JP2004079915A - プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】被処理基板を収容する処理室と、該処理室内に設けられて前記被処理基板に所定のプラズマ処理を施すためのプラズマを発生させる機構と、前記処理室外に設けられて前記処理室内の前記被処理基板の周囲に所定のマルチポール磁場を形成する磁場形成機構とを有するプラズマ処理装置であって、前記磁場形成機構は、回転可能に設けられて磁場方向が変更可能な第1の磁石セグメントと、前記処理室の中心に対し周方向の磁化をもち固定された第2の磁石セグメントとを有する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はプラズマ処理装置に関し、特に、半導体ウエハ等の被処理基板にエッチング等のプラズマ処理を施すプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、半導体装置の製造分野においては、処理室内にプラズマを発生させ、このプラズマを処理室内に配置した被処理基板例えば半導体ウエハ等に作用させて、所定の処理、例えば、エッチング、成膜等を行うプラズマ処理装置が知られている。
【0003】
このようなプラズマ処理装置において、良好な処理を行うためには、プラズマの状態を、プラズマ処理に適した良好な状態に維持する必要があり、このため、従来からプラズマを制御するための磁場を形成する磁場形成機構を具備したプラズマ処理装置が用いられている。
【0004】
磁場形成機構としては、被処理面を上方に向けて水平に配置した半導体ウエハ等の被処理基板に対し、その周囲を囲むようにN及びSの磁極が交互に隣り合うように配列し、半導体ウエハの上方には磁場を形成せず、ウエハの周囲を囲むようにマルチポール磁場を形成するマルチポール型のものが知られている。マルチポールの極数は4以上の偶数であり、好ましくは8から32の間でウエハ周囲の磁場強度が処理条件に合うように極数が選ばれる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように、処理室内の半導体ウエハ等の被処理基板の周囲に、所定のマルチポール磁場を形成し、このマルチポール磁場によってプラズマの状態を制御しつつ、エッチング処理等のプラズマ処理を行うプラズマ処理装置は公知である。しかしながら、本発明者等の研究によれば、プラズマ処理、例えば、プラズマエッチング等においては、マルチポール磁場を形成した状態でプラズマエッチング処理を行った方がエッチング速度の面内均一性が向上する場合と、これとは逆に、マルチポール磁場がない状態でプラズマエッチング処理を行った方がエッチング速度の面内均一性が向上する場合とがあることが判明した。
【0006】
例えば、シリコン酸化膜等のエッチングを行う場合は、マルチポール磁場を形成してエッチングを行った方が、マルチポール磁場を形成せずにエッチングを行った場合に比べて半導体ウエハの面内のエッチングレート(エッチング速度)の均一性を向上させることができる。すなわち、マルチポール磁場を形成せずにエッチングを行った場合には、半導体ウエハの中央部でエッチングレートが高くなると共に半導体ウエハの周縁部でエッチングレートが低くなるという不具合(エッチングレートの不均一性)が生じる。
【0007】
これとは逆に、有機系の低誘電率膜(いわゆるLow−K)等のエッチングを行う場合にはマルチポール磁場を形成せずにエッチングを行った方が、マルチポール磁場を形成してエッチングを行った場合に比べて半導体ウエハ面内のエッチングレートの均一性を向上させることができる。すなわち、この場合、マルチポール磁場を形成してエッチングを行った場合には、半導体ウエハの中央部でエッチングレートが低くなると共に半導体ウエハの周縁部でエッチングレートが高くなるという不具合(エッチングレートの不均一性)が生じる。
【0008】
ここで、上述した磁場形成機構が、電磁石から構成されたものであれば、磁場の形成及び消滅等の制御は容易に行うことができる。しかし、電磁石を用いると消費電力が増大するという問題が生じるため、多くの装置では永久磁石を用いるのが一般的である。しかし、永久磁石を用いる場合、磁場を“形成する”或いは“形成しない”等の制御は、磁場形成手段自体を装置に取付けたり或いは装置から取外したりする必要があった。このため、磁場形成手段の着脱に大掛かりな装置を必要とするため作業に長時間を要するという問題があり、従って、半導体処理全体の作業効率を低下させるという問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたものであり、プラズマ処理プロセスの種類に応じて適切なマルチポール磁場の状態に制御、設定することができ、良好な半導体処理を簡単且つ容易に行うことを可能にしたプラズマ処理装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、被処理基板を収容する処理室と、該処理室内に設けられて前記被処理基板に所定のプラズマ処理を施すためのプラズマを発生させる機構と、前記処理室外に設けられて前記処理室内の前記被処理基板の周囲に所定のマルチポール磁場を形成する磁場形成機構とを有するプラズマ処理装置に関し、前記磁場形成機構は、回転可能に設けられて磁場方向が変更可能な第1の磁石セグメントと、前記処理室の中心に対し周方向の磁化をもち前記第1の磁石セグメントの隣に設けられ且つ固定された第2の磁石セグメントとを有することを特徴とするプラズマ処理装置である。
【0011】
本発明は、被処理基板を収容する処理室と、該処理室内に設けられて前記被処理基板に所定のプラズマ処理を施すためのプラズマを発生させる機構と、前記処理室外に設けられて前記処理室内の前記被処理基板の周囲に所定のマルチポール磁場を形成する磁場形成機構とを有するプラズマ処理装置に関し、前記磁場形成機構は、回転可能に設けられて磁場方向が変更可能な第1の磁石セグメントと、前記処理室の中心に対し径方向の磁化をもち前記第1の磁石セグメントの隣に設けられ且つ固定された第2の磁石セグメントとを有することを特徴とするプラズマ処理装置である。
【0012】
前記第1及び第2の磁石セグメントはリング状に配置され、該リング状に配置された第1及び第2の磁石セグメントはその外側で磁性体のリングで囲まれていることを特徴とする。
【0013】
更に、前記磁場形成機構は、上下に分離して設けられた上側磁場形成機構と下側磁場形成機構とを有するようにしてもよく、これらの上側磁場形成機構と下側磁場形成機構は互いに接近し或いは遠ざけられるように上下方向に移動可能に構成されたことを特徴とする。
【0014】
更に又、前記第1の磁石セグメントを回転させることにより、前記処理室内の前記被処理基板の周囲に所定のマルチポール磁場を形成する状態と、前記処理室内の前記被処理基板の周囲にマルチポール磁場を形成しない状態とに設定可能としたことを特徴とする。更に又、前記第1及び第2の磁石セグメントの形状は夫々略円筒状であることが好ましい。
【0015】
更に又、本発明は、前記被処理基板にプラズマを作用させてエッチング処理を施すことを特徴としている。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明に係る実施の形態を説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る実施の形態を、半導体ウエハのエッチングを行うプラズマエッチング装置に適用した場合の構成を模式的に示したものである。同図において、符号1は材質が例えばアルミニウム等からなる円筒状の真空チャンバであり、プラズマ処理室を構成する。この真空チャンバ1は小径の上部1aと大径の下部1bからなる段付きの円筒形状となっており接地電位に接続されている。また、真空チャンバ1の内部には、被処理基板としての半導体ウエハWを、その被処理面を上側に向けて略水平に支持する支持テーブル(サセプタ)2が設けられている。
【0018】
この支持テーブル2は例えばアルミニウム等の材質で構成されており、セラミックなどの絶縁板3を介して導体の支持台4で支持されている。また支持テーブル2の上方の外周には導電性材料または絶縁性材料で形成されたフォーカスリング5が設けられている。
【0019】
支持テーブル2の半導体ウエハWの載置面には半導体ウエハWを静電吸着するための静電チャック6が設けられている。この静電チャック6は絶縁体6bの間に電極6aを配置して構成されており、電極6aには直流電源13が接続されている。電極6aに電源13から電圧を印加することにより、半導体ウエハWを支持テーブル2にクーロン力によって吸着させる。
【0020】
さらに、支持テーブル2には冷媒を循環させるための冷媒流路(図示せず)と、冷媒からの冷熱を効率よく半導体ウエハWに伝達するために、半導体ウエハWの裏面にHeガスを供給するガス導入機構(図示せず)とが設けられ、半導体ウエハWを所望の温度に制御できるようになっている。
【0021】
上記支持テーブル2と支持台4はボールねじ7を含むポールねじ機構により昇降可能となっており、支持台4の下方の駆動部分はステンレス鋼(SUS)製のベローズ8で覆われ、ベローズ8の外側にはベローズカバー9が設けられている。
【0022】
支持テーブル2のほぼ中央には高周波電力を供給するための給電線12が接続している。この給電線12にはマッチングボックス11及び高周波電源10が接続されている。高周波電源10からは13.56〜150MHz(好ましくは13.56〜100MHz)の範囲内の高周波電力、例えば100MHzの高周波電力が支持テーブル2に供給される。
【0023】
また、エッチングレートを高くするためには、プラズマ生成用の高周波とプラズマ中のイオンを引き込むための高周波とを重畳させることが好ましく、イオン引き込み(バイアス電圧制御)用の高周波電源(図示せず)としては周波数が500KHz〜13.56MHzの範囲のものが用いられる。なお、この周波数はエッチング対象がシリコン酸化膜の場合は3.2MHz、ポリシリコン膜や有機材料膜の場合は13.56MHzが好ましい。
【0024】
さらに、フォーカスリング5の外側にはバッフル板14が設けられている。バッフル板14は、支持台4及びベローズ8を介して、真空チャンバ1と電気的に導通している。一方、支持テーブル2の上方の真空チャンバ1の天壁部分には、シャワーヘッド16が、支持テーブル2と平行に対向するように設けられており、このシャワーヘッド16は接地されている。したがって、これらの支持テーブル2およびシャワーヘッド16は、一対の電極として機能する。
【0025】
シャワーヘッド16には多数のガス吐出孔18が設けられており、シャワーヘッド16の上部にガス導入部16aが設けられている。シャワーヘッド16と真空チャンバ1の天壁のあいだにはガス拡散用空隙17が形成されている。ガス導入部16aにはガス供給配管15aが接続しており、このガス供給配管15aの他端には、エッチング用の反応ガス及び希釈ガス等からなる処理ガスを供給する処理ガス供給系15が接続している。
【0026】
反応ガスとしては、例えば、ハロゲン系のガス(フッ素系、塩素系)、水素ガス等を用いることができ、希釈ガスとしては、Arガス、Heガス等の通常この分野で用いられるガスを用いることができる。このような処理ガスが、処理ガス供給系15からガス供給配管15a、ガス導入部16aを介してシャワーヘッド16上部のガス拡散用空隙17に至り、ガス吐出孔18から吐出され、半導体ウエハWに形成された膜のエッチングに供給され、エッチング処理される。
【0027】
真空チャンバ1の下部1bの側壁には、排気ポート19が形成されており、この排気ポート19には排気系20が接続している。この排気系20に設けられた真空ポンプを作動させることにより真空チャンバ1内を所定の真空度にまで減圧することができる。さらに、真空チャンバ1の下部1bの側壁上側には、半導体ウエハWの搬入出口を開閉するゲートバルブ24が設けられている。
【0028】
一方、真空チャンバ1の上部1aの外側周囲には、環状の磁場形成機構(リング磁石)21が真空チャンバ1と同心状に配置されており、支持テーブル2とシャワーヘッド16との間の処理空間の周囲に磁場を形成するようになっている。この磁場形成機構21は、回転機構25によって、その全体が、真空チャンバ1の回りを所定の回転速度で回転可能である。
【0029】
磁場形成機構21は、図2に示すように、支持部材(図示せず)により支持された複数(図2では32個)の磁石セグメント22a(第1の磁石セグメント)と22b(第2の磁石セグメント)を主要構成要素としている。複数の磁石セグメント22aは、真空チャンバ1側に向く磁極がS,N,S,N,…となるように他の磁石セグメント22bに対して1個置きに配置されている。磁石セグメント22bは、磁石セグメント22aに対して同様に1個置きに配置され、その磁場方向は真空チャンバ1内に形成される周方向の磁場と逆になるように配列されている。図の矢印の先がN極を示している。更に、磁石セグメント22a及び22bの外周は磁性体23で囲まれていることが好ましい。尚、以下の説明では、磁石セグメント22a及び22bを総称して参照番号22で示す場合がある。
【0030】
図2に示す状態では、磁石セグメント22bに対して1個置きに配置された磁石セグメント22aの磁極の向きは径方向で互いに逆向きであり、一方、その間の磁石セグメント22bの磁極の向きは磁場形成機構21の周方向に形成される磁場の方向と略逆向きとなって固定されている。従って、真空チャンバ1内には、磁石セグメント22bに対して1個置きに並んだ径方向の磁化の磁石セグメント22a間に図示のような磁力線が形成され、処理空間の周辺部、即ち真空チャンバ1の内壁近傍では例えば0.02〜0.2T(200〜2000G)、好ましくは0.03〜0.045T(300〜450G)の磁場が形成され、半導体ウエハWの中心部は実質的に無磁場状態(磁場が弱められている状態を含む)となるようにマルチポール磁場が形成されている。
【0031】
なお、このように磁場の強度範囲が規定されるのは、磁場強度が強すぎると磁束洩れの原因となり、弱すぎるとプラズマ閉じ込めによる効果が得られなくなるためである。従って、このような数値は、装置の構造(材料)によって決まる一例であって、必ずしもこの数値範囲に限定されるものではない。
【0032】
また、上述した半導体ウエハWの中心部における実質的な無磁場とは、本来ゼロT(テスラ)であることが望ましいが、半導体ウエハWの配置部分にエッチング処理に影響を与える磁場が形成されず、実質的にウエハ処理に影響を及ぼさない値であればよい。図2に示す状態では、ウエハ周辺部に例えば磁束密度420μT(4.2G)以下の磁場が印加されており、これによりプラズマを閉じ込める機能が発揮される。
【0033】
さらに、本実施の形態においては、磁場形成機構21の各磁石セグメント22a(又は図4の22c)は、磁石セグメント回転機構により、磁場形成機構21内において、セグメントの垂直中心軸を中心に回転自在とされている。磁場形成機構21の各磁石セグメント22b(又は図4の22d)は固定されており回転しない特徴を有している。
【0034】
すなわち、図2及び図3(a)に示すように、各磁石セグメント22aの磁極が真空チャンバ1側に向いた状態から、図3(b)及び図3(c)に示すように、磁石セグメント22bに対して一つおきの磁石セグメント22aが同期して同方向に回転するよう構成されている。なお、図3(b)は、磁石セグメント22aが図3(a)の状態から45度回転した状態を示しており、図3(c)は磁石セグメント22aが図3(a)の状態から90度回転した状態を示している。特に、図2及び図3の場合は、磁石セグメント22aの回転は0度より大で90度(磁極が周方向を向くまで)の回転を対象とするものである。
【0035】
また、図2及び図4(a)に示すように、各磁石セグメント22cを磁石セグメント22dに対して一つおきに配置し、各磁石セグメント22cを同期して回転させ、その磁極が、真空チャンバ1の周方向に向いた状態から、図4(b)及び図4(c)に示すように、径方向に向くように構成することもできる。なお、図4(b)は、磁石セグメント22cが図4(a)の状態から90度回転した状態を示しており、図4(c)は磁石セグメント22cが図4(a)の状態から180度回転した状態を示している。特に、図2及び図4の場合は、磁石セグメント22cの回転は0度より大で180度(磁極が径方向を向くまで)の回転を対象とするものである。
【0036】
図5は、縦軸を磁場強度とし、横軸を真空チャンバ1内に配置された半導体ウエハWの中心からの距離として、図3(a)に示すように各磁石セグメント22aの磁極が真空チャンバ1側に向いた状態(曲線A)、図3(b)に示すように各磁石セグメント22aを45度回転した状態(曲線B)、図3(c)に示すように各磁石セグメント22aを90度回転した状態(曲線C)、における半導体ウエハWの中心からの距離と磁場強度との関係を示している。なお、同図に示すD/S内径とは真空チャンバ1の内壁に設けられた内壁保護用のデポシールド内径のことを示しており、実質的に真空チャンバ1(処理室)の内径を示している。
【0037】
図5の曲線Aで示すように、各磁石セグメント22aの磁極が真空チャンバ1側に向いた状態では、マルチポール磁場は実質的に半導体ウエハWの周縁部まで形成されており、一方、曲線Cで示したように、各磁石セグメント22aを90度回転した状態では、真空チャンバ1内には実質的に磁場強度がゼロ(磁場が弱められている状態)となる。更に、曲線Bで示すように、磁石セグメント22aを45度回転した状態では、上記状態の中間的な状態となる。
【0038】
このように、本実施の形態においては、磁場形成機構21を構成する各磁石セグメント22aは、その回転方向が同じ向きで且つ同期して回転可能となっている。そして、このような磁石セグメント22aの回転によって、実質的に、真空チャンバ1内の半導体ウエハWの周囲にマルチポール磁場が形成された状態と、真空チャンバ1内の半導体ウエハWの周囲に実質的にマルチポール磁場が形成されない状態とに設定できるように構成されている。
【0039】
したがって、例えば、上述したシリコン酸化膜等のエッチングを行う場合は、真空チャンバ1内の半導体ウエハWの周囲にマルチポール磁場を形成してエッチングを行い、これによって半導体ウエハWの面内のエッチングレートの均一性を向上させることができる。一方、上述した有機系の低誘電率膜(Low−K)等のエッチングを行う場合は、真空チャンバ1内の半導体ウエハWの周囲にマルチポール磁場を形成しないでエッチングを行い、これによって半導体ウエハWの面内のエッチングレートの均一性を向上させることができる。
【0040】
図6〜図8は、縦軸をエッチングレート(エッチング速度)とし、横軸を半導体ウエハの中心からの距離として、半導体ウエハW面内のエッチングレートの均一性を調べた結果を示す。図6〜図8の各図において、曲線Aは真空チャンバ1内にマルチポール磁場を形成しない場合、曲線Bは真空チャンバ1内に0.03T(300G)のマルチポール磁場を形成した場合、曲線Cは真空チャンバ1内に0.08T(800G)のマルチポール磁場を形成した場合を示している。
【0041】
図6はC4F8ガスでシリコン酸化膜をエッチングした場合、図7はCF4ガスでシリコン酸化膜をエッチングした場合、図8はN2とH2を含む混合ガスで有機系低誘電率膜(Low−K)をエッチングした場合を示している。図6及び図7に示すように、C4F8やCF4ガス等のCとFを含むガスでシリコン酸化膜をエッチングする場合は、真空チャンバ1内にマルチポール磁場を形成した状態でエッチングを行った方が、エッチングレートの面内均一性を向上させることができることが判る。また、図8に示すように、N2とH2を含む混合ガスで有機系低誘電率膜(Low−K)をエッチングした場合は、真空チャンバ1内にマルチポール磁場を形成しない状態でエッチングを行った方が、エッチングレートの面内均一性を向上させることができることが判る。
【0042】
以上のとおり、本実施の形態においては、磁石セグメント22aを回転させることによって、真空チャンバ1内のマルチポール磁場の状態を容易に制御することができ、実施するプロセスによって、最適なマルチポール磁場の状態で良好な処理を行うことができる。
【0043】
なお、磁石セグメント22a及び22bの数は、図2に示した32個に限定されるものでないことは勿論である。また、その断面形状も、図2に示した円柱形に限らず、正方形、多角形等であってもよい。しかし、磁石セグメント22aを回転させることから、磁石セグメント22aの設置スペースを有効に利用して装置の小型化を図るためには、図2に示したように、磁石セグメント22a(及び22b)の断面形状を円形とし、円筒状とすることが望ましい。
【0044】
さらに、磁石セグメント22a及び22bを構成する磁石材料も特に限定されるものではなく、例えば、希土類磁石、フェライト磁石、アルニコ磁石等の公知の磁石材料を使用することが可能である。
【0045】
第2の実施の形態を図9を参照して説明する。図2〜図4に示した第1の実施の形態では、磁石セグメント22の総数を32個として16極の磁場を形成し、磁石セグメント22bに対して1個置きに配置した磁石セグメント22aを同方向に同期して回転させていた。これに対し、第2の実施の形態では、磁石セグメント22の総数を48個とし、その内、回転可能の磁石セグメント22aの数を32個、固定の磁石セグメント22bを16個として16極の磁場を形成している。即ち、磁気回路を構成する磁石セグメント22の総数以外は、図2で説明した第1の実施の形態と略同様である。したがって、第1磁石セグメントと第2磁石セグメントの配置は得られる磁場の強度により適宜配置すればよいが、第1磁石セグメントと第2磁石セグメントは隣り合って交互に配置されている場合と部分的に第2磁石セグメントを等間隔に配置する等の配置方法が考えられる。
【0046】
第2の実施の形態によれば、図9に白抜きの矢印で示すように、磁石セグメント22aを同期して回転させることによりマルチポールの状態から磁場ゼロの状態を作ることができる。このように磁石セグメントの総数を増やすと、第1の実施の形態に比べて90度回転したときのウエハ周辺部の磁場強度をよりゼロに近づけることができる。
【0047】
ところで、図10に示す比較例のように、磁場形成機構の全ての磁石セグメント22を白抜き矢印の方向に回転させてもチャンバ内部の磁場をマルチポールからゼロにすることができる。しかしながら、この比較例に対し、本発明は回転する磁石セグメント数を削減することができるので装置を簡略化することが可能である。さらに、本発明に係る実施の形態の方が磁気効率がよいのでマルチポール状態でのチャンバ位置での磁場強度を比較例に比べて約20%強くすることができる。言い換えれば、少ない磁石量で同等の磁場強度を得ることができるという効果が得られる。
【0048】
さらに図11を用いて磁性体リング23の効果を述べる。磁性体リング23は、上述した磁石セグメントの外周部に形成されることが好ましい。磁性体としては純鉄、炭素鋼、鉄−コバルト鋼、ステンレス鋼等が挙げられる。磁性体リング23には、マルチポール状態ではチャンバ部分の磁場を強めるように磁束が流れ、磁石セグメントを回転して磁場ゼロの状態ではチャンバ部分の磁場を弱めるように磁束が流れるので、磁場の可変幅を広く採れるという効果がある。
【0049】
次に、上述のように構成されたプラズマエッチング装置における処理について説明する。
【0050】
先ず、ゲートバルブ24を開放し、このゲートバルブ24に隣接して配置したロードロック室を介して搬送機構(共に図示せず)により半導体ウエハWを真空チャンバ1内に搬入し、予め所定の位置に下降されている支持テーブル2上に載置する。次いで、直流電源13から静電チャック6の電極6aに所定の電圧を印加すると、半導体ウエハWはクーロン力により支持テーブル2に吸着される。
【0051】
その後、搬送機構を真空チャンバ1の外部に退避させた後、ゲートバルブ24を閉じて支持テーブル2を図1に示す位置まで上昇させると共に、排気系20の真空ポンプにより排気ポート19介して真空チャンバ1の内部を排気する。
【0052】
真空チャンバ1の内部が所定の真空度になった後、真空チャンバ1内に処理ガス供給系15から所定の処理ガスを、例えば100〜1000sccmの流量で導入し、真空チャンバ1内を所定の圧力、例えば1.33〜133 Pa(10〜1000 mTorr)、好ましくは2.67〜26.7 Pa(20〜200 mTorr)程度に保持する。
【0053】
この状態で高周波電源10から、支持テーブル2に、周波数が13.56〜150MHz、例えば100MHz、電力が100〜3000Wの高周波電力を供給する。この場合に、上述のようにして下部電極である支持テーブル2に高周波電力を印加することにより、上部電極であるシャワーヘッド16と下部電極である支持テーブル2との間の処理空間には高周波電界が形成され、これにより処理空間に供給された処理ガスがプラズマ化されて、そのプラズマにより半導体ウエハW上の所定の膜がエッチングされる。
【0054】
この時、上述したように、実施するプラズマ処理プロセスの種類等により、予め各磁石セグメント22aを所定の向きに設定しておき、真空チャンバ1内に所定の強度のマルチポール磁場を形成、若しくは、実質的に真空チャンバ1内にマルチポール磁場が形成しない状態に設定しておく。
【0055】
なお、マルチポール磁場を形成すると、真空チャンバ1の側壁部(デポシールド)の磁極に対応する部分(例えば図2のPで示す部分)が局部的に削られる現象が生じるおそれがある。これに対して、モータ等の駆動源を備えた回転機構25により、磁場形成機構21を真空チャンバ1の周囲で回転させることにより、真空チャンバ1の壁部に対して磁極が移動するため、真空チャンバ1の壁部が局部的に削られることを防止することができる。
【0056】
所定のエッチング処理を実行すると、高周波電源10から高周波電力の供給を停止して、エッチング処理を停止した後、上述した手順とは逆の手順で半導体ウエハWを真空チャンバ1から外部に搬出する。
【0057】
上述の実施の形態においては、磁石セグメント22のうちの少なくとも一部を、垂直方向の回転軸の回りに水平面内で回転可能に構成し磁極の方向を変更させてマルチポール磁場の制御を行う場合について説明した。以下では、マルチポール磁場の制御機構の他の実施の形態について説明する。なお、この実施の形態においても、磁石セグメント22a(及び22a´)を回転させることによりマルチポール磁場の制御を行う点は、上述の実施の形態と同様である。
【0058】
さらに、図12に示すように、この実施の形態では、リング状の磁場形成機構が上下に分割されて上側磁場形成機構と下側磁場形成機構とから構成されることもあり、上側磁場形成機構に設けた磁石セグメント22aと、下側磁場形成機構に設けた磁石セグメント22a´とを、互いに近づけたり離したりできるように上下方向に移動可能に構成している。このような構成の場合、磁石セグメント22aと、磁石セグメント22a´とを近接させた場合、図12(a)の矢印で示すように、磁場強度は大きくなり、他方、磁石セグメント22aと磁石セグメント22a´とを離した場合には、図12(b)の矢印で示すように、磁場強度は小さくなる。また、第2磁石セグメント22bも22aと同様の配置となる。尚、第2磁石セグメント22b(及び22b´)は図12には示していないが、上述の実施の形態からその配置等は容易に理解できる。このような構成により、真空チャンバ1内のマルチポール磁場を制御するようにしてもよい。この構成の場合であっても、図1に示した回転機構25によって、リング状の磁場形成機構21の全体を、真空チャンバ1の周囲で所定の回転速度で回転させるように構成することが好ましい。
【0059】
なお、上述の実施の形態においては、本発明を半導体ウエハのエッチングを行うエッチング装置に適用した場合について説明したが、本発明はこのような場合に限定されるものではない。例えば、本発明は、半導体ウエハ以外の基板を処理する装置に応用可能であり、更には、エッチング以外のプラズマ処理、例えばCVD等の成膜処理装置にも適用することができる。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、プラズマ処理プロセスの種類に応じて適切なマルチポール磁場の状態を容易に制御、設定することができ、良好なプラズマ処理を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態が適用されるプラズマ処理装置の一例の概略を示す図。
【図2】図1の装置に使用される磁場形成機構の一例の概略を示す概略図。
【図3】図2の磁場形成機構を構成する磁石セグメントの回転動作を説明するための図。
【図4】図2の磁場形成機構を構成する磁石セグメントの回転動作を説明するための図。
【図5】図1に示す装置を構成する真空チャンバ内の磁場強度の状態を示す図。
【図6】本発明の実施の形態によるエッチング速度の半導体ウエハの面内分布と磁場との関係の一例を示す図。
【図7】本発明の実施の形態によるエッチング速度の半導体ウエハの面内分布と磁場との関係の一例を示す図。
【図8】本発明の実施の形態によるエッチング速度の半導体ウエハの面内分布と磁場との関係の一例を示す図。
【図9】図1に示す装置に使用される磁場形成機構の他の実施の形態の概略を示す図。
【図10】本発明の実施の形態の磁場形成機構と比較するための磁場形成機構(比較例)を示す図。
【図11】本発明の実施の形態の磁場形成機構に使用される磁性体リングの効果を示す図。
【図12】本発明に係る磁場形成機構の更に他の実施の形態を示す図。
【符号の鋭明】
1…真空チャンバ、2…支持テーブル、3…絶縁板、4…支持台、5…フォーカスリング、6……静電チャック、7…ボールねじ、8…ベローズ、9…ベローズカバー、10…高周波電源、11…マッチングボックス、12…給電線、13…直流電源、14…バッフル板、15…処理ガス供給系、16…シャワーヘッド、17…ガス拡散用空隙、18…ガス吐出孔、19…排気ポート、20…排気系、21…磁場形成機構、22…磁石セグメント、23…磁性体リング、24…ゲートバルブ、25…回転機構
Claims (7)
- 被処理基板を収容する処理室と、該処理室内に設けられて前記被処理基板に所定のプラズマ処理を施すためのプラズマを発生させる機構と、前記処理室外に設けられて前記処理室内の前記被処理基板の周囲に所定のマルチポール磁場を形成する磁場形成機構とを有するプラズマ処理装置であって、前記磁場形成機構は、回転可能に設けられて磁場方向が変更可能な第1の磁石セグメントと、前記処理室の中心に対し周方向の磁化をもち固定された第2の磁石セグメントとを有することを特徴とするプラズマ処理装置。
- 被処理基板を収容する処理室と、該処理室内に設けられて前記被処理基板に所定のプラズマ処理を施すためのプラズマを発生させる機構と、前記処理室外に設けられて前記処理室内の前記被処理基板の周囲に所定のマルチポール磁場を形成する磁場形成機構とを有するプラズマ処理装置であって、前記磁場形成機構は、回転可能に設けられて磁場方向が変更可能な第1の磁石セグメントと、前記処理室の中心に対し径方向の磁化をもち固定された第2の磁石セグメントとを有することを特徴とするプラズマ処理装置。
- 請求項1又は2記載のプラズマ処理装置において、前記第1及び第2の磁石セグメントはリング状に配置され、該リング状に配置された第1及び第2の磁石セグメントはその外側で磁性体のリングで囲まれていることを特徴とするプラズマ処理装置。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマ処理装置において、前記磁場形成機構が、上下に分離して設けられた上側磁場形成機構と下側磁場形成機構とを有し、これらの上側磁場形成機構と下側磁場形成機構は互いに接近し或いは遠ざけられるように上下方向に移動可能に構成されたことを特徴とするプラズマ処理装置。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマ処理装置において、前記第1の磁石セグメントを回転させることにより、前記処理室内の前記被処理基板の周囲に所定のマルチポール磁場を形成する状態と、前記処理室内の前記被処理基板の周囲にマルチポール磁場が形成されていない状態とに設定可能としたことを特徴とするプラズマ処理装置。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のプラズマ処理装置において、前記第1及び第2の磁石セグメントの夫々は略円筒状であることを特徴とするプラズマ処理装置。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のプラズマ処理装置を用いて、前記被処理基板にプラズマを作用させてエッチング処理を施すことを特徴とするプラズマ処理方法。
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