JP2004083531A - エステル縮合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】四価のハフニウム化合物に、アミド配位子若しくは2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子が配位した錯体、又は、四価のジルコニウム化合物に、アミド配位子若しくは2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子が配位した錯体を縮合触媒として、カルボン酸とアルコール又はチオールを溶媒の存在下に反応させる。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、四価のジルコニウム化合物又は四価のハフニウム化合物のアミド配位子や2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子が配位した錯体を縮合触媒とし、カルボン酸と、アルコール又はチオールを溶媒の存在下に反応させるエステル縮合物の製造方法又はチオエステル縮合物の製造方法や、これらの製造方法に用いる縮合触媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
環境に優しい化学プロセスの開発は現代の最重要課題であり、グリーンケミストリーの観点からも国際社会の認めるところであり(P. T. Anastas and J. C. Wamer, Green Chemistry: Theory and Practice(Oxford University Press, Oxford, 1998)、有機合成の最も基本的かつ重要な反応であるエステル化反応は、グリーンケミストリーの観点からも注目されている(Tetrahedron. 36, 2409, 1980)。エステル化反応については既に膨大な数の報告例があるが(Tetrahedron . 36, 2409, 1980)、基質に対し1当量以上の縮合剤あるいは活性化剤を用いるケースが多く、反応後には大量の副生成物が生じるため煩雑な分離精製操作が必要となる等、グリーンケミストリー及びアトムエフィシェンシーの観点からは本来避けるべき事態が生じている。一方、等モル量のカルボン酸とアルコールから直接、触媒的にエステル化を行うことができれば理想的なプロセスとなる。しかし、大抵の場合、カルボン酸とアルコールのどちらか一方を過剰に用いなければ効率よくエステルを得ることができない(Synthesis. 1978, 929, 1978、Chem. Lett. 1977, 55, 1977、Chem. Lett. 1981, 663, 1981、Synthesis. 1972, 628, 1972、Tetrahedron. Lett. 12, 3453, 1971、Tetrahedron. Lett. 14, 1823, 1973、Bull. Chem. Soc. Jpn. 54, 1276, 1981、Jpn. Patent Appl. 1980, No.55−115570、特開昭52−75684号公報、J. Am. Chem. Soc. 102, 7578, 1980、Tetrahedron. Lett. 28, 3713, 1987、J. Org. Chem. 56, 5307, 1991、Chem. Lett. 1981, 1671, 1981、Bull. Chem. Soc. Jpn. 62, 2353, 1989、Chem. Lett. 1984, 1085, 1984、J. Chem. Soc.,Perkin Trans./1994, 3473, 1994)。
【0003】
従来、重合触媒として、スカンジウム、イットリウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウムの群から選ばれた一種以上の金属化合物と、Ar−O−(Arはアリール基を表す)等の構造を有する化合物からなる群より選ばれる一種以上の化合物とからなるポリエステル重合触媒(特開2000−154241)や、触媒活性が高くて、原料である酸とアルカリをほぼ等モルで使用しても高収率でエステルが合成でき、しかも低温でも高い反応速度が得られ、なおかつ副反応が極めて少ない優れたエステルの製法として、チタン族金属のハライド類、硝酸塩類、カルボン酸塩類、アルコラート類およびアセチルアセトン型錯体からなる群から選ばれるチタン族金属化合物を活性成分の少なくとも一つとして含有するエステル化触媒を用いるカルボン酸とアルコールとからのエステル製造方法(特開平8−71429号公報)が知られている。
【0004】
また、アルコール又はチオールとカルボン酸から、温和な条件下で、効率的にカルボン酸エステル又はカルボン酸チオエステルを製造する方法として、アルコール又はチオール、或いはそのシリル誘導体と、当量もしくは小過剰のカルボン酸又はカルボン酸シリルエステルを反応させ、カルボン酸エステル又はカルボン酸チオエステルを製造する際に、一般式(R6CO)2O(式中、R6は置換基を有していてもよいアリール基を示す)で表されるカルボン酸無水物と触媒量のカチオン性触媒を共存させる方法(特開平5−286894号公報)が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年、ますます複雑な構造を持つ不安定な化合物が医薬品等に用いられており、当量のカルボン酸とアルコール又はチオールから円滑に進行するエステル又はチオエステルの製造方法が医薬品等の合成上望まれている。本発明者らは、等モル量のカルボン酸とアルコールからエステル縮合物を得ることができ、また、カルボン酸と等モル量又は少し過剰のチオールからチオエステル縮合物を得ることができ、グリーンケミストリーの観点から大量合成を必要とする工業的方法として期待することができる縮合触媒として、塩化ハフニウム(IV)、特に塩化ハフニウム(IV)・(THF)2やハフニウム(IV)t−ブドキシドに代表される四価のハフニウム化合物が、極めて優れた活性を備えていることを見い出し、かかる触媒が幅広い基質適用範囲を有することを確認し、四価のハフニウム化合物を触媒とするエステル縮合物の製造方法について既に発明した(特願2000−314712号)。かかる四価のハフニウム化合物は、空気、水等に対する触媒の安定性からしても優れた縮合触媒活性を有するものであるが、本発明者らはある種の四価のジルコニウム化合物も空気、水等に対して安定であって取扱いが容易であり、且つ入手が容易な縮合触媒となり得ることを見い出した。しかしながら、四価のジルコニウム化合物はエステル縮合触媒活性が低い場合があり、この低触媒活性を示す四価のジルコニウム化合物に着目し、エステル化縮合反応における触媒作用についての研究の過程で、触媒活性の低下した四価のジルコニウム化合物が、その収納容器を開封した直後であれば優れた触媒活性を有するものの、経時的に触媒活性が消失していくことを見い出し、この触媒活性の消失が、触媒活性を有する四価のジルコニウム化合物が同時に空気中の水分等によって劣化を受けやすく、経時的にその品質が変化することに起因することを明らかにした。そして、四価のジルコニウム化合物がその触媒活性の低減を抑制し高度に維持するためには、四価のジルコニウム化合物が空気中の水分によって水和物を経由して加水分解され、低触媒活性のテトラヒドロキシジルコニウム等のジルコニウム(IV)水酸化物に変換され、更に、触媒活性を有さない二酸化ジルコニウム(IV)等の酸化物へと変化するのを阻止し得る形態を有することが必要であり、そのために、四価のジルコニウム化合物を予めTHF等の錯体とすることにより、水と四価のジルコニウム化合物との接触を防止し、四価のジルコニウム化合物水和物が加水分解されて生成される水酸化物や、酸化物へと変化するのを抑制することができ、経時的なエステル化縮合反応の触媒活性の低減を抑制できることを確認し、塩化ジルコニウム(IV)・(THF)2錯体等のエステル化又はチオエステル化縮合触媒や、これを使用したエステル縮合物やチオエステル縮合物の製造方法を発明した(特願2002−101668号)。
しかしながら、従来エステル化反応の触媒として用いられていた塩化ジルコニウム(IV)や塩化ハフニウム(IV)等はエステル化縮合反応の進行に伴いエステルの収率の低減が生じることが認められている。
本発明の課題は、エステル化縮合反応の進行に伴って生じるエステルの収率の低減を抑制することができ、エステル化縮合反応において高収率でエステル縮合物を得ることができるエステル縮合物の製造方法や、エステル化縮合反応に伴い生じる収率の低減を抑制し高度に触媒活性を維持することができるエステル化縮合触媒を提供し、また、チオエステル縮合物の製造方法や、チオエステル化縮合触媒を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、エステル化縮合反応やチオエステル化縮合反応の進行に伴うエステルの収率低減について鋭意研究した結果、エステル化縮合反応やチオエステル縮合反応の進行に伴い生成される水の存在によって触媒活性が阻害されることを確認し、反応時において水の存在により触媒活性の低減が生じにくく、保管時においても空気中の水等による変質により触媒活性の失活が生じにくいエステル化又はチオエステル化縮合触媒を見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、四価のハフニウム化合物に、アミド配位子若しくは2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子が配位した錯体、又は、四価のジルコニウム化合物に、アミド配位子若しくは2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子が配位した錯体を縮合触媒として、カルボン酸とアルコールを溶媒の存在下に反応させることを特徴とするエステル縮合物の製造方法に関し、好ましくは、四価のハフニウム化合物又は四価のジルコニウム化合物が、四価のハフニウムのハロゲン化物又は四価のジルコニウムのハロゲン化物であることを特徴とする請求項1記載のエステル縮合物の製造方法(請求項2)や、ハロゲン化物が、塩化物であることを特徴とする請求項2記載のエステル縮合物の製造方法(請求項3)や、四価のハフニウム化合物又は四価のジルコニウム化合物が、四価のハフニウムのアルコキシド化合物又は四価のジルコニウムのアルコキシド化合物であることを特徴とする請求項1記載のエステル縮合物の製造方法(請求項4)や、アルコキシド化合物が、t−ブトキシド化合物であることを特徴とする請求項4記載のエステル縮合物の製造方法(請求項5)や、アミド配位子が、一般式[1]
R1CONR2R3 [1]
(式中、R1は水素原子、アルキル基、アシル基又はアルコキシ基を表し、R2、R3は独立して水素原子、アルキル基、アシル基又はアルコキシカルボニル基を示し、R1〜R3は相互に結合して環を形成してもよい。)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載のエステル縮合物の製造方法(請求項6)や、一般式[1]で表される化合物が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジアセトアミド及びN−アセト−2−ケトオキサゾリジンから選ばれる1又は2以上の化合物であることを特徴とする請求項6記載のエステル縮合物の製造方法(請求項7)や、2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子が、2以上のアルコキシ基を有する炭化水素であることを特徴とする請求項1記載のエステル縮合物の製造方法(請求項8)や、2以上のアルコキシ基を有する炭化水素が、1,2−ジメトキシエタンであることを特徴とする請求項8記載のエステル縮合物の製造方法(請求項9)や、カルボン酸とアルコールとして、多価カルボン酸と多価アルコール、あるいはヒドロキシカルボン酸を用いてポリエステルを合成することを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載のエステル縮合物の製造方法(請求項10)や、溶媒を用いて加熱還流を行い、共沸する水を反応系から除去することを特徴とする請求項1〜10のいずれか記載のエステル縮合物の製造方法(請求項11)や、溶媒として、非極性溶媒又は低極性溶媒を用いることを特徴とする請求項1〜11のいずれか記載のエステル縮合物の製造方法(請求項12)や、非極性溶媒又は低極性溶媒が、トルエン、キシレン、メシチレンから選ばれる1又は2以上の溶媒であることを特徴とする請求項12記載のエステル縮合物の製造方法(請求項13)や、反応が、乾燥不活性ガス雰囲気下で行われることを特徴とする請求項1〜13のいずれか記載のエステル縮合物の製造方法(請求項14)に関する。
【0008】
また、本発明は、四価のハフニウム化合物に、アミド配位子若しくは2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子が配位した錯体、又は、四価のジルコニウム化合物に、アミド配位子若しくは2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子が配位した錯体を縮合触媒として、カルボン酸とチオールを溶媒の存在下に反応させることを特徴とするチオエステル縮合物の製造方法(請求項15)に関し、好ましくは、四価のハフニウム化合物又は四価のジルコニウム化合物が、四価のハフニウムのハロゲン化物又は四価のジルコニウムのハロゲン化物であることを特徴とする請求項15記載のチオエステル縮合物の製造方法(請求項16)や、ハロゲン化物が、塩化物であることを特徴とする請求項16記載のチオエステル縮合物の製造方法(請求項17)や、四価のハフニウム化合物又は四価のジルコニウム化合物が、四価のハフニウムのアルコキシド化合物又は四価のジルコニウムのアルコキシド化合物であることを特徴とする請求項15記載のチオエステル縮合物の製造方法(請求項18)や、アルコキシド化合物が、t−ブトキシド化合物であることを特徴とする請求項18記載のチオエステル縮合物の製造方法(請求項19)や、アミド配位子が、一般式[1]
R1CONR2R3 [1]
(式中、R1は水素原子、アルキル基、アシル基又はアルコキシ基を表し、R2、R3は独立して水素原子、アルキル基、アシル基又はアルコキシカルボニル基を示し、R1〜R3は相互に結合して環を形成してもよい。)で表されることを特徴とする請求項15〜19のいずれか記載のチオエステル縮合物の製造方法(請求項20)や、一般式[1]で表される化合物が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジアセトアミド及びN−アセト−2−ケトオキサゾリジンから選ばれる1又は2以上の化合物であることを特徴とする請求項20記載のチオエステル縮合物の製造方法(請求項21)や、2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子が、2以上のアルコキシ基を有する炭化水素であることを特徴とする請求項15記載のチオエステル縮合物の製造方法(請求項22)や、2以上のアルコキシ基を有する炭化水素が、1,2−ジメトキシエタンであることを特徴とする請求項22記載のチオエステル縮合物の製造方法(請求項23)や、溶媒を用いて加熱還流を行い、共沸する水を反応系から除去することを特徴とする請求項15〜23のいずれか記載のチオエステル縮合物の製造方法(請求項24)や、溶媒として、非極性溶媒又は低極性溶媒を用いることを特徴とする請求項15〜24のいずれか記載のチオエステル縮合物の製造方法(請求項25)や、非極性溶媒又は低極性溶媒が、トルエン、キシレン、メシチレンから選ばれる1又は2以上の溶媒であることを特徴とする請求項25記載のチオエステル縮合物の製造方法(請求項26)や、反応が、乾燥不活性ガス雰囲気下で行われることを特徴とする請求項15〜26のいずれか記載のチオエステル縮合物の製造方法(請求項27)に関する。
【0009】
また、本発明は、四価のハフニウム化合物に、アミド配位子若しくは2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子が配位した錯体、又は、四価のジルコニウム化合物に、アミド配位子若しくは2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子が配位した錯体を有効成分として含有するエステル化又はチオエステル化縮合触媒(請求項28)に関し、好ましくは、四価のハフニウム化合物又は四価のジルコニウム化合物が、四価のハフニウムのハロゲン化物又は四価のジルコニウムのハロゲン化物であることを特徴とする請求項28記載のエステル化又はチオエステル化縮合触媒(請求項29)や、ハロゲン化物が、塩化物であることを特徴とする請求項29記載のエステル化又はチオエステル化縮合触媒(請求項30)や、四価のハフニウム化合物又は四価のジルコニウム化合物が、四価のハフニウムのアルコキシド化合物又は四価のジルコニウムのアルコキシド化合物であることを特徴とする請求項28記載のエステル化又はチオエステル化縮合触媒(請求項31)や、アルコキシド化合物が、t−ブトキシド化合物であることを特徴とする請求項31記載のエステル化又はチオエステル化縮合触媒(請求項32)や、アミド配位子が、一般式[1]
R1CONR2R3 [1]
(式中、R1は水素原子、アルキル基、アシル基又はアルコキシ基を表し、R2、R3は独立して水素原子、アルキル基、アシル基又はアルコキシカルボニル基を示し、R1〜R3は相互に結合して環を形成してもよい。)で表されることを特徴とする請求項28〜32のいずれか記載のエステル化又はチオエステル化縮合触媒(請求項33)や、一般式[1]で表される化合物が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジアセトアミド及びN−アセト−2−ケトオキサゾリジンから選ばれる1又は2以上の化合物であることを特徴とする請求項33記載のエステル化又はチオエステル化縮合触媒(請求項34)や、2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子が、2以上のアルコキシ基を有する炭化水素であることを特徴とする請求項28記載のエステル化又はチオエステル化縮合触媒(請求項35)や、2以上のアルコキシ基を有する炭化水素が、1,2−ジメトキシエタンであることを特徴とする請求項35記載のエステル化又はチオエステル化縮合触媒(請求項36)に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のエステル縮合物の製造方法としては、四価のジルコニウム化合物に、アミド配位子若しくは2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子が配位した錯体、又は、四価のハフニウム化合物に、アミド配位子若しくは2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子が配位した錯体を縮合触媒として、カルボン酸とアルコールを溶媒の存在下に反応させる方法であれば特に制限されるものではない。また、本発明のチオエステル縮合物の製造方法としては、四価のジルコニウム化合物に、アミド配位子若しくは2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子が配位した錯体、又は、四価のハフニウム化合物に、アミド配位子若しくは2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子が配位した錯体を縮合触媒として、カルボン酸とチオールを溶媒の存在下に反応させる方法であれば特に制限されるものではない。
【0011】
本発明のエステル縮合物又はチオエステル縮合物の製造方法に用いられる縮合触媒を構成する四価のジルコニウム化合物としては、具体的には、塩化ジルコニウム(IV)等の四価のジルコニウムのハロゲン化物や、ジルコニウム(IV)アセテート等の四価のジルコニウムのカルボン酸化合物や、硫酸ジルコニウム(IV)等の四価のジルコニウムの硫酸化合物や、ジルコニウム(IV)t−ブトキシド等の四価のジルコニウムのアルコキシド化合物や、ジシクロペンタジエルジルコニウム(IV)ジクロリド等の四価のアルキルジルコニウム(IV)化合物を挙げることができ、更に、上記四価のジルコニウム化合物を複数組み合わせて使用することもできる。これら四価のジルコニウム化合物のうち塩化ジルコニウム(IV)、フッ化ジルコニウム、臭化ジルコニウム(IV)、ヨウ化ジルコニウム(IV)等の四価のジルコニウムのハロゲン化物や、ジルコニウム(IV)t−ブトキシド、ジルコニウム(IV)メトキシド、ジルコニウム(IV)エトキシド、ジルコニウム(IV)プロポキシド、ジルコニウム(IV)イソプロポキシド等の四価のジルコニウムのアルコキシド化合物を好ましい化合物として例示することができる。
【0012】
また、本発明のエステル縮合物又はチオエステル縮合物の製造方法に用いられる縮合触媒を構成する四価のハフニウム化合物としては、具体的には、塩化ハフニウム(IV)等の四価のハフニウムのハロゲン化物や、ハフニウム(IV)アセテート等の四価のハフニウムのカルボン酸化合物や、硫酸ハフニウム(IV)等の四価のハフニウムの硫酸化合物や、ハフニウム(IV)t−ブトキシド等の四価のハフニウムのアルコキシド化合物や、ジシクロペンタジエニルハフニウム(IV)ジクロリド等の四価のアルキルハフニウム(IV)化合物を挙げることができ、更に、上記四価のハフニウム化合物を複数組み合わせて使用することもできる。これら四価のハフニウム化合物のうち塩化ハフニウム(IV)、フッ化ハフニウム、臭化ハフニウム(IV)、ヨウ化ハフニウム(IV)等の四価のハフニウムのハロゲン化物や、ハフニウム(IV)t−ブトキシド、ハフニウム(IV)メトキシド、ハフニウム(IV)エトキシド、ハフニウム(IV)プロポキシド、ハフニウム(IV)イソプロポキシド等の四価のハフニウムのアルコキシド化合物を好ましい化合物として例示することができる。
【0013】
本発明のエステル縮合物又はチオエステル縮合物の製造方法に用いられる縮合触媒を構成する、上記四価のジルコニウム化合物又はハフニウム化合物に配位するアミド配位子としては、一般式[1]で表され、式中、R1は水素原子、アルキル基、アシル基又はアルコキシ基を表し、R2、R3は独立して水素原子、アルキル基、アシル基又はアルコキシカルボニル基を示し、R1〜R3は相互に結合して環を形成してもよい化合物を具体的に挙げることができる。一般式[1]におけるR1で表されるアルキル基としては、特に制限されるものではなく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等を挙げることができ、一般式[1]におけるR1で表されるアシル基としては、特に制限されるものではなく、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基等を挙げることができる。また、一般式[1]におけるR1で表されるアルコキシ基としては、特に制限されるものではなく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチロキシ基等を挙げることができる。また、一般式[1]におけるR2、R3で表されるアルキル基、アシル基は上記一般式[1]におけるR1で表されるアルキル基、アシル基と同様のものを挙げることができ、一般式[1]におけるR2、R3で表されるアルコキシカルボニル基としては、特に制限されるものではなく、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチロキシカルボニル基等を挙げることができる。また、かかるR1〜R3で表される置換基が相互に結合して形成する環としては、特に制限されるものではなく、環の員数も特に制限されるものではなく、N−C=O原子団と共にピロリジン、ピペリジンや、スクシンイミドやグルタルイミド等のイミド等を構成するものであってもよい。
【0014】
かかるアミド配位子としては、具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジアセトアミド、N−エトキシカルボニルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトキシアミド、1,2−シクロヘキサンジカルボキシイミド、N−アセト−2−ケトオキサゾリジン等を例示することができる。かかるアミド配位子が四価のジルコニウム化合物又は四価のハフニウム化合物に配位した錯体は、水の存在によってもエステル縮合反応触媒活性が低減されず、エステル縮合反応の進行に伴う水の存在量が増加しても触媒活性を維持し、高収率でエステル縮合物を得ることができる。
【0015】
また、本発明のエステル縮合物又はチオエステル縮合物の製造方法に用いられる縮合触媒を構成する、上記四価のジルコニウム化合物又はハフニウム化合物に配位する2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子として、特に制限されるものではないが、2以上のアルコキシ基を有する炭化水素であることが好ましい。エーテル配位子における炭化水素としては特に制限されるものではなく、メタン、エタン、n−プロパン、イソプロパン、n−ブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン等の脂環式炭化水素を例示することができ、かかる炭化水素は、後述するアルコキシ基の他、鎖状若しくは脂環式アルキル基やアリール基等の置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のアルキル基や、フェニル基、o−トリル基、2,4−キシル基等を具体的に挙げることができる。
【0016】
上記炭化水素に結合されるアルコキシ基としては、特に制限されるものではなく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチロキシ基等を例示することができ、これらは同一の炭素に結合しても、異なる炭素に結合してもよく、また、2以上のアルコキシ基が同一であっても、異なるものであってもよい。かかる2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子として、具体的に、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等を例示することができる。
【0017】
上記四価のジルコニウム化合物や四価のハフニウム化合物にアミド配位子又はエーテル配位子が配位した錯体を製造するには、トルエン等の溶媒に四価のジルコニウム化合物又は四価のハフニウム化合物と、これらの配位子となるアミド又はエーテルとを添加し、室温で攪拌混合する等の方法によることができ、エステル化又はチオエステル化縮合触媒として、上記方法等により予め調製したものを用いてもよいが、エステル化縮合反応を行なう溶媒中に、直接、四価のジルコニウム化合物又は四価のハフニウム化合物とアミド又はエーテルを添加して触媒となる錯体を生成させ、その後、かかる触媒の存在する溶媒中に、カルボン酸とアルコール若しくはチオールを添加して縮合反応を行なってもよい。アミド又はエーテルの添加量は、四価のジルコニウム化合物又はハフニウム化合物1当量に対して2当量を添加することができる。触媒使用量は特に制限されるものではないが、カルボン酸とアルコールからエステルを合成する場合、0.1〜1.0mol%、好ましくは0.1〜0.4mol%を挙げることができ、また、カルボン酸とチオールからチオエステルを合成する場合、1〜20mol%、好ましくは1〜10mol%を挙げることができる。
【0018】
本発明のエステル縮合物又はチオエステル縮合物の製造方法に用いられるカルボン酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等のモノカルボン酸類や、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、フマール酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテル−4,4′−ジカルボン酸等のジカルボン酸類や、ブタン−1,2,4−トリカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸、ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸等のトリカルボン酸類や、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸等のテトラカルボン酸類を挙げることができる。
【0019】
本発明のエステル縮合物の製造方法に用いられるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール等の脂肪族一価アルコール類、シクロヘキサノール、シクロドデカノール等の脂環式一価アルコール類、ベンジルアルコール等の芳香族一価アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ポリビニルアルコール等の多価アルコールを挙げることができる。
【0020】
本発明のチオエステル縮合物の製造方法に用いられるチオールとしては、例えば、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、ブタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、シクロヘキサンチオール等の脂肪族チオール類、チオフェノール、4−クロロチオフェノール、2−アニリンチオール等の芳香族チオール類、1,2−エタンジチオール、2,2′−オキシジエタンチオール、2,2′−チオジエタンチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,9−ノナンジチオール、ペンタエリスリチオール、1,4−シクロヘキサンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、2,4−トルエンジチオール、α,α′−o−キシリレンジチオール、α,α′−m−キシリレンジチオール、α,α′−p−キシリレンジチオール、1,2,6−ヘキサントリチオール等の多価チオールを挙げることができる。
【0021】
本発明のエステル縮合物の製造方法においては、等モルのカルボン酸とアルコールを用いればよく、かかるカルボン酸とアルコールとして、それぞれ一価のカルボン酸とアルコールを用いると、単量体エステルが得られ、α,ω−脂肪族ジカルボン酸等の多価カルボン酸と、α,ω−脂肪族ジオール等の多価アルコールとを用いると、ポリエステルを合成することができる。また、カルボン酸とアルコールとして、1分子内に水酸基とカルボキシ基とを両末端にそれぞれ有するω−ヒドロキシカルボン酸を用いてもポリエステルを合成することができ、かかるω−ヒドロキシカルボン酸として、ω−ヒドロキシウンデカン酸、ヒドロキシドデカン酸、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸、4−(p−ヒドロキシフェノキシ)安息香酸、3−(p−ヒドロキシフェノキシ)安息香酸、4−(m−ヒドロキシフェノキシ)安息香酸、3−(m−ヒドロキシフェノキシ)安息香酸等を例示することができる。また、本発明のチオエステル縮合物の製造方法においては、カルボン酸と等モル量又は少し過剰のチオールを用いればよく、かかるカルボン酸とチオールとして、それぞれ一価のカルボン酸とチオールを用いると、単量体チオエステルが得られ、上記多価カルボン酸と多価チオールとを用いると、ポリチオエステルを合成することができる。
【0022】
本発明のエステル縮合物又はチオエステル縮合物の製造方法に用いられる溶媒としては特に制限されるものではなく、極性溶媒あるいは極性溶媒と非極性溶媒との混合溶媒、非極性溶媒を例示することができるが、非極性溶媒がエステル化又はチオエステル化反応により生成する水の反応系外への除去の容易さから好ましい。すなわち、トルエン等の非極性溶媒を用いて加熱還流を行い、共沸する水を反応系から簡便に除去することが好ましく、かかる水の除去方法としては、カルシウムヒドリドやモレキュラーシーブス等の公知の脱水剤を用いる方法を例示することができるがこれらに限定されるものではない。上記非極性溶媒としては、トルエン、キシレン、メシチレン、ペンタメチルベンゼン、m−ターフェニル、ベンゼン、エチルベンゼン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、ナフタレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン(テトラリン)を例示することができ、また、極性溶媒としては、アニソール、THF、1,4−ジオキサン等のエーテル類の他、N−メチル−2−ピロリジノン(N−メチル−2−ピロリドン)、N−ブチル−2−ピロリジノン(N−ブチル−2−ピロリドン)、N−エチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−ピロリドン、クレゾール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、フェノール等を例示することができる。また、メタノール等の揮発性のアルコールを基質として用いる場合は、かかるアルコールは溶媒としての作用も合わせ有するので、別途溶媒を用いなくてもよい。
【0023】
本発明のエステル又はチオエステル縮合物の製造方法における縮合反応は、乾燥不活性ガス雰囲気下、例えば、アルゴン又は窒素雰囲気下で行うことが好ましい。アルゴン雰囲気は、アルゴンを流下しながら縮合反応を行うことが好ましく、反応中アルゴン雰囲気とすることで、脱水と脱酸素雰囲気が同時に達成できる。また、一価のカルボン酸と一価のアルコールとを縮合する縮合反応や、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールとを重縮合する重縮合反応等のエステル縮合反応や、一価のカルボン酸と一価のチオールとを縮合する縮合反応や、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価チオールとを重縮合する重縮合反応等のチオエステル縮合反応においては、加熱還流下100〜200℃、特に120〜160℃で1〜24時間反応を行うことが好ましく、他方、芳香族カルボン酸と芳香族アルコール又は芳香族チオールとを縮合する縮合反応や、重縮合する重縮合反応においては、加熱還流下120〜250℃、特に150〜200℃で24〜72時間反応を行うことが好ましい。これらの縮合反応や重縮合反応によって得られる単量体エステルやポリエステル、又は単量体チオエステルやポリチオエステルの精製は、等モルのカルボン酸とアルコール、又はカルボン酸と少し過剰のチオールを用い、副反応が生じていないことから、従来法に比してその精製は公知の方法により非常に容易に行うことができる。
【0024】
本発明のエステル又はチオエステル化縮合触媒は、四価のハフニウム化合物に、アミド配位子若しくは2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子が配位した錯体、又は、四価のジルコニウム化合物に、アミド配位子若しくは2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子が配位した錯体を有効成分として含有し、水の存在に対して極めて安定な触媒活性を有する。かかるアミド配位子やエーテル配位子は四価のハフニウム化合物や四価のジルコニウム化合物の金属原子に、水に優先して配位し、かかるアミド配位子やエーテル配位子が配位したハフニウム(IV)錯体やジルコニウム(IV)錯体は、水が存在してもハフニウム(IV)化合物やジルコニウム(IV)化合物が水和物となることを抑制するため、水和物の加水分解により水酸化物を経由して、エステル化やチオエステル化触媒活性を有しない酸化物へと変化するのを抑制することができ、水に対して顕著な安定性を有する。このため、保管中に空気中の水分を吸収することに起因する、エステル化縮合反応やチオエステル化縮合反応の触媒活性の失活を抑制することができ、また、エステル化縮合反応やチオエステル化縮合反応中に生成される水に起因する触媒活性の失活を抑制することができる。
【0025】
【実施例】
以下に、実施例を挙げてこの発明を更に具体的に説明するが、この発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1[水の存在下におけるハフニウム触媒活性の評価]
塩化ハフニウム(IV)(HfCl4)3mol%とN,N−ジメチルホルムアミド6mol%をトルエンに添加し、室温で20分間攪拌し、塩化ハフニウム(IV)のN,N−ジメチルホルムアミド錯体(HfCl4・(DMF)2)を調製した。HfCl4・(DMF)2に対して表1に示す割合で水を添加し、室温で20分間攪拌した。得られた水を添加したHfCl4・(DMF)2と、4−フェニルブタン酸4.8mmolと、シクロドデカノール4.8mmolをトルエン溶媒2Mに溶かし、アルゴン雰囲気下120℃での加熱還流による共沸脱水を5時間行った。反応によって生成する水は反応フラスコ上部に連結したDean−Stark装置を利用して取り除いた。反応後、混合溶液を直接シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(溶離液 ヘキサン:酢酸エチル=4:1〜8:1)、減圧下で乾燥させ、1HNMRで検出し、4−フェニルブタン酸シクロドデシルを得た。得られた生成物のエステル変換率を求めた。結果を表1に示す。比較例として塩化ハフニウム(IV)(HfCl4)、塩化ハフニウム(IV)のテトラヒドロフラン錯体(HfCl4・(THF)2)について、同様に水を添加し反応を行ない、エステル変換率を求めた。結果を表1に示す。
結果からも明らかなように、塩化ハフニウム(IV)のN,N−ジメチルホルムアミド錯体(HfCl4・(DMF)2)では水の存在下においてもエステル変換率の低下が抑制されることがわかった。
【0026】
【表1】
【0027】
実施例2[水の存在下におけるジルコニウム触媒活性の評価]
実施例1の塩化ハフニウム(IV)(HfCl4)の代わりに塩化ジルコニウム(IV)(ZrCl4)を用いた他は、実施例1と同様にして反応を行ない、4−フェニルブタン酸シクロドデシルを得た。得られた生成物のエステル変換率を求めた。結果を表2に示す。
比較例として塩化ジルコニウム(IV)(ZrCl4)、塩化ジルコニウム(IV)のテトラヒドロフラン錯体(ZrCl4・(THF)2)について、同様に水を添加し反応を行ない、同様にエステル変換率を求めた。結果を表2に示す。
結果からも明らかなように、塩化ジルコニウム(IV)のN,N−ジメチルホルムアミド錯体(ZrCl4・(DMF)2)では水の存在下においてもエステル変換率の低下が抑制されることがわかった。
【0028】
【表2】
【0029】
実施例3[保管時における水等の存在による触媒活性の評価]
空気や水に対する安定性を検出するため、湿度50%、温度20℃の空気中にそれぞれ20時間、10時間放置した後、実施例1と同様にして塩化ハフニウム(IV)のN,N−ジメチルホルムアミド錯体(HfCl4・(DMF)2)を調製した。得られた塩化ハフニウム(IV)のN,N−ジメチルホルムアミド錯体(HfCl4・(DMF)2)3mol%存在下、4−フェニルブタン酸とシクロヘキサノールをトルエン2Mに溶かし、120℃で加熱還流による共沸脱水を3時間行った他は実施例1と同様にして、4−フェニルブタン酸シクロヘキシルを得た。得られた生成物のエステル変換率を求めた。結果を表3に示す。
比較例として、塩化ハフニウム(IV)(HfCl4)、塩化ハフニウム(IV)のテトラヒドロフラン錯体(HfCl4・(THF)2)それぞれについて、同様に空気中に放置した後反応を行ない、同様にエステル変換率を求めた。結果を表3に示す。
結果からも明らかなように、空気に晒しても塩化ハフニウム(IV)のN,N−ジメチルホルムアミド錯体(HfCl4・(DMF)2)は塩化ハフニウム(IV)(HfCl4)や塩化ハフニウム(IV)のテトラヒドロフラン錯体(HfCl4・(THF)2)よりエステル収率の低下は穏やかであった。このことから塩化ハフニウム(IV)のN,N−ジメチルホルムアミド錯体(HfCl4・(DMF)2)は取扱いが容易であることがわかった。
【0030】
【表3】
【0031】
実施例4[最適のアミド配位子を探すためのスクリーニング]
塩化ハフニウム(IV)の各種アミド配位子を有するアミド錯体(HfCl4・L2)の触媒活性について調べてみた。塩化ハフニウム(IV)(HfCl4)3mol%と、表4に示す各アミドとをトルエンに添加し、室温で20分間攪拌し、塩化ハフニウム(IV)のアミド錯体(HfCl4・L2)を調製した。尚、N,N−ジメチルホルムアミド((CH3)2NCHO)(DMF))、N,N−ジメチルアセトアミド((CH3)2NCOCH3))、N,N−ジアセトアミド((CH3CO)2NH))については6mol%、N−アセト−2−ケトオキサゾリジンについて3mol%を添加した。
得られた各アミド錯体(HfCl4・L2)存在下、実施例3と同様に4−フェニルブタン酸シクロヘキルを得た。得られた生成物のエステル変換率を求めた。結果を表4に示す。
結果からも明らかなように、塩化ハフニウム(IV)のアミド錯体はエステル化縮合反応の触媒活性を有することが確認できた。特に、塩化ハフニウム(IV)のN,N−ジメチルホルムアミド((CH3)2NCHO)(DMF))錯体はよい触媒活性を示すことがわかった。
【0032】
【表4】
【0033】
実施例5[チオエステル化反応における触媒活性の評価]
塩化ジルコニウム(IV)のアミド錯体について、チオエステル化反応の触媒活性を調べた。実施例2と同様にして得た塩化ジルコニウム(IV)のN,N−ジメチルホルムアミド((CH3)2NCHO)(DMF))錯体5mol%と、表5に示すカルボン酸10mmolとチオール12mmolとをトルエン2mLに添加し、120℃で加熱還流による共沸脱水を17時間行った。反応によって生成する水は反応フラスコ上部に連結したDean−Stark装置を利用して取り除いた。反応後、混合溶液を直接シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(溶離液 ヘキサン:酢酸エチル=4:1〜8:1)、減圧下で乾燥させ、1HNMRで検出し、チオエステルを得た。得られた生成物のチオエステル変換率を求めた。結果を表5に示す。
結果からも明らかなように、塩化ジルコニウム(IV)のN,N−ジメチルホルムアミド((CH3)2NCHO)(DMF))錯体はチオエステル化縮合反応の触媒活性を有することが確認できた。
【0034】
【表5】
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、水に対して極めて安定であり、エステル縮合反応やチオエステル縮合反応の進行に伴い生成される水の存在によっても触媒活性の低減が抑制され、また、反応時ばかりでなく保管時においても空気中の水等による変質により触媒活性の失活が生じにくいエステル化又はチオエステル化の縮合触媒を用いるため、高収率でエステル縮合物又はチオエステル縮合物を得ることができ、使用する触媒量も少量でよく、且つ、反応副生成物の生成が抑制され、生成物のエステル縮合物又はチオエステル縮合物の分離精製操作が容易であり、大量スケールの反応に特に適しており、エステルやチオエステル等を安定して供給することができ、グリーンケミストリーに貢献できる。
Claims (36)
- 四価のハフニウム化合物に、アミド配位子若しくは2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子が配位した錯体、又は、四価のジルコニウム化合物に、アミド配位子若しくは2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子が配位した錯体を縮合触媒として、カルボン酸とアルコールを溶媒の存在下に反応させることを特徴とするエステル縮合物の製造方法。
- 四価のハフニウム化合物又は四価のジルコニウム化合物が、四価のハフニウムのハロゲン化物又は四価のジルコニウムのハロゲン化物であることを特徴とする請求項1記載のエステル縮合物の製造方法。
- ハロゲン化物が、塩化物であることを特徴とする請求項2記載のエステル縮合物の製造方法。
- 四価のハフニウム化合物又は四価のジルコニウム化合物が、四価のハフニウムのアルコキシド化合物又は四価のジルコニウムのアルコキシド化合物であることを特徴とする請求項1記載のエステル縮合物の製造方法。
- アルコキシド化合物が、t−ブトキシド化合物であることを特徴とする請求項4記載のエステル縮合物の製造方法。
- アミド配位子が、一般式[1]
R1CONR2R3 [1]
(式中、R1は水素原子、アルキル基、アシル基又はアルコキシ基を表し、R2、R3は独立して水素原子、アルキル基、アシル基又はアルコキシカルボニル基を示し、R1〜R3は相互に結合して環を形成してもよい。)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載のエステル縮合物の製造方法。 - 一般式[1]で表される化合物が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジアセトアミド及びN−アセト−2−ケトオキサゾリジンから選ばれる1又は2以上の化合物であることを特徴とする請求項6記載のエステル縮合物の製造方法。
- 2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子が、2以上のアルコキシ基を有する炭化水素であることを特徴とする請求項1記載のエステル縮合物の製造方法。
- 2以上のアルコキシ基を有する炭化水素が、1,2−ジメトキシエタンであることを特徴とする請求項8記載のエステル縮合物の製造方法。
- カルボン酸とアルコールとして、多価カルボン酸と多価アルコール、あるいはヒドロキシカルボン酸を用いてポリエステルを合成することを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載のエステル縮合物の製造方法。
- 溶媒を用いて加熱還流を行い、共沸する水を反応系から除去することを特徴とする請求項1〜10のいずれか記載のエステル縮合物の製造方法。
- 溶媒として、非極性溶媒又は低極性溶媒を用いることを特徴とする請求項1〜11のいずれか記載のエステル縮合物の製造方法。
- 非極性溶媒又は低極性溶媒が、トルエン、キシレン、メシチレンから選ばれる1又は2以上の溶媒であることを特徴とする請求項12記載のエステル縮合物の製造方法。
- 反応が、乾燥不活性ガス雰囲気下で行われることを特徴とする請求項1〜13のいずれか記載のエステル縮合物の製造方法。
- 四価のハフニウム化合物に、アミド配位子若しくは2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子が配位した錯体、又は、四価のジルコニウム化合物に、アミド配位子若しくは2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子が配位した錯体を縮合触媒として、カルボン酸とチオールを溶媒の存在下に反応させることを特徴とするチオエステル縮合物の製造方法。
- 四価のハフニウム化合物又は四価のジルコニウム化合物が、四価のハフニウムのハロゲン化物又は四価のジルコニウムのハロゲン化物であることを特徴とする請求項15記載のチオエステル縮合物の製造方法。
- ハロゲン化物が、塩化物であることを特徴とする請求項16記載のチオエステル縮合物の製造方法。
- 四価のハフニウム化合物又は四価のジルコニウム化合物が、四価のハフニウムのアルコキシド化合物又は四価のジルコニウムのアルコキシド化合物であることを特徴とする請求項15記載のチオエステル縮合物の製造方法。
- アルコキシド化合物が、t−ブトキシド化合物であることを特徴とする請求項18記載のチオエステル縮合物の製造方法。
- アミド配位子が、一般式[1]
R1CONR2R3 [1]
(式中、R1は水素原子、アルキル基、アシル基又はアルコキシ基を表し、R2、R3は独立して水素原子、アルキル基、アシル基又はアルコキシカルボニル基を示し、R1〜R3は相互に結合して環を形成してもよい。)で表されることを特徴とする請求項15〜19のいずれか記載のチオエステル縮合物の製造方法。 - 一般式[1]で表される化合物が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジアセトアミド及びN−アセト−2−ケトオキサゾリジンから選ばれる1又は2以上の化合物であることを特徴とする請求項20記載のチオエステル縮合物の製造方法。
- 2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子が、2以上のアルコキシ基を有する炭化水素であることを特徴とする請求項15記載のチオエステル縮合物の製造方法。
- 2以上のアルコキシ基を有する炭化水素が、1,2−ジメトキシエタンであることを特徴とする請求項22記載のチオエステル縮合物の製造方法。
- 溶媒を用いて加熱還流を行い、共沸する水を反応系から除去することを特徴とする請求項15〜23のいずれか記載のチオエステル縮合物の製造方法。
- 溶媒として、非極性溶媒又は低極性溶媒を用いることを特徴とする請求項15〜24のいずれか記載のチオエステル縮合物の製造方法。
- 非極性溶媒又は低極性溶媒が、トルエン、キシレン、メシチレンから選ばれる1又は2以上の溶媒であることを特徴とする請求項25記載のチオエステル縮合物の製造方法。
- 反応が、乾燥不活性ガス雰囲気下で行われることを特徴とする請求項15〜26のいずれか記載のチオエステル縮合物の製造方法。
- 四価のハフニウム化合物に、アミド配位子若しくは2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子が配位した錯体、又は、四価のジルコニウム化合物に、アミド配位子若しくは2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子が配位した錯体を有効成分として含有するエステル化又はチオエステル化縮合触媒。
- 四価のハフニウム化合物又は四価のジルコニウム化合物が、四価のハフニウムのハロゲン化物又は四価のジルコニウムのハロゲン化物であることを特徴とする請求項28記載のエステル化又はチオエステル化縮合触媒。
- ハロゲン化物が、塩化物であることを特徴とする請求項29記載のエステル化又はチオエステル化縮合触媒。
- 四価のハフニウム化合物又は四価のジルコニウム化合物が、四価のハフニウムのアルコキシド化合物又は四価のジルコニウムのアルコキシド化合物であることを特徴とする請求項28記載のエステル化又はチオエステル化縮合触媒。
- アルコキシド化合物が、t−ブトキシド化合物であることを特徴とする請求項31記載のエステル化又はチオエステル化縮合触媒。
- アミド配位子が、一般式[1]
R1CONR2R3 [1]
(式中、R1は水素原子、アルキル基、アシル基又はアルコキシ基を表し、R2、R3は独立して水素原子、アルキル基、アシル基又はアルコキシカルボニル基を示し、R1〜R3は相互に結合して環を形成してもよい。)で表されることを特徴とする請求項28〜32のいずれか記載のエステル化又はチオエステル化縮合触媒。 - 一般式[1]で表される化合物が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジアセトアミド及びN−アセト−2−ケトオキサゾリジンから選ばれる1又は2以上の化合物であることを特徴とする請求項33記載のエステル化又はチオエステル化縮合触媒。
- 2以上のエーテル酸素原子を有するエーテル配位子が、2以上のアルコキシ基を有する炭化水素であることを特徴とする請求項28記載のエステル化又はチオエステル化縮合触媒。
- 2以上のアルコキシ基を有する炭化水素が、1,2−ジメトキシエタンであることを特徴とする請求項35記載のエステル化又はチオエステル化縮合触媒。
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