有している。なお、ガイド部材34は図示しないフレームや壁部材に固定されている。
【0046】
与圧機構18では、回転制御装置36がステッピングモータ35を所定角度回転させることによって、ボルト33を上下に移動させ、このときにバネ32の縮み代が変化して、バネ32の付勢力、つまりバネ32が保持部材31を介して振動子11を移動子12側へ押し付ける与圧(押圧力)の大きさを変化させる。例えば、移動子12の移動速度を測定するセンサ(図示せず)を設け、このセンサの計測結果に基づいて、振動子11に適切な与圧が加わるように、回転制御装置36がステッピングモータ35を制御するように構成することができる。
【0047】
図5は与圧機構18が振動子11に加える与圧が一定の場合におけるL1B4モータ10Aの駆動速度と推力との関係を示すグラフである。図5より、推力が小さいときには、与圧の大きさが小さい場合で駆動速度が速い。一方、推力が大きいときには、与圧の大きさが大きい場合の方が駆動速度が速くなっている。このような関係は、L1B4モータ10Aに限らず、超音波モータ(他のリニアモータや回転型モータ等)に一般に見られる傾向である。
【0048】
静止している移動子12を加速する場合は、推力が大きい方が加速は速い。したがって、図5の2本の線の上側になっている部分の与圧を使う方が加速が速くなる。換言すれば、低速度側で高い与圧を使い、高速度側で低い与圧を用いることで、加速を速くすることができる。図5に示される2本の折れ線をそれぞれ直線近似すると、これらの交点は推力0.5N、駆動速度180mm/秒の点である。そこで、初期与圧を7.88Nとし、駆動速度が180mm/秒に達した時点で与圧の大きさを4.38Nに切り替えるように与圧機構18を動作させた場合の駆動速度と時間との関係を図6に、移動子12の移動距離と時間との関係を図7に示す。なお、図6および図7には、与圧の大きさを7.88Nで固定した場合と、4.38Nで固定した場合の結果を並記している。
【0049】
図6に示されるように、駆動速度に応じて与圧を切り替えた場合(曲線a)に加速が一番速く、これにより図7に示されるように、移動子12を0.1mよりも遠くへ移動させる場合には、短時間で目的位置まで移動させることができることが確認された。このように、静止しているものを動かす場合や、動いているものの速度をさらに上げる場合といった状況に応じて与圧を制御することによって、必要な速度と推力とをバランスよく得ることが可能となる。
【0050】
なお、図6および図7に示した例では、移動子12を0.1m以下の範囲内で移動させる場合には与圧を変える必要はない。しかし、これは与圧の大きさを7.88Nと4.38Nとの間で切り替えた場合に限られることであり、与圧を移動子12の速度に対応して切り替えるという趣旨によれば、例えば、移動子12を0.1m以下の範囲で移動させる場合には、初期与圧をより7.88Nよりも大きい値に設定し、その後により小さい与圧へ変えることによって、目的場所に到達させる時間を短縮することができる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。本発明に係る位相差2θを制御する駆動方法と与圧を制御する駆動方法は、L1B4モータ10Aに限らず、他の振動モードを用いるリニア型超音波モータと円盤型超音波モータにも適用することができる。
【0052】
また、超音波モータは基本的に振動子の共振現象を利用するものであるが、一般的に振動子の共振周波数は明確な1つの値を示さず、共振を起こしていると考えられる一定の周波数範囲では、同等の性能で超音波モータを駆動することができる。本発明においては、超音波モータの駆動に用いられる共振周波数には一定の範囲があり、そのような範囲内の周波数で駆動されるときの振動子の振動もまた共振と擬制されることが理解されるべきである。
【0053】
また、例えば、圧電素子14a〜14dに位相差を有する駆動信号を印加する場合において、上記説明においては、2台の電源16a・16bを用いた場合について説明したが、例えば、電源として位相差を制御する機能を有するマルチチャンネルのパルスジェネレータを有する電源を用い、このパルスジェネレータで最初から位相差を設けた2種類の駆動信号を発生させてアンプで増幅し、圧電素子14a〜14dに印加してもよい。
【0054】
さらに、図3に示す線a〜cは相対的な上下位置を示しているものであって、絶対的な位置を示しているものではない。例えば、位相差2θがπ/2に近い一定値に定められている場合には、線bと線cは線aに近接する。また、上記説明においては、位相差2θの調整と与圧の調整を別々に行った場合について説明したが、位相差2θを変化させながら同時に与圧を変化させて、L1B4モータ10Aの駆動を制御することも可能である。
【0055】
与圧機構18はバネの付勢力を用いるものに限定されず、例えば、重錘の重力を利用し、その重錘の数を変えることによって与圧を調整するものや、重さの異なる重錘を用いて与圧を調整するもの、エアーシリンダや油圧シリンダ等を用いることも可能である。
【0056】
L1B4型モータ10Aは、振動子11が固定され、移動子12を移動させるが、振動子11を平面ステージや直線状のレールの表面に載置し、振動子11の自重を利用してこれらの面上を自走させることも可能である。この場合には、与圧機構18は振動子11と共に移動させる必要がある。また、平行に配置された2本のガイドレールの一方に与圧機構18を移動自在に嵌め込み、振動子11の脚部15を別のガイドレールに押し当てることにより、振動子11をガイドレールに沿って移動させることも可能である。
【0057】
【発明の効果】
上述の通り、本発明によれば、振動子から移動子に伝わる駆動力の成分のうち、振動子を移動子に押し付ける方向の成分の大きさを一定値以上に確保しながら、移動子の移動方向の成分の大きさを変化させることができるため、振動子の駆動速度の範囲を低速側へと拡げることができる。これによりステージ等の位置決め用途に適用した場合には、高い精度での位置決めを行うことが可能となる。また、駆動電圧を上げなくとも超音波モータの駆動速度をより高速で駆動することも可能となる。また、大きな推力を得たい場合や駆動速度を速くしたい場合等の状況に応じて、駆動速度と推力とのバランスを制御することができる。これにより、超音波モータの有する特性を最大限に引き出すことができ、例えば、移動子の目的位置への到達時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態であるL1B4型モータ装置の概略構成を示す説明図。
【図2】駆動電圧の位相差と、脚部先端の楕円軌跡との関係を示す説明図。
【図3】図3は、図2に示される各楕円軌跡に対応するL1B4モータの駆動速度と駆動電圧の関係を示す説明図。
【図4】与圧機構の概略構造を示す説明図。
【図5】与圧が一定の場合のL1B4モータの駆動速度と推力との関係を示すグラフ。
【図6】与圧機構による与圧を一定とした場合または変化させた場合のL1B4モータの駆動速度と時間との関係を示すグラフ。
【図7】与圧機構による与圧を一定とした場合または変化させた場合のL1B4モータの移動子の移動距離と時間との関係を示すグラフ。
【図8】従来のL1B4型モータの一般的な構造を示す平面図(上図)および断面図(下図)。
【符号の説明】
10;L1B4型モータ装置
10A;L1B4型モータ
11;振動子
12;移動子
13;弾性体
14a〜14d;圧電素子
15;脚部
16a・16b;電源
17;位相制御装置
18;与圧機構
21;圧電体
22a・22b;電極
90;L1B4型モータ
90´;モータ装置
91;振動子
92;移動子
93;弾性体
94a〜94d;圧電素子
95;突起体
96;駆動電源
97;与圧機構
Claims (4)
- 所定周波数で位相の異なる2種類の駆動電圧が印加される複数の圧電素子を有し、前記圧電素子の振動によって所定の振動モードで振動する振動子と、
前記振動子の振動に応じて相対運動を行う移動子と、
を有する超音波モータの駆動方法であって、
前記2種類の駆動電圧の位相を変化させることによって前記移動子の移動速度を変化させることを特徴とする超音波モータの駆動方法。 - 所定周波数で位相の異なる2種類の駆動電圧を出力可能な電源装置と、
前記2種類の駆動電圧が印加される複数の圧電素子を有し、前記圧電素子の振動によって所定の振動モードで振動する振動子と、
前記振動子の振動に応じて相対運動を行う移動子と、
前記移動子の移動速度が変化するように前記電源装置から出力される前記2種類の駆動電圧の位相を変化させる位相制御装置と、
を具備することを特徴とする超音波モータ装置。 - 圧電素子の振動によって所定の振動モードで振動する振動子と、
前記振動子と所定の与圧で接し、前記振動子の振動に応じて相対運動を行う移動子と、
を有する超音波モータの駆動方法であって、
前記与圧を変化させることにより前記移動子の移動速度を変化させることを特徴とする超音波モータの駆動方法。 - 圧電素子の振動によって所定の振動モードで振動する振動子と、
前記振動子の振動に応じて相対運動を行う移動子と、
前記振動子を前記移動子に所定の力で押圧する与圧手段と、
前記移動子の移動速度に応じて前記与圧手段による与圧を調整する与圧制御機構と、
を具備することを特徴とする超音波モータ装置。
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JP2006129553A (ja) * | 2004-10-26 | 2006-05-18 | Canon Inc | 振動型駆動装置、その制御装置、その制御方法、及びプログラム |
US7352109B2 (en) | 2004-11-24 | 2008-04-01 | Samsung Electro-Mechanics Co., Ltd. | Flat type piezoelectric ultrasonic motor |
JP2012135072A (ja) * | 2010-12-20 | 2012-07-12 | Canon Inc | 振動型駆動装置の振動体及び振動型駆動装置 |
-
2002
- 2002-08-22 JP JP2002242276A patent/JP2004088815A/ja active Pending
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JP4594034B2 (ja) * | 2004-10-26 | 2010-12-08 | キヤノン株式会社 | 振動型駆動装置、その制御装置及びその制御方法 |
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