JP2004082103A - So2を含有するガスの処理方法 - Google Patents

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平野 八朗
Itsuo Mochizuki
望月 厳雄
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Abstract

【課題】ガス中のSOを極めて低濃度まで効率よく除去することにより、Vを活性成分とする触媒の酸性硫安による被毒を回避し、触媒の連続使用期間の長期化を図ることができるガスの処理方法を提供する。
【解決手段】SOを含有するガスに、炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの粉末を接触させて、SO濃度が5体積ppm以下となったガスを、Vを活性成分とする触媒に通すことを特徴とする、ガスの処理方法。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、SOを含有するガスを処理する場合において、SO濃度が低減されたガスを、Vを活性成分とする触媒で処理するガスの処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ガラス製造のガラス溶融炉や重油焚きボイラーでは燃料として硫黄を含有した重油を使用するため、あるいはゴミ焼却では、ゴミ中に硫黄成分が含有されていたり助燃用に重油を使用するために、排ガス中にSO(二酸化硫黄)が含有されており、大気汚染の一因となっている。
【0003】
一方、同時に発生するNOを除去するために、V(酸化バナジウム)を活性成分とする触媒層を設置して、アンモニアガスを注入後にこの触媒層に排ガスを通している。また、ゴミ焼却炉の排ガス処理のためのダイオキシン類の分解触媒として、TiO(酸化チタン)等を担体としたVを活性成分とする触媒が使用されている。
【0004】
ここで、硫黄成分を含有する燃料等を燃焼すると大部分はSOとなるが、SOの極く一部分の酸化がさらに進行しSO(三酸化硫黄)となる。SOへの転化は燃焼時の過剰空気が多いほど進行し、また燃料中のバナジウム等の重金属の酸化物が触媒となってSOへの転化を促進する。よって、排ガス中のSOの濃度が高いと、排ガス中のSOの濃度が上昇し、脱硝またはダイオキシン類の分解のために添加しているアンモニアガス(NH)と反応して酸性硫安(NHHSO)を生成して触媒細孔を閉塞させる。
SO + NH + HO → NHHSO
よっていかにSO濃度を低くするかが、触媒の酸性硫安による被毒を回避するために重要である。
【0005】
従来、酸性硫安による被毒への対策としてSO濃度を低くすべく、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ物質を使用した湿式スクラバを用いる湿式による処理方法や、水酸化カルシウム粉末を煙道中に散布した後、バグフィルタまたは電気集塵器等で水酸化カルシウム粉末とともに酸性成分を除去する乾式による方法等が採用されていた(特許文献1参照)。
【0006】
しかし、前記湿式による処理方法では水酸化ナトリウム水溶液等のスプレーが閉塞したりスプレー装置内やダクト内にスケールが生成するという問題点があり、前記乾式による処理方法では水酸化カルシウムの添加量に対して十分にSO濃度が低下しないという問題点があった。このため設備が簡便で運転の容易な乾式で、SO濃度を極めて低濃度まで低減させる方法が求められていた。
【0007】
【特許文献1】
特開2003−033628号公報(段落0023、0028)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来除去が困難であったガス中のSOを極めて低濃度まで効率よく除去することにより、Vを活性成分とする触媒の連続使用期間の長期化を図ることができるガスの処理方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、SOを含有するガスに、炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの粉末を接触させて、SO濃度が5体積ppm以下となったガスを、Vを活性成分とする触媒で処理することを特徴とするガスの処理方法を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の被処理ガスであるSOを含有するガスとしては、ガラスの加熱工程もしくは溶融工程から排出されるガス、重油焚きボイラーから排出されるガス、またはゴミ焼却設備から排出されるガス等が挙げられる。また、本発明は被処理ガスがSOのほかにホウ酸成分を含有する場合にも適用することができ、ガラスの溶融工程から排出されるガスのなかでも、ホウケイ酸ガラスの溶融工程から排出されるガスにも好ましく適用できる。
【0011】
本発明において、炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムは、粉末の状態で被処理ガス中に散布されて均一に分散され、SOと接触し中和する。すなわち、本発明においてはガスと固体アルカリを反応させる乾式による処理方法が採用される。炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムをペレット状、球状または塊状に造粒し、造粒物を充填層となして使用することも可能であるが、大量で高温の排ガスを処理し、充填層の入れ替えをせず連続運転するために、排ガス煙道に炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの粉末を散布する。
【0012】
炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムは、SOとの反応性を高くするために、比表面積が1m/g以上であることが好ましい。本発明において比表面積は、柴田科学器械工業株式会社の迅速表面積測定装置SA−1000(商品名)を用いBET簡便方式により測定する。粒子が多孔質である場合や平均粒子径が小さい場合は、比表面積は増加する。
【0013】
炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの体積平均粒子直径は1〜100μmの小粒子径のものを使用することが好ましい。これにより、炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの粒子の比表面積が大きくなり、SOとの反応性が高く、SOの除去に効果的である。さらに、単位質量あたりの粒子個数が多くなるため被処理ガス中の個数密度が高くなり、煙道内部での粒子へのSOの拡散距離を短くできるために反応性が高くなるので好ましい。平均粒子径の下限はSOの除去効果の観点からは特に制限を受けないが、平均粒子径が1μm未満であると、粉砕操作により工業的に安価に製造することが困難であることから好ましくなく、平均粒子径が100μm超であると、煙道に散布したときに十分反応しないまま煙道底部に沈降してしまうため好ましくない。平均粒子径は1〜50μmがより好ましく、1〜30μmがさらに好ましく、1〜20μmが最も好ましい。
【0014】
本発明では、平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(日機装社製のマイクロトラックFRA9220)により測定し、全体積を100%として累積曲線を求めたとき、その累積体積が50%となる点の粒径を平均粒子径(μm)とする。
【0015】
炭酸水素ナトリウムは、大量かつ安価に入手でき、吸湿性が無く造粒物の製造および保存が容易であり、さらに粉砕して微細粒径にすることが容易である。炭酸水素ナトリウムは、煙道に散布された時に高温の排ガスにより焼成され、比表面積が1m/g以上の多孔質の炭酸ナトリウムに変化する。
【0016】
炭酸ナトリウムは、軽灰と称せられる多孔質の炭酸ナトリウムが工業的に好ましく利用できる。軽灰は、アンモニアソーダ法の中間工程で得られる炭酸水素ナトリウム(粗重曹)を焼成して得られた炭酸ナトリウムであり、比表面積が大きく、かつ、微粉砕しやすい。
【0017】
比表面積は多孔質である以外に、平均粒子径が小さくても増加するので、重灰と称せられる多孔質でない炭酸ナトリウムであっても、微粉砕することにより比表面積を1m/g以上にすることができ、反応性を向上させることができる。重灰は、アンモニアソーダ法において、前述の軽灰に水を加えて炭酸ナトリウム一水塩としたのち乾燥して得られた無水炭酸ナトリウムのことであり、軽灰より嵩密度が高い。軽灰のほうが、粉砕しやすさと多孔質であることから、より比表面積は大きく、高い性能を発現できる利点があるが、一方、重灰は生産量が多いために一般的に入手しやすく、さらに嵩が低いために安価な輸送費で入手できる利点がある。
【0018】
工程ガスの精製等で、ナトリウムの使用を忌避する場合には炭酸水素カリウム、炭酸カリウムを使用することができる。
【0019】
炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムは、それぞれ単独で使用しても、それらを混合して使用しても、それぞれと炭酸水素カリウムや炭酸カリウムとを混合して使用しても何ら差し支えない。また、後述のとおり、炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの粉体としての流動性を改善したり固結を防止したりするために、固結防止剤を天然品、合成品に限らず添加して使用できる。
【0020】
なお、炭酸ナトリウムを使用するときは、吸湿性が強いために、長期間包装した形態で保管するためには、防湿処理された包装材料にて包装することが好ましい。具体的な包装材料としては、JIS−Z0208で規定する透湿度が40℃で5g/m・日以下の材料が好ましい。この透湿度は、包装材料を境界面として、一方の側を相対湿度90%の空気とし、他の側を塩化カルシウムで乾燥した状態に保つとき、24時間経過後に境界面を通過した水蒸気の質量を、包装材料の単位面積当たりに換算したものである。透湿度は40℃で1g/m・日以下が特に好ましい。
【0021】
炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムが大粒子であって粉砕して使用する場合においては、平均粒子径の調整方法として、煙道等へ散布する直前に大粒子を粉砕することによる方法(以下、「その場粉砕法」という。)と、事前に大粒子を微粉砕しておきこれを貯槽に貯留してここから使用する方法(以下、「事前粉砕法」という。)とが挙げられる。
【0022】
その場粉砕法は、常時貯槽に大粒子を貯留しておき、使用直前に粉砕機に定量供給して粉砕し、そのまま煙道等に散布する。粉砕機としては、ピンミルやパルペライザー等の衝撃式粉砕機またはジェットミル等の気流式粉砕機等が挙げられる。平均粒子径20μm以下に効率良く粉砕するためには、分級機構を備えた粉砕機を使用することが好ましい。また、SOとの反応性を高めるため、炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウム粒子の篩い下累積粒度分布における90質量%径が60μm以下となるように粉砕、分級してからガス中に注入することが好ましい。90質量%径は、30μm以下が特に好ましい。分級機としては風力式分級機等が使用できる。粉砕機としては、ホソカワミクロン社製乾式衝撃式微粉砕機(商品名:ACMパルベライザー)等が乾式風力分級機構を内蔵しているので好適に使用できる。
【0023】
事前粉砕法は、大粒子を事前に必要な平均粒子径に粉砕して貯槽に貯留し、使用時に煙道等に散布する。ここで使用する粉砕機としては前記の他に、ボールミルや振動ミルや媒体撹拌ミル等の媒体式の粉砕機も使用できる。さらに湿式の粉砕機を使用して微粉砕後に乾燥する方法も採用できる。
【0024】
一般的に、その場粉砕法は専用の粉砕設備を設置できる大使用量用途に適し、事前粉砕法はまとめて他場所で粉砕した方が効率の良いような小使用量用途や10μm程度まで微粉砕して高度にSOを除去する場合に適する。
【0025】
粉砕される原料としては、平均粒子直径が50〜500μmのものを使用するのが好ましい。平均粒子直径が50μm未満では、粉砕機への安定した供給が困難であり好ましくなく、平均粒子直径が500μm超では、20μm以下に粉砕するための粉砕機の設備が過大となるため好ましくない。
【0026】
事前粉砕法においては、貯留時に粉砕物が凝集したり、使用時に粉砕物を定量的に煙道等に供給することが困難となったりするため、粉砕される物質は、固結防止剤と共に粉砕するか、または、粉砕された後に固結防止剤を添加することが好ましい。
【0027】
固結防止剤は、炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの粒子間に介在し、炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウム粒子同士の接触を防止することにより炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウム粒子の固結を防止する。したがって、固結防止剤の添加は、炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの粉砕時または炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウム微粉の散布時の凝集を防止できるので、その場粉砕法にも適用できる。
【0028】
固結防止剤の平均粒子直径は0.005〜5μmが好ましい。固結防止剤の平均粒子直径が0.005μm未満であると、固結防止効果がそれ以上高まらず、かつ安価な工業製品として入手できないため好ましくない。また、平均粒子直径が5μm超であると、微粒子の場合と同じ質量割合を添加しても、固結防止剤の個数が少ないため固結防止効果が減少するので好ましくない。固結防止剤の平均粒子径は0.005〜2μmが特に好ましく、さらには0.005〜0.1μmが最も好ましい。
【0029】
固結防止剤としては、炭酸マグネシウム、シリカ、アルミナ、アルミノシリケート、ゼオライト、タルク、ステアリン酸塩等、粉末の固結防止または流動性の向上を目的に添加される物質として一般に公知のものが使用でき、複数の物質を混合して使用することもできる。なかでもシリカが好ましく、シリカのなかでも平均粒子径の細かさ、固結防止効果、流動性付与効果および入手が容易であること等からヒュームドシリカがとりわけ好ましい。
【0030】
また、固結防止剤としてはゼオライトも好ましく使用できる。ゼオライトは固結防止剤としての効果はヒュームドシリカより劣るものの、被処理ガス中の酸性成分と反応し中和する効果を有するために好適に使用できる。特に4A型ゼオライトと称される合成ゼオライトは平均粒子直径が1〜5μm程度と小さく、ナトリウムを含むので酸性成分の中和作用もあり好ましい。さらにこのゼオライトを乾燥した粉末は乾燥剤としても使用できるために粉砕された炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウム微粒子の吸湿による固結や凝集を抑制できる。さらにヒュームドシリカと併用するとより効果的である。特に炭酸ナトリウムを使用する場合においては、炭酸ナトリウムの吸湿による一水塩の生成を防止したり、固結を防止したりできるので好適に使用できる。
【0031】
本発明では、固結防止剤は炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムに対し、0.1〜5質量%添加することが好ましい。添加量が0.1質量%未満であると、炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの流動性改善の効果が低いので好ましくない。また、添加量が5質量%超であっても、炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの流動性改善効果は添加量に比例するほどは改善されず、コストも高くなるため好ましくない。添加量は0.3〜2質量%が特に好ましい。
【0032】
炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの固結防止、流動性改善方法として、平均粒子径20μm以下の炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの微粉に平均粒子径20μm超、特に50μm以上の炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウム軽灰の粗粒を加えることが好ましい。これにより、炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの微粉を事前粉砕法により、貯槽に一定期間貯留しておいてからガスの処理に使用する場合において、後述のごとく貯槽からの微粉の排出性が改善される。これは大きな粗粒子が、その重量と大きさにより、微粒子によって弱く形成されたケーキングを崩すためである。
【0033】
固結防止剤と上記粗粒の両方を平均粒子径20μm以下の炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの微粉に加えてガスを処理することもできる。粗粒の混合量は、平均粒子直径20μm以下の炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムに全体量の10〜30質量%となるように混合することが有効である。
【0034】
上記の量の割合で粗粒を混合することにより、貯槽内における粉末の中央部分だけ排出されて、壁近傍部分に粉末が残留するラットホールと称される現象を防止できる。この効果は、物理的には大粒子を混合することで得られるが、SOの除去効果を考慮し、炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウム自体の粗粒を使用して粗粒自体もSOの除去に寄与させることが好ましい。
【0035】
本発明は、SOのみならず、SO、HCl、HSO、HF、HBr、HI、ホウ酸成分などの酸性ガスが被処理ガスに含まれる場合にも、これらの酸性ガス成分の除去に適用できる。被処理ガスがSOのほかに、硫酸や塩化水素も含有している場合は、被処理ガスはその酸の露点以上の温度であることが好ましい。ここでホウ酸成分とはHBOまたはその脱水物を指し、主としてHBO、HBO、Bのことを示す。本発明においてホウ酸成分の濃度はBに換算したものとする。
【0036】
炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの被処理ガスへの散布量はガス中のSO、SO、HSO、HCl、HF、HBr、HI、ホウ酸成分などの酸性成分のグラム当量の合計に対して、1〜10倍のグラム当量であることが好ましい。炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの散布量が、酸性成分のグラム当量に対し1倍未満のグラム当量であると、中和反応する理論グラム当量未満となり、SOの低減量が不十分となるため好ましくなく、酸性成分に対し10倍超のグラム当量であると、コスト負担が過大となるので好ましくない。
【0037】
なお、炭酸水素ナトリウムはNaHCO換算、炭酸ナトリウムはNaCO換算するものとし、炭酸水素ナトリウム1molは1グラム当量、炭酸ナトリウム1molは2グラム当量に相当する。ここで、炭酸水素ナトリウムは煙道に散布された時には加熱によって炭酸ナトリウムとなるが、ガス中の酸性成分との反応量はグラム当量とすれば同じであるので、炭酸水素ナトリウムを使用した場合はNaHCO換算する。
【0038】
例示した各々の酸性成分は、炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムと反応して、SOとSOとHSOはNaSOを、HClはNaClを、HFはNaFを、HBrはNaBrを、HIはNaIを、ホウ酸成分はNaBOを生成するとして計算する。すなわち、SO、SO、HSO1molは2グラム当量、HCl、HF、HBr、HI、ホウ酸成分1molは1グラム当量である。また前記した酸性成分には窒素酸化物(NO、NO)は計算に入れないこととする。
【0039】
被処理ガスを炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの粉末と接触させることにより、被処理ガス中のSOの濃度は、標準状態において5体積ppm以下、好ましくは3ppm以下、更に好ましくは1ppm以下まで低減できる。その結果、Vを活性成分とする触媒の酸性硫安による被毒を防止でき、触媒の連続使用時間を長くできる。
【0040】
SO以外の触媒性能の低下要因として、被処理ガスの組成におけるホウ酸成分の存在がある。従来の消石灰によるガスの処理方法では、ホウ酸成分の除去は極めて困難であった。本発明はこのホウ酸成分の除去にも優れている。
【0041】
排ガスのホウ酸成分は、ガス温度の低下によって容易に固体として析出し、触媒に付着し性能を低下させる。被処理ガスがホウケイ酸ガラスの溶融工程から排出されるホウ酸成分をB換算で100mg/m以上含有するガスである場合には、被処理ガスを炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの粉末と接触させることにより、ホウ酸成分を90mg/m以下、好ましくは70mg/m以下まで低減することができる。
【0042】
本発明におけるVを活性成分とする触媒として、ガラスの加熱工程またはガラス溶融工程あるいは重油焚きボイラーの排ガス中のNOを除去するための脱硝触媒や、ゴミ焼却炉の排ガス処理のためのダイオキシン類を分解するための酸化チタン(TiO)等を担体とした触媒が挙げられる。
【0043】
また、炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムを散布する被処理ガス中のSOの濃度は200体積ppm以下であることが望ましい。ここで200体積ppmを超える場合は、事前に水酸化カルシウムなどのより安価なアルカリ薬剤で排煙脱硫装置やスタビライザーを用い、SOの濃度を低下させた後に炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムを散布するとよい。例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カルシウムスラリー、炭酸カルシウムスラリーあるいは水酸化マグネシウムスラリーをスプレーする排煙脱硫装置、水酸化カルシウム粉末を噴霧する排煙脱硫装置、水酸化ナトリウム水溶液をスプレーするスタビライザー等を使用することにより、ガス中の高濃度のSOを効率よく除去できる。ただし、これはSOの処理コスト上の都合であるので炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムを安価に使用できれば、不要である。
【0044】
被処理ガスへの炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの散布方法としては、空気輸送により煙道等に注入する方法、エゼクターを使用して粉末を圧縮ガスにより吸引しつつ注入する方法、あるいは、使用する直前に粉砕する、すなわち粉砕機の排出口から直接注入する方法等がある。
【0045】
被処理ガスに散布された炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムと、処理によって発生したそれらの反応生成物の除去には、電気集塵器、バグフィルタ、ベンチュリースクラバ、充填塔等の機器が使用できる。
【0046】
さらに排ガス処理で発生した反応生成物がガラス製造の原料として使用できることは本発明の主要な特徴のひとつである。ガラスの加熱工程または溶融工程からの排ガス中の酸性成分はガラス調合原料が揮発した成分であり、酸性ガス成分の除去によって得られた炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムとの反応生成物は、ガラスの原料として再使用できる。SO、HF、ホウ酸成分と炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムとの反応生成物は、それぞれ硫酸ナトリウム(NaSO)、弗化ナトリウム(NaF)、ホウ酸ナトリウム(NaBO)であり、いずれもガラスの原料であるので、再使用できる。ここでバグフィルタ等で捕集された炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの反応生成物は、他の原料を配合することにより適宜その組成を調整し、ガラス製造原料として溶融工程で再使用することができる。それらを再使用するガラス溶融炉としては本発明のガス処理方法を適用していない、他のガラス溶融炉であってもよい。これによって、従来は水酸化カルシウムを使用し排ガスを中和処理した反応物は固形廃棄物となっていたが、この廃棄物をなくすことができる。
【0047】
本発明は乾式であり、被処理ガス中に炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの粉末を散布しているので、湿式と異なり装置と運転の管理が容易であり安定な運転ができる。また、中和した残渣および未反応分は、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムまたは水酸化マグネシウム等を使用した場合と異なり水溶性であるために、水に溶解して公知の排水処理方法で処理することによって固形廃棄物を削減できる。
【0048】
【実施例】
以下に実施例を記載するが、本発明のガス処理方法は、ガラス製造のガラス溶融炉に限定されるものではなく、重油焚きボイラーやゴミ焼却の排ガス処理でも同様に好適に適用できる。
【0049】
炭酸水素ナトリウムの添加によるガス中のSOの除去効果およびVを活性成分とする触媒の延命効果を確認するため、実際のガラスの溶融炉の排ガス中に炭酸水素ナトリウムの粉末を散布する試験を行った。
【0050】
以下に図1に沿って、本発明の実施例を説明する。なお、この排ガスにはHBrとHIは含まれない。溶融炉1で発生した約500℃の排ガスは、第1の煙道10を通ってスタビライザ2に送られる。ここで、アルカリ水である水酸化ナトリウム水溶液7が注入され、ガス温度を約200℃にまで低下させると同時に、酸性成分であるSO、SO、HSO、HCl、HF、ホウ酸成分の一部が除去される。次いで排ガスはスタビライザ2とバグフィルタ3との間の第2の煙道11で炭酸水素ナトリウム粉末8を注入され、SO、SO、HSO、HCl、HF、ホウ酸などの酸性ガス成分が中和処理され、中和反応して生成した硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、フッ化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム等の粉塵がバグフィルタ3に送られる。これらは、バグフィルタで捕集された捕集ダスト9として系外に排出される。一方、バグフィルタ3を通った排ガスは、第3の煙道12を通り、排気ファン4によって第4の煙道13を通じて排煙脱硝設備5に送られる。さらに第5の煙道14を通って煙突6に送られ、煙突6から排出される。
【0051】
ガラスの溶融炉の型式は換熱方式の平炉であり、重油消費量は450L/h、排ガス流量は約8000m/hである。ここでLは容量の単位であるリットルを意味し、気体の体積は標準状態における体積である。
【0052】
ガラスはホウ酸成分を含有するガラスであり、煙道10におけるガス中のホウ酸成分はB換算で約600mg/mである。
【0053】
排気ファン4出口の第4の煙道13より排ガスをサンプリングし、JIS−K0103に準拠し、排ガス中に含まれているSO濃度を分析した。
【0054】
バグフィルタ出口の第3の煙道12より排ガスをサンプリングし、排ガス中に含まれているホウ酸成分を円筒ろ紙および水吸収で固定化し、ICP発光分析法(誘導結合プラズマ原子分光分析)によりホウ酸成分の分析を行い、B換算した。
【0055】
なお、本実施例において、平均粒子径は日機装社製のマイクロトラックFRA9220を使用して測定した。
【0056】
[例1(実施例)]
平均粒子径99μmの炭酸水素ナトリウム(旭硝子社製)を粉砕機(ホソカワミクロン社製乾式粉砕機、商品名:ACMパルベライザー)により、平均粒子径が9μm、累積篩下粒度分布による、90質量%径が18μmの炭酸水素ナトリウム粉末を得た。ここで、微粉砕時に、平均粒子直径0.01μmの親水性のヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、商品名:AEROSIL−R90G)を炭酸水素ナトリウム粉末に対して1.0質量%添加、混合した。添加は前述のごとく、スタビライザー2とバグフィルタ3との間の第2の煙道11においてである。
【0057】
炭酸水素ナトリウム粉末を注入した場合の結果を表1に示す。試験は、炭酸水素ナトリウムを、酸性成分である、SO、SO、HSO、HCl、HF、ホウ酸成分のグラム当量の合計に対し、1.9倍のグラム当量散布した場合と3.8倍のグラム当量散布した場合とで行った。排気ファン4出口の第4の煙道13でSOの挙動を分析したところ、1.9倍散布した場合と3.8倍散布した場合とどちらにおいても、58体積ppmから1体積ppm未満にまで低下し、SOの除去に大きな効果があることを確認できた。またホウ酸成分もB換算で224mg/mから、1.9倍の散布で59mg/m、3.8倍の散布で29mg/mまで低下した。
【0058】
排煙脱硝設備5におけるV等を活性成分とする脱硝触媒劣化の判断は目視で行った。すなわち年二回の定期点検時に触媒の状況を目視で点検し、緑色に変色していれば劣化したと判断した。1.9倍の散布で3.5年間使用し、脱硝触媒の劣化は認められず、さらに使用が可能であった。
【0059】
なお、煙突からの排ガス組成は、炭酸水素ナトリウムの微粉を散布しない場合ではOが8体積%であり、通常の燃焼状態であった。また、炭酸水素ナトリウム粉末注入によりバグフィルタ等既存設備へ影響を与えることはなかった。
【0060】
ここで、炭酸水素ナトリウムと排ガス中の酸性成分との反応生成物は、グラスファイバー用のガラス調合原料として使用でき、水酸化カルシウムを使用していたとき反応生成物として発生していた固形廃棄物を無くすことができた。
【0061】
【表1】
Figure 2004082103
【0062】
[例2(比較例)]
例1において、炭酸水素ナトリウムの代りに、平均粒子径が4μm、90質量%径が3μmの水酸化カルシウムを使用する以外は例1と同様に試験を行った。結果を表2に示す。
【0063】
例1と同様にしてSOを分析したところ、酸性ガス成分の化学当量に対し7.6倍の化学当量の散布で53体積ppmから6体積ppmにまで低下した。例1と比較すると、大量に散布したにもかかわらず、水酸化カルシウムはSOの除去効果が低いことが確認できた。またBも230mg/mから124mg/mの低下に留まった。本設備において水酸化カルシウムを使用した場合、脱硝触媒の連続使用期間は3年間であった。すなわち例2では3年で触媒が劣化してしまい交換が必要となった。これにより炭酸水素ナトリウムの1.9倍散布が優れていることが分かる。
【0064】
なお、試験時の煙突からの排ガス組成は、水酸化カルシウムを散布しない場合で、Oが8体積%であった。また、水酸化カルシウムの散布がバグフィルタ等既存設備へ影響を与えることはなかった。
【0065】
ここで、水酸化カルシウムとガラス炉からの排ガス中の酸性成分との反応物は、ガラス調合原料として使用できないので、固形廃棄物として廃棄した。
【0066】
【表2】
Figure 2004082103
【0067】
【発明の効果】
SOを含有するガスに、炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの粉末を接触させることにより、ガス中のSOが極めて低濃度まで効率よく除去され、Vを活性成分とする触媒の酸性硫安による被毒を回避することができる。また、ガス中のホウ酸成分の除去にも優れ、ガス温度の低下時の固体析出による触媒への付着を回避することができる。よって、本発明のガスの処理方法は、Vを活性成分とする触媒の連続使用期間の長期化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ガラスの溶融炉より排出されたSOを含有するガスを処理する方法を示すフロー図。
【符号の説明】
1:ガラスの溶融炉
2:スタビライザ
3:集塵器(例えばバグフィルタ)
4:排気ファン
5:排煙脱硝設備
6:煙突
7:アルカリ水
8:例1では炭酸水素ナトリウム粉末、例2では水酸化カルシウム粉末
9:捕集ダスト
10:第1の煙道
11:第2の煙道
12:第3の煙道
13:第4の煙道
14:第5の煙道

Claims (7)

  1. SOを含有するガスに、炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの粉末を接触させて、SO濃度が5体積ppm以下となったガスを、Vを活性成分とする触媒で処理することを特徴とするガスの処理方法。
  2. 前記炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの粉末は比表面積が1m/g以上である請求項1に記載のガスの処理方法。
  3. 前記炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの粉末は体積平均粒子直径が1〜100μmである請求項1または2に記載のガスの処理方法。
  4. 前記SOを含有するガスはガラスの加熱工程もしくは溶融工程から排出されるガス、重油焚きボイラーから排出されるガスまたはゴミ焼却設備から排出されるガスである請求項1〜3のいずれかに記載のガスの処理方法。
  5. 前記SOを含有するガスが、ホウケイ酸ガラスの溶融工程から排出されるホウ酸成分をB換算で100mg/m以上含有するガスであって、ホウ酸成分が90mg/m以下となったガスを、Vを活性成分とする触媒で処理する請求項1〜4のいずれかに記載のガスの処理方法。
  6. 前記SOを含有するガスに前記炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの粉末を接触させた後、発生した炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの反応生成物を、ガラス原料として再使用する請求項1〜5のいずれかに記載のガスの処理方法。
  7. 前記炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの粉末は軽灰である請求項1〜6のいずれかに記載のガスの処理方法。
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