JP2004081020A - キメラ遺伝子の作製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】低いバックグラウンドレベルで且つ簡便に、より多様なキメラ遺伝子(群)を効率よく作製する方法、さらには、よりバラエティーに富んだキメラ遺伝子ライブラリを構築する方法を提供する。
【解決手段】2種以上のDNA分子を親分子として、これらのDNA分子の末端に付加配列を結合させておき、これらを鋳型として該付加配列を有するプライマーを特定の組み合わせで用い、アニール・伸長条件を調節してPCR法を実施することで、多様な組換えを起こす。
【選択図】 図1
【解決手段】2種以上のDNA分子を親分子として、これらのDNA分子の末端に付加配列を結合させておき、これらを鋳型として該付加配列を有するプライマーを特定の組み合わせで用い、アニール・伸長条件を調節してPCR法を実施することで、多様な組換えを起こす。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、キメラ遺伝子を作製する方法に関し、さらにはキメラ遺伝子ライブラリを作製する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年酵素・蛋白質を分子レベルで育種し、より望ましい性質を獲得した変異体を選抜する様々な技術が研究・開発されており、これらの研究は、非常に効率の良い酵素・蛋白質の機能改良につながるものとして注目される。実際に、Randommutagenesis(ランダムな変異導入技術)とそれに続いた、より望ましい特性を獲得した変異体のスクリーニングというステップを繰り返すことによって行なわれる蛋白質の指向進化は、望ましい特徴を持った蛋白質を短期間のうちに創り出すことが可能であることを示唆した。しかしながら、さらに優れた性質を獲得した蛋白質分子を取得するためには、アミノ酸配列の多様性が非常に重要である。このため、高度に多様化した配列レパートリーからなる初期変異体ライブラリを構築することに多くの力が注がれてきた。
【0003】
1種類の遺伝子を親分子として初期変異体ライブラリを作製する手法として Error−prone PCR、Cassette mutagenesisなどがある。さらに、多種類の相同性のある遺伝子を親分子としてキメラ遺伝子(群)を作製する手法として例えばDNA Shuffling (DNAシャフリング法)が知られ、このような手法から作られたキメラ遺伝子ライブラリは、1種類の分子から出発する Random mutagenesis を用いて作られたライブラリよりも多く用いられてきた。この理由は、全く新規な特性を望む場合にはアミノ酸配列に劇的な変化が一般的に要されるからである。
【0004】
DNAシャフリング法は、相同遺伝子をDNase Iで切断した断片同士が、保存された領域の間で組換えを起こすことを利用したものである。遺伝子ファミリー間でのDNAシャフリング法はファミリー シャフリング法とも呼ばれ、多くの蛋白質の機能改良に用いられてきた。例えば、cephalosporinase (Crameri A. et al., DNA Shuffling of a Family of Genes from Diverse Species Accelerates Direct Evolution, Nature,1998, 391, 288−291)、biphenyl dioxygenase (Kumamaru T. et al., Enhanced Degradation of Polychlorinated Biphenyls by Directed Evolution of Biphenyl Dioxygenase, Nat. Biotechnol., 1998, 16, 663−666)、thymidine kinase (Christians F.C. et al., Directed Evolution of Thymidine Kinase for AZT Phosphorylation using DNA Family Shuffling, Nat. Biotechnol, 1999, 17, 259−264)、catechol 2,3−dioxygenase (Kikuchi M.et al., Novel Family Shuffling Methods for the in vitro Evolution of Enzymes, Gene, 1999, 236, 159−167)、cytochrome P450 (Abecassis V. et al., High Efficiency Family Shuffling Based on Multi−step PCR and in vivo DNARecombination in yeast: statistical and functional analysis of a combinatorial library between human P450 1A1 and 1A2, Nucl. Acid. Res., 2000, 28, e88q)、subtilisin(Ness J.R. et al., DNA shuffling of subgenomic sequences of subtilisin, Nat. Biotechnol., 1999, 17, 893−896)、triazine hydrolase (Raillard S−A. et al., Novel Enzyme Activities and Functional Plasticity Revealed by Recombining Highly Homologous Enzymes, Chem. Biol.,2001, 8, 891−898)などである。しかし、標準的なファミリー シャフリング法では時々、高いバックグラウンドが見られることがある。組み換わらなかった親分子がそのまま高い割合でライブラリに含まれるのである。時には100%親分子であることもある(Kikuchi et al., 1999前出)。加えて、Stemmerにより示されているように、ファミリー シャフリング法において、親分子の塩基配列間で互いに連続して一致する配列が15bp以下の場合には、その領域では組換えはめったに起こらない(Stemmer W.P.C. DNA Shuffling by Random Fragmentationand Reassembly: In vitro Recombination for Molecular Evolution, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 1994, 91, 10747−10751)。従って、高いバックグラウンドレベルを改善し、比較的短い配列一致領域でも組換えが起きる、簡便で且つ効率的にキメラ遺伝子を作製する手法が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、低いバックグラウンドレベルで且つ簡便に、より多様なキメラ遺伝子(群)を効率よく作製する方法、さらには、よりバラエティーに富んだキメラ遺伝子ライブラリを構築する方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を達成するために、クラゲ由来の遺伝子である緑色蛍光発光蛋白質(GFP:Green fluorescent protein)遺伝子とその類縁遺伝子である黄色蛍光発光蛋白質(YFP:Yellow fluorescent protein)遺伝子(両者の塩基配列相同性は72%である。)とをモデル遺伝子として用い、これらをPCR法の最中にキメラ化させるというアプローチで鋭意検討を行った。その結果、ある程度の相同性を有する2種以上のDNA分子を親分子として、これらのDNA分子の末端に付加配列を結合させておき、これらを鋳型として該付加配列を有するプライマーを用い、アニール・伸長条件を調節してPCR法を実施することで、伸長途上の長さの異なるプライマーを利用して多様な組換えを起こし得、このような組換えを起こした断片が指数関数的に増幅し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
従って本発明は、少なくとも2種のDNA分子を鋳型としてPCR法によりキメラ遺伝子(群)を作製する方法であって、少なくとも5′側に固有配列(a)を付加させたDNA分子(X)と、少なくとも3′側に固有配列(d)を付加させたDNA分子(Y)とを鋳型として、DNA分子(X)のセンス鎖側の固有配列(a)を有するプライマーと、DNA分子(Y)の非センス鎖側の固有配列(d)を有するプライマーとを用いてPCR法を実施することを特徴とする、キメラ遺伝子(群)の作製方法である。
本発明はさらに、少なくとも2種のDNA分子を鋳型としてPCR法によりキメラ遺伝子(群)を作製する方法であって、5′側に固有配列(a)を付加させ3′側に固有配列(b)を付加させたDNA分子(X)と、5′側に固有配列(c)を付加させ3′側に固有配列(d)を付加させたDNA分子(Y)とを鋳型として、DNA分子(X)のセンス鎖側の固有配列(a)を有するプライマーと、DNA分子(Y)の非センス鎖側の固有配列(d)を有するプライマーとのプライマーセットを用いて、又は、DNA分子(X)の非センス鎖側の固有配列(b)を有するプライマーと、DNA分子(Y)のセンス鎖側の固有配列(c)を有するプライマーとのプライマーセットを用いて、PCR法を実施することを特徴とする、キメラ遺伝子の作製方法である。
本発明による上記の方法を本発明者らは“RDA−PCR法”(Recombination−Dependent exponential Amplification、組換え依存性指数関数的増幅)と呼称する。
【0008】
本発明の好ましい実施態様として、鋳型とするDNA分子において、該各固有配列とDNA分子末端の間に制限酵素部位を挿入しておく態様がある。
また、本発明の好ましい実施態様として、PCR法の実施において90〜98℃ 10〜60秒、40〜50℃ 1〜5秒、及び72℃ 0〜5秒のサイクルを繰り返す態様がある。
【0009】
本発明者らはさらに、上記のような“RDA−PCR法”の手法を従来のシャフリング法と組み合わせることで、キメラ遺伝子がより効率よく作製できることを見出した。
従って本発明はまた、少なくとも2種のDNA分子を鋳型としてPCR法によりキメラ遺伝子を作製する方法であって、少なくとも5′側に固有配列(a)を付加させたDNA分子(X)と、少なくとも3′側に固有配列(d)を付加させたDNA分子(Y)を、DNaseIで消化し断片化した後、これらの断片を鋳型としてプライマーの非存在下でPCR法を実施し、増幅された分子を鋳型として、DNA分子(X)のセンス鎖側の固有配列(a)を有するプライマーと、DNA分子(Y)の非センス鎖側の固有配列(d)を有するプライマーとを用いてPCR法を実施することを特徴とする、キメラ遺伝子の作製方法に向けられている。
本発明はさらに、少なくとも2種のDNA分子を鋳型としてPCR法によりキメラ遺伝子を作製する方法であって、5′側に固有配列(a)を付加させ3′側に固有配列(b)を付加させたDNA分子(X)と、5′側に固有配列(c)を付加させ3′側に固有配列(d)を付加させたDNA分子(Y)とを、DNaseIで消化し断片化した後、これらの断片を鋳型としてプライマーの非存在下でPCR法を実施し、増幅された分子を鋳型として、DNA分子(X)のセンス鎖側の固有配列(a)を有するプライマーと、DNA分子(Y)の非センス鎖側の固有配列(d)を有するプライマーとのプライマーセットを用いて、又は、DNA分子(X)の非センス鎖側の固有配列(b)を有するプライマーと、DNA分子(Y)のセンス鎖側の固有配列(c)を有するプライマーとのプライマーセットを用いて、PCR法を実施することを特徴とする、キメラ遺伝子の作製方法に向けられている。
上記の方法の好ましい実施態様として、DNaseI消化を施すDNA分子において、該各固有配列とDNA分子末端の間に制限酵素部位を挿入しておく態様がある。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の方法を詳細に説明する。
本発明のキメラ遺伝子の作製方法を適用するのに適した少なくとも2種以上の親DNA分子としては、ある程度の塩基配列相同性を持つことが必要である。それらの相同性は一般的に50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70〜90%程度である。
そのような類縁遺伝子の例として、上記のGFP遺伝子とYFP遺伝子(各々720bp、塩基配列相同性72%)、産業上有用な各種加水分解酵素(リパーゼやセルラーゼ等)あるいは各種の酸化還元酵素などが挙げられる。
本発明の方法は、上記のような互いに配列相同性のある2種の親DNA分子、さらに3種以上の親DNA分子に適用することができる。
【0011】
[親DNA分子の調製]
細胞、組織、臨床検体、あるいは土壌サンプルなどから、本発明の方法を適用するDNA分子を抽出してくる手法は、特に制限されるものではなく、常法に従って実施することができる。例えば、フェノール抽出法、プロテイナーゼK/フェノール抽出法、プロテイナーゼK/フェノール/クロロホルム抽出法、アルカリ溶解法、ボイリング法などがある。対象とする遺伝子ファミリー内で、高度に保存されている領域が予め分かっている場合には、雑居物を多く含む例えば土壌サンプルの希釈液などを鋳型としたPCR増幅によっても調製可能である。
また、市販されているDNA分子を使用することもできる。
【0012】
[固有配列を付加させた親DNA分子]
以下、二種の親DNA分子(XとY)を用いてキメラ遺伝子を作製する場合を例にとり、本発明を説明する。
少なくとも5′側に固有配列(a)を付加させたDNA分子(X)と、少なくとも3′側に固有配列(d)を付加させたDNA分子(Y)とを用意する。さらに具体的には、5′側に固有配列(a)を付加させ3′側に固有配列(b)を付加させたDNA分子(X)と、5′側に固有配列(c)を付加させ3′側に固有配列(d)を付加させたDNA分子(Y)を用意する。
ここで各固有配列は、親DNA分子にアニールせず且つ固有配列同士でアニールすることがないように選択する。固有配列の長さは10〜50bp程度が適当で、例えば20bpであり塩基の割合がA:G:C:T=5:5:5:5となるような配列が選ばれる。
また、各固有配列と親DNA分子の末端との間に制限酵素部位が挿入されていることが好ましい。使用できる制限酵素部位の例としては、Xba I部位、Bam HI部位、Eco RI部位などがある。
【0013】
上記のように5′側に固有配列を付加させ3′側に固有配列を付加させた親DNA分子は、それぞれの親DNA分子を鋳型として、該固有配列を含むプライマーを用いてPCR法を実施することで作製することができる。
5′側に固有配列(a)を付加させ3′側に固有配列(b)を付加させたDNA分子(X)を調製するには、親DNA分子(X)を鋳型として、付加させようとする固有配列(a)のセンス鎖側の配列に続けて親DNA分子(X)のセンス鎖側の5′末端配列を有するプライマー、好ましくは付加させようとする固有配列(a)のセンス鎖側の配列に続けて制限酵素部位、さらに親DNA分子(X)のセンス鎖側の5′末端配列を有するプライマーと、付加させようとする固有配列(b)の非センス鎖側の配列に続けて親DNA分子(X)の非センス鎖側の5′末端配列を有するプライマー、好ましくは付加させようとする固有配列(b)の非センス鎖側の配列に続けて制限酵素部位、さらに親DNA分子(X)の非センス鎖側の5′末端配列を有するプライマーとを用いてPCR法を実施することにより、所望の配列を付加させた親DNA分子(X)を増幅させることができる。
【0014】
また、5′側に固有配列(c)を付加させ3′側に固有配列(d)を付加させたDNA分子(Y)を調製するには、親DNA分子(Y)を鋳型として、付加させようとする固有配列(c)のセンス鎖側の配列に続けて親DNA分子(Y)のセンス鎖側の5′末端配列を有するプライマー、好ましくは付加させようとする固有配列(c)のセンス鎖側の配列に続けて制限酵素部位、さらに親DNA分子(Y)のセンス鎖側の5′末端配列を有するプライマーと、付加させようとする固有配列(d)の非センス鎖側の配列に続けて親DNA分子(Y)の非センス鎖側の5′末端配列を有するプライマー、好ましくは付加させようとする固有配列(d)の非センス鎖側の配列に続けて制限酵素部位、さらに親DNA分子(Y)の非センス鎖側の5′末端配列を有するプライマーを用いてPCR法を実施することにより、所望の配列を付加させた親DNA分子(Y)を増幅させることができる。
上記のプライマーの配列中、親DNA分子の5′末端配列に相当する配列の長さは10〜50bpが適当であり、より好ましくは15〜30bpである。
【0015】
このようなPCRプライマーの設計は常法に従って行うことができる。
具体例としてYFP遺伝子とGFP遺伝子とを親DNA分子として使用する場合の、プライマーセットの一例を挙げる。以下に示す4種のプライマーは各々、配列番号1及び2がYFP遺伝子増幅用のプライマーであり、配列番号3及び4がGFP遺伝子増幅用のプライマーである。
【0016】
【表1】
上記配列において小文字部分は固有配列(a,b,c,d)であり、下線付きの小文字部分はXbaI認識部位(制限酵素部位)であり、大文字部分はYFP遺伝子又はGFP遺伝子とのアニール部位である。これらのプライマーは上記名称で(株)FASMACから入手することができる。
上記のプライマーにおける小文字部分の配列(固有配列)は、後述するRDA−PCRで用いるプライマーの配列となる。
【0017】
【表2】
【0018】
上記PCR法における、DNAの変性、プライマーのアニーリング、DNA鎖伸長といった各ステップの反応温度と時間、サイクル数、反応溶液組成、使用DNAポリメラーゼなどは、常法に従って採用でき、また至適条件を適宜選択することもできる。
ここで用いるPCRの好ましい反応条件として、例えば、反応時0.2 mM デオキシヌクレオチド3リン酸、0.2μM プライマー、1 ng/μl 鋳型DNA、50 mU/μl ExTaq DNA ポリメラーゼ(TaKaRa社)、酵素に添付されているバッファー1/10量からなる反応がある。
このようなPCR法の実施により、5′側に固有配列(a)及び制限酵素部位を付加させ3′側に固有配列(b)及び制限酵素部位を付加させたDNA分子(X)、及び5′側に固有配列(c)及び制限酵素部位を付加させ3′側に固有配列(d)及び制限酵素部位を付加させたDNA分子(Y)とを別々に増幅することができる。こうして増幅したDNA断片を各々、aXb、cYdと表す。
これらのDNA断片は、アガロースゲル電気泳動などで未反応のプライマーやプライマーダイマーなどと分離し、その後抽出して得ることができる。
【0019】
[固有配列を持つ親DNA分子を鋳型として用いたRDA−PCR]
上記のようにして別々に得たaXb、cYdを、混合し混合物を得る。ここでaXbとcYdとを等モル混合した溶液を調製するのが好適である。
この混合物に、Xのセンス鎖側の固有配列(a)を有するプライマーと、Yの非センス鎖側の固有配列(d)を有するプライマーとのプライマーセット▲1▼を用いて、又は、Xの非センス鎖側の固有配列(b)を有するプライマーと、Yのセンス鎖側の固有配列(c)を有するプライマーとのプライマーセット▲2▼を用いて、PCR法を実施する。このような非対称のプライマーのセットを本発明者らは“skewプライマー”又は“skewプライマーセット”と呼称する。
例えば、YFP遺伝子とGFP遺伝子とを親DNA分子として使用し、上記表1に記載されたプライマーを用いて増幅されたDNA分子をこのRDA−PCRの鋳型とするとき、上記表2に記載されたプライマーをa1+d1又はb1+c1の組み合わせで用いてPCR法を実施する。
【0020】
PCRにおける反応条件は、アニール及び伸長反応時間を従来法より短くし、アニール温度を従来法より低くするような条件を採用する。こうすることによって伸長途上のプライマーが組換えに寄与し得、プライマーセット▲1▼の使用により遺伝子の前部がX及び後部がY由来の配列からなるキメラ遺伝子が作製され、プライマーセット▲2▼の使用により前部がY及び後部がX由来の配列からなるキメラ遺伝子を作成することが可能となる。
さらに詳しくいうと、アニール、伸長反応の時間を短くすると、添加したプライマーは1回のサイクルでは最後まで完全に伸長を行うことができない。加えて、比較的低いアニール温度を採用するため、伸長途中のプライマーは次のサイクルにおいてもとの鋳型とは異なる親分子にアニールしやすくなる。またDNAポリメラーゼの活性が低下し、複数のサイクルにまたがるプライマー伸長反応が起こりやすくなる。ここで、同一の鎖上で伸長反応を完結した(途中で終っていても良いが)フラグメント自身は、以降のサイクルでは伸長反応の鋳型とはならない。それは、もう一方のプライマーがアニールする部分がないためである。このため、親DNA分子の数は直線的にしか増幅されない。これに対して、もう一方のストランドとアニールし伸長したプライマー(組換えを起こしたプライマー)は、もう一方のskew プライマーとアニールできるため、以降のサイクルで伸長反応の鋳型となって、指数関数的に増幅されることとなる。この結果として、このシステムでは、奇数個のクロスオーバーポイントを持つキメラ遺伝子のみ選択的に蓄積されることになる。
【0021】
使用するDNAポリメラーゼとしては、耐熱性DNAポリメラーゼであれば特に制限されず、Taq DNAポリメラーゼやExTaq DNAポリメラーゼを使用することができる。一般に、突然変異の導入を防ぎ最終産物の収量を増加させるために、ExTaq DNAポリメラーゼを使用するのが好ましい。その他の耐熱性DNAポリメラーゼを使用することも可能であって、例えば Pfu turbo(Stratagene製)などを使用することができるが、未熟な伸長途上のプライマーを発生させる必要があるため、低い伸長速度を持った耐熱性DNAポリメラーゼが好まれる。
PCR反応溶液の組成は常法に従うことができる。例えば、反応時0.2 mM デオキシヌクレオチド3リン酸、0.5μM プライマー、50 mU/μl ExTaq DNA ポリメラーゼ(TaKaRa社)、酵素に添付されているバッファー 1/10量である。
反応溶液における鋳型DNA濃度は、それぞれの鋳型DNA分子につき10〜500pg/μlが適当であり、より好ましくは10〜100pg/μlである。この濃度が500pg/μlを超えると、組換えを起こさなかったDNA断片と親分子との複合体や、元の親分子がかなりの割合で、生じてきたキメラ遺伝子に混入するからである。
【0022】
RDA−PCR法における各ステップの反応時間・温度、サイクル数は適用する鋳型DNA分子に応じて、またキメラ遺伝子の収量を上げるように適宜選択できる。変性ステップは、2本鎖DNAを1本鎖へと変性させるのに十分な条件を適宜選択し実施すればよい。一般に変性ステップは90〜98℃ 10〜60秒の範囲で実施され、さらに92〜96℃ 20〜40秒がより好ましい。
変性のステップに続くアニール及び伸長反応においては、一般に従来法よりも時間を短くし、アニール温度を従来法より低くするような条件を選択する。例えばアニール伸長ステップとして40〜50℃の温度、好ましくは40〜45℃の温度が選択でき、変性ステップ及びアニール伸長ステップのサイクルを繰り返す。また、アニール伸長ステップと変性ステップとの間にもう一段階の伸長ステップを設けてもよく、その伸長ステップは例えば72℃で5秒まで、好ましくは3秒程度までである。従って、反応条件の典型的な例として94℃ 60秒、その後、94℃ 30秒、40〜45℃ 1〜5秒、72℃ 0〜3秒を40サイクル、続いて94℃ 30秒、50℃ 30秒、72℃ 30秒を10サイクルが挙げられる。後半の10サイクルはキメラ遺伝子の収量を上げるための増幅ステップである。
【0023】
こうして増幅された断片は制限酵素処理を行った後、ポリアクリルアミドゲル電気泳動などで解析することができ、プラスミドベクター等に挿入することでキメラ遺伝子ライブラリとすることができ、また、発現ベクターに挿入して、例えば大腸菌を形質転換して遺伝子を発現させることも可能である。
【0024】
本発明の方法の一例の概要を図1に示す。(1)親遺伝子もしくは遺伝子グループ(gene A、B、CとX、Y、Z)を別々に遺伝子特異的なプライマーで通常のPCR法により増幅する。ただし、プライマーには任意に設定した配列が付加されている(図中a、b、c、d)。図1中のa、b、c、dには上記で説明してきた固有配列又は固有配列と制限酵素部位が含まれる。(2)2つの親DNA分子グループを混合し、2つに分ける。(3) RDA−PCRを行う。キメラ遺伝子プールを産出するために、固有配列aとdもしくは固有配列bとcの skew プライマーセットを用いる。こうすることで、左側のラインでは、遺伝子の前部がA/B/Cまたはそれらのキメラで、後部がX/Y/Zまたはそれらのキメラを中心としたライブラリが構築し得、一方右側のラインでは、遺伝子の前部がX/Y/Zまたはそれらのキメラであり、後部がA/B/Cまたはそれらのキメラを中心としたライブラリを構築し得る。(4)適切な発現ベクターにクローニングする。(5)さらにファミリー シャフリング法を実施することもできる。
【0025】
[RDA−PCRのシャフリングとの組み合わせ]
上記説明してきた方法は、従来のシャフリング法と組み合わせて実施することもできる。
上記のように少なくとも2種の親DNA分子に付加配列を結合させた、例えばaXbとcYdとを、等モル混合した溶液を調製する。ファミリー シャフリング法は常法により実施することができ、例えば Stemmer W.P.C. DNA Shuffling by Random Fragmentation and Reassembly: In vitro Recombination for Molecular Evolution, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 1994, 91, 10747−10751に報告されているような手法を用いることができる。上記溶液にDNase Iによるランダム消化を施し、プライマーを入れないPCRを実施し、再構築されたフラグメントを得る。
DNase Iによる消化は、一般的にはマグネシウムイオンを含んだ緩衝液に溶解させた鋳型混合液に対し1 UのDNase Iを加え、適当な時間保温することによってなされる。ファミリーシャフリングに用いる断片は、20−100bpの断片長であることが好ましいので、このような断片長が得られるよう、反応時間と酵素量を調節する必要がある。
プライマーを加えないPCR様の反応は、一般的なPCRの反応条件と同一であり、例えば94℃30秒、50℃30秒、72℃30秒からなる温度サイクルを30回繰り返すことによってなされる。
こうして得られたフラグメントを鋳型として更なるPCRを実施し、このPCRにおいて、上記に説明したプライマーセット▲1▼又はプライマーセット▲2▼のようなskewプライマーを用いて増幅する。Skewプライマーセットを用いれば、RDA−PCRと同様に組換えを起こして生じたキメラ遺伝子のみ指数関数的な増幅が起こる。このPCRの反応条件は上記のプライマーなしのPCRと同様にすることができる。
【0026】
このように、従来法であるシャフリング法にskewプライマーを組み合わせることで、組換えを起したキメラ遺伝子をより効率的に取得することが可能となる。また、RDA−PCRと、skewプライマーを用いたファミリーシャッフリング法を組み合わせて使用する(RDA−PCRにより作出されたキメラ遺伝子ライブラリを用いてファミリーシャッフリングを行う場合や、またその逆の場合)ことにより、多様な組換えを起こすことが可能となり、より多様なキメラ遺伝子、より多様なキメラ遺伝子ライブラリを作製することができるようになる。
こうして増幅された断片は制限酵素処理を行った後、ポリアクリルアミドゲル電気泳動などで解析することができ、プラスミドベクター等に挿入することでキメラ遺伝子ライブラリとすることができ、また、発現ベクターに挿入して、例えば大腸菌を形質転換して遺伝子を発現させることも可能である。
【0027】
[キメラ遺伝子ライブラリの構築]
上記のようにして増幅された断片は制限酵素処理を行った後、プラスミドベクター、あるいはファージ、コスミドなどのベクターに挿入することによって、キメラ遺伝子ライブラリを作ることができる。
遺伝子ライブラリの作製に用いるベクターは取得した遺伝子断片を挿入できるものであればどのようなものでも可能であるが、より望ましくは、挿入した遺伝子を発現できるように設計されたものを用いるほうが良い。つまり遺伝子発現に必要なRNAポリメラーゼの認識部位(プロモーター、ターミネーター)、リボソームの認識部位などを組み込んだベクターである。また正しい向きで遺伝子が挿入され、挿入した遺伝子の遺伝暗号(コドン)の読み枠(フレーム)がずれないように設計されたものであることも重要である。遺伝子をこれらのようなベクターに挿入し、遺伝子ライブラリを構築する方法は通常のどのような方法を用いても良い。
例えば、キメラ遺伝子の増幅断片を好ましい制限酵素で処理を行い、電気泳動で断片のみを分離した後精製を行い、あらかじめ同じ制限酵素で処理を行ったプラスミドベクターと混合する。このDNA溶液にDNAリガーゼを加えて16℃に保温することでキメラ遺伝子断片とベクターを連結する。宿主となる菌体溶液と混合する(この場合大腸菌)し、30分間程度氷冷した後、42℃で、40秒から50秒程度加熱し、急冷を行う。この菌液を1時間程度前培養してから適切な抗生物質を含むプレート倍地に植菌し、37℃で培養することによって遺伝子ライブラリが構築される。
【0028】
【実施例】
以下に実施例をもって、本発明を詳細に説明する。本発明はこれらの記載に限定されるものではない。
1.材料
gfp(GFP遺伝子)とyfp(YFP遺伝子)はクロンテック(株)より購入した。組換えTaq DNA polymerase (rTaq)とEx Taqは宝酒造(株)より購入した。PCR、シーケンスに用いるプライマーは(株)FASMACより購入した。該プライマーの配列とその名前は次のとおりである。
ax/YF1:gctacgcatgaatgcgtacttctagatATGAGCAAGGGCGAGGA
bx/YR1:ggattccacatagtctcaggtctagatTTACTTGTACAGCTCGTCCA
cx/GF1:gacgcttctgaagaagtccttctagatATGAGTAAAGGAGAAGAACTTTT
dx/GF1:tgccggatacttgaatagcctctagacCTATTTGTATAGTTCATCCATGC
小文字部分は skew プライマーのアニール部位(固有配列)、下線部で示したところは Xba I部位、大文字はyfpもしくはgfpのアニール部位である。
skew プライマーの名前と配列は次のようになっている。
a:gctacgcatgaatgcgtact
b:ggattccacatagtctcagg
c:gacgcttctgaagaagtcct
d:tgccggatacttgaatagcc
これらの4つのプライマーは何れの親分子とミスアニールせず、且つプライマーダイマーを形成しないように注意して設計したものである。
【0029】
2.親分子の調製
yfpとgfpは、PCR法にて、それぞれ上記のプライマーのセット ax/YF1+ bx/YR1 及び cx/GF1+dx/GF1 を用いて増幅した。増幅した断片(aYbとcGdと表記する)はアガロースゲル電気泳動で未反応のプライマーや、プライマーダイマーと分離し、その後抽出し、エタノールを加えて沈殿した。
ここで用いたPCRの条件は、一般的に行われているものであり、94℃30秒、50℃30秒、72℃30秒の温度サイクルを25回繰り返すことによって増幅を行った。アガロースゲル電気泳動は、一般的な緩衝液系で行った。アガロースゲルの濃度は1%であった。エチジウムブロマイド染色を行うことで増幅産物を可視化し、その領域のアガロースゲルをナイフで切り取った。アガロースゲルからの増幅断片の抽出は、アガロースゲルを凍結融解した後に圧潰し、さらにフェノール抽出を行うことで達成した。得られた抽出液に対し、終濃度300 mMとなるように酢酸ナトリウムを加え、さらに2.5 倍容のエタノールを加えることにより増幅断片を沈殿として回収した。
【0030】
3.ファミリーシャフリング
aYbとcGdのファミリーシャフリングは基本的には、Stemmer W.P.C. DNA Shuffling by Random Fragmentation and Reassembly: In vitro Recombination for Molecular Evolution, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 1994, 91, 10747−10751 の報告にしたがって行った。以下略記する。aYbとcGdの溶液を等量混合し、DNase Iによるランダム消化を行った。100 bp以下の消化断片を2% アガロースゲルにより分離し、鋳型として用いた。シャフリング反応は、宝酒造(株)のrTaqとプレミックスバッファーを用いてオリジナルのプロトコルにしたがって行った(上記 Stemmer, 1994)。プライマーを入れないPCRは次に記すサイクル条件で行った。94℃ 60秒のあと、94℃、30秒、50℃ 30秒、72℃ 30秒を25サイクル行った。再構築されたフラグメントはフェノール抽出した後、エタノールを用いて沈殿した。その後、これを次のPCRの鋳型とした。再構築した断片のPCR増幅はプライマーの平行セット(a+b, c+d)またはskewプライマーセット(a+d,b+c)を用いた。サイクル条件はプライマーなしのPCRと同じ条件で行った。合成した産物は、ゲル電気泳動のあと精製して、滅菌水中に最終濃度が20ng/μlになるように溶解した。
【0031】
4.RDA−PCR
RDA−PCRには、aYbとcGdを等モル混合した溶液を鋳型として用いた。RDA−PCRには、rTaqの代わりにExTaq(宝酒造(株))を用いた。これは突然変異の導入を防ぎ、最終産物の収量を増加させるためである。反応溶液の組成は酵素に添付されている反応液組成を参考にした。典型的なRDA−PCRの反応条件は下記のとおりである。94℃ 60秒、その後、94℃ 30秒、45℃ 5秒、72℃ 3秒を40サイクル、続いて94℃ 30秒、50℃ 30秒、72℃ 30秒を10サイクルである。キメラ遺伝子の生産は最初の40サイクルの中で行われると考えられ、後半の10サイクルはキメラ遺伝子の収量を上げるための増幅ステップである。
【0032】
5.RFLP分析(restriction fragment length polymorphism:制限酵素切断片長多型分析)
こうしてクローン化したキメラ遺伝子を通常のPCR法(5μl/reaction、94℃ 60秒のあと、94℃、30秒、50℃ 30秒、72℃ 30秒を25サイクル)にて増幅し、増幅された産物を80ng以上含む反応混合物2μlを、0.5UのAlu Iを含む制限酵素含有反応系10μl(33 mM Tris−acetate (pH7.9), 10mM 酢酸マグネシウム,66 mM 酢酸カリウム、1mM DTT, 0.01% BSA)(宝酒造(株))に直接加えて、37℃、2時間インキュベートした。得られた Alu I消化フラグメントを6%のポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により解析した。
【0033】
6.RDA−PCRの成否と最適化
RDA−PCR法の結果を図2に示す。図2の上部に示すように反応系に添加するプライマー(a,b,c)及び親DNA分子(鋳型)(aYb,cGd)を変動させた。5μlの反応混合物を1%アガロースゲル電気泳動にかけた。右側にある矢印は親分子の移動度を表している。レーンMはサイズマーカーである。モデル親分子として、野生型GFP遺伝子とその派生体であるYFP遺伝子を用いた。yfpのコドン使用頻度は哺乳類での発現用に最適化されているため、DNA配列レベルでのgfpとyfpのホモロジーは74%である。しかも、連続して一致する塩基数は平均すると3bpである。これはシャフリング法のテストケースに用いられたmurine とhuman IL−1β遺伝子よりも低い値である(Stemmer, 1994前出)。図2に示されるデータは、760bp付近のDNA増幅を示している。これはskew プライマーセット(bとc)と2つの親遺伝子(aYbとcGd)に依存的に増幅されていることがはっきりと示されている。同じ結果が、もう1つのskew プライマーセット(aとd)でも得られた(図示していない)。
【0034】
さらにRDA−PCRの最適化を検討した。まず増幅におけるアニール・伸長の温度条件プログラムが、産出されるキメラ遺伝子の収量に与える影響を調べた。
図3Aの実験ではSkew プライマーセットにbとcを用いた。12μlの反応液を4つのチューブに分け、次の条件でRDA−PCRを行った。94℃ 60秒のあと、94℃、20秒、X℃ 5秒を40サイクル行った。その後、94℃、30秒、50℃ 30秒、72℃30秒を10サイクル行った。該X℃(アニール・伸長温度)を55℃、50℃、45℃、40℃で変動させた。その結果は55℃(レーン1)、50℃(レーン2)、45℃(レーン3)、40℃(レーン4)となった。
図3Bの実験ではSkew プライマーセットにaとdを用いた。アニールステップの後にさらに72℃で3秒間伸長するステップを導入した効果を観察した。各反応の温度条件は次のとおりである。レーン1及び2:94℃、1分の後、94℃ 20秒、50℃(レーン2は45℃) 5秒、72℃ 3秒を40サイクル、その後、94℃ 30秒、50℃ 30秒、72℃ 30秒を10サイクル、レーン3:94℃、1分の後、94℃ 20秒、45℃ 5秒を60サイクル、94℃ 30秒、50℃ 30秒、72℃ 30秒を10サイクル、レーン4:94℃、1分の後、94℃ 30秒、50℃ 30秒、72℃ 30秒を25サイクル(従来PCR法の典型的な温度プログラム)。右側の矢印は親/キメラ遺伝子断片の移動点を示す。レーンMはサイズマーカーである。
【0035】
以前に報告されているように、2つの似た配列同士の相同組換えはアニール/伸長温度が55℃以上では効率的に起こらないことがわかっている(KawarasakiY. et al., A Method for Functional Mapping of Protein−Protein Binding Domain by Preferential Amplification of the Shortest Amplicon Using PCR. Anal. Biochem., 2002, 303, 34−4)。yfpとgfpのキメラ遺伝子創出の場合、効率的に行うためにはアニール・伸長は45℃以下で行うのが好ましい(図3A)。しかし、温度をさらに下げても(37℃以下)、改善効果は見られなかった。これはおそらく、プライマーのアニールの厳密性が低くなったこと、そしてTaq DNA ポリメラーゼが低い温度ではうまく機能しないことが原因であると考えられる。
キメラ遺伝子の収量を増加するために、アニール伸長ステップと変性ステップの間にさらに72℃で数秒間伸長させるステップを導入してみたところ、サイクル数を増やした場合よりも効果があった(図3B)。しかしながら、反応条件を通常のPCRで用いられる条件(伸長反応70℃、30秒)で行うと、キメラ遺伝子が増幅されなかった。これはおそらく、プライマーが同一鋳型上で伸長を完結するのに十分な時間があったためであると考えられる。この結果より、未熟なプライマーを創り出すことが、相同組換えには不可欠であるということがわかった。
【0036】
ここで、yfpとgfpにおいて至適化されたこの反応条件は、他の全ての場合にも適用できるというわけではない。一般的に、温度と、アニール・伸長時間はケースごとに至適化する必要がある。これらは親分子の全体的、もしくは局所的な相同性(配列類似性)、またはskew プライマーのTm値や厳密性、親分子の長さに依存するからである。実際、親分子を同一のもの(aGbとcGd)にした場合、相同性のある2種類の親分子を用いた場合に比べて、キメラ遺伝子の合成量は多かった。そして、組換え反応はより高いアニール伸長反応(55℃以上)において観察できた。
【0037】
さらに、反応液中における鋳型とする親DNA分子の濃度を検討した。親分子濃度も、最終的なキメラ遺伝子の収量に影響を与えることが示された(図4)。親DNA分子、aYbとcGdの濃度を変えて反応に加え、最終濃度を図4の上部に示した。RDA−PCRの反応条件は先の「4.RDA−PCR」に記載したものに従った。図4中、レーンMはサイズマーカーである。このデータによれば効率的にキメラ遺伝子を産出するには、それぞれ約13pg/μl以上の親分子が必要であることを示している。しかしながら、500pg/μl以上の鋳型濃度は避けるべきであると考えられる。なぜなら、組換えを起さなかったDNA断片と親分子との複合体や、元の親分子がかなりの割合で、生じてきたキメラ遺伝子に混入するからである。
【0038】
7.キメラ遺伝子のクロスオーバーポイントのRFLP解析
ファミリー シャフリングまたはRDA−PCRによって産出されたキメラ遺伝子の違いを明らかし、この2つの手法の互換性について検討した。これら2つの方法を比較するために、通常のプロトコル(前記Stemmer, 1994)にしたがって、yfpとgfpのファミリー シャフリングを行った。しかし、gfp特異的プライマーを使ってランダムに選択した、ファミリー シャフリングにより作られた20クローンには組み換わった遺伝子は全くなかった。この場合、取得したライブラリはシャッフルされていないgfpのみから構成されているものであった。これはおそらく、gfpとyfpの間には連続して一致する塩基数の平均が3bpであることが原因であると考えられる。前記Stemmer, 1994が、murinとhuman IL−1β(連続して一致する塩基数の平均は4bp)との間のキメラ創出ではうまく行かず、Taq DNA ポリメラーゼの代わりに、Klenow fragment(クレノウ断片)を低い温度で使用することが必要であったと報告していることからも推察される。他の研究グループの報告では、2種類のcatechol 2,3−dioxygenase由来のキメラ遺伝子は、アミノ酸配列レベルでのホモロジーが84%であるにもかかわらず、ほとんど産出されなかった(1%以下)ということを報告している。
【0039】
一方、skew プライマー(bとc)を利用することにより、シャフリングにおいて、組換えの効率を劇的に改善することができた。アニールステップにおける温度や時間の変更は全く影響がなかったにも関わらずである。このデータは、DNase Iで消化された断片では親分子と全く同じ配列間での集合が起こりやすいということを示している。この結果、取得したPCR産物は組換えすることなしに再構築された親分子が大部分を占めることになる。一方 skew プライマーは、シャッフルされない分子、すなわち親分子と同じ配列になるように複製された分子は、以降のサイクルで鋳型として認識されないので、組換えを起したキメラ遺伝子のみが指数関数的に増幅される。従って、skew プライマーをファミリー シャフリングの際に用いることが提案される。
【0040】
シャフリングによって得た断片をT−vector(pGEM−T, Promega)につなぎあわせ、その後、E.coli DH5αFTに形質転換した。
組換えが起こったキメラ遺伝子をAlu I処理して得られる電気泳動パターンは、2つの親分子をそれぞれAlu I処理して得られる電気泳動パターンとは異なる。また、組換えの起こった部位によっても泳動のパターンは異なってくる。このことを利用して、組換えが起こったキメラ遺伝子クローンと組換えが起こった部位の同定を簡便に行うことができる評価系を構築した。
図5は2つの方法で得たキメラ遺伝子クローンをランダムに選択してAlu Iを用いて解析したRFLPの比較を表す。図5AはaYbとcGdのAlu I認識部位を示す。挿入断片はコロニーPCRで増幅し、RFLP解析に用いた。yfpとgfpはAlu Iにより認識される部位がそれぞれ1個所と9個所ある(図5A)。図5Aの上のパネルでは、親遺伝子を2つの長方形として、Alu I 認識部位の位置とならべて並べて示してある。a、b、c、dと表記した小さい長方形はskew プライマーのアニール部位を示す。ローマ数字付きのかぎで示された領域(この領域は2つの親分子のAlu I認識部位間で区切っている)で組換えが起こった場合のAlu I消化断片の典型的な電気泳動パターンをその下のパネルに示す(ただし1つの遺伝子につきクロスオーバーは1回しか起こらなかったと仮定している)。断片のパターンのローマ数字は上のパネルのものと一致する。白と黒のバーはそれぞれ、yfp由来、gfp由来のものを示す。キメラ遺伝子特異的Alu I 断片はアスタリスク付きの平行線の入ったバーで示す。その下にあるテーブルは親分子全長に対するフラグメントサイズのパーセンテージ(頭としっぽにつけた配列は除く)、そのフラグメント内における親分子間の配列の類似性、連続して一致する塩基配列のうち最も長い部分の塩基数、そして6塩基以上連続して一致する配列が出てくる頻度を示す。RFLPによって明らかになったクロスオーバーポイントの実際の分布も表にしてある。図5Bは RDA−PCRによって産出されたキメラ遺伝子(上)と、ファミリーシャフリング法(下)によって得られたキメラ遺伝子クローンのRFLP分析結果を表す。クローンの番号がレーンの上に記されている。レーンMはマーカーである。RDA−PCRにより構築されたキメラ遺伝子ライブラリのAlu I 消化の結果をレーン lib.に示す。レーン lib.のアスタリスク付きローマ数字は、図5Aのパネルの下のフラグメントと一致する。各レーンの下のローマ数字は、それぞれのフラグメントパターンの解析結果から得られた、それぞれのクロスオーバーポイントの位置(図5A)を示す。レーン 17のN.I. (not identified)はフラグメントパターンからクロスオーバーポイントを同定できなかったことを示す。
【0041】
RDA−PCRによって得たキメラ遺伝子はファミリー シャフリングによって得たものと明らかに異なるRFLPとして検出された。RDA−PCRによって得た全てのクローンと、ファミリー シャフリングによって得た20クローンのうち19クローンは、1回のクロスオーバーが起こったときに期待される泳動パターン(図5A)のうちの1つと一致した(つまり大部分のものは1回の組換えしかおこしていない)。このテストをした限りでは、ファミリー シャフリング法で得たクローンの1つだけが例外であった(図5Bの17番目)。このクローンのAlu I断片パターンは1回のクロスオーバーだけでは説明できない。この事実は、キメラ遺伝子は複数のクロスオーバーポイントを持っている可能性を示している。これらのデータは両方法ともに、得られたキメラ遺伝子は1回のクロスオーバーのみのキメラ遺伝子がライブラリの大部分を占めていることを示している。
【0042】
両手法のクロスオーバーポイントの分布は類似したものだったが、全く同じというわけでもなかった。両ライブラリにおいて、ランダムに選択したキメラクローンには領域(i)、(ii)、(iii)にクロスオーバーポイントを持ったものはなかった(図5A)。大部分のクロスオーバーポイントは親分子の領域(iv)〜(xi)の間にあった。シャフリングにより得たクローンのクロスオーバーポイントは、おもに領域(v)、(vii)、(ix)、(x)のような、親分子間で6塩基以上が連続して一致する頻度が高く、かつ比較的長い連続一致塩基長を有する領域に集中した。一方、RDA−PCRでは連続して一致している配列に対する依存性というものはあまり顕著ではなかった。むしろRDA−PCRでは、連続して一致する配列と言うよりも、その領域全体における配列の類似性が影響を与えているようであった。
しかし、20個のうち、3つのクローンが、親分子の最後の12塩基のところにクロスオーバーポイントがあった(領域(xi)、ただし、Xba I部位は遺伝子の外の領域となるため除いてある)。この位置でのクロスオーバーの頻度は、配列の類似性や、連続して一致する配列の出現頻度や長さから期待される頻度よりも高いものだった。しかしながら、余分に付加した配列(skew プライマーのアニール部位)の分までカウントに入れると、領域(xi)の局所的な配列同一性は81%まで高まる。これは未熟な(完全に最後まで伸長していない)プライマー(bプライマー)が、片割れのgfpストランドにアニールするのに十分であるのかもしれない。シャフリングではこの領域にクロスオーバーポイントを持ったクローンが見られなかった。
各クローンのRFLP解析により、親分子の前半にクロスオーバーポイントをもつキメラの頻度がかなり低いということが示された。これらがライブラリ中に低頻度ながらも存在することは、ライブラリのAlu I消化により明らかにされた(図5B レーン lib.、これらのクロスオーバーに相当するバンドにはアスタリスクが付与してある)。しかしながら、これらに相当する断片は強度が弱く、これらの領域でのクロスオーバーはやはり低頻度であることを示している。
【0043】
8.キメラ遺伝子のシーケンス解析
クロスオーバーポイントを正確に特定するために、両方のライブラリからランダムに10クローンを選び、シーケンシング解析を行った。決定されたクロスオーバーポイントを図6に示す。クロスオーバーポイントは親分子のDNA配列アライメントの上にかぎつきの四角で囲ってある。ファミリーシャフリングのクロスオーバーポイントには1〜10の番号をふり、RDA−PCRのクロスオーバーポイントには11〜20の番号をふってある。Alu Iの認識部位には下線が施してある。配列の左に記してある数字はヌクレオチドの番号である(親分子の開始コドンの最初の塩基を+1としている)。
ファミリーシャフリングのクローンでは、クロスオーバーポイントにおける連続一致配列長の平均塩基数は7.2bpであった。これに対して、RDA−PCRのクローンでは5.3 bpであった。このことは、RDA−PCRにおけるクロスオーバーは、ファミリーシャフリングよりも比較的短い連続一致配列の領域で起こることを示している。ファミリーシャフリングで得られたクローンでは、クロスオーバーに長い連続一致配列が必要であることは、図5の結果と非常に良く一致する。
さらに、RDA−PCRでは10クローンのうち、3つのクローンにおいて、完全に一致する塩基が2bpのみのところにクロスオーバーポイントがあった。このことは、RDA−PCRをもちいれば、わずか2bpの連続一致配列が有ればキメラ遺伝子を創出することができることを意味する。もちろん親分子間にはその両側、もしくは片側には高度に類似性がある配列が必要ではある。でなければ、伸長途中のプライマーは別の親のストランドにアニールすることができないからである。
【0044】
クロスオーバー領域の長さに加えて、RDA−PCR由来の10クローンの中には重複するものはなかった。これに対してファミリー シャフリングでは、いくつかのクローンが同一のクロスオーバーポイントを持っていた。このことは、クロスオーバーの位置という点においては、RDA−PCRはファミリー シャフリングよりも、より高い多様性を持っているということを示している。この点については別の解析によっても確かめた(図7)。
任意に設定したクロスオーバーポイントで組換えを起したキメラ遺伝子がライブラリ中にあるか調べた。このために、任意に設定したクロスオーバーポイントにアニールするようにデザインした短いプライマー(Arbitrary primer、17−19 bp, Tm=45−48℃)(図7に示す)を用意した。図7Aは任意に設定したクロスオーバーポイントと、その領域にアニールするように設計したプライマーの位置を示す。プライマーは一続きの四角で示している。黒色、斜線入り、白抜きの四角はそれぞれ、gfp、任意に設定したクロスオーバーポイント、yfpの配列を示している。四角の上の矢印はプライマーの向き(5′→3′)である。図7Bはこれらのプライマーを用いたPCRの結果を表す。RDA−PCR由来のキメラ遺伝子ライブラリ(レーンR)、ファミリー シャフリング由来のライブラリ(レーンS)を希釈して鋳型溶液として最終濃度20 pg/μlとなるようにPCR反応液に加えた。コントロールとして、等量のaYbとcGdの混合液(それぞれ濃度10pg/μl)をキメラ遺伝子ライブラリの代わりに鋳型として用いた(レーンC)。一連のPCRにおけるアニール温度をそれぞれの電気泳動写真の左側に示す。
【0045】
Arbitrary primerがその位置にクロスオーバーを起こしていないクローンにミスアニールするのを防ぐために、アニール温度を64℃まで上げ、アニーリングの厳密性を高めて行う必要があった。あらかじめ決定した任意のクロスオーバーポイントは2つの親分子配列によく似ているので、50℃ではプライマーがミスアニールし、親分子の鎖を増幅してしまった。しかし、60℃以上ではシャッフルされていない親分子のストランドは増幅されなかった。64℃にまで温度を上げることによって、プライマーは決められた位置にクロスオーバーポイントをもつキメラ遺伝子のみにアニールすることが許される。RDA−PCRにより構築されたライブラリは、どのケースにおいてもファミリー シャフリングライブラリよりも、多くの産物が得られた(レーンR参照)。このことは伸長途中のプライマーと親分子との間の相同組換えは、RDA−PCRを用いれば、いたるところで行われるということを示しており、RDA−PCRライブラリはファミリー シャフリングに比べて、よりクロスオーバーポイントに多様性を持っているということが示された。
【0046】
興味深いことに、ファミリー シャフリングライブラリの中では、rec 2プライマー(連続した5塩基のところにアニールするように設計した)を用いた反応において、他のプライマーの組み合わせで行ったものよりも相対的に濃いバンドが見られた。このことは、他の任意で設定したクロスオーバーポイント(連続した塩基数が2または3)よりも、より高い頻度でキメラ遺伝子が産出されると言うことを示している。
このことはファミリー シャフリングにおいては、連続して一致する塩基数が長いほど相同組換えが起こりやすいということを示しており、RFLPを用いた解析(図5)や、DNAシーケンシングの結果と一致している(図6)。
今回試験したものに関して言えば、RDA−PCRクローンでは、突然変異は見られなかった。これに対してファミリー シャフリングではいくつかのクローンに突然変異が見られた(3000bpで6個の変異)。他の研究グループで報告されているのと同様に、シャフリングにおけるほとんどの突然変異はプリン間またはピリミジン間の塩基置換であった。
【0047】
RDA−PCRにおける現状での問題点は、1遺伝子あたりのクロスオーバーポイントの数が制限されていることである。RDA−PCRにおいて構築されたライブラリ中のキメラ遺伝子の大多数は1個のクロスオーバーポイントしか持たない(図5及び6)。キメラ遺伝子のバリエーションを豊富にするために、より多くのクロスオーバーポイントを持つことが望まれる。そのため、シャフリング法及びRDA−PCR法を併用することによって、より複雑なキメラ遺伝子ライブラリを構築できると考えられる。今回試験したRDA−PCRのクローンはフレームシフトを全く起こしていなかった。このことは、ファミリー シャフリングと組み合わせて更なるキメラ遺伝子の産出を行う上で、不可欠な性質である。両方の手法とも、親分子の局所的な配列類似性に基づいた組換えを起こす手法であるが、クロスオーバーポイントの分布は異なっている。そのため、この2つの手法を組み合わせることによって、配列の多様性がさらに増加することが期待される。
【0048】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、低いバックグラウンドレベルで、すなわち親DNA分子の増幅を極めて低く抑えて且つ簡便に、より多様なキメラ遺伝子を効率よく作製することができる。さらには、よりバラエティーに富んだキメラ遺伝子ライブラリを構築することできる。本発明の方法によれば、2種以上の相同遺伝子間でわずかに2塩基が連続して一致しているところでも組換えを起こすことが可能であり、遺伝子全体にわたってクロスオーバーポイントが多様にあるといえる。ここで実施したRDA−PCRによって作製されたキメラ遺伝子は突然変異やフレームシフトを起していなかった。このため、RDA−PCRによるキメラ遺伝子ライブラリは、ファミリー シャフリング法と組み合わせることによって、より多様で、複雑なキメラ遺伝子ライブラリを生み出すことができる。
【0049】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法の一例の概要を表す図である。
【図2】RDA−PCR法により得られたキメラ遺伝子をアガロースゲル電気泳動にかけた結果を示す。
【図3】RDA−PCRの最適化を検討するため、増幅におけるアニール・伸長の温度条件プログラムを変動させた結果を表す。
【図4】RDA−PCRにおける反応液中の鋳型とするDNA分子の濃度を検討した結果を表す。
【図5】図5AはaYbとcGdのAlu I認識部位を示し、さらに1個のクロスオーバーポイントをもつキメラ遺伝子のAlu I消化断片のパターンを表す。図5BはRDA−PCRによって産出されたキメラ遺伝子(上)と、ファミリー シャフリング法によって得られたキメラ遺伝子(下)のRFLP分析の結果を表す。
【図6】ファミリー シャフリング法及びRDA−PCR法の両方のライブラリからランダムに選んだクローンのシーケンシング解析の結果、決定されたクロスオーバーポイントを表す。
【図7】任意に設計したプライマーを用いたクロスオーバーポイントの多様性に関する解析の結果を表す。図7Aは任意に設定したクロスオーバーポイントと、その領域にアニールするように設計したプライマーの位置を示す。図7Bは任意に設計したプライマーを用いたPCRの結果を表す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、キメラ遺伝子を作製する方法に関し、さらにはキメラ遺伝子ライブラリを作製する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年酵素・蛋白質を分子レベルで育種し、より望ましい性質を獲得した変異体を選抜する様々な技術が研究・開発されており、これらの研究は、非常に効率の良い酵素・蛋白質の機能改良につながるものとして注目される。実際に、Randommutagenesis(ランダムな変異導入技術)とそれに続いた、より望ましい特性を獲得した変異体のスクリーニングというステップを繰り返すことによって行なわれる蛋白質の指向進化は、望ましい特徴を持った蛋白質を短期間のうちに創り出すことが可能であることを示唆した。しかしながら、さらに優れた性質を獲得した蛋白質分子を取得するためには、アミノ酸配列の多様性が非常に重要である。このため、高度に多様化した配列レパートリーからなる初期変異体ライブラリを構築することに多くの力が注がれてきた。
【0003】
1種類の遺伝子を親分子として初期変異体ライブラリを作製する手法として Error−prone PCR、Cassette mutagenesisなどがある。さらに、多種類の相同性のある遺伝子を親分子としてキメラ遺伝子(群)を作製する手法として例えばDNA Shuffling (DNAシャフリング法)が知られ、このような手法から作られたキメラ遺伝子ライブラリは、1種類の分子から出発する Random mutagenesis を用いて作られたライブラリよりも多く用いられてきた。この理由は、全く新規な特性を望む場合にはアミノ酸配列に劇的な変化が一般的に要されるからである。
【0004】
DNAシャフリング法は、相同遺伝子をDNase Iで切断した断片同士が、保存された領域の間で組換えを起こすことを利用したものである。遺伝子ファミリー間でのDNAシャフリング法はファミリー シャフリング法とも呼ばれ、多くの蛋白質の機能改良に用いられてきた。例えば、cephalosporinase (Crameri A. et al., DNA Shuffling of a Family of Genes from Diverse Species Accelerates Direct Evolution, Nature,1998, 391, 288−291)、biphenyl dioxygenase (Kumamaru T. et al., Enhanced Degradation of Polychlorinated Biphenyls by Directed Evolution of Biphenyl Dioxygenase, Nat. Biotechnol., 1998, 16, 663−666)、thymidine kinase (Christians F.C. et al., Directed Evolution of Thymidine Kinase for AZT Phosphorylation using DNA Family Shuffling, Nat. Biotechnol, 1999, 17, 259−264)、catechol 2,3−dioxygenase (Kikuchi M.et al., Novel Family Shuffling Methods for the in vitro Evolution of Enzymes, Gene, 1999, 236, 159−167)、cytochrome P450 (Abecassis V. et al., High Efficiency Family Shuffling Based on Multi−step PCR and in vivo DNARecombination in yeast: statistical and functional analysis of a combinatorial library between human P450 1A1 and 1A2, Nucl. Acid. Res., 2000, 28, e88q)、subtilisin(Ness J.R. et al., DNA shuffling of subgenomic sequences of subtilisin, Nat. Biotechnol., 1999, 17, 893−896)、triazine hydrolase (Raillard S−A. et al., Novel Enzyme Activities and Functional Plasticity Revealed by Recombining Highly Homologous Enzymes, Chem. Biol.,2001, 8, 891−898)などである。しかし、標準的なファミリー シャフリング法では時々、高いバックグラウンドが見られることがある。組み換わらなかった親分子がそのまま高い割合でライブラリに含まれるのである。時には100%親分子であることもある(Kikuchi et al., 1999前出)。加えて、Stemmerにより示されているように、ファミリー シャフリング法において、親分子の塩基配列間で互いに連続して一致する配列が15bp以下の場合には、その領域では組換えはめったに起こらない(Stemmer W.P.C. DNA Shuffling by Random Fragmentationand Reassembly: In vitro Recombination for Molecular Evolution, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 1994, 91, 10747−10751)。従って、高いバックグラウンドレベルを改善し、比較的短い配列一致領域でも組換えが起きる、簡便で且つ効率的にキメラ遺伝子を作製する手法が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、低いバックグラウンドレベルで且つ簡便に、より多様なキメラ遺伝子(群)を効率よく作製する方法、さらには、よりバラエティーに富んだキメラ遺伝子ライブラリを構築する方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を達成するために、クラゲ由来の遺伝子である緑色蛍光発光蛋白質(GFP:Green fluorescent protein)遺伝子とその類縁遺伝子である黄色蛍光発光蛋白質(YFP:Yellow fluorescent protein)遺伝子(両者の塩基配列相同性は72%である。)とをモデル遺伝子として用い、これらをPCR法の最中にキメラ化させるというアプローチで鋭意検討を行った。その結果、ある程度の相同性を有する2種以上のDNA分子を親分子として、これらのDNA分子の末端に付加配列を結合させておき、これらを鋳型として該付加配列を有するプライマーを用い、アニール・伸長条件を調節してPCR法を実施することで、伸長途上の長さの異なるプライマーを利用して多様な組換えを起こし得、このような組換えを起こした断片が指数関数的に増幅し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
従って本発明は、少なくとも2種のDNA分子を鋳型としてPCR法によりキメラ遺伝子(群)を作製する方法であって、少なくとも5′側に固有配列(a)を付加させたDNA分子(X)と、少なくとも3′側に固有配列(d)を付加させたDNA分子(Y)とを鋳型として、DNA分子(X)のセンス鎖側の固有配列(a)を有するプライマーと、DNA分子(Y)の非センス鎖側の固有配列(d)を有するプライマーとを用いてPCR法を実施することを特徴とする、キメラ遺伝子(群)の作製方法である。
本発明はさらに、少なくとも2種のDNA分子を鋳型としてPCR法によりキメラ遺伝子(群)を作製する方法であって、5′側に固有配列(a)を付加させ3′側に固有配列(b)を付加させたDNA分子(X)と、5′側に固有配列(c)を付加させ3′側に固有配列(d)を付加させたDNA分子(Y)とを鋳型として、DNA分子(X)のセンス鎖側の固有配列(a)を有するプライマーと、DNA分子(Y)の非センス鎖側の固有配列(d)を有するプライマーとのプライマーセットを用いて、又は、DNA分子(X)の非センス鎖側の固有配列(b)を有するプライマーと、DNA分子(Y)のセンス鎖側の固有配列(c)を有するプライマーとのプライマーセットを用いて、PCR法を実施することを特徴とする、キメラ遺伝子の作製方法である。
本発明による上記の方法を本発明者らは“RDA−PCR法”(Recombination−Dependent exponential Amplification、組換え依存性指数関数的増幅)と呼称する。
【0008】
本発明の好ましい実施態様として、鋳型とするDNA分子において、該各固有配列とDNA分子末端の間に制限酵素部位を挿入しておく態様がある。
また、本発明の好ましい実施態様として、PCR法の実施において90〜98℃ 10〜60秒、40〜50℃ 1〜5秒、及び72℃ 0〜5秒のサイクルを繰り返す態様がある。
【0009】
本発明者らはさらに、上記のような“RDA−PCR法”の手法を従来のシャフリング法と組み合わせることで、キメラ遺伝子がより効率よく作製できることを見出した。
従って本発明はまた、少なくとも2種のDNA分子を鋳型としてPCR法によりキメラ遺伝子を作製する方法であって、少なくとも5′側に固有配列(a)を付加させたDNA分子(X)と、少なくとも3′側に固有配列(d)を付加させたDNA分子(Y)を、DNaseIで消化し断片化した後、これらの断片を鋳型としてプライマーの非存在下でPCR法を実施し、増幅された分子を鋳型として、DNA分子(X)のセンス鎖側の固有配列(a)を有するプライマーと、DNA分子(Y)の非センス鎖側の固有配列(d)を有するプライマーとを用いてPCR法を実施することを特徴とする、キメラ遺伝子の作製方法に向けられている。
本発明はさらに、少なくとも2種のDNA分子を鋳型としてPCR法によりキメラ遺伝子を作製する方法であって、5′側に固有配列(a)を付加させ3′側に固有配列(b)を付加させたDNA分子(X)と、5′側に固有配列(c)を付加させ3′側に固有配列(d)を付加させたDNA分子(Y)とを、DNaseIで消化し断片化した後、これらの断片を鋳型としてプライマーの非存在下でPCR法を実施し、増幅された分子を鋳型として、DNA分子(X)のセンス鎖側の固有配列(a)を有するプライマーと、DNA分子(Y)の非センス鎖側の固有配列(d)を有するプライマーとのプライマーセットを用いて、又は、DNA分子(X)の非センス鎖側の固有配列(b)を有するプライマーと、DNA分子(Y)のセンス鎖側の固有配列(c)を有するプライマーとのプライマーセットを用いて、PCR法を実施することを特徴とする、キメラ遺伝子の作製方法に向けられている。
上記の方法の好ましい実施態様として、DNaseI消化を施すDNA分子において、該各固有配列とDNA分子末端の間に制限酵素部位を挿入しておく態様がある。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の方法を詳細に説明する。
本発明のキメラ遺伝子の作製方法を適用するのに適した少なくとも2種以上の親DNA分子としては、ある程度の塩基配列相同性を持つことが必要である。それらの相同性は一般的に50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70〜90%程度である。
そのような類縁遺伝子の例として、上記のGFP遺伝子とYFP遺伝子(各々720bp、塩基配列相同性72%)、産業上有用な各種加水分解酵素(リパーゼやセルラーゼ等)あるいは各種の酸化還元酵素などが挙げられる。
本発明の方法は、上記のような互いに配列相同性のある2種の親DNA分子、さらに3種以上の親DNA分子に適用することができる。
【0011】
[親DNA分子の調製]
細胞、組織、臨床検体、あるいは土壌サンプルなどから、本発明の方法を適用するDNA分子を抽出してくる手法は、特に制限されるものではなく、常法に従って実施することができる。例えば、フェノール抽出法、プロテイナーゼK/フェノール抽出法、プロテイナーゼK/フェノール/クロロホルム抽出法、アルカリ溶解法、ボイリング法などがある。対象とする遺伝子ファミリー内で、高度に保存されている領域が予め分かっている場合には、雑居物を多く含む例えば土壌サンプルの希釈液などを鋳型としたPCR増幅によっても調製可能である。
また、市販されているDNA分子を使用することもできる。
【0012】
[固有配列を付加させた親DNA分子]
以下、二種の親DNA分子(XとY)を用いてキメラ遺伝子を作製する場合を例にとり、本発明を説明する。
少なくとも5′側に固有配列(a)を付加させたDNA分子(X)と、少なくとも3′側に固有配列(d)を付加させたDNA分子(Y)とを用意する。さらに具体的には、5′側に固有配列(a)を付加させ3′側に固有配列(b)を付加させたDNA分子(X)と、5′側に固有配列(c)を付加させ3′側に固有配列(d)を付加させたDNA分子(Y)を用意する。
ここで各固有配列は、親DNA分子にアニールせず且つ固有配列同士でアニールすることがないように選択する。固有配列の長さは10〜50bp程度が適当で、例えば20bpであり塩基の割合がA:G:C:T=5:5:5:5となるような配列が選ばれる。
また、各固有配列と親DNA分子の末端との間に制限酵素部位が挿入されていることが好ましい。使用できる制限酵素部位の例としては、Xba I部位、Bam HI部位、Eco RI部位などがある。
【0013】
上記のように5′側に固有配列を付加させ3′側に固有配列を付加させた親DNA分子は、それぞれの親DNA分子を鋳型として、該固有配列を含むプライマーを用いてPCR法を実施することで作製することができる。
5′側に固有配列(a)を付加させ3′側に固有配列(b)を付加させたDNA分子(X)を調製するには、親DNA分子(X)を鋳型として、付加させようとする固有配列(a)のセンス鎖側の配列に続けて親DNA分子(X)のセンス鎖側の5′末端配列を有するプライマー、好ましくは付加させようとする固有配列(a)のセンス鎖側の配列に続けて制限酵素部位、さらに親DNA分子(X)のセンス鎖側の5′末端配列を有するプライマーと、付加させようとする固有配列(b)の非センス鎖側の配列に続けて親DNA分子(X)の非センス鎖側の5′末端配列を有するプライマー、好ましくは付加させようとする固有配列(b)の非センス鎖側の配列に続けて制限酵素部位、さらに親DNA分子(X)の非センス鎖側の5′末端配列を有するプライマーとを用いてPCR法を実施することにより、所望の配列を付加させた親DNA分子(X)を増幅させることができる。
【0014】
また、5′側に固有配列(c)を付加させ3′側に固有配列(d)を付加させたDNA分子(Y)を調製するには、親DNA分子(Y)を鋳型として、付加させようとする固有配列(c)のセンス鎖側の配列に続けて親DNA分子(Y)のセンス鎖側の5′末端配列を有するプライマー、好ましくは付加させようとする固有配列(c)のセンス鎖側の配列に続けて制限酵素部位、さらに親DNA分子(Y)のセンス鎖側の5′末端配列を有するプライマーと、付加させようとする固有配列(d)の非センス鎖側の配列に続けて親DNA分子(Y)の非センス鎖側の5′末端配列を有するプライマー、好ましくは付加させようとする固有配列(d)の非センス鎖側の配列に続けて制限酵素部位、さらに親DNA分子(Y)の非センス鎖側の5′末端配列を有するプライマーを用いてPCR法を実施することにより、所望の配列を付加させた親DNA分子(Y)を増幅させることができる。
上記のプライマーの配列中、親DNA分子の5′末端配列に相当する配列の長さは10〜50bpが適当であり、より好ましくは15〜30bpである。
【0015】
このようなPCRプライマーの設計は常法に従って行うことができる。
具体例としてYFP遺伝子とGFP遺伝子とを親DNA分子として使用する場合の、プライマーセットの一例を挙げる。以下に示す4種のプライマーは各々、配列番号1及び2がYFP遺伝子増幅用のプライマーであり、配列番号3及び4がGFP遺伝子増幅用のプライマーである。
【0016】
【表1】
上記配列において小文字部分は固有配列(a,b,c,d)であり、下線付きの小文字部分はXbaI認識部位(制限酵素部位)であり、大文字部分はYFP遺伝子又はGFP遺伝子とのアニール部位である。これらのプライマーは上記名称で(株)FASMACから入手することができる。
上記のプライマーにおける小文字部分の配列(固有配列)は、後述するRDA−PCRで用いるプライマーの配列となる。
【0017】
【表2】
【0018】
上記PCR法における、DNAの変性、プライマーのアニーリング、DNA鎖伸長といった各ステップの反応温度と時間、サイクル数、反応溶液組成、使用DNAポリメラーゼなどは、常法に従って採用でき、また至適条件を適宜選択することもできる。
ここで用いるPCRの好ましい反応条件として、例えば、反応時0.2 mM デオキシヌクレオチド3リン酸、0.2μM プライマー、1 ng/μl 鋳型DNA、50 mU/μl ExTaq DNA ポリメラーゼ(TaKaRa社)、酵素に添付されているバッファー1/10量からなる反応がある。
このようなPCR法の実施により、5′側に固有配列(a)及び制限酵素部位を付加させ3′側に固有配列(b)及び制限酵素部位を付加させたDNA分子(X)、及び5′側に固有配列(c)及び制限酵素部位を付加させ3′側に固有配列(d)及び制限酵素部位を付加させたDNA分子(Y)とを別々に増幅することができる。こうして増幅したDNA断片を各々、aXb、cYdと表す。
これらのDNA断片は、アガロースゲル電気泳動などで未反応のプライマーやプライマーダイマーなどと分離し、その後抽出して得ることができる。
【0019】
[固有配列を持つ親DNA分子を鋳型として用いたRDA−PCR]
上記のようにして別々に得たaXb、cYdを、混合し混合物を得る。ここでaXbとcYdとを等モル混合した溶液を調製するのが好適である。
この混合物に、Xのセンス鎖側の固有配列(a)を有するプライマーと、Yの非センス鎖側の固有配列(d)を有するプライマーとのプライマーセット▲1▼を用いて、又は、Xの非センス鎖側の固有配列(b)を有するプライマーと、Yのセンス鎖側の固有配列(c)を有するプライマーとのプライマーセット▲2▼を用いて、PCR法を実施する。このような非対称のプライマーのセットを本発明者らは“skewプライマー”又は“skewプライマーセット”と呼称する。
例えば、YFP遺伝子とGFP遺伝子とを親DNA分子として使用し、上記表1に記載されたプライマーを用いて増幅されたDNA分子をこのRDA−PCRの鋳型とするとき、上記表2に記載されたプライマーをa1+d1又はb1+c1の組み合わせで用いてPCR法を実施する。
【0020】
PCRにおける反応条件は、アニール及び伸長反応時間を従来法より短くし、アニール温度を従来法より低くするような条件を採用する。こうすることによって伸長途上のプライマーが組換えに寄与し得、プライマーセット▲1▼の使用により遺伝子の前部がX及び後部がY由来の配列からなるキメラ遺伝子が作製され、プライマーセット▲2▼の使用により前部がY及び後部がX由来の配列からなるキメラ遺伝子を作成することが可能となる。
さらに詳しくいうと、アニール、伸長反応の時間を短くすると、添加したプライマーは1回のサイクルでは最後まで完全に伸長を行うことができない。加えて、比較的低いアニール温度を採用するため、伸長途中のプライマーは次のサイクルにおいてもとの鋳型とは異なる親分子にアニールしやすくなる。またDNAポリメラーゼの活性が低下し、複数のサイクルにまたがるプライマー伸長反応が起こりやすくなる。ここで、同一の鎖上で伸長反応を完結した(途中で終っていても良いが)フラグメント自身は、以降のサイクルでは伸長反応の鋳型とはならない。それは、もう一方のプライマーがアニールする部分がないためである。このため、親DNA分子の数は直線的にしか増幅されない。これに対して、もう一方のストランドとアニールし伸長したプライマー(組換えを起こしたプライマー)は、もう一方のskew プライマーとアニールできるため、以降のサイクルで伸長反応の鋳型となって、指数関数的に増幅されることとなる。この結果として、このシステムでは、奇数個のクロスオーバーポイントを持つキメラ遺伝子のみ選択的に蓄積されることになる。
【0021】
使用するDNAポリメラーゼとしては、耐熱性DNAポリメラーゼであれば特に制限されず、Taq DNAポリメラーゼやExTaq DNAポリメラーゼを使用することができる。一般に、突然変異の導入を防ぎ最終産物の収量を増加させるために、ExTaq DNAポリメラーゼを使用するのが好ましい。その他の耐熱性DNAポリメラーゼを使用することも可能であって、例えば Pfu turbo(Stratagene製)などを使用することができるが、未熟な伸長途上のプライマーを発生させる必要があるため、低い伸長速度を持った耐熱性DNAポリメラーゼが好まれる。
PCR反応溶液の組成は常法に従うことができる。例えば、反応時0.2 mM デオキシヌクレオチド3リン酸、0.5μM プライマー、50 mU/μl ExTaq DNA ポリメラーゼ(TaKaRa社)、酵素に添付されているバッファー 1/10量である。
反応溶液における鋳型DNA濃度は、それぞれの鋳型DNA分子につき10〜500pg/μlが適当であり、より好ましくは10〜100pg/μlである。この濃度が500pg/μlを超えると、組換えを起こさなかったDNA断片と親分子との複合体や、元の親分子がかなりの割合で、生じてきたキメラ遺伝子に混入するからである。
【0022】
RDA−PCR法における各ステップの反応時間・温度、サイクル数は適用する鋳型DNA分子に応じて、またキメラ遺伝子の収量を上げるように適宜選択できる。変性ステップは、2本鎖DNAを1本鎖へと変性させるのに十分な条件を適宜選択し実施すればよい。一般に変性ステップは90〜98℃ 10〜60秒の範囲で実施され、さらに92〜96℃ 20〜40秒がより好ましい。
変性のステップに続くアニール及び伸長反応においては、一般に従来法よりも時間を短くし、アニール温度を従来法より低くするような条件を選択する。例えばアニール伸長ステップとして40〜50℃の温度、好ましくは40〜45℃の温度が選択でき、変性ステップ及びアニール伸長ステップのサイクルを繰り返す。また、アニール伸長ステップと変性ステップとの間にもう一段階の伸長ステップを設けてもよく、その伸長ステップは例えば72℃で5秒まで、好ましくは3秒程度までである。従って、反応条件の典型的な例として94℃ 60秒、その後、94℃ 30秒、40〜45℃ 1〜5秒、72℃ 0〜3秒を40サイクル、続いて94℃ 30秒、50℃ 30秒、72℃ 30秒を10サイクルが挙げられる。後半の10サイクルはキメラ遺伝子の収量を上げるための増幅ステップである。
【0023】
こうして増幅された断片は制限酵素処理を行った後、ポリアクリルアミドゲル電気泳動などで解析することができ、プラスミドベクター等に挿入することでキメラ遺伝子ライブラリとすることができ、また、発現ベクターに挿入して、例えば大腸菌を形質転換して遺伝子を発現させることも可能である。
【0024】
本発明の方法の一例の概要を図1に示す。(1)親遺伝子もしくは遺伝子グループ(gene A、B、CとX、Y、Z)を別々に遺伝子特異的なプライマーで通常のPCR法により増幅する。ただし、プライマーには任意に設定した配列が付加されている(図中a、b、c、d)。図1中のa、b、c、dには上記で説明してきた固有配列又は固有配列と制限酵素部位が含まれる。(2)2つの親DNA分子グループを混合し、2つに分ける。(3) RDA−PCRを行う。キメラ遺伝子プールを産出するために、固有配列aとdもしくは固有配列bとcの skew プライマーセットを用いる。こうすることで、左側のラインでは、遺伝子の前部がA/B/Cまたはそれらのキメラで、後部がX/Y/Zまたはそれらのキメラを中心としたライブラリが構築し得、一方右側のラインでは、遺伝子の前部がX/Y/Zまたはそれらのキメラであり、後部がA/B/Cまたはそれらのキメラを中心としたライブラリを構築し得る。(4)適切な発現ベクターにクローニングする。(5)さらにファミリー シャフリング法を実施することもできる。
【0025】
[RDA−PCRのシャフリングとの組み合わせ]
上記説明してきた方法は、従来のシャフリング法と組み合わせて実施することもできる。
上記のように少なくとも2種の親DNA分子に付加配列を結合させた、例えばaXbとcYdとを、等モル混合した溶液を調製する。ファミリー シャフリング法は常法により実施することができ、例えば Stemmer W.P.C. DNA Shuffling by Random Fragmentation and Reassembly: In vitro Recombination for Molecular Evolution, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 1994, 91, 10747−10751に報告されているような手法を用いることができる。上記溶液にDNase Iによるランダム消化を施し、プライマーを入れないPCRを実施し、再構築されたフラグメントを得る。
DNase Iによる消化は、一般的にはマグネシウムイオンを含んだ緩衝液に溶解させた鋳型混合液に対し1 UのDNase Iを加え、適当な時間保温することによってなされる。ファミリーシャフリングに用いる断片は、20−100bpの断片長であることが好ましいので、このような断片長が得られるよう、反応時間と酵素量を調節する必要がある。
プライマーを加えないPCR様の反応は、一般的なPCRの反応条件と同一であり、例えば94℃30秒、50℃30秒、72℃30秒からなる温度サイクルを30回繰り返すことによってなされる。
こうして得られたフラグメントを鋳型として更なるPCRを実施し、このPCRにおいて、上記に説明したプライマーセット▲1▼又はプライマーセット▲2▼のようなskewプライマーを用いて増幅する。Skewプライマーセットを用いれば、RDA−PCRと同様に組換えを起こして生じたキメラ遺伝子のみ指数関数的な増幅が起こる。このPCRの反応条件は上記のプライマーなしのPCRと同様にすることができる。
【0026】
このように、従来法であるシャフリング法にskewプライマーを組み合わせることで、組換えを起したキメラ遺伝子をより効率的に取得することが可能となる。また、RDA−PCRと、skewプライマーを用いたファミリーシャッフリング法を組み合わせて使用する(RDA−PCRにより作出されたキメラ遺伝子ライブラリを用いてファミリーシャッフリングを行う場合や、またその逆の場合)ことにより、多様な組換えを起こすことが可能となり、より多様なキメラ遺伝子、より多様なキメラ遺伝子ライブラリを作製することができるようになる。
こうして増幅された断片は制限酵素処理を行った後、ポリアクリルアミドゲル電気泳動などで解析することができ、プラスミドベクター等に挿入することでキメラ遺伝子ライブラリとすることができ、また、発現ベクターに挿入して、例えば大腸菌を形質転換して遺伝子を発現させることも可能である。
【0027】
[キメラ遺伝子ライブラリの構築]
上記のようにして増幅された断片は制限酵素処理を行った後、プラスミドベクター、あるいはファージ、コスミドなどのベクターに挿入することによって、キメラ遺伝子ライブラリを作ることができる。
遺伝子ライブラリの作製に用いるベクターは取得した遺伝子断片を挿入できるものであればどのようなものでも可能であるが、より望ましくは、挿入した遺伝子を発現できるように設計されたものを用いるほうが良い。つまり遺伝子発現に必要なRNAポリメラーゼの認識部位(プロモーター、ターミネーター)、リボソームの認識部位などを組み込んだベクターである。また正しい向きで遺伝子が挿入され、挿入した遺伝子の遺伝暗号(コドン)の読み枠(フレーム)がずれないように設計されたものであることも重要である。遺伝子をこれらのようなベクターに挿入し、遺伝子ライブラリを構築する方法は通常のどのような方法を用いても良い。
例えば、キメラ遺伝子の増幅断片を好ましい制限酵素で処理を行い、電気泳動で断片のみを分離した後精製を行い、あらかじめ同じ制限酵素で処理を行ったプラスミドベクターと混合する。このDNA溶液にDNAリガーゼを加えて16℃に保温することでキメラ遺伝子断片とベクターを連結する。宿主となる菌体溶液と混合する(この場合大腸菌)し、30分間程度氷冷した後、42℃で、40秒から50秒程度加熱し、急冷を行う。この菌液を1時間程度前培養してから適切な抗生物質を含むプレート倍地に植菌し、37℃で培養することによって遺伝子ライブラリが構築される。
【0028】
【実施例】
以下に実施例をもって、本発明を詳細に説明する。本発明はこれらの記載に限定されるものではない。
1.材料
gfp(GFP遺伝子)とyfp(YFP遺伝子)はクロンテック(株)より購入した。組換えTaq DNA polymerase (rTaq)とEx Taqは宝酒造(株)より購入した。PCR、シーケンスに用いるプライマーは(株)FASMACより購入した。該プライマーの配列とその名前は次のとおりである。
ax/YF1:gctacgcatgaatgcgtacttctagatATGAGCAAGGGCGAGGA
bx/YR1:ggattccacatagtctcaggtctagatTTACTTGTACAGCTCGTCCA
cx/GF1:gacgcttctgaagaagtccttctagatATGAGTAAAGGAGAAGAACTTTT
dx/GF1:tgccggatacttgaatagcctctagacCTATTTGTATAGTTCATCCATGC
小文字部分は skew プライマーのアニール部位(固有配列)、下線部で示したところは Xba I部位、大文字はyfpもしくはgfpのアニール部位である。
skew プライマーの名前と配列は次のようになっている。
a:gctacgcatgaatgcgtact
b:ggattccacatagtctcagg
c:gacgcttctgaagaagtcct
d:tgccggatacttgaatagcc
これらの4つのプライマーは何れの親分子とミスアニールせず、且つプライマーダイマーを形成しないように注意して設計したものである。
【0029】
2.親分子の調製
yfpとgfpは、PCR法にて、それぞれ上記のプライマーのセット ax/YF1+ bx/YR1 及び cx/GF1+dx/GF1 を用いて増幅した。増幅した断片(aYbとcGdと表記する)はアガロースゲル電気泳動で未反応のプライマーや、プライマーダイマーと分離し、その後抽出し、エタノールを加えて沈殿した。
ここで用いたPCRの条件は、一般的に行われているものであり、94℃30秒、50℃30秒、72℃30秒の温度サイクルを25回繰り返すことによって増幅を行った。アガロースゲル電気泳動は、一般的な緩衝液系で行った。アガロースゲルの濃度は1%であった。エチジウムブロマイド染色を行うことで増幅産物を可視化し、その領域のアガロースゲルをナイフで切り取った。アガロースゲルからの増幅断片の抽出は、アガロースゲルを凍結融解した後に圧潰し、さらにフェノール抽出を行うことで達成した。得られた抽出液に対し、終濃度300 mMとなるように酢酸ナトリウムを加え、さらに2.5 倍容のエタノールを加えることにより増幅断片を沈殿として回収した。
【0030】
3.ファミリーシャフリング
aYbとcGdのファミリーシャフリングは基本的には、Stemmer W.P.C. DNA Shuffling by Random Fragmentation and Reassembly: In vitro Recombination for Molecular Evolution, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 1994, 91, 10747−10751 の報告にしたがって行った。以下略記する。aYbとcGdの溶液を等量混合し、DNase Iによるランダム消化を行った。100 bp以下の消化断片を2% アガロースゲルにより分離し、鋳型として用いた。シャフリング反応は、宝酒造(株)のrTaqとプレミックスバッファーを用いてオリジナルのプロトコルにしたがって行った(上記 Stemmer, 1994)。プライマーを入れないPCRは次に記すサイクル条件で行った。94℃ 60秒のあと、94℃、30秒、50℃ 30秒、72℃ 30秒を25サイクル行った。再構築されたフラグメントはフェノール抽出した後、エタノールを用いて沈殿した。その後、これを次のPCRの鋳型とした。再構築した断片のPCR増幅はプライマーの平行セット(a+b, c+d)またはskewプライマーセット(a+d,b+c)を用いた。サイクル条件はプライマーなしのPCRと同じ条件で行った。合成した産物は、ゲル電気泳動のあと精製して、滅菌水中に最終濃度が20ng/μlになるように溶解した。
【0031】
4.RDA−PCR
RDA−PCRには、aYbとcGdを等モル混合した溶液を鋳型として用いた。RDA−PCRには、rTaqの代わりにExTaq(宝酒造(株))を用いた。これは突然変異の導入を防ぎ、最終産物の収量を増加させるためである。反応溶液の組成は酵素に添付されている反応液組成を参考にした。典型的なRDA−PCRの反応条件は下記のとおりである。94℃ 60秒、その後、94℃ 30秒、45℃ 5秒、72℃ 3秒を40サイクル、続いて94℃ 30秒、50℃ 30秒、72℃ 30秒を10サイクルである。キメラ遺伝子の生産は最初の40サイクルの中で行われると考えられ、後半の10サイクルはキメラ遺伝子の収量を上げるための増幅ステップである。
【0032】
5.RFLP分析(restriction fragment length polymorphism:制限酵素切断片長多型分析)
こうしてクローン化したキメラ遺伝子を通常のPCR法(5μl/reaction、94℃ 60秒のあと、94℃、30秒、50℃ 30秒、72℃ 30秒を25サイクル)にて増幅し、増幅された産物を80ng以上含む反応混合物2μlを、0.5UのAlu Iを含む制限酵素含有反応系10μl(33 mM Tris−acetate (pH7.9), 10mM 酢酸マグネシウム,66 mM 酢酸カリウム、1mM DTT, 0.01% BSA)(宝酒造(株))に直接加えて、37℃、2時間インキュベートした。得られた Alu I消化フラグメントを6%のポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により解析した。
【0033】
6.RDA−PCRの成否と最適化
RDA−PCR法の結果を図2に示す。図2の上部に示すように反応系に添加するプライマー(a,b,c)及び親DNA分子(鋳型)(aYb,cGd)を変動させた。5μlの反応混合物を1%アガロースゲル電気泳動にかけた。右側にある矢印は親分子の移動度を表している。レーンMはサイズマーカーである。モデル親分子として、野生型GFP遺伝子とその派生体であるYFP遺伝子を用いた。yfpのコドン使用頻度は哺乳類での発現用に最適化されているため、DNA配列レベルでのgfpとyfpのホモロジーは74%である。しかも、連続して一致する塩基数は平均すると3bpである。これはシャフリング法のテストケースに用いられたmurine とhuman IL−1β遺伝子よりも低い値である(Stemmer, 1994前出)。図2に示されるデータは、760bp付近のDNA増幅を示している。これはskew プライマーセット(bとc)と2つの親遺伝子(aYbとcGd)に依存的に増幅されていることがはっきりと示されている。同じ結果が、もう1つのskew プライマーセット(aとd)でも得られた(図示していない)。
【0034】
さらにRDA−PCRの最適化を検討した。まず増幅におけるアニール・伸長の温度条件プログラムが、産出されるキメラ遺伝子の収量に与える影響を調べた。
図3Aの実験ではSkew プライマーセットにbとcを用いた。12μlの反応液を4つのチューブに分け、次の条件でRDA−PCRを行った。94℃ 60秒のあと、94℃、20秒、X℃ 5秒を40サイクル行った。その後、94℃、30秒、50℃ 30秒、72℃30秒を10サイクル行った。該X℃(アニール・伸長温度)を55℃、50℃、45℃、40℃で変動させた。その結果は55℃(レーン1)、50℃(レーン2)、45℃(レーン3)、40℃(レーン4)となった。
図3Bの実験ではSkew プライマーセットにaとdを用いた。アニールステップの後にさらに72℃で3秒間伸長するステップを導入した効果を観察した。各反応の温度条件は次のとおりである。レーン1及び2:94℃、1分の後、94℃ 20秒、50℃(レーン2は45℃) 5秒、72℃ 3秒を40サイクル、その後、94℃ 30秒、50℃ 30秒、72℃ 30秒を10サイクル、レーン3:94℃、1分の後、94℃ 20秒、45℃ 5秒を60サイクル、94℃ 30秒、50℃ 30秒、72℃ 30秒を10サイクル、レーン4:94℃、1分の後、94℃ 30秒、50℃ 30秒、72℃ 30秒を25サイクル(従来PCR法の典型的な温度プログラム)。右側の矢印は親/キメラ遺伝子断片の移動点を示す。レーンMはサイズマーカーである。
【0035】
以前に報告されているように、2つの似た配列同士の相同組換えはアニール/伸長温度が55℃以上では効率的に起こらないことがわかっている(KawarasakiY. et al., A Method for Functional Mapping of Protein−Protein Binding Domain by Preferential Amplification of the Shortest Amplicon Using PCR. Anal. Biochem., 2002, 303, 34−4)。yfpとgfpのキメラ遺伝子創出の場合、効率的に行うためにはアニール・伸長は45℃以下で行うのが好ましい(図3A)。しかし、温度をさらに下げても(37℃以下)、改善効果は見られなかった。これはおそらく、プライマーのアニールの厳密性が低くなったこと、そしてTaq DNA ポリメラーゼが低い温度ではうまく機能しないことが原因であると考えられる。
キメラ遺伝子の収量を増加するために、アニール伸長ステップと変性ステップの間にさらに72℃で数秒間伸長させるステップを導入してみたところ、サイクル数を増やした場合よりも効果があった(図3B)。しかしながら、反応条件を通常のPCRで用いられる条件(伸長反応70℃、30秒)で行うと、キメラ遺伝子が増幅されなかった。これはおそらく、プライマーが同一鋳型上で伸長を完結するのに十分な時間があったためであると考えられる。この結果より、未熟なプライマーを創り出すことが、相同組換えには不可欠であるということがわかった。
【0036】
ここで、yfpとgfpにおいて至適化されたこの反応条件は、他の全ての場合にも適用できるというわけではない。一般的に、温度と、アニール・伸長時間はケースごとに至適化する必要がある。これらは親分子の全体的、もしくは局所的な相同性(配列類似性)、またはskew プライマーのTm値や厳密性、親分子の長さに依存するからである。実際、親分子を同一のもの(aGbとcGd)にした場合、相同性のある2種類の親分子を用いた場合に比べて、キメラ遺伝子の合成量は多かった。そして、組換え反応はより高いアニール伸長反応(55℃以上)において観察できた。
【0037】
さらに、反応液中における鋳型とする親DNA分子の濃度を検討した。親分子濃度も、最終的なキメラ遺伝子の収量に影響を与えることが示された(図4)。親DNA分子、aYbとcGdの濃度を変えて反応に加え、最終濃度を図4の上部に示した。RDA−PCRの反応条件は先の「4.RDA−PCR」に記載したものに従った。図4中、レーンMはサイズマーカーである。このデータによれば効率的にキメラ遺伝子を産出するには、それぞれ約13pg/μl以上の親分子が必要であることを示している。しかしながら、500pg/μl以上の鋳型濃度は避けるべきであると考えられる。なぜなら、組換えを起さなかったDNA断片と親分子との複合体や、元の親分子がかなりの割合で、生じてきたキメラ遺伝子に混入するからである。
【0038】
7.キメラ遺伝子のクロスオーバーポイントのRFLP解析
ファミリー シャフリングまたはRDA−PCRによって産出されたキメラ遺伝子の違いを明らかし、この2つの手法の互換性について検討した。これら2つの方法を比較するために、通常のプロトコル(前記Stemmer, 1994)にしたがって、yfpとgfpのファミリー シャフリングを行った。しかし、gfp特異的プライマーを使ってランダムに選択した、ファミリー シャフリングにより作られた20クローンには組み換わった遺伝子は全くなかった。この場合、取得したライブラリはシャッフルされていないgfpのみから構成されているものであった。これはおそらく、gfpとyfpの間には連続して一致する塩基数の平均が3bpであることが原因であると考えられる。前記Stemmer, 1994が、murinとhuman IL−1β(連続して一致する塩基数の平均は4bp)との間のキメラ創出ではうまく行かず、Taq DNA ポリメラーゼの代わりに、Klenow fragment(クレノウ断片)を低い温度で使用することが必要であったと報告していることからも推察される。他の研究グループの報告では、2種類のcatechol 2,3−dioxygenase由来のキメラ遺伝子は、アミノ酸配列レベルでのホモロジーが84%であるにもかかわらず、ほとんど産出されなかった(1%以下)ということを報告している。
【0039】
一方、skew プライマー(bとc)を利用することにより、シャフリングにおいて、組換えの効率を劇的に改善することができた。アニールステップにおける温度や時間の変更は全く影響がなかったにも関わらずである。このデータは、DNase Iで消化された断片では親分子と全く同じ配列間での集合が起こりやすいということを示している。この結果、取得したPCR産物は組換えすることなしに再構築された親分子が大部分を占めることになる。一方 skew プライマーは、シャッフルされない分子、すなわち親分子と同じ配列になるように複製された分子は、以降のサイクルで鋳型として認識されないので、組換えを起したキメラ遺伝子のみが指数関数的に増幅される。従って、skew プライマーをファミリー シャフリングの際に用いることが提案される。
【0040】
シャフリングによって得た断片をT−vector(pGEM−T, Promega)につなぎあわせ、その後、E.coli DH5αFTに形質転換した。
組換えが起こったキメラ遺伝子をAlu I処理して得られる電気泳動パターンは、2つの親分子をそれぞれAlu I処理して得られる電気泳動パターンとは異なる。また、組換えの起こった部位によっても泳動のパターンは異なってくる。このことを利用して、組換えが起こったキメラ遺伝子クローンと組換えが起こった部位の同定を簡便に行うことができる評価系を構築した。
図5は2つの方法で得たキメラ遺伝子クローンをランダムに選択してAlu Iを用いて解析したRFLPの比較を表す。図5AはaYbとcGdのAlu I認識部位を示す。挿入断片はコロニーPCRで増幅し、RFLP解析に用いた。yfpとgfpはAlu Iにより認識される部位がそれぞれ1個所と9個所ある(図5A)。図5Aの上のパネルでは、親遺伝子を2つの長方形として、Alu I 認識部位の位置とならべて並べて示してある。a、b、c、dと表記した小さい長方形はskew プライマーのアニール部位を示す。ローマ数字付きのかぎで示された領域(この領域は2つの親分子のAlu I認識部位間で区切っている)で組換えが起こった場合のAlu I消化断片の典型的な電気泳動パターンをその下のパネルに示す(ただし1つの遺伝子につきクロスオーバーは1回しか起こらなかったと仮定している)。断片のパターンのローマ数字は上のパネルのものと一致する。白と黒のバーはそれぞれ、yfp由来、gfp由来のものを示す。キメラ遺伝子特異的Alu I 断片はアスタリスク付きの平行線の入ったバーで示す。その下にあるテーブルは親分子全長に対するフラグメントサイズのパーセンテージ(頭としっぽにつけた配列は除く)、そのフラグメント内における親分子間の配列の類似性、連続して一致する塩基配列のうち最も長い部分の塩基数、そして6塩基以上連続して一致する配列が出てくる頻度を示す。RFLPによって明らかになったクロスオーバーポイントの実際の分布も表にしてある。図5Bは RDA−PCRによって産出されたキメラ遺伝子(上)と、ファミリーシャフリング法(下)によって得られたキメラ遺伝子クローンのRFLP分析結果を表す。クローンの番号がレーンの上に記されている。レーンMはマーカーである。RDA−PCRにより構築されたキメラ遺伝子ライブラリのAlu I 消化の結果をレーン lib.に示す。レーン lib.のアスタリスク付きローマ数字は、図5Aのパネルの下のフラグメントと一致する。各レーンの下のローマ数字は、それぞれのフラグメントパターンの解析結果から得られた、それぞれのクロスオーバーポイントの位置(図5A)を示す。レーン 17のN.I. (not identified)はフラグメントパターンからクロスオーバーポイントを同定できなかったことを示す。
【0041】
RDA−PCRによって得たキメラ遺伝子はファミリー シャフリングによって得たものと明らかに異なるRFLPとして検出された。RDA−PCRによって得た全てのクローンと、ファミリー シャフリングによって得た20クローンのうち19クローンは、1回のクロスオーバーが起こったときに期待される泳動パターン(図5A)のうちの1つと一致した(つまり大部分のものは1回の組換えしかおこしていない)。このテストをした限りでは、ファミリー シャフリング法で得たクローンの1つだけが例外であった(図5Bの17番目)。このクローンのAlu I断片パターンは1回のクロスオーバーだけでは説明できない。この事実は、キメラ遺伝子は複数のクロスオーバーポイントを持っている可能性を示している。これらのデータは両方法ともに、得られたキメラ遺伝子は1回のクロスオーバーのみのキメラ遺伝子がライブラリの大部分を占めていることを示している。
【0042】
両手法のクロスオーバーポイントの分布は類似したものだったが、全く同じというわけでもなかった。両ライブラリにおいて、ランダムに選択したキメラクローンには領域(i)、(ii)、(iii)にクロスオーバーポイントを持ったものはなかった(図5A)。大部分のクロスオーバーポイントは親分子の領域(iv)〜(xi)の間にあった。シャフリングにより得たクローンのクロスオーバーポイントは、おもに領域(v)、(vii)、(ix)、(x)のような、親分子間で6塩基以上が連続して一致する頻度が高く、かつ比較的長い連続一致塩基長を有する領域に集中した。一方、RDA−PCRでは連続して一致している配列に対する依存性というものはあまり顕著ではなかった。むしろRDA−PCRでは、連続して一致する配列と言うよりも、その領域全体における配列の類似性が影響を与えているようであった。
しかし、20個のうち、3つのクローンが、親分子の最後の12塩基のところにクロスオーバーポイントがあった(領域(xi)、ただし、Xba I部位は遺伝子の外の領域となるため除いてある)。この位置でのクロスオーバーの頻度は、配列の類似性や、連続して一致する配列の出現頻度や長さから期待される頻度よりも高いものだった。しかしながら、余分に付加した配列(skew プライマーのアニール部位)の分までカウントに入れると、領域(xi)の局所的な配列同一性は81%まで高まる。これは未熟な(完全に最後まで伸長していない)プライマー(bプライマー)が、片割れのgfpストランドにアニールするのに十分であるのかもしれない。シャフリングではこの領域にクロスオーバーポイントを持ったクローンが見られなかった。
各クローンのRFLP解析により、親分子の前半にクロスオーバーポイントをもつキメラの頻度がかなり低いということが示された。これらがライブラリ中に低頻度ながらも存在することは、ライブラリのAlu I消化により明らかにされた(図5B レーン lib.、これらのクロスオーバーに相当するバンドにはアスタリスクが付与してある)。しかしながら、これらに相当する断片は強度が弱く、これらの領域でのクロスオーバーはやはり低頻度であることを示している。
【0043】
8.キメラ遺伝子のシーケンス解析
クロスオーバーポイントを正確に特定するために、両方のライブラリからランダムに10クローンを選び、シーケンシング解析を行った。決定されたクロスオーバーポイントを図6に示す。クロスオーバーポイントは親分子のDNA配列アライメントの上にかぎつきの四角で囲ってある。ファミリーシャフリングのクロスオーバーポイントには1〜10の番号をふり、RDA−PCRのクロスオーバーポイントには11〜20の番号をふってある。Alu Iの認識部位には下線が施してある。配列の左に記してある数字はヌクレオチドの番号である(親分子の開始コドンの最初の塩基を+1としている)。
ファミリーシャフリングのクローンでは、クロスオーバーポイントにおける連続一致配列長の平均塩基数は7.2bpであった。これに対して、RDA−PCRのクローンでは5.3 bpであった。このことは、RDA−PCRにおけるクロスオーバーは、ファミリーシャフリングよりも比較的短い連続一致配列の領域で起こることを示している。ファミリーシャフリングで得られたクローンでは、クロスオーバーに長い連続一致配列が必要であることは、図5の結果と非常に良く一致する。
さらに、RDA−PCRでは10クローンのうち、3つのクローンにおいて、完全に一致する塩基が2bpのみのところにクロスオーバーポイントがあった。このことは、RDA−PCRをもちいれば、わずか2bpの連続一致配列が有ればキメラ遺伝子を創出することができることを意味する。もちろん親分子間にはその両側、もしくは片側には高度に類似性がある配列が必要ではある。でなければ、伸長途中のプライマーは別の親のストランドにアニールすることができないからである。
【0044】
クロスオーバー領域の長さに加えて、RDA−PCR由来の10クローンの中には重複するものはなかった。これに対してファミリー シャフリングでは、いくつかのクローンが同一のクロスオーバーポイントを持っていた。このことは、クロスオーバーの位置という点においては、RDA−PCRはファミリー シャフリングよりも、より高い多様性を持っているということを示している。この点については別の解析によっても確かめた(図7)。
任意に設定したクロスオーバーポイントで組換えを起したキメラ遺伝子がライブラリ中にあるか調べた。このために、任意に設定したクロスオーバーポイントにアニールするようにデザインした短いプライマー(Arbitrary primer、17−19 bp, Tm=45−48℃)(図7に示す)を用意した。図7Aは任意に設定したクロスオーバーポイントと、その領域にアニールするように設計したプライマーの位置を示す。プライマーは一続きの四角で示している。黒色、斜線入り、白抜きの四角はそれぞれ、gfp、任意に設定したクロスオーバーポイント、yfpの配列を示している。四角の上の矢印はプライマーの向き(5′→3′)である。図7Bはこれらのプライマーを用いたPCRの結果を表す。RDA−PCR由来のキメラ遺伝子ライブラリ(レーンR)、ファミリー シャフリング由来のライブラリ(レーンS)を希釈して鋳型溶液として最終濃度20 pg/μlとなるようにPCR反応液に加えた。コントロールとして、等量のaYbとcGdの混合液(それぞれ濃度10pg/μl)をキメラ遺伝子ライブラリの代わりに鋳型として用いた(レーンC)。一連のPCRにおけるアニール温度をそれぞれの電気泳動写真の左側に示す。
【0045】
Arbitrary primerがその位置にクロスオーバーを起こしていないクローンにミスアニールするのを防ぐために、アニール温度を64℃まで上げ、アニーリングの厳密性を高めて行う必要があった。あらかじめ決定した任意のクロスオーバーポイントは2つの親分子配列によく似ているので、50℃ではプライマーがミスアニールし、親分子の鎖を増幅してしまった。しかし、60℃以上ではシャッフルされていない親分子のストランドは増幅されなかった。64℃にまで温度を上げることによって、プライマーは決められた位置にクロスオーバーポイントをもつキメラ遺伝子のみにアニールすることが許される。RDA−PCRにより構築されたライブラリは、どのケースにおいてもファミリー シャフリングライブラリよりも、多くの産物が得られた(レーンR参照)。このことは伸長途中のプライマーと親分子との間の相同組換えは、RDA−PCRを用いれば、いたるところで行われるということを示しており、RDA−PCRライブラリはファミリー シャフリングに比べて、よりクロスオーバーポイントに多様性を持っているということが示された。
【0046】
興味深いことに、ファミリー シャフリングライブラリの中では、rec 2プライマー(連続した5塩基のところにアニールするように設計した)を用いた反応において、他のプライマーの組み合わせで行ったものよりも相対的に濃いバンドが見られた。このことは、他の任意で設定したクロスオーバーポイント(連続した塩基数が2または3)よりも、より高い頻度でキメラ遺伝子が産出されると言うことを示している。
このことはファミリー シャフリングにおいては、連続して一致する塩基数が長いほど相同組換えが起こりやすいということを示しており、RFLPを用いた解析(図5)や、DNAシーケンシングの結果と一致している(図6)。
今回試験したものに関して言えば、RDA−PCRクローンでは、突然変異は見られなかった。これに対してファミリー シャフリングではいくつかのクローンに突然変異が見られた(3000bpで6個の変異)。他の研究グループで報告されているのと同様に、シャフリングにおけるほとんどの突然変異はプリン間またはピリミジン間の塩基置換であった。
【0047】
RDA−PCRにおける現状での問題点は、1遺伝子あたりのクロスオーバーポイントの数が制限されていることである。RDA−PCRにおいて構築されたライブラリ中のキメラ遺伝子の大多数は1個のクロスオーバーポイントしか持たない(図5及び6)。キメラ遺伝子のバリエーションを豊富にするために、より多くのクロスオーバーポイントを持つことが望まれる。そのため、シャフリング法及びRDA−PCR法を併用することによって、より複雑なキメラ遺伝子ライブラリを構築できると考えられる。今回試験したRDA−PCRのクローンはフレームシフトを全く起こしていなかった。このことは、ファミリー シャフリングと組み合わせて更なるキメラ遺伝子の産出を行う上で、不可欠な性質である。両方の手法とも、親分子の局所的な配列類似性に基づいた組換えを起こす手法であるが、クロスオーバーポイントの分布は異なっている。そのため、この2つの手法を組み合わせることによって、配列の多様性がさらに増加することが期待される。
【0048】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、低いバックグラウンドレベルで、すなわち親DNA分子の増幅を極めて低く抑えて且つ簡便に、より多様なキメラ遺伝子を効率よく作製することができる。さらには、よりバラエティーに富んだキメラ遺伝子ライブラリを構築することできる。本発明の方法によれば、2種以上の相同遺伝子間でわずかに2塩基が連続して一致しているところでも組換えを起こすことが可能であり、遺伝子全体にわたってクロスオーバーポイントが多様にあるといえる。ここで実施したRDA−PCRによって作製されたキメラ遺伝子は突然変異やフレームシフトを起していなかった。このため、RDA−PCRによるキメラ遺伝子ライブラリは、ファミリー シャフリング法と組み合わせることによって、より多様で、複雑なキメラ遺伝子ライブラリを生み出すことができる。
【0049】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法の一例の概要を表す図である。
【図2】RDA−PCR法により得られたキメラ遺伝子をアガロースゲル電気泳動にかけた結果を示す。
【図3】RDA−PCRの最適化を検討するため、増幅におけるアニール・伸長の温度条件プログラムを変動させた結果を表す。
【図4】RDA−PCRにおける反応液中の鋳型とするDNA分子の濃度を検討した結果を表す。
【図5】図5AはaYbとcGdのAlu I認識部位を示し、さらに1個のクロスオーバーポイントをもつキメラ遺伝子のAlu I消化断片のパターンを表す。図5BはRDA−PCRによって産出されたキメラ遺伝子(上)と、ファミリー シャフリング法によって得られたキメラ遺伝子(下)のRFLP分析の結果を表す。
【図6】ファミリー シャフリング法及びRDA−PCR法の両方のライブラリからランダムに選んだクローンのシーケンシング解析の結果、決定されたクロスオーバーポイントを表す。
【図7】任意に設計したプライマーを用いたクロスオーバーポイントの多様性に関する解析の結果を表す。図7Aは任意に設定したクロスオーバーポイントと、その領域にアニールするように設計したプライマーの位置を示す。図7Bは任意に設計したプライマーを用いたPCRの結果を表す。
Claims (7)
- 少なくとも2種のDNA分子を鋳型としてPCR法によりキメラ遺伝子(群)を作製する方法であって、少なくとも5′側に固有配列(a)を付加させたDNA分子(X)と、少なくとも3′側に固有配列(d)を付加させたDNA分子(Y)とを鋳型として、DNA分子(X)のセンス鎖側の固有配列(a)を有するプライマーと、DNA分子(Y)の非センス鎖側の固有配列(d)を有するプライマーとを用いてPCR法を実施することを特徴とする、キメラ遺伝子(群)の作製方法。
- 少なくとも2種のDNA分子を鋳型としてPCR法によりキメラ遺伝子(群)を作製する方法であって、5′側に固有配列(a)を付加させ3′側に固有配列(b)を付加させたDNA分子(X)と、5′側に固有配列(c)を付加させ3′側に固有配列(d)を付加させたDNA分子(Y)とを鋳型として、DNA分子(X)のセンス鎖側の固有配列(a)を有するプライマーと、DNA分子(Y)の非センス鎖側の固有配列(d)を有するプライマーとのプライマーセットを用いて、又は、DNA分子(X)の非センス鎖側の固有配列(b)を有するプライマーと、DNA分子(Y)のセンス鎖側の固有配列(c)を有するプライマーとのプライマーセットを用いて、PCR法を実施することを特徴とする、キメラ遺伝子(群)の作製方法。
- PCRの実施において90〜98℃ 10〜60秒、40〜50℃ 1〜5秒、及び72℃ 0〜5秒のサイクルを繰り返す請求項1又は2記載のキメラ遺伝子(群)の作製方法。
- 鋳型とするDNA分子において、該各固有配列とDNA分子末端の間に制限酵素部位が挿入されている、請求項1〜3のいずれか1項記載のキメラ遺伝子(群)の作製方法。
- 少なくとも2種のDNA分子を鋳型としてPCR法によりキメラ遺伝子(群)を作製する方法であって、少なくとも5′側に固有配列(a)を付加させたDNA分子(X)と、少なくとも3′側に固有配列(d)を付加させたDNA分子(Y)を、DNaseIで消化し断片化した後、これらの断片を鋳型としてプライマーの非存在下でPCR法を実施し、再構成された分子を鋳型として、DNA分子(X)のセンス鎖側の固有配列(a)を有するプライマーと、DNA分子(Y)の非センス鎖側の固有配列(d)を有するプライマーとを用いてPCR法を実施することを特徴とする、キメラ遺伝子(群)の作製方法。
- 少なくとも2種のDNA分子を鋳型としてPCR法によりキメラ遺伝子(群)を作製する方法であって、5′側に固有配列(a)を付加させ3′側に固有配列(b)を付加させたDNA分子(X)と、5′側に固有配列(c)を付加させ3′側に固有配列(d)を付加させたDNA分子(Y)とを、DNaseIで消化し断片化した後、これらの断片を鋳型としてプライマーの非存在下でPCR法を実施し、再構成された分子を鋳型として、DNA分子(X)のセンス鎖側の固有配列(a)を有するプライマーと、DNA分子(Y)の非センス鎖側の固有配列(d)を有するプライマーとのプライマーセットを用いて、又は、DNA分子(X)の非センス鎖側の固有配列(b)を有するプライマーと、DNA分子(Y)のセンス鎖側の固有配列(c)を有するプライマーとのプライマーセットを用いて、PCR法を実施することを特徴とする、キメラ遺伝子(群)の作製方法。
- DNaseI消化を施すDNA分子において、該各固有配列とDNA分子末端の間に制限酵素部位が挿入されている、請求項5又は6記載のキメラ遺伝子(群)の作製方法。
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