JP2004076054A - 銅−亜鉛合金粉末の作製方法 - Google Patents

銅−亜鉛合金粉末の作製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】銅−亜鉛合金の粉末を容易にその組成を制御しつつ作製する。
【解決手段】例えば銅製のリング1を陽極、中央に銅製のワイヤー2を下から配線して先端部を陰極、硫酸銅と硫酸亜鉛を含む所定モル濃度比で含む水溶液を電解液3として銅製のリングの内側に入れ、その上に薄いポリエチレンフィルムの蓋4をし、厚さ1mmほどの液層を作る。この場合バイアス方向に対して直交する部分の陰極の長さおよび液層の厚さは500μ以下であり、電解により銅−亜鉛合金粉末が陰極先端部に析出する。
【選択図】     図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、銅−亜鉛合金粉末の作製方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、銅−亜鉛合金の粉末を容易にその組成を制御しつつ作製することのできる銅−亜鉛合金粉末の作製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
粉末状の金属(合金を含む)を作製する方法には各種の方法が知られている。たとえば、金属塊を機械的に粉砕する粉砕法、水やガスにより溶融金属を噴霧するアトマイズ法、あるいは化学反応を利用する方法として、気相化学反応による化合物の分解、溶液中からの還元析出、さらに電気分解による電解法がある。
【0003】
しかしながら、加工性に優れ、工業的用途の広い真ちゅうに代表される銅−亜鉛合金の粉末作製に電解法が適用された例はない。電解法は専ら純金属を対象としており、これまで特定組成や特定形状の合金の形成に適用されていない。また、たとえば、銅−亜鉛合金のε相は、組成がおよそCu:Zn=22:78〜12:88の範囲にあり、CuZnやCuZnと表記され、六方最密充填型構造をとるが、このε相は機械的に脆く、微細な形状に加工することは非常に難しい。
【0004】
この出願の発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、銅−亜鉛合金の粉末を容易にその組成を制御しつつ作製することのできる銅−亜鉛合金粉末の作製方法を提供することを解決すべき課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
銅塩及び亜鉛塩水溶液の電気分解実験において銅及び亜鉛の両元素のイオンを含む電解液を電気分解したところ、陰極で起こる還元反応により湾曲した針状などの湾曲状の銅−亜鉛ε相合金が析出することが見出された。
【0006】
また、電解液中の銅イオン及び亜鉛イオンのモル濃度比を変化させると、それに対応して異なる合金相が析出し、しかも、モル濃度比を所定範囲とすることにより特定の相のみが優先的に析出することも見出された。銅−亜鉛合金にはα、β、β′、γ、δ、ε、ηの各相が存在することが知られているが、理由は明らかになっていないが、以上のうちの限られた相のみが析出可能であることが判明した。具体的には、銅イオン濃度が高い場合、陰極析出物はα相(純銅及びいわゆる真ちゅうと呼ばれるα−黄銅)であり、亜鉛イオン濃度が高い場合はε相、さらに亜鉛イオン濃度が高く、銅イオン濃度がわずかな場合は亜鉛を主体とする固溶体相であるη相になる。条件によっては単相の銅−亜鉛合金が得られる。特にε相については、湾曲した、たとえば太さ数ミクロン〜数十ミクロン、長さ数十ミクロン〜1mmの針状や、同スケールのドーム状若しくは傘型などの湾曲状の粉末が得られる。
【0007】
この出願の発明は、以上の技術的知見に基づいて完成されたものである。
【0008】
すなわち、この出願の発明は、銅及び亜鉛の両元素のイオンを所定モル濃度比で含む電解液を電気分解し、銅−亜鉛合金粉末を陰極付近に析出させることを特徴とする銅−亜鉛合金粉末の作製方法(請求項1)を提供する。
【0009】
この出願の発明は、請求項1に係る発明に関し、銅及び亜鉛の両元素のイオンを1:5〜1:17の範囲のモル濃度比で含む電解液を電気分解して銅−亜鉛ε相合金粉末を析出させること(請求項2)、陰極電流密度を0.02mA/cm〜5mA/cmの範囲として電気分解し、湾曲状の銅−亜鉛ε相合金粉末を析出させること(請求項3)、バイアス方向に対して直交する部分の長さが500μm以下の陰極を用いて電気分解し、湾曲した針状の銅−亜鉛ε相合金粉末を析出させること(請求項4)、電解液を、バイアス方向に対して直交する厚さが500μm以下の液層に維持して電気分解すること(請求項5)を一形態として提供する。
【0010】
またこの出願の発明は、請求項1に係る発明に関し、銅及び亜鉛の両元素のイオンを∞:1〜1:4の範囲のモル濃度比で含む電解液を電気分解して銅−亜鉛α相合金粉末を析出させること(請求項6)、陰極電流密度を0.02mA/cm〜5mA/cmの範囲として電気分解すること(請求項7)を一形態として提供する。
【0011】
以下、実施例を示しつつ、この出願の発明の銅−亜鉛合金粉末の作製方法についてさらに詳しく説明する。
【0012】
【発明の実施の形態】
この出願の発明の銅−亜鉛合金粉末の作製方法では、前述のとおり、銅及び亜鉛の両元素のイオンを所定モル濃度比で含む電解液を電気分解し、銅−亜鉛合金粉末を陰極付近に析出させる。
【0013】
析出物の組成は、電解液中の主として銅イオン及び亜鉛イオンの濃度に依存する。銅及び亜鉛の両元素のイオンを1:5〜1:17の範囲のモル濃度比で含む電解液を電気分解すると、銅−亜鉛ε相合金粉末を析出させることができ、銅及び亜鉛の両元素のイオンを∞:1(銅が100%に近い割合)〜1:4の範囲のモル濃度比で含む電解液を電気分解すると、銅−亜鉛α相合金粉末を析出させることができる。なお、析出物には、同一相であっても、組成が連続的に変化するものや、他の相が共存するものなどがある。たとえば、ε相にη相が共存したり、α相にε相が共存することもあり得る。
【0014】
析出物の形態は陰極の電流密度により異なり、めっき膜となったり、粒状化したりせずに粉末を得るためには、陰極電流密度は0.02mA/cm〜5mA/cmの範囲とするのが好ましい。
【0015】
また、粉末の形態は、陰極のバイアス方向に対して直交する部分の長さにも依存する。銅−亜鉛ε相合金粉末の場合、以上の陰極電流密度の範囲において湾曲状となるが、陰極のバイアス方向に対して直交する部分の長さをごく短くすると、湾曲した針状となる。その長さはたとえば500μm以下とすることができる。なお、陰極のバイアス方向に対して直交する部分の長さを500μm以下にするための一方策として、電解液を、バイアス方向に対して直交する厚さが500μm以下の液層に維持することが例示される。
【0016】
前述したとおり、銅−亜鉛ε相合金は機械的に脆く、微細な形状に加工することは非常に難しいが、この出願の発明の銅−亜鉛合金粉末の作製方法により、直接、針状や湾曲状の銅−亜鉛ε相合金粉末が得られる。ε相は機械的に脆い、言い換えるならば硬質であることから、たとえば、銅、アルミニウム含有亜鉛基合金に添加すると、靱性が改善され、強度が高くなり、耐久性が増大することが知られている。したがって、この出願の発明の銅−亜鉛合金粉末の作製方法により作製される銅−亜鉛ε相合金粉末は、湾曲状の場合、たとえば、粉末冶金に利用すると、粉末が相互に絡み合い、これにより強度及び靱性に優れた焼結合金が得られる可能性がある。また、湾曲状の粉末はもちろんのこと、その一形態である湾曲の度合いが大きい針状の粉末を使用すると、隙間の大きい嵩高な構造の高度にポーラスな組織をもつ焼結合金が得られる可能性もある。
【0017】
このように、この出願の発明の銅−亜鉛合金粉末の作製方法により作製される銅−亜鉛合金粉末を他の合金粉末と組み合わせることにより、高靱性かつ高強度の複合合金の実現が期待される。これのみならず、この出願の発明の銅−亜鉛合金粉末の作製方法により作製される銅−亜鉛合金粉末は、その形状を生かし、マイクロマシンの構成部品への応用も期待される。
【0018】
なお、この出願の発明の銅―亜鉛合金粉末の作製方法では、銅及び亜鉛の両元素のイオンが所定モル濃度比にあり、所期の銅―亜鉛合金粉末が得られる限り、電解液中に他の元素を添加することは可能である。また、電気分解を行う装置に関しても特にその構成は限定的でない。たとえば、平板状の陽極及び陰極を対向配置したものや、後述する実施例に示されるような陽極又は陰極のいずれか一方に対して他方がそれを中心若しくはほぼ中心として囲むように配置され、囲んだ内部に電解液を貯留することができるものなど、種々の構成を採用し得る。さらに、電気分解時の物理定数、たとえば温度、磁場などは可変とすることができる。
【0019】
【実施例】
(実施例1)
図1<a><b>に示した電解セルを用いて常温において電気分解を行った。電解セルの陽極には、内径37mmの銅製のリング(1)を使用し、その中央に直径0.7mmの銅製のワイヤー(2)を下から配線して先端部を陰極とした。そして、各々に直流電源を接続した。0.052mol/リットルの硫酸銅と0.36mol/リットルの硫酸亜鉛を含む水溶液を電解液(3)とし、これを銅製のリング(1)の内側に流し入れ、その上に薄いポリエチレンフィルムの蓋(4)をし、平らに覆った。厚さ1mmほどの液層を作った。
【0020】
両電極に6Vの電圧を印加すると、陰極、すなわち銅製のワイヤー(2)の先端部から金属が析出し、析出物は、図2に示したような湾曲状の集合体として成長した。セルに流れる電流を測定すると、析出物の成長にしたがい陰極電流密度が0.5mA/cmから1.3 mA/cmまで次第に上昇したことが確認された。また、得られた粉末の粉末X線回折パターンは、図3に示したとおりであり、この粉末X線回折パターンからε相のみからなる単相であることが確認された。
(実施例2)
実施例1で使用した電解セルに類似する構造を有する電解セルを用い、常温において電気分解を行った。電解セルの陽極には、内径16mmの銅製のリング(1)を使用し、その中央に直径0.7mmの銅製のワイヤー(2)を下から配線して先端部を陰極とした。そして、各々に直流電源を接続した。0.065mol/リットルの硫酸銅と0.36mol/リットルの硫酸亜鉛を含む水溶液を電解液(3)とし、これを銅製のリング(1)の内側に流し入れ、その上に薄いポリエチレンフィルムの蓋(4)をし、平らに覆った。厚さ100μmほどの薄い液層を作った。
【0021】
両電極に2.5Vの電圧を印加すると、陰極である銅製のワイヤー(2)の先端部から金属が2次元的に析出し、析出物は、図4に示したような湾曲した針状の粉末となった。セルに流れる電流を測定すると、陰極電流密度は0.1mA/cm〜0.4mA/cmであることが確認された。得られた粉末について電子顕微鏡付属のEDAX装置及び蛍光X線分析装置を用いて調べたところ、組成はほぼCuZnであり、ε相であることが判明した。
(実施例3)
実施例2と同様の電解セルを用い、0.26mol/リットルの硫酸銅と0.36mol/リットルの硫酸亜鉛を含む水溶液を電解液(3)として実施例2と同様に常温において電気分解した。陰極生成物を粉末X線回析計、電子顕微鏡付属のEDAX装置及び蛍光X線分析装置を用いて調べたところ、α相であることが確認された。
【0022】
もちろん、この出願の発明は、以上の実施形態及び実施例によって限定されるものではない。電気分解に用いた電解セルの構成及び構造、電解条件、析出物の形状などの細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。
【0023】
【発明の効果】
以上詳しく説明した通り、この出願の発明によって、銅−亜鉛合金の粉末を容易にその組成を制御しつつ作製することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】<a><b>は、それぞれ、実施例で使用した電解セルを概略的に示した平面図、断面図である。
【図2】実施例1で得られた銅−亜鉛ε相合金粉末の形状を示した観察図である。
【図3】実施例1で得られた粉末の粉末X線回折パターンである。
【図4】
実施例2得られた銅−亜鉛ε相合金粉末の形状を示した観察図である。
【符号の説明】
1  リング
2  ワイヤー
3  電解液
4  蓋

Claims (7)

  1. 銅及び亜鉛の両元素のイオンを所定モル濃度比で含む電解液を電気分解し、銅−亜鉛合金粉末を陰極付近に析出させることを特徴とする銅−亜鉛合金粉末の作製方法。
  2. 銅及び亜鉛の両元素のイオンを1:5〜1:17の範囲のモル濃度比で含む電解液を電気分解して銅−亜鉛ε相合金粉末を析出させる請求項1記載の銅−亜鉛合金粉末の作製方法。
  3. 陰極電流密度を0.02mA/cm〜5mA/cmの範囲として電気分解し、湾曲状の銅−亜鉛ε相合金粉末を析出させる請求項2記載の銅−亜鉛合金粉末の作製方法。
  4. バイアス方向に対して直交する部分の長さが500μm以下の陰極を用いて電気分解し、湾曲した針状の銅−亜鉛ε相合金粉末を析出させる請求項3記載の銅−亜鉛合金粉末の作製方法。
  5. 電解液を、バイアス方向に対して直交する厚さが500μm以下の液層に維持して電気分解する請求項4記載の銅−亜鉛合金粉末の作製方法。
  6. 銅及び亜鉛の両元素のイオンを∞:1〜1:4の範囲のモル濃度比で含む電解液を電気分解して銅−亜鉛α相合金粉末を析出させる請求項1記載の銅−亜鉛合金粉末の作製方法。
  7. 陰極電流密度を0.02mA/cm〜5mA/cmの範囲として電気分解する請求項6記載の銅−亜鉛合金粉末の作製方法。
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JP2011202245A (ja) * 2010-03-26 2011-10-13 Furukawa Electric Co Ltd:The 銅合金微粒子の製造方法、及び該製造方法で得られる銅合金微粒子
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RU2557398C2 (ru) * 2013-11-20 2015-07-20 Федеральное государственное бюджетное образовательное учреждение высшего профессионального образования "Российский химико-технологический университет им. Д.И. Менделеева" (РХТУ им Д.И. Менделеева) Способ электрохимического получения металлического порошка

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