JP2004086002A - レンズ付光ファイバ - Google Patents

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Tomohide Tamura
田邑 智秀
Nobuyoshi Takagi
高木 伸欣
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Abstract

【課題】高速PDモジュールに対して現実的な実装構造を提供できるレンズ付きファイバを提供することを目的とする。
【解決手段】光ファイバ先端に形成した先球部の一部に、前記ファイバ光軸に対して傾斜した曲面を設けて反射部を形成したことを特徴とする。また前記傾斜した曲面が球面であることを特徴とする。また前記傾斜した曲面に、金属膜あるいは誘電多層膜からなる反射膜を形成する。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信に使用する光ファイバと発光源、受光源との光結合に用いるレンズ付光ファイバに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光通信システムに使用される送信、受信装置に組み込まれるPDモジュールは図2のような構造が一般的である。光ファイバ11の出射光に対して球レンズ22を前方に配置し、さらにその延長線上にフォトディテクタ13を置き、その後部から電気配線24を出して、下方に折り曲げて電気回路板15と接続している。
【0003】
近年、データ通信の大容量化に伴い、光通信システムの高速化、高密度化が要求されており、PDモジュール等においても高速化のために、受光素子キャパシタンスを低下させ、かつ寄生キャパシタンスを低下させるPDモジュール構造が必要となっている。また高密度化のために電気回路板面と平行方向に光ファイバを配置する等が必要となる。
【0004】
これらの要求を満たすPDモジュール構造を実現するために、図3に示すような第一の光ファイバ11とこの光ファイバ11のコア部と等価で単一な屈折率をもつ同一外径の光導入拡大を目的とする第二のファイバ31を融着接続し、第二のファイバ31に形成した先球部32の一部に光ファイバ11の光軸17に対して傾斜した平面で削除した反射部33を形成し、Al,Cr,Auからなる金属膜あるいは誘電多層膜からなる反射膜を形成したレンズ付光ファイバ30が提案されている(特開平7−270642号公報参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
図2に示す従来のPDモジュールの構造では、受光素子の受光径が小さいため、球レンズ等のレンズ部品を用いて光ファイバからの出射光を受光面に集光させるが、球レンズ22を配置するスペースが必要となり高密度実装が難しくなる。
【0006】
さらに図2に示す従来のPDモジュールの構造では電気配線部24の長さによる寄生キャパシタンスの増大につながり、受信速度が制限される欠点があった。しかし図2に示すような構造のまま電気配線部24の長さを短くするためには、電気回路板上に直接受光素子を配置する構造となり光ファイバを電気回路板と垂直な方向に配置しなければならず高密度実装が難しくなる。
【0007】
また図3に示す従来のレンズ付光ファイバ30を用いたPDモジュールでは上記問題は改善されるが、レンズ径32は光ファイバ径より大きくしなければならず、レンズ径32に依存する集光距離やビームスポットサイズを自由に設計できない問題があった。
【0008】
本発明は、上述した従来の球レンズ22及びレンズ付光ファイバ30における問題点を解決するためのものであり、PDモジュールに対して容易でかつ現実的な実装構造を提供できるレンズ付光ファイバを提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、光ファイバ先端に形成した先球部の一部に、前記ファイバ光軸に対して傾斜した曲面を設けて反射部を形成したことを特徴とする。
【0010】
また、前記傾斜した曲面に金属膜あるいは誘電多層膜からなる反射膜を形成したことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明にかかるレンズ付光ファイバの一実施例である。光ファイバ11の先端には先球部12が形成されており、この先球部12において、その一部を研削、研磨して前記ファイバ光軸17に対する傾斜面を形成した後、熱溶融により傾斜面に傾斜曲面16を形成する。
【0012】
受光素子13との結合では、レンズ付光ファイバ10からの出射ビーム形状は円形のビームスポット形状が良いため、先球部12および傾斜曲面16の形状は球面であることが望ましい。
【0013】
従来のレンズ付光ファイバ30では反射部33が平面のため、レンズ効果がなく、先球部32によるレンズ効果しかもたない。また先球部32は構造的に光ファイバ径より小さいレンズ径は作製できない。一般的なシングルモード光ファイバの場合、先球部32の曲率半径は最小でもR62.5μmとなる。
【0014】
本発明におけるレンズ付光ファイバでは傾斜曲面16で反射された光は傾斜曲面16によるレンズと先球部12の球面によるレンズから構成されるレンズ効果をもたらすことができる。従って例えば先球部12の曲率半径を62.5μm、傾斜曲面16の曲率半径をR100μmとした場合、従来のレンズ付光ファイバ30で実現できないR44μm程度の小さいレンズと同等のレンズ効果をもたらすことができる。
【0015】
先球径の小さいレンズは受光素子13を小さくできることから受光素子キャパシタンスを低下させることができる。したがって図3に示す従来のレンズ付光ファイバ30に比べてPDモジュールのさらなる高速化が可能となる。また焦点距離も短くできることからモジュールの小型化、高密度化が可能となる。先球部12の曲率半径、および傾斜曲面16の曲率半径は、受光素子13の受光面積に依存した任意の組み合わせが可能である。一般的に40GbpsのPDモジュール用の受光素子の受光面積はφ7〜8μm程度であるため、先球部12の曲率半径は62.5〜200μm、傾斜曲面16の曲率半径は80〜200μm程度が望ましい。
【0016】
傾斜曲面16と光ファイバ11の光軸17のなす角度θは、光ファイバ11のコア中心における傾斜曲面16の接平面と光軸17とのなす角度によって定義する。入射光が傾斜曲面16において全反射し光ファイバ側面から出射ためには、屈折率n=1.45のシングルモード光ファイバの場合、傾斜曲面16と光ファイバ11の光軸17とのなす角度θは約48°以下で全反射条件となり、角度θを45°とすることが最適である。なお光ファイバ側面からの出射が可能となる角度θは光ファイバから出射されたビームの出射角度により容易に測定できる。
【0017】
傾斜曲面16はミラー面として反射作用があるが、その表面にさらに高い反射率を有する金属膜あるいは誘電多層膜からなる反射膜を形成してもよい。金属膜はAl,Ag,Cr,Au,Niのように光ファイバに高い密着性を有し、かつ反射率の高い材質が望ましく、膜の厚みは0.05〜1μmで十分な反射効果が得られる。
【0018】
誘電多層膜の膜構成は、使用される光の波長、傾斜曲面の角度によって種々の組成、膜厚が選択でき限定されるものではない。例としてTa/SiO、TiO/SiOの4層構造の組み合わせにより実現できる。またSiAlは、元素の組成比a,b,c,dを変更すること所望の屈折率を得られること、ガラスへの密着性も高いことから、反射膜の材質としてきわめて有用である。
角度θ=45°、Ta/SiOの膜構成の場合、Taの膜厚は約0.43μmの整数倍、SiOの膜厚は約0,77μmの整数倍とする必要がある。
【0019】
傾斜曲面16に金属膜あるいは誘電多層膜からなる反射膜を形成した場合、先に述べた角度θを約48°以上としても光ファイバ側面からの出射は可能となる。傾斜面16と光軸17とのなす角度θは45°に規定することが好ましいが、電気回路面との兼ね合いから多様な角度に設定が可能である。
【0020】
また図3に示すように第一の光ファイバ11とこの光ファイバ11のコア部と等価で単一な屈折率をもつ同一外径の光導入拡大を目的とする第二のファイバ31を融着接続した光ファイバを用いて、本発明によるレンズ付光ファイバを作製することも可能である。
【0021】
このようなレンズ付光ファイバ10の作製方法を説明する。先球部12は、光ファイバ11の先端を熱溶融法により加工する。光ファイバ先端部を熱溶融部中に送り入れることにより、その先端部に送り入れ量と等しい体積を有する半径の先球部12を形成する。熱溶融法による先球部12の作製は、光ファイバ11の送り入れ量の体積と球の体積がほぼ一致することから送り入れ量を設定することで容易に先球径を制御できる。また表面張力を利用して球を形成するため、同芯度の劣化がなく真球度の高い先球形状が作製可能である。
【0022】
傾斜曲面と光ファイバ11の光軸17との角度θは傾斜面と光軸17のなす角度とほぼ一致することから、光ファイバ11の光軸17と研磨盤が45°の角度をもつように光ファイバ11の先端を固定し、先球部12の一部を研削し傾斜面を形成する。研削量は傾斜面が光軸17にかかるように制御する。研削材は一般的な光コネクタ端面の研磨に使用されるダイヤモンド等のラッピングフィルムを用いることで加工できる。
【0023】
その後、光ファイバ11の先端を熱溶融法により再度加工し、傾斜面に曲率半径を設けて傾斜曲面16とする。傾斜曲面16の曲率半径は熱溶融時間、熱量を設定することで制御する。
【0024】
金属膜もしくは誘電多層膜による反射膜を傾斜曲面16につける場合は真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の薄膜技術により作製できる。出射部分となる光ファイバ側面には膜成分をつけないようレジスト等によりマスキング処理を行う。膜形成を行った後、レジスト除去を行う。レジストの材質はアルコール等有機溶剤への可溶性が高いものが望ましく、アルコール等有機溶剤での洗浄によりレジスト除去が容易にできる。
【0025】
【実施例】
以下に実施例を示す。図4の実施例に示すようにレンズ付光ファイバを作成した。熱溶融部はアーク放電の熱を用いる。アーク放電部42に光ファイバ11を放電部41の頭上から放電部に約60μmほど送り入れ、曲率半径R80μmの先球部12を形成する。
【0026】
傾斜面は研磨により光軸17に対して溶融法により45゜の角度をもつよう作製した。その後、同様にアーク放電部42に光ファイバを放電部41の頭上から送り入れ、傾斜面に曲率半径R100μmの傾斜曲面16を作製した。
【0027】
本実施例で作成したレンズ付光ファイバ10からの90゜屈折光線のビーム形状をガウシアンビームプロファイラーで測定したところ、ほぼ円形のビーム光強度分布もつガウシアンビームによる集束光を確認した。焦点距離について本発明におけるレンズ付光ファイバは、R50μmのレンズ付光ファイバと同等となっており、図3に示す従来のレンズ付光ファイバ30において実現できる最も小さいR62.5μmのものより20%程度の短い焦点距離になっていることを確認した。以上より図3に示す従来のレンズ付光ファイバでは実現できないR62.5μm以下の先球径のレンズ付光ファイバを用いたPDモジュール設計が可能となる。
【0028】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、光ファイバ先端に形成した先球部の一部に、前記光ファイバ光軸に対して傾斜した曲面を設けて反射部を形成したことを特徴とすること、また前記傾斜した曲面に、金属膜あるいは誘電多層膜からなる反射膜を形成したことを特徴とすることにより、二次元的な配置による高実装化、および受光素子キャパシタンスの低下、リード線の寄生キャパシタンスの低下により高速PDモジュールが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるレンズ付光ファイバを示す概略図である。
【図2】従来のレンズ付光ファイバを用いたPDモジュールを示す概略図である。
【図3】従来のPDモジュールを示す概略図である。
【図4】本発明のレンズ付光ファイバにおける先球部の作製方法の説明図である。
【符号の説明】
10:レンズ付光ファイバ
11:光ファイバ
12:先球部
13:受光素子
14:電気配線24
15:電気回路
16:傾斜曲面
17:光軸

Claims (3)

  1. 光ファイバ先端に形成した先球部の一部に、前記ファイバ光軸に対して傾斜した曲面を設けて反射部を形成したことを特徴とするレンズ付光ファイバ。
  2. 前記傾斜した曲面が球面であることを特徴とする請求項1記載のレンズ付光ファイバ。
  3. 前記傾斜した曲面に、金属膜あるいは誘電多層膜からなる反射膜を形成したことを特徴とする請求項1または2記載のレンズ付光ファイバ。
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