JP2004083135A - ガソリンバリア性に優れた燃料容器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱可塑性樹脂により構成される燃料容器の内側あるいは外側の少なくとも一方に50〜100%の面積率で皮膜層が形成された燃料容器であって、該皮膜層がエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤を主成分とするエポキシ樹脂組成物の硬化により形成され、かつ該皮膜層の23℃、相対湿度60%におけるガソリン透過係数が特定値以下であることを特徴とする燃料容器。
【選択図】 無
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車燃料に対する透過防止性能(ガソリンバリア性)、耐熱性、耐衝撃性および経済性に優れた燃料容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車用に代表される燃料容器において、軽量化、防錆性、易成形加工性、リサイクル性などの点から、金属製から熱可塑性樹脂製の燃料容器への実用化が積極的に進められている。燃料容器を自動車等に搭載する場合には、容器の耐熱性、耐水性および耐衝撃性などの各種性能が要求されることから、可塑性樹脂製燃料タンクとしては、ポリエチレン製単層型のものが普及しているが、比較的高いガソリン透過性を有するため、燃料容器本体からガソリン成分が透過、揮発するという問題があった。そこで、ガソリンバリア性に優れる容器としてポリエチレンとエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)の多層タンクが提案され(例えば、特許文献1参照。)、より良好なガソリンバリア性を有する燃料容器を得ることができるようになった。しかしながら、そのガソリンバリア性も今後の環境規制の更なる強化に対しては必ずしも充分とは言えるものではないことから更なる性能向上が要求されていた。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−29904号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題を解決し、ガソリンバリア性が良好で、しかも耐熱性、耐衝撃性、経済性に優れた燃料容器を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記問題を解決するために鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂製容器の外側および/または内側の一定以上の領域に、皮膜層として特定のエポキシ樹脂と特定エポキシ樹脂硬化剤を主成分として形成される高ガソリンバリア性硬化皮膜層を形成させることにより、ガソリンバリア性、耐熱性、耐衝撃性および経済性に優れた燃料容器が得られることを見出した。
すなわち本発明は、熱可塑性樹脂により構成される燃料容器の内側あるいは外側の少なくとも一方に50〜100%の面積率で皮膜層が形成された燃料容器であって、該皮膜層がエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤を主成分とするエポキシ樹脂組成物の硬化により形成され、かつ該皮膜層の23℃、相対湿度60%におけるガソリン透過係数が2 (g・mm)/(m2・day)以下であることを特徴とする燃料容器を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において、燃料容器とは、自動車、オートバイ、船舶、航空機、発電機及び工業用、農業用機器に搭載された燃料容器、もしくは、これら燃料容器に燃料を補給するための携帯用容器、さらには、これら稼動のために用いる燃料を保管するための容器を意味する。また燃料としてはガソリンおよびメタノール、エタノールまたはMTBE等をブレンドしたガソリンすなわち含酸素ガソリンが代表例としてあげられるが、その他の重油、軽油、灯油なども例示される。
【0007】
本発明の燃料容器を構成する熱可塑性樹脂としては、成形後に形状を保持し得るものであればいずれのものでも使用することができ、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6などのポリアミド系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、EVOH系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などが挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂の中でも低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直線状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン樹脂がより好ましく、ポリエチレン樹脂の中でも高密度ポリエチレン樹脂が特に好ましい。また、耐熱性や耐衝撃性などの諸性能を向上させるために、必要に応じてこれらの樹脂を配合して使用したり、多層構成としても良い。さらに、成形時に発生するスクラップ樹脂を再利用して使用しても良い。具体的には成形時に発生するロス部分や、一般消費者に使用された後の回収品の粉砕物等が挙げられる。かかるスクラップ樹脂を用いることにより廃棄物量が抑制されるため、環境保全の観点から好ましく、コスト低減の効果も得られる。
【0008】
さらに本発明の燃料容器を構成する熱可塑性樹脂には、必要に応じて各種添加剤を配合することもできる。このような添加剤の例としては、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールなどの酸化防止剤、フタル酸エステル類、ワックス、流動パラフィン、リン酸エステルなどの可塑剤、エチレン−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどの紫外線吸収剤、ペンタエリスリットモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、硫酸化ポリオレフィン類、ポリエチレンオキシド、カーボワックスなどの帯電防止剤、エチレンビスステアロアミド、ブチルステアレートなどの滑剤、カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、インドリン、アゾ系顔料、ベンガラなどの着色剤、その他フィラー、熱安定剤等を挙げることができる。
【0009】
熱可塑性樹脂より成形される燃料容器を得る方法としては、特に限定されるものではないが、一般のポリオレフィンの分野において実施されている成形方法、例えば、押出成形、ブロー成形、射出成形等があげられ、特に、押出成形、射出成形が好適である。また、成形後に容器と皮膜層との接着性を向上させるために、必要に応じて容器の内外表面にコロナ放電処理やオゾン処理などの各種表面処理を実施したり、容器本体の皮膜層を形成させる面にアンカーコート剤を塗布したり、あるいは容器本体の皮膜層を形成させる面に接着性樹脂からなる層を積層しても良い。アンカーコート剤としては、有機チタン系材料、ポリウレタン系材料、ポリエチレンイミン系材料、ポリブタジエン系材料などの従来公知の材料が使用できるが、これらに制限されるものではない。アンカーコート層の厚みは0.01〜5.0μm程度であり、特に0.05〜2.0μm程度が好ましい。アンカーコート材を塗布する方法としては、ロール塗布、しごき塗り、刷毛塗り、流し塗り、浸漬、スプレー塗布等任意の方法の中から被塗材料の種類や形態などに応じて適宜選択できる。またこれらの処理後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。アンカーコート剤の塗布後、必要に応じて加熱装置により皮膜層の硬化反応を完結させても良い。加熱装置による燃料容器の加熱方法はドライヤー、高周波誘導加熱、遠赤外線加熱、ガス加熱など従来公知の方法の中から適宜選択して用いることができる。また、接着性樹脂としては、好ましくは接着性ポリオレフィン樹脂が使用でき、具体的には低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂をマレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸またはその酸無水物で変性したもの、あるいはその変性物をポリオレフィン樹脂で希釈したものを使用することができる。接着性樹脂層の厚みは0.1〜2.0mm程度であり、特に0.5〜1.0mm程度が好ましい。
【0010】
また燃料容器の全体厚みは、好ましくは300〜10000μm、より好ましくは500〜8500μm、特に好ましくは1000〜7000μmである。なお、これらの厚みは燃料容器の胴部における平均厚みをいう。全体厚みが大きすぎると重量が大きくなりすぎ、自動車等の燃費に悪影響を及ぼし、燃料容器のコストも上昇する。一方全体厚みが小さすぎると剛性が保てず、容易に破壊されてしまう問題がある。したがって、容量や用途に対応した厚みを設定することが重要である。
【0011】
本発明の燃料容器を構成する皮膜層について以下に説明する。本発明における皮膜層はエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤を主成分とするエポキシ樹脂組成物により形成され、その23℃、相対湿度60%におけるガソリン透過係数が2 (g・mm)/(m2・day)以下、好ましくは0.2 (g・mm)/(m2・day)以下、特に好ましくは0.02 (g・mm)/(m2・day)以下であることを特徴としている。ここでガソリン透過係数とは1mm厚のサンプル1平方メートルを24時間かけて透過するガソリンの量を示す値である。測定に用いられるガソリンとは、イソオクタン/トルエン/エタノール=45/45/10の体積分率で混合される模擬ガソリンである。
【0012】
また、前記エポキシ樹脂組成物の硬化により形成される皮膜層中に含有される(1)式に示される骨格構造が30重量%以上であることが好ましい。該骨格構造を30重量%以上にすることにより、良好なガソリンバリア性が発現する。
【化2】
【0013】
以下に、エポキシ樹脂およびエポキシ樹脂硬化剤について詳細に説明する。
【0014】
本発明におけるエポキシ樹脂は飽和または不飽和の脂肪族化合物や脂環式化合物、芳香族化合物、あるいは複素環式化合物のいずれであってよいが、高いガソリンバリア性の発現を考慮した場合には芳香環を分子内に含むエポキシ樹脂が好ましい。
【0015】
具体的にはメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミン部位および/またはグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、レゾルシノールから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂などが使用できるが、中でもメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂およびレゾルシノールから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0016】
更に、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂やメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂を主成分として使用することがより好ましく、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂を主成分として使用することが特に好ましい。
【0017】
さらに、柔軟性や耐衝撃性、耐湿熱性などの諸性能を向上させるために、上記の種々のエポキシ樹脂を適切な割合で混合して使用することもできる。
【0018】
前記エポキシ樹脂は、各種アルコール類、フェノール類およびアミン類とエピハロヒドリンの反応により得られる。例えば、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂は、メタキシリレンジアミンにエピクロルヒドリンを付加させることで得られる。
【0019】
ここで、前記グリシジルアミン部位は、キシリレンジアミン中のジアミンの4つの水素原子と置換できる、モノ−、ジ−、トリ−および/またはテトラ−グリシジルアミン部位を含む。モノ−、ジ−、トリ−および/またはテトラ−グリシジルアミン部位の各比率はメタキシリレンジアミンとエピクロルヒドリンとの反応比率を変えることで変更することができる。例えば、メタキシリレンジアミンに約4倍モルのエピクロルヒドリンを付加反応させることにより、主としてテトラグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂が得られる。
【0020】
前記エポキシ樹脂は、各種アルコール類、フェノール類およびアミン類に対し過剰のエピハロヒドリンを水酸化ナトリウム等のアルカリ存在下、20〜140℃、好ましくはアルコール類、フェノール類の場合は50〜120℃、アミン類の場合は20〜70℃の温度条件で反応させ、生成するアルカリハロゲン化物を分離することにより合成される。
【0021】
生成したエポキシ樹脂の数平均分子量は各種アルコール類、フェノール類およびアミン類に対するエピハロヒドリンのモル比により異なるが、約80〜4000であり、約200〜1000であることが好ましく、約200〜500であることがより好ましいい。
【0022】
本発明におけるエポキシ樹脂硬化剤は、ポリアミン類、フェノール類、酸無水物またはカルボン酸類などの一般に使用され得るエポキシ樹脂硬化剤を使用することができる。これらのエポキシ樹脂硬化剤は飽和または不飽和の脂肪族化合物や脂環式化合物、芳香族化合物、あるいは複素環式化合物のいずれであってよい。
【0023】
具体的には、ポリアミン類としてはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどの脂肪族アミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香環を有する脂肪族アミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミンなどの脂環式アミン、ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミンなどの芳香族アミン、およびこれらを原料とするエポキシ樹脂またはモノグリシジル化合物との反応生成物、炭素数2〜4のアルキレンオキシドとの反応生成物、エピクロルヒドリンとの反応生成物、およびこれらのポリアミン類との反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応生成物、およびこれらのポリアミン類との反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物と、炭素数1〜8の一価のカルボン酸および/またはその誘導体との反応生成物などが使用できる。
【0024】
フェノール類としてはカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンなどの多置換基モノマー、およびレゾール型フェノール樹脂などが挙げられる。
【0025】
酸無水物またはカルボン酸類としてはドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物などの脂肪族酸無水物、(メチル)テトラヒドロ無水フタル酸、(メチル)ヘキサヒドロ無水フタル酸などの脂環式酸無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの芳香族酸無水物、およびこれらに対応するカルボン酸などが使用できる。
【0026】
高いガソリンバリア性および熱可塑性樹脂製燃料容器との良好な接着性の発現を考慮した場合には、エポキシ樹脂硬化剤として、下記の(A)と(B)の反応生成物、または(A)、(B)および(C)の反応生成物を用いることが好ましい。
(A)メタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン(ポリアミン)
(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物
(C)炭素数1〜8の一価カルボン酸および/またはその誘導体
【0027】
ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物(B)としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸などのカルボン酸およびそれらの誘導体、例えばエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物などが挙げられ、特にアクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体が好ましい。
【0028】
また、(C)の炭素数1〜8の一価のカルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、グリコール酸、安息香酸などが挙げられ、また、それらの誘導体、例えばエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物なども使用することができる。これらは上記多官能性化合物と併用してポリアミン(メタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン)と反応させてもよい。
【0029】
前記 (A)と(B)、または(A)と(B)および(C)の反応モル比は、(A)に含有されるアミノ基の数に対する(B)に含有される反応性官能基の数の比、または(A)に含有されるアミノ基の数に対する(B)および(C)に含有される反応性官能基の合計数の比として、0.3〜0.97の範囲が好ましい。0.3より少ない比率では、エポキシ樹脂硬化剤中に十分な量のアミド基が生成せず、高いレベルのガソリンバリア性および各種材料に対する接着性が発現しない。一方、0.97より高い比率ではエポキシ樹脂と反応するアミノ基の量が少なくなり優れた耐衝撃性や耐熱性などが発現しない。
【0030】
また、各種材料に対するより高い接着性の発現を考慮した場合には、エポキシ樹脂硬化剤中に、該硬化剤の全重量を基準として、少なくとも6重量%のアミド基が含有されることが好ましい。反応により導入されるアミド基部位は高い凝集力を有しており、エポキシ樹脂硬化剤中に高い割合でアミド基部位が存在することにより、より高いガソリンバリア性が発現し、皮膜層のガソリン漏洩防止機能が著しく向上する。また熱可塑性樹脂製燃料容器への良好な接着強度も得られる。さらに、柔軟性や耐衝撃性、耐湿熱性などの諸性能を向上させるために、上記の種々のエポキシ樹脂硬化剤を適切な割合で混合して使用することもできる。
【0031】
本発明におけるエポキシ樹脂組成物の主成分であるエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の配合割合については、一般にエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との反応によりエポキシ樹脂硬化物を作製する場合の標準的な配合範囲であってよい。具体的には、エポキシ樹脂中のエポキシ基の数に対するエポキシ樹脂硬化剤中の活性水素数の比が0.5〜5.0、好ましくは0.8〜2.0の範囲である。
【0032】
また、本発明において、エポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリウレタン系樹脂組成物、ポリアクリル系樹脂組成物、ポリウレア系樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物を混合してもよい。
【0033】
皮膜層を熱可塑性樹脂製燃料容器の表面に形成する場合には、表面の湿潤を助けるために前記エポキシ樹脂組成物の中に、シリコンあるいはアクリル系化合物といった湿潤剤を添加しても良い。適切な湿潤剤としては、ビックケミー社から入手しうるBYK331、BYK333、BYK348、BYK381などがある。これらを添加する場合には、硬化反応物の全重量を基準として0.01重量%〜2.0重量%の範囲が好ましい。
【0034】
また、本発明で形成される皮膜層のガソリンバリア性、耐衝撃性、耐熱性などの諸性能を向上させるために、前記エポキシ樹脂組成物の中にシリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどの無機フィラーを添加しても良い。高いガソリンバリア性を考慮した場合には、このような無機フィラーが平板状であることが好ましい。これらを添加する場合には、硬化反応物の全重量を基準として0.01重量%〜10.0重量%の範囲が好ましい。
【0035】
さらに、本発明で形成される皮膜層の熱可塑性樹脂製燃料容器に対する接着性を向上させるために、エポキシ樹脂組成物の中にシランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤を添加しても良い。これらを添加する場合には、硬化反応物の全重量を基準として0.01重量%〜5.0重量%の範囲が好ましい。
【0036】
さらに、本発明で形成される皮膜層を形成するエポキシ樹脂組成物中には必要に応じ、低温硬化性を増大させるための例えばN−エチルモルホリン、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸コバルト、塩化第一錫などの硬化促進触媒、ベンジルアルコールなどの有機溶剤、リン酸亜鉛、リン酸鉄、モリブデン酸カルシウム、酸化バナジウム、水分散シリカ、ヒュームドシリカなどの防錆添加剤、フタロシアニン系有機顔料、縮合多環系有機顔料などの有機顔料、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、カーボンブラックなどの無機顔料等の各成分を必要割合量添加しても良い。
【0037】
本発明において、皮膜層の層厚は1〜200μm程度、好ましくは5〜100μmが実用的である。1μm未満であると十分なガソリンバリア性が発現せず、200μmを越えるとその膜厚の制御が困難になる。
【0038】
皮膜層を熱可塑性樹脂製燃料容器の表面に形成させる場合には、燃料容器の内側あるいは外側のいずれの表面にも形成させることができる。実質的なガソリンバリア性の発現を考慮した場合には、容器の表面積の50〜100%の面積率の範囲で皮膜層を形成させることが好ましく、75〜100%の面積率の範囲がより好ましく、80〜100%の面積率の範囲が特に好ましい。
【0039】
エポキシ樹脂組成物を燃料容器本体の表面に塗布する際のエポキシ樹脂組成物の濃度は選択した材料の種類およびモル比、塗布方法などにより、溶媒を用いない場合から、ある種の適切な有機溶媒および/または水を用いて約5重量%程度の組成物濃度に希釈する場合までの様々な状態をとり得る。適切な有機溶媒としては、トルエン、キシレン、酢酸エチルなどの非水溶性系溶媒、2―メトキシエタノール、2―エトキシエタノール、2―プロポキシエタノール、2―ブトキシエタノール、1―メトキシー2−プロパノール、1−エトキシー2−プロパノール、1−プロポキシ−2−プロパノールなどのグリコールエーテル類、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールなどのアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒などが挙げられるがメタノール、酢酸エチル、2−プロパノールなどの比較的低沸点の溶媒が好ましい。また、溶媒を使用した場合には塗布後の溶媒乾燥温度は室温から約140℃までの様々なものであってよい。
【0040】
皮膜層はエポキシ樹脂組成物の硬化により形成されるが、エポキシ樹脂組成物を熱可塑性樹脂製燃料容器に塗布する方法としては、ロール塗布、しごき塗り、刷毛塗り、流し塗り、浸漬、スプレー塗布等任意の方法の中から熱可塑性樹脂製燃料容器の形態などに応じて適宜選択できる。またこれらの処理後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。エポキシ樹脂組成物の塗布後、必要に応じて加熱装置により皮膜層の硬化反応を完結させても良い。加熱装置による燃料容器の加熱方法はドライヤー、高周波誘導加熱、遠赤外線加熱、ガス加熱など従来公知の方法の中から適宜選択して用いることができる。加熱処理は到達材温で50〜300℃、好ましくは70〜200℃の範囲で行うことが望ましい。
【0041】
本発明の燃料容器は、熱可塑性樹脂製容器の表面にガソリンバリア性に優れた皮膜層がエポキシ樹脂組成物の硬化により形成されている。このため、ガソリンバリア性に加え、エポキシ樹脂が本来有する性能である耐熱性、強靭性、耐衝撃性などを有する燃料容器を提供することができる。
【0042】
【実施例】
以下に本発明の実施例を紹介するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0043】
<エポキシ樹脂硬化剤A>
反応容器に1molのメタキシリレンジアミンを仕込んだ。窒素気流下60℃に昇温し、0.67molのアクリル酸メチルを1時間かけて滴下した。滴下終了後120℃で1時間攪拌し、さらに、生成するメタノールを留去しながら3時間で180℃まで昇温した。100℃まで冷却し、固形分濃度が70重量%になるように所定量のメタノールを加え、エポキシ樹脂硬化剤Aを得た。
【0044】
<エポキシ樹脂硬化剤B>
反応容器に1molのメタキシリレンジアミンを仕込んだ。窒素気流下60℃に昇温し、0.90molのアクリル酸メチルを1時間かけて滴下した。滴下終了後120℃で1時間攪拌し、さらに、生成するメタノールを留去しながら3時間で180℃まで昇温した。100℃まで冷却し、エポキシ樹脂硬化剤Bを得た。
【0045】
<エポキシ樹脂硬化剤C>
反応容器に1molのメタキシリレンジアミンを仕込んだ。窒素気流下120℃に昇温し、0.93molのアクリル酸メチルを1時間かけて滴下し。滴下終了後120℃で1時間攪拌し、さらに、生成するメタノールを留去しながら3時間で180℃まで昇温した。100℃まで冷却し、エポキシ樹脂硬化剤Cを得た。
【0046】
また、ガソリン透過性の評価方法は以下の通りである。
75mmΦのアルミニウム製カップに模擬ガソリン(イソオクタン/トルエン/エタノール=45/45/10)を入れ、評価用試験フィルムをかぶせ、カップとフィルムの接点に接着剤を塗り、密閉した。フィルムが模擬ガソリンと直接接触しない気相法で測定した。23℃、相対湿度60%の環境で500時間静置して、重量変化からガソリン透過率 (g/(m2・day))を求めた。試験フィルム中の皮膜層のガソリン透過係数を以下の式を用いて計算した:
1/R = 1/Rn(n=1,2,..) + DFT/P
ここで、R = 試験フィルムのガソリン透過率(g/(m2・day))
Rn(n=1,2,..) = 各基材フィルムのガソリン透過率(g/(m2・day))
DFT= 皮膜層の厚み(mm)
P = 皮膜層のガソリン透過係数((g・mm)/(m2・day))
【0047】
実施例1
エポキシ樹脂硬化剤Aを44重量部およびメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂(三菱ガス化学(株)製; TETRAD−X)を50重量部含むメタノール/酢酸エチル=1/1溶液(固形分濃度;30重量%)を作製し、そこにアクリル系湿潤剤(ビック・ケミー社製;BYK381)を0.02重量部加え、よく攪拌し、コート液を得た。このコート液を厚み100μmのポリプロピレンにバーコーターNo.24を使用してコーティングし、120℃で10分乾燥後、更に150℃で10分硬化させることによりコートフィルムを得た。皮膜層の厚みは10μmであった。得られたコートフィルムについて、皮膜層のガソリン透過係数を求めた。結果を表1に示す。該皮膜層中に含有される(1)式に示される骨格構造は54.1重量%である。
【0048】
実施例2
エポキシ樹脂硬化剤Aの代わりにエポキシ樹脂硬化剤Bを72重量部用いた以外は実施例1と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。皮膜層中に含有される(1)式に示される骨格構造は56.5重量%である。
【0049】
実施例3
エポキシ樹脂硬化剤Aの代わりにエポキシ樹脂硬化剤Cを78重量部用いた以外は実施例1と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。皮膜層中に含有される(1)式に示される骨格構造は56.9重量%である。
【0050】
比較例1
EVOH(エチレン含量32モル%、けん化度99.6%)100μmのフィルムについてそのガソリン透過性を評価した。結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【発明の効果】
本発明により、ガソリンバリア性が良好で、しかも耐熱性、耐衝撃性、経済性に優れた燃料容器を製造することが可能となる。
Claims (10)
- 熱可塑性樹脂により構成される燃料容器の内側あるいは外側の少なくとも一方に50〜100%の面積率で皮膜層が形成された燃料容器であって、該皮膜層がエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤を主成分とするエポキシ樹脂組成物の硬化により形成され、かつ該皮膜層の23℃、相対湿度60%におけるガソリン透過係数が2 (g・mm)/(m2・day)以下であることを特徴とする燃料容器。
- 前記ガソリン透過係数が0.2 (g・mm)/(m2・day)以下である請求項1に記載の燃料容器。
- 前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン樹脂である請求項1または2に記載の燃料容器。
- 前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレン樹脂である請求項1または2に記載の燃料容器。
- 前記エポキシ樹脂が、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂およびレゾルシノールから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1つを含むものである請求項1〜5のいずれかに記載の燃料容器。
- 前記エポキシ樹脂が、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂および/またはビスフェノールFから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂を主成分とするものである請求項1〜5のいずれかに記載の燃料容器。
- 前記エポキシ樹脂が、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂を主成分とするものである請求項1〜5のいずれかに記載の燃料容器。
- 前記エポキシ樹脂硬化剤が、下記の(A)と(B)の反応生成物、または(A)、(B)および(C)の反応生成物である請求項1〜8のいずれかに記載の燃料容器。
(A)メタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン
(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物
(C)炭素数1〜8の一価カルボン酸および/またはその誘導体 - 前記(B)多官能性化合物がアクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体から選ばれる1種以上である請求項9に記載の燃料容器。
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