JP2004079345A - フッ素樹脂絶縁電線およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】製造コストが低く、かつ、高周波伝送における優れた減衰特性を有するフッ素樹脂絶縁電線およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】下記(A)、(B)、好ましくは下記(A)〜(C)を具備するフッ素樹脂を、導体の外周に被覆してなるフッ素樹脂絶縁電線。
(A)372℃における溶融粘度が102〜107ポイズであること、
(B)抽出し得るフッ化物イオンが重量基準で1.5ppm以下であること。
(C)該フッ素樹脂の80〜99重量%が−CF2CF2−で表される反復単位からなり、1〜20重量%が−CF(ORf)−CF2− (式中、Rfは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を示す)または−CF(CF3)−CF2−で表される反復単位からなること。
【選択図】 なし
【解決手段】下記(A)、(B)、好ましくは下記(A)〜(C)を具備するフッ素樹脂を、導体の外周に被覆してなるフッ素樹脂絶縁電線。
(A)372℃における溶融粘度が102〜107ポイズであること、
(B)抽出し得るフッ化物イオンが重量基準で1.5ppm以下であること。
(C)該フッ素樹脂の80〜99重量%が−CF2CF2−で表される反復単位からなり、1〜20重量%が−CF(ORf)−CF2− (式中、Rfは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を示す)または−CF(CF3)−CF2−で表される反復単位からなること。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はフッ素樹脂絶縁電線およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、耐熱性、難燃性、伝送する電磁波の減衰特性に優れる電線として、導体にフッ素樹脂を被覆してなるフッ素樹脂絶縁電線が用いられている。その中でも、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をペースト押出被覆して焼成することによって得られるPTFE絶縁電線や、未焼成のPTFEテープを焼成し、延伸した多孔質PTFEテープを導体に巻きつけるなどして得られる多孔質PTFE絶縁電線等は、高周波帯域における優れた減衰特性(すなわち、減衰量が小さい)を示すという利点がある。しかし、前者は長時間を要する焼成の工程を有するため、後者は導体へのテープの巻きつけという時間あたりの生産性が低い工程を有するため、これらの絶縁電線は製造コストが大きいという欠点を有する。
【0003】
一方、製造コストの点で優れるフッ素樹脂絶縁電線としては、熱可塑性フッ素樹脂であるテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)やテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等を導体に押出被覆してなる(焼成を経ない)絶縁電線等が知られている。しかし、これら従来使われていたPFAやFEPを被覆してなる絶縁電線は、上述の(多孔質)PTFE絶縁電線に比べ減衰特性に劣っていて、高周波、特に1GHz以上の高周波帯域の伝送においては誘電正接(tanδ)が高い、伝送のエネルギー損失が大である、電線が発熱する等といった不具合が懸念される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような現状に鑑みて、本発明は、熱可塑性を有していて押出被覆可能であり焼成をせずに使用することができる(すなわち製造コストが低い)フッ素樹脂を用いることと、PTFE絶縁電線に匹敵する減衰特性を有することとを兼ね備えたフッ素樹脂絶縁電線およびその製造方法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述した熱可塑性フッ素樹脂を使用した場合にtanδが高くなるのは、従来は、該フッ素樹脂の主たる構造に起因するものと考えられていた。しかし、本発明者らが詳細に検討した結果、当該フッ素樹脂には後述するように、抽出し得るフッ化物イオンが存在する(すなわち、化学的に不安定な末端基が存在する)ことに起因して上記問題が生じることを見出した。この知見に基き、後述するような分子構造のフッ素樹脂を用いることを特徴とする本発明を完成した。
【0006】
(1)下記(A)、(B)を具備するフッ素樹脂を、導体の外周に被覆してなるフッ素樹脂絶縁電線。
(A)372℃における溶融粘度が102〜107ポイズであること、
(B)抽出し得るフッ化物イオンが重量基準で1.5ppm以下であること。
(2)上記フッ素樹脂が下記(C)をさらに具備するものである上記(1)に記載のフッ素樹脂絶縁電線。
(C)該フッ素樹脂の80〜99重量%が−CF2CF2−で表される反復単位からなり、1〜20重量%が−CF(ORf)−CF2− (式中、Rfは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を示す)または−CF(CF3)−CF2−で表される反復単位からなること。
(3)上記フッ素樹脂を、導体の外周に押出被覆してなる上記(1)または(2)のいずれかに記載のフッ素樹脂絶縁電線。
(4)1GHz以上の周波数の電磁波を伝送するためのものである、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のフッ素樹脂絶縁電線。
(5)下記(A)、(B)を具備するフッ素樹脂を、導体の外周に押出被覆する工程を有するフッ素樹脂絶縁電線の製造方法。
(A)372℃における溶融粘度が102〜107ポイズであること、
(B)抽出し得るフッ化物イオンが重量基準で1.5ppm以下であること。
(6)上記フッ素樹脂が下記(C)をさらに具備するものである上記(5)に記載の製造方法。
(C)該フッ素樹脂の80〜99重量%が−CF2CF2−で表される反復単位からなり、1〜20重量%が−CF(ORf)−CF2− (式中、Rfは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を示す)または−CF(CF3)−CF2− で表される反復単位からなること。
【0007】
このように、抽出し得るフッ化物イオンの濃度を厳密に制御したフッ素樹脂を絶縁電線の被覆のために用いることは、従来は全く想起し得なかったことである。これは、フッ素樹脂の末端基が高周波領域(「GHz」領域)の減衰量特性に影響していることは知られておらず、汚損させる要因として知られているだけであった(特公平4−83号公報参照)という理由によるものである。本発明の絶縁電線は、下記要件を具備する熱可塑性のフッ素樹脂を用いることで、低コストで製造可能なことと、優れた減衰特性(低いtanδ)とを両立し得るのである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のフッ素樹脂絶縁電線は、下記(A)、(B)の要件、好ましくは下記(A)〜(C)の要件を具備するフッ素樹脂を、導体の外周に被覆してなるものである。
【0009】
(A)372℃における溶融粘度が102〜107ポイズであること。
樹脂の溶融粘度とは、東洋精機製作所 キャピログラフ1Bに内径9.6mmの耐蝕バレルと孔径1.0mm、長さ10mmのダイスを用いて測定した、ピストンスピード10mm/min、温度372℃における見かけ粘度である。
【0010】
本発明で用いるフッ素樹脂の372℃における溶融粘度は、102〜107ポイズである。当該粘度が102ポイズ未満では、押出被覆が良好に行えなくなり、107ポイズを超えると可塑性が低すぎて押出被覆が困難となるからである。当該粘度は押出被覆が良好に行えるという点から好ましくは104ポイズ以上であり、加工スピード、押出成形機のモーターへの負荷を軽減する点から好ましくは105ポイズ以下である。
【0011】
(B)抽出し得るフッ化物イオンが重量基準で1.5ppm以下であること。抽出し得るフッ化物イオンの濃度とは、以下の測定で得られる値である。10gの試料をポリエチレンのビンに入れ、メタノール/水混合物(容量比1:1)10mlを添加し、オリオン(Orion)94−09−09全イオン強度調節緩衝10mlをさらに添加する。これら混合物を攪拌して24時間放置した後、フッ化物イオン電極(オリオン96−90−00)を用いて測定する。
【0012】
このようにして測定されるフッ化物イオンは重量基準で1.5ppm以下であることが必要である。当該フッ化物イオンが1.5ppmを越えると、絶縁導線とした場合のtanδが大きくなるという不具合がある。当該フッ化物イオンは少ないほど好ましく、1.0ppm以下が好ましく、0.5ppm以下がより好ましい。後述するフッ素樹脂の末端基を−CF3末端に転化する方法によれば、本要件を満たすフッ素樹脂が得られることが知られている。
【0013】
本発明における「フッ素樹脂」とは、80重量%以上が−CF2CF2−で表される反復単位からなることをいう。本発明のフッ素樹脂は、上記(A)、(B)の要件に加え、さらに下記要件(C)を具備することが好ましい。
【0014】
(C)フッ素樹脂の80〜99重量%が−CF2CF2−で表される反復単位からなり、1〜20重量%が−CF(ORf)−CF2− (式中、Rfは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を示す)または−CF(CF3)−CF2−で表される反復単位からなること。
当該重量比は赤外分光法で求める。厚さ約0.05mmのフィルム状の試料の窒素雰囲気下における10.07μmでの吸収と4.25μmでの吸収とを用いて、公知の重量比の参照フィルムで作った補正曲線をもとにして、上記重量比を算出する。
【0015】
本発明で用いるフッ素樹脂の80〜99重量%が−CF2CF2−で表される反復単位からなるのが好ましいのは、製造が容易にできるという理由による。本発明で用いるフッ素樹脂は、−CF2CF2−で表される反復単位以外は全て、−CF(ORf)−CF2−で表される反復単位(式中、Rfは上述したとおりである。)であることよりが好ましい。
【0016】
上記式中、Rfで表される炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基は、一般式−CnF2n+1(nは、1〜8の整数である。)で示される基であればよい。
【0017】
このようなフッ素樹脂を得る方法は、特に限定はなく、公知の方法で製造してもよいし、市販品(例えば、三井デュポンフロロケミカル(株)製、NEW PFA テフロン(登録商標)HPシリーズ等)を用いてもよい。特に上述の(A)〜(C)の用件のうち、(A)および(C)を満足するフッ素樹脂は常法により容易に合成することができる。以下、本発明のフッ素樹脂を得るための方法の一例として(A)および(C)を満たすフッ素樹脂の不安定な末端基を−CF3末端に転化する、特公平4−83号公報に記載の製造方法を説明する。
【0018】
当該方法によれば、上記(A)および(C)を満たすフッ素樹脂の粒状物、フレーク、ペレット等を、フッ素ラジカルを発生する化合物(好ましくはフッ素ガス)と接触させることで、末端基を−CF3へ転化することができる。フッ素ガスを用いる場合には、フッ素ガスを不活性ガス(窒素等)で好ましくは10〜25重量%に希釈し、150〜250℃(好ましくは200〜250℃)、1〜10気圧(好ましくは大気圧)で、上記フッ素樹脂に4〜16時間(好ましくは8〜12時間)作用させる。この際、フッ素樹脂の新しい表面を連続的に露出させるために攪拌することが好ましい。このような反応を、上述の(B)の条件を満たすまで行うことで、上記(A)〜(C)を満たすフッ素樹脂を得ることができる。なお、本発明においては要件(C)は必ずしも具備しなくてもよいことは上述したとおりである。
【0019】
本発明のフッ素樹脂絶縁電線に用いる導体は特に制限はない。導体の形状や寸法は目的に応じて任意に決めればよい。導体の材質も特に限定はなく、公知のものを適用すればよい。そのような導体線としては、銅線、銅合金線、銀メッキ銅線、すずメッキ銅線、アルミニウム線等の単線または撚線等が例示される。
【0020】
上述したフッ素樹脂を導体の外周に被覆する方法も特に限定はないが、時間あたりの製造量が増大して製造コストが下がる点、厚みが均一なものが得られる点から、押出被覆によることが好ましい。
【0021】
押出被覆のために使用する設備、押出被覆の条件等も特に限定はなく、公知の製造設備、製造条件にて行えばよい。
【0022】
本発明のフッ素樹脂被覆電線は、各種の電磁波を伝送する用途に適合し得るが、減衰特性に優れる点から、特に高周波を伝送する場合に好適に用いることができる。ここで、高周波とは、周波数が1GHz以上、好ましくは1〜80GHzの電磁波をいう。
【0023】
【実施例】
以下、各実施例に基づいて、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0024】
[実施例1〜3、比較例1、2]
すずめっき軟銅線からなる直径0.635mmの導体に、フッ素樹脂として、各実施例、比較例につき、表1記載の物性を有するフッ素樹脂を押出被覆装置を用いて仕上がり外径が1.6mmとなるように押出被覆し、さらにその外周に仕上がり外径と同じ内径を有する銅管を形成させ、特性インピーダンスが50Ωとなる絶縁電線としての同軸ケーブルを製造した。
【0025】
[比較例3]
フッ素樹脂として、PTFE樹脂をペースト押出しした後、260〜300℃で乾燥させた生PTFE樹脂テープを、すずめっき軟銅線からなる直径0.635mmの導体に、仕上がり外径が1.6mmとなるように巻回させ、外部導体を設けて、実施例1と同じく特性インピーダンスが50Ωとなる絶縁電線としての同軸ケーブルを製造した。
【0026】
[評価]
フッ素樹脂の各パラメータは上述のように測定した。各実施例、比較例の絶縁電線に対し、ネットワークアナライザーを用いて、20GHzの周波数の電波に対する、誘電率(ε)、誘電正接(tanδ)および減衰量特性(dB/m)を測定した。これら測定結果を表1にまとめる。
【0027】
【表1】
【0028】
表1における、「反復単位」とは、用いたフッ素樹脂における、−CF(ORf)−CF2− (式中、Rfは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を示す)または−CF(CF3)−CF2−で表される反復単位の割合を重量%で表したものである。
【0029】
【発明の効果】
本発明のフッ素樹脂絶縁電線は、フッ素樹脂を導体に被覆する点においては、従来のPFAと同様に押出被覆が可能であるので、PTFEテープを用いた絶縁電線に比べ、低コストで製造し得る。さらに、高周波伝送時における減衰特性の点においては、従来のPFAを用いた絶縁電線ではPTFEテープを用いた絶縁電線よりも、tanδが高くなってしまうのに対し、本発明の絶縁電線ではPTFEテープを用いた絶縁電線と同等であるかやや優れている。したがって、本発明のフッ素樹脂絶縁電線は、低コスト性と優れた減衰特性とを兼ね備えたものである。
【発明の属する技術分野】
本発明はフッ素樹脂絶縁電線およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、耐熱性、難燃性、伝送する電磁波の減衰特性に優れる電線として、導体にフッ素樹脂を被覆してなるフッ素樹脂絶縁電線が用いられている。その中でも、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をペースト押出被覆して焼成することによって得られるPTFE絶縁電線や、未焼成のPTFEテープを焼成し、延伸した多孔質PTFEテープを導体に巻きつけるなどして得られる多孔質PTFE絶縁電線等は、高周波帯域における優れた減衰特性(すなわち、減衰量が小さい)を示すという利点がある。しかし、前者は長時間を要する焼成の工程を有するため、後者は導体へのテープの巻きつけという時間あたりの生産性が低い工程を有するため、これらの絶縁電線は製造コストが大きいという欠点を有する。
【0003】
一方、製造コストの点で優れるフッ素樹脂絶縁電線としては、熱可塑性フッ素樹脂であるテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)やテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等を導体に押出被覆してなる(焼成を経ない)絶縁電線等が知られている。しかし、これら従来使われていたPFAやFEPを被覆してなる絶縁電線は、上述の(多孔質)PTFE絶縁電線に比べ減衰特性に劣っていて、高周波、特に1GHz以上の高周波帯域の伝送においては誘電正接(tanδ)が高い、伝送のエネルギー損失が大である、電線が発熱する等といった不具合が懸念される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような現状に鑑みて、本発明は、熱可塑性を有していて押出被覆可能であり焼成をせずに使用することができる(すなわち製造コストが低い)フッ素樹脂を用いることと、PTFE絶縁電線に匹敵する減衰特性を有することとを兼ね備えたフッ素樹脂絶縁電線およびその製造方法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述した熱可塑性フッ素樹脂を使用した場合にtanδが高くなるのは、従来は、該フッ素樹脂の主たる構造に起因するものと考えられていた。しかし、本発明者らが詳細に検討した結果、当該フッ素樹脂には後述するように、抽出し得るフッ化物イオンが存在する(すなわち、化学的に不安定な末端基が存在する)ことに起因して上記問題が生じることを見出した。この知見に基き、後述するような分子構造のフッ素樹脂を用いることを特徴とする本発明を完成した。
【0006】
(1)下記(A)、(B)を具備するフッ素樹脂を、導体の外周に被覆してなるフッ素樹脂絶縁電線。
(A)372℃における溶融粘度が102〜107ポイズであること、
(B)抽出し得るフッ化物イオンが重量基準で1.5ppm以下であること。
(2)上記フッ素樹脂が下記(C)をさらに具備するものである上記(1)に記載のフッ素樹脂絶縁電線。
(C)該フッ素樹脂の80〜99重量%が−CF2CF2−で表される反復単位からなり、1〜20重量%が−CF(ORf)−CF2− (式中、Rfは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を示す)または−CF(CF3)−CF2−で表される反復単位からなること。
(3)上記フッ素樹脂を、導体の外周に押出被覆してなる上記(1)または(2)のいずれかに記載のフッ素樹脂絶縁電線。
(4)1GHz以上の周波数の電磁波を伝送するためのものである、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のフッ素樹脂絶縁電線。
(5)下記(A)、(B)を具備するフッ素樹脂を、導体の外周に押出被覆する工程を有するフッ素樹脂絶縁電線の製造方法。
(A)372℃における溶融粘度が102〜107ポイズであること、
(B)抽出し得るフッ化物イオンが重量基準で1.5ppm以下であること。
(6)上記フッ素樹脂が下記(C)をさらに具備するものである上記(5)に記載の製造方法。
(C)該フッ素樹脂の80〜99重量%が−CF2CF2−で表される反復単位からなり、1〜20重量%が−CF(ORf)−CF2− (式中、Rfは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を示す)または−CF(CF3)−CF2− で表される反復単位からなること。
【0007】
このように、抽出し得るフッ化物イオンの濃度を厳密に制御したフッ素樹脂を絶縁電線の被覆のために用いることは、従来は全く想起し得なかったことである。これは、フッ素樹脂の末端基が高周波領域(「GHz」領域)の減衰量特性に影響していることは知られておらず、汚損させる要因として知られているだけであった(特公平4−83号公報参照)という理由によるものである。本発明の絶縁電線は、下記要件を具備する熱可塑性のフッ素樹脂を用いることで、低コストで製造可能なことと、優れた減衰特性(低いtanδ)とを両立し得るのである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のフッ素樹脂絶縁電線は、下記(A)、(B)の要件、好ましくは下記(A)〜(C)の要件を具備するフッ素樹脂を、導体の外周に被覆してなるものである。
【0009】
(A)372℃における溶融粘度が102〜107ポイズであること。
樹脂の溶融粘度とは、東洋精機製作所 キャピログラフ1Bに内径9.6mmの耐蝕バレルと孔径1.0mm、長さ10mmのダイスを用いて測定した、ピストンスピード10mm/min、温度372℃における見かけ粘度である。
【0010】
本発明で用いるフッ素樹脂の372℃における溶融粘度は、102〜107ポイズである。当該粘度が102ポイズ未満では、押出被覆が良好に行えなくなり、107ポイズを超えると可塑性が低すぎて押出被覆が困難となるからである。当該粘度は押出被覆が良好に行えるという点から好ましくは104ポイズ以上であり、加工スピード、押出成形機のモーターへの負荷を軽減する点から好ましくは105ポイズ以下である。
【0011】
(B)抽出し得るフッ化物イオンが重量基準で1.5ppm以下であること。抽出し得るフッ化物イオンの濃度とは、以下の測定で得られる値である。10gの試料をポリエチレンのビンに入れ、メタノール/水混合物(容量比1:1)10mlを添加し、オリオン(Orion)94−09−09全イオン強度調節緩衝10mlをさらに添加する。これら混合物を攪拌して24時間放置した後、フッ化物イオン電極(オリオン96−90−00)を用いて測定する。
【0012】
このようにして測定されるフッ化物イオンは重量基準で1.5ppm以下であることが必要である。当該フッ化物イオンが1.5ppmを越えると、絶縁導線とした場合のtanδが大きくなるという不具合がある。当該フッ化物イオンは少ないほど好ましく、1.0ppm以下が好ましく、0.5ppm以下がより好ましい。後述するフッ素樹脂の末端基を−CF3末端に転化する方法によれば、本要件を満たすフッ素樹脂が得られることが知られている。
【0013】
本発明における「フッ素樹脂」とは、80重量%以上が−CF2CF2−で表される反復単位からなることをいう。本発明のフッ素樹脂は、上記(A)、(B)の要件に加え、さらに下記要件(C)を具備することが好ましい。
【0014】
(C)フッ素樹脂の80〜99重量%が−CF2CF2−で表される反復単位からなり、1〜20重量%が−CF(ORf)−CF2− (式中、Rfは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を示す)または−CF(CF3)−CF2−で表される反復単位からなること。
当該重量比は赤外分光法で求める。厚さ約0.05mmのフィルム状の試料の窒素雰囲気下における10.07μmでの吸収と4.25μmでの吸収とを用いて、公知の重量比の参照フィルムで作った補正曲線をもとにして、上記重量比を算出する。
【0015】
本発明で用いるフッ素樹脂の80〜99重量%が−CF2CF2−で表される反復単位からなるのが好ましいのは、製造が容易にできるという理由による。本発明で用いるフッ素樹脂は、−CF2CF2−で表される反復単位以外は全て、−CF(ORf)−CF2−で表される反復単位(式中、Rfは上述したとおりである。)であることよりが好ましい。
【0016】
上記式中、Rfで表される炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基は、一般式−CnF2n+1(nは、1〜8の整数である。)で示される基であればよい。
【0017】
このようなフッ素樹脂を得る方法は、特に限定はなく、公知の方法で製造してもよいし、市販品(例えば、三井デュポンフロロケミカル(株)製、NEW PFA テフロン(登録商標)HPシリーズ等)を用いてもよい。特に上述の(A)〜(C)の用件のうち、(A)および(C)を満足するフッ素樹脂は常法により容易に合成することができる。以下、本発明のフッ素樹脂を得るための方法の一例として(A)および(C)を満たすフッ素樹脂の不安定な末端基を−CF3末端に転化する、特公平4−83号公報に記載の製造方法を説明する。
【0018】
当該方法によれば、上記(A)および(C)を満たすフッ素樹脂の粒状物、フレーク、ペレット等を、フッ素ラジカルを発生する化合物(好ましくはフッ素ガス)と接触させることで、末端基を−CF3へ転化することができる。フッ素ガスを用いる場合には、フッ素ガスを不活性ガス(窒素等)で好ましくは10〜25重量%に希釈し、150〜250℃(好ましくは200〜250℃)、1〜10気圧(好ましくは大気圧)で、上記フッ素樹脂に4〜16時間(好ましくは8〜12時間)作用させる。この際、フッ素樹脂の新しい表面を連続的に露出させるために攪拌することが好ましい。このような反応を、上述の(B)の条件を満たすまで行うことで、上記(A)〜(C)を満たすフッ素樹脂を得ることができる。なお、本発明においては要件(C)は必ずしも具備しなくてもよいことは上述したとおりである。
【0019】
本発明のフッ素樹脂絶縁電線に用いる導体は特に制限はない。導体の形状や寸法は目的に応じて任意に決めればよい。導体の材質も特に限定はなく、公知のものを適用すればよい。そのような導体線としては、銅線、銅合金線、銀メッキ銅線、すずメッキ銅線、アルミニウム線等の単線または撚線等が例示される。
【0020】
上述したフッ素樹脂を導体の外周に被覆する方法も特に限定はないが、時間あたりの製造量が増大して製造コストが下がる点、厚みが均一なものが得られる点から、押出被覆によることが好ましい。
【0021】
押出被覆のために使用する設備、押出被覆の条件等も特に限定はなく、公知の製造設備、製造条件にて行えばよい。
【0022】
本発明のフッ素樹脂被覆電線は、各種の電磁波を伝送する用途に適合し得るが、減衰特性に優れる点から、特に高周波を伝送する場合に好適に用いることができる。ここで、高周波とは、周波数が1GHz以上、好ましくは1〜80GHzの電磁波をいう。
【0023】
【実施例】
以下、各実施例に基づいて、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0024】
[実施例1〜3、比較例1、2]
すずめっき軟銅線からなる直径0.635mmの導体に、フッ素樹脂として、各実施例、比較例につき、表1記載の物性を有するフッ素樹脂を押出被覆装置を用いて仕上がり外径が1.6mmとなるように押出被覆し、さらにその外周に仕上がり外径と同じ内径を有する銅管を形成させ、特性インピーダンスが50Ωとなる絶縁電線としての同軸ケーブルを製造した。
【0025】
[比較例3]
フッ素樹脂として、PTFE樹脂をペースト押出しした後、260〜300℃で乾燥させた生PTFE樹脂テープを、すずめっき軟銅線からなる直径0.635mmの導体に、仕上がり外径が1.6mmとなるように巻回させ、外部導体を設けて、実施例1と同じく特性インピーダンスが50Ωとなる絶縁電線としての同軸ケーブルを製造した。
【0026】
[評価]
フッ素樹脂の各パラメータは上述のように測定した。各実施例、比較例の絶縁電線に対し、ネットワークアナライザーを用いて、20GHzの周波数の電波に対する、誘電率(ε)、誘電正接(tanδ)および減衰量特性(dB/m)を測定した。これら測定結果を表1にまとめる。
【0027】
【表1】
【0028】
表1における、「反復単位」とは、用いたフッ素樹脂における、−CF(ORf)−CF2− (式中、Rfは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を示す)または−CF(CF3)−CF2−で表される反復単位の割合を重量%で表したものである。
【0029】
【発明の効果】
本発明のフッ素樹脂絶縁電線は、フッ素樹脂を導体に被覆する点においては、従来のPFAと同様に押出被覆が可能であるので、PTFEテープを用いた絶縁電線に比べ、低コストで製造し得る。さらに、高周波伝送時における減衰特性の点においては、従来のPFAを用いた絶縁電線ではPTFEテープを用いた絶縁電線よりも、tanδが高くなってしまうのに対し、本発明の絶縁電線ではPTFEテープを用いた絶縁電線と同等であるかやや優れている。したがって、本発明のフッ素樹脂絶縁電線は、低コスト性と優れた減衰特性とを兼ね備えたものである。
Claims (6)
- 下記(A)、(B)を具備するフッ素樹脂を、導体の外周に被覆してなるフッ素樹脂絶縁電線。
(A)372℃における溶融粘度が102〜107ポイズであること、
(B)抽出し得るフッ化物イオンが重量基準で1.5ppm以下であること。 - 上記フッ素樹脂が下記(C)をさらに具備するものである請求項1に記載のフッ素樹脂絶縁電線。
(C)該フッ素樹脂の80〜99重量%が−CF2CF2−で表される反復単位からなり、1〜20重量%が−CF(ORf)−CF2− (式中、Rfは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を示す)または−CF(CF3)−CF2−で表される反復単位からなること。 - 上記フッ素樹脂を、導体の外周に押出被覆してなる請求項1または2のいずれかに記載のフッ素樹脂絶縁電線。
- 1GHz以上の周波数の電磁波を伝送するためのものである、請求項1〜3のいずれかに記載のフッ素樹脂絶縁電線。
- 下記(A)、(B)を具備するフッ素樹脂を、導体の外周に押出被覆する工程を有するフッ素樹脂絶縁電線の製造方法。
(A)372℃における溶融粘度が102〜107ポイズであること、
(B)抽出し得るフッ化物イオンが重量基準で1.5ppm以下であること。 - 上記フッ素樹脂が下記(C)をさらに具備するものである請求項5に記載の製造方法。
(C)該フッ素樹脂の80〜99重量%が−CF2CF2−で表される反復単位からなり、1〜20重量%が−CF(ORf)−CF2− (式中、Rfは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を示す)または−CF(CF3)−CF2− で表される反復単位からなること。
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JP2002238114A JP2004079345A (ja) | 2002-08-19 | 2002-08-19 | フッ素樹脂絶縁電線およびその製造方法 |
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JP2009059690A (ja) * | 2007-08-08 | 2009-03-19 | Daikin Ind Ltd | 被覆電線及び同軸ケーブル |
-
2002
- 2002-08-19 JP JP2002238114A patent/JP2004079345A/ja active Pending
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