JP2004088662A - 直交マルチキャリア信号伝送方式のシンボル同期タイミング検出方法および装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】シンボル間干渉の影響さらにはサブキャリアの周波数オフセットの影響がある場合でも、精度よくシンボル同期タイミングを検出する。
【解決手段】シンボル同期タイミング検出装置40のシンボル遅延部41では、送信側から受信した信号をベースバンドへダウンコンバートしてサンプリングすることにより得られた直列ベースバンド信号122のサンプル値を有効シンボル期間の間隔だけ遅延させる。振幅差算出部42では、シンボル遅延部41からの遅延サンプル値と直列ベースバンド信号122のサンプル値との振幅差を算出し、この振幅差を絶対値化処理した絶対値振幅差の変化に基づき、タイミング検出部60でシンボル同期タイミングを検出する。
【選択図】 図3
【解決手段】シンボル同期タイミング検出装置40のシンボル遅延部41では、送信側から受信した信号をベースバンドへダウンコンバートしてサンプリングすることにより得られた直列ベースバンド信号122のサンプル値を有効シンボル期間の間隔だけ遅延させる。振幅差算出部42では、シンボル遅延部41からの遅延サンプル値と直列ベースバンド信号122のサンプル値との振幅差を算出し、この振幅差を絶対値化処理した絶対値振幅差の変化に基づき、タイミング検出部60でシンボル同期タイミングを検出する。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、直交マルチキャリア信号伝送方式のシンボル同期タイミング検出方法および装置に関し、特に互いに直交するよう配置された複数のサブキャリアにデータを多重して所定のシンボル単位で伝送する直交マルチキャリア信号伝送方式において、受信側で受信した信号から各シンボル期間のタイミングを示すシンボル同期タイミングを検出するシンボル同期タイミング検出方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、伝送する情報量の増加に伴って、通信帯域を有効利用するための広帯域伝送方式の研究が急速に進みつつある。この広帯域伝送方式の1つとして、互いに直交するよう配置された複数のサブキャリアにデータを多重して、シンボルと呼ばれる予め決められた単位毎に伝送する直交マルチキャリア信号伝送方式が注目されている。例えば、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)、地上波デジタルテレビ放送、無線LANあるいはデジタル家電では、直交マルチキャリア信号伝送方式としてOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)伝送方式が採用されており、携帯電話システムでは、MC−CDMA(MalutiCarrier−Code Division Multiple Access)伝送方式の採用が検討されている。
【0003】
図11に示すように、この直交マルチキャリア信号伝送方式の各サブキャリア200は、sin(x)/xという関数で表されるデジタル変調信号と同じ電力スペクトルを有している。各サブキャリアのうちそのキャリア周波数が最も低いサブキャリアをfcとし、サブキャリア間隔をf0、さらにサブキャリア総数をN(Nは2以上の整数)とした場合、この電力スペクトルは、パルス幅=1/f0の矩形パルスと、周波数fc+kf0(kは0〜N−1の整数)の正弦波信号との積で表される。
各サブキャリア200の電力スペクトルは、各サブキャリアの周波数fc+kf0を中心として両側に広がった形をなしており、そのキャリア周波数から離れるにつれて1/(fc+kf0)の間隔で振動しながら小さくなっている。
【0004】
直交マルチキャリア信号伝送方式では、図12に示すように、隣接するサブキャリア200の電力スペクトルがゼロとなる位置すなわちf0間隔で各サブキャリアが重ねて配置されている。これにより、サブキャリア相互間の干渉が抑制され、全体として1つの電力スペクトル210が得られる。
したがって、規定の周波数帯域内に多くのサブキャリアを配置でき、並列して伝送できる情報量を増加させることができるとともに、周波数資源を有効利用できる。
【0005】
このような直交マルチキャリア信号伝送方式では、受信装置において受信信号を復号する際、受信信号内における各シンボルの時間位置すなわちシンボル同期タイミングを精度良く検出する必要がある。
従来、このようなシンボル同期制御では、受信信号に含まれるガードインターバルとそのコピー元のシンボルとの相関を求めることによりシンボル同期タイミングを検出するものが提案されている(例えば、特開平07−321762号公報など参照)。
【0006】
直交マルチキャリア信号伝送方式では、直前シンボルの遅延波の影響すなわちシンボル間干渉を除去するため、有効OFDMシンボルの後端部分と同じ信号波形を当該有効OFDMシンボル期間の先頭に付加して送信するものとなっている。したがって、同一シンボル内に同一信号成分を持つことから、これら2つの期間の相関をとれば当該期間において高い相関値が得られるため、この相関値の変化を監視することにより、シンボル同期タイミングを得ることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のシンボル同期制御では、ガードインターバルに対するシンボル間干渉の影響あるいはサブキャリアの周波数オフセットの影響で、精度よくシンボル同期を得ることができないという問題点があった。
元々、ガードインターバルは直前シンボルの遅延波が有効OFDMシンボル期間まで影響しないように、その遅延波が発生しうる期間に設けられたものであり、その信号成分には直前シンボルの遅延波が含まれる。したがって、このような遅延波が含まれるガードインターバル信号と、ガードインターバルのコピー元の有効シンボルとの信号成分に差が生じるため、他の期間と明確な差が得られるほど大きな相関値が得られず、シンボル同期の精度が劣化するものとなっていた。
【0008】
また、直交マルチキャリア信号伝送方式では、図13に示すように、サブキャリアの周波数オフセットが生じる。これは、送信側と受信側とで個別に用いる局部発振器の発振周波数のずれや、送信側または受信側の移動によるドップラー効果に起因して、送信側での変調に用いたサブキャリア200の周波数fc+kf0に周波数オフセットΔfが生じ、受信側で受信した信号のサブキャリア201の周波数が元のfc+kf0からΔf分だけずれてしまう現象である。このようなサブキャリアの周波数オフセット量を推定する際にもシンボル同期が必要とされる。
周波数オフセットが生じている状態で、従来のように、カードインターバルとコピー元の有効シンボルとの相関値を求めた場合、その周波数オフセットに起因する位相回転成分が受信信号に含まれることから、他の期間と明確な差が得られるほど大きな相関値が得られず、シンボル同期の精度が劣化するものとなっていた。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、シンボル間干渉の影響さらにはサブキャリアの周波数オフセットの影響がある場合でも、精度よくシンボル同期タイミングを検出できる直交マルチキャリア信号伝送方式のシンボル同期タイミング検出方法および装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明にかかるシンボル同期タイミング検出方法は、互いに直交するよう配置された複数のサブキャリアにデータを多重して所定のシンボル単位で伝送する直交マルチキャリア信号伝送方式で、送信側からの信号から各シンボルのタイミングを示すシンボル同期タイミングを検出するシンボル同期タイミング検出方法であって、受信側で、送信側から受信した信号をベースバンドへダウンコンバートしてサンプリングすることにより直列ベースバンド信号を生成し、直列ベースバンド信号の各サンプル値のうちから所定間隔で2つのシンボル同期用サンプル値を順次選択し、順次選択された2つのシンボル同期用サンプル値の振幅差を順次算出して絶対値化処理し、得られた絶対値振幅差の変化に基づきシンボル同期タイミングを検出するようにしたものである。
【0011】
また、本発明にかかる他のシンボル同期タイミング検出方法は、互いに直交するよう配置された複数のサブキャリアにデータを多重して所定のシンボル単位で伝送する直交マルチキャリア信号伝送方式で、送信側からの信号から各シンボルのタイミングを示すシンボル同期タイミングを検出するシンボル同期タイミング検出方法であって、受信側で、送信側から受信した信号をベースバンドへダウンコンバートしてサンプリングすることにより直列ベースバンド信号を生成し、直列ベースバンド信号の各サンプル値のうちから所定間隔で2つのシンボル同期用サンプル値を順次選択し、順次選択された2つのシンボル同期用サンプル値ごとにそれぞれ絶対値化処理した後に両者の振幅差を順次算出して絶対値化処理し、得られた絶対値振幅差の変化に基づきシンボル同期タイミングを検出するようにしたものである。
【0012】
絶対値振幅差を算出する際、絶対値化処理により得られた絶対値振幅差を順次移動平均し、この移動平均された絶対値振幅差の変化に基づきシンボル同期タイミングを検出するようにしてもよい。
2つのシンボル同期用サンプル値を選択する際、直列ベースバンド信号の各サンプル値のうちから、所定間隔として、所望データが変調されている有効シンボル期間の間隔で、2つのシンボル同期用サンプル値を選択するようにしてもよい。
あるいは、直列ベースバンド信号の各サンプル値のうちから、所定間隔として、送信側で各サブキャリアのうち等しい間隔で選択した複数のサブキャリアを用いて送信された同期用シンボルに現れる繰り返し波形の繰り返し周期間隔で、2つのシンボル同期用サンプル値を選択するようにしてもよい。
【0013】
また、本発明にかかるシンボル同期タイミング検出装置は、互いに直交するよう配置された複数のサブキャリアにデータを多重して所定のシンボル単位で伝送する直交マルチキャリア信号伝送方式で、送信側からの信号から各シンボルのタイミングを示すシンボル同期タイミングを推定するシンボル同期タイミング検出装置であって、送信側から受信した信号をベースバンドへダウンコンバートしてサンプリングすることにより得られた直列ベースバンド信号のサンプル値を、所定期間だけ遅延させるシンボル遅延部と、このシンボル遅延部からの遅延サンプル値と直列ベースバンド信号のサンプル値との振幅差を算出する振幅差算出部と、この振幅差算出部からの振幅差を絶対値化処理する絶対値化処理部と、この絶対値化処理部からの絶対値振幅差の変化に基づきシンボル同期タイミングを検出するタイミング検出部とを備えるものである。
【0014】
また、本発明にかかる他のシンボル同期タイミング検出装置は、互いに直交するよう配置された複数のサブキャリアにデータを多重して所定のシンボル単位で伝送する直交マルチキャリア信号伝送方式で、送信側からの信号から各シンボルのタイミングを示すシンボル同期タイミングを推定するシンボル同期タイミング検出装置であって、送信側から受信した信号をベースバンドへダウンコンバートしてサンプリングすることにより得られた直列ベースバンド信号のサンプル値を、所定期間だけ遅延させるシンボル遅延部と、このシンボル遅延部からの遅延サンプル値を絶対値化処理した値と、直列ベースバンド信号のサンプル値を絶対値化処理した値との振幅差を算出する振幅差算出部と、この振幅差算出部からの振幅差を絶対値化処理する絶対値化処理部と、この絶対値化処理部からの絶対値振幅差の変化に基づきシンボル同期タイミングを検出するタイミング検出部とを備えるものである。
【0015】
また、絶対値化処理部からの絶対値振幅差を移動平均する移動平均処理部をさらに備え、タイミング検出部で、移動平均処理部で移動平均された絶対値振幅差の変化に基づきシンボル同期タイミングを検出するようにしてもよい。
シンボル遅延部で、直列ベースバンド信号のサンプル値を、所定期間として、有効シンボル期間だけ遅延させるようにしてもよい。
あるいは、所定期間として、送信側で各サブキャリアのうち等しい間隔で選択した複数のサブキャリアを用いて送信された同期用シンボルに現れる繰り返し波形の繰り返し周期間隔の期間だけ遅延させるようにしてもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、図面を参照して、本発明にかかる第1の実施の形態について説明する。
【0017】
[送信装置]
まず、図1を参照して、直交マルチキャリア信号伝送方式で用いられる一般的な送信装置について説明する。図1は直交マルチキャリア信号伝送方式で用いられる一般的な送信装置の構成を示すブロック図である。
この送信装置1には、S/P(シリアル/パラレル)変換部10、サブキャリア変調部11、逆フーリエ変換処理部(以下、IFFT処理部という)12、P/S(パラレル/シリアル)変換部13、RF変調部14および局部発振器15が設けられている。
【0018】
S/P変換部10は、送信データシンボルを示すデジタルデータ列からなる直列入力データ110を入力とし、この信号をシリアル/パラレル変換して所定ビット幅の並列入力データ111を出力する。
サブキャリア変調部11は、並列入力データ111を入力とし、これら信号を例えばQPSK変調方式などの所定の変調方式により複素信号成分へ変換して、直交マルチキャリア信号伝送方式で用いる各サブキャリアへマッピングし、並列ベクトル信号112として出力する。これら並列ベクトル信号112の各サブキャリアは、前述の図11に示した電力スペクトルを有する。
【0019】
IFFT処理部12は、並列ベクトル信号112を入力とし、これら周波数領域における信号を逆高速フーリエ変換処理することにより、時間領域における並列ベースバンド信号113として出力する。したがって、この並列ベースバンド信号113は、前述の図11に示した電力スペクトルを有する並列ベクトル信号112が、図12に示したように、周波数領域において所定周波数間隔f0ごとに等間隔で配置された形となる。
P/S変換部13は、並列ベースバンド信号113と、その一部からなるガードインターバル信号114とを入力とし、これら信号をパラレル/シリアル変換してデジタルデータからなる直列ベースバンド信号115を出力する。
【0020】
ガードインターバルとは、時間領域において、所望のOFDMシンボルの後端部分をコピーしてそのOFDMシンボルの先頭に複写した領域のことを指す。直交マルチキャリア信号伝送方式では、マルチパスによる遅延が大きくなると、ガードインターバルを設けていない場合には、直前OFDMシンボルの遅延波が当該OFDMシンボルの先頭部分に不要シンボルとして混入するため、この状態でFFT処理をした場合、サブキャリア間の直交性が保たれなくなって伝送誤りの原因となる。
したがって、遅延波に対して十分な期間のガードインターバルを設けることにより、実際にFFT処理する範囲すなわち有効OFDMシンボル期間への遅延波の影響がなくなり、良好な復調信号が得られる。
【0021】
RF変調部14は、直列ベースバンド信号115を入力とし、この信号をD/A変換した後に局部発振器15からの局部発振周波数(fC)116に基づきRF変調して、前述の図12に示したような電力スペクトル210をなすアナログの送信OFDM信号117を出力する。
【0022】
[受信装置]
次に、図2を参照して、直交マルチキャリア信号伝送方式で用いられる一般的な受信装置について説明する。図2は直交マルチキャリア信号伝送方式で用いられる一般的な受信装置の構成を示すブロック図である。
この受信装置2には、RF復調部20、局部発振器21、S/P(シリアル/パラレル)変換部22、シンボル同期タイミング検出装置40、周波数オフセット推定装置30、高速フーリエ変換処理部(以下、FFT処理部という)24、サブキャリア復調部25およびP/S(パラレル/シリアル)変換部26が設けられている。
【0023】
RF復調部20は、アナログの受信OFDM信号120を入力とし、この信号を局部発振器21からの局部発振周波数(fC’)121に基づきRF復調した後にサンプリングしてA/D変換し、デジタルデータ列からなる直列ベースバンド信号122を出力する。
シンボル同期タイミング装置40は、直列ベースバンド信号122を入力とし、この信号からガードインターバル部分を除く所望のOFDMシンボル期間に対応するタイミング検出し、そのタイミングを示すシンボル同期信号140を出力する。本実施の形態にかかるシンボル同期タイミング検出装置は、このシンボル同期タイミング装置40として適用される。
周波数オフセット推定装置30は、直列ベースバンド信号122を入力とし、この信号からシンボル同期信号140に基づき周波数オフセットを推定し、周波数オフセット情報(Δf)130として出力する。
【0024】
S/P変換部22は、直列ベースバンド信号122を入力とし、この信号からシンボル同期信号123に基づきガードインターバルを除いた所望のOFDMシンボルをシリアル/パラレル変換して、時間領域における並列ベースバンド信号124として出力する。この並列ベースバンド信号124も前述の図16のような電力スペクトルとなる。
FFT処理部24は、並列ベースバンド信号124を入力として、これら時間領域における信号を高速フーリエ変換処理し、各サブキャリアに対応した周波数領域において、前述した図11のような電力スペクトルをそれぞれ有する並列ベクトル信号125を出力する。このとき、FFT処理部24では、周波数オフセット情報130に基づきサブキャリア周波数を補正する。
【0025】
サブキャリア復調部25は、並列ベクトル信号125を入力とし、これら信号をそれぞれのサブキャリア周波数で復調し、得られた複素信号成分を、例えばQPSK変調方式などの所定の変調方式に基づき復調し、並列出力データ126として出力する。
P/S変換部26は、並列出力データ126を入力とし、これら信号をパラレル/シリアル変換してデジタルデータ列からなる直列出力データ127を出力する。
【0026】
次に、図面を参照して、本発明にかかる第1の実施の形態として、受信装置2で用いられるシンボル同期タイミング検出装置40について説明する。
【0027】
[第1のシンボル同期の原理]
まず、受信装置2のシンボル同期タイミング検出装置40で用いられる第1のシンボル同期の原理について説明する。
シンボル同期の目的は、受信信号からガードインターバルや有効OFDMシンボル期間のタイミングを検出することにある。特に、所望データの復調や周波数オフセットの推定を行う場合、シンボル開始位置の同期が取れていないと、演算処理されるシンボルの中に直前シンボルのシンボル成分が含まれるため、これが干渉要因となって精度を劣化させる原因となる。したがって、高精度でシンボル同期を行う必要がある。
【0028】
直交マルチキャリア信号伝送方式では、1つの受信OFDMシンボル内に同様の信号成分が、ガードインターバルとその複写元であるシンボル後端部とに2回現れる。ここで、直前シンボルの遅延広がりがガードインターバル期間に収まるようにガードインターバル期間の長さが設定されていることから、ガードインターバル最後端部では遅延の影響がほとんどなくなって上記2つの信号成分がほぼ等しくなり、シンボルの最先頭部で上記2つの信号成分は全く異なるものとなる。
本実施の形態では、上記の2点に着目し、これら2つの信号成分の振幅差の変化を監視することにより、シンボル開始位置を検出している。
【0029】
一般に、送信装置1からOFDMシンボルs(k)が送信された際、受信装置2で受信される希望波(OFDMシンボル)sd(k)、時間τだけ遅れて受信される遅延波su(k)、およびサンプル時間kのときの受信信号r(k)は、数1のようになる。ここで、cd(k),cu(k)はそれぞれ希望波sd(k)、遅延波su(k)に対する伝送路特性であり、遅延広がりτはガードインターバル期間より短いものとする。また、n(k)はガウス雑音である。
【0030】
【数1】
【0031】
この受信信号r(k)と、これをシンボル期間Tsだけ遅延させた信号r(k−Ts)との差分、すなわち振幅差rdif(k)は、数2となる。但し、ndif(k)は、ガウス雑音の振幅差を示す。
【0032】
【数2】
【0033】
ここで、ガードインターバルの信号成分とOFDM信号の後半部分(ガードインターバルのコピー元)との信号成分とが等しいことから、数3が成立する。この場合のTgはガードインターバル期間長であり、l(Lの小文字)は整数である。
【0034】
【数3】
【0035】
したがって、数2の振幅差rdif(k)は、数4のように表すことができる。
【0036】
【数4】
【0037】
ここで、簡略化のためl=0とし、最大ドップラ周波数はシンボル周期の周波数に比べて十分小さいとすると、{cd(k−Ts)−cd(k)}および{cu(k−Ts)−cu(k)}の平均値はゼロに近似することができ、ガウス雑音n(k)の平均値さらにはガウス雑音の振幅差ndif(k)の平均値もゼロにすることができる。
したがって、減算結果rdif(k)は、上記のように遅延広がりτ以上からガードインターバル期間Tg以内の範囲であれば、1つ前のシンボルの遅延波が及ばない範囲であることからゼロに近似できる。
【0038】
このようにして算出したrdif(k)について絶対値化処理を行うことにより複素成分を除去した後に二乗すると、1つ前のシンボルの遅延波の最大遅延広がりがτであることから、これらL(Lは1〜Tg−τの整数)サンプルを単位とした移動平均値ravg(k)は、数5のようになる。
【0039】
【数5】
【0040】
この移動平均値ravg(k)は、τ以上から(Tg−L+1)以内の範囲で小さい値となり、(Tg−L+2)以上の範囲では平均化により小さい値が存在しなくなるため大きな値へ変化する。
したがって、数6に示すように、移動平均値ravg(k)を1つ前のravg(k−1)で除算して除算値rdiv(k)を得ることにより、上記変化点がrdiv(k)のピークとして現れる。
【0041】
【数6】
【0042】
通常、直前シンボルの遅延広がりがガードインターバル期間に収まるようにガードインターバル期間の長さが設定されているため、ガードインターバル最後端部では遅延広がりの影響がほとんどなくなって、有効OFDMシンボル期間Tsだけ遅延させた信号成分とほぼ等しくなる。そして、シンボルの最先頭部では有効OFDMシンボル期間Tsだけ遅延させた信号成分と全く異なるものとなることから、移動平均値がシンボルの切り替わり時点、すなわちシンボル同期タイミングで大きく変化することになり、その変化を上記除算値などを用いて検出することにより、最適なシンボル同期タイミングの検出、すなわちシンボル同期が得られる。
【0043】
[第1のシンボル同期タイミング検出装置]
次に、図3および図4を参照して、受信装置2に適用されるシンボル同期タイミング検出装置40の構成例および動作について説明する。図3は第1のシンボル同期タイミング検出装置40の構成例を示すブロック図である。図4は第1のシンボル同期の動作を示すタイミングチャートである。
このシンボル同期タイミング検出装置40には、シンボル遅延部41、振幅差算出部42、絶対値化処理部43、二乗化乗算部44、移動平均処理部45、タイミング検出部60が設けられており、これら各部の動作により、受信信号からガードインターバルや有効OFDMシンボル期間の検出、すなわちシンボル同期が得られる。
【0044】
シンボル遅延部41は、RF復調部20からの直列ベースバンド信号122を入力とし、この信号の各サンプル値を有効OFDMシンボル期間Tsだけ遅延させ、シンボル遅延信号141として出力する。これにより、シンボル遅延信号141側のガードインターバルGI(A)と、直列ベースバンド信号122側のコピー元gi(A)とのタイミングが同期する。
振幅差算出部42は、前述した数4に基づき、直列ベースバンド信号122のサンプル値とシンボル遅延信号141のサンプル値との振幅差rdif(k)を算出出力する。
絶対値化処理部43は、上記振幅差を入力とし、その振幅差の複素成分を除去する絶対値化処理を行い、その結果を絶対値振幅差として出力する。
【0045】
二乗化乗算部44は、上記絶対値振幅差を入力とし、その絶対値振幅差を二乗化し、その結果を二乗化振幅差として出力する。なお、この二乗化乗算部44は、必ずしも必須要件ではないが、これを設けることによりシンボル同期の精度を高めることができる。
移動平均処理部45は、前述した数5に基づき、上記絶対値振幅差または二乗化振幅差を入力とし、これら値についてLサンプルを単位として移動平均し、得られた移動平均値ravg(k)を移動平均値142として出力する。
【0046】
したがって、図4に示すように、シンボル遅延信号141のGI(A)の後端期間には、直前シンボルからの遅延波の影響がほとんどないことから、このGI(A)と直列ベースバンド信号122のgi(A)との絶対値振幅差を移動平均して得られた移動平均値142は減少し、次のシンボルのGI(B)の開始位置で急激に増加する。
【0047】
タイミング検出部60には、データ遅延部61、除算部62およびピーク検出部63が設けられており、これらが動作して移動平均処理部45からの移動平均値142の変化を検出することにより、シンボル同期タイミング、すなわちシンボル同期を得ている。
データ遅延部61は、上記移動平均値ravg(k)を入力とし、その値を1データ(1値)分遅延させ、移動平均値ravg(k−1)を出力する。
除算部62は、前述した数6に基づき、移動平均処理部45からの移動平均値ravg(k)と、データ遅延部61からの遅延移動平均値ravg(k−1)との比を求め、除算値rdiv(k)として出力する。
【0048】
ピーク検出部63は、上記除算値rdiv(k)を入力とし、この値を1OFDMシンボル分にわたって検査することによりそのピークを検出し、そのタイミングをシンボル同期タイミング、ここではガードインターバルの開始位置を示すシンボル同期信号140として出力する。ガードインターバルの時間長Tgは既知であることから、有効OFDMシンボル期間Tsの開始位置も容易に得られる。また、このようなタイミング調整は、ピーク検出部63で行ってもよく、S/P変換部22で行ってもよい。
なお、タイミング検出部60の構成は、上記構成例に限定されるものではなく、移動平均値142の変化からシンボル同期タイミングを検出するものであれば、他の構成でもよい。
【0049】
このように、直列ベースバンド信号122と、この直列ベースバンド信号122を所定期間、ここでは有効OFDMシンボル期間だけ遅延させたシンボル遅延信号141との振幅差を求め、これを絶対値化処理して移動平均値を算出し、得られた移動平均値の変化に応じてシンボル同期タイミングを検出するようにしたので、ガードインターバルの後端部を利用してシンボル同期タイミングを検出することができ、マルチパスに起因するシンボル間干渉の影響を抑止して、高い精度でシンボル同期を行うことができる。
さらに、受信信号の振幅差を利用しているため、従来のように受信信号の相関操作を行うものと比較して、回路構成を大幅に削減できるとともに処理時間を短縮できる。
【0050】
また、同一シンボル内のガードインターバルを利用していることから、1つのシンボルでシンボル同期タイミングを検出できるとともに、シンボル同期用の特別なシンボルを必要とせず、例えば周波数オフセットの推定で用いる同期用シンボルを用いてもよく、データ通信用シンボルも利用できる。
したがって、データ通信用シンボルを用いれば、本来のデータ通信の通信効率を下げることなく、例えば毎シンボルごとなどの任意のタイミングで、シンボル同期を行うことができ、高い通信品質が得られる。
【0051】
次に、図面を参照して、本発明にかかる第2の実施の形態として、受信装置2のシンボル同期タイミング検出装置40に代えて用いられる他のシンボル同期タイミング検出装置40Aについて説明する。
【0052】
[第2のシンボル同期の原理]
受信装置2のシンボル同期タイミング検出装置40Aで用いられる第2のシンボル同期の原理について説明する。
前述した第1のシンボル同期では、直列ベースバンド信号122のガードインターバルとそのコピー元との振幅差に基づきシンボル同期タイミングを検出する場合について説明したが、本実施の形態にかかるシンボル同期では、同期用シンボル内に現れる繰り返し波形に着目し、隣接する繰り返し波形間の振幅差に基づきシンボル同期タイミングを検出する場合を例として説明する。
【0053】
直交マルチキャリア伝送方式では、前述の図12に示したように、隣接するサブキャリア200の電力スペクトルがゼロとなる位置すなわちf0間隔で各サブキャリアが重ねて配置されている。
本実施の形態にかかるシンボル同期タイミング検出では、シンボル同期タイミングの検出に用いる同期用シンボルを送信する際、送信装置1において、P/S変換部13で用いる各サブキャリアのうち、等しい間隔で櫛形に選択された複数のサブキャリアを同期用サブキャリアとして用いる。
【0054】
このような同期用サブキャリアを用いた場合、有効OFDMシンボル内に複数の繰り返し波形が形成された同期用シンボルが得られる。
例えば図5に示すように、隣接するサブキャリアとの間隔をf0とすると、サブキャリア200をd(dは2以上の整数)個間隔で選択した場合、その周波数間隔がdf0の櫛形のサブキャリア配置となる。このとき、ガードインターバル信号114(図1参照)を除くすべての並列ベースバンド信号113に対応するサブキャリアの総数をN(Nは2×d以上の整数)とすると、N/dを越えない整数個のサブキャリアが同期用サブキャリアとして選択されることになる。
【0055】
この同期用サブキャリアの選択方法については、並列ベースバンド信号113として所望のサブキャリアのみ有効となるビットデータパターンをP/S変換部13へ入力することにより同期用サブキャリアを選択してもよい。
なお、本実施の形態の説明では、理解を容易とするため、同期用サブキャリアのサブキャリア間隔dとしてサブキャリア総数Nの約数のいずれかを選択した場合を例として説明する。なお、この場合、同期用サブキャリアとしてはN/d(整数)個のサブキャリアが選択されることになる。
【0056】
このような櫛形のサブキャリア配置を用いた場合、受信装置2の直列ベースバンド信号122では、図6に示すように、ガードインターバル期間を除く有効OFDMシンボル期間Ts内に、d個の繰り返し波形220が現れる。
このとき、受信装置2のRF復調部20において、有効OFDMシンボル期間Tsをサブキャリア総数Nでサンプリングした場合、1つの繰り返し波形220から得られるサンプル値の数、すなわちサンプリング間隔で正規化された繰り返し波形220の幅はN/dとなる。
【0057】
したがって、これら繰り返し波形に出現する同一信号成分を用いて、第1の実施の形態と同様にシンボル同期タイミングを検出すれば、ガードインターバルを利用しないでシンボル同期タイミングを検出することができ、マルチパスに起因するシンボル間干渉の影響がさらに抑止される。
【0058】
また、周波数オフセットΔfnを厳密に考慮して、直列ベースバンド信号122とこれを繰り返し波形長N/d分だけ遅延させた遅延信号との振幅差rdif(k)をそのまま算出した場合、数7のようになり、遅延信号の干渉がない期間でも、振幅差がゼロに近似しなくなる。
【0059】
【数7】
【0060】
これを回避するためには、受信信号に含まれる周波数オフセットの影響を打ち消す必要がある。ここで、直列ベースバンド信号122の絶対値化処理を行うと、数8のようになり、複素成分すなわち周波数オフセット成分を打ち消すことができる。なお、このような絶対値化処理を行うと信号に含まれる位相情報も消失してしまうが、シンボル同期には差し支えない。
【0061】
【数8】
【0062】
したがって、このようにして絶対値化処理を行った直列ベースバンド信号122と、絶対値化処理を行った遅延信号との振幅差を求めることにより、周波数オフセットの影響がない振幅差が得られる。
これ以降、前述した第1のシンボル同期と同様の処理を行うことにより、周波数オフセットが存在する場合でも、精度よくシンボル同期タイミングを検出できる。
【0063】
[第2のシンボル同期タイミング検出装置]
次に、図7および図8を参照して、受信装置2に適用されるシンボル同期タイミング検出装置40Aの構成例および動作について説明する。図7は第2のシンボル同期タイミング検出装置40Aの構成例を示すブロック図である。図8は第2のシンボル同期の動作を示すタイミングチャートである。
このシンボル同期タイミング検出装置40Aは、図3のシンボル同期タイミング検出装置40と比較して、シンボル遅延部41に代えてサンプル遅延部51が設けられているとともに、絶対値化処理部52,53が追加されており、このほかについては、シンボル同期タイミング検出装置40とほぼ同様の構成を有している。
【0064】
サンプル遅延部51は、直列ベースバンド信号122を繰り返し波形長N/dだけ遅延させ、サンプル遅延信号151として出力する。
絶対値化処理部52は、直列ベースバンド信号122を絶対値化処理した後、振幅差算出部54へ出力する。
絶対値化処理部53は、サンプル遅延部51からのサンプル遅延信号151を絶対値化処理した後、振幅差算出部54へ出力する。
振幅差算出部54では、絶対値化処理部52で絶対値化処理された直列ベースバンド信号122と、絶対値化処理部53で絶対値化処理されたサンプル遅延信号151との振幅差を算出する。
【0065】
この後、図3の絶対値化処理部43〜タイミング検出部60と同様に処理が、絶対値化処理部55〜タイミング検出部60で行われる。
したがって、移動平均処理部57で順次算出される移動平均値152は、図8に示すように、有効OFDMシンボル期間内で小さい値を示し、直列ベースバンド信号122が次の受信シンボルのガードインターバルGI(B)へ移行した時点で急激に大きくなり、そのピークに応じてシンボル同期タイミング、ここではガードインターバルの開始位置を示すシンボル同期信号140が出力される。ガードインターバル長は既知であることから、有効OFDMシンボル期間の開始位置も容易に得られる。また、このようなタイミング調整は、ピーク検出部63で行ってもよく、S/P変換部22で行ってもよい。なお、前述と同様に、二乗化乗算部56は省略してもよい。
【0066】
このように、直列ベースバンド信号122と、直列ベースバンド信号122を所定期間、ここでは繰り返し波形長だけ遅延させたサンプル遅延信号151との振幅差を求め、これを絶対値化処理して移動平均値を算出し、得られた移動平均値の変化に応じてシンボル同期タイミングを検出するようにしたので、ガードインターバルを利用しないでシンボル同期タイミングを検出することができ、マルチパスに起因するシンボル間干渉の影響を抑止して、高い精度でシンボル同期を行うことができる。
さらに、受信信号の振幅差を利用しているため、従来のように受信信号の相関操作を行うものと比較して、回路構成を削減できるとともに処理時間を短縮できる。
【0067】
また、絶対値化処理部52,53を設け、直列ベースバンド信号122の各サンプル値およびサンプル遅延部51からの遅延サンプル信号151の各サンプル値をそれぞれ絶対値化処理した後、振幅差算出部54へ入力するようにしたので、周波数オフセットの影響がない振幅差が得られるため、周波数オフセットが存在する場合でも、マルチパスに起因するシンボル間干渉の影響を抑止して、高精度でシンボル同期を行うことができる。
【0068】
なお、本実施の形態では、同期用サブキャリアで用いる各サブキャリアの間隔dとして、サブキャリア総数Nの約数を用いた場合を例として説明したが、この間隔dとしては、サブキャリア総数Nの約数を用いるほうが望ましい場合もあるが、必ずしも約数を用いる必要はない。
例えば、サブキャリア総数N=512のときに、サブキャリアをNの約数の1つである間隔d=8で選択した場合、同期用サブキャリアとしてN/d=64(512/8)個のサブキャリアが選択され、同期用シンボルには、d=8個の繰り返し波形が現れる。
【0069】
これに対して、Nの約数ではない間隔d=9でサブキャリアを選択した場合、同期用サブキャリアとしてN/dを越えない整数個ここでは56個のサブキャリアが選択され、同期用シンボルには、d=9を越えない最大の整数個ここでは8個の繰り返し波形が完全な形で現れ、最後の繰り返し波形は、他の繰り返し波形より短く途中で切れた不完全な波形となる。但し、このような不完全な波形を含む場合でも、他の完全な形の繰り返し波形でシンボル同期タイミングを検出できることから、前述したシンボル同期検出処理を同様にして行うことができる。
【0070】
一般的に表現すれば、間隔dとしてサブキャリア総数Nの約数を用いなかった場合、サブキャリア数はN/dを越えない最大の整数すなわち[N/d]([]はガウス記号)と表され、同期用シンボルに現れる繰り返し波形のうち完全な形の繰り返し波形の数はd−1個となり、繰り返し波形幅すなわちサンプル遅延部51での遅延幅は[N/d]となる。
したがって、これらパラメータを、前述した間隔dとしてサブキャリア総数Nの約数を用いた場合のパラメータと置換することにより、前述と同様のシンボル同期タイミング判定処理を実施することができ、同様の作用効果が得られる。
【0071】
なお、間隔dとしてサブキャリア総数Nの約数を用いなかった場合、有効OFDMシンボルの最後端に上記のような不完全な波形が現れる。したがって、移動平均処理部57で求められる移動平均値152は、その不完全な波形部分直後の値が含まれた移動平均の算出開始タイミングで急激に変化し、ピークとして検出される。
このような場合には、移動平均処理単位Lが既知であることから、その処理単位Lに相当する時間長だけ上記ピークをシフトさせるタイミング調整を行えばよい。なお、このタイミング調整については、ピーク検出部63では行ってもよく、S/P変換部22で行うようにしてもよい。
【0072】
以上で説明した前述の第1の実施の形態(図3参照)では、直列ベースバンド信号122のサンプル値およびシンボル遅延部41からの遅延サンプル値141については、そのまま振幅差算出部42に入力する場合を例として説明したが、第2の実施の形態(図7参照)で説明したように、絶対値化処理部を設けて、直列ベースバンド信号122のサンプル値およびシンボル遅延部41からの遅延サンプル値141を絶対値化処理した後に振幅差算出部42に入力するようにしてもよい。これにより、第2の実施の形態と同様に、周波数オフセットの影響がない振幅差が得られるため、周波数オフセットが存在する場合でも、マルチパスに起因するシンボル間干渉の影響を抑止して、高精度でシンボル同期を行うことができる。
【0073】
また、以上の各実施の形態において、同期用シンボルを用いて周波数オフセットを推定する際、例えば受信装置2のRF復調部20の出力段に設けたバッファで直列ベースバンド信号122の各サンプル値を保持している場合には、先にそのバッファからシンボル同期タイミングを検出した後、そのシンボル同期タイミングに基づき所望のサンプル値をバッファから再度読み出して周波数同期を行うことができる。
したがって、周波数オフセットの推定処理にシンボル同期タイミングの検出が必要な場合には、推定処理と同一の同期用シンボルで所望のシンボル同期タイミングを検出でき、同期用シンボルの直前シンボルなど、その同期用シンボルとは異なるシンボルからシンボル同期タイミングを検出する場合と比較して、周波数オフセットの推定に必要なシンボル同期タイミングを高い精度で検出できる。
【0074】
また、以上の各実施の形態では、図2に示したように、それぞれのシンボル同期タイミング検出装置40,40Aを、受信シンボル復調用のシンボル同期タイミングを検出する装置として用いた場合について説明したが、これらシンボル同期タイミング検出装置40,40Aの用途としては、これに限定されるものではない。例えば、これらシンボル同期タイミング検出装置40,40Aを、周波数オフセット推定装置30で用いる推定処理タイミングを検出するための装置として用いてもよい。
【0075】
[シミュレーション結果]
次に、図9および図10を参照して、本方式による、送信装置1と、シンボル同期タイミング検出装置40Aを用いた受信装置2との間でデータ通信を行った場合のシミュレーション結果について説明する。図9は、シミュレーションから得られたBER(ビットエラーレート)特性を示すグラフである。図10は、シミュレーションで用いた各パラメータを示している。
【0076】
図9のBER特性は、送受信装置間でどの程度ビットエラーが発生するかを調べた結果を示すものであり、ここでは、送受信装置間でシンボル同期が完全にとれている場合(完全同期)と本方式によりシンボル同期をとった場合のBER特性がそれぞれ示されている。
なお、横軸は、1ビット当たりの信号エネルギーEbと、ノイズの片側パワースペクトル密度Noの比を示している。これは、受信信号の信号対雑音比(SN比)をシンボル当たりの情報ビット数で割った値に等しく、この値が大いほどノイズの少ない良好なデータ通信状態であることを示している。縦軸は、送受信されたデータのビット誤り率である。
【0077】
特性300は理想的な完全同期状態でのBER特性、特性305は本発明を適用てシンボル同期をとった場合のBER特性であり、いずれの状態でもほぼ同一のBER特性が得られた。
この図9によれば、本方式のBER特性305は、完全同期状態でのBER特性300とほぼ同様の特性を示しており、同期タイミング検出装置40Aでシンボル同期が完全にとれていることがわかる。
【0078】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、送信側から受信した信号をベースバンドへダウンコンバートしてサンプリングすることにより直列ベースバンド信号を生成し、直列ベースバンド信号の各サンプル値のうちから所定間隔で2つのシンボル同期用サンプル値を順次選択し、順次選択された2つのシンボル同期用サンプル値の振幅差を順次算出して絶対値化処理し、得られた絶対値振幅差の変化に基づきシンボル同期タイミングを検出するようにしたので、従来のように、受信信号に含まれるガードインターバルとそのコピー元のシンボルとの相関を求めることによりシンボル同期タイミングを検出するものと比較して、ガードインターバルの後端部や同期用シンボルに現れる繰り返し波形を利用してシンボル同期タイミングを検出することができ、マルチパスに起因するシンボル間干渉の影響を抑止して、高い精度でシンボル同期を行うことができる。
【0079】
また、振幅差を算出する際、選択された2つのシンボル同期用サンプル値ごとにそれぞれ絶対値化処理した後に両者の振幅差を算出するようにすれば、周波数オフセットの影響がない振幅差が得られるため、周波数オフセットが存在する場合でも、マルチパスに起因するシンボル間干渉の影響を抑止して、高精度でシンボル同期を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】直交マルチキャリア信号伝送方式で用いられる一般的な送信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】直交マルチキャリア信号伝送方式で用いられる一般的な受信装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態にかかる第1のシンボル同期タイミング検出装置の構成例を示すブロック図である。
【図4】第1のシンボル同期の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】周波数オフセット推定装置で用いられるサブキャリアの配置を示す説明図である。
【図6】図5のサブキャリア配置で得られる同期用シンボルの波形例である。
【図7】第2のシンボル同期タイミング検出装置の構成例を示すブロック図である。
【図8】第2のシンボル同期の動作を示すタイミングチャートである。
【図9】シミュレーションのBER特性を示すグラフである。
【図10】シミュレーションで用いた各パラメータである。
【図11】直交マルチキャリア信号伝送方式のサブキャリアの電力スペクトルである。
【図12】直交マルチキャリア信号伝送方式のサブキャリア配置を示す説明図である。
【図13】サブキャリアの周波数オフセットを示す説明図である。
【符号の説明】
1…送信装置、10…S/P変換部、11…サブキャリア変調部、12…IFFT処理部、13…P/S変換部、14…RF変調部、15…局部発信器、2…受信装置、20…RF復調部、21…局部発振器、22…S/P変換部、24…FFT処理部、25…サブキャリア復調部、26…P/S変換部、30…周波数オフセット推定装置、40,40A…シンボル同期タイミング検出装置、41…シンボル遅延部、42,54…振幅差算出部、43,52,53,55…絶対値化処理部、44,56…二乗化乗算部、45,57…移動平均処理部、51…サンプル遅延部、60…タイミング検出部、61…データ遅延部、62…除算部、63…ピーク検出部、110…直列入力データ、111…並列入力データ、112…並列ベクトル信号、113…並列ベースバンド信号、114…ガードインターバル信号、115…直列ベースバンド信号、116…局部発振周波数、117…送信OFDM信号、120…受信OFDM信号、121…局部発振周波数、122…直列ベースバンド信号、124…並列ベースバンド信号、125…並列ベクトル信号、126…並列出力データ、127…直列出力データ、130…周波数オフセット情報、140…シンボル同期信号、141…シンボル遅延信号、142,152…移動平均値、151…サンプル遅延信号、200…サブキャリア、210…電力スペクトル、220…繰り返し波形。
【発明の属する技術分野】
本発明は、直交マルチキャリア信号伝送方式のシンボル同期タイミング検出方法および装置に関し、特に互いに直交するよう配置された複数のサブキャリアにデータを多重して所定のシンボル単位で伝送する直交マルチキャリア信号伝送方式において、受信側で受信した信号から各シンボル期間のタイミングを示すシンボル同期タイミングを検出するシンボル同期タイミング検出方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、伝送する情報量の増加に伴って、通信帯域を有効利用するための広帯域伝送方式の研究が急速に進みつつある。この広帯域伝送方式の1つとして、互いに直交するよう配置された複数のサブキャリアにデータを多重して、シンボルと呼ばれる予め決められた単位毎に伝送する直交マルチキャリア信号伝送方式が注目されている。例えば、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)、地上波デジタルテレビ放送、無線LANあるいはデジタル家電では、直交マルチキャリア信号伝送方式としてOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)伝送方式が採用されており、携帯電話システムでは、MC−CDMA(MalutiCarrier−Code Division Multiple Access)伝送方式の採用が検討されている。
【0003】
図11に示すように、この直交マルチキャリア信号伝送方式の各サブキャリア200は、sin(x)/xという関数で表されるデジタル変調信号と同じ電力スペクトルを有している。各サブキャリアのうちそのキャリア周波数が最も低いサブキャリアをfcとし、サブキャリア間隔をf0、さらにサブキャリア総数をN(Nは2以上の整数)とした場合、この電力スペクトルは、パルス幅=1/f0の矩形パルスと、周波数fc+kf0(kは0〜N−1の整数)の正弦波信号との積で表される。
各サブキャリア200の電力スペクトルは、各サブキャリアの周波数fc+kf0を中心として両側に広がった形をなしており、そのキャリア周波数から離れるにつれて1/(fc+kf0)の間隔で振動しながら小さくなっている。
【0004】
直交マルチキャリア信号伝送方式では、図12に示すように、隣接するサブキャリア200の電力スペクトルがゼロとなる位置すなわちf0間隔で各サブキャリアが重ねて配置されている。これにより、サブキャリア相互間の干渉が抑制され、全体として1つの電力スペクトル210が得られる。
したがって、規定の周波数帯域内に多くのサブキャリアを配置でき、並列して伝送できる情報量を増加させることができるとともに、周波数資源を有効利用できる。
【0005】
このような直交マルチキャリア信号伝送方式では、受信装置において受信信号を復号する際、受信信号内における各シンボルの時間位置すなわちシンボル同期タイミングを精度良く検出する必要がある。
従来、このようなシンボル同期制御では、受信信号に含まれるガードインターバルとそのコピー元のシンボルとの相関を求めることによりシンボル同期タイミングを検出するものが提案されている(例えば、特開平07−321762号公報など参照)。
【0006】
直交マルチキャリア信号伝送方式では、直前シンボルの遅延波の影響すなわちシンボル間干渉を除去するため、有効OFDMシンボルの後端部分と同じ信号波形を当該有効OFDMシンボル期間の先頭に付加して送信するものとなっている。したがって、同一シンボル内に同一信号成分を持つことから、これら2つの期間の相関をとれば当該期間において高い相関値が得られるため、この相関値の変化を監視することにより、シンボル同期タイミングを得ることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のシンボル同期制御では、ガードインターバルに対するシンボル間干渉の影響あるいはサブキャリアの周波数オフセットの影響で、精度よくシンボル同期を得ることができないという問題点があった。
元々、ガードインターバルは直前シンボルの遅延波が有効OFDMシンボル期間まで影響しないように、その遅延波が発生しうる期間に設けられたものであり、その信号成分には直前シンボルの遅延波が含まれる。したがって、このような遅延波が含まれるガードインターバル信号と、ガードインターバルのコピー元の有効シンボルとの信号成分に差が生じるため、他の期間と明確な差が得られるほど大きな相関値が得られず、シンボル同期の精度が劣化するものとなっていた。
【0008】
また、直交マルチキャリア信号伝送方式では、図13に示すように、サブキャリアの周波数オフセットが生じる。これは、送信側と受信側とで個別に用いる局部発振器の発振周波数のずれや、送信側または受信側の移動によるドップラー効果に起因して、送信側での変調に用いたサブキャリア200の周波数fc+kf0に周波数オフセットΔfが生じ、受信側で受信した信号のサブキャリア201の周波数が元のfc+kf0からΔf分だけずれてしまう現象である。このようなサブキャリアの周波数オフセット量を推定する際にもシンボル同期が必要とされる。
周波数オフセットが生じている状態で、従来のように、カードインターバルとコピー元の有効シンボルとの相関値を求めた場合、その周波数オフセットに起因する位相回転成分が受信信号に含まれることから、他の期間と明確な差が得られるほど大きな相関値が得られず、シンボル同期の精度が劣化するものとなっていた。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、シンボル間干渉の影響さらにはサブキャリアの周波数オフセットの影響がある場合でも、精度よくシンボル同期タイミングを検出できる直交マルチキャリア信号伝送方式のシンボル同期タイミング検出方法および装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明にかかるシンボル同期タイミング検出方法は、互いに直交するよう配置された複数のサブキャリアにデータを多重して所定のシンボル単位で伝送する直交マルチキャリア信号伝送方式で、送信側からの信号から各シンボルのタイミングを示すシンボル同期タイミングを検出するシンボル同期タイミング検出方法であって、受信側で、送信側から受信した信号をベースバンドへダウンコンバートしてサンプリングすることにより直列ベースバンド信号を生成し、直列ベースバンド信号の各サンプル値のうちから所定間隔で2つのシンボル同期用サンプル値を順次選択し、順次選択された2つのシンボル同期用サンプル値の振幅差を順次算出して絶対値化処理し、得られた絶対値振幅差の変化に基づきシンボル同期タイミングを検出するようにしたものである。
【0011】
また、本発明にかかる他のシンボル同期タイミング検出方法は、互いに直交するよう配置された複数のサブキャリアにデータを多重して所定のシンボル単位で伝送する直交マルチキャリア信号伝送方式で、送信側からの信号から各シンボルのタイミングを示すシンボル同期タイミングを検出するシンボル同期タイミング検出方法であって、受信側で、送信側から受信した信号をベースバンドへダウンコンバートしてサンプリングすることにより直列ベースバンド信号を生成し、直列ベースバンド信号の各サンプル値のうちから所定間隔で2つのシンボル同期用サンプル値を順次選択し、順次選択された2つのシンボル同期用サンプル値ごとにそれぞれ絶対値化処理した後に両者の振幅差を順次算出して絶対値化処理し、得られた絶対値振幅差の変化に基づきシンボル同期タイミングを検出するようにしたものである。
【0012】
絶対値振幅差を算出する際、絶対値化処理により得られた絶対値振幅差を順次移動平均し、この移動平均された絶対値振幅差の変化に基づきシンボル同期タイミングを検出するようにしてもよい。
2つのシンボル同期用サンプル値を選択する際、直列ベースバンド信号の各サンプル値のうちから、所定間隔として、所望データが変調されている有効シンボル期間の間隔で、2つのシンボル同期用サンプル値を選択するようにしてもよい。
あるいは、直列ベースバンド信号の各サンプル値のうちから、所定間隔として、送信側で各サブキャリアのうち等しい間隔で選択した複数のサブキャリアを用いて送信された同期用シンボルに現れる繰り返し波形の繰り返し周期間隔で、2つのシンボル同期用サンプル値を選択するようにしてもよい。
【0013】
また、本発明にかかるシンボル同期タイミング検出装置は、互いに直交するよう配置された複数のサブキャリアにデータを多重して所定のシンボル単位で伝送する直交マルチキャリア信号伝送方式で、送信側からの信号から各シンボルのタイミングを示すシンボル同期タイミングを推定するシンボル同期タイミング検出装置であって、送信側から受信した信号をベースバンドへダウンコンバートしてサンプリングすることにより得られた直列ベースバンド信号のサンプル値を、所定期間だけ遅延させるシンボル遅延部と、このシンボル遅延部からの遅延サンプル値と直列ベースバンド信号のサンプル値との振幅差を算出する振幅差算出部と、この振幅差算出部からの振幅差を絶対値化処理する絶対値化処理部と、この絶対値化処理部からの絶対値振幅差の変化に基づきシンボル同期タイミングを検出するタイミング検出部とを備えるものである。
【0014】
また、本発明にかかる他のシンボル同期タイミング検出装置は、互いに直交するよう配置された複数のサブキャリアにデータを多重して所定のシンボル単位で伝送する直交マルチキャリア信号伝送方式で、送信側からの信号から各シンボルのタイミングを示すシンボル同期タイミングを推定するシンボル同期タイミング検出装置であって、送信側から受信した信号をベースバンドへダウンコンバートしてサンプリングすることにより得られた直列ベースバンド信号のサンプル値を、所定期間だけ遅延させるシンボル遅延部と、このシンボル遅延部からの遅延サンプル値を絶対値化処理した値と、直列ベースバンド信号のサンプル値を絶対値化処理した値との振幅差を算出する振幅差算出部と、この振幅差算出部からの振幅差を絶対値化処理する絶対値化処理部と、この絶対値化処理部からの絶対値振幅差の変化に基づきシンボル同期タイミングを検出するタイミング検出部とを備えるものである。
【0015】
また、絶対値化処理部からの絶対値振幅差を移動平均する移動平均処理部をさらに備え、タイミング検出部で、移動平均処理部で移動平均された絶対値振幅差の変化に基づきシンボル同期タイミングを検出するようにしてもよい。
シンボル遅延部で、直列ベースバンド信号のサンプル値を、所定期間として、有効シンボル期間だけ遅延させるようにしてもよい。
あるいは、所定期間として、送信側で各サブキャリアのうち等しい間隔で選択した複数のサブキャリアを用いて送信された同期用シンボルに現れる繰り返し波形の繰り返し周期間隔の期間だけ遅延させるようにしてもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、図面を参照して、本発明にかかる第1の実施の形態について説明する。
【0017】
[送信装置]
まず、図1を参照して、直交マルチキャリア信号伝送方式で用いられる一般的な送信装置について説明する。図1は直交マルチキャリア信号伝送方式で用いられる一般的な送信装置の構成を示すブロック図である。
この送信装置1には、S/P(シリアル/パラレル)変換部10、サブキャリア変調部11、逆フーリエ変換処理部(以下、IFFT処理部という)12、P/S(パラレル/シリアル)変換部13、RF変調部14および局部発振器15が設けられている。
【0018】
S/P変換部10は、送信データシンボルを示すデジタルデータ列からなる直列入力データ110を入力とし、この信号をシリアル/パラレル変換して所定ビット幅の並列入力データ111を出力する。
サブキャリア変調部11は、並列入力データ111を入力とし、これら信号を例えばQPSK変調方式などの所定の変調方式により複素信号成分へ変換して、直交マルチキャリア信号伝送方式で用いる各サブキャリアへマッピングし、並列ベクトル信号112として出力する。これら並列ベクトル信号112の各サブキャリアは、前述の図11に示した電力スペクトルを有する。
【0019】
IFFT処理部12は、並列ベクトル信号112を入力とし、これら周波数領域における信号を逆高速フーリエ変換処理することにより、時間領域における並列ベースバンド信号113として出力する。したがって、この並列ベースバンド信号113は、前述の図11に示した電力スペクトルを有する並列ベクトル信号112が、図12に示したように、周波数領域において所定周波数間隔f0ごとに等間隔で配置された形となる。
P/S変換部13は、並列ベースバンド信号113と、その一部からなるガードインターバル信号114とを入力とし、これら信号をパラレル/シリアル変換してデジタルデータからなる直列ベースバンド信号115を出力する。
【0020】
ガードインターバルとは、時間領域において、所望のOFDMシンボルの後端部分をコピーしてそのOFDMシンボルの先頭に複写した領域のことを指す。直交マルチキャリア信号伝送方式では、マルチパスによる遅延が大きくなると、ガードインターバルを設けていない場合には、直前OFDMシンボルの遅延波が当該OFDMシンボルの先頭部分に不要シンボルとして混入するため、この状態でFFT処理をした場合、サブキャリア間の直交性が保たれなくなって伝送誤りの原因となる。
したがって、遅延波に対して十分な期間のガードインターバルを設けることにより、実際にFFT処理する範囲すなわち有効OFDMシンボル期間への遅延波の影響がなくなり、良好な復調信号が得られる。
【0021】
RF変調部14は、直列ベースバンド信号115を入力とし、この信号をD/A変換した後に局部発振器15からの局部発振周波数(fC)116に基づきRF変調して、前述の図12に示したような電力スペクトル210をなすアナログの送信OFDM信号117を出力する。
【0022】
[受信装置]
次に、図2を参照して、直交マルチキャリア信号伝送方式で用いられる一般的な受信装置について説明する。図2は直交マルチキャリア信号伝送方式で用いられる一般的な受信装置の構成を示すブロック図である。
この受信装置2には、RF復調部20、局部発振器21、S/P(シリアル/パラレル)変換部22、シンボル同期タイミング検出装置40、周波数オフセット推定装置30、高速フーリエ変換処理部(以下、FFT処理部という)24、サブキャリア復調部25およびP/S(パラレル/シリアル)変換部26が設けられている。
【0023】
RF復調部20は、アナログの受信OFDM信号120を入力とし、この信号を局部発振器21からの局部発振周波数(fC’)121に基づきRF復調した後にサンプリングしてA/D変換し、デジタルデータ列からなる直列ベースバンド信号122を出力する。
シンボル同期タイミング装置40は、直列ベースバンド信号122を入力とし、この信号からガードインターバル部分を除く所望のOFDMシンボル期間に対応するタイミング検出し、そのタイミングを示すシンボル同期信号140を出力する。本実施の形態にかかるシンボル同期タイミング検出装置は、このシンボル同期タイミング装置40として適用される。
周波数オフセット推定装置30は、直列ベースバンド信号122を入力とし、この信号からシンボル同期信号140に基づき周波数オフセットを推定し、周波数オフセット情報(Δf)130として出力する。
【0024】
S/P変換部22は、直列ベースバンド信号122を入力とし、この信号からシンボル同期信号123に基づきガードインターバルを除いた所望のOFDMシンボルをシリアル/パラレル変換して、時間領域における並列ベースバンド信号124として出力する。この並列ベースバンド信号124も前述の図16のような電力スペクトルとなる。
FFT処理部24は、並列ベースバンド信号124を入力として、これら時間領域における信号を高速フーリエ変換処理し、各サブキャリアに対応した周波数領域において、前述した図11のような電力スペクトルをそれぞれ有する並列ベクトル信号125を出力する。このとき、FFT処理部24では、周波数オフセット情報130に基づきサブキャリア周波数を補正する。
【0025】
サブキャリア復調部25は、並列ベクトル信号125を入力とし、これら信号をそれぞれのサブキャリア周波数で復調し、得られた複素信号成分を、例えばQPSK変調方式などの所定の変調方式に基づき復調し、並列出力データ126として出力する。
P/S変換部26は、並列出力データ126を入力とし、これら信号をパラレル/シリアル変換してデジタルデータ列からなる直列出力データ127を出力する。
【0026】
次に、図面を参照して、本発明にかかる第1の実施の形態として、受信装置2で用いられるシンボル同期タイミング検出装置40について説明する。
【0027】
[第1のシンボル同期の原理]
まず、受信装置2のシンボル同期タイミング検出装置40で用いられる第1のシンボル同期の原理について説明する。
シンボル同期の目的は、受信信号からガードインターバルや有効OFDMシンボル期間のタイミングを検出することにある。特に、所望データの復調や周波数オフセットの推定を行う場合、シンボル開始位置の同期が取れていないと、演算処理されるシンボルの中に直前シンボルのシンボル成分が含まれるため、これが干渉要因となって精度を劣化させる原因となる。したがって、高精度でシンボル同期を行う必要がある。
【0028】
直交マルチキャリア信号伝送方式では、1つの受信OFDMシンボル内に同様の信号成分が、ガードインターバルとその複写元であるシンボル後端部とに2回現れる。ここで、直前シンボルの遅延広がりがガードインターバル期間に収まるようにガードインターバル期間の長さが設定されていることから、ガードインターバル最後端部では遅延の影響がほとんどなくなって上記2つの信号成分がほぼ等しくなり、シンボルの最先頭部で上記2つの信号成分は全く異なるものとなる。
本実施の形態では、上記の2点に着目し、これら2つの信号成分の振幅差の変化を監視することにより、シンボル開始位置を検出している。
【0029】
一般に、送信装置1からOFDMシンボルs(k)が送信された際、受信装置2で受信される希望波(OFDMシンボル)sd(k)、時間τだけ遅れて受信される遅延波su(k)、およびサンプル時間kのときの受信信号r(k)は、数1のようになる。ここで、cd(k),cu(k)はそれぞれ希望波sd(k)、遅延波su(k)に対する伝送路特性であり、遅延広がりτはガードインターバル期間より短いものとする。また、n(k)はガウス雑音である。
【0030】
【数1】
【0031】
この受信信号r(k)と、これをシンボル期間Tsだけ遅延させた信号r(k−Ts)との差分、すなわち振幅差rdif(k)は、数2となる。但し、ndif(k)は、ガウス雑音の振幅差を示す。
【0032】
【数2】
【0033】
ここで、ガードインターバルの信号成分とOFDM信号の後半部分(ガードインターバルのコピー元)との信号成分とが等しいことから、数3が成立する。この場合のTgはガードインターバル期間長であり、l(Lの小文字)は整数である。
【0034】
【数3】
【0035】
したがって、数2の振幅差rdif(k)は、数4のように表すことができる。
【0036】
【数4】
【0037】
ここで、簡略化のためl=0とし、最大ドップラ周波数はシンボル周期の周波数に比べて十分小さいとすると、{cd(k−Ts)−cd(k)}および{cu(k−Ts)−cu(k)}の平均値はゼロに近似することができ、ガウス雑音n(k)の平均値さらにはガウス雑音の振幅差ndif(k)の平均値もゼロにすることができる。
したがって、減算結果rdif(k)は、上記のように遅延広がりτ以上からガードインターバル期間Tg以内の範囲であれば、1つ前のシンボルの遅延波が及ばない範囲であることからゼロに近似できる。
【0038】
このようにして算出したrdif(k)について絶対値化処理を行うことにより複素成分を除去した後に二乗すると、1つ前のシンボルの遅延波の最大遅延広がりがτであることから、これらL(Lは1〜Tg−τの整数)サンプルを単位とした移動平均値ravg(k)は、数5のようになる。
【0039】
【数5】
【0040】
この移動平均値ravg(k)は、τ以上から(Tg−L+1)以内の範囲で小さい値となり、(Tg−L+2)以上の範囲では平均化により小さい値が存在しなくなるため大きな値へ変化する。
したがって、数6に示すように、移動平均値ravg(k)を1つ前のravg(k−1)で除算して除算値rdiv(k)を得ることにより、上記変化点がrdiv(k)のピークとして現れる。
【0041】
【数6】
【0042】
通常、直前シンボルの遅延広がりがガードインターバル期間に収まるようにガードインターバル期間の長さが設定されているため、ガードインターバル最後端部では遅延広がりの影響がほとんどなくなって、有効OFDMシンボル期間Tsだけ遅延させた信号成分とほぼ等しくなる。そして、シンボルの最先頭部では有効OFDMシンボル期間Tsだけ遅延させた信号成分と全く異なるものとなることから、移動平均値がシンボルの切り替わり時点、すなわちシンボル同期タイミングで大きく変化することになり、その変化を上記除算値などを用いて検出することにより、最適なシンボル同期タイミングの検出、すなわちシンボル同期が得られる。
【0043】
[第1のシンボル同期タイミング検出装置]
次に、図3および図4を参照して、受信装置2に適用されるシンボル同期タイミング検出装置40の構成例および動作について説明する。図3は第1のシンボル同期タイミング検出装置40の構成例を示すブロック図である。図4は第1のシンボル同期の動作を示すタイミングチャートである。
このシンボル同期タイミング検出装置40には、シンボル遅延部41、振幅差算出部42、絶対値化処理部43、二乗化乗算部44、移動平均処理部45、タイミング検出部60が設けられており、これら各部の動作により、受信信号からガードインターバルや有効OFDMシンボル期間の検出、すなわちシンボル同期が得られる。
【0044】
シンボル遅延部41は、RF復調部20からの直列ベースバンド信号122を入力とし、この信号の各サンプル値を有効OFDMシンボル期間Tsだけ遅延させ、シンボル遅延信号141として出力する。これにより、シンボル遅延信号141側のガードインターバルGI(A)と、直列ベースバンド信号122側のコピー元gi(A)とのタイミングが同期する。
振幅差算出部42は、前述した数4に基づき、直列ベースバンド信号122のサンプル値とシンボル遅延信号141のサンプル値との振幅差rdif(k)を算出出力する。
絶対値化処理部43は、上記振幅差を入力とし、その振幅差の複素成分を除去する絶対値化処理を行い、その結果を絶対値振幅差として出力する。
【0045】
二乗化乗算部44は、上記絶対値振幅差を入力とし、その絶対値振幅差を二乗化し、その結果を二乗化振幅差として出力する。なお、この二乗化乗算部44は、必ずしも必須要件ではないが、これを設けることによりシンボル同期の精度を高めることができる。
移動平均処理部45は、前述した数5に基づき、上記絶対値振幅差または二乗化振幅差を入力とし、これら値についてLサンプルを単位として移動平均し、得られた移動平均値ravg(k)を移動平均値142として出力する。
【0046】
したがって、図4に示すように、シンボル遅延信号141のGI(A)の後端期間には、直前シンボルからの遅延波の影響がほとんどないことから、このGI(A)と直列ベースバンド信号122のgi(A)との絶対値振幅差を移動平均して得られた移動平均値142は減少し、次のシンボルのGI(B)の開始位置で急激に増加する。
【0047】
タイミング検出部60には、データ遅延部61、除算部62およびピーク検出部63が設けられており、これらが動作して移動平均処理部45からの移動平均値142の変化を検出することにより、シンボル同期タイミング、すなわちシンボル同期を得ている。
データ遅延部61は、上記移動平均値ravg(k)を入力とし、その値を1データ(1値)分遅延させ、移動平均値ravg(k−1)を出力する。
除算部62は、前述した数6に基づき、移動平均処理部45からの移動平均値ravg(k)と、データ遅延部61からの遅延移動平均値ravg(k−1)との比を求め、除算値rdiv(k)として出力する。
【0048】
ピーク検出部63は、上記除算値rdiv(k)を入力とし、この値を1OFDMシンボル分にわたって検査することによりそのピークを検出し、そのタイミングをシンボル同期タイミング、ここではガードインターバルの開始位置を示すシンボル同期信号140として出力する。ガードインターバルの時間長Tgは既知であることから、有効OFDMシンボル期間Tsの開始位置も容易に得られる。また、このようなタイミング調整は、ピーク検出部63で行ってもよく、S/P変換部22で行ってもよい。
なお、タイミング検出部60の構成は、上記構成例に限定されるものではなく、移動平均値142の変化からシンボル同期タイミングを検出するものであれば、他の構成でもよい。
【0049】
このように、直列ベースバンド信号122と、この直列ベースバンド信号122を所定期間、ここでは有効OFDMシンボル期間だけ遅延させたシンボル遅延信号141との振幅差を求め、これを絶対値化処理して移動平均値を算出し、得られた移動平均値の変化に応じてシンボル同期タイミングを検出するようにしたので、ガードインターバルの後端部を利用してシンボル同期タイミングを検出することができ、マルチパスに起因するシンボル間干渉の影響を抑止して、高い精度でシンボル同期を行うことができる。
さらに、受信信号の振幅差を利用しているため、従来のように受信信号の相関操作を行うものと比較して、回路構成を大幅に削減できるとともに処理時間を短縮できる。
【0050】
また、同一シンボル内のガードインターバルを利用していることから、1つのシンボルでシンボル同期タイミングを検出できるとともに、シンボル同期用の特別なシンボルを必要とせず、例えば周波数オフセットの推定で用いる同期用シンボルを用いてもよく、データ通信用シンボルも利用できる。
したがって、データ通信用シンボルを用いれば、本来のデータ通信の通信効率を下げることなく、例えば毎シンボルごとなどの任意のタイミングで、シンボル同期を行うことができ、高い通信品質が得られる。
【0051】
次に、図面を参照して、本発明にかかる第2の実施の形態として、受信装置2のシンボル同期タイミング検出装置40に代えて用いられる他のシンボル同期タイミング検出装置40Aについて説明する。
【0052】
[第2のシンボル同期の原理]
受信装置2のシンボル同期タイミング検出装置40Aで用いられる第2のシンボル同期の原理について説明する。
前述した第1のシンボル同期では、直列ベースバンド信号122のガードインターバルとそのコピー元との振幅差に基づきシンボル同期タイミングを検出する場合について説明したが、本実施の形態にかかるシンボル同期では、同期用シンボル内に現れる繰り返し波形に着目し、隣接する繰り返し波形間の振幅差に基づきシンボル同期タイミングを検出する場合を例として説明する。
【0053】
直交マルチキャリア伝送方式では、前述の図12に示したように、隣接するサブキャリア200の電力スペクトルがゼロとなる位置すなわちf0間隔で各サブキャリアが重ねて配置されている。
本実施の形態にかかるシンボル同期タイミング検出では、シンボル同期タイミングの検出に用いる同期用シンボルを送信する際、送信装置1において、P/S変換部13で用いる各サブキャリアのうち、等しい間隔で櫛形に選択された複数のサブキャリアを同期用サブキャリアとして用いる。
【0054】
このような同期用サブキャリアを用いた場合、有効OFDMシンボル内に複数の繰り返し波形が形成された同期用シンボルが得られる。
例えば図5に示すように、隣接するサブキャリアとの間隔をf0とすると、サブキャリア200をd(dは2以上の整数)個間隔で選択した場合、その周波数間隔がdf0の櫛形のサブキャリア配置となる。このとき、ガードインターバル信号114(図1参照)を除くすべての並列ベースバンド信号113に対応するサブキャリアの総数をN(Nは2×d以上の整数)とすると、N/dを越えない整数個のサブキャリアが同期用サブキャリアとして選択されることになる。
【0055】
この同期用サブキャリアの選択方法については、並列ベースバンド信号113として所望のサブキャリアのみ有効となるビットデータパターンをP/S変換部13へ入力することにより同期用サブキャリアを選択してもよい。
なお、本実施の形態の説明では、理解を容易とするため、同期用サブキャリアのサブキャリア間隔dとしてサブキャリア総数Nの約数のいずれかを選択した場合を例として説明する。なお、この場合、同期用サブキャリアとしてはN/d(整数)個のサブキャリアが選択されることになる。
【0056】
このような櫛形のサブキャリア配置を用いた場合、受信装置2の直列ベースバンド信号122では、図6に示すように、ガードインターバル期間を除く有効OFDMシンボル期間Ts内に、d個の繰り返し波形220が現れる。
このとき、受信装置2のRF復調部20において、有効OFDMシンボル期間Tsをサブキャリア総数Nでサンプリングした場合、1つの繰り返し波形220から得られるサンプル値の数、すなわちサンプリング間隔で正規化された繰り返し波形220の幅はN/dとなる。
【0057】
したがって、これら繰り返し波形に出現する同一信号成分を用いて、第1の実施の形態と同様にシンボル同期タイミングを検出すれば、ガードインターバルを利用しないでシンボル同期タイミングを検出することができ、マルチパスに起因するシンボル間干渉の影響がさらに抑止される。
【0058】
また、周波数オフセットΔfnを厳密に考慮して、直列ベースバンド信号122とこれを繰り返し波形長N/d分だけ遅延させた遅延信号との振幅差rdif(k)をそのまま算出した場合、数7のようになり、遅延信号の干渉がない期間でも、振幅差がゼロに近似しなくなる。
【0059】
【数7】
【0060】
これを回避するためには、受信信号に含まれる周波数オフセットの影響を打ち消す必要がある。ここで、直列ベースバンド信号122の絶対値化処理を行うと、数8のようになり、複素成分すなわち周波数オフセット成分を打ち消すことができる。なお、このような絶対値化処理を行うと信号に含まれる位相情報も消失してしまうが、シンボル同期には差し支えない。
【0061】
【数8】
【0062】
したがって、このようにして絶対値化処理を行った直列ベースバンド信号122と、絶対値化処理を行った遅延信号との振幅差を求めることにより、周波数オフセットの影響がない振幅差が得られる。
これ以降、前述した第1のシンボル同期と同様の処理を行うことにより、周波数オフセットが存在する場合でも、精度よくシンボル同期タイミングを検出できる。
【0063】
[第2のシンボル同期タイミング検出装置]
次に、図7および図8を参照して、受信装置2に適用されるシンボル同期タイミング検出装置40Aの構成例および動作について説明する。図7は第2のシンボル同期タイミング検出装置40Aの構成例を示すブロック図である。図8は第2のシンボル同期の動作を示すタイミングチャートである。
このシンボル同期タイミング検出装置40Aは、図3のシンボル同期タイミング検出装置40と比較して、シンボル遅延部41に代えてサンプル遅延部51が設けられているとともに、絶対値化処理部52,53が追加されており、このほかについては、シンボル同期タイミング検出装置40とほぼ同様の構成を有している。
【0064】
サンプル遅延部51は、直列ベースバンド信号122を繰り返し波形長N/dだけ遅延させ、サンプル遅延信号151として出力する。
絶対値化処理部52は、直列ベースバンド信号122を絶対値化処理した後、振幅差算出部54へ出力する。
絶対値化処理部53は、サンプル遅延部51からのサンプル遅延信号151を絶対値化処理した後、振幅差算出部54へ出力する。
振幅差算出部54では、絶対値化処理部52で絶対値化処理された直列ベースバンド信号122と、絶対値化処理部53で絶対値化処理されたサンプル遅延信号151との振幅差を算出する。
【0065】
この後、図3の絶対値化処理部43〜タイミング検出部60と同様に処理が、絶対値化処理部55〜タイミング検出部60で行われる。
したがって、移動平均処理部57で順次算出される移動平均値152は、図8に示すように、有効OFDMシンボル期間内で小さい値を示し、直列ベースバンド信号122が次の受信シンボルのガードインターバルGI(B)へ移行した時点で急激に大きくなり、そのピークに応じてシンボル同期タイミング、ここではガードインターバルの開始位置を示すシンボル同期信号140が出力される。ガードインターバル長は既知であることから、有効OFDMシンボル期間の開始位置も容易に得られる。また、このようなタイミング調整は、ピーク検出部63で行ってもよく、S/P変換部22で行ってもよい。なお、前述と同様に、二乗化乗算部56は省略してもよい。
【0066】
このように、直列ベースバンド信号122と、直列ベースバンド信号122を所定期間、ここでは繰り返し波形長だけ遅延させたサンプル遅延信号151との振幅差を求め、これを絶対値化処理して移動平均値を算出し、得られた移動平均値の変化に応じてシンボル同期タイミングを検出するようにしたので、ガードインターバルを利用しないでシンボル同期タイミングを検出することができ、マルチパスに起因するシンボル間干渉の影響を抑止して、高い精度でシンボル同期を行うことができる。
さらに、受信信号の振幅差を利用しているため、従来のように受信信号の相関操作を行うものと比較して、回路構成を削減できるとともに処理時間を短縮できる。
【0067】
また、絶対値化処理部52,53を設け、直列ベースバンド信号122の各サンプル値およびサンプル遅延部51からの遅延サンプル信号151の各サンプル値をそれぞれ絶対値化処理した後、振幅差算出部54へ入力するようにしたので、周波数オフセットの影響がない振幅差が得られるため、周波数オフセットが存在する場合でも、マルチパスに起因するシンボル間干渉の影響を抑止して、高精度でシンボル同期を行うことができる。
【0068】
なお、本実施の形態では、同期用サブキャリアで用いる各サブキャリアの間隔dとして、サブキャリア総数Nの約数を用いた場合を例として説明したが、この間隔dとしては、サブキャリア総数Nの約数を用いるほうが望ましい場合もあるが、必ずしも約数を用いる必要はない。
例えば、サブキャリア総数N=512のときに、サブキャリアをNの約数の1つである間隔d=8で選択した場合、同期用サブキャリアとしてN/d=64(512/8)個のサブキャリアが選択され、同期用シンボルには、d=8個の繰り返し波形が現れる。
【0069】
これに対して、Nの約数ではない間隔d=9でサブキャリアを選択した場合、同期用サブキャリアとしてN/dを越えない整数個ここでは56個のサブキャリアが選択され、同期用シンボルには、d=9を越えない最大の整数個ここでは8個の繰り返し波形が完全な形で現れ、最後の繰り返し波形は、他の繰り返し波形より短く途中で切れた不完全な波形となる。但し、このような不完全な波形を含む場合でも、他の完全な形の繰り返し波形でシンボル同期タイミングを検出できることから、前述したシンボル同期検出処理を同様にして行うことができる。
【0070】
一般的に表現すれば、間隔dとしてサブキャリア総数Nの約数を用いなかった場合、サブキャリア数はN/dを越えない最大の整数すなわち[N/d]([]はガウス記号)と表され、同期用シンボルに現れる繰り返し波形のうち完全な形の繰り返し波形の数はd−1個となり、繰り返し波形幅すなわちサンプル遅延部51での遅延幅は[N/d]となる。
したがって、これらパラメータを、前述した間隔dとしてサブキャリア総数Nの約数を用いた場合のパラメータと置換することにより、前述と同様のシンボル同期タイミング判定処理を実施することができ、同様の作用効果が得られる。
【0071】
なお、間隔dとしてサブキャリア総数Nの約数を用いなかった場合、有効OFDMシンボルの最後端に上記のような不完全な波形が現れる。したがって、移動平均処理部57で求められる移動平均値152は、その不完全な波形部分直後の値が含まれた移動平均の算出開始タイミングで急激に変化し、ピークとして検出される。
このような場合には、移動平均処理単位Lが既知であることから、その処理単位Lに相当する時間長だけ上記ピークをシフトさせるタイミング調整を行えばよい。なお、このタイミング調整については、ピーク検出部63では行ってもよく、S/P変換部22で行うようにしてもよい。
【0072】
以上で説明した前述の第1の実施の形態(図3参照)では、直列ベースバンド信号122のサンプル値およびシンボル遅延部41からの遅延サンプル値141については、そのまま振幅差算出部42に入力する場合を例として説明したが、第2の実施の形態(図7参照)で説明したように、絶対値化処理部を設けて、直列ベースバンド信号122のサンプル値およびシンボル遅延部41からの遅延サンプル値141を絶対値化処理した後に振幅差算出部42に入力するようにしてもよい。これにより、第2の実施の形態と同様に、周波数オフセットの影響がない振幅差が得られるため、周波数オフセットが存在する場合でも、マルチパスに起因するシンボル間干渉の影響を抑止して、高精度でシンボル同期を行うことができる。
【0073】
また、以上の各実施の形態において、同期用シンボルを用いて周波数オフセットを推定する際、例えば受信装置2のRF復調部20の出力段に設けたバッファで直列ベースバンド信号122の各サンプル値を保持している場合には、先にそのバッファからシンボル同期タイミングを検出した後、そのシンボル同期タイミングに基づき所望のサンプル値をバッファから再度読み出して周波数同期を行うことができる。
したがって、周波数オフセットの推定処理にシンボル同期タイミングの検出が必要な場合には、推定処理と同一の同期用シンボルで所望のシンボル同期タイミングを検出でき、同期用シンボルの直前シンボルなど、その同期用シンボルとは異なるシンボルからシンボル同期タイミングを検出する場合と比較して、周波数オフセットの推定に必要なシンボル同期タイミングを高い精度で検出できる。
【0074】
また、以上の各実施の形態では、図2に示したように、それぞれのシンボル同期タイミング検出装置40,40Aを、受信シンボル復調用のシンボル同期タイミングを検出する装置として用いた場合について説明したが、これらシンボル同期タイミング検出装置40,40Aの用途としては、これに限定されるものではない。例えば、これらシンボル同期タイミング検出装置40,40Aを、周波数オフセット推定装置30で用いる推定処理タイミングを検出するための装置として用いてもよい。
【0075】
[シミュレーション結果]
次に、図9および図10を参照して、本方式による、送信装置1と、シンボル同期タイミング検出装置40Aを用いた受信装置2との間でデータ通信を行った場合のシミュレーション結果について説明する。図9は、シミュレーションから得られたBER(ビットエラーレート)特性を示すグラフである。図10は、シミュレーションで用いた各パラメータを示している。
【0076】
図9のBER特性は、送受信装置間でどの程度ビットエラーが発生するかを調べた結果を示すものであり、ここでは、送受信装置間でシンボル同期が完全にとれている場合(完全同期)と本方式によりシンボル同期をとった場合のBER特性がそれぞれ示されている。
なお、横軸は、1ビット当たりの信号エネルギーEbと、ノイズの片側パワースペクトル密度Noの比を示している。これは、受信信号の信号対雑音比(SN比)をシンボル当たりの情報ビット数で割った値に等しく、この値が大いほどノイズの少ない良好なデータ通信状態であることを示している。縦軸は、送受信されたデータのビット誤り率である。
【0077】
特性300は理想的な完全同期状態でのBER特性、特性305は本発明を適用てシンボル同期をとった場合のBER特性であり、いずれの状態でもほぼ同一のBER特性が得られた。
この図9によれば、本方式のBER特性305は、完全同期状態でのBER特性300とほぼ同様の特性を示しており、同期タイミング検出装置40Aでシンボル同期が完全にとれていることがわかる。
【0078】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、送信側から受信した信号をベースバンドへダウンコンバートしてサンプリングすることにより直列ベースバンド信号を生成し、直列ベースバンド信号の各サンプル値のうちから所定間隔で2つのシンボル同期用サンプル値を順次選択し、順次選択された2つのシンボル同期用サンプル値の振幅差を順次算出して絶対値化処理し、得られた絶対値振幅差の変化に基づきシンボル同期タイミングを検出するようにしたので、従来のように、受信信号に含まれるガードインターバルとそのコピー元のシンボルとの相関を求めることによりシンボル同期タイミングを検出するものと比較して、ガードインターバルの後端部や同期用シンボルに現れる繰り返し波形を利用してシンボル同期タイミングを検出することができ、マルチパスに起因するシンボル間干渉の影響を抑止して、高い精度でシンボル同期を行うことができる。
【0079】
また、振幅差を算出する際、選択された2つのシンボル同期用サンプル値ごとにそれぞれ絶対値化処理した後に両者の振幅差を算出するようにすれば、周波数オフセットの影響がない振幅差が得られるため、周波数オフセットが存在する場合でも、マルチパスに起因するシンボル間干渉の影響を抑止して、高精度でシンボル同期を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】直交マルチキャリア信号伝送方式で用いられる一般的な送信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】直交マルチキャリア信号伝送方式で用いられる一般的な受信装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態にかかる第1のシンボル同期タイミング検出装置の構成例を示すブロック図である。
【図4】第1のシンボル同期の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】周波数オフセット推定装置で用いられるサブキャリアの配置を示す説明図である。
【図6】図5のサブキャリア配置で得られる同期用シンボルの波形例である。
【図7】第2のシンボル同期タイミング検出装置の構成例を示すブロック図である。
【図8】第2のシンボル同期の動作を示すタイミングチャートである。
【図9】シミュレーションのBER特性を示すグラフである。
【図10】シミュレーションで用いた各パラメータである。
【図11】直交マルチキャリア信号伝送方式のサブキャリアの電力スペクトルである。
【図12】直交マルチキャリア信号伝送方式のサブキャリア配置を示す説明図である。
【図13】サブキャリアの周波数オフセットを示す説明図である。
【符号の説明】
1…送信装置、10…S/P変換部、11…サブキャリア変調部、12…IFFT処理部、13…P/S変換部、14…RF変調部、15…局部発信器、2…受信装置、20…RF復調部、21…局部発振器、22…S/P変換部、24…FFT処理部、25…サブキャリア復調部、26…P/S変換部、30…周波数オフセット推定装置、40,40A…シンボル同期タイミング検出装置、41…シンボル遅延部、42,54…振幅差算出部、43,52,53,55…絶対値化処理部、44,56…二乗化乗算部、45,57…移動平均処理部、51…サンプル遅延部、60…タイミング検出部、61…データ遅延部、62…除算部、63…ピーク検出部、110…直列入力データ、111…並列入力データ、112…並列ベクトル信号、113…並列ベースバンド信号、114…ガードインターバル信号、115…直列ベースバンド信号、116…局部発振周波数、117…送信OFDM信号、120…受信OFDM信号、121…局部発振周波数、122…直列ベースバンド信号、124…並列ベースバンド信号、125…並列ベクトル信号、126…並列出力データ、127…直列出力データ、130…周波数オフセット情報、140…シンボル同期信号、141…シンボル遅延信号、142,152…移動平均値、151…サンプル遅延信号、200…サブキャリア、210…電力スペクトル、220…繰り返し波形。
Claims (10)
- 互いに直交するよう配置された複数のサブキャリアにデータを多重して所定のシンボル単位で伝送する直交マルチキャリア信号伝送方式で、送信側からの信号から各シンボルのタイミングを示すシンボル同期タイミングを検出するシンボル同期タイミング検出方法であって、
受信側で、
送信側から受信した信号をベースバンドへダウンコンバートしてサンプリングすることにより直列ベースバンド信号を生成し、
前記直列ベースバンド信号の各サンプル値のうちから所定間隔で2つのシンボル同期用サンプル値を順次選択し、
順次選択された2つのシンボル同期用サンプル値の振幅差を順次算出して絶対値化処理し、
得られた絶対値振幅差の変化に基づき前記シンボル同期タイミングを検出することを特徴とするシンボル同期タイミング検出方法。 - 互いに直交するよう配置された複数のサブキャリアにデータを多重して所定のシンボル単位で伝送する直交マルチキャリア信号伝送方式で、送信側からの信号から各シンボルのタイミングを示すシンボル同期タイミングを検出するシンボル同期タイミング検出方法であって、
受信側で、
送信側から受信した信号をベースバンドへダウンコンバートしてサンプリングすることにより直列ベースバンド信号を生成し、
前記直列ベースバンド信号の各サンプル値のうちから所定間隔で2つのシンボル同期用サンプル値を順次選択し、
順次選択された2つのシンボル同期用サンプル値ごとにそれぞれ絶対値化処理した後に両者の振幅差を順次算出して絶対値化処理し、
得られた絶対値振幅差の変化に基づき前記シンボル同期タイミングを検出することを特徴とするシンボル同期タイミング検出方法。 - 請求項1または2に記載のシンボル同期タイミング検出方法において、
前記絶対値振幅差を算出する際、前記絶対値化処理により得られた絶対値振幅差を順次移動平均し、
この移動平均された絶対値振幅差の変化に基づき前記シンボル同期タイミングを検出することを特徴とするシンボル同期タイミング検出方法。 - 請求項2に記載のシンボル同期タイミング検出方法において、
前記2つのシンボル同期用サンプル値を選択する際、前記直列ベースバンド信号の各サンプル値のうちから、前記所定間隔として、所望データが変調されている有効シンボル期間の間隔で、前記2つのシンボル同期用サンプル値を選択することを特徴とするシンボル同期タイミング検出方法。 - 請求項1または2に記載のシンボル同期タイミング検出方法において、
前記2つのシンボル同期用サンプル値を選択する際、前記直列ベースバンド信号の各サンプル値のうちから、前記所定間隔として、送信側で前記各サブキャリアのうち等しい間隔で選択した複数のサブキャリアを用いて送信された同期用シンボルに現れる繰り返し波形の繰り返し周期間隔で、前記2つのシンボル同期用サンプル値を選択することを特徴とするシンボル同期タイミング検出方法。 - 互いに直交するよう配置された複数のサブキャリアにデータを多重して所定のシンボル単位で伝送する直交マルチキャリア信号伝送方式で、送信側からの信号から各シンボルのタイミングを示すシンボル同期タイミングを推定するシンボル同期タイミング検出装置であって、
送信側から受信した信号をベースバンドへダウンコンバートしてサンプリングすることにより得られた直列ベースバンド信号のサンプル値を、所定期間だけ遅延させるシンボル遅延部と、
このシンボル遅延部からの遅延サンプル値と前記直列ベースバンド信号のサンプル値との振幅差を算出する振幅差算出部と、
この振幅差算出部からの振幅差を絶対値化処理する絶対値化処理部と、
この絶対値化処理部からの絶対値振幅差の変化に基づき前記シンボル同期タイミングを検出するタイミング検出部とを備えることを特徴とするシンボル同期タイミング検出装置。 - 互いに直交するよう配置された複数のサブキャリアにデータを多重して所定のシンボル単位で伝送する直交マルチキャリア信号伝送方式で、送信側からの信号から各シンボルのタイミングを示すシンボル同期タイミングを推定するシンボル同期タイミング検出装置であって、
送信側から受信した信号をベースバンドへダウンコンバートしてサンプリングすることにより得られた直列ベースバンド信号のサンプル値を、所定期間だけ遅延させるシンボル遅延部と、
このシンボル遅延部からの遅延サンプル値を絶対値化処理した値と、前記直列ベースバンド信号のサンプル値を絶対値化処理した値との振幅差を算出する振幅差算出部と、
この振幅差算出部からの振幅差を絶対値化処理する絶対値化処理部と、
この絶対値化処理部からの絶対値振幅差の変化に基づき前記シンボル同期タイミングを検出するタイミング検出部とを備えることを特徴とするシンボル同期タイミング検出装置。 - 請求項6または7に記載のシンボル同期タイミング検出装置において、
前記絶対値化処理部からの絶対値振幅差を移動平均する移動平均処理部をさらに備え、
前記タイミング検出部は、前記移動平均処理部で移動平均された絶対値振幅差の変化に基づき前記シンボル同期タイミングを検出することを特徴とするシンボル同期タイミング検出装置。 - 請求項7に記載のシンボル同期タイミング検出装置において、
前記シンボル遅延部は、前記直列ベースバンド信号のサンプル値を、前記所定期間として、前記有効シンボル期間だけ遅延させることを特徴とするシンボル同期タイミング検出装置。 - 請求項6また7に記載のシンボル同期タイミング検出装置において、
前記シンボル遅延部は、前記直列ベースバンド信号のサンプル値を、前記所定期間として、送信側で前記各サブキャリアのうち等しい間隔で選択した複数のサブキャリアを用いて送信された同期用シンボルに現れる繰り返し波形の繰り返し周期間隔の期間だけ遅延させることを特徴とするシンボル同期タイミング検出装置。
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JP2002249719A JP2004088662A (ja) | 2002-08-28 | 2002-08-28 | 直交マルチキャリア信号伝送方式のシンボル同期タイミング検出方法および装置 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007043376A1 (ja) * | 2005-10-07 | 2007-04-19 | Ntt Docomo, Inc. | 変調装置、変調方法、復調装置、及び復調方法 |
JP2013509770A (ja) * | 2009-10-30 | 2013-03-14 | バンガー ユニバーシティ | 光周波数分割多重送信システムにおける同期プロセス |
CN104316888A (zh) * | 2014-05-28 | 2015-01-28 | 许继电气股份有限公司 | 一种基于sv采样信号的局放监测内同步基准修正方法 |
-
2002
- 2002-08-28 JP JP2002249719A patent/JP2004088662A/ja active Pending
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