JP2004078482A - 車両の交通状態量推定システム - Google Patents

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Hironori Suzuki
鈴木 宏典
Takashi Nakatsuji
中辻  隆
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Abstract

【課題】路側に設置されている感知器からの情報に加えて、プローブカーからの情報も同時に考慮することにより、感知器の設置が密でない場所での交通状態推定にも適用性の高い車両の交通状態量推定システムを提供する。
【解決手段】一般道路及び高速道路におけるリアルタイムな交通状態量を推定するに関し、対象道路区間上の交通流をマクロ交通流シミュレーションモデルでシミュレートし、これをカルマンフィルタの状態方程式及び観測方程式で定義すること、プローブカーからの走行速度に関する情報と路側に設置した交通感知器からの地点交通量及び地点速度に関する情報を得て前記カルマンフィルタにより状態変数を推定すること。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般道路及び高速道路におけるリアルタイムな交通状態量を推定するシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在日本国内では交通情報の提供方法が多様化しており、ドライバーはカーナビゲーションシステム、VICS、携帯電話等を通じて運転中においてもリアルタイムに交通情報を収集できるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
慢性的な交通渋滞や事故の発生を減少させることを目的として、民間業者による交通状態予測情報の提供が可能となり、頻繁な交通情報提供による交通混雑緩和への期待が高まっている。
一方、経済産業省を中心として、地点速度等を発信する情報機器を搭載したプローブカー導入の検討が急速に進められており、実際の都市内において実証実験も行われる等、プローブカーの持つ情報が交通情報の高度化に果たす役割が期待され、日本国内において交通情報をビジネスに役立てる気運が高まりつつある。
しかしながら、現在の交通情報通信システムでは感知器が密に設置されていない道路区間では交通状態の推定精度が不十分となるケースがある。
【0004】
本発明の目的は、路側に設置されている感知器からの情報に加えて、プローブカーからの情報も同時に考慮することにより、感知器の設置が密でない場所での交通状態推定にも適用性の高い車両の交通状態量推定システムを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため本発明は、請求項1に記載の通り、一般道路及び高速道路におけるリアルタイムな交通状態量を推定するに関し、対象道路区間上の交通流をマクロ交通流シミュレーションモデルでシミュレートし、これをカルマンフィルタの状態方程式及び観測方程式で定義すること、プローブカーからの走行速度に関する情報と路側に設置した交通感知器からの地点交通量及び地点速度に関する情報を得て前記カルマンフィルタにより状態変数を推定することを特徴とするものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を説明する。先ず、マクロ交通流シミュレーションモデル及びカルマンフィルタに関する概略を記述した後、本発明の交通状態の動的推定アルゴリズムを詳述する。
【0007】
[マクロ交通流シミュレーションモデルについて]
マクロ交通流シミュレーションモデル(以下マクロモデルという)は、対象とする道路区間を図1で示すように、N個のセグメント(i=1,2…N)に分割し、各セグメントi(i=1,2…N)における交通量の定常性を仮定した上で、対象道路区間上の交通流を模擬的にシミュレートするものである。マクロモデルは、交通の流れを圧縮性流体として扱い、各セグメントi(i=1,2…N)における密度、空間平均速度、地点交通量及び地点平均速度の物理量により表現する。このそれぞれの物理量は下記の式1〜式4により定義される。
【式1】
Figure 2004078482
【式2】
Figure 2004078482
【式3】
Figure 2004078482
【式4】
Figure 2004078482
ここに、V(c)は均衡状態での密度−速度関係式から下記の式5により計算される。
【式5】
Figure 2004078482
k   :タイムステップ
j   :道路区間番号
Δt   :シミュレーション時間間隔(sec)
ΔL  :セグメントjの距離時刻kでの密度(台/km:veh/km)
(k):セグメントj,時刻kでの密度(台/km:veh/km)
(k):セグメントj,時刻kでの空間平均速度(km/h)
(k):セグメントj,時刻kでの地点交通量(台/時:vph)
(k):セグメントj,時刻kでの地点速度(km/h)
(k):セグメントj,時刻kでのランプ流入量(vph)
(k):セグメントj,時刻kでのランプ流出量(vph)
   :自由走行速度(km/h)
max  :渋滞密度(veh/km)
l,m :追従理論における感度パラメータ
τ,ν,κ:マクロモデルにおけるパラメータ
【0008】
[カルマンフィルタについて]
一般にカルマンフィルタは、直接観測することが不可能あるいは困難な物理量(以下状態変数という)を、また、観測することが可能な物理量(以下観測変数という)から推定するための手法である。カルマンフィルタは下記の式6、式7に定義した状態方程式および観測方程式により構成される推定器であり、状態方程式は状態変数の時間的な変化を示し、観測方程式は状態変数と観測変数との関係を表す。
【式6】
Figure 2004078482
【式7】
Figure 2004078482
上記2式における記号は下記の通りである。
x(k)      :(カルマンフィルタにより推定すべき)状態変数
y(k)      :観測変数
A(k),C(k)  :係数マトリックス
b(k),d(k)  :定数項
φ(k−1),φ(k):システム誤差、観測誤差
尚、x、y、A、C、b、dの変数はベクトル・マトリックスを表し、また、システム誤差及び観測誤差は白色性ノイズである。一般的なカルマンフィルタによる状態変数の推定手順は以下の通りである。
ステップ0:時刻k=0とし、状態変量の初期値x(0)及び推定誤差の分散行列の初期値P(0)を与える。
ステップ1:時刻k−1において、状態方程式
【式6】から、1ステップ先の状態変数の予測値x’(k)を計算する。
ステップ2:観測方程式
【式7】から、観測変量の推定値y(k)を計算する。
ステップ3:予測値x’(k)に対する誤差分散行列M(k)を下記
【式8】により計算する。
【式8】
M(k)=A(k−1)P(k−1)A’(k−1)+φ
ステップ4:カルマンゲインK(k)を下記
【式9】により計算する。
【式9】
K(k)=C’(k)[C(k)M(k)C’(k)+Ψ]−1
ステップ5:時刻kにおいて、観測変量の実測値y(k)を計測する。
ステップ6:観測変量の実測値y(k)と推定値y’(k)の差分とカルマン
ゲインK(k)から、下記
【式10】を用いて状態変数の予測値x’(k)にに修正し、これを時刻kでの状態変量の推定値とする。
【式10】
x’(k)=M(k)[y(k)−y’(k)]
ステップ7:x’(k)に対する誤差分散行列P(k)を下記
【式11】により更新する。
【式11】
P(k)=M(k)−K(k)C(k)M(k)
ステップ8:時刻を1ステップ進め、ステップ1に戻る。
上記のステップ1より8までを逐次繰り返すことにより、状態変数の推定を行う。ここに、φ及びΨはシステム誤差及び観測誤差の分散行列である。
【0009】
[プローブカーについて]
自動車の中には各種のコンピュータが多数搭載されており、自車の走行のために多数のセンサを活用してデータ処理している。これらのデータを自動車内部で使用するだけでなく、各車両から位置、車両速度、ワイパやABSの作動信号を集め、これらのデータを加工して渋滞情報、降雨情報、路面凍結、積雪情報等を作成し、ネットワークにのせることにより道路情報を提供するプローブ情報システムである。
【0010】
プローブカーからの情報を利用した交通状態の動的アルゴリズムについて説明する。一般的な交通現象の場合、前述の密度や空間平均速度を動的に直接観測することは現実的に困難である一方、感知器から得られる地点速度や地点交通量及びプローブカーから得られる地点速度は比較的容易に観測することができる。本発明では、密度及び空間平均速度を状態変数とし、感知器から得られる地点速度や地点交通量及びプローブカーから得られる地点速度を観測変数として、カルマンフィルタの利用により状態変数を推定するアルゴリズムを提供するものである。以下その詳細を記述する。尚、本発明では特に記述しない限り、交通状態とは、前記各セグメントi(i=1,2…N)における密度及び空間平均速度と定義する。
【0011】
先ず、図2で示すように、対象とする道路区間を0からn+1までのセグメントに分割する。ここで、道路区間上に流入路感知器D1及び流出路感知器D2が存在するものと仮定する。また、セグメント分割を行う際には前記流入路感知器D1及び流出路感知器D2の間に中央感知器D3、D4を配置してセグメントの設定を行う。セグメントの0の終点(セグメント1の始点)及びセグメントnの終点(セグメントn+1の始点)には必ず感知器を配置するものとし、それらの位置はセグメント同士の境界上に配置されるようにセグメントの設定を行う。
【0012】
[カルマンフィルタの状態方程式の定義]
本発明における状態方程式は、図2の各セグメントの密度及び空間平均速度の時間的な変化を表すものである。本発明では、マクロ交通流シミュレーションモデルを用いて式1及び式2に示すように定義する。
【0013】
[カルマンフィルタの観測方程式の定義]
本発明における観測方程式は、図2の各セグメントの密度、平均速度、地点交通量及び地点速度の関係を表すものである。本発明では、以下に示す(1)〜(4)の4つの場合に分けて観測方程式を定義する。
【0014】
(1)セグメント0及びセグメントnにおける観測方程式
セグメント0の終点及びセグメントnの終点には必ず感知器D1、D2が配置され、それぞれのセグメントにおいて地点交通量及び地点速度が観測される。ここに、セグメント0及びセグメントnにおける観測方程式を以下に示すように仮定する。下記式12及び式14は地点交通量に係る観測方程式、式13及び式15は地点速度に係る観測方程式を示す。
【式12】
Figure 2004078482
【式13】
Figure 2004078482
【式14】
Figure 2004078482
【式15】
Figure 2004078482
この場合、実際に観測される地点交通量及び地点速度は、感知器から得られる地点交通量及び地点速度のみとする。
【0015】
(2)感知器が設置されており、かつ、プローブカーが通過しなかったセグメントj−1における観測方程式
図2に示すように、中央感知器D3,D4はセグメントj−1のほぼ中央に配置されている。従って、セグメントj−1における地点交通量はセグメントj−1における密度に空間平均速度を乗じた量に等しく、地点速度はセグメントj−1における空間平均速度に等しい、と仮定することにより観測方程式を定義できる。下記式16に地点交通量に係る観測方程式、式17に地点速度に関する観測方程式を示す。
【式16】
Figure 2004078482
【式17】
Figure 2004078482
この場合、実際に観測される地点交通量及び地点速度は、中央感知器D3,D4から得られる地点交通量及び地点速度のみとする。従って、地点交通量の実測値は式18、地点速度の実測値は式19のように定義できる。
【式18】
Figure 2004078482
【式19】
Figure 2004078482
上記の2式で添字dは中央感知器D3,D4からの情報を意味する。
【0016】
(3)感知器が設置されており、かつ、プローブカーが通過したセグメントj−1における観測方程式
セグメントj+1においても、中央感知器D3,D4はセグメント0からセグメントnのほぼ中央に位置している。従って、セグメントj−1における地点交通量はセグメントj+1における密度に空間平均速度を乗じた量に等しく、地点速度はセグメントj+1における空間平均速度に等しい、と仮定することにより観測方程式を定義できる。下記式20に地点交通量に係る観測方程式、式21に地点速度に関する観測方程式を示す。
【式20】
Figure 2004078482
【式21】
Figure 2004078482
この場合、プローブカーから得られる情報は、セグメントj+1を通過した際の走行速度のみとなるため、実際に観測される地点交通量は、中央感知器D3,D4から得られる地点交通量のみとし、実際に観測される地点速度は、中央感知器D3,D4から得られる地点速度とプローブカーから得られる走行速度を融合した値とする。従って、地点交通量の実測値は式22、地点速度の実測値は式23のように定義できる。
【式22】
Figure 2004078482
【式23】
Figure 2004078482
上記の式23で添字pはプローブカーからの情報を意味する。
【0017】
(4)感知器が設置されておおらず、かつ、プローブカーが通過したセグメントjにおける観測方程式
セグメントjにおいては、プローブカーが走行したときのみ、その走行速度が得られる。従って、セグメントjにおける地点速度はセグメントjにおける空間平均速度に等しい、と仮定することにより、観測方程式を定義できるが、地点交通量に関する観測方程式は定義できない。下記式24に地点速度に関する観測方程式を示す。
【式24】
Figure 2004078482
この場合、セグメントjにおいて観測される情報は、セグメントjを通過した際のプローブカーの走行速度のみとなるため、実際仁観測される地点速度は、プローブカーから得られる走行速度情報のみとなる。従って、地点速度の実測値は下記式25のように定義できる。
【式25】
Figure 2004078482
【0018】
上記の通り本発明では、状態方程式はマクロ交通シミュレーションモデルを利用して式1及び式2に定義し、観測方程式は式12〜式17、式20、式21及び式24にそれぞれ定義した。式1及び式2は状態変数の時間的な変化を表現する形となっているため、式6の形に再定義できる。また、同様に、式12〜式17、式20、式21及び式24は状態変数と観測変数の関係を示す形となっているため、式7の形に再定義できる。従って、これらの定式化により、流入路感知器D1及び流出路感知器D2の間に中央感知器D3、D4及びプローブカーから得られる情報を利用したカルマンフィルタによる状態変数の推定が可能となる。尚、状態変数の推定手順は上記カルマンフィルタについての項で記述した通りとするものである。
【0019】
【発明の効果】
以上のように本発明によると、プローブカーの持つ情報及び路側に設定されている感知器からの情報を最大限有効活用し、マクロ交通シミュレーションモデル及びカルマンフィルタの適用によって、道路上の交通状態をリアルタイムに推定することにより、交通情報を高度かすることができ、特に感知器が密に設置されていない道路区間における交通状態の推定精度を向上した車両の交通状態量推定システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】マクロ交通シミュレーションモデルにおける道路区間のセグメント分割図
【図2】道路区間のセグメント分割図
【符号の説明】
D1  流入路感知器
D2  流出路感知器
D3  中央感知器
D4  中央感知器

Claims (1)

  1. 一般道路及び高速道路におけるリアルタイムな交通状態量を推定するに関し、対象道路区間上の交通流をマクロ交通流シミュレーションモデルでシミュレートし、これをカルマンフィルタの状態方程式及び観測方程式で定義すること、プローブカーからの走行速度に関する情報と路側に設置した交通感知器からの地点交通量及び地点速度に関する情報を得て前記カルマンフィルタにより状態変数を推定することを特徴とする車両の交通状態量推定システム。
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