JP2004075583A - 臓器保存装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】より良好な状態で保存された臓器を運搬するための臓器保存装置の提供。
【解決手段】断熱空間2を有する断熱容器3と、該断熱容器の断熱空間内に着脱可能に収容される開閉可能な内箱4と、該内箱内に保冷材5とともに収容され、臓器Aと保存液Bとが収容される臓器チャンバー6と、臓器に供給する保存液を収容する保存液バッグ7と、臓器から排出された廃液を収容保持する廃液バッグ8と、該保存液バッグ内の保存液を臓器に供給し、該臓器からの廃液を該廃液バッグに送るように配置されたチューブ9a,9bとポンプ10とを有する保存液循環機構とを含むことを特徴とする臓器保存装置1。
【選択図】 図1
【解決手段】断熱空間2を有する断熱容器3と、該断熱容器の断熱空間内に着脱可能に収容される開閉可能な内箱4と、該内箱内に保冷材5とともに収容され、臓器Aと保存液Bとが収容される臓器チャンバー6と、臓器に供給する保存液を収容する保存液バッグ7と、臓器から排出された廃液を収容保持する廃液バッグ8と、該保存液バッグ内の保存液を臓器に供給し、該臓器からの廃液を該廃液バッグに送るように配置されたチューブ9a,9bとポンプ10とを有する保存液循環機構とを含むことを特徴とする臓器保存装置1。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、臓器の移植の際にドナーの体内から取り出された臓器を運搬するために用いられる臓器保存装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近の医学分野においては心臓、腎臓、肺、肝臓などの臓器移植が行われることが多くなっている。この臓器移植に際して、臓器提供者すなわちドナーと、臓器受容者すなわちレシピエントとが離れた場所に居ることが多いため、ドナーの体内より取り出された臓器をレシピエントにまで運搬する必要がある。この臓器運搬のため従来は、ドナーの体内より取り出された臓器を保存液(UW液等)で洗浄した後、断熱性の良いクーラーボックス内に保冷用の氷と共に浸漬保存された状態で運搬していた。
【0003】
また、長時間にわたる臓器運搬を考慮した臓器保存装置として、特開平6−16501号公報には、体内より取り出された臓器を浸漬冷却された運搬ボックス内に収納して運搬するための臓器保存装置において、前記運搬ボックス内に収納され、保存液を収納した保存液収納容器と前記運搬ボックス内に収納され、前記保存液収納容器内の保存液を前記臓器に供給するためのポンプとを備えた臓器の運搬装置が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来技術のうち、臓器を浸漬したバッグを氷と一緒にクーラーボックスに入れて運搬する臓器運搬方式では、臓器に積極的に保存液を供給することができなかった。保存液には臓器に栄養を与える作用もあるので、臓器を保存液に浸漬しただけでは、臓器の隅々まで保存液を循環させることはできず、したがってこの方式では、臓器を新鮮な状態に長時間保つことは困難である。
【0005】
特開平6−16501号公報に記載された従来の運搬装置は、臓器に保存液を灌流するシステムを有しているが、その実用化には依然として問題がある。例えばこの運搬装置の保存液供給システムは、保存液収納容器に収納されチューブで取り出される保存液を、ポンプで臓器内に供給できるようにしているが、臓器に供給されて臓器内を循環して排出される代謝産物をどのように処理するのか、同公報中には記載も示唆もなされていない。臓器から排出される代謝産物は、臓器内で栄養成分などが消費され、イオン濃度や組成、pH等が新鮮な保存液と比べて変化している可能性があるため、もし、臓器から排出される代謝産物が臓器を収納する収納袋内に溜められるのであれば、臓器を長時間保存するためには好ましくない。
さらに上記従来の運搬装置は、臓器を運搬し、移植手術に用いる際に、十分な無菌状態を得ることが困難である。上記従来例では、臓器を収納袋に収納して運搬ボックス(クーラーボックス)に収納され、この収納袋の外部は取り扱い時に人手に触れ、かつ大気や運搬ボックス内壁と接触しており、細菌等の汚染源が存在する可能性がある。そして、この運搬ボックスを手術室に持ち込み、収納された臓器を取り出す際に、収納袋の外面は汚染されている可能性があることから、手術室内に収納袋を持ち込むために無菌状態を継続する必要があり、余分な手間と時間を要してしまう。また収納袋からの臓器取り出しの際に、袋を保持し、口を開き、袋から臓器を持ち上げるのにそれぞれ人手を要する。さらに、臓器の取り出しに手間がかかることから、この臓器取り出しの際に汚染や臓器の損傷が生じる可能性がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、無菌で、しかもより良好な保存状態での臓器運搬を実現するための臓器保存装置の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明は、断熱空間を有する断熱容器と、該断熱容器の断熱空間内に着脱可能に収容される開閉可能な内箱と、該内箱内に保冷材とともに収容され、臓器と保存液とが収容される臓器チャンバーと、前記臓器に供給する保存液を収容する保存液バッグと、前記臓器から排出された廃液を収容保持する廃液バッグと、該保存液バッグ内の保存液を臓器に供給し、該臓器からの代謝産物を含んだ廃液を該廃液バッグに送るように配置されたチューブとポンプとを有する保存液循環機構とを含むことを特徴とする臓器保存装置を提供する。本発明の臓器保存装置において、前記廃液バッグは、チューブにより送られる廃液を吸収保持する吸水材をバッグ内に収納してなる構成としてよい。また前記断熱容器に、臓器保存状態の目視確認用または保存液のサンプリング用の開閉可能な小窓を設けた構成としてよい。
さらに、臓器の温度を示す温度表示手段が前記内箱の外部に設けられた構成としてよい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面を参照して説明する。
図1および図2は本発明の臓器保存装置の一実施形態を示す。図1は臓器保存装置1の縦断面図、図2は横断面図である。
この臓器保存装置1は、断熱空間2を有する断熱容器3と、該断熱容器3の断熱空間2内に着脱可能に収容される開閉可能な内箱4と、該内箱4内に保冷材5とともに収容され、臓器Aと保存液Bとが収容される臓器チャンバー6と、内箱4内に収容され臓器Aに供給する保存液Bを収容する保存液バッグ7と、内箱4内に収容され臓器Aから排出された廃液Cを収容保持する廃液バッグ8と、保存液バッグ7内の保存液Bを臓器Aに供給し、該臓器Aからの廃液Cを廃液バッグ8に送るように配置されたチューブ9a,9bとポンプ10とを有する保存液循環機構11とを主な構成要素として構成されている。
【0009】
前記断熱容器3は、通常クーラーボックスなどと呼ばれている、発泡樹脂(発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン等)断熱材壁で断熱空間2を包囲した構造を有する各種の市販品の中から選択して使用することができ、あるいは市販のものを適当に部分修正し、配線、配管用の穴や小窓を設けたものを使用することができる。本例示にあっては、市販されている通常のクーラーボックスをそのまま断熱容器3として用いている。この市販品は、箱本体とその上部に図示しないヒンジにより開閉可能に上蓋3Aが取り付けられ、この上蓋3Aには、上蓋3Aを閉めたままで開閉できる小窓13が取り付けられ、かつ断熱容器3の底部には水抜き用の穴14が穿設されている。この穴14は、断熱容器3の外壁に固定された電源15と、断熱容器3内に収納されたポンプ10とを接続している配線16が通されている。穴14は、必要に応じて該配線16を通した状態で、接着剤などの適当な充填剤で塞いでもよい。
【0010】
この断熱容器3の断熱空間2内に着脱可能に挿入される内箱4は、少なくとも一部が、好ましくは全体が透明な合成樹脂からなる箱状体からなっている。この内箱4の上面は、図示略のヒンジによって開閉自在に側壁に取り付けられた蓋になっている。内箱4を構成する合成樹脂は特に限定されないが、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などが好適に用いられる。この内箱4には、図示されないが、臓器チャンバー6を載置して固定するための固定台が設けられている。この固定台と臓器チャンバー6との固定構造は限定されないが、例えば固定台側の突部を臓器チャンバー6側の凹部に少ない回転で挿入することによって連結する機構を採用することが好ましい。
【0011】
この内箱4内には、臓器チャンバー6と、それを包囲するように隣接して配置される保冷材5と、保存液バッグ7と、廃液バッグ8、およびチューブ9a,9bの大部分が収納される。
また本例示において、この内箱4の大きさは、断熱容器3の断熱空間2に対して、幅方向寸法が断熱空間の幅方向寸法とほぼ等しくされ、長手方向寸法が断熱空間2の長手方向寸法より短くされ、また高さ寸法が断熱空間2の高さ寸法とほぼ等しくされている。この内箱4を断熱空間2に収容した際に生じる隙間には、ポンプ10が配置されている。このポンプ10は、内箱4の側壁に取り付けてもよいし、断熱容器3の内壁または底面に設けた図示しない固定台に取り付けてもよい。
なお、断熱空間2と内箱4の隙間は、適当な緩衝材を充填することで調整できる。この緩衝材としては、発泡樹脂板や発泡ビーズ、合成樹脂フィルムに多数の空気入り突起を設けた軟質緩衝シートなどを詰め込んでもよいし、合成樹脂製袋体にガスを供給して膨らませる構造のエアークッションを採用してもよい。
【0012】
臓器チャンバー6は、透明な合成樹脂製の有底筒状体からなる本体と、その開口端縁に着脱可能に取り付けられる蓋6Aとからなっている。この臓器チャンバー6本体には、UW液などの適当な保存液Bと、この保存液B中に浮遊状態で浸漬された臓器Aとが収納されている。また蓋6Aには、保存液供給口17と排出口18とエアー抜き用のルアーポート19とが設けられている。この蓋6Aは、好ましくは透明な合成樹脂からなり、臓器チャンバー6本体の開口端縁に押し込んで嵌合することで、Oリング等のパッキンにより臓器チャンバー6を気密に封じることができるようになっている。
【0013】
保存液供給口17と排出口18の下端には、それぞれ継手20,21が設けられている。これらの継手20,21(本例示では雄継手)のうち、保存液供給口17側の継手20には、臓器Aに保存液Bを供給できるように、図示していないが、動脈等の入口側に挿入されたカテーテルに接続されたチューブの端部に設けられた雌継手が着脱可能に連結されるようになっている。また排出口18側の継手21には、臓器A灌流後の保存液(廃液C)を排出できるように、図示していないが、静脈等の出口側に挿入されたカテーテルに接続されたチューブの端部に設けられた雌継手が着脱可能に連結されるようになっている。
【0014】
保存液供給口17の上端は、ポンプ10から延びる保存液供給側のチューブ9aの流れ方向終端と連結されている。また排出口18の上端は、三方活栓22を介して廃液バッグ8に至る廃液用のチューブ9bの流れ方向始端と連結されている。三方活栓22は、内箱4の上外面に、断熱容器3の小窓13を開く時に露出するいずれかの位置に設けられている。この三方活栓22の上方に向いた一方からは、チューブ9bを流れる廃液Cをシリンジ等を用いてサンプリングできるようになっている。
【0015】
臓器チャンバー6を包囲して内箱4内に配設される保冷材5は、本例示では合成樹脂製の中空容器内に水やゲル状ポリマー水溶液などの高比熱材料を密封した厚板またはブロック状の保冷材5を四個組み合わせて用いている。このタイプの保冷材5は、冷蔵庫等で簡単に凍結でき、その体積当たりの冷却能力が大きく、断熱空間2の断熱性能が良好であれば、被冷却物(臓器チャンバー内の臓器)を低温に保持することができる。またこの保冷材5は解凍時に内部の液が漏れ出すことがない。なお、保冷材5は臓器チャンバー6内の臓器Aを好ましくは4℃程度に保冷できればよく、本例示の保冷材5に限定されず、種々の保冷材を使用できることは言うまでもない。例えば、筒状に成形した保冷材で臓器チャンバー6を包囲してもよいし、砕片状の氷を袋に入れて封じたものを臓器チャンバー6に接して配置してもよい。また硝酸アンモニウムなどの寒剤(水に溶かすと水温が低下する塩類)を用いた保冷材を使用することもできる。
【0016】
内箱4内に設けられた保存液バッグ7は、輸液バッグにUW液等の保存液を収容したものを用いることができ、その出口7Aには保存液供給側のチューブ9aが接続されている。この保存液バッグ7の液量は、臓器Aを運搬する間、臓器Aに一定量の保存液を連続的に供給するために十分な量とされる。臓器Aに供給する保存液量は、臓器Aの種類や重量に応じて適宜変更されるが、例えば臓器Aとして標準的な成人の心臓を運搬する場合、保存液Bを1分間当たり1〜2ml程度供給するのが望ましい。なお、本例示においては保存液バッグ7を内箱4内に入れ、保冷材7により保冷可能としたが、内箱4外に保存液バッグ7とこれを保冷するための別な保冷材とを配置し、保存液バッグ7の交換使用を容易にした構成としてもよい。
【0017】
廃液バッグ8は、本例示では保存液バッグ7と並べて内箱4内に設けられ、バッグ内には吸水材12が充填されている。この保存液バッグ7のバッグ本体は、上記保存液バッグ7と同じく、輸液バッグ等として従来公知の合成樹脂バッグ等を使用してよい。この廃液バッグ8に廃液Cを導入する入口8Aには、三方活栓22を介して延びる廃液用のチューブ9aの流れ方向終端が接続されている。バッグ内に収納される吸水材12は特に限定されないが、水分を吸収してゲル化する吸水ポリマーなどが使用される。なお、廃液バッグ8は本例示に限定されることなく、吸水材12を収容していない空のバッグとしてもよいし、内箱4外に設ける構成としてもよい。
【0018】
前記ポンプ10は、一定量の保存液Bをチューブ9aを通して臓器Aに供給できればよく、特に限定されないが、微量の保存液を安定供給できるなどの点から、ローラーポンプを用いることが好ましい。本例示において用いたローラーポンプは、チューブ9aの一部をローラーと凹部との間に挟み、ローラーを偏心回転させることでチューブ9a内の保存液をいずれかの向きに流すポンプヘッド10Aと、断熱容器3外に設けられた電源15からの給電により駆動して、前記ポンプヘッド10Aのローラを偏心回転させるモータ等の駆動源を備えたポンプボックス10Bとからなっている。
【0019】
このポンプ10と、保存液供給用のチューブ9aと、廃液用のチューブ9bとによって、保存液バッグ7内の保存液Bがチューブ9aを通ってポンプ10により圧送され、臓器Aに供給されて臓器A内を灌流し、この灌流後の廃液Cをチューブ9bを通して廃液バッグ8に送り、吸水材12に吸水保持させる保存液を臓器Aに灌流させるための保存液供給装置11が構成される。
この保存液供給装置11には、臓器Aの保冷温度を知るために、例えば廃液チューブ9bの三方活栓22付近で、該チューブ内を流れる廃液の温度を検出するための図示しない温度表示手段を設けることが望ましい。この温度表示手段としては、例えばチューブ9bに貼着される温度表示シート(感熱シート)や小型の温度センサを用いることができる。
【0020】
このポンプ10を駆動させるための電源15は、通常の乾電池、二次電池(蓄電池)など従来公知の電源を使用できる。この電源15とポンプ10とをつなぐ配線16は、ポンプ10側に先端を着脱可能に連結する構造になっている。この電源15には、ポンプ10への給電のON,OFFを切り替えるスイッチを設けることができる。電源15は、長時間の臓器運搬の際、電源として用いる乾電池の交換が容易にできるように、電池の取り出し、交換が容易な構造とするのが好ましい。
【0021】
本実施形態の臓器保存装置1は、従来の運搬装置とは異なり、臓器Aの運搬時だけでなく、該装置から臓器Aを取り出し、移植手術に用いるまで無菌の状態での取り扱いが可能である。また、保存液Bを臓器Aに連続的に供給すると共に、臓器A灌流後の保存液(廃液C)を溜めておく廃液バッグ8を設けたので、保存液Bの灌流をスムーズに行うことができる。
本実施形態の臓器保存装置1は、特定の臓器Aの保存、運搬に留まらず、種々の臓器の保存、運搬に応用が可能である。
【0022】
このように構成された臓器保存装置1を用いて臓器Aを搬送する手順を簡単に説明する。この臓器保存装置1の断熱容器3は普通に保管され、また内箱4は空の状態で内部をガス滅菌して無菌にした上で、蓋を閉めて保管される。
臓器移植が行われる際、ドナー側では、医師が保存液で臓器Aを洗浄後、直ちにドナーから臓器Aを摘出し、臓器Aの動脈側と静脈側にカテーテルを挿入、仮縫合して挿管する。無菌状態の臓器チャンバー6の本体に低温の保存液Bを入れ、その中に取り出した臓器Aを浸漬する。これと同時または前後に、保冷材5、保存液バッグ7、廃液バッグ8を内箱4に無菌状態を維持したまま収納し、ポンプ10を取り付け、配線16を接続し、この内箱4を断熱容器3内に収納する。なお断熱容器3への内箱4の収納は、内箱4への臓器チャンバー6収納後でもよい。臓器Aからのカテーテルを臓器チャンバー6の蓋6Aに設けられた保存液供給口7側の継手20と排出口18側の継手21とに接続し、この蓋6Aを閉めて臓器チャンバー6を封じた後、臓器チャンバー6を内箱4内の図示しない固定台に固定し、内箱4の蓋を閉じる。ポンプ10を駆動し、保存液Bを臓器Aに灌流する。断熱容器3への内箱4の収納後、断熱容器3の蓋を閉め、これをレシピエント側に運搬する。
【0023】
臓器運搬中、必要に応じて小窓13から臓器Aを目視確認することができる。また温度表示手段によって、臓器Aの温度を知ることもできる。さらに必要に応じて三方活栓22から廃液Cをサンプリングして分析することで、臓器Aの新鮮度等を把握できる。
レシピエント側に搬送された臓器保存装置1から臓器Aを取り出す場合、断熱容器3を開け、臓器Aを収容している内箱4のみを手術室内に運び入れることで、手術室内の清浄環境を維持し得る。内箱4内は無菌状態に保たれているので、清浄な手術室内で内箱4の蓋を開け、臓器チャンバー6を取り出し、医師または看護士が臓器チャンバー6の蓋6Aを開け、内部の臓器Aを執刀医に渡すことで、臓器Aを無菌状態で提供し得る。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、以下の効果を有する優れた臓器保存装置を提供し得る。
a.保存液バッグから保存液を臓器に供給、灌流し、廃液を廃液バッグに回収する保存液循環機構を設け、新鮮な保存液を連続的に臓器に供給することで、臓器に栄養を与え続け、また臓器内の代謝産物を流し出すことで、臓器を長期間新鮮な状態で保存、運搬することができる。
b.断熱容器に滅菌処理した内箱を収納する構成としたので、従来技術では困難であった無菌作業が容易になる。
c.断熱容器に小窓を設けたことで、断熱容器の蓋を全開することなく、内部の臓器の観察や保存液のサンプリングが可能となり、臓器保存温度の上昇を気にすることなく代謝産物のサンプリング、臓器保存状態の確認が可能となる。
d.臓器の温度を示す温度表示手段を内箱の外部に設けることで、小窓を通して常に臓器温度を掌握し、過冷状態であれば小窓より外気を断熱容器内に取り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の臓器保存装置の一実施態様を示す縦断面図である。
【図2】同じ臓器保存装置の横断面図である。
【符号の説明】
1 臓器保存装置
2 断熱空間
3 断熱容器
4 内箱
5 保冷材
6 臓器チャンバー
7 保存液バッグ
8 廃液バッグ
9a,9b チューブ
10 ポンプ
11 保存液循環機構
12 吸水材
13 小窓
A 臓器
B 保存液
C 廃液
【発明の属する技術分野】
本発明は、臓器の移植の際にドナーの体内から取り出された臓器を運搬するために用いられる臓器保存装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近の医学分野においては心臓、腎臓、肺、肝臓などの臓器移植が行われることが多くなっている。この臓器移植に際して、臓器提供者すなわちドナーと、臓器受容者すなわちレシピエントとが離れた場所に居ることが多いため、ドナーの体内より取り出された臓器をレシピエントにまで運搬する必要がある。この臓器運搬のため従来は、ドナーの体内より取り出された臓器を保存液(UW液等)で洗浄した後、断熱性の良いクーラーボックス内に保冷用の氷と共に浸漬保存された状態で運搬していた。
【0003】
また、長時間にわたる臓器運搬を考慮した臓器保存装置として、特開平6−16501号公報には、体内より取り出された臓器を浸漬冷却された運搬ボックス内に収納して運搬するための臓器保存装置において、前記運搬ボックス内に収納され、保存液を収納した保存液収納容器と前記運搬ボックス内に収納され、前記保存液収納容器内の保存液を前記臓器に供給するためのポンプとを備えた臓器の運搬装置が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来技術のうち、臓器を浸漬したバッグを氷と一緒にクーラーボックスに入れて運搬する臓器運搬方式では、臓器に積極的に保存液を供給することができなかった。保存液には臓器に栄養を与える作用もあるので、臓器を保存液に浸漬しただけでは、臓器の隅々まで保存液を循環させることはできず、したがってこの方式では、臓器を新鮮な状態に長時間保つことは困難である。
【0005】
特開平6−16501号公報に記載された従来の運搬装置は、臓器に保存液を灌流するシステムを有しているが、その実用化には依然として問題がある。例えばこの運搬装置の保存液供給システムは、保存液収納容器に収納されチューブで取り出される保存液を、ポンプで臓器内に供給できるようにしているが、臓器に供給されて臓器内を循環して排出される代謝産物をどのように処理するのか、同公報中には記載も示唆もなされていない。臓器から排出される代謝産物は、臓器内で栄養成分などが消費され、イオン濃度や組成、pH等が新鮮な保存液と比べて変化している可能性があるため、もし、臓器から排出される代謝産物が臓器を収納する収納袋内に溜められるのであれば、臓器を長時間保存するためには好ましくない。
さらに上記従来の運搬装置は、臓器を運搬し、移植手術に用いる際に、十分な無菌状態を得ることが困難である。上記従来例では、臓器を収納袋に収納して運搬ボックス(クーラーボックス)に収納され、この収納袋の外部は取り扱い時に人手に触れ、かつ大気や運搬ボックス内壁と接触しており、細菌等の汚染源が存在する可能性がある。そして、この運搬ボックスを手術室に持ち込み、収納された臓器を取り出す際に、収納袋の外面は汚染されている可能性があることから、手術室内に収納袋を持ち込むために無菌状態を継続する必要があり、余分な手間と時間を要してしまう。また収納袋からの臓器取り出しの際に、袋を保持し、口を開き、袋から臓器を持ち上げるのにそれぞれ人手を要する。さらに、臓器の取り出しに手間がかかることから、この臓器取り出しの際に汚染や臓器の損傷が生じる可能性がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、無菌で、しかもより良好な保存状態での臓器運搬を実現するための臓器保存装置の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明は、断熱空間を有する断熱容器と、該断熱容器の断熱空間内に着脱可能に収容される開閉可能な内箱と、該内箱内に保冷材とともに収容され、臓器と保存液とが収容される臓器チャンバーと、前記臓器に供給する保存液を収容する保存液バッグと、前記臓器から排出された廃液を収容保持する廃液バッグと、該保存液バッグ内の保存液を臓器に供給し、該臓器からの代謝産物を含んだ廃液を該廃液バッグに送るように配置されたチューブとポンプとを有する保存液循環機構とを含むことを特徴とする臓器保存装置を提供する。本発明の臓器保存装置において、前記廃液バッグは、チューブにより送られる廃液を吸収保持する吸水材をバッグ内に収納してなる構成としてよい。また前記断熱容器に、臓器保存状態の目視確認用または保存液のサンプリング用の開閉可能な小窓を設けた構成としてよい。
さらに、臓器の温度を示す温度表示手段が前記内箱の外部に設けられた構成としてよい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面を参照して説明する。
図1および図2は本発明の臓器保存装置の一実施形態を示す。図1は臓器保存装置1の縦断面図、図2は横断面図である。
この臓器保存装置1は、断熱空間2を有する断熱容器3と、該断熱容器3の断熱空間2内に着脱可能に収容される開閉可能な内箱4と、該内箱4内に保冷材5とともに収容され、臓器Aと保存液Bとが収容される臓器チャンバー6と、内箱4内に収容され臓器Aに供給する保存液Bを収容する保存液バッグ7と、内箱4内に収容され臓器Aから排出された廃液Cを収容保持する廃液バッグ8と、保存液バッグ7内の保存液Bを臓器Aに供給し、該臓器Aからの廃液Cを廃液バッグ8に送るように配置されたチューブ9a,9bとポンプ10とを有する保存液循環機構11とを主な構成要素として構成されている。
【0009】
前記断熱容器3は、通常クーラーボックスなどと呼ばれている、発泡樹脂(発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン等)断熱材壁で断熱空間2を包囲した構造を有する各種の市販品の中から選択して使用することができ、あるいは市販のものを適当に部分修正し、配線、配管用の穴や小窓を設けたものを使用することができる。本例示にあっては、市販されている通常のクーラーボックスをそのまま断熱容器3として用いている。この市販品は、箱本体とその上部に図示しないヒンジにより開閉可能に上蓋3Aが取り付けられ、この上蓋3Aには、上蓋3Aを閉めたままで開閉できる小窓13が取り付けられ、かつ断熱容器3の底部には水抜き用の穴14が穿設されている。この穴14は、断熱容器3の外壁に固定された電源15と、断熱容器3内に収納されたポンプ10とを接続している配線16が通されている。穴14は、必要に応じて該配線16を通した状態で、接着剤などの適当な充填剤で塞いでもよい。
【0010】
この断熱容器3の断熱空間2内に着脱可能に挿入される内箱4は、少なくとも一部が、好ましくは全体が透明な合成樹脂からなる箱状体からなっている。この内箱4の上面は、図示略のヒンジによって開閉自在に側壁に取り付けられた蓋になっている。内箱4を構成する合成樹脂は特に限定されないが、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などが好適に用いられる。この内箱4には、図示されないが、臓器チャンバー6を載置して固定するための固定台が設けられている。この固定台と臓器チャンバー6との固定構造は限定されないが、例えば固定台側の突部を臓器チャンバー6側の凹部に少ない回転で挿入することによって連結する機構を採用することが好ましい。
【0011】
この内箱4内には、臓器チャンバー6と、それを包囲するように隣接して配置される保冷材5と、保存液バッグ7と、廃液バッグ8、およびチューブ9a,9bの大部分が収納される。
また本例示において、この内箱4の大きさは、断熱容器3の断熱空間2に対して、幅方向寸法が断熱空間の幅方向寸法とほぼ等しくされ、長手方向寸法が断熱空間2の長手方向寸法より短くされ、また高さ寸法が断熱空間2の高さ寸法とほぼ等しくされている。この内箱4を断熱空間2に収容した際に生じる隙間には、ポンプ10が配置されている。このポンプ10は、内箱4の側壁に取り付けてもよいし、断熱容器3の内壁または底面に設けた図示しない固定台に取り付けてもよい。
なお、断熱空間2と内箱4の隙間は、適当な緩衝材を充填することで調整できる。この緩衝材としては、発泡樹脂板や発泡ビーズ、合成樹脂フィルムに多数の空気入り突起を設けた軟質緩衝シートなどを詰め込んでもよいし、合成樹脂製袋体にガスを供給して膨らませる構造のエアークッションを採用してもよい。
【0012】
臓器チャンバー6は、透明な合成樹脂製の有底筒状体からなる本体と、その開口端縁に着脱可能に取り付けられる蓋6Aとからなっている。この臓器チャンバー6本体には、UW液などの適当な保存液Bと、この保存液B中に浮遊状態で浸漬された臓器Aとが収納されている。また蓋6Aには、保存液供給口17と排出口18とエアー抜き用のルアーポート19とが設けられている。この蓋6Aは、好ましくは透明な合成樹脂からなり、臓器チャンバー6本体の開口端縁に押し込んで嵌合することで、Oリング等のパッキンにより臓器チャンバー6を気密に封じることができるようになっている。
【0013】
保存液供給口17と排出口18の下端には、それぞれ継手20,21が設けられている。これらの継手20,21(本例示では雄継手)のうち、保存液供給口17側の継手20には、臓器Aに保存液Bを供給できるように、図示していないが、動脈等の入口側に挿入されたカテーテルに接続されたチューブの端部に設けられた雌継手が着脱可能に連結されるようになっている。また排出口18側の継手21には、臓器A灌流後の保存液(廃液C)を排出できるように、図示していないが、静脈等の出口側に挿入されたカテーテルに接続されたチューブの端部に設けられた雌継手が着脱可能に連結されるようになっている。
【0014】
保存液供給口17の上端は、ポンプ10から延びる保存液供給側のチューブ9aの流れ方向終端と連結されている。また排出口18の上端は、三方活栓22を介して廃液バッグ8に至る廃液用のチューブ9bの流れ方向始端と連結されている。三方活栓22は、内箱4の上外面に、断熱容器3の小窓13を開く時に露出するいずれかの位置に設けられている。この三方活栓22の上方に向いた一方からは、チューブ9bを流れる廃液Cをシリンジ等を用いてサンプリングできるようになっている。
【0015】
臓器チャンバー6を包囲して内箱4内に配設される保冷材5は、本例示では合成樹脂製の中空容器内に水やゲル状ポリマー水溶液などの高比熱材料を密封した厚板またはブロック状の保冷材5を四個組み合わせて用いている。このタイプの保冷材5は、冷蔵庫等で簡単に凍結でき、その体積当たりの冷却能力が大きく、断熱空間2の断熱性能が良好であれば、被冷却物(臓器チャンバー内の臓器)を低温に保持することができる。またこの保冷材5は解凍時に内部の液が漏れ出すことがない。なお、保冷材5は臓器チャンバー6内の臓器Aを好ましくは4℃程度に保冷できればよく、本例示の保冷材5に限定されず、種々の保冷材を使用できることは言うまでもない。例えば、筒状に成形した保冷材で臓器チャンバー6を包囲してもよいし、砕片状の氷を袋に入れて封じたものを臓器チャンバー6に接して配置してもよい。また硝酸アンモニウムなどの寒剤(水に溶かすと水温が低下する塩類)を用いた保冷材を使用することもできる。
【0016】
内箱4内に設けられた保存液バッグ7は、輸液バッグにUW液等の保存液を収容したものを用いることができ、その出口7Aには保存液供給側のチューブ9aが接続されている。この保存液バッグ7の液量は、臓器Aを運搬する間、臓器Aに一定量の保存液を連続的に供給するために十分な量とされる。臓器Aに供給する保存液量は、臓器Aの種類や重量に応じて適宜変更されるが、例えば臓器Aとして標準的な成人の心臓を運搬する場合、保存液Bを1分間当たり1〜2ml程度供給するのが望ましい。なお、本例示においては保存液バッグ7を内箱4内に入れ、保冷材7により保冷可能としたが、内箱4外に保存液バッグ7とこれを保冷するための別な保冷材とを配置し、保存液バッグ7の交換使用を容易にした構成としてもよい。
【0017】
廃液バッグ8は、本例示では保存液バッグ7と並べて内箱4内に設けられ、バッグ内には吸水材12が充填されている。この保存液バッグ7のバッグ本体は、上記保存液バッグ7と同じく、輸液バッグ等として従来公知の合成樹脂バッグ等を使用してよい。この廃液バッグ8に廃液Cを導入する入口8Aには、三方活栓22を介して延びる廃液用のチューブ9aの流れ方向終端が接続されている。バッグ内に収納される吸水材12は特に限定されないが、水分を吸収してゲル化する吸水ポリマーなどが使用される。なお、廃液バッグ8は本例示に限定されることなく、吸水材12を収容していない空のバッグとしてもよいし、内箱4外に設ける構成としてもよい。
【0018】
前記ポンプ10は、一定量の保存液Bをチューブ9aを通して臓器Aに供給できればよく、特に限定されないが、微量の保存液を安定供給できるなどの点から、ローラーポンプを用いることが好ましい。本例示において用いたローラーポンプは、チューブ9aの一部をローラーと凹部との間に挟み、ローラーを偏心回転させることでチューブ9a内の保存液をいずれかの向きに流すポンプヘッド10Aと、断熱容器3外に設けられた電源15からの給電により駆動して、前記ポンプヘッド10Aのローラを偏心回転させるモータ等の駆動源を備えたポンプボックス10Bとからなっている。
【0019】
このポンプ10と、保存液供給用のチューブ9aと、廃液用のチューブ9bとによって、保存液バッグ7内の保存液Bがチューブ9aを通ってポンプ10により圧送され、臓器Aに供給されて臓器A内を灌流し、この灌流後の廃液Cをチューブ9bを通して廃液バッグ8に送り、吸水材12に吸水保持させる保存液を臓器Aに灌流させるための保存液供給装置11が構成される。
この保存液供給装置11には、臓器Aの保冷温度を知るために、例えば廃液チューブ9bの三方活栓22付近で、該チューブ内を流れる廃液の温度を検出するための図示しない温度表示手段を設けることが望ましい。この温度表示手段としては、例えばチューブ9bに貼着される温度表示シート(感熱シート)や小型の温度センサを用いることができる。
【0020】
このポンプ10を駆動させるための電源15は、通常の乾電池、二次電池(蓄電池)など従来公知の電源を使用できる。この電源15とポンプ10とをつなぐ配線16は、ポンプ10側に先端を着脱可能に連結する構造になっている。この電源15には、ポンプ10への給電のON,OFFを切り替えるスイッチを設けることができる。電源15は、長時間の臓器運搬の際、電源として用いる乾電池の交換が容易にできるように、電池の取り出し、交換が容易な構造とするのが好ましい。
【0021】
本実施形態の臓器保存装置1は、従来の運搬装置とは異なり、臓器Aの運搬時だけでなく、該装置から臓器Aを取り出し、移植手術に用いるまで無菌の状態での取り扱いが可能である。また、保存液Bを臓器Aに連続的に供給すると共に、臓器A灌流後の保存液(廃液C)を溜めておく廃液バッグ8を設けたので、保存液Bの灌流をスムーズに行うことができる。
本実施形態の臓器保存装置1は、特定の臓器Aの保存、運搬に留まらず、種々の臓器の保存、運搬に応用が可能である。
【0022】
このように構成された臓器保存装置1を用いて臓器Aを搬送する手順を簡単に説明する。この臓器保存装置1の断熱容器3は普通に保管され、また内箱4は空の状態で内部をガス滅菌して無菌にした上で、蓋を閉めて保管される。
臓器移植が行われる際、ドナー側では、医師が保存液で臓器Aを洗浄後、直ちにドナーから臓器Aを摘出し、臓器Aの動脈側と静脈側にカテーテルを挿入、仮縫合して挿管する。無菌状態の臓器チャンバー6の本体に低温の保存液Bを入れ、その中に取り出した臓器Aを浸漬する。これと同時または前後に、保冷材5、保存液バッグ7、廃液バッグ8を内箱4に無菌状態を維持したまま収納し、ポンプ10を取り付け、配線16を接続し、この内箱4を断熱容器3内に収納する。なお断熱容器3への内箱4の収納は、内箱4への臓器チャンバー6収納後でもよい。臓器Aからのカテーテルを臓器チャンバー6の蓋6Aに設けられた保存液供給口7側の継手20と排出口18側の継手21とに接続し、この蓋6Aを閉めて臓器チャンバー6を封じた後、臓器チャンバー6を内箱4内の図示しない固定台に固定し、内箱4の蓋を閉じる。ポンプ10を駆動し、保存液Bを臓器Aに灌流する。断熱容器3への内箱4の収納後、断熱容器3の蓋を閉め、これをレシピエント側に運搬する。
【0023】
臓器運搬中、必要に応じて小窓13から臓器Aを目視確認することができる。また温度表示手段によって、臓器Aの温度を知ることもできる。さらに必要に応じて三方活栓22から廃液Cをサンプリングして分析することで、臓器Aの新鮮度等を把握できる。
レシピエント側に搬送された臓器保存装置1から臓器Aを取り出す場合、断熱容器3を開け、臓器Aを収容している内箱4のみを手術室内に運び入れることで、手術室内の清浄環境を維持し得る。内箱4内は無菌状態に保たれているので、清浄な手術室内で内箱4の蓋を開け、臓器チャンバー6を取り出し、医師または看護士が臓器チャンバー6の蓋6Aを開け、内部の臓器Aを執刀医に渡すことで、臓器Aを無菌状態で提供し得る。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、以下の効果を有する優れた臓器保存装置を提供し得る。
a.保存液バッグから保存液を臓器に供給、灌流し、廃液を廃液バッグに回収する保存液循環機構を設け、新鮮な保存液を連続的に臓器に供給することで、臓器に栄養を与え続け、また臓器内の代謝産物を流し出すことで、臓器を長期間新鮮な状態で保存、運搬することができる。
b.断熱容器に滅菌処理した内箱を収納する構成としたので、従来技術では困難であった無菌作業が容易になる。
c.断熱容器に小窓を設けたことで、断熱容器の蓋を全開することなく、内部の臓器の観察や保存液のサンプリングが可能となり、臓器保存温度の上昇を気にすることなく代謝産物のサンプリング、臓器保存状態の確認が可能となる。
d.臓器の温度を示す温度表示手段を内箱の外部に設けることで、小窓を通して常に臓器温度を掌握し、過冷状態であれば小窓より外気を断熱容器内に取り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の臓器保存装置の一実施態様を示す縦断面図である。
【図2】同じ臓器保存装置の横断面図である。
【符号の説明】
1 臓器保存装置
2 断熱空間
3 断熱容器
4 内箱
5 保冷材
6 臓器チャンバー
7 保存液バッグ
8 廃液バッグ
9a,9b チューブ
10 ポンプ
11 保存液循環機構
12 吸水材
13 小窓
A 臓器
B 保存液
C 廃液
Claims (3)
- 断熱空間を有する断熱容器と、該断熱容器の断熱空間内に着脱可能に収容される開閉可能な内箱と、該内箱内に保冷材とともに収容され、臓器と保存液とが収容される臓器チャンバーと、前記臓器に供給する保存液を収容する保存液バッグと、前記臓器から排出された廃液を収容保持する廃液バッグと、該保存液バッグ内の保存液を臓器に供給し、該臓器からの廃液を該廃液バッグに送るように配置されたチューブとポンプとを有する保存液循環機構とを含むことを特徴とする臓器保存装置。
- 前記廃液バッグが、チューブにより送られる廃液を吸収保持する吸水材をバッグ内に収納してなることを特徴とする請求項1記載の臓器保存装置。
- 臓器の温度を示す温度表示手段が前記内箱の外部に設けられたことを特徴とする請求項1または2記載の臓器保存装置。
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- 2002-08-13 JP JP2002236010A patent/JP2004075583A/ja active Pending
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