JP2004083343A - β−FeSi2膜の製造方法 - Google Patents

β−FeSi2膜の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Si基板上に結晶性の高いβ−FeSi膜を形成する。
【解決手段】この発明の方法は、Si基板を加熱クリーニングするクリーニング工程と、β−FeSiからなる初期層を第1の温度でSi基板上に形成する初期層形成工程と、初期層を第1の温度より高い第2の温度で成長させる成長工程とを備える。第1の温度は、例えば440〜520℃である。第2の温度は、例えば700〜760℃である。比較的低い温度で初期層を形成してから、それをより高温で成長させると、結晶性の高いβ−FeSi膜を得ることができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、β−FeSi膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、β−FeSiが注目されている。β−FeSiは、資源的に豊富であり、無害で化学的に安定な半導体である。β−FeSiは、禁止帯幅が約0.85eVの直接遷移型半導体である。β−FeSiの製造方法として、以下のような方法が知られている。
【0003】
特開平7−130979号公報には、Si(111)基板上にβ−FeSi膜をイオンビームスパッタリング法により成長させる方法が開示されている。また、特開平11−284210号公報には、基板上にアモルファスSi膜をスパッタ法により堆積させた後、Feイオンをイオン注入してβ−FeSi膜を形成する方法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の方法によって製造されるβ−FeSi膜の多くは多結晶性である。このため、より高い結晶性を有するβ−FeSi膜が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、Si基板上に結晶性の高いβ−FeSi膜を形成することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のβ−FeSi膜の製造は、Si基板を加熱クリーニングするクリーニング工程を行った後、β−FeSiからなる初期層を第1の温度でSi基板上に形成する初期層形成工程を行う。続いて、初期層を第1の温度より高い第2の温度で成長させる成長工程を行う。
【0007】
本製造方法は、比較的低い温度で初期層を形成してから、この初期層をより高温で成長させる。これにより、β−FeSi膜の結晶性を高めることができる。
【0008】
成長工程の後に、成長させたβ−FeSi膜を第2の温度よりも高い第3の温度でアニーリングすると、結晶性をさらに高めることができる。
【0009】
p型のβ−FeSi膜を成長させた後、この膜を880〜930℃の温度でアニールすると、β−FeSi膜の導電型をn型へ変換することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0011】
(第1実施形態)
本発明の方法は、Si基板上にβ−FeSi膜を形成する。まず使用するSi基板を準備する。本実施形態では、浮遊帯域(FZ)法またはCzochraski(CZ)法により製造されたp型のSi(111)基板(面方位が(111)の基板)を使用する。基板のサイズは、2インチである。
【0012】
次に、Si基板を昇温して、この基板の加熱クリーニングを行う。このクリーニング工程では、2×10−7Torrバックグラウンド圧力の下で基板を850℃まで昇温し、その温度を30分間維持する。
【0013】
続いて、クリーニングした基板上に、β−FeSiの薄い初期層を形成する。初期層の形成には、高真空スッパタリング装置、具体的にはロードロック装置を備えるRFマグネトロンスパッタリング装置を用いる。公知のRFマグネトロンスパッタリング装置を用いることができる。RFマグネトロンスパッタリング装置は、低温かつ高速でのβ−FeSi膜の形成が可能である。
【0014】
440〜520℃、好ましくは480〜520℃という比較的低い温度で99.99%のFeターゲットをスパッタリングして、Si基板上にβ−FeSiの初期層を成膜する。この初期層の厚さは、20〜60nmである。なお、初期層の形成中は、アルゴン圧を3×10−3Torrに制御する。
【0015】
次に、初期層が形成された基板を、RFマグネトロンスパッタリング装置内で700〜760℃まで昇温し、35nm/hourの速度でβ−FeSi膜を成長させる。得られたβ−FeSi膜は、ほぼ平坦な表面を有している。その導電型は、p型である。上記の条件では、250nmまでの厚さにβ−FeSi膜を成長させることができる。β−FeSi膜の厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた断面の観察によって測定する。
【0016】
図1に、この実施形態の方法によってSi基板上に成長させたβ−FeSi膜のX線回折解析の結果を示す。このX線回折解析は、4結晶回折計を用いて行った。測定したβ−FeSi膜は、450℃の温度で35nmの厚さに形成した初期層を250nmの厚さまで成長させたものである。成長時の基板温度は、700〜760℃である。使用する基板は、浮遊帯域(FZ)法により製造されたSi(111)基板である。
【0017】
図1に示されるように、β−FeSi膜については、広範囲の回折角にわたって一つのピークしか現れていない。すなわち、基板信号の隣に、β−FeSi(220)または(202)のピークが検出された。β−FeSiピークのロッキングカーブ(ωスキャン)は、15arcminの半値幅(FWHM)を有している。これは、β−FeSiピークが極めて狭いことを示す。このように、本実施形態の方法により製造されたβ−FeSi膜は、高い結晶性を有している。
【0018】
図1に示されるように、このβ−FeSi膜は、高い(110)または(101)配向性を有している。その成長面の少なくとも一部(例えば、50%)は、Si(111)に平行な(110)である。本発明者らは、図1のサンプルについて、面内エピタキシャル配列(in−plana epitaxial arrangements)および時間分解フォトルミネッセンスを調べた。その結果、β−FeSiの〔001〕方向(〔010〕ではなく)は、Si基板の〔110〕方向と平行であった。これは、成長方向の(110)配向性を強く支持するものである。また、5Kの温度で20〜30nsの寿命が観測された。77Kの温度において、寿命に大きな変化は見られなかった。
【0019】
図2に、得られたβ−FeSi膜の室温での光子エネルギーと吸収係数との関係を示す。測定したサンプルは、図1と同じである。図2において、破線で示される直線は、直接遷移が可能なことを示している。この直線は、エネルギー軸(横軸)との交差点において0.82eVのバンドギャップを与える。
【0020】
連続した高配向性のβ−FeSiは、加熱クリーニングの直後に初期層を形成せずに、Si基板上に直接成長させることもできる。しかし、X線回折解析の結果、初期層を形成しない場合のβ−FeSiピークのωスキャン半値幅は、初期層を形成した場合と比べ30%以上広い。したがって、初期層を形成した方が、より結晶性の高いβ−FeSi膜が得られる。
【0021】
(第2実施形態)
以下では、この発明の第2の実施形態について説明する。本発明者らは、膜の結晶性について鋭意検討した結果、上述の成長工程に続いて、790〜850℃の温度でβ−FeSi膜をアニールすると、さらに高い結晶性が得られることを見出した。そこで、この実施形態では、第1実施形態の製造方法を実施した後、β−FeSi膜に熱アニーリングを施す。
【0022】
この熱アニーリングでは、β−FeSi膜が形成されたSi基板を、800℃の窒素雰囲気に20時間さらす。この熱アニーリングは、石英管の中で行う。アニールされたβ−FeSi膜の導電型は、p型のままであった。
【0023】
本発明者らは、FZ−Si(111)上に形成したアニーリング済みのβ−FeSi膜から強いフォトルミネッセンスを観測した。図3は、800℃の温度でアニールしたβ−FeSi膜のフォトルミネッセンススペクトルを示す。このフォトルミネッセンスは、532nmのアルゴンレーザ光を約4mWのパワーでβ−FeSi膜に照射することにより励起したものである。発光の検出には、液体窒素で冷却された光電子増倍管(浜松ホトニクス(株)製NIR PMTR5509−72)を用いた。なお、測定したサンプルは、図1および図2と同じサンプルを上記の方法によってアニールしたものである。
【0024】
アニールされていないβ−FeSi膜のフォトルミネッセンスは検出が難しいのに比べて、図3に示されるように、アニールされたβ−FeSi膜からは、フォトルミネッセンスがはっきりと観測できる。これは、アニーリングによって結晶性が向上したことを示す。77Kの温度での強いフォトルミネッセンスに加え、室温(300K)でもフォトルミネッセンスが観測された。フォトルミネッセンスのピークは、温度が77Kから300Kになると、0.794eV(1562nm)から0.782eV(1585nm)へレッドシフトする。また、ピーク強度は、温度が77Kから300Kになると、20分の1未満に減少する。
【0025】
これに対し、Si基板中に埋め込まれたβ−FeSiからのフォトルミネッセンスは、熱により大きく減衰することが報告されている。具体的には、温度が77Kから200Kになると、フォトルミネッセンスの強度が約50〜100分の1になったとの報告がある。
【0026】
CZ−Si(111)基板上に成長させたβ−FeSi膜からも、アニールした後により強いフォトルミネッセンスが観測された。図4に、800℃の温度でアニールしたβ−FeSi膜のフォトルミネッセンススペクトルを示す。なお、この基板は、p型のCZ−Siである。この基板は、3000Ω・cmを超える抵抗値を有している。図4において、初期層の厚さはそれぞれ、Aが0nm、Bが20nm、Cが60nmである。成長工程後の膜厚はそれぞれ、Aが100nm、Bが120nm、Cが160nmである。
【0027】
CZ−Siに埋め込まれたβ−FeSi球からは、高い酸素濃度のためフォトルミネッセンスはほとんど観測されなかったとの報告がある。これに対し、本実施形態のβ−FeSi膜では、光子によって励起されたキャリアがSiマトリックスから受ける影響が少ない。これは、β−FeSi膜がSi基板の上に位置しているからである。
【0028】
本実施形態でアニールされるβ−FeSi膜は、上述の成長工程で一定の面方位へ成長した結晶性の高い膜である。この膜をアニールすることにより、低温時だけでなく室温でもフォトルミネッセンスを観測できる。さらに、低温から室温に変わっても従来のようなフォトルミネッセンスの大きな減衰は見られない。これらのことを勘案すると、アニールによってβ−FeSi膜の結晶性が向上すると推測される。
【0029】
上述のように、本実施形態でアニールされるβ−FeSi膜は、p型である。そのホール濃度は、室温で2×1018cm−3であり、そのホール移動度は、室温で20cm/V・sであった。このβ−FeSi膜を800℃でアニールした後では、そのホール濃度は、室温で3〜7×1016cm−3に減少し、その移動度は、室温で100cm/V・sに増加した。なお、ホール測定は、0.32Tの磁場でVan der Pauw法を用いて行った。このとき、In−Zn5%電極をβ−FeSi膜に付着した。また、サンプルの製造には、3000Ω・cmを超える抵抗値を有するp型CZ−Si基板を使用した。
【0030】
(第3実施形態)
以下では、この発明の第3の実施形態について説明する。本発明者らは、上述の成長工程に続いて880〜930℃の高温でβ−FeSi膜をアニールすると、結晶性が向上すると共に、β−FeSi膜の導電型がp型からn型に変化することを見出した。そこで、この実施形態では第1実施形態の製造方法を実施した後、上記の温度でβ−FeSi膜に熱アニーリングを施す。
【0031】
この熱アニーリングでは、β−FeSi膜が形成されたSi基板を、880〜930℃の窒素雰囲気に20時間さらす。この熱アニーリングは、石英管の中で行う。
【0032】
図5は、本実施形態の方法により、890℃でアニールしたβ−FeSi膜のキャリア濃度と移動度とを示す。図5には、初期層を形成せずにβ−FeSi膜を成長させ、その後890℃の温度でアニールしたサンプルも示されている。図5の「as−Grown」は、上述の成長工程によって形成されたβ−FeSi膜を示し、「annealed」は、890℃アニーリングを施されたβ−FeSi膜を示している。図5において、実線はキャリア濃度を示し、破線は移動度を示している。
【0033】
図5に示されるように、890℃アニーリングによって、キャリア濃度が低下し、移動度が上昇した。具体的には、3〜10×1016cm−3の電子濃度と最大で230cm/V・sの移動度が得られた。これは、成長工程によって形成されたp型のβ−FeSi膜が890℃アニーリングによってn型に変化したことを意味する。
【0034】
このように、890℃アニーリングによってβ−FeSi膜の導電型がp型からn型に変化する。そのメカニズムは現在のところ明らかではない。しかし、導電型の変化は、890℃アニール済みβ−FeSi/p−Siヘテロ構造からのダイオード型I−V曲線および光感度の測定からも確かめられた。
【0035】
なお、図5から明らかなように、初期層を有するアニール済みサンプルと初期層を有しないアニール済みサンプルとの間で、移動度に大きな違いが現れている。これは、初期層を有する膜中のキャリアが、β−FeSi/Si境界からの散乱をあまり受けていないことを示唆している。したがって、初期層を形成することで、890℃アニーリングによる移動度の上昇量を高めることができる。
【0036】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0037】
上記実施形態では、基板上にβ−FeSi膜を製造するための高真空スパッタリング装置としてRFマグネトロンスパッタリング装置を使用する。しかし、他の方式によるマグネトロンスパッタリング装置を使用することもできる。ただし、RFマグネトロンスパッタリング堆積法は、連続的な高配向性のβ−FeSi膜をSi(111)基板上に設けるために好適に使用できる。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、Si基板上に高い結晶性を有するβ−FeSi膜を製造することができる。特に、比較的低い温度で初期層を形成してから、それをより高温で成長させることによりβ−FeSi膜の結晶性を高めることができる。また、成長させたβ−FeSi膜をより高温でアニールすると、結晶性をさらに高めることができる。また、p型のβ−FeSi膜をより高い880〜930℃の温度でアニールすると、β−FeSi膜の導電型をn型へ変換することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の方法により製造されたβ−FeSi膜のX線回折解析の結果を示すグラフである。
【図2】第1実施形態の方法により製造されたβ−FeSi膜の光子エネルギーと吸収係数との関係を示すグラフである。
【図3】第2実施形態の方法により製造されたβ−FeSi膜のフォトルミネッセンススペクトルを示すグラフである。
【図4】第2実施形態の方法により製造されたβ−FeSi膜のフォトルミネッセンススペクトルを示すグラフである。
【図5】第3実施形態の方法により製造されたβ−FeSi膜のキャリア濃度と移動度の変化を示すグラフである。

Claims (10)

  1. Si基板を加熱クリーニングするクリーニング工程と、
    β−FeSiからなる初期層を第1の温度で前記Si基板上に形成する初期層形成工程と、
    前記初期層を前記第1の温度より高い第2の温度で成長させる成長工程と
    を備えるβ−FeSi膜の製造方法。
  2. 前記第1の温度は、440〜520℃である請求項1に記載のβ−FeSi膜の製造方法。
  3. 前記第2の温度は、700〜760℃である請求項1に記載のβ−FeSi膜の製造方法。
  4. 前記Si基板の面方位は、(111)である請求項1に記載のβ−FeSi膜の製造方法。
  5. 前記成長工程の後に、前記第2の温度よりも高い第3の温度で前記β−FeSi膜をアニールする工程をさらに備える
    請求項1に記載のβ−FeSi膜の製造方法。
  6. 前記第3の温度は、790〜850℃である請求項5に記載のβ−FeSi膜の製造方法。
  7. 前記第3の温度は、880〜930℃である請求項5に記載のβ−FeSi膜の製造方法。
  8. 前記成長工程は、p型のβ−FeSi膜を成長させ、
    前記β−FeSi膜をアニールする工程は、前記p型のβ−FeSi膜をn型に変える
    請求項5に記載のβ−FeSi膜の製造方法。
  9. 前記初期層形成工程は、RFマグネトロンスパッタリング法により前記β−FeSi膜を形成する
    請求項1または2に記載のβ−FeSi膜の製造方法。
  10. 前記成長工程は、RFマグネトロンスパッタリング法により前記β−FeSi膜を成長させる請求項1または3に記載のβ−FeSi膜の製造方法。
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