JP2004077763A - 画像記録材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】記録時のレーザ走査におけるアブレーションが抑制され、非画像部に汚れのない高画質な画像形成が可能で、保存安定性及び耐刷性に優れた平版印刷版を形成しうるネガ型の画像記録材料を提供する。
【解決手段】(A)下記一般式(1)で表される置換基を側鎖に有し、水又はアルカリ性水溶液に可溶或いは膨潤する高分子化合物と、(B)光熱変換剤と、(C)電荷的に中性であり、光または熱によりラジカルを生成する化合物と、を含有することを特徴とする。
【化1】
(式中、R1は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。R2、R3は、それぞれ独立に1価の有機基を表す。Xは、酸素原子、硫黄原子、または、−NR4−を表す。R4は1価の有機基を表す。)
【選択図】 なし
【解決手段】(A)下記一般式(1)で表される置換基を側鎖に有し、水又はアルカリ性水溶液に可溶或いは膨潤する高分子化合物と、(B)光熱変換剤と、(C)電荷的に中性であり、光または熱によりラジカルを生成する化合物と、を含有することを特徴とする。
【化1】
(式中、R1は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。R2、R3は、それぞれ独立に1価の有機基を表す。Xは、酸素原子、硫黄原子、または、−NR4−を表す。R4は1価の有機基を表す。)
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像記録材料に関し、特にコンピュータ等のデジタル信号から赤外線レーザを用いて直接製版できる、いわゆるダイレクト製版可能な平版印刷版原版として使用できるネガ型画像記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年におけるレーザーの発展は目ざましく、特に、近赤外線から赤外線領域に発光領域を持つ個体レーザーや半導体レーザーでは、高出力・小型化が進んでいる。したがって、コンピュータ等のディジタルデータから直接製版する際の露光光源として、これらのレーザーは非常に有用である。
前述の赤外線領域に発光領域を持つ赤外線レーザーを露光光源として使用する、赤外線レーザ用ネガ型画像記録材料は、赤外線吸収剤と、光又は熱によりラジカルを発生するラジカル開始剤と、重合性化合物とを含む記録層を有する画像記録材料である。
【0003】
通常、このようなネガ型の画像記録材料は、光又は熱により発生したラジカルを開始剤として重合反応を生起させ、露光部の記録層を硬化させて画像部を形成する記録方式を利用している。このようなネガ型の画像記録材料は、赤外線レーザ照射のエネルギーにより記録層の可溶化を起こさせるポジ型に比較して画像形成性が低く、重合による硬化反応を促進させて強固な画像部を形成するため、現像工程前に加熱処理を行うのが一般的である。
このような光又は熱による重合系の記録層を有する印刷版としては、特開平8−108621号、特開平9−34110号の各公報に記載されるような光重合性或いは熱重合性組成物を記録層として用いる技術が知られている。これらの記録層は高感度画像形成性に優れているものの、支持体として、親水化処理された基板を用いた場合、記録層と支持体との界面における密着性が低く、耐刷性に劣るという問題があった。
【0004】
また、感度を向上させるため、高出力の赤外線レーザを用いることも検討されているが、レーザー走査時に記録層のアブレーションが発生し光学系を汚染するといった問題が生じる。そのほか、特開2000−98603公報に、高い光重合開始能を有する開始剤としてボレート化合物を用いる態様が記載されているものの、白灯下での取扱いや長期保存した場合に、光によって所望されない硬化反応が進行したり、空気中の水分に起因する組成物の層分離等、保存安定性に劣るといった懸念があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の技術の欠点を考慮してなされた本発明の目的は、記録時のレーザ走査におけるアブレーションが抑制され、非画像部に汚れのない高画質な画像形成が可能で、保存安定性及び耐刷性に優れた平版印刷版を形成しうるネガ型の画像記録材料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の置換基を側鎖に有する水またはアルカリ性水溶液に可溶或いは膨潤する高分子化合物と、電荷的に中性な光または熱によりラジカルを生成する化合物とを併用することにより、上記目的が達成されることを見出し本発明を完成した。
即ち、本発明の画像記録材料は、
(A)下記一般式(1)で表される置換基を側鎖に有し、水又はアルカリ性水溶液に可溶或いは膨潤する高分子化合物と、
(B)光熱変換剤と、
(C)電荷的に中性であり、光または熱によりラジカルを生成する化合物と、
を含有することを特徴とする。
【0007】
【化2】
【0008】
(式中、R1は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。R2、R3は、それぞれ独立に水素原子又は1価の置換基を表す。Xは、酸素原子、硫黄原子、または、−NR4−を表す。R4は水素原子又は1価の置換基を表す。)
【0009】
また、本発明の画像記録材料は、光または熱などのエネルギー付与により画像形成が可能であるが、中でも後述するヒートモード露光によりエネルギーを付与することが好ましい態様である。
【0010】
本発明の画像記録材料においては、バインダーの機能を果たす高分子化合物として、一般式(1)で表される置換基を側鎖に含むものを用いている。以下、明確ではないが、その効果について説明する。特に、このバインダーを用いた画像記録材料を平版印刷版原版の記録層に使用した場合における効果について説明する。
一般式(1)で表される側鎖置換基は、ラジカル反応性の高い官能基を有するものであるため、赤外線レーザ走査露光によりラジカル開始剤からラジカルが発生した後に速やかに高分子バインダー間で架橋反応を起こし、架橋密度の高い強固な硬化膜が形成される。したがって、このような構造単位を平版印刷版原版の記録層組成中に含有することで強固な画像が形成され、耐刷性に優れるだけでなく、硬化膜形成すなわち現像液や有機溶剤に対する不溶化が非常に速く起こり、記録層の他の低分子成分、例えば、光熱変換剤などがアブレーションを起こし、記録層から放出されることが抑制され、光学系の汚染が抑制されるという効果を奏するものと考えられる。
【0011】
一方、ラジカル開始剤として電荷的に中性である化合物、すなわち、分子間あるいは分子内で正−負のイオン対を形成しない化合物を用いることで、例えばボレート塩化合物のようなイオン性のラジカル開始剤を使用した場合と比較して、高湿度条件下での保存安定性に優れる。これは、イオン性の化合物が組成物中に存在しないことから、水分の吸収が抑制され、且つ、併用される特定構造を有するアルカリ可溶性高分子化合物との相溶性にも優れることから、主として組成物の水分の吸収に起因する経時的な相分離の発生や感度変動が抑制されるためであると考えられる。
【0012】
また、通常ラジカル重合を利用した硬化膜形成において、多くの場合、充分な強度の硬化膜を得るために、外部酸素によるラジカル重合阻害を抑制し、充分に反応を進行させる目的で記録層の上層に酸素遮断層(保護層)を設けるが、本発明のバインダーを用いた場合、酸素による重合阻害の影響を実質ほとんど受けない。そのため、酸素遮断層を設ける必要がなくなるというメリットを有する。
【0013】
なお、本発明において「ヒートモード対応」とは、ヒートモード露光による記録が可能であることを意味する。以下、本発明におけるヒートモード露光の定義について詳述する。Hans−Joachim Timpe,IS&Ts NIP 15:1999 International Conference on Digital Printing Technologies.P.209に記載されているように、感光体材料において光吸収物質(例えば色素)を光励起させ、化学的或いは物理的変化を経て、画像を形成するその光吸収物質の光励起から化学的或いは物理的変化までのプロセスには大きく分けて二つのモードが存在することが知られている。1つは光励起された光吸収物質が感光材料中の他の反応物質と何らかの光化学的相互作用(例えば、エネルギー移動、電子移動)をすることで失活し、その結果として活性化した反応物質が上述の画像形成に必要な化学的或いは物理変化を引き起こすいわゆるフォトンモードであり、もう1つは光励起された光吸収物質が熱を発生し失活し、その熱を利用して反応物質が上述の画像形成に必要な化学的或いは物理変化を引き起こすいわゆるヒートモードである。その他、物質が局所的に集まった光のエネルギーにより爆発的に飛び散るアブレーションや1分子が多数の光子を一度に吸収する多光子吸収など特殊なモードもあるがここでは省略する。
【0014】
上述の各モードを利用した露光プロセスをフォトンモード露光及びヒートモード露光と呼ぶ。フォトンモード露光とヒートモード露光の技術的な違いは目的とする反応のエネルギー量に対し露光する数個の光子のエネルギー量を加算して使用できるかどうかである。例えばn個の光子を用いて、ある反応を起こすことを考える。フォトンモード露光では光化学的相互作用を利用しているため、量子のエネルギー及び運動量保存則の要請により1光子のエネルギーを足し併せて使用することができない。つまり、何らかの反応を起こすためには「1光子のエネルギー量≧反応のエネルギー量」の関係が必要である。一方、ヒートモード露光では光励起後に熱を発生し、光エネルギーを熱に変換し利用するためエネルギー量の足し併せが可能となる。そのため、「n個の光子のエネルギー量≧反応のエネルギー量」の関係があれが十分となる。但し、このエネルギー量加算には熱拡散による制約を受ける。即ち、今注目している露光部分(反応点)から熱拡散により熱が逃げるまでに次の光励起−失活過程が起こり熱が発生すれば、熱は確実に蓄積加算し、その部分の温度上昇につながる。しかし、次の熱の発生が遅い場合には熱が逃げて蓄積されない。つまり、ヒートモード露光では同じ全露光エネルギー量であっても高エネルギー量の光を短い時間照射した場合と低エネルギー量の光を長い時間照射した場合とでは結果が異なり、短時間の方が熱の蓄積に有利になる。
【0015】
無論、フォトンモード露光では後続反応種の拡散の影響で似た様な現象が起こる場合もあるが基本的には、このようなことは起こらない。
即ち、感光材料の特性として見た場合、フォトンモードでは露光パワー密度(W/cm2)(=単位時間当たりのエネルギー密度)に対し感光材料の固有感度(画像形成に必要な反応のためのエネルギー量)は一定となるが、ヒートモードでは露光パワー密度に対し感光材料の固有感度が上昇することになる。従って、実際に画像記録材料として実用上、必要な生産性を維持できる程度の露光時間を固定すると、各モードを比較した場合、フォトンモード露光では通常は約0.1mJ/cm2程度の高感度化が達成できるもののどんな少ない露光量でも反応が起こるため、未露光部での低露光カブリの問題が生じ易い。これに対し、ヒートモード露光ではある一定以上の露光量でないと反応が起こらず、また感光材料の熱安定性との関係から通常は50mJ/cm2程度が必要となるが、低露光カブリの問題が回避される。
【0016】
そして、事実上ヒートモード露光では感光材料の版面での露光パワー密度が5000W/cm2以上必要であり、好ましくは10000W/cm2以上必要となる。但し、ここでは詳しく述べなかったが5.0×105W/cm2以上の高パワー密度レーザを利用するとアブレーションが起こり、光源を汚す等の問題から好ましくない。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の画像記録材料について詳細に説明する。
本発明の画像記録材料は、(A)一般式(1)で表される置換基を側鎖に有し、水又はアルカリ性水溶液に可溶或いは膨潤する高分子化合物(以下、適宜「特定アルカリ可溶性高分子」と称する)と、(B)光熱変換剤と、(C)電荷的に中性であり、光または熱によりラジカルを生成する化合物と、を含有することを特徴とする。さらに、このような画像記録材料は、(D)ラジカル重合性化合物を含有することができる。
以下に、本発明の画像記録材料に使用しうる各化合物について順次説明する。
【0018】
〔(A)一般式(1)で表される置換基を側鎖に有し、水又はアルカリ性水溶液に可溶或いは膨潤する高分子化合物〕
本発明の画像記録材料にバインダー成分として使用する高分子化合物は、下記一般式(1)で表される置換基を側鎖に有し、水又はアルカリ水溶液に可溶であるか、或いは、水又はアルカリ水溶液に膨潤する高分子化合物である。
なお、本発明において、水又はアルカリ水溶液に可溶とは、特定アルカリ可溶性高分子が、pH7以上の水またはアルカリ水溶液を加えたときに溶解することを指し、膨潤するとは、特定アルカリ可溶性高分子が、pH7以上の水またはアルカリ水溶液に加えたときに膨潤することを指す。
【0019】
【化3】
【0020】
式中、R1は水素原子または置換基を有してもよいアルキル基を表す。R2、R3は、それぞれ独立に水素原子または1価の置換基を表す。Xは、酸素原子、硫黄原子、または、−NR4−を表す。R4は水素原子または1価の置換基を表す。R1としては、水素原子、メチル基、エチル基、ブチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基などが挙げられ、中でもメチル基が、反応性と保存安定性のバランスおよび、後述する電荷的に中性であるラジカル開始剤との相溶性が良好なことから好ましい。
R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基などから選択される1価の置換基を表す。これらのなかでも、水素原子、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アリール基が好ましい。
なお、前記アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルホニル基、及び、アリールスルホニル基はさらに置換基を有していてもよく、これら1価の置換基にさらに導入しうる置換基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロピオキシカルボニル基、メチル基、エチル基、フェニル基等が挙げられる。
Xは、酸素原子、硫黄原子、又は、−N(R4)−を表し、ここで、R4としては、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられる。Xが酸素原子であるものが好ましい。
【0021】
一般式(1)の側鎖基は、下記一般式(2)で表される構造単位で導入されていることが好ましい。
【0022】
【化4】
【0023】
一般式(2)において、R5〜R7はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表すが、具体的には水素原子、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、R5、R6は水素原子が好ましく、R7は水素原子、メチル基が好ましい。
Aは、酸素原子、硫黄原子、又は、−N(R8)を表し、ここで、R8としては、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられる。
nは、1〜10の整数を表す。
Gは、有機連結基を表す。好ましくは、数1〜20の置換基を有してもよいアルキル基、炭素数3〜20の置換基を有してもよいシクロアルキル基、炭素数6〜20の置換基を有してもよい芳香族基などが挙げられ、なかでも、置換基を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状あるいは分岐アルキル基、炭素数3〜10の置換基を有してもよいシクロアルキル基、炭素数6〜12の置換基を有してもよい芳香族基が強度、現像性等の性能上、好ましい。
【0024】
(特定アルカリ可溶性高分子の合成)
本発明のネガ型画像記録材料に必須成分として使用される(A)特定アルカリ可溶性高分子は、下記に示す合成方法1)または2)の少なくとも1つにより製造することができる。
【0025】
合成方法1)
下記一般式(3)または(4)で表されるラジカル重合性化合物1種以上と、必要に応じて下記一般式(3)、(4)で表される構造単位を有さない他のラジカル重合性化合物を1種以上と、を通常のラジカル重合法によって共重合させ、所望の高分子化合物の前駆体を合成した後に、塩基を用いて、プロトンを引き抜きL1またはL2を脱離させ、前記一般式(1)で表される構造を有する所望の高分子化合物を得る方法。
このとき、高分子化合物前駆体の製造には、一般に公知の懸濁重合法あるいは溶液重合法などを適用することができる。その共重合体の構成としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体等のいずれであってもよい。
【0026】
【化5】
【0027】
式中、R1〜R3およびXは一般式(1)と同義であり、また、R5〜R7、A、およびGは一般式(2)と同義である。
L1、L2は、アニオン性脱離基を表す。そのようなアニオン性脱離基としては、ハロゲン原子、スルホン酸基、スルフィン酸基、カルボン酸基、シアノ基、アンモニウム基、アジド基、スルホニウム基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、フェノキシ基、チオアルコキシ基、オキソニウム基等が挙げられ、中でも、ハロゲン原子、スルホン酸基、アンモニウム基、スルホニウム基が特に好ましい。具体的には、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキルスルホン酸基、アリールスルホン酸基等が挙げられる。
【0028】
好ましいアルキルスルホン酸基の具体例としては、メタンスルホン酸基、エタンスルホン酸基、1−プロパンスルホン酸基、イソプロピルスルホン酸基、1−ブタンスルホン酸基、1−オクチルスルホン酸基、1−ヘキサデカンスルホン酸基、トリフルオロメタンスルホン酸基、トリクロロメタンスルホン酸基、2−クロロ−1−エタンスルホン酸基、2,2,2−トリフルオロエタンスルホン酸基、3−クロロプロパンスルホン酸基、パーフルオロ−1−ブタンスルホン酸基、パーフルオロ−1−オクタンスルホン酸基、10−カンファースルホン酸基、ベンジルスルホン酸基が挙げられる。
【0029】
好ましいアリールスルホン酸基の例としては、ベンゼンスルホン酸基、トランス−ベータ−スチレンスルホン酸基、2−ニトロベンゼンスルホン酸基、2−アセチルベンゼンスルホン酸基、3−(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホン酸基、3−ニトロベンゼンスルホン酸基、4−ニトロベンゼンスルホン酸基、p−トルエンスルホン酸基、4−tert−ブチルベンゼンスルホン酸基、4−フルオロベンゼンスルホン酸基、4−クロロベンゼンスルホン酸基、4−ブロモベンゼンスルホン酸基、4−ヨードベンゼンスルホン酸基、4−メトキシベンゼンスルホン酸基、4−(トリフルオロメトキシ)ベンゼンスルホン酸基、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸基、2−ニトロ−4−(トリフルオロメチル)−ベンゼンスルホン酸基、4−クロロ−3−ニトロベンゼンスルホン酸基、2,4−ジニトロベンゼンスルホン酸基、2−メシチレンスルホン酸基、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホン酸基、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸基、1−ナフタレンスルホン酸基、2−ナフタレンスルホン酸基が挙げられる。
【0030】
<脱離反応を生起させるために用いる塩基>
脱離反応を生起させるために用いる塩基としては、アルカリ金属類の水素化物、水酸化物または炭酸塩、有機アミン化合物、金属アルコキシド化合物が好ましい例として挙げられる。
【0031】
アルカリ金属類の水素化物、水酸化物または、炭酸塩の好ましい例としては、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。
【0032】
有機アミン化合物の好ましい例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、N−エチルジシクロヘキシルアミン、ピロリジン、1−メチルピロリジン、2,5−ジメチルピロリジン、ピペリジン、1−メチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]−オクタン、ヘキサメチレンテトラミン、モルホリン、4−メチルモルホリン、ピリジン、ピコリン、4−ジメチルアミノピリジン、ルチジン、1、8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン(DBU)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルエチルアミン、Schiff塩基などが挙げられる。
【0033】
金属アルコキシド化合物の好ましい例としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシドなどが挙げられる。これらの塩基は、1種あるいは2種以上の混合であってもよい。
【0034】
使用される塩基の量は、化合物中の特定官能基の量に対して、当量以下であってもよく、また当量以上であってもよい。
また、過剰の塩基を使用した場合、脱離反応後、余剰の塩基を除去する目的で酸などを添加することも好ましい形態である。酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸、過塩素酸のような無機酸、酢酸、フルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸のような有機酸が例としてあげられる。
脱離反応における、温度条件は、室温、冷却、過熱いずれの条件であってもよい。好ましい温度条件としては、−20〜100℃の範囲である。
【0035】
本発明における脱離反応において、塩基を添加する際に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、水などが挙げられる。これらの溶媒は単独あるいは2種以上混合してもよい。
【0036】
<熱重合禁止剤>
本発明に係る(A)特定アルカリ可溶性高分子の合成方法1)では、生成されるラジカル反応性基の熱的ラジカル反応を抑制する目的で、熱重合禁止剤を添加することも好ましい態様である。適当な熱重合禁止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−(TEMPO)、4−ヒドロキシ−TEMPO−フリーラジカル、3,3,5,5−テトラメチル−1−ピロリン−N−オキシド、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、3−(アミノメチル)−プロキシル−フリーラジカル、3−カルボキシ−プロキシル−フリーラジカル、4−アミノ−TEMPO−フリーラジカル、4−カルボキシ−TEMPO−フリーラジカル、チオ硫酸塩化合物、フェロセン化合物、チオール化合物、スルフィド化合物、ジスルフィド化合物、ボレート塩化合物等が挙げられる。
熱重合禁止剤は、反応系中に10ppm〜10質量%添加するのが一般的である。
【0037】
上記一般式(3)で表されるラジカル重合性化合物としては、下記の化合物(M−1)〜(M−12)を例として挙げることできるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
【化6】
【0039】
【化7】
【0040】
上記一般式(4)で表されるラジカル重合性化合物としては、下記の化合物(M−13)〜(M−61)を例としてあげることできるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
【化8】
【0042】
【化9】
【0043】
【化10】
【0044】
【化11】
【0045】
【化12】
【0046】
合成方法2)
以下に詳述するような特定の官能基を有するラジカル重合性化合物1種以上と、必要に応じて該特定の官能基を有さない他のラジカル重合性化合物を1種以上と、を通常のラジカル重合法によって共重合し、幹高分子化合物を合成した後に、側鎖の該官能基と、下記一般式(5)で表される構造を有する低分子化合物と、を反応させ、前記一般式(1)で表される置換基を側鎖に有する、所望の(A)特定アルカリ可溶性高分子を得る方法。
幹高分子化合物の製造には、一般的に公知の懸濁重合法あるいは溶液重合法などを適用することができる。その共重合体の構成としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体等のいずれであってもよい。
【0047】
【化13】
【0048】
一般式(5)中、R1〜R3は、前記一般式(1)で挙げたものと同様のものを用いることができる。
一般式(5)で表される構造を有する低分子化合物の例としては、2−ヒドロキシルエチルアクリレート、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、N,N−ジメチル−2−アミノエチルメタクリレート、2−クロロエチルメタクリレート、2−イソシアン酸エチルメタクリレート、3−イソシアン酸プロピルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、2−ブロモエチルメタクリレート、3−ブロモプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、4−ヒドロキシブチルメタクリルアミド、イタコン酸等が挙げられる。
【0049】
また、上記特定の官能基の例としては、水酸基、カルボキシル基、カルボン酸ハライド基、カルボン酸無水物基、アミノ基、ハロゲン化アルキル基、イソシアネート基、エポキシ基等が挙げられ、これら官能基を有するラジカル重合性化合物の例としては、2−ヒドロキシルエチルアクリレート、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、N,N−ジメチル−2−アミノエチルメタクリレート、2−クロロエチルメタクリレート、2−イソシアン酸エチルメタクリレート、3−イソシアン酸プロピルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、2−ブロモエチルメタクリレート、3−ブロモプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、4−ヒドロキシブチルメタクリルアミド、イタコン酸等が挙げられる。
【0050】
上記合成方法1)および2)で用いられる特定の官能基を有さない他のラジカル重合性化合物の例としては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、N,N−2置換アクリルアミド類、N,N−2置換メタクリルアミド類、スチレン類、アクリロニトリル類、メタクリロニトリル類などから選ばれるラジカル重合性化合物が挙げられる。
具体的には、例えば、アルキルアクリレート(該アルキル基の炭素原子数は1〜20のものが好ましい)等のアクリル酸エステル類、(具体的には、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸エチルへキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−t−オクチル、クロルエチルアクリレート、2,2−ジメチルヒドロキシプロピルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、グリシジルアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートなど)、アリールアクリレート(例えば、フェニルアクリレートなど)、
【0051】
アルキルメタクリレート(該アルキル基の炭素原子は1〜20のものが好ましい)等のメタクリル酸エステル類(例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、クロルベンジルメタクリレート、オクチルメタクリレー卜、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、グリシジルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレートなど)、アリールメタクリレート(例えば、フェニルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレートなど)、
【0052】
スチレン、アルキルスチレン等のスチレン類、(例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロへキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロルメチルスチレン、トリフルオルメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレンなど)、アルコキシスチレン(例えばメトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルスチレン、ジメトキシスチレンなど)、ハロゲンスチレン(例えばクロルスチレン、ジクロルスチレン、トリクロルスチレン、テトラクロルスチレン、ペンタクロルスチレン、ブロムスチレン、ジブロムスチレン、ヨードスチレン、フルオルスチレン、トリフルオルスチレン、2−ブロム−4−トリフルオルメチルスチレン、4−フルオル−3−トリフルオルメチルスチレンなど)、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
これらを1種あるいは2種以上用いることができる。
【0053】
これら製造方法(合成方法)は、いずれかひとつを行うか、または、それぞれ組み合わせて特定アルカリ可溶性高分子を得てもよい。
このような特定アルカリ可溶性高分子中の一般式(1)で表される置換基を側鎖に有する構造単位の含有量は、0.1モル%以上であることを要し、より好ましい範囲は、30〜80モル%である。この範囲において硬化性と耐刷性が良好となる傾向にある。
【0054】
<酸基を有するラジカル重合性化合物>
本発明に係る特定アルカリ可溶性高分子化合物には、非画像部除去性などの諸性能を向上させるために、酸基を有するラジカル重合性化合物を共重合させることが好ましい。このようなラジカル重合性が有する酸基としては、例えば、カルボン酸、スルホン酸、リン酸基などがあり、特に好ましいものは、カルボン酸である。カルボン酸を含有するラジカル重合性化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、インクロトン酸、マレイン酸、p−カルボキシルスチレンなどがあり、特に好ましいものは、アクリル酸、メタクリル酸、p−カルボキシルスチレンである。
これらを1種あるいは1種以上用いることができ、これら共重合成分の好適に使用される含有量は、0〜50モル%であり、特に好ましくは、アルカリ水現像による画像強度ダメージ抑制という観点から、0〜30モル%である。30モル%を越えるとアルカリ水現像による画像強度ダメージを受けやすくなる。
【0055】
このような高分子化合物を合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどが挙げられる。
これらの溶媒は単独あるいは2種以上混合してもよい。
【0056】
本発明の(A)特定アルカリ可溶性高分子は、重量平均分子量で、好ましくは40,000以上であり、さらに好ましくは、7万〜18万の範囲である。4万を下回ると硬化膜強度が不足し、18万を越えると現像性が低下する。
また、本発明に係る(A)特定アルカリ可溶性高分子中には、未反応の単量体を含んでいてもよい。この場合、単量体の高分子化合物中に占める割合は、15質量%以下が望ましい。
【0057】
本発明に係る特定アルカリ可溶性高分子は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。また、一般式(1)で表される置換基を側鎖に有する構造単位を有しない他の高分子化合物を混合して用いてもよい。この場合、他の高分子化合物は、高分子化合物中で50質量%以下で、更に好ましくは10質量%以下である。
【0058】
本発明の画像記録材料中に含まれる(A)特定アルカリ可溶性高分子の含有量は固形分で約5〜95質量%であり、好ましくは、約40〜90質量%である。含有量が少なすぎる場合には、記録層の強度が不足し、耐刷性が低下する傾向があり、多すぎると画像形成性に影響を与え、画質が低下する可能性があり、いずれ好ましくない。
【0059】
以下に、本発明に係る(A)特定アルカリ可溶性高分子の代表的な合成例と具体的な高分子化合物を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(合成例)
<高分子化合物1の合成>
1000ml三口フラスコにN,N−ジメチルアセトアミド109gを入れ、窒素気流下、70℃まで加熱した。化合物(M−13)69.8g、メタクリル酸メチル15.0g、メタクリル酸8.6g、V−601(和光純薬製)0.90gのN,N−ジメチルアセトアミド109g溶液を、2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃まで加熱し、更に2時間撹拌した。次に、N,N−ジメチルアセトアミド109gで希釈した後に、p−メトキシフェノール0.1gを入れ、氷水を入れた氷浴にて冷却した。混合液温度が5℃以下になった後に、1、8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセン(DBU)106.5gを滴下ロート用いて、2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに6時間撹拌した。反応液を濃塩酸75mlを溶解させた水3Lに投入し高分子化合物1を析出させた。析出した高分子化合物を濾取、水で洗浄、乾燥し高分子化合物を82g得た。得られた高分子化合物の1H−NMRを測定したところ、化合物(M−13)由来の側鎖基の100%がエチレンメタクリレート基に変換されたことが確認された。また、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、重量平均分子量を測定した結果、102,000であった。さらに、滴定により酸価を求めたところ、1.34meq/g(計算値1.37meq/g)であった。
【0060】
(合成例2〜10)
合成例1と同様にして仕込みモノマー種、組成比を変えて、以下に示す高分子化合物2〜10を合成した。これらの重合体の重量平均分子量を、合成例1と同じ方法で測定した。
上記合成例1〜10により得られた高分子化合物1〜10の各構成単位および重合モル比、さらに測定した重量平均分子量(Mw)を以下の表に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
〔(B)光熱変換剤〕
本発明の画像記録材料は、ヒートモード露光、代表的には、赤外線を発するレーザにより記録を行うことから、光熱変換剤を用いることが必須である。光熱変換剤は、所定の波長の光を吸収し、熱に変換する機能を有している。この際発生した熱により、後述する(C)成分、即ちこの(B)光熱変換剤が吸収し得る波長の光のヒートモード露光によりラジカルを生成する化合物が分解し、ラジカルを発生する。
【0064】
本発明において使用される光熱変換剤としては、記録に使用する光エネルギー照射線を吸収し、熱を発生する物質であれば特に吸収波長域の制限はなく用いることができる。本発明において使用される好ましい光熱変換剤は、入手容易な高出力レーザーへの適合性の観点から波長760nm〜1200nmに吸収極大を有する赤外線吸収性染料又は顔料である。
【0065】
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体、オキソノール染料、ジイモニウム染料、アミニウム染料、クロコニウム染料等の染料が挙げられる。
【0066】
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクアリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0067】
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。
【0068】
また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
【0069】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、フタロシアニン染料、オキソノール染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、チオピリリウム染料、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。さらに、下記一般式(a)〜一般式(e)で示される染料が光熱変換効率に優れるため好ましく、特に下記一般式(a)で示されるシアニン色素は、本発明の重合性組成中で使用した場合に、高い重合活性を与え、且つ、安定性、経済性に優れるため最も好ましい。
【0070】
【化14】
【0071】
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1または以下に示す基を表す。ここで、X2は酸素原子または、硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。
【0072】
【化15】
【0073】
R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層塗布液の保存安定性から、R1およびR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、さらに、R1とR2とは互いに結合し、5員環または6員環を形成していることが特に好ましい。
【0074】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環およびナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、硫黄原子または炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7およびR8は、それぞれ同じでも異なっていても良く、水素原子または炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za−は、対アニオンを示す。ただし、R1〜R8のいずれかにスルホ基が置換されている場合は、Za−は必要ない。好ましいZa−は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、およびアリールスルホン酸イオンである。
【0075】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、以下に例示するものの他、特願平11−310623号明細書の段落番号[0017]〜[0019]、特願2000−224031号明細書の段落番号[0012]〜[0038]、特願2000−211147号明細書の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものを挙げることができる。
【0076】
【化16】
【0077】
【化17】
【0078】
【化18】
【0079】
【化19】
【0080】
前記一般式(b)中、Lは共役炭素原子数7以上のメチン鎖を表し、該メチン鎖は置換基を有していてもよく、置換基が互いに結合して環構造を形成していてもよい。Zb+は対カチオンを示す。好ましい対カチオンとしては、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、アルカリ金属カチオン(Ni+、K+、Li+)などが挙げられる。R9〜R14及びR15〜R20は互いに独立に水素原子又はハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、又はアミノ基から選択される置換基、或いは、これらを2つ若しくは3つ組合せた置換基を表し、互いに結合して環構造を形成していてもよい。ここで、前記一般式(b)中、Lが共役炭素原子数7のメチン鎖を表すもの、及び、R9〜R14及びR15〜R20がすべて水素原子を表すものが入手の容易性と効果の観点から好ましい。
【0081】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(b)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0082】
【化20】
【0083】
【化21】
【0084】
前記一般式(c)中、Y3及びY4は、それぞれ、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、又はテルル原子を表す。Mは、共役炭素数5以上のメチン鎖を表す。R21〜R24及びR25〜R28は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、又はアミノ基を表す。また、式中Za−は対アニオンを表し、前記一般式(a)におけるZa−と同義である。
【0085】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(c)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0086】
【化22】
【0087】
【化23】
【0088】
前記一般式(d)中、R29ないしR31は各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を示す。R33およびR34は各々独立に、アルキル基、置換オキシ基、またはハロゲン原子を示す。nおよびmは各々独立に0ないし4の整数を示す。R29とR30、またはR31とR32はそれぞれ結合して環を形成してもよく、またR29および/またはR30はR33と、またR31および/またはR32はR34と結合して環を形成しても良く、さらに、R33或いはR34が複数存在する場合に、R33同士あるいはR34同士は互いに結合して環を形成してもよい。X2およびX3は各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基であり、X2およびX3の少なくとも一方は水素原子またはアルキル基を示す。Qは置換基を有していてもよいトリメチン基またはペンタメチン基であり、2価の有機基とともに環構造を形成してもよい。Zc−は対アニオンを示し、前記一般式(a)におけるZa−と同義である。
【0089】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(d)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0090】
【化24】
【0091】
【化25】
【0092】
前記一般式(e)中、R35〜R50はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、水酸基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、アミノ基、オニウム塩構造を示す。Mは2つの水素原子若しくは金属原子、ハロメタル基、オキシメタル基を示すが、そこに含まれる金属原子としては、周期律表のIA、IIA、IIIB、IVB族原子、第一、第二、第三周期の遷移金属、ランタノイド元素が挙げられ、中でも、銅、マグネシウム、鉄、亜鉛、コバルト、アルミニウム、チタン、バナジウムが好ましい。
【0093】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(e)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0094】
【化26】
【0095】
本発明において光熱変換剤として使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が挙げられる。
【0096】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0097】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0098】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。顔料の粒径が0.01μm未満のときは分散物の画像記録層塗布液中での安定性の点で好ましくなく、また、10μmを越えると画像記録層の均一性の点で好ましくない。
【0099】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0100】
本発明においては、これらの光熱変換剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用することもできるが、感度の観点から、一般式(a)で示される色素が最も好ましく、なかでも、ジアリールアミノ基を有するシアニン色素が最も好ましい。
【0101】
これらの光熱変換剤は、記録層組成物中に、全固形分の0.1〜20質量%添加されることが好ましい。この範囲より少なすぎる場合には露光による特性変化の感度が低くなり、感光性が充分に得られない傾向があり、多すぎる場合には膜の均一性や強度が低下する傾向にあるため、いずれも好ましくない。
これらの光熱変換剤は、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよいが、ネガ型画像形成材料を作成した際に、記録層の波長760nm〜1200nmの範囲における吸収極大での光学濃度が、0.1〜3.0の間にあることが好ましい。この範囲をはずれた場合、感度が低くなる傾向がある。光学濃度は前記光熱変換剤の添加量と記録層の厚みとにより決定されるため、所定の光学濃度は両者の条件を制御することにより得られる。記録層の光学濃度は常法により測定することができる。測定方法としては、例えば、透明、或いは白色の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版として必要な範囲において適宜決定された厚みの記録層を形成し、透過型の光学濃度計で測定する方法、アルミニウム等の反射性の支持体上に記録層を形成し、反射濃度を測定する方法等が挙げられる。
【0102】
〔(C)電荷的に中性であり、光または熱によりラジカルを生成する化合物〕
電荷的に中性であり、光または熱によりラジカルを生成する化合物(以下、適宜、特定ラジカル開始剤と称する)は、前記(B)光熱変換剤と組み合わせて用い、光熱変換剤が吸収し得る波長の光、例えば、赤外線レーザを照射した際にその光又は熱或いはその双方のエネルギーによりラジカルを発生し、(A)特定アルカリ可溶性高分子、及び、所望により併用される後述の(D)重合性の不飽和基を有するラジカル重合性化合物の重合を開始、促進させる化合物を指す。
【0103】
本発明に係る特定ラジカル開始剤としては、電荷的に中性で、分子間あるいは分子内で正−負のイオン対を形成しないものであれば特に制限はなく、公知の光重合開始剤、熱重合開始剤などを選択して使用することができる。中でも好ましい特定ラジカル開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)有機過酸化物、(c)チオ化合物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケトオキシムエステル化合物、(f)メタロセン化合物、(g)活性エステル化合物、(h)炭素ハロゲン結合を有する化合物、(i)アゾ系化合物等が挙げられる。これらの中でも、化合物の極大吸収波長が400nm以下であることが好ましく、更に360nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、平版印刷版原版の取り扱いを白灯下で実施することができる。以下に、上記(a)〜(j)の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0104】
(a)芳香族ケトン類
本発明に用いられる特定ラジカル開始剤として好ましい(a)芳香族ケトン類としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」J.P.Fouassier,J.F.Rabek(1993),p77−117記載のベンゾフェノン骨格あるいはチオキサントン骨格を有する化合物が挙げられ、具体的には、以下に示すような化合物が挙げられる。
【0105】
【化27】
【0106】
【化28】
【0107】
b)有機過酸化物
本発明に用いられる特定ラジカル開始剤として好ましい(b)有機過酸化物としては、分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、その例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(ターシャリイブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(ターシャリイブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(ターシャリイブチルパーオキシ)ブタン、ターシャリイブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジターシャリイブチルパーオキサイド、ターシャリイブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(ターシャリイブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリイブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−キサノイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、メタ−トルオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ターシャリイブチルパーオキシアセテート、ターシャリイブチルパーオキシピバレート、ターシャリイブチルパーオキシネオデカノエート、ターシャリイブチルパーオキシオクタノエート、ターシャリイブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ターシャリイブチルパーオキシラウレート、ターシャリーカーボネート、3,3′4,4′−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等がある。
【0108】
中でも、3,3′4,4′−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましい。
【0109】
(c)チオ化合物
本発明で用いられる特定ラジカル開始剤として好ましい(c)チオ化合物としては、下記一般式(I)で示される構造を有する化合物が挙げられる。
【0110】
【化29】
(ここで、R1はアルキル基、アリール基または置換アリール基を示し、R2は水素原子またはアルキル基を示す。また、R1とR2は、互いに結合して酸素、硫黄および窒素原子から選ばれたヘテロ原子を含んでもよい5員ないし7員環を形成するのに必要な非金属原子群を示す。)
上記一般式(I)におけるアルキル基としては炭素原子数1〜4個のものが好ましい。またアリール基としてはフェニル、ナフチルのような炭素原子数6〜10個のものが好ましく、置換アリール基としては、上記のようなアリール基に塩素原子のようなハロゲン原子、メチル基のようなアルキル基、メトシキ基、エトキシ基のようなアルコキシ基で置換されたものが含まれる。R2は、好ましくは炭素原子数1〜4個のアルキル基である。一般式(I)で示されるチオ化合物の具体例としては、下記表に示すような化合物が挙げられる。
【0111】
【表3】
【0112】
(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物
本発明に用いられる特定ラジカル開始剤として好ましい(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、特公昭45−37377号、特公昭44−86516号記載のロフィンダイマー類、例えば2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(o,o′−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−メチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0113】
(e)ケトオキシムエステル化合物
本発明に用いられる特定ラジカル開始剤として好ましい(e)ケトオキシムエステル化合物としては、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0114】
(f)メタロセン化合物
本発明に用いられる特定ラジカル開始剤として好ましい(f)メタロセン化合物としては、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−41484号、特開平2−249号、特開平2−4705号記載のチタノセン化合物ならびに、特開平1−304453号、特開平1−152109号記載の鉄−アレーン錯体をあげることができる。
【0115】
上記チタノセン化合物の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウムビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(メチルスルホンアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチルビアロイル−アミノ)フェニル〕チタン、
【0116】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチル−(4−クロロベンゾイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ベンジル−2,2−ジメチルペンタノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(2−エチルヘキシル)−4−トリル−スルホニル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3−オキサヘプチル)ベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3,6−ジオキサデシル)ベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(トリフルオロメチルスルホニル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(トリフルオロアセチルアミノ)フェニル〕チタン、
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(2−クロロベンゾイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(4−クロロベンゾイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3,6−ジオキサデシル)−2,2−ジメチルペンタノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3,7−ジメチル−7−メトキシオクチル)ベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−シクロヘキシルベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、等を挙げることができる。
【0117】
(g)活性エステル化合物
本発明に用いられる特定ラジカル開始剤として好ましい(g)活性エステル化合物としては、特公昭62−6223記載のイミドスルホネート化合物、特公昭63−14340号、特開昭59−174831号記載の活性スルホネート類をあげることができる。
【0118】
(h)炭素ハロゲン結合を有する化合物
本発明に用いられる特定ラジカル開始剤として好ましい(g)炭素ハロゲン結合を有する化合物としては、下記一般式(II)から(VIII)のものを挙げることができる。
【0119】
【化30】
【0120】
(式中、Xはハロゲン原子を表し、Yは−CX3、−NH2、−NHR4、−NR4、−OR4を表わす。ここでR4はアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を表わす。またR3は−CX3、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、置換アルケニル基、を表わす。)
【0121】
【化31】
【0122】
(式中、R5は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基、置換アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシル基、ニトロ基又はシアノ基であり、Xはハロゲン原子であり、nは1〜3の整数である。)
【0123】
【化32】
【0124】
(式中、R6は、アリール基又は置換アリール基であり、R7は、以下に示す基又はハロゲンであり、Zは−C(=O)−、−C(=S)−又は−SO2−である。)
【0125】
【化33】
【0126】
(式中、R8、R9はアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基又は置換アリール基であり、R10は一般式(II)中のR3と同じであり、Xはハロゲン原子であり、mは1又は2である。)
【0127】
【化34】
【0128】
(式中、R11は置換されていてもよいアリール基又は複素環式基であり、R12は炭素原子1〜3個を有するトリハロアルキル基又はトリハロアルケニル基であり、pは1、2又は3である。)
【0129】
【化35】
【0130】
(式中、Lは水素原子又は式:CO−(R13)q(CX3)rの置換基であり、Qはイオウ、セレン又は酸素原子、ジアルキルメチレン基、アルケン−1,2−イレン基、1,2−フェニレン基又はN−R基であり、Mは置換又は非置換のアルキレン基又はアルケニレン基であるか、又は1,2−アリーレン基であり、R14はアルキル基、アラルキル基又はアルコキシアルキル基であり、R13は炭素環式又は複素環式の2価の芳香族基であり、Xは塩素、臭素またはヨウ素原子であり、q=0及びr=1であるか又はq=1及びr=1又は2で表わされる、トリハロゲノメチル基を有するカルボニルメチレン複素環式化合物である。)
【0131】
【化36】
【0132】
(式中、Xはハロゲン原子であり、tは1〜3の整数であり、sは1〜4の整数であり、R15は水素原子又はCH(3−t)Xt基であり、R16はs価の置換されていてもよい不飽和有機基である)で表わされる、4−ハロゲノ−5−(ハロゲノメチル−フェニル)−オキサゾール誘導体である。)
【0133】
【化37】
【0134】
(式中、Xはハロゲン原子であり、vは1〜3の整数であり、uは1〜4の整数であり、R17は水素原子又はCH(3−v)Xv基であり、R18はu価の置換されていてもよい不飽和有機基である。)で表わされる、2−(ハロゲノメチル−フェニル)−4−ハロゲノ−オキサゾール誘導体である。)
【0135】
このような炭素−ハロゲン結合を有する化合物の具体例としては、たとえば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、たとえば、2−フェニル4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−クロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(2′,4′−ジクロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−n−ノニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロルエチル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン等が挙げられる。その他、英国特許1388492号明細書記載の化合物、たとえば、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メチルスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4−アミノ−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等、特開昭53−133428号記載の化合物、たとえば、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−〔4−(2−エトキシエチル)−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4,7−ジメトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン)、2−(アセナフト−5−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン等、独国特許3337024号明細書記載の化合物、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
【0136】
【化38】
【0137】
また、F.C.Schaefer等によるJ.Org.Chem.29、1527(1964)記載の化合物、たとえば2−メチル−4,6−ビス(トリブロムメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロムメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロムメチル)−S−トリアジン、2−アミノ−4−メチル−6−トリブロムメチル−S−トリアジン、2−メトキシ−4−メチル−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等を挙げることができる。さらに特開昭62−58241号記載の、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
【0138】
【化39】
【0139】
更に特開平5−281728号記載の、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
【0140】
【化40】
【0141】
あるいはさらにM.P.Hutt、E.F.ElslagerおよびL.M.Herbel著「Journalof Heterocyclic chemistry」第7巻(No.3)、第511頁以降(1970年)に記載されている合成方法に準じて、当業者が容易に合成することができる次のような化合物群、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
【0142】
【化41】
【0143】
(i)アゾ系化合物
本発明に用いられる特定ラジカル開始剤として好ましい(i)アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスプロピオニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等を挙げることができる。
【0144】
これらの特定ラジカル開始剤は、記録層塗布液の全固形分に対し0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%の割合で記録層塗布液中に添加することができる。添加量が0.1質量%未満であると感度が低くなり、また50質量%を越えると印刷時非画像部に汚れが発生する。これらの特定ラジカル開始剤は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また、これらの特定ラジカル開始剤は他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
【0145】
〔(D)ラジカル重合性化合物〕
本発明の画像記録材料には、感度、画像形成性を向上させる目的で、ラジカル重合性化合物を併用することができる。ここで、併用可能なラジカル重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有するラジカル重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定なく用いる事ができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。
【0146】
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類があげられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。
【0147】
また、イソシアナート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類及びチオール類との付加反応物、さらに、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類及びチオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用する事も可能である。
【0148】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルであるラジカル重合性化合物の具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0149】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0150】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
【0151】
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
【0152】
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
【0153】
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0154】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926、特公昭51−47334、特開昭57−196231記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240、特開昭59−5241、特開平2−226149記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。
【0155】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0156】
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものをあげる事ができる。
【0157】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0158】
CH2=C(R1)COOCH2CH(R2)OH 一般式
【0159】
式中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。
【0160】
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。
【0161】
さらに、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有するラジカル重合性化合物類を用いても良い。
【0162】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートをあげることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号記載のビニルホスホン酸系化合物等もあげることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。さらに日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0163】
ラジカル重合性化合物は単独で用いても2種以上併用してもよい。これらのラジカル重合性化合物について、どの様な構造を用いるか、単独で使用するか併用するか、添加量はどうかといった、使用方法の詳細は、最終的な記録材料の性能設計にあわせて、任意に設定できる。
【0164】
画像記録材料中のラジカル重合性化合物の配合比に関しては、多い方が感度的に有利であるが、多すぎる場合には、好ましくない相分離が生じたり、画像記録層の粘着性による製造工程上の問題(例えば、記録層成分の転写、粘着に由来する製造不良)や、現像液からの析出が生じる等の問題を生じうる。これらの観点から、ラジカル重合性化合物の好ましい配合比は、多くの場合、組成物全成分に対して5〜80質量%、好ましくは20〜75質量%である。
【0165】
本発明において、前記(A)特定アルカリ可溶性高分子と、(D)ラジカル重合性化合物とを併用する場合、(A)成分と(D)成分の比率は、質量比で、1:0.05〜1:3の範囲で併用され、好ましくは1:0.1〜1:2の範囲、さらに好ましくは1:0.3〜1:1.5の範囲である。
【0166】
ラジカル重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面接着性等の観点から、適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、さらに場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施し得る。
【0167】
〔その他の成分〕
本発明の画像記録材料には、さらに必要に応じてこれら以外に種々の化合物を添加してもよい。例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、及び特開昭62−293247号に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料も好適に用いることができる。
【0168】
これらの着色剤は、画像形成後、画像部と非画像部の区別がつきやすいので、添加する方が好ましい。なお、添加量は、記録層塗布液全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合である。
【0169】
また、本発明においては、画像記録材料の調製中あるいは保存中においてラジカル重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。熱重合防止剤の添加量は、全組成物の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で記録層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.1質量%〜約10質量%が好ましい。
【0170】
また、本発明における画像記録材料は、主として平版印刷版原版の画像記録層を形成するために用いられるが、そのような画像記録層の現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号や特開平3−208514号に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号、特開平4−13149号に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
【0171】
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0172】
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名アモーゲンK、第一工業(株)製)等が挙げられる。
上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の記録層塗布液中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0173】
さらに、本発明に係る記録層塗布液中には、必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル等が用いられる。
【0174】
本発明の画像記録材料を使用して平版印刷版原版を製造するには、通常、画像記録材料の構成成分を塗布液に必要な各成分とともにを溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布すればよい。ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独又は混合して使用される。溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0175】
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の記録層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、平版印刷版原版についていえば一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、画像記録層の皮膜特性は低下する。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
【0176】
本発明に係る記録層塗布液には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば、特開昭62−170950号に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、全記録層の材料固形分中0.01〜1質量%、さらに好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0177】
本発明の画像記録材料は、主として、平版印刷版原版の記録層として使用される。前記平版印刷版原版は、少なくとも、支持体と、記録層とを有し、必要に応じて、更に保護層を有する。以下、前記平版印刷版原版の構成要素である支持体及び保護層について説明する。
【0178】
〔支持体〕
本発明の画像記録材料を用いて平版印刷版原版を形成する場合に使用される支持体としては、寸度的に安定な板状物であれば特に制限はなく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)等が挙げられる。これらは、樹脂フィルムや金属板などの単一成分のシートであっても、2以上の材料の積層体であってもよく、例えば、上記のごとき金属がラミネート、若しくは蒸着された紙やプラスチックフィルム、異種のプラスチックフィルム同志の積層シート等が含まれる。
【0179】
前記支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。
前記アルミニウム板の厚みは、およそ0.1〜0.6mm程度、好ましくは0.15〜0.4mm、特に好ましくは0.2〜0.3mmである。
【0180】
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。
アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
【0181】
このように粗面化されたアルミニウム板は、所望により、アルカリエッチング処理、中和処理を経て、表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理を施すことができる。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸或いはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0182】
陽極酸化の処理条件は、用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。
陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2以上が好適であるが、より好ましくは2.0〜6.0g/m2の範囲である。陽極酸化被膜が1.0g/m2未満であると耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。
尚、このような陽極酸化処理は平板印刷版の支持体の印刷に用いる面に施されるが、電気力線の裏回りにより、裏面にも0.01〜3g/m2の陽極酸化被膜が形成されるのが一般的である。
【0183】
支持体表面の親水化処理は、上記陽極酸化処理の後に施されるものであり、従来より知られている処理法が用いられる。このような親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号及び第3,902,734号公報に開示されているようなアルカリ金属珪酸塩(例えば、珪酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体が珪酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか、又は電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム及び米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号公報に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が用いられる。
これらの中で、本発明において特に好ましい親水化処理は珪酸塩処理である。珪酸塩処理について、以下に説明する。
【0184】
上述の如き処理を施したアルミニウム板の陽極酸化皮膜を、アルカリ金属珪酸塩が0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜10質量%であり、25℃でのpHが10〜13である水溶液に、例えば15〜80℃で0.5〜120秒浸漬する。アルカリ金属珪酸塩水溶液のpHが10より低いと液はゲル化し13.0より高いと酸化皮膜が溶解されてしまう。本発明に用いられるアルカリ金属珪酸塩としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムなどが使用される。アルカリ金属珪酸塩水溶液のpHを高くするために使用される水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがある。なお、上記の処理液にアルカリ土類金属塩もしくは第IVB族金属塩を配合してもよい。アルカリ土類金属塩としては、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウムのような硝酸塩や、硫酸塩、塩酸塩、燐酸塩、酢酸塩、蓚酸塩、ホウ酸塩などの水溶性の塩が挙げられる。第IVB族金属塩として、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、蓚酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムなどを挙げることができる。アルカリ土類金属塩もしくは、第IVB族金属塩は単独又は2以上組み合わせて使用することができる。これらの金属塩の好ましい範囲は0.01〜10質量%であり、更に好ましい範囲は0.05〜5.0質量%である。
珪酸塩処理により、アルミニウム板表面上の親水性が一層改善されるため、印刷の際、インクが非画像部に付着しにくくなり、汚れ性能が向上する。
【0185】
支持体の裏面には、必要に応じてバックコートが設けられる。かかるバックコートとしては、特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物及び特開平6−35174号公報記載の有機又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。
これらの被覆層のうち、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4、Si(OC3H7)4、Si(OC4H9)4などの珪素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから与られる金属酸化物の被覆層が耐現像性に優れており特に好ましい。
【0186】
〔保護層〕
本発明の画像記録材料を平版印刷版原版に用いる場合は、通常、露光を大気中で行うため、光重合性組成物を含む画像記録層の上に、さらに、保護層を設ける事が好ましく、この様な保護層に望まれる特性としては、酸素等の低分子化合物の透過性が低く、露光に用いる光の透過性が良好で、記録層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることであり、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸などのような比較的結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることが一般的である。
【0187】
〔平版印刷版原版による印刷〕
上述された支持体表面に、本発明の画像記録材料を記録層として作製した平版印刷版原版は、赤外線レーザで記録することができる。また、紫外線ランプやサーマルヘッドによる熱的な記録も可能である。本発明においては、波長760nmから1200nmの赤外線を放射する固体レーザ及び半導体レーザにより画像露光されることが好ましい。
【0188】
赤外線レーザにより露光した後、本発明の画像記録材料は、好ましくは、水又はアルカリ性水溶液にて現像される。
【0189】
現像液として、アルカリ性水溶液を用いる場合、本発明の画像記録材料の現像液及び補充液としては、従来公知のアルカリ性水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウム等の無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等の有機アルカリ剤も用いられる。
これらのアルカリ剤は単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0190】
さらに、自動現像機を用いて現像する場合には、現像液と同じもの又は、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換することなく、多量の平版印刷版原版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。
【0191】
現像液及び補充液には現像性の促進や抑制、現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤等を添加できる。好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤が挙げられる。好ましい有機溶剤としてはベンジルアルコール等が挙げられる。また、ポリエチレングリコール若しくはその誘導体、又はポリプロピレングリコール若しくはその誘導体等の添加も好ましい。また、アラビット、ソルビット、マンニット等の非還元糖を添加することもできる。
【0192】
さらに、現像液及び補充液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸又は亜硫酸水素酸のナトリウム塩及びカリウム塩等の無機塩系還元剤、さらに有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
【0193】
以上記述した現像液及び補充液を用いて現像処理された印刷版は、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の画像記録材料を印刷用版材として使用する場合の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0194】
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化及び標準化のため、印刷用版材用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷用版材を搬送する装置と各処理液槽とスプレー装置とからなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロール等によって印刷用版材を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。また、電気伝導度をセンサーにて感知し、自動的に補充することもできる。
また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
【0195】
以上のようにして得られた平版印刷版は所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力の平版印刷版としたい場合にはバーニング処理が施される。
平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
【0196】
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布等が適用される。また、塗布した後でスキージ又はスキージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
整面液の塗布量は一般に0.03〜0.8g/m2(乾燥質量)が適当である。
整面液が塗布された平版印刷版は必要であれば乾燥された後、バーニングプロセッサー(例えば、富士写真フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:BP−1300)等で高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、180〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。
【0197】
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引き等の従来行なわれている処理を施こすことができるが、水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合にはガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。
【0198】
このような処理によって、本発明の画像記録材料より得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0199】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
【0200】
(支持体の作成)
99.5%以上のアルミニウムと、Fe 0.30%、Si 0.10%、Ti 0.02%、Cu 0.013%を含むJIS A1050合金の溶湯に清浄化処理を施し、鋳造した。清浄化処理には、溶湯中の水素などの不要なガスを除去するために脱ガス処理し、セラミックチューブフィルタ処理をおこなった。鋳造法はDC鋳造法で行った。凝固した板厚500mmの鋳塊を表面から10mm面削し、金属間化合物が粗大化してしまわないように550℃で10時間均質化処理を行った。次いで、400℃で熱間圧延し、連続焼鈍炉中で500℃、60秒中間焼鈍した後、冷間圧延を行って、板圧0.30mmのアルミニウム圧延板とした。圧延ロールの粗さを制御することにより、冷間圧延後の中心線平均表面粗さRaを0.2μmに制御した。その後、平面性を向上させるためにテンションレベラーにかけた。
【0201】
次に平版印刷版支持体とするための表面処理を行った。
まず、アルミニウム板表面の圧延油を除去するため10%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃30秒間脱脂処理を行い、30%硫酸水溶液で50℃30秒間中和、スマット除去処理を行った。
【0202】
次いで、支持体と記録層の密着性を良好にし、かつ非画後部に保水性を与えるため、支持体の表面を粗面化する、いわゆる、砂目立て処理を行った。1%の硝酸と0.5%の硝酸アルミを含有する水溶液を45℃に保ち、アルミウェブを水溶液中に流しながら、間接給電セルにより電流密度20A/dm2、デューティー比1:1の交番波形でアノード側電気量240C/dm2を与えることで電解砂目立てを行った。その後10%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃30秒間エッチング処理を行い、30%硫酸水溶液で50℃30秒間中和、スマット除去処理を行った。
【0203】
さらに耐摩耗性、耐薬品性、保水性を向上させるために、陽極酸化によって支持体に酸化皮膜を形成させた。電解質として硫酸20%水溶液を35℃で用い、アルミウェブを電解質中に通搬しながら、間接給電セルにより14A/dm2の直流で電解処理を行うことで2.5g/m2の陽極酸化皮膜を作成した。
【0204】
その後、印刷版非画像部としての親水性を確保するため、シリケート処理を行った。処理は3号珪酸ソーダ1.5%水溶液を70℃に保ちアルミウェブの接触時間が15秒となるよう通搬し、さらに水洗した。Siの付着量は10mg/m2であった。以上により作成した支持体のRa(中心線表面粗さ)は0.25μmであった。
【0205】
〔実施例1〜4、比較例1〕
(記録層の形成)
下記記録層塗布液1を調製し、上記のようにして得られたアルミニウム支持体にワイヤーバーを用いて塗布し、温風式乾燥装置にて115℃で45秒間乾燥して記録層を形成し、平版印刷版原版を得た。乾燥後の被覆量は1.2〜1.3g/m2の範囲内であった。
【0206】
【0207】
【表4】
【0208】
ここで、本発明の実施例に使用するアルカリ可溶性高分子1〜7は、前記合成例により得られた(A)特定アルカリ可溶性高分子1〜7である。また、比較例1で使用したアルカリ可溶性高分子(P−1)の構造は以下に示す。
【0209】
【化42】
【0210】
同じく、本発明の実施例に使用する赤外線吸収剤(IR−1)〜(IR−3)を以下に示す。
【0211】
【化43】
【0212】
同じく、本発明の実施例に使用するラジカル開始剤(S−1)〜(S−6)を以下に示す。なお、(S−1)〜(S−3)および(S−6)は本発明に係る特定ラジカル開始剤である。一方、(S−4)および(S−5)は、本発明の範囲外の正−負のイオン対を形成するラジカル開始剤である。
【0213】
【化44】
【0214】
同じく、本発明の実施例に使用するラジカル重合性化合物(R−1)〜(R−3)を以下に示す。
【0215】
【化45】
【0216】
(露光)
得られた前期各平版印刷版原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザを搭載したCreo社製Trendsetter3244VFSにて、出力6.5W、外面ドラム回転数81rpm、版面エネルギー188mJ/cm2、解像度2400dpiの条件で露光した。
【0217】
(現像処理)
露光後、富士写真フイルム(株)製自動現像機スタブロン900NPを用い現像処理した。現像液は、下記(D−1)を仕込み液、下記(D−2)を補充液に用いた。現像浴の温度は30℃、現像時間を12秒で処理した。この際、補充液は自動現像機の現像浴中の現像液の電気伝導度が一定となるように調整しつつ自動的に投入した。また、フィニッシャーは、富士写真フイルム(株)製FN−6の1:1水希釈液を用いた。
【0218】
<現像液(D−1)>
・水酸化カリウム 3g
・炭酸水素カリウム 1g
・炭酸カリウム 2g
・亜硫酸ナトリウム 1g
・ポリエチレングリコールモノナフチルエーテル 150g
・ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩 50g
・エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム塩 8g
・水 785g
【0219】
【0220】
〔耐刷性の評価〕
次に、小森コーポレーション(株)製印刷機リスロンを用いて印刷した。この際、どれだけの枚数が充分なインキ濃度を保って印刷できるかを目視にて測定し、耐刷性を評価した。結果を前記表4に併記する。
以上表4に明らかなように、本発明に係る特定アルカリ可溶性高分子を用いた実施例1〜4の平版印刷版は、公知のアルカリ可溶性高分子を用いた比較例1に比べ、耐刷性に優れることが確認された。また、実施例1〜4のいずれの試料にも、露光時のアブレーションは見られなかった。
【0221】
〔実施例5〜7、比較例2、3〕
前記実施例1〜4及び比較例1で用いたのと同様のアルミニウム支持体上に、下記に示す下塗り層用塗布液を塗布し、80℃雰囲気下で30秒間乾燥した。乾燥塗布量は、10mg/m2であった。
<下塗り層用塗布液>
下記組成の化合物を混合し、下塗り層用塗布液を調製した。
・2−アミノエチルホスホン酸 0.5g
・メタノール 40g
・純水 60g
【0222】
(記録層の形成)
下記に示す記録層塗布液2を前記下塗り層の形成された支持体上に、ワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて115℃で45秒間乾燥して平版印刷版原版を得た。乾燥後の被覆量は、1.2〜1.3g/m2の範囲内であった。
【0223】
【0224】
【表5】
【0225】
(露光)
得られた平版印刷版原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザを搭載したCreo社製Trendsetter3244VFSにて、出力6.5W、外面ドラム回転数81rpm、版面エネルギー188mJ/cm2、解像度、解像度2400dpiの条件で露光した。
【0226】
(現像処理)
露光後、富士写真フイルム(株)製自動現像機スタブロン900NPを用い現像処理した。現像液は、仕込み液、補充液共に富士写真フイルム(株)製DP−4の1:8水希釈液を用いた。現像欲浴の温度は30℃、現像時間を12秒で処理した。この際、補充液は自動現像機の現像浴中の現像液の電気伝導度が一定となるように調整しつつ自動的に投入した。また、フィニッシャーは、富士写真フイルム(株)製FN−6の1:1水希釈液を用いた。
【0227】
〔耐刷性、汚れ性および保存安定性の評価〕
得られた平版印刷版原版を、それぞれ60℃で3日間保存、及び、50℃、湿度80%RHで3日間保存して強制経時させた後、前記実施例1〜4及び比較例1と同様にして印刷を行い、耐刷性、汚れ性および保存安定性を評価した。結果を前記表5に併記する。
以上表5に明らかなように、本発明に係る特定ラジカル開始剤を用いた実施例5〜7の平版印刷版は、本発明の範囲外のラジカル開始剤を用いた比較例2、3に比べ、非画像部の汚れがなく、耐刷性に優れ、また、高温高湿環境下で保存した後も、耐刷性、非画像部の汚れ性が低下せず、保存安定性に優れていることがわかった。
【0228】
〔実施例8〜10、比較例4、5〕
前記実施例1〜4及び比較例1で用いたのと同様のアルミニウム支持体上に、下記記録層塗布液3を調製し、上記アルミニウム支持体にワイヤーバーを用いて塗布し、温風式乾燥装置にて115℃で45秒間乾燥して平版印刷版原版を得た。乾燥後の被覆量は1.2〜1.3g/m2の範囲内であった。
<記録層塗布液3>
・アルカリ可溶性高分子:(A)成分(表6に記載の化合物) 1.0g
・赤外線吸収剤「IR−3」:(B)成分 0.10g
・ラジカル開始剤:(C)成分(表6に記載の化合物) 0.80g
・ラジカル重合性化合物「R−2」:(D)成分 1.0g
・ビクトリアピュアブルーのナフタレンスルホン酸 0.04g
・フッ素系界面活性剤 0.01g
(メガファックF−176,大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン 9.0g
・メタノール 10.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.0g
【0229】
【表6】
【0230】
(露光)
得られた平版印刷版原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザを搭載したCreo社製Trendsetter3244VFSにて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、版面エネルギー100mJ/cm2、解像度2400dpiの条件で露光した。
【0231】
(現像処理)
露光後、富士写真フイルム(株)製自動現像機スタブロン900Nを用い現像処理した。現像液は、仕込み液、補充液ともに富士写真フイルム(株)製DN−3Cの1:1水希釈液を用いた。現像欲浴の温度は30℃とした。また、フィニッシャーは、富士写真フイルム(株)製FN−6の1:1水希釈液を用いた。
【0232】
〔耐刷性、汚れ性および保存安定性の評価〕
得られた平版印刷版原版を、それぞれ60℃で3日間保存、及び、50℃、湿度80%RHで3日間保存して強制経時させた後、前記実施例1〜4及び比較例1と同様にして印刷を行い、耐刷性、汚れ性および保存安定性を評価した。結果を前記表6に併記する。
以上表6に明らかなように、本発明に係る特定ラジカル開始剤を用いた実施例8〜10の平版印刷版は、本発明の範囲外のラジカル開始剤を用いた比較例4、5に比べ、非画像部の汚れがなく、耐刷性に優れ、また、高温高湿環境下で保存した後も、耐刷性、非画像部の汚れ性が低下せず、保存安定性に優れていることがわかった。
【0233】
〔実施例11〜13、比較例6、7〕
前記実施例1〜4及び比較例1で用いたのと同様のアルミニウム支持体上に、下記記録層塗布液4を調製し、上記アルミニウム支持体にワイヤーバーを用いて塗布し、温風式乾燥装置にて115℃で45秒間乾燥して平版印刷版原版を得た。乾燥後の被覆量は1.2〜1.3g/m2の範囲内であった。
<記録層塗布液4>
・アルカリ可溶性高分子:(A)成分(表7に記載の化合物) 1.2g
・赤外線吸収剤「IR−2」:(B)成分 0.09g
・ラジカル開始剤:(C)成分(表7に記載の化合物) 0.85g
・ラジカル重合性化合物「R−3」:(D)成分 1.0g
・ビクトリアピュアブルーのナフタレンスルホン酸 0.04g
・フッ素系界面活性剤 0.01g
(メガファックF−176,大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン 9.0g
・メタノール 10.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.0g
【0234】
【表7】
【0235】
さらにポリビニルアルコール(ケン化度86.5〜89モル%、重合度1000)の3質量%の水溶液を乾燥塗布質量が2g/m2となるように塗布し、100℃で2分間乾燥させ、記録層上に保護層を形成してなる平版印刷版原版を得た。
得られた平版印刷版原版を、前記実施例5〜7と同様の条件で、露光、現像処理を行った。
【0236】
〔耐刷性、汚れ性および保存安定性の評価〕
得られた平版印刷版原版を、それぞれ60℃で3日間保存、及び、50℃、湿度80%RHで3日間保存して強制経時させた後、前記実施例1〜4及び比較例1と同様にして印刷を行い、耐刷性、汚れ性および保存安定性を評価した。結果を前記表7に併記する。
以上、表7に明らかなように記録層上に保護層を設けた場合においても、本発明に係る特定ラジカル開始剤を用いた実施例11〜13の平版印刷版は、本発明の範囲外のラジカル開始剤を用いた比較例6、7に比べ、非画像部の汚れがなく、耐刷性に優れ、また、高温高湿環境下で保存した後も、耐刷性、非画像部の汚れ性が低下せず、保存安定性に優れていることがわかった。
【0237】
【発明の効果】
本発明によれば、コンピューター等のデジタルデータから直接記録可能であり、平版印刷版原版の記録層として用いた場合、アブレーションを起こすことなく、耐刷性と保存安定性に優れ、非画像部に汚れのない高画質な画像を形成しうるネガ型の画像記録材料を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像記録材料に関し、特にコンピュータ等のデジタル信号から赤外線レーザを用いて直接製版できる、いわゆるダイレクト製版可能な平版印刷版原版として使用できるネガ型画像記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年におけるレーザーの発展は目ざましく、特に、近赤外線から赤外線領域に発光領域を持つ個体レーザーや半導体レーザーでは、高出力・小型化が進んでいる。したがって、コンピュータ等のディジタルデータから直接製版する際の露光光源として、これらのレーザーは非常に有用である。
前述の赤外線領域に発光領域を持つ赤外線レーザーを露光光源として使用する、赤外線レーザ用ネガ型画像記録材料は、赤外線吸収剤と、光又は熱によりラジカルを発生するラジカル開始剤と、重合性化合物とを含む記録層を有する画像記録材料である。
【0003】
通常、このようなネガ型の画像記録材料は、光又は熱により発生したラジカルを開始剤として重合反応を生起させ、露光部の記録層を硬化させて画像部を形成する記録方式を利用している。このようなネガ型の画像記録材料は、赤外線レーザ照射のエネルギーにより記録層の可溶化を起こさせるポジ型に比較して画像形成性が低く、重合による硬化反応を促進させて強固な画像部を形成するため、現像工程前に加熱処理を行うのが一般的である。
このような光又は熱による重合系の記録層を有する印刷版としては、特開平8−108621号、特開平9−34110号の各公報に記載されるような光重合性或いは熱重合性組成物を記録層として用いる技術が知られている。これらの記録層は高感度画像形成性に優れているものの、支持体として、親水化処理された基板を用いた場合、記録層と支持体との界面における密着性が低く、耐刷性に劣るという問題があった。
【0004】
また、感度を向上させるため、高出力の赤外線レーザを用いることも検討されているが、レーザー走査時に記録層のアブレーションが発生し光学系を汚染するといった問題が生じる。そのほか、特開2000−98603公報に、高い光重合開始能を有する開始剤としてボレート化合物を用いる態様が記載されているものの、白灯下での取扱いや長期保存した場合に、光によって所望されない硬化反応が進行したり、空気中の水分に起因する組成物の層分離等、保存安定性に劣るといった懸念があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の技術の欠点を考慮してなされた本発明の目的は、記録時のレーザ走査におけるアブレーションが抑制され、非画像部に汚れのない高画質な画像形成が可能で、保存安定性及び耐刷性に優れた平版印刷版を形成しうるネガ型の画像記録材料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の置換基を側鎖に有する水またはアルカリ性水溶液に可溶或いは膨潤する高分子化合物と、電荷的に中性な光または熱によりラジカルを生成する化合物とを併用することにより、上記目的が達成されることを見出し本発明を完成した。
即ち、本発明の画像記録材料は、
(A)下記一般式(1)で表される置換基を側鎖に有し、水又はアルカリ性水溶液に可溶或いは膨潤する高分子化合物と、
(B)光熱変換剤と、
(C)電荷的に中性であり、光または熱によりラジカルを生成する化合物と、
を含有することを特徴とする。
【0007】
【化2】
【0008】
(式中、R1は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。R2、R3は、それぞれ独立に水素原子又は1価の置換基を表す。Xは、酸素原子、硫黄原子、または、−NR4−を表す。R4は水素原子又は1価の置換基を表す。)
【0009】
また、本発明の画像記録材料は、光または熱などのエネルギー付与により画像形成が可能であるが、中でも後述するヒートモード露光によりエネルギーを付与することが好ましい態様である。
【0010】
本発明の画像記録材料においては、バインダーの機能を果たす高分子化合物として、一般式(1)で表される置換基を側鎖に含むものを用いている。以下、明確ではないが、その効果について説明する。特に、このバインダーを用いた画像記録材料を平版印刷版原版の記録層に使用した場合における効果について説明する。
一般式(1)で表される側鎖置換基は、ラジカル反応性の高い官能基を有するものであるため、赤外線レーザ走査露光によりラジカル開始剤からラジカルが発生した後に速やかに高分子バインダー間で架橋反応を起こし、架橋密度の高い強固な硬化膜が形成される。したがって、このような構造単位を平版印刷版原版の記録層組成中に含有することで強固な画像が形成され、耐刷性に優れるだけでなく、硬化膜形成すなわち現像液や有機溶剤に対する不溶化が非常に速く起こり、記録層の他の低分子成分、例えば、光熱変換剤などがアブレーションを起こし、記録層から放出されることが抑制され、光学系の汚染が抑制されるという効果を奏するものと考えられる。
【0011】
一方、ラジカル開始剤として電荷的に中性である化合物、すなわち、分子間あるいは分子内で正−負のイオン対を形成しない化合物を用いることで、例えばボレート塩化合物のようなイオン性のラジカル開始剤を使用した場合と比較して、高湿度条件下での保存安定性に優れる。これは、イオン性の化合物が組成物中に存在しないことから、水分の吸収が抑制され、且つ、併用される特定構造を有するアルカリ可溶性高分子化合物との相溶性にも優れることから、主として組成物の水分の吸収に起因する経時的な相分離の発生や感度変動が抑制されるためであると考えられる。
【0012】
また、通常ラジカル重合を利用した硬化膜形成において、多くの場合、充分な強度の硬化膜を得るために、外部酸素によるラジカル重合阻害を抑制し、充分に反応を進行させる目的で記録層の上層に酸素遮断層(保護層)を設けるが、本発明のバインダーを用いた場合、酸素による重合阻害の影響を実質ほとんど受けない。そのため、酸素遮断層を設ける必要がなくなるというメリットを有する。
【0013】
なお、本発明において「ヒートモード対応」とは、ヒートモード露光による記録が可能であることを意味する。以下、本発明におけるヒートモード露光の定義について詳述する。Hans−Joachim Timpe,IS&Ts NIP 15:1999 International Conference on Digital Printing Technologies.P.209に記載されているように、感光体材料において光吸収物質(例えば色素)を光励起させ、化学的或いは物理的変化を経て、画像を形成するその光吸収物質の光励起から化学的或いは物理的変化までのプロセスには大きく分けて二つのモードが存在することが知られている。1つは光励起された光吸収物質が感光材料中の他の反応物質と何らかの光化学的相互作用(例えば、エネルギー移動、電子移動)をすることで失活し、その結果として活性化した反応物質が上述の画像形成に必要な化学的或いは物理変化を引き起こすいわゆるフォトンモードであり、もう1つは光励起された光吸収物質が熱を発生し失活し、その熱を利用して反応物質が上述の画像形成に必要な化学的或いは物理変化を引き起こすいわゆるヒートモードである。その他、物質が局所的に集まった光のエネルギーにより爆発的に飛び散るアブレーションや1分子が多数の光子を一度に吸収する多光子吸収など特殊なモードもあるがここでは省略する。
【0014】
上述の各モードを利用した露光プロセスをフォトンモード露光及びヒートモード露光と呼ぶ。フォトンモード露光とヒートモード露光の技術的な違いは目的とする反応のエネルギー量に対し露光する数個の光子のエネルギー量を加算して使用できるかどうかである。例えばn個の光子を用いて、ある反応を起こすことを考える。フォトンモード露光では光化学的相互作用を利用しているため、量子のエネルギー及び運動量保存則の要請により1光子のエネルギーを足し併せて使用することができない。つまり、何らかの反応を起こすためには「1光子のエネルギー量≧反応のエネルギー量」の関係が必要である。一方、ヒートモード露光では光励起後に熱を発生し、光エネルギーを熱に変換し利用するためエネルギー量の足し併せが可能となる。そのため、「n個の光子のエネルギー量≧反応のエネルギー量」の関係があれが十分となる。但し、このエネルギー量加算には熱拡散による制約を受ける。即ち、今注目している露光部分(反応点)から熱拡散により熱が逃げるまでに次の光励起−失活過程が起こり熱が発生すれば、熱は確実に蓄積加算し、その部分の温度上昇につながる。しかし、次の熱の発生が遅い場合には熱が逃げて蓄積されない。つまり、ヒートモード露光では同じ全露光エネルギー量であっても高エネルギー量の光を短い時間照射した場合と低エネルギー量の光を長い時間照射した場合とでは結果が異なり、短時間の方が熱の蓄積に有利になる。
【0015】
無論、フォトンモード露光では後続反応種の拡散の影響で似た様な現象が起こる場合もあるが基本的には、このようなことは起こらない。
即ち、感光材料の特性として見た場合、フォトンモードでは露光パワー密度(W/cm2)(=単位時間当たりのエネルギー密度)に対し感光材料の固有感度(画像形成に必要な反応のためのエネルギー量)は一定となるが、ヒートモードでは露光パワー密度に対し感光材料の固有感度が上昇することになる。従って、実際に画像記録材料として実用上、必要な生産性を維持できる程度の露光時間を固定すると、各モードを比較した場合、フォトンモード露光では通常は約0.1mJ/cm2程度の高感度化が達成できるもののどんな少ない露光量でも反応が起こるため、未露光部での低露光カブリの問題が生じ易い。これに対し、ヒートモード露光ではある一定以上の露光量でないと反応が起こらず、また感光材料の熱安定性との関係から通常は50mJ/cm2程度が必要となるが、低露光カブリの問題が回避される。
【0016】
そして、事実上ヒートモード露光では感光材料の版面での露光パワー密度が5000W/cm2以上必要であり、好ましくは10000W/cm2以上必要となる。但し、ここでは詳しく述べなかったが5.0×105W/cm2以上の高パワー密度レーザを利用するとアブレーションが起こり、光源を汚す等の問題から好ましくない。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の画像記録材料について詳細に説明する。
本発明の画像記録材料は、(A)一般式(1)で表される置換基を側鎖に有し、水又はアルカリ性水溶液に可溶或いは膨潤する高分子化合物(以下、適宜「特定アルカリ可溶性高分子」と称する)と、(B)光熱変換剤と、(C)電荷的に中性であり、光または熱によりラジカルを生成する化合物と、を含有することを特徴とする。さらに、このような画像記録材料は、(D)ラジカル重合性化合物を含有することができる。
以下に、本発明の画像記録材料に使用しうる各化合物について順次説明する。
【0018】
〔(A)一般式(1)で表される置換基を側鎖に有し、水又はアルカリ性水溶液に可溶或いは膨潤する高分子化合物〕
本発明の画像記録材料にバインダー成分として使用する高分子化合物は、下記一般式(1)で表される置換基を側鎖に有し、水又はアルカリ水溶液に可溶であるか、或いは、水又はアルカリ水溶液に膨潤する高分子化合物である。
なお、本発明において、水又はアルカリ水溶液に可溶とは、特定アルカリ可溶性高分子が、pH7以上の水またはアルカリ水溶液を加えたときに溶解することを指し、膨潤するとは、特定アルカリ可溶性高分子が、pH7以上の水またはアルカリ水溶液に加えたときに膨潤することを指す。
【0019】
【化3】
【0020】
式中、R1は水素原子または置換基を有してもよいアルキル基を表す。R2、R3は、それぞれ独立に水素原子または1価の置換基を表す。Xは、酸素原子、硫黄原子、または、−NR4−を表す。R4は水素原子または1価の置換基を表す。R1としては、水素原子、メチル基、エチル基、ブチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基などが挙げられ、中でもメチル基が、反応性と保存安定性のバランスおよび、後述する電荷的に中性であるラジカル開始剤との相溶性が良好なことから好ましい。
R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基などから選択される1価の置換基を表す。これらのなかでも、水素原子、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アリール基が好ましい。
なお、前記アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルホニル基、及び、アリールスルホニル基はさらに置換基を有していてもよく、これら1価の置換基にさらに導入しうる置換基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロピオキシカルボニル基、メチル基、エチル基、フェニル基等が挙げられる。
Xは、酸素原子、硫黄原子、又は、−N(R4)−を表し、ここで、R4としては、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられる。Xが酸素原子であるものが好ましい。
【0021】
一般式(1)の側鎖基は、下記一般式(2)で表される構造単位で導入されていることが好ましい。
【0022】
【化4】
【0023】
一般式(2)において、R5〜R7はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表すが、具体的には水素原子、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、R5、R6は水素原子が好ましく、R7は水素原子、メチル基が好ましい。
Aは、酸素原子、硫黄原子、又は、−N(R8)を表し、ここで、R8としては、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられる。
nは、1〜10の整数を表す。
Gは、有機連結基を表す。好ましくは、数1〜20の置換基を有してもよいアルキル基、炭素数3〜20の置換基を有してもよいシクロアルキル基、炭素数6〜20の置換基を有してもよい芳香族基などが挙げられ、なかでも、置換基を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状あるいは分岐アルキル基、炭素数3〜10の置換基を有してもよいシクロアルキル基、炭素数6〜12の置換基を有してもよい芳香族基が強度、現像性等の性能上、好ましい。
【0024】
(特定アルカリ可溶性高分子の合成)
本発明のネガ型画像記録材料に必須成分として使用される(A)特定アルカリ可溶性高分子は、下記に示す合成方法1)または2)の少なくとも1つにより製造することができる。
【0025】
合成方法1)
下記一般式(3)または(4)で表されるラジカル重合性化合物1種以上と、必要に応じて下記一般式(3)、(4)で表される構造単位を有さない他のラジカル重合性化合物を1種以上と、を通常のラジカル重合法によって共重合させ、所望の高分子化合物の前駆体を合成した後に、塩基を用いて、プロトンを引き抜きL1またはL2を脱離させ、前記一般式(1)で表される構造を有する所望の高分子化合物を得る方法。
このとき、高分子化合物前駆体の製造には、一般に公知の懸濁重合法あるいは溶液重合法などを適用することができる。その共重合体の構成としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体等のいずれであってもよい。
【0026】
【化5】
【0027】
式中、R1〜R3およびXは一般式(1)と同義であり、また、R5〜R7、A、およびGは一般式(2)と同義である。
L1、L2は、アニオン性脱離基を表す。そのようなアニオン性脱離基としては、ハロゲン原子、スルホン酸基、スルフィン酸基、カルボン酸基、シアノ基、アンモニウム基、アジド基、スルホニウム基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、フェノキシ基、チオアルコキシ基、オキソニウム基等が挙げられ、中でも、ハロゲン原子、スルホン酸基、アンモニウム基、スルホニウム基が特に好ましい。具体的には、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキルスルホン酸基、アリールスルホン酸基等が挙げられる。
【0028】
好ましいアルキルスルホン酸基の具体例としては、メタンスルホン酸基、エタンスルホン酸基、1−プロパンスルホン酸基、イソプロピルスルホン酸基、1−ブタンスルホン酸基、1−オクチルスルホン酸基、1−ヘキサデカンスルホン酸基、トリフルオロメタンスルホン酸基、トリクロロメタンスルホン酸基、2−クロロ−1−エタンスルホン酸基、2,2,2−トリフルオロエタンスルホン酸基、3−クロロプロパンスルホン酸基、パーフルオロ−1−ブタンスルホン酸基、パーフルオロ−1−オクタンスルホン酸基、10−カンファースルホン酸基、ベンジルスルホン酸基が挙げられる。
【0029】
好ましいアリールスルホン酸基の例としては、ベンゼンスルホン酸基、トランス−ベータ−スチレンスルホン酸基、2−ニトロベンゼンスルホン酸基、2−アセチルベンゼンスルホン酸基、3−(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホン酸基、3−ニトロベンゼンスルホン酸基、4−ニトロベンゼンスルホン酸基、p−トルエンスルホン酸基、4−tert−ブチルベンゼンスルホン酸基、4−フルオロベンゼンスルホン酸基、4−クロロベンゼンスルホン酸基、4−ブロモベンゼンスルホン酸基、4−ヨードベンゼンスルホン酸基、4−メトキシベンゼンスルホン酸基、4−(トリフルオロメトキシ)ベンゼンスルホン酸基、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸基、2−ニトロ−4−(トリフルオロメチル)−ベンゼンスルホン酸基、4−クロロ−3−ニトロベンゼンスルホン酸基、2,4−ジニトロベンゼンスルホン酸基、2−メシチレンスルホン酸基、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホン酸基、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸基、1−ナフタレンスルホン酸基、2−ナフタレンスルホン酸基が挙げられる。
【0030】
<脱離反応を生起させるために用いる塩基>
脱離反応を生起させるために用いる塩基としては、アルカリ金属類の水素化物、水酸化物または炭酸塩、有機アミン化合物、金属アルコキシド化合物が好ましい例として挙げられる。
【0031】
アルカリ金属類の水素化物、水酸化物または、炭酸塩の好ましい例としては、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。
【0032】
有機アミン化合物の好ましい例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、N−エチルジシクロヘキシルアミン、ピロリジン、1−メチルピロリジン、2,5−ジメチルピロリジン、ピペリジン、1−メチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]−オクタン、ヘキサメチレンテトラミン、モルホリン、4−メチルモルホリン、ピリジン、ピコリン、4−ジメチルアミノピリジン、ルチジン、1、8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン(DBU)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルエチルアミン、Schiff塩基などが挙げられる。
【0033】
金属アルコキシド化合物の好ましい例としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシドなどが挙げられる。これらの塩基は、1種あるいは2種以上の混合であってもよい。
【0034】
使用される塩基の量は、化合物中の特定官能基の量に対して、当量以下であってもよく、また当量以上であってもよい。
また、過剰の塩基を使用した場合、脱離反応後、余剰の塩基を除去する目的で酸などを添加することも好ましい形態である。酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸、過塩素酸のような無機酸、酢酸、フルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸のような有機酸が例としてあげられる。
脱離反応における、温度条件は、室温、冷却、過熱いずれの条件であってもよい。好ましい温度条件としては、−20〜100℃の範囲である。
【0035】
本発明における脱離反応において、塩基を添加する際に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、水などが挙げられる。これらの溶媒は単独あるいは2種以上混合してもよい。
【0036】
<熱重合禁止剤>
本発明に係る(A)特定アルカリ可溶性高分子の合成方法1)では、生成されるラジカル反応性基の熱的ラジカル反応を抑制する目的で、熱重合禁止剤を添加することも好ましい態様である。適当な熱重合禁止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−(TEMPO)、4−ヒドロキシ−TEMPO−フリーラジカル、3,3,5,5−テトラメチル−1−ピロリン−N−オキシド、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、3−(アミノメチル)−プロキシル−フリーラジカル、3−カルボキシ−プロキシル−フリーラジカル、4−アミノ−TEMPO−フリーラジカル、4−カルボキシ−TEMPO−フリーラジカル、チオ硫酸塩化合物、フェロセン化合物、チオール化合物、スルフィド化合物、ジスルフィド化合物、ボレート塩化合物等が挙げられる。
熱重合禁止剤は、反応系中に10ppm〜10質量%添加するのが一般的である。
【0037】
上記一般式(3)で表されるラジカル重合性化合物としては、下記の化合物(M−1)〜(M−12)を例として挙げることできるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
【化6】
【0039】
【化7】
【0040】
上記一般式(4)で表されるラジカル重合性化合物としては、下記の化合物(M−13)〜(M−61)を例としてあげることできるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
【化8】
【0042】
【化9】
【0043】
【化10】
【0044】
【化11】
【0045】
【化12】
【0046】
合成方法2)
以下に詳述するような特定の官能基を有するラジカル重合性化合物1種以上と、必要に応じて該特定の官能基を有さない他のラジカル重合性化合物を1種以上と、を通常のラジカル重合法によって共重合し、幹高分子化合物を合成した後に、側鎖の該官能基と、下記一般式(5)で表される構造を有する低分子化合物と、を反応させ、前記一般式(1)で表される置換基を側鎖に有する、所望の(A)特定アルカリ可溶性高分子を得る方法。
幹高分子化合物の製造には、一般的に公知の懸濁重合法あるいは溶液重合法などを適用することができる。その共重合体の構成としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体等のいずれであってもよい。
【0047】
【化13】
【0048】
一般式(5)中、R1〜R3は、前記一般式(1)で挙げたものと同様のものを用いることができる。
一般式(5)で表される構造を有する低分子化合物の例としては、2−ヒドロキシルエチルアクリレート、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、N,N−ジメチル−2−アミノエチルメタクリレート、2−クロロエチルメタクリレート、2−イソシアン酸エチルメタクリレート、3−イソシアン酸プロピルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、2−ブロモエチルメタクリレート、3−ブロモプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、4−ヒドロキシブチルメタクリルアミド、イタコン酸等が挙げられる。
【0049】
また、上記特定の官能基の例としては、水酸基、カルボキシル基、カルボン酸ハライド基、カルボン酸無水物基、アミノ基、ハロゲン化アルキル基、イソシアネート基、エポキシ基等が挙げられ、これら官能基を有するラジカル重合性化合物の例としては、2−ヒドロキシルエチルアクリレート、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、N,N−ジメチル−2−アミノエチルメタクリレート、2−クロロエチルメタクリレート、2−イソシアン酸エチルメタクリレート、3−イソシアン酸プロピルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、2−ブロモエチルメタクリレート、3−ブロモプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、4−ヒドロキシブチルメタクリルアミド、イタコン酸等が挙げられる。
【0050】
上記合成方法1)および2)で用いられる特定の官能基を有さない他のラジカル重合性化合物の例としては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、N,N−2置換アクリルアミド類、N,N−2置換メタクリルアミド類、スチレン類、アクリロニトリル類、メタクリロニトリル類などから選ばれるラジカル重合性化合物が挙げられる。
具体的には、例えば、アルキルアクリレート(該アルキル基の炭素原子数は1〜20のものが好ましい)等のアクリル酸エステル類、(具体的には、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸エチルへキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−t−オクチル、クロルエチルアクリレート、2,2−ジメチルヒドロキシプロピルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、グリシジルアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートなど)、アリールアクリレート(例えば、フェニルアクリレートなど)、
【0051】
アルキルメタクリレート(該アルキル基の炭素原子は1〜20のものが好ましい)等のメタクリル酸エステル類(例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、クロルベンジルメタクリレート、オクチルメタクリレー卜、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、グリシジルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレートなど)、アリールメタクリレート(例えば、フェニルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレートなど)、
【0052】
スチレン、アルキルスチレン等のスチレン類、(例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロへキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロルメチルスチレン、トリフルオルメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレンなど)、アルコキシスチレン(例えばメトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルスチレン、ジメトキシスチレンなど)、ハロゲンスチレン(例えばクロルスチレン、ジクロルスチレン、トリクロルスチレン、テトラクロルスチレン、ペンタクロルスチレン、ブロムスチレン、ジブロムスチレン、ヨードスチレン、フルオルスチレン、トリフルオルスチレン、2−ブロム−4−トリフルオルメチルスチレン、4−フルオル−3−トリフルオルメチルスチレンなど)、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
これらを1種あるいは2種以上用いることができる。
【0053】
これら製造方法(合成方法)は、いずれかひとつを行うか、または、それぞれ組み合わせて特定アルカリ可溶性高分子を得てもよい。
このような特定アルカリ可溶性高分子中の一般式(1)で表される置換基を側鎖に有する構造単位の含有量は、0.1モル%以上であることを要し、より好ましい範囲は、30〜80モル%である。この範囲において硬化性と耐刷性が良好となる傾向にある。
【0054】
<酸基を有するラジカル重合性化合物>
本発明に係る特定アルカリ可溶性高分子化合物には、非画像部除去性などの諸性能を向上させるために、酸基を有するラジカル重合性化合物を共重合させることが好ましい。このようなラジカル重合性が有する酸基としては、例えば、カルボン酸、スルホン酸、リン酸基などがあり、特に好ましいものは、カルボン酸である。カルボン酸を含有するラジカル重合性化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、インクロトン酸、マレイン酸、p−カルボキシルスチレンなどがあり、特に好ましいものは、アクリル酸、メタクリル酸、p−カルボキシルスチレンである。
これらを1種あるいは1種以上用いることができ、これら共重合成分の好適に使用される含有量は、0〜50モル%であり、特に好ましくは、アルカリ水現像による画像強度ダメージ抑制という観点から、0〜30モル%である。30モル%を越えるとアルカリ水現像による画像強度ダメージを受けやすくなる。
【0055】
このような高分子化合物を合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどが挙げられる。
これらの溶媒は単独あるいは2種以上混合してもよい。
【0056】
本発明の(A)特定アルカリ可溶性高分子は、重量平均分子量で、好ましくは40,000以上であり、さらに好ましくは、7万〜18万の範囲である。4万を下回ると硬化膜強度が不足し、18万を越えると現像性が低下する。
また、本発明に係る(A)特定アルカリ可溶性高分子中には、未反応の単量体を含んでいてもよい。この場合、単量体の高分子化合物中に占める割合は、15質量%以下が望ましい。
【0057】
本発明に係る特定アルカリ可溶性高分子は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。また、一般式(1)で表される置換基を側鎖に有する構造単位を有しない他の高分子化合物を混合して用いてもよい。この場合、他の高分子化合物は、高分子化合物中で50質量%以下で、更に好ましくは10質量%以下である。
【0058】
本発明の画像記録材料中に含まれる(A)特定アルカリ可溶性高分子の含有量は固形分で約5〜95質量%であり、好ましくは、約40〜90質量%である。含有量が少なすぎる場合には、記録層の強度が不足し、耐刷性が低下する傾向があり、多すぎると画像形成性に影響を与え、画質が低下する可能性があり、いずれ好ましくない。
【0059】
以下に、本発明に係る(A)特定アルカリ可溶性高分子の代表的な合成例と具体的な高分子化合物を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(合成例)
<高分子化合物1の合成>
1000ml三口フラスコにN,N−ジメチルアセトアミド109gを入れ、窒素気流下、70℃まで加熱した。化合物(M−13)69.8g、メタクリル酸メチル15.0g、メタクリル酸8.6g、V−601(和光純薬製)0.90gのN,N−ジメチルアセトアミド109g溶液を、2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃まで加熱し、更に2時間撹拌した。次に、N,N−ジメチルアセトアミド109gで希釈した後に、p−メトキシフェノール0.1gを入れ、氷水を入れた氷浴にて冷却した。混合液温度が5℃以下になった後に、1、8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセン(DBU)106.5gを滴下ロート用いて、2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに6時間撹拌した。反応液を濃塩酸75mlを溶解させた水3Lに投入し高分子化合物1を析出させた。析出した高分子化合物を濾取、水で洗浄、乾燥し高分子化合物を82g得た。得られた高分子化合物の1H−NMRを測定したところ、化合物(M−13)由来の側鎖基の100%がエチレンメタクリレート基に変換されたことが確認された。また、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、重量平均分子量を測定した結果、102,000であった。さらに、滴定により酸価を求めたところ、1.34meq/g(計算値1.37meq/g)であった。
【0060】
(合成例2〜10)
合成例1と同様にして仕込みモノマー種、組成比を変えて、以下に示す高分子化合物2〜10を合成した。これらの重合体の重量平均分子量を、合成例1と同じ方法で測定した。
上記合成例1〜10により得られた高分子化合物1〜10の各構成単位および重合モル比、さらに測定した重量平均分子量(Mw)を以下の表に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
〔(B)光熱変換剤〕
本発明の画像記録材料は、ヒートモード露光、代表的には、赤外線を発するレーザにより記録を行うことから、光熱変換剤を用いることが必須である。光熱変換剤は、所定の波長の光を吸収し、熱に変換する機能を有している。この際発生した熱により、後述する(C)成分、即ちこの(B)光熱変換剤が吸収し得る波長の光のヒートモード露光によりラジカルを生成する化合物が分解し、ラジカルを発生する。
【0064】
本発明において使用される光熱変換剤としては、記録に使用する光エネルギー照射線を吸収し、熱を発生する物質であれば特に吸収波長域の制限はなく用いることができる。本発明において使用される好ましい光熱変換剤は、入手容易な高出力レーザーへの適合性の観点から波長760nm〜1200nmに吸収極大を有する赤外線吸収性染料又は顔料である。
【0065】
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体、オキソノール染料、ジイモニウム染料、アミニウム染料、クロコニウム染料等の染料が挙げられる。
【0066】
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクアリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0067】
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。
【0068】
また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
【0069】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、フタロシアニン染料、オキソノール染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、チオピリリウム染料、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。さらに、下記一般式(a)〜一般式(e)で示される染料が光熱変換効率に優れるため好ましく、特に下記一般式(a)で示されるシアニン色素は、本発明の重合性組成中で使用した場合に、高い重合活性を与え、且つ、安定性、経済性に優れるため最も好ましい。
【0070】
【化14】
【0071】
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1または以下に示す基を表す。ここで、X2は酸素原子または、硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。
【0072】
【化15】
【0073】
R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層塗布液の保存安定性から、R1およびR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、さらに、R1とR2とは互いに結合し、5員環または6員環を形成していることが特に好ましい。
【0074】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環およびナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、硫黄原子または炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7およびR8は、それぞれ同じでも異なっていても良く、水素原子または炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za−は、対アニオンを示す。ただし、R1〜R8のいずれかにスルホ基が置換されている場合は、Za−は必要ない。好ましいZa−は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、およびアリールスルホン酸イオンである。
【0075】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、以下に例示するものの他、特願平11−310623号明細書の段落番号[0017]〜[0019]、特願2000−224031号明細書の段落番号[0012]〜[0038]、特願2000−211147号明細書の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものを挙げることができる。
【0076】
【化16】
【0077】
【化17】
【0078】
【化18】
【0079】
【化19】
【0080】
前記一般式(b)中、Lは共役炭素原子数7以上のメチン鎖を表し、該メチン鎖は置換基を有していてもよく、置換基が互いに結合して環構造を形成していてもよい。Zb+は対カチオンを示す。好ましい対カチオンとしては、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、アルカリ金属カチオン(Ni+、K+、Li+)などが挙げられる。R9〜R14及びR15〜R20は互いに独立に水素原子又はハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、又はアミノ基から選択される置換基、或いは、これらを2つ若しくは3つ組合せた置換基を表し、互いに結合して環構造を形成していてもよい。ここで、前記一般式(b)中、Lが共役炭素原子数7のメチン鎖を表すもの、及び、R9〜R14及びR15〜R20がすべて水素原子を表すものが入手の容易性と効果の観点から好ましい。
【0081】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(b)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0082】
【化20】
【0083】
【化21】
【0084】
前記一般式(c)中、Y3及びY4は、それぞれ、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、又はテルル原子を表す。Mは、共役炭素数5以上のメチン鎖を表す。R21〜R24及びR25〜R28は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、又はアミノ基を表す。また、式中Za−は対アニオンを表し、前記一般式(a)におけるZa−と同義である。
【0085】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(c)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0086】
【化22】
【0087】
【化23】
【0088】
前記一般式(d)中、R29ないしR31は各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を示す。R33およびR34は各々独立に、アルキル基、置換オキシ基、またはハロゲン原子を示す。nおよびmは各々独立に0ないし4の整数を示す。R29とR30、またはR31とR32はそれぞれ結合して環を形成してもよく、またR29および/またはR30はR33と、またR31および/またはR32はR34と結合して環を形成しても良く、さらに、R33或いはR34が複数存在する場合に、R33同士あるいはR34同士は互いに結合して環を形成してもよい。X2およびX3は各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基であり、X2およびX3の少なくとも一方は水素原子またはアルキル基を示す。Qは置換基を有していてもよいトリメチン基またはペンタメチン基であり、2価の有機基とともに環構造を形成してもよい。Zc−は対アニオンを示し、前記一般式(a)におけるZa−と同義である。
【0089】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(d)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0090】
【化24】
【0091】
【化25】
【0092】
前記一般式(e)中、R35〜R50はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、水酸基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、アミノ基、オニウム塩構造を示す。Mは2つの水素原子若しくは金属原子、ハロメタル基、オキシメタル基を示すが、そこに含まれる金属原子としては、周期律表のIA、IIA、IIIB、IVB族原子、第一、第二、第三周期の遷移金属、ランタノイド元素が挙げられ、中でも、銅、マグネシウム、鉄、亜鉛、コバルト、アルミニウム、チタン、バナジウムが好ましい。
【0093】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(e)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0094】
【化26】
【0095】
本発明において光熱変換剤として使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が挙げられる。
【0096】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0097】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0098】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。顔料の粒径が0.01μm未満のときは分散物の画像記録層塗布液中での安定性の点で好ましくなく、また、10μmを越えると画像記録層の均一性の点で好ましくない。
【0099】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0100】
本発明においては、これらの光熱変換剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用することもできるが、感度の観点から、一般式(a)で示される色素が最も好ましく、なかでも、ジアリールアミノ基を有するシアニン色素が最も好ましい。
【0101】
これらの光熱変換剤は、記録層組成物中に、全固形分の0.1〜20質量%添加されることが好ましい。この範囲より少なすぎる場合には露光による特性変化の感度が低くなり、感光性が充分に得られない傾向があり、多すぎる場合には膜の均一性や強度が低下する傾向にあるため、いずれも好ましくない。
これらの光熱変換剤は、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよいが、ネガ型画像形成材料を作成した際に、記録層の波長760nm〜1200nmの範囲における吸収極大での光学濃度が、0.1〜3.0の間にあることが好ましい。この範囲をはずれた場合、感度が低くなる傾向がある。光学濃度は前記光熱変換剤の添加量と記録層の厚みとにより決定されるため、所定の光学濃度は両者の条件を制御することにより得られる。記録層の光学濃度は常法により測定することができる。測定方法としては、例えば、透明、或いは白色の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版として必要な範囲において適宜決定された厚みの記録層を形成し、透過型の光学濃度計で測定する方法、アルミニウム等の反射性の支持体上に記録層を形成し、反射濃度を測定する方法等が挙げられる。
【0102】
〔(C)電荷的に中性であり、光または熱によりラジカルを生成する化合物〕
電荷的に中性であり、光または熱によりラジカルを生成する化合物(以下、適宜、特定ラジカル開始剤と称する)は、前記(B)光熱変換剤と組み合わせて用い、光熱変換剤が吸収し得る波長の光、例えば、赤外線レーザを照射した際にその光又は熱或いはその双方のエネルギーによりラジカルを発生し、(A)特定アルカリ可溶性高分子、及び、所望により併用される後述の(D)重合性の不飽和基を有するラジカル重合性化合物の重合を開始、促進させる化合物を指す。
【0103】
本発明に係る特定ラジカル開始剤としては、電荷的に中性で、分子間あるいは分子内で正−負のイオン対を形成しないものであれば特に制限はなく、公知の光重合開始剤、熱重合開始剤などを選択して使用することができる。中でも好ましい特定ラジカル開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)有機過酸化物、(c)チオ化合物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケトオキシムエステル化合物、(f)メタロセン化合物、(g)活性エステル化合物、(h)炭素ハロゲン結合を有する化合物、(i)アゾ系化合物等が挙げられる。これらの中でも、化合物の極大吸収波長が400nm以下であることが好ましく、更に360nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、平版印刷版原版の取り扱いを白灯下で実施することができる。以下に、上記(a)〜(j)の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0104】
(a)芳香族ケトン類
本発明に用いられる特定ラジカル開始剤として好ましい(a)芳香族ケトン類としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」J.P.Fouassier,J.F.Rabek(1993),p77−117記載のベンゾフェノン骨格あるいはチオキサントン骨格を有する化合物が挙げられ、具体的には、以下に示すような化合物が挙げられる。
【0105】
【化27】
【0106】
【化28】
【0107】
b)有機過酸化物
本発明に用いられる特定ラジカル開始剤として好ましい(b)有機過酸化物としては、分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、その例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(ターシャリイブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(ターシャリイブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(ターシャリイブチルパーオキシ)ブタン、ターシャリイブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジターシャリイブチルパーオキサイド、ターシャリイブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(ターシャリイブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリイブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−キサノイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、メタ−トルオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ターシャリイブチルパーオキシアセテート、ターシャリイブチルパーオキシピバレート、ターシャリイブチルパーオキシネオデカノエート、ターシャリイブチルパーオキシオクタノエート、ターシャリイブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ターシャリイブチルパーオキシラウレート、ターシャリーカーボネート、3,3′4,4′−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等がある。
【0108】
中でも、3,3′4,4′−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましい。
【0109】
(c)チオ化合物
本発明で用いられる特定ラジカル開始剤として好ましい(c)チオ化合物としては、下記一般式(I)で示される構造を有する化合物が挙げられる。
【0110】
【化29】
(ここで、R1はアルキル基、アリール基または置換アリール基を示し、R2は水素原子またはアルキル基を示す。また、R1とR2は、互いに結合して酸素、硫黄および窒素原子から選ばれたヘテロ原子を含んでもよい5員ないし7員環を形成するのに必要な非金属原子群を示す。)
上記一般式(I)におけるアルキル基としては炭素原子数1〜4個のものが好ましい。またアリール基としてはフェニル、ナフチルのような炭素原子数6〜10個のものが好ましく、置換アリール基としては、上記のようなアリール基に塩素原子のようなハロゲン原子、メチル基のようなアルキル基、メトシキ基、エトキシ基のようなアルコキシ基で置換されたものが含まれる。R2は、好ましくは炭素原子数1〜4個のアルキル基である。一般式(I)で示されるチオ化合物の具体例としては、下記表に示すような化合物が挙げられる。
【0111】
【表3】
【0112】
(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物
本発明に用いられる特定ラジカル開始剤として好ましい(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、特公昭45−37377号、特公昭44−86516号記載のロフィンダイマー類、例えば2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(o,o′−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−メチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0113】
(e)ケトオキシムエステル化合物
本発明に用いられる特定ラジカル開始剤として好ましい(e)ケトオキシムエステル化合物としては、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0114】
(f)メタロセン化合物
本発明に用いられる特定ラジカル開始剤として好ましい(f)メタロセン化合物としては、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−41484号、特開平2−249号、特開平2−4705号記載のチタノセン化合物ならびに、特開平1−304453号、特開平1−152109号記載の鉄−アレーン錯体をあげることができる。
【0115】
上記チタノセン化合物の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウムビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(メチルスルホンアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチルビアロイル−アミノ)フェニル〕チタン、
【0116】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチル−(4−クロロベンゾイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ベンジル−2,2−ジメチルペンタノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(2−エチルヘキシル)−4−トリル−スルホニル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3−オキサヘプチル)ベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3,6−ジオキサデシル)ベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(トリフルオロメチルスルホニル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(トリフルオロアセチルアミノ)フェニル〕チタン、
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(2−クロロベンゾイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(4−クロロベンゾイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3,6−ジオキサデシル)−2,2−ジメチルペンタノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3,7−ジメチル−7−メトキシオクチル)ベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−シクロヘキシルベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、等を挙げることができる。
【0117】
(g)活性エステル化合物
本発明に用いられる特定ラジカル開始剤として好ましい(g)活性エステル化合物としては、特公昭62−6223記載のイミドスルホネート化合物、特公昭63−14340号、特開昭59−174831号記載の活性スルホネート類をあげることができる。
【0118】
(h)炭素ハロゲン結合を有する化合物
本発明に用いられる特定ラジカル開始剤として好ましい(g)炭素ハロゲン結合を有する化合物としては、下記一般式(II)から(VIII)のものを挙げることができる。
【0119】
【化30】
【0120】
(式中、Xはハロゲン原子を表し、Yは−CX3、−NH2、−NHR4、−NR4、−OR4を表わす。ここでR4はアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を表わす。またR3は−CX3、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、置換アルケニル基、を表わす。)
【0121】
【化31】
【0122】
(式中、R5は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基、置換アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシル基、ニトロ基又はシアノ基であり、Xはハロゲン原子であり、nは1〜3の整数である。)
【0123】
【化32】
【0124】
(式中、R6は、アリール基又は置換アリール基であり、R7は、以下に示す基又はハロゲンであり、Zは−C(=O)−、−C(=S)−又は−SO2−である。)
【0125】
【化33】
【0126】
(式中、R8、R9はアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基又は置換アリール基であり、R10は一般式(II)中のR3と同じであり、Xはハロゲン原子であり、mは1又は2である。)
【0127】
【化34】
【0128】
(式中、R11は置換されていてもよいアリール基又は複素環式基であり、R12は炭素原子1〜3個を有するトリハロアルキル基又はトリハロアルケニル基であり、pは1、2又は3である。)
【0129】
【化35】
【0130】
(式中、Lは水素原子又は式:CO−(R13)q(CX3)rの置換基であり、Qはイオウ、セレン又は酸素原子、ジアルキルメチレン基、アルケン−1,2−イレン基、1,2−フェニレン基又はN−R基であり、Mは置換又は非置換のアルキレン基又はアルケニレン基であるか、又は1,2−アリーレン基であり、R14はアルキル基、アラルキル基又はアルコキシアルキル基であり、R13は炭素環式又は複素環式の2価の芳香族基であり、Xは塩素、臭素またはヨウ素原子であり、q=0及びr=1であるか又はq=1及びr=1又は2で表わされる、トリハロゲノメチル基を有するカルボニルメチレン複素環式化合物である。)
【0131】
【化36】
【0132】
(式中、Xはハロゲン原子であり、tは1〜3の整数であり、sは1〜4の整数であり、R15は水素原子又はCH(3−t)Xt基であり、R16はs価の置換されていてもよい不飽和有機基である)で表わされる、4−ハロゲノ−5−(ハロゲノメチル−フェニル)−オキサゾール誘導体である。)
【0133】
【化37】
【0134】
(式中、Xはハロゲン原子であり、vは1〜3の整数であり、uは1〜4の整数であり、R17は水素原子又はCH(3−v)Xv基であり、R18はu価の置換されていてもよい不飽和有機基である。)で表わされる、2−(ハロゲノメチル−フェニル)−4−ハロゲノ−オキサゾール誘導体である。)
【0135】
このような炭素−ハロゲン結合を有する化合物の具体例としては、たとえば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、たとえば、2−フェニル4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−クロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(2′,4′−ジクロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−n−ノニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロルエチル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン等が挙げられる。その他、英国特許1388492号明細書記載の化合物、たとえば、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メチルスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4−アミノ−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等、特開昭53−133428号記載の化合物、たとえば、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−〔4−(2−エトキシエチル)−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4,7−ジメトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン)、2−(アセナフト−5−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン等、独国特許3337024号明細書記載の化合物、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
【0136】
【化38】
【0137】
また、F.C.Schaefer等によるJ.Org.Chem.29、1527(1964)記載の化合物、たとえば2−メチル−4,6−ビス(トリブロムメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロムメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロムメチル)−S−トリアジン、2−アミノ−4−メチル−6−トリブロムメチル−S−トリアジン、2−メトキシ−4−メチル−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等を挙げることができる。さらに特開昭62−58241号記載の、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
【0138】
【化39】
【0139】
更に特開平5−281728号記載の、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
【0140】
【化40】
【0141】
あるいはさらにM.P.Hutt、E.F.ElslagerおよびL.M.Herbel著「Journalof Heterocyclic chemistry」第7巻(No.3)、第511頁以降(1970年)に記載されている合成方法に準じて、当業者が容易に合成することができる次のような化合物群、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
【0142】
【化41】
【0143】
(i)アゾ系化合物
本発明に用いられる特定ラジカル開始剤として好ましい(i)アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスプロピオニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等を挙げることができる。
【0144】
これらの特定ラジカル開始剤は、記録層塗布液の全固形分に対し0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%の割合で記録層塗布液中に添加することができる。添加量が0.1質量%未満であると感度が低くなり、また50質量%を越えると印刷時非画像部に汚れが発生する。これらの特定ラジカル開始剤は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また、これらの特定ラジカル開始剤は他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
【0145】
〔(D)ラジカル重合性化合物〕
本発明の画像記録材料には、感度、画像形成性を向上させる目的で、ラジカル重合性化合物を併用することができる。ここで、併用可能なラジカル重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有するラジカル重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定なく用いる事ができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。
【0146】
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類があげられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。
【0147】
また、イソシアナート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類及びチオール類との付加反応物、さらに、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類及びチオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用する事も可能である。
【0148】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルであるラジカル重合性化合物の具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0149】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0150】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
【0151】
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
【0152】
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
【0153】
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0154】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926、特公昭51−47334、特開昭57−196231記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240、特開昭59−5241、特開平2−226149記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。
【0155】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0156】
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものをあげる事ができる。
【0157】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0158】
CH2=C(R1)COOCH2CH(R2)OH 一般式
【0159】
式中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。
【0160】
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。
【0161】
さらに、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有するラジカル重合性化合物類を用いても良い。
【0162】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートをあげることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号記載のビニルホスホン酸系化合物等もあげることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。さらに日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0163】
ラジカル重合性化合物は単独で用いても2種以上併用してもよい。これらのラジカル重合性化合物について、どの様な構造を用いるか、単独で使用するか併用するか、添加量はどうかといった、使用方法の詳細は、最終的な記録材料の性能設計にあわせて、任意に設定できる。
【0164】
画像記録材料中のラジカル重合性化合物の配合比に関しては、多い方が感度的に有利であるが、多すぎる場合には、好ましくない相分離が生じたり、画像記録層の粘着性による製造工程上の問題(例えば、記録層成分の転写、粘着に由来する製造不良)や、現像液からの析出が生じる等の問題を生じうる。これらの観点から、ラジカル重合性化合物の好ましい配合比は、多くの場合、組成物全成分に対して5〜80質量%、好ましくは20〜75質量%である。
【0165】
本発明において、前記(A)特定アルカリ可溶性高分子と、(D)ラジカル重合性化合物とを併用する場合、(A)成分と(D)成分の比率は、質量比で、1:0.05〜1:3の範囲で併用され、好ましくは1:0.1〜1:2の範囲、さらに好ましくは1:0.3〜1:1.5の範囲である。
【0166】
ラジカル重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面接着性等の観点から、適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、さらに場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施し得る。
【0167】
〔その他の成分〕
本発明の画像記録材料には、さらに必要に応じてこれら以外に種々の化合物を添加してもよい。例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、及び特開昭62−293247号に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料も好適に用いることができる。
【0168】
これらの着色剤は、画像形成後、画像部と非画像部の区別がつきやすいので、添加する方が好ましい。なお、添加量は、記録層塗布液全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合である。
【0169】
また、本発明においては、画像記録材料の調製中あるいは保存中においてラジカル重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。熱重合防止剤の添加量は、全組成物の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で記録層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.1質量%〜約10質量%が好ましい。
【0170】
また、本発明における画像記録材料は、主として平版印刷版原版の画像記録層を形成するために用いられるが、そのような画像記録層の現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号や特開平3−208514号に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号、特開平4−13149号に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
【0171】
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0172】
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名アモーゲンK、第一工業(株)製)等が挙げられる。
上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の記録層塗布液中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0173】
さらに、本発明に係る記録層塗布液中には、必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル等が用いられる。
【0174】
本発明の画像記録材料を使用して平版印刷版原版を製造するには、通常、画像記録材料の構成成分を塗布液に必要な各成分とともにを溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布すればよい。ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独又は混合して使用される。溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0175】
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の記録層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、平版印刷版原版についていえば一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、画像記録層の皮膜特性は低下する。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
【0176】
本発明に係る記録層塗布液には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば、特開昭62−170950号に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、全記録層の材料固形分中0.01〜1質量%、さらに好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0177】
本発明の画像記録材料は、主として、平版印刷版原版の記録層として使用される。前記平版印刷版原版は、少なくとも、支持体と、記録層とを有し、必要に応じて、更に保護層を有する。以下、前記平版印刷版原版の構成要素である支持体及び保護層について説明する。
【0178】
〔支持体〕
本発明の画像記録材料を用いて平版印刷版原版を形成する場合に使用される支持体としては、寸度的に安定な板状物であれば特に制限はなく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)等が挙げられる。これらは、樹脂フィルムや金属板などの単一成分のシートであっても、2以上の材料の積層体であってもよく、例えば、上記のごとき金属がラミネート、若しくは蒸着された紙やプラスチックフィルム、異種のプラスチックフィルム同志の積層シート等が含まれる。
【0179】
前記支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。
前記アルミニウム板の厚みは、およそ0.1〜0.6mm程度、好ましくは0.15〜0.4mm、特に好ましくは0.2〜0.3mmである。
【0180】
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。
アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
【0181】
このように粗面化されたアルミニウム板は、所望により、アルカリエッチング処理、中和処理を経て、表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理を施すことができる。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸或いはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0182】
陽極酸化の処理条件は、用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。
陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2以上が好適であるが、より好ましくは2.0〜6.0g/m2の範囲である。陽極酸化被膜が1.0g/m2未満であると耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。
尚、このような陽極酸化処理は平板印刷版の支持体の印刷に用いる面に施されるが、電気力線の裏回りにより、裏面にも0.01〜3g/m2の陽極酸化被膜が形成されるのが一般的である。
【0183】
支持体表面の親水化処理は、上記陽極酸化処理の後に施されるものであり、従来より知られている処理法が用いられる。このような親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号及び第3,902,734号公報に開示されているようなアルカリ金属珪酸塩(例えば、珪酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体が珪酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか、又は電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム及び米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号公報に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が用いられる。
これらの中で、本発明において特に好ましい親水化処理は珪酸塩処理である。珪酸塩処理について、以下に説明する。
【0184】
上述の如き処理を施したアルミニウム板の陽極酸化皮膜を、アルカリ金属珪酸塩が0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜10質量%であり、25℃でのpHが10〜13である水溶液に、例えば15〜80℃で0.5〜120秒浸漬する。アルカリ金属珪酸塩水溶液のpHが10より低いと液はゲル化し13.0より高いと酸化皮膜が溶解されてしまう。本発明に用いられるアルカリ金属珪酸塩としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムなどが使用される。アルカリ金属珪酸塩水溶液のpHを高くするために使用される水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがある。なお、上記の処理液にアルカリ土類金属塩もしくは第IVB族金属塩を配合してもよい。アルカリ土類金属塩としては、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウムのような硝酸塩や、硫酸塩、塩酸塩、燐酸塩、酢酸塩、蓚酸塩、ホウ酸塩などの水溶性の塩が挙げられる。第IVB族金属塩として、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、蓚酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムなどを挙げることができる。アルカリ土類金属塩もしくは、第IVB族金属塩は単独又は2以上組み合わせて使用することができる。これらの金属塩の好ましい範囲は0.01〜10質量%であり、更に好ましい範囲は0.05〜5.0質量%である。
珪酸塩処理により、アルミニウム板表面上の親水性が一層改善されるため、印刷の際、インクが非画像部に付着しにくくなり、汚れ性能が向上する。
【0185】
支持体の裏面には、必要に応じてバックコートが設けられる。かかるバックコートとしては、特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物及び特開平6−35174号公報記載の有機又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。
これらの被覆層のうち、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4、Si(OC3H7)4、Si(OC4H9)4などの珪素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから与られる金属酸化物の被覆層が耐現像性に優れており特に好ましい。
【0186】
〔保護層〕
本発明の画像記録材料を平版印刷版原版に用いる場合は、通常、露光を大気中で行うため、光重合性組成物を含む画像記録層の上に、さらに、保護層を設ける事が好ましく、この様な保護層に望まれる特性としては、酸素等の低分子化合物の透過性が低く、露光に用いる光の透過性が良好で、記録層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることであり、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸などのような比較的結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることが一般的である。
【0187】
〔平版印刷版原版による印刷〕
上述された支持体表面に、本発明の画像記録材料を記録層として作製した平版印刷版原版は、赤外線レーザで記録することができる。また、紫外線ランプやサーマルヘッドによる熱的な記録も可能である。本発明においては、波長760nmから1200nmの赤外線を放射する固体レーザ及び半導体レーザにより画像露光されることが好ましい。
【0188】
赤外線レーザにより露光した後、本発明の画像記録材料は、好ましくは、水又はアルカリ性水溶液にて現像される。
【0189】
現像液として、アルカリ性水溶液を用いる場合、本発明の画像記録材料の現像液及び補充液としては、従来公知のアルカリ性水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウム等の無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等の有機アルカリ剤も用いられる。
これらのアルカリ剤は単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0190】
さらに、自動現像機を用いて現像する場合には、現像液と同じもの又は、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換することなく、多量の平版印刷版原版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。
【0191】
現像液及び補充液には現像性の促進や抑制、現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤等を添加できる。好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤が挙げられる。好ましい有機溶剤としてはベンジルアルコール等が挙げられる。また、ポリエチレングリコール若しくはその誘導体、又はポリプロピレングリコール若しくはその誘導体等の添加も好ましい。また、アラビット、ソルビット、マンニット等の非還元糖を添加することもできる。
【0192】
さらに、現像液及び補充液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸又は亜硫酸水素酸のナトリウム塩及びカリウム塩等の無機塩系還元剤、さらに有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
【0193】
以上記述した現像液及び補充液を用いて現像処理された印刷版は、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の画像記録材料を印刷用版材として使用する場合の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0194】
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化及び標準化のため、印刷用版材用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷用版材を搬送する装置と各処理液槽とスプレー装置とからなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロール等によって印刷用版材を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。また、電気伝導度をセンサーにて感知し、自動的に補充することもできる。
また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
【0195】
以上のようにして得られた平版印刷版は所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力の平版印刷版としたい場合にはバーニング処理が施される。
平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
【0196】
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布等が適用される。また、塗布した後でスキージ又はスキージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
整面液の塗布量は一般に0.03〜0.8g/m2(乾燥質量)が適当である。
整面液が塗布された平版印刷版は必要であれば乾燥された後、バーニングプロセッサー(例えば、富士写真フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:BP−1300)等で高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、180〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。
【0197】
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引き等の従来行なわれている処理を施こすことができるが、水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合にはガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。
【0198】
このような処理によって、本発明の画像記録材料より得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0199】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
【0200】
(支持体の作成)
99.5%以上のアルミニウムと、Fe 0.30%、Si 0.10%、Ti 0.02%、Cu 0.013%を含むJIS A1050合金の溶湯に清浄化処理を施し、鋳造した。清浄化処理には、溶湯中の水素などの不要なガスを除去するために脱ガス処理し、セラミックチューブフィルタ処理をおこなった。鋳造法はDC鋳造法で行った。凝固した板厚500mmの鋳塊を表面から10mm面削し、金属間化合物が粗大化してしまわないように550℃で10時間均質化処理を行った。次いで、400℃で熱間圧延し、連続焼鈍炉中で500℃、60秒中間焼鈍した後、冷間圧延を行って、板圧0.30mmのアルミニウム圧延板とした。圧延ロールの粗さを制御することにより、冷間圧延後の中心線平均表面粗さRaを0.2μmに制御した。その後、平面性を向上させるためにテンションレベラーにかけた。
【0201】
次に平版印刷版支持体とするための表面処理を行った。
まず、アルミニウム板表面の圧延油を除去するため10%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃30秒間脱脂処理を行い、30%硫酸水溶液で50℃30秒間中和、スマット除去処理を行った。
【0202】
次いで、支持体と記録層の密着性を良好にし、かつ非画後部に保水性を与えるため、支持体の表面を粗面化する、いわゆる、砂目立て処理を行った。1%の硝酸と0.5%の硝酸アルミを含有する水溶液を45℃に保ち、アルミウェブを水溶液中に流しながら、間接給電セルにより電流密度20A/dm2、デューティー比1:1の交番波形でアノード側電気量240C/dm2を与えることで電解砂目立てを行った。その後10%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃30秒間エッチング処理を行い、30%硫酸水溶液で50℃30秒間中和、スマット除去処理を行った。
【0203】
さらに耐摩耗性、耐薬品性、保水性を向上させるために、陽極酸化によって支持体に酸化皮膜を形成させた。電解質として硫酸20%水溶液を35℃で用い、アルミウェブを電解質中に通搬しながら、間接給電セルにより14A/dm2の直流で電解処理を行うことで2.5g/m2の陽極酸化皮膜を作成した。
【0204】
その後、印刷版非画像部としての親水性を確保するため、シリケート処理を行った。処理は3号珪酸ソーダ1.5%水溶液を70℃に保ちアルミウェブの接触時間が15秒となるよう通搬し、さらに水洗した。Siの付着量は10mg/m2であった。以上により作成した支持体のRa(中心線表面粗さ)は0.25μmであった。
【0205】
〔実施例1〜4、比較例1〕
(記録層の形成)
下記記録層塗布液1を調製し、上記のようにして得られたアルミニウム支持体にワイヤーバーを用いて塗布し、温風式乾燥装置にて115℃で45秒間乾燥して記録層を形成し、平版印刷版原版を得た。乾燥後の被覆量は1.2〜1.3g/m2の範囲内であった。
【0206】
【0207】
【表4】
【0208】
ここで、本発明の実施例に使用するアルカリ可溶性高分子1〜7は、前記合成例により得られた(A)特定アルカリ可溶性高分子1〜7である。また、比較例1で使用したアルカリ可溶性高分子(P−1)の構造は以下に示す。
【0209】
【化42】
【0210】
同じく、本発明の実施例に使用する赤外線吸収剤(IR−1)〜(IR−3)を以下に示す。
【0211】
【化43】
【0212】
同じく、本発明の実施例に使用するラジカル開始剤(S−1)〜(S−6)を以下に示す。なお、(S−1)〜(S−3)および(S−6)は本発明に係る特定ラジカル開始剤である。一方、(S−4)および(S−5)は、本発明の範囲外の正−負のイオン対を形成するラジカル開始剤である。
【0213】
【化44】
【0214】
同じく、本発明の実施例に使用するラジカル重合性化合物(R−1)〜(R−3)を以下に示す。
【0215】
【化45】
【0216】
(露光)
得られた前期各平版印刷版原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザを搭載したCreo社製Trendsetter3244VFSにて、出力6.5W、外面ドラム回転数81rpm、版面エネルギー188mJ/cm2、解像度2400dpiの条件で露光した。
【0217】
(現像処理)
露光後、富士写真フイルム(株)製自動現像機スタブロン900NPを用い現像処理した。現像液は、下記(D−1)を仕込み液、下記(D−2)を補充液に用いた。現像浴の温度は30℃、現像時間を12秒で処理した。この際、補充液は自動現像機の現像浴中の現像液の電気伝導度が一定となるように調整しつつ自動的に投入した。また、フィニッシャーは、富士写真フイルム(株)製FN−6の1:1水希釈液を用いた。
【0218】
<現像液(D−1)>
・水酸化カリウム 3g
・炭酸水素カリウム 1g
・炭酸カリウム 2g
・亜硫酸ナトリウム 1g
・ポリエチレングリコールモノナフチルエーテル 150g
・ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩 50g
・エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム塩 8g
・水 785g
【0219】
【0220】
〔耐刷性の評価〕
次に、小森コーポレーション(株)製印刷機リスロンを用いて印刷した。この際、どれだけの枚数が充分なインキ濃度を保って印刷できるかを目視にて測定し、耐刷性を評価した。結果を前記表4に併記する。
以上表4に明らかなように、本発明に係る特定アルカリ可溶性高分子を用いた実施例1〜4の平版印刷版は、公知のアルカリ可溶性高分子を用いた比較例1に比べ、耐刷性に優れることが確認された。また、実施例1〜4のいずれの試料にも、露光時のアブレーションは見られなかった。
【0221】
〔実施例5〜7、比較例2、3〕
前記実施例1〜4及び比較例1で用いたのと同様のアルミニウム支持体上に、下記に示す下塗り層用塗布液を塗布し、80℃雰囲気下で30秒間乾燥した。乾燥塗布量は、10mg/m2であった。
<下塗り層用塗布液>
下記組成の化合物を混合し、下塗り層用塗布液を調製した。
・2−アミノエチルホスホン酸 0.5g
・メタノール 40g
・純水 60g
【0222】
(記録層の形成)
下記に示す記録層塗布液2を前記下塗り層の形成された支持体上に、ワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて115℃で45秒間乾燥して平版印刷版原版を得た。乾燥後の被覆量は、1.2〜1.3g/m2の範囲内であった。
【0223】
【0224】
【表5】
【0225】
(露光)
得られた平版印刷版原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザを搭載したCreo社製Trendsetter3244VFSにて、出力6.5W、外面ドラム回転数81rpm、版面エネルギー188mJ/cm2、解像度、解像度2400dpiの条件で露光した。
【0226】
(現像処理)
露光後、富士写真フイルム(株)製自動現像機スタブロン900NPを用い現像処理した。現像液は、仕込み液、補充液共に富士写真フイルム(株)製DP−4の1:8水希釈液を用いた。現像欲浴の温度は30℃、現像時間を12秒で処理した。この際、補充液は自動現像機の現像浴中の現像液の電気伝導度が一定となるように調整しつつ自動的に投入した。また、フィニッシャーは、富士写真フイルム(株)製FN−6の1:1水希釈液を用いた。
【0227】
〔耐刷性、汚れ性および保存安定性の評価〕
得られた平版印刷版原版を、それぞれ60℃で3日間保存、及び、50℃、湿度80%RHで3日間保存して強制経時させた後、前記実施例1〜4及び比較例1と同様にして印刷を行い、耐刷性、汚れ性および保存安定性を評価した。結果を前記表5に併記する。
以上表5に明らかなように、本発明に係る特定ラジカル開始剤を用いた実施例5〜7の平版印刷版は、本発明の範囲外のラジカル開始剤を用いた比較例2、3に比べ、非画像部の汚れがなく、耐刷性に優れ、また、高温高湿環境下で保存した後も、耐刷性、非画像部の汚れ性が低下せず、保存安定性に優れていることがわかった。
【0228】
〔実施例8〜10、比較例4、5〕
前記実施例1〜4及び比較例1で用いたのと同様のアルミニウム支持体上に、下記記録層塗布液3を調製し、上記アルミニウム支持体にワイヤーバーを用いて塗布し、温風式乾燥装置にて115℃で45秒間乾燥して平版印刷版原版を得た。乾燥後の被覆量は1.2〜1.3g/m2の範囲内であった。
<記録層塗布液3>
・アルカリ可溶性高分子:(A)成分(表6に記載の化合物) 1.0g
・赤外線吸収剤「IR−3」:(B)成分 0.10g
・ラジカル開始剤:(C)成分(表6に記載の化合物) 0.80g
・ラジカル重合性化合物「R−2」:(D)成分 1.0g
・ビクトリアピュアブルーのナフタレンスルホン酸 0.04g
・フッ素系界面活性剤 0.01g
(メガファックF−176,大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン 9.0g
・メタノール 10.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.0g
【0229】
【表6】
【0230】
(露光)
得られた平版印刷版原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザを搭載したCreo社製Trendsetter3244VFSにて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、版面エネルギー100mJ/cm2、解像度2400dpiの条件で露光した。
【0231】
(現像処理)
露光後、富士写真フイルム(株)製自動現像機スタブロン900Nを用い現像処理した。現像液は、仕込み液、補充液ともに富士写真フイルム(株)製DN−3Cの1:1水希釈液を用いた。現像欲浴の温度は30℃とした。また、フィニッシャーは、富士写真フイルム(株)製FN−6の1:1水希釈液を用いた。
【0232】
〔耐刷性、汚れ性および保存安定性の評価〕
得られた平版印刷版原版を、それぞれ60℃で3日間保存、及び、50℃、湿度80%RHで3日間保存して強制経時させた後、前記実施例1〜4及び比較例1と同様にして印刷を行い、耐刷性、汚れ性および保存安定性を評価した。結果を前記表6に併記する。
以上表6に明らかなように、本発明に係る特定ラジカル開始剤を用いた実施例8〜10の平版印刷版は、本発明の範囲外のラジカル開始剤を用いた比較例4、5に比べ、非画像部の汚れがなく、耐刷性に優れ、また、高温高湿環境下で保存した後も、耐刷性、非画像部の汚れ性が低下せず、保存安定性に優れていることがわかった。
【0233】
〔実施例11〜13、比較例6、7〕
前記実施例1〜4及び比較例1で用いたのと同様のアルミニウム支持体上に、下記記録層塗布液4を調製し、上記アルミニウム支持体にワイヤーバーを用いて塗布し、温風式乾燥装置にて115℃で45秒間乾燥して平版印刷版原版を得た。乾燥後の被覆量は1.2〜1.3g/m2の範囲内であった。
<記録層塗布液4>
・アルカリ可溶性高分子:(A)成分(表7に記載の化合物) 1.2g
・赤外線吸収剤「IR−2」:(B)成分 0.09g
・ラジカル開始剤:(C)成分(表7に記載の化合物) 0.85g
・ラジカル重合性化合物「R−3」:(D)成分 1.0g
・ビクトリアピュアブルーのナフタレンスルホン酸 0.04g
・フッ素系界面活性剤 0.01g
(メガファックF−176,大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン 9.0g
・メタノール 10.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.0g
【0234】
【表7】
【0235】
さらにポリビニルアルコール(ケン化度86.5〜89モル%、重合度1000)の3質量%の水溶液を乾燥塗布質量が2g/m2となるように塗布し、100℃で2分間乾燥させ、記録層上に保護層を形成してなる平版印刷版原版を得た。
得られた平版印刷版原版を、前記実施例5〜7と同様の条件で、露光、現像処理を行った。
【0236】
〔耐刷性、汚れ性および保存安定性の評価〕
得られた平版印刷版原版を、それぞれ60℃で3日間保存、及び、50℃、湿度80%RHで3日間保存して強制経時させた後、前記実施例1〜4及び比較例1と同様にして印刷を行い、耐刷性、汚れ性および保存安定性を評価した。結果を前記表7に併記する。
以上、表7に明らかなように記録層上に保護層を設けた場合においても、本発明に係る特定ラジカル開始剤を用いた実施例11〜13の平版印刷版は、本発明の範囲外のラジカル開始剤を用いた比較例6、7に比べ、非画像部の汚れがなく、耐刷性に優れ、また、高温高湿環境下で保存した後も、耐刷性、非画像部の汚れ性が低下せず、保存安定性に優れていることがわかった。
【0237】
【発明の効果】
本発明によれば、コンピューター等のデジタルデータから直接記録可能であり、平版印刷版原版の記録層として用いた場合、アブレーションを起こすことなく、耐刷性と保存安定性に優れ、非画像部に汚れのない高画質な画像を形成しうるネガ型の画像記録材料を得ることができる。
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